JPWO2017026190A1 - 強化ガラス基板の製造方法及び強化ガラス基板 - Google Patents
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Abstract
反りの方向を制御することができる、強化ガラス基板の製造方法を提供する。対向し合う第1,第2の主面11a,11bを有するガラス基板11の、第1の主面11aの上に第1のイオン交換抑制膜2aを形成し、第2の主面11bの上に第2のイオン交換抑制膜2bを形成する成膜工程と、ガラス基板11をイオン交換法により化学強化することにより強化ガラス基板1とする、強化工程とを備える。成膜工程において、強化ガラス基板1の第1の圧縮応力層1aの表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、第2の圧縮応力層1bの表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積の差Δ(CS×DOL)及び強化ガラス基板1の厚みTにより定義される量Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が、1.5×109Pa/m以上であり、9×109Pa/m以下となるように、第1のイオン交換抑制膜2aと第2のイオン交換抑制膜2bとの膜厚の差を設定し、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bを形成することを特徴とする。
Description
本発明は、強化ガラス基板の製造方法及び強化ガラス基板に関するものである。
従来、化学強化された強化ガラス基板は、スマートフォンやタブレットPCなどの電子機器に搭載されるタッチパネルディスプレイのカバーガラスとして用いられている。このような強化ガラス基板は、一般的に、アルカリ金属を組成として含むガラス基板をイオン交換液で化学的に処理し、ガラス基板表面のアルカリ金属イオン(Na+)とイオン交換液中のアルカリ金属イオン(K+)とを交換し、表面に圧縮応力層を形成することによって製造される。このような強化ガラス基板は、主表面に圧縮応力層を有することによって、主表面への衝撃耐性が向上する。一方、このような強化ガラス基板においては、圧縮応力層よりも内部に、主表面の圧縮応力層に対応した引張応力層が形成される。圧縮応力層の厚みよりも深いダメージを受けた場合、強化ガラス基板が自発的に破壊される、いわゆる自己破壊が生じることが問題となっていた。
このような問題を解決すべく、強化ガラス基板の主表面と端面との圧縮応力のバランスを適切に設定するため、化学強化の進度を調整する処理を表面に施す技術が開発されている。例えば、特許文献1には、主表面に予め膜を形成しておくことによって、化学強化の進度を端面より抑制することによって、主表面の圧縮応力の大きさを制御する技術が開示されている。
下記の特許文献2及び3には、ガラス板の片面もしくは両面にイオン交換を抑制する膜を形成した後にイオン交換することにより、強化ガラス基板の反りを小さくし得る技術が開示されている。
しかしながら、化学強化の進度を調整する処理をガラス基板の表面に施す場合、表裏のわずかな処理の差によって、強化ガラス基板が反ることがあった。例えば、主表面に予め膜を形成して強化する場合、生産時に不可避に生じる表裏のわずかな膜厚差によって、強化後に強化ガラス基板が反ることがあった。一般に、表裏の膜厚差を±2%未満に収めることは容易だが、±1%のばらつきは残る。一般に、複数枚のガラス基板を、主表面同士が向かい合うように、狭い間隔をあけて並べ、イオン交換処理しているが、反りの方向がガラス基板により異なる場合、隣同士の強化ガラス基板が接触するおそれがある。あるいは、強化ガラス基板の反りが大きいと、強化ガラス基板を吸着搬送により搬送する際において、強化ガラス基板を吸着することができないなどの不具合が生じるおそれもある。
特許文献1においては、上述したような強化ガラス基板の反りの方向については考慮されていない。特許文献2及び3においては、成膜時において不可避な膜厚のばらつきについては考慮されていない。
本発明の目的は、反りの方向を制御することができる、強化ガラス基板の製造方法及び強化ガラス基板を提供することにある。
本発明の強化ガラス基板の製造方法は、対向し合う第1,第2の主面を有するガラス基板の、第1の主面の上に第1のイオン交換抑制膜を形成し、第2の主面の上に第2のイオン交換抑制膜を形成する成膜工程と、ガラス基板をイオン交換法により化学強化することにより第1の主面に対応する第1の圧縮応力層と、第2の主面に対応する第2の圧縮応力層を形成する強化工程とを備える。成膜工程において、第1の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積との差Δ(CS×DOL)及び強化ガラス基板の厚みTにより定義される量Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が、1.5×109Pa/m以上であり、9×109Pa/m以下となるように、第1のイオン交換抑制膜の膜厚と第2のイオン交換抑制膜の膜厚とのそれぞれの目標値を設定し、第1,第2のイオン交換抑制膜を形成する。
ガラス基板が、第1の主面と第2の主面とに接続される端面を有する場合、強化工程において、端面にイオン交換抑制膜を形成せずにガラス基板を化学強化することが好ましい。
成膜工程において、第1のイオン交換抑制膜と第2のイオン交換抑制膜との膜厚の差が、第1,第2のイオン交換抑制膜の内の膜厚が厚い方のイオン交換抑制膜の膜厚の2%より大きく、10%以下となるように、第1,第2のイオン交換抑制膜を形成することが好ましい。
強化工程後に、第1,第2のイオン交換抑制膜のうち少なくとも一方を研磨する研磨工程を備えてもよい。
研磨工程において、更に、第1の圧縮応力層、第2の圧縮応力層のうち少なくとも一方を研磨してもよい。
本発明の強化ガラス基板は、対向し合う第1,第2の圧縮応力層を有する。第1の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積との差Δ(CS×DOL)及び強化ガラス基板の厚みTにより定義される量Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が、1.5×109Pa/m以上であり、9×109Pa/m以下である。
第1の圧縮応力層と第2の圧縮応力層とに接続される端面圧縮応力層を有する場合、端面圧縮応力層の表面圧縮応力値及び圧縮応力深さの内の少なくとも一方の値は、第1の圧縮応力層及び第2の圧縮応力層の値よりも大きいことが好ましい。
反りの方向を制御することができる、強化ガラス基板の製造方法及び強化ガラス基板を提供することができる。
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
(第1の実施形態)
図1(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る強化ガラス基板の製造方法を説明するための正面図である。図1(a)に示すように、第1の実施形態の製造方法では、ガラス基板11を用意する。ガラス基板11は、対向し合う第1,第2の主面11a,11b及び第1,第2の主面11a,11bに接続される側面11cを有する。ガラス基板11の材質は、イオン交換法により強化し得る材質であれば、特に限定されない。例えば、ガラス基板11は、ソーダライムやアルミノシリケートなどからなっていてもよい。
図1(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る強化ガラス基板の製造方法を説明するための正面図である。図1(a)に示すように、第1の実施形態の製造方法では、ガラス基板11を用意する。ガラス基板11は、対向し合う第1,第2の主面11a,11b及び第1,第2の主面11a,11bに接続される側面11cを有する。ガラス基板11の材質は、イオン交換法により強化し得る材質であれば、特に限定されない。例えば、ガラス基板11は、ソーダライムやアルミノシリケートなどからなっていてもよい。
ガラス基板11の厚みは、0.1mm〜2mmであることが好ましい。詳細は後述するが、ガラス基板11の厚みが薄いほどガラス基板が反りやすいため、本発明を好適に用いることができる。ガラス基板の厚みが0.1mmよりも薄い場合、ガラス基板に割れが生じやすく、後述する圧縮応力層を形成し難い。ガラス基板11の厚みは、0.2mm〜1.3mmであることがより好ましく、0.2mm〜0.9mmであることがさらに好ましく、0.2mm〜0.7mmであることがさらに好ましく、0.2mm〜0.55mmであることが最も好ましい。この場合には、本発明をより一層好適に適用することができる。
ガラス基板11は、特に限定されないが、例えば、オーバーフローダウンドロー法やフロート法などにより用意することができる。
次に、図1(b)に示すように、ガラス基板11の第1の主面11aの上に、第1のイオン交換抑制膜2aを形成する。第2の主面11bの上にも、第2のイオン交換抑制膜2bを形成する(成膜工程)。本実施形態では、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bは、酸化珪素からなる。なお、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの材質は、特に限定されず、例えば、金属、金属酸化物膜、金属窒化物膜、金属炭化物膜、金属酸窒化物膜、金属酸炭化物膜、金属炭窒化物膜などから形成される。より具体的には、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bは、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸窒化珪素、酸化亜鉛または酸化インジウムなどから形成される。
第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bは、スパッタリング法や真空蒸着法などのPVD法(物理気相成長法)、熱CVD法やプラズマCVD法などのCVD法(化学気相成長法)、あるいは、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法やスリットコート法などのウェットコート法を用いることで形成することができる。特に、スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング法を用いた場合、イオン交換抑制膜の膜厚の均一性が特に高い。
PVD法やCVD法においては、成膜レートや成膜時間を制御することにより、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚を制御することができる。ディップコート法においては、ガラス基板11を引き上げる際のガラス基板11の角度を調整することにより、上記膜厚を制御することができる。スリットコート法においては、塗布量の調整などにより、上記膜厚を制御することができる。
図1(b)に示すように、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bを形成する際に、ガラス基板11の側面11cにもイオン交換抑制膜を形成してもよい。
本実施形態では、第1のイオン交換抑制膜2aの膜厚の方が、第2のイオン交換抑制膜の膜厚2bよりも厚くなるように成膜する。第1のイオン交換抑制膜2aの膜厚は、10nm〜300nmであることが好ましい。イオン交換抑制膜の膜厚が300nmよりも厚い場合、後述する強化工程において、イオン交換が進行しないおそれがある。イオン交換抑制膜の膜厚が薄い場合は、イオン交換を抑制することができないおそれがある。
第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚の差は、第1のイオン交換抑制膜2aの膜厚の2%より大きく、10%以下であることが好ましい。第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚の差が10%よりも大きい場合、後述する強化ガラス基板の反りが大きくなるおそれがある。上記膜厚の差を2%以下とする場合、製造する際に、イオン交換抑制膜の膜厚のばらつきを制御することが困難となるおそれがある。
本実施形態では、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚に差を設け、後述する強化工程においてイオン交換を行う。上記膜厚の差があるため、第1の主面11aのイオン交換の進度と第2の主面11bのイオン交換の進度とに差が生じる。それによって、後述する強化ガラス基板の第1の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積とに差を設けることができる。上記積の差Δ(CS×DOL)及び強化ガラス基板の厚みTにより定義される量Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が、1.5×109Pa/m以上であり、9×109Pa/m以下となるように、上記膜厚の差を設定して、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bを形成する。
次に、本実施形態では、図1(c)に示すように、ガラス基板11を厚み方向に切断する。この加工工程において切断された部分が、第1の主面11aと第2の主面11bとに接続されている端面11dとなる。端面11dにはイオン交換抑制膜は形成されていない。このように、ガラス基板11において、イオン交換抑制膜が形成されていない露出部を設けることができる。言い換えれば、成膜工程及び加工工程により、端面11dにイオン交換抑制膜を形成せずに、第1,第2の主面11a,11bにイオン交換抑制膜2a,2bを形成したガラス基板11を得ることができる。なお、加工工程は、切断加工を行う以外にも、孔あけ加工や端面加工を行ってもよい。
ガラス基板11は、必ずしも上記のように加工する必要もなく、図1(b)に示した、イオン交換抑制膜が側面11cに形成された状態において、後述する強化工程を行ってもよい。もっとも、本実施形態のように、加工工程により、イオン交換抑制膜が形成されていない端面11dを露出させることが好ましい。それによって、強化工程において、端面11dを効果的に強化することができる。
あるいは、成膜工程において、側面11cにイオン交換抑制膜を形成せずに、第1,第2の主面11a,11bに第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bを形成してもよい。
次にイオン交換法によりガラス基板11の化学強化を行う(強化工程)。この強化工程において、本実施形態では、成膜工程を経たガラス基板11を、430℃の硝酸カリウム溶融塩に5時間浸漬する。なお、強化工程の条件は、上記に限定されない。上記成膜工程における条件などに応じて、強化工程の条件を決定すればよい。それによって、第1,第2の主面11a,11bでイオン交換が進行する。そして、ガラス基板11は、図1(d)に示す、対向し合う第1,第2の圧縮応力層1a,1bを有する強化ガラス基板1となる。また、端面11dでもイオン交換が行われ、端面圧縮応力層が形成される。なお、端面11dには、イオン交換抑制膜が形成されていないため、第1,第2の主面11a,11bよりもイオン交換が行われる。そのため、端面圧縮応力層は、第1,第2の圧縮応力層1a,1bよりも表面圧縮応力値及び圧縮応力深さの内の少なくとも一方の値が大きい。そのため、強化ガラス基板1の端面11dの損傷を効率的に抑制できる。
強化ガラス基板1の厚みは、ガラス基板11の厚みと同様に、0.1mm〜2mmが好ましい。より好ましくは、強化ガラス基板1の厚みは、0.2mm〜1.3mmであることがより好ましく、0.2mm〜0.9mmであることがさらに好ましく、0.2mm〜0.7mmであることがさらに好ましく、0.2mm〜0.55mmであることが最も好ましい。
上述したように、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚の差を設けてガラス基板11を化学強化することにより、Δ(CS×DOL)/T2の絶対値を、1.5×109Pa/m以上、9×109Pa/m以下とすることができる。それによって、強化ガラス基板1の反りの方向を効果的に制御することができ、かつ反りを充分に小さくすることができる。この詳細を以下において説明する。
図2は、本発明における反り量の定義を説明するための断面図である。
強化ガラス基板1の長さLと、強化ガラス基板1の曲率半径ρ及び角度θとの関係は、下記の式1により表すことができる。なお、長さLとは、矩形の強化ガラス基板1の長辺の寸法を指す。また、強化ガラス基板1が矩形でない場合、長さLとは、強化ガラス基板1の第1の圧縮応力層1aに沿った最長の寸法を指す。図2は、長さLに沿った方向に切断した断面図である。なお、角度θは、半径がρであり、強化ガラス基板1に接している仮想上の円の中心と強化ガラス基板1の一方端部とを結ぶ仮想線l1及び上記中心と強化ガラス基板1の中央部とを結ぶ仮想線l2がなす角度である。
2ρθ=L…式1
さらに、強化ガラス基板1の反り量δと、曲率半径ρ及び角度θとの関係はδ=ρ−ρcosθの式により表すことができる。δ=ρ−ρcosθ=ρ(1−cosθ)において、角度θが0に近くなると、1−cosθがθ2/2に近似されるという近似式を用いると、下記の式2により表すことができる。
δ=ρθ2/2…式2
なお、反り量δは、図2のように、強化ガラス基板1が第1の圧縮応力層1a側から第2の圧縮応力層1b側に凸状となるように反っている場合は、強化ガラス基板1の両端部を結ぶ仮想線l3と、第1の圧縮応力層1aとの距離の内最大の距離である。強化ガラス基板1が第2の圧縮応力層1b側から第1の圧縮応力層1a側に凸状となるように反っている場合は、反り量δは、仮想線l3と第2の圧縮応力層1bとの距離の内最大の距離である。反りの方向は、強化ガラス基板1の第1の圧縮応力層1aから第2の圧縮応力層1bに向かう方向を正とする。
式1及び式2から、反り量δと長さLとの関係は、下記の式3により表すことができる。
δ=L2/8ρ…式3
このように、強化ガラス基板1の反り量δは、長さLの2乗に依存する。ここで、式3より、長さLに依存しない、反り率|δ|/L2を定義することができる。
反り率|δ|/L2は、40×10−9μm−1以下であることが好ましい。反り率|δ|/L2が40×10−9μm−1よりも大きい場合、例えば、強化ガラス基板1をカバーガラスとして他の部材などに貼り合わせる際に、貼り合わせが困難となることがある。より好ましくは、反り率|δ|/L2は、30×10−9μm−1以下であることが望ましい。それによって、強化ガラス基板1を他の部材などに貼り合わせやすい。さらに好ましくは、反り率|δ|/L2は、25×10−9μm−1以下であることが望ましい。それによって、強化ガラス基板1を他の部材などにより一層貼り合わせやすい。最も好ましくは、反り率|δ|/L2は、20×10−9μm−1以下であることが望ましい。それによって、強化ガラス基板1を他の部材などにさらにより一層貼り合わせやすい。
次に、反り率|δ|/L2とΔ(CS×DOL)/T2との関係を説明する。
第1,第2の圧縮応力層1a,1bの表面圧縮応力値CS、圧縮応力深さDOL及び強化ガラス基板1の厚みTから、Δ(CS×DOL)/T2及び反り率|δ|/L2を求めることができる。
第1の圧縮応力層1aの表面圧縮応力値をσ1、第2の圧縮応力層1bの表面圧縮応力値をσ2、第1の圧縮応力層1aの圧縮応力深さをD1、第2の圧縮応力層1bの圧縮応力深さをD2としたとき、Δ(CS×DOL)/T2は下記の式4により求めることができる。
(σ1・D1−σ2・D2)/T2…式4
反り率|δ|/L2は、以下のように求めることができる。
図3は、強化ガラス基板1の厚み方向の位置と、応力値との関係を示す図である。
強化ガラス基板1の第1の圧縮応力層1aの外表面は、強化ガラス基板1の厚み方向(x方向)の位置0に相当する。第2の圧縮応力層1bの外表面は、厚み方向の位置Tに相当する。第1の圧縮応力層1aの外表面から、厚み方向の位置D1までの距離D1が、第1の圧縮応力層1aの圧縮応力深さに相当する。第2の圧縮応力層1bの外表面から、厚み方向の位置T−D2までの距離D2が、第2の圧縮応力層1bの圧縮応力深さに相当する。
第1の圧縮応力層1aの外表面における圧縮応力値はσ1であり、厚み方向の位置D1までは、厚み方向に比例して小さくなる。厚み方向の位置D1からT−D2までは、圧縮応力値は一定の値である−CTとなる。厚み方向の位置T−D2から第2の圧縮応力層1bの外表面までは、厚み方向に比例して圧縮応力値が大きくなる。第2の圧縮応力層1bの外表面における圧縮応力値はσ2である。これを、厚み方向の位置をx、応力値をσS(x)として、下記の式5〜式7により表すことができる。なお、σS(x)は、正の値の場合は圧縮応力となる。σs(x)は、負の値の場合は引っ張り応力となる。
σS(x)=−σ1x/D1+σ1 (0<x<D1)…式5
σS(x)=−CT (D1≦x≦T−D2)…式6
σS(x)=σ2x/D2−σ2(T/D2−1) (T−D2<x<T)…式7
σS(x)=−CT (D1≦x≦T−D2)…式6
σS(x)=σ2x/D2−σ2(T/D2−1) (T−D2<x<T)…式7
ここで、強化ガラス基板1の厚み方向全体としては、応力が釣り合っている。この力の釣り合いを考慮すると、圧縮応力値σS(x)の厚み方向全体の積分値は、∫0TdxσS(x)=0となる。この式を、式5〜式7を用いて展開すると、下記の式8を得ることができる。
−CT=−((D1σ1/2)+(D2σ2/2))/(T−D1−D2)…式8
他方、それぞれの厚み方向の位置xにおける、圧縮応力による力のモーメントは、xσS(x)の式で表すことができる。圧縮応力による力のモーメントは、厚み方向全体において釣り合っていない。そのため、強化ガラス基板1が反る。それによって、曲げ応力σB(x)が発生する。これにより、強化ガラス基板1の厚み方向全体における力のモーメントが釣り合う。すなわち、圧縮応力及び曲げ応力による力のモーメントの厚み方向全体の積分値は0となる。これを、下記の式9により表すことができる。
∫0Tdx・x[σS(x)+σB(x)]=0…式9
さらに、圧縮応力及び曲げ応力においても、厚み方向全体において力が釣り合っている。よって、圧縮応力値σS(x)及び曲げ応力σB(x)の厚み方向全体の積分値は、∫0Tdx・[σS(x)+σB(x)]=0となる。上述したように、∫0TdxσS(x)=0なので、∫0TdxσB(x)=0となり、曲げ応力σB(x)の中立軸は厚み方向における中心となる。強化ガラス基板1のヤング率をE’とし、曲率半径をρとすると、曲げ応力は、下記の式10により表すことができる。
σB(x)=E’(x−T/2)/ρ…式10
なお、E’は、ヤング率Eをポアソン比νにより補正したヤング率である。より具体的には、E’=E/(1−ν)の式で表すことができる。
次に、式9に式8及び式10を代入することにより得た式に、E、ν、σ1、σ2、D1、D2及びTの値を代入することにより、ρを求めることができる。
求めた曲率半径ρ及び式3から、反り率|δ|/L2を求めることができる。
ここで、下記の表1に示すそれぞれのパラメータを異ならせて、上述のように各Δ(CS×DOL)/T2及び各|δ|/L2を求めた。なお、ヤング率Eを70GPaとし、ポアソン比νを0.2とした。
表1に示すA、B及びCでは、それぞれ強化ガラス基板1の第2の圧縮応力層1bの圧縮応力深さを異ならせた。なお、第1の圧縮応力層1aの表面圧縮応力値、第1の圧縮応力層1aの圧縮応力深さ、第2の圧縮応力層1bの表面圧縮応力値及び強化ガラス基板1の厚みは、表1に示す値に固定した。
表1に示されているD及びEでは、それぞれ強化ガラス基板1の第2の圧縮応力層1bの表面圧縮応力値を異ならせた。第1の圧縮応力層1aの表面圧縮応力値、第1の圧縮応力層1aの圧縮応力深さ、第2の圧縮応力層1bの圧縮応力深さ及び強化ガラス基板1の厚みは、表1に示す値に固定した。
図4は、反り率|δ|/L2とΔ(CS×DOL)/T2との関係を示す図である。なお、実線、周期が短い破線及び一点鎖線は、表1におけるA、B及びCの結果を示す。周期が長い破線及び二点鎖線は、表1におけるD及びEの結果を示す。
図4に示されているように、Δ(CS×DOL)/T2が大きくなるほど、反り率|δ|/L2が大きくなっている。上述したように、反り率|δ|/L2は、40×10−9μm−1以下であることが好ましい。Δ(CS×DOL)/T2を9×109Pa/m以下とすることにより、反り率|δ|/L2を40×10−9μm−1以下とすることができる。なお、反り量δが負の値の場合においても、Δ(CS×DOL)/T2の絶対値を9×109Pa/m以下とすることにより、反り率|δ|/L2を40×10−9μm−1以下とすることができる。
他方、本実施形態では、Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が1.5×109Pa/m以上となるように、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚の目標値を設定し、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bを形成する。それによって、強化ガラス基板1が反る方向を効果的に制御することができる。すなわち、第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚が±1%の範囲内でばらついても、強化ガラス基板1が同じ方向に反るように制御することができる。
<第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚と強化ガラス基板1の表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLとの関係>
第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚の目標値を設定するためには、イオン交換抑制膜2a,2bの膜厚と、その膜厚でイオン交換して得られる強化ガラス基板1の表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLとの関係を知ることが必要となる。
第1,第2のイオン交換抑制膜2a,2bの膜厚の目標値を設定するためには、イオン交換抑制膜2a,2bの膜厚と、その膜厚でイオン交換して得られる強化ガラス基板1の表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLとの関係を知ることが必要となる。
これらの関係を以下のように求めた。
ガラス基板(厚み0.55mm、長辺の長さ130mm、短辺の長さ65mm)の両主面の上に、それぞれイオン交換抑制膜を、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、及び100nmと膜厚を変えて形成した。ここで、ガラス基板としては、主面が矩形形状を有するものを用いた。ガラス基板の長辺に沿った方向を長さ方向とする。イオン交換抑制膜を形成したガラス基板を、第1の実施形態と同様に、430℃の硝酸カリウム溶融塩に5時間浸漬することにより、イオン交換法で強化して複数の強化ガラス基板を作製した。また、イオン交換抑制膜を形成していないガラス基板、すなわち膜厚が0nmであるガラス基板についても、上記と同様にイオン交換法で強化し、強化ガラス基板を作製した。
なお、イオン交換抑制膜には、酸化珪素を用いた。
次に、各強化ガラス基板の表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLを、表面応力計(折原製作所社製FSM−6000)により測定した。表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLの測定方法としては、他にも、EPMA(Electron probe micro analyzer)やGDOES(Glow discharge optical emission spectrometry)などにより、カリウムイオンなどのアルカリイオンの深さ方向の濃度分析を行うことにより測定できる。
図5は、イオン交換抑制膜の膜厚と、表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLとの関係を示す図である。
図5の結果にフィッティングすることにより、イオン交換抑制膜の膜厚と表面圧縮応力値CSとの関係式である下記の式11を求めた。同様に、イオン交換抑制膜の膜厚と圧縮応力深さDOLとの関係式である下記の式12を求めた。式11において、イオン交換抑制膜の膜厚をxとし、yを表面圧縮応力値CSとする。式12において、イオン交換抑制膜の膜厚をxとし、yを圧縮応力深さDOLとする。
y=0.0086x2−0.2255x+791.84…式11
y=−0.0018x2−0.0137x+52.947…式12
y=−0.0018x2−0.0137x+52.947…式12
式11及び式12を用いて、Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が1.5×109Pa/m以上、9×109Pa/m以下となるように、第1,第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を設定することができる。
なお、一方に反らせた強化ガラス基板の製造方法において、必要に応じて研磨工程を含むことができる。図6に示すように、第2のイオン交換抑制膜2bを研磨装置Pにより研磨する。第2のイオン交換抑制膜2bを研磨することにより、イオン交換抑制膜2bの厚みが小さくなる。イオン交換抑制膜2bを研磨することにより、イオン交換抑制膜2bを研磨しなかった場合と比較して、強化ガラス基板1の耐傷性が高く、かつ外観が良い。当然ながら、イオン交換膜2bを全て研磨除去し、かつ、第2の圧縮応力層1bも研磨し、その厚みを小さくしても、同様に耐傷性が高く、かつ外観が良い。なお、必要に応じてイオン交換抑制膜2aや第2の圧縮応力層1aも研磨し、イオン交換抑制膜2aや圧縮応力層1aの厚みを調整してもよい。
<実施例1〜2及び比較例1〜2>
Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が1.5×109Pa/m以上、9×109Pa/m以下である実施例1及び2と、Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が1.5×109Pa/mより小さい比較例1及びΔ(CS×DOL)/T2の絶対値が9×109Pa/mより大きい比較例2の強化ガラス基板を、以下のようにして作製した。ガラス基板としては、厚み0.55mm、長辺の長さ130mm、短辺の長さ65mmの基板を用いた。
Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が1.5×109Pa/m以上、9×109Pa/m以下である実施例1及び2と、Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が1.5×109Pa/mより小さい比較例1及びΔ(CS×DOL)/T2の絶対値が9×109Pa/mより大きい比較例2の強化ガラス基板を、以下のようにして作製した。ガラス基板としては、厚み0.55mm、長辺の長さ130mm、短辺の長さ65mmの基板を用いた。
(実施例1)
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、Δ(CS×DOL)/T2の値を、1.9×109Pa/mとして、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を算出したところ、97.8nmとなった。
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、Δ(CS×DOL)/T2の値を、1.9×109Pa/mとして、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を算出したところ、97.8nmとなった。
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を97.8nmに設定して、第1,第2のイオン交換抑制膜をガラス基板の上に形成し、上記と同様にして、430℃の硝酸カリウム溶融塩に5時間浸漬することにより、イオン交換法で強化して複数の強化ガラス基板を作製した。
基板の長さ方向に沿って、レーザ式変位センサを走査させることにより、反り量δを測定した。基板の長さ方向は、本実施例のように、基板の平面形状が長方形である場合には長辺方向とした。なお、基板の平面形状が長方形ではない場合には、第1の圧縮応力層の最長の寸法に沿った方向を指す。そして、その場合、最長の寸法直線上にレーザ式変位センサを走査させることにより、反り量δを測定する。レーザ式変位センサを走査させた線上における基板の一方端部と他方端部とを結んだ線と、各測定点との距離の内で最大の距離を反り量δとした。
得られた強化ガラス基板のうち、反り量δが最大であった強化ガラス基板(第1のイオン交換抑制膜の膜厚:101nm、第2のイオン交換抑制膜の膜厚:96.8nm)と、反り量δが最小であった強化ガラス基板(第1のイオン交換抑制膜の膜厚:99nm、第2のイオン交換抑制膜の膜厚:98.8nm)の反り量δの測定結果を表2に示す。また、表2には、第1,第2の主面の表面圧縮応力値及び圧縮応力深さ、並びに反り率|δ|/L2、Δ(CS×DOL)/T2の設定値を併せて示す。
(実施例2)
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、Δ(CS×DOL)/T2の値を、6.7×109Pa/mとして、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を算出したところ、92nmとなった。
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、Δ(CS×DOL)/T2の値を、6.7×109Pa/mとして、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を算出したところ、92nmとなった。
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を92nmに設定して、第1,第2のイオン交換抑制膜をガラス基板の上に形成し、上記と同様にして、イオン交換法で強化して複数の強化ガラス基板を作製した。
得られた強化ガラス基板のうち、反り量δが最大であった強化ガラス基板(第1のイオン交換抑制膜の膜厚:101nm、第2のイオン交換抑制膜の膜厚:91nm)と、反り量δが最小であった強化ガラス基板(第1のイオン交換抑制膜の膜厚:99nm、第2のイオン交換抑制膜の膜厚:93nm)の反り量δの測定結果を表2に示す。また、表2には、第1,第2の主面の表面圧縮応力値及び圧縮応力深さ、並びに反り率|δ|/L2、Δ(CS×DOL)/T2の設定値を併せて示す。
(比較例1)
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、Δ(CS×DOL)/T2の値を、0Pa/mとして、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を算出したところ、100nmとなった。
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、Δ(CS×DOL)/T2の値を、0Pa/mとして、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を算出したところ、100nmとなった。
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定して、第1,第2のイオン交換抑制膜をガラス基板の上に形成し、上記と同様にして、イオン交換法で強化して複数の強化ガラス基板を作製した。
得られた強化ガラス基板のうち、反り量δが最大であった強化ガラス基板(第1のイオン交換抑制膜の膜厚:101nm、第2のイオン交換抑制膜の膜厚:99nm)と、反り量δが最小であった強化ガラス基板(第1のイオン交換抑制膜の膜厚:99nm、第2のイオン交換抑制膜の膜厚:101nm)の反り量δの測定結果を表2に示す。また、表2には、第1,第2の主面の表面圧縮応力値及び圧縮応力深さ、並びに反り率|δ|/L2、Δ(CS×DOL)/T2の設定値を併せて示す。
(比較例2)
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、Δ(CS×DOL)/T2の値を、11.9×109Pa/mとして、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を算出したところ、85nmとなった。
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、Δ(CS×DOL)/T2の値を、11.9×109Pa/mとして、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を算出したところ、85nmとなった。
第1のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を100nmに設定し、第2のイオン交換抑制膜の膜厚の目標値を85nmに設定して、第1,第2のイオン交換抑制膜をガラス基板の上に形成し、上記と同様にして、イオン交換法で強化して複数の強化ガラス基板を作製した。
得られた強化ガラス基板のうち、反り量δが最大であった強化ガラス基板(第1のイオン交換抑制膜の膜厚:101nm、第2のイオン交換抑制膜の膜厚:84nm)と、反り量δが最小であった強化ガラス基板(第1のイオン交換抑制膜の膜厚:99nm、第2のイオン交換抑制膜の膜厚:86nm)の反り量δの測定結果を表2に示す。また、表2には、第1,第2の主面の表面圧縮応力値及び圧縮応力深さ、並びに反り率|δ|/L2、Δ(CS×DOL)/T2の設定値を併せて示す。
比較例1では、反り量δが最大の場合と最小の場合とで、反り量δの符号が、異なっている。すなわち、反り量δが最大の場合と最小の場合とで、反りの方向が異なる。よって、比較例1のように、Δ(CS×DOL)/T2が1.5×109Pa/mよりも小さい場合は、反りの方向を制御することが困難である。
比較例2では、反りの方向を制御することはできているが、反り率|δ|/L2は40×10−9よりも大きい。よって、Δ(CS×DOL)/T2が9×109Pa/mより大きい場合は、反り量が大きくなることがわかる。
これに対して、実施例1においては、反り量δが最大の場合と最小の場合とにおいて、反り量δの符号は同じであり、反りを同じ方向に制御することができている。さらに、反り量δが最大の場合でも、反り率|δ|/L2は16.6×10−9μm−1であり、充分に小さい。実施例2においても、反りを同じ方向に制御することができている。反り量δが最大の場合でも、反り率|δ|/L2は38×10−9μm−1であり、40×10−9μm−1よりも小さい値とすることができている。
1…強化ガラス基板
1a,1b…第1,第2の圧縮応力層
2a,2b…第1,第2のイオン交換抑制膜
11…ガラス基板
11a,11b…第1,第2の主面
11c…側面
11d…端面
1a,1b…第1,第2の圧縮応力層
2a,2b…第1,第2のイオン交換抑制膜
11…ガラス基板
11a,11b…第1,第2の主面
11c…側面
11d…端面
Claims (7)
- 対向し合う第1,第2の主面を有するガラス基板の、前記第1の主面の上に第1のイオン交換抑制膜を形成し、前記第2の主面の上に第2のイオン交換抑制膜を形成する成膜工程と、
前記ガラス基板をイオン交換法により化学強化することにより、前記第1の主面に対応する第1の圧縮応力層と、前記第2の主面に対応する第2の圧縮応力層を形成する強化工程とを備え、
前記成膜工程において、前記第1の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、前記第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積との差Δ(CS×DOL)及び前記強化ガラス基板の厚みTにより定義される量Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が、1.5×109Pa/m以上であり、9×109Pa/m以下となるように、前記第1のイオン交換抑制膜の膜厚と前記第2のイオン交換抑制膜の膜厚とのそれぞれの目標値を設定し、前記第1,第2のイオン交換抑制膜を形成する、強化ガラス基板の製造方法。 - 前記ガラス基板が、前記第1の主面と前記第2の主面とに接続される端面を有し、
前記強化工程において、前記端面にイオン交換抑制膜を形成せずに前記ガラス基板を化学強化する、請求項1に記載の強化ガラス基板の製造方法。 - 前記成膜工程において、前記第1のイオン交換抑制膜と前記第2のイオン交換抑制膜との膜厚の差が、前記第1,第2のイオン交換抑制膜の内の膜厚が厚い方のイオン交換抑制膜の膜厚の2%より大きく、10%以下となるように、前記第1,第2のイオン交換抑制膜を形成する、請求項1または2に記載の強化ガラス基板の製造方法。
- 前記強化工程後に、前記第1,第2のイオン交換抑制膜のうち少なくとも一方を研磨する研磨工程を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の強化ガラス基板の製造方法。
- 前記研磨工程において、更に、前記第1の圧縮応力層、前記第2の圧縮応力層のうち少なくとも一方を研磨する、請求項4に記載の強化ガラス基板の製造方法。
- 対向し合う第1,第2の圧縮応力層を有する強化ガラス基板であって、
前記第1の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、前記第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積との差Δ(CS×DOL)及び前記強化ガラス基板の厚みTにより定義される量Δ(CS×DOL)/T2の絶対値が、1.5×109Pa/m以上であり、9×109Pa/m以下である、強化ガラス基板。 - 前記第1の圧縮応力層と前記第2の圧縮応力層とに接続される端面圧縮応力層を有し、
前記端面圧縮応力層の表面圧縮応力値及び圧縮応力深さの内の少なくとも一方の値が、前記第1の圧縮応力層及び前記第2の圧縮応力層の値よりも大きい、請求項6に記載の強化ガラス基板。
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