本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
〔本発明の一実施形態の技術的思想〕
本発明者が鋭意検討した結果、上述した先行技術文献1〜5に記載の技術には、以下に示すような改善の余地または問題点があることを見出した。
先行技術文献1〜3には、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子またはポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する技術が開示されており、当該製造方法において、分散剤として第三リン酸カルシウムが用いられている。先行技術文献1〜3に記載の技術では、第三リン酸カルシウムの使用により、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂の分散性は高い。しかしながら、本発明者は、第三リン酸カルシウムを利用して得られた発泡粒子を用いて型内発泡成形を行うとき、当該発泡粒子の表面に付着している第三リン酸カルシウムが発泡粒子から脱離し、金型に堆積する(換言すれば、金型を汚染する)ことに気づいた。従って、先行技術文献1〜3に記載の技術は、分散剤の金型への蓄積を抑える点から、さらに改善の余地がある。
発泡粒子の表面から脱離しにくい分散剤としては、ケイ酸塩などの鉱物が知られており、ケイ酸塩のなかでもカオリンが好適に用いられている。例えば、先行技術文献4に記載の技術は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する技術であり、分散剤としてケイ酸塩が用いられている。しかしながら、本発明者は、ケイ酸塩を分散剤として使用する場合、耐圧容器内での樹脂粒子の塊化を防ぐためには、分散媒である水に対して多量にケイ酸塩を添加する必要があることに気づいた。さらに、本発明者は、多量のケイ酸塩を用いて得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子、を用いて型内発泡成形を行う場合、(a)型内発泡成形のときに金型にケイ酸塩が堆積することはないものの、(b)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士の融着が十分でないポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が得られる場合があることを見出した。従って、先行技術文献4に記載の技術には、型内発泡成形におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士の融着が不十分である、という問題点がある。
分散剤であるケイ酸塩の添加量を少量にするために、換言すれば分散剤を発泡粒子に効率よく付着させるために、ケイ酸塩のゼータ電位を正極に調整する酸性物質(pH調整剤)を分散媒である水に分散強化剤としてさらに添加する方法もある。例えば、先行技術文献5に記載の技術は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する技術であり、分散剤としてケイ酸塩を用い、かつ、分散強化剤として酸性物質(pH調整剤)を用いている。しかしながら、本発明者は、先行技術文献5に記載の技術では、酸性物質を使用するため、耐圧容器および周辺の設備の腐食を招くことを見出した。従って、先行技術文献5に記載の技術には、耐圧容器および周辺の設備が腐食するという問題点がある。
また、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、高発泡倍率になるほど成形直後(製造直後)に変形しやすくなる傾向となる。ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形直後の変形した形状を回復させるためには、変形の程度に依存した乾燥時間が必要とされる。従って、従来の、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体には、成形直後の変形に起因して、長時間の乾燥を必要とするという問題点があった。なお高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とは、発泡倍率が27倍以上(換言すれば、見かけ密度33g/L以下)のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を意図する。
また、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることにより製造され得る。高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子とは、発泡倍率が18倍以上(換言すれば、見かけ密度29g/L以下)のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を意図する。
以上のように、従来技術には、優れた品質を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を提供し得るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を効率よく得る点からは、十分なものではなかった。
本発明者らは、このような課題を解決すべく、本発明を完成させた。本発明は、効率よく、具体的には(a)金型の汚染を防ぎ、(b)ポリプロピレン系樹脂粒子およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子の塊化を防止し、且つ、(c)設備を腐食させることなく、優れた品質を有する、具体的には以下の(d)および(e)を満たし得る、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造することを目的とする:(d)融着性の良好なポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を提供すること;(e)高発泡倍率であっても成形直後の変型が抑制され、それにより乾燥時間が短縮されるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体、を提供すること。
以下に本発明の一実施形態について説明する。
〔1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂粒子、水、およびケイ酸塩を含む分散液、並びに、二酸化炭素を含む無機系発泡剤を用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、(A)前記ポリプロピレン系樹脂粒子はポリプロピレン系樹脂組成物からなり、(B)前記ポリプロピレン系樹脂組成物は、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンを、合計で、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上5重量部以下含み、(C)前記分散液は、水を100重量部に対して、(a)前記ポリプロピレン系樹脂粒子を25重量部以上100重量部以下含み、(b)前記ケイ酸塩を0.05重量部以上0.25重量部以下含み、(D)前記分散液のpHが5以上9以下である、ことを特徴としている。ここで、上記(C)および(D)に記載の分散液は、無機系発泡剤を含まない分散液を意図する。
本明細書において、「本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法」を単に「本製造方法」とも称する。
本製造方法によれば、優れた品質を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を提供し得るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を効率よく得ることができる。具体的には、(a)金型の汚染を防ぎ、(b)ポリプロピレン系樹脂粒子およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子の塊化を防止し、且つ、(c)設備を腐食させることなく、以下の(d)および(e)を満たし得るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる:(d)融着性の良好なポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を提供すること;(e)高発泡倍率であっても成形直後の変型が抑制され、それにより乾燥時間が短縮されるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体、を提供すること。
また、本製造方法によれば、前述した構成であるため、(a)設備の腐食を進行させにくい特定のpHの範囲にした場合でも、ケイ酸塩を使用した分散系を安定させることが可能であり、(b)高発泡倍率であっても成形直後の変型が抑制されるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体、を提供し得るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる。
(1−1.材料)
(1−1−1.ポリプロピレン系樹脂組成物)
本製造方法において、ポリプロピレン系樹脂粒子は、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる。ポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミン、並びにその他の添加剤を含んでいる。
(1−1−1−1.ポリプロピレン系樹脂)
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、特に制限は無く、ポリプロピレンホモポリマー、エチレン/プロピレンランダム共重合体、ブテン−1/プロピレンランダム共重合体、エチレン/ブテン−1/プロピレンランダム共重合体、エチレン/プロピレンブロック共重合体、ブテン−1/プロピレンブロック共重体、プロピレン−塩素化ビニル共重合体、プロピレン/無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらのなかでも、エチレン/プロピレンランダム共重合体、エチレン/ブテン−1/プロピレンランダム共重合体が、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が良好な発泡性を有する点、および、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が良好な成形性を有する点、から好適である。なお、前記ブテン−1は、1−ブテンと同義である。
なお、〔1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法〕の項において、特別に言及する場合を除き、(a)「ポリプロピレン系樹脂発泡粒子」は、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法によって製造されることによって得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を意図し、(b)「ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体」は、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いる型内発泡成形によって製造されることによって得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を意図する。
本製造方法において、ポリプロピレン系樹脂として、エチレン/プロピレンランダム共重合体またはエチレン/ブテン−1/プロピレンランダム共重合体を用いる場合(場合Aとする)を考える。場合Aにて、エチレン/プロピレンランダム共重合体またはエチレン/ブテン−1/プロピレンランダム共重合体におけるエチレン含有率は、各共重合体100重量%中、0.2重量%以上10重量%以下が好ましい。また、場合Aにて、エチレン/ブテン−1/プロピレンランダム共重合体におけるブテン含有率は、共重合体100重量%中、0.2重量%以上10重量%以下が好ましい。また、場合Aにて、エチレン/プロピレンランダム共重合体またはエチレン/ブテン−1/プロピレンランダム共重合体におけるエチレンおよびブテン−1の合計含有率としては、各共重合体100重量%中、0.5重量%以上10重量%以下が好ましい。場合Aにて、エチレン/プロピレンランダム共重合体またはエチレン/ブテン−1/プロピレンランダム共重合体中のエチレンまたはブテン−1の含有率が、(a)0.2重量%未満である場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡性および/または成形性が低下する傾向があり、(b)10重量%を超える場合、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の機械的物性が低下する傾向にある。
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂の融点は、特に制限は無く、例えば、125℃以上160℃以下が好ましく、より好ましくは130℃以上155℃以下である。ポリプロピレン系樹脂の融点が、(a)125℃未満である場合、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の耐熱性が低下する傾向があり、(n)160℃を超える場合、本製造方法においてポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率を高めることが困難になる傾向がある。
ここで、ポリプロピレン系樹脂の融点は、示差走査熱量計法(以降、「DSC法」と称する)により測定したものである。具体的な操作手順は以下の通りである:(1)ポリプロピレン系樹脂5〜6mgを10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して融解させた後;(2)10℃/分の降温速度で220℃から40℃まで降温して結晶化させた後;(3)さらに10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温する。2回目の昇温時(すなわち(3)のとき)に得られるDSC曲線のピーク(融解ピーク)の温度を融点として求めることができる。
また、本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂の結晶融解熱量は、特に制限はなく、50J/g以上110J/g以下が好ましく、75J/g以上100J/g以下がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂の結晶融解熱量が、(a)50J/g未満である場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いる型内発泡成形においてポリプロピレン系樹脂発泡粒子の形状を保つことが困難となり、(b)110J/gを超える場合、前記発泡倍率を高めることが困難となる。
ここで、ポリプロピレン系樹脂の結晶融解熱量は、前述した、ポリプロピレン系樹脂の融点の測定と同一のDSC法により測定したものである。具体的には、前述した(1)〜(3)の操作を行い、2回目の昇温時(すなわち(3)のとき)に得られるDSC曲線のピーク(融解ピーク)を用いて次の方法によって求めることができる。当該融解ピークから高温側に向かう線と、高温側のベースラインとの交点から低温側微分曲線に向けて接線をひいたとき、当該接線と当該融解ピークとで囲まれる熱量を結晶融解熱量として求めることができる。
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂のメルトインデックス(以降、「MI」と称する)は、特に制限は無く、3g/10分以上30g/10分以下が好ましく、4g/10分以上20g/10分以下がより好ましく、5g/10分以上18g/10分以下がさらに好ましい。
ポリプロピレン系樹脂のMIが3g/10分未満である場合、前記発泡倍率を高めることが困難になる傾向がある。ポリプロピレン系樹脂のMIが30g/10分を超える場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡が連通化する。その結果、(a)ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の圧縮強度が低下する傾向、または(b)ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面性が低下する傾向、がある。
ポリプロピレン系樹脂のMIが3g/10分以上30g/10分以下の範囲にある場合を考える。この場合、比較的大きな発泡倍率を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子が得られ易い。さらに、この場合、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面美麗性が優れ、寸法収縮率が小さいものとなる利点を有する。
ここで、MI値は、JIS K7210:1999に記載のMI測定器を用い、オリフィスの直径が2.0959±0.005mmφ、オリフィスの長さが8.000±0.025mm、そして、荷重が2160g、230±0.2℃の条件下で測定した値である。
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂を合成するときの重合触媒としては、特に制限はなく、チーグラー系触媒、およびメタロセン系触媒などを用いることができる。
(1−1−1−2.脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミン)
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂組成物における、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンの合計含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上5重量部以下であり、0.3重量部以上3重量部以下であることがより好ましく、0.5重量部以上1.5重量部以下であることがさらに好ましい。
脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンの合計含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.2重量部未満である場合を考える。この場合、(a)本製造方法において、耐圧容器中に収容されている分散液のpHが5以上9以下である場合に、当該分散液中におけるポリプロピレン系樹脂粒子の分散が不安定となる傾向があり、また(b)ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の、成形直後の変形の抑制が不十分となる。ここで、分散液のpHが5以上9以下であることは、本製造方法における一つ構成である。脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンの合計含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、5重量部を超える場合を考える。この場合、(a)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子および/またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面において、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンに起因するべとつきが発生する場合があり、また(b)押出機を用いてポリプロピレン系樹脂粒子を製造するときに、ポリプロピレン系樹脂組成物を含む溶融混練物の押出機からの吐出量が安定しないことに起因して、得られるポリプロピレン系樹脂粒子の一粒の形状および/または重量がばらつく傾向がある。
本発明の一実施形態においては、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンを用いる限りにおいて、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンの合計重量に対する、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルの重量割合に特に制限はない。換言すれば、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステル、または脂肪族ジエタノールアミンを、それぞれ単独で、ポリプロピレン系樹脂に含有させることにより使用することが可能である。
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂組成物は、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンを、合計で、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上5重量部以下含むことが好ましい。前記構成によれば、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形直後の変形を抑制することが可能となる。
本発明の一実施形態で用いられる脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルに特に制限はないが、一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。前記構成によれば、(a)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子および/またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面において、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルに起因するべとつきの発生がなく、また(b)ポリプロピレン系樹脂の劣化を促進しない、という利点を有する。
(R
1は、炭素数12〜24のアルキル基、R
2は炭素数11〜23のアルキル基を示し、R
1とR
2は同じでもよく、異なっていてもよい)
ここで、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルは、所定のR
1およびR
2を有する単一の化合物のみで構成されていてもよいし、R
1およびR
2のうち、少なくとも一方の炭素数が異なる複数の化合物を含んだ混合物であってもよい。
本発明の一実施形態における脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ラウリルジエタノールアミンモノラウリン酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノペンタデシル酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノマルガリン酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノアラキジン酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノベヘン酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノリグノセリン酸エステル;ミリスチルジエタノールアミンモノラウリン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノペンタデシル酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノマルガリン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノアラキジン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノベヘン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノリグノセリン酸エステル、ペンタデシルジエタノールアミンモノラウリン酸エステル、ペンタデシルジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル、ペンタデシルジエタノールアミンモノペンタデシル酸エステル、ペンタデシルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、ペンタデシルジエタノールアミンモノマルガリン酸エステル、ペンタデシルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ペンタデシルジエタノールアミンモノアラキジン酸エステル、ペンタデシルジエタノールアミンモノベヘン酸エステル、ペンタデシルジエタノールアミンモノリグノセリン酸エステル;パルミチルジエタノールアミンモノラウリン酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノペンタデシル酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノマルガリン酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノアラキジン酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノベヘン酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノリグノセリン酸エステル;マルガリルジエタノールアミンモノラウリン酸エステル、マルガリルジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル、マルガリルジエタノールアミンモノペンタデシル酸エステル、マルガリルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、マルガリルジエタノールアミンモノマルガリン酸エステル、マルガリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、マルガリルジエタノールアミンモノアラキジン酸エステル、マルガリルジエタノールアミンモノベヘン酸エステル、マルガリルジエタノールアミンモノリグノセリン酸エステル;ステアリルジエタノールアミンモノラウリン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノペンタデシル酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノマルガリン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノアラキジン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノベヘン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノリグノセリン酸エステル;アラキジルジエタノールアミンモノラウリン酸エステル、アラキジルジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル、アラキジルジエタノールアミンモノペンタデシル酸エステル、アラキジルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、アラキジルジエタノールアミンモノマルガリン酸エステル、アラキジルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、アラキジルジエタノールアミンモノアラキジン酸エステル、アラキジルジエタノールアミンモノベヘン酸エステル、アラキジルジエタノールアミンモノリグノセリン酸エステル;ベヘニルジエタノールアミンモノラウリン酸エステル、ベヘニルジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル、ベヘニルジエタノールアミンモノペンタデシル酸エステル、ベヘニルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、ベヘニルジエタノールアミンモノマルガリン酸エステル、ベヘニルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ベヘニルジエタノールアミンモノアラキジン酸エステル、ベヘニルジエタノールアミンモノベヘン酸エステル、ベヘニルジエタノールアミンモノリグノセリン酸エステル;リグノセリルジエタノールアミンモノラウリン酸エステル、リグノセリルジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル、リグノセリルジエタノールアミンモノペンタデシル酸エステル、リグノセリルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、リグノセリルジエタノールアミンモノマルガリン酸エステル、リグノセリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、リグノセリルジエタノールアミンモノアラキジン酸エステル、リグノセリルジエタノールアミンモノベヘン酸エステル、リグノセリルジエタノールアミンモノリグノセリン酸エステル、などが挙げられる。これらは、単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
これら脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルの中でも、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が良好な点から、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステルがより好ましい。ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステルは、一般式(1)で表され、R1が−(CH2)17CH3であり、かつ、R2が−(CH2)16CH3である化合物である。
本発明の一実施形態で用いられる脂肪族ジエタノールアミンに特に制限はないが、一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。前記構成によれば、(a)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子および/またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面において、脂肪族ジエタノールアミンに起因するべとつきの発生がなく、また(b)ポリプロピレン系樹脂の劣化を促進しない、という利点を有する。
(R
3は、炭素数12〜24のアルキル基を示す)
ここで、脂肪族ジエタノールアミンは、所定のR
3を有する単一の化合物のみで構成されていてもよいし、R
3の炭素数が異なる複数の化合物を含んだ混合物であってもよい。
本発明の一実施形態における脂肪族ジエタノールアミンとしては、具体的には、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、ペンタデシルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、マルガリルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、アラキジルジエタノールアミン、ベヘニルジエタノールアミン、リグノセリルジエタノールアミン、などが挙げられる。これらは、単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
これら脂肪族ジエタノールアミンの中でも、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が良好であり、且つ、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステルとの相乗効果が得易い点から、ステアリルジエタノールアミンがより好ましい。ステアリルジエタノールアミンは、一般式(2)で表され、かつ、R3が−(CH2)17CH3である化合物である。
本発明の一実施形態において、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンを共に用いる場合(場合Bとする)を考える。場合Bにて、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンの、それぞれの種類の組み合わせに特に制限はない。場合Bにて、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンの組み合わせとしては、一般式(1)と一般式(2)とで表される化合物の組み合わせが好ましい。前記構成によれば、(a)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子および/またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面において、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンに起因するべとつきの発生がなく、また(b)用いられるポリプロピレン系樹脂の劣化を促進しない、という利点を有する。場合Bにて、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンの組み合わせとしては、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル(R1=−(CH2)17CH3、R2=−(CH2)16CH3)とステアリルジエタノールアミン(R3=−(CH2)17CH3)との組み合わせがより好ましい。前記構成によれば、(a)ポリプロピレン系樹脂との相溶性が良好となり、また(b)脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンの併用による相乗効果を得やすい、という利点を有する。
本発明の一実施形態において、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンを、ポリプロピレン系樹脂と混合する方法については特に限定されない。例えば、予め、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンのマスターバッチを作製しておき、当該マスターバッチをポリプロピレン系樹脂と混合することも可能である。脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンのマスターバッチは、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンを、ポリプロピレン系樹脂組成物の主成分となるポリプロピレン系樹脂と全く同じ樹脂、または異なる樹脂と混合することにより、作製できる。
脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンを共に用いる場合を考える。この場合、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンをポリプロピレン系樹脂と混合する前に、予め、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンを混合しておいても構わない。
(1−1−1−3.その他の添加剤)
本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂組成物においては、本願発明の効果を損ねない範囲で種々の添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、有機顔料、酸化防止剤、耐光性改良剤、気泡核剤、難燃剤、吸水性化合物、および帯電防止剤等を挙げることができる。
前記有機顔料としては、例えば、ペリレン系、ポリアゾ系、キナクリドン系等の有機顔料が例示されるが、これらに限定されるものではない。
前記有機顔料の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.001重量部以上0.1重量部以下であることが、ポリプロピレン系樹脂粒子の分散性(換言すれば、ポリプロピレン系樹脂粒子に対する着色の均一性)の点から好ましい。有機顔料の含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.1重量部を超える場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡径が微細となり得る。その結果、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面性が劣り、当該ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の見栄えが悪くなる傾向がある。
なお、本発明の一実施形態において、有機顔料を、ポリプロピレン系樹脂と混合する方法については特に限定されない。例えば、予め、ポリプロピレン系樹脂組成物の主成分となるポリプロピレン系樹脂と全く同じ樹脂または異なる樹脂と有機顔料を混合して有機顔料のマスターバッチを作製しておき、当該マスターバッチをポリプロピレン系樹脂と混合することも可能である。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
前記耐光性改良剤としては、例えば、ヒンダードアミン系耐光性改良剤等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
前記気泡核剤としては、例えば、タルク、カオリン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、二酸化珪素等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
前記難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、ヒンダードアミン系難燃剤等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
前記吸水性化合物は、水を吸収し得、ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させるときに、吸収した水を放出することにより水を発泡剤として作用させ得る物質を挙げることができる。吸水性化合物としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、メラミン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。これら吸水性化合物の中でも、ポリエチレングリコールがより好ましく、最も好ましくは、平均分子量200以上6000以下のポリエチレングリコールである。
前記帯電防止剤としては、例えば、本製造方法の一つの構成である、上述した脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステル、および脂肪族ジエタノールアミン、並びに、それ以外の物質として、ヒドロキシアルキルエタノールアミン、およびグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤が挙げられる。さらに、帯電防止性能を向上させる目的で、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、脂肪族アルコールを0.001重量部以上2重量部以下を含有させてもよい。
このような脂肪族アルコールに特に制限はないが、一般式(3)で表される化合物が好適に用いられる。
(R
4は、炭素数12〜24のアルキル基を示す)
ここで、脂肪族アルコールは、所定のR
4を有する単一の化合物のみで構成されていてもよいし、R
4の炭素数が異なる複数の化合物を含んだ混合物であってもよい。
本発明の一実施形態に使用できる、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステル、および脂肪族ジエタノールアミンの混合物に、更に脂肪族アルコールを添加したものとして、エレクトロストリッパーTS−15B(花王株式会社製)が帯電防止剤として市販されている。エレクトロストリッパーTS−15Bは、具体的には、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンおよび脂肪族アルコールの混合物である。エレクトロストリッパーTS−15Bは、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステル、および脂肪族ジエタノールアミンの量を本製造方法の範囲内に調整して使用することができる。
(1−1−2.ポリプロピレン系樹脂粒子)
本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂組成物は、通常、発泡工程に利用され易いように、予め、粒子形状に成形加工し、ポリプロピレン系樹脂粒子とすることが好ましい。前記ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法としては、(i)押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いてポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、溶融混練物を作製した後、(ii)当該溶融混練物を、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状、筒状(ストロー状)等のような所望の形状に成形することにより、ポリプロピレン系樹脂粒子を得る方法があげられる。
なお、ポリプロピレン系樹脂粒子の形状がそのままポリプロピレン系樹脂発泡粒子の形状になるとは限らない。例えば、後述する一段発泡工程および二段発泡工程のような発泡工程においてポリプロピレン系樹脂粒子が縮む場合がある。このような場合は、円柱状、または楕円状のポリプロピレン系樹脂粒子から、球状のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が得られる場合がある。
ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法の中でも、生産性の観点から、(i)押出機でポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、溶融混練物を作製した後、(ii)当該溶融混練物を、押出機先端からストランド状に押出し、(iii)その後、押出された溶融混練物をカッティングすることによりポリプロピレン系樹脂粒子とする方法がより好ましい。
なお、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミン、並びにその他の添加剤は、通常、(i)ポリプロピレン系樹脂粒子の製造過程において、溶融前または溶融したポリプロピレン系樹脂に添加して混合物とし、(ii)当該混合物を押出機で溶融混練して溶融混練物を製造することによって、ポリプロピレン系樹脂と混合されることが好ましい。このようにすることにより、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミン、並びにその他の添加剤を、ポリプロピレン系樹脂粒子中に、均一に分散させることができる。
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂粒子の平均粒径は、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.5mm以上5mm以下がより好ましい。前記構成によれば、(a)ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混錬物からポリプロピレン系樹脂粒子を成形しやすい、および、(b)ポリプロピレン系樹脂粒子から高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造し、その後、このポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形するときに、金型へのポリプロピレン系樹脂発泡粒子の充填不良が起きにくい、という利点を有する。ここで、ポリプロピレン系樹脂粒子の平均粒子径は、任意の20個のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に対して測定した粒子径の相加平均値である。
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂粒子の平均重量は、0.1mg以上100mg以下が好ましく、0.3mg以上10mg以下がより好ましい。前記構成によれば、(a)ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混錬物からポリプロピレン系樹脂粒子を成形しやすい、および、(b)ポリプロピレン系樹脂粒子から高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造し、その後、このポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形するときに、金型へのポリプロピレン系樹脂発泡粒子の充填不良が起きにくい、という利点を有する。ここで、ポリプロピレン系樹脂粒子の平均重量は、任意の10個のポリプロピレン系樹脂粒子に対して測定した重量の相加平均値である。
(1−2.製造方法)
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、次のようにして、製造することができる。
(i)前記ポリプロピレン系樹脂粒子、水、およびケイ酸塩を所定の比率で含む分散液、並びに、二酸化炭素を含む無機系発泡剤を耐圧容器中に収容し、(ii)分散液を撹拌することにより、分散液中のポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器内で分散させると共に、耐圧容器内を所定の温度(少なくともポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点温度以上)、および所定の圧力に、昇温および昇圧した後、(iii)必要に応じて、耐圧容器内を昇温後の温度で0分を超え120分以下保持し、(iv)その後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に耐圧容器中の分散液を放出して、ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させることにより、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造することができる。耐圧容器の内圧よりも低い圧力域としては、大気圧であることが好ましい。ここで、分散液は、無機系発泡剤を含むものである。
なお、このように、ポリプロピレン系樹脂粒子からポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する工程を「一段発泡工程」と呼び、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を「一段発泡粒子」と呼ぶ。また、(ii)以降の工程における分散液とは、ポリプロピレン系樹脂粒子、水、ケイ酸塩および発泡剤等を含み、耐圧容器中に収容され、攪拌条件下にポリプロピレン系樹脂粒子、水、ケイ酸塩および発泡剤等が分散された混合液体のことである。
ここで、耐圧容器内の温度を軟化点温度以上に昇温するとき、昇温温度としては、ポリプロピレン系樹脂の融点−20℃以上、ポリプロピレン系樹脂の融点+10℃以下、あるいはポリプロピレン系樹脂粒子の融点−20℃以上、ポリプロピレン系樹脂粒子の融点+10℃以下の範囲の温度に昇温することが、発泡性を確保する上で好ましい。但し、昇温温度は、原料となるポリプロピレン系樹脂の種類、および/または、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の所望される発泡倍率、さらには後述するDSC比等により適宜決定されるものであり、また、用いる発泡剤によっても適宜変更が必要となる。
なお、ポリプロピレン系樹脂粒子の融点は、ポリプロピレン系樹脂と同様の方法で測定したものである。
本発明の一実施形態で用いられる分散液中のポリプロピレン系樹脂粒子の使用量は、水100重量部に対して、25重量部以上100重量部以下が好ましく、30重量部以上90重量部以下がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂粒子の使用量が、水100重量部に対して、(a)25重量部未満の場合は生産性の低下につながり、(b)100重量部を超える場合は分散液の安定性が低下する(換言すれば、ポリプロピレン系樹脂粒子の分散が不良となる)傾向となる。
本発明の一実施形態で用いられるケイ酸塩としては、例えば、カオリン、タルク、クレー等の粘土鉱物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してよい。本製造方法では、ケイ酸塩はカオリンであることが好ましい。前記構成によれば、ケイ酸塩の添加量が少量の場合でも、ポリプロピレン系樹脂粒子の分散を安定させやすいという利点を有する。本発明の一実施形態で用いられる分散液中において、ケイ酸塩の使用量は、水100重量部に対して、0.05重量部以上0.25重量部以下であることが好ましく、0.05重量部以上0.24重量部以下であることがより好ましく、0.05重量部以上0.23重量部以下であることがさらに好ましい。
ケイ酸塩の使用量が、水100重量部に対して、(a)0.05重量部未満の場合は分散不良を引き起こす傾向となり、(b)0.25重量部以上の場合は、型内発泡成形時におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士の融着不良を引き起こす傾向となる。
分散液の安定性が低下すると、耐圧容器中で複数のポリプロピレン系樹脂粒子同士が、合着する場合、または塊となる場合がある。その結果、(a)合着したポリプロピレン系樹脂発泡粒子が得られたり、(b)耐圧容器中にポリプロピレン系樹脂粒子の塊が残存してポリプロピレン系樹脂発泡粒子が製造できなかったり、(c)あるいはポリプロピレン系樹脂発泡粒子の生産性が低下したりする場合がある。
本発明の一実施形態においては、耐圧容器内での分散液の安定性を高める為に、さらに分散助剤を用いることが好ましい。分散助剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、およびα−オレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してよい。分散助剤の使用量は、分散助剤の種類、並びに、用いるポリプロピレン系樹脂粒子の種類および使用量によって異なる。本発明の一実施形態で用いられる分散液中において、分散助剤の使用量は、水100重量部に対して、0.001重量部以上0.2重量部以下であることが好ましい。分散助剤の使用量が、水100重量部に対して、0.001重量部未満である場合、および0.2重量部を超える場合は分散不良を引き起こす場合がある。
本発明の一実施形態で用いられる発泡剤は、二酸化炭素を含む無機系発泡剤であり、好ましくは二酸化炭素単独である。二酸化炭素とあわせて使用できる無機系発泡剤としては、例えば、水、窒素、空気(酸素、窒素、二酸化炭素の混合物)等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、発泡剤の使用量に限定はなく、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の所望の発泡倍率に応じて適宣使用すれば良いが、発泡剤の使用量は、通常は、水100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。
発泡剤として二酸化炭素にあわせて水を用いる場合は、耐圧容器中の分散液中の水を発泡剤として利用できる。具体的には、発泡剤として分散液中の水を用いる場合は、予めポリプロピレン系樹脂粒子に吸水性化合物を含有させておくことが好ましい。これにより、ポリプロピレン系樹脂粒子が耐圧容器中の分散液の水を吸収し易くなり、その結果、水を発泡剤として利用し易くなる。
本発明の一実施形態における分散液のpHは、5以上9以下である。分散液のpHが、(a)5未満である場合、長期間、同一の設備を使用する場合、設備の腐食を引き起こし、(b)9を超えるとポリプロピレン系樹脂粒子の分散が不安定となり、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得るのが困難となる。
ケイ酸塩を分散剤として用いる場合、ケイ酸塩のゼータ電位を正極に調整するため、酸性物質(pH調整剤)を添加する方法が一般的に採用される。しかしながら、本発明者は、驚くべきことに、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンには、ケイ酸塩を分散剤として用いる場合であっても、中性範囲近傍のpHにて分散を安定化する効果があることを初めて見出した。具体的には、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンを特定量使用すると、ケイ酸塩を分散剤として用いる場合であっても、酸性物質の添加によるpH調整を実施することなく、設備腐食の恐れの無いpH5以上9以下の中性範囲近傍にて分散を安定化できることを初めて見出した。
前記pH調整剤としては、(a)硫酸アルミニウム、クエン酸、および酢酸アンモニウムなどが酸性物質としてあげられ、(b)炭酸水素ナトリウムなどが塩基性物質としてあげられる。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子製造時に使用する耐圧容器には特に制限はなく、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子製造時に設定される耐圧容器内の圧力、および耐圧容器内の温度に耐えられるものであればよく、例えば、オートクレーブ型の耐圧容器が挙げられる。
ところで、発泡倍率の高いポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る為には、一段発泡工程において発泡剤の使用量を多量にするという方法(以下、方法1とする)、がある。さらに、方法1以外の方法として、一段発泡工程で比較的低倍率(発泡倍率2倍から35倍程度)のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(一段発泡粒子)を得た後、再度発泡させることで発泡倍率を高くする方法(以下、方法2とする)、も採用可能である。
前記方法2としては、例えば、次の(i)〜(iii)を含む方法があげられる。(i)一段発泡工程において発泡倍率2倍以上35倍以下の一段発泡粒子を製造し、(ii)当該一段発泡粒子を耐圧容器内に入れ、窒素、空気、二酸化炭素等で0.1MPa(ゲージ圧)以上0.6MPa(ゲージ圧)以下で加圧処理することにより一段発泡粒子内の圧力を常圧よりも高くしておいた上で、(iii)一段発泡粒子をスチーム等で加熱してさらに発泡させる方法である。方法2のように、一段発泡粒子の発泡倍率を高める工程を「二段発泡工程」と呼び、方法2の方法によって得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を「二段発泡粒子」と呼ぶ。
〔2.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子〕
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であり、ポリプロピレン系樹脂、ケイ酸塩、並びに、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミン、を含有し、前記脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または前記脂肪族ジエタノールアミンの合計含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.2重量部以上5重量部以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面には前記ケイ酸塩が付着していることを特徴としている。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子によれば、優れた品質を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を提供することができる。具体的には、以下の(a)および(b)を満たし得るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる:(d)融着性の良好なポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を提供すること;(e)高発泡倍率であっても成形直後の変型が抑制され、それにより乾燥時間が短縮されるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体、を提供すること。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、さらに、任意で、その他の添加剤を含んでいてもよい。本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子が含み得る、ポリプロピレン系樹脂、ケイ酸塩、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミン、並びに、その他の添加剤、の好ましい態様は、前記〔1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法〕の項の説明が適宜援用され得る。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するための製造方法としては、従来公知の方法が採用されてもよく、特に限定されない。本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するための製造方法としては、前記〔1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法〕の項に記載の製造方法であることが好ましい。換言すれば、前記〔1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法〕の項に記載の製造方法であれば、本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造することができる。
本発明の他の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に付着したケイ酸塩の量は、灰分測定により、以下の式に基づき、測定可能である:
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に付着したケイ酸塩の量(ppm)=『ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の灰分量』−『ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造に用いたポリプロピレン系樹脂粒子の灰分量』。
また、灰分量は、それぞれ、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子またはポリプロピレン系樹脂粒子の灰分(燃やした後)の重量を、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子またはポリプロピレン系樹脂粒子の燃やす前の重量で除することにより、算出される。前記式から求められたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に付着したケイ酸塩の量が0の場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面にケイ酸塩は付着していない、といえる。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形によるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造に使われ得る。〔2.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子〕の項において、特別に言及する場合を除き、「ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体」は、本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いる型内発泡成形によって製造されることによって得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を意図する。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミンを、合計で、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上5重量部以下含むことが好ましい。前記構成によれば、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形直後の変形を抑制することが可能となる。
本発明の他の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に付着しているケイ酸塩がカオリンであることが好ましい。本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に付着しているケイ酸塩は、当該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造において、分散液に含まれるケイ酸塩である。分散液については、前記〔1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法〕の項を適宜参照できる。本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するとき、分散液に含まれるケイ酸塩としてカオリンを使用することにより、表面にカオリンが付着したポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる。
本発明の他の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面における、ケイ酸塩の付着量は、使用されたポリプロピレン系樹脂粒子の重量に対して、200ppm以上2000ppm以下であることが好ましい。前記構成であれば、(a)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形するときの、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士の融着が満足するものとなり、且つ、(b)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するときの、ポリプロピレン系樹脂粒子の分散が安定化する傾向となる、という利点を有する。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面における、ケイ酸塩の付着量は、当該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造において、分散液に含まれるケイ酸塩の量を調整することにより、適宜変更できる。また、ケイ酸塩の付着量のさらに好ましい上限値は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率に基づき、適宜選択されてもよい。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の形状は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形するときの金型への充填性を考慮すると、球状あるいは略球状が好ましいが、これらに限定されるわけではない。例えば、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に吸音性および/または透水性を付与するため、敢えて空隙を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を製造する場合がある。このような場合は、円柱状、楕円状、直方体状、筒状(ストロー状)のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が用いられ得る。
本発明の他の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が球状あるいは略球状の場合のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均直径(平均粒子径ともいう)としては、特に制限はない。本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均直径は、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子の大きさ、および発泡倍率等により変化するものであるが、0.5mm以上10mm以下が好ましく、1mm以上7mm以下がより好ましく、2mm以上5mm以下がさらに好ましい。ここで、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均直径は、任意の20個のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に対して測定した直径の相加平均値である。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均直径が、(a)0.5mm未満である場合、当該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形するときの作業性が悪くなる傾向があり、(b)10mmを超える場合、当該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いてポリプロピレン系樹脂型内発泡成形するとき、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形体形状に制限が発生する傾向がある。成形体形状に制限が発生する場合とは、例えば、薄肉部を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形が製造できない場合などである。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均重量は、概ね、当該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造に用いたポリプロピレン系樹脂粒子と同じであり、0.1mg/粒以上100mg/粒以下であることが好ましく、0.3mg/粒以上10mg/粒以下であることがより好ましい。ここで、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均重量は、任意の10個のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に対して測定した重量の相加平均値である。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率は、2倍以上60倍以下であることが好ましく、3倍以上40倍以下であることがより好ましい。また、電子部品および機械部品の緩衝包装材として好適に用いられ得るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得るために、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率は、18倍以上60倍以下であることが好ましく、18倍以上40倍以下であることがより好ましい。発泡倍率が18倍以上60倍以下である、本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることにより、成形直後の変型が抑制された、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得ることができる。なお、18倍以上60倍以下の発泡倍率を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、前述した方法1によって得られる一段発泡粒子であってもよく、または、方法2によって得られる二段発泡粒子であってもよい。本明細書において、発泡倍率とは、発泡前のポリプロピレン系樹脂組成物の密度、並びに、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の重量およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子を水没(またはエタノール中へ沈没)させて得られる体積、から算出できる真倍率である。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の見かけ密度は、15g/L以上29g/L以下であることが好ましく、16g/L以上28g/L以下であることがより好ましい。見かけ密度が15g/L以上29g/L以下である、本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることにより、成形直後の変型が抑制された、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得ることができる。前記見かけ密度の測定方法は、実施例において詳述する。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、連続気泡率が0%〜10%であることが好ましく、0%〜9%であることがより好ましく、0%〜8%であることがさらに好ましい。本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、連続気泡率が前記範囲内であるため、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形後の収縮を抑制することが可能となる。そのため、使用に十分耐え得る、良好なポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得られる、という利点を有する。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、DSC法によりポリプロピレン系樹脂発泡粒子の熱量測定した際に得られるDSC曲線において、図1に示すように、2つの融解ピークを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であることが好ましい。このような2つの融解ピークを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子は公知の方法で製造できる。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のDSC曲線は、DSC法によりポリプロピレン系樹脂発泡粒子5〜6mgを10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温したときに得られる曲線である。このようなDSC曲線の例を、図1に示す。
図1をさらに詳しく説明する。図1において、DSCの値が小さくなるピークが2つ存在する。2つのピークの内、低温側のピークを低温側融点に基づく融解ピークと称し、他方の、高温側のピークを高温側融点に基づく融解ピークと称する。低温側融点に基づく融解ピークと高温側融点に基づく融解ピークとの間の極大点を点Aとする。低温側融点に基づく融解ピークから低温側に向かう線と低温側のベースライン(融解開始ベースラインでもある)との交点を点Bとする。また、高温側融点に基づく融解ピークから高温側に向かう線と高温側のベースライン(融解終了ベースラインでもある)との交点を点Cとする。ここで、(a)DSC曲線の低温側融点に基づく融解ピークと、(b)低温側融点に基づく融解ピークと高温側融点に基づく融解ピークの間の極大点(点A)からの融解開始ベースラインへの接線(すなわち線分AB)とで囲まれる熱量を、低温側融点に基づく融解ピーク熱量Ql(J/g)とする。また、(c)DSC曲線の高温側融点に基づく融解ピークと、(d)低温側融点に基づく融解ピークと高温側融点に基づく融解ピークの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線(すなわち線分AC)とで囲まれる熱量を、高温側融点に基づく融解ピーク熱量Qh(J/g)とする。低温側融点に基づく融解ピーク熱量(Ql)と高温側融点に基づく融解ピーク熱量(Qh)との和は、融解ピークの全体の熱量である。ここで、高温側融点に基づく融解ピーク熱量(Qh)の融解ピーク全体熱量に対する比率(以下、「DSC比」もしくは「高温熱量比」と称す場合がある)は、下記式で表される。
DSC比(%)=(Qh/(Ql+Qh))×100。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、DSC比が、10%以上50%以下であることが好ましく、15%以上45%以下であることがより好ましい。DSC比が当該範囲内にある場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いる型内発泡成形において、幅広い成形加工条件を選択できるという利点を有する。
ところで、DSC比は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造において、以下の(a)および/または(b)を変更することにより、調整することができる:(a)耐圧容器内の昇温後の温度(以下、昇温温度とも称する);(b)昇温後から耐圧容器中の分散液を放出するまでの間、耐圧容器内を昇温温度で保持する保持時間。例えば、昇温温度(換言すれば、発泡温度)を下げると、DSC比は大きくなる傾向があり、また、保持時間を長くしてもDSC比は大きくなる傾向がある。
このようなことから、昇温温度(発泡温度)、および/または、保持時間を変更した実験を数回実施し、これら実験ごとにDSC曲線を得ることにより、昇温温度(発泡温度)、および/または、保持時間とDSC比との関係を把握することができる。その結果、所望のDSC比を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子を容易に得ることが可能となる。
本発明の他の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、80μm以上500μm以下が好ましく、90μm以上360μm以下がより好ましく、105μm以上330μm以下がさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が、80μm未満である場合、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面美麗性が低下する傾向があり、さらに、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の圧縮強度も低下する傾向がある。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が500μmを超える場合、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の気泡径の均一性が低下する傾向があり、その結果、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面美麗性が低下する傾向がある。また、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径を500μmよりも大きくしようとする場合、先述の高温熱量比を小さくしなければならない傾向があり、その結果、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の圧縮強度が低下する傾向がある。
〔3.ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体〕
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、ポリプロピレン系樹脂、ケイ酸塩、並びに、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミン、を含有し、前記脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または前記脂肪族ジエタノールアミンの合計含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.2重量部以上5重量部以下であり、見かけ密度が17g/L以上33g/L以下であることを特徴としている。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、前記構成を有するため、融着性が良好であるなど、優れた品質を有している。また、本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、前記構成を有するため、高発泡倍率であっても成形直後の変型が抑制され得る。そのため、型内発泡成形後の乾燥時間が短いという利点を有する。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、さらに、任意で、その他の添加剤を含んでいてもよい。本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が含み得る、ポリプロピレン系樹脂、ケイ酸塩、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミン、二酸化炭素、並びに、その他の添加剤、の好ましい態様は、前記〔1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法〕および前記〔2.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子〕の項の説明が適宜援用され得る。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の見かけ密度は、17g/L以上33g/L以下であり、17g/L以上32g/L以下であることが特に好ましい。本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、見かけ密度が前記範囲内であっても、成形直後の変形が抑制され得る、という利点を有する。前記見かけ密度の測定方法は、実施例において詳述する。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形することにより、得られる。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形に用いる場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型などの型に充填する方法として、例えば、下記(A)〜(C)などの型内充填方法がある:
(A)予めポリプロピレン系樹脂発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入(内圧付与)し、発泡能を付与したポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填する方法、
(B)内圧を付与せず(すなわち内圧は大気圧と同等のまま)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填する方法、
(C)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内充填時に搬送空気により圧縮し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の内圧を高めると同時にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填する方法。これらの方法を組み合わせて用いてもよく、これら以外の従来既知の型内充填方法も使用され得る。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子から本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を製造する方法としては、例えば、以下の(i)〜(iv)を含む方法があげられる。(i)閉鎖し得るが密閉し得ない成形金型内に、金型を多少開いた状態で、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填し、(ii)水蒸気などを加熱媒体として0.05MPa(ゲージ圧)以上、0.5MPa(ゲージ圧)以下程度の加熱水蒸気圧で3秒以上、30秒以下程度、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を加熱することでポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士を融着させ、(iii)このあと、水冷によって、成形金型からポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を取り出し後のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の変形を抑制できる程度まで、成形金型を冷却した後、(iv)成形金型を開き、成形金型から取り出して、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とする方法。なお、(i)において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填する前の金型の開き幅をクラッキング量とする。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造に用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子としては、従来公知のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることができ、特に限定されない。本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造に用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子としては、(a)前記〔1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法〕の項に記載の製造方法により製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子、または、(b)前記〔2.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子〕の項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子であることが好ましい。換言すれば、(a)前記〔1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法〕の項に記載の製造方法により製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子、または、(b)前記〔2.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子〕の項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子、を用いることによって、本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得ることができる。
本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の一例を、図2および3を用いて説明する。図2は、本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体1の概略構成を示す斜視図であり、図3は、本発明の他の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体1をx方向に沿ってみた平面図である。
図2に示されるように、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体1は、(a)z方向に沿った平面視で矩形であり、(b)z方向の端部に開口部を有しており、(c)箱状である。ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体1は、1つの底板と4つの側壁とを有している。4つの側壁の内、(a)x方向に沿った、対向する一組(すなわち2つ)の側壁は、容器1の内側に複数の突出部2を有しており、(b)y方向に沿った、他の一組(すなわち他の2つ)の側壁は、z方向の端部であり、開口部側の端部、に切欠き部を有している。前記切欠き部は、y方向の中央に設けられており、かつ、開口部から底板に向かって、y方向の長さが短くなるように構成されており、すなわち、テーパー形状である。
図2に示すように、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体1において、y方向中央におけるx方向の長さをbとし、y方向端部におけるx方向の長さをcとし、y方向の長さをdとし、z方向の長さをeとする。また、図3に示すように、切欠き部を有する側壁、換言すればy方向に沿った側壁において、y方向中央のz方向の長さをfとする。長さfは、換言すれば、切欠き部を有する側壁における、z方向の下端部から前記切欠き部までの垂線の長さともいえる。また、前記切欠き部において、z方向の端部における前記切欠き部のy方向の長さをgとし、前記切欠き部のz方向と180°反対の方向の端部のy方向の長さをhとする。
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
〔1〕ポリプロピレン系樹脂粒子、水、およびケイ酸塩を含む分散液、並びに、二酸化炭素を含む無機系発泡剤を用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、(A)前記ポリプロピレン系樹脂粒子はポリプロピレン系樹脂組成物からなり、(B)前記ポリプロピレン系樹脂組成物は、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミンを、合計で、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上5重量部以下含み、(C)前記分散液は、水を100重量部に対して、(a)前記ポリプロピレン系樹脂粒子を25重量部以上100重量部以下含み、(b)前記ケイ酸塩を0.05重量部以上0.25重量部以下含み、(D)前記分散液のpHが5以上9以下である、ことを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔2〕前記脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルが下記一般式(1)で表される化合物であり、且つ、前記脂肪族ジエタノールアミンが下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする、〔1〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(R
1は、炭素数12〜24のアルキル基、R
2は炭素数11〜23のアルキル基を示し、R
1とR
2は同じでもよく、異なっていてもよい)
〔3〕前記脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルがステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステルであり、且つ、前記脂肪族ジエタノールアミンがステアリルジエタノールアミンであることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔4〕ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であり、ポリプロピレン系樹脂、ケイ酸塩、並びに、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミン、を含有し、前記脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または前記脂肪族ジエタノールアミンの合計含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.2重量部以上5重量部以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面には前記ケイ酸塩が付着していることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
〔5〕前記脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび前記脂肪族ジエタノールアミンを、合計で、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上5重量部以下含むことを特徴とする、〔4〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
〔6〕前記ケイ酸塩がカオリンであることを特徴とする、〔4〕または〔5〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
〔7〕前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の前記表面における、前記ケイ酸塩の付着量が、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の重量に対して、200ppm以上2000ppm以下であることを特徴とする、〔4〕〜〔6〕の何れか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
〔8〕前期ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の見かけ密度が15g/L以上29g/L以下であり、且つ、連続気泡率が0%〜10%であることを特徴とする、〔4〕〜〔7〕の何れか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
〔9〕
ポリプロピレン系樹脂、ケイ酸塩、並びに、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪族ジエタノールアミン、を含有し、前記脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または前記脂肪族ジエタノールアミンの合計含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.2重量部以上5重量部以下であり、見かけ密度が17g/L以上33g/L以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
次に本発明の一実施形態を実施例および比較例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例において使用したポリプロピレン系樹脂および添加剤は、以下のとおりである。
(1)ポリプロピレン系樹脂
・ポリプロピレン系樹脂A[株式会社プライムポリマー製、F227A]:融点143℃、エチレン含有率3.6重量%、MI7.0g/10分のエチレン/プロピレンランダム共重合体
(2)脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪族ジエタノールアミン
・ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル[花王株式会社製、エレクトロストリッパーTS−6B]
・ステアリルジエタノールアミン[東京化成工業株式会社製、試薬]
・ラウリルジエタノールアミン[和光純薬工業株式会社製、試薬]
(3)添加剤(吸水性化合物)
・ポリエチレングリコール[ライオン株式会社製、PEG#300]
・グリセリン[ライオン株式会社製、精製グリセリンD]
(4)発泡剤
・二酸化炭素[エア・ウォーター株式会社製]
(5)分散剤
・カオリン[BASF製、ASP−170]
・第三リン酸カルシウム[太平化学産業株式会社製]
(6)分散助剤
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム[花王株式会社製、ネオペレックスG−15]
(7)pH調整剤
・硫酸アルミニウム[和光純薬株式会社製](酸性物質)
・クエン酸[和光純薬株式会社製](酸性物質)
・酢酸アンモニウム[和光純薬株式会社製](酸性物質)
・炭酸水素ナトリウム[和光純薬株式会社製](塩基性物質)。
(8)気泡核剤
・タルク[林化成株式会社製、タルカンパウダーPK−S]
実施例および比較例における評価は、下記の方法で行った。
(分散安定性)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するときのポリプロピレン系樹脂粒子の分散安定性について、下記の基準で判断した。
◎:ポリプロピレン系樹脂粒子同士が塊化することなく、ポリプロピレン系樹脂粒子の発泡が完了し、発泡前のポリプロピレン系樹脂の量に対する、発泡後の缶内に残存したポリプロピレン系樹脂の量の割合が0%以上0.2%未満である。
○:ポリプロピレン系樹脂粒子同士が塊化することなく、ポリプロピレン系樹脂粒子の発泡が完了し、発泡前のポリプロピレン系樹脂の量に対する、発泡後の缶内に残存したポリプロピレン系樹脂の量の割合が0.2%以上〜2.0%未満である。
△:ポリプロピレン系樹脂粒子同士が塊化することなく、ポリプロピレン系樹脂粒子の発泡が完了し、発泡前のポリプロピレン系樹脂の量に対する、発泡後の缶内に残存したポリプロピレン系樹脂の量の割合が2.0%以上〜5.0%未満である。
×:以下の(a)または(b):(a)分散不安定で缶内にてポリプロピレン系樹脂粒子同士が塊化してしまい、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が得られない;(b)ポリプロピレン系樹脂粒子同士が塊化することなく、ポリプロピレン系樹脂粒子の発泡が完了するが、発泡前のポリプロピレン系樹脂の量に対する、発泡後の缶内に残存したポリプロピレン系樹脂の量の割合が5.0%以上である。
なお、以下も同様であるが、◎は非常に良好であることを示し、○は良好であることを示し、△は許容範囲内であることを示し、×は不良であることを示している。
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のDSC比(高温熱量比))
示差走査熱量計DSC[セイコーインスツルメンツ(株)製:DSC6200型]を用いて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子5〜6mgを10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温してDSC曲線を得た。得られたDSC曲線の一例を図1に示す。得られたDSC曲線は、低温側融点に基づく融解ピーク熱量であるQl(J/g)、および、高温側融点に基づく融解ピーク熱量であるQh(J/g)と、2つの融解ピークを示している。前述した式((Qh/(Ql+Qh))×100(%))により、高温側融点に基づく融解ピーク熱量の融解ピーク全体熱量に対する比率(すなわちDSC比)を求めた。融解ピーク熱量QlおよびQhの詳細については、前述の通りである。
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径)
得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡膜(セル膜)が破壊されないように充分注意して、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のほぼ中央を切断した。次に、当該切断面をマイクロスコープ[キーエンス製:VHXデジタルマイクロスコープ]を用いて観察し、観察写真を取得した。観察写真において、表層部を除く部分に、長さ1000μmに相当する線分を引き、該線分が通る気泡数nを測定し、気泡径を1000/n(μm)の式から算出した。同様の操作を10個のポリプロピレン系樹脂発泡粒子で行い、それぞれ算出した気泡径の平均値を、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径とした。
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率)
嵩体積約50cm3のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の重量w(g)を求めた。また、当該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子をエタノール中に沈めることよって、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の体積v(cm3)を求めた。前記重量w(g)および前記体積v(cm3)、並びに発泡前のポリプロピレン系樹脂組成物の密度d(g/cm3)から、次式により、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率を求めた。なお、ポリプロピレン系樹脂組成物の密度dは、0.9g/cm3であった。また、発泡前のポリプロピレン系樹脂組成物は、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子と同義である。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率=d×v/w。
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の見かけ密度)
広口の10リットル容器にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を静かに、あふれるまで投入した後、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が10Lとなるよう10L容器の口を擦り切った。10L容器に入ったポリプロピレン系樹脂発泡粒子の重量を測定後、容積10Lで除し、見かけ密度を得た。見かけ密度はg/Lの単位で表した。
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連続気泡率)
得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子に対して、空気比較式比重計[東京サイエンス(株)製、モデル1000]を用いて、ASTM D2856−87の手順C(PROSEDURE C)に記載の方法に準拠して、体積Vc(cm3)を測定した。次いで、Vcを測定後のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の全量を、メスシリンダーに入っているエタノール中に沈めた。その後、メスシリンダー中におけるエタノールの位置の上昇量から(すなわち、水没法とも称されるこれらの方法によって)、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の見かけ上の体積Va(cm3)を求めた。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連続気泡率は、下記の式によって算出した。
連続気泡率(%)=(Va−Vc)×100/Va
ここで、実施例20を除き、連続気泡率は二段発泡粒子の連続気泡率である。実施例20に関しては、二段発泡粒子を製造していないため、連続気泡率は一段発泡粒子のものである。しかし便宜上、表3では、二段発泡のビーズ品質の項目にある連続気泡率の欄に、実施例20の一段発泡粒子の連続気泡率を記載しており、(一段)と注釈をつけている。
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面の分散剤の付着量)
前述した方法により、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面における、分散剤の付着量(ppm)を測定した。ここで、実施例20を除き、分散剤の付着量は二段発泡粒子の分散剤の付着量である。実施例20に関しては、二段発泡粒子を製造していないため、分散剤の付着量は一段発泡粒子のものである。しかし便宜上、表3では、二段発泡のビーズ品質の項目にある分散剤の付着量に、実施例20の一段発泡粒子の分散剤の付着量を記載しており、(一段)と注釈をつけている。
(ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(板状)の見かけ密度)
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(板状)の長さ、幅、および厚みを、測定し、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(板状)の体積を算出した。その後、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(板状)の重量を測定し、当該重量を、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(板状)の体積で除し、見かけ密度を得た。見かけ密度はg/Lの単位で表した。
(ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(板状)の融着性)
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(板状)(厚み50mm)の長さ方向および幅方向の中央に、深さ10mm(換言すれば、厚み方向に10mm)の切込みを入れ、切込みに沿ってポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を割った。破断面を観察し、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(板状)の融着性を、以下の基準で評価した。
○:発泡粒子の破断している割合が60%以上
×:発泡粒子の破断している割合が60%未満。
(ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(箱状)の成形1時間後の変形量)
図2および図3に示す、箱状のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(箱状)の成形から1時間経過後に、変形量(c−b)(y方向端部におけるx方向の長さと、y方向中央におけるx方向の長さとの差)を測定し、以下の基準で評価した。前記変形量は、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形直後の変形の程度を示すものである。
◎:変形量が0mm以上3mm未満
○:変形量が3mm以上6mm未満
△:変形量が6mm以上10mm未満
×:変形量が10mm以上。
(設備腐食性)
耐圧容器に供給された、発泡剤を含む分散液100mLを採取し、鉄板(5cm×5cm×3mm)を採取した分散液に浸した。分散液に浸してから7日経過後の鉄板の外観を観察し、下記の判定にて設備腐食性を判断した。
○:鉄板に錆が発生していない
×:鉄板に錆が発生している。
(金型汚染性)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を使用して、連続1000ショット(すなわち1000回)の型内発泡成形を行った。その後、金型のコアベント(蒸気穴とも称する)を観察し、下記の判定にて金型汚染性を判断した。
○:コアベントに詰まりが無い
×:コアベントに詰まりが少しでも発生している。
<実施例1〜20、比較例1〜16、参考例1〜7>
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]
以下の(a)および(b)を混合し、混合物を得た:(a)表1〜表6に示す、種類および重量部のポリプロピレン系樹脂、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステル、脂肪族ジエタノールアミン、および添加剤;並びに(b)タルク0.05重量部。当該混合物を、50mmφの押出機で混練(樹脂温度210℃)し、混練物を得た。当該混練物を、押出機先端からストランド状に押出した後、押出された混練物をカッティングすることにより造粒し、ポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。ここで、表4に記載のように、比較例8はポリプロピレン系樹脂粒子の製造を中止した。また、表5に記載のように、比較例12〜14は、ポリプロピレン系樹脂粒子を製造できなかった。
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の作製]
ポリプロピレン系樹脂粒子を製造できた実施例、比較例および参考例について、以下の方法によりポリプロピレン系樹脂発泡粒子を作製した。300Lの耐圧容器に、(a)分散液(水、作製したポリプロピレン系樹脂粒子、および、分散剤としてカオリンもしくは第三リン酸カルシウム、必要に応じてpH調整剤を、を、表1〜6に示す重量部(水100重量部を基準とする)含み、さらに分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.06重量部含む)を仕込み、さらに(b)二酸化炭素2.6重量部を仕込んだ。発泡剤(二酸化炭素)を含む分散液を撹拌しながら、耐圧容器内の温度および圧力を、表1〜6に示す所定の発泡温度(耐圧容器内温度)および所定の発泡圧力(耐圧容器内圧、ゲージ圧)まで、昇温および昇圧を行った。耐圧容器内の温度および圧力が所定の発泡温度および発泡圧力に達した後、さらに30分間、耐圧容器内の温度および圧力を所定の発泡温度および発泡圧力で保持した。その後、二酸化炭素を供給することにより、耐圧容器内の発泡圧力を所定の発泡圧力に保持しながら、耐圧容器の下部に設けられた直径3mmφオリフィスを通して分散液を大気圧下に放出し、ポリプロピレン系樹脂の一段発泡粒子を得た。その後、ポリプロピレン系樹脂の一段発泡粒子を75℃で24時間乾燥した。ここで、比較例4〜6については、一段発泡粒子を作製した後、得られた一段発泡粒子に水を噴霧することによって、一段発泡粒子を洗浄した。この洗浄は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に付着した第三リン酸カルシウムを除去するためである。
さらに、一段発泡粒子が得られた実施例、比較例および参考例(但し、実施例20を除く)について、以下、順に(1)〜(4)の方法により、ポリプロピレン系樹脂の二段発泡粒子を得た:(1)得られた一段発泡粒子のそれぞれを、1m3の耐圧容器に供給した;(2)供給した一段発泡粒子に、表1に記載の内圧を、空気加圧により付与した;(3)次いで一段発泡粒子を二段発泡機に移送した;(4)その後、表1に記載の加熱蒸気圧となる水蒸気で加熱して更に発泡させ、二段発泡粒子を得た。
[ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(板状)の作製](融着性、設備腐食性、金型汚染性の評価のため)
次に、ポリプロピレン系樹脂の二段発泡粒子を用いて(実施例1〜19、比較例1〜7、9〜11、15、16、および参考例1〜7)、または、ポリプロピレン系樹脂の一段発泡粒子を用いて(実施例20)、以下の方法によって、板状のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を作製した。(i)二段発泡粒子または一段発泡粒子に0.20MPaの内圧を付与した上で、長さ400mm×幅300mm×厚み50mmの金型に充填した。ここで、充填方法としては、前述した(A)の方法を採用し、参考例7以外についてはクラッキング量を5mmとし、参考例7についてはクラッキング量を2mmとした。(ii)充填後、0.32MPa(ゲージ圧)の水蒸気にて二段発泡粒子または一段発泡粒子を加熱した。(iii)当該加熱により二段発泡粒子または一段発泡粒子同士を融着させることによって、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。(iv)得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を金型から取り出した。前記(i)〜(iv)を連続で1000ショット(1000回)実施した。
[ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(箱状)の作製](成形後の変形量の評価のため)
次に、ポリプロピレン系樹脂の二段発泡粒子を用いて(実施例1〜19、比較例1〜7、9〜11、15、16、および参考例1〜7)、または、ポリプロピレン系樹脂の一段発泡粒子を用いて(実施例20)、以下の方法によって、箱状のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を作製した。(i)二段発泡粒子または一段発泡粒子に0.20MPaの内圧を付与した上で、図2および図3に示す箱状のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を提供し得る金型に充填した。ここで、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の設計上の外形寸法は、c×d×e=353mm×327mm×180mm、f=135mm、g=122mm、およびh=70mmとした。また、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の突出部(図2の突出部2)の寸法は、x方向の長さ×y方向の長さ×z方向の長さ=5mm×103mm×153mmとした。
実施例1〜20では、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法によって、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造した。具体的には、(a)二酸化炭素を含む発泡剤を使用し、(b)特定のpHの範囲内であり、かつ、特定の分散剤を含む分散液を使用し、(c)脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸ジエタノールアミンをポリプロピレン系樹脂100重量部に対して特定量使用した。その結果、(a)耐圧容器内の分散液中のポリプロピレン系樹脂粒子の分散が安定した状態で、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができ、(b)設備腐食が発生せず、(c)更に得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を使用した型内発泡成形後に、金型汚染が発生していないことが分かる。さらに、実施例1〜20では、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸ジエタノールアミンが使用されている。その結果、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、成形直後の変形が抑制されている、換言すれば成形直後の変形抑制が良好であることが分かる。
比較例1〜3においては脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸ジエタノールアミンが使用されていない。その結果、分散液のpHが設備腐食の発生しない範囲(すなわち、中性付近)であるとき、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するときの、分散液中のポリプロピレン系樹脂粒子の分散状態が不安定になることが分かる。さらに、比較例1〜3では、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンが使用されていない。その結果、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、成形直後の変形が顕著であることが分かる。
比較例4〜7においては、分散剤としてケイ酸塩であるカオリンを使用せず第三リン酸カルシウムを使用した。その結果、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンの有無に関わらず、(a)設備腐食の発生しない範囲のpHを有する分散液において、ポリプロピレン系樹脂粒子の分散が安定した状態で、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることが可能であるが、(b)金型汚染が発生することが分かる。また、(a)前述したように一段発泡粒子を洗浄した比較例4〜6においては、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、融着性は良好であるが、(b)一段発泡粒子を洗浄していない比較例7においては、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、融着性が不良となることが分かる。また、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンが使用されている比較例5および6では、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、成形直後の変形が抑制されていることが分かる。一方、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンが使用されていない比較例4、並びに、一段発泡粒子を洗浄していない比較例7では、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、成形直後の変形が顕著であることが分かる。
比較例8においては、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンの使用量の合計量が本製造方法で規定される範囲を超えている。その結果、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造において、ポリプロピレン系樹脂組成物を含む溶融混練物の押出が不安定となりポリプロピレン系樹脂粒子を得ることが困難であることが分かる。
比較例9〜11においては、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンの使用量の合計量が本製造方法で規定される範囲よりも少ない。その結果、(a)分散液中のポリプロピレン系樹脂粒子の分散状態が不安定になること、および(b)最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、成形直後の変形が顕著であることが分かる。
比較例12〜14においては、ケイ酸塩(具体的にはカオリン)の使用量が本製造方法で規定される範囲よりも少ない。その結果、分散液中のポリプロピレン系樹脂粒子の分散状態が著しく悪化することが分かる。結果として、耐圧容器中にポリプロピレン系樹脂粒子の塊が残存してポリプロピレン系樹脂発泡粒子が製造できなかった。
比較例15においては、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンを使用することなく、ヒンダードアミン系化合物を使用している。その結果、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、成形直後の変形が顕著であることが分かる。
比較例16においては、(a)脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンを使用しておらず、かつ、(b)二段発泡粒子および最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の見かけ密度が、前述した好ましい範囲の値を超えている。その結果、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、成形直後の変形が抑制されていることが分かる。
参考例1、2においては、分散液のpHが本製造方法で規定される範囲から、酸性側に外れて調整されている。その結果、(a)脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸ジエタノールアミンを使用することなく、耐圧容器内の分散液中のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の分散が安定した状態で、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることが可能であるが、(b)設備腐食性が不良であることが分かる。また、参考例1、2にでは、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸ジエタノールアミンが使用されていない。その結果、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、成形直後の変形が顕著であることが分かる。
参考例3〜5においては、ケイ酸塩、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンを使用している。その結果、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子および得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、本発明の一実施形態の範囲内である。しかしながら、参考例3〜5においては、ケイ酸塩(具体的にはカオリン)の使用量が本製造方法で規定される範囲を超えている。そのため、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に付着したケイ酸塩の量が前述した好ましい範囲の値を超えている。その結果、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、(a)融着性が不良となり、(b)成形直後の変形が顕著であることが分かる。
参考例6においては、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンの使用量の合計量が本製造方法で規定される範囲内である。その結果、(a)分散液中のポリプロピレン系樹脂粒子の分散が安定しており、(b)得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子および得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、本発明の一実施形態の範囲内であり、さらに、(c)最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、成形直後の変形が抑制されていることが分かる。しかしながら、参考例6においては、分散液のpHが本製造方法で規定される範囲から、酸性側に外れている。その結果、設備腐食性が不良であることがわかる。
参考例7においては、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンの使用量の合計量が本製造方法で規定される範囲内である。その結果、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、本発明の一実施形態の範囲内である。しかしながら、参考例7においては、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形を行うとき、型内発泡成形時のクラッキング量を2mmとして、本発明の一実施形態の範囲外の見かけ密度を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を作製した。その結果、最終的に得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸ジエタノールアミンの合計含有量が本発明の一実施形態の範囲内であるものの、成形直後の変形が顕著であることが分かる。
実施例1〜20、比較例1〜16、および参考例1〜7において使用した材料および配合量(添加量)、並びに、実施例1〜20、比較例1〜16、および参考例1〜7における各評価結果を、表1〜6に示す。