JPWO2018135262A1 - 燃料噴射弁 - Google Patents

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Abstract

生産性が高く精密にリフト量を調整可能な燃料噴射弁を提供することを目的とする。本発明の燃料噴射弁は、上流側部材と、下流側部材と、前記上流側部材と前記下流側部材とで形成される空間内を移動する弁体と、前記弁体を駆動するピエゾ素子と、軸方向の厚みにより前記弁体の最大リフトを決定するリフト量調整リングと、を備えた。

Description

本発明は、内燃機関に用いられる燃料噴射弁であって、電圧の印加により全長が伸長する圧電素子を有し、圧電素子の全長の伸縮により弁体の開閉を行う燃料噴射弁に関する。
特開2002−31010号公報(特許文献1)には、通電の開始により圧電素子の伸びを直接弁体に伝えて、弁体を押すときに弁体先端部が弁座から離れることで、燃料流路を開いて燃料を噴射する燃料噴射弁が記載されている。この燃料噴射弁は、通電が終了すると、弁体を付勢するスプリングの力により弁体が引き戻されて弁座と当接し、燃料流路が閉鎖されることにより燃料噴射を終了する。
特開2002−31010号公報
特許文献1の燃料噴射弁では、圧電素子は電圧を印加すると伸長する構造であるために、直接弁体を動作させる場合、電圧の印加により弁体を押す構造になる。このような燃料噴射弁は、弁体を押し出すことにより弁体と弁座との間に形成される隙間から燃料を噴射する構造となる。すなわち、このような燃料噴射弁は、電圧の印加により弁体が燃料噴射弁の外側に向かって変位し、これにより燃料通路が開く外開きの弁構造を有する。外開きの弁構造では、弁体の弁座と当接する先端部の形状は円錐形状が一般的であり、この円錐形状により、生成される噴霧は傘状噴霧となる。
圧電素子の伸長量は電圧の大きさと相関があるため、弁体の押し出し量であるリフト量は電圧の大きさにより定まる。一方、圧電素子自体にもダンパーやスプリングにより荷重がかかっており、その荷重は個体間でばらつきを生じる。そのため、リフト量を個体間で一定にするには、それぞれの個体で電圧値を調整する必要がある。
一方、圧電素子の伸縮を直接弁体に伝えて駆動させ、且つ、弁体が弁座から引上げられる機構を設け、燃料を噴孔から噴射する燃料噴射弁の場合でも、弁体を押し出す場合と同様に、リフト量を個体間で一定にするには、それぞれの個体で電圧値を調整する必要がある。
そこで本発明は、生産性が高く精密にリフト量を調整可能な燃料噴射弁を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の燃料噴射弁は、上流側部材と、下流側部材と、前記上流側部材と前記下流側部材とで形成される空間内を移動する弁体と、前記弁体を駆動するピエゾ素子と、軸方向の厚みにより前記弁体の最大リフトを決定するリフト量調整リングと、を備えた。
本発明によれば、生産性が高く精密にリフト量を調整可能な燃料噴射弁を提供することが可能となる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施例に係る燃料噴射弁の構成を示す断面図である。 図1の弁体下流側シート部1b(図1のB部)の近傍を拡大して示す拡大断面図である。 図1の弁体上流側シート部1a(図1のA部)の近傍を拡大して示す拡大断面図である。 図1のベローズ体8の近傍を拡大して示す拡大断面図である。 図1のダンパー体12の近傍を拡大して示す拡大断面図である。 各条件における弁体上流側シート部1aの状態を示した拡大断面図である。 各条件における弁体下流側シート部1bの状態を示した拡大断面図である。 本発明に係る燃料噴射弁100の印加電圧と、弁体上流側シート部1a及び弁体下流側シート部1bの各弁座との当接状態との関係を示す図である。 図8Aに示す弁体上流側シート部1a及び弁体下流側シート部1bの各弁座との当接状態を示す図である。 本発明に係る燃料噴射弁100の弁体1に作用する力関係を示した図である。 本発明に係る燃料噴射弁100のベローズ体8の組付け方法の詳細を示した図である。 本発明に係る燃料噴射弁100の弁体1及びノズル体3の詳細断面図である。 本発明の実施例2の組み立て方法を説明するための燃料噴射弁の模式図である。 実施例2のリフト量調整リングの組み立て方法を説明するための燃料噴射弁の模式図である。 本発明の実施例3の組み立て方法を説明するための燃料噴射弁の模式図である。
以下に、本発明の構造が多く用いられる燃料噴射弁の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る燃料噴射弁100の構成を示す断面図である。図2は、図1の弁体下流側シート部1b(図1のB部)の近傍を拡大して示す拡大断面図である。図3は、図1の弁体上流側シート部1a(図1のA部)の近傍を拡大して示す拡大断面図である。図4は、図1のベローズ体8の近傍を拡大して示す拡大断面図である。図5は、図1のダンパー体12の近傍を拡大して示す拡大断面図である。
本発明の一実施例に係る燃料噴射弁100の構成について、図1を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上流側及び下流側は、燃料の流れ方向における上流側及び下流側を表す。また、燃料噴射弁100の噴孔2bが設けられる側の端部を先端部(先端側の端部)と呼び、先端部に対して反対側の端部を基端部(基端側の端部)と呼ぶ。先端部は下流側の端部であり、基端部は上流側の端部である。また、説明の中で使用する上下方向を、図1に基づいて定義する。すなわち、基端部は先端部に対して上方にあり、先端部は基端部に対して下方にある。この上下方向は説明を簡便にするために定義するものであり、燃料噴射弁100の実装状態における上下方向とは関係が無い。
ノズル体3の下流側(先端側又は内燃機関側)には、ノズル体3と同軸上に下流側弁座部材(先端側弁座部材)2が接合されている。弁体1は下流側弁座部材2の上流側に配設されている。弁体1はノズル体3に内包され、ノズル体3に対して同軸状に配設されている。そして弁体1は、ノズル体3の内部で、ノズル体3の中心軸線100Aに沿う方向に、移動可能に設けられている。すなわち弁体1は、軸方向に変位可能に構成されている。
さらに弁体1は、軸方向において燃料の流れる方向の上流側に配設された弁体上流側シート部1aと、下流側に配設された弁体下流側シート部1bとを有する。なおノズル体3の中心軸線は、燃料噴射弁100の中心軸線100Aに一致し、中心軸線100Aと同軸に構成されている。
ノズル体3と弁体1との間には、弁体1を上流側(基端側)に向けて付勢する第一付勢部材4が設置される。すなわち第一付勢部材4は、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aと当接する方向に弁体1を付勢する。本実施例の場合、第一付勢部材4はコイルスプリングで構成している。弁体1の上流側には、燃料を封止するベローズ体(シール体)8が設けられている。ベローズ体8の上流側には、駆動素子11が弁体1及びベローズ体8と同軸上に位置するように設けられている。すなわち駆動素子11は、弁体上流側シート部1aに対して弁体下流側シート部1bが設けられた側とは反対側に設けられている。駆動素子11が収容された空間はベローズ体8により封止され、駆動素子11は燃料から遮蔽されている。
駆動素子11の上流側には構成部品の線膨張を相殺するためのダンパー体12が配設されている。ダンパー体12の上流側には、ダンパー体12の位置を固定する固定部品14が配設されている。駆動素子11及びベローズ体8の外周にはケーシング体16が設けられ、駆動素子11及びベローズ体8はケーシング体16に内包されている。ケーシング体16は二重円管構造を有し、二重円管で形成される隙間(内側の円管と外側の円管との間の隙間)に燃料通路を形成している。ケーシング体16の上流側に上部ケーシング13が接合されている。
燃料は、上部ケーシング13の燃料供給口13aから供給され、ケーシング体16が有する燃料通路を通り、弁体1の弁体上流側シート部1aに至る。弁体上流側シート部1aを通過した燃料は、弁体1とノズル体3との隙間を流れて、弁体1の弁体下流側シート部1bに至る。弁体下流側シート部1bを通過した燃料は噴孔2bから燃料噴射弁100の外部、例えば内燃機関に噴射され、燃料噴霧FSが生成される。
次に各部の構造について、詳細に説明する。
下流側弁座部材2は下流側弁座2cと噴孔2bとを有する。噴孔2bは下流側弁座2cの下流側に設けられる。下流側弁座2cに弁体1の弁体下流側シート部1bが当接することにより、下流側弁座2cと弁体下流側シート部1bとの間の燃料通路が閉じられて閉弁し、下流側弁座2cから弁体下流側シート部1bが離間することにより、下流側弁座2cと弁体下流側シート部1bとの間の燃料通路が開かれて開弁する。このように弁体下流側シート部1bは、下流側弁座2cに当接する当接部を構成する。弁体下流側シート部1bが下流側弁座2cに当接することにより下流側燃料通路が閉じられ、弁体下流側シート部1bが下流側弁座2cから離間することにより下流側燃料通路が開かれる。
弁体下流側シート部1bが下流側弁座2cから離間することにより、下流側弁座2cと弁体下流側シート部1bとの間の燃料通路を流下した燃料は、噴孔2bから噴射される。
このとき噴孔2bは、噴射した燃料が所望の噴霧を形成することができるように、形状(形、断面積、長さ等)や数が決められている。噴孔2bが形成される下流側弁座部材2は、必要とされる噴霧を形成するための部品である。
下流側弁座部材2はノズル体3の下流側端部の内周側に挿入されて固定されている。下流側弁座部材2は下流側端部の外面側に球状凸形状部2dを有し、内側に円錐面又は球面に形成された内面2eを有している。下流側弁座2cは下流側弁座部材2の内面2eに形成されている。
燃料を噴射するための噴孔2bは、球状凸形状部2dの箇所に1箇所以上開口される。
この噴孔2bは球状凸形状部2dの外面から内側の円錐面又は球面2eまで貫通している。噴孔2bは、中心軸線2bA方向に単一の直径で形成される場合と、直径が異なる複数の孔を中心軸線2bA方向に連結した段付きの形状で形成される場合とがある。本実施例の噴孔2bは、2つの孔を連結した形状であり、下流側の孔の直径が上流側の孔の直径よりも大きい。しかし噴孔2bの形状は、この形状に限定される訳ではなく、その他の形状であってもよい。
下流側弁座部材2の円錐面又は球面2eには弁体1の弁体下流側シート部1bが衝突するために、高硬度、溶接性、機械的特性の良好な材料(例えば、SUS420J2の熱処理材)で製作する。
弁体1は、内燃機関へ燃料が洩れることを防止するために、弁体1の上流側部分と下流側部分とに分けられ、各部分に外方に向かって凸形状となる略球面状のシート部を具備する。弁体1の上流側部分に設けられる球面状シート部が弁体上流側シート部1aであり、弁体1の下流側部分に設けられる球面状シート部が弁体下流側シート部1bである。
本実施例では、弁体1の上流側端部に弁体中間部材1cとの嵌合凸部1eが設けられているため、弁体上流側シート部1aは弁体1の上流側端部よりも少し下流側(先端側)に寄った位置に設けられている。弁体上流側シート部1aには弁体1の衝突力が加わるので、嵌合凸部1eのように外径が細い箇所とのつなぎ部1dにはR部を形成し、衝撃による応力を緩和する構造にするとよい。一方、弁体下流側シート部1bは弁体1の下流側端部に設けられている。弁体1の詳細動作は図5にて説明する(後述)。
図2に示すように、弁体1はノズル体3の内面との摺動部18を1箇所以上有している。摺動部18は円筒形を一部切り欠き、流路を形成することもある。弁体1の弁体下流側シート部1bは下流側弁座部材2のテーパー面に衝突するために、高硬度、溶接性、機械的特性も良好な材料(例えば、SUS420J2の熱処理材)で製作する。
ノズル体3は弁体1を内包し、その内周面で、弁体1を中心軸線100Aに沿う方向に摺動可能に案内する。ノズル体3は噴霧位相を決めるため、下流側弁座部材2との接合時の位置あわせに必要な形状(例えば平面)を具備する。ノズル体3の先端部近傍の外周面には、内燃機関で発生する燃焼ガスをシールするため、シール部材19を取り付ける溝3aが1つ以上形成される。なお、弁体1の摺動部18はノズル体3の内径に接触摺動する面の一部を切り欠いて、燃料の流路を形成することも出来る。
ノズル体3には上流側端部に径方向外方に拡大した、フランジ部(拡径部)3eが設けられている。このフランジ部3eに第一付勢部材4とリフト量の微調整に用いる円環状の調整リング5とを組付ける。
第一付勢部材4は、弁体1を上流方向に付勢するための部品である。第一付勢部材4の内径は、弁体1の外径より大きく、且つ第一付勢部材4の外径は第一ケーシング7の内径よりも小さく設定する。第一付勢部材4はノズル体3及び弁体1と同軸上に組付けられる。第一付勢部材4の一方の端面は、ノズル体3のフランジ部3eの上流側(基端側)の端面に着座している。一方、第一付勢部材4の他方の端面は弁体1の弁体上流側シート部1aのフランジ部1aaの下面(弁体上流側シート部1aとは反対側の面)に着座している。このために弁体上流側シート部1aは弁体1の軸方向における中央部分の直径よりも大きな直径を有している。すなわち、弁体1は弁体上流側シート部1aが設けられる部分で拡径しており、この拡径した部分の下端面に第一付勢部材4の他方の端面が着座している。第一付勢部材4は、倒れを防止するために、両端面を研磨する。また、第一付勢部材4には、腐食に強く、バネ定数が大きいSUS631等の材質が用いられる。
リフト量調整リング5の詳細は下記のとおりである。弁体1、ノズル体3及び下流側弁座部材2の部品公差によって寸法ばらつきが生じるため、必要とするリフト量(100μm程度)が得られるように、各部品の寸法ばらつきを調整する必要がある。そこで、リング幅W(図1参照)の公差を厳しく管理したリフト量調整リング5で、弁体1、ノズル体3及び下流側弁座部材2の部品公差によって生じる寸法ばらつきを調整する。図1に示すように、リフト量調整リング5はノズル体3のフランジ部3eに一方の端面を、他方の端面を第一ケーシング7に当接して、固定される。リフト量調整リング5は、弁体1の弁体下流側シート部1bと下流側弁座部材2の下流側弁座2cとの間に形成される隙間の実寸法と必要リフト量との差分をリフト量調整リング5の板厚Wで調整し、必要リフト量が得られるようにする。
第一ケーシング7は、第一付勢部材4を内包し、弁体上流側シート部1aと協働して機関停止時の燃料封止を行なう部品である。第一ケーシング7は弁体上流側シート部1aと当接する上流側弁座7aを有している。第一ケーシング7をノズル体3に組付けると、弁体1の弁体上流側シート部1aは、先に組付けた第一付勢部材4の力により、第一ケーシング7の上流側弁座7aに当接した状態となる。弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aに当接することにより上流側燃料通路が閉じられ、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aから離間することにより上流側燃料通路が開かれる。
図4に示すように、第一ケーシング7の上流側には、ベローズ体8を支える構造を有している。例えば、第一ケーシング7とベローズ体8の上側金具8bとの間に支持部位7bを設けて、ベローズ体8が支持される構造とする。支持部位は第一ケーシング7と一体でも別体でもよい。本実施例では、支持部位7bを第一ケーシング7と一体にした構成について説明する。
第一ケーシング7の支持部位7bの下部に切欠き部(開口部)7cを設けて燃料流れFFの流路としている。
弁体1の上端部には、嵌合凸部1eに下端部を嵌合した弁体中間部材1cが連結されている。弁体中間部材1cは弁体1と駆動素子11との間を中継する中継部材である。ベローズ体8の下端部と弁体中間部材1cの拡径部1cbとをレーザ溶接で接合するために、第一ケーシング7にはビームを通すための貫通部(本実施例では切欠き部7c)を設けている。第一ケーシング7は高い燃料圧力が印加されるので、許容耐力が大きく、且つ溶接性の優れた材料(例えば、SUS630といった析出硬化系ステンレス鋼)で製作される。
図1に示す溶接リング6は、ノズル体3と第一ケーシング7とを溶接するための部品である。溶接リング6はノズル体3と第一ケーシング7とに対して圧入により仮固定され、その後溶接にて完全固定される。
この箇所は、燃料の圧力が印加されるために、溶接長は0.5mm以上確保する必要がある。溶接リング6は高い燃料圧力が印加されるので、許容耐力が大きく、且つ溶接性の優れた材料(例えば、SUS630といった析出硬化系ステンレス鋼)で製作される。
ベローズ体8は燃料が駆動素子11側に流入しないよう、駆動素子11の収容室と燃料流路部とを遮断する部品である。ベローズ体8は蛇腹状部材(蛇腹部材)8aと上側金具8bとで構成される。蛇腹状部材8aの上流側端部は上側金具8bと溶接により接合され、また蛇腹状部材8aの下流側端部は弁体中間部材1cの下部に形成された拡径部1cbの外周面と溶接により接合されている。
上側金具8bは、中心部に貫通孔8baが形成され、空洞となっている。空洞8baは、蛇腹状部材8aを上側金具8bに溶接すると、蛇腹状部材8aの内側の空間を駆動素子11の収容室に連通させる貫通孔となっている。弁体中間部材1cは蛇腹状部材8aの内部を貫通して、上側金具8bの上端面から突出し、駆動素子11と線接触で接合されている。すなわち蛇腹状部材8aは、弁体中間部材1cの径方向外方に設けられ、弁体中間部材1cを内包する。なお蛇腹状部材8aは、自然長(自然な状態での長さ)となる初期状態から圧縮した状態で、燃料噴射弁100に組み付けられている。
本実施例では、駆動素子11は下端面に円錐状の凹部11aを具備している。また弁体中間部材1cは、上端部が略球形に形成されている。弁体中間部材1cの略球形の上端部が凹部11aの開口縁と当接することで、弁体中間部材1cは駆動素子11と線接触で接合される。ベローズ体8は初期に圧縮状態としておくことで、耐久性が増加する。そのため、ベローズ体8に圧縮を加えるために、第一ケーシング7の突当て部に隙間8d(図10参照)を設けている。ベローズ体8の初期圧縮についての詳細は、図10を用いて後述する。
なお図4に示すように、上側金具8bの下面側の外周部には、蛇腹状部材8aの圧縮量を調整するための部品として、ベローズリング15が設けられる。ベローズ体8の寸法は、ベローズの製作方法や接合により、ばらつきが大きく、必要とする蛇腹状部材8aの圧縮量がばらつく。そのため、ベローズリング15の厚さを調整して、蛇腹状部材8aの圧縮量を調整することができる機構を設けた。
第二ケーシング9は、二重円管構造を有するケーシング体16の内側の円管部材(筒状部材)を構成する部品であり、駆動素子11の周方向の位置とベローズ体8の圧縮量を保持し、燃料流路を構成する部品である。第二ケーシング9の下流側端部の内周面に設けた径方向内方に向かって突出する凸部9bでベローズ体8の上側金具8bを下方に押し、ベローズ体8を圧縮する。この状態でベローズ体8の上側金具8bの外周と第二ケーシング9の外周は重ねあわせ溶接で接合する。第二ケーシング9の上流側端部の外周面には、図5に示すように、径方向外方に向かって突出するフランジ状突起(環状突起)9aがあり、フランジ状突起9aで上部ケーシング13との位置あわせを行なう。
第二ケーシング9は高い燃料圧力が印加されるので、許容耐力が大きく、且つ溶接性の優れた材料(例えば、SUS630といった析出硬化系ステンレス鋼)で製作される。
上部ケーシング13はダンパー体12とそれを固定する固定部材14とを内周面側に保持し、また燃料供給口13aを構成する部品である。さらに、燃料噴射弁100を内燃機関に組付けるための取付け部品でもある。
上部ケーシング13には、第二ケーシング9、第三ケーシング10、ダンパー体12及び固定部品14の取付け穴が同軸上に形成され、段付きの孔12eを形成している。燃料供給口13aは第二ケーシング9と第三ケーシング10とを取り付ける穴とは同軸上に構成されていない。なお第三ケーシング10は、二重円管構造を有するケーシング体16の外側の円管部材(筒状部材)を構成する部品であり、第二ケーシング9と共に燃料流路を構成するための部品である。
図5に示すように、上部ケーシング13の下流側端面から取付け穴12eに第二ケーシング9及び第三ケーシング10を挿入する。第二ケーシング9にはフランジ状突起9aが設けてあり、第三ケーシング10にはフランジ状突起10aが設けてある。フランジ状突起9a及びフランジ状突起10aは、それぞれ上部ケーシング13の取付け穴12eに当接した状態で位置が固定された後、全周が溶接される。なお、固定及び溶接は、第二ケーシング9、第三ケーシング10の順番で行う。
上部ケーシング13は高い燃料圧力が印加されるので、許容耐力が大きく、且つ溶接性の優れた材料(例えば、SUS630といった析出硬化系ステンレス鋼)で製作される。
駆動素子11は、弁体下流側シート部1bが下流側弁座2cと当接する方向に、弁体1を移動させるための部品である。前述の通り、駆動素子11の下流側端面(下端面)11aは弁体中間部材1cと当接している。駆動素子11の下流側端面11aは円錐状の凹部を具備し、下流側端面11aと同様、当接部の面圧を低減させ、磨耗を防ぐ。上流側端面も円錐状の凹部11bを具備しているが、円錐状の凹部を具備している別部材を上流部端面に組付けることもできる。駆動素子11は電圧を印加されると、全長が伸びる。駆動素子11の一例である圧電素子の場合、薄いセラミックス製の素子を積層して構成され、電圧を印加すると数μmから数十μm全長が伸びる。素子は両端部を金属製の蓋で固定され、素子の外周は伸縮できる形状の金属ケーシングにて覆われる。セラミックス製の圧電素子では、金属に比べて非常に線膨張率が低く、ステンレス鋼の1/10程度となる。
第三ケーシング10の上流側端面はフランジ状突起10aになっている。第三ケーシング10の下流側端面から10mmほど上流側までの内径は、第一ケーシング7の外径と同じだが、それより上流側では第一ケーシング7の外径よりも1mm以上大きくなる。第三ケーシング10の内周にノズル体3を下流側端部から挿入するようにして、第三ケーシング10を上部ケーシング13に組み付ける。第三ケーシング10のフランジ状突起10aを、上部ケーシング13の取付け穴12eに突き当てて固定し、上部ケーシング13と第三ケーシング10のフランジ状突起10aの外周とを溶接する。
また、第三ケーシング10の下流側内径部と第一ケーシング7の上流側外径部とは圧入となっており、第三ケーシング10の下流側と第一ケーシング7の上流側とを重ねあわせて、溶接で全周を接合する。これにより、第二ケーシング9の外径(外周)と第三ケーシング10の内径(内周)の間が隙間となり、ここを燃料が流れる。
ダンパー体12は、部品間の線膨張率の差を相殺するための部品である。ダンパー体12は駆動素子11の上流側に位置している。ダンパー体12は先端側の端部に略球状(半球状)になっている突起部12cを具備しており、駆動素子11の上流側端面に具備された円錐状の凹部11bと当接している。
ダンパー体12はシリンダ12bとプランジャ12aとダイアフラム12dとから構成されており、シリンダ12bとプランジャ12aとダイアフラム12dとの間には油が封入されている。油は気泡が混入しないように、脱気した状態でシリンダ12bとプランジャ12aとダイアフラム12dとの間に注入される。温度が高くなると油が膨張し、その膨張した分、ダイアフラム12dが変形し、それに接続されているシリンダ12bが追従して移動する。この移動により、下流側弁座2と弁体1の隙間が発生しないように接触を維持する。ダンパー体12は駆動素子11が高周波で駆動した場合の挙動では変動しない特性を有する。
固定部品14はダンパー体12を固定する部品である。ダンパー体12に当接している駆動素子11の駆動力は1000N以上あり、この荷重を受けても、固定部品14が軸方向に移動しないように、固定部品14に印加する圧入荷重が設定される。
固定部品14の固定方法は次のとおりである。固定部品14を上部ケーシング13の内周面13bに圧入する。固定部品14の圧入長さが規定値となるよう微調整を行なう。弁体11の移動量が規定値となったときに、上部ケーシング13と固定部品14は仮固定される。固定方法は、かしめ等とする。その後、駆動素子11が駆動するときの荷重に耐えるように、上部ケーシング13と固定部品14を接合して完全固定する。
図6は、各条件における弁体上流側シート部1aの状態を示した拡大断面図である。図7は、各条件における弁体下流側シート部1bの状態を示した拡大断面図である。図8Aは、本発明に係る燃料噴射弁100の印加電圧と、弁体上流側シート部1a及び弁体下流側シート部1bの各弁座との当接状態との関係を示す図である。図8Bは、図8Aに示す弁体上流側シート部1a及び弁体下流側シート部1bの各弁座との当接状態を示す図である。なお図8Bでは、図8Aに示す段階(1)〜(6)に対応させて、弁体上流側シート部1a及び弁体下流側シート部1bの各弁座との当接状態を示している。
加圧装置で規定圧力に加圧された燃料は、図示しない燃料配管を介して、上部ケーシング13に具備された燃料供給口13aに供給され、燃料噴射弁100の内部に流入する。
図8A及び図8Bの(1)は機関及び燃料加圧装置の停止時の状態を示す。この時、駆動素子11への電圧の印加は行われていない。この状態では、弁体1に設けられた第一付勢部材4の力により、弁体1は弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aと当接する位置まで押し上げられ、弁体上流側シート部1aと上流側弁座7aとの間の燃料通路が閉じた状態である(図6(a)の状態)。この場合、燃料加圧装置は停止しているため燃料の供給は行われていないが、前回、機関の運転を停止するまで供給されていた燃料は弁体上流側シート部1a及び上流側弁座7aによって止められ、弁体上流側シート部1a及び上流側弁座7aの下流側には流下しない。従って、燃料噴射弁100は閉弁した状態である。
なお、弁体下流側シート部1bと下流側弁座2cとの間の燃料通路は開いた状態である(図7(a)の状態)。
図8A及び図8Bの(1)で、機関が停止されたままの状態で燃料加圧装置が作動すると、燃料が供給される。しかしこの状態では、駆動素子11への電圧の印加は行われていない。そのため弁体1は、第一付勢部材4の付勢力とベローズ体8から作用する上流方向への力の双方により、上流方向へ押し上げられている。その結果、弁体1の弁体上流側シート部1aは第一ケーシング7の上流側弁座7aと当接し、弁体上流側シート部1aと上流側弁座7aとの間の燃料通路が閉じた状態が維持されている(図6(a)の状態)。この状態では、弁体下流側シート部1b側の燃料通路は開いているものの、弁体上流側シート部1a側の燃料通路が閉じているため、燃料の流れが遮断される。この場合も、燃料噴射弁100は閉弁した状態を維持している。このとき、燃料を遮断しないと、内燃機関の燃焼室内に燃料が流入してしまい、機関始動時に圧縮が発生し、内燃機関を破壊してしまう可能性がある。
図8A及び図8Bの(2)は、燃料加圧装置が始動された後、機関が始動された状態(機関の作動中の状態)を示している。この状態では、エンジンコントロールユニットからの指令値に基づいて、燃料を燃料噴射弁100から所定の流量だけ噴射する。弁体1は、必要とされる流量の燃料が流れ、圧力損失や噴霧性能が維持されるよう、弁体下流側シート部1b側の流路面積と弁体上流側シート部1a側の流路面積との比が最適となるように、駆動素子11に印加される電圧が制御されて駆動される。すなわち、駆動素子11の駆動電圧が図8Aの中間電圧に制御され、弁体上流側シート部1aと上流側弁座7aとの間の燃料通路が開き(図6(b)の状態)、弁体下流側シート部1bと下流側弁座2cとの間の燃料通路も開いている状態であり、燃料噴射弁100が開弁した状態である(図7(a)の状態)。
図8A及び図8Bの(3)は、機関及び燃料加圧装置が共に作動している状態において、燃料噴射を停止させる状態を示す。弁体1の弁体下流側シート部1bと下流側弁座2cとが当接するように、駆動素子11に通電を行う。これにより、弁体1が下流側弁座2c側へ移動する。結果、燃料流路が閉塞され、燃料噴射が停止する。すなわち、弁体上流側シート部1aと上流側弁座7aとの間の燃料通路は開いた状態(図6(c)の状態)であるが、弁体下流側シート部1bと下流側弁座2cとの間の燃料通路が閉じた状態(図7(c)の状態)となり、燃料噴射弁100が閉弁した状態となる。
機関駆動時には、図8A及び図8Bの(2)の状態と(3)の状態とを繰り返すことにより、機関の燃焼に必要とされる燃料量を適切なタイミングで燃料噴射弁100から供給することが可能となる。図8A及び図8Bの(4)の状態は(3)と同じ状態、(5)の状態は(2)と同じ状態である。ただし、(5)の状態では、途中で機関及び燃料加圧装置が停止され、弁体1は第一付勢部材4の付勢力とベローズ体8から作用する上流方向への力の双方により、上流方向へ押し上げられる。これにより、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aに当接し、燃料噴射弁100は閉弁した状態で動作を停止する。
すなわち本実施例の燃料噴射弁100は、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aから離間し、弁体下流側シート部1bが下流側弁座2cから離間した状態に、弁体1を駆動素子11により駆動して燃料を噴射する。燃料噴射弁100は、駆動素子11への通電を行っていない状態では、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aと当接する向きに弁体1を付勢する、第一付勢部材4の付勢力を含む上流向き付勢力が、弁体下流側シート部1bが下流側弁座2cと当接する向きに弁体1を付勢する下流向き付勢力よりも大きくなるように構成されている。燃料噴射弁100は、駆動素子11への通電中に、駆動素子11の駆動力を含む下流向き付勢力が上流向き付勢力よりも大きくなるように駆動素子11を駆動することにより、弁体下流側シート部1bを下流側弁座2cに当接させて下流側燃料通路を閉じる。
図9は、本発明に係る燃料噴射弁100の弁体1に作用する力関係を示した図である。
図9(1)は機関及び燃料加圧装置の停止時に作用する力を示す。各部の荷重(力)関係は(数1)のとおりとなる。
Figure 2018135262
は第一付勢部材4のばね定数kと圧縮量xにより、弁体1が上流方向へ付勢される力である。Fはダンパー体12が駆動素子11を下流方向に押す荷重である。
図9(2)は機関が停止した状態で燃料加圧装置が動作して燃料圧力が印加された状態において作用する力を示す。各部の荷重(力)関係は(数2)のとおりとなる。
Figure 2018135262
は第一付勢部材4のばね定数kと圧縮量xにより、上流方向へ付勢される力である。(πD /4)Pはベローズ体8の有効径Dに燃料圧力Pが作用し、弁体1が上流方向へ付勢される力である。これは、ベローズ体8内部が空気層となり、外部に加圧された燃料が存在するためである。(πD /4)Pはシート径Dに液体の圧力Pが作用し、下流方向に付勢される力である。Fはダンパー体12が駆動素子11を押す荷重である。
図9(3)は燃料噴射時に作用する力を示す。各部の荷重(力)関係は(数2)のとおりとなる。
Figure 2018135262
は第一付勢部材4のばね定数kと圧縮量xにより、上流側方向へ付勢される力である。(πD /4)Pはベローズ体8の有効径Dに液体圧力Pが作用し、弁体1が上流側方向へ印加される力である。これは、ベローズ体8内部が空気層となり、外部に加圧された燃料が存在するためである。Fはダンパー体12を押す下流側に印加する力である。Fは駆動素子11により弁体1が下流側に押される力である。右項と左項とは、平衡状態で釣り合い、弁体1は所望の位置で停止する。
図9(4)は燃料噴射停止時に作用する力を示す。各部の荷重(力)関係は(数4)のとおりとなる。
Figure 2018135262
(πD /4)Pは弁体1の下流側シート径Dに液体圧力Pが作用し、上流側方向へ印加される力である。kは第一付勢部材4のばね定数kと圧縮量xにより、弁体1が上流側方向へ付勢される力である。(πD /4)Pはベローズ体8の有効径Dに液体圧力Pが作用し、弁体1が上流側方向へ付勢される力である。これは、ベローズ体8内部が空気層となり、外部に加圧された燃料が存在するためである。Fはダンパー12が駆動素子11を押す力であり、下流側に向かう力である。Fは駆動素子11により弁体1が下流側に押される力である。
上記(1)〜(4)の力関係が成立しない場合、燃料が噴射しない又弁体1が下流側弁座2cに当接せずに、燃料が洩れてしまう等の不具合が生じる。
図10は、本発明に係る燃料噴射弁100のベローズ体8の組付け方法の詳細を示した図である。
ベローズ体8は第二ケーシング9の組付け時に、ベローズ体8の上側金具8bが第二ケーシング9に引きずられて、蛇腹状部材8aを圧縮してしまう。蛇腹状部材8aの圧縮量が圧縮許容値を超えると、蛇腹状部材8aは塑性変形を起こして伸縮性が失われ、弁体1が移動しなくなる。そのため、上側金具8bの下端面に受け部品を設けるか、第一ケーシング7に受け部を設けて、蛇腹状部材8aの圧縮量を抑える必要がある。
一方、ベローズ体8は流体圧力、温度、弁体1の移動により伸びが発生する。このとき、蛇腹状部材8aの伸び量が伸び許容値を超えると、蛇腹状部材8aは塑性変形を起こして伸縮性が失われ、弁体1が移動しなくなる。蛇腹状部材8aの材質変更や肉圧増加、全長拡大により改善可能ではあるが、燃料噴射弁100の許容寸法や相手側の内燃機関レイアウトにより、ベローズ体8の改善は制約を受ける。そこで、図10に示すように、組付け時に蛇腹状部材8aに圧縮を与えて、伸び量の拡大を図る。そのために、第一ケーシング7とベローズ体8の上側金具8bの下端面との間にすきま8dを有する構造として、第二ケーシング9と第一ケーシング7とで上側金具8bを挟み込み、蛇腹状部材8aに圧縮を加える構造とする。ベローズリング15はベローズ体8の寸法ばらつきを吸収するための部品である。
図11は、本発明に係る燃料噴射弁100の弁体1及びノズル体3の詳細断面図である。
供給された燃料は上流部から徐々に流路内部で発生するせん断抵抗による損失(圧力低下)を受ける。そのため、弁座2の噴孔2bから噴出する燃料量は、上流部より供給されたそれより減少する。特に、弁体1とノズル体3により形成される流路17は狭く、かつ長いため、損失を生じやすい。そこで、ノズル体3の内径を上流部に向かうに従い徐々に拡大する構成とし、流路抵抗を低減させ、圧力損失を低減できるようにする。すなわち、下流部より上流に向かうにしたがいノズル体3のノズル径d1、d2、d3が、d1<d2<d3の関係となるように構成する。
本実施例によれば、弁体1に固定された弁体中間部材1cを設け、駆動素子(圧電素子)11の伸縮を、弁体中間部材1cを介して弁体1に伝えることで、弁体1bが弁座2cから引上げられる機構を実現できる。このため、簡単な機構で、燃料を噴孔2bから噴射する燃料噴射弁100を実現できる。燃料噴射弁100において、弁体1に作用する燃料圧力及び付勢部材4の力関係を適切に設定でき、弁座2cと弁体1との接触を良好にすることができ、油密性能を良好に維持することができる。
ここで、図11を用いて本実施例における弁体1のリフト量の調整方法について説明する。本実施例の燃料噴射弁100は、上流側部材(第一ケーシング7)と、下流側部材(ノズル体3)と、上流側部材(第一ケーシング7)と下流側部材(ノズル体3)とで形成される空間内を移動する弁体1と、弁体1を駆動する圧電素子(たとえばピエゾ素子11)と、軸方向の厚みWにより弁体1の最大リフトを決定するリフト量調整リング5と、を備えた。また、リフト量調整リング5を取り付けたうえで、圧電素子に電圧をかけることで、弁体1に作用する付勢部材4やダンパー体12などの他の付勢力と圧電素子の付勢力との関係を調整することができる。したがって、どれだけの電圧をかければ、弁体がどれだけリフトするかを設定することが可能となる。
また燃料噴射弁100は、弁体1と、弁体上流部(弁体上流側シート部1a)が着座する上流側シート部(上流側弁座7a)と、弁体下流部が着座する下流側シート部(下流側弁座2c)と、上流側シート部(上流側弁座7a)と下流側シート部(下流側弁座2c)との間に設けられ、軸方向厚みWによって上流側シート部(上流側弁座7a)と下流側シート部(下流側弁座2c)との間の弁体1の最大リフトを決定するリフト量調整リング5と、を備えた。
以上の構成により、上流側部材(第一ケーシング7)と下流側部材(ノズル体3)とを組み付けた状態において、第一付勢部材4により弁体1が上流側部材(第一ケーシング7)に押し付けられた状態となる。よって、弁体1が上流側部材(第一ケーシング7)と下流側部材(ノズル体3)との間での最大のリフト量が分かるため、必要な最大リフト量となるようにリフト量調整リング5の厚みWを決めることで、リフト量の調整が可能である。
また上記したようにどれだけの電圧をかければ、弁体がどれだけリフトするかを設定することが可能となる。
また、上流側シート部(上流側弁座7a)は、上流側部材(第一ケーシング7)に形成されることが望ましい。あるいは上流側シート部(上流側弁座7a)は、上流側部材(第一ケーシング7)に取り付けられた部材に形成されても良い。下流側シート部(下流側弁座2c)は、下流側部材(ノズル体3)に形成されることが望ましい。あるいは下流側シート部(下流側弁座2c)は、下流側部材(ノズル体3)に取り付けられた部材に形成されても良い。
上流側シート部(上流側弁座7a)は、上流側部材(第一ケーシング7)又は上流側部材(第一ケーシング7)に取り付けられた部材に形成され、下流側シート部(下流側弁座2c)は、下流側部材(ノズル体3)又は下流側部材(ノズル体3)に取り付けられた部材に形成されたことが望ましい。
また図11に示すようにリフト量調整リング5は軸方向において下流側部材(ノズル体3)と上流側部材(第一ケーシング7)とに接触するように配置される。そして、リフト量調整リング5の内周部を上流側部材(第一ケーシング7)の外周部に固定する圧入部を備えることが望ましい。つまり、リフト量調整リング5が圧入により、上流側部材(第一ケーシング7)の外周部に固定されることが望ましい。なお、リフト量調整リング5は圧入でなく、上流側部材(第一ケーシング7)の外周部に対して隙間を有するように構成しても良い。
また図11に示すように、リフト量調整リング5は軸方向において下流側部材(ノズル体3)と上流側部材(第一ケーシング7)とに接触するように配置され、下流側部材(ノズル体3)と上流側部材(第一ケーシング7)とに溶接されてリフト量調整リング5が配置される空間をシールするシールリング6を備えている。
リフト量調整リング5は軸方向において下流側部材(ノズル体3)と上流側部材(第一ケーシング7)とに接触するように配置され、下流側部材(ノズル体3)と上流側部材(第一ケーシング7)とに溶接されてリフト量調整リング5が配置される空間をシールするシールリング6を備え、シールリング6の内周部がリフト量調整リング5の外周部と接触するように構成されたことが望ましい。
また図11に示すように、上流側部材(第一ケーシング7)と下流側部材(ノズル体3)とは軸方向において非接触に隙間が形成されるように配置される。またリフト量調整リング5の内周部は上流側部材(第一ケーシング7)の外周部と対向するように配置される。リフト量調整リング5の内周部は上流側部材(第一ケーシング7)の外周部及び下流側部材(ノズル体3)の外周部と対向するように配置されている。さらに、リフト量調整リング5のすべてがシールリング6に対して径方向内側に位置するように配置されることが望ましい。
リフト量調整リング5を圧入することなく、上流側部材(第一ケーシング7)と下流側部材(ノズル体3)との間に配置することで、何度もリフト量調整リング5を変えることが容易にできるので、リフト量を簡単に調整することが可能である。
本発明の第2実施例について図12、13を用いて説明する。基本的な構造は実施例1と同様であるため、重複した説明は省略し、主に異なる点について説明する。なお、図12は本実施例の燃料噴射弁を模式的に示した図である。図12に示すように本実施例の燃料噴射弁はケーシング体16と、ケーシング体16に取り付けられた上流側部材(第一ケーシング7)と、上流側部材(第一ケーシング7)に組み付けられるノズル体3とを備える。上流側部材(第一ケーシング7)とノズル体3とは非接触であり、実施例1と同様にリフト量調整リング5を介して取り付けられる構造である。つまり、図1は弁体1を上流側へ引き上げて開弁する構造であったのに対し、図12は弁体を下流側へ押し下げて開弁する構造である点が異なる。
図12のように弁体1を下流側へ押し下げて開弁する構造の場合、閉弁時には圧電素子への電圧を0とする。弁体1は第一付勢部材4により上流側へ押し付けられ、下流側弁座部材2に形成された弁座の下流側で弁体1と当接することで、燃料がシールされる。開弁時には圧電素子(ピエゾ11など)へ電圧を印加することで圧電素子が伸長し、弁体1が下流側へ移動する。下流側弁座部材2の弁座と弁体1の間に弁体の移動量であるリフト量分の隙間ができるため、この隙間から燃料が燃焼室内へ噴射される。ここで、圧電素子へ印加する電圧を一定にしても、図9(3)に示す荷重のばらつきなどによって圧電素子の伸長量は一定とならず、リフト量は一定とはならない。そこで、リフト量が一定となるよう、圧電素子から下流側弁座部材2の弁座の間に調整リング5を設けて調整リング5の厚みによってリフト量が一定となるように調整する。
以上の構成によれば、リフト量調整リング5を取り付けたうえで、圧電素子に電圧をかけることで、弁体1に作用する付勢部材4やダンパー体12などの他の付勢力と圧電素子の付勢力との関係を調整することができる。したがって、どれだけの電圧をかければ、弁体がどれだけリフトするかを設定することが可能となる。このような構成とすることで燃料噴射弁を車両に取り付けた後に電圧による調整をすることなしにリフト量を一定にできる。
圧電素子へ加える電圧が燃料噴射弁の個体間により異なる場合、エンジンへ組付ける際に燃料噴射弁の個体間の識別が必要となる。つまり、取り付ける燃料噴射弁により、個々に制御上の電圧値を設定する必要がある。第2実施例の構成を用いることによりその手間が省ける。
ここで、リフト量調整リング5およびシールリング6(溶接リングと呼んでも良い)の組付け構造と工程について図13を用いて説明する。図13は第一ケーシング7より上流側の図示を省略している。図13(a)では、ノズル体3とリフト量調整リング5と第一ケーシング7は互いに圧入することなく組付けられており、荷重をかけることなく脱着が可能である。そのため、リフト量を精密に調整するためにリフト量調整リング5を複数回組付け・取外しをしても、脱着する部材が引張によって変形することがなく、また脱着に荷重がかからないため生産性も高い。このようにしてリフト量調整リング5の脱着を繰返し、所望のリフト量が得られたところで調整作業を完了とする。
調整作業が完了した後、図13(b)に示すように円環上のシールリング6を組付ける。シールリング6の内径は第一ケーシング7の外径部(外周部)および、ノズル体3の外径部
(外周部)と当接し、その当接部でそれぞれ圧入される構造である。圧入後、前記当接部6a、6bの2箇所において周方向に全周溶接がなされ、外部へ燃料がもれることがないようにシールされる。
このとき、シールリング6はノズル体3、第一ケーシング7、調整リング5とは別部材とすることで加工による薄肉化がしやすく、低コストで生産できる。また、溶接時には溶接歪によるリフト量の変化を抑制することができる。つまり、薄肉化されたシールリング6が変形しやすいことで、シールリング6に対して剛性の高いノズル体3、リフト量調整リング5、第一ケーシング7の変形量が抑制される。したがって、リフト量への影響も抑制することが可能となる。以上が調整リング5、溶接リング6の組付け構造と工程となる。
本発明の第3実施例について図14を用いて説明する。図14は第一ケーシング7より上流側の図示を省略した図を示している。図14は開弁時に図示しない方法で圧電素子の変形量に応じて弁体1を上流側へ引き上げる燃料噴射弁を示す概略図である。なお、実施例1、又は実施例2で説明した構造と差がない場合は説明を省略する。
実施例1と同様に、閉弁時には弁体1の下流側と、下流側弁座部材2の弁座の上流側で当接し、燃料シールがなされる。本実施例では、弁体1と下流側弁座部材2の弁座で形成される下流側シート部のみを有し、実施例1のように上流側シート部は有さない点が異なる。
開弁の際には圧電素子の変形量に応じて弁体1が上流側に持ち上がり、弁体1と下流側弁座部材2の弁座の間に隙間ができ、燃焼室内へ燃料を供給する。リフト量調整リング5の組み立て方及び、これによりリフト量が調整可能な点は実施例2と同様であるため、説明を省略する。このような構成とすることで、実施例2と同様の効果が得られる。
1…弁体、1a…上流部シート部、1b…下流部シート部、1c…弁体中間部材、2…下流側弁座、2a…下流側シート部、2b…噴孔、3…ノズル体、4…第一付勢部材、5…調整リング、6…溶接リング、7…第一ケーシング、7a…上流側弁座、7b…支持部位、8…ベローズ体(シール体)、8a…蛇腹部材、8b…上側金具、8c…すきま、9…第二ケーシング、9a…フランジ状突起、10…第三ケーシング、10a…フランジ状突起、11…駆動素子、11a…駆動素子下流側端面の凹部、11b…駆動素子上流側端面の凹部、12…ダンパー体、12a…プランジャ、12b…シリンダ、12c…突起部、12d…ダイアフラム、13…上部ケーシング、13a…燃料供給口、14…固定部品、15…ベローズリング、16…ケーシング体、17…流路、18…摺動部、19…シール部材。

Claims (13)

  1. 上流側部材と、下流側部材と、前記上流側部材と前記下流側部材とで形成される空間内を移動する弁体と、前記弁体を駆動するピエゾ素子と、軸方向の厚みにより前記弁体の最大リフトを決定するリフト量調整リングと、を備えた燃料噴射弁。
  2. 弁体と、弁体上流部が着座する上流側シート部と、弁体下流部が着座する下流側シート部と、上流側シート部と下流側シート部との間に設けられ、軸方向厚みによって前記上流側シート部と前記下流側シート部との間の前記弁体の最大リフトを決定するリフト量調整リングと、を備えた燃料噴射弁。
  3. 請求項2に記載の燃料噴射弁において、
    前記上流側シート部は、上流側部材又は前記上流側部材に取り付けられた部材に形成された燃料噴射弁。
  4. 請求項2又は3に記載の燃料噴射弁において、
    前記下流側シート部は、下流側部材又は前記下流側部材に取り付けられた部材に形成された燃料噴射弁。
  5. 請求項2に記載の燃料噴射弁において、
    前記上流側シート部は、上流側部材又は前記上流側部材に取り付けられた部材に形成され、
    前記下流側シート部は、下流側部材又は前記下流側部材に取り付けられた部材に形成された燃料噴射弁。
  6. 請求項1又は5に記載の燃料噴射弁において、
    前記リフト量調整リングは軸方向において前記下流側部材と前記上流側部材とに接触するように配置された燃料噴射弁。
  7. 請求項1又は5に記載の燃料噴射弁において、
    前記リフト量調整リングの内周部を前記上流側部材の外周部に固定する圧入部を備えた燃料噴射弁。
  8. 請求項1又は5に記載の燃料噴射弁において、
    前記リフト量調整リングは軸方向において前記下流側部材と前記上流側部材とに接触するように配置され、
    前記下流側部材と前記上流側部材とに溶接されて前記リフト量調整リングが配置される空間をシールするシールリングを備えた燃料噴射弁。
  9. 請求項1又は5に記載の燃料噴射弁において、
    前記リフト量調整リングは軸方向において前記下流側部材と前記上流側部材とに接触するように配置され、
    前記下流側部材と前記上流側部材とに溶接されて前記リフト量調整リングが配置される空間をシールするシールリングを備え、
    前記シールリングの内周部が前記リフト量調整リングの外周部と接触するように構成された燃料噴射弁。
  10. 請求項1又は5に記載の燃料噴射弁において、
    前記上流側部材と前記下流側部材とは軸方向において非接触に隙間が形成されるように配置された燃料噴射弁。
  11. 請求項1又は5に記載の燃料噴射弁において、
    前記リフト量調整リングの内周部は前記上流側部材の外周部と対向するように配置された燃料噴射弁。
  12. 請求項1又は5に記載の燃料噴射弁において、
    前記リフト量調整リングの内周部は前記上流側部材の外周部及び前記下流側部材の外周部と対向するように配置された燃料噴射弁。
  13. 請求項8に記載の燃料噴射弁において、
    前記リフト量調整リングのすべてが前記シールリングに対して径方向内側に位置するように配置された燃料噴射弁。
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