JP7087883B2 - リン酸カルシウムセリウム蛍光体 - Google Patents

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Description

本発明は、リン酸カルシウムセリウム蛍光体に関する。
従来より、蛍光体によって生じる発色によって肌を明るく見せること等の効果を期待して蛍光体を化粧料に配合することが行われており、そのような蛍光体の1つにリン酸カルシウム系蛍光体がある。リン酸カルシウム系蛍光体としては、リン酸四カルシウムセリウム蛍光体(Ca:Ce)が挙げられ、化粧品用蛍光体材料の母体としての利用以外にも、皮脂吸着による化粧崩れの抑制や、光散乱によるソフトフォーカス効果の実現などのために使用される等、その使用目的は多岐にわたる。
リン酸カルシウム系蛍光体には、水分と接触すると部分的に反応し、スラリーのpHが塩基性側に上昇する問題がある。スラリーのpHが塩基性側に上昇すると、肌に塗布した場合に皮膚への刺激性が懸念される他、化粧料の他成分への悪影響も懸念される。例えば保湿成分としてヒアルロン酸を添加しようとする場合、ヒアルロン酸はpH条件により粘度が変化するため、期待した保湿効果が得られなくなってしまう可能性がある。リン酸カルシウム系蛍光体をpH調整して中性または弱酸性領域で安定化する目的で酸を加えた場合、一旦、目的のpH領域に調整しても経時的なpH変化(高pH化)を起こしてしまい、目的のpHで安定化させることができなかった。
このため、リン酸カルシウム系蛍光体は、その用途に応じて各種の表面処理を施し、各用途に最適な表面状態とする必要がある。一般的なリン酸カルシウムの表面処理方法としては、「ステアリン酸などの脂肪酸とリン酸カルシウム表面のカルシウムを反応させる方法」「有機シランなどにより表面を疎水化する方法」などが挙げられる。例えば、特許文献1には、セラミック中空粒子に関し、リン酸四カルシウム等のカルシウム系無機材料に0.5~5重量%のステアリン酸で処理することが開示されている。
特開2009-274934号公報
上述したリン酸カルシウムの表面処理方法は、主に上述したスラリー化した場合のpHの安定化等のためにリン酸カルシウム表面の水への溶解性を低減し、耐水性を高める目的で用いられている。これらの方法で十分な耐水性を得るためには、各表面処理剤を高濃度で用いて表面処理する必要があるが、このような耐水性を目的とした表面処理方法では、表面処理量が非常に多いため、粉体感触や化粧もち等の化粧料としての使用感や、化粧料用蛍光体材料として有用であるための十分な発光特性が得られない等の課題があった。
本発明は、上記現状に鑑み、化粧料としての使用感や蛍光体としての発光特性に優れ、かつ、水分と接触した状態でもpHが安定化されたリン酸カルシウム系蛍光体を提供することを目的とする。
本発明者らは、化粧料としての使用感や蛍光体としての発光特性を維持しつつ、水分と接触した状態でもpHが安定化されたリン酸カルシウム系蛍光体について検討し、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対して、1~15重量部の硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理をする工程を含む製造方法によって得られる、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmであり、かつ、JIS K5101-17-1(2004年)の顔料試験方法によるpH値が8.0~10.5であるリン酸カルシウムセリウム蛍光体が、化粧料としての使用感や蛍光体としての発光特性に優れ、更に水分と接触した状態でもpHが安定化された蛍光体であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmであり、かつ、JIS K5101-17-1(2004年)の顔料試験方法によるpH値が8.0~10.5であることを特徴とするリン酸カルシウムセリウム蛍光体である。
上記リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物が、下記式(1):
Ca (1)
(式中、x、y及びzはそれぞれ、3.2≦x≦5.0、1.9≦y≦2.1、z=x+5を表す。)で表される化合物に、該化合物中のリン1molに対して0.0005~0.05molの割合でセリウムを含む複合酸化物であることが好ましい。
本発明はまた、本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体を含有することを特徴とする化粧料でもある。
本発明はまた、リン酸カルシウムセリウム蛍光体を製造する方法であって、該製造方法は、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理し、該複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量を1500~15000ppmとする工程を含むことを特徴とするリン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造方法でもある。
上記硫酸塩は、硫酸アンモニウム及び硫酸水素カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、化粧料に使用した場合の使用感や蛍光体としての発光特性に優れるとともに、水分と接触した状態でもpHが安定化された蛍光体であることから肌への刺激が低く、リキッドファンデーション等の液体化粧料の原料としても好適に使用することができる。
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
1.リン酸カルシウムセリウム蛍光体
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmであり、かつ、JIS K5101-17-1(2004年)の顔料試験方法によるpH値が8.0~10.5であることを特徴とする。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、蛍光体であるリン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理することで得られるものであり、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmであることで、水分と接触した場合のpHの上昇が効果的に抑制され、かつ、蛍光体表面の変質による化粧料としての使用感の悪化もない蛍光体となる。
リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量は、好ましくは、2000~10000ppmであり、より好ましくは、3000~5000ppmである。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体中の硫黄含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、JIS K5101-17-1(2004年)の顔料試験方法によるpH値が8.0~10.5である。このようなpHであることで、皮膚への刺激性が充分に低減されるため、化粧料等の直接肌に触れる用途に特に有用なものとなる。pH値は、好ましくは、8.5~10.2であり、より好ましくは、9.0~9.8である。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、波長が365nmの励起光を照射した際の、発光スペクトルの極大発光波長(主波長ともいう)が420nmから480nmの間であることが好ましい。
主波長が420nm以上であると、発光の中に紫外線を含む割合が低くなる点で好ましい。このような主波長は、組成の調整や後述する添加物によって変化するものであり、これらの要素を調整することによって、主波長が420nmから480nmの間のものとすることができる。上記主波長が430nmから475nmの間であることがより好ましく、440nmから473nmであることが更に好ましい。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の主波長は、後述の分光蛍光光度計による測定法により測定することができる。
また本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、可視光領域の励起光によって発光するものとすることもできる。可視光領域の励起光によって発光する蛍光体とは、波長が405nmの励起光を照射した際に、発光スペクトルの主波長が485nmから510nmの間である発光を示す蛍光体である。
可視光領域の励起光によって発光する蛍光体は、可視光領域の励起光でも蛍光を発するものであるため、紫外線を有さず主として可視光領域からなるような室内光に対しても蛍光を発するものである。このため、屋外・室内ともに発光するような化粧料材料として使用することができる。
上記リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物は、下記式(1):
Ca (1)
(式中、x、y及びzはそれぞれ、3.2≦x≦5.0、1.9≦y≦2.1、z=x+5を表す。)で表される化合物に、該化合物中のリン1molに対して0.0005~0.05molの割合でセリウムを含む複合酸化物であることが好ましい。このような、リン酸カルシウム中にセリウム元素をドープした化学構造を有する化合物は、人体へ悪影響を与えるとされる元素種を使用することなく得られる、青色の蛍光を有する化合物である。その発光特性は、幅広い波長領域での発光を生じるものであることから、自然で視認しやすいものとなる点で好ましい。
上記式(1)は、リン酸カルシウム中において部分的にセリウムがドープしたものであるが、化学的な等量から若干のずれを持ったものであってもよく、このような観点から、3.2≦x≦5.0の範囲であればよい。好ましくは、3.6≦x≦4.7であり、更に好ましくは、4.0<x≦4.7という、カルシウムが若干過多のものである。カルシウムが過多のものは、発光特性が良好なものとなる点で好ましい。更に、カルシウム過多であると、焼成工程時の過剰な焼結を防ぎ、その後の解砕を容易にすることができるため、平均粒子径を後述する好適な範囲内に制御する上で有利なものとなる点でも好ましい。
上記複合酸化物は、上記式(1)で表される化合物に、該化合物中のリン1molに対して0.0005~0.05molの割合でセリウムを含むものであるが、複合酸化物中のセリウムの含有量は、式(1)で表される化合物中のリン1molに対して0.0006~0.045molであることがより好ましく、更に好ましくは、0.0007~0.04molである。セリウム量の増加に伴って主波長が長波長側へとシフトするため、これを利用することで、本発明の蛍光体の色調を調整することができる。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、その他の元素を人体への安全性や性能に影響が及ぼさない範囲で含有していても良い。その他の元素としては例えば、Li、Na、K等のアルカリ金属元素;Be、Ra等のアルカリ土類金属元素;Y、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Pb、Gd等のその他金属元素;F等の非金属元素を挙げることができる。
その他の元素の具体的な含有量は特に限定されるものではないが、リン酸カルシウムセリウム蛍光体に対して10重量%以下であることが好ましい。
上記その他の元素の中でも、本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体が、リン酸カルシウムセリウム蛍光体の重量に対してカリウムを20~10000ppm含むものであることは本発明の好適な実施形態の1つである。リン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造時にカリウム化合物を使用すると、蛍光体の還元焼成物の粉砕を効率よく行うことができ、蛍光体を容易に好ましい粒子径のものにすることができる。上記カリウム量の下限は、25ppmであることがより好ましく、30ppmであることが更に好ましい。上記カリウム量の上限は、5000ppmであることがより好ましく、1000ppmであることが更に好ましい。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体に含まれる各種元素の種類及びその含有量は、後述の誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定することができる。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、平均粒子径が1~10μmであることが好ましい。このような平均粒子径であると、リン酸カルシウムセリウム蛍光体を使用した化粧料が使用感により優れたものとなる。リン酸カルシウムセリウム蛍光体の平均粒子径は、より好ましくは、2~9μmであり、更に好ましくは、3~8μmである。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布装置にて粒度分布を測定して、D50を算出することにより得ることができる。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、レーザー回折式粒度分布装置にて測定した体積基準粒度分布曲線において、30μm以上の粒子が15体積%以下であることが好ましい。上記範囲であると、肌へ塗布したときにざらつきを感じにくい。また、粒径分布において、粒子径0.5μm以下の粒子が10体積%以下であることが好ましい。上記範囲であると、発光強度の低下を抑制できる。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の粒径分布は、レーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製 MT3300EX)を用い、回折光量(DV)が0.01~0.2になるようにイオン交換水とサンプルを混合して測定することで得ることができる。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、D90/D50が3以下であることが好ましい。D90/D50が3以下であると、粗大粒子が充分に少ないものとなるため、粒子の使用感をより良好にすることができる。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体のD90/D50は、上述したレーザー回折式粒度分布装置にて粒度分布を測定して、D90、D50を算出することにより得ることができる。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、BET比表面積が、0.2~20m/gであることが好ましい。BET比表面積がこのような範囲であると、リン酸カルシウムセリウム蛍光体が発光強度と化粧料としての感触の良さにより優れたものとなる。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体のBET比表面積は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、表面処理を施していない初期のリン酸カルシウムセリウム蛍光体の極大発光波長での発光強度を100とした場合、その発光強度に対する表面処理後のリン酸カルシウムセリウム蛍光体の発光強度比が60以上であることが好ましい。一般的に、蛍光体は表面処理を施すことにより発光強度が低下するため、発光強度が低下し過ぎない程度に表面処理量を抑制する必要がある。発光強度の比がこのような範囲であると、化粧料としたときに十分な発光を得ることができる。発光強度比は、より好ましくは65以上であり、さらに好ましくは72以上である。
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の発光強度比は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の化粧料用蛍光体は、一次粒子であっても、一次粒子が凝集した凝集粒子であってもよい。凝集粒子は、粒子径の大きい粒子や真球状の形状とすることが容易である点で好ましい。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、化粧料としての使用感や蛍光体としての発光特性を維持し、かつ、水分と接触した場合のpHの上昇も抑制された蛍光体である。したがって、化粧料、医薬品、医薬部外品、放射線遮蔽材、塗料、樹脂材料、触媒、印刷用トナー、滑材等の他、各種製品に好ましく配合される。中でも特に、化粧料の原料として好適に用いることができ、本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体を含む化粧料は、保存時のpHの安定性に優れ、pHにより粘度が変化するヒアルロン酸等の保湿成分の配合も可能となる。このような、リン酸カルシウムセリウム蛍光体を含有することを特徴とする化粧料もまた、本発明の1つである。
本発明の化粧料としては、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ、頬紅、マスカラ、口紅、サンスクリーン剤等を挙げることができる。本発明の化粧料は、油性化粧料、水性化粧料、O/W型化粧料、W/O型化粧料の任意の形態とすることができる。なかでも、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料やサンスクリーン剤において特に好適に使用することができる。
本発明の化粧料は、上記化粧料用蛍光体以外に、化粧品分野において使用することができる任意の水性成分、油性成分を併用するものであってもよい。水性成分及び油性成分としては特に限定されず、例えば、油分、界面活性剤、保湿剤、高級アルコール、金属イオン封鎖剤、天然及び合成高分子、水溶性及び油溶性高分子、紫外線遮蔽剤、各種抽出液、無機及び有機顔料、無機及び有機粘土鉱物等の各種粉体、金属石鹸処理又はシリコーンで処理された無機及び有機顔料、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等が挙げられる。これらの成分としては公知のものを用いることができ、その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
2.リン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造方法
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造方法は、蛍光体であるリン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理し、該複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量を1500~15000ppmとする工程を含むことを特徴とする。
このように、硫酸及び/又は硫酸塩を用いてリン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物の表面処理を行い、所定の硫黄含有量とすることで、リン酸カルシウムセリウム蛍光体を化粧料に使用した場合の使用感や蛍光体としての発光特性に優れるとともに、水分と接触した場合のpHの上昇も抑制された蛍光体とすることができる。硫酸及び/又は硫酸塩の使用量は、上記複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmとなる量であれば特に限定されないが、好ましくは、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対して、1~15重量%であり、より好ましくは、2~13重量%である。
上記リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理する工程は、複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmとなるように表面処理をする工程であればよいが、複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量は、好ましくは、2000~10000ppmであり、更に好ましくは、3000~5000ppmである。
上記リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理する方法は、複合酸化物が表面処理されることになる限り特に制限されないが、例えば、水性溶媒に上記複合酸化物と硫酸及び/又は硫酸塩を添加し、撹拌もしくはビーズミルや遊星ボールミルなどの湿式メディアミルを用いて混合する方法等により行うことができる。混合した後、ろ過、乾燥等を経て、リン酸カルシウムセリウム蛍光体を得ることができる。
ろ過方法は、例えば、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心分離、デカンテーション、フィルタープレス等が挙げられる。
また、乾燥方法は、例えば、加熱乾燥や減圧乾燥等の乾燥方法が挙げられる。加熱乾燥における条件としては、例えば100~140℃で30分~24時間とすることが好ましい。
上記水性溶媒は、水もしくは水と極性有機溶媒とを任意の比率で混合した溶媒である。極性有機溶媒としては、水と任意の比率で混合可能なものであれば良く、具体的には例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では水が好ましい。
上記硫酸は、特に制限されないが濃度98%以下のものが好ましい。また、上記硫酸塩は、硫酸アンモニウム及び硫酸水素カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。硫酸及び/又は硫酸塩としてこれらのいずれかを用いることで、得られるリン酸カルシウムセリウム蛍光体が、水分と接触した場合のpHの上昇がより十分に抑制されたものとなる。硫酸及び/又は硫酸塩としては、これらの中でも硫酸アンモニウムが好ましい。
上記リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物は、上述した式(1)で表される化合物に、該化合物中のリン1molに対して0.0005~0.05molの割合でセリウムを含む複合酸化物が好ましい。複合酸化物中のセリウムの含有量は、式(1)で表される化合物中のリン1molに対して0.0006~0.045molであることがより好ましく、更に好ましくは、0.0007~0.04molである。上記リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物は、後述の方法で製造することができる。
また、本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造方法は、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理し、該複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量を1500~15000ppmとする工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、粉砕工程、分級工程、洗浄工程、水熱工程、熟成工程、焼成工程、表面被覆工程等が挙げられる。
上記表面被覆工程としては、例えば、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理したものに対して、脂肪酸、脂肪酸塩、及びシリコーン化合物等で表面被覆する工程が挙げられる。
上記脂肪酸としては、2重結合や水酸基等の官能基の有無は問わないが、炭素数が8~30の脂肪酸であることが好ましい。このような脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;等が挙げられる。これらは、置換基(例えば、ヒドロキシル基、カルボニル基、エポキシ基等)を更に有していてもよい。これらの中でも、コストや経時安定性等の観点から飽和脂肪酸が好ましく、特にステアリン酸が好ましい。
上記脂肪酸塩としては、上記脂肪酸の金属塩及び又はアミン塩であることが好ましい。上記脂肪酸塩を構成する金属塩は、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の周期表第1族金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の第2族金属の他、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、周期表第1族金属が好ましい。より好ましくは、ナトリウム、カリウム、リチウムである。すなわち上記金属塩は、ナトリウム塩、カリウム塩及び/又はリチウム塩であることが好ましい。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
上記シリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン(ハイドロゲンジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、(ジメチコン/メチコン)コポリマー、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、トリメトキシシリルジメチコン等のシリコーン化合物;高粘度シリコーン、架橋型シリコーン、フッ素変性シリコーン、アクリル-シリコーン系グラフト共重合体、有機シリコーン樹脂部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記脂肪酸、脂肪酸塩、及びシリコーン化合物による表面処理を行う場合、これらの添加量は、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量部に対して、0.1~5重量部であることが好ましい。このような割合とすることで、リン酸カルシウムの耐水性をさらに高め、かつ粉体感触も改善される。より好ましくは、複合酸化物100重量部に対して、0.5~4重量部であり、更に好ましくは、1~3重量部である。
本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体の原料である、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物は、リン化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物を含む原料を混合する工程と、リン化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物を含む原料混合物を還元焼成する工程とを含む製造方法で製造することができる。
上記リン化合物としては、リン酸、リン酸塩、酸化物、ハロゲン化物、有機リン化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、リン酸及び/又はリン酸塩が好ましく、中でも、リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸、リン、二リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、二リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、次亜リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン化カルシウム、ピロリン酸カルシウムがより好ましい。
上記カルシウム化合物としては、カルシウムの炭酸塩、酸化物、リン酸塩、リン酸水素塩、塩化物、炭化物、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、臭化物、過酸化物、フッ化物、ヨウ化物、有機酸塩、ホウ酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸カルシウム、炭化カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、二リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、二リン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、次亜リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、硝酸カルシウム、過酸化カルシウム、リン酸三カルシウム、リン化カルシウム、ピロリン酸カルシウムが好ましい。より好ましくは、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、二リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、二リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、次亜リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウムである。
上記製造方法におけるカルシウム化合物の使用量は、カルシウム化合物が含むカルシウム元素の量が、リン化合物が含むリン元素1molに対して1.5~2.7molとなる量であることが好ましい。より好ましくは、1.52~2.64molとなる量である。
上記セリウム化合物としては、セリウムの炭酸塩、酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、臭化物、フッ化物、水酸化物、有機酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化セリウム、炭酸セリウム、塩化セリウム、硝酸セリウムが好ましい。
上記セリウム化合物の使用量は、セリウム化合物が含むセリウム元素の量が、リン化合物が含むリン元素1molに対して0.0005~0.05molとなる量であることが好ましい。より好ましくは、0.0006~0.045molとなる量である。更に好ましくは、0.0007~0.04molとなる量である。
上記リン化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物を含む原料を混合する方法は、原料が十分に混合されることになる限り特に制限されず、乾式混合、湿式混合、共沈等のいずれを用いてもよい。
乾式混合は、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー、Vブレンダー等の一般的な混合装置や、ハンマーミルや高圧エアージェットミル、あるいはこれらの組み合わせたものを用いて行うことができる。
湿式混合は、例えば、原料化合物を水性ディスパージョンとし、撹拌もしくはビーズミルや遊星ボールミルなどの湿式メディアミルを用いて混合する方法等により行うことができる。湿式混合した後に全量を蒸発乾燥すれば、混合粉が得られる。
共沈は、原料化合物の水溶液を中和して沈殿物として得る方法により行うことができる。
上記リン化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物を含む原料を混合して得られる混合物を還元焼成する工程における焼成温度は特に限定されないが、1150~1600℃であることが好ましい。1150℃以上であると、輝度に優れた蛍光体を効率的に生成させることができ、1600℃以下であると、過剰な焼結を抑制でき、化粧料へ用いた時の分散性に優れた蛍光体とすることができる。焼成温度は、より好ましくは、1200~1550℃である。
また焼成時間は十分に焼成することと製造効率とを考慮すると、1~12時間であることが好ましい。より好ましくは、2~6時間である。
上記還元焼成する工程における還元雰囲気は特に制限されないが、例えば、水素含有雰囲気が挙げられる。水素含有雰囲気としては、例えば水素を0.01~5体積%含有する窒素雰囲気を採用することができる。
上記リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物の製造方法は、リン化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物を含む原料を混合する工程と、リン化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物を含む原料混合物を還元焼成する工程とを含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、原料化合物を混合した後の混合物を還元焼成の前に予備焼成する工程、分級工程、水洗工程、粉砕工程、乾燥工程等が挙げられ、これらの工程を2回以上繰り返して行ってもよい。
分級工程、水洗工程、粉砕工程、乾燥工程は、リン化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物を含む原料を混合する工程と原料混合物を還元焼成する工程との間に行ってもよく、原料混合物を還元焼成する工程の後に行ってもよい。
上記原料化合物を混合した後の混合物を還元焼成する前に予備焼成を行うことによって、還元焼成において原料由来で発生するガス(例えば、炭酸ガス等)を予め揮発させることができ、これにより原料由来のガスによる焼成雰囲気への影響を低減することができる。予備焼成の具体的な手法は特に制限されず、例えばセラミックス製ルツボを用いて焼成する方法でもよく、ロータリーキルンを用いて回転させながら焼成する方法でも良い。
上記予備焼成の雰囲気は特に限定されず、酸化雰囲気、還元雰囲気、不活性雰囲気等で行うことができる。雰囲気ガスは適宜選択すれば良く、例えば、大気、二酸化炭素、酸素、水素、窒素、アルゴン又はこれらの混合ガス等が使用できる。
焼成温度は特に限定されないが、500~1600℃であることが好ましい。このような温度で行うと、原料化合物を混合した後の混合物からの揮発物を充分に揮発させることができ、後の還元焼成時の雰囲気が変化することを十分に防ぐことができ、1600℃以下であると、過剰な焼結を抑制でき、化粧料へ用いた時の分散性に優れた蛍光体とすることができる。予備焼成の温度は、より好ましくは、600~1550℃である。
上記予備焼成は、カリウム化合物の存在下に行ってもよい。カリウム化合物の存在下に行うと、所望の粒子径を有する蛍光体が容易に得られるという点で好ましい。即ち、焼成時の焼結や、乾燥時の乾燥凝集を抑制することができる。
カリウム化合物としては、例えば、カリウムの炭酸塩、酸化物、リン酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物、有機酸塩、ホウ酸塩、等を挙げることができる。これらのなかでも、炭酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、二リン酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウムが好ましい。
カリウム化合物を添加する場合、その添加量は、得られる蛍光体の重量に対してカリウム量基準で20~10000ppmであることが好ましい。このような量とすることで、上述した効果をより効果的に得ることができる。カリウム量の下限は、25ppmであることがより好ましく、30ppmであることが更に好ましい。カリウム量の上限は、5000ppmであることがより好ましく、1000ppmであることが更に好ましい。
上記予備焼成工程の後、必要に応じて、篩による分級、水、酸又はアルカリによる洗浄、粉砕等の各工程を行ってもよい。また、予備焼成後、必要に応じて分級・洗浄・粉砕等の工程を行った粒子を再度予備焼成する工程を1度もしくは2度以上繰り返してもよい。特に予備焼成後の粒子を再度予備焼成する工程を1度もしくは2度以上繰り返すことで粒子の発光強度を向上させることができる。
上記予備焼成工程の後、還元焼成工程を行う前に一旦粉砕を行っておくことで、原料がより均一に混合される点で好ましい。当該工程は、湿式粉砕(例えば、ビーズミルや遊星ボールミルなどの湿式メディアミルを用いた粉砕)、乾式粉砕(例えば、ハンマーミルや高圧エアージェットミル)等の公知の方法によって行うことができる。
上記粉砕工程の前後又は粉砕工程中に、カリウム化合物を添加してもよい。カリウム化合物を添加することによって、所望の粒子径を有する蛍光体が容易に得られることになる。この場合のカリウム化合物の添加量や使用できるカリウム化合物の具体例は、上述した予備焼成の前に添加する場合と同様である。
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(質量%)」を意味する。なお、各物性の測定方法は以下の通りである。
1.各種物性の測定・評価方法
(1)発光強度比
各粉体(蛍光体)の発光物性(発光強度)を、分光蛍光光度計(日本分光社製、FP-8600)を用いて測定した。蛍光積分球にはISF-834型を使用し、光電子倍増管(PMT)の電圧の設定値を340として、波長365nmの光で励起したときの極大発光波長(主波長)及び発光強度を測定した。測定範囲は380~720nmとし、蛍光スペクトルを測定したところ、460nm付近で強い発光を示した。比較例1の極大発光波長における発光強度を100とした場合の、各蛍光体の極大発光波長での発光強度を発光強度比として相対評価した。
(2)組成式の同定
以下の条件により粉末X線回折パターン(単にX線回折(XRD)パターンともいう)を測定した。
-分析条件-
使用機:リガク社製、RINT-TTRIII
線源:CuKα
電圧:50kV
電流:300mA
試料回転速度:60rpm
発散スリット:1.00mm
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
走査モード:連続
スキャンスピード:1
計数単位:Counts
ステップ幅:0.0100°
操作軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000~70.0000°
リン酸カルシウムセリウム蛍光体の組成式の同定には、JCPDSカードを用いた。なお、JCPDSカードとは、各種物質のX線回折法によるピークプロファイルをまとめたものである。
Ca:JCPDSカード 00-025-1137
(3)比表面積
マウンテック製Macsorb HM-1220を用い、脱気温度230℃、脱気時間35分の条件で、比表面積を測定した。
(4)粒度分布
レーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製 MT3300EX)にて粒度分布を測定し、体積基準粒度分布曲線(粒径分布ともいう)を得た。この時、回折光量(DV)が0.01~0.2になるようにイオン交換水とサンプルを混合して測定を行った。体積基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を、平均粒子径D50(μm)とした。同様に、積算値が90%のときの粒径値を、D90(μm)とした。
(5)ICP発光分光分析
各粉体中の元素含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(SII社製、ICP SPS3100)を用い、スカンジウム(Sc)を内標準とした検量線法によって求めた。測定試料は、塩酸に溶解して作製したが、難溶性の場合は四ホウ酸リチウムを用いたアルカリ溶融法により調製した。
(6)顔料試験方法によるpH値
JIS K5101-17-1(2004年)の顔料試験方法に則してpH値を測定した。
(7)スラリーのpH安定性
蛍光体2gを蒸留水30gとエタノール20gの混合溶媒に混合し、50℃にて1時間撹拌した。得られたスラリーのpHを測定することにより、溶液中でのpH安定性を評価した。
2.リン酸カルシウムセリウム蛍光体の作製及び評価
実施例1
(1)蛍光体の合成
炭酸カルシウム20.35g(堺化学工業社製、CWS-20)、酸化セリウム0.17g(信越化学工業社製)、リン酸アンモニウム11.45g(米山化学工業社製)、を秤量し、イオン交換水中に入れて遊星ボールミルを用いて十分に混合した。ついで、その混合物をアルミナ製坩堝に充填して、大気雰囲気中で200℃/時で850℃まで昇温し、そのまま3時間保持後、200℃/時で降温した。得られた焼成粉を遊星ボールミルを用いて十分に混合粉砕した。粉砕スラリーを130℃の乾燥機で一晩乾燥させて乾燥粉を得た。ついでその乾燥粉をアルミナ製坩堝に充填して、水素3体積%の窒素雰囲気で200℃/時で1400℃まで昇温し、そのまま8時間保持後、200℃/時で降温した。その焼成粉を遊星ボールミルを用いて粉砕することにより、リン酸カルシウムセリウム蛍光体を得た。この蛍光体の組成式は、Ca4.089.08であり、Ce量はリン1molに対して0.01molであり、平均粒子径D50は6.3μmであった。
(2)硫酸(塩)処理工程
上記「(1)蛍光体の合成」により得られたリン酸カルシウムセリウム蛍光体50gと、硫酸アンモニウム5.7gと、イオン交換水100gを秤量し、遊星ボールミルを用いて充分に混合した。得られたスラリーをろ過し、得られたケーキを130℃の温度で18時間乾燥することにより、リン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例2
実施例1の「(2)硫酸(塩)処理工程」により得られた蛍光体40gを秤量し、遊星ボールミルを用いて充分に粉砕した。得られたスラリーを50℃に加熱し、ステアリン酸ナトリウム0.8gを添加して1時間撹拌した。得られたスラリーをろ過し、得られたケーキを130℃の温度で18時間乾燥することにより、リン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。得られた蛍光体の平均粒子径D50は5.9μmであった。
実施例3
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」での硫酸アンモニウムの添加量を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例4
実施例1の「(2)硫酸(塩)処理工程」により得られた蛍光体20gと、ハイドロゲンジメチコン(信越化学工業社製、KF-9901)を0.4g秤量し、十分に乾式混合した。得られた粉体を130℃の温度で18時間乾燥することにより、リン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例5、6
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸(濃度95%)を表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
実施例7
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸水素カリウムを表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
比較例1
実施例1の「(1)蛍光体の合成」のみを行って得られたリン酸カルシウムセリウム蛍光体を比較例1の蛍光体とした。
比較例2
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸(濃度95%)を表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
比較例3、4
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸ナトリウムを表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
比較例5
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸水素カリウムを表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
比較例6、7
実施例1において、「(2)硫酸(塩)処理工程」にて硫酸アンモニウムの代わりに硫酸カリウムを表1に示す量用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムセリウム蛍光体の粉末を得た。
Figure 0007087883000001
表1における硫酸(塩)、脂肪酸及びシリコーン化合物の添加量はいずれも、リン酸カルシウムセリウムとセリウムとの複合酸化物100重量部に対する添加量である。
表1の結果から、実施例1~7で得られたリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、硫酸及び/又は硫酸塩による表面処理が十分に施されていることにより、顔料試験方法によるpH値が10.5以下の弱い塩基性となり、かつスラリーのpHの安定性に優れたものとなった。これらのリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、従来、リン酸カルシウムを表面処理するために使用されてきた量よりも大幅に少ない量で表面処理されたものであるため、化粧料として使用された場合の使用感にも優れる。また、実施例1~7の発光強度は、比較例1に比べて60以上の発光強度比を有することから、表面処理による発光強度の低下も抑制されていることが分かった。一方、比較例2で得られたリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、蛍光体の表面が過剰な硫酸と反応して溶解することにより比表面積が大幅に増加し、発光強度が著しく低下したと考えられる。また、比較例3~7で得られたリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、蛍光体の顔料試験方法によるpH値が10.5を超える強い塩基性を示した。これは、リン酸カルシウムセリウム蛍光体に硫酸塩の種類と量の条件が適しておらず、表面処理が十分になされていないためである。
したがって、本発明のリン酸カルシウムセリウム蛍光体は、化粧料としての使用感や蛍光体としての発光特性に優れ、かつ、水分と接触した状態でもpHが安定化されることを確認した。

Claims (5)

  1. リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量が1500~15000ppmであり、かつ、JIS K5101-17-1(2004年)の顔料試験方法によるpH値が8.0~10.5であることを特徴とするリン酸カルシウムセリウム蛍光体。
  2. 前記リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物が、下記式(1):
    Ca (1)
    (式中、x、y及びzはそれぞれ、3.2≦x≦5.0、1.9≦y≦2.1、z=x+5を表す。)で表される化合物に、該化合物中のリン1molに対して0.0005~0.05molの割合でセリウムを含む複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のリン酸カルシウムセリウム蛍光体。
  3. 請求項1又は2に記載のリン酸カルシウムセリウム蛍光体を含有することを特徴とする化粧料。
  4. リン酸カルシウムセリウム蛍光体を製造する方法であって、
    該製造方法は、リン酸カルシウムとセリウムとの複合酸化物を硫酸及び/又は硫酸塩で表面処理し、該複合酸化物100重量%に対する硫黄含有量を1500~15000ppmとする工程を含むことを特徴とするリン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造方法。
  5. 前記硫酸塩は、硫酸アンモニウム及び硫酸水素カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載のリン酸カルシウムセリウム蛍光体の製造方法。
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