JPWO2017033600A1 - 全固体電池用バインダ組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
(1) アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む粒子状の共重合体と、粒子状のフッ素系重合体と、を含む水系混合物の溶媒が、有機溶媒に溶媒交換されてなる全固体電池用バインダ組成物、
(2) 前記アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体中のニトリル基含有単量体単位の含有割合が、10質量%以上55質量%以下である(1)記載の全固体電池用バインダ組成物、
(3) 前記アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体のヨウ素価が3mg/100mg以上30mg/100mg以下である(1)又は(2)記載の全固体電池用バインダ組成物、
(4) 前記フッ素系重合体が、一般式(1)
で表される構造単位を含む(1)〜(3)の何れかに記載の全固体電池用バインダ組成物、
(5) 全固体電池用バインダ組成物を構成する全重合体中の前記アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の含有割合が、10質量%以上90質量%以下である(1)〜(4)の何れかに記載の全固体電池用バインダ組成物、
(6) 前記有機溶媒が、環状脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(5)の何れかに記載の全固体電池用バインダ組成物
が提供される。
ここで、共重合体は、繰り返し単位としてアルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含有することを必要とし、任意に、アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位以外の繰り返し単位(以下、「その他の繰り返し単位」ということがある。)を更に含有する。
アルキレン構造単位は、一般式:−CnH2n−[但し、nは2以上の整数]で表わされるアルキレン構造のみで構成される繰り返し単位である。
また、1−オレフィン単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどが挙げられる。
これらの共役ジエン単量体や1−オレフィン単量体は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
ニトリル基含有単量体単位は、ニトリル基含有単量体由来の繰り返し単位である。そして、共重合体は、ニトリル基含有単量体単位を含有しているので、優れた柔軟性および結着力を発揮することができる。従って、本発明の全固体電池用バインダ組成物を用いて製造した全固体電池は、出力特性および充放電サイクル特性に優れる。
上述したアルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位以外のその他の繰り返し単位としては、特に限定されることなく、上述した単量体と共重合可能な既知の単量体に由来する繰り返し単位、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位や親水性基含有単量体単位などが挙げられる。また、その他の繰り返し単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体に由来する芳香族ビニル単量体単位なども挙げられる。
なお、これらの単量体は一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸や、マレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸ジシクロヘキシル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸ジブチルなどの多価カルボン酸エステルが挙げられる。ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
また、カルボン酸基を有する単量体としては、加水分解によりカルボキシル基を生成する酸無水物も使用できる。
なお、上述した共重合体の調製方法は特に限定されないが、例えば、上述した単量体を含む単量体組成物を、任意に連鎖移動剤の存在下において重合して共重合体を得た後、得られた共重合体を水素化(水素添加)することで調製することができる。
そして、重合様式は、特に制限なく、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。また、重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。
また、用いる水素化触媒としては、水で分解しにくい化合物であれば特に限定されない。水素化触媒の具体例として、パラジウム触媒では、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、フタル酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウムおよびヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、水素化する不飽和重合体の量に対して、水素化触媒の金属量換算で、好ましくは5〜6000ppm、より好ましくは10〜4000ppmである。
本発明に用いられるフッ素系重合体は、下記一般式(1)で表される構造単位を含む。
(式中、R1〜R4は、それぞれ、H、F、CF3、CH2CF3、CF2CF3、CF2CF2CF3、OCF2CF2CF3、OCF3又はClであり、R1〜R4は少なくとも1つは、F、CF3、CH2CF3、CF2CF3、CF2CF2CF3、OCF2CF2CF3又はOCF3である。)
上述したフッ素系重合体の調製方法は、特に限定はないが乳化重合法が好ましい。乳化重合法は、モノマー、乳化剤、水系の溶媒、重合開始剤および任意で用いられる連鎖移動剤を使用して、フッ素系重合体を得る方法である。ここで、水系の溶媒とは水を含む溶媒であり、可燃性がなく、上記重合体の分散液が容易に得られる観点から、水が好ましい。
本発明の全固体電池用バインダ組成物を得る際に用いる水系混合物は、上記にて得られたアルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む粒子状の共重合体の水分散液と、粒子状のフッ素系重合体の水分散液とを混合することにより得られる。即ち、水系混合物の溶媒は、水などの水系の溶媒である。
本発明の全固体電池用バインダ組成物は、水系混合物の溶媒である水系の溶媒を有機溶媒に溶媒交換することにより得られる。ここで、溶媒交換は、公知の方法により行うことができる。例えば、ロータリーエバポレーターに水系混合物及び有機溶媒を入れ、減圧して所定の温度にて溶媒交換及び脱水操作を行うことができる。
溶媒交換に用いることのできる有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が好ましく、トルエン、キシレンがより好ましい。なお、これらの溶媒は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
本発明の全固体電池用バインダ組成物を、少なくとも正極活物質層、負極活物質層、又は固体電解質層の少なくとも一層、好ましくは全ての層においてバインダとして用いることにより、正極活物質層を有する正極、負極活物質層を有する負極、これらの正負極活物質層間に固体電解質層とを有する全固体電池が得られる。正極は集電体上に正極活物質層を有し、負極は集電体上に負極活物質層を有する。以下において、固体電解質層、正極活物質層、及び負極活物質層について説明する。
固体電解質層は、固体電解質粒子及びバインダを含む固体電解質層用スラリー組成物を、後述する正極活物質層または負極活物質層の上に塗布し、乾燥することにより形成される。固体電解質層用スラリー組成物は、固体電解質粒子、バインダ、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合することにより製造される。
固体電解質は粉砕工程を経たものを用いるため粒子状であるが、完全な球形ではなく不定形である。一般に微粒子の大きさは、レーザー光を粒子に照射し散乱光を測定する方法などにより測定されるが、この場合の粒子径は1個の粒子としては形状を球形と仮定した値である。複数の粒子をまとめて測定した場合、相当する粒子径の粒子の存在割合を粒度分布としてあらわすことができる。固体電解質層を形成する固体電解質粒子は、この方法で測定した値で、平均粒子径として示されることが多い。
バインダとしては、上記した全固体電池用バインダ組成物以外に、その他の重合体を含有していてもよい。その他の重合体をバインダとして用いる場合、その他の重合体は、固体電解質層用スラリー組成物の調製時に、上記した全固体電池用バインダ組成物と混合してもよい。
有機溶媒としては、上記した全固体電池用バインダ組成物において例示したものを用いることができる。
分散剤としてはアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が例示される。分散剤は、用いる固体電解質粒子に応じて選択される。固体電解質層用スラリー組成物中の分散剤の含有量は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には、固体電解質粒子100質量部に対して10質量部以下である。
レベリング剤としてはアルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤を混合することにより、固体電解質層用スラリー組成物を後述する正極活物質層又は負極活物質層の表面に塗工する際に発生するはじきを防止でき、正負極の平滑性を向上させることができる。固体電解質層用スラリー組成物中のレベリング剤の含有量は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には、固体電解質粒子100質量部に対して10質量部以下である。
消泡剤としてはミネラルオイル系消泡剤、シリコーン系消泡剤、ポリマー系消泡剤が例示される。消泡剤は、用いる固体電解質粒子に応じて選択される。固体電解質層用スラリー組成物中の消泡剤の含有量は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には、固体電解質粒子100質量部に対して10質量部以下である。
正極活物質層は、正極活物質、固体電解質粒子及び正極用バインダを含む正極活物質層用スラリー組成物を、後述する集電体表面に塗布し、乾燥することにより形成される。正極活物質層用スラリー組成物は、正極活物質、固体電解質粒子、正極用バインダ、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合することにより製造される。
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な化合物である。正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
固体電解質粒子は、固体電解質層において例示したものと同じものを用いることができる。
正極用バインダとしては、固体電解質層において例示したものと同じものを用いることができる。
導電剤は、導電性を付与できるものであれば特に制限されないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などが挙げられる。
補強材としては、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。
負極活物質層は負極活物質を含む。
負極活物質としては、グラファイトやコークス等の炭素の同素体が挙げられる。前記炭素の同素体からなる負極活物質は、金属、金属塩、酸化物などとの混合体や被覆体の形態で利用することも出来る。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコン等を使用できる。金属材料の場合は金属箔または金属板をそのまま電極として用いることができるが、粒子状でも良い。
負極活物質が粒子状の場合、負極用バインダとしては、固体電解質層において例示したものと同じものを用いることができる。
正極活物質層及び負極活物質層の形成に用いる集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有する観点から、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料が好ましい。中でも、正極用としてはアルミニウムが特に好ましく、負極用としては銅が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。集電体は、上述した正・負極活物質層との接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、集電体と正・負極活物質層との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
固体電解質層用スラリー組成物は、上述した固体電解質粒子、バインダ、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合して得られる。
正極活物質層用スラリー組成物は、上述した正極活物質、固体電解質粒子、正極用バインダ、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合して得られる。
負極活物質層用スラリー組成物は、上述した負極活物質、固体電解質粒子、負極用バインダ、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合して得られる。
全固体電池における正極は、上記の正極活物質層用スラリー組成物を集電体上に塗布、乾燥して正極活物質層を形成して製造される。全固体電池における負極は、金属箔を用いる場合はそのまま用いることができる。負極活物質が粒子状である場合は、上記の負極活物質層用スラリー組成物を、正極の集電体とは別の集電体上に塗布、乾燥して負極活物質層を形成して製造される。次いで、形成した正極活物質層または負極活物質層の上に、固体電解質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥して固体電解質層を形成する。そして、固体電解質層を形成しなかった電極と、上記の固体電解質層を形成した電極とを貼り合わせることで、全固体電池素子を製造する。
ヨウ素価は、JIS K 6235(2006)に従って求めた。
5セルの全固体二次電池を0.1Cの定電流法によって4.3Vまで充電しその後0.1Cにて3.0Vまで放電し、0.1C放電容量aを求めた。その後0.1Cにて4.3Vまで充電しその後5Cにて3.0Vまで放電し、5C放電容量bを求めた。5セルの平均値を測定値とし、5C放電容量bと0.1C放電容量aの電気容量の比(b/a(%))で表される容量保持率を求め、以下の基準で評価した。この値が大きいほど出力特性に優れることを示す。
A:容量保持率が90%以上
B:容量保持率が80%以上90%未満
C:容量保持率が70%以上80%未満
D:容量保持率が70%未満
得られた全固体二次電池を用いて、それぞれ25℃で0.5Cの定電流定電圧充電法という方式で、4.2Vになるまで定電流で充電、その後定電圧で充電し、また0.5Cの定電流で3.0Vまで放電する充放電サイクルを行った。充放電サイクルは50サイクルまで行い、初期放電容量に対する50サイクル目の放電容量の比を容量維持率として求めた。この値が大きいほど充放電サイクル特性に優れることを示す。
A:容量維持率が85%以上
B:容量維持率が70%以上85%未満
C:容量維持率が50%以上70%未満
D:容量維持率が50%未満
<アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の調製>
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、乳化剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、ニトリル基含有単量体としてのアクリロニトリル35部、連鎖移動剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.25部をこの順で入れ、内部を窒素置換した後、共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエン65部を圧入し、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム0.25部を添加して、反応温度40℃で重合反応させた。そして、アクリロニトリルと1,3−ブタジエンとの共重合体を得た。なお、重合転化率は85%であった。
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水330部、リン酸水素ナトリウム0.2部をこの順で入れ、内部を窒素置換した後、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩1部、酢酸エチル0.25質量部、フッ化ビニリデン36.7部を入れ、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.06部を添加して、80℃で重合反応させた。この時の初期圧は3.2MPaであった。圧力が2.5MPaまで低下した時点から圧力が維持されるようにフッ化ビニリデン63.3部を連続的に入れた。圧力が1.5MPaまで下がったところで重合反応を終了とし、フッ化ビニリデン重合体(PVDF)を得た。得られたフッ化ビニリデン重合体の水分散液の固形分濃度は18.5%であった。
得られたアルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の水分散液21.9部と、得られたフッ素系重合体としてのPVDFの水分散液87.9部の混合液に、キシレン500部を添加し、ロータリーエバポレーターでウオーターバスの温度を80℃で減圧し、溶媒交換及び脱水操作を行った。
正極活物質としてコバルト酸リチウム(平均粒子径:11.5μm)100部と、固体電解質粒子としてLi2SとP2S5とからなる硫化物ガラス(Li2S/P2S5=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.4μm)150部と、導電剤としてアセチレンブラック13部と、アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体並びにフッ素系重合体を含む複合体のキシレン分散液を固形分相当で3部、ブチルアクリレートとエチルアクリレートを60/40で共重合したMw=150000のポリマー1部とを加え、さらに有機溶媒としてキシレンで固形分濃度78%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分間混合した。さらにキシレンで固形分濃度74%に調整した後に10分間混合して正極活物質層用スラリー組成物を調製した。
負極活物質としてグラファイト(平均粒子径:20μm)100部と、固体電解質粒子としてLi2SとP2S5とからなる硫化物ガラス(Li2S/P2S5=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.4μm)50部と、アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体並びにフッ素系重合体を含む複合体のキシレン分散液を固形分相当で3部、ブチルアクリレートとエチルアクリレートを60/40で共重合したMw=150000のポリマー1部を混合し、さらに有機溶媒としてキシレンを加えて固形分濃度60%に調整した後にプラネタリーミキサーで混合して負極活物質層用スラリー組成物を調製した。
固体電解質粒子としてLi2SとP2S5とからなる硫化物ガラス(Li2S/P2S5=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:1.2μm、累積90%の粒子径:2.1μm)100部と、アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体並びにフッ素系重合体を含む複合体のキシレン分散液を固形分相当で3部と、ブチルアクリレートとエチルアクリレートを60/40で共重合したMw=150000のポリマー1部とを混合し、さらに有機溶媒としてキシレンを加えて固形分濃度30%に調整した後にプラネタリーミキサーで混合して固体電解質層用スラリー組成物を調製した。
集電体表面に上記正極活物質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(110℃、20分)させて厚さが50μmの正極活物質層を形成して正極を製造した。また、別の集電体表面に上記負極活物質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(110℃、20分)させて厚さが30μmの負極活物質層を形成して負極を製造した。
アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の調製において、ニトリル基含有単量体としてのアクリロニトリルを25部、共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエンを75部用いたこと以外は、実施例1と同様に共重合体の調製を行った。この共重合体のヨウ素価は、8mg/100mgであった。さらに、バインダ組成物の調製において、全重合体中のアルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の割合を25%としたこと以外は、実施例1と同様にバインダ組成物の調製を行った。上記以外は、実施例1と同様にして、全固体二次電池の製造を行った。この電池を用いて出力特性及び充放電サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の調製において、ニトリル基含有単量体としてのアクリロニトリルを40部、共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエンを60部用いたこと以外は、実施例1と同様に共重合体の調製を行った。この共重合体のヨウ素価は、7mg/100mgであった。さらに、バインダ組成物の調製において、全重合体中のアルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の割合を45%としたこと以外は、実施例1と同様にバインダ組成物の調製を行った。上記以外は、実施例1と同様にして、全固体二次電池の製造を行った。この電池を用いて出力特性及び充放電サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
バインダ組成物の調製において、アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の水分散液に代えて、水素化SBR(H−SBR)の水分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様にバインダ組成物の調製を行った。なお、H−SBRのヨウ素価は、6mg/100mgであった。得られたバインダ組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、全固体二次電池の製造を行った。この電池を用いて出力特性及び充放電サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
バインダ組成物の調製において、アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の水分散液を用いず、フッ素系重合体の水分散液のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にバインダ組成物の調製を行った。得られたバインダ組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、全固体二次電池の製造を行った。この電池を用いて出力特性及び充放電サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
バインダ組成物の調製において、アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の水分散液に代えて、水素化ニトリル−ブタジエン共重合体(ヨウ素価:7mg/100mg)のキシレン溶液を固形分で8.76部用いたこと以外は、実施例1と同様にバインダ組成物の調製を行った。得られたバインダ組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、全固体二次電池の製造を行った。この電池を用いて出力特性及び充放電サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
Claims (6)
- アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む粒子状の共重合体と、粒子状のフッ素系重合体と、を含む水系混合物の溶媒が、有機溶媒に溶媒交換されてなる全固体電池用バインダ組成物。
- 前記アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体中のニトリル基含有単量体単位の含有割合が、10質量%以上55質量%以下である請求項1記載の全固体電池用バインダ組成物。
- 前記アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体のヨウ素価が3mg/100mg以上30mg/100mg以下である請求項1又は2記載の全固体電池用バインダ組成物。
- 全固体電池用バインダ組成物を構成する全重合体中の前記アルキレン構造単位およびニトリル基含有単量体単位を含む共重合体の含有割合が、10質量%以上90質量%以下である請求項1〜4の何れかに記載の全固体電池用バインダ組成物。
- 前記有機溶媒が、環状脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5の何れかに記載の全固体電池用バインダ組成物。
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