以下、本発明の分波回路、合波回路、およびチャネライザ中継器の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1において、隣接する2つのビームエリア#1、#2の周波数割り当ての例を示した図である。図1においては、ビームエリア#1の周波数割当て範囲をf1、ビームエリア#2の周波数割当て範囲をf2で示している。
一般に、隣接するビームエリア#1、#2では、干渉回避のために、同一周波数は使用されない。図1(a)は、ビームエリア#1の要求トラフィックが大きい場合を示しており、図1(b)は、ビームエリア#2の要求トラフィックが大きい場合を示している。いずれの場合でも、隣接する2つのビーム間で、同一周波数を同時に使用することは行われない。
また、f1とf2の合計は、ユーザーに割当てられた周波数帯域幅Y[MHz]を超えることはない。本例では、f1とf2の合計帯域幅を、Y[MHz]としている。
本発明は、このような隣接するビームエリアにおいて周波数が重複しないことに着目している。そして、1つの分波回路、あるいは合波回路で、ビームエリア#1で使用する帯域f1と、ビームエリア#2で使用する帯域f2を同時に処理することで、ユーザーリンク側のチャネライザ全体の回路規模の低減、および消費電力の低減を実現することを第1の技術的特徴とする。
なお、このような第1の技術的特徴は、特許文献2も有するといえる。ただし、本発明は、要求トラフィック変動に対して、リアルタイムな帯域割当て変更を実現できる点をさらなる第2の技術的特徴として有している。このような第2の技術的特徴は、特許文献2では実現できないものであり、本発明固有の特徴であり、以降、詳細に説明する。
[チャネライザの小型・低消費電力化の効果]
まず初めに、本発明を用いることで、ユーザーリンク側のチャネライザ回路規模・消費電力が低減される効果が得られることについて、図2を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態1における分波回路(本図中の600、601)と合波回路(本図中の700、701)を用いたチャネライザ中継器の構成例を示した図である。
はじめに、User Link側について説明する。
図2のRx#1〜Rx#Nにおいて、受信アンテナ100、101、102、103によって地上からアナログ信号を受信する。受信されたアナログ信号は、ダウンコンバータ(D/C)200、201、202、203にて周波数変換が行われる。さらに、ダウンコンバート後のアナログ信号は、AD変換器(A/D)400、401、402、403を用いてデジタル信号に変換される。
変換されたデジタル信号は、分波回路部600、601でサブチャネルごとに分波された後、スイッチマトリックス(Switch Matrix)800、801にてサブチャネルの交換が行われる。
ここで、受信アンテナ100から受信される信号は、ビームエリア#1からの信号であり、受信アンテナ101から受信される信号は、ビームエリア#2からの信号である。そして、2つのビームエリア(♯1、♯2)が隣接していることから、先の図1に示したように、干渉回避のため、それぞれの信号には異なる周波数帯が割当てられる。
同様に、受信アンテナ102から受信される信号は、ビームエリア#N−1からの信号であり、受信アンテナ103から受信される信号は、ビームエリア#Nからの信号である。そして、2つのビームエリア(♯N−1、♯N)が隣接していることから、先の図1に示したように、干渉回避のため、それぞれの信号には異なる周波数帯が割当てられる。
Switch Matrix(スイッチマトリックス)800、801は、入力されたサブチャネルをTx#1からTx#Nの各アンテナ104、105、106、107へ振り分ける。そして、合波回路部700、701にて、これらのサブチャネルを合波する。
合波されたデータは、DA変換器(D/A)500、501、502、503を用いてアナログ信号に変換される。さらに、アナログ信号に変換された信号は、アップコンバータ(U/C)300、301、302、303にて送信周波数へ変換され、アンテナ104、105、106、107から地上へ送信される。
次に、Feeder Link側について説明する。
スイッチマトリックス800、801からの信号は、フィーダリンク(F/L)合波回路部900、901により合波され、DA変換器(D/A)504、505を用いてアナログ信号に変換される。
変換されたアナログ信号は、U/C304、305にて送信周波数へ変換される。その後、合成部6にて複数の信号が合成され、フィーダリンク用アンテナ110から地上へ、合波された信号が送信され、フィーダリンク用地上局5にて受信される。
また、制御部1は、地上の管制局4からの指令を、受信アンテナ2を経由して受信する。そして、制御部1は、受信した指令に基づいて、スイッチマトリックス800、801、分波回路部600、601、合波回路部700、701、F/L合波回路部900、901、F/L分波回路部120、121のそれぞれに対して、所望の周波数割当てが実現されるように、各制御信号を出力する。
地上の管制局4は、各ビームに存在する衛星通信端末の発呼要求、通話状態等、衛星通信ネットワークの接続状況を把握している。従って、管制局4は、トラフィック状況に応じて、各ビームエリアにおける使用周波数割当ての変更を行い、新たな周波数割当てによる中継を実現するための設定変更の指令を、制御部1に対して行う。
制御部1は、管制局4から受信した設定変更の指令に基づいて、スイッチマトリックス800、801、分波回路部600、601、合波回路部700、701、F/L合波回路部900、901、F/L分波回路部120、121に対して、各設定を行う。
なお、制御部1と地上の管制局4との通信は、例えば、衛星のテレメトリ/コマンド回線と同一の回線であることが考えられる。
ここで、特許文献1の先行技術を用いる場合には、User Link側の分波回路部600、601は、各ビーム毎に必要であり、図2の例では、N個必要となる。同様に、特許文献1の先行技術を用いる場合には、User Link側の合波回路部900、901も、各ビーム毎に必要であり、図2の例では、N個必要となる。
これに対して。本実施の形態1に係る技術を用いる場合には、2ビーム分の信号処理を実現する分波回路/合波回路によって、図2に示すように、分波回路はN/2個(600、601)、合波回路もN/2個(700、701)で構成することができる。このため、特許文献1の先行技術を用いる場合と比較して、ユーザーリンク側(=各ビームエリア)の分波/合波回路の規模および消費電力を、約半分に減らすことができる。
また、特許文献1の先行技術を用いる場合には、基本的には、ユーザーに割当てられた帯域幅Y[MHz]に対する分波/合波処理が行われる。例えば、図1に示すように、帯域幅Y[MHz]中において、各ビームエリアで割当てられていない未使用帯域(f1、あるいはf2を除く空白の部分)まで含めて、処理が行われる。
よって、分波回路後段のスイッチマトリックス800には、未使用帯域の信号も含めて、もれなく1つの分波回路からスイッチマトリックス800にY[MHz]分の情報が入力されることになる。このため、特許文献1の先行技術は、図2のケースでは、スイッチマトリックス800において、合計N×Y[MHz]の信号帯域を処理することが必要になる。
これに対して、本実施の形態1の分波回路を用いる場合には、2ビーム分の信号帯域から中継に必要な帯域だけを抽出できる。このため、分波回路後段のスイッチマトリックス800には、2ビーム分でY[MHz]、即ち1ビーム約0.5Y[MHz]の信号が入力されることになる。なお、分波数が無限であれば、1ビーム0.5Y[MHz]に近づくこととなるが、以下の説明では、「約0.5Y」のことを、単に「0.5Y」として記載する。
よって、図2のケースでは、スイッチマトリックス800は、合計N×0.5Y[MHz]の信号帯域を処理すればよい。この結果、特許文献1の分波回路を用いる場合と比較すると、本実施の形態1の分波回路を用いることで、スイッチマトリックス800の処理帯域を半分に削減できる。
同様に、本実施の形態1の合波回路を用いる場合には、合波回路前段のスイッチマトリックス部801は、2ビーム分でY[MHz]分の信号を1つの合波回路に出力すればよい。このため、スイッチマトリックス部801は、合計N×0.5Y[MHz]の信号帯域を扱えばよい。よって、特許文献1の合波回路を用いる場合と比較すると、本実施の形態1の合波回路を用いることで、スイッチマトリックス部801の処理帯域も半分に削減できる。
すなわち、本実施の形態1の分波回路、合波回路を用いることで、ユーザーリンク側の分波回路、合波回路全体の回路規模・消費電力を半減させることができるだけでなく、ユーザーリンク側のスイッチマトリックス部の回路規模、消費電力も半減させることができる。
[本発明における分波回路の詳細]
次に、本実施の形態1における分波回路600の詳細について説明する。図3は、本発明の実施の形態1における分波回路600の構成図である。また、図4は、本発明の実施の形態1における図3中に記載の各周波数シフトデシメータ部(180〜182、190〜194、200〜207)の構成例を示す図である。なお、この周波数シフトデシメータ部は、周波数デシメーション回路に相当する。
図4に示すように、周波数シフトデシメータ部は、周波数変換部35、ハーフバンドフィルタ(Half Band Filter:以降、HBFと称する)36、1/2ダウンサンプリングから構成される。
周波数変換部35は、HBF36で抽出すべき信号帯域の中心周波数がベースバンド(0Hz)となるように、入力信号の周波数を変換する。HBF36は、周波数変換された入力信号から所望の信号帯域を抽出する。1/2ダウンサンプリング部37は、HBF36が抽出した信号に対して、そのサンプリング速度を1/2にダウンサンプルする。なお、ダウンサンプリングは、1/2に限定されるものではない。
HBF36の通過帯域幅は、HBF36の動作クロック速度の半分となる。したがって、周波数シフトデシメータ部からは、入力信号の半分のサンプリングレートとなった信号が出力される。なお、図4に例示した構成は、一例であり、使用するフィルタは、HBF36には限定されず、通常のローパスフィルタでもよい。
次に、図3の分波回路600の動作を、後述する図5を併用して説明していく。
分波回路部は、Rx#1とRx#2の中間周波数(IF)信号を入力信号として受信する。そして、受信された中間周波数(IF)信号は、周波数変換部160、161にてベースバンド信号に変換される。なお、本機能は、分波回路の入力信号がすでにベースバンド帯であれば、不要である。
図3中の制御部12は、地上の管制局4から送信される周波数割当てに関するコマンド信号を元に、セレクタ部170、171、172、および各周波数シフトデシメータ部180〜182、190〜194、200〜207の動作を制御する。
この具体的な動作に関しては、後述する。なお、本コマンド信号は、S帯等、別の周波数帯を用いた通信回線を介して、本分波回路部が搭載された衛星に送信される。
図5は、本発明の実施の形態1における図3の構成を備えた分波回路600の第1の動作例を示した図である。図5中、Rx#1、RX#2は、図1と基本的には同じことを示している。すなわち、RX#1は、ビームエリア#1からの信号スペクトラムを示しており、RX#2は、ビームエリア#2からの信号スペクトラムを示している。
また、図1のf1に相当する信号は、網掛けとして示されており、図1のf2に相当する信号は、斜線として示されている。
また、図5中の1−0〜1−6、2−0〜2−6は、各ビーム番号とスペクトラムを示している。より具体的には、N−Mで表記すると、Nは、ビームエリア番号、Mは、周波数番号を意味する。
図5中の411は、図3の周波数変換部160が、ビームエリア#1からの受信信号Rx#1をベースバンド帯に変換した後の信号スペクトラムである。同様に、図5中の412は、図3の周波数変換部161が、ビームエリア#2からの受信信号Rx#2をベースバンド帯に変換した後の信号スペクトラムである。
図3のセレクタ部170は、制御部12からの指令に基づき、{411、412}の2つの信号のいずれかを、後段の3つの周波数シフトデシメータ部{180、181、182}に出力する。よって、セレクタ部170では、いずれか1つの入力信号が2つに複製され、計3つの信号となって後段に出力されることになる。
なお、制御部12からの指令によっては、セレクタ部170内部で複製が行われず、2つの入力信号が、いずれか2つの出力ポートに接続され、残りの1つの出力ポートには未接続となるケースもあり得る。
図5の例では、セレクタ部170は、入力信号411(RX#1)を、周波数シフトデシメータ部180に出力し、入力信号412(RX#2)を、内部で2つに複製後、周波数シフトデシメータ部181、182に出力する。
ここで、各周波数シフトデシメータ部180〜182は、制御部12からの指令に基づき、内部に備わる周波数変換部35の周波数シフト量を任意の値に設定可能な構成有している。本周波数シフト可変機能により、各周波数シフトデシメータ部180〜182は、入力信号に対して、抽出したいターゲット帯域(=入力信号帯域幅の半分)を自由に設定可能となる。
具体的には、各周波数シフトデシメータ部180〜182は、制御部12からの指令によって、入力信号に対して、抽出したいターゲット帯域の中心周波数を、後段のHBF36の中心周波数に合わせるように、周波数シフト量を制御する。
本処理によって、入力信号に対して、抽出したいターゲット帯域(=入力信号帯域の半分)だけがHBF36を通過し、1/2ダウンサンプリング部37で、1/2(↓2)にダウンサンプル処理されて出力される。
図5の例では、周波数シフトデシメータ部180は、制御部12からの指令に基づき、入力信号411(RX#1)に対して左半分(=低い周波数側半分)の帯域を抽出する動作を実現する。この結果、図5中の信号413が抽出される。
同様に、周波数シフトデシメータ部181は、制御部12からの指令に基づき、入力信号412(RX#2)に対して左半分(=低い周波数側半分)の帯域を抽出する動作を実現し、周波数シフトデシメータ部182は、制御部12からの指令に基づき、入力信号412(RX#2)に対して右半分(=高い周波数側半分)の帯域を抽出する動作を実現する。この結果、図5中の信号414、415が抽出される。
次に、図3のセレクタ部171は、制御部12からの指令に基づき、図3の周波数シフトデシメータ部180、181、182を入力とし、内部で3つの入力信号のいくつかを2つに複製後、後段の周波数シフトデシメータ部190、191、192、193、194いずれかに出力する。
図5の例では、セレクタ部171は、入力信号413を周波数シフトデシメータ部190に出力し、入力信号414を、内部で2つに複製後、周波数シフトデシメータ部191、192に出力し、入力信号415を、内部で2つに複製後、周波数シフトデシメータ部193、194に出力する。
周波数シフトデシメータ部190、191、192、193、194は、制御部12からの指令に基づき、入力信号に対して、任意のターゲット帯域(=入力信号帯域幅の半分)を抽出する。
図5の例では、周波数シフトデシメータ部190は、制御部12からの指令に基づき、入力信号413に対して左半分の帯域を抽出する動作を実現する。この結果、図5中の信号416が抽出される。
同様に、周波数シフトデシメータ部191は、入力信号414に対して左半分の帯域を抽出し、周波数シフトデシメータ部192は、入力信号414に対して右半分の帯域を抽出する。この結果、信号417、418が抽出される。
さらに、同様に、周波数シフトデシメータ部193は、入力信号415に対して左半分の帯域を抽出し、周波数シフトデシメータ部194は、入力信号415に対して右半分の帯域を抽出する。この結果、信号419、420が抽出される。
次に、図3のセレクタ部172は、制御部12からの指令に基づき、図3の周波数シフトデシメータ部190、191、192、193、194で抽出された信号を入力とし、内部で5つの入力信号のいくつかを2つに複製後、後段の周波数シフトデシメータ部200、201、202、203、204、205、206、207のいずれかに出力する。
図5の例では、セレクタ部172は、入力信号416を内部で2つに複製後、周波数シフトデシメータ部200、201に出力し、入力信号417を周波数シフトデシメータ部202に出力する。
さらに、セレクタ部172は、入力信号418を周波数シフトデシメータ部203に出力し、入力信号419を内部で2つに複製後、周波数シフトデシメータ部204、205に出力する。
さらに、セレクタ部172は、入力信号420を内部で2つに複製後、周波数シフトデシメータ部206、207に出力する。
周波数シフトデシメータ部200、201、202、203、204、205、206、207は、上述した周波数シフトデシメータ部180〜182、190〜194と同様、制御部12からの指令に基づき、入力信号に対して、任意のターゲット帯域(=入力信号帯域幅の半分)を抽出する。
図5の例では、周波数シフトデシメータ部200は、制御部12からの指令に基づき、入力信号416に対して左半分の帯域を抽出する動作を実現する。この結果、信号421が抽出される。同様に、周波数シフトデシメータ部201は、入力信号416に対して右半分の帯域を抽出し、周波数シフトデシメータ部202は、入力信号417に対して右半分の帯域を抽出する。この結果、信号422、423が抽出される。
さらに、同様に、周波数シフトデシメータ部203は、入力信号418に対して左半分の帯域を抽出し、周波数シフトデシメータ部204は、入力信号419に対して左半分の帯域を抽出する。この結果、信号424、425が抽出される。
さらに、同様に、周波数シフトデシメータ部205は、入力信号419に対して右半分の帯域を抽出し、周波数シフトデシメータ部206は、入力信号420に対して左半分の帯域を抽出し、周波数シフトデシメータ部207は、入力信号420に対して右半分の帯域を抽出する。この結果、信号426、427、428が抽出される。
このようにして抽出された信号[421、422、423、424、425、426、427、428]は、後段の各サブチャネル分波部210〜217に入力され、それぞれがY個のサブチャネルデータに分波される。
ここで、Yの値は、1以上の整数であればどのような値でもよく、一例として、32とすることができる。なお、サブチャネル分波回路における分波処理は、特許文献3に基づくものであってもよいし、特許文献1に基づくものであってもよい。
また、Y=1の場合、分波処理は行われず、特許文献3に記載される「受信チャンネルフィルタ部」だけで構成され、特許文献3と同様の波形整形処理のみが行われる。
また「受信チャンネルフィルタ部」を割愛する構成でもよく、その場合には、後述するサブチャネル合波回路に、特許文献3に記載される「送信チャンネルフィルタ部」を設ける。Y=1の条件で「受信チャンネルフィルタ部」を割愛する場合には、結局、各サブチャネル分波回路は、入力データをそのまま何も処理せずに出力することになる。
これら計8Y個のサブチャネルデータは、例えば、時分割多重されて、後段のスイッチマトリックス800に伝送される。
後段のスイッチマトリックス800は、これらサブチャネルデータの中から、中継すべきサブチャネルデータだけを選択してルーティングし、残りを捨てる処理を行う。Yの値が十分大きい(すなわち、サブチャネル分波回路の分波数が十分大きい)とすると、図5の例では、信号[421、422、423、424、425、426、427、428]の網掛部、斜線部に相当する中継すべき帯域だけが、スイッチマトリックス800で抽出されることになる。
図5の例からも明らかなように、ほとんどが中継すべき帯域(すなわち、網掛部あるいは斜線部の領域)であり、無駄なサブチャネルデータ(すなわち、網掛部でも斜線部でもない部分)がわずかしか残っていないことが判る。
これは、前段の分波回路部600、601の一連の処理で、段階的に中継する必要がない空帯域が捨てられていったことによるものである。従って、本処理によって、前段の分波回路部600、601とスイッチマトリックス800との間のデータ伝送速度が抑制される。その結果、スイッチマトリックス800は、無駄な空き帯域まで中継することなく、スイッチング処理量を低減する効果が得られる。
図6は、本発明の実施の形態1における図3の構成を備えた分波回路600の第2の動作例を示した図である。図6では、先の図5と同一符号を付すとともに、第1の動作例とは別の第2の動作例を示している。図6の第2の動作例と図5の第1の動作例とを比較すると、図6では、Rx#1の使用帯域が図5のケースより少し増え、逆にその分、Rx#2の使用帯域が図5のケースより少し減っていることが判る。
このような図5から図6への移行は、例えば、Rx#1の帯域を割当てているビームエリア#1の要求トラフィックが減り、一方で、Rx#2の帯域を割当てているビームエリア#2の要求トラフィックが増えてきた場合に、地上の管制局4の指令によって行われる。
制御部12は、地上の管制局4の指令に基づいて、分波回路の各セレクタ部170、171、172と各周波数シフトデシメータ部180〜182、190〜194、200〜207の周波数シフト量、およびスイッチマトリックス800を制御する。
図6と図5を比較して異なる点は、図6の信号413a、414a、416a、417a、418a、422a、423a、424a、およびセレクタ部170〜172の接続である。
信号413aに着目すると、RX#1の使用帯域幅の増加に伴い、信号413と比較すると、網掛部分が増えていることが判る。ただし、信号413aと信号413で、ビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは、(1−0、1−1、1−2、1−3)として同じであることが判る。
一方、414aに着目すると、RX#2の使用帯域幅の減少に伴い、信号414と比較すると、斜線部分が減っていることが判る。ただし、信号414aと信号414で、ビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは、(2−0、2−1、2−2、2−3)として同じであることが判る。
また、前段のセレクタ部170の接続状態も変わらない。このため、使用帯域が図5から図6のように増やされた場合でも、すでに図5の時点で本分波回路が中継している信号413、および信号414内の各キャリアは、本分波回路の中を今までと同じように通過する。この結果、信号413a、414aは、本設定変更による影響を受けない。
なお、信号414と信号414aとを比較して、使用帯域幅の減少が発生した分の帯域は、終話等でキャリアが存在しなくなった後で行われるものである。このため、このような使用帯域幅の変更が、各ユーザーの通信の妨げにはならない。
図5から変化がない信号415内を通過する各キャリアも、同様に、前段のセレクタ部170の接続状態が変わらない。このため、使用帯域が図5から図6のように増やされた場合でも、すでに図5の時点で本分波回路が中継している信号415内の各キャリアは、本分波回路の中を今までと同じように通過する。このため、信号415は、本設定変更による影響を受けない。
信号416aも、信号413aと同様、RX#1の使用帯域幅の増加に伴い、信号416と比較すると網掛部分が増えていることが判る。ただし、信号416aと信号416で、ビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは、(1−0、1−1)として同じであることが判る。
また、前段のセレクタ部171の接続状態も変わらない。このため、使用帯域が図5から図6のように増やされた場合でも、すでに図5の時点で本分波回路が中継している信号416内の各キャリアは、本分波回路の中を今までと同じように通過する。この結果、信号416aは、本設定変更による影響を受けない。
信号418aも、信号414と同様、RX#2の使用帯域幅の減少に伴い、信号418と比較すると斜線部分が減っていることが判る。ただし、信号418aと信号418で、ビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは、(2−2、2−3)として同じであることが判る。
また、前段のセレクタ部171の接続状態も変わらない。このため、使用帯域が図5から図6のように減らされた場合でも、すでに図5の時点で本分波回路が中継している信号418内の各キャリアは、終話して消失したキャリアを除き、本分波回路の中を今までと同じように通過する。この結果、信号418aは、本設定変更による影響を受けない。
同様に、図6の信号419、420も、図5の信号419、420と前段のセレクタ部171の接続状態も含めて同じであり、本設定変更による影響を受けない。
ここで、信号417aに着目すると、図5では、信号417に示すように、信号414からの信号{2−0、2−1}が入力されていたが、図6では、信号417aに示すように、信号413aからの信号{1−2、1−3}が入力されていることが判る。
このような入力の切替えは、RX#1の使用帯域幅の増加に伴い、網掛部分が1−0、1−1だけでなく、1−2のブロック内に入ってきた際に行われる。この事象は、RX#2の使用帯域幅の減少に伴い、斜線部分が2−1、2−2、2−3から、2−2、2−3だけになり、2−1が空き帯域となる事象と連動するものである。換言すると、図5の信号417の中に斜線部が無くなり、空き帯域となった後に、入力の切替えが行われることを意味する。
よって、本切替えに伴って、チャネライザで中継中の各キャリアが強制的に切断されるようなことは、緊急時を除き、通常運用では行われない。
次に、セレクタ部172以降の最終段に着目すると、信号422aも、信号416aと同様、RX#1の使用帯域幅の増加に伴い、信号422と比較すると網掛部分が増えていることが判る。また、信号422aと信号422で、ビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは、(1−1)として同じであることが判る。
また、前段のセレクタ部172の接続状態も変わらない。このため、使用帯域が図5から図6のように増やされた場合でも、すでに図5の時点で本分波回路が中継している信号422内の各キャリアは、本分波回路の中を今までと同じように通過する。この結果、信号422aは、本設定変更による影響を受けない。
同様に、信号424aも、RX#2の使用帯域幅の減少に伴い、信号424と比較すると、斜線部分が減っていることが判る。ただし、信号424aと信号424で、ビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは、(2−2)として同じであることが判る。
また、前段のセレクタ部172の接続状態も変わらない。このため、使用帯域が図5から図6のように減らされた場合でも、すでに図5の時点で本分波回路が中継している信号424内の各キャリアは、終話して消失したキャリアを除き、本分波回路の中を今までと同じように通過する。このため、信号424aは、本設定変更による影響を受けない。
同様に、図6の信号421、425、426、427、428も、図5の信号419、420と、前段のセレクタ部の接続状態も含めて同じである。この結果、421、425、426、427、428も、本設定変更による影響を受けない。
ここで、信号423aに着目すると、図5では、信号423に示すように、信号417からの信号{2−1}が入力されていたが、図6では、信号423aに示すように、信号417aからの信号{1−2}が入力されていることが判る。
このような入力の切替えは、信号417aの動作で説明した通り、RX#1の使用帯域幅の増加に伴い、網掛部分が1−0、1−1だけでなく、1−2のブロック内に入ってきた際に行われる。
この事象は、RX#2の使用帯域幅の減少に伴い、斜線部分が2−1、2−2、2−3から、2−2、2−3だけになり、2−1が空き帯域となる事象と連動するものである。換言すると、図5の信号423の中に斜線部が無くなり、空き帯域となった後に、入力の切替えが行われることを意味する。
よって、本切替えに伴って、チャネライザで中継中の各キャリアが強制的に切断されるようなことは、緊急時を除き、通常運用では行われない。
図6のこれらの信号{421、422a、423a、424a、425、426、427、428}は、後段の各サブチャネル分波部210〜217で、それぞれがY個のサブチャネルデータに分波された後、スイッチマトリックス800に入力される。
スイッチマトリックス800は、各サブチャネルデータの中から、中継すべきサブチャネルデータだけを選択してルーティングし、残りを捨てる処理を行う。ここで、図6の場合には、信号{421、422a、423a、424a、425、426、427、428}の網掛部、斜線部に相当する中継すべき帯域だけが、スイッチマトリックス800で抽出されることになる。
以上示した通り、運用中にビームエリア#1と#2の使用帯域幅を図5から図6のように変更した場合でも、本発明の分波回路を適用することで、図5の時点で、すでに本分波回路で中継中の各キャリアは、本分波回路の中を今までと同じように通過する。このため、それらの各キャリアは、本設定変更による影響を受けないことを示した。
これは、すなわち、使用帯域幅を変更する際に、一旦中継している各キャリア信号の通信を停止させる必要がないことを意味している。したがって、本発明の分波回路を適用することで、要求トラフィック変動に対するリアルタイムな帯域割当て変更を実現することが可能となる。
なお、詳細な説明は割愛するが、第3の動作例について、図7を用いて補足説明する。図7は、本発明の実施の形態1における図3の構成を備えた分波回路600の第3の動作例を示した図である。図7では、先の図5、図6と同一符号を付すとともに、第1の動作例および第2の動作例とは別の第3の動作例を示している。
図5の第1の動作例と比較すると、図7では、Rx#1の使用帯域が図5のケースより大幅に増加し、逆にその分、Rx#2の使用帯域が図5のケースより大幅に減っていることがわかる。このような場合においても、前記と同様の処理によって、2ビーム分の同時分波が実現され、通信中の各キャリアへ影響を与えることなく、帯域割り当ての変更が可能であることを、この図7は示している。
図6、図7のケースでも明らかなように、図6の信号421〜428、あるいは図7の信号421、422a〜424a、425〜428のいずれも、ほとんどが中継すべき帯域(網掛部あるいは斜線部)であり、無駄なサブチャネルデータ(=白色の部分=網掛部でも斜線部でもない部分)が僅かしか残っていないことが判る。よって、図6、図7のケースでも、スイッチマトリックス800は、無駄な空き帯域まで中継することなく、スイッチング処理量を低減する効果が得られる。
なお、図3に例示した分波回路の構成は、一例である。分波回路への入力信号は、2つ以上であれば、いくつでも構わない。また、図3においては、セレクタが、170、171、172の計3段で構成される場合について説明した。しかしながら、本実施の形態1に係るセレクタは、3段に限るものではなく、1段、2段、4段、5段等の構成も取り得る。
すなわち、本願の分波回路は、セレクタと周波数シフトデシメータ部とを組合せた回路を複数段にわたってツリー型に接続した多段分波回路で構成されることを特徴としており、図3は、この多段分波回路の一例を示したものである。
いずれの構成によっても、未使用の帯域部分からなる出力信号が後段に出力されないように分波処理を実行でき、無駄なサブチャネルデータがわずかしか残っていない信号を分波処理後に得ることができる。なお、補足説明すると、「未使用の帯域部分からなる出力信号が後段に出力されないように」という技術的意味は、未使用の帯域部分からなる出力信号が後段に「完全に」出力されなくなることを意味するものではなく、未使用の帯域部分からなる出力信号が「大幅に低減」されて出力されることを意味するものである。
また、各セレクタ部170、171、172と周波数シフトデシメータ部180、181、182、190、191、192、193、194、200、201、202、203、204、205、206、207の周波数シフトの制御を行う制御部12は、あらかじめ地上の管制局から通知された情報に基づいて行うことが望ましい。ただし、衛星が、例えば、各サブチャネル信号の受信電力を測定し、その測定結果から、f1とf2の使用帯域を判断し、判断した結果から、自律的に周波数割当ての変更制御を行ってもよい。
[本発明における合波回路の詳細]
次に、本実施の形態1における合波回路700の詳細について説明する。図8は、本発明の実施の形態1における合波回路700の構成図である。
各サブチャネル合波部290、291、292、293、294、295、296、297は、前段のスイッチマトリックス801よりサブチャネルデータを受信し、それぞれが、Z個のサブチャネルデータを合波する。
ここで、Zの値は、1以上の整数であれば、どのような値でもよく、一例として、32とすることができる。なお、サブチャネル合波回路における合波処理は、特許文献3に基づくものであってもよいし、特許文献1に基づくものであってもよい。ここで、上述したように、「受信チャンネルフィルタ部」を分波回路側で割愛する構成の場合には、各サブチャネル合波回路は、特許文献3に記載される「送信チャンネルフィルタ部」を備える構成となる。
また、Y=1の場合、サブチャネル合波部による合波処理は行われず、サブチャネル分波部が「受信チャンネルフィルタ部」を割愛する構成の場合には、特許文献3に記載される「送信チャンネルフィルタ部」だけで構成され、特許文献3と同様の波形整形処理のみが行われる。
インタポレータ周波数シフタ部280〜287は、サブチャネル合波回路290〜297からの出力データのサンプリング速度を2倍に上げて補間する。
セレクタ部252は、サブチャネルを送信する周波数帯域に応じて信号を振り分ける。その後、信号合成部245〜249のそれぞれによって、インタポレータ周波数シフタ部280〜287のうちの2つの出力が合成される。
同様に、後段においても、インタポレータ周波数シフタ部270〜274は、信号合成部245〜249からの出力データのサンプリング速度を2倍に上げて補間する。補完された信号は、Tx#1、Tx#2で送信する周波数帯域に応じて、セレクタ部251によって振り分けられる。振り分けられた信号は、信号合成部242、243、244のそれぞれによって、インタポレータ周波数シフタ部270〜274のうちの2つの出力が合成される。
後段において、インタポレータ周波数シフタ部260、261、262は、信号合成部242〜244からの出力データのサンプリング速度を2倍に上げて補間する。補完された信号は、セレクタ部250にて振り分けられ、信号合成部240、241によって合成された後、周波数変換部230、231によってIF周波数や送信RF周波数などに周波数変換され、出力される。
なお、例示した構成は一例であり、出力信号は3つ以上でもよく、また、合波数も8に限ることはない。また、任意のセレクタ部以前のブロックは、本構成のように回路共用化を行わず、従来の合波処理とすることも可能である。従来の合波処理とした場合には、セレクタ部の複雑化の抑制、実績ある回路の流用等が可能となる。
また、各セレクタとインタポレータ周波数シフタ部の制御は、地上局からあらかじめ通知された情報に基づいて行うことが望ましい。ただし、衛星が使用帯域を判断して、自律的にこれらの制御を行ってもよい。
図9は、本発明の実施の形態1における図8中に記載の各インタポレータ周波数シフタ部(260〜262、270〜274、280〜287)の構成例を示す図である。なお、インタポレータ周波数シフタ部は、周波数インタポレーション回路に相当する。
インタポレータ周波数シフタ部は、周波数変換部38、HBF39、2倍アップサンプリング部40から構成される。2倍アップサンプリング部40は、入力信号を2倍アップサンプリングし、HBF39に信号を入力する。なお、アップサンプリングは、2倍に限定されるものではない。
HBF39は、アップサンプリングされた入力信号からイメージ成分を除去し、所望の信号帯域を抽出する。周波数変換部38は、次段で使用する周波数へ信号を変換し、出力する。なお、図9に示した構成は、一例であり、使用するフィルタは、HBF39には限定されず、通常のローパスフィルタでもよい。
次に、図8に示す合波回路700の動作を、図10を併用して説明していく。
図10は、本発明の実施の形態1における図8の構成を備えた合波回路700の第1の動作例を示した図である。この図10は、図8の構成にて合波を行った際の、合波回路700でのセレクタ部(250、251、252)による対象帯域のセレクト処理の切り替えを示したものである。
図10に示す第1の動作例では、スイッチマトリックス801から合計8×Y個のサブチャネルデータが合波回路700に入力される。ここで、Yの値は、1以上の整数であればどのような値でもよく、一例として、32とすることができる。
スイッチマトリックス801は、各サブチャネルデータの中から中継すべきサブチャネルデータを選択してルーティングする。このため、図10においては、信号441、442、443、444、445、446、447、448の網掛部、斜線部に相当する中継すべき帯域が、スイッチマトリックス801から入力されることになる。
ここで、8つのうち2つの信号(1−0、1−1)は、Tx#1から出力したい信号である。一方、残り6つの信号(2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6)は、Tx#2から出力したい信号となっている。これらの信号は、スイッチマトリックス801から入力され、インタポレータ周波数シフタ部(280、281、282、283、284、285、286、287)においてアップサンプリングが行われた後、セレクタ部252に出力される。
ここで、インタポレータ周波数シフタ部280〜287は、2倍アップサンプリングによって生じたイメージ成分を、HBF39によって除去して、入力データを2倍補間した後、制御部30からの指令に基づき、内部に備わる周波数変換部38のシフト量を任意の値に設定可能な構成としている。インタポレータ周波数シフタ部280〜287は、このような周波数シフト可変機能により、出力信号の中心周波数を任意の値に設定可能となる。
具体的には、インタポレータ周波数シフタ部280〜287は、後段の信号合成部(245、246、247、248、249)において、周波数軸上で連続した1つのスペクトラム信号として合成可能となるように、制御部30からの指令によって、入力信号に対して抽出したいターゲット帯域の中心周波数のシフト量を制御する。
ここで、インタポレータ周波数シフタ部280〜287の出力は、必ずしも他の信号と合成されるとは限らず、そのまま合成されずに出力されることもある。このような制御は、セレクタ部252によって行われる。
セレクタ部252に動作の詳細について、図10を用いて説明する。図10の例では、インタポレータ周波数シフタ部(280、281、282、283、284、285、286、287)によって、信号1−0は、左側(=低い周波数側)にシフトされ、1−1は、右側(=高い周波数側)、2−1は、右側(=高い周波数側)、2−2は、左側(=低い周波数側)、2−3は、左側(=低い周波数側)、2−4は、右側(=高い周波数側)、2−5は、左側(=低い周波数側)、2−6は、右側(=高い周波数側)へそれぞれシフトされながら、2倍補間される。これらの周波数シフト制御は、制御部30からの指令に基づき行われる。
信号合成部(245、246、247、248、249)は、これらの信号の一部を合成し、合波信号(436、437、438、439、440)として出力する。
具体的には、信号合成部245は、インタポレータ周波数シフタ部280と、インタポレータ周波数シフタ部281の各出力を合成、信号合成部248は、インタポレータ周波数シフタ部284と、インタポレータ周波数シフタ部285の各出力を合成、信号合成部249は、インタポレータ周波数シフタ部286と、インタポレータ周波数シフタ部287の各出力を合成する。
それ以外の信号合成部246、247は、合成処理は行わない。具体的には、信号合成部246は、インタポレータ周波数シフタ部282の出力をそのまま通す処理を行い、信号合成部247は、インタポレータ周波数シフタ部283の出力をそのまま通す処理を行う。
このような合成処理および通過処理の制御は、各インタポレータ周波数シフタ部(280、281、282、283、284、285、286、287)と各信号合成部(245、246、247、248、249)の間に位置するセレクタ部252によって行われる。
セレクタ部252は、制御部30からの指令に基づき、各インタポレータ周波数シフタ部(280、281、282、283、284、285、286、287)の入力信号を、各信号合成部(245、246、247、248、249)に接続する動作を行う。また、後段の特定の信号合成部において、合成処理を行わずに、そのままデータを通す制御を行う際には、セレクタ部252は、信号合成部の一方の入力端に対してゼロを出力することで実現する。
次に、インタポレータ周波数シフタ部(270、271、272、273、274)は、図10に示すように、合成された信号(436、437、438、439、440)を入力とする。そして、インタポレータ周波数シフタ部(270、271、272、273、274)は、制御部30からの指令によって、入力信号に対して、任意のターゲット周波数にシフトしながら2倍補間を行う処理を施す。
ここでは、信号436は、左側(=低い周波数側)、信号437は、左側(=低い周波数側)、信号438は、右側(=高い周波数側)、信号439は、左側(=低い周波数側)、信号440は、右側(=高い周波数側)にシフトする。
セレクタ部251は、制御部30からの指令に基づき、インタポレータ周波数シフタ部(270、271、272、273、274)からの出力信号を信号合成部(242、243、244)いずれかに出力する。セレクタ部251は、セレクタ部252と同様、後段の特定の信号合成部において合成処理を行わずに、そのままデータを通す制御を行う際には、信号合成部の一方の入力端に対して、ゼロを出力する。
このようなセレクタ部251の動作によって、信号合成部(242、243、244)は、図10に示す信号(433、434、435)を出力する。具体的には、信号合成部243は、インタポレータ周波数シフタ部271と、インタポレータ周波数シフタ部272の各出力を合成し、信号合成部244は、インタポレータ周波数シフタ部273と、インタポレータ周波数シフタ部274の各出力を合成する。
一方、信号合成部242は、合成処理は行わず、インタポレータ周波数シフタ部270の出力をそのまま通す処理を行う。
次に、インタポレータ周波数シフタ部(260、261、262)は、図10に示すように、合成された信号(433、434、435)を入力とする。そして、インタポレータ周波数シフタ部(260、261、262)は、制御部30からの指令によって、入力信号に対して、任意のターゲット周波数にシフトしながら2倍補間を行う処理を施す。
ここでは、信号433は、左側(=低い周波数側)、信号434は、左側(=低い周波数側)、信号435は、右側(=高い周波数側)にシフトする。
セレクタ部250は、制御部30からの指令に基づき、インタポレータ周波数シフタ部(260、261、262)からの出力信号を信号合成部(240、241)のいずれかに出力する。セレクタ部250は、セレクタ部252と同様、後段の特定の信号合成部において合成処理を行わずに、そのままデータを通す制御を行う際には、信号合成部の一方の入力端に対して、ゼロを出力する。
このようなセレクタ部250の動作によって、信号合成部(240、241)は、図10に示す信号(431、432)を出力する。具体的には、信号合成部241は、インタポレータ周波数シフタ部261と、インタポレータ周波数シフタ部262の各出力を合成する。
一方、信号合成部240は、合成処理は行わず、インタポレータ周波数シフタ部260の出力をそのまま通す処理を行う。
信号合成部(240、241)から出力された信号(431、432)は、周波数変換部230、231によって、例えば、IF周波数に変換されて合波回路部700より出力される。なお、周波数変換部230、231は、合波回路の出力信号のインタフェースがベースバンド帯で規定される場合には、不要である。
図11は、本発明の実施の形態1における図8の構成を備えた合波回路700の第2の動作例を示した図である。図10と同一符号を付した図11は、図8の構成にて合波を行った際の、合波回路700でのセレクタ部(250、251、252)による対象帯域のセレクト処理の切り替えを示したものである。
図11は、図10に比べて、Tx#1の帯域(網掛部分)が増加しており、その分、Tx#2の帯域(斜線部分)が減少していることがわかる。例えば、Tx#1への送信要求トラフィックが増加し、一方で、Tx#2への送信要求トラヒックが減少している場合に、このように、図10の状態から図11の状態へと帯域の割り当てを変更することになる。
この変更は、地上の管制局4の指令によって行われ、制御部30は、地上の管制局4の指令に基づいて、合波回路部700の各セレクタ部(250、251、252)、各インタポレータ周波数シフタ部の周波数シフト量およびスイッチマトリックス800を制御する。
図11の場合も、本発明の合波回路の基本的な処理は、図10と同じであるが、異なる点もある。そこで、以降、図10との差異を中心に説明していく。
図11において信号{441a、442a、443a、444a、445、446、447、448}は、前段の各サブチャネル合波部290〜297で、Y個のサブチャネルデータが合波されたものである。スイッチマトリックス部801の接続制御により、図10の信号443のTX#2宛ての信号(一部斜線の信号)が、図11では、信号443aのTX#1宛ての信号(一部網掛けの信号)に置き換わっていることが判る。
ここで、図10、図11いずれのケースでも明らかなように、図10の信号441〜448、あるいは図11の信号441a〜444a、445〜448のいずれも、ほとんどが中継すべき帯域(網掛部あるいは斜線部)であり、無駄なサブチャネルデータ(すなわち、白色の部分=網掛部でも斜線部でもない部分)がわずかしか残っていないことが判る。よって、図10、図11いずれのケースでも、スイッチマトリックス801は、無駄な空き帯域まで中継することなく、スイッチング処理量を低減する効果が得られる。
信号433aに着目すると、Tx#1の使用帯域の増加に伴い、信号433と比較すると、網掛部分が増加していることがわかる。ただし、信号433aと信号433で、ビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは、(1−0、1−1、1−2、1−3)として同じであることがわかる。
また、信号434aに着目すると、Tx#2の使用帯域の減少に伴い、信号434と比較すると、斜線部分が減っている事がわかる。ただし、同様に、信号434aと信号434とで、ビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは、(2−0、2−1、2−2、空き帯域)として同じであることがわかる。
また、セレクタ部250の接続も変わらない。このため、使用帯域が図10から図11のように変化した場合でも、信号433a、434a内のキャリアは、本合波回路の中を今までと同じように通過するため、帯域割当量の変更による影響を受けない。
438aも、434aと同様に、Tx#2の使用帯域幅の減少に伴い、信号438と比較すると斜線部分が減少していることがわかる。ただし、信号438aと信号438とで、ビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは、(2−2、空き帯域)として同じであることがわかる。
また、セレクタ部251の状態も変わらない。このため、使用帯域が図10から図11のように減少した場合でも、終話などによって消滅したキャリアを除き、信号438a内のキャリアは、本合波回路を今までと同じように通過するため、本設定変更による影響を受けない。
同様に、図11の信号439、信号440も、図10の信号439、信号440とセレクタの接続状態を含めて同じであり、本設定による影響を受けない。
ここで、信号437aに着目すると、図10では、信号437に示すように、信号443からの信号を右側(=高い周波数)へシフトし、信号434へ出力するための合波部へ出力されていた。これに対して、図11では、信号437aに示すように、信号443aからの信号を左側(=低い周波数)へシフトし、信号433aへ出力するための合波部に出力されている。
出力先の切り替えは、セレクタ部251によって行われる。このような切り替えは、帯域幅の変更により、網掛部分が1−0、1−1だけではなく、1−2のブロック内に入ってきた際に行われる。このような切り替えは、Tx#2に割り当てていた2−1が空き帯域になった後に行われるべき切り替えである。従って、本切り替えによってチャネライザで中継中の各キャリアの通信が強制的に切断されるようなことは、緊急時を除き、通常運用では行われない。
信号441a、442a、444a、445、446、447、448については、図10と図11でビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは同じである。したがって、これらの信号は、セレクタ部252の切り替え先も含めて、本合波回路部の中を今までと同じように通過するため、本設定変更による影響を受けない。
同様に、信号436a、438a、439、440についても、図10と図11でビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは同じである。したがって、これらの信号は、セレクタ部251の切り替え先も含めて、本合波回路部の中を今までと同じように通過するため、本設定変更による影響を受けない。
ここで、信号438aについては、使用帯域が減少しているが、信号経路に変更があるわけではない。このため、信号438aは、本設定変更による影響がないことがわかる。
さらに、同様に、信号433a、434a、435、431、432も、図10と図11でビームエリア番号(N)、周波数番号(M)の並びは同じである。したがって、これらの信号は、セレクタ部250の切り替え先も含めて、本合波回路部の中を今までと同じように通過するため、本設定変更による影響を受けない。
以上、示した通り、運用中にTx#1とTx#2の使用帯域幅を図10から図11のように変更した場合においても、本発明の合波回路を適用することで、図10の時点ですでに合波回路部で中継中の各キャリアは、本合波回路部の中を変更前と同様に通過する。このため、本実施の形態1における合波回路は、設定変更による影響を受けないことを示した。
これは、すなわち、使用帯域幅を変更する際に、一旦中継しているキャリア信号の通信を停止させる必要がないことを意味している。したがって、前述した本発明の分波回路部と合わせて、本発明の合波回路を適用することで、要求トラヒック変動に対するリアルタイムな帯域割り当て変更を実現することが可能となる。
なお、詳細な説明は割愛するが、第3の動作例について、図12を用いて補足説明する。図12は、本発明の実施の形態1における図8の構成を備えた合波回路700の第3の動作例を示した図である。図12では、先の図10、図11と同一符号を付すとともに、第1の動作例および第2の動作例とは別の第3の動作例を示している。
図10の第1の動作例と比較すると、図12では、Tx#1の使用帯域が大幅に増加しており、Tx#2の使用帯域が大幅に減少していることがわかる。このような場合においても、前記と同様の処理によって、2ビーム分の合波処理が実現され、通信中の各キャリアへ影響を与えることなく、帯域割り当ての変更が可能であることを、この図12は示している。
なお、図8に例示した合波回路の構成は、一例である。合波回路への入力信号は、2つ以上であれば、いくつでも構わない。また、図8においては、セレクタが、250、251、252の計3段で構成される場合について説明した。しかしながら、本実施の形態1に係るセレクタは、3段に限るものではなく、1段、2段、4段、5段等の構成も取り得る。
すなわち、本願の合波回路は、インタポレータ周波数シフタ部とセレクタとを組合せた回路を複数段にわたってトーナメント型に接続した多段合波回路で構成されることを特徴としており、図8は、この多段合波回路の一例を示したものである。
いずれの構成によっても、少なくとも使用帯域を一部に含む合波前の複数の信号を入力として合波処理を実行でき、通信中の各キャリアへ影響を与えることなく、帯域割り当ての変更が可能となる。
また、制御部30は、あらかじめ地上の管制局から通知された情報に基づいて行うことが望ましい。ただし、衛星が、例えば、各サブチャネル信号の受信電力を測定し、その測定結果から、f1とf2の使用帯域を判断し、判断した結果から、自律的に周波数割当ての変更制御を行ってもよい。