JPWO2018003998A1 - 眼鏡レンズ及び眼鏡 - Google Patents
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Abstract
レンズ基材と、前記レンズ基材上に直接又は他の層を介して二色性色素塗布層を有する眼鏡レンズであって、偏光度が10〜60%かつ視感透過率が75%超である、眼鏡レンズ及び当該眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームとを有する眼鏡。
Description
また、本開示の一実施形態は、当該眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームとを有する眼鏡に関する。
〔第一の実施形態〕
本実施形態は、レンズ基材と、レンズ基材上に直接又は他の層を介して二色性色素塗布層を有する眼鏡レンズであって、偏光度が10〜60%かつ視感透過率が75%超である、眼鏡レンズに関する。
以下、更に詳細に説明する。
二色性色素塗布層は、例えば、二色性色素を含む塗布液を、スピンコート法などの公知の方法によって、レンズ基材に塗布して形成される。二色性色素の偏光性は、通常、主に二色性色素が一軸配向することにより発現される。二色性色素を一軸配向させるために、二色性色素を含む塗布液を塗布する面には、ラビング処理を施すことが好ましい。
「二色性」とは、媒質が光に対して選択吸収の異方性を有するために、透過光の色が伝播方向によって異なる性質を意味し、二色性色素は、偏光に対して色素分子のある特定の方向で光吸収が強くなり、これと直交する方向では光吸収が小さくなる性質を有する。また、二色性色素の中には、水を溶媒とした時、ある濃度・温度範囲で液晶状態を発現するものが知られている。このような液晶状態のことをリオトロピック液晶という。この二色性色素の液晶状態を利用して特定の一方向に色素分子を配列させることができれば、より強い二色性を発現することが可能となる。ラビング処理面上に二色性色素を含有する塗布液を塗布することにより二色性色素を一軸配向させることができ、これにより良好な偏光性を有する偏光膜を形成することができる。二色性色素としては、特に限定されるものではなく、偏光レンズ等の偏光部材に通常使用される各種二色性色素を挙げることができる。具体例としては、アゾ系、アントラキノン系、メロシアニン系、スチリル系、アゾメチン系、キノン系、キノフタロン系、ペリレン系、インジゴ系、テトラジン系、スチルベン系、ベンジジン系色素等が挙げられる。米国特許2400877号明細書、特表2002−527786号公報に記載されているもの等でもよく、例えば、多色性色素分子と、多色性色素分子を所定の方向に配向させて保持し、リオトロピック液晶性を有する分子マトリクスとの組み合わせの材料を用いてもよい。
「水系塗布液」とは、水を主成分とする溶媒を含む液を意味する。水の含有量は、塗布液の溶媒中、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。
「ラビング処理」とは、被処理物の表面に配向性を付与する処理である。「ラビング処理面」とは、ラビング処理がされた面である。ラビング処理として、例えば、表面にナイロン繊維が植毛されたロール、又は表面にラビング布を貼り付けたロールによって処理面上で回転させて配向性を付与する物理的手法や、UVのような高エネルギーの光を照射して配向性を付与する化学的手法が挙げられる。
ラビング処理は、レンズ基材又はハードコート層の表面に直接施してもよいが、二色性色素の偏光性をより良好に発現させる観点からは、後述する配列層の表面に施すことが好ましい。
二色性色素塗布層が形成されるラビング処理面は、レンズ基材上に、直接又は他の層を介して間接的に、形成されている。
レンズ基材は、プラスチックレンズ基材、ガラスレンズ基材等の、通常眼鏡レンズに使用される各種レンズ基材を、何ら制限なく用いることができる。軽量であること、割れにくいこと等の観点から、レンズ基材は、プラスチックレンズ基材であることが好ましい。具体例としては、これらに限定されるものではないが、(メタ)アクリル樹脂をはじめとするスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明樹脂等を、プラスチックレンズ基材を構成する樹脂として挙げることができる。なおレンズ基材としては、染色されていないもの(無色レンズ)を用いてもよく、染色されているもの(染色レンズ)を用いてもよい。レンズ基材の屈折率は、例えば、1.60〜1.75程度である。ただしレンズ基材の屈折率は、これに限定されるものではなく、上記の範囲内でも、上記の範囲から上下に離れてもよい。
配列層は二色性色素を配向させるために設けられる。配列層は、通常、レンズ基材表面上に直接又は他の層を介して間接的に設けられる。レンズ基材と配列層との間に形成され得る層の一例としては、先に記載したハードコート層を挙げることができる。配列層の厚さは、通常0.02〜5μm程度であり、好ましくは0.05〜0.5μm程度である。配列層は、蒸着、スタッパ等の公知の製膜法によって製膜材料を堆積させることにより形成してもよく、ディップ法、スピンコート法等の公知の塗布法によって形成してもよい。上記製膜材料として好適なものとしては、無機酸化物が挙げられ、より具体的には、金属、半金属、又はこれらの酸化物、複合体もしくは化合物を用いることができる。これらの中で配列層としての機能付与の容易性の観点からはSiO、SiO2等のケイ素酸化物が好ましく、中でも後述するシランカップリング剤との反応性の観点からはSiO2が好ましい。一方、塗布法によって形成される配列層としては、無機酸化物ゾルを含むゾルーゲル膜を挙げることができる。上記ゾルーゲル膜の形成に好適な塗布液の一例としては、例えば、アルコキシシラン及び/又はヘキサアルコキシジシロキサンを含有する塗布液を挙げることができる。アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン等のアルキルトリアルコキシシランなどが挙げられる。ヘキサアルコキシジシロキサンとしては、ヘキサエトキシジシロキサン、キサメトキシジシロキサン等が挙げられる。
(塗布液の塗布)
塗布液を、スピンコート法によって塗布する場合、塗布時の回転数は、好ましくは200〜600rpm、より好ましくは250〜500rpm、更に好ましくは285〜450rpmとする。その回転数での保持時間は、40〜50秒程度とする。
スピンコートは、例えば、ラビング処理面を有するレンズ基材をスピンコーターに配置して行うことができる。
塗布液供給開始時(液出し時)には、供給する塗布液がレンズ基材上のラビング処理面で弾かれないようにするため、塗布時の回転数よりも低い回転数で8秒程度回転を行う。
200〜600rpmで40〜50秒程度保持した後は、塗布液を振りきるため、好ましくは、回転数を1000rpm程度に上げて12秒程度回転を行う。
二色性色素として水溶性色素を用いる場合には、膜安定性を高めるために塗布液を塗布し乾燥処理を施した後に非水溶化処理を施すことが好ましい。非水溶化処理は、例えば二色性色素の分子の末端水酸基をイオン交換することや二色性色素と金属イオンとの間でキレート状態を作り出すことにより行うことができる。そのためには、形成した二色性色素塗布層を金属塩水溶液に浸漬する方法を用いることが好ましい。金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、AlCl3、BaCl2、CdCl2、ZnCl2、FeCl2、SnCl3を挙げることができる。非水溶化処理後、二色性色素塗布層の表面をさらに乾燥させてもよい。
二色性色素塗布層に対しては、膜強度及び膜安定性を高めるために二色性色素の固定化処理を施すことが好ましい。固定化処理では、上記の非水溶化処理の後に行うことが望ましい。固定化処理により二色性色素塗布層中で二色性色素の配向状態を固定化することができる。
固定化処理は、好ましくは、二色性色素塗布層表面をシランカップリング剤処理することによって行うことが好ましい。シランカップリング剤処理は、例えば濃度1〜15質量%程度、好ましくは、1〜10質量%程度のシランカップリング剤溶液を二色性色素塗布層表面に塗布することにより実施することができる。上記溶液を調製するために用いる溶媒は、水系溶媒であることが好ましく、水又は水とアルコール(メタノール、エタノール等)との混合溶媒であることがより好ましく、水であることが更に好ましい。なお本開示において、水系溶媒とは少なくとも水を含む溶媒をいうものとする。水系溶媒は、水を主成分とする溶媒を含む液が好ましい。水の含有量は、水系媒体中、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。
上記溶媒の塗布は、ディッピング法、スピンコーティング法、スプレー法等の公知の手段によって行うことができる。固定化処理の途中に、レンズ基材と二色性色素塗布層を含む部材を加熱炉内等に所定時間放置することにより、固定化効果を更に高めることができる。この炉内雰囲気温度は、使用するシランカップリング剤の種類に応じて決定することができ、通常、室温〜120℃、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。放置時間は、通常、5分〜3時間程度である。
上記Rで表される官能基は、通常、有機性官能基であり、エポキシシラン(エポキシ基含有シランカップリング剤)とは、上記Rで表される官能基にエポキシ基を含むものである。エポキシ基は、通常、2価の連結基を介してSiに結合している。2価の連結基としては、後述の具体例化合物に含まれる連結基を挙げることができる。
一方、上記R’で表される官能基は、通常アルキル基であり、水系溶媒中で加水分解を受けシラノール(Si−OH)を生成する。上記R’で表されるアルキル基の炭素数は、例えば1〜10であり、好ましくは1〜3である。
本開示の一実施形態に係る眼鏡レンズは、物体側表面の最表層として上述の二色性色素塗布層を有していてもよいが、二色性色素塗布層よりレンズ基材から遠い(即ち物体側に位置する)層の上に更に一層以上の機能性層を有することが好ましい。かかる機能性層は、二層以上設けることも可能である。任意に設けられる機能性層としては、公知のハードコート層、撥水層、反射防止層(多層反射防止膜)等の各種機能性層を挙げることができる。一例として、以下に、ハードコート層について説明する。
ハードコート層は、眼鏡レンズの耐久性向上と光学特性を両立する観点からは、厚さが0.5〜10μmの範囲であることが好ましい。ハードコート層としては、眼鏡レンズの耐久性向上の点からは、有機ケイ素化合物及び金属酸化物粒子を含むものが好ましい。
(R1)a(R3)bSi(OR2)4−(a+b)・・・(I)
R2で表される炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
R2で表される炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
R3で表される炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖又は分岐のアルキル基であって、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、メチルシリケート、エチルシリケート、n−プロピルシリケート、i−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、sec−ブチルシリケート、t−ブチルシリケーテトラアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアミロキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリベンジルオキシシラン、メチルトリフェネチルオキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3、4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3、4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3、3、3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。一般式(I)で表される有機ケイ素化合物は硬化性基を有するため、塗布後に硬化処理を施すことにより、硬化層としてハードコート層を形成することができる。
<積層順序>
以上、本開示の一実施形態に係る眼鏡レンズは、各層の積層順序は特に限定されるものではない。本実施形態の一態様では、レンズ基材により近い層として二色性色素塗布層が含まれている。
本開示の一実施形態に係る眼鏡レンズは、好ましくは、レンズ基材、二色性色素塗布層、ハードコート層が、この順に積層されており、より好ましくはレンズ基材、ハードコート層、配列層、二色性色素塗布層、ハードコート層が、この順に積層されている。なお、レンズ基材の少なくとも一方の面側に上記の層が存在すれば、十分な機能を発揮することができる。
視感透過率の測定方法は実施例に記載の方法による。
偏光度の測定方法は実施例に記載の方法による。
上記した第一の実施形態では、眼鏡レンズのうち、レンズ基材の表面に二色性色素塗布層を積層して形成した所謂「偏光レンズ」の製造方法について説明したが、本実施形態では、機能性層がフォトクロミック層である実施形態、即ち、レンズ基材上に直接又は他の層を介して二色性色素塗布層と、フォトクロミック層を有する所謂「偏光調光レンズ」の製造方法について説明する。
なお、レンズ基材の少なくとも一方の面側に上記の層が存在すれば、十分な機能を発揮することができる。
本開示の一実施形態に係る眼鏡レンズは、積層順序は特に限定されるものではない。本実施形態では、二色性色素塗布層とフォトクロミック層とを、中間層を介して積層している。本実施形態の一態様では、レンズ基材により近い層として二色性色素塗布層が含まれている、即ち、レンズ基材、二色性色素塗布層、中間層、フォトクロミック層が、この順に積層されている。また、他の一態様では、レンズ基材により近い層としてフォトクロミック層が含まれている、即ち、レンズ基材、フォトクロミック層、中間層、二色性色素塗布層が、この順に積層されている。フォトクロミック層の発色・退色の応答速度の観点からは、物体側(光の入射側)に近い層としてフォトクロミック層が含まれていることが好ましい。この観点から、前者の態様(レンズ基材、二色性色素塗布層、中間層、フォトクロミック層の積層順)が好ましい。また、二色性色素塗布層は、中間層側の界面が、シランカップリング剤処理を施した面であることが好ましい。更には、フォトクロミック層上に、更に、機能層を有していてもよい。なお、レンズ基材の少なくとも一方の面側に上記の層が存在すれば、十分な機能を発揮することができる。
本開示の一実施形態においては、偏光層の上層又は下層としてフォトクロミック色素を含有するフォトクロミック層を更に形成する。下層とは、レンズ基材により近い層を意味し、上層とはレンズ基材により遠い層を意味する。
フォトクロミック層は、好ましくは、後述の中間層を介して二色性色素塗布層上に積層される。
(フォトクロミック色素)
フォトクロミック層は、少なくともフォトクロミック色素を含む。フォトクロミック色素としては、例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック化合物を何ら制限なく用いることができる。これらフォトクロミック化合物の中でも、クロメン化合物は、フォトクロミック特性の耐久性が他のフォトクロミック化合物に比べ高くさらにフォトクロミック特性の発色濃度及び退色速度の向上が他のフォトクロミック化合物に比べて特に大きいため特に好適に使用することができる。さらに、これらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、フォトクロミック特性の発色濃度及び退色速度の向上が他のクロメン化合物に比べて特に大きいため好適に使用することができる。フォトクロミック化合物は適切な発色色調を発現させるため、複数の種類のものを適宜混合して使用することができる。
クロメン化合物の中でも、以下の構造のクロメン化合物が好ましい。
フォトクロミック層は、好ましくは、フォトクロミック色素を含むフォトクロミック色素を含む硬化性組成物(フォトクロミック層形成用硬化性組成物)を中間層上に塗布し、この組成物に硬化処理を施すことにより形成することができる。硬化性組成物とは、少なくとも硬化性化合物を含む組成物をいう。フォトクロミック層形成用硬化性組成物は、硬化性化合物100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部のフォトクロミック色素を含むことができる。
硬化性化合物は、光照射、加熱等の硬化処理によって硬化する(重合する)性質を有する化合物であればよい。入手のし易さ、硬化性の良さ等からは、アクリル系化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を有する化合物がより好ましい。なお、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの両方を示し、(メタ)アクリロイルオキシとは、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシの両方を示す。
硬度調整の容易さ、膜形成後の耐溶剤性や硬度、耐熱性等の硬化体特性、又は発色濃度や退色速度等のフォトクロミック特性を良好なものとするため、硬化性化合物としては、単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上を示すもの(以下、高硬度モノマーと称す場合がある)と、同じく単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40以下を示すもの(以下、低硬度モノマーと称す場合がある)を併用することがより好ましい。Lスケールロックウェル硬度とは、JIS−B7726に従って測定される硬度を意味する。各モノマーの単独重合体についてこの測定を行うことにより、硬度条件を満足 するかどうかを簡単に判断することができる。具体的には、モノマーを重合させて厚さ2mmの硬化体を得、これを25°Cの室内で1日保持した後にロックウェル硬度計を用いて、Lスケールロックウェル硬度を測定することにより容易に確認することができる。Lスケールロックウェル硬度の測定に供する重合体は、仕込んだ単量体の有する重合性基の90%以上が重合する条件で注型重合して得たものである。このような条件で重合された硬化体のLスケールロックウェル硬度は、ほぼ一定の値として測定される。前記高硬度モノマーは、硬化後の硬化体の耐溶剤性、硬度、耐熱性等を向上させる効果を有する。これらの効果をより効果的なものとするためには、単独重合体のLスケールロックウェル硬度が65〜130を示す硬化性化合物が好ましい。このような高硬度モノマーは、通常2〜15個、好ましくは2〜6個のラジカル重合性基を有する化合物である。
また、高硬度モノマーの具体例として、分子量2500〜3500の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー株式会社、EB80等)、分子量6000〜8000の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー株式会社、EB450等)、分子量45000〜55000の6官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー株式会社、EB1830等)、分子量10000の4官能ポリエステルオリゴマー(第一工業製薬株式会社、GX8488B等)等も挙げられる。
また、高硬度モノマーの具体例として、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,9−ノニレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジアクリレート等も挙げられる。
高硬度モノマーの具体例として、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等も挙げられる。なお、上述の各化合物でも、置換基の組み合わせによっては単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60未満のものがあるが、その場合には、これらの化合物は後述する低硬度モノマー又は中硬度モノマーに分類される。
また、低硬度モノマーの具体例として、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン等も挙げられる。また、低硬度モノマーの具体例として、平均分子量526のポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量360のポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量1000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量375のポリプロピレングリコールメタクリレート、平均分子量430のポリプロピレンメタクリレート、平均分子量622のポリプロピレンメタクリレート、平均分子量620のメチルエーテルポリプロピレングリコールメタクリレート、平均分子量566のポリテトラメチレングリコールメタクリレート、平均分子量2034のオクチルフェニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量610のノニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量640のメチルエーテルポリエチレンチオグリコールメタクリレート、平均分子量498のパーフルオロへプチルエチレングリコールメタクリート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等も挙げられる。低硬度モノマーの具体例として、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、エチルへキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート等も挙げられる。これらの低硬度モノマーの中でも、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量1000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、トリアルキレングリコールジアクリレート、テトラアルキレングリコールジアクリレート、ノナアルキレングリコールジアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレートが特に好ましい。
フォトクロミック層形成用硬化性組成物は、通常、重合開始剤を含む。重合開始剤は、重合方法に応じて、公知の光重合開始剤及び熱重合開始剤から適宜選択することができる。 光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル)ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられ、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。これら光重合開始剤は、複数の種類のものを適宜混合して使用することができる。光重合開始剤のフォトクロミック層形成用硬化性組成物全量に対する配合量としては、硬化性化合物100質量部に対して、通常0.001〜5質量部であり、0.1〜1質量部であると好ましい。
フォトクロミック層形成用硬化性組成物には、フォトクロミック色素の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、更に、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤が含まれてもよい。それら添加剤としては、公知の化合物を何ら制限なく使用できる。
を含むものであって、*で表される位置で水素原子等の原子又は他の構造と結合する。ヒンダードアミンは、上記構造を主鎖及び側鎖の一方又は両方に含む重合体であってもよい。また、ヒンダードアミンであるか否かにかかわらず、ピペリジン環含有化合物は、ピペリジン環を主鎖及び側鎖の一方又は両方に含む重合体であってもよい。また、含有されるピペリジン環は、上記構造のようにアルキル基等の置換基によって置換されてもよい。
中間層は、フォトクロミック層の耐久性を高めるため、二色性色素塗布層と、フォトクロミック層との間に形成される。
中間層は、好ましくは少なくとも樹脂を含む層である。樹脂は、好ましくは水系樹脂である。なお、本明細書において、水系樹脂とは、少なくとも、この樹脂及び水系溶媒を含む水系塗布液(水系樹脂組成物)が乾燥すると固化する性質を有する樹脂をいうものとする。そして、水系樹脂組成物が乾燥して固化することによって形成される層が、水系樹脂層である。
本発明の一実施形態に係る眼鏡は、眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームとを有する。
フレームとしては、例えば、一対のリムと、当該リム間に設けられたブリッチと、当該リムの片端に設けられた一対のテンプルとを有する。
リムは、ハーフリムであってもよい。本発明の一実施形態に係る眼鏡レンズによれば、ハーフリムを有するフレームであっても、使用することができる。
フレームとしては、いわゆるリムレスフレームであってもよい。この場合、眼鏡は、例えば、一対の眼鏡レンズと、当該眼鏡レンズ間に設けられたブリッチと、当該眼鏡レンズの片端に設けられた一対のテンプルとを有する。
偏光レンズの作成
(1)配列層の形成
レンズ基材として、メニスカス形状のポリチオウレタンレンズ(HOYA株式会社製 商品名EYAS、中心肉厚2.0mm厚、直径75mm、凸面の表面カーブ(平均値)約+0.8)を用いて、下記(6)に記載の方法でハードコート組成物を調製し、上記レンズ基材の凸面上にスピンコート法にて塗布した後、加熱温度90℃で120分間加熱し硬化処理することで、厚さ2μmのハードコート層を形成した。
上記ハードコート層上に、真空蒸着法により、厚さ約0.2μmのSiO2膜を形成した。
形成されたSiO2膜に、ナイロンを巻いたローラを、一定圧力で押し込みながら一方向に回転させることによって、一方向のラビング処理を施した。こうして、ハードコート層付レンズ基材の凸面に、配列層を形成した。
(2−1)二色性色素塗布層形成用水系塗布液の塗布
上記乾燥後、ラビング処理面上に、水溶性の二色性色素(スターリングオプティクスインク社製商品名 Varilight solution 2S, 有効分約4質量%水溶液)を、水で希釈して、二色性色素濃度を0.28質量%に調製した塗布液をスピンコート法により塗布した。スピンコート法による塗布は、この塗布液を回転数285rpmで供給し、40秒間保持することで行った。
(2−2)非水溶化処理
次いで、塩化鉄濃度が0.15M、水酸化カルシウム濃度が0.2MであるpH3.5の水溶液を調製し、この水溶液に上記で得られたレンズをおよそ30秒間浸漬し、その後引き揚げ純水にて充分に洗浄を施した。この工程により、水溶性であった色素は難溶性に変換される。
(2−3)シランカップリング剤処理
上記(2−2)の後、レンズをγ−アミノプロピルトリエトキシシラン10質量%水溶液に15分間浸漬し、その後純水で3回洗浄し、加熱炉内(炉内温度85℃)で30分間加熱処理した後、加熱炉内から取り出し室温まで冷却した。
上記冷却後、レンズをγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2質量%水溶液に30分浸漬した後、加熱炉内(炉内温度60℃)で30分間加熱処理した。加熱処理後、レンズを加熱炉内から取り出し室温まで冷却した。
以上のシランカップリング処理後、形成された二色性色素塗布層の厚さは、1μmであった。
上記(2)で得られた二色性色素塗布層表面に、水系樹脂組成物としてポリウレタン骨格にアクリル基を導入したポリウレタンの水分散液(ポリカーボネートポリオール系ポリウレタンエマルジョン、粘度100mPa・s、固形分濃度38質量%)をスピンコート法により塗布した後、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で15分間風乾燥処理し、厚さ約7μmの水系ポリウレタン樹脂層を形成した。
プラスチック製容器内で、トリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量%、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性組成物を調製した。このラジカル重合性組成物100質量部に対し、フォトクロミック色素としてクロメン1を3質量部、ピペリジン環含有化合物(ヒンダードアミン(三共製サノールLS765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケード、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケード、平均分子量467)))を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI−1870(BASF社製)0.6質量部を添加して十分に撹拌混合を行った組成物に、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM503)を撹拌しながら6質量部滴下した。その後、自転公転方式撹拌脱泡装置にて2分間脱泡することで、フォトクロミック層形成用硬化性組成物を得た。
上記(3)で形成した水系ポリウレタン樹脂層上に、(4)で調製したフォトクロミック層形成用硬化性組成物をスピンコート法で塗布した。その後、このレンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、UVランプ(Dバルブ)で波長405nmの紫外線を積算光量で3240mJ/cm2(180mW/cm2)3分間照射し、更に、加熱温度80℃で150分間効果処理を行い、厚さ約40μmのフォトクロミック層を形成した。
マグネティックスターラーを備えたガラス製の容器にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン17質量部、メタノール30質量部、及び、水分散コロイダルシリカ(固形分40質量%、平均粒子径15μm)28質量部を加え十分に混合し、流温5℃で24時間撹拌を行った。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテル15質量部、シリコーン系界面活性剤0.05質量部、及び、硬化剤としてアルミニウムアセチルアセトネートを1.5質量部を加え、十分に撹拌した後、濾過を行ってハードコート組成物を調製した。
上記(5)で形成したフォトクロミック層上に、上記(6)で調製したハードコート組成物を用いて、ディッピング法(引き上げ速度20cm/分)で塗布を行い、加熱温度90℃で120分間加熱し硬化処理することで、厚さ3μmのハードコート層を形成した。
塗布液の二色性色素濃度を0.46質量%とした点以外、実施例1と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
塗布液の二色性色素濃度を1.04質量%とした点以外、実施例1と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
塗布液の二色性色素濃度を1.72質量%とした点以外、実施例1と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
塗布液の二色性色素濃度を2.84質量%とした点以外、実施例1と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
水溶性の二色性色素(スターリングオプティクスインク社製商品名 Varilight solution 2S, 有効分約4質量%水溶液)を、水で希釈せずそのまま使用して、塗布液の二色性色素濃度を4質量%とした点以外、実施例1と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
二色性色素塗布層形成用水系塗布液を回転数390rpmで供給した点以外、比較例3と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
二色性色素塗布層形成用水系塗布液を回転数420rpmで供給した点以外、比較例3と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
二色性色素塗布層形成用水系塗布液を回転数450rpmで供給した点以外、比較例3と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
二色性色素塗布層形成用水系塗布液を回転数390rpmで供給した点以外、実施例1と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
二色性色素塗布層形成用水系塗布液を回転数450rpmで供給した点以外、実施例1と同様の方法により眼鏡レンズを得た。
実施例及び比較例で作成した眼鏡レンズに関し、各種測定方法は、以下の方法で行った。
(1)視感透過率の測定
視感透過率は、JIS T7333:2005の「6.6偏光レンズの試験方法」に従って測定する。なお、フォトクロミック層を有する場合、「6.5.3.1」に規定された方法に従って、「色が薄い状態」としてから、「6.6偏光レンズの試験方法」に従って測定する。
(2)偏光度
偏光度(Peff)は、ISO8980−3に従って、紫外可視近赤外分光光度計「V−660」(日本分光株式会社製)を使用し、直線偏光光に対して偏光素子の透過軸が平行方向のときの視感透過率(T//)及び偏光素子の透過軸が直行方向のときの視感透過率(T⊥)を求め、次式により算出することで評価する。視感透過率(T//)及び視感透過率(T⊥)は、可視分光光度計と偏光子(グラントムソンプリズム)を用いて測定する。測定光は、レンズ凸面側から入射させる。
Peff(%)=〔(T//−T⊥)/(T//+T⊥)〕×100
上述した一実施形態によれば、ギラツキの抑制能力の観点から満足のいく偏光度を備え、かつ、高い視感透過率を備えた眼鏡レンズが提供される。
更に上述した一実施形態によれば、フレーム選択の自由度が高く、かつ、受注から納品までの納期を短縮することができる眼鏡レンズが提供される。
上述の眼鏡レンズの製造方法としては、例えば、レンズ基材のラビング処理面上に、二色性色素を0.04〜0.35質量%含有する塗布液を、スピンコート法によって、回転数200〜600rpmで塗布して二色性色素塗布層を形成する、眼鏡レンズの製造方法が挙げられる。このように、二色性色素の含有率が0.04〜0.35質量%という低濃度の塗布液を使用することで、製造ロットごとの偏光度のばらつきを低減することができる。
また、ラビング処理面上に、低濃度の二色性色素の塗布液を塗布することで、高い透過率を実現しつつ、同時に、ギラツキを低減するための偏光度を維持することができる。その要因は明らかでないが、ラビング処理面と直的に接触する二色性色素の分子の率が高くなるため、ラビング処理面からの配向の影響が顕著に表れると考えられ、低濃度の二色性色素を塗布することで、高い透過率を実現しつつも、偏光度が比較的強く表れるのではないかと考えられる。
眼鏡レンズにおける視感透過率の向上は、材料自体(例えば、二色性色素)の新規開発によって行うことも可能であるが、材料自体の新規開発には、多大なコストと時間がかかる欠点がある。これに対し、本発明によれば、既存の材料を用いつつ、製造条件の変更により、眼鏡レンズにおける視感透過率の向上を実現することができる。
Claims (9)
- レンズ基材と、前記レンズ基材上に直接又は他の層を介して二色性色素塗布層を有する眼鏡レンズであって、
偏光度が10〜60%かつ視感透過率が75%超である、眼鏡レンズ。 - 前記レンズ基材の少なくとも一方の面側に、
前記二色性色素塗布層と、
フォトクロミック色素を含有するフォトクロミック層を有する、請求項1に記載の眼鏡レンズ。 - 前記二色性色素塗布層と前記フォトクロミック層とを、中間層を介して有する、請求項2に記載の眼鏡レンズ。
- 前記眼鏡レンズが、前記レンズ基材側から順に、前記二色性色素塗布層、前記中間層、及び前記フォトクロミック層を有する、請求項3に記載の眼鏡レンズ。
- 前記フォトクロミック層上に、更に、機能性層を有する、請求項4に記載の眼鏡レンズ。
- 前記眼鏡レンズが、前記レンズ基材と前記二色性色素塗布層との間に、ケイ素酸化物を含む配列層を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
- 前記二色性色素塗布層は、中間層側の界面が、シランカップリング剤処理を施した面である、請求項3に記載の眼鏡レンズ。
- 前記レンズ基材の少なくとも一方の面は、凸面である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームとを有する眼鏡。
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