JP2018062647A - 含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法、電解装置の製造方法、ガスの製造方法、水素ガスおよび酸素ガスの製造方法、ならびに塩素ガスの製造方法 - Google Patents
含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法、電解装置の製造方法、ガスの製造方法、水素ガスおよび酸素ガスの製造方法、ならびに塩素ガスの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】無機物粒子の隔膜表面からの脱落耐性に優れ、かつ、ガスの隔膜表面への付着の抑制効果の高い含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法を提供する。【解決手段】スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜7の少なくとも一方の面に無機物粒子14を加熱圧着し、前記無機物粒子14が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜3を得て、次いで無機物粒子14が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液に接触させることによって、前記スルホン酸型官能基に変換できる基をスルホン酸型官能基に変換してスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーとすることを特徴とする含フッ素イオン透過性隔膜1の製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法、電解装置の製造方法、ガスの製造方法、水素ガスおよび酸素ガスの製造方法、ならびに塩素ガスの製造方法に関する。
水素ガスおよび酸素ガスの製造方法として、隔膜を用いた水の電解方法が知られている。また、塩素ガスの製造方法としても、隔膜を用いた塩酸の電解方法が知られている。
これらの隔膜を用いた電解における電解槽は、隔膜により陽極室と陰極室とに仕切られ、前記陽極室および前記陰極室において、異なる種類のガスが生成される。したがって、これらのガスが混合されないために、隔膜には高いガス遮断性が求められる。
また、電解方法において電荷の移動を担うのはイオンであるため、高いガス遮断性が求められる隔膜は、同時に高いイオン透過性をも求められる。
これらの隔膜を用いた電解における電解槽は、隔膜により陽極室と陰極室とに仕切られ、前記陽極室および前記陰極室において、異なる種類のガスが生成される。したがって、これらのガスが混合されないために、隔膜には高いガス遮断性が求められる。
また、電解方法において電荷の移動を担うのはイオンであるため、高いガス遮断性が求められる隔膜は、同時に高いイオン透過性をも求められる。
このような高いガス遮断性と高いイオン透過性を有する隔膜として、多孔性支持体、多孔質膜、ならびに無機微粒子およびイオン交換樹脂を含有する混合層を有する、アルカリ水電解用隔膜が知られている(特許文献1)。
ガスを生成させるための電解槽においては、生成したガスが隔膜表面に付着することにより、隔膜におけるイオンの透過を阻害する結果、隔膜の電気抵抗を増大させるという問題が生じる。この問題を解決するため、イオン交換膜表面に無機物粒子(酸化ジルコニウム等)とバインダー(フッ素系重合体等)とからなるガス開放層(親水化層)を設けて、ガスのイオン交換膜表面への付着を抑制することが提案されている。無機物粒子によりイオン交換膜表面が凹凸を有することで、イオン交換膜表面が親水化され、ガスの付着が抑制される(特許文献2)。
しかし、バインダーを介して無機物粒子を隔膜表面に配置した場合、隔膜表面が他の部材等と接触して擦れた際に、隔膜表面から無機物粒子が脱落することがある。これを防止するためバインダーの比率を高めると、隔膜表面の凹凸が小さくなり、ガスの隔膜表面への付着を抑制する効果が小さくなる。すなわち、バインダーを介した無機物粒子の隔膜表面への配置では、無機物粒子の隔膜表面からの脱落と、ガスの隔膜表面への付着の抑制を両立することは困難であった。
このような状況下、本発明は、無機物粒子の隔膜表面からの脱落耐性に優れ、かつ、ガスの隔膜表面への付着の抑制効果の高い含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、無機物粒子の隔膜表面からの脱落耐性に優れ、かつ、ガスの隔膜表面への付着の抑制効果の高い含フッ素イオン透過性隔膜を含む電解装置の製造方法、当該電解装置を用いた水素ガスおよび酸素ガスの製造方法、ならびに塩素ガスの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、無機物粒子の隔膜表面からの脱落耐性に優れ、かつ、ガスの隔膜表面への付着の抑制効果の高い含フッ素イオン透過性隔膜を含む電解装置の製造方法、当該電解装置を用いた水素ガスおよび酸素ガスの製造方法、ならびに塩素ガスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に無機物粒子を加熱圧着して、前記無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を得て、次いで無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜をアルカリ性水溶液に接触させることによって、前記スルホン酸型官能基に変換できる基をスルホン酸型官能基に変換してスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーとすることを特徴とする含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[2]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に、副資材の一方の面に無機物粒子が付着した無機物粒子付き副資材の前記無機物粒子が付着した面を内側にして重ね合わせて加熱圧着し、
次いで、前記副資材を剥離して、前記無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を得る、[1]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[3]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に無機物粒子を塗布し、前記含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の前記無機物粒子が塗布された面をプレスにより加熱圧着して、前記無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を得る、[1]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[4]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜が補強体を含む膜である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[5]前記補強体が補強布である[4]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[6]前記補強布が補強糸および犠牲糸からなる布である[5]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[7]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を、前記補強布を前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる2つの層の間に積層することによって得る、[5]または[6]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[8]前記補強体がポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜である[4]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[9]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を、ポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜の両面に前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーをコーティングすることによって得る、[8]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[10]前記無機物粒子が、第4族元素の酸化物、窒化物および炭化物、ならびに第14族元素の酸化物、窒化物および炭化物からなる群より選択される1種を含有する、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[11]前記スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーのイオン交換容量が0.5〜2.5ミリ当量/グラム乾燥樹脂である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[12]前記含フッ素イオン透過性隔膜の厚さが5〜500μmである、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[13]前記アルカリ性水溶液が、アルカリ金属水酸化物、水溶性有機溶媒、および水を含む、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[14][1]〜[13]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により含フッ素イオン透過性隔膜を得て、得られた含フッ素イオン透過性隔膜を陽極と陰極とを備えた電解槽の陽極側の陽極室と陰極側の陰極室との隔膜として設置することを特徴とする電解装置の製造方法。
[15][14]に記載の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて、気体が発生する電解プロセスの電解を行うことを特徴とするガスの製造方法。
[16][14]に記載の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて水の電解を行うことを特徴とする水素ガスおよび酸素ガスの製造方法。
[17][14]に記載の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて塩酸の電解を行うことを特徴とする塩素ガスの製造方法。
[2]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に、副資材の一方の面に無機物粒子が付着した無機物粒子付き副資材の前記無機物粒子が付着した面を内側にして重ね合わせて加熱圧着し、
次いで、前記副資材を剥離して、前記無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を得る、[1]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[3]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に無機物粒子を塗布し、前記含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の前記無機物粒子が塗布された面をプレスにより加熱圧着して、前記無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を得る、[1]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[4]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜が補強体を含む膜である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[5]前記補強体が補強布である[4]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[6]前記補強布が補強糸および犠牲糸からなる布である[5]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[7]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を、前記補強布を前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる2つの層の間に積層することによって得る、[5]または[6]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[8]前記補強体がポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜である[4]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[9]前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を、ポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜の両面に前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーをコーティングすることによって得る、[8]に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[10]前記無機物粒子が、第4族元素の酸化物、窒化物および炭化物、ならびに第14族元素の酸化物、窒化物および炭化物からなる群より選択される1種を含有する、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[11]前記スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーのイオン交換容量が0.5〜2.5ミリ当量/グラム乾燥樹脂である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[12]前記含フッ素イオン透過性隔膜の厚さが5〜500μmである、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[13]前記アルカリ性水溶液が、アルカリ金属水酸化物、水溶性有機溶媒、および水を含む、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
[14][1]〜[13]のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により含フッ素イオン透過性隔膜を得て、得られた含フッ素イオン透過性隔膜を陽極と陰極とを備えた電解槽の陽極側の陽極室と陰極側の陰極室との隔膜として設置することを特徴とする電解装置の製造方法。
[15][14]に記載の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて、気体が発生する電解プロセスの電解を行うことを特徴とするガスの製造方法。
[16][14]に記載の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて水の電解を行うことを特徴とする水素ガスおよび酸素ガスの製造方法。
[17][14]に記載の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて塩酸の電解を行うことを特徴とする塩素ガスの製造方法。
本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法によれば、無機物粒子の含フッ素イオン透過性隔膜表面からの脱落耐性に優れ、かつ、ガスの含フッ素イオン透過性隔膜表面への付着の抑制効果の高い含フッ素イオン透過性隔膜が得られる。
本発明の電解装置の製造方法によれば、本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により製造された含フッ素イオン透過性隔膜を含む電解装置を製造できるため、含フッ素イオン透過性隔膜表面へのガスの付着の抑制効果を持続させることができ、その結果、含フッ素イオン透過性隔膜におけるイオンの透過を阻害せず、かつ、含フッ素イオン透過性隔膜の電気抵抗を増大させることなく電解できる電解装置が得られる。
本発明のガスの製造方法、水素ガスおよび酸素ガスの製造方法、ならびに本発明の塩素ガスの製造方法によれば、本発明の電解装置の製造方法により製造される電解装置で水または塩酸の電解を行うため、含フッ素イオン透過性隔膜表面へのガスの付着の抑制効果を持続させることができ、その結果、含フッ素イオン透過性隔膜におけるイオンの透過を阻害せず、かつ、含フッ素イオン透過性隔膜の電気抵抗を増大させることなく、水素ガスおよび酸素ガス、ならびに塩素ガスを製造できる。
本発明の電解装置の製造方法によれば、本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により製造された含フッ素イオン透過性隔膜を含む電解装置を製造できるため、含フッ素イオン透過性隔膜表面へのガスの付着の抑制効果を持続させることができ、その結果、含フッ素イオン透過性隔膜におけるイオンの透過を阻害せず、かつ、含フッ素イオン透過性隔膜の電気抵抗を増大させることなく電解できる電解装置が得られる。
本発明のガスの製造方法、水素ガスおよび酸素ガスの製造方法、ならびに本発明の塩素ガスの製造方法によれば、本発明の電解装置の製造方法により製造される電解装置で水または塩酸の電解を行うため、含フッ素イオン透過性隔膜表面へのガスの付着の抑制効果を持続させることができ、その結果、含フッ素イオン透過性隔膜におけるイオンの透過を阻害せず、かつ、含フッ素イオン透過性隔膜の電気抵抗を増大させることなく、水素ガスおよび酸素ガス、ならびに塩素ガスを製造できる。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「イオン透過性隔膜」とは、イオンを透過でき、電解槽の陽極側の陽極室と陰極側の陰極室とを隔てる、イオン交換基を有するポリマーを含む膜を意味する。
「イオン交換基」とは、該基に含まれるイオンの少なくとも一部を、他のイオンに交換しうる基である。下記のスルホン酸型官能基等が挙げられる。
「スルホン酸型官能基」とは、スルホン酸基(−SO3H)、またはスルホン酸塩基(−SO3M。ただし、Mはアルカリ金属または第4級アンモニウム塩基である。)を意味する。
「イオン交換基に変換できる基」とは、加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によって、イオン交換基に変換できる基を意味する。
「スルホン酸型官能基に変換できる基」とは、加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によって、スルホン酸型官能基に変換できる基を意味する。
「イオン交換基」とは、該基に含まれるイオンの少なくとも一部を、他のイオンに交換しうる基である。下記のスルホン酸型官能基等が挙げられる。
「スルホン酸型官能基」とは、スルホン酸基(−SO3H)、またはスルホン酸塩基(−SO3M。ただし、Mはアルカリ金属または第4級アンモニウム塩基である。)を意味する。
「イオン交換基に変換できる基」とは、加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によって、イオン交換基に変換できる基を意味する。
「スルホン酸型官能基に変換できる基」とは、加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によって、スルホン酸型官能基に変換できる基を意味する。
「含フッ素ポリマー」とは、分子中にフッ素原子を有する高分子化合物を意味する。
「パーフルオロカーボンポリマー」とは、ポリマー中の炭素原子に結合している水素原子の全部がフッ素原子に置換されたポリマーを意味する。パーフルオロカーボンポリマー中のフッ素原子の一部は、塩素原子および臭素原子の一方または両方で置換されていてもよい。
「モノマー」とは、重合反応性の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物を意味する。
「含フッ素モノマー」とは、分子中にフッ素原子を有するモノマーを意味する。
「構成単位」とは、ポリマー中に存在してポリマーを構成する、モノマーに由来する部分を意味する。たとえば、構成単位が炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマーの付加重合により生じる場合、該モノマーに由来する構成単位は、該不飽和二重結合が開裂して生じた2価の構成単位である。また、構成単位は、ある構成単位の構造を有するポリマーを形成した後に、該構成単位を化学的に変換して得られた構成単位であってもよい。なお、以下において、場合により、個々のモノマーに由来する構成単位を、そのモノマー名に「単位」を付した名称で記載することがある。
「パーフルオロカーボンポリマー」とは、ポリマー中の炭素原子に結合している水素原子の全部がフッ素原子に置換されたポリマーを意味する。パーフルオロカーボンポリマー中のフッ素原子の一部は、塩素原子および臭素原子の一方または両方で置換されていてもよい。
「モノマー」とは、重合反応性の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物を意味する。
「含フッ素モノマー」とは、分子中にフッ素原子を有するモノマーを意味する。
「構成単位」とは、ポリマー中に存在してポリマーを構成する、モノマーに由来する部分を意味する。たとえば、構成単位が炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマーの付加重合により生じる場合、該モノマーに由来する構成単位は、該不飽和二重結合が開裂して生じた2価の構成単位である。また、構成単位は、ある構成単位の構造を有するポリマーを形成した後に、該構成単位を化学的に変換して得られた構成単位であってもよい。なお、以下において、場合により、個々のモノマーに由来する構成単位を、そのモノマー名に「単位」を付した名称で記載することがある。
「補強体」とは、イオン透過性隔膜前駆体膜またはイオン透過性隔膜の強度を向上させるために用いられる構造体を意味する。補強体としては、織布、不織布、フィブリル、多孔体等が挙げられ、織布である補強布、多孔体であるポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」とも言う。)の多孔質膜、補強布に由来する補強材を含む。
「補強布」とは、イオン透過性隔膜の強度を向上させるための補強材の原料として用いられる布を意味する。補強布は、補強糸と犠牲糸とからなることが好ましい。
「補強材」とは、補強布を含む膜をアルカリ性水溶液(たとえば、濃度が32質量%の水酸化ナトリウム水溶液)に接触させることにより、補強布を構成する犠牲糸の少なくとも一部が溶出した構造体を意味する。
「補強糸」とは、補強布を構成する糸であり、補強布をアルカリ性水溶液に接触させても溶出することのない材料からなる糸である。補強糸は、補強布を含む膜をアルカリ性水溶液に接触させて、補強布から犠牲糸の少なくとも一部が溶出した後も溶解せずに残存し、イオン透過性隔膜の機械的強度や寸法安定性の維持に寄与する。
「犠牲糸」とは、補強布を構成する糸であり、補強布をアルカリ性水溶液に接触させたときに、アルカリ性水溶液にその少なくとも一部が溶出する材料からなる糸である。
「補強布」とは、イオン透過性隔膜の強度を向上させるための補強材の原料として用いられる布を意味する。補強布は、補強糸と犠牲糸とからなることが好ましい。
「補強材」とは、補強布を含む膜をアルカリ性水溶液(たとえば、濃度が32質量%の水酸化ナトリウム水溶液)に接触させることにより、補強布を構成する犠牲糸の少なくとも一部が溶出した構造体を意味する。
「補強糸」とは、補強布を構成する糸であり、補強布をアルカリ性水溶液に接触させても溶出することのない材料からなる糸である。補強糸は、補強布を含む膜をアルカリ性水溶液に接触させて、補強布から犠牲糸の少なくとも一部が溶出した後も溶解せずに残存し、イオン透過性隔膜の機械的強度や寸法安定性の維持に寄与する。
「犠牲糸」とは、補強布を構成する糸であり、補強布をアルカリ性水溶液に接触させたときに、アルカリ性水溶液にその少なくとも一部が溶出する材料からなる糸である。
<含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法>
本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法は、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(以下、「ポリマー(S’)」とも言う。)を含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜(以下、単に「隔膜前駆体膜」とも言う。)の少なくとも一方の面に無機物粒子を加熱圧着して、無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した隔膜前駆体膜(以下、無機物粒子が加熱圧着されていない隔膜前駆体膜と区別するために、「無機物粒子付き隔膜前駆体膜」とも言う。)を得る工程(以下、「工程(i)」とも言う。)、および、工程(i)で得られた無機物粒子付き隔膜前駆体膜をアルカリ性水溶液に接触させることによって、無機物粒子付き隔膜前駆体膜中のポリマー(S’)に含まれる、スルホン酸型官能基に変換できる基をスルホン酸型官能基に変換して、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(以下、「ポリマー(S)」とも言う。)とする工程(以下、「工程(ii)」とも言う。)を含む、含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法である。
本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法は、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(以下、「ポリマー(S’)」とも言う。)を含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜(以下、単に「隔膜前駆体膜」とも言う。)の少なくとも一方の面に無機物粒子を加熱圧着して、無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した隔膜前駆体膜(以下、無機物粒子が加熱圧着されていない隔膜前駆体膜と区別するために、「無機物粒子付き隔膜前駆体膜」とも言う。)を得る工程(以下、「工程(i)」とも言う。)、および、工程(i)で得られた無機物粒子付き隔膜前駆体膜をアルカリ性水溶液に接触させることによって、無機物粒子付き隔膜前駆体膜中のポリマー(S’)に含まれる、スルホン酸型官能基に変換できる基をスルホン酸型官能基に変換して、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(以下、「ポリマー(S)」とも言う。)とする工程(以下、「工程(ii)」とも言う。)を含む、含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法である。
(隔膜前駆体膜)
隔膜前駆体膜はスルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(S’)を含む。ポリマー(S’)は、隔膜前駆体膜において、層(以下、「層(S’)」とも言う。)を形成していることが好ましい。
また、隔膜前駆体膜は、含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜であって、前記含フッ素ポリマーが含フッ素ポリマー(S’)である隔膜前駆体膜であってもよい。
層(S’)は単層であっても、複数の層から形成されていてもよい。また、隔膜前駆体膜は、層(S’)の他に層(S’)とは異なる別の層を有していてもよい。
隔膜前駆体膜はスルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(S’)を含む。ポリマー(S’)は、隔膜前駆体膜において、層(以下、「層(S’)」とも言う。)を形成していることが好ましい。
また、隔膜前駆体膜は、含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜であって、前記含フッ素ポリマーが含フッ素ポリマー(S’)である隔膜前駆体膜であってもよい。
層(S’)は単層であっても、複数の層から形成されていてもよい。また、隔膜前駆体膜は、層(S’)の他に層(S’)とは異なる別の層を有していてもよい。
隔膜前駆体膜が単層の層(S’)からなる場合には、ポリマー(S’)を単層押し出し法によって層(S’)を形成して製造できる。
隔膜前駆体膜が複数の層の層(S’)からなる場合には、それぞれ単層押し出し法によって形成された複数の層を、たとえば、積層ロールまたは真空積層装置を用いて、これらの層を積層することにより製造することができる。上記複数の層のうちの接触する2層は、共押し出し法によって積層してもよい。
隔膜前駆体膜が複数の層の層(S’)からなる場合には、それぞれ単層押し出し法によって形成された複数の層を、たとえば、積層ロールまたは真空積層装置を用いて、これらの層を積層することにより製造することができる。上記複数の層のうちの接触する2層は、共押し出し法によって積層してもよい。
[ポリマー(S’)]
ポリマー(S’)は、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーである。
ポリマー(S’)としては、下式(1)で表されるモノマー(1)に基づく構成単位と、下式(2)で表されるモノマー(2)および下式(3)で表されるモノマー(3)の一方または両方に基づく構成単位とを有する含フッ素ポリマーが好ましい。
ポリマー(S’)は、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーである。
ポリマー(S’)としては、下式(1)で表されるモノマー(1)に基づく構成単位と、下式(2)で表されるモノマー(2)および下式(3)で表されるモノマー(3)の一方または両方に基づく構成単位とを有する含フッ素ポリマーが好ましい。
CF2=CX1X2 ・・・(1)
[式中、X1およびX2はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、またはトリフルオロメチル基である。]
X1およびX2は、含フッ素イオン透過性隔膜の化学的耐久性の点から、フッ素原子が好ましい。
[式中、X1およびX2はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、またはトリフルオロメチル基である。]
X1およびX2は、含フッ素イオン透過性隔膜の化学的耐久性の点から、フッ素原子が好ましい。
モノマー(1)としては、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CFCF3等が挙げられ、含フッ素イオン透過性隔膜の化学的耐久性の点から、CF2=CF2が好ましい。
CF2=CF−O−Rf1−Y ・・・(2)
CF2=CF−Rf1−Y ・・・(3)
[式中、Rf1は直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよく、Yはスルホン酸型官能基に変換できる基である。]
スルホン酸型官能基に変換できる基として、具体的には−SO2F、−SO2Cl、−SO2Br等が挙げられる。
CF2=CF−Rf1−Y ・・・(3)
[式中、Rf1は直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよく、Yはスルホン酸型官能基に変換できる基である。]
スルホン酸型官能基に変換できる基として、具体的には−SO2F、−SO2Cl、−SO2Br等が挙げられる。
モノマー(2)またはモノマー(3)としては、工業的な合成が容易である点から、下記の化合物が好ましい。
CF2=CF−O−CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF2CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−SO2F、
CF2=CF−CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−CF2CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−CF2−O−CF2CF2−SO2F。
モノマー(2)およびモノマー(3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
CF2=CF−O−CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF2CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−SO2F、
CF2=CF−CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−CF2CF2CF2−SO2F、
CF2=CF−CF2−O−CF2CF2−SO2F。
モノマー(2)およびモノマー(3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリマー(S’)としては、モノマー(1)に基づく構成単位とモノマー(2)に基づく構成単位とを含む含フッ素ポリマーが好ましい。
ポリマー(S’)の製造には、モノマー(1)、ならびにモノマー(2)およびモノマー(3)の一方または両方に加えて、さらに他のモノマーを用いてもよい。
他のモノマーとしては、CF2=CFRf2(Rf2は炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基である。)、CF2=CF−ORf3(Rf3は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基である。)、CF2=CFO(CF2)vCF=CF2(vは1〜3の整数である。)等が挙げられる。
ポリマー(S’)に他のモノマーに基づく構成単位を含有させることによって、含フッ素イオン透過性隔膜の可撓性や機械的強度を上げることができる。
ポリマー(S’)に他のモノマーに基づく構成単位を含有させることによって、含フッ素イオン透過性隔膜の可撓性や機械的強度を上げることができる。
ポリマー(S’)が、モノマー(1)、ならびにモノマー(2)およびモノマー(3)の一方または両方以外の他のモノマーに基づく構成単位を有する場合、ポリマー(S’)に占める他のモノマーに基づく構成単位の割合は、イオン透過性の維持の点から、全モノマーに基づく構成単位(100質量%)のうち30質量%以下が好ましい。
[補強体]
隔膜前駆体膜は、補強体を含んでいてもよい。隔膜前駆体膜が補強体を含む場合、隔膜前駆体膜に含まれる補強体は、強度の点から、補強布または多孔質膜が好ましい。
隔膜前駆体膜が補強体を含む場合、補強体は、隔膜前駆体膜の内部に埋設されていることが好ましい。
隔膜前駆体膜は、補強体を含んでいてもよい。隔膜前駆体膜が補強体を含む場合、隔膜前駆体膜に含まれる補強体は、強度の点から、補強布または多孔質膜が好ましい。
隔膜前駆体膜が補強体を含む場合、補強体は、隔膜前駆体膜の内部に埋設されていることが好ましい。
補強布は、含フッ素イオン透過性隔膜の強度を向上させるための補強材の原料として用いられる布であり、経糸と緯糸とからなり、経糸と緯糸が直交していることが好ましい。補強布が、補強糸と犠牲糸とからなる場合には、後述するように、工程(ii)において、少なくとも一部の犠牲糸が溶出し、溶出した部分は空孔となる。
補強糸としては、パーフルオロカーボンポリマーを含む糸が好ましく、PTFEを含む糸がより好ましく、PTFEのみからなるPTFE糸がさらに好ましい。
犠牲糸としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)のみからなるPET糸、PETおよびポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと記す。)の混合物からなるPET/PBT糸、PBTのみからなるPBT糸、またはポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと記す。)のみからなるPTT糸が好ましく、PET糸がより好ましい。
犠牲糸としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)のみからなるPET糸、PETおよびポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと記す。)の混合物からなるPET/PBT糸、PBTのみからなるPBT糸、またはポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと記す。)のみからなるPTT糸が好ましく、PET糸がより好ましい。
多孔質膜としては、公知の多孔質膜を採用することができ、有機高分子樹脂を含むことが好ましい。有機高分子樹脂としては、PTFE、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等を挙げることができ、強度やアルカリ性水溶液に接触させた際に溶解しない点から、PTFEの多孔質膜が好ましい。
隔膜前駆体膜の内部に補強体を埋設する場合、隔膜前駆体膜を複数の層からなる態様とし、その積層時に2つの層(S’)の間に補強体を挟んで積層することにより、補強体が埋設されている態様とすることが好ましい。すなわち、隔膜前駆体膜に補強体が埋設されている場合、ポリマー(S’)/補強体/ポリマー(S’)の順で積層することが好ましい。
補強体を挟むように積層された前記2つの層(S’)のそれぞれを構成するポリマー(S’)は、同一であっても異なっていてもよい。ポリマー(S’)が異なるとは、ポリマーの組成、分子量、イオン交換容量等が異なることを意味する。
また、補強体が埋設されない場合は、ポリマー(S’)/補強体の順で積層し、層(S’)の一方の面に補強体を有する隔膜前駆体膜とすることが好ましい。
補強体を挟むように積層された前記2つの層(S’)のそれぞれを構成するポリマー(S’)は、同一であっても異なっていてもよい。ポリマー(S’)が異なるとは、ポリマーの組成、分子量、イオン交換容量等が異なることを意味する。
また、補強体が埋設されない場合は、ポリマー(S’)/補強体の順で積層し、層(S’)の一方の面に補強体を有する隔膜前駆体膜とすることが好ましい。
また、隔膜前駆体膜の内部に補強体を埋設する方法としては、補強体の両面にポリマー(S’)をコーティングすることによって行ってもよい。
補強体の一方の面にコーティングされた層(S’)および他方の面にコーティングされた層(S’)のそれぞれを構成するポリマー(S’)は、同一であっても異なっていてもよい。
コーティングの方法としては、スピンコーティング、スプレーコーティング等の通常の方法を採用できる。
補強体が埋設されない場合は、補強体の一方の面にポリマー(S’)をコーティングして層(S’)の一方の面に補強体を有する隔膜前駆体膜とする方法が挙げられる。
また、隔膜前駆体膜が補強体を含み、補強体が多孔質膜である場合、多孔質膜にポリマー(S’)を含浸させて多孔質膜の孔にポリマー(S’)を存在させる態様とし、多孔質膜の孔にポリマー(S’)が存在する多孔質膜を隔膜前駆体膜としてもよい。
補強体の一方の面にコーティングされた層(S’)および他方の面にコーティングされた層(S’)のそれぞれを構成するポリマー(S’)は、同一であっても異なっていてもよい。
コーティングの方法としては、スピンコーティング、スプレーコーティング等の通常の方法を採用できる。
補強体が埋設されない場合は、補強体の一方の面にポリマー(S’)をコーティングして層(S’)の一方の面に補強体を有する隔膜前駆体膜とする方法が挙げられる。
また、隔膜前駆体膜が補強体を含み、補強体が多孔質膜である場合、多孔質膜にポリマー(S’)を含浸させて多孔質膜の孔にポリマー(S’)を存在させる態様とし、多孔質膜の孔にポリマー(S’)が存在する多孔質膜を隔膜前駆体膜としてもよい。
(無機物粒子)
無機物粒子は、酸またはアルカリに対する耐食性に優れ、親水性を有するものが好ましい。具体的には、第4族元素または第14族元素の酸化物、窒化物および炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、SiO2、SiC、ZrO2、ZrCがより好ましく、ZrO2が特に好ましい。
無機物粒子は、酸またはアルカリに対する耐食性に優れ、親水性を有するものが好ましい。具体的には、第4族元素または第14族元素の酸化物、窒化物および炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、SiO2、SiC、ZrO2、ZrCがより好ましく、ZrO2が特に好ましい。
無機物粒子の平均粒子径は、0.5〜1.5μmが好ましく、0.7〜1.3μmがより好ましい。無機物粒子の平均粒子径が前記下限値以上であれば、高いガス付着抑制効果が得られる。無機物粒子の平均粒子径が前記上限値以下であれば、無機物粒子の脱落耐性に優れる。
(無機物粒子付き隔膜前駆体膜)
無機物粒子付き隔膜前駆体膜は、隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に無機物粒子が付着している。無機物粒子付き隔膜前駆体膜には、両方の面に無機物粒子が付着していてもよく、両方の面に無機物粒子が付着していることが好ましい。
無機物粒子付き隔膜前駆体膜は、隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に無機物粒子が付着している。無機物粒子付き隔膜前駆体膜には、両方の面に無機物粒子が付着していてもよく、両方の面に無機物粒子が付着していることが好ましい。
無機物粒子付き隔膜前駆体膜に付着している無機物粒子は、無機物粒子付き隔膜前駆体膜の面積あたりの付着量として、0.5〜50g/m2が好ましく、0.5〜30g/m2がより好ましく、0.5〜25g/m2がさらに好ましい。
無機物粒子付き隔膜前駆体膜に付着している無機物粒子の、無機物粒子付き隔膜前駆体膜の面積当たりの付着量が前記下限値以上であれば、含フッ素イオン透過性隔膜表面への充分なガス付着抑制効果が得られる。無機物粒子付き隔膜前駆体膜に付着している無機物粒子の、無機物粒子付き隔膜前駆体膜の面積当たりの付着量が前記上限値以下であれば、電解時の電圧上昇を充分に抑制できる。
無機物粒子付き隔膜前駆体膜に付着している無機物粒子の、無機物粒子付き隔膜前駆体膜の面積当たりの付着量が前記下限値以上であれば、含フッ素イオン透過性隔膜表面への充分なガス付着抑制効果が得られる。無機物粒子付き隔膜前駆体膜に付着している無機物粒子の、無機物粒子付き隔膜前駆体膜の面積当たりの付着量が前記上限値以下であれば、電解時の電圧上昇を充分に抑制できる。
(含フッ素イオン透過性隔膜)
含フッ素イオン透過性隔膜はスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(S)を含み、少なくとも一方の面に無機物粒子が付着した膜である。含フッ素イオン透過性隔膜は、その両方の面に無機物粒子が付着していることが好ましい。ポリマー(S)は、含フッ素イオン透過性隔膜において、層(以下、「層(S)」とも言う。)を形成していることが好ましい。
また、含フッ素イオン透過性隔膜は、含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜であって、前記含フッ素ポリマーが含フッ素ポリマー(S)である含フッ素イオン透過性隔膜であってもよい。
含フッ素イオン透過性隔膜はスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(S)を含み、少なくとも一方の面に無機物粒子が付着した膜である。含フッ素イオン透過性隔膜は、その両方の面に無機物粒子が付着していることが好ましい。ポリマー(S)は、含フッ素イオン透過性隔膜において、層(以下、「層(S)」とも言う。)を形成していることが好ましい。
また、含フッ素イオン透過性隔膜は、含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜であって、前記含フッ素ポリマーが含フッ素ポリマー(S)である含フッ素イオン透過性隔膜であってもよい。
含フッ素イオン透過性隔膜は、補強体を含んでいてもよい。
前述のように、含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜が補強体として補強布を含み、該補強布が補強糸と犠牲糸からなる場合、後述する工程(ii)において犠牲糸の少なくとも一部が溶解し、含フッ素イオン透過性隔膜は補強体として補強材を含むことになる。また、含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜が補強体として多孔質膜を含む場合、含フッ素イオン透過性隔膜は補強体として多孔質膜を含むことになる。
前述のように、含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜が補強体として補強布を含み、該補強布が補強糸と犠牲糸からなる場合、後述する工程(ii)において犠牲糸の少なくとも一部が溶解し、含フッ素イオン透過性隔膜は補強体として補強材を含むことになる。また、含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜が補強体として多孔質膜を含む場合、含フッ素イオン透過性隔膜は補強体として多孔質膜を含むことになる。
含フッ素イオン透過性隔膜の厚さは、5〜500μmが好ましく、5〜300μmがより好ましい。
含フッ素イオン透過性隔膜の厚さが前記下限値以上であれば、含フッ素イオン透過性隔膜の機械的強度が高くなり、長期間の電解使用に耐えることができる。含フッ素イオン透過性隔膜の厚さが前記上限値以下であれば、膜厚が薄くなることにより電解電圧が低くなる。
なお、含フッ素イオン透過性隔膜の厚さには、含フッ素イオン透過性隔膜に補強体が埋設されている場合には、補強体の厚さを含み、さらに無機物粒子からなる層の厚さを含む。
含フッ素イオン透過性隔膜の厚さが前記下限値以上であれば、含フッ素イオン透過性隔膜の機械的強度が高くなり、長期間の電解使用に耐えることができる。含フッ素イオン透過性隔膜の厚さが前記上限値以下であれば、膜厚が薄くなることにより電解電圧が低くなる。
なお、含フッ素イオン透過性隔膜の厚さには、含フッ素イオン透過性隔膜に補強体が埋設されている場合には、補強体の厚さを含み、さらに無機物粒子からなる層の厚さを含む。
[ポリマー(S)]
ポリマー(S)は、無機物粒子付き隔膜前駆体膜の層(S’)中のポリマー(S’)のスルホン酸型官能基に変換できる基を、アルカリ性水溶液に接触させることによりスルホン酸型官能基に変換することによって得られたものである。
ポリマー(S)は、無機物粒子付き隔膜前駆体膜の層(S’)中のポリマー(S’)のスルホン酸型官能基に変換できる基を、アルカリ性水溶液に接触させることによりスルホン酸型官能基に変換することによって得られたものである。
ポリマー(S)のイオン交換容量は、0.5〜2.5ミリ当量/グラム乾燥樹脂が好ましく、0.7〜2.2ミリ当量/グラム乾燥樹脂がより好ましい。
ポリマー(S)のイオン交換容量が前記下限値以上であれば、膜抵抗の上昇が抑制され、充分に電解電圧が低くなる。ポリマー(S)のイオン交換容量が前記上限値以下であれば、ポリマーの分子量を高くすることが可能であり、充分な膜強度が維持される。
ポリマー(S)のイオン交換容量は、ポリマー(S’)中のスルホン酸型官能基に変換できる基を有するモノマー単位の含有量を変化させることにより調整できる。
ポリマー(S)のイオン交換容量が前記下限値以上であれば、膜抵抗の上昇が抑制され、充分に電解電圧が低くなる。ポリマー(S)のイオン交換容量が前記上限値以下であれば、ポリマーの分子量を高くすることが可能であり、充分な膜強度が維持される。
ポリマー(S)のイオン交換容量は、ポリマー(S’)中のスルホン酸型官能基に変換できる基を有するモノマー単位の含有量を変化させることにより調整できる。
ポリマー(S)のTQ値は、イオン交換膜としての機械的強度および製膜性の点から、150℃以上が好ましく、170〜340℃がより好ましく、170〜300℃がさらに好ましい。
TQ値は、ポリマーの分子量に関係する値であって、容量流速:100mm3/秒を示す温度で示したものである。容量流速は、ポリマーを3MPaの加圧下に一定温度のオリフィス(径:1mm、長さ:1mm)から溶融、流出させたときの流出するポリマーの量をmm3/秒の単位で示したものである。TQ値が高いほど、高分子量であることを示す。
TQ値は、ポリマーの分子量に関係する値であって、容量流速:100mm3/秒を示す温度で示したものである。容量流速は、ポリマーを3MPaの加圧下に一定温度のオリフィス(径:1mm、長さ:1mm)から溶融、流出させたときの流出するポリマーの量をmm3/秒の単位で示したものである。TQ値が高いほど、高分子量であることを示す。
以下、本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法における工程(i)および工程(ii)の一態様を、図1を用いて説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
図1では、層(S’)に補強布が埋設された隔膜前駆体膜の両方の面に、副資材を用いて無機物粒子を加熱圧着して、両方の面に無機物粒子が付着した無機物粒子付き隔膜前駆体膜を得て、得られた無機物粒子付き隔膜前駆体膜から含フッ素イオン透過性隔膜を得る態様を示す。
図1では、層(S’)に補強布が埋設された隔膜前駆体膜の両方の面に、副資材を用いて無機物粒子を加熱圧着して、両方の面に無機物粒子が付着した無機物粒子付き隔膜前駆体膜を得て、得られた無機物粒子付き隔膜前駆体膜から含フッ素イオン透過性隔膜を得る態様を示す。
(工程(i))
含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法における工程(i)は、ポリマー(S’)からなる層(S’)を含む隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に無機物粒子を加熱圧着して、無機物粒子付き隔膜前駆体膜を得る工程である。
本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法の一態様を、図1を用いて説明する。
図1(a)に示すように、本態様における隔膜前駆体膜7は、層(S’)72とその内部に埋設された補強布76とからなる。
含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法における工程(i)は、ポリマー(S’)からなる層(S’)を含む隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に無機物粒子を加熱圧着して、無機物粒子付き隔膜前駆体膜を得る工程である。
本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法の一態様を、図1を用いて説明する。
図1(a)に示すように、本態様における隔膜前駆体膜7は、層(S’)72とその内部に埋設された補強布76とからなる。
図1(b)に示すように、本態様における無機物粒子付き副資材9は、副資材92とその一方の面に付着した無機物粒子14とからなる。
無機物粒子付き副資材9は、分散媒(たとえば、メチルセルロース水溶液等)に無機物粒子14を分散させたペーストを、副資材92(たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)の一方の面に塗布して乾燥して製造できる。
分散媒に無機物粒子14が分散したペーストの副資材92への塗布方法は特に限定されないが、例えばグラビアロール法等が挙げられる。
無機物粒子付き副資材9は、分散媒(たとえば、メチルセルロース水溶液等)に無機物粒子14を分散させたペーストを、副資材92(たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)の一方の面に塗布して乾燥して製造できる。
分散媒に無機物粒子14が分散したペーストの副資材92への塗布方法は特に限定されないが、例えばグラビアロール法等が挙げられる。
図1(c)に示すように、隔膜前駆体膜7の両方の面に、無機物粒子14が隔膜前駆体膜7に接するように、無機物粒子付き副資材9の無機物粒子14が付着した面を内側にして隔膜前駆体膜7と重ね合わせて加熱圧着し、副資材付き積層体5を得る。
隔膜前駆体膜7と無機物粒子付き副資材9を加熱圧着する方法は特に限定されないが、例えば一対の金属ロールおよびゴムライニングロールを有する積層ロールを用いる方法等が挙げられる。
加熱圧着は、たとえば、100〜220℃において、1〜150cm/分、1〜100kg/cmの線圧下で行うことができる。
隔膜前駆体膜7と無機物粒子付き副資材9を加熱圧着する方法は特に限定されないが、例えば一対の金属ロールおよびゴムライニングロールを有する積層ロールを用いる方法等が挙げられる。
加熱圧着は、たとえば、100〜220℃において、1〜150cm/分、1〜100kg/cmの線圧下で行うことができる。
次いで、図1(d)に示すように、副資材付き積層体5から副資材92を剥離し、無機物粒子付き隔膜前駆体膜3を得る。
副資材92の剥離は、たとえば、0〜100℃において、1〜150cm/分の剥離速度で行うことができる。
副資材92の剥離は、たとえば、0〜100℃において、1〜150cm/分の剥離速度で行うことができる。
工程(i)において、加熱圧着により隔膜前駆体膜の表面に無機物粒子を付着させることにより、含フッ素イオン透過性隔膜表面からの無機物粒子の脱落耐性が優れる。
(工程(ii))
本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法における工程(ii)は、工程(i)に次いで行われる工程であり、無機物粒子付き隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液に接触させることによって、図1(e)に示すように、無機物粒子付き隔膜前駆体膜3中のポリマー(S’)に含まれる、スルホン酸型官能基に変換できる基をスルホン酸型官能基に変換して、ポリマー(S’)をポリマー(S)に変換し、含フッ素イオン透過性隔膜1を得る工程である。
本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法における工程(ii)は、工程(i)に次いで行われる工程であり、無機物粒子付き隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液に接触させることによって、図1(e)に示すように、無機物粒子付き隔膜前駆体膜3中のポリマー(S’)に含まれる、スルホン酸型官能基に変換できる基をスルホン酸型官能基に変換して、ポリマー(S’)をポリマー(S)に変換し、含フッ素イオン透過性隔膜1を得る工程である。
アルカリ性水溶液は、pH10以上、好ましくはpH12以上のアルカリ性の水溶液であり、無機物粒子付き隔膜前駆体膜の層(S’)中のポリマー(S’)のスルホン酸型官能基に変換できる基を、スルホン酸型官能基に変換できるものであればよい。アルカリ性水溶液は、アルカリ金属水酸化物、水溶性有機溶媒、および水を含むことが好ましい。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられ、水酸化カリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水溶性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチルピロリドンが挙げられ、ジメチルスルホキシドが好ましい。水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられ、水酸化カリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水溶性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチルピロリドンが挙げられ、ジメチルスルホキシドが好ましい。水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ性水溶液がアルカリ金属水酸化物、水溶性有機溶媒、および水を含む場合、アルカリ性水溶液中のアルカリ金属水酸化物が占める含有量は、アルカリ性水溶液の100質量部に対して、アルカリ金属水酸化物の1〜60質量部が好ましく、3〜55質量部がより好ましく、5〜50質量部がさらに好ましい。アルカリ水溶液中の水溶性有機溶媒が占める含有量は、アルカリ性水溶液の100質量部に対して、水溶性有機溶媒の1〜60質量部が好ましく、3〜55質量部がより好ましく、5〜50質量部がさらに好ましい。
アルカリ金属水酸化物および水溶性有機溶媒の含有量が前記範囲内であれば、ポリマー(S’)のスルホン酸型官能基に変換できる基のスルホン酸型官能基への変換が速やかに完了し、含フッ素イオン透過性隔膜の生産性が高い。
アルカリ金属水酸化物および水溶性有機溶媒の含有量が前記範囲内であれば、ポリマー(S’)のスルホン酸型官能基に変換できる基のスルホン酸型官能基への変換が速やかに完了し、含フッ素イオン透過性隔膜の生産性が高い。
アルカリ性水溶液の温度は、30℃以上100℃未満が好ましく、35℃以上100℃未満がより好ましく、40℃以上100℃未満がさらに好ましい。
アルカリ性水溶液の温度が前記下限値以上であれば、ポリマー(S’)のスルホン酸型官能基に変換できる基のスルホン酸型官能基への変換が速やかに完了し、イオン透過性隔膜の生産性が高い。アルカリ性水溶液の温度が前記上限値以下であれば、水または塩酸の電解を行った際の電流効率のばらつきの小さいイオン透過性隔膜が得られる。
アルカリ性水溶液の温度が前記下限値以上であれば、ポリマー(S’)のスルホン酸型官能基に変換できる基のスルホン酸型官能基への変換が速やかに完了し、イオン透過性隔膜の生産性が高い。アルカリ性水溶液の温度が前記上限値以下であれば、水または塩酸の電解を行った際の電流効率のばらつきの小さいイオン透過性隔膜が得られる。
無機物粒子付き隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液へ接触させる時間は、3〜300分間が好ましく、5〜120分間がより好ましい。
無機物粒子付き隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液へ接触させる時間が前記下限値以上であれば、ポリマー(S’)中のスルホン酸型官能基に変換できる基からスルホン酸型官能基への変換率が高い。無機物粒子付き隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液へ接触させる時間が前記上限値以下であれば、水または塩酸の電解を行った際の電流効率のばらつきの小さいイオン透過性隔膜が得られる。
無機物粒子付き隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液へ接触させる時間が前記下限値以上であれば、ポリマー(S’)中のスルホン酸型官能基に変換できる基からスルホン酸型官能基への変換率が高い。無機物粒子付き隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液へ接触させる時間が前記上限値以下であれば、水または塩酸の電解を行った際の電流効率のばらつきの小さいイオン透過性隔膜が得られる。
前述のように、無機物粒子付き隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液に接触させることにより、無機物粒子付き隔膜前駆体膜3の層(S’)72中のポリマー(S’)のスルホン酸型官能基に変換できる基がスルホン酸型官能基に変換され、層(S’)72が層(S)12に変換される。
無機物粒子付き隔膜前駆体膜3の内部に補強体として埋設された補強布76が、補強糸および犠牲糸からなる補強布の場合は、無機物粒子付き隔膜前駆体膜3をアルカリ性水溶液に接触させることによって、補強布76に含まれる犠牲糸の少なくとも一部が溶解する。少なくとも一部の犠牲糸が溶出した後も、補強布76に含まれる補強糸は溶解せずに残存し、イオン透過性隔膜1の機械的強度や寸法安定性の維持に寄与する。
なお、本イオン透過性隔膜をアルカリ性水溶液に接触させたのち、カリウムイオン、ナトリウムイオン、または水素イオンを含む水溶液に接触させ、イオン交換基の末端基の対カチオンを接触させた溶液中に存在するカチオンに置換することも可能である。
イオン交換基の末端基の対カチオンを、膜の使用時に液中に存在するカチオンと同じカチオンに交換することにより、交換したカチオンが存在する環境下での電気分解に供することができ、さらにイオン浸透性隔膜の寸法安定性が向上する。
例えば、水素イオンが存在する溶液に接触させることにより、イオン交換基の末端基の対カチオンが水素イオンであるイオン浸透性隔膜が得られる。このような末端基の対カチオンが水素イオンであるイオン浸透性隔膜は、塩酸の電解に使用することができるほか、プロトン伝導膜として用いる事も可能である。
イオン交換基の末端基の対カチオンを、膜の使用時に液中に存在するカチオンと同じカチオンに交換することにより、交換したカチオンが存在する環境下での電気分解に供することができ、さらにイオン浸透性隔膜の寸法安定性が向上する。
例えば、水素イオンが存在する溶液に接触させることにより、イオン交換基の末端基の対カチオンが水素イオンであるイオン浸透性隔膜が得られる。このような末端基の対カチオンが水素イオンであるイオン浸透性隔膜は、塩酸の電解に使用することができるほか、プロトン伝導膜として用いる事も可能である。
なお、図1では隔膜前駆体膜7をあらかじめ作成して、隔膜前駆体膜7と無機物粒子付き副資材9とを加熱圧着したが、隔膜前駆体膜を得るための積層材料を単に重ねておき、無機物粒子付き副資材と合わせて加熱圧着により積層する工程における加熱圧着により、隔膜前駆体膜の各層を一体化してもよい。
また、図1では隔膜前駆体膜7の両方の面に無機物粒子14が加熱圧着されて付着しているが、無機物粒子は隔膜前駆体膜の一方の面のみに加熱圧着されて付着していてもよい。
また、図1では隔膜前駆体膜7として補強布76を有するものとしたが、隔膜前駆体膜は、内部に補強体が埋設されていなくてもよい。
また、図1では隔膜前駆体膜7の両方の面に無機物粒子14が加熱圧着されて付着しているが、無機物粒子は隔膜前駆体膜の一方の面のみに加熱圧着されて付着していてもよい。
また、図1では隔膜前駆体膜7として補強布76を有するものとしたが、隔膜前駆体膜は、内部に補強体が埋設されていなくてもよい。
隔膜前駆体膜7に無機物粒子14を付着させる他の方法としては、無機物粒子14を隔膜前駆体膜7の少なくとも一方の面に塗布し、隔膜前駆体膜7の無機物粒子14が塗布された面をプレスにより加熱圧着して無機物粒子付き隔膜前駆体膜3を得てもよい。
具体的には、たとえば、隔膜前駆体膜上に無機物粒子をコーティングして、加熱した金属板で加熱圧着する方法が挙げられる。
隔膜前駆体膜上に無機物粒子をコーティングする方法としては特に限定されないが、たとえば、分散媒(たとえば、メチルセルロース水溶液など)に無機物粒子14を分散させたペーストをグラビアロールあるいはスロットダイを用いて塗布する方法が挙げられる。
加熱した金属板としては、100〜250℃に加熱した、ステンレス基材、アルミニウム基材およびスチール基材から選択される金属板などが挙げられ、この金属板を無機物粒子がコーティングされた隔膜前駆体膜に0.05〜5MPaの圧力で、1〜20分間押し付けて加熱圧着することができる。
具体的には、たとえば、隔膜前駆体膜上に無機物粒子をコーティングして、加熱した金属板で加熱圧着する方法が挙げられる。
隔膜前駆体膜上に無機物粒子をコーティングする方法としては特に限定されないが、たとえば、分散媒(たとえば、メチルセルロース水溶液など)に無機物粒子14を分散させたペーストをグラビアロールあるいはスロットダイを用いて塗布する方法が挙げられる。
加熱した金属板としては、100〜250℃に加熱した、ステンレス基材、アルミニウム基材およびスチール基材から選択される金属板などが挙げられ、この金属板を無機物粒子がコーティングされた隔膜前駆体膜に0.05〜5MPaの圧力で、1〜20分間押し付けて加熱圧着することができる。
<電解装置の製造方法>
本発明の電解装置の製造方法は、本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により含フッ素イオン透過性隔膜を得て、得られた含フッ素イオン透過性隔膜を、陽極と陰極とを備えた電解槽の陽極側の陽極室と陰極側の陰極室との隔膜として設置する方法である。
本発明の電解装置の製造方法は、本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により含フッ素イオン透過性隔膜を得て、得られた含フッ素イオン透過性隔膜を、陽極と陰極とを備えた電解槽の陽極側の陽極室と陰極側の陰極室との隔膜として設置する方法である。
図2は、本発明の水素ガスおよび酸素ガスの製造方法で用いられる電解装置の一例を示す模式図である。
水電解装置100は、電解槽110の内部に、陽極112を備える陽極室116と陰極114を備える陰極室118と、陽極室116と陰極室118とを隔てるように設置された、本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により製造された含フッ素イオン透過性隔膜1とを備える。
水電解装置100は、電解槽110の内部に、陽極112を備える陽極室116と陰極114を備える陰極室118と、陽極室116と陰極室118とを隔てるように設置された、本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により製造された含フッ素イオン透過性隔膜1とを備える。
図3は、本発明の塩素ガスの製造方法で用いられる電解装置の一例を示す模式図である。
塩酸電解装置200は、電解槽110の内部に、陽極112を備える陽極室116と陰極114を備える陰極室118と、陽極室116と陰極室118とを隔てるように設置された、本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により製造された含フッ素イオン透過性隔膜1とを備える。
塩酸電解装置200は、電解槽110の内部に、陽極112を備える陽極室116と陰極114を備える陰極室118と、陽極室116と陰極室118とを隔てるように設置された、本発明の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により製造された含フッ素イオン透過性隔膜1とを備える。
陰極114は、含フッ素イオン透過性隔膜1に接触させて配置してもよく、含フッ素イオン透過性隔膜1と間隔をあけて配置してもよい。
陽極室116を構成する材料としては、チタンが挙げられる。
陰極室118を構成する材料としては、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。
陽極室116を構成する材料としては、チタンが挙げられる。
陰極室118を構成する材料としては、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。
<ガスの製造方法>
本発明のガスの製造方法では、本発明の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いてガスが発生する電解プロセスの電解が行われる。本発明の電解装置の製造方法により製造された電解装置が用いられる以外は、ガスが発生する電解プロセスとして公知の態様を採用できる。
本発明のガスの製造方法では、本発明の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いてガスが発生する電解プロセスの電解が行われる。本発明の電解装置の製造方法により製造された電解装置が用いられる以外は、ガスが発生する電解プロセスとして公知の態様を採用できる。
<水素ガスおよび酸素ガスの製造方法>
本発明の水素ガスおよび酸素ガスの製造方法では、本発明の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて水の電解が行われる。本発明の電解装置の製造方法により製造された電解装置が用いられる以外は、公知の態様を採用できる。
たとえば、水電解装置100の陽極室116および陰極室118の一方または両方に水を供給し、水を電解する。
たとえば、水電解装置100の陽極室116および陰極室118の一方または両方に水を供給し、水を電解する。
<塩素ガスの製造方法>
本発明の塩素ガスの製造方法では、本発明の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて塩酸の電解が行われる。本発明の電解装置の製造方法により製造された電解装置が用いられる以外は、公知の態様を採用できる。
たとえば、塩酸電解装置200の陽極室116および陰極室118の一方または両方に塩酸を供給し、塩化水素を電解する。
たとえば、塩酸電解装置200の陽極室116および陰極室118の一方または両方に塩酸を供給し、塩化水素を電解する。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によっては限定されない。
[付着強度]
摩擦試験機として、株式会社井本製作所製の簡易型耐摩耗試験機IMC−1558−1型を用い、摩擦体として株式会社イノアックコーポレーション製の発泡ウレタンシート(密度:22kg/m3)を用いた。各例で得られた含フッ素イオン透過性隔膜の表面に摩擦体を接触させ、摩擦体に20gの荷重をかけて20往復させる摩擦試験を行った。摩擦試験の前後で、蛍光X線測定器を用いて含フッ素イオン透過性隔膜表面の無機物粒子の量を測定し、摩擦試験前の無機物粒子の量に対する摩擦試験後の無機物粒子の量の残存率を算出した。
摩擦試験機として、株式会社井本製作所製の簡易型耐摩耗試験機IMC−1558−1型を用い、摩擦体として株式会社イノアックコーポレーション製の発泡ウレタンシート(密度:22kg/m3)を用いた。各例で得られた含フッ素イオン透過性隔膜の表面に摩擦体を接触させ、摩擦体に20gの荷重をかけて20往復させる摩擦試験を行った。摩擦試験の前後で、蛍光X線測定器を用いて含フッ素イオン透過性隔膜表面の無機物粒子の量を測定し、摩擦試験前の無機物粒子の量に対する摩擦試験後の無機物粒子の量の残存率を算出した。
[TQ値]
TQ値は、容量流速:100mm3/秒を示す温度として求めた。容量流速は、島津フローテスターCFD−100D(島津製作所社製)を用い、対象ポリマーを3MPaの加圧下に一定温度のオリフィス(径:1mm、長さ:1mm)から溶融、流出させたときの流出するポリマーの量(単位:mm3/秒)とした。
TQ値は、容量流速:100mm3/秒を示す温度として求めた。容量流速は、島津フローテスターCFD−100D(島津製作所社製)を用い、対象ポリマーを3MPaの加圧下に一定温度のオリフィス(径:1mm、長さ:1mm)から溶融、流出させたときの流出するポリマーの量(単位:mm3/秒)とした。
[イオン交換容量]
対象ポリマーの約0.5mgを、約270℃にて平板プレスしてフィルム状にし、これを透過型赤外分光分析装置によって分析し、得られたスペクトルのCF2ピーク、CF3ピークおよびOHピークの各ピーク高さを用いて、イオン交換容量を算出した。
対象ポリマーの約0.5mgを、約270℃にて平板プレスしてフィルム状にし、これを透過型赤外分光分析装置によって分析し、得られたスペクトルのCF2ピーク、CF3ピークおよびOHピークの各ピーク高さを用いて、イオン交換容量を算出した。
[層の厚さ]
各層の厚さは、イオン交換膜を90℃で4時間乾燥させたのち、イオン交換膜断面を光学顕微鏡にて観察し、画像ソフト(イノテック社製 Pixs2000 PRO)を用いて、補強材を構成する補強糸および犠牲糸が存在しない位置における各層の厚さを求めた。
各層の厚さは、イオン交換膜を90℃で4時間乾燥させたのち、イオン交換膜断面を光学顕微鏡にて観察し、画像ソフト(イノテック社製 Pixs2000 PRO)を用いて、補強材を構成する補強糸および犠牲糸が存在しない位置における各層の厚さを求めた。
(製造例1)
TFEと、下式(X)で表されるスルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素モノマーとを共重合して、スルホン酸型官能基に変換できる基を有するポリマー(S’A)(加水分解後のイオン交換容量:1.1ミリ当量/グラム乾燥樹脂、TQ:215℃)を合成した。
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2F ・・・(X)
TFEと、下式(X)で表されるスルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素モノマーとを共重合して、スルホン酸型官能基に変換できる基を有するポリマー(S’A)(加水分解後のイオン交換容量:1.1ミリ当量/グラム乾燥樹脂、TQ:215℃)を合成した。
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2F ・・・(X)
(製造例2)
ポリマー(S’A)を溶融押し出し法により成形し、ポリマー(S’A)からなる層(S’A1)(厚さ:30μm)のフィルムA1を得た。
ポリマー(S’A)を溶融押し出し法により成形し、ポリマー(S’A)からなる層(S’A1)(厚さ:30μm)のフィルムA1を得た。
(製造例3)
ポリマー(S’A)を溶融押し出し法により成形し、ポリマー(S’A)からなる層(S’A2)(厚さ:80μm)のフィルムA2を得た。
ポリマー(S’A)を溶融押し出し法により成形し、ポリマー(S’A)からなる層(S’A2)(厚さ:80μm)のフィルムA2を得た。
(製造例4)
1質量%のメチルセルロース水溶液に酸化ジルコニウム(平均粒子径:1μm)を分散させたペーストを、PETフィルムからなる副資材B1上にグラビアロール法にて塗布し、乾燥して、乾燥質量が12g/m2の酸化ジルコニウムを含有する無機物粒子付き副資材B2を得た。
1質量%のメチルセルロース水溶液に酸化ジルコニウム(平均粒子径:1μm)を分散させたペーストを、PETフィルムからなる副資材B1上にグラビアロール法にて塗布し、乾燥して、乾燥質量が12g/m2の酸化ジルコニウムを含有する無機物粒子付き副資材B2を得た。
(製造例5)
酸化ジルコニウムの乾燥質量が5.4g/m2となるように副資材B1上にペーストを塗布した以外は製造例4と同様にして、無機物粒子付き副資材B3を得た。
酸化ジルコニウムの乾燥質量が5.4g/m2となるように副資材B1上にペーストを塗布した以外は製造例4と同様にして、無機物粒子付き副資材B3を得た。
(製造例6)
PTFEからなる100デニールの糸と、PETからなる30デニール6フィラメントの糸を用い、PTFE糸の密度が27本/インチ、PET糸の密度が53本/インチとなるように平織して補強布C1を得た。
PTFEからなる100デニールの糸と、PETからなる30デニール6フィラメントの糸を用い、PTFE糸の密度が27本/インチ、PET糸の密度が53本/インチとなるように平織して補強布C1を得た。
(製造例7)
バインダーとしてポリマー(S’A)を2.5質量%含むエタノール溶液に、無機物粒子として酸化ジルコニウム(平均粒子径:1μm)を13質量%の濃度で分散させて、塗布液F1を調製した。
バインダーとしてポリマー(S’A)を2.5質量%含むエタノール溶液に、無機物粒子として酸化ジルコニウム(平均粒子径:1μm)を13質量%の濃度で分散させて、塗布液F1を調製した。
〔例1〕
無機物粒子付き副資材B2/フィルムA1/補強布C1/フィルムA2/無機物粒子付き副資材B2をこの順で重ね合わせた。この際、無機物粒子付き副資材B2の無機物粒子がフィルムA1またはフィルムA2に接するように重ね合わせた。重ね合わせた部材を温度:200℃、面圧:30MPa/m2 の平板プレス機にて10分加熱圧着したのち、フィルムA1側の副資材B1およびフィルムA2側の副資材B1を、温度:50℃で剥離することにより、無機物粒子付き隔膜前駆体膜D1を得た。
無機物粒子付き副資材B2/フィルムA1/補強布C1/フィルムA2/無機物粒子付き副資材B2をこの順で重ね合わせた。この際、無機物粒子付き副資材B2の無機物粒子がフィルムA1またはフィルムA2に接するように重ね合わせた。重ね合わせた部材を温度:200℃、面圧:30MPa/m2 の平板プレス機にて10分加熱圧着したのち、フィルムA1側の副資材B1およびフィルムA2側の副資材B1を、温度:50℃で剥離することにより、無機物粒子付き隔膜前駆体膜D1を得た。
ジメチルスルホキシド/水酸化カリウム/水=30/10/60(質量比)の溶液に、ラミネート隔膜前駆体膜D1を95℃で30分間浸漬し、ラミネート隔膜前駆体膜D1中のスルホン酸型官能基に変換できる基を加水分解して、スルホン酸型官能基(スルホン酸カリウム塩)に変換し、水洗し、乾燥させ、含フッ素イオン透過性隔膜の両面に無機物粒子の12g/m2が付着した含フッ素イオン透過性隔膜E1を得た。
〔例2〕
例1と同条件で、無機物粒子付き副資材B3/フィルムA1/補強布C1/フィルムA2をこの順で重ね合わせて加熱圧着し、フィルムA1側の副資材B1を、温度:50℃で剥離することにより、無機物粒子付き隔膜前駆体膜D2を得た。無機物粒子付き副資材B3を積層する際には、無機物粒子付き副資材B3の無機物粒子がフィルムA1に接するように重ね合わせた。
例1と同条件で、無機物粒子付き副資材B3/フィルムA1/補強布C1/フィルムA2をこの順で重ね合わせて加熱圧着し、フィルムA1側の副資材B1を、温度:50℃で剥離することにより、無機物粒子付き隔膜前駆体膜D2を得た。無機物粒子付き副資材B3を積層する際には、無機物粒子付き副資材B3の無機物粒子がフィルムA1に接するように重ね合わせた。
ジメチルスルホキシド/水酸化カリウム/水=30/10/60(質量比)の溶液に、ラミネート隔膜前駆体膜D2を95℃で30分間浸漬し、ラミネート隔膜前駆体膜D2中のスルホン酸型官能基に変換できる基を加水分解して、スルホン酸型官能基(スルホン酸カリウム塩)に変換し、水洗し、乾燥させ、含フッ素イオン透過性隔膜の片面に無機物粒子の5.4g/m2が付着した含フッ素イオン透過性隔膜E2を得た。
得られた含フッ素イオン透過性隔膜E2のフィルムA2側の表面に、無機物粒子の付着量が3.2g/m2になるように、スプレー法により塗布液F1を塗布し、含フッ素イオン透過性隔膜の片面に無機物粒子が加熱圧着により付着し、もう一方の面に無機物粒子がバインダーを介して付着した含フッ素イオン透過性隔膜E3を得た。
〔例3〕
フィルムA1/補強布C1/フィルムA2をこの順で重ね合わせて、加熱圧着し、隔膜前駆体膜D3を得た。
フィルムA1/補強布C1/フィルムA2をこの順で重ね合わせて、加熱圧着し、隔膜前駆体膜D3を得た。
得られた隔膜前駆体膜D3のフィルムA1側の表面に、無機物粒子の付着量が4.1g/m2になるように、スプレー法により塗布液F1を塗布し、含フッ素イオン透過性隔膜の片面に無機物粒子がバインダーを介して付着した隔膜前駆体膜D4を得た。
ジメチルスルホキシド/水酸化カリウム/水=30/10/60(質量比)の溶液に、隔膜前駆体膜D4を95℃で30分間浸漬し、隔膜前駆体膜D4中のスルホン酸型官能基に変換できる基を加水分解して、スルホン酸型官能基(スルホン酸カリウム塩)に変換し、水洗し、乾燥させ、含フッ素イオン透過性隔膜の片面に無機物粒子がバインダーを介して配置された含フッ素イオン透過性隔膜E4を得た。
得られた含フッ素イオン透過性隔膜E4のフィルムA2側の表面に、無機物粒子の付着量が2.0g/m2になるように、スプレー法により塗布液F1を塗布し、含フッ素イオン透過性隔膜の両面に無機物粒子がバインダーを介して付着した含フッ素イオン透過性隔膜E5を得た。
含フッ素イオン透過性隔膜E1(例1)、含フッ素イオン透過性隔膜E3(例2)、含フッ素イオン透過性隔膜E5(例3)の摩擦試験結果を表1に示す。
表1に示すように、両面ともに無機物粒子が加熱圧着された含フッ素イオン透過性隔膜E1(例1)、および片面のみに無機物粒子が加熱圧着された含フッ素イオン透過性隔膜E3(例2)において、無機物粒子が加熱圧着されたそれぞれの面における無機物粒子の付着強度は十分に高かった。
一方、片面のみに無機物粒子が加熱圧着された含フッ素イオン透過性隔膜E3(例2)、および両面ともに無機物粒子が加熱圧着されていない含フッ素イオン透過性隔膜E5(例3)において、無機物粒子が加熱圧着されていないそれぞれの面(無機物粒子がバインダーを介して付着したそれぞれの面)における無機物粒子の付着強度は、無機物粒子が加熱圧着されたそれぞれの面における無機物粒子の付着強度に比べて低かった。
一方、片面のみに無機物粒子が加熱圧着された含フッ素イオン透過性隔膜E3(例2)、および両面ともに無機物粒子が加熱圧着されていない含フッ素イオン透過性隔膜E5(例3)において、無機物粒子が加熱圧着されていないそれぞれの面(無機物粒子がバインダーを介して付着したそれぞれの面)における無機物粒子の付着強度は、無機物粒子が加熱圧着されたそれぞれの面における無機物粒子の付着強度に比べて低かった。
以上の結果から、含フッ素イオン透過性隔膜の膜表面に、無機物粒子が加熱圧着されて付着することにより、無機物粒子の隔膜表面からの脱落耐性に優れることが明らかとなった。また、無機物粒子が加熱圧着されることにより、バインダー層を含まないので、ガスの隔膜表面への付着の抑制効果は維持される。
1 含フッ素イオン透過性隔膜
12 層(S)
14 無機物粒子
16 補強材
100 水電解装置
110 電解槽
112 陽極
114 陰極
116 陽極室
118 陰極室
200 塩酸電解装置
3 無機物粒子付き隔膜前駆体膜
5 副資材付き積層体
7 隔膜前駆体膜
72 層(S’)
76 補強布
9 無機物粒子付き副資材
92 副資材
12 層(S)
14 無機物粒子
16 補強材
100 水電解装置
110 電解槽
112 陽極
114 陰極
116 陽極室
118 陰極室
200 塩酸電解装置
3 無機物粒子付き隔膜前駆体膜
5 副資材付き積層体
7 隔膜前駆体膜
72 層(S’)
76 補強布
9 無機物粒子付き副資材
92 副資材
Claims (17)
- スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に無機物粒子を加熱圧着して、前記無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を得て、次いで無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜をアルカリ性水溶液に接触させることによって、前記スルホン酸型官能基に変換できる基をスルホン酸型官能基に変換してスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーとすることを特徴とする含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に、副資材の一方の面に無機物粒子が付着した無機物粒子付き副資材の前記無機物粒子が付着した面を内側にして重ね合わせて加熱圧着し、
次いで、前記副資材を剥離して、前記無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を得る、請求項1に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。 - 前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の少なくとも一方の面に無機物粒子を塗布し、前記含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜の前記無機物粒子が塗布された面をプレスにより加熱圧着して、前記無機物粒子が少なくとも一方の面に付着した含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を得る、請求項1に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜が補強体を含む膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記補強体が補強布である請求項4に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記補強布が補強糸および犠牲糸からなる布である請求項5に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を、前記補強布を前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーからなる2つの層の間に積層することによって得る、請求項5または6に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記補強体がポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜である請求項4に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素イオン透過性隔膜前駆体膜を、ポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜の両面に前記スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマーをコーティングすることによって得る、請求項8に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記無機物粒子が、第4族元素の酸化物、窒化物および炭化物、ならびに第14族元素の酸化物、窒化物および炭化物からなる群より選択される1種を含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーのイオン交換容量が0.5〜2.5ミリ当量/グラム乾燥樹脂である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記含フッ素イオン透過性隔膜の厚さが5〜500μmである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 前記アルカリ性水溶液が、アルカリ金属水酸化物、水溶性有機溶媒、および水を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の含フッ素イオン透過性隔膜の製造方法により含フッ素イオン透過性隔膜を得て、得られた含フッ素イオン透過性隔膜を陽極と陰極とを備えた電解槽の陽極側の陽極室と陰極側の陰極室との隔膜として設置することを特徴とする電解装置の製造方法。
- 請求項14に記載の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて、気体が発生する電解プロセスの電解を行うことを特徴とするガスの製造方法。
- 請求項14に記載の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて水の電解を行うことを特徴とする水素ガスおよび酸素ガスの製造方法。
- 請求項14に記載の電解装置の製造方法により製造された電解装置を用いて塩酸の電解を行うことを特徴とする塩素ガスの製造方法。
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