JPWO2017170599A1 - 化粧シート及び化粧シートの製造方法 - Google Patents

化粧シート及び化粧シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

基材層からの顔料のブリードアウトを抑制して、基材層と印刷層の密着性を向上させることを目的とする。本実施形態に係る化粧シート(1)は、無機顔料を配合したポリオレフィン系樹脂を主成分とした基材層(6)の上に、印刷層(5)が形成され、基材層(6)を構成する樹脂100質量部に対し、70℃における半量結晶化時間が3分以上である軟質材が0.5質量部以上30質量部以下の範囲で配合されている。

Description

本発明は、建築内装材、建具の表面材、家電製品の表面材などに用いられる化粧シート及び化粧シートの製造方法に関する。化粧シートは、例えば木質ボード類、無機系ボード類、金属板などの基板に貼り合わせて化粧板として用いられる。
建築内装材や建具の表面などに用いられる化粧シート、特に、公共用用途に用いられる化粧シートについては、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の不燃材料の技術的基準を満たすことが求められる。従来は、このような不燃材料の技術的基準を満たす化粧シートとして軟質ポリ塩化ビニル系樹脂からなるものが用いられてきたが、廃棄後の焼却処理時に有毒ガス等が発生することなどが問題となった。このため、ポリ塩化ビニル系樹脂に替わり、ポリオレフィン系樹脂を用いた化粧シートが提案されている。しかし、ポリオレフィン系樹脂を用いた場合には、燃焼時の有毒ガス等の発生は抑制されるものの、当該樹脂が燃焼性に優れた性質を有しているために不燃材料の技術的基準を満たすことが困難であった。
ここで、ポリオレフィン系樹脂を用いた化粧シートが上記法令に記載の不燃材料の技術的基準を満たす方法としては、特許文献1〜2に記載されているような方法がある。その特許文献1〜2には、炭酸カルシウムなどの無機フィラーを配合したポリオレフィン系樹脂層を用いた構造体が開示されている。
特開2013−010931号公報 特開2011−122293号公報
不燃材料の技術的基準を満たすポリオレフィン系樹脂からなる化粧シートを得る方法として、基材層を薄膜化する方法が挙げられる。また、化粧シートに意匠性を出すためには基材層表面に印刷層を設けることが必須であるが、特に薄膜化した基材層を印刷機に投入する際には、印刷見当ズレの発生を抑制するために、基材層に十分な機械的強度が要求される。
以上のことから、基材層に1軸もしくは2軸延伸を施すことによって、基材層を薄膜化して不燃性を高めると同時に基材層の機械的強度を高めることが望ましい。
一方、印刷層を基材層上に設置する際、意匠性の点から基材層に顔料を配合することで隠蔽性を与えることが望ましいが、一方で、延伸によって基材層を構成する樹脂の結晶化が進行することにより、基材層から顔料がブリードアウトすることで基材層と印刷層の密着性の低下が起こり、基材層と基材層上の樹脂層が印刷層を起点にして剥離し易くなってしまう問題がある。
延伸加工を施した基材層は延伸配向による結晶化が進み、顔料や顔料の分散剤といった添加剤が結晶部から排出されるため、延伸する前に比べて基材層からのブリードアウトがより顕著となると考えられる。こうした顔料のブリードアウトを抑制することは、意匠性の高い化粧シートとする上で課題となる。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、基材層からの顔料のブリードアウトを抑制して、基材層と印刷層の密着性を向上させることを目的とする。
課題を解決するために、本発明の一態様の化粧シートは、無機顔料を配合したポリオレフィン系樹脂を主成分とした基材層の上に、印刷層が形成され、上記基材層を構成する樹脂100質量部に対し、70℃における半量結晶化時間が3分以上である軟質材が0.5質量部以上30質量部以下の範囲で配合されている。
また、本発明の一態様の化粧シートの製造方法は、無機顔料を配合したポリオレフィン系樹脂を主成分とした基材層の上に、印刷層を形成し、上記基材層を構成する樹脂100質量部に対し、70℃における半量結晶化時間が3分以上である軟質材を0.5質量部以上30質量部以下の範囲で配合する。
本発明の態様によれば、基材層の隠蔽性などを持たせるために基材層に顔料を配合しても、該顔料のブリードアウトを抑制して、基材層と印刷層の密着性を向上させることが可能となる。
なお、顔料は基材層の全体に存在する必要はなく、少なくとも印刷層側に存在していればよい。
本発明に基づく実施形態に係る化粧シート及び化粧板の構成を示す図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
本実施形態の化粧シート1は、無機顔料を配合したポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材層6の上に、印刷層5と、一層若しくは複数層の透明な樹脂層とがこの順に積層した化粧シート1である。樹脂層の少なくとも1層は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層であることが好ましい。また、基材層6には、基材層6を構成する樹脂100質量部に対し、70℃における半量結晶化時間が3分以上である軟質材が0.5質量部以上30質量部以下の範囲で配合されている。
本実施形態の化粧シート1の例は、図1に示すように、基材層6の一方の面(表面)の上に、印刷層5、透明樹脂層3、及び表面保護層2がこの順に積層している。符号4は接着剤層を示す。
また、基材層6の他方の面(裏面)に、隠蔽層7、プライマー層8がこの順に形成されている。なお、隠蔽層7は、基材層6と印刷層5との間に形成しても良いし、省略しても構わない。特に本実施形態では基材層6に無機顔料を配合するため、隠蔽層7は省略しても意匠上問題はない。配合する顔料を抑える場合には、必要に応じて隠蔽層7を設ける。
また上記構成の化粧シート1の層厚は、例えば、印刷作業性やコストなどを考慮して、表面保護層2は3〜20μm、透明樹脂層3は20〜200μm、接着剤層4は1〜20μm、印刷層5は3〜20μm、基材層6は20〜150μm、隠蔽層7は2〜20μm、プライマー層8は0.1〜20μmの範囲内とし、化粧シート1の総厚は49〜450μmの範囲内とする。
なお、図1においては、本実施形態の化粧シート1を木質基材などの基材Bに貼り付けて化粧板を構成する場合を例示している。
<基材層6>
本実施形態の基材層6は、原反層を構成し、樹脂の主成分がポリオレフィン系樹脂から構成される。主成分とは、例えば、基材層6を構成する樹脂を100質量部として、そのうちの80〜100質量部、好ましくは90〜100質量部であることを指す。
基材層6を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。特に、価格や加工適性の観点からポリエチレン、ポリプロピレンから少なくとも1つ選択して用いることが好ましい。また、基材層6の引っ張り弾性率向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることができる。
基材層6は、不燃性の観点から1軸延伸もしくは2軸延伸を実施して薄膜化していることが好ましく、その場合、基材層6の厚さは、20μm〜40μmの範囲に調整することで、不燃性と機械特性(強度)を両立することができる。
基材層6には、少なくとも無機顔料と軟質材が添加されている。
<無機顔料>
基材層6の樹脂に配合する顔料としては、無機顔料であれば何でもよく、天然無機顔料、合成無機顔料を選定できる。
天然無機顔料としては、例えば、土系顔料、焼成土、鉱物性顔料などが挙げられる。合成無機顔料としては、酸化物顔料、水酸化物顔料、硫化物顔料、珪酸塩顔料、燐酸塩顔料、炭酸塩顔料、金属粉顔料、炭素顔料などが挙げられる。また、天然無機顔料、合成無機顔料の中から、一種類もしくは二種類以上の混合物としても選定することが出来る。なお、有機顔料を選定することは好ましくない。なぜなら不燃性が損なわれるからである。
無機顔料の配合量は、基材層6の樹脂に対して体積分率にして5vol%以上50vol%以下が好ましい。5vol%未満では不燃性への効果が期待できないため、好ましくない。また、50vol%を超えると、基材層6が脆化するため好ましくない。
<軟質材>
基材層6の樹脂に配合する軟質材としては、結晶化の進行が遅く、加工時の流動性が高い樹脂が好ましい。具体的には、結晶化の進行は半量結晶化時間が長く(70℃ 3分以上)、流動性が高い(230℃におけるMFRが30〜2000)樹脂であることが好ましい。MRFのさらに好ましい範囲は、300〜2000である。
また、基材層6の均一性の観点から、軟質材は基材層6の樹脂成分との相溶性が高い材料が好ましい。このような観点から、例えば、基材層6をポリプロピレン樹脂から構成する場合、配合する軟質材もポリプロピレン樹脂であることが望ましい。軟質材としてのポリプロピレン樹脂は低結晶性ポリプロピレン樹脂が特に好ましい。
ここで、上記のように半量結晶化時間が比較的長い軟質材は、製膜工程における結晶化過程において、大部分が非晶部として基材層6中に存在すると考えられる。樹脂が受容できる添加剤量は非晶部の体積と共に増加するため、軟質材の配合による非晶部の増量によって、環境試験でのブリードアウトが抑制されることになる。
ここで、低結晶性ポリプロピレン樹脂は、低結晶性、軟質、低融点、溶剤への高い溶解性という性能の傾向がある。このような低結晶性ポリプロピレン樹脂を軟質材として採用することで、例えば基材層6の樹脂成分を構成する高結晶性ポリプロピレン樹脂に添加した場合に、高い相溶性、結晶化速度の遅化という性能を有しつつ、高結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶化度に影響がないか、結晶化度への影響が大幅に低くなる。すなわち、高い相溶性、非晶部の厚化(増量)という性能を発揮可能となる。
軟質材の配合量は、基材層6の樹脂100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下が好ましい。
<印刷層5>
印刷層5は、意匠性を付与するための絵柄模様を形成した層である。印刷層5は、既知の印刷手法を用いて設けることが出来る。基材層6が巻取りの状態で用意できる場合には、ロールツーロールの印刷装置で印刷層5の形成のための印刷を行うことができる。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。
絵柄模様は、床材や壁材などの使用箇所に応じた意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採用すればよく、木質系の絵柄であれば各種木目が好んで用いられることが多く、木目以外にもコルクを絵柄模様とすることもできる。例えば大理石などの石材の床をイメージしたものであれば大理石の石目などの絵柄模様として用いられることもある。また天然材料の絵柄模様以外にそれらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様などの人工的絵柄模様も用いることができる。
印刷インキについては、特に限定するものではないが、印刷方式に対応したインキを適宜選ぶことができる。とくに樹脂製の基材層6に対する密着性や印刷適性また化粧材としての耐候性等を考慮して選択することが好ましい。
印刷インキには、適宜、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、バインダーを添加する。顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。なお、バインダーは、水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、硬化方法についても1液タイプ、主剤と硬化剤とからなる2液タイプ、もしくは、紫外線や電子線などによって硬化するタイプなど特に限定するものではない。中でも最も一般的な方法は、2液タイプのもので、ウレタン系の主剤と、イソシアネートからなる硬化剤を用いる方法である。この他にも、各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すようにしてもよい。
<接着剤層4>
接着剤層4は、基材層6および印刷層5と透明樹脂層3の接着を強固にする目的で設けられる。この接着が強固であることによって、化粧シート1に対し、曲面や直角面に追随する曲げ加工性を付与することができる。接着剤層4は透明であることが好ましい。
接着剤層4は、その接着方法としては任意の方法が選定可能で、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート等による積層方法があり、接着剤はアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などから適宜選択できる。通常はその凝集力から2液硬化タイプのものとして、特にイソシアネートを用いたポリオールとの反応で得られるウレタン系の材料を用いることが望ましい。なお、接着剤層4は、透明樹脂層3と印刷層5との接着強度が十分に得られる場合には、省略してもよい。
<透明樹脂層3>
透明樹脂層3は、例えば透明樹脂シートとして製造して積層する。図1では、透明樹脂層3が一層の場合を図示しているが、複数層の透明樹脂層3が積層されて構成されていても良い。
本実施形態の透明樹脂層3は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として構成される。主成分とは、例えば、透明樹脂層3を構成する樹脂を100質量部として、そのうちの80〜100質量部、好ましくは90〜100質量部であることを指す。
透明樹脂層3を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
<表面保護層2>
化粧シート1の最表面には、表面の保護や艶の調整としての役割を果たす表面保護層2が設けられている。
表面保護層2の材料としては、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などから適宜選択して用いることができる。材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化方法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。
特に、表面保護層2の主成分としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。イソシアネートには、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などから適宜選択することができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制および密着性の向上を図ることができる。
<隠蔽層7>
隠蔽層7は、隠蔽性を保たせることを目的として、例えば、印刷層5と同様に印刷によって形成される。インキに含ませる顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を上げるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加することが多い。なお、隠蔽層7は、上述のように、基材層6が不透明で隠蔽性を有している場合には、省略することができる。
<プライマー層8>
プライマー層8は、基材Bとの密着性を向上させるために形成する。
プライマー層8は、基材Bが木質基材の場合には、例えば、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独ないし混合して接着組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。この場合、プライマー層8を構成する樹脂としては、ウレタン−アクリレート系樹脂が好ましい、すなわち、アクリル系樹脂とウレタン系樹脂との共重合体とイソシアネートとからなる樹脂で形成するのが特に好ましい。
<本実施形態の効果>
(1)本実施形態の化粧シート1は、ポリオレフィン系樹脂組成物からなる基材層6に対し、70℃における半量結晶化時間が3分以上である軟質材を配合する。
半量結晶化時間は、DSC(示差走査熱量測定)を用いた等温結晶化測定によって確認することができる。
上記性状の軟質材を配合した場合、基材層6の製造工程におけるポリオレフィン系樹脂の結晶化過程を上記の半量結晶化時間以下とすることによって、軟質材は、結晶化が進行せず非晶部として基材層6中に大部分が残留すると考えられる。
非晶部は顔料や顔料の分散剤といった添加物を含有することができるため、軟質材を配合した基材層6の環境試験を実施した時にブリードアウトを抑制することができると考えられる。
(2)基材層6を構成するポリオレフィン系樹脂に無機顔料を配合する。
軟質材を配合することで、顔料や顔料の分散剤といった添加剤のブリードアウトを抑制しながら、化粧シート1の基材層6を着色し、意匠性の高い化粧シート1用の基材層6を作製することができる。
(3)本実施形態の化粧シート1は、基材層6が、一軸延伸加工または二軸延伸加工されて構成されている。
基材層6が延伸されていることで、基材層6を構成するフィルムの弾性率を高め、耐傷性に優れた化粧シート1とすることができるとともに不燃性を持たせることが可能となる。
(4)本実施形態の化粧シート1は、基材層6の樹脂100質量部に対し、以下の特性を有する軟質材の配合量を、0.5〜30質量部とする。
・軟質材の樹脂がポリプロピレン
・メソペンタッド分率 30〜70%
・MFR 30〜2000(230℃)
なお、上記ペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量数13の炭素C(核種)を用いた13C−NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、透明樹脂層3を構成する樹脂組成物を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものである。そして、このペンタッド分率(mmmm分率)は、樹脂組成物中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定する。ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C−NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。そして、このようなペンタッド分率は、主に表面の耐傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタッド分率が高いほどシートの結晶化度が高くなるため、耐傷性が向上する。
軟質材の樹脂を(低結晶)ポリプロピレンとすることによって、ポリオレフィン系樹脂からなる基材層6の樹脂との相溶性を良好にすることができる。相溶性が良好であることで、延伸工程や曲げ加工における伸張過程でのボイド発生およびボイド発生に伴う白化を抑制できる。この様にボイド発生に伴う白化が抑制される理由は、樹脂内部に海島構造が発生しないためであると考えられる。
また、軟質材のポリプロピレンのメソペンタッド分率を30〜70%とすることによって、環境試験によって発生する顔料のブリードアウトを抑制しながら、ベタつきも抑制することができる。更に、メソペンタッド分率を30%以上とすることで、溶融後の固化が速やかに進み、樹脂組成物のベタつきを抑制することができる。特に樹脂組成物が化粧シート1表層にある場合、化粧シート1の製造ラインにおいて、シートとられといった不具合を抑制することができる。一方で、70%以下とすることで、製膜時に軟質材由来の非晶部が残留するため、環境試験に対するブリードアウトが十分に抑制されると考えられる。メソペンタッド分率は、上述の通り、13C−NMR測定によって測定することができる。
また、軟質材の質量部を0.5〜30質量部とすることで、ブリードアウトの抑制と同時に、適度な機械的強度の化粧シート1を得る。0.5質量部未満では、軟質材配合の効果が見られず、環境試験でのブリードアウト抑制効果がでない。また、30質量部を超えると、基材層6の機械的強度が低下してしまう。機械的強度は基材層6の引っ張り特性によって評価することができる。
軟質材の230℃におけるMFRは30〜2000が好ましい。
MFRを30以上とすることで、加工時の軟質材の流動性を良好にし、化粧シート1の樹脂層と軟質材との混合を十分に進行させることによってムラのない樹脂層ができる。また、MFRを2000以下とすることで軟質材の粘度が低くなり過ぎず、製膜後の化粧シート1の力学特性の低下を抑制できる。軟質材のMFRが30未満の場合、化粧シート1の樹脂と軟質材の混合が不十分となるため海島構造を生じ、化粧シート1の曲げによる白化によって意匠性が低下してしまう。また、MFRが2000を超える場合、製膜後の化粧シート1の力学特性が低下するため、耐傷性の低下といった問題が生じる。耐傷性の低下は代替特性である引っ張り弾性率にて評価を行う。
(5)基材層6の主成分を構成する樹脂がポリプロピレンである。
軟質材としてポリプロピレンを用いた場合、両者の相溶性が良好となることは自明である。相溶性が良好であることで、延伸工程や曲げ加工における伸張過程でのボイド発生およびボイド発生に伴う白化を抑制できる。この様にボイド発生に伴う白化が抑制される理由は、樹脂内部に海島構造が発生しないためであると考えられる。
(6)無機顔料が配合された基材層6の光透過度が、40%以下である。
上記のように軟質材を配合し、環境試験による添加剤のブリードアウトを抑制した。
更に、光透過度を40%以下とすることにより、基材層6上層へ印刷層5を形成した時の隠蔽性が十分となり、意匠性に優れた化粧シート1とすることができる。一方で、光透過度が40%を超える場合、基材層6の隠蔽性が不十分となるため、意匠性の高い化粧シート1をつくることができない。光透過度を40%以下とすることは、無機顔料の配合量を調整することで可能である。
なお、本発明の効果発現の作用機構は以上の推定機構のみに限定されるわけではない。
次に、本発明の実施例について説明する。
各サンプルの化粧シート1を、後述する作製方法にて、単層化粧シート若しくは複層化粧シートとして作製した。
この際、各サンプルにおいて、表1に示すように、基材層6及び軟質材を設定した。
Figure 2017170599
<単層化粧シートの作製方法>
基材層6に延伸を行う場合、基材層6を、押出法によって製膜して厚さ120μmとし、その製膜の際、基材層6の樹脂としてのポリオレフィン樹脂、および軟質材としてのポリオレフィン樹脂を配合した。続いて、基材層6を1軸延伸法によって4倍に延伸することで、基材層6の厚さを30μmとした。
一方、基材層6に延伸を行わない場合、基材層6を押出法によって製膜して厚さ30μmとし、その製膜の際、基材層6の樹脂としてのポリオレフィン樹脂、および軟質材としてのポリオレフィン樹脂を配合した。
また、基材層6の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量%添加したインキを用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して印刷層5を設け、また、基材層6の他方の面にプライマー層8を設けた。
そして、2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)を塗布厚6g/mにて塗布して表面保護層2を形成し、総厚40μmの化粧シート1を得た。
<透明樹脂層3を有する複層化粧シートの作製方法>
基本的な化粧シート1の作製方法は以下に示す通りである。
ペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶化ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944:BASF社製)を2000PPM添加した樹脂を、溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層3として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。
その得られた透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施し、透明樹脂層3表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
一方、基材層6を、押出法によって製膜して厚さ120μmとし、その製膜の際、基材層6の樹脂としてのポリオレフィン樹脂、および軟質材としてのポリオレフィン樹脂を配合した。続いて、基材層6を1軸延伸法によって4倍に延伸することで、基材層6の厚さを30μmとした。
その基材層6の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量%添加したインキを用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して印刷層5を設けた。また、基材層6の他方の面にプライマー層8を設けた。
しかる後、基材層6の一方の面側に、接着剤層4としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m)を介して透明樹脂層3をドライラミネート法にて貼り合わせた。
そして、透明樹脂層3の表面にエンボス模様を施した後、2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)を塗布厚6g/mにて塗布して表面保護層2を形成し、総厚120μmの化粧シート1を得た。
<性能評価>
各サンプルの化粧シート1に対して、性能評価を実施した。
[引っ張り弾性率および白化試験]
サンプルをテンシロン万能材料試験機によって、50mm/minで引っ張って弾性率を測定した。またその際、10mm引張した状態での白化を目視確認した。
弾性率の評価については、次の通りである。
◎:非常に良好(800MPa以上)
○:良好(500MPa以上800MPa未満)
×:不良(500MPa未満)
白化の評価については、次の通りである。
◎:非常に良好(白化なし)
○:良好(僅かな白化がある)
×:不良(白化がある)
[環境試験]
サンプルを、60℃の雰囲気下に3日間の保管後、静滴法による接触角測定試験(JIS R3257)によって評価した。
評価は接触角変化によって実施し、次の通りである。
◎:非常に良好(接触角変化が5度未満である)
○:良好(接触角変化が5度以上10度未満である)
×:不良(接触角変化が10度以上である)
[透明性試験]
透明性試験は意匠性を評価する試験であって、分光光度計によって透過率を測定して評価した。
[不燃性試験]
ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験を実施して、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号の規定を満足したか否かで判定した。
評価は次の通りである。
○:良好(規格内)
×:不良(規格外)
評価結果を表2に示す。
Figure 2017170599
表1、表2から分かるように、サンプル1〜13では、環境試験と透過率(意匠性)を同時に達成する化粧シート1を提供できたことが分かる。
ここで、サンプル1〜7は、次の条件A〜Dを全て満足する化粧シート1の例である。
・条件A:無機顔料を配合したポリオレフィン系樹脂を主成分とした基材層6の上に、印刷層5が形成され、基材層6を構成する樹脂100質量部に対し、70℃における半量結晶化時間が3分以上である軟質材が0.5質量部以上30質量部以下の範囲で配合されている。
・条件B:基材層6は、一軸延伸若しくは二軸延伸されている。
・条件C:軟質材は、メソペンタッド分率が30%以上60%以下の範囲である。
・条件D:軟質材は、230℃におけるMFR(melt flow rate)が30以上2000以下である。
一方、上記条件のうち、条件Bを満足しないサンプル8の場合であっても、環境試験と透過率を同時に達成する化粧シート1を提供できたことが分かる。また、条件B及び条件Cを満足しないサンプル9の場合であっても、環境試験と透過率を同時に達成する化粧シート1を提供できたことが分かる。また、条件Cの範囲外若しくは条件DのMFRの値が範囲外のサンプル10、11、12、13の場合であっても、環境試験と透過率を同時に達成する化粧シート1を提供できたことが分かる。
条件Aを満足しないサンプル14、15、16、17、18では、環境試験について不良となっている。なお、サンプル15については、さらに、白化試験と透過率についても不良となっている。また、サンプル17、18では、環境試験については不良となったが、透過率で良好となった。
1 化粧シート
2 表面保護層
3 透明樹脂層
3a エンボス模様
4 接着剤層
5 印刷層
6 基材層
7 隠蔽層
8 プライマー層
B 基材

Claims (12)

  1. 無機顔料を配合したポリオレフィン系樹脂を主成分とした基材層の上に、印刷層が形成され、
    上記基材層を構成する樹脂100質量部に対し、70℃における半量結晶化時間が3分以上である軟質材が0.5質量部以上30質量部以下の範囲で配合されていることを特徴とする化粧シート。
  2. 上記印刷層の上に、ポリオレフィン系樹脂からなる一層若しくは複数層の樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
  3. 上記基材層は、一軸延伸若しくは二軸延伸されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。
  4. 上記軟質材は、メソペンタッド分率が30%以上60%以下の範囲であり、230℃におけるMFR(melt flow rate)が30以上2000以下であるポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した化粧シート。
  5. 上記基材層のポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した化粧シート。
  6. 上記基材層は、光透過度が40%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した化粧シート。
  7. 無機顔料を配合したポリオレフィン系樹脂を主成分とした基材層の上に、印刷層を形成し、
    上記基材層を構成する樹脂100質量部に対し、70℃における半量結晶化時間が3分以上である軟質材を0.5質量部以上30質量部以下の範囲で配合することを特徴とする化粧シートの製造方法。
  8. 上記印刷層の上に、ポリオレフィン系樹脂からなる一層若しくは複数層の樹脂層を形成することを特徴とする請求項7に記載した化粧シートの製造方法。
  9. 上記基材層を、一軸延伸若しくは二軸延伸することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載した化粧シートの製造方法。
  10. 上記軟質材は、メソペンタッド分率が30%以上60%以下の範囲であり、230℃におけるMFR(melt flow rate)が30以上2000以下であるポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
  11. 上記基材層のポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
  12. 上記基材層は、光透過度が40%以下であることを特徴とする請求項7〜請求項11のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
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