JP7087883B2 - リン酸カルシウムセリウム蛍光体 - Google Patents
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CaxPyOz (1)
(式中、x、y及びzはそれぞれ、3.2≦x≦5.0、1.9≦y≦2.1、z=x+5を表す。)で表される化合物に、該化合物中のリン1molに対して0.0005~0.05molの割合でセリウムを含む複合酸化物であることが好ましい。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmであり、かつ、JIS K5101-17-1(2004年)の顔料試験方法によるpH値が8.0~10.5であることを特徴とする。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、蛍光体であるリン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理することで得られるものであり、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmであることで、水分と接触した場合のpHの上昇が効果的に抑制され、かつ、蛍光体表面の変質による化粧料としての使用感の悪化もない蛍光体となる。
リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量は、好ましくは、2000~10000ppmであり、より好ましくは、3000~5000ppmである。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体中の硫黄含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
主波長が420nm以上であると、発光の中に紫外線を含む割合が低くなる点で好ましい。このような主波長は、組成の調整や後述する添加物によって変化するものであり、これらの要素を調整することによって、主波長が420nmから480nmの間のものとすることができる。上記主波長が430nmから475nmの間であることがより好ましく、440nmから473nmであることが更に好ましい。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の主波長は、後述の分光蛍光光度計による測定法により測定することができる。
可視光領域の励起光によって発光する蛍光体は、可視光領域の励起光でも蛍光を発するものであるため、紫外線を有さず主として可視光領域からなるような室内光に対しても蛍光を発するものである。このため、屋外・室内ともに発光するような化粧料材料として使用することができる。
CaxPyOz (1)
(式中、x、y及びzはそれぞれ、3.2≦x≦5.0、1.9≦y≦2.1、z=x+5を表す。)で表される化合物に、該化合物中のリン1molに対して0.0005~0.05molの割合でセリウムを含む複合酸化物であることが好ましい。このような、リン酸カルシウム中にセリウム元素をドープした化学構造を有する化合物は、人体へ悪影響を与えるとされる元素種を使用することなく得られる、青色の蛍光を有する化合物である。その発光特性は、幅広い波長領域での発光を生じるものであることから、自然で視認しやすいものとなる点で好ましい。
その他の元素の具体的な含有量は特に限定されるものではないが、リン酸カルシウムセリウム蛍光体に対して10重量%以下であることが好ましい。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体に含まれる各種元素の種類及びその含有量は、後述の誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定することができる。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布装置にて粒度分布を測定して、D50を算出することにより得ることができる。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の粒径分布は、レーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製 MT3300EX)を用い、回折光量(DV)が0.01~0.2になるようにイオン交換水とサンプルを混合して測定することで得ることができる。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体のD90/D50は、上述したレーザー回折式粒度分布装置にて粒度分布を測定して、D90、D50を算出することにより得ることができる。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体のBET比表面積は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の発光強度比は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の化粧料としては、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ、頬紅、マスカラ、口紅、サンスクリーン剤等を挙げることができる。本発明の化粧料は、油性化粧料、水性化粧料、O/W型化粧料、W/O型化粧料の任意の形態とすることができる。なかでも、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料やサンスクリーン剤において特に好適に使用することができる。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造方法は、蛍光体であるリン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理し、該複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量を1500~15000ppmとする工程を含むことを特徴とする。
このように、硫酸及び/又は硫酸塩を用いてリン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物の表面処理を行い、所定の硫黄含有量とすることで、リン酸カルシウムセリウム蛍光体を化粧料に使用した場合の使用感や蛍光体としての発光特性に優れるとともに、水分と接触した場合のpHの上昇も抑制された蛍光体とすることができる。硫酸及び/又は硫酸塩の使用量は、上記複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmとなる量であれば特に限定されないが、好ましくは、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対して、1~15重量%であり、より好ましくは、2~13重量%である。
ろ過方法は、例えば、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心分離、デカンテーション、フィルタープレス等が挙げられる。
また、乾燥方法は、例えば、加熱乾燥や減圧乾燥等の乾燥方法が挙げられる。加熱乾燥における条件としては、例えば100~140℃で30分~24時間とすることが好ましい。
上記硫酸は、特に制限されないが濃度98%以下のものが好ましい。また、上記硫酸塩は、硫酸アンモニウム及び硫酸水素カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。硫酸及び/又は硫酸塩としてこれらのいずれかを用いることで、得られるリン酸カルシウムセリウム蛍光体が、水分と接触した場合のpHの上昇がより十分に抑制されたものとなる。硫酸及び/又は硫酸塩としては、これらの中でも硫酸アンモニウムが好ましい。
上記脂肪酸としては、2重結合や水酸基等の官能基の有無は問わないが、炭素数が8~30の脂肪酸であることが好ましい。このような脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;等が挙げられる。これらは、置換基(例えば、ヒドロキシル基、カルボニル基、エポキシ基等)を更に有していてもよい。これらの中でも、コストや経時安定性等の観点から飽和脂肪酸が好ましく、特にステアリン酸が好ましい。
乾式混合は、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー、Vブレンダー等の一般的な混合装置や、ハンマーミルや高圧エアージェットミル、あるいはこれらの組み合わせたものを用いて行うことができる。
湿式混合は、例えば、原料化合物を水性ディスパージョンとし、撹拌もしくはビーズミルや遊星ボールミルなどの湿式メディアミルを用いて混合する方法等により行うことができる。湿式混合した後に全量を蒸発乾燥すれば、混合粉が得られる。
共沈は、原料化合物の水溶液を中和して沈殿物として得る方法により行うことができる。
また焼成時間は十分に焼成することと製造効率とを考慮すると、1~12時間であることが好ましい。より好ましくは、2~6時間である。
分級工程、水洗工程、粉砕工程、乾燥工程は、リン化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物を含む原料を混合する工程と原料混合物を還元焼成する工程との間に行ってもよく、原料混合物を還元焼成する工程の後に行ってもよい。
焼成温度は特に限定されないが、500~1600℃であることが好ましい。このような温度で行うと、原料化合物を混合した後の混合物からの揮発物を充分に揮発させることができ、後の還元焼成時の雰囲気が変化することを十分に防ぐことができ、1600℃以下であると、過剰な焼結を抑制でき、化粧料へ用いた時の分散性に優れた蛍光体とすることができる。予備焼成の温度は、より好ましくは、600~1550℃である。
カリウム化合物としては、例えば、カリウムの炭酸塩、酸化物、リン酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物、有機酸塩、ホウ酸塩、等を挙げることができる。これらのなかでも、炭酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、二リン酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウムが好ましい。
(1)発光強度比
各粉体(蛍光体)の発光物性(発光強度)を、分光蛍光光度計(日本分光社製、FP-8600)を用いて測定した。蛍光積分球にはISF-834型を使用し、光電子倍増管(PMT)の電圧の設定値を340として、波長365nmの光で励起したときの極大発光波長(主波長)及び発光強度を測定した。測定範囲は380~720nmとし、蛍光スペクトルを測定したところ、460nm付近で強い発光を示した。比較例1の極大発光波長における発光強度を100とした場合の、各蛍光体の極大発光波長での発光強度を発光強度比として相対評価した。
(2)組成式の同定
以下の条件により粉末X線回折パターン(単にX線回折(XRD)パターンともいう)を測定した。
-分析条件-
使用機:リガク社製、RINT-TTRIII
線源:CuKα
電圧:50kV
電流:300mA
試料回転速度:60rpm
発散スリット:1.00mm
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
走査モード:連続
スキャンスピード:1
計数単位:Counts
ステップ幅:0.0100°
操作軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000~70.0000°
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の組成式の同定には、JCPDSカードを用いた。なお、JCPDSカードとは、各種物質のX線回折法によるピークプロファイルをまとめたものである。
Ca4P2O9:JCPDSカード 00-025-1137
マウンテック製Macsorb HM-1220を用い、脱気温度230℃、脱気時間35分の条件で、比表面積を測定した。
(4)粒度分布
レーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製 MT3300EX)にて粒度分布を測定し、体積基準粒度分布曲線(粒径分布ともいう)を得た。この時、回折光量(DV)が0.01~0.2になるようにイオン交換水とサンプルを混合して測定を行った。体積基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を、平均粒子径D50(μm)とした。同様に、積算値が90%のときの粒径値を、D90(μm)とした。
(5)ICP発光分光分析
各粉体中の元素含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(SII社製、ICP SPS3100)を用い、スカンジウム(Sc)を内標準とした検量線法によって求めた。測定試料は、塩酸に溶解して作製したが、難溶性の場合は四ホウ酸リチウムを用いたアルカリ溶融法により調製した。
(6)顔料試験方法によるpH値
JIS K5101-17-1(2004年)の顔料試験方法に則してpH値を測定した。
(7)スラリーのpH安定性
蛍光体2gを蒸留水30gとエタノール20gの混合溶媒に混合し、50℃にて1時間撹拌した。得られたスラリーのpHを測定することにより、溶液中でのpH安定性を評価した。
実施例1
(1)蛍光体の合成
炭酸カルシウム20.35g(堺化学工業社製、CWS-20)、酸化セリウム0.17g(信越化学工業社製)、リン酸アンモニウム11.45g(米山化学工業社製)、を秤量し、イオン交換水中に入れて遊星ボールミルを用いて十分に混合した。ついで、その混合物をアルミナ製坩堝に充填して、大気雰囲気中で200℃/時で850℃まで昇温し、そのまま3時間保持後、200℃/時で降温した。得られた焼成粉を遊星ボールミルを用いて十分に混合粉砕した。粉砕スラリーを130℃の乾燥機で一晩乾燥させて乾燥粉を得た。ついでその乾燥粉をアルミナ製坩堝に充填して、水素3体積%の窒素雰囲気で200℃/時で1400℃まで昇温し、そのまま8時間保持後、200℃/時で降温した。その焼成粉を遊星ボールミルを用いて粉砕することにより、リン酸カルシウムセリウム蛍光体を得た。この蛍光体の組成式は、Ca4.08P2O9.08であり、Ce量はリン1molに対して0.01molであり、平均粒子径D50は6.3μmであった。
(2)硫酸(塩)処理工程
上記「(1)蛍光体の合成」により得られたリン酸カルシウムセリウム蛍光体50gと、硫酸アンモニウム5.7gと、イオン交換水100gを秤量し、遊星ボールミルを用いて充分に混合した。得られたスラリーをろ過し、得られたケーキを130℃の温度で18時間乾燥することにより、リン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例1の「(2)硫酸(塩)処理工程」により得られた蛍光体40gを秤量し、遊星ボールミルを用いて充分に粉砕した。得られたスラリーを50℃に加熱し、ステアリン酸ナトリウム0.8gを添加して1時間撹拌した。得られたスラリーをろ過し、得られたケーキを130℃の温度で18時間乾燥することにより、リン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。得られた蛍光体の平均粒子径D50は5.9μmであった。
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」での硫酸アンモニウムの添加量を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例1の「(2)硫酸(塩)処理工程」により得られた蛍光体20gと、ハイドロゲンジメチコン(信越化学工業社製、KF-9901)を0.4g秤量し、十分に乾式混合した。得られた粉体を130℃の温度で18時間乾燥することにより、リン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸(濃度95%)を表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸水素カリウムを表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例1の「(1)蛍光体の合成」のみを行って得られたリン酸カルシウムセリウム蛍光体を比較例1の蛍光体とした。
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸(濃度95%)を表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸ナトリウムを表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸水素カリウムを表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸カリウムを表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
したがって、本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、化粧料としての使用感や蛍光体としての発光特性に優れ、かつ、水分と接触した状態でもpHが安定化されることを確認した。
Claims (5)
- リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmであり、かつ、JIS K5101-17-1(2004年)の顔料試験方法によるpH値が8.0~10.5であることを特徴とするリン酸カルシウムセリウム蛍光体。
- 前記リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物が、下記式(1):
CaxPyOz (1)
(式中、x、y及びzはそれぞれ、3.2≦x≦5.0、1.9≦y≦2.1、z=x+5を表す。)で表される化合物に、該化合物中のリン1molに対して0.0005~0.05molの割合でセリウムを含む複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のリン酸カルシウムセリウム蛍光体。 - 請求項1又は2に記載のリン酸カルシウムセリウム蛍光体を含有することを特徴とする化粧料。
- リン酸カルシウムセリウム蛍光体を製造する方法であって、
該製造方法は、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理し、該複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量を1500~15000ppmとする工程を含むことを特徴とするリン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造方法。 - 前記硫酸塩は、硫酸アンモニウム及び硫酸水素カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載のリン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造方法。
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