JPWO2017013822A1 - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

鉛蓄電池は、正極格子と正極活物質とからなる正極板と、負極格子と負極活物質とからなる負極板と、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した極板群と、極板群と電解液とを収納するためのセル室を複数個有する電槽と、電槽の開口部を封口する蓋とからなる。そして、正極活物質は、0.03μm以上0.1μm以下の領域Aと0.2μm以上1.0μm以下の領域Bとに、それぞれ細孔分布の極大値を有し、かつ領域Aの極大値AMと領域Bの極大値BMとの比AM/BMが0.34以上0.70以下であり、負極格子は1ppm以上300ppm以下のビスマスを含む。

Description

本発明は、自動車始動用の鉛蓄電池に関する。
自動車始動用に用いられる鉛蓄電池のうち、アイドリングストップ制御を行う自動車に用いられる鉛蓄電池は、相対的に深いSOC(State Of Charge)領域まで放電されるため、深放電の繰返しに対する耐久性が求められる。
特許文献1および2には、比較的深い放電を含むサイクル寿命試験の結果などに基づいて、正極活物質の細孔構造を適正化する技術が開示されており、上述したアイドリングストップ制御を行う自動車用の鉛蓄電池に適用することへの可能性を想起させる。
特開平10−69900号公報 特開平11−73950号公報
近年、アイドリングストップ制御を行う自動車が普及するにつれて、深い放電を行うこと以外にも、他の種々の条件も含めて、鉛蓄電池にとって厳しい条件の下で使用される場合があることが判ってきた。そうすると、特許文献1や2の技術を用いても、実際に車載されて充放電を繰り返した場合、十分なサイクル寿命特性が発揮されない場合が散見されるようになった。
本開示はかかる課題に鑑みなされたもので、比較的厳しいアイドリングストップ制御の条件下で使用されても、十分なサイクル寿命特性が発揮できる、信頼性の高い鉛蓄電池を供給することを目的とする。
本開示に係る鉛蓄電池は、正極格子と正極活物質とからなる正極板と、負極格子と負極活物質とからなる負極板と、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した極板群と、極板群と電解液とを収納するためのセル室を複数個有する電槽と、電槽の開口部を封口する蓋とからなる。正極活物質は、0.03μm以上0.1μm以下の領域Aと0.2μm以上1.0μm以下の領域Bとに、それぞれ細孔直径分布の極大値を有し、かつ領域Aの極大値AMと領域Bの極大値BMとの比AM/BMが0.34以上0.70以下であり、負極格子は1ppm以上300ppm以下のビスマスを含む。
ある好適な実施形態において、少なくとも正極板表面には、ガラスまたはポリエステルなどの不織布からなるリテーナマットが付与された状態である。
本開示によれば、比較的厳しいアイドリングストップ制御の条件下で使用されても、十分なサイクル寿命特性が発揮できる、信頼性の高い鉛蓄電池を供給できるようになる。
本発明の一実施形態の鉛蓄電池を模式的に示した概観図 本発明の一実施形態の鉛蓄電池の要部の一例を示した図 本発明の一実施形態の正極活物質の細孔分布の一例を示す図
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態の鉛蓄電池を模式的に示した概観図であり、図2は本発明の一実施形態の鉛蓄電池の要部である負極板の一例を示した図である。
正極板1と負極板2とをセパレータ3を介して積層した複数の極板群4は、電解液(図示せず)とともにセル室5aを複数個有する電槽5に収納され、電槽5の開口部は、蓋6によって封口される。なお正極板1は正極格子1aと正極活物質1bとからなり、負極板2は負極格子2aと負極活物質2bとからなる。
本発明の一実施形態の特徴は2つある。第1に、正極活物質1bは、0.03μm以上0.1μm以下の領域Aと、0.2μm以上1.0μm以下の領域Bとに、それぞれ細孔分布の極大値を有し、かつ領域Aの極大値AMと領域Bの極大値BMとの比AM/BMが、0.34以上0.70以下であることを特徴とする。
図3は、本発明の一実施形態の第1の特徴である正極活物質の細孔分布の一例を示す図である。第2に、負極格子2aが1ppm以上300ppm以下のビスマスを含むことを特徴とする。
アイドリングストップ制御における課題として、開発初期には、アイドリングストップ時は鉛蓄電池のみから負荷(温調機器やライト)に放電することから、深い放電が最大の課題であると考えられていた。
この深い放電のみが課題であるならば、特許文献1および2に記載された技術を用いることで解決する可能性がある。しかしながら、最近では、アイドリングストップ制御を行う自動車のうち相当数が、ブレーキなどの際に回生電流を発生させて鉛蓄電池を充電する制御を行うようになってきた。回生電流を用いて効率よく充電しようとすると、鉛蓄電池のSOCを相対的に低く(満充電にならないように)することが望ましくなる。加えてアイドリングストップ用の鉛蓄電池は、瞬時に数十C相当の大電流を取り出す放電の回数が、従来の始動用鉛蓄電池と比べても増すことになる。そうすると、特許文献1や2のように、定電流での放電容量の推移を指標としたサイクル寿命に着目して適正化された鉛蓄電池の構成条件では、満足なパフォーマンスが発揮できなくなる。
具体的には、SOCが100%に満たない環境下で、頻繁に大電流放電を行うような充放電を繰り返すうちに、上層部の電解液の硫酸イオン濃度が下層部の電解液の硫酸イオン濃度よりも低くなる、いわゆる成層化といわれる現象が発生する。そうすると、硫酸イオン濃度が相対的に枯渇している上層部は放電生成物である硫酸鉛を生成しにくくなる(放電が困難になる)。
一方、硫酸イオン濃度が相対的に過剰な下層部は硫酸鉛から硫酸イオンを乖離しにくくなる(充電が困難になる)というアンバランスが生じ、下層部の過剰な硫酸鉛が析出することで放電反応が全体的に鈍化して、結果的にサイクル寿命特性が低下する。この成層化は、充電末期に起こる電解液の加水分解(ガス発生)の際に発生したガスが電解液を撹拌することによって解消される。しかし、意図的にSOCが100%未満となるように制御された環境下では、充電末期を迎えることができないため、上述した効果が見込めない。
そこで本発明の一実施形態では、この課題を解決すべく、上述した2つの特徴を採用している。第1の特徴は、正極活物質1bにおいて、0.03μm以上0.1μm以下の領域Aと、0.2μm以上1.0μm以下の領域Bとに、それぞれ細孔分布の極大値を持たせつつ、領域Aの極大値AMと領域Bの極大値BMとの比AM/BMを、0.34以上0.70以下とすることである。
特許文献1の実施例では、金属鉛や一酸化鉛を分級して、極大値を領域Bから1.0μm以上5.0μm以下の領域にシフトしているが、分級を行わない通常の正極活物質1bなら、領域Bに極大値BMを有する。さらに、正極活物質1bの前駆体であるペーストに鉛丹を加えれば、領域Aにも極大値AMを持たせられるようになる。
詳細な理由は不明だが、この極大値AMは、正極板1の容量を大きくする作用がある。但し、鉛丹を加えていない特許文献1の比較例1(比AM/BM=0.31)と同様程度に比AM/BMが小さいと容量は大きくならない。発明者らが鋭意検討した結果、比AM/BMが0.34未満になると、容量が極端に低下することがわかった。
一方、上述のようなSOCが相対的に低い(満充電にならない)制御での充電を繰り返すと、硫酸鉛の蓄積により、正極板1の容量が大きいことで、かえってサイクル寿命特性が低下する。
発明者らが鋭意検討した結果、比AM/BMが0.70を超えると、上述した理由によるサイクル寿命特性の低下が顕著化することがわかった。
よって、この比AM/BMは、0.34以上0,70以下にする必要がある。具体的には、ペーストに加える鉛丹の添加量を減らせばAMは小さくなり、鉛丹の添加量を増やせばAMは大きくなるので、ペースト作製時に鉛丹の添加量を調整することで、比AM/BMを適正化できる。
第2の特徴は、負極格子2aに1ppm以上300ppm以下のビスマスを含ませることである。負極格子2aに適量のビスマスが存在することで水素過電圧が低下し、SOCが100%に満たなくても水素ガスが発生しやすくなって、電解液の拡散が起こりやすくなり、結果的に成層化が解消されるようになる。
この効果を得るためには負極格子2aにビスマスを1ppm以上含ませる必要があるが、300ppmを超えて含ませると、水素過電圧が下がり過ぎて電解液の加水分解が過剰に発生し、電解液が急激に減少することで電解液から露出した正極板1および負極板2の集電部(耳)の腐食が加速され、かえってサイクル寿命特性が低下する。
上述した2つの構成を併せ持つ本発明の一実施形態の構成によって、SOCが100%に満たない環境下で充放電を繰り返しても、高い容量を保ちつつ、十分な寿命特性を発揮する鉛蓄電池を提供することができるようになる。
本発明の一実施形態の効果は、正極板1の表面にリテーナマットを付与することで、さらに高まる。その理由は、比AM/BMを相対的に大きな範囲にシフトさせたことで、正極活物質1bが軟化して正極板1から脱落し、容量が低下する(サイクル寿命特性が悪化する)という課題に対し、リテーナマットの物理的な保持力によって、正極活物質1bの脱落を抑止するからである。
以下、本発明の一実施形態の効果について、実施例を用いて説明する。
(1)鉛蓄電池の作製
本実施例で作製した鉛蓄電池は、JISD5301に規定するD26Lタイプの大きさの鉛蓄電池である。各セル室5aには、8枚の正極板1と9枚の負極板2とが収容され、正極板1は、電池C−1を除き、リテーナマットが表面に付与された状態であり、リテーナマットと正極板1とが当接している。
正極板1は、酸化鉛粉を硫酸と精製水とで混練して作製した正極活物質1bの前駆体であるペーストを、カルシウムを含む鉛合金シート(厚さ1.1mm)からなる正極格子1a(エキスパンド格子)に充填して作製した。
負極板2は、酸化鉛粉に対し、カーボンと有機添加剤を添加して、硫酸と精製水とで混練して作製した負極活物質2bの前駆体であるペーストを、カルシウム及び条件によってビスマスを含む鉛合金シート(厚さ1.1mm)からなる負極格子2a(エキスパンド格子)に充填して作製した。
ここで、負極格子2aに含ませるビスマスの質量比は、表1の値となるように適宜変化させた。
作製した正極板1及び負極板2を熟成乾燥した後、負極板2をポリエチレンの袋状のセパレータ3に収容し、正極板1と交互に重ね、8枚の正極板1と9枚の負極板2とがセパレータ3を介して積層された極板群4を作製した。この極板群4を、6つに仕切られたセル室5aにそれぞれ収容し、6つのセルを直接接続した。さらに、希硫酸からなる電解液を入れて化成を行い、鉛蓄電池を得た。
(2)サイクル寿命特性
作製した鉛蓄電池に対し、SOCを90%にしてから、次の手順で評価した。
A.45Aで59秒間放電する。
B.300Aで1秒間放電する。
C.制限電流100A条件下で60秒間14.0V定電圧充電する。
D.A、B、Cの順に行う充放電サイクルを3600回繰り返した後、リフレッシュ充電として20分間14.0V定電圧充電する。
上述したA〜Dの手順を繰り返す中で、300Aで1秒間放電した際の電圧が7.2V以下となった時点で、寿命に到達したものとして評価を中止した。評価を中止したサイクル数を計測し、電池C−1のサイクル数を100として、各々の電池のサイクル数の比率(%)をサイクル寿命特性として、構成条件と共に表1に記す。
(3)電池容量
満充電状態の電池を、5時間率電流で端子電圧が10.5Vに到達するまで放電し、そのときの放電電気量を計測し、電池C−1の放電電気量を100として、各々の電池の放電電気量の比率(%)を電池容量として、構成条件と共に表1に記す。
電池A−1からA−7を対比する。比AM/BMが0.34未満の電池A−1は、容量が極端に小さくなっている。正極板1の容量を大きくする領域Aの極大値AMが相対的に小さくなっていることが理由だが、この比が0.34の箇所に変曲点を有する理由は不明である。
一方、この比が0.70を超過した電池A−7は、サイクル寿命特性が低下している。電池A−7を分解したところ、正極活物質1bが軟化していることが確認できた。よって、比AM/BMの適正な範囲は、0.34以上0.70以下であることがわかる。
電池B−1からB−8を対比する。負極格子2a中のビスマス量が1ppm未満の電池B−1と300ppmを超過した電池B−8は、共にサイクル寿命特性が低下している。各々の電池を分解したところ、電池B−1は電解液の成層化が顕著化しており、電池B−9は電解液が極端に減少していることが、それぞれ確認できた。よって、負極格子2aに含ませるビスマスの適正な範囲は1ppm以上300ppm以下であることがわかる。
電池A−1からA−7の評価結果と、電池B−1からB−9の評価結果を併せて考察すると、比AM/BM、負極格子2aに含ませるビスマス量の双方を適正な範囲にすべきことがわかる。
電池C−1と電池A−4とを対比する。電池C−1は、電池A−4に対して正極板1の表面へのリテーナマットの付与を無くしたこと以外は、電池A−4と同じ構成であるにもかかわらず、サイクル寿命特性は低下している。この理由は、リテーナマットが物理的な保持力によって、正極活物質1bの脱落を抑止しているのだが、電池C−1ではリテーナマットが存在しないため、この効果が発揮されなかったからである。実際に電池C−1を分解したところ、正極活物質1bが僅かながら軟化して脱落していることが確認できた。よって、正極板1の表面にリテーナマットを付与することが好ましい。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、正極格子1aにも負極格子2aと同様、1ppm以上300ppm以下のビスマスを含ませても良いことは、言うまでもない。
本発明は、アイドリングストップ制御を行う自動車に用いられる鉛蓄電池において有用である。
1 正極板
1a 正極格子
1b 正極活物質
2 負極板
2a 負極格子
2b 負極活物質
3 セパレータ
4 極板群
5 電槽
5a セル室
6 蓋
よって、この比AM/BMは、0.34以上0.70以下にする必要がある。具体的には、ペーストに加える鉛丹の添加量を減らせばAMは小さくなり、鉛丹の添加量を増やせばAMは大きくなるので、ペースト作製時に鉛丹の添加量を調整することで、比AM/BMを適正化できる。
電池B−1からB−8を対比する。負極格子2a中のビスマス量が1ppm未満の電池B−1と300ppmを超過した電池B−8は、共にサイクル寿命特性が低下している。各々の電池を分解したところ、電池B−1は電解液の成層化が顕著化しており、電池B−8は電解液が極端に減少していることが、それぞれ確認できた。よって、負極格子2aに含ませるビスマスの適正な範囲は1ppm以上300ppm以下であることがわかる。
電池A−1からA−7の評価結果と、電池B−1からB−8の評価結果を併せて考察すると、比AM/BM、負極格子2aに含ませるビスマス量の双方を適正な範囲にすべきことがわかる。

Claims (2)

  1. 正極格子と正極活物質とからなる正極板と、
    負極格子と負極活物質とからなる負極板と、
    前記正極板と前記負極板とをセパレータを介して積層した極板群と、
    前記極板群と電解液とを収納するためのセル室を複数個有する電槽と、
    前記電槽の開口部を封口する蓋と、からなり、
    前記正極活物質は、0.03μm以上0.1μm以下の領域Aと0.2μm以上1.0μm以下の領域Bとに、それぞれ細孔直径分布の極大値を有し、かつ領域Aの極大値AMと領域Bの極大値BMとの比AM/BMが0.34以上0.70以下であり、
    前記負極格子は1ppm以上300ppm以下のビスマスを含む、鉛蓄電池。
  2. 少なくとも前記正極板の表面にリテーナマットを付与した状態である、請求項1に記載の鉛蓄電池。
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