JPWO2017179663A1 - 塩化アルカリ電解用イオン交換膜、その製造方法及び塩化アルカリ電解装置 - Google Patents
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Abstract
Description
電解質膜は、機械的強度や寸法安定性を維持する点から、通常、補強糸(ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す。)糸等)からなる補強材で補強される。
(1)カルボン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーを含む、イオン交換容量が0.80mg当量/gの第一層、(2)スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーを含む、イオン交換容量が0.98mg当量/gの第二層のA層、(3)補強材、及び(4)スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーを含む、イオン交換容量が1.05mg当量/gの第二層のB層。
一般的な濃度調製方法は、陰極室への水の供給である。ところが、この方法は以下のような問題を生じる。まず、陰極室内の液循環が不充分な場合には、水を供給している付近の陰極液濃度が低下し、逆に希釈されにくい部分の陰極液濃度が高くなる。その結果、電流効率が低下する。また、何らかのトラブルにより陰極室内への水の供給が止まると、陰極液濃度が急上昇し、電流効率が著しく低下するばかりか、このように一度低下した電流効率を再び元に戻すことは困難であり、膜の交換が必要となる。
上記の課題を解決するため、陰極室への供給水量を最小限に抑えることが可能な膜として、透水量の大きい膜を用いることが提案されている(特許文献2)。特許文献2における実施例では、透水量の大きい膜とするために、カルボン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー層の膜厚を薄くする必要があることが示されている。
ここで、透水量とは、塩化アルカリの電解時に、イオン交換膜を透過して陽極側から陰極側に移動する水の量であり、アルカリイオン1モル当たりに移動した水のモル量比で表される。また、苛性アルカリ品質とは、生成される水酸化アルカリ水溶液中の水酸化アルカリの純度を意味し、本発明において苛性アルカリ品質が高いとは、水酸化アルカリ水溶液中の水酸化アルカリに対する塩化アルカリの含有量が少なく、水酸化アルカリの純度が高いアルカリ水溶液であることを意味する。
[1]陰極側の表面にカルボン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(C)を有し、陽極側の表面にスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S)を有し、前記スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S)の中に補強糸を含む補強材が配置され、
前記カルボン酸型官能基を有する層(C)の乾燥時の厚さが9〜28μmであり、
前記スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S)のうち、
前記補強材よりも陽極側に位置する層(Sb)は、イオン交換容量が1.3〜2.5meq/g/gであるスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層を含み、乾燥時の厚さが6〜100μmであり、
前記補強材よりも陰極側に位置する層(Sa)は、イオン交換容量が0.9〜1.25meq/gであるスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層を含み、乾燥時の厚さが40〜110μmである、塩化アルカリ電解用イオン交換膜。
[5]前記補強材よりも陰極側に位置する層(Sa)が2層以上からなる層である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のイオン交換膜。
[6]前記補強材よりも陰極側に位置する層(Sa)を形成する層のうち、最も陰極側に位置する層(Sa−1)の乾燥時の厚さが1〜55μmであり、イオン交換容量が0.9〜1.25meq/gであるスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層である、[5]に記載のイオン交換膜。
[7]前記補強材が、補強糸と犠牲糸からなる、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のイオン交換膜。
[8]さらに少なくとも一方の面の最表面に無機物粒子層を有する、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のイオン交換膜。
[10]前記補強布が補強糸及び犠牲糸からなり、前記強化前駆体膜をアルカリ水溶液に接触させてイオン交換基に変換できる基をイオン交換基に変換するとともに、前記補強布中の補強糸の少なくとも一部を溶解させて補強材を形成する、[9]に記載の製造方法。
[11]前記アルカリ性水溶液が、水溶性有機化合物とアルカリ金属の水酸化物と水との混合物である、[9]に記載の製造方法。
[13][12]に記載の塩化アルカリ電解装置を用いて塩化アルカリを電解する水酸化アルカリの製造方法。
[14]陰極室内に酸素を供給しながら塩化アルカリを電解する、[13]に記載の製造方法。
[15][13]又は[14]に記載の水酸化アルカリの製造方法であって、生成する水酸化アルカリに対する塩化アルカリの含有量が25ppm以下である製造方法。
本発明の塩化アルカリ電解用イオン交換膜の製造方法によれば、透水量が大きく、陰極室への供給水量を最小限に抑えつつ、塩化アルカリ水溶液の電解時の電解電圧が低く、かつ、高い苛性アルカリ品質の水酸化アルカリ水溶液を製造できる塩化アルカリ電解用イオン交換膜を製造できる。
本発明の水酸化アルカリの製造方法は、陰極室への供給水量を最小限に抑えつつ、塩化アルカリ水溶液の電解時の電解電圧が低く、かつ、高い苛性アルカリ品質の水酸化アルカリ水溶液を製造できる。
「イオン交換基」とは、該基に含まれるイオンの少なくとも一部を、他のイオンに交換できる基である。下記のカルボン酸型官能基、スルホン酸型官能基等が挙げられる。
「カルボン酸型官能基」とは、カルボキシ基(−COOH)、又はカルボン酸塩基(−COOM1。但し、M1はアルカリ金属又は第4級アンモニウム塩基である)を意味する。
「スルホン酸型官能基」とは、スルホ基(−SO3H)、又はスルホン酸塩基(−SO3M2。但し、M2はアルカリ金属又は第4級アンモニウム塩基である。)を意味する。
「前駆体膜」とは、イオン交換基に変換できる基を有するポリマーを含む膜である。
「イオン交換基に変換できる基」とは、加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によって、イオン交換基に変換できる基を意味する。
「カルボン酸型官能基に変換できる基」とは、加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によって、カルボン酸型官能基に変換できる基を意味する。
「スルホン酸型官能基に変換できる基」とは、加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によって、スルホン酸型官能基に変換できる基を意味する。
イオン交換容量の単位の「ミリ当量/グラム乾燥樹脂」は、「meq/g」と簡略化して記載する場合がある。
「パーフルオロモノマー」とは、モノマー中の炭素原子に結合している水素原子の全部がフッ素原子に置換されたモノマーを意味する。
「構成単位」とは、ポリマー中に存在してポリマーを構成する、モノマーに由来する重合単位を意味する。例えば、構成単位が炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマーの付加重合により生じる場合、該構成単位は、該不飽和二重結合が開裂して生じた2価の構成単位である。また、構成単位は、ある構成単位の構造を有するポリマーを形成した後に、該構成単位を化学的に変換、例えば加水分解処理して得られた構成単位であってもよい。なお、以下において、場合により、個々のモノマーに由来する構成単位を、そのモノマー名に「単位」を付した名称で記載することがある。
「補強布」とは、イオン交換膜の強度を向上させるための補強材の原料として用いられる布を意味する。
「補強糸」とは、補強布を構成する糸であり、補強布をアルカリ性水溶液(例えば、濃度が32質量%の水酸化ナトリウム水溶液)に浸漬しても溶出することのない材料からなる。
「犠牲糸」とは、補強布を構成する糸であり、補強布をアルカリ性水溶液に浸漬したときに、アルカリ性水溶液に溶出する材料からなる。
「溶出孔」とは、犠牲糸がアルカリ性水溶液に溶出した結果、生成する孔を意味する。
「強化前駆体膜」とは、前駆体膜中に補強布が配置された膜を意味する。
本発明の塩化アルカリ電解用イオン交換膜は、カルボン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(以下、含フッ素ポリマー(C)とも言う。)からなる層(以下、層(C)とも言う。)及びスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(以下、含フッ素ポリマー(S)とも言う。)からなる層(以下、層(S)とも言う。)を有し、補強糸を含む補強材が層(S)の中に配置されている。なお、補強材は、補強糸の他に犠牲糸が含まれていてもよい。また、本発明の塩化アルカリ電解用イオン交換膜には、犠牲糸の溶出により溶出孔が形成されていてもよい。
電解質膜10は、層(C)12と、層(S)14とからなる積層体である。層(S)14の中に補強糸を含む補強材20が配置されている。
イオン交換膜1における乾燥時の各層の厚さは、イオン交換膜を90℃で4時間乾燥させた後、イオン交換膜断面を光学顕微鏡にて観察し、後記するように画像ソフトを用いて求める。また、層と層との間に補強布又は補強材が存在する場合は、補強布又は補強材を構成する補強糸及び犠牲糸のいずれも存在しない位置において層の厚さを測定する。
層(C)12としては、電解性能の点から、含フッ素ポリマー(C)以外の材料を含まない含フッ素ポリマー(C)のみからなる層が好ましい。図1では、層(C)12は単層として示されているが、複数の層から形成される層であってもよい。層(C)12が複数の層から形成される場合、各層において、含フッ素ポリマー(C)を構成する構成単位の種類やカルボン酸型官能基を有する構成単位の割合を異なる構成としてもよい。
一方、層(C)は電解電圧への影響も大きく、その厚さが厚いと電解電圧が大きく上昇する。すなわち、乾燥時の層(C)12の厚さが前記上限値以下であることが、イオン交換膜1の膜抵抗を低く抑えることができ、電解電圧の上昇を抑制する上で重要である。
また、上述のように層(C)12を構成する含フッ素ポリマー(C)のイオン交換容量は、その厚さとともに、イオン交換膜の透水量に影響する。含フッ素ポリマー(C)のイオン交換容量が前記下限値以上であれば、後述する層(S)を透過した水を充分に透過させ、透水率を低下させにくい。
含フッ素ポリマー(C)は、例えば、層(C’)を構成する共重合体である、カルボン酸型官能基に変換できる基及びフッ素原子を有するモノマー(以下、含フッ素モノマー(C’)とも言う。)と、含フッ素オレフィンとの共重合体(以下、含フッ素ポリマー(C’)とも言う。)中のカルボン酸型官能基に変換できる基を、加水分解処理等によりカルボン酸型官能基に変換した含フッ素ポリマーが好ましい。
含フッ素モノマー(C’)としては、製造コスト、他のモノマーとの反応性、得られる含フッ素ポリマーの特性に優れる点から、下式(1)で表されるものが好ましい。
X及びX’は、それぞれ独立して、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
A1は、カルボン酸型官能基に変換できる基である。具体的には、−CN、−COF、−COOR1(R1は炭素数1〜10のアルキル基である。)、−COONR2R3(R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)が挙げられる。
pは0又は1である。qは、0〜12の整数である。rは、0〜3の整数である。sは、0又は1である。tは、0〜12の整数である。uは、0〜3の整数である。但し、p及びsが同時に0になることはなく、r及びuが同時に0になることはない。即ち、1≦p+sであり、1≦r+uである。
CF2=CF−O−CF2CF2−COOCH3、CF2=CF−O−CF2CF2CF2−COOCH3、CF2=CF−O−CF2CF2CF2CF2−COOCH3、CF2=CF−O−CF2CF2−O−CF2CF2−COOCH3、CF2=CF−O−CF2CF2−O−CF2CF2CF2−COOCH3、CF2=CF−O−CF2CF2−O−CF2CF2CF2CF2−COOCH3、CF2=CF−O−CF2CF2CF2−O−CF2CF2−COOCH3、CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−COOCH3、CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2CF2−COOCH3。
含フッ素モノマー(C’)は1種を単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
TQ値は、ポリマーの分子量に関係する値であり、容量流速が100mm3/秒を示す温度で示したものである。容量流速は、ポリマーを3MPaの加圧下に一定温度のオリフィス(径:1mm、長さ:1mm)から溶融、流出させたときの流出するポリマーの量をmm3/秒の単位で示したものである。TQ値が高いほど、高分子量であることを示す。
層(S)14としては、電解性能の点から、含フッ素ポリマー(S)以外の材料を含まない含フッ素ポリマー(S)のみからなる層が好ましい。図1に示すように、層(S)14中には、イオン交換膜1の機械的強度を高めるため、補強材20が配置されている。層(S)14のうち、補強材20より陰極側に位置する層が層(Sa)14Aであり、補強材20より陽極側に位置する層が層(Sb)14Bである。図1では、層14A及び層14Bはそれぞれ単層として示されているが、それぞれ複数の層から形成される層であってもよい。層14A及び層14Bの一方又は両方が複数の層から形成される場合、各層において、含フッ素ポリマー(S)を構成する構成単位の種類やスルホン酸型官能基を有する構成単位の割合を異なる構成としてもよい。
層(Sa)14Aに含まれる含フッ素ポリマー(S)のイオン交換容量が前記下限値以上であれば、含フッ素ポリマー(S)の過度の膨潤を抑制でき、イオン交換膜の電気抵抗が低く、塩化アルカリ水溶液を電解する際の電解電圧が低い。また、イオン交換容量が前記上限値以下の含フッ素ポリマー(S)は、重合時に含フッ素ポリマー(S)の分子量を高くすることが容易である。分子量の高い含フッ素ポリマー(S)を層(Sa)に使用すると、層(Sa)の機械的強度が高い。
よって、14Bの厚さが前記下限値以上であれば、補強材20が電解質膜10の表面から適度な深さ位置に配置され、補強材20の剥離耐性に優れる。また、電解質膜10の表面にクラックが入りにくくなるため、機械的強度に優れる。イオン交換膜の厚さが厚いと膜抵抗も高くなるため、層14Bの厚さが前記上限値以下であれば、膜抵抗が低く、電解電圧の上昇を抑制できる。
含フッ素ポリマー(S)としては、例えば、層(S’a)及び層(S’b)を構成する共重合体である、スルホン酸型官能基に変換できる基及びフッ素原子を有するモノマー(以下、含フッ素モノマー(S’)とも言う。)と、含フッ素オレフィンとの共重合体(以下、含フッ素ポリマー(S’)とも言う。)中のスルホン酸型官能基に変換できる基を、加水分解処理等によりスルホン酸型官能基に変換した含フッ素ポリマーが好ましい。
含フッ素モノマー(S’)としては、モノマーの製造コスト、他のモノマーとの反応性、得られる含フッ素ポリマーの特性に優れる点から、下式(2)又は下式(3)で表される含フッ素モノマーが好ましい。
CF2=CF−Rf2−A2 ・・・(3)
Rf2は、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよく、直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。A2は、スルホン酸型官能基に変換できる基である。具体的には、−SO2F、−SO2Cl、−SO2Br等である。
CF2=CF−O−CF2CF2−SO2F、CF2=CF−O−CF2CF2CF2−SO2F、CF2=CF−O−CF2CF2CF2CF2−SO2F、CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2F、CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2CF2−SO2F、CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−SO2F、CF2=CF−CF2CF2−SO2F、CF2=CF−CF2CF2CF2−SO2F、CF2=CF−CF2−O−CF2CF2−SO2F。
含フッ素モノマー(S’)は1種を単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、式(m1)で表されるモノマー単位は、式(U1)におけるQ2がOCF2RF12(エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基)であり、Q1がRF11(単結合、又はエーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基)であり、SO2X1(SO2Rf1)aMがSO2FもしくはSO2Fを加水分解処理や酸型化処理して得られるスルホン酸型官能基(X1が酸素原子であり、aが0であり、Mが水素、アルカリ金属又は第4級アンモニウム塩基である。)であり、Y1がフッ素原子である構成単位である。
含フッ素ポリマー(S’)のTQ値は、イオン交換膜としての機械的強度及び製膜性の点から、150℃以上が好ましく、170〜340℃がより好ましく、170〜300℃がさらに好ましい。
乾燥時の層(Sa−1)の厚さは、接着性に寄与する程度の適度な厚さがあればよく、1〜55μmが好ましく、1〜40μmがより好ましい。
補強材20は、電解質膜10を補強する材料であり、補強布に由来する。補強布は、経糸と緯糸とからなり、経糸と緯糸が直交していることが好ましい。補強布は、補強糸と犠牲糸とからなることが好ましい。
補強糸22としては、パーフルオロカーボンポリマーを含む糸が好ましく、PTFEを含む糸がより好ましく、PTFEのみからなる糸がさらに好ましい。
犠牲糸24としては、PETのみからなるPET糸、PET及びポリブチレンテレフタレート(PBT)の混合物からなるPET/PBT糸、PBTのみからなるPBT糸、又はポリトリメチレンテレフタレート(PTT)のみからなるPTT糸が好ましく、PET糸がより好ましい。
工程(i):カルボン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(C’)、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S’a)、補強布、及びスルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S’b)を積層して強化前駆体膜を得て、その後、前記強化前駆体膜をアルカリ性水溶液に接触させて、前記強化前駆体膜中のイオン交換基に変換できる基をイオン交換基に変換する工程。
工程(ii):前記工程(i)を経て得られたイオン交換膜を電解槽に配置し、塩化アルカリ電解の本運転前のコンディショニング運転する工程。
イオン交換膜1は、その最表面の一方又は両方に、無機物粒子層(図示せず)をさらに備えていてもよい。無機物粒子層は、イオン交換膜1の最表面の少なくとも一方に設けられることが好ましく、両方に設けられることがより好ましい。
塩化アルカリ電解により生じるガスがイオン交換膜1の表面に付着すると、塩化アルカリ電解の際に電解電圧が高くなる。無機物粒子層は、塩化アルカリ電解により生じるガスのイオン交換膜1の表面への付着を抑制し、電解電圧の上昇を抑制するために設けられる。無機物粒子層は、無機物粒子と、バインダーとを含む。
本発明の塩化アルカリ電解用イオン交換膜は、前記工程(i)を経て製造されるが、工程(i)は、下記工程(i−a)及び工程(i−b)を有するのが好ましい。
強化前駆体膜は、カルボン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(C’)、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S’a)、補強布、及びスルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S’b)を積層して製造できる。すなわち、前駆体膜を積層して強化前駆体膜を製造する際に、補強布とともに積層することにより製造できる。前駆体膜は、イオン交換基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーの単層からなる膜であってもよく、複数の層からなる膜であってもよい。
工程(i−a)の一態様においては、まず、カルボン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(C’)と、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S’a)とを有する積層膜を、共押し出し法によって得る。また、別途、単層押し出し法によってスルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S’b)からなる膜(以下、膜(S’b)とも言う)を得る。
次いで、膜(S’b)、補強布、及び前記積層膜を、この順に配置し、積層ロール又は真空積層装置を用いてこれらを積層する。この際、前記積層膜は、層(S’a)側が補強布に接するように配置する。このようにして得られた強化前駆体膜は、層(S’b)、補強布、層(S’a)、層(C’)の順に積層されている。
強化前駆体膜における各層の厚さ≒イオン交換膜における乾燥時の各層の厚さ×0.9 ・・・(I)
このため、イオン交換膜中の層(C)、層(Sa)及び層(Sb)の厚さを所望の厚さとするには、強化前駆体膜における対応する層(C’)、層(S’a)及び層(S’b)の厚さを、前記式(I)で求められる厚さとすればよい。
なお、層(Sa)を2層以上とする場合には、別途スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層からなる膜を得て、補強布と前記積層膜の間に層(Sa)が複数の層からなるように積層してもよい。
工程(i−b)においては、前記工程(i−a)で得た強化前駆体膜をアルカリ性水溶液に接触させることによって、該強化前駆体膜のイオン交換基に変換できる基をイオン交換基に変換するとともに、該強化前駆体膜の犠牲糸の少なくとも一部を溶出させることによって、塩化アルカリ電解用イオン交換膜を得る。
イオン交換基の変換は、例えば、日本国特開平1−140987号公報に記載されるような、水溶性有機化合物とアルカリ金属の水酸化物と水との混合物を用いる方法で行われることが好ましい。前記水溶性有機化合物としては、ジメチルスルホキシド、エタノールなどが挙げられる。前記アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。
犠牲糸の溶出は犠牲糸を構成する材料を加水分解することで行われることが好ましい。
本発明の塩化アルカリ電解装置は、本発明の塩化アルカリ電解用イオン交換膜を有する以外は、公知の態様を採用できる。図3は、本発明の塩化アルカリ電解装置の一例を示す模式図である。図3において、塩化アルカリ電解装置100は、陰極112及び陽極114を備える電解槽110と、電解槽110内を陰極112側の陰極室116と、陽極114側の陽極室118とに区切るように電解槽110内に装着されるイオン交換膜1とを有する。
イオン交換膜1は、層(C)12が陰極112側、層(S)14が陽極114側となるように電解槽110内に装着する。
本発明の水酸化アルカリの製造方法は、本発明の塩化アルカリ電解装置によって行われる以外は、公知の態様を採用できる。例えば、塩化ナトリウム水溶液を電解して水酸化ナトリウム水溶液を製造する場合は、塩化アルカリ電解装置100の陽極室118に塩化ナトリウム水溶液を供給し、陰極室116に水酸化ナトリウム水溶液を供給し、陰極室116から排出される水酸化ナトリウム水溶液の濃度を所定の濃度(例えば、32質量%)に保ちながら、塩化ナトリウム水溶液を電解する。
上記の知見を踏まえて、本発明においては、層(Sb)のイオン交換容量や厚さを特定の範囲とし、なおかつ層(C)の厚さや層(Sa)のイオン交換容量や厚さも特定の範囲とすることにより、イオン交換膜の透水量を十分に確保しつつ、生成する水酸化アルカリ水溶液中の塩化アルカリ濃度の上昇を抑制して高い苛性アルカリ品質を維持し、さらに電解電圧を低くできる。
[TQ値の測定]
TQ値は、容量流速:100mm3/秒を示す温度として求めた。容量流速は、島津フローテスターCFD−100D(島津製作所社製)を用い、対象ポリマーを3MPaの加圧下に一定温度のオリフィス(径:1mm、長さ:1mm)から溶融、流出させたときの流出するポリマーの量(mm3/秒)とした。
イオン交換基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーの約0.5mgを、そのTQ値より約10℃高い温度にて平板プレスしてフィルムを得た。得られたフィルムを透過型赤外分光分析装置によって分析した。得られたスペクトルのCF2ピーク、CH3ピーク、OHピーク、CFピーク、SO2Fピークの各ピーク高さを用いて、カルボン酸型官能基に変換できる基又はスルホン酸型官能基に変換できる基を有する構成単位の割合を算出した。この割合を加水分解処理後に得られる含フッ素ポリマーにおけるカルボン酸型官能基又はスルホン酸型官能基を有する構成単位の割合とし、イオン交換容量が既知のサンプルを検量線として用いてイオン交換容量を求めた。
なお、上記の測定は、イオン交換基が酸型又はカリウム型もしくはナトリウム型のいずれでも測定が可能である。
イオン交換膜における乾燥時の各層の厚さは、イオン交換膜を90℃で4時間乾燥させたのち、イオン交換膜断面を光学顕微鏡にて観察し、画像ソフト(イノテック社製 Pixs2000 PRO)を用いて求めた。ここで、各層の厚さは、補強材を構成する補強糸及び犠牲糸が存在しない位置における厚さである。
イオン交換膜を、層(C)が陰極に面するように、電解面が縦150mm×横100mmの長方形を有する試験用電解層に配置し、陰極室内の水酸化ナトリウム濃度:32質量%、陽極室内の塩化ナトリウム濃度:200g/L、温度:90℃、電流密度:6kA/m2の条件で塩化ナトリウム水溶液の電解を行い、運転開始から3〜10日後の電解電圧(V)、電流効率(%)、生成された水酸化アルカリ水溶液中の塩化ナトリウム濃度を求めた。この際の陰極液への水添加量及び電流効率から、ナトリウムイオン1モル当たりに移動した水のモル量比(モル/モル)として透水量を算出した。
苛性アルカリ品質は、電解で得られた水酸化アルカリ水溶液中の水酸化アルカリに対する塩化アルカリの質量を、指示薬としてクロム酸カリウム水溶液を用い、硝酸銀水溶液を用いた滴定により求め、以下の式により百万分率(単位:ppm)で示した。
(水酸化アルカリ水溶液中の塩化アルカリの質量/水酸化アルカリ水溶液中の水酸化アルカリの質量)×1000000
層(C’)を形成する含フッ素ポリマーとして、TFEと、下式(X)で表される含フッ素モノマーとを共重合して、カルボン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(加水分解後のイオン交換容量:1.08meq/g、以下、ポリマーCと記す。)を合成した。
CF2=CF−O−CF2CF2CF2−COOCH3 ・・・(X)
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2F ・・・(Y)
ポリマーS2を溶融押し出し法により成形し、ポリマーS2からなる層(S’2)(厚さ:30μm)のフィルムBを得た。
PTFEフィルムを急速延伸した後、100デニールの太さにスリットして得たモノフィラメントに2000回/mの撚糸をかけたPTFE糸を補強糸とした。5デニールのPETフィラメントを6本引き揃えた30デニールのマルチフィラメントからなるPET糸を犠牲糸とした。補強糸1本と犠牲糸2本とが交互に配列されるように平織りし、補強布(補強糸の密度:27本/インチ、犠牲糸の密度:108本/インチ)を得た。
フィルムB、補強布、フィルムA、離型用PETフィルム(厚さ:100μm)の順に、かつ、フィルムAの層(C’1)が離型用PETフィルム側となるように重ね、ロールを用いて積層した。離型用PETフィルムを剥がし、強化前駆体膜を得た。強化前駆体膜における各層の厚さは、層(C’)が12μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が30μmであった。
層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS2に代えて、TFEと、式(Y)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.4meq/g)を用いた以外は、例1と同様にしてイオン交換膜を得た。なお、強化前駆体膜における各層の厚さは、層(C’)が12μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が30μmであった。
層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS2に代えて、TFEと、下式(Z)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.9meq/g)を用いた以外は、例1と同様にしてイオン交換膜を得た。なお、強化前駆体膜における各層の厚さは、層(C’)が12μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が30μmであった。
層(S’a)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS1に代えて、TFEと、式(Y)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.25meq/g)を用い、層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS2に代えて、TFEと、式(Z)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:2.2meq/g)を用いた以外は、例1と同様にしてイオン交換膜を得た。なお、強化前駆体膜における各層の厚さは、層(C’)が12μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が30μmであった。
層(S’a)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS1に代えて、TFEと、式(Y)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.0meq/g)を用い、層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS2に代えて、TFEと、式(Z)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.9meq/g)を用い、強化前駆体膜における各層の厚さを表1に示すように、層(C’)が20μm、層(S’a)が80μm、層(S’b)が35μmとなるようにした以外は、例1と同様にしてイオン交換膜を得た。
層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS2に代えて、TFEと、式(Z)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.9meq/g)を用い、強化前駆体膜における各層の厚さを表1に示すように、層(C’)が12μm、層(S’a)が80μm、層(S’b)が30μmとなるようにした以外は、例1と同様にしてイオン交換膜を得た。
層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS2に代えて、TFEと、式(Z)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.9meq/g)を用い、強化前駆体膜における各層の厚さを表1に示すように、層(C’)が12μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が20μmとなるようにした以外は、例1と同様にしてイオン交換膜を得た。
層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS2に代えて、TFEと、式(Z)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.9meq/g)を用い、強化前駆体膜における各層の厚さを表1に示すように、層(C’)が12μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が40μmとなるようにした以外は、例1と同様にしてイオン交換膜を得た。
層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS2に代えて、TFEと、式(Z)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.9meq/g)を用い、強化前駆体膜における各層の厚さを表1に示すように、層(C’)が12μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が65μmとなるようにした以外は、例1と同様にしてイオン交換膜を得た。
層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーS2に代えて、TFEと、式(Y)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:1.1meq/g)を用いた以外は、例1と同様にしてイオン交換膜を得た。なお、強化前駆体膜における各層の厚さは、層(C’)が12μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が30μmであった。
強化前駆体膜における各層の厚さを表1に示すように、層(C’)が7μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が30μmとなるようにした以外は、例10と同様にしてイオン交換膜を得た。
層(C’)を形成する含フッ素ポリマーとして、ポリマーCに代えて、TFEと、式(X)で表される含フッ素モノマーとを共重合して得られた、カルボン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(イオン交換容量:0.95meq/g)を用い、強化前駆体膜を、30質量%のジメチルスルホキシド及び15質量%の水酸化カリウムの水溶液を用いて加水分解した以外は、例11と同様にしてイオン交換膜を得た。なお、強化前駆体膜における各層の厚さは、層(C’)が7μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が30μmであった。
強化前駆体膜における各層の厚さを表1に示すように、層(C’)が35μm、層(S’a)が68μm、層(S’b)が30μmとなるようにした以外は、例2と同様にしてイオン交換膜を得た。
強化前駆体膜における各層の厚さを表1に示すように、層(C’)が12μm、層(S’a)が150μm、層(S’b)が30μmとなるようにした以外は、例3と同様にしてイオン交換膜を得た。
3.0meq/gのイオン交換容量を有する含フッ素ポリマーを、ポリマーS2に代えて層(S’b)を形成する含フッ素ポリマーとして用いるため、TFEと、式(Z)で表される含フッ素モノマーとを共重合することを試みたが、重合に不都合が生じ、フィルムとして成形することができなかった。
一方、例1及び例10では、層(C)が充分な厚さを有することにより、良好な苛性アルカリ品質を有する水酸化ナトリウム水溶液を製造できたが、層(Sb)のイオン交換容量が本発明の条件を満たさず低いため、透水量は低かった。例11及び例12では、層(C)の厚さを薄くすることにより、高い透水量を実現できたが、苛性アルカリ品質に劣る結果となった。例13及び例14では、層(Sb)のイオン交換容量が本発明の条件を満たすため、高い透水量を実現できたが、層(C)の厚さが厚いため(例13)、もしくは層(Sa)の厚さが厚いため(例14)、電解電圧が高かった。例15では、層(Sb)のイオン交換容量が本発明の条件より高いポリマーからなるフィルムの製造を試みたが、フィルムに成形できる共重合体が得られなかった。
Claims (15)
- 陰極側の表面にカルボン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(C)を有し、陽極側の表面にスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S)を有し、前記スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S)の中に補強糸を含む補強材が配置され、
前記カルボン酸型官能基を有する層(C)の乾燥時の厚さが9〜28μmであり、
前記スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S)のうち、
前記補強材よりも陽極側に位置する層(Sb)は、イオン交換容量が1.3〜2.5ミリ当量/グラム乾燥樹脂であるスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層を含み、乾燥時の厚さが6〜100μmであり、かつ、
前記補強材よりも陰極側に位置する層(Sa)は、イオン交換容量が0.9〜1.25ミリ当量/グラム乾燥樹脂であるスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層を含み、乾燥時の厚さが40〜110μmであることを特徴とする塩化アルカリ電解用イオン交換膜。 - 前記補強材よりも陽極側に位置する前記スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(Sb)を構成するスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーの少なくとも一部が、下式(U1)で表される構成単位を有するポリマーである、請求項1に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜。
- 前記カルボン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層(C)を構成するカルボン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーの少なくとも一部のイオン交換容量が0.5〜2.0ミリ当量/グラム乾燥樹脂である請求項1〜3のいずれか一項に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜。
- 前記補強材よりも陰極側に位置する層(Sa)が2層以上からなる層である請求項1〜4のいずれか一項に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜。
- 前記補強材よりも陰極側に位置する層(Sa)を形成する層のうち、最も陰極側に位置する層(Sa−1)の乾燥時の厚さが1〜55μmであり、イオン交換容量が0.9〜1.25ミリ当量/グラム乾燥樹脂であるスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーからなる層である請求項5に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜。
- 前記補強材が、補強糸と犠牲糸からなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜。
- さらに少なくとも一方の面の最表面に、無機物粒子層を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜。
- カルボン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(C’)、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S’a)、補強布、及びスルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる層(S’b)をこの順に積層した強化前駆体膜を得て、その後、前記強化前駆体膜をアルカリ性水溶液に接触させて、前記強化前駆体膜中のイオン交換基に変換できる基をイオン交換基に変換することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜の製造方法。
- 前記補強布が補強糸及び犠牲糸からなり、前記強化前駆体膜をアルカリ水溶液に接触させてイオン交換基に変換できる基をイオン交換基に変換するとともに、前記補強布中の補強糸の少なくとも一部を溶解させて補強材を形成する請求項9に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜の製造方法。
- 前記アルカリ性水溶液が、水溶性有機化合物とアルカリ金属の水酸化物と水との混合物である請求項9に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜の製造方法。
- 陰極及び陽極を備える電解槽と、前記電解槽内の前記陰極側の陰極室と前記陽極側の陽極室とを区切る請求項1〜8のいずれか一項に記載の塩化アルカリ電解用イオン交換膜とを有することを特徴とする塩化アルカリ電解装置。
- 請求項12に記載の塩化アルカリ電解装置を用いて塩化アルカリを電解することを特徴とする水酸化アルカリの製造方法。
- 陰極室内に酸素を供給しながら塩化アルカリを電解する請求項13に記載の水酸化アルカリの製造方法。
- 請求項13又は14に記載の水酸化アルカリの製造方法であって、生成する水酸化アルカリ水溶液中の水酸化アルカリに対する塩化アルカリの含有量が25ppm以下である水酸化アルカリの製造方法。
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