JPWO2017145979A1 - フィルム状接着剤複合シート及び半導体装置の製造方法 - Google Patents

フィルム状接着剤複合シート及び半導体装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

フィルム状接着剤複合シートであって、このフィルム状接着剤複合シートは、基材を有する支持シート上に、厚さ1〜50μmの硬化性のフィルム状接着剤が設けられており;硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力を接着力A(N/24mm)とし、硬化前のこのフィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように積層した積層体の破断伸度を破断伸度B(%)とし、この積層体の破断強度を破断強度C(MPa)としたとき、下記式(1)の関係を満たす、フィルム状接着剤複合シート。
A/(B×C)≧0.0005 ・・・・(1)

Description

本発明は、フィルム状接着剤複合シート、及び半導体装置の製造方法に関する。
本願は、2016年2月23日に、日本に出願された特願2016−031641号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
半導体装置の製造工程においては、ダイボンディングに用いるためのフィルム状接着剤が貼付された半導体チップを用いることがある。このような、フィルム状接着剤付き半導体チップを得る方法の一つとして、半導体ウエハのダイシングによって、あらかじめ分割済みの複数個の半導体チップに、フィルム状接着剤を貼付した後、このフィルム状接着剤を、半導体チップの配置位置に対応した位置において切断する方法がある。この方法では、通常、支持シート上にフィルム状接着剤が設けられたフィルム状接着剤複合シートを用いて、その1枚のフィルム状接着剤を、複数個の半導体チップに貼付する。半導体チップは、例えば、半導体ウエハの表面から溝を形成した後、この溝に到達するまで裏面側を研削することで作製されるが、これは一例であり、半導体チップはその他の方法でも作製される。切断後のフィルム状接着剤が貼付されている半導体チップは、フィルム状接着剤ごと支持シートから引き離し(ピックアップし)、ダイボンディングに用いる。
上記の方法において、フィルム状接着剤を切断する方法としては、例えば、フィルム状接着剤にレーザーを照射して切断する方法や、フィルム状接着剤をエキスパンドすることによって切断する方法が知られている。しかし、レーザーを照射する方法では、レーザー照射装置が必要になると共に、短時間で効率よく切断できないという問題点がある。また、エキスパンドする方法では、エキスパンド装置が必要になると共に、切断面が荒れることがあるという問題点がある。さらに、エキスパンドではフィルム状接着剤と同一面の方向にしか力がはたらかないので、フィルム状接着剤が支持シートとともに伸びるだけで切断されない可能性がある。そのため、フィルム状接着剤を冷却して、切断され易くしてエキスパンドを行うことがあるが、この場合には冷却工程が必要になり生産性に劣る。
これらの問題点を解決できる方法として、特定の厚さ及び引張破断伸度のフィルム状接着剤を用い、半導体チップのピックアップ直前の段階において、半導体チップをこの未切断のフィルム状接着剤ごと、ピックアップ方向に持ち上げて、その際に発生するせん断力を利用して、フィルム状接着剤を切断する方法が開示されている(特許文献1参照)。
特開2013−179317号公報
しかし、特許文献1で開示されている方法では、切断後のフィルム状接着剤が貼付されている半導体チップを、工程異常の発生を抑制して支持シートからピックアップできるかどうかが定かではない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体装置の製造時において、簡略化された方法で、フィルム状接着剤が貼付されている半導体チップを、工程異常の発生を抑制して支持シートから引き離すことを可能とする、支持シート上にフィルム状接着剤が設けられたフィルム状接着剤複合シートと、この複合シートを用いた半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、基材を有する支持シート上に、厚さ1〜50μmの硬化性のフィルム状接着剤が設けられたフィルム状接着剤複合シートであって、硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力A(N/24mm)、硬化前の前記フィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように積層した積層体の破断伸度B(%)、及び前記積層体の破断強度C(MPa)が、下記式(1)の関係を満たす、フィルム状接着剤複合シートを提供する。
A/(B×C)≧0.0005 ・・・・(1)
本発明のフィルム状接着剤複合シートにおいては、前記破断伸度Bが500%以下であることが好ましい。
本発明のフィルム状接着剤複合シートは、前記支持シートが前記基材からなり、前記基材に前記フィルム状接着剤が直接接触して設けられたものが好ましい。
また、本発明は、前記フィルム状接着剤複合シートを用いた半導体装置の製造方法であって、前記フィルム状接着剤複合シートを、フィルム状接着剤を介して分割済みの複数個の半導体チップに貼付する工程と、前記半導体チップに貼付した前記フィルム状接着剤複合シートの支持シートに対して、フィルム状接着剤が設けられている側とは反対側から力を加えることで、支持シート越しにフィルム状接着剤に力を加えて、フィルム状接着剤を切断する工程と、前記半導体チップとこれに貼付されている切断後の前記フィルム状接着剤を、前記支持シートから引き離す工程と、を有する、半導体装置の製造方法を提供する。
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]フィルム状接着剤複合シートであって、
前記フィルム状接着剤複合シートは、基材を有する支持シート上に、厚さ1〜50μmの硬化性のフィルム状接着剤が設けられており;
硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力を接着力A(N/24mm)とし、硬化前の前記フィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように積層した積層体の破断伸度を破断伸度B(%)とし、前記積層体の破断強度を破断強度C(MPa)としたとき、下記式(1)の関係を満たす、フィルム状接着剤複合シート。
A/(B×C)≧0.0005 ・・・・(1)
[2]前記破断伸度Bが500%以下である、[1]に記載のフィルム状接着剤複合シート。
[3]前記支持シートが前記基材からなり、前記基材に前記フィルム状接着剤が直接接触して設けられている、[1]又は[2]に記載のフィルム状接着剤複合シート。
[4]半導体装置の製造方法であって、
[1]〜[3]のいずれか一つに記載のフィルム状接着剤複合シートを、前記フィルム状接着剤を介して分割済みの複数個の半導体チップに貼付する工程と、
前記半導体チップに貼付した前記フィルム状接着剤複合シートにおける支持シートに対して、前記フィルム状接着剤が設けられている側とは反対側から力を加えることで、前記支持シート越しに前記フィルム状接着剤に力を加えて、前記フィルム状接着剤を切断する工程と、
前記半導体チップとこれに貼付されている切断後の前記フィルム状接着剤を、前記支持シートから引き離す工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
本発明によれば、半導体装置の製造時において、簡略化された方法で、フィルム状接着剤が貼付されている半導体チップを、工程異常の発生を抑制して支持シートから引き離すことを可能とする、支持シート上にフィルム状接着剤が設けられたフィルム状接着剤複合シートと、この複合シートを用いた半導体装置の製造方法が提供される。
本発明の半導体装置の製造方法における、フィルム状接着剤の切断から、半導体チップの支持シートからの引き離しまでの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の半導体装置の製造方法において、フィルム状接着剤に力を加えて、これを切断する他の実施形態を模式的に説明するための断面図である。 従来のフィルム状接着剤複合シートを用いた場合の、半導体装置の製造過程における、フィルム状接着剤複合シート及び半導体チップの一態様を模式的に示す断面図である。 従来のフィルム状接着剤複合シートを用いた場合の、半導体装置の製造過程における、フィルム状接着剤複合シート及び半導体チップの他の態様を模式的に示す断面図である。
<<フィルム状接着剤複合シート>>
本発明のフィルム状接着剤複合シートは、基材を有する支持シート上に、厚さ1〜50μmの硬化性のフィルム状接着剤が設けられたフィルム状接着剤複合シートであって、硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力を接着力A(N/24mm)とし、硬化前の前記フィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように積層した積層体の破断伸度を破断伸度B(%)とし、前記積層体の破断強度を破断強度C(MPa)としたとき、A,B、Cが下記式(1)の関係を満たす。
A/(B×C)≧0.0005 ・・・・(1)
前記フィルム状接着剤複合シートは、半導体装置の製造時において、フィルム状接着剤により半導体チップの一方の面(主として、回路面とは反対側の裏面)に貼付される。後の工程において、半導体チップはフィルム状接着剤が貼付された状態のまま、支持シートから引き離される(ピックアップされる)。
このとき、前記フィルム状接着剤複合シートに設けられているフィルム状接着剤が、前記式(1)の関係を満たしていることにより、フィルム状接着剤が貼付されている半導体チップを、工程異常の発生を抑制して支持シートから引き離すことができる。より具体的には、以下のとおりである。
まず、本発明のフィルム状接着剤複合シートによれば、支持シート越しにフィルム状接着剤に力を加えるという通常の操作を行うことによって、フィルム状接着剤の切断を主目的とした工程を別途設けなくても、フィルム状接着剤を目的とする箇所において常温で切断できる。したがって、フィルム状接着剤が切断されないことに伴う、半導体チップの引き離し(持ち上げ)不良が抑制される。
また、フィルム状接着剤における目的とする半導体チップに対応する部位が、支持シートから剥離すると共に、フィルム状接着剤における目的外の半導体チップに対応する部位が、支持シートから剥離する現象が抑制される。したがって、フィルム状接着剤における目的とする部位が支持シートから剥離しないことによる半導体チップの引き離し(持ち上げ)不良や、目的とする半導体チップだけでなく、これに隣接する半導体チップも同時にフィルム状接着剤と共に支持シートから引き離される、いわゆるダブルダイの発生が抑制される。
このように、前記フィルム状接着剤複合シートを用いることで、半導体チップの引き離し不良とダブルダイの発生を抑制できる。さらに、上述のようなフィルム状接着剤の切断を主目的とした工程、例えば、フィルム状接着剤にレーザーを照射して切断する工程や、フィルム状接着剤をエキスパンドすることによって切断する工程等を省略できるため、これらの工程を行うことによる問題点を回避できると共に、常温でフィルム状接着剤を切断でき、工程数も削減できて、半導体装置を簡略化された方法で製造できる。
これに対して、上述の「特開2013−179317号公報」(特許文献1)には、半導体チップのピックアップ直前の段階において、半導体チップを未切断のフィルム状接着剤ごと、ピックアップ方向に持ち上げて、その際に発生するせん断力を利用して、フィルム状接着剤を切断する方法が開示されている。しかし、この方法では、切断後のフィルム状接着剤が貼付されている半導体チップを、工程異常の発生を抑制して支持シートからピックアップできるかどうかが定かではない。例えば、半導体チップが、切断後のフィルム状接着剤を正常に備えた状態のまま支持シートから引き離されるかどうかが定かではない。この文献の実施例では、一般的なダイシングシート(基材及び粘着剤層を有する支持シート)にフィルム状接着剤が設けられてなるフィルム状接着剤複合シートが具体的に開示されているものの、上述の本発明の効果を奏することは、開示されていない。
<支持シート>
前記支持シートは基材を有するものであり、基材からなる(基材のみを有する)ものであってもよいし、基材と基材以外の他の層とを有するものであってもよい。前記他の層を有する支持シートとしては、例えば、基材上に粘着剤層を備えたものが挙げられる。
後述するフィルム状接着剤は、支持シート上に設けられる。したがって、例えば、支持シートが、基材上に粘着剤層を備えたものである場合には、粘着剤層上にフィルム状接着剤が設けられ、支持シートが基材からなるものである場合には、基材にフィルム状接着剤が直接接触して設けられる。
[基材]
前記基材の構成材料は、各種樹脂であることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPEと略すことがある)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPEと略すことがある)、高密度ポリエチレン(HDPE(と略すことがある)等))、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、これらのいずれかの樹脂の水添加物、変性物、架橋物又は共重合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語につても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
基材は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。基材が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
なお、本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
基材の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、50〜300μmであることが好ましく、60〜100μmであることがより好ましい。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
なお、本明細書において「厚さ」とは、任意の5箇所で、接触式厚み計で厚さを測定した平均で表される値を意味する。
基材は、その上に設けられる粘着剤層等の他の層との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されたものであってもよい。
また、基材は、表面がプライマー処理を施されたものであってもよい。
また、基材は、帯電防止コート層、フィルム状接着剤複合シートを重ね合わせて保存する際に、基材が他のシートに接着することや、基材が吸着テーブルに接着することを防止する層等を有するものであってもよい。
これらの中でも基材は、ダイシング時のブレードの摩擦による基材の断片の発生が抑制される点から、特に表面が電子線照射処理を施されたものが好ましい。
[粘着剤層]
前記粘着剤層は、公知のものを適宜使用できる。
粘着剤層は、これを構成するための各種成分を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
前記粘着剤層が、エネルギー線硬化性成分を含んでいる場合には、エネルギー線を照射してその粘着性を低下させることで、半導体チップのピックアップがより容易となる。粘着剤層にエネルギー線を照射して粘着性を低下させる処理は、フィルム状接着剤複合シートを被着体に貼付した後に行ってもよいし、被着体に貼付する前に予め行っておいてもよい。
本発明において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられる。
紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ又はキセノンランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本発明において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
前記粘着剤組成物で好ましいものとしては、例えば、アクリル重合体とエネルギー線重合性化合物とを含有するもの(粘着剤組成物(i);水酸基を有し、且つ重合性基を側鎖に有するアクリル重合体(例えば、水酸基を有し、且つウレタン結合を介して重合性基を側鎖に有するもの)と、イソシアネート系架橋剤と、を含有するもの(粘着剤組成物(ii))が挙げられ、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
前記粘着剤組成物は、上述の成分以外に、さらに光重合開始剤や、着色剤(顔料、染料)、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等の各種添加剤のいずれかを含有するものでもよい。
前記粘着剤組成物は、保存中における目的としない架橋反応の進行を抑制するための反応遅延剤を含有するものでもよい。前記反応遅延剤としては、例えば、架橋反応を進行させる触媒となる成分の作用を阻害するものが挙げられ、好ましいものとしては、例えば、前記触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられる。好ましい反応遅延剤として、より具体的には、分子中にカルボニル基(−C(=O)−)を2個以上有するものが挙げられ、分子中にカルボニル基を2個有するものであれば、例えば、ジカルボン酸、ケト酸、ジケトン等が挙げられる。
粘着剤層の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、1〜100μmであることが好ましく、1〜60μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。
粘着剤組成物は、アクリル重合体等、粘着剤層を構成するための各成分を配合することで得られ、例えば、配合成分が異なる点以外は、後述する接着剤組成物の場合と同様の方法で得られる。
粘着剤層は、前記基材の表面に粘着剤組成物を塗工し、乾燥させることで形成できる。
このとき必要に応じて、塗工した粘着剤組成物を加熱することで、架橋してもよい。加熱条件は、例えば、100〜130℃で1分間〜5分間とすることができるが、これに限定されない。また、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗工し、乾燥させることで形成した粘着剤層を、基材の表面に貼り合わせ、必要に応じて前記剥離フィルムを取り除くことでも、基材上に粘着剤層を形成できる。
粘着剤組成物の基材の表面又は剥離材の剥離層表面への塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
<フィルム状接着剤>
前記フィルム状接着剤は硬化性を有する。前記フィルム状接着剤は、熱硬化性を有するものが好ましく、感圧接着性を有するものが好ましい。熱硬化性及び感圧接着性をともに有するフィルム状接着剤は、未硬化状態では各種被着体に軽く押圧することで貼付できる。また、フィルム状接着剤は、加熱して軟化させることで各種被着体に貼付できるものであってもよい。フィルム状接着剤は、硬化によって最終的には耐衝撃性が高い硬化物となり、この硬化物は、厳しい高温・高湿度条件下においても十分な接着特性を保持し得る。
前記フィルム状接着剤の厚さは、1〜50μmであり、3〜25μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。フィルム状接着剤の厚さが前記下限値以上であることにより、被着体(半導体チップ)に対して高い接着力が得られる。また、フィルム状接着剤の厚さが前記上限値以下であることにより、半導体装置の製造時に通常行われる、支持シート越しにフィルム状接着剤に力を加える操作を行うことによって、この操作で発生するせん断力を利用して、フィルム状接着剤を容易に切断でき、フィルム状接着剤の切断を主目的とした工程を別途設ける必要がない。
本発明において、硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する「接着力A(N/24mm)」は、以下の方法で測定された値を意味する。すなわち、幅が24mmで長さが任意の、フィルム状接着剤及び粘着テープの積層シートを作製する。この積層シートは、粘着テープの粘着面にフィルム状接着剤が積層されたものとし、粘着テープとしては、例えば、ニチバン社製「セロテープ(登録商標)No.405」の、幅が24mmであるものを用いることができる。次いで、60℃に加熱したフィルム状接着剤によって、この積層シートを半導体ウエハへ貼付して、粘着テープ、フィルム状接着剤及び半導体ウエハがこの順に積層された積層体を作製する。作製後のこの積層体を直ちにJIS Z0237 2009で規定されている標準環境下で30分間放置した後、半導体ウエハからフィルム状接着剤及び粘着テープの積層シートを、フィルム状接着剤及び半導体ウエハの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度150mm/minで引き剥がす、いわゆる180°剥離を行う。このときの剥離力を測定して、その測定値を接着力A(N/24mm)とする。測定に供する前記積層シートの長さは、剥離力を安定して測定できる範囲であれば、特に限定されない。
接着力Aは、前記式(1)の関係を満たす限り特に限定されないが、0.3N/24mm以上であることが好ましく、0.4N/24mm以上であることがより好ましい。接着力Aの上限値は、例えば、15N/24mm、11N/24mm、及び7N/24mmのいずれかとすることができるが、これらは一例である。
例えば、接着力Aとしては、0.3N/24mm〜15N/24mmが好ましく、0.3N/24mm〜11N/24mmがより好ましく、0.4N/24mm〜7N/24mmがよりさらに好ましい。
別の側面として、接着力Aは0.45N/24mm以上、10N/24mm未満であってもよく、0.45N/24mm以上、5.8N/24mm以下であってもよい。
本発明において、「破断伸度B(%)」とは、硬化前の前記フィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように積層して得られた積層体の破断伸度を意味する。本発明において、フィルム状接着剤又はこれを積層して得られた積層体全般の破断伸度は、破断伸度Bも含めて、JIS K7161−1994(ISO 527−1)又はJIS K7127:1999(ISO 527−3)に準拠して求めたものである。測定対象物(試験片)が降伏点を有しない場合には引張破壊ひずみを測定し、降伏点を有する場合には引張破壊時呼びひずみを測定して、これら測定値を用いて、破断伸度を求める。
破断伸度Bを求める対象の前記積層体は、厚さが200μm未満である硬化前のフィルム状接着剤、好ましくは本発明のフィルム状接着剤複合シートを構成するための厚さが1〜50μmである硬化前のフィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように少なくとも2枚積層して得られたものである。
破断伸度Bは、幅が15mmであり、長さが100mmであり、厚さが200μmであるフィルム状接着剤の前記積層体(試験片)を、固定箇所間の距離が75mmとなるように二ヵ所で固定し、引張速度を200mm/minとして、この固定箇所間において前記積層体を引っ張り、積層体が破断したときの試験片の伸びを測定することで、求められる。
なお、本明細書において、「破断伸度BがX%である(式中、Xは正の数である)」とは、上述の測定方法において、試験片(積層体)を引っ張り、試験片がその引張方向において元の長さ(引っ張っていないときの長さ)のX%の長さだけ伸びたとき、すなわち、試験片の引張方向における全体の長さが引っ張る前の長さの[1+X/100]倍となったときに、試験片が破断することを意味する。
破断伸度Bは、前記式(1)の関係を満たす限り特に限定されないが、例えば、1200%以下であることが好ましく、30〜1200%であることがより好ましく、40〜1100%であることがさらに好ましく、45〜1050%であることが特に好ましい。破断伸度Bが前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤が貼付されている半導体チップをピックアップする前において、フィルム状接着剤をより容易に切断できる。
さらに、別の側面として、破断伸度Bは、900%以下であることが好ましく、700%以下であることがより好ましく、500%以下であることが特に好ましく、例えば、30〜500%、40〜500%、及び45〜500%等のいずれかとすることができる。
さらに別の側面として、破断伸度Bは、50〜440%であってもよい。
破断伸度Bが前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤が貼付されている半導体チップをピックアップする前において、フィルム状接着剤を種々の方式でより容易に切断できる。すなわち、フィルム状接着剤の切断方式として、最も一般的なピン突き上げ方式だけでなく、スライダー突き上げ方式等の他の方式も好適に適用でき、フィルム状接着剤複合シートの汎用性が高くなる。
本発明において、「破断強度C(MPa)」とは、硬化前の前記フィルム状接着剤を合計の厚さが200μmとなるように積層して得られた積層体の破断強度を意味する。ここでいう積層体とは、上述の破断伸度B(%)の測定対象である積層体と同じ積層体を意味する。
破断強度Cは、破断伸度B測定時において、試験片が破断した(破壊された)ときの引張応力、すなわち引張破壊応力であり、破断伸度Bと同時に測定できる。
破断強度Cは、前記式(1)の関係を満たす限り特に限定されないが、0.4〜17MPaであることが好ましく、0.5〜15MPaであることがより好ましく、0.6〜13MPaであることが特に好ましい。
別の側面として、破断強度Cは0.8〜11MPaであってもよく、2.5〜11MPaであってもよい。
本発明において、前記接着力A、破断伸度B及び破断強度Cは、前記式(1)の関係を満たす、すなわち、A/(B×C)の値は0.0005以上であればよい。そして、A/(B×C)の値は、0.0006以上であることが好ましく、0.0007以上であることがより好ましい。A/(B×C)の上限値は特に限定されず、例えば、0.0170、0.0140及び0.0115のいずれかとすることができるが、これらは一例である。
すなわち、A/(B×C)の値としては、例えば、0.0005以上、0.0170以下であればよく、0.0006以上、0.0140以下が好ましく、0.00067以上、0.0115以下より好ましい
別の側面として、A/(B×C)の値は、0.0008以上0.0125未満であってもよく、0.0008以上0.0105以下であってもよい。
フィルム状接着剤の前記接着力Aは、フィルム状接着剤の含有成分の種類及び量、フィルム状接着剤の厚さ、前記支持シートのフィルム状接着剤を設ける面を構成する材料、この面の状態(表面状態)等を調節することで、適宜調節できる。
例えば、フィルム状接着剤の含有成分であれば、後述するシランカップリング剤等のカップリング剤(e)の種類又は量を調節することで、フィルム状接着剤の接着力Aを容易に調節できる。
また、例えば、支持シートの前記表面状態は、例えば、基材の他の層との密着性を向上させるものとして先に挙げた表面処理、すなわち、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;プライマー処理等を施すことで、調節できる。
ただし、これら調節方法は一例に過ぎない。
フィルム状接着剤の前記破断伸度B及び破断強度Cは、フィルム状接着剤の含有成分の種類及び量を調節することで、適宜調節できる。例えば、後述する重合体成分(a)の分子量及び含有量、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)を構成する成分の構造、軟化点及び含有量、並びに充填剤(c)の含有量等を調節することで、フィルム状接着剤の破断伸度B及び破断強度Cを容易に調節できる。
ただし、これら調節方法は一例に過ぎない。
[接着剤組成物]
フィルム状接着剤は、その構成材料を含有する接着剤組成物から形成できる。例えば、フィルム状接着剤の形成対象面に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位にフィルム状接着剤を形成できる。接着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、フィルム状接着剤の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。ここで、「常温」とは、先に説明したとおりである。
接着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
接着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、接着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、70〜130℃で10秒間〜5分間の条件で乾燥させることが好ましい。
好ましい接着剤組成物としては、例えば、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)を含有するものが挙げられる。以下、各成分について説明する。
(重合体成分(a))
重合体成分(a)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分であり、フィルム状接着剤に造膜性や可撓性等を付与すると共に、半導体チップ等の接着対象への接着性(貼付性)を向上させるための重合体化合物である。また、重合体成分(a)は、後述するエポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)に該当しない成分でもある。
重合体成分(a)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
重合体成分(a)としては、例えば、アクリル系樹脂(例えば、(メタ)アクリロイル基を有する樹脂)、ポリエステル、ウレタン系樹脂(例えば、ウレタン結合を有する樹脂)、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂(例えば、シロキサン結合を有する樹脂)、ゴム系樹脂(例えば、ゴム構造を有する樹脂)、フェノキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
重合体成分(a)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜2000000であることが好ましく、100000〜1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量がこのような範囲内であることで、フィルム状接着剤の前記接着力Aを上述した範囲内に調節することが容易となる。
一方、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へフィルム状接着剤が追従し易くなり、被着体とフィルム状接着剤との間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−60〜70℃であることが好ましく、−30〜50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤と支持シートとの接着力が抑制されて、ピックアップ時において、フィルム状接着剤を備えた半導体チップの支持シートからの引き離しがより容易となる。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤と半導体チップとの接着力が向上する。
本明細書において「ガラス転移温度」とは、示差走査熱量計を用いて、試料のDSC曲線を測定し、得られたDSC曲線の変曲点の温度で表される。
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチルともいう)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1〜18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N−メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
上記の中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が好ましい。
アクリル系樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、さらに(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN−メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(f)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(f)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、フィルム状接着剤複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
本発明においては、重合体成分(a)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、ピックアップ時において、フィルム状接着剤を備えた半導体チップの支持シートからの引き離しがより容易となったり、被着体の凹凸面へフィルム状接着剤が追従し易くなり、被着体とフィルム状接着剤との間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000〜100000であることが好ましく、3000〜80000であることがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−30〜150℃であることが好ましく、−20〜120℃であることがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
重合体成分(a)であるアクリル系樹脂の含有量は、接着剤組成物を構成する溶媒以外の全ての成分の総質量に対して(すなわち、フィルム状接着剤の総質量に対して)、5〜40質量%であることが好ましく、7〜25質量%であることがより好ましい。
重合体成分(a)の含有量の割合は、重合体成分(a)の種類によらず、接着剤組成物を構成する溶媒以外の全ての成分の総質量に対して(すなわち、フィルム状接着剤の総質量に対して)5〜85質量%であることが好ましく、7〜80質量%であることがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂の使用により、上述のような効果が得られる一方、硬化前のフィルム状接着剤が高温(例えば、120℃〜200℃)に晒された際、その硬さが低下し、未硬化又は半硬化の状態におけるフィルム状接着剤のワイヤボンディング適性が低下する懸念がある。そこで、接着剤組成物の重合体成分(a)の含有量は、このような影響を考慮した上で設定することが好ましい。
(エポキシ系熱硬化性樹脂(b))
エポキシ系熱硬化性樹脂(b)は、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)からなる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するエポキシ系熱硬化性樹脂(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
・エポキシ樹脂(b1)
エポキシ樹脂(b1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
上記のなかでも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂(例えば、トリフェニレン型エポキシ樹脂)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が好ましい。
エポキシ樹脂(b1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、フィルム状接着剤複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。なお、本明細書において「誘導体」とは、特に断りのない限り、元の化合物の少なくとも1個の基がそれ以外の基(置換基)で置換されてなるものを意味する。ここで、「基」とは、複数個の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基ともいう)、2−プロペニル基(アリル基ともいう)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
エポキシ樹脂(b1)の数平均分子量は、特に限定されないが、フィルム状接着剤の硬化性、並びに硬化後のフィルム状接着剤の強度及び耐熱性の点から、300〜30000であることが好ましい。
本明細書において、「数平均分子量」は、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値で表される数平均分子量を意味する。
エポキシ樹脂(b1)のエポキシ当量は、100〜1000g/eqであることが好ましく、150〜800g/eqであることがより好ましい。
本明細書において、「エポキシ当量」とは1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数(g/eq)を意味し、JIS K 7236:2001の方法に従って測定することができる。
エポキシ樹脂(b1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
・熱硬化剤(b2)
熱硬化剤(b2)は、エポキシ樹脂(b1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(b2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を少なくとも2個有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
熱硬化剤(b2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。 熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(以下、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
熱硬化剤(b2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(b2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(b2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
熱硬化剤(b2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、フィルム状接着剤の前記接着力Aを上述した範囲内に調節することが容易となる点から、熱硬化剤(b2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
熱硬化剤(b2)の分子量は、例えば、60〜30000であることが好ましい。
熱硬化剤(b2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、熱硬化剤(b2)の含有量は、エポキシ樹脂(b1)の含有量100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤の吸湿率が低減されて、フィルム状接着剤複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)の含有量(エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量)は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、50〜1000質量部であることが好ましく、100〜900質量部であることがより好ましく、150〜870質量部であることが特に好ましい。エポキシ系熱硬化性樹脂(b)の前記含有量がこのような範囲であることで、ピックアップ時において、フィルム状接着剤を備えた半導体チップの支持シートからの引き離しがより容易となる。
前記フィルム状接着剤は、その各種物性を改良するために、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)以外に、さらに必要に応じて、これらに該当しない他の成分を含有していてもよい。
前記フィルム状接着剤が含有する他の成分で好ましいものとしては、例えば、硬化促進剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、エネルギー線硬化性樹脂(g)、光重合開始剤(h)、汎用添加剤(i)等が挙げられる。
(硬化促進剤(c))
硬化促進剤(c)は、接着剤組成物の硬化速度を調節するための成分である。
好ましい硬化促進剤(c)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(少なくとも1個の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(少なくとも1個の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
上記の中でも、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する硬化促進剤(c)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
硬化促進剤(c)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、硬化促進剤(c)の含有量は、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)の含有量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(c)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(c)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、硬化促進剤(c)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(c)が、高温・高湿度条件下でフィルム状接着剤中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、フィルム状接着剤複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
(充填材(d))
フィルム状接着剤は、充填材(d)を含有することにより、その熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数をフィルム状接着剤の貼付対象物に対して最適化することで、フィルム状接着剤複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、フィルム状接着剤は、充填材(d)を含有することにより、硬化後のフィルム状接着剤の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
充填材(d)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する充填材(d)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
充填材(d)を用いる場合、充填材(d)の含有量は、接着剤組成物を構成する溶媒外の全ての成分の総質量(すなわち、フィルム状接着剤の総質量)に対して、5〜80質量%であることが好ましく、7〜60質量%であることがより好ましい。充填材(d)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
(カップリング剤(e))
フィルム状接着剤は、カップリング剤(e)を含有することにより、被着体に対する接着性及び密着性が向上する。また、フィルム状接着剤がカップリング剤(e)を含有することにより、その硬化物は耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。カップリング剤(e)は、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものである。
カップリング剤(e)は、重合体成分(a)、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン、エポキシ基含有オリゴマー等が挙げられる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するカップリング剤(e)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
1つの側面として、カップリング剤(e)は、エポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
カップリング剤(e)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、カップリング剤(e)の含有量は、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)の合計含有量100質量部に対して、0.03〜20質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜5質量部であることが特に好ましい。
カップリング剤(e)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(d)の樹脂への分散性の向上や、フィルム状接着剤の被着体との接着性の向上など、カップリング剤(e)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(e)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
(架橋剤(f))
重合体成分(a)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有する重合体成分を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤は、前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための架橋剤(f)を含有していてもよい。架橋剤(f)を用いて架橋することにより、フィルム状接着剤の初期接着力及び凝集力を調節できる。
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味し、その例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート;2,6−トリレンジイソシアネート;1,3−キシリレンジイソシアネート;1,4−キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(a)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、重合体成分(a)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)と重合体成分(a)との反応によって、フィルム状接着剤に架橋構造を簡便に導入できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する架橋剤(f)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
架橋剤(f)を用いる場合、接着剤組成物において、架橋剤(f)の含有量は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(f)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(f)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(f)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(f)の過剰使用が抑制される。
(エネルギー線硬化性樹脂(g))
フィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
エネルギー線硬化性樹脂(g)は、エネルギー線を照射することにより硬化(重合)する性質を有する。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
エネルギー線硬化性樹脂(g)の重量平均分子量は、100〜30000であることが好ましい。
接着剤組成物が含有するエネルギー線硬化性樹脂(g)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物において、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量は、接着剤組成物を構成する溶媒以外の成分の総質量に対して、1〜95質量%であることが好ましく、3〜90質量%であることがより好ましく、5〜85質量%であることが特に好ましい。
(光重合開始剤(h))
接着剤組成物は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(g)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(h)を含有していてもよい。
接着剤組成物における光重合開始剤(h)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4−ジエチルチオキサントン;1,2−ジフェニルメタン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン;1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のキノン化合物等が挙げられる。
また、光重合開始剤(h)としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
接着剤組成物が含有する光重合開始剤(h)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物において、光重合開始剤(h)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、2〜5質量部であることが特に好ましい。
(汎用添加剤(i))
汎用添加剤(I)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、ゲッタリング剤等が挙げられる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する汎用添加剤(i)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
(溶媒)
接着剤組成物は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する接着剤組成物は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソブチルアルコール(2−メチルプロパン−1−オールともいう)、1−ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
接着剤組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物が含有する溶媒は、接着剤組成物中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
[接着剤組成物の製造方法]
接着剤組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15〜30℃であることが好ましい。
本発明のフィルム状接着剤複合シートは、支持シートが基材からなり、この基材にフィルム状接着剤が直接接触して設けられたものが好ましい。このように、支持シートが粘着剤層等を有さず、基材上に直接フィルム状接着剤が設けられている場合には、フィルム状接着剤中の成分が粘着剤層等の基材上の他の層に移行したり、これとは逆にこのような他の層中の成分がフィルム状接着剤に移行したりするなど、構成成分の層間移動が抑制され、半導体装置の製造時における工程異常の発生や、半導体パッケージの信頼性の低下が顕著に抑制される。
通常、フィルム状接着剤複合シートとして、粘着剤層を有しないものを用いた場合には、半導体チップをフィルム状接着剤が貼付された状態のまま、支持シートから引き離すときに、ダブルダイが発生し易い。しかし、本発明のフィルム状接着剤複合シートを用いれば、この複合シートが粘着剤層を有しない場合でも、ダブルダイの発生が抑制される。
<<フィルム状接着剤複合シートの製造方法>>
本発明のフィルム状接着剤複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、粘着剤層を積層できる。
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらにフィルム状接着剤を積層する場合には、粘着剤層上に接着剤組成物を塗工して、フィルム状接着剤を直接形成することが可能である。このように、いずれかの組成物を用いて、連続する2層の積層構造を形成する場合には、前記組成物から形成された層の上に、さらに組成物を塗工して新たに層を形成することが可能である。ただし、これら2層のうちの後から積層する層は、別の剥離フィルム上に前記組成物を用いてあらかじめ形成しておき、この形成済みの層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、既に形成済みの残りの層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
例えば、基材上に粘着剤層が積層され、前記粘着剤層上にフィルム状接着剤が積層されてなるフィルム状接着剤複合シート(すなわち、支持シートが基材及び粘着剤層の積層物であるフィルム状接着剤複合シート)を製造する場合には、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層しておき、別途、剥離フィルム上に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上にフィルム状接着剤を形成しておき、このフィルム状接着剤の露出面を、基材上に積層済みの粘着剤層の露出面と貼り合わせて、フィルム状接着剤を粘着剤層上に積層することで、フィルム状接着剤複合シートが得られる。
なお、基材上に粘着剤層を積層する場合には、上述の様に、基材上に粘着剤組成物を塗工する方法に代えて、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を基材の一方の表面と貼り合わせることで、粘着剤層を基材上に積層してもよい。
いずれの方法においても、剥離フィルムは目的とする積層構造を形成後の任意のタイミングで取り除けばよい。
このように、フィルム状接着剤複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、フィルム状接着剤複合シートを製造すればよい。
なお、フィルム状接着剤複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、フィルム状接着剤)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、接着剤組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることでも、フィルム状接着剤複合シートが得られる。
<<半導体装置の製造方法>>
本発明の半導体装置の製造方法は、前記フィルム状接着剤複合シートを用いた半導体装置の製造方法であって、前記フィルム状接着剤複合シートを、フィルム状接着剤を介して分割済みの複数個の半導体チップに貼付する工程(以下、「貼付工程」と略記することがある)と、前記半導体チップに貼付した前記フィルム状接着剤複合シートの支持シートに対して、フィルム状接着剤が設けられている側とは反対側から力を加えることで、支持シート越しにフィルム状接着剤に力を加えて、フィルム状接着剤を切断する工程(以下、「切断工程」と略記することがある)と、前記半導体チップとこれに貼付されている切断後の前記フィルム状接着剤を、前記支持シートから引き離す工程(以下、「引き離し工程」と略記することがある)と、を含む。
前記製造方法によれば、前記フィルム状接着剤複合シートを用いることで、半導体装置の製造時において、簡略化された方法で、フィルム状接着剤が貼付されている半導体チップを、工程異常の発生を抑制して支持シートから引き離すことが可能となる。
<貼付工程>
前記貼付工程においては、前記フィルム状接着剤複合シートを、フィルム状接着剤を介して分割済みの複数個の半導体チップに貼付する。本工程においては、1枚のフィルム状接着剤複合シートのフィルム状接着剤を、複数個の半導体チップの裏面に貼付する。
分割済みの複数個の半導体チップは、例えば、半導体ウエハにおける前記フィルム状接着剤複合シートの貼付面(半導体ウエハの裏面)とは反対側の表面から溝を形成し、この溝に到達するまで前記裏面を研削することで作製できる。前記溝を形成する方法としては、例えば、ブレードを用いて半導体ウエハを切り込むことで溝を形成する方法(すなわち、ブレードダイシング)、レーザー照射により半導体ウエハを切り込むことで溝を形成する方法(すなわち、レーザーダイシング)、研磨剤を含む水の吹き付けにより半導体ウエハを切り込むことで溝を形成する方法(すなわち、ウオーターダイシング)等が挙げられる。
また、分割済みの複数個の半導体チップは、半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束されるように、赤外域のレーザー光を照射して、半導体ウエハの内部に改質層を形成した後、半導体ウエハの前記裏面を研削し、さらに、前記裏面を研削後の半導体ウエハに対して力を加えるか、又は、前記裏面の研削中の半導体ウエハに対して、研削時の力を加えることによって、前記改質層の形成部位において半導体ウエハを分割することでも作製できる。
<切断工程>
前記切断工程においては、前記貼付工程後に、前記半導体チップに貼付したフィルム状接着剤複合シートにおける支持シートに対して、フィルム状接着剤が設けられている側とは反対側から力を加えることで、前記支持シート越しに前記フィルム状接着剤に力を加えて、前記フィルム状接着剤を切断する。以下、図面を参照しながら、本発明の製造方法について説明する。図1は、本発明の製造方法における、フィルム状接着剤の切断から、半導体チップの支持シートからの引き離しまでの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1では、フィルム状接着剤複合シートに関わる構成のみ、断面表示している。
図1(a)に示すように、前記貼付工程によって、フィルム状接着剤複合シート1のフィルム状接着剤12は、複数個の半導体チップ9の裏面9bに貼付されている。そして、本工程においては、フィルム状接着剤複合シート1における支持シート11の、フィルム状接着剤12が設けられている面(表面ともいう)11aとは反対側の面(裏面ともいう)11bに、半導体装置の製造装置(全体図の図示は省略)のうち、半導体チップを突き上げる突き上げ部81が当接されている。
支持シート11が基材からなるシートである場合、フィルム状接着剤複合シート1は、基材及びフィルム状接着剤12が積層されており、フィルム状接着剤12における基材と接触している側とは反対側の表面が半導体チップ9の裏面9bに貼付される。
支持シート11が、基材及び粘着剤層が積層されたシートである場合、フィルム状接着剤複合シート1は、基材、粘着剤層及びフィルム状接着剤12がこの順に積層されており、フィルム状接着剤12における粘着剤層と接触している側とは反対側の表面が半導体チップ9の裏面9bに貼付される。
本工程においては、次いで、図1(b)に示すように、フィルム状接着剤複合シート1の支持シート11に対して、その裏面11bから力を加えることで、支持シート11越しにフィルム状接着剤12に力を加える。ここでは、突き上げ部81から突起(ピン)811が突出して、突起811の先端部が支持シート11をその裏面11bから突き上げることで、支持シート11を介してフィルム状接着剤12に対し、突起811の突出方向に力を加える例を示している。このとき、突起811の突出量(突き上げ量)、突出速度(突き上げ速度)、突出状態の保持時間(持ち上げ待ち時間)等の突き上げ条件を適宜調節できる。
ここでは、支持シート11を突き上げる突起811の数が1個である場合を示しているが、2個以上であってもよく、突起811の数は適宜選択すればよい。
フィルム状接着剤複合シート1によれば、このように、フィルム状接着剤12に力を加えると、突起811の突き上げに伴って発生するせん断力により、工程異常の発生を抑制しながら、フィルム状接着剤12を切断できる。より具体的には、フィルム状接着剤12が目的とする箇所、すなわち、半導体チップ9として、支持シート11からの引き離しの対象となるもののみを取り囲む箇所で、常温で切断できる。そして、例えば、フィルム状接着剤12にレーザーを照射して切断する工程や、フィルム状接着剤12をエキスパンドすることによって切断する工程等、フィルム状接着剤12の切断を主目的とした工程を別途設けることなく切断できる。
<引き離し工程>
前記引き離し工程においては、前記切断工程後に、図1(c)に示すように、半導体チップ9とこれに貼付されている切断後のフィルム状接着剤12を、支持シート11から引き離す(ピックアップする)。本工程は、通常、前記切断工程後、直ちに連続して行われる。ここでは、半導体装置の製造装置の引き上げ部82によって半導体チップ9を引き上げることにより、この半導体チップ9に貼付されている切断後のフィルム状接着剤12を支持シート11から剥離させる例を示している。このように半導体チップ9を引き上げる方法は、公知の方法でよく、例えば、真空コレットにより半導体チップ9の表面を吸着して引き上げる方法等が挙げられる。
フィルム状接着剤複合シート1によれば、このように、半導体チップ9を引き上げると、工程異常の発生を抑制しながら、フィルム状接着剤12を支持シート11から剥離させることができる。より具体的には、フィルム状接着剤12の目的とする半導体チップ9に対応する部位が、支持シート11から剥離すると共に、フィルム状接着剤12における目的外の半導体チップ9に対応する部位が、支持シート11から剥離する現象が抑制される。そして、フィルム状接着剤12が所定の箇所で切断されているので、引き上げた半導体チップ9がフィルム状接着剤12と共に支持シート11から引き離される。
本発明の製造方法においては、フィルム状接着剤と共に引き離された(ピックアップされた)半導体チップを用いて、以降は従来法と同様の方法で、半導体装置を製造する。例えば、前記半導体チップを基板の回路面にフィルム状接着剤によってダイボンディングし、必要に応じて、この半導体チップにさらに半導体チップを少なくとも1個積層して、ワイヤボンディングを行った後、全体を樹脂により封止することで、半導体パッケージとする。そして、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置を作製すればよい。
本発明の半導体装置の製造方法は、図1を引用して説明した上述の方法に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述の方法において一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、支持シート11越しにフィルム状接着剤12に力を加える方法としては、ここまでは、突起811により支持シート11を突き上げることで、フィルム状接着剤12に力を加える方法について説明した。これ以外の方法としては、例えば、突起811に代えてスライダーにより、支持シート11を突き上げることで、フィルム状接着剤12に力を加える方法が挙げられる。
図2は、上述のフィルム状接着剤に力を加えて、これを切断する他の実施形態を模式的に説明するための断面図である。なお、図2において、図1に示すものと同じ構成要素には、図1の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。これは図3以降の図においても同様である。
ここに示すのは、フィルム状接着剤の切断方法として、図1(b)を参照して説明したものに代わるものである。
本実施形態を適用する場合も、まず、図1(a)を参照して説明した場合と同じ方法で、貼付工程を行う。
次いで、フィルム状接着剤複合シート1の支持シート11に対して、その裏面11bから力を加えることで、支持シート11越しにフィルム状接着剤12に力を加える。ただし、本実施形態では、突き上げ部81における、図1(b)に示すような突起811の突出ではなく、図2(a)及び図2(b)に示すような、スライダー812の移動によって、支持シート11をその裏面11bから突き上げる。
本実施形態では、図2(a)に示すように、突き上げ部81から突出しているスライダー812の表面812aが、支持シート11の裏面11bに接触した状態となる。このとき、スライダー812の表面812aは、図1(a)に示すような、切断工程前の支持シート11の裏面11bとは、平行ではない。したがって、スライダー812の表面812aに直交する方向、すなわち、鉛直方向ではなく斜め方向に、支持シート11に対して、その裏面11bから力を加えることで、フィルム状接着剤12の突き上げ高さに差が生じる。ただし、支持シート11越しにフィルム状接着剤12に力が加わるのは、図1(b)の場合と同様である。これにより、フィルム状接着剤12の突き上げ高さが高い領域のうち、半導体チップ9が貼付されていない領域(図2(a)中の第1領域121)において、突き上げに伴って発生するせん断力により、工程異常の発生を抑制しながらフィルム状接着剤12を切断できる。
スライダー812による突き上げ時には、スライダー812の突出量(突き上げ量)、傾斜角(突き上げ速度)、移動速度(持ち上げ待ち時間)等の突き上げ条件を適宜調節できる。
本実施形態では、次いで、図2(b)に示すように、突き上げられていない支持シート11の裏面11bに対して平行な方向に、スライダー812を移動させる。これにより、支持シート11の突き上げ部位が移動する。そして、この突き上げ部位の移動後において、フィルム状接着剤12の突き上げ高さが高い領域のうち、半導体チップ9が貼付されていない領域(図2(b)中の第2領域122)において、突き上げに伴って発生するせん断力により、工程異常の発生を抑制しながらフィルム状接着剤12を切断できる。
このようなスライダー812の移動に伴って発生するせん断力により、フィルム状接着剤12は、図1を参照して説明した場合と同様に、工程異常の発生を抑制しながら切断される。
以降、図1(a)を参照して説明した場合と同じ方法で、引き離し工程を行うことができる。
ただし、通常は、図2を参照して説明したようなスライダー突き上げ方式よりも、図1を参照して説明したようなピン突き上げ方式の方が、フィルム状接着剤の切断効果が高い。そこで、いずれの方式を採用するかは、例えば、フィルム状接着剤の破断伸度B等の強度に関する特性を考慮して選択することが好ましい。
以上のように、本発明の半導体装置の製造方法によれば、前記切断工程において、フィルム状接着剤が目的とする箇所で切断できるので、フィルム状接着剤が切断されないことに伴う、半導体チップの引き離し(持ち上げ)不良が抑制される。
また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、前記引き離し工程において、フィルム状接着剤の目的とする部位が支持シートから剥離するので、半導体チップの引き離し(持ち上げ)不良の発生が抑制される。さらに、フィルム状接着剤の目的外の部位が支持シートから剥離することが抑制されるので、目的とする半導体チップだけでなく、これに隣接する半導体チップも同時にフィルム状接着剤と共に支持シートから引き離される、いわゆるダブルダイの発生が抑制される。
このように、本発明によれば、簡略化された方法で、工程異常の発生を抑制して、半導体装置を製造できる。
本発明のフィルム状接着剤複合シートを用いない場合には、半導体装置の製造時において、以下に示すような工程異常の発生が抑制できない可能性がある。
図3は、従来のフィルム状接着剤複合シートを用いた場合の、半導体装置の製造過程における、フィルム状接着剤複合シート及び半導体チップの一態様を模式的に示す断面図である。
図3に示すフィルム状接着剤複合シート7を用いた場合、図3(a)に示すように、フィルム状接着剤72に力を加えても、フィルム状接着剤72は切断されず、さらに、半導体チップ9を引き上げたときに、フィルム状接着剤72が半導体チップ9から剥離して、支持シート71に積層されたままとなる。その結果、図3(b)に示すように、半導体チップ9の持ち上げ不良が発生する。
このような工程異常は、例えば、フィルム状接着剤複合シート7において、前記破断伸度B及び破断強度Cの値が大きく、これら破断伸度B及び破断強度Cの値と比較したときの前記接着力Aの値が望ましくない程度にまで小さく、前記式(1)の関係を満たしていない場合に発生し易い。
図4は、従来のフィルム状接着剤複合シートを用いた場合の、半導体装置の製造過程における、フィルム状接着剤複合シート及び半導体チップの他の態様を模式的に示す断面図である。
図4に示すフィルム状接着剤複合シート7を用いた場合、図4(a)に示すように、フィルム状接着剤72の一部に切れ込みが形成されるだけとなり、フィルム状接着剤72は切断されず、さらに、半導体チップ9を引き上げたときに、フィルム状接着剤72が半導体チップ9から剥離して、支持シート71に積層されたままとなる。その結果、図4(b)に示すように、半導体チップ9の持ち上げ不良が発生する。
このような工程異常も、例えば、フィルム状接着剤複合シート7において、前記破断伸度B及び破断強度Cの値が大きく、これら破断伸度B及び破断強度Cの値と比較したときの前記接着力Aの値が望ましくない程度にまで小さく、前記式(1)の関係を満たしていない場合に発生し易い。
なお、図3〜4を参照して説明した工程異常は一例であって、場合によっては、他の工程異常が発生することもある。
これに対して、本発明のフィルム状接着剤複合シートを用いた場合には、このような工程異常の発生が抑制され、その結果、従来よりも簡略化された方法で安価に半導体装置を製造できる。
本発明の1実施形態であるフィルム状接着剤複合シートの1つの側面としては、
フィルム状接着剤複合シートであって、
前記フィルム状接着剤複合シートは、基材を有する支持シート上に、
厚さ1〜50μm、好ましくは3〜25μm、さらに好ましくは5〜15μm、の硬化性のフィルム状接着剤が設けられており;
硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力を接着力A(N/24mm)とし、硬化前の前記フィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように積層した積層体の破断伸度を破断伸度B(%)とし、前記積層体の破断強度を破断強度C(MPa)としたとき、
前記接着力Aが、0.3〜15N/24mm、好ましくは0.3〜11N/24mm、より好ましくは0.4〜7N/24mm、さらにより好ましくは0.45N/24mm以上10N/24mm未満、特に好ましくは0.45N/24mm以上5.8N/24mm以下であり;
破断伸度Bが、1200%以下、好ましくは30〜1200%、より好ましくは40〜1100%、さらにより好ましくは45〜1050%であり、又は
30〜500%、40〜500%、45〜500%若しくは50〜440%であってもよく;
破断強度Cが、0.4〜17MPa、好ましくは0.5〜15MPa、より好ましくは0.6〜13MPa、さらに好ましくは0.8〜11MPa、特に好ましくは2.5〜11MPaであり;かつ
A/(B×C)の値が、0.0005以上0.0170以下、好ましくは0.0006以上0.0140以下、より好ましくは0.00067以上0.0115以下、さらに好ましくは0.0008以上0.0125未満、0.0008以上0.0105以下である、
フィルム状接着剤複合シート、が挙げられる。
本発明の1実施形態であるフィルム状接着剤複合シートの他の側面としては、
前記フィルム状接着剤複合シートであって、
さらに、前記フィルム状接着剤が、
重合体成分(a)、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)、充填剤(d)、及びカップリング剤(e)を含む接着剤組成物から形成されており;
前記重合体成分(a)は、重量平均分子量(Mw)が10000〜2000000のアクリル系樹脂、好ましくは、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、及びアクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる群から選択されるモノマーが共重合された樹脂であり;
前記エポキシ系熱硬化性樹脂(b)は、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)からなり、
前記エポキシ樹脂(b1)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂物からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましく;
前記充填剤(d)は、シリカ又はアルミナであり;
前記カップリング剤(e)は、エポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記重合体成分(a)のアクリル系樹脂の含有量は、前記フィルム状接着剤の総質量に対して、5〜40質量%、好ましくは7〜25質量%であり、又は9〜28質量%であってもよく;
前記エポキシ系熱硬化性樹脂(b)の含有量は、前記重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、50〜1000質量部、好ましくは100〜900質量部、より好ましくは150〜870質量部であり;、又は47〜81質量%若しくは47〜80質量%であってもよく;
前記充填材(d)の含有量は、前記フィルム状接着剤の総質量に対して、5〜80質量%、好ましくは7〜60質量%であり、又は8〜12質量%若しくは9〜12質量%であってもよく;
前記カップリング剤(e)の含有量は、前記重合体成分(a)及び前記エポキシ系熱硬化性樹脂(b)の合計含有量100質量部に対して、0.03〜20質量部、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部であり、又は0.28〜1質量%であってもよい、
フィルム状接着剤複合シート、が挙げられる。
さらに、フィルム状接着剤複合シートは、
前記前記基材が、低密度ポリエチレンからなる層と、ポリプロピレンを含む層及びスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体と、低密度ポリエチレンからなる層と、がこの順に積層されてなる基材であってもよい。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
接着剤組成物の製造に用いた成分を以下に示す。
・重合体成分
(a)−1:アクリル酸ブチル(以下、「BA」と略記する)(55質量部)、アクリル酸メチル(以下、「MA」と略記する)(10質量部)、メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」と略記する)(20質量部)及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」と略記する)(15質量部)を共重合してなるアクリル系樹脂(重量平均分子量800000、ガラス転移温度−28℃)。
(a)−2:MA(85質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル系樹脂(重量平均分子量370000、ガラス転移温度6℃)。
(a)−3:MA(95質量部)及びHEA(5質量部)を共重合してなるアクリル系樹脂(重量平均分子量760000、ガラス転移温度9℃)。
(a)−4:熱可塑性樹脂、ポリエステル(東洋紡社製「バイロン220」、重量平均分子量35000、ガラス転移温度53℃))
・エポキシ樹脂
(b1)−1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER828」、エポキシ当量184〜194g/eq)
(b1)−2:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER834」、エポキシ当量250g/eq、重量平均分子量470)
(b1)−3:多官能芳香族型(トリフェニレン型)エポキシ樹脂(日本化薬社製「EPPN−502H」、エポキシ当量167g/eq、軟化点54℃、重量平均分子量1200)
(b1)−4:アクリロイル基が付加されたクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「CNA147」、エポキシ当量518g/eq、数平均分子量2100、不飽和基含有量はエポキシ基と等量)
(b1)−5:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「アデカレジン
EP−4088L」、エポキシ当量165g/eq)
・熱硬化剤
(b2)−1:ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工社製「BRG−556」、軟化点80℃、重量平均分子量950)
(b2)−2:ビフェニル型フェノール樹脂(明和化成社製「MEH−7851−SS」、軟化点67℃)
(b2)−3:アラルキル型フェノール樹脂(三井化学社製「ミレックスXLC−4L」、軟化点63℃)
・硬化促進剤
(c)−1:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
・充填材
(d)−1:球状シリカ(アドマテックス社製「SC2050MA」)
(d)−2:球状シリカ(アドマテックス社製「SC2050」)
(d)−3:球状シリカ(アドマテックス社製「YA050C−MJE」)
・カップリング剤
(e)−1:シランカップリング剤、エポキシ基含有オリゴマー型(三菱化学製「MKCシリケートMSEP−2」、エポキシ当量222g/eq)
(e)−2:シランカップリング剤、エポキシ基含有オリゴマー型(信越シリコーン社製「X−41−1056」、エポキシ当量280g/eq)
(e)−3:シランカップリング剤、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM−403」)
(e)−4:シランカップリング剤、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製「KBE−403」)
(e)−5:シランカップリング剤、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM−303」)
(e)−6:シランカップリング剤、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製「KBE−402」)
・架橋剤
(f)−1:トリレンジイソシアナート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」)
・エネルギー線硬化性樹脂
エネルギー線硬化性樹脂(g)−1:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R−684」、紫外線硬化性樹脂、分子量304)
・光重合開始剤
光重合開始剤(h)−1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「IRGACURE 184」)
・その他の成分
(z)−1:シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製「XF42−334」)
フィルム状接着剤複合シートの製造に用いた基材を以下に示す。
基材(1):低密度ポリエチレンからなる層(日本ポリエチレン社製「ノバテックLC520」、密度0.923g/cm、MFR3.6g/10分、厚さ8μm)と、ポリプロピレンを含む層(ホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製「プライムポリプロF−300SP」、密度0.90g/cm、MFR3.0g/10分)及びスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体(JSR社製「ダイナロン8601P」、密度0.89g/cm、MFR3.5g/10分)の混合物からなる層、厚さ60μm)と、低密度ポリエチレンからなる層(厚さが8μmではなく12μmである点以外は上記と同じもの)と、がこの順に積層されてなる基材。なお、上記のMFR(メルトフローレート)は、JISK7210:1999に従って、測定温度を低密度ポリエチレンの場合は190℃、ホモポリプロピレン樹脂の場合は230℃、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体の場合は230℃として、荷重を21.18Nとして、測定した値である。
基材(2):ポリエチレン−メタクリル酸共重合体からなる層と、ポリエチレンからなる層と、が積層されてなる、2層構造の基材(アキレス社製「HUSL1301」)。
<フィルム状接着剤複合シートの製造>
[実施例1]
(接着剤組成物の製造)
重合体成分(a)−1、重合体成分(a)−4、エポキシ樹脂(b1)−1、エポキシ樹脂(b1)−3、熱硬化剤(b2)−1、硬化促進剤(c)−1、充填材(d)−1、カップリング剤(e)−1、エネルギー線硬化性樹脂(g)−1、及び光重合開始剤(h)−1を、これらの含有量(質量部)が表1に示す値となるようにメチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、接着剤組成物として、固形分濃度が50質量%である接着剤組成物を得た。なお、表1中の含有成分の欄の「−」との記載は、接着剤組成物がその成分を含有していないことを意味する。
(フィルム状接着剤複合シートの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面が剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET3811」、厚さ38μm)の剥離処理面に、上記で得られた接着剤組成物を塗布し、100℃で3分間乾燥させることで、厚さが7μmのフィルム状接着剤を形成した。次いで、このフィルム状接着剤の露出面に、基材(1)の厚さ8μmの低密度ポリエチレンからなる層を貼り合わせることにより、フィルム状接着剤複合シートを得た。
[実施例2〜5、比較例1〜2]
基材、又は接着剤組成物の含有成分を表1に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、フィルム状接着剤複合シートを製造した。
なお、基材(2)を用いた場合には、そのポリエチレンからなる層を、フィルム状接着剤の露出面に貼り合わせた。
<フィルム状接着剤複合シートの評価>
上記で得られた各実施例及び比較例のフィルム状接着剤複合シートについて、下記項目を評価した。
(接着力Aの測定)
フィルム状接着剤複合シートを、24mm×300mmの大きさに裁断し、フィルム状接着剤を60℃に加熱して、このフィルム状接着剤に、セロハンテープ(ニチバン社製「セロテープ(登録商標)No.405」、幅24mm)の粘着面を貼付した。次いで、基材をフィルム状接着剤から剥離させ、露出したフィルム状接着剤を60℃に加熱したまま、6インチのシリコンウエハ(厚さ350μm)のドライポリッシュ面に貼付することで、試験片として、セロハンテープ、フィルム状接着剤及びシリコンウエハがこの順に積層された積層体を得た。
得られた積層体を、直ちに23℃、相対湿度50%の環境下(JIS Z0237 2009で規定されている標準環境下)で30分間放置した後、シリコンウエハから、フィルム状接着剤及びセロハンテープが積層された積層シートを、フィルム状接着剤及びシリコンウエハの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度150mm/minで引き剥がす、いわゆる180°剥離を行い、このときの剥離力を測定して、その測定値を接着力A(N/24mm)とした。結果を表1に示す。
(破断伸度Bの測定)
ラミネーターを用いて、2枚のフィルム状接着剤(厚さ20μm)を60℃に加熱して貼り合わせ、さらに同じフィルム状接着剤を同様に貼り合わせることを繰り返して、合計の厚さが200μmである、フィルム状接着剤が積層された積層体を作製した。
次いで、80℃に加熱したホットプレートを用いて、得られた積層体を30秒間加熱した。次いで、スーパーカッター(荻野精機製作所製「PH1−600」)を用いて、この加熱済みの積層体を10秒以内で裁断し、幅15mm、長さ100 mm、厚さ200μmの試験片を作製した。裁断時間が10秒を超えた場合には、一度裁断を中止し、80℃に加熱したホットプレートを用いて、裁断中の前記積層体を再度加熱してから、10秒以内で裁断し、試験片を作製した。このように、前記積層体を加熱後に裁断するのは、試験片の端部に破断の原因となる欠損部が生じないようにするためである。
次いで、得られた試験片について、JIS K7161−1994に準拠して、破断伸度を測定した。より具体的には、以下のとおりである。
すなわち、万能試験機(島津製作所製「オートグラフAG−IS 500N」)を用い、その固定つかみ器具によって前記試験片を二か所で固定した。このとき、固定つかみ器具の先端部間の距離(試験片の露出部位の長さ、固定箇所間の距離)を75mmとした。
そして、引張速度を200mm/minとして、この固定箇所間において試験片を引っ張り、試験片の破断伸度を求めて、破断伸度B(%)とした。結果を表1に示す。
(破断強度Cの測定)
上記の破断伸度B測定時において、試験片が破断した(破壊された)ときの引張応力、すなわち引張破壊応力を測定し、その測定値を破断強度C(MPa)とした。結果を表1に示す。
(A/(B×C)の値の算出)
上記で得られた接着力A、破断伸度B及び破断強度Cの測定値から、A/(B×C)の値を算出した。結果を表1に示す。
(ピンでの突き上げによるピックアップ適性の評価)
8インチのシリコンウエハを2mm×2mm、厚さ50μmのチップに個片化した。そして、ラミネーターを用いて、フィルム状接着剤複合シートのフィルム状接着剤を60℃に加熱し、前記チップのドライポリッシュ面に、この加熱したフィルム状接着剤を貼り合わせた。以上の操作により、1枚のフィルム状接着剤複合シートが多数のシリコンチップに貼付された試験用シートを得た。
次いで、この試験用シートに対して、ピックアップ装置(キャノンマシナリー社製「BESTEM−D02」)を用いて、突き上げ量150μm、突き上げ速度20mm/min、持ち上げ待ち時間1secの条件で、1ピン突き上げ方式により、ピックアップを54回行った。そして、ピックアップが40回以上成功した場合には、ピックアップ適性が良好(X)と判定し、それ以外の場合には、ピックアップ適性が不良(Y)と判定した。結果を表1に示す。
(スライダーでの突き上げによるピックアップ適性の評価)
上述のピックアップ適性の評価で用いたピックアップ装置にスライダーキットを装着し、図2に示すものと同様の構成としたピックアップ装置を用いて、スライダー突き上げ方式によりピックアップを行った点以外は、上述の1ピン突き上げ方式の場合と同じ方法で、ピックアップ適性を評価した。なお、このときは、ストローク距離1.5mm、ストローク速度90mm/sec、待ち時間1secの条件でピックアップを行った。結果を表1に示す。
Figure 2017145979
上記結果から明らかなように、実施例1〜5のフィルム状接着剤複合シートは、A/(B×C)の値が0.0008以上の範囲にあり、前記式(1)の関係を満たしていた。そして、これらシートのフィルム状接着剤が貼付されているシリコンチップにおいては、1ピン突き上げ方式により、フィルム状接着剤の切断を主目的とした工程を別途設けなくても、工程異常の発生を抑制しつつ、フィルム状接着剤を切断できた。さらに、切断後のフィルム状接着剤が貼付されているシリコンチップを、工程異常の発生を抑制しつつ、支持シートから引き離すことができた。このように、実施例1〜5のフィルム状接着剤複合シートは、1ピン突き上げ方式において、良好なピックアップ適性を示した。
さらに、フィルム状接着剤の破断伸度Bが440%以下の範囲にある、実施例1〜2、4〜5のフィルム状接着剤複合シートを用いた場合には、スライダー突き上げ方式でも、1ピン突き上げ方式の場合と同様に、良好なピックアップ適性を示した。
これに対して、比較例1〜2のフィルム状接着剤複合シートは、A/(B×C)の値が0.0004以下の範囲にあり、前記式(1)の関係を満たしていなかった。そして、これらシートのフィルム状接着剤が貼付されているシリコンチップでは、1ピン突き上げ方式及びスライダー突き上げ方式のいずれの場合も、フィルム状接着剤の切断から、フィルム状接着剤付きシリコンチップの支持シートからの引き離しまでの間において、工程異常の発生回数が多く、ピックアップ適性が不良であった。
本発明は、半導体装置の製造に利用可能であるので、産業上極めて有用である。
1・・・フィルム状接着剤複合シート、11・・・支持シート、11a・・・支持シートの表面、11b・・・支持シートの裏面、12・・・フィルム状接着剤、9・・・半導体チップ、9b・・・半導体チップの裏面

Claims (4)

  1. フィルム状接着剤複合シートであって、
    前記フィルム状接着剤複合シートは、基材を有する支持シート上に、厚さ1〜50μmの硬化性のフィルム状接着剤が設けられており;
    硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力を接着力A(N/24mm)とし、硬化前の前記フィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように積層した積層体の破断伸度を破断伸度B(%)とし、前記積層体の破断強度を破断強度C(MPa)としたとき、下記式(1)の関係を満たす、フィルム状接着剤複合シート。
    A/(B×C)≧0.0005 ・・・・(1)
  2. 前記破断伸度Bが500%以下である、請求項1に記載のフィルム状接着剤複合シート。
  3. 前記支持シートが前記基材からなり、前記基材に前記フィルム状接着剤が直接接触して設けられている、請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤複合シート。
  4. 半導体装置の製造方法であって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤複合シートを、前記フィルム状接着剤を介して分割済みの複数個の半導体チップに貼付する工程と、
    前記半導体チップに貼付した前記フィルム状接着剤複合シートにおける支持シートに対して、前記フィルム状接着剤が設けられている側とは反対側から力を加えることで、前記支持シート越しに前記フィルム状接着剤に力を加えて、前記フィルム状接着剤を切断する工程と、
    前記半導体チップとこれに貼付されている切断後の前記フィルム状接着剤を、前記支持シートから引き離す工程と、
    を含む、半導体装置の製造方法。
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