JP2017030997A - 薄膜付き強化ガラス基板の製造方法及び薄膜付き強化ガラス基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】反りを小さくできる、薄膜付き強化ガラス基板の製造方法の提供。【解決手段】対向する第1,第2の主面11a,11bを有するガラス基板をイオン交換法で化学強化し、第1,第2の主面に、各々第1,第2の圧縮応力層21a,21bを形成し、強化ガラス基板21を作製する強化工程と、薄膜3を、強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21a及び第2の圧縮応力層21bの内の少なくとも一方の上に形成し、薄膜付き強化ガラス基板1を作製する成膜工程とを備え、強化工程で、第1の圧縮応力層21a及び第2の圧縮応力層21bの、表面圧縮応力値及び圧縮応力深さの内の少なくとも一方を異ならせて、第1の圧縮応力層21aの外表面に対し垂直な第1の方向Y1への反りが形成された強化ガラス基板21を作製し、成膜工程で、強化ガラス基板21の第1の方向Y1の反りを低減させるように薄膜3を形成する方法。【選択図】図1
Description
本発明は、強化ガラス基板の表面に薄膜が形成された薄膜付き強化ガラス基板の製造方法及び薄膜付き強化ガラス基板に関するものである。
従来、化学強化された強化ガラス基板は、スマートフォンやタブレットPCなどの電子機器に搭載されるタッチパネルディスプレイのカバーガラスとして用いられている。このような強化ガラス基板は、一般的に、アルカリ金属を組成として含むガラス基板を強化液で化学的に処理し、表面に圧縮応力層を形成することによって製造される。このような強化ガラス基板は、主表面に圧縮応力層を有することによって、主表面への耐衝撃性が向上する。
また、下記の特許文献1及び2には、このような強化ガラス板に、傷防止や反射防止のための膜を成膜することが記載されている。
下記の特許文献3にも、ガラス基板の表面に、反射防止のための薄膜を形成することが記載されている。
一般に、ガラス基板の表面に薄膜を形成する場合、スパッタリング法などの方法において、高い運動エネルギーを有する粒子をガラス基板に衝突させることにより、該粒子を堆積させる。カバーガラスとしての耐傷性を高めるために、例えば、緻密な薄膜を形成しようとした場合、非常に高い運動エネルギーを有する粒子をガラス基板に衝突させる必要がある。その際、膜応力が高くなり、ガラス基板が反る場合がある。しかしながら、特許文献1及び2では、上記反りについては考慮されていない。
特許文献3では、ガラス基板の表面に薄膜を形成する前に、ガラス基板を塑性変形させることが記載されている。それによって、成膜後のガラス基板を平坦にし得るとされている。塑性変形の方法としては、ガラス基板を歪点付近の温度で加熱して保持することが挙げられている。しかしながら、強化ガラス基板の製造方法において、塑性変形させるためにイオン交換前にガラス基板を歪点付近の温度において長時間保持すると、イオン交換が進行し難くなる。また、イオン交換後に強化ガラス基板を加熱して塑性変形させると、耐衝撃性が低下する。特許文献3において、塑性変形の方法として、ガラス基板の一方の主面側をイオン交換することも挙げられているが、ガラス基板の一方の主面側のみをイオン交換することは困難である。
本発明の目的は、反りを小さくすることができる薄膜付き強化ガラス基板の製造方法及び薄膜付き強化ガラス基板を提供することにある。
本発明の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法は、対向し合う第1,第2の主面を有するガラス基板をイオン交換法で化学強化することにより、第1,第2の主面に対して、それぞれ第1,第2の圧縮応力層を形成し、強化ガラス基板を作製する強化工程と、薄膜を、強化ガラス基板の第1の圧縮応力層及び第2の圧縮応力層の内の少なくとも一方の上に形成し、薄膜付き強化ガラス基板を作製する成膜工程とを備え、強化工程において、第1の圧縮応力層及び第2の圧縮応力層の、表面圧縮応力値(CS)及び圧縮応力深さ(DOL)の内の少なくとも一方を異ならせることにより、強化ガラス基板の第1の圧縮応力層の外表面に対し垂直な第1の方向に凸または凹となるように反りを形成し、成膜工程において、強化ガラス基板の反りを低減させるように薄膜を形成する。
成膜工程において、薄膜形成後の薄膜付き強化ガラス基板の反り量をδとし、長さをLとしたときの、反り率|δ|/L2が、40×10−9μm−1以下となるまで第1の方向への反りを低減させることが好ましい。
ガラス基板の厚みが0.1mm以上であることが好ましい。
強化工程において、第1の圧縮応力層と第2の圧縮応力層との表面圧縮応力値(CS)及び圧縮応力深さ(DOL)の内の少なくとも一方を異ならせるように化学強化することにより、強化ガラス基板を作製することが好ましい。
例えば、成膜工程において、強化ガラス基板の第1の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積との差をΔ(CS×DOL)、強化ガラス基板の厚みをT、薄膜の膜応力をσf、薄膜の膜厚をdfとしたときに定義される量|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2を、9×109Pa/m以下となるように薄膜を形成することが好ましい。
強化工程において、ガラス基板を化学強化する前に、ガラス基板の第1の主面及び第2の主面の内の少なくとも一方にイオン交換抑制膜を形成することが好ましい。
上記のようにイオン交換抑制膜を形成する場合、例えば、第1の主面及び第2の主面の内の一方の上にのみイオン交換抑制膜を形成することが好ましい。
第1の主面にイオン交換抑制膜を形成し、第1の主面に形成されたイオン交換抑制膜とは膜厚または膜組成が異なるイオン交換抑制膜を第2の主面に形成することが好ましい。
また、強化工程において、ガラス基板を第1,第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)及び圧縮応力深さ(DOL)が同じとなるように化学強化した後、第1の圧縮応力層または第2の圧縮応力層の少なくとも一部を除去してもよい。
強化ガラス基板の第1の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積の差Δ(CS×DOL)が、600Pa・m以上であることが好ましい。
薄膜は、例えば、傷防止膜であることが好ましい。
本発明の薄膜付き強化ガラス基板は、対向し合う第1,第2の圧縮応力層を有する強化ガラス基板と、第1の圧縮応力層及び第2の圧縮応力層の内の少なくとも一方の上に設けられた薄膜とを備え、第1の圧縮応力層と第2の圧縮応力層において表面圧縮応力値(CS)及び圧縮応力深さ(DOL)の内の少なくとも一方が異なっており、強化ガラス基板の反り量をδとし、長さをLとしたときの、反り率|δ|/L2が、40×10−9μm−1以下である。
本発明によれば、反りを小さくすることができる薄膜付き強化ガラス基板の製造方法及び薄膜付き強化ガラス基板を提供することができる。
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
(第1の実施形態)
図1(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態の製造方法を説明するための模式的断面図である。第1の実施形態の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法では、図1(a)に示すように、対向し合う第1,第2の主面11a,11bを有する矩形のガラス基板11を用意する。ガラス基板11の材質は、イオン交換法により化学強化し得る材質であれば、特に限定されない。例えば、ガラス基板11は、ソーダライムガラスやアルミシリケートガラスなどからなっていてもよい。
図1(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態の製造方法を説明するための模式的断面図である。第1の実施形態の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法では、図1(a)に示すように、対向し合う第1,第2の主面11a,11bを有する矩形のガラス基板11を用意する。ガラス基板11の材質は、イオン交換法により化学強化し得る材質であれば、特に限定されない。例えば、ガラス基板11は、ソーダライムガラスやアルミシリケートガラスなどからなっていてもよい。
ガラス基板11の厚みは、0.1mm〜2mmであることが好ましい。詳細は後述するが、ガラス基板11の厚みが薄いほどガラス基板が反りやすいため、本発明を好適に用いることができる。ガラス基板の厚みが0.1mmよりも薄い場合、ガラス基板に割れが生じやすい。ガラス基板11の厚みは、0.2mm〜1.5mmであることがより好ましく、0.2mm〜0.7mmであることが更に好ましく、0.2mm〜0.55mmであることがより望ましい。この場合には、本発明をより一層好適に適用することができる。
ガラス基板11は、特に限定されないが、例えば、オーバーフローダウンドロー法やフロート法などにより成形することができる。
次に、図1(b)に示すように、ガラス基板11の第1の主面11a上に、イオン交換抑制膜2を形成する。本実施形態では、イオン交換抑制膜2は、SiO2からなる。なお、イオン交換抑制膜2の材質は、特に限定されず、例えば、金属、金属酸化物膜、金属窒化物膜、金属炭化物膜、金属酸窒化物膜、金属酸炭化物膜、金属炭窒化物膜などからなっていてもよい。より具体的には、イオン交換抑制膜2は、例えば、酸化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化亜鉛または酸化インジウムなどからなっていてもよい。
イオン交換抑制膜2の膜厚は、10nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。イオン交換抑制膜2の膜厚が300nmよりも厚い場合、イオン交換が進行しないおそれがある。イオン交換抑制膜2の膜厚が10nmよりも薄い場合は、イオン交換を抑制することができないおそれがある。
イオン交換抑制膜2は、スパッタリング法や真空蒸着法などのPVD法(物理気相成長法)、熱CVD法やプラズマCVD法などのCVD法(化学気相成長法)、あるいは、ディップコート法、スピンコート法やスリットコート法などのウェットコート法を用いて形成することができる。特に、スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング法を用いた場合、イオン交換抑制膜2の膜厚の均一性が特に高い。
PVD法やCVD法においては、成膜レートや成膜時間を制御することにより、イオン交換抑制膜2の膜厚を制御することができる。ディップコート法においては、ガラス基板11を引き上げる際のガラス基板11の角度を調整することにより、上記膜厚を制御することができる。スリットコート法においては、塗布量の調整などにより、上記膜厚を制御することができる。
次に、イオン交換法により、ガラス基板11の化学強化を行う。それによって、ガラス基板11を、図1(c)に示す、対向し合う第1,第2の圧縮応力層21a,21bを有する強化ガラス基板21とする。より具体的には、この強化工程において、本実施形態では、ガラス基板11を430℃の硝酸カリウム溶融塩に5時間浸漬する。それによって、第1,第2の主面11a,11bは第1,第2の圧縮応力層21a,21bとなる。
強化ガラス基板21の厚みは、ガラス基板11の厚みと同様に、0.1mm〜2mmが好ましい。強化ガラス基板21の厚みは、0.2mm〜1.5mmであることがより好ましく、0.2mm〜0.7mmであることが更に好ましく、0.2mm〜0.55mmであることがより望ましい。
ここで、図1(b)に示したガラス基板11の第1の主面11aにはイオン交換抑制膜2が形成されている。そのため、第1の主面11aではイオン交換が抑制される。他方、第2の主面11bにはイオン交換抑制膜が形成されていない。よって、第1の主面11aよりも第2の主面11bの方が、イオン交換の進度が大きい。そのため、強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21aと第2の圧縮応力層21bとにおいて、表面圧縮応力値(CS)及び圧縮応力深さ(DOL)の内の少なくとも一方が異なる。より具体的には、強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21aの表面圧縮応力値及び圧縮応力深さの積(CS×DOL)よりも、第2の圧縮応力層21bの表面圧縮応力値及び圧縮応力深さの積(CS×DOL)の方が大きい。このように、第1,第2の圧縮応力層21a,21bにおける上記積に差を生じさせることにより、強化ガラス基板21を反らせる。本実施形態では、強化ガラス基板21を、第2の圧縮応力層21b側から第1の圧縮応力層21a側に向かう方向である、第1の方向Y1に凹状に反らせる。
なお、本実施形態では、第1の圧縮応力層21aのみにイオン交換抑制膜2を形成して化学強化を行ったが、第1,第2の圧縮応力層21a,21bの両方にイオン交換抑制膜を形成して化学強化を行ってもよい。この場合には、例えば、第1の圧縮応力層21a上のイオン交換抑制膜2の膜厚と第2の圧縮応力層21b上のイオン交換抑制膜との膜厚を異ならせればよい。あるいは、第1,第2の圧縮応力層21a,21b上のイオン交換抑制膜の膜組成を互いに異ならせてもよい。それによっても、強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21aと第2の圧縮応力層21bとにおいて、表面圧縮応力値及び圧縮応力深さの内の少なくとも一方を異ならせることができる。よって、強化ガラス基板21を反らせることができる。
イオン交換抑制膜の膜厚を異ならせて、本実施形態のように強化ガラス基板21を第1の方向Y1に反らせる場合、ガラス基板11の第1の主面11a上に形成するイオン交換抑制膜2の膜厚を、第2の主面11b上に形成するイオン交換抑制膜の膜厚より厚くする。また、イオン交換抑制膜の膜組成を異ならせて、本実施形態のように強化ガラス基板21を第1の方向Y1に反らせる場合、ガラス基板11の第1の主面11a上に形成するイオン交換抑制膜2として、第2の主面11b上に形成するイオン交換抑制膜よりイオン交換抑制能が強い膜組成のものを用いる。また、当然のことながら、膜厚及び膜組成の両方を異ならせてもよい。
なお、第1,第2の主面11a,11bの内の少なくとも一方に、イオン交換を促進する処理を施すことにより、第1,第2の圧縮応力層21a,21bの表面圧縮応力値及び圧縮応力深さの内の少なくとも一方を異ならせてもよい。
次に、図1(d)に示すように、強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21a上に成膜されたイオン交換抑制膜2上に、薄膜3を形成する。この成膜工程により、薄膜付き強化ガラス基板1を得ることができる。本実施形態の薄膜3は、強化ガラス基板21を第1の方向Y1と逆方向である第2の方向Y2に反らせる方向の応力を有する。それによって、薄膜付き強化ガラス基板1の反りを低減する。
本実施形態において、薄膜3は、傷防止膜である。薄膜3は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、またはDLCなどからなる。薄膜3は、単層であってもよく、あるいは上記材料などからなる層が積層された積層体であってもよい。本実施形態のように、イオン交換抑制膜2の上に薄膜3を形成する場合、イオン交換抑制膜2の膜組成として、薄膜3の成分と、強化ガラス基板21の成分である酸化珪素を含む膜組成としてもよい。
薄膜3の成膜工程においては、スパッタリング法、イオンアシスト蒸着法、あるいは、エアロゾルディポジッション法などを用いることができる。それによって、薄膜3の密度を高めることができる。よって、耐傷性を高めることができる。なお、本実施形態の薄膜3は、圧縮応力を有する。そのため、より一層耐傷性を高めることができる。
なお、薄膜3により、反射の抑制、あるいは反射率を高めるなどの機能を付与してもよい。例えば、薄膜3を、低屈折率層と高屈折率層とを積層した光学多層膜とすることにより、強化ガラス基板21の表面に反射の抑制などの機能を付与することができる。
本実施形態では、薄膜3を第1の圧縮応力層21a側のみに形成しているが、第1,第2の圧縮応力層21a,21bの両方に薄膜を形成してもよい。この場合には、第1,第2の圧縮応力層21a,21bの薄膜の組成や膜厚などを異ならせることにより、薄膜付き強化ガラス基板1の反りを低減することができる。
また、本実施形態では、イオン交換抑制膜2の上に薄膜3を形成しているが、イオン交換抑制膜2を除去した後、強化ガラス基板21の上に薄膜3を形成してもよい。
ここで、図1(c)における強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21aの表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、第2の圧縮応力層21bの表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積との差をΔ(CS×DOL)とする。強化ガラス基板21を反らせる工程及び薄膜3の成膜工程において、Δ(CS×DOL)、強化ガラス基板21の厚みT、図1(d)における薄膜3の膜応力σf及び薄膜3の膜厚dfにより定義される量|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/m以下となるように、薄膜3を形成することが好ましい。それによって、薄膜付き強化ガラス基板1の反りを効果的に低減することができる。この詳細を以下において説明する。
図2は、本発明における反り量の定義を説明するための図である。
強化ガラス基板21の長さLと、強化ガラス基板21の曲率半径ρ及び角度θとの関係は、下記の式1により表すことができる。なお、長さLとは、矩形の強化ガラス基板21の長辺の寸法を指す。また、強化ガラス基板21が矩形でない場合、長さLとは、強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21aに沿った最長の寸法を指す。図2は、長さLに沿った方向に切断した断面図である。角度θは、半径がρであり、強化ガラス基板21に接している仮想上の円の中心と強化ガラス基板21の一方端部とを結ぶ仮想線l1及び上記中心と強化ガラス基板21の中央部とを結ぶ仮想線l2がなす角度である。
2ρθ=L…式1
さらに、強化ガラス基板21の反り量δと、曲率半径ρ及び角度θとの関係はδ=ρ−ρcosθの式により表すことができる。δ=ρ−ρcosθ=ρ(1−cosθ)において、角度θが0に近くなると、1−cosθがθ2/2に近似されるという近似式を用いると、下記の式2により表すことができる。
δ=ρθ2/2…式2
なお、反り量δは、図2のように、強化ガラス基板21が第1の方向Y1に反っている場合は、強化ガラス基板21の両端部を結ぶ仮想線l3と、第1の圧縮応力層21aの外表面との距離の内最大の距離である。強化ガラス基板21が第2の方向Y2に反っている場合は、反り量δは、仮想線l3と第2の圧縮応力層21bの外表面との距離の内最大の距離である。反りの方向は、強化ガラス基板21の第1の方向Y1を正とする。
式1及び式2から、反り量δと長さLとの関係は、下記の式3により表すことができる。
δ=L2/8ρ…式3
このように、強化ガラス基板21の反り量δは、長さLの2乗に依存する。ここで、式3より、長さLに依存しない、反り率|δ|/L2を定義することができる。なお、図2を用いて、強化ガラス基板21の反り量について説明したが、薄膜付き強化ガラス基板においても同様に反り率|δ|/L2を定義することができる。
ここで、薄膜付き強化ガラス基板の反り率|δ|/L2は、40×10−9μm−1以下であることが好ましい。反り率|δ|/L2が40×10−9μm−1よりも大きい場合、例えば、薄膜付き強化ガラス基板1をカバーガラスとして他の部材などに貼り合わせる際に、貼り合わせが困難となることがある。より好ましくは、反り率|δ|/L2は、30×10−9μm−1以下であることが望ましい。それによって、薄膜付き強化ガラス基板1を他の部材などに貼り合わせやすい。さらに好ましくは、反り率|δ|/L2は、25×10−9μm−1以下であることが望ましい。それによって、薄膜付き強化ガラス基板1を他の部材などにより一層貼り合わせやすい。最も好ましくは、反り率|δ|/L2は、20×10−9μm−1以下であることが望ましい。それによって、薄膜付き強化ガラス基板1を他の部材などにさらにより一層貼り合わせやすい。
次に、反り率|δ|/L2と|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2との関係を説明する。
第1,第2の圧縮応力層21a,21bの表面圧縮応力値CS、圧縮応力深さDOL、強化ガラス基板の厚みT、薄膜3の膜応力σf及び薄膜3の膜厚dfから、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2及び反り率|δ|/L2を求めることができる。
第1の圧縮応力層21aの表面圧縮応力値をσ1、第2の圧縮応力層21bの表面圧縮応力値をσ2、第1の圧縮応力層21aの圧縮応力深さをD1、第2の圧縮応力層21bの圧縮応力深さをD2としたとき、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2は下記の式4により求めることができる。
|(σ1・D1−σ2・D2)−2・σf・df|/T2…式4
反り率|δ|/L2は、以下のように求めることができる。
図3は、薄膜付き強化ガラス基板1における強化ガラス基板21の厚み方向の位置と、圧縮応力値との関係を示す図である。
強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21aの外表面は、強化ガラス基板21の厚み方向(x方向)の位置0に相当する。強化ガラス基板21の第2の圧縮応力層21bの外表面は、強化ガラス基板21の厚み方向の位置Tに相当する。第1の圧縮応力層21aの外表面から、厚み方向の位置D1までの距離D1が、第1の圧縮応力層21aにおける圧縮応力深さに相当する。第2の圧縮応力層21bの外表面から、厚み方向の位置T−D2までの距離D2が、第2の圧縮応力層21bにおける圧縮応力深さに相当する。
第1の圧縮応力層21aにおける圧縮応力値はσ1であり、厚み方向の位置D1までは、厚み方向に比例して小さくなる。厚み方向の位置D1からT−D2までは、圧縮応力値は一定の値である−CTとなる。厚み方向の位置T−D2から第2の圧縮応力層21bの外表面までは、厚み方向に比例して圧縮応力値が大きくなる。第2の圧縮応力層21bにおける圧縮応力値はσ2である。これを、厚み方向の位置をx、圧縮応力値をσS(x)として、下記の式5〜式7により表すことができる。
σS(x)=−σ1x/D1+σ1 (0<x<D1)…式5
σS(x)=−CT (D1≦x≦T−D2)…式6
σS(x)=σ2x/D2−σ2(T/D2−1) (T−D2<x<T)…式7
σS(x)=−CT (D1≦x≦T−D2)…式6
σS(x)=σ2x/D2−σ2(T/D2−1) (T−D2<x<T)…式7
ここで、薄膜付き強化ガラス基板1における強化ガラス基板21の厚み方向全体としては、圧縮応力が釣り合っている。この力の釣り合いを考慮すると、圧縮応力値σS(x)の厚み方向全体の積分値は、∫0 TdxσS(x)=0となる。この式を、式5〜式7を用いて展開すると、下記の式8を得ることができる。
−CT=−((D1σ1/2)+(D2σ2/2))/(T−D1−D2)…式8
他方、それぞれの厚み方向の位置xにおける、圧縮応力による力のモーメントは、xσS(x)の式で表すことができる。圧縮応力による力のモーメントは、厚み方向全体において釣り合っていない。そのため、強化ガラス基板21が反る。それによって、曲げ応力σB(x)が発生する。上述したように、この強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21aには、薄膜3が形成されている。よって、薄膜付き強化ガラス基板1には、薄膜3の膜応力σf(x)も発生している。
図4は、薄膜付き強化ガラス基板1における強化ガラス基板21の厚み方向の位置と、曲げ応力及び薄膜3の膜応力との関係を示す図である。なお、薄膜3は強化ガラス基板21の第1の圧縮応力層21a上に成膜されているため、薄膜3が形成されている位置は負の値となる。
膜応力σf(x)は、−df<x<0において、一定の値σfとなる。曲げ応力σB(x)は、0<x<Tにおいて、厚み方向の位置に依存する一次式により表すことができる。
曲げ応力σB(x)及び膜応力σf(x)の力のモーメントは、xσB(x)及びxσf(x)の式で表すことができる。薄膜付き強化ガラス基板1の厚み方向全体における力のモーメントは釣り合う。すなわち、圧縮応力、曲げ応力及び膜応力による力のモーメントの厚み方向全体の積分値は0となる。これを、下記の式9により表すことができる。
∫0 Tdx・x[σS(x)+σB(x)+σf(x)]=0…式9
さらに、図3及び図4に示す圧縮応力、曲げ応力及び膜応力は、厚み方向全体において釣り合っている。この関係を、下記の式10により表すことができる。
∫0 Tdx[σS(x)+σB(x)+σf(x)]=0…式10
上述したように、∫0 TdxσS(x)=0なので、式10より∫0 Tdx[σB(x)+σf(x)]=0となる。ここで、薄膜3の膜応力σf(x)は、薄膜3が形成されている部分において一定値σfである。また、強化ガラス基板21のヤング率をE’とし、曲率半径をρとすると、曲げ応力は、E’/ρを係数とする一次式で表すことができる。なお、E’は、ヤング率Eをポアソン比νにより補正したヤング率である。より具体的には、E’=E/(1−ν)の式で表すことができる。
次に、式9に式8、σf(x)及びσB(x)を代入することにより得た式に、E、ν、σ1、σ2、σf、D1、D2、df及びTの値を代入することにより、ρを求めることができる。
求めた曲率半径ρ及び式3から、反り率|δ|/L2を求めることができる。
ここで、下記の表1に示すそれぞれのパラメータを異ならせて、上述のように各|(σ1・D1−σ2・D2)−2・σf・df|/T2及び各|δ|/L2を求めた。なお、ヤング率Eを70GPaとし、ポアソン比νを0.2とした。
表1に示されているAでは、薄膜3の膜厚を異ならせた。第1,第2の圧縮応力層21a,21bの表面圧縮応力値及び圧縮応力深さ並びに強化ガラス基板21の厚みは、表1に示すように一定値とした。Bでは、第1の圧縮応力層21aの表面圧縮応力値を異ならせた。第2の圧縮応力層21bの表面圧縮応力値及び第1,第2の圧縮応力層21a,21bの圧縮応力深さ並びに強化ガラス基板21の厚みは、表1に示すように一定値とした。Cでは、第2の圧縮応力層21bの圧縮応力深さを異ならせた。第1,第2の圧縮応力層21a,21bの表面圧縮応力値及び第1の圧縮応力層21aの圧縮応力深さ並びに強化ガラス基板21の厚みは、表1に示すように一定値とした。
図5は、反り率|δ|/L2と|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2との関係を示す図である。なお、実線は表1におけるAの結果を示す。破線はBの結果を示す。一点鎖線はCの結果を示す。
図5に示されているように、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が大きくなるほど、反り率|δ|/L2が大きくなっている。上述したように、反り率|δ|/L2は、40×10−9μm−1以下であることが好ましい。|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2を9×109Pa/m以下とすることにより、反り率|δ|/L2を40×10−9μm−1以下とすることができる。なお、反り量δが負の値の場合においても、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2を9×109Pa/m以下とすることにより、反り率|δ|/L2を40×10−9μm−1以下とすることができる。
本実施形態では、薄膜付き強化ガラス基板1の|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/m以下となるように、強化ガラス基板21を反らせ、薄膜3を形成する。それによって、薄膜付き強化ガラス基板1の反りを効果的に小さくすることができる。
ここで、薄膜3の膜応力σfと膜厚dfとの積σf・dfは、300Pa・m以上、30000Pa・m以下であることが好ましい。σf・dfが300Pa・m以上の場合、膜厚は充分に厚く、かつ膜応力は充分に大きい。よって、耐傷性を効果的に高めることができる。他方、σf・σdが30000Pa・mよりも大きい場合、薄膜3が剥離し易い。なお、上述したように、本実施形態の膜応力は、圧縮応力である。
このとき、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2を小さくするためには、Δ(CS×DOL)が600Pa・m以上、60000Pa・m以下であることが好ましい。この場合には、薄膜付き強化ガラス基板1の耐傷性が高く、かつ反りが小さい。
<イオン交換抑制膜2の膜厚と強化ガラス基板21の表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLとの関係及び薄膜3の膜応力>
|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/m以下となるように、強化ガラス基板21を反らせ、薄膜3を形成するためには、イオン交換抑制膜2の膜厚の目標値と、薄膜3の膜厚の目標値とを設定する必要がある。このためには、イオン交換抑制膜2の膜厚とその膜厚でイオン交換して得られる強化ガラス基板21の表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLとの関係を知ることが必要となる。また、薄膜3の膜応力を求めることが必要となる。
|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/m以下となるように、強化ガラス基板21を反らせ、薄膜3を形成するためには、イオン交換抑制膜2の膜厚の目標値と、薄膜3の膜厚の目標値とを設定する必要がある。このためには、イオン交換抑制膜2の膜厚とその膜厚でイオン交換して得られる強化ガラス基板21の表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLとの関係を知ることが必要となる。また、薄膜3の膜応力を求めることが必要となる。
イオン交換抑制膜2の膜厚とその膜厚でイオン交換して得られる強化ガラス基板21の表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLとの関係を以下のように求めた。
ガラス基板(厚み0.55mm、長辺の長さ130mm、短辺の長さ65mm)の両主面の上に、それぞれイオン交換抑制膜を、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、及び100nmと膜厚を異ならせて形成した。ここで、ガラス基板としては、主面が矩形形状を有するものを用いた。ガラス基板の長辺に沿った方向を長さ方向とする。イオン交換抑制膜を形成したガラス基板を、第1の実施形態と同様に、430℃の硝酸カリウム溶融塩に5時間浸漬することにより、イオン交換法で化学強化して複数の強化ガラス基板を作製した。また、イオン交換抑制膜を形成していないガラス基板、すなわち膜厚が0nmであるガラス基板についても、上記と同様にイオン交換法で化学強化し、強化ガラス基板を作製した。
なお、イオン交換抑制膜には、酸化珪素を用いた。
次に、各強化ガラス基板の表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLを、表面応力計(折原製作所社製FSM‐6000)により測定した。表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLの測定方法としては、他にも、EPMA(Electron probe micro analyzer)やGDOES(Glow discharge optical emission spectrometry)などを用いることができる。
図6は、イオン交換抑制膜の膜厚と、表面圧縮応力値CS及び圧縮応力深さDOLとの関係を示す図である。
図6の結果にフィッティングすることにより、イオン交換抑制膜の膜厚と表面圧縮応力値CSとの関係式である下記の式11を求めた。同様に、イオン交換抑制膜の膜厚と圧縮応力深さDOLとの関係式である下記の式12を求めた。式11において、イオン交換抑制膜の膜厚をxとし、yを表面圧縮応力値CSとする。式12において、イオン交換抑制膜の膜厚をxとし、yを圧縮応力深さDOLとする。
y=0.0086x2−0.2255x+791.84…式11
y=−0.0018x2−0.0137x+52.947…式12
y=−0.0018x2−0.0137x+52.947…式12
次に、薄膜の膜応力を求めた。
ガラス基板の一方主面に膜厚500nmの薄膜を形成した。なお、薄膜は、窒化珪素からなる。成膜に際しては、RAS(Radical Assisted Sputtering)法を用いた。Siの成膜条件は、成膜圧力0.12Pa、Ar100sccm、電力5kwとした。窒化に際しては、ラジカルガンを用い、N240sccm、電力4.5kwとした。それによって、ガラス基板に膜応力を付加することにより、ガラス基板を反らせた。
次に、ガラス基板の反りを測定した。ガラス基板の長さ方向に沿って、レーザ式変位センサを走査させることにより、反りを測定した。レーザ式変位センサを走査させた線上におけるガラス基板の一方端部と他方端部とを結んだ線と、各測定点との距離の内で最大の距離を反りとした。測定したガラス基板の反りから、薄膜の膜応力を求めた。薄膜の膜応力は、1670MPaの圧縮応力であった。
式11、式12並びに薄膜の膜応力及び膜厚の値を用いて、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/m以下となるように、イオン交換抑制膜の膜厚及び薄膜の膜厚を設定することができる。
<実施例1及び2並びに比較例>
|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/m以下である実施例1及び2の薄膜付き強化ガラス基板を以下のようにして作製した。他方、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/mより大きい比較例の薄膜付き強化ガラス基板を、イオン交換抑制膜を形成せずに、以下のようにして作製した。ガラス基板としては、厚み0.55mm、長辺の長さ130mm、短辺の長さ65mmの基板を用いた。実施例1及び2のイオン交換抑制膜は酸化珪素からなる。実施例1及び2並びに比較例の薄膜は窒化珪素からなる。薄膜の膜応力は、膜厚に依存しないものと想定して、上述のように求めた1670MPaとした。
|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/m以下である実施例1及び2の薄膜付き強化ガラス基板を以下のようにして作製した。他方、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/mより大きい比較例の薄膜付き強化ガラス基板を、イオン交換抑制膜を形成せずに、以下のようにして作製した。ガラス基板としては、厚み0.55mm、長辺の長さ130mm、短辺の長さ65mmの基板を用いた。実施例1及び2のイオン交換抑制膜は酸化珪素からなる。実施例1及び2並びに比較例の薄膜は窒化珪素からなる。薄膜の膜応力は、膜厚に依存しないものと想定して、上述のように求めた1670MPaとした。
(実施例1)
薄膜の膜厚を1000nmに設定し、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2の値を、1.4×109Pa/mとして、イオン交換抑制膜の膜厚を算出したところ、45nmとなった。
薄膜の膜厚を1000nmに設定し、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2の値を、1.4×109Pa/mとして、イオン交換抑制膜の膜厚を算出したところ、45nmとなった。
イオン交換抑制膜(膜厚45nm)をガラス基板の第1の主面上に成膜し、上記と同様にして、430℃の硝酸カリウム溶融塩に5時間浸漬することにより、イオン交換法で化学強化して強化ガラス基板を作製した。得られた強化ガラス基板に形成されているイオン交換抑制膜上に、薄膜(膜厚1000nm)を形成した。
得られた薄膜付き強化ガラス基板の長さ方向に沿って、レーザ式変位センサを走査させることにより、反り量δを測定した。薄膜付き強化ガラス基板の長さ方向は、本実施例のように、薄膜付き強化ガラス基板の平面形状が長方形である場合には長辺方向とした。なお、薄膜付き強化ガラス基板の平面形状が長方形ではない場合には、第1の圧縮応力層に沿った最長の寸法に沿った方向を指す。そして、その場合、最長の寸法直線上にレーザ式変位センサを走査させることにより、反り量δを測定する。レーザ式変位センサを走査させた線上における基板の一方端部と他方端部とを結んだ線と、各測定点との距離の内で最大の距離を反り量δとした。
反り量δの測定結果を表2に示す。また、表2には、第1,第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値及び圧縮応力深さ、並びに反り率|δ|/L2、Δ(CS×DOL)、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2を併せて示す。
(実施例2)
薄膜の膜厚を1500nmに設定し、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2の値を、1.1×109Pa/mとして、イオン交換抑制膜の膜厚を算出したところ、59nmとなった。
薄膜の膜厚を1500nmに設定し、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2の値を、1.1×109Pa/mとして、イオン交換抑制膜の膜厚を算出したところ、59nmとなった。
イオン交換抑制膜(膜厚59nm)をガラス基板の第1の主面上に形成し、上記と同様にして、イオン交換法で化学強化して強化ガラス基板を作製した。得られた強化ガラス基板に成膜されているイオン交換抑制膜上に、薄膜(膜厚1500nm)を形成した。
上記と同様にして、得られた薄膜付き強化ガラス基板の反り量δを測定した。反り量δの測定結果を表2に示す。また、表2には、第1,第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値及び圧縮応力深さ、並びに反り率|δ|/L2、Δ(CS×DOL)、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2を併せて示す。
(比較例)
イオン交換抑制膜をガラス基板上に形成せずに、上記と同様にして、430℃の硝酸カリウム溶融塩に5時間浸漬することにより、イオン交換法で化学強化して強化ガラス基板を作製した。得られた強化ガラス基板の第1の圧縮応力層上に、薄膜(膜厚1000nm)を形成した。
イオン交換抑制膜をガラス基板上に形成せずに、上記と同様にして、430℃の硝酸カリウム溶融塩に5時間浸漬することにより、イオン交換法で化学強化して強化ガラス基板を作製した。得られた強化ガラス基板の第1の圧縮応力層上に、薄膜(膜厚1000nm)を形成した。
上記と同様にして、得られた薄膜付き強化ガラス基板の反り量δを測定した。反り量δの測定結果を表2に示す。また、表2には、第1,第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値及び圧縮応力深さ、並びに反り率|δ|/L2、Δ(CS×DOL)、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2を併せて示す。
下記の表2に、実施例1及び実施例2並びに比較例の結果を示す。
表2に示されているように、比較例では、反り率|δ|/L2は、47.4×10−9μm−1となっており、40×10−9μm−1も大きい。
これに対して、実施例1では、反り率|δ|/L2は2.9×10−9μm−1であり、20×10−9μm−1よりも小さくすることができている。実施例2においても、反り率|δ|/L2は0.7×10−9μm−1であり、充分に小さい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、ガラス基板の第1,第2の主面上にはイオン交換抑制膜を成膜せずに、ガラス基板の化学強化を行う。よって、強化工程においては、強化ガラス基板の反りは生じ難い。なお、ガラス基板を用意する工程及び強化工程は、第1の実施形態と同様の方法により行うことができる。
第2の実施形態では、ガラス基板の第1,第2の主面上にはイオン交換抑制膜を成膜せずに、ガラス基板の化学強化を行う。よって、強化工程においては、強化ガラス基板の反りは生じ難い。なお、ガラス基板を用意する工程及び強化工程は、第1の実施形態と同様の方法により行うことができる。
強化工程の後に、強化ガラス基板の第1の圧縮応力層の少なくとも一部を、例えば、エッチングや研磨などにより除去する。それによって、第1の圧縮応力層と第2の圧縮応力層との、表面圧縮応力値及び圧縮応力深さの内の少なくとも一方を異ならせることができる。これにより、強化ガラス基板を反らせる。本実施形態では、強化ガラス基板は、第1の実施形態と同様に、第1の方向に反らせる。なお、第1の圧縮応力層及び第2の圧縮応力層の少なくとも一部を除去してもよい。
次に、強化ガラス基板の第1の圧縮応力層上に薄膜を形成する。
薄膜付き強化ガラス基板の|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2が9×109Pa/m以下となるように、圧縮応力層の除去を行う深さ及び薄膜の膜厚を設定して、上記の強化ガラス基板を反らせる工程及び成膜工程を行う。それによって、第1の実施形態と同様に、反り率|δ|/L2を40×10−9μm−1以下とする。これにより、反りが小さい、薄膜付き強化ガラス基板を得ることができる。
圧縮応力層を除去する深さは、上記の式5、式6または式7を用いて設定することができる。
なお、強化工程の前に、第1,第2の主面上に膜厚を異ならせて第1,第2のイオン交換抑制膜を形成してもよい。あるいは、第1,第2の主面の内の一方にイオン交換抑制膜を形成してもよい。この場合には、強化ガラス基板を反らせる工程の一部を強化工程が含む。強化工程後において、第1の圧縮応力層及び第2の圧縮応力層の内の少なくとも一方の少なくとも一部を除去することにより、Δ(CS×DOL)を調整することができる。あるいは、第1,第2の主面に同じ膜厚のイオン交換抑制膜を形成して、ガラス基板を化学強化した後に、上記除去を行ってもよい。この場合においても、強化ガラス基板を反らせることができる。
この強化ガラス基板の第1及び第2の圧縮応力層の内の少なくとも一方に薄膜を形成し、|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2を9×109Pa/m以下とすればよい。
1…薄膜付き強化ガラス基板
2…イオン交換抑制膜
3…薄膜
11…ガラス基板
11a,11b…第1,第2の主面
21…強化ガラス基板
21a,21b…第1,第2の圧縮応力層
2…イオン交換抑制膜
3…薄膜
11…ガラス基板
11a,11b…第1,第2の主面
21…強化ガラス基板
21a,21b…第1,第2の圧縮応力層
Claims (12)
- 対向し合う第1,第2の主面を有するガラス基板をイオン交換法で化学強化することにより、前記第1,第2の主面に対して、それぞれ第1,第2の圧縮応力層を形成し、強化ガラス基板を作製する強化工程と、
薄膜を、前記強化ガラス基板の前記第1の圧縮応力層及び前記第2の圧縮応力層の内の少なくとも一方の上に形成し、薄膜付き強化ガラス基板を作製する成膜工程と、を備え、
前記強化工程において、前記第1の圧縮応力層及び前記第2の圧縮応力層の、表面圧縮応力値(CS)及び圧縮応力深さ(DOL)の内の少なくとも一方を異ならせることにより、前記強化ガラス基板の前記第1の圧縮応力層の外表面に対し垂直な第1の方向に凸または凹となるように反りを形成し、
前記成膜工程において、前記強化ガラス基板の前記反りを低減させるように前記薄膜を形成する、薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。 - 前記成膜工程において、前記薄膜形成後の前記薄膜付き強化ガラス基板の反り量をδとし、長さをLとしたときの、反り率|δ|/L2が、40×10−9μm−1以下となるまで前記第1の方向への反りを低減させる、請求項1に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 前記ガラス基板の厚みが0.1mm以上である、請求項1または2に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 前記強化工程において、前記第1の圧縮応力層と前記第2の圧縮応力層との表面圧縮応力値(CS)及び圧縮応力深さ(DOL)の内の少なくとも一方を異ならせるように化学強化することにより、前記強化ガラス基板を作製する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 前記成膜工程において、前記強化ガラス基板の前記第1の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、前記第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積との差をΔ(CS×DOL)、前記強化ガラス基板の厚みをT、前記薄膜の膜応力をσf、前記薄膜の膜厚をdfとしたときに定義される量|Δ(CS×DOL)−2・σf・df|/T2を、9×109Pa/m以下となるように前記薄膜を形成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 前記強化工程において、前記ガラス基板を化学強化する前に、前記ガラス基板の前記第1の主面及び前記第2の主面の内の少なくとも一方にイオン交換抑制膜を形成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 前記第1の主面及び前記第2の主面の内の一方の上にのみ前記イオン交換抑制膜を形成する、請求項6に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 前記第1の主面に前記イオン交換抑制膜を形成し、前記第1の主面に形成された前記イオン交換抑制膜とは膜厚または膜組成が異なるイオン交換抑制膜を前記第2の主面に形成する、請求項6に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 前記強化工程において、前記ガラス基板を前記第1,第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)及び圧縮応力深さ(DOL)が同じとなるように化学強化した後、前記第1の圧縮応力層または前記第2の圧縮応力層の少なくとも一部を除去する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 前記強化ガラス基板の前記第1の圧縮応力層の表面圧縮応力値(CS)と圧縮応力深さ(DOL)との積と、前記第2の圧縮応力層の表面圧縮応力値と圧縮応力深さとの積の差Δ(CS×DOL)が、600Pa・m以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 前記薄膜が、傷防止膜である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜付き強化ガラス基板の製造方法。
- 対向し合う第1,第2の圧縮応力層を有する強化ガラス基板と、
前記第1の圧縮応力層及び前記第2の圧縮応力層の内の少なくとも一方の上に設けられた薄膜とを備え、
前記第1の圧縮応力層と前記第2の圧縮応力層において表面圧縮応力値(CS)及び圧縮応力深さ(DOL)の内の少なくとも一方が異なっており、
前記強化ガラス基板の反り量をδとし、長さをLとしたときの、反り率|δ|/L2が、40×10−9μm−1以下である、薄膜付き強化ガラス基板。
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