JPWO2018159671A1 - 静電荷像現像用正帯電性トナー及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

印字耐久性、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも優れる静電荷像現像用正帯電性トナーを提供する。結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子と、外添剤とを含有する静電荷像現像用正帯電性トナーにおいて、前記外添剤が球形シリカ粒子を含み、前記球形シリカ粒子の個数平均粒径が70〜200nmであり、かつ、前記外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であることを特徴とする静電荷像現像用正帯電性トナー。

Description

本開示は、電子写真法、静電記録法、及び静電印刷法等において静電潜像を現像するために用いられる静電荷像現像用正帯電性トナー(以下、単に「正帯電性トナー」又は「トナー」と称することがある。)に関する。
従来、一般的な電子写真法に用いられるトナーにおいては、着色樹脂粒子表面に外添剤を付着させることにより、所望の帯電性や流動性が得られている。外添剤としては、無機物、又は有機物を含む微粒子が広く一般的に使用されている。このような外添剤としては、従来から金属酸化物粒子や樹脂粒子、及びこれらを表面処理した物等が広く利用されてきた。中でもシリカ、チタニア、アルミナ、酸化亜鉛等の金属酸化物の粒子や脂肪酸金属塩の粒子、及びこれらを疎水化処理した物が用いられている。
例えば、特許文献1には、トナー補給時にも帯電性や流動性等のトナー特性を維持することを目的として、個数平均一次粒径が30〜80nmであり、摩擦帯電量が−50〜+300μC/gであり、さらに環状シラザンで表面処理された球形コロイダルシリカ微粒子等を含む静電荷像現像用正帯電性トナーが開示されている。
特許文献2には、カブリの発生が少なく、かつクリーニング性に優れるトナーの提供を目的として、Dv50/Dv10が1.8以上であり、体積平均粒径が0.1〜1.0μmであり、球形度が1〜1.3であるシリカ微粒子(A)等を用いるトナーの製造方法が開示されている。
国際公開第2009/044689号 特開2010−217919号公報
しかし、特許文献1に記載のトナーは、併用するフュームドシリカ微粒子の添加量が比較的多いため、印字耐久性に未だ課題を抱えている。また、特許文献2に記載のトナーは、外添剤中に比較的小さな粒径の粒子が多いため、印字耐久性に問題がある。
本開示の課題は、印字耐久性と併せて、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも優れる静電荷像現像用正帯電性トナーを提供することにある。
本研究者らは、個数平均粒径の比較的大きな球形シリカ粒子を用い、かつ外添剤全体でも粒径の大きな粒子の割合を増やすことにより、上述の問題を解決出来ることを見出した。
すなわち本開示の静電荷像現像用正帯電性トナーは、結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子と、外添剤とを含有する静電荷像現像用正帯電性トナーにおいて、前記外添剤が球形シリカ粒子を含み、前記球形シリカ粒子の個数平均粒径が70〜200nmであり、かつ、前記外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であることを特徴とする静電荷像現像用正帯電性トナーである。
本開示においては、前記外添剤の含有量が、前記着色樹脂粒子100質量部に対し、0.5〜5.0質量部であることが好ましい。
本開示においては、前記外添剤として、個数平均粒径が5〜25nmの無機酸化物粒子を含むことが好ましい。
本開示においては、前記無機酸化物粒子の含有量が、前記着色樹脂粒子100質量部に対し、0.01〜0.4質量部であることが好ましい。
本開示の静電荷像現像用正帯電性トナーの製造方法は、結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子を製造する工程、及び前記着色樹脂粒子と外添剤とを混合して攪拌することにより、当該着色樹脂粒子の表面に当該外添剤を付着させる外添工程を含む製造方法であって、
前記外添工程において、前記外添剤として、個数平均粒径が70〜200nmである球形シリカ粒子を含み、かつ、当該外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であるものを用いることを特徴とする。
本開示の製造方法においては、前記外添剤は、個数平均粒径が5〜25nmの無機酸化物粒子を含み、かつ、前記無機酸化物粒子を前記着色樹脂粒子に付着させ、当該無機酸化物粒子の付着した着色樹脂粒子に対しさらに前記球形シリカ粒子を付着させることが好ましい。
上記の如き本開示によれば、従来よりも個数平均粒径の大きい球形シリカ粒子を使用し、かつ粒径の大きい外添剤の割合を従来よりも増やすことにより、印字耐久性、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも優れる静電荷像現像用正帯電性トナーが提供される。
本開示の静電荷像現像用正帯電性トナーは、結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子と、外添剤とを含有する静電荷像現像用正帯電性トナーにおいて、前記外添剤が球形シリカ粒子を含み、前記球形シリカ粒子の個数平均粒径が70〜200nmであり、かつ、前記外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であることを特徴とする。
以下、本開示のトナーについて説明する。本開示のトナーは、結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する。
以下、本開示の着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子を用いた本開示のトナーの製造方法及び本開示のトナーについて、順に説明する。
1.着色樹脂粒子の製造方法
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
上記乳化重合凝集法は、乳化させた重合性単量体を重合し、樹脂微粒子エマルションを得て、着色剤分散液等と凝集させ、着色樹脂粒子を製造する。また、上記溶解懸濁法は、結着樹脂や着色剤等のトナー成分を有機溶媒に溶解又は分散した溶液を水系媒体中で液滴形成し、当該有機溶媒を除去して着色樹脂粒子を製造する方法であり、それぞれ公知の方法を用いることができる。
本開示の着色樹脂粒子は、湿式法、または乾式法を採用して製造することが出来る。湿式法の中でも好ましい懸濁重合法を採用し、以下のようなプロセスにより行われる。
(A)懸濁重合法
(A−1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いる。
本開示で重合性単量体は、重合可能な官能基を有するモノマーのことをいい、重合性単量体が重合して結着樹脂となる。重合性単量体の主成分として、モノビニル単量体を使用することが好ましい。
モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のニトリル化合物;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
これらのうち、モノビニル単量体として、スチレン、スチレン誘導体、及びアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルが、好適に用いられる。
ホットオフセット改善及び保存性改善のために、モノビニル単量体とともに、任意の架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つモノマーのことをいう。
架橋性の重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールに炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N−ジビニルアニリン、及びジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本開示では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で用いることが望ましい。
さらに、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いると、得られるトナーの保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000の反応性の、オリゴマー又はポリマーである。マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」と称することがある。)よりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーは、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部用いることが望ましい。
マクロモノマーとしては、例えば、ポリアクリル酸エステルマクロモノマー、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、ポリアクリロニトリルマクロモノマー、及びシリコーンマクロモノマー、並びにこれらマクロモノマーの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリアクリル酸エステルマクロモノマー及びポリメタクリル酸エステルマクロモノマーを用いることが好ましい。
本開示では、着色剤を用いるが、カラートナーを作製する場合、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタの着色剤を用いることができる。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、及びアントラキノン化合物等の染料及び顔料が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、及び60等が挙げられる。
イエロー着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料、染料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、155、180、181、185、186、213、及び214等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料、染料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントレッド31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、237、238、251、254、255、269及びC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
本開示では、各着色剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。着色剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部である。
定着時におけるトナーの定着ロールからの離型性を改善する観点から、重合性単量体組成物には、離型剤を添加することが好ましい。離型剤としては、一般にトナーの離型剤として用いられるものであれば、特に制限無く用いることができる。
上記離型剤は、エステルワックス及び炭化水素系ワックスの少なくともいずれか1つを含有することが好ましい。これらのワックスを離型剤として使用することにより、低温定着性と保存性とのバランスを好適にすることができる。
本開示において離型剤として好適に用いられるエステルワックスは、例えば、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルステアレート、ステアリルベヘネート等のモノエステル化合物;ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミテート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート等のジペンタエリスリトールエステル化合物;等が挙げられ、中でもモノエステル化合物が好ましい。
本開示において離型剤として好適に用いられる炭化水素系ワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、石油系ワックス等が挙げられ、中でも、フィッシャートロプシュワックス、石油系ワックスが好ましく、石油系ワックスがより好ましい。
炭化水素系ワックスの数平均分子量は、300〜800であることが好ましく、400〜600であることがより好ましい。また、JIS K2235 5.4で測定される炭化水素系ワックスの針入度は、1〜10であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
上記離型剤の他にも、例えば、ホホバ等の天然ワックス;オゾケライト等の鉱物系ワックス;等を用いることができる。
離型剤は、上述した1種又は2種以上のワックスを組み合わせて用いることが好ましい。
上記離型剤は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部用いられ、更に好ましくは1〜20質量部用いられる。
その他の添加物として、トナーの帯電性を向上させるために、正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を用いることができる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、正帯電性トナーを得る観点からは、正帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム含有共重合体、及び4級アンモニウム塩含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸含有共重合体、スルホン酸塩含有共重合体、カルボン酸含有共重合体及びカルボン酸塩含有共重合体等が挙げられる。
本開示では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が0.01質量部以上であれば、カブリ発生のおそれが少ない。また、帯電制御剤の添加量が10質量部以下であれば、印字汚れ発生のおそれが少ない。
その他の添加物として、重合して結着樹脂となる重合性単量体を重合する際に、分子量調整剤を用いることが好ましい。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本開示では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いることが望ましい。
(A−2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
本開示では、少なくとも重合性単量体及び着色剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(太平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化分散機(プライミクス社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩:4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジエチルアセテート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルブタノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、及びt−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができ、印字耐久性も優れることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
有機過酸化物の中でも、開始剤効率がよく、残留する重合性単量体も少なくすることができることから、パーオキシエステルが好ましく、非芳香族パーオキシエステルすなわち芳香環を有しないパーオキシエステルがより好ましい。
重合開始剤は、前記のように、重合性単量体組成物が水系媒体中へ分散された後、液滴形成前に添加されても良いが、水系媒体中へ分散される前の重合性単量体組成物へ添加されても良い。
重合性単量体組成物の重合に用いられる、重合開始剤の添加量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、さらに好ましくは0.3〜15質量部であり、特に好ましくは1〜10質量部である。
本開示において、水系媒体とは、水を主成分とする媒体のことを言う。
本開示において、水系媒体には、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、例えば、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の無機化合物や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機化合物が挙げられる。上記分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記分散安定化剤の中でも、無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドが好ましい。無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることにより、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、また、洗浄後の分散安定化剤残存量を少なくできるため、得られるトナーが画像を鮮明に再現することができ、且つ環境安定性が優れたものとなる。
(A−3)重合工程
上記(A−2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
着色樹脂粒子は、そのまま外添剤を添加して重合トナーとして用いてもよいが、この着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、所謂コアシェル型(又は、「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子とすることが好ましい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点を有する物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
上述した、上記着色樹脂粒子を用いて、コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
シェル用重合性単量体としては、前述の重合性単量体と同様なものが使用できる。その中でも、スチレン、アクリロニトリル、及びメチルメタクリレート等の、Tgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
シェル用重合性単量体の重合に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の、過硫酸金属塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、及び2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の、アゾ系開始剤;等の水溶性重合開始剤を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100質量部に対して、好ましくは、0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
(A−4)洗浄、ろ過、脱水、及び乾燥工程
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
上記の洗浄の方法としては、分散安定化剤として無機化合物を使用した場合、着色樹脂粒子の水分散液への酸、又はアルカリの添加により、分散安定化剤を水に溶解し除去することが好ましい。分散安定化剤として、難水溶性の無機水酸化物のコロイドを使用した場合、酸を添加して、着色樹脂粒子水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸、並びに蟻酸、及び酢酸等の有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
脱水、ろ過の方法は、種々の公知の方法等を用いることができ、特に限定されない。例えば、遠心ろ過法、真空ろ過法、加圧ろ過法等を挙げることができる。また、乾燥の方法も、特に限定されず、種々の方法が使用できる。
(B)粉砕法
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、ヘンシェルミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
なお、粉砕法で用いる結着樹脂及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物は、前述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。また、粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、前述の(A)懸濁重合法により得られる着色樹脂粒子と同じく、in situ重合法等の方法によりコアシェル型の着色樹脂粒子とすることもできる。
結着樹脂としては、他にも、従来からトナーに広く用いられている樹脂を使用することができる。粉砕法で用いられる結着樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂等を例示することができる。
2.着色樹脂粒子
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は、好ましくは4〜12μmであり、より好ましくは5〜10μmであり、さらに好ましくは6〜9μmであり、特に好ましくは6.5〜8.0μmである。Dvが4μm以上であれば、トナーの流動性が高く、優れた転写性を維持でき、高い画像濃度を保つことができる。Dvが12μm以下であれば、画像の解像度を高く維持できる。
また、着色樹脂粒子は、その体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、好ましくは1.0〜1.3であり、更に好ましくは1.0〜1.2である。Dv/Dnが1.3以下であれば、転写性、画像濃度及び解像度をいずれも高く維持できる。着色樹脂粒子の体積平均粒径、及び個数平均粒径は、例えば、粒度分析計(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)等を用いて測定することができる。
本開示の着色樹脂粒子の平均円形度は、画像再現性の観点から、0.96〜1.00であることが好ましく、0.97〜1.00であることがより好ましく、0.98〜1.00であることがさらに好ましい。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96以上であれば、印字の細線再現性が悪化するおそれが少ない。
本開示において、円形度は、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値として定義される。また、本開示における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、着色樹脂粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、平均円形度は着色樹脂粒子が完全な球形の場合に1を示し、着色樹脂粒子の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。
3.トナーの製造方法
本開示においては、上記着色樹脂粒子を、外添剤と共に混合攪拌して外添処理を行うことにより、着色樹脂粒子の表面に、外添剤を付着させて1成分トナー(現像剤)とする。なお、1成分トナーは、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分現像剤としてもよい。
外添剤として用いる球形シリカ粒子の個数平均粒径は70〜200nmであり、好適には75〜150nmであり、さらに好適には80〜120nmである。
球形シリカ粒子の個数平均粒径が70nm以上であれば、球形シリカ粒子同士の凝集や、着色樹脂粒子に対する球形シリカ粒子の埋没等の不具合も少なく、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。一方、球形シリカ粒子の個数平均粒径が、200nm以下であれば、球形シリカ粒子が着色樹脂粒子から遊離(脱離)しにくく、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)をトナー粒子に十分に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
球形シリカ粒子の球形度は、通常1〜1.3であり、好適には1〜1.25であり、より好適には1〜1.20であり、さらに好適には1〜1.18である。
球形シリカ粒子の球形度が1.3以下であれば、帯電立ち上がり性が良好であり、また、帯電量分布を狭く維持でき、初期カブリを抑制でき、初期印字性能に優れ、経時的に安定した帯電性及び流動性をトナー粒子に十分に付与させることができ、多枚数の連続印刷では、細線再現性を維持でき、カブリ等による画質の劣化も少なく、耐久印刷性能に優れる。これらの傾向は、低温低湿や高温高湿などの厳しい環境下においても同様である。
ここで、「球形度」とは、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を、粒子の実質投影面積(Sr)で除した値として定義される。
球形シリカ粒子の球形度(Sc/Sr)は、電子顕微鏡で撮影された球形シリカ粒子の写真を、画像処理解析装置により、Sc及びSrを解析し、球形度(Sc/Sr)を算出し、算術平均して求められる値である。
球形シリカ粒子の製造方法としては、一般に球形度の高いシリカ粒子が得られる方法であれば、特に限定されず、例えば、ゾルゲル法、爆燃法、湿式法、及び溶融法等の方法を採用することができる。これらの方法の中でも、上記外添剤の要件に合致する球形シリカ粒子が得られ易いことから、溶融法、及び湿式法が好ましく、湿式法がより好ましい。また、球形シリカ粒子は、湿式法により得られるコロイダルシリカ粒子であることが好ましい。
球形シリカ粒子は、着色樹脂粒子の表面に好適に付着添加(外添)させる効果を高める観点から、疎水化処理剤によって疎水化処理されたものを用いることが好ましい。疎水化処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、及びシリコーンオイル等を使用することができる。
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等のジシラザン;環状シラザン;トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びビニルトリアセトキシシラン等のアルキルシラン化合物;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物;等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
これらの疎水化処理剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、疎水化処理剤の使用量は、球形シリカ粒子100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましく、10〜30質量部が更に好ましい。
球形シリカ粒子を疎水化処理する方法としては、一般的にシリカ粒子を疎水化処理する方法であれば、特に限定されず、例えば、乾式法、及び湿式法等の方法を採用することができる。
具体的には、乾式法としては球形シリカ粒子を高速で攪拌しながら、疎水化処理剤を滴下または噴霧する方法や、湿式法としては疎水化処理剤を有機溶媒中に溶解させ、当該有機溶媒を攪拌しながら球形シリカ粒子を添加する方法等が挙げられる。
球形シリカ粒子の含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して好適には0.5〜4.5質量部であり、より好適には1.0〜4.0質量部であり、さらに好適には1.5〜3.5質量部である。
球形シリカ粒子の含有量が0.5質量部以上であれば、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)が得られ、トナーの印字性能に優れる。一方、球形シリカ粒子の含有量が4.5質量部以下であれば、帯電立ち上がり性が良好であり、さらに、球形シリカ粒子が着色樹脂粒子から遊離(脱離)しにくいため、経時的に安定した帯電性及び流動性をトナー粒子に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
球形シリカ粒子は、予め調製したものを用いてもよいし、市販品を採用してもよい。
球形シリカ粒子としては、種々の市販品を用いることができ、例えば、電気化学工業社製のUFP−30H(:商品名、個数平均粒径:110nm、球形度:1.13);信越化学工業社製のX−24−9163A(:商品名、個数平均粒径:140nm、球形度:1.12)、及びKMPX100(:商品名、個数平均粒径:100nm、球形度:1.12);等が挙げられる。
外添剤として、個数平均粒径が5〜25nmの無機酸化物粒子をさらに含むことが好ましい。
無機酸化物粒子の個数平均粒径が5nm以上であれば、無機酸化物粒子同士の凝集や、着色樹脂粒子に対する無機酸化物粒子の埋没等の不具合も少なく、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。一方、無機酸化物粒子の個数平均粒径が25nm以下であれば、無機酸化物粒子が着色樹脂粒子から遊離(脱離)しにくく、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)をトナー粒子に十分に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
無機酸化物粒子の個数平均粒径は、7〜20nmであることがより好ましい。
無機酸化物粒子は、着色樹脂粒子の表面に好適に付着添加(外添)させる効果を高める観点から、疎水化処理剤によって疎水化処理されたものを用いることが好ましい。疎水化処理剤としては、球形シリカ粒子の場合と同様の疎水化処理剤を用いることができる。
本開示では、無機酸化物粒子の含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、好適には0.01〜0.6質量部であり、より好適には0.05〜0.4質量部であり、さらに好適には0.1〜0.2質量部である。
本開示において、無機酸化物粒子の含有量が0.01質量部以上であれば、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)が得られ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。一方、無機酸化物粒子の含有量が0.6質量部以下であれば、帯電立ち上がり性が良好であり、さらに、経時的に安定した帯電性及び流動性をトナー粒子に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
無機酸化物粒子の例としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、及び酸化セリウム等が挙げられる。無機酸化物粒子は、シリカ及び酸化チタンの少なくともいずれか一方を含むことが好ましく、シリカを含むことがより好ましい。無機酸化物粒子は、乾式法により得られるヒュームドシリカ粒子であることがさらに好ましい。
無機酸化物粒子は、予め調製したものを用いてもよいし、市販品を採用してもよい。
無機酸化物粒子としては、種々の市販のシリカ粒子を用いることができ、例えば、クラリアント社製のHDK2150(:商品名、個数平均粒径:12nm);日本アエロジル社製のR504(:商品名、個数平均粒径:12nm)、RA200HS(:商品名、個数平均粒径:12nm);テイカ社製のMSP−013(:商品名、個数平均粒径:12nm);キャボット社製のTG−820F(:商品名、個数平均粒径:7nm)、TG−7120F(:商品名、個数平均粒径:22nm)等が挙げられる。
本開示においては、外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であり、好適には80%以上であり、より好適には85%以上である。粒度分布において粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であれば、トナーの流動性を維持でき、優れた搬送量安定性及び帯電安定性を有する。
当該粒度分布において粒径が50nm以上の粒子の個数の割合の上限は特に限定されず、例えば、100%以下であってもよい。
外添剤の粒度分布の算出方法、及び粒径が50nm以上の粒子の個数の割合の算出方法は、以下の通りである。まず、外添後のトナー粒子の表面をSEMにて観察し、SEM画像を10枚以上撮影する。そのSEM画像について画像処理及び画像解析を行い、トナー粒子表面に存在する外添剤の大きさ(粒径)と各大きさの個数頻度を算出することにより、外添剤の粒度分布が得られる。この粒度分布より、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合を算出する。
外添剤の含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対し、好適には0.5〜5.0質量部であり、より好適には0.6〜4.5質量部であり、さらに好適には0.8〜4.0質量部である。
外添剤の含有量が0.5質量部以上であれば、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)が得られ、トナーの印字性能に優れる。一方、外添剤の含有量が5.0質量部以下であれば、帯電立ち上がり性が良好であり、さらに、外添剤が着色樹脂粒子から遊離(脱離)しにくいため、経時的に安定した帯電性及び流動性をトナー粒子に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
外添処理を行う攪拌機は、着色樹脂粒子の表面に外添剤を付着させることができる攪拌装置であれば特に限定されず、例えば、ヘンシェルミキサー(:商品名、三井鉱山社製)、FMミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、スーパーミキサー(:商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、メカノフュージョンシステム(:商品名、細川ミクロン社製)、及びメカノミル(:商品名、岡田精工社製)等の混合攪拌が可能な攪拌機を用いて外添処理を行うことができる。
なお、本開示に使用される外添剤粒子の個数平均粒径は、例えば、以下のように測定できる。まず、外添剤の個々の粒子について、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)等により粒径を測定する。このように200個以上の外添剤粒子の粒径を計測し、その平均値を、その粒子の個数平均粒径とする。
外添工程において2種類以上の外添剤を併用する場合には、着色樹脂粒子に添加する外添剤の順序は特に限定されない。例えば、上記球形シリカ粒子及び無機酸化物粒子を併用する場合には、全外添剤を着色樹脂粒子に対して一度に添加してもよいし、無機酸化物粒子を着色樹脂粒子に付着させた後に球形シリカ粒子を添加してもよいし、球形シリカ粒子を着色樹脂粒子に付着させた後に無機酸化物粒子を添加してもよい。
2種類以上の外添剤を併用する場合には、個数平均粒径の小さい外添剤から順に外添するのが好ましい。上記球形シリカ粒子及び無機酸化物粒子を併用する場合を例にとると、無機酸化物粒子を着色樹脂粒子に付着させ、当該無機酸化物粒子の付着した着色樹脂粒子に対しさらに球形シリカ粒子を付着させることが好ましい。なぜなら、無機酸化物粒子と球形シリカ粒子を同時に外添することがなければ、球形シリカ粒子の表面に無機酸化物粒子が外添されるおそれも少なく、これら2種類の外添剤を併用する効果を十分に発揮することができるためである。トナー表面に均一に外添剤を外添するには、無機酸化物粒子、球形シリカ粒子の順番で外添するのが好ましい。
4.本開示のトナー
本開示のトナーは、従来よりも個数平均粒径の大きい球形シリカ粒子を使用し、かつ粒径の小さい外添剤粒子を従来よりも少なく用いることにより、トナー粒子表面に埋没する外添剤の割合が減少する結果、帯電安定性及び搬送量安定性に優れる。
ここでいう「搬送量安定性」とは、現像器から搬送されるトナー量(搬送量)が経時的に安定であるトナー特性を指す。通常、多数枚の印字を行っていくと、現像機内でトナーが物理的ストレスを受け、外添剤が埋没することにより、トナー粒子間の付着力が上昇し、流動性が低下したり、トナー搬送量が不安定となる傾向にある。トナー搬送量はトナー特性の経時変化につれて増加するのが通常である。
搬送量の測定方法の例は以下の通りである。まず、常温常湿(N/N)環境下(例えば、温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で20,000枚まで連続印刷を行う。この際、500枚毎に、現像ロールに載っているトナーについて、吸引式実機帯電量測定器によりトナー吸引量を測定する。このトナー吸引量をそのトナーの搬送量とみなして、以下の通り搬送量安定性の算出に供する。
搬送量安定性は、下記計算式1に示す通り、耐久印刷後搬送量を基準搬送量で除した値で表される。ここで、基準搬送量(M1)とは、安定性の基準となる搬送量のことであり、主に連続印刷開始時の搬送量を指す。また、耐久印刷後搬送量(M2)とは、多枚数の印刷が終了した後の搬送量を指す。
計算式1:搬送量安定性=耐久印刷後搬送量(M2)/基準搬送量(M1)
搬送量安定性の値が1に近いほど、多枚数印刷後にも搬送量が変動せず、経時的に安定したトナー特性を示すものといえる。一方、搬送量安定性の値が大きいほど、多枚数印刷後にトナー搬送量が増えすぎることを示し、トナー特性が経時的に不安定であることを示す。このように、搬送量安定性はトナー特性の経時変化の指標の1つとなる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本開示を更に具体的に説明するが、本開示は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
1.球形シリカ粒子の作製
[製造例1]
攪拌機、滴下ロート、及び温度計を備えた3Lのガラス製反応器に、メタノール623.7g、水41.4g、及び28%アンモニア水49.8gを加えて混合し、混合溶液の温度が35℃となるように調整した。
温度調整した混合溶液を攪拌しながら、テトラメトキシシランとテトラブトキシシランの混合物1250gの滴下、及び5.4%アンモニア水418.1gの滴下を同時に開始した。テトラメトキシシランとテトラブトキシシランの混合物1250gを8.5時間かけて滴下し、5.4%アンモニア水を5時間かけて滴下した。
それぞれの滴下が終了した後も、さらに0.5時間混合溶液の攪拌を継続し、加水分解を行うことにより、球形シリカ粒子の懸濁液を得た。
次いで、上記3Lのガラス製反応器に、エステルアダプター及び冷却管を取り付け、得られた球形シリカ粒子の懸濁液の温度が60〜70℃となるまで加熱し、メタノールを留去(蒸留除去)した後、水を添加し、この懸濁液の温度が70〜90℃となるまで加熱し、メタノールを完全に留去(蒸留除去)し、球形シリカ粒子の水性懸濁液を得た。
得られた球形シリカ粒子の水性懸濁液を攪拌しながら、室温下で、メチルトリメトキシシラン11.6gの滴下を開始し、0.5時間かけて滴下した。滴下が終了した後も、さらに12時間水性懸濁液攪拌を継続して疎水化処理を行った。
疎水化処理された水性懸濁液に、メチルイソブチルケトン1440gを添加し、その後、水性懸濁液の温度が80〜110℃となるまで加熱し、共沸混合物を、10時間かけて留去(蒸留除去)し、その後、水性懸濁液の温度が室温となるまで冷却した。
冷却した水性懸濁液に、メタノール1000gを加え、10分間攪拌した後、遠心分離機にて3000Gで10分間処理し、上澄液を分離した。残留液から溶媒のメチルイソブチルケトンとメタノールを留去した後、乾燥して球形シリカ粒子を得た。
乾燥した球形シリカ粒子100gに対して、室温で、疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン10g及び環状シラザンである下記式1の化合物10gを添加し、その後、110℃となるまで加熱し、3時間反応させることにより、球形シリカ粒子を疎水化処理した。
次いで、80℃となるまで減圧下(6650Pa)で加熱し、溶媒を完全に留去(蒸留除去)し、球形シリカ粒子(シリカa、個数平均粒径:90nm、球形度:1.12)を作製した。
Figure 2018159671

[製造例2〜製造例6]
製造例1において、テトラメトキシシランとテトラブトキシシランの混合物の滴下量及び滴下時間を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、製造例2〜製造例6の球形シリカ粒子(シリカb〜シリカf)を作製し、試験に供した。
上記製造例1〜6におけるシリカの調製条件、及び製造した各シリカの物性を、下記表1に示す。下記表1中「滴下量」及び「滴下時間」とはテトラメトキシシランとテトラブトキシシランの混合物の滴下量及び滴下時間を意味する。
Figure 2018159671
2.静電荷像現像用正帯電性トナーの製造
[実施例1]
重合性単量体としてスチレン78部及びn−ブチルアクリレート22部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:#25BS)5部を、インライン型乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)を用いて分散させて、重合性単量体混合物を得た。
上記重合性単量体混合物に、帯電制御剤として帯電制御樹脂(4級アンモニウム基含有スチレンアクリル樹脂)1.0部、離型剤として脂肪酸エステルワックス(ベヘニルベヘネート)5.0部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6)0.3部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.6部、及び分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.6部を添加し、混合、溶解して、重合性単量体組成物を調製した。
他方、室温下で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)12.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)7.2部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。
上記水酸化マグネシウムコロイド分散液に、室温下で、上記重合性単量体組成物を投入し、攪拌した。そこへ重合開始剤としてt−ブチルパーオキシジエチルアセテート4.4部を投入した後、インライン型乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)を用いて、15,000rpmの回転数で10分間高速剪断攪拌して分散を行い、重合性単量体組成物の液滴形成を行った。
上記重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃に昇温し、重合反応を開始させた。重合転化率が、ほぼ100%に達したときに、シェル用重合性単量体としてメチルメタクリレート1部、及びイオン交換水10部に溶解したシェル用重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)(和光純薬社製、商品名:VA−086、水溶性)0.3部を添加し、90℃で4時間反応を継続した後、水冷して反応を停止し、コアシェル型構造を有する着色樹脂粒子の水分散液を得た。
上記着色樹脂粒子の水分散液に、室温下で攪拌しながら、硫酸を滴下し、pHが6.5以下となるまで酸洗浄を行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分にイオン交換水500部を加えて再スラリー化させて、水洗浄処理(洗浄、濾過、及び脱水)を数回繰り返し行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分を乾燥機の容器内に入れ、45℃で48時間乾燥を行い、乾燥した着色樹脂粒子を得た。得られた着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は7.5μm、個数平均粒径(Dn)は6.6μm、粒径分布(Dv/Dn)は1.14であり、平均円形度は0.987であった。
上記により得られた着色樹脂粒子100部に対し、疎水化処理剤であるヘキサメチルジシラザン及び環状シラザンにより表面が疎水化処理された個数平均粒径7nmの正帯電性シリカ粒子(キャボット社製、商品名:TG820F)を0.1部添加し、高速攪拌機(日本コークス社製、商品名:FMミキサー)を用いて、10分間、周速40m/sで混合攪拌して外添処理を行った。その後、得られた混合物に対して、球形シリカ粒子としてシリカa(個数平均粒径:90nm、球形度:1.12)3.6部を添加し、上記高速攪拌機により、10分間、周速40m/sで混合攪拌して外添処理を行い、実施例1のトナーを得た。試験結果を表1に示す。
[実施例2〜実施例9、比較例1〜比較例4]
実施例1の外添処理において、球形シリカ粒子の種類及び含有量、並びに無機酸化物粒子の含有量を下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜実施例9及び比較例1〜比較例4のトナーを作製し、試験に供した。
3.球形シリカ粒子の評価
(1)個数平均粒径の測定
上記シリカa〜シリカfについて、以下の方法により個数平均粒径を測定した。
まず、各球形シリカ粒子の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、その写真を画像処理解析装置(ニレコ社製、商品名:ルーゼックスIID)により、フレーム面積に対する粒子の面積率:最大2%、トータル処理粒子数:100個の条件下で、粒子の投影面積に対応する円相当径を算出した。その算術平均の値を、その球形シリカ粒子の個数平均粒径とした。
(2)球形度の測定
上記シリカa〜シリカfについて、以下の方法により球形度を測定した。
まず、各球形シリカ粒子の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。その写真を、上記個数平均粒径の測定と同様の画像処理解析装置及び解析条件下で、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)、及び粒子の実質投影面積(Sr)を解析した。これら解析値から球形度(Sc/Sr)を算出し、その算術平均の値を、その球形シリカ粒子の球形度とした。
4.外添剤の粒度分布の算出
上記実施例1〜実施例9及び比較例1〜比較例4の各トナーについて、使用した外添剤の粒度分布を以下の方法により算出した。
まず、外添後のトナー粒子の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製、型番:JSM−7610F)を用いて観察し、倍率45,000倍でSEM画像を20枚撮影した。そのSEM画像について画像処理及び画像解析を行い、トナー粒子表面に存在する外添剤の大きさ(粒径)と各大きさの個数頻度を算出することにより、外添剤の粒度分布を得た。この粒度分布より、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合を算出した。
5.静電荷像現像用正帯電性トナーの評価
上記実施例1〜実施例9及び比較例1〜比較例4の各トナーについて、トナー評価を行った。詳細は以下の通りである。
(1)印字耐久性試験
本試験には、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(印刷スピード:A4サイズ40枚/分)を用い、現像装置のトナーカートリッジに、トナーを充填した後、印字用紙をセットした。
常温常湿(N/N)環境下(温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で20,000枚まで連続印刷を行った。
500枚毎に、黒ベタ印字(印字濃度100%)を行い、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD918)を用いて黒ベタ画像の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上における非画像部のトナーを、粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810−3−18)に付着させた後、剥ぎ取り、それを印字用紙に貼り付けた。
次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製、商品名:ND−1)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B−A)をカブリ値(%)とした。この値が小さいほど、カブリが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3%以上で、且つカブリ値が3%以下の画質を維持できる連続印刷枚数を調べた。
なお、下記表2中、「>20000」とあるのは、20,000枚の時点においても、印字濃度が1.3%以上で、且つカブリ値が3%以下の画質を維持できたことを示す。
(2)帯電安定性及び搬送量安定性試験
上記印字耐久性試験と同様のプリンターを用いて、トナーを充填し、印字用紙をセットした。
常温常湿(N/N)環境下(温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で20,000枚まで連続印刷を行った。
500枚毎に、現像ロールに載っているトナーについて、吸引式実機帯電量測定器により帯電量及びトナー吸引量を測定した。
20,000枚印刷時のトナー帯電量(Q2)を連続印刷開始時のトナー帯電量(Q1)により除した値(Q2/Q1)を、帯電安定性の指標とした。この指標(Q2/Q1)が1に近いほど、トナー帯電量の変動が少ないことを意味し、トナーの帯電安定性が優れていることを意味する。
トナー吸引量をそのトナーの搬送量とみなした。20,000枚印刷時のトナー搬送量(M2)を測定開始時のトナー搬送量(M1)により除した値(M2/M1)を、搬送量安定性の指標とした。この指標(M2/M1)が1に近いほど、トナー搬送量の変動が少ないことを意味し、トナーの搬送量安定性が優れていることを意味する。
実施例1〜実施例9及び比較例1〜比較例4のトナーの測定及び評価結果を、外添剤の情報と併せて下記表2に示す。
Figure 2018159671
6.考察
以下、表2を参照しながら、トナー評価結果について検討する。
表2より、比較例1のトナーは、個数平均粒径30nmのシリカdを含むトナーである。比較例1のトナーにおいては、外添剤における粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が1%である。
表2より、比較例1の印字耐久性の評価枚数は7,000枚と少なく、帯電安定性(Q2/Q1)は0.34と低い。特に、印字耐久性の評価枚数は、今回評価したトナー中最も少ない。また、帯電安定性(Q2/Q1)の値は、今回評価したトナー中最も低い。したがって、個数平均粒径が70nm未満の球形シリカ粒子を含み、かつ外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%を大きく下回る比較例1のトナーは、印字耐久性及び帯電安定性に劣ることが分かる。
表2より、比較例2のトナーは、個数平均粒径50nmのシリカeを含むトナーである。比較例2のトナーにおいては、外添剤における粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が48%である。
表2より、比較例2の印字耐久性の評価枚数は10,000枚と少なく、帯電安定性(Q2/Q1)は0.48と低く、搬送量安定性(M2/M1)は2.04と高い。特に、搬送量安定性(M2/M1)の値は、今回評価したトナー中最も高い。したがって、個数平均粒径が70nm未満の球形シリカ粒子を含み、かつ外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%未満の比較例2のトナーは、印字耐久性、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも劣ることが分かる。
表2より、比較例3のトナーは、個数平均粒径70nmのシリカfを含むトナーである。比較例3のトナーにおいては、外添剤における粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が52%である。
表2より、比較例3の印字耐久性の評価枚数は12,000枚と少なく、帯電安定性(Q2/Q1)は0.51と低く、搬送量安定性(M2/M1)は1.61と高い。したがって、外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%未満の比較例3のトナーは、印字耐久性、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも劣ることが分かる。
表2より、比較例4のトナーは、個数平均粒径70nmのシリカfを含むトナーである。比較例4のトナーにおいては、外添剤における粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が68%である。
表2より、比較例4の印字耐久性の評価枚数は14,000枚と少なく、帯電安定性(Q2/Q1)は0.64と低い。したがって、外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%未満の比較例4のトナーは、印字耐久性及び帯電安定性にいずれも劣ることが分かる。
一方、表2より、実施例1〜実施例9のトナーは、個数平均粒径80〜90nmのシリカa〜シリカcのいずれか1つを含むトナーである。実施例1〜実施例9のトナーにおいては、外添剤における粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が80〜92%である。
表2より、実施例1〜実施例9の印字耐久性の評価枚数は20,000枚以上であり、帯電安定性(Q2/Q1)は0.72〜0.99の範囲内に収まり、搬送量安定性(M2/M1)は0.95〜1.58の範囲内に収まる。
したがって、球形シリカ粒子の個数平均粒径が70〜200nmであり、かつ、外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上である実施例1〜実施例9のトナーは、印字耐久性、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも優れるトナーであることが分かる。

Claims (6)

  1. 結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子と、外添剤とを含有する静電荷像現像用正帯電性トナーにおいて、
    前記外添剤が球形シリカ粒子を含み、
    前記球形シリカ粒子の個数平均粒径が70〜200nmであり、かつ、
    前記外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であることを特徴とする静電荷像現像用正帯電性トナー。
  2. 前記外添剤の含有量が、前記着色樹脂粒子100質量部に対し、0.5〜5.0質量部であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用正帯電性トナー。
  3. 前記外添剤として、個数平均粒径が5〜25nmの無機酸化物粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用正帯電性トナー。
  4. 前記無機酸化物粒子の含有量が、前記着色樹脂粒子100質量部に対し、0.01〜0.4質量部であることを特徴とする請求項3に記載の静電荷像現像用正帯電性トナー。
  5. 結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子を製造する工程、及び
    前記着色樹脂粒子と外添剤とを混合して攪拌することにより、当該着色樹脂粒子の表面に当該外添剤を付着させる外添工程を含む静電荷像現像用正帯電性トナーの製造方法であって、
    前記外添工程において、
    前記外添剤として、個数平均粒径が70〜200nmである球形シリカ粒子を含み、かつ、当該外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であるものを用いることを特徴とする静電荷像現像用正帯電性トナーの製造方法。
  6. 前記外添剤は、個数平均粒径が5〜25nmの無機酸化物粒子を含み、かつ、
    前記無機酸化物粒子を前記着色樹脂粒子に付着させ、当該無機酸化物粒子の付着した着色樹脂粒子に対しさらに前記球形シリカ粒子を付着させることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
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