本開示の一側面において、飲料製品が提供される。本開示に係る飲料製品は、経口補水液製品に最も適しているが、スポーツドリンク、炭酸飲料等、あらゆる飲料製品であり得る。本実施形態の飲料製品中の飲料は、溶媒としての水をベースとする水溶液であり、弱酸およびその塩を含有することによって、酸性領域において緩衝されている。弱酸およびその塩の組合せは、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムであり得る。本開示において、これらの成分を「緩衝成分」ということもある。本実施形態の飲料製品中の飲料は、pHが4.0未満であり、好ましくはpH3.0〜3.8、より好ましくはpH3.0〜3.5、さらに好ましくはpH3.2〜3.5であり、例えばpH3.2〜3.25である。本開示で言及されるpHは、1atm、25℃において測定されるpHである。
飲料の製造については、食品衛生法において、飲料のpHに応じた殺菌基準が規定されている。すなわち、pH4.0未満の酸性飲料には65℃で10分間またはそれと同等以上の効力を有する殺菌方法を使用し、pH4.0以上〜4.6未満の酸性飲料には85℃で30分間またはそれと同等以上の効力を有する殺菌方法を使用すべき旨が記載されている。また、pH4.0未満の飲料の方が、熱殺菌の有効性がより高いことが経験的に観察されている。従って、pH4.0以上の製品では、pH4.0未満の製品と比較して、加熱条件を厳しくすべきであることから、加熱処理のコストが増え、また素材本来の風味が損なわれる可能性がより高くなる。pH4.0未満の飲料の殺菌では、pH4.0以上の飲料の殺菌と比べて、殺菌処理に関する燃料費が約1/4に抑えられると見積られる。本実施形態の飲料製品は、pHが4.0未満であるため、穏やかな条件の加熱殺菌で足り、殺菌処理のコストを抑えることができ、また殺菌による風味や外観の変化を最小限にとどめることができる。
上述した緩衝成分に依存する緩衝作用により、本実施形態の飲料製品中の飲料のpHは安定している。一例として、本実施形態の飲料製品中の飲料1Lあたり、1.05g/100mLのNaOH水溶液を10.0mLまたは18.0mL加えた場合に、4.0未満、3.8以下、3.6以下、3.5以下、または3.4以下のpHが維持される。別の例では、本実施形態の飲料製品中の飲料1Lあたり、1.05g/100mLのNaOH水溶液を43.0mL加えた場合に、4.0未満、3.8以下、または3.6以下のpHが維持される。従来、飲料製品の製造においては、成分の混合比のわずかな差異によってpHが変動し、ひいては品質や殺菌効果が変動し、欠陥製品の発生の可能性が看過できなかった。本実施形態の飲料製品は4.0未満のpHにおいて安定して製造することができるため、品質安定性および安全性の面で優れており、長期保存にも耐えることができる。
本実施形態の飲料製品は、好ましくは、飲料を容器中に密封して含むものである。容器は、ボトル(例えばポリエチレンテレフタラート(ペット)ボトルのようなプラスチックボトル、およびガラス瓶、特にスクリュートップボトルおよび栓付きボトル)、缶(例えばアルミニウム缶およびスチール缶、特にプルタブ缶、ステイオンタブ缶、およびフルオープンエンド缶)、またはパウチ(例えばプラスチック、金属、またはそれらのラミネートから形成されたパウチ)であり得るが、これらに限定されない。容器は、キャップ、蓋、栓等を含み得る。すなわち、本開示において、キャップ、蓋、栓等は、容器の一部分であると解される。容器には、好ましくは、本飲料製品の賞味期限(shelf life)が表示されており、その賞味期限は、密封された日(すなわち製造日)から少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、または少なくとも24ヶ月であり得る。賞味期限は様々な態様で表現され得る。例えば、容器に飲料製品の有効期限日(expiration date)が表示されており、その有効期限日が飲料製品の製造日から12ヶ月後の日付である場合には、その容器は、12ヶ月という飲料製品の賞味期限を表示しているものと解される。賞味期限の「表示」も、印刷、貼り付け、エンボス、刻み込み等、様々な態様で実現され得る。
本実施形態の飲料製品中の飲料は、上記緩衝成分に加えて、ブドウ糖および塩化ナトリウムを少なくとも含むことが好ましい。塩化ナトリウムは生理学的に重要な電解質を提供する。ブドウ糖は細胞による水およびナトリウムの取り込みを促進させる。本飲料製品中の飲料における糖の含有量は好ましくは27g/L以下であり、より好ましくは25g/L以下であり、さらに好ましくは20g/L以下である。本飲料製品中の飲料におけるブドウ糖の含有量は好ましくは12〜27g/L、より好ましくは13〜25g/L、さらに好ましくは15〜20g/Lである。一例では、本飲料製品中の飲料はブドウ糖以外の糖を含まない。本開示において糖という用語は単糖類または二糖類を意味し、糖アルコールは含まない。
本実施形態の飲料製品中の飲料は、好ましくはタンパク質の含有量が0〜10mg/Lであり、より好ましくはタンパク質を実質的に含まない、すなわちタンパク質の含有量が0mg/Lである。本実施形態の飲料製品中の飲料は、好ましくは脂質の含有量が0〜10mg/Lであり、より好ましくは脂質を実質的に含まない、すなわち脂質の含有量が0mg/Lである。本実施形態の飲料製品中の飲料のカロリーは、好ましくは、1Lあたり200kcal以下、より好ましくは150kcal以下、より好ましくは120kcal以下、さらに好ましくは100kcal以下である。好ましくは、本飲料製品中の飲料におけるナトリウム含有量は0.8g/L以上であり、例えば0.8〜1.2g/Lである。好ましくは、本飲料製品中の飲料は2〜3g/Lの塩化ナトリウムを含む。
本飲料製品中の飲料は、好ましくは、7.5〜15g/Lのクエン酸(または酒石酸もしくはリンゴ酸)を含む。クエン酸(または酒石酸もしくはリンゴ酸)の含有量は好ましくは14g/L以下、より好ましくは13g/L以下、さらに好ましくは12g/L以下、最も好ましくは11.9g/L以下である。本飲料製品中の飲料は、好ましくは、2.5〜8.0g/Lのクエン酸3ナトリウム(または酒石酸2ナトリウムもしくはリンゴ酸2ナトリウム)を含む。クエン酸3ナトリウム(または酒石酸2ナトリウムもしくはリンゴ酸2ナトリウム)の含有量は好ましくは7.0g/L以下、より好ましくは6.0g/L以下、さらに好ましくは5.0g/L以下、最も好ましくは4.4g/L以下である。これらの酸と、対応する塩との合計濃度は、好ましくは80mM以下、さらに好ましくは79mM以下である。重要なことに、本実施形態において、これら緩衝成分は、緩衝剤としてだけではなく酸味料としても作用する。一般に、塩分が多く糖分が少ない飲料製品(特に、経口補水液製品)は、飲みづらい味であると考えられている。しかしながら、本実施形態の飲料製品は、ここに記述される組成に基づき、塩辛さと酸っぱさが相殺され、非常に飲みやすくすっきりした味を提供できることが見出された。
後述するように、溶媒として使用される水を、電解酸性水としてもよい。この電解酸性水としては、クエン酸およびクエン酸3ナトリウムを溶解した水を電気分解して得られる電解酸性水が特に好ましい。これにより、最終製品において、優れたpH安定性と共にさらに飲みやすい味が実現され得る。
本実施形態の飲料製品中の飲料は、リンの含有量が0〜5mg/Lである。リンの含有量は好ましくは0〜3mg/Lであり、より好ましくは0〜1mg/Lであり、さらに好ましくは0〜0.5mg/Lである。本飲料は、リンを実質的に含まない、すなわちリンの含有量が0mg/Lであることが最も好ましい。
現在市販されている経口補水液製品その他の飲料製品は、一般に、リン酸その他のリン酸化合物を含んでいる場合が多い。リン酸およびリン酸化合物は、食品衛生法により飲料における使用が認められており、pH調整や酸味添加等の作用を提供し得る。しかしながら、リン酸は体内のカルシウムと直接結合しやすく、特に身体でミネラル成分の摂取が不足している時には、骨の構成カルシウムと結合し、カルシウムの体外排泄を招く。とりわけ高齢者においてはその傾向が明らかである。リン酸化合物も、飲用された際に胃酸によりリン酸に変換されるため同様の結果をもたらす。リンそのものも身体にとって必須成分ではあるが、通常の食品に多岐にわたり比較的多く含まれているため、積極的に摂取を心がける必要はない。
本実施形態の飲料製品は、好ましくは、リンの使用を抑え、あるいは、リンの使用を完全に回避する。クエン酸、酒石酸、およびリンゴ酸は、柑橘類およびワインをはじめとする多くの自然食品に含まれる。特にクエン酸は、体内でクエン酸サイクルにおいて生体の新陳代謝に深くかかわっている有用成分である。クエン酸は、体内で消費され、リンのようにカルシウム等ミネラル分と結合して体外にミネラル分を排泄させる恐れもなく、身体にとって全く有用な成分といえる。
本実施形態の飲料製品中の飲料は、好ましくはオスモル濃度が200〜310mOsm/Lであり、より好ましくは220〜300mOsm/Lであり、さらに好ましくは240〜280mOsm/Lである。オスモル濃度は浸透圧に関係する。上記オスモル濃度の範囲は、人体の血漿浸透圧に相当する310mOsm/Lと同等あるいはそれよりやや低いものである。これにより、腸管による水および電解質の吸収が促進される。
本実施形態の飲料製品中の飲料は、好ましくは、炭酸カリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、および乳酸カリウムのうちの1つ以上をさらに含む。一例では、本飲料製品中の飲料は、炭酸カリウムおよび塩化カリウムを含む。一例では、本飲料製品中の飲料は、炭酸カリウム、塩化カリウム、および硫酸マグネシウムを含む。一例では、本飲料製品中の飲料は、乳酸カリウムおよび硫酸マグネシウムを含む。
本飲料製品中の飲料は、好ましくは、調味料(flavor enhancer)を含む。調味料の例としては、グルタミン酸ナトリウムを含むグルタミン酸塩、グルタミン酸、グアニル酸およびその塩、ならびにイノシン酸およびその塩が挙げられるが、これらに限定されない。本飲料製品中の飲料は、好ましくは、甘味料を含む。甘味料の例としては、スクラロース、還元パラチノース、キシリトール、アセスルファムK、マルチトール、アスパルテーム、カンゾウ、およびステビアが挙げられるが、これらに限定されない。本飲料製品中の飲料は、好ましくは、香料を含む。香料は、飲食品における使用が認められるあらゆる香料であり得る。本実施形態の飲料製品中の飲料は、調味料、甘味料、および香料を含み得、例えばグルタミン酸ナトリウム、スクラロース、および香料を含み得る。
好ましい一例において、飲料製品中の飲料は、クエン酸(または酒石酸もしくはリンゴ酸)、クエン酸3ナトリウム(または酒石酸2ナトリウムもしくはリンゴ酸2ナトリウム)、ブドウ糖、塩化ナトリウム(食塩)、および硫酸マグネシウムを含む。別の好ましい一例において、飲料製品中の飲料は、クエン酸(または酒石酸もしくはリンゴ酸)、クエン酸3ナトリウム(または酒石酸2ナトリウムもしくはリンゴ酸2ナトリウム)、ブドウ糖、塩化ナトリウム(食塩)、炭酸カリウム、塩化カリウム、および硫酸マグネシウムを含む。別の好ましい一例において、飲料製品中の飲料は、クエン酸(または酒石酸もしくはリンゴ酸)、クエン酸3ナトリウム(または酒石酸2ナトリウムもしくはリンゴ酸2ナトリウム)、ブドウ糖、塩化ナトリウム(食塩)、乳酸カリウム、グルタミン、および硫酸マグネシウムを含む。さらに別の好ましい一例において、飲料製品中の飲料は、上記の成分に加えて、スクラロースおよび香料、または、グルタミン酸ナトリウム、スクラロース、および香料を含む。
本飲料製品中の飲料は、好ましくは、40〜80mMのクエン酸(または酒石酸もしくはリンゴ酸)および10〜30mMのクエン酸3ナトリウム(または酒石酸2ナトリウムもしくはリンゴ酸2ナトリウム)を含む。あるいは、本飲料は、合計濃度80mM以下、より好ましくは合計濃度79mM以下の、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムを含む。本飲料は、好ましくは、70〜111mMのブドウ糖を含む。本飲料は、好ましくは、35〜50mMの塩化ナトリウムを含む。ブドウ糖のモル濃度が塩化ナトリウムのモル濃度の2倍以上であることが好ましい。一例において、本飲料は、4〜10mMの炭酸カリウム、および3〜9mMの塩化カリウムを含む。一例において、本飲料は、0.5〜2mMの硫酸マグネシウムを含む。これらの飲料は、0.5g/L以下の調味料、例えばグルタミン酸ナトリウムを含み得る。これらの飲料は、0.5g/L以下の甘味料、例えばスクラロースを含み得る。これらの飲料は、0.05g/L以下の香料を含み得る。
具体的な一例において、本飲料製品中の飲料は、50〜90mEq/Lのナトリウム、15〜25mEq/Lのカリウム、 50〜80mEq/Lの塩素、および、少なくともナトリウムと同モル濃度であるが111mmol/Lを超えない濃度のブドウ糖を含み、オスモル濃度が200〜310mmol/Lである。別の具体的な一例において、本飲料製品中の飲料は、11.9g/Lのクエン酸、4.38g/Lのクエン酸3ナトリウム、18g/Lのブドウ糖、2.57g/Lの塩化ナトリウム(食塩)、0.97g/Lの炭酸カリウム、0.44g/Lの塩化カリウム、0.12g/Lの硫酸マグネシウム、0.18g/Lのグルタミン酸ナトリウム、0.17g/Lのスクラロース、および0.01g/Lの香料を含む。
本実施形態の飲料製品は、上述した各成分を水に溶解することにより製造することができる。すなわち、一実施形態の飲料製品の製造方法は、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムから選択される緩衝成分の組合せ、ならびに、ブドウ糖および塩化ナトリウムを水に溶解して水溶液を得ること、およびその水溶液を容器中に密封することを含み、ここで、緩衝成分の添加量は、最終水溶液のpHが4.0未満、3.0〜3.8、3.0〜3.5、3.2〜3.5、または3.2〜3.25において緩衝されるように調節される。水溶液を得る工程、または水溶液を容器中に密封する工程には、飲料の滅菌処理が含まれ得る。上記酸の濃度は例えば50〜70mMであり得、そのナトリウム塩の濃度は例えば15〜25mMであり得る。上記酸とその塩の合計濃度は好ましくは80mM以下、より好ましくは79mM以下である。製品が十分に緩衝されているかどうかは、上述したように1.05g/100mLのNaOH水溶液を加えてpH変動の程度を見ることによって確認できる。
一例において、本実施形態の飲料製品は、上記(a)、(b)、または(c)成分を水に溶解して上記pH範囲内において緩衝された原液を作製し、そこに他の成分をさらに溶解して水溶液を得て、その水溶液を容器中に密封することにより製造され得る。各成分の水和物が利用可能な場合には水和物を溶解に使用してもよい。本開示において、水のような溶媒に成分を溶解または添加することは、その成分を直接その溶媒に溶解または添加することだけでなく、その成分の溶液をその溶媒と組み合わせることも包含する。
一側面において、本開示は、補水液の製造に際しリン成分を排除しクエン酸およびクエン酸3ナトリウムを用いてpH緩衝液pH3.2〜3.5の原液を作成し補水液を製造する方法を提供する。別の側面において、本開示は、補水液の製造に際しリン成分を排除しクエン酸およびクエン酸3ナトリウムを用いてpH緩衝液pH3.2の原液を作成する容量制御方式自動混合装置を提供する。
本発明者はさらに、酸性飲料製品を工業的規模で効率的かつ安定的に製造することに適した製造方法および製造装置を開発した。この製造方法および製造装置によれば、確実にpHが4.0未満となる飲料製品を一定の濃度およびpHで効率よく製造することができる。
一側面において、電解質を含んだ水を電気分解して電解酸性水を得る工程と、前記電解酸性水に、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムから選択される緩衝成分の組合せを少なくとも加えて、飲料を得る工程と、前記飲料を容器中に密封する工程とを含み、前記飲料はpHが4.0未満である、飲料製品の製造方法が提供される。 好ましくは、前記飲料を得る工程は、前記電解酸性水にブドウ糖および塩化ナトリウムを加えることをさらに含む。
より具体的な一側面において、電解質を含んだ水を電気分解して酸性水を得る工程と、前記酸性水を、電気分解してない水と混合して、所定値以下のpHを有するpH調整水を得る工程と、前記pH調整水に、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムから選択される緩衝成分の組合せを少なくとも加えて、飲料を得る工程と、前記飲料を容器中に密封する工程とを含み、前記飲料はpHが4.0未満である、飲料製品の製造方法が提供される。好ましくは、前記飲料を得る工程は、前記pH調整水にブドウ糖および塩化ナトリウムを加えることをさらに含む。
飲料を得る工程、または飲料を容器中に密封する工程には、飲料の滅菌処理が含まれ得る。別の側面において、これらの製造方法により製造された飲料製品が提供される。
上記における電解質は、水に添加され電気分解を促進するものである。この電解質は、(a)クエン酸、(b)酒石酸、もしくは(c)リンゴ酸、または、(a)クエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸2ナトリウム、もしくは(c)リンゴ酸2ナトリウム、または、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、もしくは(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムを含み得る。(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムを電気分解の際の電解質として供給することが好ましく、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウムを電気分解の際の電解質として供給することが特に好ましい。この段階で加えられる酸とその塩の量の比率は、最終飲料製品に含まれるその酸とその塩の量の比率と同じであり得る。本開示において電解質および/または緩衝成分として使用されるナトリウム塩をカリウム塩に置き換えることも可能となり得る。電気分解の際に水に添加される(a)、(b)、または(c)成分の量は、最終的な飲料製品中に含まれるこれらの成分の量(重量またはモル)の1%以下、5%以下、10%以下、30%以下、50%以下、70%以下、90%以下、95%以下、または99%以下を提供する量であり得る。例えば、最終的な飲料製品中のクエン酸濃度が60mMである場合に、その約90%が電気分解の前に添加されたクエン酸に由来し、残りの約10%が電気分解の後に添加されたクエン酸に由来し得る。
水は、地下水、井戸水、湧水、水道水、蒸留水、イオン交換水等であり得る。フィルター濾過、加熱等で滅菌された水が好ましい。当業者に知られているように、陽極、陰極、および隔膜を有する電解装置により電気分解を行って、酸性水(すなわち、電解酸性水)を得ることができる。得られた酸性水が未電気分解水と混合される場合は、その未電気分解水は、電気分解のために使用した水と同じものであってもよいし、別の供給源からのものであってもよい。
電気分解の各パラメータ(例えば、電解質の量、電流強度、電解時間)および未電気分解水との混合比は、当業者が通常の知識に基づいて適宜調節することができる。そのようにして得られる電解酸性水あるいはpH調整水のpHは当業者が適宜決定することができ、例えば4.0未満であり得る。
電気分解およびその産物である電解酸性水を利用することにより、特有のイオン構成を有する高酸性度の水を、制御可能な条件下で、効率よく得ることができる。特定の理論に拘束されることは望まないが、電解酸性水を使用することにより、リン(あるいはリン酸)の不存在下かつ比較的低濃度のクエン酸(または酒石酸もしくはリンゴ酸)およびその塩の存在下で、より飲みやすい味および安定した低いpHが達成されることが見出された。一般に電解酸性水は電解産物としての酸素(O2)を含み得、そして分子酸素は様々な機能性を提供する可能性を有する。従って、電解酸性水を使用するという事実により消費者にとっての魅力が高まり得る。電解酸性水の酸素濃度は、例えば25℃において8ppm以上、10ppm以上、12ppm以上、15ppm以上、20ppm以上、30ppm以上、または50ppm以上であり得る(重量ppm)。本実施形態の電解酸性水に酸素以外の物質が生成し溶解している可能性を排除するものではない。
最終的な飲料製品における緩衝成分、すなわち(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムの量および比は、意図されるpHおよび緩衝強度に応じて当業者が調節することができ、例えば上述した量であり得る。なお、本開示において、(a)、(b)、および(c)の記号は、1つの工程または要素で使用される成分の種類ともう1つの工程または要素で使用される成分の種類とを対応させることを意味する。すなわち、本例では、(a)の電解質が使用された場合には(a)の緩衝成分が使用され、(b)の電解質が使用された場合には(b)の緩衝成分が使用される。
本開示において、例えば「pH調整水に、クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、ならびに、ブドウ糖および塩化ナトリウムを加える」という場合、特に指定されない限り、列記された物質を一緒に加えてもよいし、順次加えてもよく、順次加える場合には、順序を変更してもよい。例えば、クエン酸とクエン酸3ナトリウムは、同じタンクにおいて同時に加えられてもよいし、別々のタンクにおいて同時に加えられてもよいし、別々のタンクにおいて順次加えられてもよい。緩衝成分、ブドウ糖および塩化ナトリウムを加える工程において、またはそれとは別個の工程において、本開示において記述された他の成分を加えてもよい。これら他の成分およびその組合せの例は、上述した通りである。一例では、炭酸カリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、および乳酸カリウムのうちの1つ以上が添加される。さらなる例では、グルタミン酸ナトリウム、スクラロース、および香料のうちの1つ以上が添加される。一例では、1つのタンク(溶解タンク)においてクエン酸を含む成分(複数可)がpH調整水に添加され、別のタンク(溶解タンク)においてそれ以外の成分(複数可)がpH調整水に添加され、両タンクで生成された水溶液が、さらに別のタンク(製品タンク)において混合されて飲料が生じる。この混合液に上記pH調整水を供給して所定の濃度に希釈する工程をさらに追加してもよい。
容器への密封は、酸性水を得る工程から10分以内、30分以内、1時間以内、2時間以内、3時間以内、10時間以内、または1日以内に完了され得る。
上記において、電気分解を経る製造方法と、電気分解を必ずしも経ない製造方法に言及した。これらの製造方法で製造される飲料製品については、上記で提供したpH、pH安定性(緩衝性)、リン含有量、オスモル濃度、組成(各成分の量および/または比)、容器、および/または賞味期限の説明が適用され得る。すなわち、これらの方法によって製造される飲料製品中の飲料はpH4.0未満であり、好ましくはpH3.0〜3.8であり、より好ましくはpH3.0〜3.5であり、さらに好ましくはpH3.2〜3.5であり、例えばpH3.2〜3.25である。また、これらの方法によって製造される飲料製品中の飲料は、1.05g/100mLのNaOH水溶液を飲料1Lあたり10.0mLまたは18.0mL加えた場合に、4.0未満、3.8以下、3.6以下、3.5以下、または3.4以下のpHが維持される。別の例では、これらの方法によって製造される飲料製品中の飲料は、1.05g/100mLのNaOH水溶液を飲料1Lあたり、43.0mL加えた場合に、4.0未満、3.8以下、または3.6以下のpHが維持される。これらの方法によって製造される飲料製品中の飲料は、好ましくはリンを実質的に含まない。すなわち、これらの方法は、リン含有化合物を溶液に加える工程を含まず、あるいはリン含有化合物を溶液に加える工程を排除する。これらの方法は、容器に飲料製品の賞味期限を表示する工程をさらに含み得、その賞味期限は、密封された日から少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、または少なくとも24ヶ月であり得る。容器に飲料製品の賞味期限を表示する工程は、容器が密封される前、途中、または後に実施され得る。
電解酸性水を飲料に使用すること自体、従来行われていなかった。従って、別の側面において、本開示は、電解質を含んだ水を電気分解して得られる電解酸性水を含む飲料製品を提供するものである。さらに、本開示は、電解質を含んだ水を電気分解して電解酸性水を得る工程、および、前記電解酸性水に他の成分(例えば糖、甘味料、香料)を加える工程を含む、飲料製品の製造方法を提供するものである。その電解質は、好ましくは、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸3ナトリウム、酒石酸2ナトリウム、およびリンゴ酸2ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの物質を含む。その電解質は、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムを含むことがより好ましく、クエン酸およびクエン酸3ナトリウムを含むことが特に好ましい。この飲料製品に関して、そのpH、添加され得る他の成分、封入され得る容器の形態等は、本開示の別の側面における飲料製品について提供した説明が適用され得る。
別の側面において、水を電気分解して電解酸性水を生成するための電解装置と、前記電解酸性水に、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムを少なくとも添加して飲料を生成する1つ以上のタンクと、前記飲料を容器中に密封するための充填装置とを有する、飲料製品製造装置が提供される。
より具体的な別の側面において、水を電気分解するための電解装置と、前記電解装置により電気分解されて生成する酸性水を、電気分解されていない水と混合して所定値以下のpHのpH調整水を得るためのpH調整機(pH調整器あるいはpH調整装置)と、前記pH調整水に第1の成分を添加する第1の溶解タンクと、前記pH調整水に、(a)クエン酸、(b)酒石酸、または(c)リンゴ酸を含む第2の成分を添加する第2の溶解タンクと、前記第1および第2の溶解タンクで生成された水溶液を混合して飲料を生成する製品タンクと、前記製品タンクの下流に、前記製品タンクで生成された飲料で容器を充填して容器を密封するための充填機とを有する、飲料製品製造装置が提供される。ここで、前記第1の成分が(a)クエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸2ナトリウム、もしくは(c)リンゴ酸2ナトリウムを含むか、または、前記第2の成分が(a)クエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸2ナトリウム、もしくは(c)リンゴ酸2ナトリウムをさらに含み得る。
電解装置は、当業者に知られるように、陽極、陰極、および、酸性水とアルカリ性水を隔てる隔膜を有し得る。水は、地下水、井戸水、湧水、水道水、蒸留水、イオン交換水等であり得る。水供給源と電解装置との間に不溶物除去用あるいは滅菌用のフィルターが設置されてもよい。得られた酸性水と混合される未電気分解水は、電気分解に使用される水と同じものであってもよいし、別の供給源からのものであってもよい。pH調整水のpHは当業者が適宜決定することができ、例えば4.0未満であり得る。(a)クエン酸3ナトリウムと(a)クエン酸は、両方とも第2の成分に含まれていてもよいし、クエン酸3ナトリウムが第1の成分、クエン酸が第2の成分に含まれていてもよい。(b)酒石酸2ナトリウムと(b)酒石酸、または(c)リンゴ酸2ナトリウム(c)リンゴ酸についても同様である。すなわち、緩衝成分の酸とその塩とは、同一のタンクで添加されてもよいし、異なるタンクにおいて添加されてもよい。本開示において、「第1」「第2」等は、要素の区別の便宜のために用いられるものであり、必ずしも順序を特定するものではない。
前記製品タンクに前記pH調整機が接続されてもよく、その場合、前記pH調整機から前記製品タンクに前記pH調整水が供給され、前記製品タンクにおいて前記水溶液の混合液が所定ないし所望の濃度に希釈され得る。
前記電解装置には、電気分解されるべき水に電解質を供給する、電解質タンクが接続されていてもよい。その電解質は、(a)クエン酸、(b)酒石酸、もしくは(c)リンゴ酸、または、(a)クエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸2ナトリウム、もしくは(c)リンゴ酸2ナトリウム、または、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、もしくは(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムを含み得る。(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウム、(b)酒石酸および酒石酸2ナトリウム、または(c)リンゴ酸およびリンゴ酸2ナトリウムを電気分解の際の電解質として供給することが好ましく、(a)クエン酸およびクエン酸3ナトリウムを電気分解の際の電解質として供給することが特に好ましい。
本実施形態の製造装置で製造される飲料製品については、上記で提供したpH、pH安定性(緩衝性)、リン含有量、オスモル濃度、組成(量および/または比)、容器、および/または賞味期限の説明が適用され得る。すなわち、本実施形態の製造装置は、上述したpH、pH安定性(緩衝性)、リン含有量、オスモル濃度、組成(量および/または比)、容器、および/または賞味期限を達成するように構成され得る。すなわち、本実施形態の飲料製品製造装置で製造される飲料製品中の飲料は、pHが4.0未満であり得、好ましくはpH3.0〜3.8であり、より好ましくはpH3.0〜3.5であり、さらに好ましくはpH3.2〜3.5であり、例えばpH3.2〜3.25である。また、この装置によって製造される飲料製品中の飲料は、1.05g/100mLのNaOH水溶液を飲料1Lあたり10.0mLまたは18.0mL加えた場合に、4.0未満、3.8以下、3.6以下、3.5以下、または3.4以下のpHが維持される。別の例では、この装置によって製造される飲料製品中の飲料は、1.05g/100mLのNaOH水溶液を飲料1Lあたり、43.0mL加えた場合に、4.0未満、3.8以下、または3.6以下のpHが維持される。本装置によって製造される飲料製品中の飲料は、好ましくはリンを実質的に含まない。すなわち、本装置は、リン含有化合物を溶液に加える要素を含まず、あるいは、リン含有化合物を溶液に加える要素を排除する。
別の側面において、地下水を電気分解する電解装置と、前記電解装置により電気分解されて生成した酸性水と電気分解されていない地下水を混合して所定値以下のpHのpH調整水を製造するpH調整機と、前記pH調整水に所定の成分を溶解する一方の溶解タンクと、前記pH調整水にクエン酸を含むその他の所定の成分を溶解する他方の溶解タンクと、前記一方の溶解タンクで生成された水溶液と前記他方の溶解タンクで生成された水溶液とを混合して飲料製品を生成する製品タンクと、前記製品タンクで生成された飲料製品でボトルを充填するボトル充填機が設けられている飲料製品製造装置が提供される。飲料製品は好ましくは経口補水液製品である。
前記製品タンクには、前記pH調整機が接続され得る。これによって、前記pH調整機から前記pH調整水が供給され、前記製品タンクで前記各水溶液の混合液が所定の濃度に希釈される。
前記電解装置には、電気分解に使用するためのクエン酸を供給するクエン酸タンクが接続され得る。
前記飲料製品製造装置で作られた前記飲料製品は、クエン酸とクエン酸3ナトリウムが溶解され、pHが4.0未満、好ましくはpH3.8以下である。さらに、好ましくは3.5未満、3.0以上である。
図1は、上記実施形態の一例である飲料製品製造装置10の概略図である。飲料製品製造装置10は、原料となる地下水を取水する井戸12が設けられている。井戸12で取水した地下水をろ過する5μmフィルター14と、活性炭フィルター16と、2μmフィルター17と、ろ過した地下水を貯蔵する貯蔵タンク18が順に設けられている。
貯蔵タンク18の下流には、2μmフィルター19を通過して、pH調整機20が設けられ、ろ過された地下水がそこに導入されている。また、貯蔵タンク18の下流には、別の2μmフィルター21を通過して、ろ過された地下水が導入され電気分解が行われる電解装置22が設けられている。電解装置22の下流には電気分解されたアルカリ水を収容するアルカリタンク24と、電気分解された酸性水を収容する酸性タンク26が設けられている。
電解装置22には、電解質であるクエン酸を供給するクエン酸タンク27が接続されている。クエン酸タンク27内のクエン酸濃度は、例えば10〜40%、20〜30%、あるいは25%であり得る(重量%表示)。電気分解で得られたアルカリ水は不要であり、アルカリタンク24から廃液処理機へ送られて廃棄され得るが、アルカリ水を他の用途に利用してもよい。電気分解で得られた酸性水は、酸性タンク26に貯蔵され、pH調整機20に導入され、pHの調整に使用される。
pH調整機20の下流には、pH調整機20で調整されたpH調整水Cに、甘味料等を含む所定の成分を溶解する溶解タンク28と、クエン酸を含むその他の所定の成分を溶解する溶解タンク30とが設けられている。溶解タンク28と溶解タンク30は、pH調整機20に、各々直接連結されている。溶解タンク28と溶解タンク30の下流には、溶解タンク28で作られた水溶液Aと溶解タンク30で作られた水溶液Bを混合して経口補水源液を生成する製品タンク32が設けられている。製品タンク32は、pH調整機20にも連結され、pH調整水Cが導入されて、収容している経口補水源液を適した濃度に希釈し飲料製品Dとする。溶解タンク28と溶解タンク30、製品タンク32は、高クリーン保持室36に設置されている。
図2は、溶解タンク28と溶解タンク30、製品タンク32の設備の一例を示すものである。各タンクにおけるpH調整水Cの供給路には、記号で示された電磁弁と流量設定付積算流量計が各々設けられている。各タンク28、30、32に流入するpH調整C水の流量を調整することにより、一定の濃度の水溶液A、水溶液B、および飲料製品Dが連続的に製造される。製品タンク32にはpH等を測定する品質チェックセンサーが設けられ、pH等の品質を確認する。
製品タンク32の下流かつ高クリーン保持室36の外には、製品タンク32で作られた飲料製品Dでペットボトルを充填するボトル充填機34が設けられている。ここで、オゾン水により洗浄済みのペットボトルが、飲料製品Dで充填される。充填は、85℃の「ホットフィル」で行われ、その後ボトルが密封されて製品が完成する。
飲料製品製造装置10で製造された飲料製品Dは、酸性水でpHを調整され、またpH緩衝剤となるクエン酸とクエン酸3ナトリウムが含まれているため、pHが4.0未満、好ましくはpH3.8〜3.0であり、より好ましくはpH3.5〜3.2であり、例えばpH3.2程度に調整される。これにより、穏やかな加熱条件で殺菌処理して出荷することが可能である。特に、飲料製品DをpH3.5〜3.2とすると、保存性が高いものとなる。
なお、各タンクの容量、ポンプの種類、能力を以下の表1に示す。
溶解タンクA28では、ブドウ糖、スクラロース、香料がpH調整水Cに溶解される。溶解タンクB30では、食塩、クエン酸、クエン酸3ナトリウム、乳酸カリウム、硫酸マグネシウム、グルタミン酸ナトリウムがpH調整水Cに溶解される。なお、これ以外の有効成分等を溶解してもよい。
この具体的実施形態における各成分の濃度と浸透圧、1日に50m3製造する際の重量、および溶解に使用するタンクを、以下の表2に示す。
なお、表2で示した配合で製造した飲料製品DのpHは3.2である。これは、62mmolのクエン酸、および17mmolクエン酸3ナトリウムが水1Lに溶解されたものであり、pH3.17の緩衝液と同等のpHとなる。飲料製品Dの浸透圧は293.9mOsm/Lであり、人体の血漿浸透圧310mOsm/Lよりやや低いものである。これにより、腸管から水分および電解質を速やかに吸収することが可能になる。
この実施形態の飲料製品製造装置10によれば、一定の濃度の飲料製品Dを連続的に効率よく製造することができる。飲料製品製造装置10で作られた飲料製品Dは、pHを低く調整された酸性水溶液である。また、pH緩衝剤となるクエン酸とクエン酸3ナトリウムの含有により、pHが4.0未満で安定し、穏やかな加熱条件での殺菌処理が可能となり、殺菌処理のコストを抑えることができ、また飲料製品Dの風味や外観の変化を抑制することができる。しかも、生産時に状況の変化があったとしても常にpHが4.0未満ないし3.5未満に保持される。またこのpH安定性から、長期保存にも耐えることができる。
また、飲料製品製造装置10は、電解装置22で生成した酸性水を使用してpH調整した無害なpH調整水Cに、人体にとって無害かつ有用な成分であるクエン酸を溶解して飲料製品Dを作ることができる。従って、pH降下剤その他の成分として、リン酸等、摂取量に注意が必要な物質を用いることがなく、安全である。電気分解の際にもクエン酸が使用されるため、飲用に適した酸性水を製造することができる。
なお、本実施形態の飲料製品製造装置は、上記の具体例に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、取水した地下水をろ過するフィルターの種類は自由に変更可能であり、地下水以外の種類の水を使用することも可能である。溶解タンク28と溶解タンク30で溶解する水溶性成分も適宜変更可能であり、溶解タンクの数を増減することも可能である。また、ボトルの代わりに他の種類の容器を用いることも可能である。
本実施形態の方法を用い、表2で示した配合で製造した飲料製品Dに、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を添加して、pH安定性について試験を行った。すなわち、苛性ソーダ水溶液を1.05g/100mLで作り、飲料製品1Lに対して、異なる量のこの苛性ソーダ水溶液を添加し、pHを測定した。3.5ml〜100mlの範囲内の6つの異なる苛性ソーダ水溶液量を用いて試験を行った。その試験の結果を以下の表3に示す。
この表から、この飲料製品DはpH安定性が高いことが示された。通常、1Lの水に苛性ソーダを3mg加えた時はpH10.0になり、100mg加えた時はpH11.5となり、400mg加えた時はpH12.1になる。それと比較してこの飲料製品Dは、苛性ソーダ溶液を3.5ml〜100ml加えた時にpH3.2〜pH4.00となっており、苛性ソーダを105mg加えてもpH3.25であり、1.05g加えてもpH4.00である。すなわち、本実施形態の飲料製品はpHが大きく変動することがなく安定した酸性が維持され、pH安定性が高いことが示された。