JPWO2017094757A1

JPWO2017094757A1 - 衣類

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Publication number: JPWO2017094757A1
Application number: JP2017554132A
Authority: JP
Inventors: 啓高柳
Original assignee: Toray Industries Inc
Current assignee: Toray Industries Inc
Priority date: 2015-12-03
Filing date: 2016-11-30
Publication date: 2018-09-20
Also published as: WO2017094757A1; CN108366634A; US11104106B2; EP3384793B1; EP3384793A4; EP3384793A1; US20180343943A1

Abstract

優れた風合いを備えるとともに、防寒性および透湿防水性を備えた衣類を提供する。
表側生地（３）と、裏側生地（４）と、当該表側生地（３）と裏側生地（４）のあいだに充填される充填物とを備え、上記表側生地（３）と裏側生地（４）が織成されることによって形成される多重織物の一方の面に透湿防水性被膜（５）を有する。

Description

本発明は、多重織物からなる衣類に関し、特に、優れた透湿性と防水性を有する多重織物からなる衣類に関するものである。

例えば、ダウンジャケットやダウンベスト又は化学繊維入りのスキーウェアは布地に充填された羽毛等の移動をなくすためにキルティングが施されている。しかしながら、キルティングでは生地布にミシン目ができることは避け得ず、そのために内部に溜まった暖かい空気がミシン目を通して逃げていくという欠点を有している。また、このミシン目から羽毛や化学繊維等の充填物が吹き出すという欠点を有している。さらに、キルティングを施した生地では、その縫着孔から雨水が浸入しやすいという欠点を有している。

このような課題を解決するために、羽毛を充填した小さな袋を用いて羽毛の片寄りを防止する方法が提案されている（特許文献１）。しかし、このような方法では、羽毛のもつ風合いが損なわれるという問題がある。
また、表裏の側地に隔壁布を接着面で接着固定し、羽毛等を充填するための小区画室を設ける方法（特許文献２）や、主襠布と接着層を含む帯状体を重ねた直交襠布を接合して格子状にして表裏の側地と帯状材の接着層で接着し、複数の小区画を形成する方法（特許文献３）が提案されている。しかし、これらの方法では、風合いが硬くなるという問題がある。また、これらの方法では、表面の素材に物理的な力が加わった場合に、追従性がないため、着心地を損なうという問題がある。
さらに、これら特許文献１ないし３に記載のものは、透湿防水性という点において満足できるものではない。

特開平５−１０３７１２号公報特開平５−４２０２９号公報特開平１０−２３４５４７号公報

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、優れた風合いを備えるとともに、防寒性および透湿防水性を備えた衣類を提供することを課題とするものである。

本発明は、前記課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、次のような手段を採用するものである。
（１）表側生地と、裏側生地と、当該表側生地と裏側生地のあいだに充填される充填物とを備え、上記表側生地と裏側生地が織成されることによって形成される多重織物の一方の面に透湿防水性被膜を有する衣類。
（２）多重織物の他方の面に合成樹脂被膜を有する前記（１）に記載の衣類。
（３）多重織物が複数の区画から構成される前記（１）に記載の衣類。
（４）透湿防水性被膜を有する多重織物の通気度が５ｃｃ／ｃｍ^２／秒以下である前記（１）ないし（３）のいずれかに記載の衣類。
（５）透湿防水性被膜を有する多重織物の耐水圧が３００ｍｍＨ_２Ｏ以上である前記（１）ないし（４）のいずれかに記載の衣類。

本発明の衣類は縫い目がないので、衣類内部の空気が外部に逃げにくく、防寒性に優れている。さらに、本発明の衣類は縫い目がないので、外気が浸入しにくく、防水性に優れている。そして、表側生地と裏側生地のあいだに充填される充填物により優れた風合いを備えている。さらに、多重織物の一方の面に透湿防水性被膜を有することにより、優れた透湿防水性を備えている。また、多重織物の他方の面に合成樹脂被膜を有することにより、表側生地と裏側生地のあいだに充填される充填物が吹き出しにくいという優れた効果を有している。

図１は表地と透湿防水性被膜と２重織物を有する３層ラミネート（一方の面に透湿防水性被膜を有する２重織物）の一例を示す断面図である。図２は図１のＡ部の２重織物の織り組織を示す図である。図３は図１のＢ部の２重織物の織り組織を示す図である。図４は表地と透湿防水性被膜と２重織物と合成樹脂被膜と裏地を有する４層ラミネート（一方の面に透湿防水性被膜を有し、他方の面に合成樹脂被膜を有する２重織物）の一例を示す断面図である。図５は本発明の実施例および比較例において製造したダウンジャケットを示す正面図である。図６は従来の多重織物を示す斜視図である。図７は従来の多重織物を素材とした服飾品の斜視図である。図８は図７の服飾品の耳製造処理工程を示す断面図である。図９は図７の服飾品の耳製造処理工程を示す断面図である。

《多重織物》
本発明の理解を深めるために多重織物について説明する。一般的な多重織物の一例としては、図６に示すように、経糸と緯糸とを交互に絡ませるように織り組した二枚の単位織物２１、２２を表裏に重ね合わせた状態で結束糸２３で結束することにより製造される。この多重織物２０は織機によって容易に織ることができることから、例えば、ベルト、コート、ジャケット、スラックス、バッグなどの服飾品などの素材として用いられる。

例えば、多重織物２０を用いてベルトを製造するには、図７に示すように、素材としての多重織物２０を所定形状に裁断した後、図８に示すように、裁断した多重織物２０の周縁に存在する結束糸２３を単位織物２１、２２の周縁を開きつつ鋏やナイフなどで切断Ｓする。そして、切断した糸屑を取り除く。次に、図９に示すように、各単位織物２１、２２の周縁部を互いに内側に折り返してアイロンでプレスすることにより耳２４を作る。そして、この耳２４として折り返された部分を縫い糸２５で縫製する。

しかし、図６に示す多重織物２０は、多重織物２０の機織り工程において結束糸２３がかなりの張力で各単位織物２１、２２に織り込まれている。従って、単位織物２１と２２の重ね合わせ部の空気層が小さくなるので、保温性や嵩高性に優れているとは言えない。また、結束糸２３による縫い目があるので、上記のような欠点がある。さらに、縫い目があるので、雨やその他の水は通さず、湿気（水蒸気）は通すという、透湿防水性を備えていない。
そこで、本発明者は、縫い目がない織組織からなる多重織物の一方の面に透湿防水性被膜を有することにより上記課題を解決しうることを見出したのである。

《本発明の衣類を構成する表側生地と裏側生地の織り方》
本発明の衣類を構成する表側生地と裏側生地を得るための織り方としては、「経糸と緯糸が交互に規則的に交差している織り方である」平織、「経糸と緯糸が交互に交差することがなく、１本交差したら次は１本飛ばして交差する１×２や、さらに１本飛ばして交差する１×３などの織り方がある」綾織、「緯糸の浮きが少なく、経糸のみが表に出ているように見える光沢が多い織り方である」朱子織、「平織や朱子織などの他の織り方をベースにして、その上に背景にしたい色糸を乗せる織り方である」ベタ織、「細かい絵柄や文字を表現するのに最適な織り方で、特殊な糸を使用したり、糸密度を高めることで通常の織り方では表現できない細かな絵柄や文字が再現できる織り方である」高密度織、「収縮やゆがみに強い織り方である」防縮織および「梨の表面のようなザラザラとして光沢のない表情の織り方である」梨地織などを挙げることができる。これらの織り方の中では、糸の交差が他の織り方と比較して多いため、生地としては薄いが丈夫である平織が好ましい。

《本発明の衣類を構成する表側生地と裏側生地のあいだに充填される充填物》
本発明の衣類を構成する表側生地と裏側生地のあいだに充填される充填物としては、羽毛（ダウン）、羽根（フェザー）、綿、ポリエステル等を用いることができるが、優れた保温性を得る上で、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維からなり、その単繊維繊度が０．１〜５．０ｄｔｅｘの短繊維が好ましい。また、係る充填物の目付けは、優れた保温性を得る上で５０〜５００ｇ／ｍ^２の範囲内であることが好ましい。

《本発明の衣類を構成する表側生地と裏側生地の構成繊維》
本発明の衣類を構成する表側生地と裏側生地は、マルチフィラメントを製織することにより製造することができる。マルチフィラメントは複数のモノフィラメントから構成される。得られる生地にある程度の強度を持たせるためには、マルチフィラメントの繊度は、３ｄｔｅｘ以上であることが好ましく、５ｄｔｅｘ以上であることがより好ましく、７ｄｔｅｘ以上であることがさらに好ましい。また、マルチフィラメントの繊度は、２５ｄｔｅｘ以下であることが好ましく、１６ｄｔｅｘ以下であることがより好ましく、１２ｄｔｅｘ以下であることがさらに好ましい。マルチフィラメントの繊度が上記範囲であると、軽量薄地で所定の強度を有する生地が得られる。

マルチフィラメントの破断強度は、３．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上であることが好ましく、４．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上であることがより好ましく、１０ｃＮ／ｄｔｅｘ以下であることが好ましく、６ｃＮ／ｄｔｅｘ以下であることがより好ましい。マルチフィラメントの破断強度が上記範囲であると、扁平度の高いフィラメントを用いる場合であっても、適度な引き裂き強力を有する生地が得られる。

マルチフィラメントの破断伸度は、３５％以上であることが好ましく、５０％以下であることが好ましい。破断伸度が３５％未満であると、表側生地または裏側生地に所定の力がかかったときに、この力に対する応力が１本のモノフィラメントに集中するため、生地が簡単に引き裂かれる場合がある。一方、破断伸度が５０％を超えると、各種製糸装置との摩擦に起因する強い張力によって原糸が伸び、断糸しやすくなる。

マルチフィラメントを構成するモノフィラメントについて具体的に説明する。
モノフィラメントの繊度は、０．５ｄｔｅｘ以上であることが好ましく、１．０ｄｔｅｘ以上であることがより好ましく、３．０ｄｔｅｘ以下であることが好ましく、２．５ｄｔｅｘ以下であることがより好ましい。モノフィラメントの繊度が上記範囲であると、適切な引き裂き強力を有し、且つ、通気性の低い生地が得られる。

マルチフィラメントおよびモノフィラメントは、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の種々の合成繊維で構成することができる。なかでも、強度や寸法安定性の点で、ポリエステル繊維が好ましい。ポリエステル繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等からなる繊維を挙げることができる。ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに、酸成分としてイソフタル酸、５−ナトリウムスルホイソフタル酸やアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合させた共重合ポリエステルからなる繊維であってもよい。前記繊維によってマルチフィラメントを構成する繊維の組み合せは同じであっても異なっていてもよく、適宜組み合わせることができる。

《複数の区画から構成される多重織物》
表側生地と裏側生地が織成されることによって複数の区画から構成される多重織物を得るためには、両端のみがつながっているように織り上げる方法であって、出来上がった生地が袋状になっている、いわゆる袋織を採用して表側生地と裏側生地を織り上げることができる。この単位区画の面積は、表側生地と裏側生地のあいだに充填される充填物の量を考慮して柔らかい風合いを得るために、１平方インチ以上であることが好ましい。上記袋織の織機としては、例えば、エアージェットルーム、ウォータージェットルーム、レピアルームなどを使用可能で、開口装置はドビー、ジャガードなどを使用可能である。本発明の多重織物は、表側生地と裏側生地からなる少なくとも２層を備えているが、２層に限定されるものでなく、用途に応じて３層またはそれ以上の層から構成することができる。

《多重織物の通気度》
多重織物の通気度は、フラジール形法によって測定される通気度において、５ｃｃ／ｃｍ^２／秒以下であることが好ましく、０．１ｃｃ／ｃｍ^２／秒以上であることがより好ましい。通気度が上記範囲であると、表側生地と裏側生地のあいだに充填される充填物が抜けにくいからである。

《多重織物の耐水圧》
生地表面および織成部を含む多重織物の耐水圧は、浸水を防ぐために３００ｍｍＨ_２Ｏ以上であることが好ましい。また、本発明の多重織物からなる衣類の表面には、撥水加工を施すこともできる。撥水剤としては一般的な繊維用撥水加工剤でよく、例えば、シリコーン系撥水剤、パーフルオロアルキル基を有するポリマーからなるフッ素系撥水剤、パラフィン系撥水剤が好適に用いられる。中でも、フッ素系撥水剤を用いると、被膜の屈折率を低く抑えることができ、さらに、繊維表面における光の反射を低減できるため、特に好ましい。撥水加工の方法は、パディング法、スプレー法、プリント法、コーティング、グラビア法など一般的な方法を用いることができる。

《繊維》
透湿防水性被膜は摩耗耐久性が低いため衣類の表側に晒されていることは好ましくないため、透湿防水性被膜の表面に表地を設けることが好ましい。透湿防水性被膜の表地の織物に使用する繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維やナイロン６、ナイロン６６などのポリアミド繊維の如き合成繊維、アセテート繊維の如き半合成繊維、綿や麻や羊毛の如き天然繊維を単独で、または２種以上を混合して使用できる。透湿防水性を備えた織物には撥水加工を施して用いることが通常であるため、耐久性の高い撥水加工が施し易いポリエステル繊維やナイロン繊維の如き合成繊維の長繊維が好ましい。繊維の断面形状は、特に限定されず、丸、三角、中空等のものを広く用いることができる。また、制電性等を付与する添加物や酸化チタン等の艶消し剤を糸に含んでも何ら差し支えない。

透湿性を向上させる観点から表地となる織物に用いる繊維は、吸湿性が低い方が好ましい。透湿性は、透湿防水性被膜をはさむ高湿度側の水蒸気圧と低湿度側の水蒸気圧の差がドライブフォースになって水蒸気が移動する。よって、水蒸気圧差が大きいほど透湿量が多くなる。衣服等に用いられる場合、通常は、透湿防水性被膜面が衣服内で高湿度側であり、表地の織物面が低湿度側である。吸湿率の高い繊維が用いられた織物の場合、透湿防水性被膜面から織物面に水蒸気が移動する際、織物が水分を保有するため局部的に低湿度側の水蒸気圧が高くなり、結果的に水蒸気圧差が小さくなり、透湿量が少なくなる。すなわち、表地用の織物の吸湿率が低いほど透湿性が高くなるのである。こうした考察の結果から、表地に織物を用いる場合、織物の吸湿率は１％以下とすることが好ましく、０．５％以下がより好ましい。このため、織物に用いる繊維はポリエステル繊維やポリプロピレン繊維の長繊維が好ましいが、染色性を考慮するとポリエステル繊維が特に好ましい。

衣類の透湿度は、厚さに反比例し、薄いほど透湿性が高くなる。この理由としては、薄いほど水蒸気が移動する距離が短くなり透湿度が高くなるものと考えられる。好ましい厚さは０．２ｍｍ以下である。このように透湿防水性を備えた衣類の厚さを薄くするには、（１）織物の厚さを薄くする、（２）透湿防水性被膜の厚さを薄くする、（３）ラミネート品の場合は接着剤層を薄くするなどで達成できる。

織物の厚さを薄くすることは、使用する糸の繊度を細くすればよいので総繊度７７ｄｔｅｘ以下が好ましく、５５ｄｔｅｘ以下がより好ましい。しかし細すぎると引裂強力が低下するため１１ｄｔｅｘ以上であることが好ましい。用途により細繊度糸が必要な場合は、何本かに一本は太繊度糸あるいは細繊度糸を複数本引き揃えて打ち込むリップストップ等の織り組織を用いることにより、薄くても引裂強力の高い織物が得られる。織り組織は、平織り、ツイル、サテン、変化組織等特に限定はないが、厚さを薄くする観点からは平織りが好ましい。

《透湿防水性被膜》
透湿防水性被膜に使用する樹脂については、例を挙げると、ポリエステル共重合系、ポリエーテル共重合系、あるいはポリカーボネート共重合系のポリウレタン樹脂、シリコーン、フッ素、アミノ酸等を共重合したポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、合成ゴム、ポリ塩化ビニルの如きビニル系樹脂等を用いることができる。透湿性を付与させるためには、（１）透湿性を有するウレタンを主成分とする無孔質膜、（２）ウレタンを主成分とする微多孔質膜、（３）ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする微多孔質膜、などがある。なかでも厚さを薄くしても防水性を維持できる観点から（１）の透湿性を有するウレタンを主成分とする無孔質膜が特に好ましい。なお、上記（２）および（３）のような微多孔質膜に、透湿性を有する無孔質膜をさらに積層することもできる。

透湿性を有するウレタンを主成分とする無孔質膜は、透湿性を高くするためにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の親水性ポリオールを含有させたものが好ましく使用でき、親水性ポリオールの含有率が１０重量％以上５０重量％以下のものが好ましい。特に、膜強度の観点から、主鎖に脂肪族カーボネート系からなるジオールを導入したポリウレタンが好ましい。また、親水性ポリオールを主鎖よりも側鎖に主として含有する構成のものが好ましい。これらの樹脂をメチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、トルエン等の有機溶剤で希釈して離型紙上に塗布し、乾燥することで無孔質膜が得られる。

ウレタンを主成分とする微多孔質膜は、ポリウレン樹脂をジメチルホルムアミドに溶解させてなるポリウレタン溶液を布帛にコーティングし、これを湿式ゲル化させることにより得られる。

ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする微多孔質膜は、ペースト成形押し出し方法により、約９５％以上の結晶化度を有するテトラフルオロエチレン重合体を押し出し、前記成形物より液体減摩剤を、液体減摩剤の蒸発温度より高く、前記重合体の結晶融点より低い温度で乾燥することにより除去し、そして前記重合体の結晶融点より低い温度で１方向以上の方向に延伸することにより得られる。

本発明においては、表側生地と裏側生地のあいだに充填される充填物が吹き出しにくいという優れた効果を備えた衣類とするために、多重織物の他方の面に合成樹脂被膜が積層されていることが好ましい。

合成樹脂被膜は、樹脂からなるフィルムを接着剤でラミネートしたものや、樹脂をコーティングしたものが用いられる。

合成樹脂被膜は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等からなる微多孔被膜、無孔被膜、微多孔被膜に無孔被膜を積層した被膜等が用いられる。なかでも被膜にストレッチ性があり、積層した伸縮性布帛のストレッチ性の妨げにならないという観点から、ポリウレタンを主体とした微多孔被膜または無孔被膜であることが好ましく、あるいはポリウレタンを主体とした微多孔被膜と無孔被膜を積層した被膜であることが好ましい。微多孔被膜の製造方法の一例としては、ポリウレタン樹脂をジメチルホルムアミドに溶解し、ナイフオーバーロールコーターで布帛にコーティングした後、水中に導き凝固させ、次いで乾燥させるという、いわゆる湿式凝固法にてポリウレタン微多孔被膜を製造する方法が挙げられる。

無孔被膜の製造方法の一例としては、イソシアネートがキシリレンジイソシアネートであり、ソフトセグメントにポリテトラメチレングリコールを含むポリエーテル系ポリウレタン樹脂をジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンとの混合溶媒に溶解し、ポリウレタン樹脂溶液を調整した後、架橋剤としてシアヌル骨格を有するヘキサメチレンジイソシアネートを添加した塗工液をナイフコーター等で布帛に塗工し、乾燥する方法が挙げられる。

また、微多孔被膜に無孔被膜を積層した被膜は、上述の湿式凝固法にて布帛にポリウレタン微多孔被膜を積層した後、微多孔被膜面に上述の無孔被膜を作製した塗工液をナイフオーバーロールコーター等で積層塗工し、乾燥することで得られる。

《衣類の製造方法》
次に、本発明の衣類の製造方法の一例について説明する。

シリコーン樹脂等を塗布した離型紙にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の親水性ポリオールの含有率が１０重量％以上５０重量％以下のウレタンを主成分した有機溶媒溶液をナイフオーバーロールコーター、または、フローティングロールコーターを用いて所望の膜厚になるように塗工し、次いで乾燥することにより、離型紙上に透湿防水性被膜を得ることができる。被膜化の際、接着性、耐溶剤性、膜強度を向上させるためポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物等の架橋剤を適宜併用してもよい。

樹脂層を着色する場合においては、樹脂に無機系、有機系顔料等を、膜表面タッチを変える場合においては二酸化珪素や酸化チタン等の粒子を適宜添加することも可能である。

次いで、その被膜の上に接着剤としてポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、シリコーン系樹脂等を主成分とする単独樹脂あるいはこれらの混合物の有機溶媒溶液をグラビアロールコーター等で塗工する。この際、透湿性発現および風合いの観点から塗工樹脂厚、被覆率、樹脂の種類等を考慮する必要がある。

被覆率は、高透湿性の樹脂であれば１００％被覆の全面接着でも問題はないが、透湿性と接着強力の両立の観点から一般的には４０〜８０％の被覆率とすることが好ましい。

樹脂厚も接着強力と透湿性の両立の観点から２〜２０μｍ程度が好ましく、樹脂は加工が容易であることからポリウレタン系が好ましい。接着方式はウエットラミネート方式、ドライラミネート方式等接着剤の特性により使い分ければよい。

次いで、接着剤の上に表地を積層し圧着する。その後、離型紙を剥離することで、透湿防水性被膜の片面に表地を積層した製品が得られる。さらに、透湿防水性被膜のもう一方の面に上記接着材を塗工し、以下に説明する多重織物を積層し、圧着することで、多重織物の一方の面に透湿防水性被膜を有する衣類を得ることができる。

以上ラミネート法について述べたが、コーティング法により透湿防水性被膜を積層する場合は、ナイフオーバーロールコーター等により撥水加工した織物に樹脂溶液を塗工し、湿式法の場合は水中へ導き凝固させ、その後乾燥させることにより得られる。乾式法の場合は、塗工後乾燥することで得られる。

上記のようにして得られる多重織物の一方の面に透湿防水性被膜を有する衣類において、さらに、多重織物の他方の面に合成樹脂被膜を積層する方法は、上記ラミネート法またはコーティング法のいずれでもよい。

本発明の衣類は、優れた透湿性と防水性を併せ有しているためスキー、スケート、スノーボード、アスレチック等のアウトドアスポーツ衣料、防寒衣、作業衣や一般生活衣に好適に用いることができる。

《本発明の多重織物の断面図と組織図》
図１は表地と透湿防水性被膜と２重織物を有する３層ラミネート（一方の面に透湿防水性被膜を有する２重織物）の一例を示す断面図、図２は図１のＡ部の２重織物の織組織を示す図、図３は図１のＢ部の２重織物の織組織を示す図である。織り組織を示す図において、黒い部分はタテ糸が表側に現れている部分で、白い部分はヨコ糸が表側に現れている織物を示す。図１において、１は２重織物の経糸、２は２重織物の緯糸、３は２重織物の表側生地、４は２重織物の裏側生地、５は透湿防水性被膜、６は３層ラミネートの表地である。

図４は表地と透湿防水性被膜と２重織物と合成樹脂被膜と裏地を有する４層ラミネート（一方の面に透湿防水性被膜を有し、他方の面に合成樹脂被膜を有する２重織物）の一例を示す断面図である。図４のＡ部の２重織物の織組織を示す図は図２と同じであり、図４のＢ部の２重織物の織組織を示す図は図３と同じである。図４において、１は２重織物の経糸、２は２重織物の緯糸、３は２重織物の表側生地、４は２重織物の裏側生地、５は透湿防水性被膜、６は４層ラミネートの表地、７は合成樹脂被膜、８は４層ラミネートの裏地である。図１および図４に示すように、表側生地と裏側生地の組織崩れによる隙間を生じにくくするために、経糸または緯糸が交差もしくは入れ替わることが好ましい。互いに色の異なる原糸を採用して図１および図４に示す多重織物を得ることで、様々な色や模様（柄）を実現することができる。図１および図４に示す表側生地３と裏側生地４との間に段落0013に例示したような充填物を充填することができる。図１および図４において、表側生地３と裏側生地４とで囲まれた領域が１つの区画である。

以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において様々な変形や修正が可能である。また、実施例および比較例の性能は次の方法で測定した。

（１）繊度（ｄｔｅｘ）
ＪＩＳＬ１０１３（２０１０）８．３．１Ａ法に従って、所定荷重０．０４５［ｃＮ／ｄｔｅｘ］で測定される数値を繊度とした。

（２）通気度（ｃｃ／ｃｍ^２／秒）
通気度は、ＪＩＳＬ１０９６（２０１０）８．２７．１に規定されている通気性Ａ法（フラジール法）に準拠して測定した。実施例１および２の二重織物縫製品の生地通気度はラミネート生地に含まれる二重織物の結束点が測定部の中央に位置するように取り付け、比較例１および２の縫製品はキルト縫製部が測定部の中央に位置するように取り付けた。

（３）透湿度（ｇ／ｍ^２／２４hr）
透湿度は、ＪＩＳＬ１０９９（２０１２）Ａ−１法に準拠して測定した。実施例１および２の二重織物縫製品の生地通気度はラミネート生地に含まれる二重織物の結束点が測定部の中央に位置するように取り付け、比較例１および２の縫製品はキルト縫製部が測定部の中央に位置するように取り付けた。

（４）耐水圧（ｍｍＨ_２Ｏ）
耐水圧は、ＪＩＳＬ１０９２（２００９）に規定されている静水圧法に準拠して測定した。実施例１および２の二重織物縫製品の生地通気度はラミネート生地に含まれる二重織物の結束点が測定部の中央に位置するように取り付け、比較例１および２の縫製品はキルト縫製部が測定部の中央に位置するように取り付けた。

（５）ダウン抜け重量（ｍｇ）
ダウン抜け本数は、カケンテストセンターが規定したカケンII法で測定した。具体的には、評価を行う衣類の表面に付着しているダウンを丁寧に除去し、その衣類によってＪＩＳＬ１０７６（２０１２）に規定されているピリング試験用のゴム管５本を包んで二つに折り畳み、家庭用洗濯機の洗濯ネットに５本のゴム管を包んで折り畳んだ衣類を収容する。次に、衣類を収容した上記洗濯ネットとＪＩＳＬ１０７６（２０１２）に規定されているピリング試験用のゴム管５本とを、内部フィルターの清掃を行ったタンブル乾燥機に入れ、５０℃で３０分間そのタンブル乾燥機を運転する。次に、同上衣類を裏返して、裏返した衣類によってＪＩＳＬ１０７６（２０１２）に規定されているピリング試験用のゴム管５本を包んで二つに折り畳み、家庭用洗濯機の洗濯ネットに５本のゴム管を包んで折り畳んだ衣類を収容する。次に、衣類を収容した上記洗濯ネットとＪＩＳＬ
１０７６（２０１２）に規定されているピリング試験用のゴム管５本とをタンブル乾燥機に入れ、５０℃で３０分間そのタンブル乾燥機を運転する。そして、タンブル乾燥機から衣類を取り出し、衣類に付着しているダウンの重量（ｍｇ）と、タンブル乾燥機の内部および内部フィルターに付着しているダウンの重量（ｍｇ）を測定する。この合計のダウン重量がダウン抜け重量（ｍｇ）であり、測定下限が１ｍｇである公知の電子てんびんにより、その重量を測定した。

（６）ストレッチ率（％）
ストレッチ率は、ＪＩＳＬ１０９６（２０１０）Ｂ法に規定されている定荷重法に準拠して測定した。実施例１および２の二重織物縫製品の生地通気度はラミネート生地に含まれる二重織物の結束点が測定部の中央に位置するように取り付け、比較例１および２の縫製品はキルト縫製部が測定部の中央に位置するように取り付けた。

［実施例１］
経糸および緯糸にナイロン２２ｄｔｅｘ−２４ｆ−ＦＤＹを用い、経密度２００本/2.54cm、緯密度１６０本/2.54cmの表地を第１層、透湿防水性被膜（ポリウレタン）を第２層、経糸および緯糸にナイロン２２ｄｔｅｘ−２４ｆ−ＦＤＹを用い経密度と緯密度がともに４００本／2.54cmである経緯完全２重平織組織の２重織物を第３層としてラミネート加工を行った３層ラミネート生地を用い、２重織物の表側生地と裏側生地の間に生地面積１ｍ^２当たりダウンを５０ｇ充填し、図５に示すような表地と、透湿防水性被膜と、２重織物からなるダウンジャケット１０を作製した。ダウンジャケットにはさらにフッ素系撥水剤を用いて撥水加工を施した。得られた実施例１の衣類（ダウンジャケット）についての通気度（ｃｃ／ｃｍ^２／秒）、透湿度（ｇ／ｍ^２／２４hr）、耐水圧（ｍｍＨ_２Ｏ）、ダウン抜け重量（ｍｇ）およびストレッチ率（％）を以下の表１に示す。後記する実施例２、比較例１、２のダウンジャケットに対しても同じフッ素系撥水剤を用いて撥水加工を施した。

［実施例２］
経糸にナイロン２２ｄｔｅｘ−２４ｆ−ＦＤＹを用い、緯糸にナイロン３３ｄｔｅｘ−３６ｆ−ＤＴＹとポリウレタン４４ｄｔｅｘのシングルカバリング糸を使用した、経密度２５０本/2.54cm、緯密度１３０本/2.54cmの表地を第１層、透湿防水性被膜を第２層、経糸にナイロン２２ｄｔｅｘ−２４ｆ−ＦＤＹを用い緯糸にナイロン３３ｄｔｅｘ−２４ｆ−ＤＴＹとポリウレタン４４ｄＴｅｘシングルカバリング糸を使用した経密度と緯密度がともに３００本／2.54cmである経緯完全２重平織組織の２重織物を第３層、経糸にナイロン２２ｄｔｅｘ−２４ｆ−ＦＤＹを用い緯糸にナイロン３３ｄｔｅｘ−３６ｆ−ＤＴＹとポリウレタン４４ｄｔｅｘのシングルカバリング糸を使用した、経密度２５０本/2.54cm、緯密度１３０本/2.54cmの生地の一面にアクリルコーティングをした裏地を第４層としてラミネート加工を行った４層ラミネート生地を用いて、図５に示すような表地と、透湿防水性被膜と、２重織物と、合成樹脂被膜と、裏地からなるダウンジャケット１０を作製した。得られた実施例２の衣類（ダウンジャケット）についての通気度（ｃｃ／ｃｍ^２／秒）、透湿度（ｇ／ｍ^２／２４hr）、耐水圧（ｍｍＨ_２Ｏ）、ダウン抜け重量（ｍｇ）およびストレッチ率（％）を以下の表１に示す。ダウン充填量は実施例１と同じである。

［比較例１］
経糸および緯糸にナイロン２２ｄｔｅｘ−２４ｆ−ＦＤＹを用い、経密度２００本/2.54cm、緯密度１６０本/2.54cmの生地に透湿防水性被膜をラミネートした２層ラミネート生地を表地に使用し、経糸および緯糸にナイロン２２ｄｔｅｘ−２４ｆ−ＦＤＹを用い経密度と緯密度がともに２００本／2.54cmである生地を裏地に使用することにより、図５に示すような表地と、透湿防水性被膜と、ダウンと、裏地をヨコキルト縫製したダウンジャケット１０を作製した。得られた比較例１の衣類（ダウンジャケット）についての通気度（ｃｃ／ｃｍ^２／秒）、透湿度（ｇ／ｍ^２／２４hr）、耐水圧（ｍｍＨ_２Ｏ）、ダウン抜け重量（ｍｇ）およびストレッチ率（％）を以下の表１に示す。ダウン充填量は実施例１と同じである。

［比較例２］
経糸にナイロン２２ｄｔｅｘ−２４ｆ−ＦＤＹを用い、緯糸にナイロン３３ｄＴｅｘ−３６ｆ−ＤＴＹとポリウレタン４４ｄｔｅｘのシングルカバリング糸を使用した、経密度２５０本/2.54cm、緯密度１３０本/2.54cmの生地に透湿防水性被膜をラミネートした２層ラミネート生地を表地に使用し、ナイロン３３ｄｔｅｘ−３６ｆ−ＤＴＹとポリウレタン４４ｄｔｅｘのシングルカバリング糸を使用した、経密度２５０本/2.54cm、緯密度１３０本/2.54cmの生地の一面にアクリルコーティングをしたものを裏地に使用することにより、図５に示すような表地と、透湿防水性被膜と、ダウンと、裏地をヨコキルト縫製したダウンジャケット１０を作製した。得られた比較例２の衣類（ダウンジャケット）についての通気度（ｃｃ／ｃｍ^２／秒）、透湿度（ｇ／ｍ^２／２４hr）、耐水圧（ｍｍＨ_２Ｏ）、ダウン抜け重量（ｍｇ）およびストレッチ率（％）を以下の表１に示す。ダウン充填量は実施例１と同じである。

表１に示すように、実施例１の衣類は比較例１の衣類に比べて通気度が低く、ダウン抜けが少なく、耐水圧が高い。ストレッチ性のある実施例２の衣類は同じくストレッチ性のある比較例２の衣類に比べて通気度が低く、ダウン抜けが少なく、耐水圧が高い。なお、比較例１と２はキルト縫製による縫い目があるため透湿度の数値は実施例１と２に比べて高いが、実施例１と２の透湿度の数値であれば、十分な透湿性は確保されていると言える。なお、表１において、実施例１と２の通気度は測定下限であるので、０．１以下と記載した。また、実施例１のダウン抜け重量も測定下限であるので、１以下と記載した。

本発明の衣類は、防寒着等の外衣や寝具として好適であり、具体的には、ダウンウエア、ダウンジャケット、ダウンコート、ダウンベスト、ひざ掛け、ふとん、寝袋などに用いることができる。

１経糸
２緯糸
３表側生地
４裏側生地
５透湿防水性被膜
６表地
７合成樹脂被膜
８裏地
１０ダウンジャケット

Claims

表側生地と、裏側生地と、当該表側生地と裏側生地のあいだに充填される充填物とを備え、上記表側生地と裏側生地が織成されることによって形成される多重織物の一方の面に透湿防水性被膜を有する衣類。
多重織物の他方の面に合成樹脂被膜を有する請求項１に記載の衣類。
多重織物が複数の区画から構成される請求項１に記載の衣類。
透湿防水性被膜を有する多重織物の通気度が５ｃｃ／ｃｍ^２／秒以下である請求項１ないし３のいずれかに記載の衣類。
透湿防水性被膜を有する多重織物の耐水圧が３００ｍｍＨ_２Ｏ以上である請求項１ないし４のいずれかに記載の衣類。