JPWO2018004006A1 - 酸化亜鉛蛍光体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
即ち、酸化亜鉛蛍光体2.0gに純水10mLを加え振り混ぜ、10%硫酸30mLを加え、水浴上でかき混ぜながら加熱したとき、液が泡立たない又は無色透明であり、かつ、酸化亜鉛蛍光体2.0gに純水20mLを加え、かき混ぜながら氷酢酸5mLを加え、水浴上で加熱して溶かし、冷却後、クロム酸カリウム試液を5滴加えたとき、混濁又は白濁しない酸化亜鉛蛍光体でもある。
まず本発明の第一の態様である酸化亜鉛蛍光体の製造方法について説明する。
本発明の酸化亜鉛蛍光体の製造方法は、酸素含有亜鉛化合物及び硫黄含有化合物を混合する原料混合工程と、該工程で得た原料混合物を焼成する焼成工程とを含む。更に、通常の蛍光体の製造時に採用される1又は2以上のその他の工程を含んでもよく、その他の工程は特に限定されない。以下、各工程について更に説明する。
原料混合工程は、酸素含有亜鉛化合物と硫黄含有化合物とを混合する工程である。必要に応じて、酸素含有亜鉛化合物及び硫黄含有化合物以外の原料を更に混合してもよく、各原料はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。原料についてまず説明する。
焼成工程は、上記混合工程で得た混合物を焼成する工程であり、この焼成工程では、還元雰囲気下で焼成した後、酸素含有雰囲気下で焼成する工程が行われる。以下では、還元雰囲気下での焼成を「還元焼成」とも称し、酸素含有雰囲気下での焼成を「酸素含有焼成」とも称す。なお、各焼成での焼成方法は特に限定されず、流動床焼成法であってもよいし、固定床焼成法であってもよい。
、水素と窒素との混合ガス雰囲気が好ましく、この場合、混合ガス中の水素の割合を0.1〜20体積%とすることが好ましい。より好ましくは0.5〜10体積%である。
なお、焼成むら低減のため、均一な温度分布になるように焼成を行うことが好適である。
なお、還元焼成を複数回繰り返して行う場合、その合計の焼成時間が、上述した好ましい焼成時間の範囲内になることが好適である。
なお、焼成むら低減のため、均一な温度分布になるように焼成を行うことが好適である。
なお、還元焼成後に酸素含有焼成を複数回繰り返して行う場合、その合計の焼成時間が、
上述した好ましい焼成時間の範囲内になることが好適である。
本発明では、必要に応じ、還元焼成や酸素含有焼成の前後に粉砕や分級を行ってもよい。特に、還元焼成後で、かつ酸素含有焼成前に、粉砕を行うことが好適である。粉砕は、湿式粉砕、乾式粉砕のいずれでもよいが、乾式粉砕により行うことが好ましい。乾式粉砕では、必要に応じてロールミル、ハンマーミル、流体エネルギーミル、ミックスマラー等の乾式粉砕機を用いてもよい。
本発明ではまた、必要に応じ、上記焼成工程で得られた焼成物について、リパルプ(例えばスラリー化後、撹拌)、ろ過、水洗、粉砕、乾燥等の後処理を行ってもよい。また、必要に応じて篩による分級を行ってもよい。篩による分級は、湿式分級や乾式分級が挙げられる。
本発明では更に、必要に応じ、異元素の添加工程を行ってもよい。これにより、酸化亜鉛蛍光体に異元素に由来する他の特性が付与されるため、様々な用途に有用なものとなる。異元素の添加工程は、本発明の製造方法のうちどの段階で行ってもよい。すなわち焼成工程前、焼成工程中(例えば、還元焼成と酸素含有焼成との間、又は、これらの焼成と同時)、焼成工程後、後処理工程前後のいずれの時点で行ってもよいが、焼成工程前に行うことが好適である。なお、上述したように混合工程でフラックス剤を使用する場合、上記混合工程が「異元素の添加工程」に該当することがある。
本発明では、必要に応じ、得られる酸化亜鉛蛍光体が表面処理を施されたものであってもよい。すなわち本発明の製造方法は、更に表面処理工程を含んでもよい。表面処理工程は、上記焼成工程の後(その後に後処理工程等を行う場合は、これらの後)に行うことが好適である。
面処理剤の使用量を調節することが好ましい。0.1質量%以上とすることで、表面処理による機能性向上効果を発現することができ、30質量%以下とすることで、本来の発光特性を損なわず処理することができ、また経済的な観点で有利である。より好ましくは0.1〜20質量%の範囲である。
次に本発明の第二の態様である酸化亜鉛蛍光体について説明する。
本発明の酸化亜鉛蛍光体は、医薬部外品原料規格(2006年)の「酸化亜鉛」で規定される「炭酸塩及び溶状」並びに「鉛」の純度項目に適合するものである。このような酸化亜鉛蛍光体は、上述した本発明の製造方法によって容易かつ簡便に得ることができる。
なお、BET径が1.2μmを超える場合、粒径の均一性が高いことがより好適である。
本明細書中、D50は、マイクロトラック(レーザー回折・散乱法)による個数基準粒度分布曲線において、積算値が50%となるときの粒径値である。具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
なお、この方法により得られるD50は、1次粒子径又は2次粒子径を示す値であるものの、数値のみから1次粒子径であるか2次粒子径であるかを区別することは難しい。だが、顕微鏡観察写真(例えば図1等参照)の結果を踏まえると、本発明の酸化亜鉛蛍光体について得られるD50は、2次粒子径のD50であると考えられる。
また酸化亜鉛蛍光体は、後述する実施例に記載のヨーロッパ薬局方の「酸化亜鉛」で規定された「Carbonates and substances insoluble in acids」の純度項目に適合するものである。
このような酸化亜鉛蛍光体は安全性に優れるため、例えば、化粧料や医薬品、医薬部外品等の厳しい安全性基準が要求される用途にも好適に適用することができる。特に好ましくは、当該規格の「酸化亜鉛」で規定される全項目に適合することである。
きる。緑色の発光は、視感度が高く、人の目に見えやすいため、このような酸化亜鉛蛍光体は、蛍光体としてより有用なものとなる。この条件でのより好ましい主波長は500〜520nmである。
本明細書中、上記極大発光波長(主波長)は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
本明細書中、内部量子効率は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
本明細書中、BET比表面積は後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
W値は、下記の式(1)に従い、ハンター表色系L(明度)、a(彩度)、b(色相)の各値より算出される。
W=100−{(100−L)2+(a2+b2)}1/2 (1)
次に本発明の第三の態様である化粧料について説明する。
本発明の化粧料は、上述した本発明の酸化亜鉛蛍光体を含む。このような化粧料の製造方法は特に限定されず、通常の化粧料の製法に従えばよい。
固形化粧料を製造する場合には、本発明の酸化亜鉛蛍光体とタルク、セリサイト、及びスクワランを含む原料を混合し、該原料混合物を圧縮成型すればよい。混合方法は特に限定されず、ライカイ機、ボールミル、ブイブレンダ―、スーパーミキサー等を用いて行えばよい。圧縮成型方法は特に限定されず、乾式プレス成型等を用いて行えばよい。
頬紅、マスカラ、口紅等のメイクアップ製品、サンスクリーン剤の他、スキンケア製品、
頭髪製品、紫外線防御用製品等が挙げられ、この場合、蛍光性が付与された化粧料として有用である。中でも、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料や、サンスクリーン剤に特に好適に使用することができる。また、本発明の化粧料は、油性化粧料、水性化粧料、O/W型化粧料、W/O型化粧料等の任意の形態とすることができる。また、化粧料の形状は特に限定されず、例えば液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、多層状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。
評価対象のサンプル(蛍光体、クリーム又は塗膜)の発光物性(発光強度及び主波長)を、蛍光分光光度計(日本分光社製、FP−6500)を用いて測定した。蛍光積分球にはISF−513型を使用し、光電子倍増管(PMT)の電圧の設定値を340として、波長365nmの光で励起したときの極大発光波長(主波長)及び発光強度を測定した。結果を表1、2及び図7〜11に示す。
各粉体(蛍光体)の内部量子効率をQE−2000(大塚電子社製)を用いて測定した。測定波長は300−420nm、5nmステップにて測定を行った。結果を表1に示す。
走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−840F、JSM−7000F)により各粉体の表面等を観察した。得られた顕微鏡写真(SEM写真)を図1、3及び6に示す。
各粉体につき、医薬部外品原料規格(2006年)の「酸化亜鉛」で規定された「炭酸塩及び溶状」並びに「鉛」の純度項目に記載された試験を行った。具体的には、以下の試験を行った。結果を表1に示す。
(1)希硫酸溶解試験
粉体2.0gに純水10mLを加え振り混ぜ、10%硫酸30mLを加え、水浴上でかき混ぜながら加熱した。このとき、液が泡立たない又は無色透明であったもの(表1では「溶解」と記載)は、当該項目に適合するものである。
(2)酢酸溶解試験
粉体2.0gに純水20mLを加え、かき混ぜながら氷酢酸5mLを加え、水浴上で加熱して溶かし、冷却後、クロム酸カリウム試液を5滴加える。このとき、混濁又は白濁しなかったもの(表1では「溶解」と記載)は、当該項目に適合するものである。
当該試験は、韓国化粧品法における、化粧品の色素種類と基準及び試験方法の「酸化亜鉛」で規定された純度試験の中の「炭酸塩と溶融状態」並びに「鉛」の項目の試験と同一であり、米国薬局方における、「Zinc Oxide」で規定された純度試験の中の「LEAD」の項目の試験並びに「IRON AND OTHER HEAVY METALS」の項目の「CARBONATE AND COLOR OF SOLUTION」を用いた試験と同一である。
各粉体につき、ヨーロッパ薬局方の「酸化亜鉛」で規定された試験の中の「Carbonates and substances insoluble in acids」の項目の試験を行った。具体的には、以下の試験を行った。
(1)希塩酸溶解試験
粉体1.0gを希塩酸15mLに溶解させるときに泡立ちはなく、無色であったものは、当該項目に適合するものである。
各粉体につき、レーザー回折型粒度分布測定装置(日機装社、マイクロトラックMT3000)により粒度分布を測定し、粒度分布曲線を得た。この測定ではまず、測定対象の粉末(粉体)を、透過率が0.7〜0.99になるように投入し、流速60%にて、超音波分散及び循環させながら測定を行った。測定時の装置循環水は水とした。そして、この個数基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を、平均粒子径D50(μm)とした。結果を表1に示す。
(1)以下の条件によりBET比表面積(SSA)の測定を行った。結果を表1、3及び4に示す。
−測定条件−
使用機:マウンテック社製、Macsorb Model HM−1220
雰囲気:窒素ガス(N2)
外部脱気装置の脱気条件:105℃−15分
比表面積測定装置本体の脱気条件:105℃−5分
(2)上記で得られたBET比表面積より、下記の計算式(2)を用いてBET径を算出した。但し、酸化亜鉛の密度は、5.67g/cm3である。
BET径=2×3/(BET比表面積×酸化亜鉛の密度) (2)
S分析は、試料を燃焼装置にて燃焼し、Sイオンとしてイオンクロマトグラフを用い、以下の条件により行った。結果を表1に示す。
自動燃焼装置:三菱化学アナリテック社製、NSX−2100シリーズ AQF−2100H型イオンクロマトグラフ:日本ダイオネクス社
雰囲気:Ar 200ml/min, O2 400ml/min
燃焼温度:1100℃
検量線用試料濃度:SO4 2−(ppm)=0.5,1,2,5
なお、検量線用試料は、Pを内標準元素とし、P濃度が1ppmとなるように添加した。
以下の条件により粉末X線回折パターン(単にX線回折パターンともいう)を測定し、ピークの半価幅を算出した。
−分析条件−
使用機:リガク社製、RINT−UltimaIII
線源:CuKα
電圧:50kV
電流:300mA
試料回転速度:60rpm
発散スリット:1.00mm
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
走査モード:FT
計数時間:1.0秒
ステップ幅:0.0200°
操作軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000〜60.0000°
紫外線遮蔽性(紫外線遮蔽能)は、以下のようにして測定した。
粉体2.36gとアルキド樹脂ワニス(大日本インキ社製、ベッコゾールJ−524)5.5g、メラミン樹脂ワニス(大日本インキ社製、スーパーベッカミンJ−820)2.8g、及び、キシレン(試薬特級)5.7gを混合し、1.5mmφガラスビース30gと共に、ペイントコンディショナーにて10分間分散し、分散塗料を得た。次いで、この分散塗料を少量ガラス板上に採取して、12番のバーコーターを用いて成膜した後、130℃で30分間焼き付けて評価膜とした。評価膜の透過率を分光光度計(日本分光社製、V−570型分光光度計及びILN−472型積分球)測定用セルに充填し、分光光度計を用いて測定した。
図2に、実施例1、3及び4で得た蛍光体の結果(300〜400nm)を示す。
赤外線遮蔽性(赤外線遮蔽能)は、以下のようにして測定した。
粉体の反射率を分光光度計(日本分光社製、V−570型分光光度計及びILN−472型積分球)測定用セルに充填し、分光光度計を用いて測定した。
図5に、実施例2、5で得た蛍光体の結果(800〜1400nm)を示す。比較のため、市販品の酸化亜鉛(堺化学工業社製「酸化亜鉛1種」)の反射率スペクトルを併記した。
各試料の滑り性評価は、次のような方法で行った。
スライドガラスに両面テープを貼り付け、粘着面に薬さじ半分程度の粉末(試料)を載せ、化粧用スポンジで粉末を展ばし、その上に摩擦子をセットした。スライドガラスを移動させて、摩擦子にかかる負荷から、平均摩擦係数MIUと平均摩擦係数の変動値MMDを測定した。測定は摩擦感テスター(カトーテック製、KES−SE)により行った。
粉体2.36gとアルキド樹脂ワニス(大日本インキ社製、ベッコゾールJ−524)5.5g、メラミン樹脂ワニス(大日本インキ社製、スーパーベッカミンJ−820)2.8g、及び、キシレン(試薬特級)5.7gを混合し、1.5mmφガラスビース30gと共に、ペイントコンディショナーにて10分間分散し、分散塗料を得た。得られた塗料を粒ゲージにて分散評価を行った。
沈降管に粉体と水を粉体濃度5質量%となるように入れ、分散させ、30分間放置した。
その後、沈降面の高さを測定した。この高さにより、沈降性を評価した。
電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7000F)にて粒子の形状を観察した。SEM画像により5000倍の倍率で10視野撮影した。それぞれの写真1枚に付き、無作為に引いた直線上にある粒子5個の粒子径を算出し、10枚全てについて同様に行い、SEM粒度分布とした。
実施例2及び比較例2で得た各蛍光体(粉体)につき、色度計(日本電色工業株式会社社製、SQ−2000)にて、ハンター表色系L、a及びbを測定し、上記式(1)に従ってW値を計算した。結果を表1に示す。
酸化亜鉛(堺化学工業製、微細酸化亜鉛)20g、硫化亜鉛(堺化学工業製、RAK−T)0.077g、炭酸水素ナトリウム(関東化学社製、特級)0.0105gを秤量し、30分間かけて充分に乾式混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H2/N2雰囲気中で200℃/時にて800℃まで昇温し、そのまま2時間保持した後、200℃/時で降温した。
こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温した。その後、得られた粉体を水洗、ろ過した。ろ過は、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥し、蛍光体Aを得た。
蛍光体A(粉体)について上述した評価試験を行った。結果を表1、図1及び2に示す。
硫化亜鉛の使用量を0.0179gとしたこと以外は、実施例1と同様に乾式混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H2/N2雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま2時間保持した後、200℃/時で降温した。
こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温した。その後、得られた粉体を水洗、ろ過した。ろ過は、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥し、蛍光体Bを得た。
蛍光体B(粉体)について上述した評価試験を行った。結果を表1、図1及び5に示す。
塩基性炭酸亜鉛(堺化学工業製、KCZ)20g、硫化亜鉛(堺化学工業製、RAK−T)0.056gを秤量し、30分間かけて充分に乾式混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H2/N2雰囲気中で200℃/時にて750℃まで昇温し、そのまま2時間保持した後、200℃/時で降温した。
こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温した。その後、得られた粉体を水洗、ろ過した。ろ過は、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥し、蛍光体Cを得た。
蛍光体C(粉体)について上述した評価試験を行った。結果を表1、図1及び2に示す。
実施例3と同様に乾式混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H2/N2雰囲気中で200℃/時にて600℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後、200℃/時で降温した。
こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温した。その後、得られた粉体を水洗、ろ過した。ろ過は、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥し、蛍光体Dを得た。
蛍光体D(粉体)について上述した評価試験を行った。結果を表1、図1及び2に示す。
実施例1と同様に乾式混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H2/N2雰囲気中で200℃/時にて800℃まで昇温し、そのまま2時間保持した後、200℃/時で降温した。
こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕した後、得られた粉体を水洗、ろ過した。ろ過は、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥し、蛍光体Eを得た。
蛍光体E(粉体)について上述した評価試験を行った。結果を表1、図1に示す。
硫化亜鉛の使用量を0.0179gとしたこと以外は、実施例1と同様に乾式混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H2/N2雰囲気中で200℃/時で850℃まで昇温し、そのまま2時間保持した後、200℃/時で降温した。
こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕した後、得られた粉体を水洗、ろ過した。ろ過は、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥し、蛍光体Fを得た。
蛍光体F(粉体)について上述した評価試験を行った。結果を表1、図1に示す。
酸化亜鉛(堺化学工業製、微細酸化亜鉛)20g、硫化亜鉛(堺化学工業製、RAK−T)0.077g、炭酸水素ナトリウム(関東化学社製、特級)0.0105g、炭酸カリウム(高杉製薬社製、試薬特級)0.4309gを秤量し、30分間かけて充分に乾式混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H2/N2雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま2時間保持した後、200℃/時で降温した。
得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、得られた粉体を水洗、
ろ過した。ろ過は、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥した。その後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温した。このようにして、蛍光体Gを得た。
このようにして得たカリウム添加蛍光体(蛍光体G)(粉体)について、実施例1等と同様にPL評価試験及び医薬部外品原料規格試験を行った。結果を表1に示す。また、蛍光体GのSEM写真を図3に示す。蛍光体Gにつき、上述したPL評価を行った際の励起及び発光スペクトルを図4(比較のため、実施例1で得た蛍光体Aの励起及び発光スペクトルを併記した。)に、上述の赤外線遮蔽能評価を行った際の反射率スペクトルを図5に、それぞれ示す。
実施例5と同様に乾式混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H2/N2雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま2時間保持した後、200℃/時で降温した。
得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、得られた粉体を水洗、
ろ過した。ろ過は、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥した。このようにして、蛍光体Hを得た。
このようにして得た蛍光体Hについて、実施例1等と同様にPL評価試験及び医薬部外品原料規格試験を行った。結果を表1に示す。また、蛍光体HのSEM写真を図6に示す。
大気焼成での焼成温度と、得られた蛍光体の物性との関係を検討するために、実施例1における大気焼成温度(700℃)を500〜1000℃の範囲で変更したこと以外は、実施例1と同様にして蛍光体を各々得た。焼成温度と蛍光体の発光強度との関係を示すグラフを図7(a)に、焼成温度と蛍光体のD50との関係を示すグラフを図7(b)に、焼成温度と蛍光体のBET径との関係を示すグラフを図7(c)に、焼成温度と蛍光体の硫黄含有量との関係を示すグラフを図7(d)に、それぞれ示す。
なお、図7〜10(a)では、蛍光体の発光強度は、STD(比較対象)の極大発光波長における発光強度を100とし、これに対する相対的な発光強度として示した。図7(a)では、STDとして、大気焼成を行わなかったこと以外は実施例1と同条件で得た粉体を使用した。図7の各図面の下に、STDの各結果を記載した。
実施例2における大気焼成温度(700℃)を500〜1000℃の範囲で変更したこと以外は、実施例2と同様にして蛍光体を各々得た。焼成温度と蛍光体の発光強度との関係を示すグラフを図8(a)に、焼成温度と蛍光体のBET比表面積との関係を示すグラフを図8(b)に、焼成温度と蛍光体のBET径との関係を示すグラフを図8(c)に、焼成温度と蛍光体の硫黄含有量との関係を示すグラフを図8(d)に、それぞれ示す。
図8(a)では、STDとして、大気焼成を行わなかったこと以外は実施例2と同条件で得た粉体を使用した。図8の各図面の下に、STDの各結果を記載した。
実施例3における大気焼成温度(700℃)を500〜900℃の範囲で変更したこと以外は、実施例3と同様にして蛍光体を各々得た。焼成温度と蛍光体の発光強度との関係を示すグラフを図9(a)に、焼成温度と蛍光体のBET比表面積との関係を示すグラフを図9(b)に、焼成温度と蛍光体のBET径との関係を示すグラフを図9(c)に、焼成温度と蛍光体の硫黄含有量との関係を示すグラフを図9(d)にそれぞれ示す。
図9(a)では、STDとして、大気焼成を行わなかったこと以外は実施例3と同条件で得た粉体を使用した。図9の各図面の下に、STDの各結果を記載した。
実施例4における大気焼成温度(700℃)を500〜900℃の範囲で変更したこと以外は、実施例4と同様にして蛍光体を各々得た。焼成温度と蛍光体の発光強度との関係を示すグラフを図10(a)に、焼成温度と蛍光体のBET比表面積との関係を示すグラフを図10(b)に、焼成温度と蛍光体のBET径との関係を示すグラフを図10(c)に、それぞれ示す。
図10(a)では、STDとして、大気焼成を行わなかったこと以外は実施例4と同条件で得た粉体を使用した。図10の各図面の下に、STDの各結果を記載した。
酸化亜鉛(堺化学工業製、微細酸化亜鉛)20g、硫化亜鉛(堺化学工業製、RAK−T)0.077g、炭酸水素ナトリウム(関東化学製、特級)0.0105gを秤量し、30分間かけて充分に乾式混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H2/N2雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま2時間保持した後、200℃/時で降温した。こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温した。その後、得られた粉体を水洗、ろ過した。ろ過は、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥し、蛍光体Iを得た。この蛍光体Iの各種物性を表1に示す。
実施例1で得た蛍光体Aを用いて、上記「9、紫外線遮蔽能」に記載した評価膜の作製方法と同様にして、塗膜Aを作製した。塗膜AについてPL評価試験を行った。結果を表2に示す。
実施例2で得た蛍光体Bを用いた以外は実施例11と同様の方法で塗膜Bを作製した。塗膜BについてPL評価試験を行った。結果を表2に示す。
実施例3で得た蛍光体Cを用いた以外は実施例11と同様の方法で塗膜Cを作製した。塗膜CについてPL評価試験を行った。結果を表2に示す。
実施例4で得た蛍光体Dを用いた以外は実施例11と同様の方法で塗膜Dを作製した。塗膜DについてPL評価試験を行った。結果を表2に示す。
実施例10で得た蛍光体Iを用いた以外は実施例11と同様の方法で塗膜Iを作製した。塗膜IについてPL評価試験を行った。結果を表2に示す。
また表2の結果に基づいて、蛍光体(粉体)の粒子径(BET径)とそれを用いた塗膜の発光強度との関係を検討したグラフを図11(a)に、粉体のBET径とその粉体自体の発光強度との関係を検討したグラフを図11(b)に、それぞれ示す。
酸化亜鉛(堺化学工業製、微細酸化亜鉛)2000g、硫化亜鉛(堺化学工業製、RAK−T)7.8g、炭酸水素ナトリウム(高杉製薬製)84.8gを秤量し、Vブレンダーを使用して10分間かけて乾式混合を行った。得られた原料混合粉1500gをアルミナ匣鉢に充填し、3体積%H2/N2雰囲気中で150℃/時にて840℃まで昇温し、そのまま2時間保持した後、150℃/時で降温した。
得られた焼成物を、遊星ボールミルを使用して湿式解砕し、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を行った。得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥した。乾燥粉をアルミナ匣鉢に全量充填した後、大気雰囲気にて150℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、150℃/時で降温した。得られた粉体を水洗、ろ過し、得られたケーキを130℃の乾燥機で一晩乾燥して蛍光体Jを得た。この蛍光体Jの各種物性を表1に示す。
表3に示す組成の固形化粧料を製造し、UV照射時の発光の有無と肌に塗布した時の発光のキメ細やかさを評価した。
[製造方法]
成分1〜14を均一に混合し、プレスすることによりファンデーション(固形化粧料)を得た。
[評価方法]
(UV照射時の発光の有無)使用例で得られた固形化粧料0.3gをバイオスキンに均一に塗布し、UVランプ(フナコシ社製、CompactUV Lamp,4W,UVGL−25,254/365nm,100V)を用いて、波長365nm、発光強度720μW/cm2のUVを照射し、発光の有無を確認した。(塗布時の発光のキメ細やかさ)
少量の粉体を肌の上に置き、指で粉体を引き伸ばして塗布した。粉体を塗布した肌にUVランプを当てて、発光のキメ細かさを観察した。以下の基準で評価した。
○;キメが細かい
△;ややキメが細かい
×;キメが荒い
実施例1〜4は本発明の製造方法により蛍光体を作製した例であるが、比較例1、2は還元焼成後に酸素含有焼成を行わなかった点で、主に実施例1、2と相違する例である。この場合、表1より、比較例1、2で得た蛍光体は、硫黄含有量が多く、医薬部外品原料規格(2006年)の「酸化亜鉛」で規定される「炭酸塩及び溶状」並びに「鉛」の純度項目に適合しなかった。一方、実施例1、2で得た蛍光体は、粒径が小さく、硫黄含有量が充分に低減され、各純度項目にも適合しており、しかも比較例1、2に比較して内部量子効率や発光強度も充分に向上されている他、白色度も高い。実施例3、4で得た蛍光体は、実施例1、2で得た蛍光体よりも粒径が更に小さいが、この場合も各純度項目に適合しており、安全性が高いことが分かる。また、図2より実施例1、3及び4で得た蛍光体は紫外線遮蔽性に優れること、図5より実施例2で得た蛍光体は赤外線遮蔽性に優れることも確認された。なお、図2では、粒径が小さくなるほど紫外線領域の透過率は低下していることから、小粒子化による紫外線遮蔽性向上が確認できた。
従って、本発明の製造方法により、安全性や発光強度が高い酸化亜鉛蛍光体を容易かつ簡便に与えることができることが分かった。
なお、表等には示していないが、実施例1〜4及び10、16で得た蛍光体は、分散性に優れ、沈降性が改善されることも確認した。また、実施例1〜10、16で得た蛍光体は、医薬部外品原料規格(2006年)の「酸化亜鉛」で規定される「炭酸塩及び溶状」並びに「鉛」以外の純度項目を含め、全ての項目に適合することを確認した。また、実施例1〜10、16で得た蛍光体は、ヨーロッパ薬局方の「酸化亜鉛」で規定された試験の中の「Carbonates and substances insoluble in acids」の項目の試験に合格することを確認した。
Claims (8)
- 酸化亜鉛蛍光体を製造する方法であって、
該製造方法は、酸素含有亜鉛化合物及び硫黄含有化合物を混合する原料混合工程と、該工程で得た原料混合物を焼成する焼成工程とを含み、
該焼成工程は、還元雰囲気下で焼成した後、酸素含有雰囲気下で焼成する工程を含む
ことを特徴とする酸化亜鉛蛍光体の製造方法。 - 前記酸素含有雰囲気下での焼成は、焼成温度500℃以上、1000℃未満にて行う
ことを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛蛍光体の製造方法。 - 前記酸化亜鉛蛍光体は、化粧料原料である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化亜鉛蛍光体の製造方法。 - 医薬部外品原料規格(2006年)の「酸化亜鉛」で規定される「炭酸塩及び溶状」並びに「鉛」の純度項目に適合する
ことを特徴とする酸化亜鉛蛍光体。 - BET径が1.2μm以下である
ことを特徴とする請求項4に記載の酸化亜鉛蛍光体。 - 請求項4に記載の酸化亜鉛蛍光体を含む
ことを特徴とする固形化粧料。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で得られた酸化亜鉛蛍光体、タルク、セリサイト、及び油性成分を含む原料を混合し、該原料混合物を圧縮成型する工程を含むことを特徴とする固形化粧料の製造方法。
- 酸化亜鉛蛍光体2.0gに純水10mLを加え振り混ぜ、10%硫酸30mLを加え、水浴上でかき混ぜながら加熱したとき、液が泡立たない又は無色透明であり、かつ、
酸化亜鉛蛍光体2.0gに純水20mLを加え、かき混ぜながら氷酢酸5mLを加え、水浴上で加熱して溶かし、冷却後、クロム酸カリウム試液を5滴加えたとき、混濁又は白濁しない
ことを特徴とする酸化亜鉛蛍光体。
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