前述のように、レコードプレーヤーのような外部振動が原音再生に大きな影響を与える音響機器の場合、回動体(主にターンテーブル)の重量を重くした方が回転が安定するし外部振動の影響も相対的に小さくなるが、それに応じて回転軸の大きさも大きくしないと、回動体の回動ブレが生じて軸体への傾き方向への力が加わるので、安定した回動のため回動軸も大径化する必要があった。
しかし、回動軸の大径化により回動時の摺動抵抗が増えてスムーズな回動が得られにいという矛盾があり、また、回転軸の大径化に伴い回転軸を通じて伝わる外部振動も大きくなるという問題があった。
また、回転軸のスムーズな回転を得るための機械的なベアリングが用いられているが、従来のベアリングではターンテーブル等の回動体の重量を受けたり横方向から支えて軸ブレを防ぐ役目のため、重力や押圧力が加わった状態で回動軸を支えていたため、外部振動が直接軸に伝わるという不都合があった。
そこで、回動体の重量化、回動軸の大径化と併せて、特許文献1のような振動減衰技術を適用したり、特許文献2のような空気軸受等の非接触式軸受けの適用が理想とされていた。
ところで、減衰特性を利用した例えばゴムやウレタン等が、音響機器には従来から種々の場所に用いられている。しかし、あまりに柔構造の場合、回転体の回転以外の動きを許容することに繋がり、特許文献1のような構造をレコードプレーヤーに適用した場合、ターンテーブルの不要な動きが原音再生に直接影響するため、その構造のバランスが難しい。
また、レコード針がレコード盤の溝をなぞって移動することで、レコード盤とレコード針とが相対移動することによって音楽信号を再生するレコードの場合、レコード盤側(ターンテーブル側)への外部振動を減衰させても、トーンアームを伝わってレコード針へ伝わる振動も遮断しないと優れた原音再生がなされない。
一方、特許文献2で例示したような空気軸受としては、軸の回転による空気の流れを利用して回転軸と軸受けの間に空気層を作り出す動圧空気軸受と、強制的に空気の流れを作り、回転軸と軸受けの間に空気層を作り出す静圧空気軸受けがあるが、動圧空気軸受は軸の高速回転が必須となり、レコードプレーヤーのターンテーブル等の低速回転(33〜45rpm)には適しない。
静圧空気軸受にしても、空気で軸を完全に軸受けから浮かすには高圧のエアポンプが必須であり、レコードプレーヤーに適用するには高コストとなる。また、軸が軸受けと機械的に接触していないことにより、外部振動は伝わりにくいが、軸が規則的にぶれる脈動が生じるおそれがあり、この脈動振動の発生は特にレコード盤の振動をなぞるレコードプレーヤーにとっては不要振動が直接原音再生に直接悪影響を与えてしまう。
この不要脈動を防止するためには、ミクロン単位で加工して軸と軸受けを隙間を詰める必要があり、レコードプレーヤーとしては製造コストが非常に高くなりがちであり、あまり隙間を詰めすぎると、結局は外部振動の伝わりを完全に防げないという矛盾があるし、また、トーンアームを伝わってくる振動も防がないと依然として正確な原音再生ができないので、高コストの割に十分な効果が期待できないという問題があった。
以上のように、ターンテーブルを重量化して外部振動の影響を少なくしたり、慣性により回転を安定させたりしても、細い回転軸1箇所でのみ支えているものでは、例えば、重量物を一点で吊り下げた釣鐘のように、外部からの入力(振動・衝撃)で大きく共振して響き続けてしまうとった問題が宿命的に生じていた。
本発明は、上記のような課題を解決し、比較的低コストで外部振動の影響を防ぐことができ、また、軸体を大径としたような回動体の安定した回動も得られ、忠実な原音再生が可能となる特にレコードプレーヤー等の音響機器を提供することを課題とする。
上記のような課題を解決するために請求項1の発明は、ベース基板上面にて垂直方向の軸を中心にベース基板に対して回動可能な回動体を有し、外部から加わる振動が原音の再生に影響を与える音響機器において、
回動体は円板形状で、相対するベース基板上面及び回転体下面は平滑面であり、ベース基板に上面から下面にかけ貫通孔を有し、前記貫通孔の下端部にエアーチューブの一端を貫通孔と導通状態に接続し、前記貫通孔の上端部とベアリング外径部を接着し、上端部付近に内外導通する複数の穴が設けられた筒状体を前記回動体の下面中心部に筒状体の上端開口を回動体下面で封鎖するように固定し、前記筒状体を前記ベアリング内径部にて回動自在に保持し、前記エアーチューブ他端に圧搾空気を送り込むエアーポンプを接続し、エアーポンプからエアーチューブを通じて圧搾空気をベース基板の貫通孔内に送り込むようにしたことを特徴とする音響機器の振動防止装置である。
本発明において、外部から加わる振動が原音の再生に影響を与える音響機器とは、殆どの音響機器において外部振動は悪影響を与えるものであるが、特に、レコード盤上の溝をレコード針がなぞることで生じるレコード盤とレコード針の相対的移動(振動)が直接再現音となるレコードプレーヤーの場合が影響が大きく、この発明の適用に最適である。
回動体とは、音楽再生時またはその準備段階で必要に応じて回動または回転する部位で音の再生時に回動や回転しているか停止しているかは問わない。本発明の構造では、エアーチューブからベース基板のベアリングにエアーを送り込むことで、相対するベース基板上面及び回転体下面の隙間に流れ込むエアーで回動体の重量を支えて回動させるので、機械的なベアリングは回転軸を定位置に保持させる役目に専念させてベアリング部分は理想的な点接触で回転を支えることができ、低摺動抵抗による安定した回動軸の回動が得られると共に、重力や押圧力のかからない理想的な点接触のベアリング部分での外部振動低減効果も期待できる。
また、相対するベース基板上面及び回転体下面は平滑面であるため、隙間を極小に保持することができ、この極小な隙間内でエアーが回動軸中央から周囲に流れて重量のある回動体を支えるので、回動体の回転ブレが生じず、回動体の大きさを直径とする回転軸を用いたような安定した回転が得られる。
請求項2の発明は、上記請求項1に記載の発明において、音響機器がアナログレコード盤の音楽を再生するレコードプレーヤーであって、回動体はアナログレコード盤を上面に保持するターンテーブルであることを特徴とする音響機器の振動防止装置である。
本発明をレコードプレーヤーのターンテーブルに適用すれば、レコード盤の再生時の安定した回転および外部振動の影響を小さくすることができる。
請求項3の発明は、上記請求項1に記載の発明において、音響機器がアナログレコード盤の音楽を再生するレコードプレーヤーであって、回動体はトーンアームのアームベースであることを特徴とする音響機器の振動防止装置である。
本発明をレコードプレーヤーのトーンアームの下を支えるアームベースの回転に適用すれば、レコード盤の再生時におけるレコード針へ伝わる外部振動の影響を小さくすることができる。
請求項4の発明は、上記請求項1に記載の発明において、音響機器がアナログレコード盤の音楽を再生するレコードプレーヤーであって、回動体はターンテーブルおよびトーンアームのアームベースであることを特徴とする音響機器の振動防止装置である。
請求項5の発明は、上記請求項3又は4に記載の発明において、透明性を有するガラス製のベース基板の下方に反射型フォトインタラプタを上向きに設置し、トーンアームの下側に反射板を設け、反射型フォトインタラプタが反射板からの反射光を捉えることで、レコード盤を再生している場合のトーンアームのアームベースの回転方向での位置と、上下方向での傾き位置を感知し、その位置情報に基づいてターンテーブルの回転及び停止を制御することを特徴とする上記音響機器の振動防止装置である。
上記構成によれば、トーンアームの位置(回転方向で位置及び傾き位置)によりターンテーブルの回転を制御できるので、再生時にトーンアームの操作のみでターンテーブルを自動で回転開始と再生終了後の自動で回転停止が行えるようになる。
回動体は、質量がある方が回転が安定し、また外部振動の影響も相対的に小さくなるが、あまりに重いと軸体もそれに応じて大径のものが必要となるしコストもかさむが、以上のように、請求項1の発明の構造では、エアーチューブからベース基板のベアリングにエアーを送り込むことで、相対するベース基板上面及び回転体下面の隙間に流れ込むエアーで回動体の重量を支えて回動させるので、機械的なベアリングは回転軸を定位置に保持させる役目のみを持たせて理想的な点接触で回転を支えることができ、低摺動抵抗による安定した回動軸の回動が得られる。
また、ベアリング部分は、重力や押圧力のかからない理想的な点接触状態となっているので、従来のベアリングのように、重い回転体の重力や軸ブレによる押圧力によって遊びのない状態で接触して外部振動を直接伝えるということがなく、このベアリング部分での外部振動の低減効果が期待でき、高コストとなる完全非接触式の空気軸受と同等の効果が低コストで得られる。
更に、エアーが回動軸中央から周囲に流れて重量のある回動体を下面全体で支えるので、回動体の回転ブレが生じず、回動体の大きさを直径とする回転軸を用いたような安定した回転が得られ、一点で吊り下げた釣鐘が外部からの衝撃で響き続けるような不要共振が生じない。
また、回動体はエアーにより浮き上がり状態であるので、軸体のベアリングには回動体の重量による負担がかからず、従来と同等重量の回動体であれば、ベアリングを小型化してベアリング部でのフリクションロスを低減でき、スムーズな回転(回動)が得られ、音楽等の再生時にも好影響となる。
一方、従来と同等のベアリングを用いて、従来のものより回動体の重量をより大きくすることもできるので、回動体の重量化により回転速度の安定化を図ることができる。
請求項2の発明によれば、回動体を音楽等を記録したレコード盤を載せるターンテーブルとすれば、外部から加わる振動がターンテーブルに伝わらないので、音楽再生時に外部からの振動等による悪影響を与えないようにすることができる。
請求項3の発明によれば、回動体をレコードプレーヤーのトーンアームを保持する役目のアームベースとしたので、外部から加わる振動がアームベースからトーンアームを経てレコード針等のピックアップに伝わらないので、音楽再生時に外部からの振動等による悪影響を与えないようにすることができる。
請求項4の発明によれば、特に、レコード盤とレコード針との相対的移動(振動)により原音を再生するレコードプレーヤーは、請求項2のターンテーブルと請求項3のアームベースを両方用いれば、レコード盤の溝とレコード針への両方の外部振動が遮断できるので、外部振動に影響されない優れた原音再生がなされる。
請求項5の発明によれば、レコード盤へのピックアップの移動に伴うトーンアームの操作によるターンテーブルの自動的な回転開始と、レコード盤の再生終了によるターンテーブルの自動的な回転停止が行えるので、レコード盤再生時の操作が簡単になる。
以下、この発明の音響機器の一例を添付図面を参考にして説明する。
図1は、この発明を適用した一例のレコードプレーヤー1を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。また、図2は、図1(A)のII−II線に沿った断面を示す正面図である。
レコードプレーヤー1を構成する主要部品は、筐体2と、この筐体2上面にて、レコード盤を載置して回転するターンテーブル3と、レコード針等のピックアップ4を保持するトーンアーム5とからなる。
前記筐体2は、矩形状で、下面四隅を防振用インシュレーター等からなる足2aを設けており、筐体2の材料としては、外部振動の影響やスピーカーからのハウリングを受けにくくするため重量のあるものが好ましく、木材、樹脂等が用いられているが、この実施形態では重量のある石を用いている。
筐体2の上面には、ターンテーブル3を駆動するため、図示しないが、例えばモーターによる駆動手段を収納する凹部が設けてある。なお、駆動方式はベルトドライブ方式や木綿糸や絹糸を用いた糸ドライブを採用するのがモーターのコッキング等の振動が直接ターンテーブル3に加わらないので好ましい。
筐体2の上側には、筐体2上面とほぼ同じ面積を有し少なくとも上面が平滑面となる平板状のベース基板6が載置されている。この実施形態の場合、石の凹凸を有する筐体2と平滑なベース基板6との隙間を埋めるためと、後で詳述するエアーチューブ7の収納スペースを確保するため、及び、筐体2に加わった外部振動をベース基板6に直接伝えないことを目的として、筐体2上面とベース基板6下面との間に間隔を持たせて、その間をシリコンゴム8で充填してある。
ベース基板6の上面の平滑度は、平滑度が高ければ高いほどよいが、研磨や計測等の製造コストが際限なくかかってしまうので、本発明をレコードプレーヤー1のターンテーブル3に適用する場合は、鏡の表面ガラス面程度の平滑度でよい。
そして、鏡面に使用されるようなガラス自体を使用することが可能であり、この実施形態の場合、ベース基板6として厚さ5mmの平板のガラス板を使用している。もちろん、他の材質のもの、例えば石等の硬質物質を平面研磨して鏡面仕上げしたものであってもよいが、大理石等を使うとガラスの10〜100倍のコストがかかるので、通常のガラスを用いる方が、コスト削減の点からも好ましい。なお、溶かしたガラスをガラスよりも比重の重い金属の溶融液上に浮かべて板状にする、いわゆるフロート式板ガラスは研磨なしに鏡面状となるので、これを用いるのが好ましい。
ベース基板6上面には、レコード盤を上面に保持して回転するターンテーブル3が、図示していない任意の駆動手段、例えばモーターを使用したベルトドライブや糸ドライブなどの駆動手段により回転可能に保持されている。
また、ピックアップ4をレコード盤上に移動させたり、レコード盤の再生によるレコード盤上の溝をなぞるために生じるピックアップ4の横方向への移動を許容するためのトーンアーム5の回動の基準の軸となるアームベース9も回動可能に保持されている。
ターンテーブル3やアームベース9の材質は、特に限定されず、ガラスや大理石等種々のものが使用できるが、ベース基板6の時と同様、ガラスを用いるのがコストの点から好ましく、また、ターンテーブル3やアームベース3の下面の平滑度も、ベース基板6の上面と同様、鏡の表面ガラス面程度の平滑度でよい。
この実施形態でのターンテーブル3は、一例として、直径296mm、厚さ10mmのガラス製で、重量は1690gとしたが、高級レコードブレーヤーとしてはもっと重いものがあり、この発明はそれらのものにも適用することができる。
次に、ターンテーブル3の回転軸付近の構造を図3乃至図9を加えて詳細に説明すれば、まず、ベース基板6のターンテーブル3が回転する軸の位置には、図3に示すように、ベース基板6の上面から下面にかけて貫通する丸型の貫通孔10が開けられており、この貫通孔10の上端部には、図4や図6で示すように、ベアリング11がその外径部を貫通孔10の内壁面と接着剤により固定して設けられている。
当該実施形態としては一例として、貫通孔10の寸法を、直径8mmとし、ベアリング11は外径8mm、内径5mm、上下寸法2.5mmのボールベアリング方式のものを使用している。
また、エアーチューブ7の一端側を図5に示すように切り開いて拡張した拡開部7aを、図6(A)に示すように貫通孔10の下端部と導通状態に接続し、図6(B)に示すように、拡開部7aの周囲を空気が漏れないようにベース基板6の下面と接着する。
なお、エアーチューブ7は筒状で内部にエアーを通過させるものであれば特に樹脂製、金属製など材質は問わない。この実施形態では、外径4mm、内径は3mmのアルミパイプを用いた。
このエアーチューブ7は、ベース基板6の下側のシリコンゴム8の部分を通り、図1や図3に示すように、レコードプレーヤー1の背面側から外に導出され、エアーチューブ7の他端側は図示しないエアーポンプと接続される。
エアーチューブ7他端が接続される図示しないエアーポンプは、圧力12〜15Kpa(g)程度、開放時で1000cc/分〜3000cc/分程度のものでよく、一般の販売店で市販されている水槽用エアーポンプ等を流用でき低コストである。
図7は、エアーチューブ7に図5で示す拡開部7aを設けずに、ニップル19を用いてエアーチューブ7をベース基板6の貫通孔10の部分に固定する他の実施形態を示すものである。
この実施形態で用いるニップル19は、本体が外径4mm、内径3mmのパイプ状で、上端にベース基板6の下面に当接する鍔部19aと、この鍔部19aの上側にはベース基板6の貫通孔10に嵌まり込む直径8mmの凸部19bを有しており、更に、本体中程にはエアーチューブ7の抜け止めとなる外径5mmとなる膨出部19cが設けられ、下端はエアーチューブ7を嵌め込みやすいように角を取り丸く形成されている。
このニップル19を図7(A)に示すように、ベース基板6の貫通孔10の下端側からニップル19の凸部19bを嵌め込んで適宜手段(エポキシ接着剤等)にて固定し、その後、図7(B)で示すように、エアーチューブ7をニップル19の下端側から嵌め込んで膨出部19cを超えて鍔部19aに達するまで外嵌装する。
なお、この図7の実施形態でエアーチューブ7を固定する場合、ベース基板6の下側にニップル19が突出するので、その部分は筐体2に凹部空洞を設けたり、ターンテーブル3用のモーター配置用の凹部空洞等に入り込むようにすればよい。
図8はターンテーブル3の回転軸となる部分の正面図であり、レコード盤の中心穴に通してレコード盤を位置決めして回転中心とする役目のセンタースピンドル12の下には、円柱体状の軸体13が接続固定されており、さらにその下には、内部中空の筒状体14がその上端開口を軸体13下面で封鎖するように固定され、これらセンタースピンドル12、軸体13、筒状体14は全て中心軸が同軸となっている。
寸法は一例として、センタースピンドル12は直径7.2mm、上下寸法12mm、軸体13は直径8mm、上下寸法9mm、筒状体14は直径(外径)5mm、内径4mmとなっている。
この筒状体14の上端部付近には、横方向に内外導通する複数の穴14aが設けられており、また筒状体14の下端部は開放状態となっている。なお、実施形態では穴14aは四方4つ又は等間隔に3つの部分に直径1.5mmの穴を開けているが、穴14aの数と大きさは特に限定されない。
図9(A)に示すように、前記軸体13の周囲を、ターンテーブル3の中心に設けた穴に嵌め込んで、エポキシ等の接着剤15で固定一体化した後、筒状体14をベース基板6の貫通孔10に固定されたベアリング11に嵌め込んで、回転自在に保持するようになっている。
前記トーンアーム5は、先端に設けたピックアップ4を上下及び左右に移動可能に保持するものであり、種々の形状が考えられるものであるが、本実施形態では、図1で示すように、長尺状で前後幅が異寸法の台形をしており、細幅の前端部にはレコード針等のピックアップ4と、手でピックアップ4をレコード盤上に移動させるために用いる指掛け16が設けられ、広幅の後端部には図示しないバランスウエイトが設けられており、この広幅の後端部付近にトーンアーム5の横方向の動きを許容するためのトーンアームの回動を行うアームベース9が位置する。
次に、アームベース9の回動軸付近の構造を説明すれば、まず、図1に示すアームベース9の回動部分に対し、図3のようにベース基板に貫通孔10を開けてから、ターンテーブル3の時と同様、ベアリング11の固定とエアーチューブ7の接続を行う。このエアーチューブ7の接続構造は、前述のターンテーブル3の時の図5乃至図7に示したものと同じであり、詳細な説明は省略する。
図10はアームベース9を示すもので、(A)は平面図、(B)は底面図である。また、図11(A)(B)は、ベース基板6に対するアームベース9とトーンアーム5の取り付け状態を順を追って説明した正面断面図である。
アームベース9は、円板形状で少なくとも下面はターンテーブルと同様に平滑面となっており、実施形態の一例として、厚さ5mmのガラス製とする。
また、アームベース9の中心には、直径8mmの穴が設けられ、この穴に下面に筒状体14が固定された軸体13が接着固定されている。この軸体13と筒状体14の構造は、ターンテーブル6の説明時の図8で示したものからセンタースピンドル12を省いたものとほぼ同様である。
但し、軸体13の上下寸法はアームベース9の厚みに合わせて5mmとしてある。その他、筒状体14の構造(寸法、穴14a)は図8で示したものと同様であり詳細な説明を省略する。
アームベース9に上下貫通して開けた穴(直径8mm)にこの軸体13を嵌め込んでエポキシ接着剤等で接着固定すると、図10(B)や図11(A)(B)で示すように、下面中央部に筒状体14が突出した状態となる。
アームベース9の上面には、図10(A)と図11(A)(B)に示すように、中央の軸体13を挟んだ両側に、上下方向に延びる柱状で上端が円錐状となった2本のボウテーパー17を立設してある。
ボウテーパー17は、この実施形態では一例として、下部に直径8mmの柱部分に続く上端円錐部を50°のテーパー状としており、アームベース9の上面からボウテーパー17の頂点までの高さは約25mmとしている。
ベース基板6に対してアームベース9とトーンアーム5を組み付けるには、図11(A)(B)に示すように、ベース基板6の貫通孔10のベアリング11に、アームベース9下面の筒状体14を嵌め込み、更に、アームベース9の2つのボウテーパー17上にトーンアーム5を載置する。
トーンアーム5のアームベース9への取付構造は、2つのボウテーパー17、17に対応した位置のトーンアーム5下面に短円柱状の丸ボウ18、18を取り付け、この丸ボウ18の下面に設けた円錐状のくぼみ18aがボウテーパー17の頂部に被さり位置決めされることで、トーンアーム5がアームベース9に取り付けられる。
この実施形態では、丸ボウ18は直径15mmで、円錐状のくぼみ18aは100°としており、2つのボウテーパー17、17の頂部で支えられたトーンアーム5は、2つのボウテーパー17、17の頂部を結ぶ線を中心軸として回動(揺動)し、これが、トーンアーム5の前端部付近のピックアップ4の上下運動を可能とする。
また、2本のボウテーパー17、17の頂部で2点支持で支えられたトーンアーム5は、トーンアーム5の長さ方向を軸として横方向には揺動されないので、レコード盤再生中にトーンアーム5に横方向の揺れが加わっても、レコード針が左右に揺動せず、原音再生に悪影響を与えることが抑制できる。
さらに、トーンアーム5の後端のバランスウエイト(図示せず)により、ピックアップ4のレコード針の針圧を適切に調整可能としており、ボウテーパー17、17付近がトーンアーム5の重量のほぼ前後バランスを取る中心となり、その結果、アームベース9の中心の軸体13付近がトーンアーム5の重心の真下となり、軸体13に軸を傾けるような力が働かず、バランス良くアームベース9を回動させることができる。
この発明の音響機器であるレコードプレーヤー1は上記のような構造であり、次に、このレコードプレーヤー1を使用してレコード盤を再生する場合について説明する。
図12に示すように、ターンテーブル3上にレコード盤Rを載置し、次に、エアーポンプの駆動によりエアーチューブ7を通じてターンテーブル3やアームベース9の軸体13付近にエアー20を供給し、それと前後してターンテーブル3をモーター等の駆動手段で規定速度(33+1/3rpmまたは45rpm)で回転させる。
次に、トーンアーム5の先端部付近の指掛け16に指を掛けてトーンアーム5をアームベース9の軸を中心に回動させつつターンテーブル3上のレコード盤Rの溝の上にピックアップ4の針を落とすと、音楽等の再生が始まる。
この際、図13に示すように、ターンテーブル3の回転軸付近では、ベース基板6下面からエアチューブ7を通じて図示矢印のように供給されるエアー20が貫通孔10内で筒状体14の下面開放部を通じて上部の穴14aから外側に出て、平滑面であるベース基板6上面とターンテーブル3下面の間の隙間を通って外部に放出される。
ベース基板6とターンテーブル3の隙間は、平滑度が高ければ、数μm〜数十μmの保持も可能であるが、約2μm程度に保持するのが好ましい。数十μm〜100μm程度でもある程度効果は生じる。ただし、隙間が狭ければ、同量の空気(エアー20の送風量)でもターンテーブル3を浮かせる効果が高くなる。
ターンテーブル3の重量は本件実施形態で1680gあるが、ターンテーブル3下面とベース基板6上面との間に流れるエアー20により支えられ、約2μm程度の隙間で、図示しない前述のエアーポンプ(圧力12〜15Kpa(g)、開放時吐出量1000cc/分〜3000cc/分)程度の送風量で、十分浮くことになる。
例えば、飛行機のジャンボジェット機が定員も含めて機体の重量約300トンが、離陸速度250Km/hで空気の力だけで浮くことができることからも、空気(エアー20)の力は絶大である。そのため、この発明のターンテーブル3も、隙間やエアーポンプ吐出量を調整すれば、14kg以上の重量級ターンテーブルにも適用することができる。
なお、ベアリング11は理想的には軸(筒状体14)と点接触しているが回転のための遊び部分があり、ベアリング11自体で実際は振動を遮断する能力を有している。しかし従来のものは回転中にベアリングと軸の接触部分にてターンテーブル3の重量を受けたり、軸の傾きを横方向から支える役目をしており、この遊びを使い切っており、重力や押圧力が加わった状態で軸を支えていたため、外部振動が直接軸に伝わるという不都合があった。
しかし、本発明の構造では、エアーチューブ5からベース基板6のベアリング11にエアー20を送り込むことで、相対するベース基板6上面及びターンテーブル3下面の隙間に流れ込むエアー20でターンテーブル3の重量を支えて回転させるので、機械的なベアリング11は筒状体14を定位置に保持させる役目に専念でき、ベアリング11は理想的な点接触でターンテーブル3の回転を支えることができ、低摺動抵抗による安定した回転が得られると共に、重力や押圧力のかからない理想的な点接触のベアリング11での外部振動の伝達の低減がなされるもの思われる。
更に、このエアー20がターンテーブル3およびベース基板6の平滑面の間を通ることにより、ターンテーブル3が微小浮上し、ターンテーブル3とベース基板6とが非接触状態が保持される。そのため、外部から加わる振動、例えば車両や人が動くことにより地面から筐体2に伝わったり、スピーカーから空気を通じて筐体2に伝わる(ハウリング)振動の大部分を、ベアリング11の遊びとベース基板6とターンテーブル3との間のエアー20による空気層により遮断できるので、レコード盤Rに外部振動が加わらない。
また、トーンアーム5の部分についても同様に、ベース基板に伝わった振動の大部分を、ベアリング11の遊びとベース基板6とアームベース9との間のエアー20による空気層により遮断できるので、アームベース5とピックアップ4(レコード針)に外部振動が伝わらない。よって、レコード盤とレコード針との相対的移動による原音再生するレコードの場合、本発明のターンテーブルとアームベースを用いたレコードプレーヤーは、レコード盤Rとレコード針への両方の外部振動が遮断できるので、外部振動に影響されない優れた原音再生がなされる。
外部振動遮断テストとして、レコードプレーヤー1にてレコード盤Rの再生中、筐体2を手をげんこつにして力を込めて叩いた場合、従来のレコードプレーヤーでは再生音に大きな衝撃音が加わったり、ひどい場合はレコード針の移動による音飛びが発生したが、本発明のレコードプレーヤー1では衝撃音や音飛びは全く発生しなかった。
次に、この発明のレコードプレーヤーの他の実施形態を図14及び図15に基づいて説明する。この実施形態におけるレコードプレーヤ−1の筐体2、ターンテーブル3、ピックアップ4、トーンアーム5、エアーチューブ7、アームベース9等の基本的構造や作用は、図1乃至図13におけるレコードプレーヤー1と全く同様であり、詳細な説明は省略する。
まず、この実施形態の場合、ベース基板6は透明なガラス製としておき、アームベース9とターンテーブル3の間の所定位置に筐体2をくり貫いた空洞部を設けておき、ここに反射型フォトインタラプタ21を収納しておく。なお、筐体2に空洞部を設けるには、筐体2をコンクリート製として空洞部の型取りを予め設けておくのが好ましい。
反射型フォトインタラプタ21の発光と受光を行う部分は同じ面にて隣接して設けられており、これら発光部と受光部を有するセンサー部22が上向きに設置され、発光部から透明なガラス製のベース基板6を通じて光が上向きに照射され、その光が物体に反射して再びベース基板6を通じて受光部が受光している間は、反射型フォトインタラプタ21はターンテーブル3を回転させるような制御を行うようになっている。
トーンアーム5のアームベース9付近のピックアップ4側の下面には、下向きの反射板23が設けられており、図15で示すように、レコード盤Rの最外周の溝にピックアップ4が入った再生始めの位置にあるトーンアーム5sと、レコード盤Rの最内周のエンドレスの溝にピックアップ4が入った再生終わりの位置のトーンアーム5pの直前となる位置の間で、反射板23は前記反射型フォトインタラプタ21のセンサー部22とが連続して相対するように、トーンアーム5の幅方向に長い横長形状となっている。
反射型フォトインタラプタ21と反射板23の構成は上記の通りであり、その制御方法は、反射型フォトインタラプタ21は、トーンアーム5のピックアップ5がレコード盤Rの再生位置にあり、センサ部22が反射板23と相対し、受光部が反射板23による反射光を受けている場合はターンテーブル3を回転及び回転維持させる制御をする。
一方、トーンアーム5の位置が、図15の実線位置や再生開始位置のトーンアーム5sに達するまでの間や、レコード盤Rの再生終了位置に来たトーンアーム5pの位置では、はセンサ部22の直上に反射板23が無く受光部は反射光を受けないのでターンテーブル3を回転させない。
また、トーンアーム5の位置が、ピックアップ4がレコード盤Rの上にある場合であっても、トーンアーム5をピックアップ4がレコード盤Rの溝に入らないようにピックアップ4側を上にして傾けている場合、反射板23も上に移動してセンサー部22からの距離が離れるのでセンサー部22で受ける反射光が弱くなり、その場合はターンテーブル3が回転を開始しないようにセンサー部22での受光量の閾値を設定しておく。
上記のような構成にすると、まず、図15のトーンアーム5が実線の停止位置にある場合、反射型フォトインタラプタ21の発光・受光センサー部22は、その上の透明なガラス製のベース基板6の直上に何も存在しないので反射光を受光せず、ターンテーブル3は停止したままである。
次に、トーンアーム5の指掛け16を手で持って、トーンアーム5をアームベース9と共に回転させ、ターンテーブル3上に載置されたレコード盤Rの再生開始位置(5s)に達すると、トーンアーム5の下側にある反射板23がセンサー部22に重なる位置(23s)に達するが、指掛け16を手で持ってトーンアーム5のピックアップ4側を持ち上げているので、反射板23とセンサー部22との距離が離れており、ターンテーブル3はまだ停止している。
トーンアーム5sをこの位置でレコード盤Rの溝の上に落とすと、反射板23sと発光・受光センサー部22との距離が近づき、センサー部22が受ける光が強まってターンテーブル3を回転開始させ、レコード盤Rの再生が開始される。
レコード盤Rの再生が終了し、トーンアーム5が点線の再生終了位置に達すると(5p)、その時の反射板23pはセンサー部22の直上位置から外れ、センサー部22は反射光を受光しなくなるのでターンテーブル3の回転は停止する。
再生終了後、指掛け16を手で持ってトーンアーム5を載置位置である実線位置まで戻し、その際、トーンアーム5の反射板23がセンサー部22の直上を通過するが、トーンアーム5はレコード盤Rを傷つけないようにピックアップ4側を上にして傾けて移動しているので、反射板23とセンサー部22との距離が離れており、ターンテーブル3は停止した状態を保持する。
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、各部品については、その寸法、形状、材質等を本発明の目的の範囲内で適宜変更して実施することができる。
例えば、実施形態での筐体2は、石やコンクリート等を用いたが、筐体を上側のベース基板6と一体化しておくこと、例えば、全体をガラス製として製作することも可能であり、また、その寸法も音の再生を考慮して適宜変更して実施できる。
例えば、5mm厚さのガラス製のベース基板に15mm厚のコンクリートをシリコンゴムで接着した原音再生能力と重量のバランスを取った製品としたり、10mm厚のガラス製のベース基板と筐体の一体品に10mm厚のガラス製のターンテーブルを用いて全体をガラス製とした特徴のある製品としたりすることもできる。