JP2014026190A - 偏光レンズの量産方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高品質な偏光レンズを安定供給することを可能とする手段を提供すること。
【解決手段】偏光レンズの量産方法。複数の候補レンズ基材の中から、肉厚を選択基準として、同一ないし近似する肉厚を有する複数のレンズ基材をバッチ式の塗布を行うレンズ基材として選択し、前記選択した複数のレンズ基材に対してバッチ式の塗布を行う前に、該複数のレンズ基材をバッチ式でランプ加熱することを含み、前記ランプ加熱を、複数のレンズ基材の各々の上方に、各レンズ基材をランプ加熱するための熱源を配置して、レンズ基材の上記溝を持つ表面の温度を表面温度センサーによりモニターしながら行い、各レンズ基材の前記表面の温度が予め定めた温度に達したことが前記表面温度センサーにより検知されたことと同期して、各レンズ基材のランプ加熱を停止し、すべてのレンズ基材のランプ加熱が停止されたことと同期して、前記塗布を開始する。
【選択図】なし
【解決手段】偏光レンズの量産方法。複数の候補レンズ基材の中から、肉厚を選択基準として、同一ないし近似する肉厚を有する複数のレンズ基材をバッチ式の塗布を行うレンズ基材として選択し、前記選択した複数のレンズ基材に対してバッチ式の塗布を行う前に、該複数のレンズ基材をバッチ式でランプ加熱することを含み、前記ランプ加熱を、複数のレンズ基材の各々の上方に、各レンズ基材をランプ加熱するための熱源を配置して、レンズ基材の上記溝を持つ表面の温度を表面温度センサーによりモニターしながら行い、各レンズ基材の前記表面の温度が予め定めた温度に達したことが前記表面温度センサーにより検知されたことと同期して、各レンズ基材のランプ加熱を停止し、すべてのレンズ基材のランプ加熱が停止されたことと同期して、前記塗布を開始する。
【選択図】なし
Description
本発明は、偏光レンズの量産方法に関するものであり、詳しくは、高品質な偏光レンズの量産を可能とする偏光レンズの量産方法に関するものである。
偏光レンズは、溶接作業、医療治療等の特殊作業やスキーなどの各種スポーツ中に防眩メガネとして利用されるものであり、一般に二色性色素の偏光性を利用することにより防眩性が発揮される。例えば特許文献1〜4には、二色性色素を含む偏光層を基材上または基材上に設けた配列層上に形成することにより偏光レンズを製造する方法が開示されている。
上記特許文献1〜4には、一定方向に溝を持つ表面に二色性色素を含有する塗布液を塗布することにより偏光層を形成することが開示されている。このように溝を持つ表面に、ある濃度・温度範囲で液晶状態を発現するリオトロピック液晶性を有する二色性色素を塗布すれば、該二色性色素の液晶状態を利用して特定の一方向に色素分子を配列させることで優れた偏光効率を示す偏光層を形成することができる。
高品質な偏光レンズを安定供給するためには、量産される偏光レンズ間で偏光性能や光学特性に大きなバラつきがないことが望ましい。しかし本発明者の検討の結果、バッチ式の製造装置において偏光レンズを量産すると、量産される偏光レンズの偏光層にクラックが発生する場合があることが明らかとなった。偏光層におけるクラックは、微小なものは回折現象等により線上の散乱光を生じさせるため、透過光に関する不具合が見掛けの欠陥の大きさ以上に顕在化してしまう。更に、微小なクラックが多数発生すると曇り(ヘイズ)の原因となり、また大きなものは目視で確認できるようになり外観不良の原因となる。
かかる状況下、本発明は、偏光レンズ量産時に、量産されるレンズの偏光層におけるクラックの発生を抑制ないし防止することで、高品質な偏光レンズを安定供給することを可能とする手段を提供することを目的としてなされたものである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下の新たな知見を得るに至った。
リオトロピック液晶性を有する二色性色素を用いて偏光レンズを製造するには、通常、ランプ式加熱炉内でレンズ基材を表面が所定温度に達するまで加熱(ランプ加熱)した後に二色性色素含有塗布液を塗布する。上記の通りリオトロピック液晶性を有する二色性色素は、ある温度・温度範囲で液晶状態を発現する性質を有し、加熱されたレンズ基材表面に塗布されると、塗布液中の溶媒の蒸発とレンズ基材の温度変化に伴い液晶状態を発現することで、その性質に応じてレンズ基材上の溝方向に沿って、または溝方向と直交する方向に配列する。
バッチ式の製造装置では複数のレンズ基材を同時に処理するため、通常は同時に処理するレンズ基材の各々の上方に、各レンズ基材をランプ加熱するための熱源と、レンズ基材の上記溝を持つ表面の温度をモニターするための表面温度センサーを配置する。そして、各レンズ基材の前記表面の温度が予め定めた温度に達したことが表面温度センサーによりモニターされたことと同期して、各レンズ基材のランプ加熱を停止し、すべてのレンズ基材のランプ加熱が停止されたことと同期して、前記塗布を開始する。
本発明者は、上記のバッチ式の製造装置では、複数のレンズ基材間で、塗布液が塗布される際の表面の温度が必ずしも同じではないことが、量産されるレンズの中に偏光層にクラックが発生するものが見られる原因であると推察するに至った。この点について更に説明すると、上記のバッチ式製造装置では、それぞれのレンズ基材において表面温度が所定温度に達するとランプ加熱が停止される一方で、塗布の開始はすべてのランプ加熱が停止されたことと同期して行われるため、複数のレンズ基材間で表面温度が所定温度に達するタイミングが大きくずれると、結果的にランプ加熱停止から塗布開始までの間隔が複数のレンズ間でばらつくことになる。レンズ基材の温まりやすさは、主にレンズ基材の肉厚に依存し、薄いレンズはすぐに温まるが厚いレンズは内部に熱を奪われるため表面を所定温度まで加熱するために時間を要する。温まりやすくランプ加熱が早く停止されたレンズ基材では、塗布までの間にレンズ基材の表面温度が低下してしまうため、かかるレンズ基材上ではリオトロピック液晶性を有する二色性色素がその液晶状態を十分に発現できず色素分子の配列が不十分であることが、偏光層におけるクラック発生の原因と考えられる。
以上の知見に基づき本発明者は更に検討を重ね、複数の候補レンズ基材の中から、同一ないし近似する肉厚を有する複数のレンズ基材を選択してバッチ式の製造装置において処理することで、複数のレンズ基材間の温まりやすさの違いに起因する上記現象の発生を抑制ないし防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
リオトロピック液晶性を有する二色性色素を用いて偏光レンズを製造するには、通常、ランプ式加熱炉内でレンズ基材を表面が所定温度に達するまで加熱(ランプ加熱)した後に二色性色素含有塗布液を塗布する。上記の通りリオトロピック液晶性を有する二色性色素は、ある温度・温度範囲で液晶状態を発現する性質を有し、加熱されたレンズ基材表面に塗布されると、塗布液中の溶媒の蒸発とレンズ基材の温度変化に伴い液晶状態を発現することで、その性質に応じてレンズ基材上の溝方向に沿って、または溝方向と直交する方向に配列する。
バッチ式の製造装置では複数のレンズ基材を同時に処理するため、通常は同時に処理するレンズ基材の各々の上方に、各レンズ基材をランプ加熱するための熱源と、レンズ基材の上記溝を持つ表面の温度をモニターするための表面温度センサーを配置する。そして、各レンズ基材の前記表面の温度が予め定めた温度に達したことが表面温度センサーによりモニターされたことと同期して、各レンズ基材のランプ加熱を停止し、すべてのレンズ基材のランプ加熱が停止されたことと同期して、前記塗布を開始する。
本発明者は、上記のバッチ式の製造装置では、複数のレンズ基材間で、塗布液が塗布される際の表面の温度が必ずしも同じではないことが、量産されるレンズの中に偏光層にクラックが発生するものが見られる原因であると推察するに至った。この点について更に説明すると、上記のバッチ式製造装置では、それぞれのレンズ基材において表面温度が所定温度に達するとランプ加熱が停止される一方で、塗布の開始はすべてのランプ加熱が停止されたことと同期して行われるため、複数のレンズ基材間で表面温度が所定温度に達するタイミングが大きくずれると、結果的にランプ加熱停止から塗布開始までの間隔が複数のレンズ間でばらつくことになる。レンズ基材の温まりやすさは、主にレンズ基材の肉厚に依存し、薄いレンズはすぐに温まるが厚いレンズは内部に熱を奪われるため表面を所定温度まで加熱するために時間を要する。温まりやすくランプ加熱が早く停止されたレンズ基材では、塗布までの間にレンズ基材の表面温度が低下してしまうため、かかるレンズ基材上ではリオトロピック液晶性を有する二色性色素がその液晶状態を十分に発現できず色素分子の配列が不十分であることが、偏光層におけるクラック発生の原因と考えられる。
以上の知見に基づき本発明者は更に検討を重ね、複数の候補レンズ基材の中から、同一ないし近似する肉厚を有する複数のレンズ基材を選択してバッチ式の製造装置において処理することで、複数のレンズ基材間の温まりやすさの違いに起因する上記現象の発生を抑制ないし防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的は、下記手段によって達成された。
[1]リオトロピック液晶性を有する二色性色素を含有する偏光層形成用塗布液を、該二色性色素の配列を規制するための溝を持つ表面を最表面に有するレンズ基材の該表面上に塗布することにより偏光層を形成することを、複数のレンズ基材に対してバッチ式で行い複数の偏光レンズを得る偏光レンズの量産方法であって、
複数の候補レンズ基材の中から、肉厚を選択基準として、同一ないし近似する肉厚を有する複数のレンズ基材を前記バッチ式の塗布を行うレンズ基材として選択し、
前記選択した複数のレンズ基材に対して前記バッチ式の塗布を行う前に、該複数のレンズ基材をバッチ式でランプ加熱することを含み、
前記ランプ加熱を、複数のレンズ基材の各々の上方に、各レンズ基材をランプ加熱するための熱源を配置して、レンズ基材の上記溝を持つ表面の温度を表面温度センサーによりモニターしながら行い、
各レンズ基材の前記表面の温度が予め定めた温度に達したことが前記表面温度センサーにより検知されたことと同期して、各レンズ基材のランプ加熱を停止し、
すべてのレンズ基材のランプ加熱が停止されたことと同期して、前記塗布を開始することを特徴とする、前記偏光レンズの量産方法。
[2]前記選択基準とする肉厚は、レンズ基材の中心肉厚、コバ厚、および中心肉厚およびコバ厚である[1]に記載の偏光レンズの量産方法。
[3]前記表面は、一定方向に研磨処理が施された表面である[1]または[2]に記載の偏光レンズの量産方法。
[4]前記表面は、レンズ基材上に形成された配列層表面である[1]〜[3]のいずれかに記載の偏光レンズの量産方法。
[1]リオトロピック液晶性を有する二色性色素を含有する偏光層形成用塗布液を、該二色性色素の配列を規制するための溝を持つ表面を最表面に有するレンズ基材の該表面上に塗布することにより偏光層を形成することを、複数のレンズ基材に対してバッチ式で行い複数の偏光レンズを得る偏光レンズの量産方法であって、
複数の候補レンズ基材の中から、肉厚を選択基準として、同一ないし近似する肉厚を有する複数のレンズ基材を前記バッチ式の塗布を行うレンズ基材として選択し、
前記選択した複数のレンズ基材に対して前記バッチ式の塗布を行う前に、該複数のレンズ基材をバッチ式でランプ加熱することを含み、
前記ランプ加熱を、複数のレンズ基材の各々の上方に、各レンズ基材をランプ加熱するための熱源を配置して、レンズ基材の上記溝を持つ表面の温度を表面温度センサーによりモニターしながら行い、
各レンズ基材の前記表面の温度が予め定めた温度に達したことが前記表面温度センサーにより検知されたことと同期して、各レンズ基材のランプ加熱を停止し、
すべてのレンズ基材のランプ加熱が停止されたことと同期して、前記塗布を開始することを特徴とする、前記偏光レンズの量産方法。
[2]前記選択基準とする肉厚は、レンズ基材の中心肉厚、コバ厚、および中心肉厚およびコバ厚である[1]に記載の偏光レンズの量産方法。
[3]前記表面は、一定方向に研磨処理が施された表面である[1]または[2]に記載の偏光レンズの量産方法。
[4]前記表面は、レンズ基材上に形成された配列層表面である[1]〜[3]のいずれかに記載の偏光レンズの量産方法。
本発明によれば、偏光レンズ量産時における偏光層のクラック発生を抑制ないし防止することができる。これにより本発明によれば、高品質な偏光レンズを安定供給することが可能となる。
本発明は、リオトロピック液晶性を有する二色性色素を含有する偏光層形成用塗布液を、該二色性色素の配列を規制するための溝を持つ表面を最表面に有するレンズ基材の該表面上に塗布することにより偏光層を形成することを、複数のレンズ基材に対してバッチ式で行い複数の偏光レンズを得る偏光レンズの量産方法に関する。本発明の偏光レンズの量産方法では、複数の候補レンズ基材の中から、肉厚を選択基準として、同一ないし近似する肉厚を有する複数のレンズ基材を前記バッチ式の塗布を行うレンズ基材として選択し、前記選択した複数のレンズ基材に対して前記バッチ式の塗布を行う前に、該複数のレンズ基材をバッチ式でランプ加熱する。そして前記ランプ加熱を、複数のレンズ基材の各々の上方に、各レンズ基材をランプ加熱するための熱源と、レンズ基材の上記溝を持つ表面の温度をモニターするための表面温度センサーを配置して行い、各レンズ基材の前記表面の温度が予め定めた温度に達したことが前記表面温度センサーによりモニターされたことと同期して、各レンズ基材のランプ加熱を停止し、すべてのレンズ基材のランプ加熱が停止されたことと同期して、前記塗布を開始する。上記のように肉厚を選択基準としてバッチ式で同時処理する複数のレンズ基材を選択することで、後述の実施例で示すように、量産される偏光レンズにおける偏光層のクラック発生を抑制ないし防止できる理由は、塗布時のレンズ基材間の表面温度のバラつきを低減できることにあると、本発明者は推察している。
以下、本発明の偏光レンズの量産方法について、更に詳細に説明する。
以下、本発明の偏光レンズの量産方法について、更に詳細に説明する。
バッチ式製造工程
本発明の偏光レンズの量産方法において、二色性色素含有塗布液が塗布される面(被塗布面)は、レンズ基材表面であってもよく、レンズ基材上に形成された配列層表面であってもよい。被塗布面の詳細については後述するが、被塗布面の表面形状は、平面、凸面、凹面等の任意の形状であることができる。
本発明の偏光レンズの量産方法において、二色性色素含有塗布液が塗布される面(被塗布面)は、レンズ基材表面であってもよく、レンズ基材上に形成された配列層表面であってもよい。被塗布面の詳細については後述するが、被塗布面の表面形状は、平面、凸面、凹面等の任意の形状であることができる。
レンズ基材としては、特に限定されるものではなく、眼鏡レンズのレンズ基材に通常使用される材料、具体的にはプラスチック、無機ガラス、等からなるものを用いることができる。レンズ基材の厚さおよび直径は、特に限定されるものではないが、通常、厚さは1〜30mm程度、直径は50mm〜100mm程度である。また、眼鏡レンズは、フィニッシュレンズと呼ばれる、屈折力を持たない(度数のない)、または両面に光学面を有する眼鏡レンズと、セミフィニッシュレンズと呼ばれる一方の面だけが光学的に仕上げられたレンズブランクに大別される。セミフィニッシュレンズは、表面は光学的に仕上げられた面(光学面)であり、裏面は受注を受けた後にレンズ処方値に応じて所望のレンズ度数となるように研磨加工されるが、光学面側に偏光層を形成したセミフィニッシュレンズストックを多数作製、保管しておけば、受注を受けた後に裏面を研磨加工するだけで所望の度数を有する偏光レンズを供給することが可能となる。
上記セミフィニッシュレンズは研磨取りしろを含むため、その厚さは通常フィニッシュレンズより厚く、一般的には4.0〜30.0mm程度である。そのため、バッチ式の製造装置においてフィニッシュレンズとセミフィニッシュレンズを同時に処理すると、フィニッシュレンズはセミフィニッシュレンズと比べて薄いため早く温まる。ただし塗布開始は、セミフィニッシュレンズのランプ加熱が終了した後となるため、ランプ加熱終了から塗布開始までの間にレンズ基材表面の温度が低下してしまう。その結果、フィニッシュレンズ上で二色性色素が液晶状態を十分に発現できないことが、クラック発生の原因であると推察される。そこでこのような現象の発生を防ぐために、本発明では、肉厚を選択基準として、複数の候補レンズ基材の中から同一ないし近似する肉厚を有するものを、バッチ式で同時に処理するレンズ基材として選択する。近似する肉厚とは、好ましくは、選択された複数のレンズ基材の肉厚の平均値に対する最大肉厚と最小肉厚の変動幅が±30%以内に収まっていることをいい、±20%以内に収まっていることがより好ましく、±10%以内に収まっていることがより一層好ましい。選択基準とする肉厚は、特に限定されるものではなく、例えば中心肉厚であることができるが、コバ厚であってもよく、またそれらの両方であってもよい。例えば、候補レンズ基材群を、肉厚が近似する複数のレンズ群に分類し、レンズ群毎にバッチ式の処理を行うことも好適である。同時に処理するレンズ基材の肉厚が近いほどランプ加熱停止のタイミングが揃うため好ましく、この点からはフィニッシュレンズとセミフィニッシュレンズを同時に処理することは望ましくない。また、加熱の均一性を高める上では、塗布液を塗布するレンズ基材表面(被塗布面)の形状も近いことが好ましく、プラスレンズであればプラスレンズ同士を、マイナスレンズであればマイナスレンズ同士を同時に処理することが好ましく、プラスレンズとマイナスレンズを同時に処理することは好ましくない。また、肉厚に加えて補助的な選択基準として、レンズ基材の外径、体積を採用することも好適である。
こうして肉厚を基準として選択されたレンズ基材は、バッチ式の塗布を行う前にバッチ式でランプ加熱される。このランプ加熱は、複数のレンズ基材の各々の上方に、各レンズ基材をランプ加熱するための熱源を配置して、レンズ基材の被塗布面の温度を表面温度センサーによりモニターしながら行われる。そして、各レンズ基材の前記表面の温度が予め定めた温度に達したことが前記表面温度センサーにより検知されたことと同期して、各レンズ基材のランプ加熱を停止する。その後、すべてのレンズ基材のランプ加熱が停止されたことと同期して、前記の複数のレンズ基材へのバッチ式塗布を開始する。以下、上記工程について、図面を参照し説明する。ただし図面に示す態様は例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
図1〜図5は、3つのレンズ基材1a、1b、1cに対してバッチ式で加熱および塗布を行う偏光レンズ製造工程の説明図である。ここで3つのレンズ基材は、先に説明したように、肉厚に基づき選択されたものである。図1は、3つのレンズ基材に対してバッチ式でランプ加熱を開始した状態を示し、レンズ基材1a、1b、1cの上方には、それぞれランプ加熱の熱源2a、2b、2cが配置されている。上記熱源としては、赤外線ランプ、ハロゲンランプ等のランプ加熱可能な公知の熱源を用いることができる。図1では、放射熱を矢印により模式的に示している。各熱源の放射熱量は異なっていてもよいが、複数のレンズ間での加熱の均一性をより一層高めるためには、同一とすることが好ましい。また、図示しない表面温度センサーが、各レンズ基材について、例えばレンズ基材上方に設置されている。表面センサーとしては、例えば赤外線センサー等の非接触式温度計を用いることができる。
次いで、ランプ加熱により表面(被塗布面)の温度が所定温度になったことを表面温度センサーが検知すると、この検知と同期してランプ加熱を停止する。なお本発明において同期とは、ある動作と連動して次の動作が行われることを意味する。例えば、バッチ式製造装置の制御部(PCなど)に、表面温度センサーにより所定温度に達したことが検知されると信号が送られ、この信号が受信されると熱源が切られるプログラムを搭載することで、上記検知とランプ加熱の停止とを同期させることができる。上記の所定温度は、例えば50〜80℃程度であるが、これに限定されるものではなく、使用する二色性色素の種類に応じて、該二色性色素がリオトロピック液晶性を発現し得る温度を考慮して決定すればよい。
図2は、レンズ基材1aの表面温度が所定温度に達したことが検知されたことに同期して熱源2aによるランプ加熱が停止した状態を示し、図3は、レンズ基材1cの表面温度が所定温度に達したことが検知されたことに同期して熱源2cによるランプ加熱が停止した状態を示す。そして図4は、レンズ基材1bの表面温度が所定温度に達したことが検知されたことに同期して熱源2bによるランプ加熱が停止した状態を示す。こうして図4に示すようにすべてのレンズ基材のランプ加熱が終了すると、これと同期して各レンズ基材への二色性色素の塗布が開始される。図5に示す態様では、レンズ基材1a、1b、1cをそれぞれ保持する保持部5a、5b、5cは、スピンコーターの機能を備えており、最後のレンズ基材のランプ加熱が終了すると、アーム4の移動により吐出ノズル3a、3b、3cがレンズ基材1a、1b、1c上方にそれぞれ配置されるとともに、アーム4内を流れる塗布液が、各吐出ノズルからレンズ基材上に塗出される構成となっている。レンズ基材上に吐出された塗布液は、保持部5a、5b、5cが回転することで遠心力によって被塗布面上に広がり、これにより被塗布面全面に塗布液が塗布される。被塗布面上に塗布された塗布液中の二色性色素は、加熱されたレンズ基材表面上での温度変化および溶媒蒸発によって塗布液内がリオトロピック液晶性を発現し得る条件となるとリオトロピック液晶性を発現し、被塗布面上の溝に沿って、または溝に直交する方向に配列する。ただし、ランプ加熱停止のタイミングがレンズ基材間で大きく異なると、先に説明したように量産される偏光レンズの中には、偏光層においてクラックが発生した偏光レンズも含まれてしまう場合がある。これに対し本発明では、同時に処理するレンズ基材間の肉厚を揃えることで、上記クラックの発生を抑制ないし防止することができる。これにより本発明によれば、高品質な偏光レンズを多数安定供給することが可能となる。
なお図1〜5では、塗布液の塗布をスピンコート法により行う態様を示したが、塗布方法はスピンコート法に限定されるものではなく、ディップコート法、スプレーコート法等の公知の塗布方法を用いることができる。偏光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常0.05〜5μm程度である。なお、後述するシランカップリング剤は通常、偏光層に浸透し実質的に偏光層に含まれることになる。
被塗布面
二色性色素含有塗布液が塗布される被塗布面は、二色性色素の配列を規制するための溝を持つ表面である。上記溝を有する表面上にリオトロピック液晶性を有する二色性色素を含有する塗布液を塗布すると、二色性色素は温度変化と、主に溶媒の蒸発による濃度変化に伴い溝に沿って、または溝と直交する方向に配向する。これにより、二色性色素を一軸配向させ、その偏光性を良好に発現させることができる。上記溝の形成は、例えば、液晶分子の配向処理のために行われるラビング工程によって行うことができる。ラビング工程は、被研磨面を布などで一定方向に擦る工程であり、その詳細は、例えば米国特許2400877号明細書や米国特許4865668号明細書等を参照できる。または、特開2009−237361号公報段落[0033]〜[0034]に記載の研磨処理により、溝を形成することも可能である。形成される溝の深さやピッチは、二色性色素を一軸配向させることができるように設定すればよい。上記溝を有する表面は、レンズ基材の片面または両面の最表面に設けられる。
二色性色素含有塗布液が塗布される被塗布面は、二色性色素の配列を規制するための溝を持つ表面である。上記溝を有する表面上にリオトロピック液晶性を有する二色性色素を含有する塗布液を塗布すると、二色性色素は温度変化と、主に溶媒の蒸発による濃度変化に伴い溝に沿って、または溝と直交する方向に配向する。これにより、二色性色素を一軸配向させ、その偏光性を良好に発現させることができる。上記溝の形成は、例えば、液晶分子の配向処理のために行われるラビング工程によって行うことができる。ラビング工程は、被研磨面を布などで一定方向に擦る工程であり、その詳細は、例えば米国特許2400877号明細書や米国特許4865668号明細書等を参照できる。または、特開2009−237361号公報段落[0033]〜[0034]に記載の研磨処理により、溝を形成することも可能である。形成される溝の深さやピッチは、二色性色素を一軸配向させることができるように設定すればよい。上記溝を有する表面は、レンズ基材の片面または両面の最表面に設けられる。
本発明において上記溝を有する表面(被塗布面)は、一態様ではレンズ基材表面であることができるが、二色性色素の配向状態をより良好に規制するためには、レンズ基材上に配列層を形成し、該配列層表面に上記溝を形成することが好ましい。配列層の厚さは、通常0.02〜5μm程度であり、好ましくは0.05〜0.5μm程度である。配列層は、蒸着、スパッタ等の公知の成膜法によって成膜材料を堆積させることにより形成してもよく、ディップ法、スピンコート法等の公知の塗布法によって形成してもよい。上記成膜材料として好適なものとしては、シリコン酸化物、金属酸化物、またはこれらの複合体もしくは化合物を挙げることができる。より好ましくは、Si、Al、Zr、Ti、Ge、Sn、In、Zn、Sb、Ta、Nb、V、Yから選ばれる材料の酸化物、またはこれら材料の複合体もしくは化合物を用いることができる。これらの中でも配列層としての機能付与の容易性の観点からはSiO、SiO2等のケイ素酸化物が好ましく、SiO2がより好ましい。
一方、上記塗布法によって形成される配列層としては、無機酸化物ゾルを含むゾル−ゲル膜を挙げることができる。上記ゾル−ゲル膜の形成に好適な塗布液としては、アルコキシシラン、ヘキサアルコキシジシロキサンの少なくとも一方を無機酸化物ゾルとともに含む塗布液を挙げることができる。配列層としての機能付与の容易性の観点から、上記アルコキシシランは、好ましくは特開2009−237361号公報に記載の一般式(1)で表されるアルコキシシランであり、上記ヘキサアルコキシジシロキサンは、好ましくは特開2009−237361号公報に記載の一般式(2)で表されるヘキサアルコキシジシロキサンである。上記塗布液は、アルコキシシラン、ヘキサアルコキシジシロキサンのいずれか一方を含んでもよく、両方を含んでもよく、更に必要に応じて特開2009−237361号公報に記載の一般式(3)で表される官能基含有アルコキシシランを含むこともできる。上記塗布液および成膜方法(塗布方法)の詳細については、特開2009−237361号公報段落[0011]〜[0023]、[0029]〜[0031]および同公報記載の実施例を参照できる。
二色性色素
偏光層形成のために使用される塗布液に含まれる色素はリオトロピック液晶性および二色性を有する色素(二色性色素)である。「二色性」とは、媒質が光に対して選択吸収の異方性を有するために、透過光の色が伝播方向によって異なる性質を意味し、二色性色素は、偏光光に対して色素分子のある特定の方向で光吸収が強くなり、これと直交する方向では光吸収が小さくなる性質を有する。また、二色性色素の中には、ある濃度・温度範囲で液晶状態を発現するものが知られている。このような液晶状態のことをリオトロピック液晶といい、本発明において偏光層形成のために使用される二色性色素は、リオトロピック液晶性を有するものである。リオトロピック液晶性を有する二色性色素の液晶状態を利用して、被塗布面の溝に沿って、または溝と直交する方向に色素分子を良好に一軸配向させることができれば高品質な偏光層を形成することができるが、バッチ式製造工程により量産される偏光レンズの中には、偏光層にクラックが発生した、品質に劣るレンズが含まれることがある。これはバッチ処理される複数のレンズ基材間で二色性色素を塗布する際のレンズ基材表面(被塗布面)温度に大きな違いがあることに起因すると考えられるところ、本発明は、上記温度の違いの原因となるレンズ基材間の肉厚のバラつきを抑えることで、上記クラックの発生を抑制ないし防止することができる。
偏光層形成のために使用される塗布液に含まれる色素はリオトロピック液晶性および二色性を有する色素(二色性色素)である。「二色性」とは、媒質が光に対して選択吸収の異方性を有するために、透過光の色が伝播方向によって異なる性質を意味し、二色性色素は、偏光光に対して色素分子のある特定の方向で光吸収が強くなり、これと直交する方向では光吸収が小さくなる性質を有する。また、二色性色素の中には、ある濃度・温度範囲で液晶状態を発現するものが知られている。このような液晶状態のことをリオトロピック液晶といい、本発明において偏光層形成のために使用される二色性色素は、リオトロピック液晶性を有するものである。リオトロピック液晶性を有する二色性色素の液晶状態を利用して、被塗布面の溝に沿って、または溝と直交する方向に色素分子を良好に一軸配向させることができれば高品質な偏光層を形成することができるが、バッチ式製造工程により量産される偏光レンズの中には、偏光層にクラックが発生した、品質に劣るレンズが含まれることがある。これはバッチ処理される複数のレンズ基材間で二色性色素を塗布する際のレンズ基材表面(被塗布面)温度に大きな違いがあることに起因すると考えられるところ、本発明は、上記温度の違いの原因となるレンズ基材間の肉厚のバラつきを抑えることで、上記クラックの発生を抑制ないし防止することができる。
本発明において使用される二色性色素としては、リオトロピック液晶性を示すものであれば特に限定されるものではなく、偏光部材に通常使用される各種二色性色素を挙げることができる。具体例としては、アゾ系、アントラキノン系、メロシアニン系、スチリル系、アゾメチン系、キノン系、キノフタロン系、ペリレン系、インジゴ系、テトラジン系、スチルベン系、ベンジジン系色素等が挙げられる。また、米国特許2400877号明細書、特表2002−527786号公報に記載されているもの等でもよい。
二色性色素含有塗布液が塗布されるレンズ基材の加熱および塗布方法の詳細は、先に説明した通りである。使用する二色性色素含有塗布液は、通常、溶液または懸濁液である。二色性色素の多くは水溶性であるため、上記塗布液は通常、水を溶媒とする水溶液である。塗布液中の二色性色素の含有量は、例えば1〜50質量%程度であるが、所望の偏光性が得られればよく上記範囲に限定されるものではない。
塗布液は、二色性色素に加えて、他の成分を含むこともできる。他の成分としては、二色性色素以外の色素を挙げることができ、このような色素を配合することで所望の色相を有する偏光レンズを製造することができる。さらに塗布性等を向上させる観点から、必要に応じてレオロジー改質剤、接着性促進剤、可塑剤、レベリング剤等の添加剤を配合してもよい。
二色性色素として水溶性色素を用いる場合には、塗布後に偏光層の膜安定性を高めるために非水溶化処理を施すことが好ましい。非水溶化処理は、例えば色素分子の末端水酸基をイオン交換することや色素と金属イオンとの間でキレート状態を作り出すことにより行うことができる。そのためには、形成した偏光膜を金属塩水溶液に浸漬する方法を用いることが好ましい。使用できる金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えばAlCl3、BaCl2、CdCl2、ZnCl2、FeCl2およびSnCl3等を挙げることができる。また、金属塩水溶液にはpH調整のために酸または塩基を添加してもよい。水溶化処理後、偏光層の表面をさらに乾燥させてもよい。非水溶化処理後、偏光層の表面をさらに乾燥させてもよい。
また、偏光層に対しては、膜強度および安定性を高めるために、例えば特開2009−237361号公報に記載されているように色素保護層を形成する(二色性色素の固定化処理を施す)こともできる。この固定化処理は、上記の非水溶化処理の後に行うことが望ましい。固定化処理により、偏光膜中で二色性色素の配向状態を固定化することができる。固定化処理の詳細については、例えば特開2009−237361号公報段落[0036]および同公報記載の実施例を参照できる。偏光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常0.05〜5μm程度である。上記色素保護膜は、偏光層に浸透し実質的に偏光層に含まれることになる。
以上の工程により、偏光層におけるクラックの発生のない高品質な偏光レンズを多数量産することができる。また、本発明では、前記した層以外の機能性膜を任意の位置に形成することもできる。機能性膜としては、ハードコート膜、反射防止膜、撥水膜、紫外線吸収膜、赤外線吸収膜、フォトクロミック膜、静電防止膜等、更に各膜間の密着性を高めるためのプライマーを挙げることができる。これらの機能性膜については、いずれも公知技術を何ら制限なく適用することができる。また、レンズ基材としてセミフィニッシュレンズを使用する場合には、光学面側に偏光層を形成し、受注を受けた後に非光学面をレンズ処方値に応じて所望のレンズ度数となるように研磨加工した後に製品レンズとして出荷する。また、該研磨前または研磨後に、前記した各種機能性膜を機能性膜を任意の位置に形成することもできる。
以下に、実施例により本発明を更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
偏光レンズの作製
(1)レンズ基材の作製
注型重合法により、幾何中心肉厚が異なる複数のレンズ基材を成形した。成形した各レンズ基材は、光学面側が凸面、非光学面側が凹面のポリウレタンウレア製のレンズ(φ75mm)である。
(1)レンズ基材の作製
注型重合法により、幾何中心肉厚が異なる複数のレンズ基材を成形した。成形した各レンズ基材は、光学面側が凸面、非光学面側が凹面のポリウレタンウレア製のレンズ(φ75mm)である。
(2)配列層の形成
各レンズの凸面に真空蒸着法により、厚さ0.2μmのSiO2膜を形成した。
形成されたSiO2膜に、研磨剤含有ウレタンフォーム(研磨剤:フジミインコーポレーテッド社製商品名POLIPLA203A、平均粒径0.8μmのAl2O3粒子、ウレタンフォーム:上記レンズの凸面の曲率とほぼ同形状)を用いて、一軸研磨加工処理を回転数350rpm、研磨圧50g/cm2の条件で30秒間施した。
各レンズの凸面に真空蒸着法により、厚さ0.2μmのSiO2膜を形成した。
形成されたSiO2膜に、研磨剤含有ウレタンフォーム(研磨剤:フジミインコーポレーテッド社製商品名POLIPLA203A、平均粒径0.8μmのAl2O3粒子、ウレタンフォーム:上記レンズの凸面の曲率とほぼ同形状)を用いて、一軸研磨加工処理を回転数350rpm、研磨圧50g/cm2の条件で30秒間施した。
(3)中心肉厚に基づくレンズ群の分類
配列層を形成した複数のレンズ基材を、中心肉厚に基づき、以下のレンズ群に分類した。
レンズ群1:幾何中心肉厚2mm、5mmのフィニッシュレンズ、および幾何中心肉厚20mmのセミフィニッシュレンズ(最小中心肉厚2mmは平均中心肉厚9mmの約22%、最大中心肉厚20mmは平均中心肉厚の約222%)
レンズ群2:幾何中心肉厚20mm、21mm、22mmのセミフィニッシュレンズ(最小中心肉厚20mmは平均中心肉厚21mmの約95%、最大中心肉厚22mmは平均中心肉厚の約105%)
配列層を形成した複数のレンズ基材を、中心肉厚に基づき、以下のレンズ群に分類した。
レンズ群1:幾何中心肉厚2mm、5mmのフィニッシュレンズ、および幾何中心肉厚20mmのセミフィニッシュレンズ(最小中心肉厚2mmは平均中心肉厚9mmの約22%、最大中心肉厚20mmは平均中心肉厚の約222%)
レンズ群2:幾何中心肉厚20mm、21mm、22mmのセミフィニッシュレンズ(最小中心肉厚20mmは平均中心肉厚21mmの約95%、最大中心肉厚22mmは平均中心肉厚の約105%)
(4)偏光層の形成
レンズ群1の3枚のレンズに対して、図1〜5に示すバッチ式製造装置を用いて以下の方法で偏光層を形成した。
上記(2)で研磨処理を施したレンズを、配列層表面を鉛直上方に向けた状態で、塗布装置内の保持部5a、5b、5c上にそれぞれ設置した。
上記製造装置において、保持部上に配置されたレンズを赤外線ランプ2a、2b、2cによりそれぞれ同時に同じ放射熱量で加熱を開始し、各レンズの表面(配列層表面)の温度が52℃になった時点で赤外線ランプを切り加熱を終了した。肉厚の薄い順に加熱が終了したことから、レンズ肉厚が薄いほど温まりやすいことが確認された。
最後に幾何中心肉厚20mmのセミフィニッシュレンズの加熱が終了すると、これと同期してアーム4が動作し、吐出ノズル3a、3b、3cが各レンズ基材上方に配置された。吐出ノズルからの塗布液の吐出を3枚のレンズ基材に対して同時に開始し、それぞれのレンズ基材にスピンコートによる塗布を行った。スピンコートは、リオトロピック液晶性を有する水溶性の二色性色素(スターリング オプティクス インク(Sterling Optics Inc)社製商品名Varilight solution 2S)の約5質量%水溶液2〜3gを用いて、該水溶液を回転数300rpmで供給し、8秒間保持、次に回転数400rpmで45秒間保持、さらに1000rpmで12秒間保持することで行った。
次いで、塩化鉄濃度が0.15M、水酸化カルシウム濃度が0.2MであるpH3.5の水溶液を調製し、この水溶液に上記で得られたレンズをおよそ30秒間浸漬し、その後引き上げ、純水にて充分に洗浄を施した。この工程により、水溶性であった色素は難溶性に変換される(非水溶化処理)。
非水溶化処理後のレンズをγ−アミノプロピルトリエトキシシラン10質量%水溶液に15分間浸漬し、その後純水で3回洗浄し、加熱炉内(炉内温度85℃)で30分間加熱処理した後、炉内から取り出し室温まで冷却した。
上記冷却後、レンズをγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2質量%水溶液に30分浸漬した。上記固定化処理後、レンズを加熱炉内(炉内温度60℃)で30分間加熱処理した後、炉内から取り出し室温まで冷却した。
以上の処理後、形成された偏光層の厚さは、約1μmであった。
レンズ群1の3枚のレンズに対して、図1〜5に示すバッチ式製造装置を用いて以下の方法で偏光層を形成した。
上記(2)で研磨処理を施したレンズを、配列層表面を鉛直上方に向けた状態で、塗布装置内の保持部5a、5b、5c上にそれぞれ設置した。
上記製造装置において、保持部上に配置されたレンズを赤外線ランプ2a、2b、2cによりそれぞれ同時に同じ放射熱量で加熱を開始し、各レンズの表面(配列層表面)の温度が52℃になった時点で赤外線ランプを切り加熱を終了した。肉厚の薄い順に加熱が終了したことから、レンズ肉厚が薄いほど温まりやすいことが確認された。
最後に幾何中心肉厚20mmのセミフィニッシュレンズの加熱が終了すると、これと同期してアーム4が動作し、吐出ノズル3a、3b、3cが各レンズ基材上方に配置された。吐出ノズルからの塗布液の吐出を3枚のレンズ基材に対して同時に開始し、それぞれのレンズ基材にスピンコートによる塗布を行った。スピンコートは、リオトロピック液晶性を有する水溶性の二色性色素(スターリング オプティクス インク(Sterling Optics Inc)社製商品名Varilight solution 2S)の約5質量%水溶液2〜3gを用いて、該水溶液を回転数300rpmで供給し、8秒間保持、次に回転数400rpmで45秒間保持、さらに1000rpmで12秒間保持することで行った。
次いで、塩化鉄濃度が0.15M、水酸化カルシウム濃度が0.2MであるpH3.5の水溶液を調製し、この水溶液に上記で得られたレンズをおよそ30秒間浸漬し、その後引き上げ、純水にて充分に洗浄を施した。この工程により、水溶性であった色素は難溶性に変換される(非水溶化処理)。
非水溶化処理後のレンズをγ−アミノプロピルトリエトキシシラン10質量%水溶液に15分間浸漬し、その後純水で3回洗浄し、加熱炉内(炉内温度85℃)で30分間加熱処理した後、炉内から取り出し室温まで冷却した。
上記冷却後、レンズをγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2質量%水溶液に30分浸漬した。上記固定化処理後、レンズを加熱炉内(炉内温度60℃)で30分間加熱処理した後、炉内から取り出し室温まで冷却した。
以上の処理後、形成された偏光層の厚さは、約1μmであった。
上記と同様のバッチ処理を、レンズ群2の3枚のレンズ基材に対して実施した。ランプ式加熱の終了は、3枚のレンズ基材間でほぼ同時であった。
曇り(ヘイズ)発生有無の評価
株式会社村上色彩技術研究所製ヘイズメーターMH−150にて、上記方法により作製された合計6枚の偏光レンズのヘイズ値を測定し、曇りの有無を以下の基準にしたがい評価したところ、レンズ群1に属する幾何中心肉厚20mmのセミフィニッシュレンズ、レンズ群2に属する幾何中心肉厚20mm、21mm、22mmのセミフィニッシュレンズを用いて作製した偏光レンズの評価結果は「○」、レンズ群1に属するフィニッシュレンズを用いて作製した2枚の偏光レンズの評価結果は「×」であった。
(評価基準)
○:曇りなし(ヘイズ値≦0.4%)
×:曇りあり(ヘイズ値>0.4%)
株式会社村上色彩技術研究所製ヘイズメーターMH−150にて、上記方法により作製された合計6枚の偏光レンズのヘイズ値を測定し、曇りの有無を以下の基準にしたがい評価したところ、レンズ群1に属する幾何中心肉厚20mmのセミフィニッシュレンズ、レンズ群2に属する幾何中心肉厚20mm、21mm、22mmのセミフィニッシュレンズを用いて作製した偏光レンズの評価結果は「○」、レンズ群1に属するフィニッシュレンズを用いて作製した2枚の偏光レンズの評価結果は「×」であった。
(評価基準)
○:曇りなし(ヘイズ値≦0.4%)
×:曇りあり(ヘイズ値>0.4%)
上記6枚の偏光レンズをSEMにより断面観察したところ、曇り発生有無の評価結果が「×」の2枚の偏光レンズでは偏光層にひび割れ(クラック)が発生していたが、評価結果「○」の4枚の偏光レンズでは、そのようなクラックは見られなかった。この結果から、上記評価により確認された偏光レンズにおける曇りは、偏光層におけるクラック発生によるものであることが確認された。この要因は、同時にバッチ処理した3枚のレンズ基材の肉厚が近似していたことによるものと考えられる。
上記実施例では、中心肉厚に基づき基づくレンズ群を分類したが、前述のように、コバ厚に基づき分類することや、中心肉厚およびコバ厚に基づいてレンズ群を分類することも可能である。
上記実施例では、中心肉厚に基づき基づくレンズ群を分類したが、前述のように、コバ厚に基づき分類することや、中心肉厚およびコバ厚に基づいてレンズ群を分類することも可能である。
偏光性能の評価
レンズ群2に属するレンズ基材を用いて作製した3枚の偏光レンズの偏光効率を、以下の方法で評価した。3枚とも評価結果は◎であった。この結果から、本発明によれば、優れた偏光効率を有する偏光層を有する偏光レンズが得られることも確認された。
<偏光効率の測定>
偏光効率(Peff)は、ISO8980−3にしたがって、平行透過率(T//)および垂直透過率(T⊥)を求め、次式により算出することで評価した。平行透過率および垂直透過率は、可視分光光度計と偏光子を用いて測定した。
Peff(%)=〔(T//−T⊥)/(T//+T⊥)〕×100
(評価基準)
◎:偏光効率98%超、○:偏光効率90%以上98%以下、×:偏光効率90%未満
レンズ群2に属するレンズ基材を用いて作製した3枚の偏光レンズの偏光効率を、以下の方法で評価した。3枚とも評価結果は◎であった。この結果から、本発明によれば、優れた偏光効率を有する偏光層を有する偏光レンズが得られることも確認された。
<偏光効率の測定>
偏光効率(Peff)は、ISO8980−3にしたがって、平行透過率(T//)および垂直透過率(T⊥)を求め、次式により算出することで評価した。平行透過率および垂直透過率は、可視分光光度計と偏光子を用いて測定した。
Peff(%)=〔(T//−T⊥)/(T//+T⊥)〕×100
(評価基準)
◎:偏光効率98%超、○:偏光効率90%以上98%以下、×:偏光効率90%未満
本発明は、眼鏡レンズの製造分野に有用である。
Claims (4)
- リオトロピック液晶性を有する二色性色素を含有する偏光層形成用塗布液を、該二色性色素の配列を規制するための溝を持つ表面を最表面に有するレンズ基材の該表面上に塗布することにより偏光層を形成することを、複数のレンズ基材に対してバッチ式で行い複数の偏光レンズを得る偏光レンズの量産方法であって、
複数の候補レンズ基材の中から、肉厚を選択基準として、同一ないし近似する肉厚を有する複数のレンズ基材を前記バッチ式の塗布を行うレンズ基材として選択し、
前記選択した複数のレンズ基材に対して前記バッチ式の塗布を行う前に、該複数のレンズ基材をバッチ式でランプ加熱することを含み、
前記ランプ加熱を、複数のレンズ基材の各々の上方に、各レンズ基材をランプ加熱するための熱源を配置して、レンズ基材の上記溝を持つ表面の温度を表面温度センサーによりモニターしながら行い、
各レンズ基材の前記表面の温度が予め定めた温度に達したことが前記表面温度センサーにより検知されたことと同期して、各レンズ基材のランプ加熱を停止し、
すべてのレンズ基材のランプ加熱が停止されたことと同期して、前記塗布を開始することを特徴とする、前記偏光レンズの量産方法。 - 前記選択基準とする肉厚は、レンズ基材の中心肉厚、コバ厚、または中心肉厚およびコバ厚である請求項1に記載の偏光レンズの量産方法。
- 前記表面は、一定方向に研磨処理が施された表面である請求項1または2に記載の偏光レンズの量産方法。
- 前記表面は、レンズ基材上に形成された配列層表面である請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光レンズの量産方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012168035A JP2014026190A (ja) | 2012-07-30 | 2012-07-30 | 偏光レンズの量産方法 |
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Cited By (2)
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JPWO2018003998A1 (ja) * | 2016-06-30 | 2018-08-16 | ホヤ レンズ タイランド リミテッドHOYA Lens Thailand Ltd | 眼鏡レンズ及び眼鏡 |
JPWO2018003996A1 (ja) * | 2016-06-30 | 2018-08-16 | ホヤ レンズ タイランド リミテッドHOYA Lens Thailand Ltd | 眼鏡レンズの製造方法 |
-
2012
- 2012-07-30 JP JP2012168035A patent/JP2014026190A/ja active Pending
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