JPWO2017030041A1 - 機能発現粒子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

機能発現粒子は、多孔質無機粒子と、多孔質無機粒子の孔内に取り込まれた機能成分と、多孔質無機粒子において機能成分を封止している樹脂とを含有する。樹脂は、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を硬化した硬化物である

Description

本発明は、機能発現粒子およびその製造方法、例えば、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤、除草剤、殺虫剤、誘引剤および忌避剤、さらには、難燃剤、硬化剤などに用いられる機能発現粒子およびその製造方法に関する。
従来、多孔質微粒子に、色素、香料、農薬、医薬、酵素、生理活性物質などの機能性物質を内包あるいは吸着させた微粒子は、種々の用途に供されている。
例えば、被担持物質を多孔質微粒子内に内包し、さらにその表面を高分子化合物または硬化性化合物で被覆することにより被担持物質を保持した多孔質微粒子が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、高分子化合物または硬化性化合物として、アクリル樹脂(熱可塑性樹脂)やエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)を用いている。
特開2009−12996号公報
しかるに、特許文献1では、アクリル樹脂やエポキシ樹脂の有機溶媒溶液を調製し、これを被担持物質が存在する多孔質微粒子の孔内に充填し、その後、有機溶媒溶液中の有機溶媒を除去することにより、多孔質微粒子を製造している。しかし、このようにして多孔質微粒子を製造すると、有機溶媒を除去するため、アクリル樹脂やエポキシ樹脂の容積は、孔の総容積に対して、小さくなる。そのため、被担持物質を多孔質微粒子に対して保持することが困難となり、被担持物質が多孔質粒子の孔外に漏出するという不具合がある。
本発明の目的は、十分な量の樹脂を含有することができ、そのような樹脂によって多孔質粒子の孔内において機能成分を確実に封止することができる機能発現粒子およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、
[1]多孔質無機粒子と、前記多孔質無機粒子の孔内に取り込まれた機能成分と、前記孔内において前記機能成分を封止している樹脂とを含有し、前記樹脂は、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を硬化した硬化物であることを特徴とする、機能発現粒子、
[2]前記ビニルモノマー溶液が、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、および、ウレタンアクリレート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、上記[1]に記載の機能発現粒子、
[3]前記ビニルモノマー溶液が、不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の機能発現粒子、
[4]前記機能成分が、水不溶性成分であることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の機能発現粒子、
[5]前記機能成分が、水溶性成分であることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の機能発現粒子、
[6]前記機能成分および前記樹脂の総質量の、前記多孔質無機粒子の質量に対する割合が、1.60以上であることを特徴する、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の機能発現粒子、
[7]前記機能成分の質量の前記樹脂の質量に対する割合が、2.25以下であることを特徴する、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の機能発現粒子、
[8]前記樹脂の容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が、0.30以上であることを特徴する、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の機能発現粒子、
[9]前記機能成分および前記樹脂の総容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が、0.75以下であることを特徴する、上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の機能発現粒子、
[10] 前記機能成分および前記樹脂の総容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が、0.50を超過することを特徴する、上記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の機能発現粒子、
[11]多孔質無機粒子に、機能成分を含有する液を、前記液の容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が0.75以下となるように、配合して、機能成分を前記多孔質無機粒子の孔内に取り込ませる工程(1)、前記多孔質無機粒子に、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を、前記機能成分および前記ビニルモノマー溶液の総容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が、0.75以下となるように、配合して、前記ビニルモノマー溶液を前記多孔質無機粒子の孔内に取り込ませる工程(2)、および、前記ビニルモノマー溶液を硬化させることにより、前記孔内において前記機能成分を封止する工程(3)を備えることを特徴とする、機能発現粒子の製造方法、
[12]前記ビニルモノマー溶液の23℃における粘度が、100mPa・s以下であることを特徴とする、上記[11]に記載の機能発現粒子の製造方法、
[13]前記硬化性樹脂のビニルモノマー溶液は、熱硬化性樹脂組成物であり、前記熱硬化性樹脂組成物は、JIS K6901−A法(2008)に準拠して測定される常温ゲル化時間が、10分以上であることを特徴とする、上記[11]または[12]に記載の機能発現粒子の製造方法、
[14]前記硬化性樹脂のビニルモノマー溶液は、熱硬化性樹脂組成物であり、
前記熱硬化性樹脂組成物は、JIS K6901−A法(2008)に準拠して測定される常温ゲル化時間が、1時間以下であることを特徴とする、上記[11]〜[13]のいずれか一項に記載の機能発現粒子の製造方法
である。
本発明の機能発現粒子の製造方法によれば、多孔質無機粒子に、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を配合して、ビニルモノマー溶液を、機能成分が取り込まれている多孔質無機粒子の孔内に取り込ませて、ビニルモノマー溶液を硬化している。そのため、特許文献1のように、高分子化合物による被覆の際に有機溶媒を除去する工程を要することなく、孔内におけるビニルモノマー溶液すべてが硬化して硬化物を形成するので、孔内における樹脂の容積を大きく確保することができる。従って、そのような樹脂によって多孔質無機粒子において十分な量の機能成分を確実に封止することができる。
その結果、本発明の機能発現粒子は、破壊などの物理的な条件下で、十分な量の機能成分を放出して、機能を発現することができる。
本発明の機能発現粒子の一実施形態は、多孔質無機粒子と、多孔質無機粒子の孔内に取り込まれた機能成分と、多孔質無機粒子において機能成分を封止している樹脂とを含有する。以下、多孔質無機粒子、機能成分、樹脂、および、機能発現粒子の製造方法、用途、作用効果について順に説明する。
1.多孔質無機粒子
多孔質無機粒子を形成する無機物としては、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、ゼオライトなどのケイ酸塩、例えば、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、アパタイトなどのリン酸塩、例えば、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、一酸化ケイ素など)、アルミナ、酸化マグネシウムなどの酸化物、およびこれらの2種以上の化合物の混合物などが挙げられる。好ましくは、酸化物、より好ましくは、酸化ケイ素、さらに好ましくは、シリカが挙げられる。
多孔質無機粒子は、球形状(真球形状を含む)または不定形状を有する。また、多孔質無機粒子は、通常、一次粒子が互いに凝集した凝集体(二次粒子など)である。
多孔質無機粒子が、シリカ(二酸化ケイ素)からなり、不定形状を有する場合には、多孔質無機粒子は、例えば、湿式法、乾式法などにより製造され、好ましくは、湿式法により製造される。湿式法では、水ガラス(ケイ酸ソーダ水溶液)を硫酸などの鉱酸で中和することにより、シリカを生成させる。この時、高温、アルカリ性のpH領域で中和反応を進めることにより、シリカ一次粒子の成長が速く進行し、一次粒子をフロック状に沈降させる沈降法シリカと、中和反応を酸性のpH領域で進めることにより、一次粒子の成長を抑えた状態で凝集させ、3次元網目構造により、反応液全体を一塊のゲルとするゲル法シリカとがある。ゲル法シリカは、沈降法シリカに比べて、一次粒子が小さく、細孔容積が大きいため、好ましい。
また、上記のようにして製造された多孔質無機粒子を、焼成して用意することもできる。多孔質無機粒子の焼成によって、多孔質無機粒子が酸化物(具体的には、酸化ケイ素など)である場合には、表面に存在するOH基(具体的には、シラノール基など)が、除去される。機能成分が、シラノール基と反応する化合物(具体的には、シラノール基、ヒドロキシル基を含む化合物)あるいは相互作用をもつ化合物(具体的には、アミノ基など)を、酸化ケイ素に取り込ませる場合には、酸化ケイ素のシラノール基を焼成によって除去した方が、機能成分が放出されやすくなり、好ましい場合がある。
多孔質無機粒子が、シリカ(二酸化ケイ素)からなり、真球形状を有する場合には、例えば、炭化水素などの不活性な溶媒中で分散安定化させた所望のサイズの水相滴中で、湿式法によるシリカを生成させることにより製造される。
また、多孔質無機粒子が有する孔は、多孔質無機粒子を形成する一次粒子の内部の細孔と、一次粒子間の空隙とを意味する。
多孔質無機粒子の細孔容積(一次粒子の孔の総容積)は、例えば、1.0mL/g以上、好ましくは、1.5mL/g以上、また、例えば、3.0mL/g以下である。細孔容積は、窒素ガス吸着法により測定される。多孔質無機粒子の細孔容積は、多孔質無機粒子を形成する一次粒子の内部における単位質量(g)当たりの細孔容積(mL)を意味する。
多孔質無機粒子の比表面積は、例えば、150m/g以上、好ましくは、300m/g以上、また、例えば、1000m/g以下である。比表面積は、簡易BET法により測定される。
多孔質無機粒子の細孔容積を4倍して、比表面積で割った値は、通常、多孔質無機粒子の平均細孔径として、使用されている。
多孔質無機粒子の吸油量は、例えば、100mL/100g以上、好ましくは、250mL/100g以上、また、例えば、500mL/100g以下である。吸油量は、JIS K5101−13−2(2004年)に準拠して測定される。多孔質無機粒子の吸油量は、多孔質無機粒子を形成する一次粒子の内部の細孔容積、一次粒子間の空隙容積、および、二次粒子の表面を油が濡らす最低容量の合計の、多孔質無機粒子の100g当たりの容積(mL)を示す。多孔質無機粒子の吸油量は、上記で示す測定値であるため、細孔容積、比表面積、平均細孔径とは、一義的に相関していない。
多孔質無機粒子の最大長さの平均値(球形状を有する場合には、平均粒子径)は、例えば、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは、2μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
2.機能成分
機能成分は、多孔質無機粒子の孔内に取り込まれ、樹脂により封止(被覆)されている。そして、使用時における粒子の物理的な破壊などにより、機能成分が樹脂から開放されて、孔内から放出される。あるいは、機能成分は、使用時に、溶剤中などの溶脱しやすい過酷な環境下などにおいては、徐放性を発現することができる。
機能成分として、例えば、抗生物活性化合物、難燃剤、硬化剤、色素、香料、酵素などが挙げられ、好ましくは、抗生物活性化合物、難燃剤、硬化剤が挙げられる。
2−1.抗生物活性化合物
抗生物活性化合物としては、例えば、常温で水不溶性の抗生物活性化合物(水不溶性成分)、常温で水溶性の抗生物活性化合物(水溶性成分)が挙げられる。
なお、水不溶性とは、室温(20℃)において、水に実質的に溶けない性質であり、具体的には、水に全く溶けない性質、および、極微量溶ける性質(難溶性)を含む。詳しくは、水不溶性の物質の常温における水に対する溶解度が、例えば、10g/L以下、さらには、5g/L以下である。
一方、水溶性とは、室温(25℃)において、水に実質的に溶ける性質であり、水溶性の物質の常温における水に対する溶解度が、例えば、10g/L超過、さらには、20g/L以上である。
2−1−1.水不溶性の抗生物活性化合物
水不溶性の抗生物活性化合物は、国際公開2011/030824号や国際公開2013/100102号などに開示される抗生物活性化合物、さらには、特開平04−009303号公報などに開示されるカプサイシン類などが挙げられる。
また、水不溶性の抗生物活性化合物は、殺菌、抗菌、防腐、防藻、防かび、除草、殺虫、誘引および忌避などの抗生物活性を有する、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤、除草剤、殺虫剤、誘引剤および忌避剤などから選択される。
殺菌防腐防藻防かび剤(防腐防かび剤を含む)としては、例えば、有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、ジチオール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、パラオキシ安息香酸エステルなどが挙げられる。
有機ヨード系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネートなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(プロピコナゾール)、ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン(別称:フルシラゾール、1−[[ビス(4−フルオロフェニル)メチルシリル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール)などが挙げられる。
カルバモイルイミダゾール系化合物としては、例えば、N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド(プロクロラズ)などが挙げられる。
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)や4,5−ジクロロ−2−n−オクチルイソチアゾリル−3−オン(DCOIT)などが挙げられる。
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール(DBNE)などが挙げられる。
パラオキシ安息香酸エステルとしては、例えば、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
また、防蟻剤(殺蟻剤)としては、例えば、ピレスロイド系化合物、ネオニコチノイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、オキサジアジン系化合物などが挙げられる。
ピレスロイド系化合物としては、例えば、シロバナムシヨケギクより得られるピレトリン、シネリン、ジャスモリンなどのピレスロイド系殺虫剤が挙げられ、これらから誘導されるアレスリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、トラロメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス(2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル=3−フェノキシベンジル=エーテル)、シラフルオフェン、フェンバレレートなどのピレスロイド系殺虫剤も挙げられる。
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−N−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N−シアノ−N−メチルアセトアミジン(アセタミプリド)などが挙げられる。
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
カーバメート系化合物としては、例えば、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
さらに、除草剤としては、例えば、ピラクロニル、ペンディメタリン、インダノファンなどが挙げられる。
殺虫剤としては、例えば、ピリプロキシフェンなどが挙げられる。
忌避剤としては、例えば、ディート、カプサイシン類(辛味成分)などが挙げられる。好ましくは、カプサイシン類が挙げられる。
カプサイシン類としては、例えば、カプサイシン(N−[(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)メチル]−8−メチル−6−ノネンアミド)、および、カプサイシン誘導体が挙げられる。カプサイシン誘導体としては、例えば、N−バニリルノナンアミド(ノニリックアシドバニリルアミド)、デシリックアシドバニリルアミド、ノルジヒドロカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシンなどが挙げられる。カプサイシン類として、好ましくは、カプサイシン、N−バニリルノナンアミドが挙げられる。
水不溶性の抗生物活性化合物として、好ましくは、防腐防かび剤、忌避剤が挙げられる。
2−1−2.水溶性の抗生物活性化合物
水溶性の抗生物活性化合物は、例えば、木材に対する防腐性などを付与する木材保存剤、例えば、忌避などの抗生物活性を有する忌避剤などから選択される。水溶性の抗生物活性化合物としては、例えば、硼酸ナトリウム、安息香酸デナトニウム(苦味成分)などが挙げられる。
硼酸ナトリウムは、水和塩を含み、具体的には、八硼酸二ナトリウム四水和塩などを含む。
また、水溶性の抗生物活性化合物としては、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(H−MIT)、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(ブロノポール)、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム(NaPt)、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−1,3,5−トリアジン、メチル1H−ベンゾイミダゾール−2−イルカルバマート塩酸塩(カルベンダジム塩酸塩)なども挙げられる。
2−2.難燃剤
難燃剤としては、例えば、常温で水不溶性の難燃剤(水不溶性成分)、常温で水溶性の難燃剤(水溶性成分)が挙げられる。
2−2−1.水不溶性の難燃剤
水不溶性の難燃剤としては、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
2−2−2.水溶性の難燃剤
水溶性の難燃剤としては、トリメチルホスフェート、リン酸グアニジン、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
2−3.硬化剤
硬化剤は、機能発現粒子から放出されて、樹脂(後述する第2樹脂)と硬化反応(架橋反応)することができる機能成分である。硬化剤は、樹脂(第2樹脂)を、3次元網目構造を有する架橋樹脂(硬化樹脂)にするための架橋剤(第1硬化剤)でもある。なお、硬化剤と架橋剤とは、明確に区別されない。
なお、機能成分として硬化剤は、第1硬化剤であって、後述する不飽和ポリエステル樹脂に配合される成分である第2硬化剤とは、区別される。
硬化剤は、第1官能基を複数有する。第1官能基は、後述する樹脂(第2樹脂)が有する第2官能基と反応することができる。
第1官能基としては、例えば、エポキシ基、N−メチロール基(Nは窒素原子)、N−アルコキシメチル基(Nは窒素原子)、イソシアネート基、窒素原子含有基、アルデヒド基、オキサゾリン基、ヒドラジド基、シラノール基、アジリジン基、アセトアセトキシ基、ダイアセトン基などが挙げられる。単独種類の第1官能基が、硬化剤に複数含有され、あるいは、複数種類の第1官能基が硬化剤に含有される。好ましくは、単独種類の第1官能基が、硬化剤に複数含有される。
具体的には、硬化剤として、例えば、エポキシ基含有化合物、N−メチロール基含有化合物、N−アルコキシメチル基、イソシアネート基含有化合物、窒素原子含有化合物、アルデヒド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、シラノール基含有化合物、アジリジン基含有化合物、アセトアセトキシ基含有化合物、ダイアセトン基含有化合物などが挙げられる。硬化剤として、好ましくは、エポキシ基含有化合物、N−メチロール基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、窒素原子含有化合物が挙げられる。硬化剤は、単独使用または併用することができる。
硬化剤は、常温で水不溶性、および、常温で水溶性のいずれであってもよい。
2−3−1.エポキシ基含有化合物
エポキシ基含有化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、エポキシ基含有ビニルモノマー(共重合)オリゴマー、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル、エポキシ化ポリブタジエンなどが挙げられる。好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ基含有ビニルモノマーのオリゴマーにおけるエポキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ化不飽和脂肪酸エステルのおける不飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、亜麻仁油、大豆油、桐油などが挙げられる。エポキシ基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
エポキシ基含有化合物におけるエポキシ基は、第2樹脂に含有されるアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸無水物基(後述)などと反応することができる。
2−3−2.N−メチロール基含有化合物、N−アルコキシメチル基含有化合物
N−メチロール基含有化合物としては、例えば、メチロール化メラミン(メラミン初期縮合物)、メチロール化尿素(尿素初期縮合物)、尿素グリオキザールホルムアルデヒド反応物(グリオキザール系樹脂)、N−メチロールアクリルアミド(共重合)オリゴマーなどが挙げられる。N−アルコキシメチル基含有化合物としては、例えば、3,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン、N−メトキシメチルアクリルアミド(共重合)オリゴマー、N−ブトキシメチルアクリルアミド(共重合オリゴマーなどが挙げられる。N−メチロール基含有化合物および/またはN−アルコキシメチル基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
N−メチロール基含有化合物におけるN−メチロール基は、>N−CH(OH)で示される。N−アルコキシメチル基は>N−CH―OR(Rはアルキル基)で示される。N−メチロール基およびN−アルコキシメチル基は、第2樹脂に含有されるヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基(後述)など反応することができる。
2−3−3.イソシアネート基含有化合物
イソシアネート基含有化合物としては、例えば、ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートとして、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソシアネート、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)などの脂肪族ジイソシアネート、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4−H6XDI)などの脂環族ジイソシアネート、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。また、ジイソシアネートとして、上記した各ジイソシアネートのアルコール付加体(具体的には、トリメチロールプロパン付加体)、ビウレット変性体、アロファネート変性体、多量体(二量体、三量体(イソシアヌレート変性体))、または、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI)なども挙げられる。イソシアネート基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
イソシアネート基含有化合物におけるイソシアネート基は、第2樹脂に含有されるヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基(後述)などと反応することができる。
2−3−4.窒素原子含有化合物
窒素原子含有化合物は、窒素原子に直接結合する水素を含む活性水素基を有する活性水素基含有化合物である。
窒素原子含有化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、ポリアミン化合物が挙げられる。
イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、例えば、イミダゾール誘導体が挙げられる。好ましくは、イミダゾール誘導体が挙げられる。
イミダゾール誘導体は、イミダゾールにおける水素原子の一部が置換基で置換された化合物である。イミダゾール誘導体としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1?2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)などが挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの鎖状脂肪族ジアミン化合物、例えば、イソフォロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの環状脂肪族ジアミン化合物、例えば、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)などの芳香族ジアミン化合物などが挙げられる。
窒素原子含有化合物は、単独使用または併用することができる。
窒素原子含有化合物における活性水素基は、第2樹脂に含有されるエポキシ基、イソシアネート基(後述)と反応することができる。
2−3−5.アルデヒド基含有化合物
アルデヒド基含有化合物としては、例えば、グリオキザール、グリオキザール系樹脂などが挙げられる。アルデヒド基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
アルデヒド基含有化合物におけるアルデヒド基は、第2樹脂に含有されるヒドロキシル基(後述)などと反応することができる。
2−3−6.オキサゾリン基含有化合物
オキサゾリン基含有化合物としては、2,2’−(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリンなどが挙げられる。オキサゾリン基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
オキサゾリン基含有化合物におけるオキサゾリン基は、カルボキシル基、チオール基(より具体的には、フェノール性チオール基(ベンゼン環の炭素原子に直接結合するチオール基))、酸無水物基(後述)と反応することができる。
2−3−7.ヒドラジド基含有化合物
ヒドラジド基含有化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジドカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどのカルボヒドラジド類などが挙げられる。ヒドラジド基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
ヒドラジド基含有化合物におけるヒドラジド基は、第2樹脂に含有されるカルボニル基(後述)などと反応することができる。
2−3−8.シラノール基含有化合物
シラノール基含有化合物としては、例えば、アルコキシシラン、アルコキシシランのオリゴマーなどが挙げられる。シラノール基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
シラノール基含有化合物におけるシラノール基は、第2樹脂に含有されるヒドロキシル基(後述)と反応(縮合反応)することができる。
2−3−9.アジリジン基含有化合物
アジリジン基含有化合物としては、例えば、2−(1−アリジディニル)エチル(メタ)アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。アジリジン基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
アジリジン基含有化合物におけるアジリジン基は、第2樹脂に含有されるカルボキシル基、チオール基、フェノール性ヒドロキシル基(後述)と反応することができる。
2−3−10.アセトアセトキシ基含有化合物
アセトアセトキシ基含有化合物としては、例えば、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。アセトアセトキシ基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
アセトアセトキシ基は、第2樹脂に含有されるアミノ基、ヒドラジド基(後述)などと反応することができる。
2−3−11.ダイアセトン基含有化合物
ダイアセトン基含有化合物としては、例えば、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドオリゴマーなどが挙げられる。ダイアセトン基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
ダイアセトン基含有化合物におけるダイアセトン基は、第2樹脂に含有されるカルボキシル基、アミノ基(後述)などと反応することができる。
3.樹脂
樹脂(第1樹脂)は、ビニル重合反応性二重結合を分子内に複数含む低分子量のポリマー(以下、硬化性樹脂という。また、第1硬化性樹脂でもある。)のビニルモノマー溶液を硬化した硬化物である。
ビニルモノマー溶液は、硬化性樹脂を、常温(25℃)で液状のビニルモノマーによって溶解した硬化性樹脂組成物(第1硬化性樹脂組成物)であって、好ましくは、硬化性樹脂と、ビニルモノマーとのみからなり、非反応性の溶媒(メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒など)を含有しない。
硬化性樹脂組成物は、ビニル重合性である。硬化性樹脂組成物は、重合開始剤(後述)、重合促進剤(後述)などの選択により、常温硬化型の熱硬化性樹脂組成物、高温硬化型の熱硬化性樹脂組成物、あるいは、紫外線、電子線などの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物となる。
硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくは、コストおよび多様な性能の樹脂が得られる観点から、不飽和ポリエステルが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
硬化性樹脂として、好ましくは、不飽和ポリエステルが挙げられる。
3−1.不飽和ポリエステル
不飽和ポリエステルは、不飽和二塩基酸を含む二塩基酸成分と、二価アルコール(ジオール)成分とを重縮合(縮合重合)して得られる。
不飽和二塩基酸としては、具体的には、マレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸(メサコン酸)、メチルマレイン酸(シトラコン酸)、アコニット酸、イタコン酸(メサコン酸およびシトラコン酸の異性体)などのα,β−不飽和二塩基酸などが挙げられる。また、不飽和二塩基酸としては、上記したα,β−不飽和二塩基酸の無水物(具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸など)も挙げられる。これらは、単独使用、または、2種以上併用することができる。また、不飽和二塩基酸として、好ましくは、フマル酸、無水マレイン酸が挙げられ、より好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
二塩基酸成分における不飽和二塩基酸の含有割合は、モル基準で、例えば、20%以上、好ましくは、40%以上であり、また、例えば、80%以下、好ましくは、60%以下である。
二塩基酸成分は、上記した不飽和二塩基酸以外に、飽和二塩基酸を含むこともできる。飽和二塩基酸としては、具体的には、無水フタル酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、3,6−エンドジクロロメチレンテトラクロロ無水フタル酸(ヘット酸)、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸(無水ナジン酸)、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。飽和二塩基酸として、好ましくは、無水フタル酸、アジピン酸が挙げられ、より好ましくは、無水フタル酸が挙げられる。なお、不飽和ポリエステル樹脂の粘度を低くするため、あるいは硬化物を柔軟にする観点からは、飽和二塩基酸として、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数6以上10以下の飽和脂肪酸ジカルボン酸などを選択するのが効果的である。
二塩基酸成分における飽和二塩基酸の含有割合は、モル基準で、例えば、20%以上、好ましくは、40%以上であり、また、例えば、80%以下、好ましくは、60%以下である。また、飽和二塩基酸の、不飽和二塩基酸100モル部に対する含有割合は、例えば、50モル部以上、好ましくは、75モル部以上であり、また、例えば、150モル部以下、好ましくは、125モル部以下である。
二価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのポリエチレングルコール、例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングルコールなどのポリプロピレングリコール、例えば、ネオペンチルグリコール、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールA)、例えば、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加体、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加体などが挙げられる。二価アルコール成分として、硬化物を柔軟にする観点から、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが挙げられる。
二価アルコール成分は、単独使用、または、2種以上併用することができる。二価アルコール成分として、好ましくは、プロピレングリコールおよびジエチレングリコールの併用、トリエチレングリコールおよびエチレングリコールの併用が挙げられる。
また、二塩基酸成分における不飽和二塩基酸の含有割合が40モル%以下で、かつ、二価アルコール成分におけるポリエチレングリコールおよびポリプロピレングルコールの合計の含有割合が60モル%以上である不飽和ポリエステルの硬化物は、軟質となる。そのため、このような組成で得られる不飽和ポリエステルを軟質不飽和ポリエステルと定義する。軟質不飽和ポリエステルは、一般的に飽和二塩基酸として、フタル酸を原料に使用する。飽和二塩基酸として無水フタル酸またはオルソフタル酸を用いると脆くて破壊されやすい硬化物が得られる。一方、飽和二塩基酸としてとして、イソフタル酸および/またはテレフタル酸を用いると酸、アルカルなどに耐性のある硬化物が得られる。加圧および/または加熱により機能成分を放出させる場合には、飽和二塩基酸として無水フタル酸、オルソフタル酸が好ましく用いられる。さらに、柔軟な軟質不飽和ポリエステルは、一般的に飽和二塩基酸としてアジピン酸を原料に使用する。
不飽和ポリエステルは、上記した二塩基酸成分と、上記した二価アルコール成分とを、例えば、二塩基酸成分に対する二価アルコール成分のモル比が1.00以上1.10以下の割合となるように、配合し、その後、加熱によって、それらを重縮合させる。反応温度は、例えば、180℃以上、例えば、220℃以下である。反応温度は、例えば、3時間以上、例えば、20時間以下である。
また、二塩基酸成分および二価アルコール成分の上記した重縮合において、不飽和二塩基酸の付加重合(ビニル重合)を禁止するために、二塩基酸成分および二価アルコール成分の混合物に重合禁止剤(第1の重合禁止剤)を添加する。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノンなどのハイドロキノン化合物、例えば、ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン化合物、例えば、t−ブチルカテコールなどのカテコール化合物、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−メトキシフェノール(ハイドロキノンメチルエーテル)などのフェノール化合物、例えば、フェノチアジン、ナフテン酸銅などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、ハイドロキノンが挙げられる。
重合禁止剤の添加割合は、二塩基酸成分および二価アルコール成分の混合物に対して、質量基準で、例えば、1ppm以上、好ましくは、10ppm以上であり、また、例えば、1000ppm以上、好ましくは、100ppm以下である。
なお、不飽和ポリエステルは、例えば、開環重合によっても得られ、具体的には、多価アルコールを開始剤とし、必要によりジルコニウム、亜鉛などの金属石鹸を重合触媒を併用する。開環重合による不飽和ポリエステルの製造は、二塩基酸成分として、無水マレイン酸を必須成分とし、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物が用いられ、二価アルコール成分として、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリンなどのアルキレンオキサイドをモノマーとして開環重合する。さらには、開環重合で得られた重合体を重縮合により重合度を上げて製造することもできる。
不飽和ポリエステルの酸価は、例えば、5[mgKOH/g]以上、好ましくは、10[mgKOH/g]以上であり、また、例えば、80[mgKOH/g]以下、好ましくは、40[mgKOH/g]以下である。不飽和ポリエステルの酸価は、JIS K6901−A法(2008)に準拠して測定される。
3−2.エポキシ(メタ)アクリレート
エポキシ(メタ)アクリレートは、ビニルエステルとも呼称される。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、以下の方法により得られる。すなわち、ビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸(つまり、アクリル酸および/またはメタクリル酸)などの不飽和カルボン酸とを、例えば、3級アミンなどの触媒存在下で反応して、エポキシ環をカルボキシル基で開環させることによって、エステル結合を生成させる方法(1)、例えば、不飽和オリゴエステルのカルボキシル基末端と、グルシジル(メタ)アクリリレートなどのエポキシ基含有アクリル酸エステルのエポキシ基とを、例えば、3級アミンなどの触媒存在下で反応して、エポキシ環をカルボキシル基で開環させ、エステル結合を導入させる方法(2)などにより、エポキシ(メタ)アクリレートは得られる。
3−3.ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートは、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシル基とを、例えば、ジブチル錫ジラウレートなどの触媒存在下で反応させることにより得られ、ウレタン結合とエステル結合とを含むオリゴマーである。
3−4.ビニルモノマー
ビニルモノマーとしては、ラジカル開始による付加重合(ビニル重合)を行う性質を有する、常温で液状のモノマーが選択される。さらに、ビニルモノマーは、硬化性樹脂を溶解して粘度を低下させるとともに、硬化性樹脂の不飽和二重結合とビニル共重合する架橋性モノマーとしての役割を担う。このようなビニルモノマーとしては、例えば、単官能ビニルモノマーが挙げられ、具体的には、例えば、スチレン、メチルスチレン(α−メチルスチレン、β−メチルスチレン)(ビニルトルエン)、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン(o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン)などのスチレン系モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。好ましくは、スチレン系モノマーが挙げられる。
ビニルモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
ビニルモノマーの配合割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、70質量部以上であり、また、例えば、150質量部以下、好ましくは、130質量部以下である。また、ビニルモノマーの配合割合は、硬化性樹脂およびビニルモノマーの総量(樹脂の量)に対して、例えば、35質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、51質量%以上であり、また、例えば、55質量%以下、好ましくは、53質量%以下である。
ビニルモノマーの配合割合が上記した下限以上であれば、硬化性樹脂組成物の粘度(後述)を低減させることができ、硬化性樹脂組成物が多孔質無機粒子の孔内に迅速に取り込まれる(吸着・担持される)ことができる。一方、ビニルモノマーの配合割合が上記した上限以下であれば、架橋密度の高い樹脂(硬化物)が得られる。
3−5.硬化性樹脂組成物の調製
3−5−1.硬化性樹脂のビニルモノマーへの溶解
硬化性樹脂のビニルモノマー溶液は、上記した硬化性樹脂およびビニルモノマーを、上記した割合で配合することにより調製される。具体的には、硬化性樹脂の製造において、反応終了後、冷却を行い、流動性が十分ある状態の硬化性樹脂を、別途、準備したビニルモノマー中に撹拌下、注入することにより、調製される(ホット・ダイリューション)。また、硬化性樹脂の製造において、反応終了後、室温まで冷却を行い、高粘度の硬化性樹脂にビニルモノマーを注入して、溶解させる方法で調製してもよい(コールド・ダイリューション)。
なお、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液は、硬化性樹脂が不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートのそれぞれである場合には、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂のそれぞれである。
また、不飽和ポリエステル樹脂は、上記した方法で調製することもでき、また、市販品を用いることもできる。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂として、例えば、ジャパンコンポジット社のポリホープシリーズ、DICマテリアル社のサンドーマシリーズ、昭和電工社のリゴラックシリーズなどの中で、製品試験表に表示の物性値、およびNMRなどで分析した組成分析値より、以下に述べる所定の物性値に調整可能な市販品の品番を用いることができる。同様にして、エポキシアクリレート樹脂としては、日本ユピカ社のネオポールシリーズ、DICマテリアル社のビニルエステルシリーズなどが用いられ、ウレタンアクリレートとしては、日本ユピカ社のユピカシリーズなどが用いられる。
3−5−2.硬化性樹脂組成物の物性の調整
得られた硬化性樹脂組成物は、本発明の用途に適合する常温ゲル化時間および粘度を示すように、調整を行う。硬化性樹脂組成物を、常温硬化型の熱硬化性樹脂組成物である不飽和ポリエステル樹脂を例に取って、説明する。
まず、多孔質無機粒子への不飽和ポリエステル樹脂の吸着速度(孔内への取り込まれる速度)が十分速い必要がある。そのためには、不飽和ポリエステル樹脂の23℃における粘度は、例えば、100mPa・s以下、好ましくは、70mPa・s以下に調整する。ビニルモノマー溶液の粘度は、BM型粘度計によって測定される。不飽和ポリエステル樹脂の粘度が、上記上限以下であれば、多孔質無機粒子孔内への不飽和ポリエステル樹脂の取り込まれる速度が低下することなく、ビニルモノマー溶液の取り込みを短時間ででき、さらには、ビニルモノマー溶液を孔内に十分に取り込んで、多孔質無機粒子の表面に残存することを抑制することができる。
粘度の調整は、ビニルモノマーの後添加により実施する。合計のビニルモノマー量は、上記のように、不飽和ポリエステル樹脂の総量に対して、例えば、55質量%以下、好ましくは、53質量%以下とする。
次いで、常温硬化における常温ゲル化時間を調整する。常温ゲル化時間は、JIS K6901−A法(2008)に準拠して測定される。常温ゲル化時間は、例えば、10分以上、好ましくは、20分以上であり、また、例えば、2時間以下、好ましくは、1時間以下となるように調整する。
不飽和ポリエステル樹脂の常温ゲル化時間が上記した下限以上であれば、次に説明する工程(2)において、不飽和ポリエステル樹脂が硬化する前に、多孔質無機粒子の孔内に確実に取り込ませることができる。つまり、不飽和ポリエステル樹脂の常温ゲル化時間が上記した下限に満たない場合には、不飽和ポリエステル樹脂が多孔質無機粒子の孔内に取り込まれる前に、不飽和ポリエステル樹脂の硬化が開始してしまう。そのため、不飽和ポリエステル樹脂を多孔質無機粒子の孔内に確実に取り込むことができない場合がある。
一方、不飽和ポリエステル樹脂の常温ゲル化時間が上記した上限以下であれば、工程(2)において、多孔質無機粒子の孔内に取り込まれた機能成分が、ビニルモノマー溶液に含有されるビニルモノマーに溶け出し、続いて、多孔質無機粒子の表面に移動することを防止することができる。他方、特許文献1の実施例3、4、7などに記載の方法であれば、上記した上限以上の時間でエポキシ樹脂のメチルケトン溶液を加熱するので、その間に、被担持物質がメチルエチルケトンに溶け出し、シリカ微粒子の表面に移動してしまう。
そして、不飽和ポリエステル樹脂の常温ゲル化時間が上記した上限以下であれば、さらに、次に説明する工程(3)において、不飽和ポリエステル樹脂を迅速に、かつ高い架橋密度で硬化させることができる。
常温硬化型の不飽和ポリエステル樹脂の調製は、不飽和ポリエステル樹脂に重合促進剤、必要により重合促進助剤および重合遅延剤(第2の重合禁止剤)を配合することにより実施される。重合促進剤としては、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルトなどの酸化性金属石鹸が挙げられる。重合促進助剤としては、例えば、ジメチルアニリンなどの芳香族アミン、アセチルアセトンなどのカルボニル化合物が挙げられる。重合遅延剤(第2の重合禁止剤)としては、例えば、第1の重合禁止剤で例示したものが挙げられ、好ましくは、ハイドロキノンメチルエーテル、ハイドロキノンが挙げられる。
常温ゲル化時間の調整は次のようにして実施する。JIS K6901−A法(2008)に準拠して、所定量の重合促進剤、および必要により所定量の重合促進助剤を、所定量の上記不飽和ポリエステル樹脂に配合後、所定量の重合開始剤(メチルエチルケトンパーオキサイドなど)を配合して、常温ゲル化時間を測定する。同時に、上記の配合樹脂に数点の量の異なる重合遅延剤(第2の重合禁止剤)を配合して、常温ゲル化時間を測定する。重合遅延剤(第2の重合禁止剤)としては、例えば、第1の重合禁止剤で例示したものが挙げられる。重合遅延剤(第2の重合禁止剤)の量は、有効成分量としてビニルモノマーに対して、質量基準で、例えば、5ppm以上、1000ppm以下である。重合遅延剤(第2の重合禁止剤)の量と常温ゲル化時間の関係がグラフで表され、所望の常温ゲル化時間に対応する重合遅延剤(第2の重合禁止剤)の量が得られる。しかる後に、上記不飽和ポリエステル樹脂に対して、所定量の重合促進剤、および必要により重合促進助剤、上記で得られた量の重合遅延剤(第2の重合禁止剤)を配合して、常温ゲル化時間および粘度が調整された不飽和ポリエステル樹脂を調製する。
この一実施形態では、重合促進剤は、6%ナフテン酸コバルト、あるいは、8%オクチル酸コバルトを不飽和ポリエステル樹脂に対して、0.5質量%配合し、重合促進助剤は配合しない処方を標準処方とする。また、重合開始剤には、55%メチルエチルケトンパーオキサイドを1.0質量%配合して、常温ゲル化時間を測定する方法を標準測定法とする。
4.機能発現粒子の製造方法
次に、機能発現粒子を製造する方法について説明する。
機能発現粒子の製造方法は、多孔質無機粒子に、機能成分を含有する液を、液の容積(Vl)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合(Vl/Voa)が0.75以下となるように、配合して、機能成分を多孔質無機粒子の孔内に取り込ませる工程(1)、多孔質無機粒子に、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を、機能成分およびビニルモノマー溶液の総容積(Vf+Vr)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合((Vf+Vr)/Voa)が、0.75以下となるように、配合して、ビニルモノマー溶液を多孔質無機粒子の孔内に取り込ませる工程(2)、および、ビニルモノマー溶液を硬化させることにより、孔内において機能成分を封止する工程(3)を備える。
以下、各工程について順次説明する。
4−1.工程(1)
まず、この工程(1)では、機能成分を含有する液を調製する。
機能成分が常温で液状である場合には、かかる機能成分をそのまま液として準備する。好ましくは、機能成分の、23℃における粘度が、100mPa・s以下であれば、かかる機能成分をそのまま液として準備する。粘度の測定方法について、上記したビニルモノマー溶液の粘度の測定方法と同一である。
一方、機能成分の、23℃における粘度が、100mPa・s超過であれば、機能成分を次に説明する溶媒によって希釈して、23℃における粘度が、例えば、100mPa・s以下の、好ましくは、70mPa・s以下の機能成分の溶液を調製する。
機能成分が常温で半固体状または固体状である場合には、機能成分の溶液を調製する。好ましくは、23℃における粘度が100mPa・s以下の、より好ましくは、70mPa・s以下の機能成分の溶液を調製する。
具体的には、機能成分が、常温で半固体状または固体状であれば、溶媒に機能成分を溶解させて、機能成分の溶液を調製する。
溶媒としては、例えば、有機溶媒、水が挙げられる。溶媒として、具体的には、機能成分が水不溶性の抗生物活性化合物、水不溶性の難燃剤、水不溶性の硬化剤などの水不溶性成分であれば、有機溶媒が挙げられ、機能成分が水溶性の抗生物活性化合物、水溶性の難燃剤、水溶性の硬化剤などの水溶性成分であれば、水が挙げられる。
有機溶媒は、水不溶性成分を溶解できる溶媒から選択される。有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、などのエステル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、ケトン類、アルコール類などが挙げられる。
溶媒および機能成分の配合割合は、溶液の23℃における粘度が、例えば、100mPa・s以下、好ましくは、70mPa・s以下となるように、調整される。具体的には、機能成分の配合割合が、溶媒および機能成分の総量に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、50質量%以上、また、例えば、80質量%以下となるように、溶媒および機能成分の配合割合を調整する。
続いて、機能成分を含有する液を、多孔質無機粒子に対して配合する。具体的には、例えば、撹拌機付きの密閉容器に多孔質粒子を秤りこみ、撹拌しながら、機能成分を含有する液を滴下する。この時に、機能成分の容積(Vf)および溶媒の容積Vsの総容積、つまり、機能成分を含有する液の容積(Vl)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合(Vl/Voa)が、0.75以下となるように、機能成分を含有する液を配合する。この時の機能成分を含有する液の密度を1.0g/mLと仮定する。
なお、多孔質無機粒子の吸油可能容積Voa(mL)は、下記式に示されるように、多孔質無機粒子の吸油量Vo(mL/100g)から換算される多孔質無機粒子1g当たりの吸油量(mL/g)に、多孔質無機粒子の質量M(g)を乗じた容積である。
Voa(mL)=Vo(mL/100g)/100×M(g)
多孔質無機粒子の吸油量Vo(mL/100g)は、多孔質無機粒子を形成する一次粒子の内部の細孔容積(V)、隣接する一次粒子間の空隙容積(V)、および、二次粒子の表面を油が濡らす最低容量(V)の合計(V+V+V)の、多孔質無機粒子の100g当たりの容積(mL)を示す。一方、上記した合計(V+V+V)まで、機能成分を含有する液を滴下すると、機能成分のすべてを多孔質無機粒子内に担持できなくなる。その場合には、一次粒子の内部の細孔容積(V)、および、一次粒子間の空隙容積(V)の総容積(V+V)は、下記式に示すように、吸油可能容積Voaの75%を超える。
0.75<(V+V)/Voa<1.0
そのため、本発明では、液の容積(Vl)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積Voaに対する割合(Vl/Voa)が、0.75以下となるように、機能成分を含有する液を多孔質無機粒子に配合する。
この時、常圧で、機能成分を含有する液を多孔質無機粒子に対して配合してもよく、または、減圧にして、多孔質無機粒子の細孔内が真空状態にしておくと、機能成分を含有する液の、多孔質無機粒子に対する吸着速度を加速することができる。多孔質無機粒子の攪拌速度、撹拌様式、および機能成分を含有する液の滴下時間は、適宜調整される。
その後、液が溶媒を含有する場合(つまり、液が溶液である場合)には、溶媒を、室温および/または加熱の条件で、大気圧および/または減圧により、留去する。
これによって、多孔質無機粒子の孔内に機能成分を取り込ませる。
また、上記において、機能成分を30質量%未満含む液しか得られない場合は、工程(1)を複数回行うことで、所望量の機能成分を多孔質粒子内に取り込むことができる。具体的には、第1回目に、機能成分を含有する液を多孔質無機粒子に対して配合し、その後、溶媒を除去し、次いで、第2回目に、機能成分を含有する液を、第1回目で配合された機能成分を取り込んだ多孔質無機粒子に対してさらに配合し、その後、溶媒を留去する。第3回目以降は、この操作を繰り返す。
この際、第2回目では、第1回目に多孔質無機粒子に取り込まれた機能成分の容積Vfと、第2回目に配合する液の容積Vlとの総容積Vf+Vlの、多孔質無機粒子の吸油可能容積Voaに対する割合が、0.75以下となるように、第2回目の液を多孔質無機粒子に配合する。第3回目以降は、上記と同様である。
つまり、第n回目では、第n−1回目までに多孔質無機粒子に取り込まれた機能成分の総容積Vf+Vf・・・+Vfn−1(=ΣVfn−1)と、第n回目に配合する液の容積Vl(=Vf+Vs)との総容積Vf+Vf・・・+Vfn−1+Vl(=ΣVfn−1+Vl)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積Voaに対する割合が、0.75以下となるように、第n回目の液を多孔質無機粒子に配合する。
4−2.工程(2)
その後、孔内に機能成分を取り込んだ多孔質無機粒子に、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を配合して、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を多孔質無機粒子の孔内に取り込ませる。
具体的には、工程(1)により得られた多孔質無機粒子を攪拌しながら、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を多孔質無機粒子に滴下する。多孔質無機粒子の攪拌速度、撹拌様式、およびビニルモノマー溶液の滴下時間は、適宜調整される。
なお、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液には、多孔質無機粒子に滴下する前に、重合開始剤を配合する。重合開始剤は、次に説明する工程(3)のラジカル重合(ビニル重合)において開始剤として作用するラジカル重合開始剤である。重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。具体的には、熱重合開始剤としては、例えば、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジエチルケトンパーオキサイド、メチルプロピルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、エチルアセトアセテートパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、キュメンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネート、1,1−ジブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、アミルパーオキシ−p−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−へキシルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシ化合物が挙げられ、好ましくは、メチルエチルケトンパーオキサイドが挙げられる。また、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体が挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。重合開始剤の配合割合は、例えば、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量%以下である。
本発明で、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液が、不飽和ポリエステル樹脂である場合には、55%メチルエチルパーオキサイドをビニルモノマー溶液に対して1%配合する処方を標準処方とする。
そして、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を多孔質無機粒子の孔内に取り込ませる。具体的には、例えば、工程(1)により得られた多孔質無機粒子が仕込まれた撹拌機付きの密閉容器を撹拌しながら、重合開始剤が配合された、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を滴下する。この時、常圧で、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を多孔質無機粒子に滴下してもよく、または、減圧にして、多孔質無機粒子の孔内が真空状態にしておくと、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液の多孔質無機粒子に対する吸着速度を加速することができる。
4−3.工程(3)
続いて、工程(3)では、多孔質無機粒子の孔内に取り込まれた硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を、硬化させる。硬化性樹脂のビニルモノマー溶液に配合した熱重合開始剤がが常温硬化性の場合には、常温(25℃)で24時間以上経てば、硬化する。硬化時間を短くするには、常温(25℃)において、例えば、5時間以上経過後、さらに、40℃〜60℃で、5時間以上放置することにより、完全硬化させることもできる。硬化性樹脂のビニルモノマー溶液に、高温硬化性の熱重合開始剤を配合した場合には、所望の硬化温度と硬化時間で硬化させる。本発明では、好ましくは、常温硬化性の熱重合開始剤を用い、より好ましくは、重合促進剤に、6%ナフテン酸コバルト、あるいは、8%オクチル酸コバルトを配合した不飽和ポリエステル樹脂に、重合開始剤には、常温硬化性の熱重合開始剤55%メチルエチルケトンパーオキサイドを配合する。
一方、ベンゾイン誘導体などの光重合開始剤が配合された、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液は、例えば、紫外線、電子線の照射により、硬化させることができる。特に、多孔質無機粒子がシリカからなる場合であれば、シリカの紫外線透過率が高いことから、好適に紫外線硬化することができる。
上記した硬化は、ビニルモノマーのビニル基と、硬化性樹脂の不飽和二重結合とが、ビニル共重合(ラジカル共重合)することにより、進行する。そして、多孔質無機粒子において、硬化した樹脂によって、機能成分が封止される。
4−4.各原料の配合割合
工程(1)では、機能成分を含有する液の容積(Vl)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合(Vl/Voa)は、例えば、0.40以上、好ましくは、0.50以上であり、また、好ましくは、0.75以下である。
工程(2)では、機能成分の容積および樹脂の総容積(Vf+Vr)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合((Vf+Vr)/Voa)を0.75以下とするように、つまり、下式を満足するように、配合する。この時の機能成分、および硬化性樹脂のビニルモノマー溶液の密度を1.0とg/mLと仮定する。
(Vf+Vr)/Voa≦0.75
ここで、
(Vf+Vr)/Voaが、0.75を超過すると、ビニルモノマー溶液が多孔質無機粒子の孔にすべて取り込まれず、余剰のビニルモノマー溶液が多孔質無機粒子の表面に付着し、そのため、多孔質無機粒子が凝集し、塊状の硬化物を生成する可能性がある。換言すれば、(Vf+Vr)/Voaが、0.75以下であれば、隣接する多孔質無機粒子同士が粘着または接着することを防止して、複数の多孔質無機粒子が優れた流動性(さらさらした感じ)を確保することができる。
また、(Vf+Vr)/Voaは、例えば、0.45以上、好ましくは、0.45を超過し、より好ましくは、0.50以上、さらに好ましくは、0.50を超過し、より好ましくは、0.60以上である。
(Vf+Vr)/Voaが、上記した下限を上回れば、機能成分および樹脂を、多孔質無機粒子に対して、十分な量で内包させることができる。
樹脂の容積(Vr)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合(Vr/Voa)が、例えば、0.15以上、好ましくは、0.20以上、より好ましくは、0.30以上であり、また、例えば、0.60以下である。
Vr/Voaが上記した下限以上であれば、多孔質無機粒子が十分な量の樹脂を取り込むことができ、それによって、多孔質粒子の孔内において機能成分を確実に封止することができる。一方、特許文献1では、吸油量の概念が開示されていないが、有機溶媒溶液中の有機溶媒を除去するため、Vr/Voaが上記した下限未満となると推定される。
また、工程(1)で吸着される機能成分の質量の、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液の質量(つまり、樹脂の質量)に対する割合(機能成分の質量/ビニルモノマー溶液の質量、つまり、機能成分の質量/樹脂の質量)は、例えば、2.25以下、好ましくは、2.00以下、より好ましくは、1.70以下であり、また、例えば、0.10以上、好ましくは、0.50以上である。
機能成分の質量割合が上記した上限以下であれば、機能成分が十分な量の樹脂によって、多孔質無機粒子の孔内において確実に封止される。そのため、機能成分が多孔質無機粒子の孔外に漏出することを抑制することができる。
さらに、機能成分、および、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液(樹脂)の総質量の、多孔質無機粒子の質量に対する割合(機能成分、および、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液(樹脂)の総質量/多孔質無機粒子の質量)は、例えば、1.30以上、好ましくは、1.50以上、より好ましくは、1.60以上、さらに好ましくは、1.60超過、とりわけ好ましくは、1.70以上、さらには、1.80以上、さらには、1.90以上、さらには、2.00以上であり、また、例えば、2.50以下である。
機能成分およびビニルモノマー溶液(樹脂)の総質量の割合が上記した下限を上回れば、目的に応じて、機能発現粒子が十分な量の機能成分および樹脂を含有することができる。
5.機能発現粒子の用途
機能発現粒子は、各種の工業製品に適用することができ、例えば、屋内外の塗料、樹脂(熱硬化性樹脂)、ゴム、繊維、パテ、接着剤、目地剤、シーリング剤、建材、コーキング剤、木材処理剤、土壌処理剤、製紙工程における白水、顔料、印刷版用処理液、冷却用水、溶媒(具体的には、塗料溶剤など)、インキ、切削油、化粧用品、不織布用バインダー、紡糸油、皮革処理材などに、添加して混合することができる。なお、これらの工業製品に対する機能成分の含有量は、例えば、10mg/kg〜100g/kg(製品質量)である。
また、機能発現粒子は、樹脂(熱可塑性樹脂)や熱可塑性エラストマー、ゴムなどと混練して、そのまま、あるいは一旦、成形材料として、成形体を成形することができる。このような成形体は、機能成分が抗生物活性化合物である場合には、抗生物活性を有する。具体的には、成形体が害獣に齧られる時に、機能発現粒子から機能成分が放出されることにより、成形体が抗生物活性(例えば、鼠忌避性など)を発現する。あるいは、水中や溶剤中で、機能発現粒子から機能成分が徐放されることにより、成形体が抗生物活性(例えば、防腐、防かび性など)を発現する。また、機能成分が難燃剤である場合には、機能発現粒子における樹脂が燃焼する時に、機能成分が暴露され、それによって、成形体が難燃性を発現する。
さらに、機能成分が硬化剤である場合には、機能発現粒子を、第2樹脂と配合して、第2硬化性樹脂組成物を調製する。この時、機能発現粒子は、潜在性硬化剤として働き、第2硬化性樹脂組成物は、1液型硬化性樹脂組成物として調製される。
その後、第2硬化性樹脂組成物を硬化させて、硬化樹脂(架橋樹脂)を生成する。
第2樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂(の主材)、生分解性樹脂などの硬質樹脂、ゴム、エラストマーなどの軟質樹脂が挙げられる。
そして、第2樹脂は、硬化剤に含有される第1官能基と硬化反応(架橋反応)する第2官能基を複数有する。
第2官能基は、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボニル基(カルボキシル基、酸無水物基を含む)、チオール基(フェノール性チオール基を含む)、エポキシ基、イソシアネート基、シラノール基、ヒドラジド基などが挙げられる。これらは、単独、あるいは、複数併用することができる。
第2樹脂として、例えば、カルボキシル基変性合成ゴム(例えば、カルボキシル基変性SBRゴムなど)、カルボキシル基変性アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、レーヨン、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートプレポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、アクリルポリオールなどが挙げられる。
第2樹脂の性状は、特に限定されず、例えば、ラテックス、非水系分散液(NAD)などのポリマー分散液、例えば、溶剤や水に溶解した樹脂溶液(ポリマー溶液)、例えば、粉体、コンパウンド、ペレット、ブロックなどの成形材料、例えば、樹脂繊維(ポリマー繊維)などが挙げられる。具体的には、第2樹脂として、カルボキシル基変性合成ゴムラテックス(例えば、カルボキシル基変性SBRゴムラテックスなど)、カルボキシル基変性アクリルラテックス、ポリビニルアルコール水溶液、レーヨン繊維、エポキシ樹脂液状樹脂、カルボキシル基変性コンパウンド、ポリイソシアネートプレポリマー溶液、ポリエステル粉体、ポリウレタンブロック体などが挙げられる。
機能発現粒子は、第2樹脂100質量部に対する硬化剤の配合割合が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、50質量部以下となるように、第2樹脂に配合される。第2樹脂100質量部に対する硬化剤の配合割合が上記した範囲内であれば、第2硬化性樹脂組成物を確実に硬化させることができる。また、機能発現粒子は、第1官能基の第2官能基に対する当量比(第1官能基/第2官能基)が、例えば、0.7以上、好ましくは、0.9以上であり、また、例えば、1.3以下、好ましくは、1.1以下となるように、第2樹脂に配合される。
また、機能発現粒子とともに、例えば、機能成分の反応を促進する硬化触媒を、例えば、下記のような組合せで適宜の割合で第2硬化性樹脂組成物に配合することができる。
エポキシ基含有化合物:1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(トリエチレンジアミン)(DABCO)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルベンジルアミンなどの3級アミン化合物
N−メチロール基含有化合物あるいはN−アルコキシメチル基含有化合物:各種アミン塩
イソシアネート基含有化合物:ジブチル錫ジラウレートなどカルボン酸金属塩
上記した第2硬化性樹脂組成物は、具体的には、各種水性塗料、繊維・木材などの接着剤、コーキング材、成形・注型材料、繊維処理剤などとして用いられる。
そして、第2硬化性樹脂組成物(1液型硬化性樹脂組成物)を硬化させるには、例えば、第2硬化性樹脂組成物を、加熱、必要により加圧する。つまり、加熱、または、加熱および加圧がトリガーとなって、機能発現粒子における硬化剤が放出され、これによって、硬化剤(の第1官能基)および第2樹脂(の第2官能基)が反応して、第2硬化性樹脂組成物(1液型硬化性樹脂組成物)が硬化する。
なお、第2硬化性樹脂組成物は、1液型硬化性樹脂組成物として調製しているが、例えば、機能発現粒子および第2樹脂を別々に有する2成分型硬化性樹脂組成物を用意することもでき、その場合には、機能発現粒子および第2樹脂の混合後の混合液を、上記したトリガーによって、硬化させる。
6.作用効果
上記した機能発現粒子の製造方法によれば、多孔質無機粒子に、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を配合して、ビニルモノマー溶液を、機能成分が取り込まれている多孔質無機粒子の孔内に取り込ませて、その後、ビニルモノマー溶液を硬化している。そのため、特許文献1のように、有機溶媒を除去する工程を要することなく、孔内におけるビニルモノマー溶液すべてが硬化して硬化物を形成するので、孔内における樹脂の容積(Vr)を大きく確保することができる。従って、そのような樹脂によって多孔質無機粒子において十分な量の機能成分を確実に密封したり、徐放性にすることができる。
その結果、上記した製造方法により得られた機能発現粒子は、破壊などの物理的な条件で、十分な量の抗生物活性化合物を放出して、抗生物活性を発現することができる。あるいは、溶剤中などの環境下においては、機能成分が徐放性を発現することができる。
また、機能成分が硬化剤であり、機能発現粒子と第2樹脂とを配合して、第2硬化性樹脂組成物を調製する場合には、機能発現粒子は、十分な量の硬化剤を含有しつつ、かかる硬化剤を(例えば、常温常圧で)保管される期間は、放出しない。そのため、硬化剤を潜在性硬化剤として使用することができる。具体的には、かかる機能発現粒子と、第2樹脂とを含有する1液型硬化性樹脂組成物は、使用するまでの期間は硬化せず、加温による予熱する場合にもポットライフを長くすることができ、加熱(例えば、100℃以上の加熱)、必要により加圧すると、急速に硬化することができる。
この時に、硬化剤の放出速度を高めたい場合には、硬化剤を封止する樹脂として、軟質不飽和ポリエステル樹脂が好適に用いられる。
また、第1官能基が、カルボキシル基、および/または、ヒドロキシル基と反応することができる基である場合、具体的には、硬化剤が、エポキシ基含有化合物、N−メチロール基含有化合物あるいはN−アルコキシメチル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、窒素原子含有化合物、アルデヒド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、シラノール基含有化合物、アジリジン基含有化合物、アセトアセトキシ基含有化合物およびダイアセトン基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つである場合であって、樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂であれば、硬化剤が、不飽和ポリエステル樹脂に含有されるカルボキシル基、および/または、ヒドロキシル基と反応することによって、しっかりとした樹脂膜を形成することができる。そのため、第1樹脂の配合量を比較的少なくすることができる。
しかも、特許文献1に記載の方法のように、ビニルモノマー溶液が、溶媒を含んでいないので、溶媒に起因する健康対策を講じる必要がない。
しかるに、機能成分が水不溶性成分である場合には、国際公開2011/030824号や国際公開2013/100102号などに開示される製造方法のように、水中で懸濁重合やミニエマルション重合する製造方法によって、機能成分をビニル重合体粒子に分散または含有させる方法が提案されている。
そして、上記した一実施形態のように、機能成分が水不溶性成分である場合には、機能成分を、上記した提案と同様に、多孔質無機粒子の孔内に取り込むことができる。
一方、機能成分が、水溶性成分(水溶性の抗生物活性化合物、水溶性の難燃剤)である場合には、上記した提案と同様にすれば、機能成分が水中に溶出してしまい、機能成分をビニル重合体に分散または含有させることができない。
他方、上記した一実施形態では、機能成分が水溶性成分である場合であっても、機能成分を多孔質無機粒子の孔内に取り込ませ、次いで、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を多孔質無機粒子の孔内に取り込ませ、その後、ビニルモノマー溶液を硬化させるので、機能成分を、多孔質無機粒子に取り込み、その樹脂によって封止することができる。
また、樹脂の容積(Vr)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合(Vr/Voa)が上記した下限以上であれば、多孔質無機粒子が十分な量の樹脂を取り込むことができ、それによって、多孔質粒子の孔内において機能成分を確実に封止することができる。一方、特許文献1では、有機溶媒溶液中の有機溶媒を除去するため、Vr/Voaが特定の下限未満となると推定される。
また、上記した一実施形態において、機能成分および樹脂の総容積(Vf+Vr)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合((Vf+Vr)/Voa)が、上記した上限以下であれば、隣接する多孔質無機粒子同士が粘着または接着することを防止して、複数の多孔質無機粒子が優れた流動性を確保することができる。
一方、機能成分および樹脂の総容積(Vf+Vr)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合((Vf+Vr)/Voa)が、上記した下限を上回れば、機能成分および樹脂を、多孔質無機粒子に対して、十分な量で内包させることができる。他方、特許文献1では、被担持物質および高分子化合物または硬化性化合物が、多孔質微粒子に対して、十分な量で内包されていない。
また、工程(2)において、機能成分および樹脂の総容積(Vf+Vr)の、多孔質無機粒子の吸油可能容積(Voa)に対する割合(Vf+Vr)/Voaが上記した下限を上回れば、機能成分および樹脂を、多孔質無機粒子に対して、十分な量で内包させることができる。
また、上記した一実施形態において、機能成分および樹脂の総質量の、多孔質無機粒子の質量に対する割合が、上記した下限以上であれば、目的に応じて、機能発現粒子が十分な量の機能成分および樹脂を含有することができる。
また、上記した一実施形態において、樹脂の質量に対する機能成分の質量に対する割合が、上記した上限以下であれば、機能成分が十分な量の樹脂によって、多孔質無機粒子の孔内において確実に封止される。そのため、機能成分が多孔質無機粒子の孔外に漏出することを抑制することができる。
また、上記した方法において、ビニルモノマー溶液の粘度が、上記した上限以下であれば、多孔質無機粒子の孔内へのビニルモノマー溶液の吸着速度(取り込み速度)が低下することなく、ビニルモノマー溶液の取り込みを短時間ででき、さらには、ビニルモノマー溶液を孔内に十分に取り込んで、多孔質無機粒子の表面に残存することを抑制することができる。
さらに、工程(1)において、機能成分を含有する液の容積Vlの、多孔質無機粒子の吸油可能容積Voaに対する割合(Vl/Voa)が、0.75を超える場合は、機能成分の一部が多孔質無機粒子の表面に位置してしまい、無機多孔質粒子中に取り込まれない場合がある。
しかし、上記した方法では、工程(1)において、機能成分を含有する液の容積Vlの、多孔質無機粒子の吸油可能容積Voaに対する割合(Vl/Voa)が、0.75以下であるので、機能成分を多孔質無機粒子の内部に位置させて、確実に無機多孔質粒子中に内包することができる。
硬化性樹脂のビニルモノマー溶液は、熱硬化性樹脂組成物であり、熱硬化性樹脂組成物は、JIS K6901−A法(2008)に準拠して測定される常温ゲル化時間が、上記した下限以上であれば、工程(2)において、熱硬化性樹脂組成物が硬化する前に、熱硬化性樹脂を、多孔質無機粒子の孔内に確実に取り込ませることができる。一方、上記した常温ゲル化時間が上記した上限以下であれば、工程(2)において、多孔質無機粒子の孔内に取り込まれた機能成分が、ビニルモノマー溶液に含有されるビニルモノマーに溶け出し、続いて、多孔質無機粒子の表面に移動することを防止することができる。
他方、特許文献1の実施例3、4、7などに記載の方法であれば、上記した上限以上の時間でエポキシ樹脂のメチルケトン溶液を加熱するので、その間に、被担持物質がメチルエチルケトンに溶け出し、シリカ微粒子の表面に移動するという不具合がある。
しかし、熱硬化性樹脂組成物の常温ゲル化時間が上記した上限以下であれば、熱硬化性樹脂が短時間で熱硬化することができる。そのため、上記した不具合がなく、つまり、機能成分のビニルモノマーに対する溶出を防止することができる。
そして、熱硬化性樹脂組成物の常温ゲル化時間が上記した上限以下であれば、工程(3)において、熱硬化性樹脂組成物を迅速に、かつ高い架橋密度で硬化させることができる。
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
まず、原料等の詳細を記載する。
IPBC:商品名「ファンギトロール400」、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、防腐防かび剤、水不溶性成分、水への溶解度:0.15g/L(20℃)、インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製
ティンボアPCO:日本ボレイト社の商品名、八硼酸二ナトリウム四水和塩、木材保存剤、水溶性成分、水への溶解度:250g/L(20℃)、日本ボレイト社製
安息香酸デナトニウム:苦味成分、忌避剤、水溶性成分、メタノールへの溶解度:50g/L(20℃)、水にやや溶けやすい、和光純薬社製
合成カプサイシン:N−バニリルノナンアミド、辛味成分、忌避剤、水に不溶、和光純薬社製
エポキシ樹脂:商品名「jER806」、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160〜170、粘度1500〜2500mPa・s(25℃)、水不溶性成分、三菱化学社製
エポキシ樹脂:商品名「jER828」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184〜194、粘度12,000〜15,000mPa・s(25℃)、水不溶成分、三菱化学社製
メチロール化メラミン:商品名「ベッカミンM−3(60)」、不揮発分54〜60%水溶液、DIC社製
T−1890:商品名「VESTANAT T 1890/100」、IPDIのイソシアヌレート変性体、水不溶性成分、エボニック・インダストリーズ社製
ミリオネートMR−200:商品名、クルードMDI、イソシアネート含量30.5〜32.0質量%、水不溶性成分、東ソー社製
タケネートD−170N:商品名、HDIのイソシアヌレート変性体、水不溶性成分、三井化学社製
1B2PZ:1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、イミダゾール化合物、窒素原子含有化合物、水不溶性成分、四国化成社製
DDM:4,4’−ジアミノジフェニルメタン、芳香族ジアミン化合物、窒素原子含有化合物、水不溶性成分、東京化成工業社製
サイリシア310P:富士シリシア社の商品名、多孔質無機粒子、ゲルタイプシリカ粒子、細孔容積1.60mL/g、比表面積300m/g、吸油量330mL/100g、平均粒子径2.7μm、富士シリシア社製
パーメックN:日油社の商品名、重合開始剤(第2硬化剤)、メチルエチルケトンパーオキサイド55%ジメチルフタレート溶液、日油社製
カルボキシル基変性SBRラテックス:商品名「ナルスターSR−116」、固形分濃度50.5%、日本エイアンドエル社製
(不飽和ポリエステル樹脂の調製)
調製例1
攪拌機と、温度計と、窒素ガス吹込み管と、一連の部分凝縮器および全凝縮器とを備えた5L4頸コルベンに、無水マレイン酸490g(5.0モル)、無水フタル酸741g(5.0モル)、プロピレングリコール418g(5.5モル)、ジエチレングリコール531g(5.0モル)、ハイドロキノン(第1の重合禁止剤)0.14gを仕込み、窒素ガスを0.1L/分の割合で吹き込んだ。次いで、撹拌下においてマントルヒーターおよび酸無水物の開環発熱によって、混合物が180℃まで昇温すると、重縮合反応が始まり、縮合水が留出し始めた。さらに混合物は、20分で200℃まで昇温し、窒素ガスを0.5L/分の割合で吹込みながら、200〜210℃で6時間重縮合反応させることにより、酸価23.0[mgKOH/g]の不飽和ポリエステル2090gを得た。
その後、不飽和ポリエステルにスチレン2220gを添加し、不飽和ポリエステルを溶解(粘度調整)して、不飽和ポリエステル樹脂を調製した。
続いて、ハイドロキノン(第2の重合禁止剤)10%スチレン溶液(HQ10%)を微量配合して、常温ゲル化時間を、JIS K6901−A法(2008)に準拠して測定して、常温ゲル化時間を25分に調整した。具体的には、粘度調整した不飽和ポリエステル樹脂50gを、100mLポリカップに秤り取り、硬化促進剤6%ナフテン酸コバルト0.5質量%添加撹拌して、2液硬化型樹脂(硬化剤を配合すると、硬化するように調製された樹脂)とする。この樹脂を恒温水槽に静置して25℃とし、硬化剤(第2硬化剤)パーメックNを1.0質量%添加撹拌して、常温ゲル化時間を測定する。上記と同様にして2液硬化型樹脂を調製し、HQ10%を0.1質量%から0.5%質量%まで任意の3点を選び、添加撹拌する。それらの常温ゲル化時間を測定して、縦軸に常温ゲル化時間、横軸にHQ10%添加量をとり、グラフを作成する。工程(2)の作業時間内で、ゲル化が起こらないようなHQ10%配合量を決定し、吸着担持に使用する粘度調整、6%ナフテン酸コバルト0.5質量%配合済みの樹脂に、決定した配合量のHQ10%を添加撹拌する。調整する常温ゲル化時間t分の目安は、工程(2)の作業時間をt分とすると、
=t+20
であり、本実施例では工程(2)の作業時間を5分とし、常温ゲル化時間を25分とした。
これにより、不飽和ポリエステル樹脂Aを調製した。
不飽和ポリエステル樹脂Aの物性は、次の通りであった。
硬化性樹脂の割合 48.2質量%
粘度 52mPa・s(BM型粘度計、60rpm、23℃)
常温ゲル化時間 25分(JIS K6901−A法(2008))
調製例2
不飽和ポリエステル樹脂「ポリホープRHF1077M」(ジャパン・コンポジット社製)500gにスチレンモノマー195gを添加した。次いで、HQ10% 0.7gを配合して、常温ゲル化時間を25分に調整することにより、不飽和ポリエステル樹脂Bを調製した。
不飽和ポリエステル樹脂Bの性状は、次の通りであった。
粘度 68mPa・s(BM型粘度計、60rpm、23℃)
常温ゲル化時間 25分(JIS K6901−A法(2008))
調製例3
調製例1と同様にして、無水マレイン酸235g(2.4モル)、無水フタル酸710g(4.8モル)、アジピン酸117g(0.8モル)、トリエチレングリコール960g(6.4モル)、エチレングリコール112g(1.8モル)、ハイドロキノン(第1の重合禁止剤)0.1gを仕込み、酸価24.0[mgKOH/g]の不飽和ポリエステル2060gを得た。
その後、不飽和ポリエステルに、ハイドロキノン(第2の重合禁止剤)0.3gを溶解したスチレン2200gを添加し、不飽和ポリエステルを溶解(粘度調整)して、軟質不飽和ポリエステル樹脂を調製した。
続いて、調製例1と同様にして、ハイドロキノン(第2の重合禁止剤)10%スチレン溶液(HQ10%)を微量配合して、常温ゲル化時間を、JIS K6901−A法(2008)に準拠して測定して、常温ゲル化時間を25分に調整した。
これにより、軟質不飽和ポリエステル樹脂Cを調製した。
軟質不飽和ポリエステル樹脂Cの物性は、次の通りであった。
硬化性樹脂の割合 48.2質量%
粘度 43mPa・s(BM型粘度計、60rpm、23℃)
常温ゲル化時間 25分(JIS K6901−A法(2008))
調製例4
オルソフタル酸系軟質不飽和ポリエステル樹脂「ポリホープN−423PW」(ジャパン・コンポジット社製)500gにスチレンモノマー190gを添加した。次いで、HQ10% 0.7gを配合して、常温ゲル化時間を25分に調整することにより、軟質不飽和ポリエステル樹脂Dを調製した。
軟質不飽和ポリエステル樹脂Dの性状は、次の通りであった。
粘度 59mPa・s(BM型粘度計、60rpm、23℃)
常温ゲル化時間 25分(JIS K6901−A法(2008))
(機能発現粒子の調製)
実施例1
500mLの平底セパラブルフラスコに、サイリシア310P 9g(シリカ粒子、吸油可能容積Voa:29.7mL)を仕込み、フラスコ内径の90%の翼径を有する傾斜撹拌羽根を3つ備えた減圧シール付き撹拌機、50mL滴下ロートを備えたセパラブルフラスコの上部を平底セパラブルフラスコに対して接合した。
真空ポンプ、三方コック、マノメーター、トラップ(ドライアイスおよびメタノールを用いたトラップ)を経てフラスコ上部アダプターまで耐圧チューブで接続し、フラスコを真空状態とした。三方コックにより、コルベン内を真空閉鎖系とし、600rpmで撹拌を開始した。
次いで、IPBC60%アセトン溶液(粘度(23℃):53mPa・s)15g(IPBC9g、IPBCの容積Vf:9mL、液の総容積Vl:15mL)を3分かけて滴下した。続いて、滴下ロートのバルブを開放し、常圧に戻した後、丸底セパラブルフラスコの下部を取り外し、常温で、5時間真空乾燥することにより、アセトンを留去した。再び、セパラブルフラスコの上部を平底セパラブルフラスコに対して接合した。
次いで、不飽和ポリエステル樹脂A 9gにパーメックN 90mgを添加し、撹拌して均一にした混合溶液(容積Vr:9mL)を調製した。続いて、上記のIPBCを取り込んだシリカ粒子を600rpmで撹拌しながら、常圧で、混合溶液を3分かけて、シリカ粒子に滴下した。
続いて、不飽和ポリエステル樹脂Aのゲル化が始まるまで約30分撹拌を継続し、常温で18時間静置することにより、不飽和ポリエステル樹脂Aを完全硬化させた。これにより、IPBCを33%(IPBC/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=1/1/1(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子27gを得た。
機能成分/多孔質無機粒子/樹脂[質量基準]、樹脂/多孔質無機粒子[質量基準]、機能成分/機能発現粒子[質量基準]、(機能成分+樹脂)/多孔質無機粒子[質量基準]、機能成分/樹脂[質量基準]、Vl/Voa[容積基準]、Vf/Voa[容積基準]、(Vf+Vr)/Voa[容積基準]、Vr/Voa[容積基準]を、表1に記載する。次の実施例2以降についても同様に、上記した割合を表1〜表4に記載する。
この機能発現粒子5gをソルベッソ(塗料溶剤)95gに分散させ、室温で30日静置後、機能発現粒子を濾別後のソルベッソ中のIPBC濃度をHPLCで測定したところ、溶出したIPBCは、取り込んだIPBCに対して、1.2%であった。
実施例2
実施例1において、IPBC60%アセトン溶液15gに代えて、ティンボアPCO 20%水溶液(粘度(23℃):23mPa・s)15g(ティンボアPCOの容積Vf:3mL、水の容積Vs:12mL、水溶液の容積Vl:15mL)をシリカ粒子9gに取り込ませ(吸着させ)、また、80℃で5時間真空乾燥して、水を留去した。その後、同じ操作を2回繰り返すことにより、ティンボアPCO20%水溶液45g(ティンボアPCO9g、容積Vf:9mL)をシリカ粒子9gに取り込ませ(吸着させ)、ティンボアPCOを9g担持させた(取り込ませた)。なお、上記の吸着工程はすべて、真空閉鎖系で実施した。
なお、1回目、2回目、3回目のティンポアPCO 20%水溶液のシリカ粒子への取り込み(吸着)では、Vl/Voaが、それぞれ、0.50、0.60、0.71であり、また、Vf/Voaが、それぞれ、0.10、0.20、0.30であった。
次いで、実施例1と同様にして、不飽和ポリエステル樹脂A 6gにパーメックN 60mgを添加し、撹拌して均一にした混合液(容積Vr:6mL)を調製した。続いて、シリカ粒子を600rpmで撹拌しながら、混合溶液を1分かけて、シリカ粒子に滴下した。
続いて、不飽和ポリエステル樹脂Aのゲル化が始まるまで約30分撹拌を継続し、常温で18時間静置することにより、不飽和ポリエステル樹脂Bを完全硬化させた。これにより、ティンボアPCOを37.5質量%(ティンボアPCO/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=3/3/2(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子24gを得た。
この機能発現粒子5gを脱イオン水95gに分散させ、室温で30日静置後、機能発現粒子を濾別後の脱イオン水中の八硼酸二ナトリウム四水和塩濃度を質量で測定したところ、溶出した八硼酸二ナトリウム四水和塩は内包量の5.8%であった。
実施例3
実施例1において、IPBC60%アセトン溶液15gに代えて、安息香酸デナトニウム30%エタノール溶液(粘度(23℃):20mPa・s以下)15g(安息香酸デナトニウム4.5g、安息香酸デナトニウムの容積Vf:4.5mL、液の総容積Vl:15mL)をシリカ粒子9gに取り込ませた(吸着させた)点と、不飽和ポリエステル樹脂A 9g、および、パーメックN 90mgに代えて、不飽和ポリエステル樹脂B 10.5g、および、パーメックN 105mg(総容積Vr:10.5mL)を用いた点とを除き、同様に操作して、安息香酸デナトニウムを18.8%(安息香酸デナトニウム/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=3/6/7)内包する(取り込んだ)機能発現粒子24gを得た。
この機能発現粒子をポリエチレンに対して3%混練した。混練時の作業環境に問題なく、防鼠性成形材料を製造できた。
実施例4
実施例1において、IPBC60%アセトン溶液15gに代えて、合成カプサイシン20%エタノール溶液(粘度(23℃):20mPa・s以下)15g(合成カプサイシン3g、合成カプサイシンのVf:3mL、液の総容積Vl:15mL)をシリカ粒子9gに取り込ませた(吸着させた)点と、不飽和ポリエステル樹脂A 9g、および、パーメックN 90mgに代えて、不飽和ポリエステル樹脂B 12g、および、パーメックN 120mg(総容積Vr:12mL)を用いた点を除き、同様に操作して、合成カプサイシンを12.5%(合成カプサイシン/シリカ粒子/硬化樹脂=1/3/4)内包する(取り込んだ)機能発現粒子24gを得た。
この機能発現粒子をポリエチレンに2%混練した。混練時の作業環境に問題なく、防鼠性成形材料を製造できた。
実施例5
(機能発現粒子の調製)
500mLの丸底セパラブルフラスコに、サイリシア310P 9g(シリカ粒子、吸油可能容積Voa:29.7mL)を仕込み、丸底の曲率に合わせた半月状の撹拌羽根を持つ撹拌機、50mL滴下ロートを備えたセパラブルフラスコの上部を丸底セパラブルフラスコに対して接合した。
次いで、常圧のまま600rpmで撹拌しながら、エポキシ樹脂(jER806)の80%酢酸エチル溶液(粘度(23℃):45mPa・s)15g(jER806 12g、jER806の容積Vf:12mL、液の総容積Vl:15mL)を3分かけて滴下した。続いて、丸底セパラブルフラスコの下部を取り外し、50℃で、5時間真空乾燥することにより、酢酸エチルを留去した。再び、セパラブルフラスコの上部を丸底セパラブルフラスコに対して接合した。
次いで、軟質不飽和ポリエステル樹脂C 7.5gにパーメックN 70mgを添加し、撹拌して均一にした混合溶液(容積Vr:7.5mL)を調製した。続いて、シリカ粒子を600rpmで撹拌しながら、混合溶液を3分かけて、シリカ粒子に滴下した。
続いて、軟質不飽和ポリエステル樹脂Cのゲル化が始まるまで約30分撹拌を継続し、常温で18時間静置することにより、軟質不飽和ポリエステル樹脂Cを完全硬化させた。これにより、jER806を42%(jER806/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=8/6/5(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子28.5gを得た。
(不織布含浸用ラテックスの調製)
先ず、カルボキシル基変性SBRラテックス(ナルスターSR−116)を固形濃度20%となるよう脱イオン水で希釈したラテックスを固形分100質量部に対してjER806が5質量部となるように、実施例5の機能発現粒子を添加したラテックスを準備した。次いで、硬化触媒として、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)20%水溶液を2.5質量部をラテックスに添加して、撹拌し均一な不織布含浸用ラテックスとした。これを、室温で1週間静置した。
別途、不織布含浸用ラテックスを、室温で2週間静置した。
実施例6
(機能発現粒子の調製)
実施例5において、エポキシ樹脂(jER806)の80%酢酸エチル溶液15g(jER806 12g、jER806の容積Vf:12mL、液の総容積Vl:15mL)を13g(jER806 10.4g、jER806の容積Vf:10.4mL、液の総容積Vl:13mL)に変更し、軟質不飽和ポリエステル樹脂C 7.5gにパーメックN 70mgを添加し、撹拌して均一にした混合溶液(容積Vr:7.5mL)を軟質不飽和ポリエステル樹脂C 10.4gにパーメックN 104mgを添加し、撹拌して均一にした混合溶液(容積Vr:10.4mL)に変更した以外は、同様の操作を実施し、jER806を35%(jER806/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=7/6/7(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子29.8gを得た。
(不織布含浸用ラテックスの調製)
先ず、カルボキシル基変性SBRラテックス(ナルスターSR−116)を固形濃度20%となるよう脱イオン水で希釈したラテックスを固形分100質量部に対してjER806が5質量部となるように、実施例6の機能発現粒子を添加したラテックスを準備した。次いで、硬化触媒として、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)20%水溶液を2.5質量部をラテックスに添加して、撹拌し均一な不織布含浸用ラテックスとした。これを、室温で1週間静置した。
別途、不織布含浸用ラテックスを室温で2週間静置した。
(コントロール1の調製)
別途、jER806 100質量部にアニオン性乳化剤2質量部、ノニオン性乳化剤5質量部を添加して、撹拌下徐々に脱イオン水を加えることによりjER806が44%含まれるエポキシ樹脂エマルションを調製した。上記の不織布含浸用ラテックスにおいて、機能発現粒子に代えて、このエマルションを11質量部(jER806として5質量部)添加したものをコントロール1とした。これを、室温で1週間静置した。
別途、コントロール1を室温で2週間静置した。
(樹脂含浸不織布の調製)
テトロン(登録商標)製目付150g/mの不織布(ウェブ)を15cm×20cmに切り出し、同サイズの10メッシュ金網2枚で不織布をサンドイッチ状に挟んでクリップで留め、20cm×30cmのステンレス製バットに置いた。次いで、不織布含浸用ラテックス、および、コントロール1のそれぞれを撹拌して均一にした後、ステンレス製バットに注入し、不織布に含浸させた。その後、ウエットで含浸ラテックス量が220g/mとなるように、金網で挟んだ状態のままマングルで絞り、110℃×10分間予備乾燥し、140℃×5分で硬化させた。
(実施例5、6およびコントロール1の樹脂含浸不織布の耐ドライクリーニング性)
実施例5、6およびコントロール1の樹脂含浸不織布の耐ドライクリーニング性を評価した。具体的には、各不織布を3cm角に切り出し、撹拌下40℃のパークロロエチレン中に浸漬した。
その結果、室温で1週間静置した実施例5および6のそれぞれの機能発現微粒子を添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、いずれも型崩れを全く起こさなかった。一方、コントロール1であるエポキシ樹脂エマルションを添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、不織布が原形をとどめず繊維がばらばらになった。
さらに、室温で2週間静置したラテックスでは、実施例6の機能発現微粒子を添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、型崩れを全く起こさなかったが、実施例5の機能発現微粒子を添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、少し型崩れを起していた。
実施例7
(機能発現粒子の調製)
実施例5において、エポキシ樹脂jER806の80%アセトン溶液15gに代えて、メチロール化メラミン60%水溶液であるベッカミンM−3(60)(粘度(23℃):38mPa・s)15g、(メチロール化メラミン 9g、メチロール化メラミンの容積Vf9mL、液の総容積Vl:15mL)をシリカ粒子9gに取り込ませ(吸着させ)、真空乾燥における温度を、50℃から室温に変更、水3.75gを留去した以外は、実施例5と全く同様の操作を行い、メチロール化メラミンを32質量%(メチロール化メラミン/水/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=6/1.5/6/5(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子27.7gを得た。なお、メラミンの25%相当の水を残して、硬化剤として使用時の流動性を与えている。
(不織布含浸用ラテックスの調製)
実施例5の含浸用ラテックスにおいて、カルボキシル基変性SBRラテックスの固形分100質量部に対してメチロール化メラミンが5質量部となるように、実施例7の機能発現粒子を添加した。次いで、触媒として、キャタリストACX(DIC社製)を0.5質量部添加して、撹拌し均一な不織布含浸用ラテックスとした。これを、室温で1週間静置した。
別途、不織布含浸用ラテックスを、室温で2週間静置した。
実施例8
ベッカミンM−3(60)を17.3g、軟質不飽和ポリエステル樹脂Cを10.4g、パーメックNを104mgに変更した以外は同様に、実施例7と同様に操作して、機能発現粒子を得た。
この機能発現粒子は、メチロール化メラミンを32質量%(メチロール化メラミン/水/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=7/1.7/6/7(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子32.4gであった。
(不織布含浸用ラテックスの調製)
実施例5の含浸用ラテックスにおいて、カルボキシル基変性SBRラテックスの固形分100質量部に対してメチロール化メラミンが5質量部となるように、実施例8の機能発現粒子を添加した。次いで、触媒として、キャタリストACX(DIC社製)を0.5質量部添加して、撹拌し均一な不織布含浸用ラテックスとした。これを、室温で1週間静置した。
別途、不織布含浸用ラテックスを、室温で2週間静置した。
(コントロール2の調製)
実施例7の不織布含浸用ラテックスにおいて、機能発現粒子に代えて、ベッカミンM−3(60)8.3質量部(メチロール化メラミンとして5質量部)添加した不織布含浸用ラテックスをコントロール2とした。これを、室温で1週間静置した。
(実施例7、8およびコントロール2の樹脂含浸不織布の調製、および、ドライクリーニング性)
実施例5と同様にして、実施例7および8の樹脂含浸不織布を作成し、耐ドライクリーニング性を評価した。その結果、室温で1週間静置した実施例7および8の機能発現微粒子を添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、型崩れを全く起こさなかった。しかし、コントロール2であるメチロール化メラミンの水溶液を添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、不織布が原形をとどめず繊維がばらばらになった。
さらに、室温で2週間静置したラテックスでは、実施例8の機能発現微粒子を添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、型崩れを全く起こさなかったが、実施例7の機能発現微粒子を添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、少し型崩れを起していた。
実施例9
(機能発現粒子の調製)
実施例5において、エポキシ樹脂jER806の80%アセトン溶液15gに代えて、イソシアネート基含有化合物(イソシアネート硬化剤)であるT−1890の66%酢酸エチル溶液(粘度(23℃):83mPa・s)15g、(T−1890 9.9g、T−1890の容積Vf9.9mL、液の総容積Vl:15mL)をシリカ粒子9gに取り込ませ(吸着させ)た以外は、実施例5と全く同様の操作を行い、T−1890を38質量%(T−1890/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=6.6/6/5(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子26.4gを得た。
(1液型ポリウレタン樹脂組成物の調製)
第2樹脂としてのアクリルポリオール100質量部にT−1890として5質量部となるように、実施例9の機能発現粒子を添加して、常温で均一に混合した1液型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
実施例10
実施例9において、T−1890の66%酢酸エチル溶液を15.8g、軟質不飽和ポリエステル樹脂Cを10.4g、パーメックNを104mgに変更した以外は同様に操作し、T−1890を35質量%(T−1890/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=7/6/7(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子29.8gを得た。
(1液型ポリウレタン樹脂組成物の調製)
第2樹脂としてのアクリルポリオール100質量部にT−1890として5質量部となるように、実施例10の機能発現粒子を添加して、常温で均一に混合した1液型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
(コントロール3の調製)
別途、同様にしてアクリルポリオール100質量部にT−1890 5質量部を添加して混合した樹脂液をコントロール3とした。
(実施例9、10およびコントロール3のポットライフの測定)
実施例9、10の1液型ポリウレタン樹脂組成物と、コントロール3の樹脂液とのそれぞれの50℃におけるポットライフを測定した。なお、50℃におけるポットライフは、JIS K6870:2008の「接着剤−他成分接着剤のポットライフ(可使時間)の求め方」の「方法1 見掛け粘度変化による求め方」に準拠して、ブルックフィールド形回転粘度計(B形、スピンドル番号3、回転数30rpm)により測定した見掛け粘度が3Pa・sを超えたときの時間を算出した。以下の50℃のポットライフは、上記と同様である。
その結果は、以下の通りであった。
・実施例9を添加した樹脂組成物 8日
・実施例10を添加した樹脂組成物 11日
・コントロール3の樹脂液 調製直後
実施例11
(機能発現粒子の調製)
実施例5において、エポキシ樹脂jER806の80%アセトン溶液15gに代えて、イソシアネート基含有化合物(イソシアネート硬化剤)であるミリオネートMR−200の90%酢酸エチル溶液(粘度(23℃):43mPa・s)15g、(ミリオネートMR−200 13.5g、ミリオネートMR−200の容積Vf13.5mL、液の総容積Vl:15mL)をシリカ粒子9gに取り込ませ(吸着させ)た以外は、実施例5と全く同様の操作を行い、ミリオネートMR−200を45質量%(ミリオネートMR−200/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=9/6/5(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子30gを得た。
(1液型ポリウレタン樹脂組成物の調製)
第2樹脂としてのアクリルポリオール100質量部にミリオネートMR−200として5質量部となるように、実施例11の機能発現粒子を添加して、常温で均一に混合した1液型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
実施例12
実施例11において、ミリオネートMR−200の90%酢酸エチル溶液を11.6g、軟質不飽和ポリエステル樹脂Cを10.4g、パーメックNを104mgに変更した以外は同様に操作し、ミリオネートMR−200を35質量%(ミリオネートMR−200/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=7/6/7(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子29.8gを得た。
(1液型ポリウレタン樹脂組成物の調製)
第2樹脂としてのアクリルポリオール100質量部にミリオネートMR−200として5質量部となるように、実施例12の機能発現粒子を添加して、常温で均一に混合した1液型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
(コントロール4の調製)
別途、同様にしてアクリルポリオール100質量部にミリオネートMR−200 5質量部を添加して混合した樹脂液をコントロール4とした。
(実施例11、12およびコントロール3のポットライフの測定)
実施例11、12の1液型ポリウレタン樹脂組成物と、コントロール4の樹脂液とのそれぞれの50℃におけるポットライフを測定した。その結果は、以下の通りであった。
・実施例11を添加した樹脂組成物 5日
実施例12を添加した樹脂組成物 7日
・コントロール4の樹脂液 調製直後
実施例13 (機能発現粒子の調製)
実施例5において、エポキシ樹脂jER806の80%アセトン溶液15gに代えて、イソシアネート基含有化合物(イソシアネート硬化剤)であるタケネートD−170Nの80%酢酸エチル溶液(粘度(23℃):91mPa・s)15g、(タケネートD−170N 12g、タケネートD−170Nの容積Vf12mL、液の総容積Vl:15mL)をシリカ粒子9gに取り込ませ(吸着させ)た以外は、実施例5と全く同様の操作を行い、タケネートD−170Nを42質量%(タケネートD−170N/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=8/6/5(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子28.5gを得た。
(1液型ポリウレタン樹脂組成物の調製)
第2樹脂としてのアクリルポリオール100質量部にタケネートD−170Nとして5質量部となるように、実施例13の機能発現粒子を添加して、常温で均一に混合した1液型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
実施例14
実施例13において、タケネートD−170Nの80%酢酸エチル溶液13g、軟質不飽和ポリエステル樹脂Cを10.4g、パーメックNを104mgに変更した以外は同様に操作し、タケネートD−170Nを35質量%(タケネートD−170N/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=7/6/7(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子29.8gを得た。
(1液型ポリウレタン樹脂組成物の調製)
第2樹脂としてのアクリルポリオール100質量部にタケネートD−170Nとして5質量部となるように、実施例14の機能発現粒子を添加して、常温で均一に混合した1液型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
(コントロール5の調製)
別途、同様にしてアクリルポリオール100質量部にタケネートD−170N 5質量部を添加して混合した樹脂液をコントロール5とした。
(実施例13、14およびコントロール5のポットライフの測定)
実施例13、14の1液型ポリウレタン樹脂組成物と、コントロール5の樹脂液とのそれぞれの50℃におけるポットライフを測定した。その結果は、以下の通りであった。
・実施例13を添加した樹脂組成物 8日
実施例14を添加した樹脂組成物 11日
・コントロール5の樹脂液 調製直後
実施例15
(機能発現粒子の調製)
実施例5において、エポキシ樹脂jER806の80%アセトン溶液15gに代えて、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)の70%アセトン溶液(粘度(23℃):8mPa・s)15g、(1B2PZ 10.5g、1B2PZの容積Vf10.5mL、液の総容積Vl:15mL)をシリカ粒子9gに取り込ませ(吸着させ)たこと、および、軟質不飽和ポリエステル樹脂C 6gにパーメックN 60mgを添加したものに代えて、軟質不飽和ポリエステル樹脂D 9gにパーメックN 90mgを添加したものを用いた以外は、実施例5と全く同様の操作を行い、1B2PZを37質量%(1B2PZ/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=7/6/6(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子28.5gを得た。
(1液型エポキシ樹脂組成物の調製)
第2樹脂としてのエポキシ樹脂(jER828)100質量部に機能発現粒子13.5質量部(1B2PZとして5質量部)を添加して、常温で均一に混合した1液型エポキシ樹脂組成物を調製した。
(コントロール6の調製)
別途、同様にしてエポキシ樹脂(jER828)100質量部に1B2PZ 5質量部を添加して混合した樹脂液をコントロール6とした。
(実施例15およびコントロール6のポットライフの測定)
1液型エポキシ樹脂組成物と、コントロール6の樹脂液とのそれぞれの50℃におけるポットライフを測定した。その結果は、以下の通りであった。
・実施例15の1液型エポキシ樹脂組成物 6週間
・コントロール6の樹脂液 3日
実施例16
(機能発現粒子の調製)
実施例5において、エポキシ樹脂jER806の80%アセトン溶液15gに代えて、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)の60%アセトン溶液(粘度(23℃):7mPa・s)15g、(DDM 9g、DDMの容積Vf9mL、液の総容積Vl:15mL)をシリカ粒子9gに取り込ませ(吸着させ)たこと、および、軟質不飽和ポリエステル樹脂C 6gにパーメックN 60mgを添加したものに代えて、軟質不飽和ポリエステル樹脂D 9gにパーメックN 90mgを添加したものを用いた以外は、実施例5と全く同様の操作を行い、DDMを33質量%(DDM/シリカ粒子/樹脂(硬化物)=1/1/1(質量比))内包する(取り込んだ)機能発現粒子27gを得た。
(1液型エポキシ樹脂組成物の調製)
第2樹脂としてのエポキシ樹脂(jER828)100質量部に機能発現粒子42質量部(DDMとして14質量部)を添加して、常温で均一に混合した1液型エポキシ樹脂組成物を調製した。
(コントロール7の調製)
別途、同様にしてエポキシ樹脂(jER828)100質量部にDDM 14質量部を添加混合した樹脂液をコントロール7とした。
(実施例16およびコントロール7のポットライフの測定)
1液型エポキシ樹脂組成物と、コントロール7の樹脂液とのそれぞれの50℃におけるポットライフを測定した。その結果は、以下の通りであった。
・1液型エポキシ樹脂組成物 10日
・コントロール7の樹脂液 3時間
比較例1
熱可塑性ポリエステル樹脂による、シリカ粒子に取り込まれた機能成分を封止を実施すべく、まず、PET NES−2040(熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ユニチカ社製)の溶剤溶液の調製を試みた。
色材協会誌 Vol.42,No.11,p501〜505(1969年、東洋紡績(株)著)にテレフタル酸系線状ポリエステルの真溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)が挙がっており、MEK 96g中に、NES−2040 4gを添加し、60℃で1週間撹拌を行ったが、PET NES−2040の溶解は認められなかった。
比較例2
ビスフェノール型エポキシ樹脂jER828(三菱化学社製)6.0g、アミン系硬化剤YN3080(三菱化学社製)3.0gをMEK13.5gに溶解し、粘度100mPa・s以下で、23℃におけるポットライフが5時間の樹脂溶液を作製した。
実施例1において、不飽和ポリエステル樹脂Aに代えて、上記のエポキシ樹脂組成物のMEK溶液9g(固形分の容積Vr:3.6mL)を滴下し、その後、常温で5時間真空乾燥して、MEKを留去した。その後、60℃で10時間、熱硬化して、IPBC42%(IPBC/シリカ粒子/エポキシ樹脂=5/5/2)内包する(取り込んだ)機能発現粒子21gを得た。
この機能発現粒子5gをソルベッソ(塗料溶剤)95gに分散させ、室温で30日静置後、機能発現粒子を濾別後のソルベッソ中のIPBC濃度をHPLCで測定したところ、溶出したIPBCは、取り込んだIPBCに対して、72%であった。
ここまで溶脱が進んだのは、樹脂層の厚みが薄くなったという理由以外に、MEKが留去されるまでの時間経過中にIPBCがMEK中に物質移動したためと考えられる。
Figure 2017030041
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Figure 2017030041
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機能発現粒子は、例えば、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤、除草剤、殺虫剤、誘引剤および忌避剤、さらには、難燃剤、硬化剤などに用いられる。
具体的には、硬化剤として、例えば、エポキシ基含有化合物、N−メチロール基含有化合物、N−アルコキシメチル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、窒素原子含有化合物、アルデヒド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、シラノール基含有化合物、アジリジン基含有化合物、アセトアセトキシ基含有化合物、ダイアセトン基含有化合物などが挙げられる。硬化剤として、好ましくは、エポキシ基含有化合物、N−メチロール基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、窒素原子含有化合物が挙げられる。硬化剤は、単独使用または併用することができる。
イミダゾール誘導体は、イミダゾールにおける水素原子の一部が置換基で置換された化合物である。イミダゾール誘導体としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1?2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)などが挙げられる。
なお、不飽和ポリエステルは、例えば、開環重合によっても得られ、具体的には、多価アルコールを開始剤とし、必要によりジルコニウム、亜鉛などの金属石鹸を重合触媒として併用する。開環重合による不飽和ポリエステルの製造は、二塩基酸成分として、無水マレイン酸を必須成分とし、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物が用いられ、二価アルコール成分として、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリンなどのアルキレンオキサイドをモノマーとして開環重合する。さらには、開環重合で得られた重合体を重縮合により重合度を上げて製造することもできる。
3−2.エポキシ(メタ)アクリレート
エポキシ(メタ)アクリレートは、ビニルエステルとも呼称される。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、以下の方法により得られる。すなわち、ビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸(つまり、アクリル酸および/またはメタクリル酸)などの不飽和カルボン酸とを、例えば、3級アミンなどの触媒存在下で反応して、エポキシ環をカルボキシル基で開環させることによって、エステル結合を生成させる方法(1)、例えば、不飽和オリゴエステルのカルボキシル基末端と、グルシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有アクリル酸エステルのエポキシ基とを、例えば、3級アミンなどの触媒存在下で反応して、エポキシ環をカルボキシル基で開環させ、エステル結合を導入させる方法(2)などにより、エポキシ(メタ)アクリレートは得られる。
4−3.工程(3)
続いて、工程(3)では、多孔質無機粒子の孔内に取り込まれた硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を、硬化させる。硬化性樹脂のビニルモノマー溶液に配合した熱重合開始剤常温硬化性の場合には、常温(25℃)で24時間以上経てば、硬化する。硬化時間を短くするには、常温(25℃)において、例えば、5時間以上経過後、さらに、40℃〜60℃で、5時間以上放置することにより、完全硬化させることもできる。硬化性樹脂のビニルモノマー溶液に、高温硬化性の熱重合開始剤を配合した場合には、所望の硬化温度と硬化時間で硬化させる。本発明では、好ましくは、常温硬化性の熱重合開始剤を用い、より好ましくは、重合促進剤として、6%ナフテン酸コバルト、あるいは、8%オクチル酸コバルトを配合した不飽和ポリエステル樹脂に、重合開始剤には、常温硬化性の熱重合開始剤55%メチルエチルケトンパーオキサイドを配合する。
(実施例7、8およびコントロール2の樹脂含浸不織布の調製、および、ドライクリーニング性)
実施例5と同様にして、実施例7および8の樹脂含浸不織布を作成し、耐ドライクリーニング性を評価した。その結果、室温で1週間静置した実施例7および8の機能発現微粒子を添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、型崩れを全く起こさなかった。しかし、コントロール2であるメチロール化メラミンの水溶液を添加したラテックスを含浸した樹脂含浸不織布は、不織布が原形をとどめず繊維がばらばらになった。

Claims (14)

  1. 多孔質無機粒子と、
    前記多孔質無機粒子の孔内に取り込まれた機能成分と、
    前記孔内において前記機能成分を封止している樹脂と
    を含有し、
    前記樹脂は、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を硬化した硬化物であることを特徴とする、機能発現粒子。
  2. 前記ビニルモノマー溶液が、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、および、ウレタンアクリレート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の機能発現粒子。
  3. 前記ビニルモノマー溶液が、不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の機能発現粒子。
  4. 前記機能成分が、水不溶性成分であることを特徴とする、請求項1に記載の機能発現粒子。
  5. 前記機能成分が、水溶性成分であることを特徴とする、請求項1に記載の機能発現粒子。
  6. 前記機能成分および前記樹脂の総質量の、前記多孔質無機粒子の質量に対する割合が、1.60以上であることを特徴する、請求項1に記載の機能発現粒子。
  7. 前記機能成分の質量の前記樹脂の質量に対する割合が、2.25以下であることを特徴する、請求項1に記載の機能発現粒子。
  8. 前記樹脂の容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が、0.30以上であることを特徴する、請求項1に記載の機能発現粒子。
  9. 前記機能成分および前記樹脂の総容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が、0.75以下であることを特徴する、請求項1に記載の機能発現粒子。
  10. 前記機能成分および前記樹脂の総容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が、0.50を超過することを特徴する、請求項1に記載の機能発現粒子。
  11. 多孔質無機粒子に、機能成分を含有する液を、前記液の容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が0.75以下となるように、配合して、機能成分を前記多孔質無機粒子の孔内に取り込ませる工程(1)、
    前記多孔質無機粒子に、硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を、前記機能成分および前記ビニルモノマー溶液の総容積の、前記多孔質無機粒子の吸油可能容積に対する割合が、0.75以下となるように、配合して、前記ビニルモノマー溶液を前記多孔質無機粒子の孔内に取り込ませる工程(2)、および、
    前記ビニルモノマー溶液を硬化させることにより、前記孔内において前記機能成分を封止する工程(3)
    を備えることを特徴とする、機能発現粒子の製造方法。
  12. 前記ビニルモノマー溶液の23℃における粘度が、100mPa・s以下であることを特徴とする、請求項11に記載の機能発現粒子の製造方法。
  13. 前記硬化性樹脂のビニルモノマー溶液は、熱硬化性樹脂組成物であり、
    前記熱硬化性樹脂組成物は、JIS K6901−A法(2008)に準拠して測定される常温ゲル化時間が、10分以上であることを特徴とする、請求項11に記載の機能発現粒子の製造方法。
  14. 前記硬化性樹脂のビニルモノマー溶液は、熱硬化性樹脂組成物であり、
    前記熱硬化性樹脂組成物は、JIS K6901−A法(2008)に準拠して測定される常温ゲル化時間が、1時間以下であることを特徴とする、請求項11に記載の機能発現粒子の製造方法。
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