JP2012159527A - 眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スピンコート法により均一な被覆層を形成するための手段を提供すること。
【解決手段】レンズ基材上の被塗布面にスピンコート法により塗布液を塗布して被覆層を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法。前記レンズ基材の側面を、環状開口部を有する保持部材の該内周面と当接させて保持した状態で、前記スピンコート法による塗布を行い、前記保持した状態において、前記被塗布面周縁端部と前記開口部端部は、鉛直方向に対して前記開口部端部が低位置にある状態で段差をなしている。
【選択図】なし
【解決手段】レンズ基材上の被塗布面にスピンコート法により塗布液を塗布して被覆層を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法。前記レンズ基材の側面を、環状開口部を有する保持部材の該内周面と当接させて保持した状態で、前記スピンコート法による塗布を行い、前記保持した状態において、前記被塗布面周縁端部と前記開口部端部は、鉛直方向に対して前記開口部端部が低位置にある状態で段差をなしている。
【選択図】なし
Description
本発明は、眼鏡レンズの製造方法に関するものであり、詳しくは、均一な被覆層を有する高品質な眼鏡レンズを提供可能な眼鏡レンズの製造方法に関するものである。
眼鏡レンズは、一般に、レンズ基材により所望の屈折率を実現した上で、基材上に設けられる機能性層により各種性能(調光性能、反射防止能、耐久性向上等)が付与される。かかる機能性膜の形成方法としては、スピンコート法が広く用いられている(例えば特許文献1参照)。
現在市販されているスピンコーターの多くは、被塗布面の周縁部をチャック爪で把持する機構を有する保持部材または吸着パッドにより被塗布面の裏面を吸着保持する機構を有する保持部材により、被塗布物をスピンコーター上に固定している。しかしチャック爪による把持では、爪と接触していた部分にヒケと呼ばれる塗り残しが発生してしまうため、被塗布面全面に塗布液を均一に塗布することはできない。これに対し、吸着パッドによる保持によれば、保持部材は被塗布面に触れないため被塗布面の周縁部に部分的に塗り残しが発生することは回避できる。しかし、スピンコート法では、レンズ基材上に塗布された塗布液には、中心部から周縁部に向けて遠心力が加わるため周縁部に液溜まりが生じやすい。このような液溜まりが生じた部分は乾燥が不十分となる結果、密着不足となり剥がれやすくなる。吸着パットによる保持では、部分的なヒケの発生を防ぐことはできるものの、液溜まりの発生を防ぐことは困難である。
そこで、この液溜まりを周縁部から吹き飛ばすためにスピンコート時の回転速度を高めると、形成される塗布層が薄くなり塗布むらが発生してしまい、周縁部全周にわたりヒケと呼ばれる塗り残しが発生してしまう場合がある。
上記のような塗布むらは、色素を含む塗布層(色素層)では色むらとして顕在化するため眼鏡レンズの品質低下の原因となる。また、二色性色素が均一に配列することで良好な偏光機能を発現する偏光層において塗布むらが生じると、偏光機能不足の原因となる。したがって、特に色素層をスピンコートにより形成する際には、塗布むらのない均一な塗布を実現することが求められる。
そこで、この液溜まりを周縁部から吹き飛ばすためにスピンコート時の回転速度を高めると、形成される塗布層が薄くなり塗布むらが発生してしまい、周縁部全周にわたりヒケと呼ばれる塗り残しが発生してしまう場合がある。
上記のような塗布むらは、色素を含む塗布層(色素層)では色むらとして顕在化するため眼鏡レンズの品質低下の原因となる。また、二色性色素が均一に配列することで良好な偏光機能を発現する偏光層において塗布むらが生じると、偏光機能不足の原因となる。したがって、特に色素層をスピンコートにより形成する際には、塗布むらのない均一な塗布を実現することが求められる。
そこで本発明の目的は、スピンコート法により均一な被覆層を形成するための手段を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、環状の保持部材の開口部にレンズ基材を、保持部材開口部の端部が被塗布面の周縁端部より低くなるようにはめ込むことで、周縁部に液溜まりおよびヒケが生じることを防ぐことができることを新たに見出した。これは、保持部材開口部の端部が被塗布面の周縁端部より低いため、被塗布面周縁部から余剰の塗布液が吹き飛ぶことを保持部材が妨げることがないことと、被塗布面の周縁端部の周りには保持部材開口部の端面が存在し、この開口部端面が被塗布面周縁部から吹き飛んだ塗布液の一部を被塗布面側に戻す役割を果たすことによるものであると、本発明者は推察している。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
即ち、上記目的は、下記手段によって達成された。
[1]レンズ基材上の被塗布面にスピンコート法により塗布液を塗布して被覆層を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法であって、
前記レンズ基材の側面を、環状開口部を有する保持部材の該内周面と当接させて保持した状態で、前記スピンコート法による塗布を行い、
前記保持した状態において、前記被塗布面周縁端部と前記開口部端部は、鉛直方向に対して前記開口部端部が低位置にある状態で段差をなしていることを特徴とする、前記眼鏡レンズの製造方法。
[2]前記塗布液は、二色性色素を含む偏光層形成用塗布液である[1]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
[3]前記被塗布面は凸面形状を有する、[1]または[2]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
[1]レンズ基材上の被塗布面にスピンコート法により塗布液を塗布して被覆層を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法であって、
前記レンズ基材の側面を、環状開口部を有する保持部材の該内周面と当接させて保持した状態で、前記スピンコート法による塗布を行い、
前記保持した状態において、前記被塗布面周縁端部と前記開口部端部は、鉛直方向に対して前記開口部端部が低位置にある状態で段差をなしていることを特徴とする、前記眼鏡レンズの製造方法。
[2]前記塗布液は、二色性色素を含む偏光層形成用塗布液である[1]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
[3]前記被塗布面は凸面形状を有する、[1]または[2]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
本発明によれば、均一な塗布層を有する高品質な眼鏡レンズを提供することができる。
本発明は、レンズ基材上の被塗布面にスピンコート法により塗布液を塗布して被覆層を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法に関する。本発明の眼鏡レンズの製造方法では、前記レンズ基材の側面を、環状開口部を有する保持部材の該内周面と当接させて保持した状態で、前記スピンコート法による塗布を行う。そして、前記保持した状態において、前記被塗布面周縁端部と前記開口部端部は、鉛直方向に対して前記開口部端部が低位置にある状態で段差をなしている。
かかる本発明の眼鏡レンズの製造方法によれば、先に説明したように、スピンコート法により形成された被覆層において、周縁部にヒケや液溜まりが発生することを防ぐことができる。
以下、本発明の眼鏡レンズの製造方法について、更に詳細に説明する。
かかる本発明の眼鏡レンズの製造方法によれば、先に説明したように、スピンコート法により形成された被覆層において、周縁部にヒケや液溜まりが発生することを防ぐことができる。
以下、本発明の眼鏡レンズの製造方法について、更に詳細に説明する。
本発明の眼鏡レンズの製造方法において、塗布液が塗布される面(被塗布面)は、レンズ基材表面であってもよく、レンズ基材上に形成された被覆層表面であってもよい。被塗布面の表面形状は、平面、凸面、凹面等の任意の形状であることができる。凸面上に塗布されたコーティング液は、平面上や凹面上と比べて周縁部に向かって広がりやすく液溜まりが特に発生しやすい傾向があるため、液溜まりを低減可能な本発明は、凸面である被塗布面上に被覆層を形成する態様への適用に特に適する。
レンズ基材としては、特に限定されるものではなく、眼鏡レンズのレンズ基材に通常使用される材料、具体的にはプラスチック、無機ガラス、等からなるものを用いることができる。レンズ基材の厚さおよび直径は、特に限定されるものではないが、通常、厚さは1〜30mm程度、直径は50mm〜100mm程度である。
次に、図面に基づき、スピンコート法による塗布時のレンズ基材の保持方法について説明する。
図1および図2は、本発明において使用可能な保持部材の一例を示す概略斜視図である。本発明において使用される保持部材は、図1に示すように環状開口部11の端面が連続面であり、図2に示すように側面に開放領域(図2中、側面スリット12)を有することで環状開口部の端面の一部が不連続面となっていてもよい。
図3上図は、図1に示す保持部材によりレンズ基材を保持した状態を示す概略断面図であり、図3下図は、その部分拡大図である。
図3に示すように、本発明におけるスピンコート法による塗布時には、保持部材1の環状開口部の開口端部110は、レンズ基材上の被塗布面21の周縁端部210よりも鉛直方向に対して低位置にある。これにより、スピンコート時に保持部材の内周面が壁となり液溜まりが発生することを防ぐことができるとともに、被塗布面の周縁端部の周りに存在する保持部材開口部の端面が被塗布面周縁部から吹き飛んだ塗布液の一部を被塗布面側に戻す役割を果たすためヒケの発生を防ぐことができる。
被塗布面の周縁端部と保持部材の開口部端部との鉛直方向距離(図3下図中、矢印で挟まれた部分の距離)は、使用する塗布液の粘度およびスピンコート条件(回転数、回転時間等)を考慮し、適量の塗布液が被塗布面周縁部に保持されるように決定すればよい。通常の眼鏡レンズの製造に使用される材料およびスピンコート条件を考慮すると、上記距離は、0.1mm〜1mm程度であることが好ましく、0.1mm〜0.5mm程度であることが、より好ましい。なお図3に示す保持部材には、環状開口部の内部に段差部13が設けられている。図3に示す態様では、段差部13の上端部とレンズ基材の裏面周縁端部を当接させることで、レンズ基材を位置決め保持している。これはレンズ基材を所望の位置に位置決めし、かつスピンコート時にレンズ基材を安定に保持するうえで有利である。上記段差部に代えて、レンズ基材の位置決め保持のために、内周面の円周方向に沿ってリング状の突起帯を設けたり、円周方向に突起部を設けることも可能である。また、レンズ基材外径よりもわずかに小さな内径を有する弾性材料からなる保持部材を用いて、保持部材開口部に嵌挿されたレンズ基材を、その弾性により安定に保持することもできる。
図3に示すように、本発明におけるスピンコート法による塗布時には、保持部材1の環状開口部の開口端部110は、レンズ基材上の被塗布面21の周縁端部210よりも鉛直方向に対して低位置にある。これにより、スピンコート時に保持部材の内周面が壁となり液溜まりが発生することを防ぐことができるとともに、被塗布面の周縁端部の周りに存在する保持部材開口部の端面が被塗布面周縁部から吹き飛んだ塗布液の一部を被塗布面側に戻す役割を果たすためヒケの発生を防ぐことができる。
被塗布面の周縁端部と保持部材の開口部端部との鉛直方向距離(図3下図中、矢印で挟まれた部分の距離)は、使用する塗布液の粘度およびスピンコート条件(回転数、回転時間等)を考慮し、適量の塗布液が被塗布面周縁部に保持されるように決定すればよい。通常の眼鏡レンズの製造に使用される材料およびスピンコート条件を考慮すると、上記距離は、0.1mm〜1mm程度であることが好ましく、0.1mm〜0.5mm程度であることが、より好ましい。なお図3に示す保持部材には、環状開口部の内部に段差部13が設けられている。図3に示す態様では、段差部13の上端部とレンズ基材の裏面周縁端部を当接させることで、レンズ基材を位置決め保持している。これはレンズ基材を所望の位置に位置決めし、かつスピンコート時にレンズ基材を安定に保持するうえで有利である。上記段差部に代えて、レンズ基材の位置決め保持のために、内周面の円周方向に沿ってリング状の突起帯を設けたり、円周方向に突起部を設けることも可能である。また、レンズ基材外径よりもわずかに小さな内径を有する弾性材料からなる保持部材を用いて、保持部材開口部に嵌挿されたレンズ基材を、その弾性により安定に保持することもできる。
図2に示す保持部材では、開口部端面は部分的に不連続領域となる。開口部端面に不連続領域が形成されるように保持部材側面の一部を開口領域とすれば、保持部材作製に要する材料(例えば樹脂)を削減することができコスト面で有利である。ただし、開口部端面に占める不連続領域の割合が多くなるほど、開口部端面から被塗布面側に戻る塗布液が少なくなるため、ヒケの発生を効果的に抑制する観点からは、開口部端面において不連続領域が占める割合は小さいことが好ましい。ヒケを効果的に防止する観点からは、不連続領域の占める割合は30%以下程度とすることが好ましく、10%以下程度とすることが好ましく、10%以下程度とすることが好ましい。また、開口部端面の幅は、ヒケを効果的に防止する観点からは、3mm〜20mmの範囲とすることが好ましく、5mm〜10mmの範囲とすることがより好ましい。なお開口部端面は平面に限られるものではなく、段差や曲面を含んでいてもよい。
上記保持部材は、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。開口部に嵌挿されたレンズ基材の保持およびスピンコート後の取り外しの容易性の点からは、保持部材は樹脂製であることが好ましい。樹脂製の保持部材は、通常、注型重合用のガスケットの製造に使用される熱可塑性樹脂を射出成形等の公知の成形方法によって成形することにより得ることができる。保持部材側面のスリット、孔等の開口領域は円筒部を有する成形体の一部をカッター等で切り取ることで形成してもよく、または当該領域を形成可能な金型を用いて保持部材を成形することで作製してもよい。環状開口部への着脱の容易性の観点からは、保持されるレンズ基材、環状開口部とも平面視円形であることが好ましい。
なお、本発明で使用される保持部材の一端は上記の通り開口部であるが、他端は開口していても閉塞していてもよい。また、保持部材は上記構成を有するものであれば、その他の部分の形状は特に限定されるものではない。
なお、本発明で使用される保持部材の一端は上記の通り開口部であるが、他端は開口していても閉塞していてもよい。また、保持部材は上記構成を有するものであれば、その他の部分の形状は特に限定されるものではない。
上記保持部材は、コレットチャック等の公知のチャック装置によりスピンコーターに固定して用いることができる。
上記レンズ基材上の被塗布面への塗布液の塗布は、上記保持部材による保持を行う点を除き、通常のスピンコート法により行うことができる。スピンコート法は、被塗布面の中心部から外縁部に向かって塗布を行う方式と、その逆に外縁部から中心部に向かって塗布を行う方式がある。本発明ではいずれの方式を採用してもよい。比較的低粘度な塗布液については、前者の方法を使用することが好ましく、比較的高粘度な塗布液は前者の方法では遠心力によって被塗布面全体に均一に広げることが困難な場合があるため、後者の方法を用いることが好ましい。
前記塗布液を塗布する被塗布面は、レンズ基材表面でもよく、レンズ基材表面に形成された被覆層表面でもよい。後者の場合、上記のように保持部材によって保持してスピンコート法による塗布を行う際の被塗布面となる表面を有する被覆層は、同様のスピンコート法による塗布によって形成してもよく、通常のスピンコート法や他の成膜方法(ディップ法、蒸着法等)によって形成してもよい。複数の被覆層を有する眼鏡レンズを製造する場合、少なくとも、ヒケや液溜まりの影響が顕在しやすい被覆層を、上記のように保持部材を用いるスピンコート法により形成することが好ましい。
上記のように保持部材によってレンズ基材を保持した状態で被塗布面に塗布される塗布液としては、眼鏡レンズに所望の性能を付与するための機能性膜形成用塗布液を、製造する眼鏡レンズの仕様に応じて選択すればよい。前述のように、色素層では塗布むらは品質低下の大きな原因となるため、塗布むらの発生を抑制し得る本発明の眼鏡レンズの製造方法は、色素層を有する眼鏡レンズの製造方法として適用することが好ましい。色素層としては、フォトクロミック色素を含むフォトクロミック層、二色性色素を含む偏光層等を挙げることができる。また、前述のように、塗布むらの発生は偏光機能不足の原因となるため、二色性色素を含む偏光層を有する偏光レンズの製造方法として、本発明の眼鏡レンズの製造方法を適用することが特に好ましい。
以下、二色性色素を含む偏光層について、更に詳細に説明する。
以下、二色性色素を含む偏光層について、更に詳細に説明する。
「二色性」とは、媒質が光に対して選択吸収の異方性を有するために、透過光の色が伝播方向によって異なる性質を意味し、二色性色素は、偏光光に対して色素分子のある特定の方向で光吸収が強くなり、これと直行する方向では光吸収が小さくなる性質を有する。また、二色性色素の中には、水を溶媒とした時、ある濃度・温度範囲で液晶状態を発現するものが知られている。このような液晶状態のことをリオトロピック液晶という。この二色性色素の液晶状態を利用して特定の一方向に色素分子を配列させることができれば、より強い二色性を発現することが可能となる。レンズ基材または配列層の表面に溝を形成し、この溝を有する表面上に二色性色素を含有する塗布液を塗布することにより二色性色素を一軸配向させることができ、これにより良好な偏光性を有する偏光層を形成することができる。
本発明において、偏光層形成に使用される二色性色素としては、特に限定されるものではなく、偏光部材に通常使用される各種二色性色素を挙げることができる。具体例としては、アゾ系、アントラキノン系、メロシアニン系、スチリル系、アゾメチン系、キノン系、キノフタロン系、ペリレン系、インジゴ系、テトラジン系、スチルベン系、ベンジジン系色素等が挙げられる。また、米国特許2400877号明細書、特表2002−527786号公報に記載されているもの等でもよい。
二色性色素含有塗布液は、溶液または懸濁液であることができる。二色性色素の多くは水溶性であるため、上記塗布液は通常、水を溶媒とする水溶液である。塗布液中の二色性色素の含有量は、例えば1〜50質量%程度であるが、所望の偏光性が得られればよく上記範囲に限定されるものではない。
塗布液は、二色性色素に加えて、他の成分を含むこともできる。他の成分としては、二色性色素以外の色素を挙げることができ、このような色素を配合することで所望の色相を有する偏光レンズを製造することができる。さらに塗布性等を向上させる観点から、必要に応じてレオロジー改質剤、接着性促進剤、可塑剤、レベリング剤等の添加剤を配合してもよい。
上記二色性色素として水溶性色素を用いる場合には、膜安定性を高めるために塗布液を塗布乾燥した後に非水溶化処理を施すことが好ましい。非水溶化処理は、例えば色素分子の末端水酸基をイオン交換することや色素と金属イオンとの間でキレート状態を作り出すことにより行うことができる。そのためには、形成した偏光膜を金属塩水溶液に浸漬する方法を用いることが好ましい。使用できる金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えばAlCl3、BaCl2、CdCl2、ZnCl2、FeCl2およびSnCl3等を挙げることができる。非水溶化処理後、偏光層の表面をさらに乾燥させてもよい。
本発明により偏光レンズを製造する場合、その製造工程の詳細については、前記塗布方法を採用する点を除き、公知の方法を何ら制限なく適用することができる。例えば、特表2008−527401号公報、特開2010−256895号公報、特開2010−134424号公報、特開2010−102234号公報等を参照できる。
偏光層に対しては、膜強度および安定性を高めるために、上記公報に記載されているように色素保護層を形成する(二色性色素の固定化処理を施す)こともできる。この固定化処理は、上記の非水溶化処理の後に行うことが望ましい。固定化処理により、偏光膜中で二色性色素の配向状態を固定化することができる。偏光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常0.05〜5μm程度である。上記色素保護膜は、偏光層に浸透し実質的に偏光層に含まれることになる。
偏光層に対しては、膜強度および安定性を高めるために、上記公報に記載されているように色素保護層を形成する(二色性色素の固定化処理を施す)こともできる。この固定化処理は、上記の非水溶化処理の後に行うことが望ましい。固定化処理により、偏光膜中で二色性色素の配向状態を固定化することができる。偏光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常0.05〜5μm程度である。上記色素保護膜は、偏光層に浸透し実質的に偏光層に含まれることになる。
以下に、実施例により本発明を更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
[実施例1]
1.保持部材の作製
図1に示す保持部材を、以下の方法で作製した。
オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレンエラストマー(住友化学社製エクセレンFX)を用いて、深さ12.5mmの凹部を有する円筒体を射出成形により得た。円筒体の開口外径は82mm、開口内径は70mm、開口部から2.5mm低い位置から内径を65.5mmとすることで、凹部内に段差部を形成した。
1.保持部材の作製
図1に示す保持部材を、以下の方法で作製した。
オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレンエラストマー(住友化学社製エクセレンFX)を用いて、深さ12.5mmの凹部を有する円筒体を射出成形により得た。円筒体の開口外径は82mm、開口内径は70mm、開口部から2.5mm低い位置から内径を65.5mmとすることで、凹部内に段差部を形成した。
2.配列層の形成
レンズ基材として、フェニックスレンズ(HOYA株式会社製、屈折率1.53、ハードコート付き、直径70mm、ベースカーブ4)を用いて、レンズ凸面に真空蒸着法により、厚さ0.2μmのSiO2膜を形成した。
形成されたSiO2膜に、研磨剤含有ウレタンフォーム(研磨剤:フジミインコーポレーテッド社製商品名POLIPLA203A、平均粒径0.8μmのAl2O3粒子、ウレタンフォーム:上記レンズ凸面の曲率とほぼ同形状)を用いて、一軸研磨加工処理を回転数350rpm、研磨圧50g/cm2の条件で30秒間施した。研磨処理を施したレンズは純水により洗浄、乾燥させた。
レンズ基材として、フェニックスレンズ(HOYA株式会社製、屈折率1.53、ハードコート付き、直径70mm、ベースカーブ4)を用いて、レンズ凸面に真空蒸着法により、厚さ0.2μmのSiO2膜を形成した。
形成されたSiO2膜に、研磨剤含有ウレタンフォーム(研磨剤:フジミインコーポレーテッド社製商品名POLIPLA203A、平均粒径0.8μmのAl2O3粒子、ウレタンフォーム:上記レンズ凸面の曲率とほぼ同形状)を用いて、一軸研磨加工処理を回転数350rpm、研磨圧50g/cm2の条件で30秒間施した。研磨処理を施したレンズは純水により洗浄、乾燥させた。
3.レンズ基材の保持、固定
上記1.で作製した保持部材の開口部に、上記2.で配列層を形成したレンズ基材を、凸面が上に向くように嵌挿した。これによりレンズ基材は、被塗布面(配列層表面)の周縁端部が、保持部材の開口部端部より0.5mm高い位置で、保持部材内部の段差部によって位置決め保持された。
上記のようにレンズ基材を保持した保持部材の底面にコレットチャックを取り付け、保持部材ごとレンズ基材をスピンコーター上に固定した。
上記1.で作製した保持部材の開口部に、上記2.で配列層を形成したレンズ基材を、凸面が上に向くように嵌挿した。これによりレンズ基材は、被塗布面(配列層表面)の周縁端部が、保持部材の開口部端部より0.5mm高い位置で、保持部材内部の段差部によって位置決め保持された。
上記のようにレンズ基材を保持した保持部材の底面にコレットチャックを取り付け、保持部材ごとレンズ基材をスピンコーター上に固定した。
4.偏光層の形成
上記3.でスピンコーター上に固定したレンズ基材の配列層表面上に、二色性色素〔商品名「Varilight solution 2S」、スターリング オプティクス インク(Sterling Optics Inc)社製〕の約5質量%水溶液2〜3gを用いてスピンコートを施し、偏光層を形成した。スピンコートは、配列層表面の中心部上方に配置したディスペンサーから色素溶液を供給している間(10秒間)は回転数171rpmとし、その後285rpmで40秒間、次いで1000rpmで25秒間保持することで行った。
スピンコート後、塩化鉄濃度が0.15M、水酸化カルシウム濃度が0.2MであるpH3.5の水溶液を調製し、この水溶液に上記で得られたレンズをおよそ30秒間浸漬し、その後引き上げ、純水にて充分に洗浄を施した。この工程により、水溶性であった色素は難溶性に変換される。
その後、レンズをγ−アミノプロピルトリエトキシシラン10質量%水溶液に15分間浸漬した後に純水で3回洗浄し、85℃で30分間熱硬化した。さらに、冷却後、レンズを空気中にてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2質量%水溶液に30分浸漬した後、100℃の炉で30分間熱硬化、硬化後冷却して色素保護膜を形成(固定化処理)した。
上記3.でスピンコーター上に固定したレンズ基材の配列層表面上に、二色性色素〔商品名「Varilight solution 2S」、スターリング オプティクス インク(Sterling Optics Inc)社製〕の約5質量%水溶液2〜3gを用いてスピンコートを施し、偏光層を形成した。スピンコートは、配列層表面の中心部上方に配置したディスペンサーから色素溶液を供給している間(10秒間)は回転数171rpmとし、その後285rpmで40秒間、次いで1000rpmで25秒間保持することで行った。
スピンコート後、塩化鉄濃度が0.15M、水酸化カルシウム濃度が0.2MであるpH3.5の水溶液を調製し、この水溶液に上記で得られたレンズをおよそ30秒間浸漬し、その後引き上げ、純水にて充分に洗浄を施した。この工程により、水溶性であった色素は難溶性に変換される。
その後、レンズをγ−アミノプロピルトリエトキシシラン10質量%水溶液に15分間浸漬した後に純水で3回洗浄し、85℃で30分間熱硬化した。さらに、冷却後、レンズを空気中にてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2質量%水溶液に30分浸漬した後、100℃の炉で30分間熱硬化、硬化後冷却して色素保護膜を形成(固定化処理)した。
以上の工程により、厚さ約1.0μmの偏光層を有する眼鏡レンズ(偏光レンズ)を得た。
[比較例1]
上記1.で開口部から3.5mm低い位置から内径を65.5mmとすることで、凹部内に段差部を形成した点以外、実施例1と同様の方法で偏光レンズを作製した。上記の通り段差部を実施例1と比べて1mm低い位置に設けたため、レンズ基材は、被塗布面(配列層表面)の周縁端部が、保持部材の開口部端部より0.5mm低い位置で、保持部材内部の段差部によって位置決め保持された。
上記1.で開口部から3.5mm低い位置から内径を65.5mmとすることで、凹部内に段差部を形成した点以外、実施例1と同様の方法で偏光レンズを作製した。上記の通り段差部を実施例1と比べて1mm低い位置に設けたため、レンズ基材は、被塗布面(配列層表面)の周縁端部が、保持部材の開口部端部より0.5mm低い位置で、保持部材内部の段差部によって位置決め保持された。
[比較例2]
被塗布面の周縁端部を3点、チャック爪により保持するチャック機構によってレンズ基材を固定した状態でスピンコートを行った点以外、実施例1と同様の方法で偏光レンズを作製した。
被塗布面の周縁端部を3点、チャック爪により保持するチャック機構によってレンズ基材を固定した状態でスピンコートを行った点以外、実施例1と同様の方法で偏光レンズを作製した。
ヒケ、液溜まり発生有無の確認
以上の工程により得られた偏光レンズを蛍光灯下で目視観察したところ、実施例1で作製した偏光レンズの偏光層表面の周縁部には液溜まりは見られなかった。レンズ周縁部に部分的に偏光層の塗り残し(ヒケ)が見られたが、ヒケ幅は0.5mm以下と実用上支障のないレベルであった。
比較例2で得た偏光レンズでは、偏光層表面の周縁全周にわたって幅2〜3mm程度のヒケが見られ、特に爪によって把持されていた箇所においてヒケが顕著に発生していた。
実施例1、比較例2で作製した偏光レンズを蛍光灯下でデジタルカメラにより撮影した写真を図4に示す。図4上図はレンズ全体写真、図4下図は部分拡大写真である。
一方、比較例1で作製した偏光レンズでは、偏光層周縁部全周にわたり液溜まりに起因して膜厚が厚くなった帯状領域が形成されていることが確認された。これは、被塗布面周縁端部が全周にわたって保持部材内周面に囲まれていたことによるものと推察される。
以上の工程により得られた偏光レンズを蛍光灯下で目視観察したところ、実施例1で作製した偏光レンズの偏光層表面の周縁部には液溜まりは見られなかった。レンズ周縁部に部分的に偏光層の塗り残し(ヒケ)が見られたが、ヒケ幅は0.5mm以下と実用上支障のないレベルであった。
比較例2で得た偏光レンズでは、偏光層表面の周縁全周にわたって幅2〜3mm程度のヒケが見られ、特に爪によって把持されていた箇所においてヒケが顕著に発生していた。
実施例1、比較例2で作製した偏光レンズを蛍光灯下でデジタルカメラにより撮影した写真を図4に示す。図4上図はレンズ全体写真、図4下図は部分拡大写真である。
一方、比較例1で作製した偏光レンズでは、偏光層周縁部全周にわたり液溜まりに起因して膜厚が厚くなった帯状領域が形成されていることが確認された。これは、被塗布面周縁端部が全周にわたって保持部材内周面に囲まれていたことによるものと推察される。
偏光効率、透明性(ヘイズ値)の測定
実施例1で作製した偏光レンズについて、以下の方法により偏光効率および透明性(ヘイズ値)を測定した。
(1)偏光効率
偏光効率(Peff)は、ISO8980−3にしたがって、平行透過率(T//)および垂直透過率(T⊥)を求め、次式により算出することで評価した。平行透過率および垂直透過率は、可視分光光度計と偏光子を用いて測定した。
Peff(%)=〔(T//−T⊥)/(T//+T⊥)〕×100
(評価基準)
◎:偏光効率98%超、○:偏光効率90%以上98%以下、×:偏光効率90%未満
(2)透明性(ヘイズ値)
株式会社村上色彩技術研究所製ヘイズメーターMH−150にて、作製した偏光レンズのヘイズ値を測定し、曇りの有無を判断した。
(評価基準)
○:曇りなし(ヘイズ値≦1.0%)
×:曇りあり(ヘイズ値>1.0%)
実施例1で作製した偏光レンズについて、以下の方法により偏光効率および透明性(ヘイズ値)を測定した。
(1)偏光効率
偏光効率(Peff)は、ISO8980−3にしたがって、平行透過率(T//)および垂直透過率(T⊥)を求め、次式により算出することで評価した。平行透過率および垂直透過率は、可視分光光度計と偏光子を用いて測定した。
Peff(%)=〔(T//−T⊥)/(T//+T⊥)〕×100
(評価基準)
◎:偏光効率98%超、○:偏光効率90%以上98%以下、×:偏光効率90%未満
(2)透明性(ヘイズ値)
株式会社村上色彩技術研究所製ヘイズメーターMH−150にて、作製した偏光レンズのヘイズ値を測定し、曇りの有無を判断した。
(評価基準)
○:曇りなし(ヘイズ値≦1.0%)
×:曇りあり(ヘイズ値>1.0%)
上記測定の結果、実施例1で作製した偏光レンズについて、偏光効率は「◎」、透明性(ヘイズ値)は「○」の評価結果が得られた。この結果から、高い偏光効率を有し、かつ優れた透明性を有する眼鏡レンズが得られたことが確認された。先に説明した通り、偏光層に塗布むらが生じると偏光機能不足の原因となるが、実施例1で作製した偏光レンズはきわめて良好な偏光効率を示したことから、塗布むらのない均一な偏光層が形成されたことが確認できる。
本発明は、色素層を有する眼鏡レンズ、中でも二色性色素を含む偏光層を有する眼鏡レンズの製造分野に有用である。
Claims (3)
- レンズ基材上の被塗布面にスピンコート法により塗布液を塗布して被覆層を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法であって、
前記レンズ基材の側面を、環状開口部を有する保持部材の該内周面と当接させて保持した状態で、前記スピンコート法による塗布を行い、
前記保持した状態において、前記被塗布面周縁端部と前記開口部端部は、鉛直方向に対して前記開口部端部が低位置にある状態で段差をなしていることを特徴とする、前記眼鏡レンズの製造方法。 - 前記塗布液は、二色性色素を含む偏光層形成用塗布液である請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法。
- 前記被塗布面は凸面形状を有する、請求項1または2に記載の眼鏡レンズの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011016993A JP2012159527A (ja) | 2011-01-28 | 2011-01-28 | 眼鏡レンズの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2011016993A JP2012159527A (ja) | 2011-01-28 | 2011-01-28 | 眼鏡レンズの製造方法 |
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JP2012159527A true JP2012159527A (ja) | 2012-08-23 |
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JP2011016993A Pending JP2012159527A (ja) | 2011-01-28 | 2011-01-28 | 眼鏡レンズの製造方法 |
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JP (1) | JP2012159527A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022157881A1 (ja) * | 2021-01-21 | 2022-07-28 | コピン コーポレーション | 映像表示装置 |
-
2011
- 2011-01-28 JP JP2011016993A patent/JP2012159527A/ja active Pending
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