JPWO2017170433A1 - Ni基超耐熱合金の製造方法 - Google Patents

Ni基超耐熱合金の製造方法 Download PDF

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Abstract

異常結晶粒成長を抑制し、ASTM結晶粒度番号で7番以上の微細結晶粒組織が得られるNi基超耐熱合金の製造方法を提供する。
質量%でAl:0.5〜1.0%、Cr:17〜21%、Fe:17〜19%、Nb4.5〜5.5%、Ti:0.8〜1.3%、W:3.0〜6.0%、B:0.001〜0.03%、C:0.001〜0.015%、Mo:1.0%以下、残部がNi及び不可避不純物からなることを特徴とするNi基超耐熱合金の製造方法において、前記組成を有する熱間加工用素材の全域で下記の関係を満足するように熱間加工を行う熱間加工工程を有するFe−Ni基超耐熱合金の製造方法。
0≧−32+S−0.64887×V−0.12809×exp{−14592/(273+T)+13.631}、ここで、Tは加熱温度(℃)、Sは相当歪、Vは相当歪速度(/sec)

Description

本発明は、Ni基超耐熱合金の製造方法に関する。
ガスタービンの高効率化には燃焼温度を高めることが有効である。産業用ガスタービンのディスクには、製造性に優れた耐熱鋼が用いられてきており、欧米の高効率機では、高温強度に優れたNi基超耐熱合金(Alloy718やAlloy706等)が使われるようになっている。なかでもAlloy718は高温強度に優れるが、鋳造時にマクロ偏析欠陥が発生しやすいため小型部材の製造に限定されている。また、Alloy706はAlloy718と比較して強度的には劣るものの大型品の製造性に優れるため中型・大型ガスタービンに適用されている。
このように一般的には、高強度Ni基合金は、高温強度と大型品の製造性とを両立させることは困難とされてきたが、例えば、特開2014−51698号公報(特許文献1)で提案されたNi基合金は、Alloy718と同等の高温強度とAlloy706と同等の大型品製造性を兼ね備えた合金として報告されている。
ガスタービンの大型回転部品には高い疲労強度が求められるため、結晶粒を一定以上に微細化する必要がある。そのため、通常、インゴットからビレットを作製した後、デルタ相(以下、δ相と記す)のピンニング効果を利用して920〜1000℃の温度範囲で熱間加工を行い微細な再結晶組織とし、次いで固溶化熱処理と時効処理、または直接時効処理が行われる。しかし、例えば、型打ち鍛造やリング圧延などにおいて低歪条件下で熱間加工を施すと、熱間加工中や熱間加工後の冷却中またはその後の固溶化処理中において、デルタ相のピンニングを乗り越えて急速に結晶粒が粗大化する異常結晶粒成長(abnormal-grain-growth:以下、AGGと記す)を引き起こしてしまう。
前述のAGGを防止する提案としては、例えば、Alloy718合金を対象とするものとして、WO2015/151808号パンフレット(特許文献2)がある。この提案ではAGGを防止する影響因子を特定し、熱間部品の全領域で、930〜1010℃のAlloy718合金素材を、[相当歪]≧0.139×[相当歪速度(/sec)]−0.30の関係を満足する熱間加工を施す事でAGGを回避できると報告している。
また、例えば、特開2001−123257号公報(特許文献3)では、AGGを防止する影響因子を特定し、部品の全領域で0.125以上の歪を加えることでAGGを回避できる発明として報告している。
特開2014−051698号公報 WO2015/151808号パンフレット 特開2001−123257号公報
疲労強度を重視する部品では、ASTM結晶粒度番号で7番以上の均一且つ非常に微細な結晶粒組織とする必要がある。前記特許文献2に記載の発明は、熱間鍛造工程で部品全域に対し、930〜1010℃のAlloy718合金素材を、[相当歪]≧0.139×[相当歪速度(/sec)]−0.30の関係を満足する熱間加工を施す事でAGGを回避できる点で優れる。しかしながらこの熱間加工条件は、合金組成毎によって変化するため、合金毎に相当歪と相当歪速度との関係を導き出す必要がある。更には特許文献1に記載の合金は、再結晶挙動が温度に敏感であるため、相当歪と相当歪速度との関係が930〜1010℃の温度範囲で異なるという問題があった。
また、前記特許文献3に記載の発明は、熱間鍛造工程で部品全域に対し、0.125以上の歪を付与することで、その後の固溶化処理でAGGを防止できる点で優れる。しかし、熱間加工においては型打ち鍛造やリング圧延など種々の歪速度で歪を付与され、低歪速度の条件において0.125程度の歪の付与では、未だAGGを発現する領域での熱間加工となる場合があり、微細結晶粒組織を得られない問題があった。この問題は、特に据え込み鍛造、型打ち鍛造やリング圧延に供される大型の鍛造品やリング圧延品を製造する際に問題となる。特に、大型インゴットの製造性に優れる特許文献1の合金に対してはAGGを防止する検討はなされていないのが現状である。
本発明の目的は、特に特許文献1に記載の合金に対し、AGGを抑制し、ASTM結晶粒度番号で7番以上の微細結晶粒組織が得られるNi基超耐熱合金の製造方法を提供することである。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明は、質量%でAl:0.5〜1.0%、Cr:17〜21%、Fe:17〜19%、Nb:4.5〜5.5%、Ti:0.8〜1.3%、W:3.0〜6.0%、B:0.001〜0.03%、C:0.001〜0.1%、Mo:1.0%以下、残部がNi及び不可避的不純物からなるNi基超耐熱合金の製造方法において、前記組成を有する熱間加工用素材の全域で下記の関係を満足するように熱間加工を行う熱間加工工程を有するNi基超耐熱合金の製造方法。
0≧−32+S−0.64887×V−0.12809×exp{−14592/(273+T)+13.631}、ここで、Tは加熱温度(℃)、Sは相当歪、Vは相当歪速度(/sec)
また、本発明は、前記熱間加工工程後にAGGの発現を抑制するための好ましい熱処理条件として、950〜1000℃の範囲で0.5〜10時間の固溶化処理を行う工程と、700〜750℃の範囲で2〜20時間保持した後、600〜650℃まで冷却する第一時効処理を行う工程と、前記第一時効処理に続いて、600〜650℃の範囲で2〜20時間の第二時効処理を行う工程とを含むNi基超耐熱合金の製造方法である。
本発明によれば、特に特許文献1に記載の合金に対し、Ni基超耐熱合金のAGGを抑制し、ASTM結晶粒度番号で7番以上の均一微細な結晶粒組織を得ることが可能である。これを用いてなるガスタービン部材等の疲労特性の信頼性を向上させることができる。
相当歪および加熱温度と、金属組織との関係を示す図である。 本発明と比較例の異常結晶粒成長の有無を示す金属組織写真である。 相当歪および相当歪速度と、金属組織との関係を示す図である。 本発明と比較例の異常結晶粒成長の有無を示す金属組織写真である。 小型圧縮試験片の側面模式図である。
先ず、本発明で規定する合金組成について説明する。組成範囲は全て質量%である。
<Al:0.5〜1.0%>
AlはNiAl等のガンマプライム相(以下、γ’相と記す)を形成する元素であり、γ’相析出強化型のNi基合金の強度を担う元素である。また、耐酸化性を向上させる効果も有している。不足の場合には時効によるγ’相の析出量が減少するため十分な高温強度が得られない。かかる観点からAlの下限は0.5%とする。過剰になると硬質で脆い有害相の出現を助長することや、γ’相の固溶温度を上昇させ熱間鍛造性を低下させることから、上限は1.0%とする。
<Cr:17〜21%>
Crは表面にCrからなる緻密な酸化被膜を形成して耐酸化性、高温耐食性を向上させる元素である。本発明で対象とする高温部材に利用するためには少なくとも17%を含有することが必要である。しかし21%を超えて含有すると、有害相であるσ相(シグマ相)を形成して材料の延性、破壊靭性を悪化させるため上限は21%とする。
<Fe:17〜19%>
FeはNiに比べて延性が高く、含有することによって熱間加工性が改善される。また、他の元素に比べて廉価であることから、材料の低コスト化にも効果がある。ただし、過剰に含有すると、析出強化相であるγ’相が不安定になり、高温強度が低下するため、Feの範囲は17〜19%とする。
<Nb:4.5〜5.5%>
NbはAl、Tiと同様にγ’相を析出させる元素として高温強度の改善に寄与するが、本発明では、γ’相と良く似た結晶構造を持つガンマダブルプライム相(NiNb)への寄与が主である。ガンマダブルプライム相(以下、γ''相と記す)はγ’相と同様に析出強化相として働き材料の高温強度を向上させる。この効果を発揮するには4.5%以上の含有が必要である。但し、含有量の増加と共に偏析特性が低下するため、Nbの範囲は4.5〜5.5%とする。
<Ti:0.8〜1.3%>
Tiはγ’相にNi(Al、Ti)の形で固溶し、高温強度に寄与する。その効果はわずかな含有でも認められるが、偏析特性の改善の観点から、少なくとも0.8%含有する必要がある。過剰になると、γ’相以外の金属間化合物を形成し、延性や高温加工性を損ない、さらにAlと同様にγ’相の固溶温度を上げて熱間鍛造性を悪化させてしまうことから、1.3%を上限とする。
<W:3.0〜6.0%>
Wは固溶強化によって母相を強化する。偏析特性の観点から見ると、含有量を増やすほど改善される傾向にあるため、少なくとも3.0%の含有が必要である。しかし、6.0%を超えると、硬質で脆い金属間化合物相の生成の助長や、高温鍛造性の悪化を招く。そのためWの範囲は3.0〜6.0%とする。
<B:0.001〜0.03%>
Bは微量の含有で粒界を強化し、クリープ強度を改善する効果を有する。しかし、過剰な含有は有害相の析出や融点の低下に寄る部分溶融の原因となることから、Bの範囲は0.001〜0.03%とする。
<C:0.001〜0.1%>
Cは母相に固溶して高温での引張強度を向上させるとともに、MC、M23などの炭化物を形成することで粒界強度を向上させる。これらの効果は0.001%程度から顕著になるが、過剰なCの含有は粗大な共晶炭化物の原因となり、靭性の低下を招くため0.1%を上限とする。
<Mo:1.0%以下(0%含む)>
Moが強度に及ぼす影響はWと同様であることから、必要に応じて含有する。Moは固溶強化によって母相を強化する効果があり、少量でも強度の改善が認められ、その効果は含有量とともに上昇する。しかし、含有に伴い、偏析特性を大幅に悪化させてしまうため、1.0%を上限に含有することができる。
残部はNi及び不可避的不純物であるが、以下に示す元素のうち、1種または2種以上含むことができる。以下にその濃度範囲を示す。
<Zr:0.05%以下>
Zrは結晶粒界に偏析し、粒界強度を高める効果があるため0.05%を上限に含有することができる。
<V:0.5%以下、Ta:0.5%以下>
V、Taはγ’相及びγ''相を安定化し、強度を向上させるためそれぞれ0.5%を上限に含有することができる。
<Re:0.5%以下>
ReはWやMoと同様、母相に固溶し固溶強化するとともに、耐食性を改善するのに有効な元素であるため0.5%を上限に含有することができる。しかしReは高価であり、比重が大きく、合金の比重を増大させる。そのため、好ましくは0.1%以下である。
次に本発明の最大の特徴である、熱間鍛造等の熱間加工工程について説明する。本発明の最大の特徴は、型打ち鍛造やリング圧延などの種々の歪速度に対する熱間加工条件を最適化し、更に、その後の冷却条件や熱処理条件の適正化により、異常結晶粒成長を防止することにある。
<熱間加工工程>
微細結晶粒組織を得るためには熱間加工前に熱間加工用素材を加熱する。この加熱により、熱間加工用素材の温度を930〜1000℃の範囲とし、熱間鍛造等の熱間加工中に再結晶を促進させる。なお、この加熱された熱間加工用素材の温度が加熱温度T(℃)である。熱間加工前加熱による熱間加工用素材の温度が930℃未満ではほとんど再結晶が発現しない。一方、熱間加工前加熱による熱間加工用素材の温度が1000℃を超えると熱間加工中の再結晶は促進されるが、生成する再結晶粒のサイズが大きくなるため微細粒を得るのが困難となる。そのため、熱間加工前加熱による熱間加工用素材の温度は930〜1000℃とする。好ましい加熱温度の下限は950℃であり、より好ましくは970℃である。また、好ましい加熱温度の上限は990℃である。
また、本発明では、熱間加工用素材の全域で下記の関係を満足するように熱間加工を行う。
0≧−32+S−0.64887×V−0.12809×exp{−14592/(273+T)+13.631}、ここで、Tは加熱温度(℃)、Sは相当歪、Vは相当歪速度(/sec)
前記関係式は、組織観察を行って、結晶粒度番号7以上となる相当歪、相当歪速度および加熱温度の関係を重回帰により算出したものである。高温クリープ強度の観点から、前記関係式の右辺の好ましい下限は、−20であり、零に近い方がより好ましい。
前記関係式の適用は、据え込み鍛造、型打ち鍛造やホットダイ鍛造、恒温鍛造を含む熱間鍛造等の熱間加工で想定される相当歪で5以下、相当歪速度で0.0001〜5.0とすることができる。相当歪の好ましい上限は4であり、より好ましくは3.5である。相当歪速度の好ましい下限は0.001であり、より好ましくは0.005である。相当歪速度の好ましい上限は1である。相当歪、相当歪速度は、垂直とせん断の6軸要素を単軸に換算したときの歪と歪速度を表している。
AGGは、熱間加工前の結晶粒度がASTM結晶粒度番号で7番以上のとき発現し、初期結晶粒が微細であるほどその感受性は高くなる。表2に示すように、加熱温度が低い程AGGが抑制され、熱間加工後の結晶粒度番号が7以上となるために必要となる歪量は小さくなる。これは、低温であるほど結晶粒成長が抑制されるためである。なお、熱間加工後にAGGが抑制される好ましいASTM結晶粒度番号は8以上である。
また、歪速度が低い程、AGGは発生し易くなり、熱間加工後の結晶粒度番号が7以上となるために必要となる歪量は大きくなる。低歪速度の条件下では、例えば、型打ち鍛造中に発生した動的再結晶に再度歪が蓄積されるため、粒界の蓄積エネルギーを駆動力として固溶化処理時に結晶粒界が移動することに起因する。
本発明の別の実施形態では、熱間加工の条件として、熱間加工前に930〜1000℃、好ましくは970〜990℃で加熱処理を施した熱間加工用素材の全域で、S≧0.180×V−0.122 (Sは相当歪、Vは相当歪速度(/sec))の関係を満足して行う。この関係式の適用は、据え込み鍛造、型打ち鍛造やホットダイ鍛造、恒温鍛造を含む熱間鍛造の他、リングミル等の熱間加工で想定される相当歪で5以下、相当歪速度0.0001〜10とすることができる。相当歪の好ましい上限は4であり、より好ましくは3.5である。相当歪速度の好ましい下限は0.001であり、より好ましくは0.005である。相当歪速度の好ましい上限は5であり、より好ましくは1である。相当歪、相当歪速度は、垂直とせん断の6軸要素を単軸に換算したときの歪と歪速度を表している。
AGGは、熱間加工前の結晶粒度がASTM結晶粒度番号で7番以上のとき発現し、初期結晶粒が微細であるほどその感受性は高くなる。図3に示すように、歪速度が遅いほどAGGが促進される範囲Bは大きくなる。これは、低歪速度の条件下では、例えば、型打ち鍛造中に発生した動的再結晶に再度歪が蓄積されるため、粒界の蓄積エネルギーを駆動力として固溶化処理時に結晶粒界が移動することに起因する。一方、領域Aは再結晶による結晶粒微細化が可能で、且つAGGも抑制される領域である。
そこで本発明では、領域Aで熱間加工が行える下記の関係式を満足するように熱間加工用素材の全域に適当な歪を加え、AGGをより確実に防止するために好ましい結晶粒度番号である8番以上に調整する。。
S≧0.180×V−0.122 (Sは相当歪、Vは相当歪速度(/sec))
なお、領域A、Bを示す関係式は、組織観察を行って、その結果からAGGが起こる相当歪と相当歪速度の関係を重回帰により算出したものである。
次に、上述した熱間加工工程後、固溶化処理及び時効処理を行う場合の好ましい熱処理条件について説明する。
<固溶化処理工程>
熱間加工工程で得られた微細再結晶組織を維持させるためには、固溶化処理時の加熱温度も重要となる。固溶化処理の加熱温度が950℃未満では、固溶化処理中にδ相が過度に析出するため、その後の時効処理で析出させるγ''相の量が減少し、全体的な強度低下を招く。一方、固溶化処理温度が1000℃を超えるとδ相のピンニング効果の低下に伴い、結晶粒が成長し引張や疲労強度が低下する。そのため、固溶化処理温度は950〜1000℃とする。好ましい固溶化処理温度の下限は960℃であり、好ましい固溶化処理温度の上限は990℃である。また、固溶化処理の保持時間は0.5〜10時間とする。0.5時間未満では、熱間加工終了後の冷却中に析出した化合物の固溶効果が低い。一方、10時間を超える処理は経済的に効率が悪い上、微細結晶粒の成長を招くおそれがある。好ましい固溶化処理の保持時間の下限は1時間であり、好ましい固溶化処理の保持時間の上限は4時間である。
<時効処理工程>
固溶化熱処理したNi基超耐熱合金を700〜750℃で2〜20時間保持した後、600〜650℃まで冷却する第一時効処理と、次いで600〜650℃で2〜20時間保持する第二時効処理を行う。時効処理の目的は、析出強化相のγ’相やγ’’相を微細に析出させて高温での高強度を得ることである。低温側の第二時効処理のみでは、析出強化相を析出させきるのに時間がかかりすぎるため、第一時効処理として、高温側で時効処理を行いγ’相やγ’’相の析出を促進させる。第一時効処理の温度が700℃未満では析出の促進効果が不足するため、析出強化の効果が低減してしまう。一方、第一時効処理の温度が750℃を超えると、析出がより促進されるものの析出粒子のサイズが増大し析出強化の効果が低下するばかりでなく、γ’’相が析出強化能のないδ相に変態する。従って、第一時効処理の温度は700〜750℃の温度範囲とする。好ましい第一時効処理の温度の下限は710℃であり、好ましい第一時効処理の温度の上限は730℃である。また、第一時効処理の時間が2時間未満であると、γ’相やγ’’相の析出が不十分となる。一方、第一時効処理の時間が20時間を超えるとγ’相やγ’’相の析出の効果が飽和するため経済的ではない。従って、第一時効処理の保持時間は2〜20時間の範囲とする。好ましい第一時効処理の保持時間の下限は4時間であり、好ましい第一時効処理の保持時間の上限は15時間である。
前述の第一時効処理後に第二時効処理を行う。第二時効処理の温度が600℃未満ではγ’相やγ’’相の析出に時間がかかりすぎるため効率的ではない。また、第二時効処理の温度が650℃を超えると第一時効処理の温度との温度差が小さいため、析出の駆動力が不足し析出量が低減する。従って、第二時効処理の温度は600〜650℃の温度範囲とする。好ましい第二時効処理の温度の下限は610であり、好ましい第二時効処理の温度の上限は630℃である。第二時効処理の保持時間については、前述の第一時効処理と同様の理由で2〜20時間とする。好ましい第二時効処理の保持時間の下限は4時間であり、好ましい第二時効処理の保持時間の上限は15時間である。
表1に示す特許文献1で示される組成を有するNi基超耐熱合金に相当する化学組成の大型インゴットから製造した約2トンのビレットを950〜1000℃の温度範囲で据え込み鍛造を行い、次いで、970℃で2.5時間保持した後空冷し、図5に示す小型圧縮試験片を作製して熱間加工試験を行った。この小型圧縮試験片を供試材として、熱間加工試験を行いAGGの発生に及ぼす因子を調査した。供試材の結晶粒度は、ASTM−E112で規定される測定で平均結晶粒度番号10番であった。
Figure 2017170433
AGGを引き起こす因子について、歪量、歪速度および温度の影響を調査した。
調査の第1として、加熱温度927℃、954℃、982℃、圧下率30%、圧縮前試験片高さに対する圧縮速度で算出される公称歪速度0.5/秒、0.05/秒、0.005/秒、圧縮後の冷却速度540℃/分の条件で圧縮試験を行った。その後、加熱温度と同じ温度で1時間の固溶化処理を行い、縦断面を光学顕微鏡で組織観察し、比較法により結晶粒度番号を測定した。組織観察した位置での相当歪および相当歪速度は、市販の鍛造解析ソフトウェアDEFORMを使用して加熱温度、圧縮率、公称歪速度、圧縮後の冷却速度を入力して算出した。固溶化処理後の結晶粒度番号が7未満のときAGGは抑制されていないと判定した。
表2にAGGの判定結果を示し、図2に一例として、本発明No.7の金属組織写真と比較例No.26の金属組織写真を示す。表2に示す結果から、結晶粒度番号7以上となる相当歪、相当歪速度及び加熱温度の関係を重回帰により算出して下記の関係式を得た。
0≧−32+S−0.64887×V−0.12809×exp{−14592/(273+T)+13.631}、ここで、Tは加熱温度(℃)、Sは相当歪、Vは相当歪速度(/sec)
また、図1は、目標とする熱間加工後の結晶粒度番号7以上に対する相当歪および相当歪量の適正範囲を示している。この図1からも本発明で規定する製造方法を適用するとAGGが防止できていることがわかる。尚、実製品を製造する場合は、上記した市販の鍛造解析ソフトウェアDEFORMを使用して、加熱温度、圧縮率、公称歪速度、圧縮後の冷却速度を入力して算出される結果から、上記の関係式を全域において、満足するような熱間加工条件を求めることにより、製造条件を決定することができる。
なお、AGGを抑制する好ましい結晶粒度番号8以上を目標として、一般的な型打ち鍛造速度を想定した公称歪速度0.05/秒で圧縮実験を行った。表2で示す実験データ中のNo.1〜4、6〜10、12、13、23、25、26、29及び30について、AGG発生に対する歪量、歪速度および温度の影響を調査した結果についても示す。試験片の加熱温度927℃、954℃、982℃、圧下率30%、圧縮後の冷却速度540℃/分の条件で圧縮試験を行った。その後、加熱温度と同じ温度で1時間の固溶化処理を行い、縦断面を光学顕微鏡で組織観察し、比較法により結晶粒度番号を測定した。組織観察した位置での相当歪及び層当歪速度は、市販の鍛造解析ソフトウェアDEFORMを使用して加熱温度、圧縮率、公称歪速度、圧縮後の冷却速度を入力して算出した。固溶化処理後の結晶粒度番号が8未満のときAGGは抑制されていないと判定した。
上記試験片について、結晶粒度番号8以上となる相当歪、相当歪速度および加熱温度の関係を重回帰により算出して下記の関係式を得ることができる。
0≦78.212+2.4612×10−5×(T+273)−8.2603×10−2×(T+273)−11.914×(1−V)+13.0682×(1−V)+4.8646(1−R)−22.135(1−R)、ここで、Tは加熱温度(℃)、Sは相当歪、Vは相当歪速度(/sec)
調査の第2として、AGGを引き起こす因子について、歪と歪速度の影響を調査した。
加熱温度982℃、圧下率30%、圧縮前試験片高さに対する圧縮速度で算出される公称歪速度0.005〜0.5/秒、圧縮後の冷却速度540℃/分の条件で圧縮試験を行った。その後、982℃で1時間の固溶化処理を行い、縦断面を光学顕微鏡で組織観察し、任意の位置で撮影した。撮影した位置での結晶粒度番号は、結晶粒界をマーキングして画像解析を行い、円相当径を求めた後に結晶粒度番号に変換した。組織観察した位置での相当歪および相当歪速度は、市販の鍛造解析ソフトウェアDEFORMを使用して熱間加工試験を再現して算出した。固溶化処理後の結晶粒度番号が7未満のときAGGは抑制されていないと判定した。表2にAGGの判定結果を示し、図4に一例として、本発明No.17の金属組織写真と比較例No.27の金属組織写真を示す。
表2に示す結果から、図3の相当歪と相当歪速度との関係が及ぼす金属組織の関係を導き出した。領域AはAGGが抑制された領域であり、領域BはAGGが抑制されなかった領域である。図3に示すように、相当歪速度が小さいほどAGGが起こる相当歪の範囲は大きいことがわかる。これらの結果から、熱間加工後にAGGが抑制される結晶粒度番号を7以上、AGGをより確実に抑制する好ましい結晶粒度番号を8以上とした。、そこで、結晶粒度番号が8以上となる相当歪と相当歪速度の関係を重回帰により算出して下記の関係式を得た。下記関係式を満たすのが図3の領域Aであり、加工素材の全域でこの領域Aを満たすように熱間加工を行うとAGGが抑制できることを確認した。
S≧0.180×V−0.122 (Sは相当歪、Vは相当歪速度(/sec))
また、図4からも本発明で規定する製造方法を適用するとAGGが防止できていることがわかる。
以上説明する通り、本発明の製造方法を適用すると、低歪条件下での熱間加工を行ったときであっても、Ni基超耐熱合金のAGGを抑制し、ASTM結晶粒度番号で7番以上、好ましくは8番以上の微細結晶粒組織が得られることがわかる。
Figure 2017170433
上記の表1に示す組成のNi基超耐熱合金を用いて、表2に示すNo.22の条件の据え込み鍛造を行って、1300mm径×200mm厚の熱間加工材とした。その後、968℃で2.5時間の固溶化処理を行い、第一時効処理として718℃で8時間保持した後、621℃まで冷却し、次いで、第二時効処理として、621℃で8時間の時効処理を行った。
前記の時効処理材から結晶粒度番号測定試験片と、AGG確認用試験片を採取し、結晶粒度とAGG発生の有無を確認したところ、ASTM結晶粒度番号は9.5、AGGの発生は確認されなかった。
以上説明する通り、本発明で規定する熱間加工工程、固溶化処理工程及び時効処理工程を経たNi基超耐熱合金では、低歪条件下での熱間加工を行ったときであっても、Ni基超耐熱合金のAGGを抑制し、ASTM結晶粒度番号で7番以上の微細結晶粒組織が得られることがわかる。このことから、ジェットエンジンやガスタービン部材等の疲労特性の信頼性を向上させることができる。

Claims (2)

  1. 質量%でAl:0.5〜1.0%、Cr:17〜21%、Fe:17〜19%、Nb:4.5〜5.5%、Ti:0.8〜1.3%、W:3.0〜6.0%、B:0.001〜0.03%、C:0.001〜0.1%、Mo:1.0%以下、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有するNi基超耐熱合金の製造方法において、前記組成を有する熱間加工用素材を930〜1000℃の温度範囲で加熱した後、前記組成を有する熱間加工用素材の全域で下記の関係を満足するように熱間加工を行う熱間加工工程を有するNi基超耐熱合金の製造方法。
    0≧−32+S−0.64887×V−0.12809×exp{−14592/(273+T)+13.631}
    ここで、Tは加熱温度(℃)、Sは相当歪、Vは相当歪速度(/sec)
  2. 前記熱間加工工程の後、950〜1000℃の範囲で0.5〜10時間の固溶化処理を行う工程と、700〜750℃の範囲で2〜20時間保持した後、600〜650℃まで冷却する第一時効処理を行う工程と、前記第一時効処理に続いて、600〜650℃の範囲で2〜20時間の第二時効処理を行う工程とを含む請求項1に記載のNi基超耐熱合金の製造方法。

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