JPWO2016199930A1 - 水素含有液状水性組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
従来技術をはるかにしのぐ溶存水素濃度の持続性を有した新規な水素含有液状水性組成物の製造方法を提供する。液体処理ノズル1として、一端に液体入口4を、他端に液体出口5を有する液体流路7が形成されたノズル本体2と、液体流路7の内面から突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部8を有する処理コア部COREとを備えたものを使用する。得るべき水素含有液状水性組成物の含有組成から水素を除いた組成物を本体組成物として、該本体組成物と水素ガスとの混相流を液体処理ノズル1の衝突部8に供給し、水素ガスを微細気泡に粉砕しつつ液体出口5から流出させることにより水素含有液状水性組成物を得る。
Description
この発明は水素含有液状水性組成物の製造方法に関するものである。
近年、水に水素ガスを溶解させて水素水を製造することが行われている。このようにして得られる水素水は、溶存水素濃度が十分に高ければ−100mV以下という非常に低い酸化還元電位を示し、還元性の水としてその活用方法が種々注目されている。しかしながら、水素は常温大気圧下での水への重量溶解度が1.6ppm、体積溶解度は0.01750ml/mlであり、窒素などとともに水への溶解度が全ガス中最も低いものの部類に属する。また、比重が小さいため大気中に放置したときの蒸散速度が大きく、一般的なガスミキシング等だけでは溶存水素を高濃度化することが非常に難しい。この問題を解決するために、ガスミキシングと加圧溶解とを組み合わせて高濃度水素水を得る方法が種々提案されている(特許文献1、2)。しかし、この方法によると、溶存水素濃度はある程度高められるものの、得られた水素水を大気中に開放放置したときの溶存水素濃度の低下が)著しく、寿命が十分でない問題がある。
そこで、ポンプ内で水素ガスと水とを加圧しつつ混合し、その加圧された気液混合物を減圧撹拌部に導き、溶存水素とともに水素コロイド(微細気泡)を含んだ水を得る方法が提案されている(特許文献3)。また、同様にポンプ内で水素と水とを加圧撹拌し、その後、制御された速度で減圧することにより多量のナノバブルを含んだ水を得る方法も提案されている(特許文献4、5)。特許文献4及び特許文献5によると、ポンプを用いて水素ガスと水とを0.6MPaに加圧撹拌したのち、1MPa/秒の速度にて減圧することにより(例えば、特許文献4の段落0068)、1L中の全水素量が0.5Lを超えるレベルまで微細気泡を含有でき、ガラスビンに密封して400時間経過後も気体存在量比が一定であったことが示されている。また、特許文献3においては、該文献特有の装置を用いて水道水に水素を流通させて循環させることにより、その表2において、製造直後の酸化還元電位が−701mV、1Lのビーカーに入れて24時間後に測定した酸化還元電位が−480mVとなる水素水が得られたことが示されている。
一方、液体に溶存する水素分子の蒸発は、ヘルツ−クヌーセンの法則にて知られているごとく、分子熱力学に基づき、液面付近での水素分圧により速度が定まる。溶存水素を含む液体においては、水素分子と強い相互作用を示す液体分子種が水をはじめとしてほとんど皆無であることから、水素の蒸発速度は結局のところ液中の溶存水素種の液面までの拡散時間に支配されると考えられる。液体中の溶質の拡散速度は液体の粘度に逆比例して小さくなることが知られており、溶存水素を保持する液状液体の基材の粘度を高めれば水素の蒸発が抑制され、効果の持続を図ることができると考えられる。このような高粘性の水素含有液体は特許文献17〜20に開示がある。
そこで、ポンプ内で水素ガスと水とを加圧しつつ混合し、その加圧された気液混合物を減圧撹拌部に導き、溶存水素とともに水素コロイド(微細気泡)を含んだ水を得る方法が提案されている(特許文献3)。また、同様にポンプ内で水素と水とを加圧撹拌し、その後、制御された速度で減圧することにより多量のナノバブルを含んだ水を得る方法も提案されている(特許文献4、5)。特許文献4及び特許文献5によると、ポンプを用いて水素ガスと水とを0.6MPaに加圧撹拌したのち、1MPa/秒の速度にて減圧することにより(例えば、特許文献4の段落0068)、1L中の全水素量が0.5Lを超えるレベルまで微細気泡を含有でき、ガラスビンに密封して400時間経過後も気体存在量比が一定であったことが示されている。また、特許文献3においては、該文献特有の装置を用いて水道水に水素を流通させて循環させることにより、その表2において、製造直後の酸化還元電位が−701mV、1Lのビーカーに入れて24時間後に測定した酸化還元電位が−480mVとなる水素水が得られたことが示されている。
一方、液体に溶存する水素分子の蒸発は、ヘルツ−クヌーセンの法則にて知られているごとく、分子熱力学に基づき、液面付近での水素分圧により速度が定まる。溶存水素を含む液体においては、水素分子と強い相互作用を示す液体分子種が水をはじめとしてほとんど皆無であることから、水素の蒸発速度は結局のところ液中の溶存水素種の液面までの拡散時間に支配されると考えられる。液体中の溶質の拡散速度は液体の粘度に逆比例して小さくなることが知られており、溶存水素を保持する液状液体の基材の粘度を高めれば水素の蒸発が抑制され、効果の持続を図ることができると考えられる。このような高粘性の水素含有液体は特許文献17〜20に開示がある。
特許文献4が開示する水素水に関しては、その気体存在量の経時変化がガラス瓶に密閉された状態でしか計測されておらず、大気中での溶存水素濃度の持続性については何ら開示されていない。該文献の段落0082によると、算出される水素気泡の内圧が6.3MPa(63気圧)にも達し、気泡形態で過飽和に保持される水素ガスの量(約0.5L)を濃度に換算すると44ppmとなる。これは、常温常圧下の飽和溶存水素量(1.6ppm)の実に28倍であり、ガラス瓶の密閉状態を解いて大気中に解放すると、あたかも高圧充てんした瓶入り炭酸水を開栓するごとく、常圧で安定なガス状態に急激に戻ろうとして水素の蒸散が一挙に進み、高溶存水素濃度状態を長時間維持できない可能性が高い。実際、特許文献4とほぼ同一の水素水の実施例を開示すると考えられる、同じ出願人による特許文献5には、その段落0077に次のように記載されている:
「また、このナノバブル中の気体の圧力は、外部からの衝撃がない限り長期間に亘って液体からの押圧との均衡を保つものであるから、ナノバブルが安定に存在した気液混合液を長期間に亘って利用することが可能になる。なお、気液混合液に一旦衝撃が加えられると、内部圧の力によりナノバブルが合体して発泡するため、この発泡を利用することもできる。」
すなわち、特許文献4及び特許文献5に開示の水素水は、60気圧を超える高圧で自己加圧された不安定な水素微細気泡の含有密度があまりに大きく、わずかな衝撃でも一挙に合体発泡して蒸散してしまい、大気開放の条件下では高溶存水素濃度状態を長期にわたって維持することは絶望的と考えられる。
一方、特許文献3の水素水については、開示されているのがEh計で計測した酸化還元電位の値のみであり、液中に含有される水素ガスの絶対量はおろか、溶存水素濃度さえ具体的な値は開示されていない。たとえば、特許文献4及び特許文献5においては、水素水を入れた容器をビニル袋に密封し、これをビニル袋ごと分析天秤上に載置し、その状態でホットスターラーにより撹拌して、含まれている水素ガスを蒸散させた時の浮力変化から、含有ガス量を特定している(なお、特許文献4においては、撹拌時間が昇温状態で5時間に設定され、その後室温に戻るまでさらに撹拌継続したと記載されているが、そのどの段階で水素ガスが放出さて尽くしたのかは、全く把握することができない)。しかし、特許文献3で使用されているEh(酸化還元電位)計にて、その電極表面に捉えられるのは、原子状に解離されて電極上で電子放出する溶存水素のみであり、微細気泡すなわち気相で存在する水素分子は直接検出することができない。
また、Eh計は、液中に浸漬される測定電極と標準電極との電位差を増幅検知するものであるから、液中での測定電極の表面状態や分極状態により測定値が安定しないことが多い。特に微細な水素気泡が多数存在している場合は、電極表面への気泡付着などの影響により、測定される酸化還元電位の数値から溶存水素濃度は正確に推定することはできない。例えば特許文献3の段落には、「本酸化還元処理装置を用いて処理すれば、−700mV程度から−480mVのレベルまで上昇した。この上昇速度の相違は、通常のバブリング法では溶存水素が極めて早く開放した容器上面から溶け込んでくる空気中の酸素と結合あるいは置換してEhが早く上昇するのに対し、本酸化還元処理装置では処理した水素ガスが微細なコロイド状に分散し、コロイド状の水素が新たな還元作用の給源となって容器上面から溶け込んでくる空気中酸素の影響を抑える働きがあることに起因すると考えられる。」と記載されている。開示されている24時間後の酸化還元電位は、通常のバブリング法で作った水素水よりも確かに上昇が鈍くなっており、その原因としてコロイド状水素(水素微細気泡)の形成が挙げられている。したがって、測定される酸化還元電位の値もその影響を受けている可能性は高く、溶存水素濃度を正確に推定するためのツールとしてEh計は不適格であることの裏付けを示すものであるといえる。
また、酸化還元電位からの溶存水素濃度の特定が困難であることは、特許文献1の段落0083の表3に示されている結果からも明らかである。すなわち、該表3によると、種々の溶存酸素を含有する水にスタティックミキサで水素を添加した水素水の酸化還元電位が、水素溶解量とともに開示されている。そのうち、実施例3−1においては、溶存水素濃度が0.4mg/L(0.4ppm)、溶存酸素濃度が2.2mg/L(2.2ppm)、酸化還元電位(ORP)は−485mVである。この場合、水素濃度1ppmを酸化還元電位に換算すると、
−485÷0.4=−1213(mV/ppm)
となる。比較例では、同様に、
−294÷0.2=−1470(mV/ppm)
である。ところが、実施例3−2では、溶存水素濃度が1.5mg/L(1.5ppm)、溶存酸素濃度が3.2mg/L(3.2ppm)であり、たとえば実施例3−1から期待される酸化還元電位の値は、−1819mVであるが、実際は−566mVと計測されている。そして、該実施例3−1の結果に基づいて水素濃度1ppmを酸化還元電位に換算すると、
−566÷1.5=−373(mV/ppm)
となり、実施例3−1や比較例とは全く違う値になる。これでは、酸化還元電位をどのような係数により溶存水素濃度に換算すればよいかは全く把握できない。
また、特許文献3においては、溶存水素が完全に蒸散すれば、酸化還元電位の値はゼロないし気中酸素の溶解によりプラスの値を示すようになるはずであるが、特許文献3の表2には24時間後の酸化還元電位の値が−480mVとなったことしか開示されていないから、この時点で液中の水素ガスは、未だ全てが蒸散しきっていないことが明らかである。そして、24時間以降の酸化還元電位がいかなる速度で上昇を続けるのか、特に残余の水素が蒸散して酸化還元電位がゼロに近づくのが何時間後であるのかは、該表2のデータからは全く推定できない。いずれにしろ、特許文献3の開示する水素水の微細気泡も含めた全水素量がどの程度であるかは、文献中の記載から把握することができず、たとえば特許文献4ないし5のように過剰な水素微細気泡が含有されている可能性も十分にあり、その場合は、微細気泡の不安定性からわずかな衝撃等で急速に酸化還元電位が上昇してしまう問題がある。
さらに、特許文献3においては、酸化還元電位を測定したビーカー内の液量が1Lであることが開示されてはいるものの、液面面積が全く開示されておらず、水素の蒸散速度を特定できない問題がある。後述する通り、Hertz−Knudsenの法則によると、水素が溶存した液体からの水素の蒸発速度は、液面面積をS、液体積をVとしたとき、S/Vに比例して大きくなる。たとえば、同じ体積の液でも容器の開口面積が半分になっただけで、溶存水素濃度の持続性は2倍長くなる。すなわち、容器の寸法や形状が特定できないような溶存水素持続性の測定データは、そもそも意味がない。
次に、特許文献4及び5の図7における、1L当たり0.5Lもの水素ガスを60気圧以上もの気泡内自己加圧に耐えながら保持するような水素水が、いかなる条件を採用すれば具体的に得られるのかは、これらの文献における開示内容を詳細に検討してみても、全く把握することはできない。たとえば特許文献4においては、使用したポンプが図1に開示されているが、このポンプは普通のベーンポンプであり、注入した水素ガスをポンプ内ミキシングのみで100nm前後までの微細気泡に粉砕する能力はない。たとえば、特許文献1によると、その図1Bには、特許文献4と全く同様に、ポンプの上流側で水素を注入し、ポンプ内で撹拌した後ベンチュリ管よりなるリアクターに供給して水素溶解を図る装置が開示されている。その段落0040には、リアクターへの送液圧力は3〜5気圧(0.3〜0.5MPa)と、特許文献4とほぼ同レベルの圧力条件が開示されているばかりでなく、段落0022には「気体を溶解した気体含有液体はリアクター内で徐々に減圧され、リアクターを出て細管を通って受器に入る」と記載され、除圧を漸次行う特許文献4の思想そのもの開示されている。それにも関わらず、実施例における水素溶解量は前述のごとく高々1.5mg/L(約7cc/L)に過ぎず、特許文献4の500cc/Lには遠く及ばないのである。また、漸次的な減圧といっても、文献4の段落0022によると減圧速度は最大2000MPa/secと極めて高い値が許容されており、0068によると、実際に採用されている減圧速度も最大60MPa/secで0.0025秒、ないし1MPa/secで0.5秒と相当大きく、実質的に瞬時的な除圧であって、ナノバブルの成長を停止させるほどの低速度とは到底いえない。なお、特許文献4には、加圧時の速度についても好ましい範囲が記載されているが、加圧により平衡溶解度が上昇する結果、少なからぬ気泡が溶解消滅してしまい、微細気泡の形成密度向上には何ら貢献しない。
そして、特許文献4では、その段落0067及び0068の記載によると、水に対し水素ガスを体積比で1:1にて混合しながら0.6MPaまで加圧している。常圧での溶解度が1.6ppm水素は、ヘンリーの法則によると0.6MPaへの加圧により9.6ppmまで上昇する。これを、常圧まで減圧したとき、特許文献4が最良と主張する減圧条件を採用しても、微細気泡として析出しうる水素ガスの量は高々8ppmであり、体積に換算すると140cc弱に過ぎない。しかるに、特許文献4の図7の水素水においては、水素微細気泡の体積量は500ccであったと主張されており、減圧時に析出すると期待される気泡量の3.5倍にも及ぶ。すると、減圧時の気泡析出に関与しない残余の360ccの水素ガスは、ポンプ内での撹拌時に粗大な気泡状態から粉砕されて微細気泡化したと考えるしかないのであるが、前述のごとく、同様の条件でポンプ内ガスミキシングを行い、下流のリアクターで減圧する方式では、特許文献1を参照するまでもなく、そのような大量の微細気泡が得られていないことは明白である。すなわち、特許文献4では、発生したと主張する水素微細気泡の少なくとも7割以上が、いかなる技術的手段により形成しえたのかが開示されていないことになる。
全く同じことが、特許文献3の水素水についてもいえる。すなわち、特許文献3が表2−3において達成したと称する、酸化還元電位持続性を有する水素水の製造条件についての開示状況を見ると、装置は文献内図1〜図8のものを使用したと記載されているが、気液混合の諸条件、すなわち、ポンプ流量と送液圧力(記載されているのは回転数と消費電力のみ)、水素ガスの供給圧力と流量については何ら開示がない。そして、水素溶解処理の中枢をなすと思われる減圧撹拌装置は、外形寸法とごく概略的な流路形状が矮小な図面で示されているにすぎず、要部である螺旋状邪魔板の具体的な形状や寸法は全く不明であり、水素と液体の混合比や、送液圧力、流速等についても何も開示されていない。
このように、上記特許文献3〜5に開示された微細気泡含有量ないし酸化還元電位の持続性にかかる数値的な特徴は、他の刊行物等に明らかに言及されていない新規なものであるにもかかわらず、当該文献中には、その「新規物質」の製造方法が当業者に再現できるように記載されているとは到底言えない。すなわち、特許文献3〜5に開示された水素微細気泡含有水は実質的に未完成の発明にほかならず、過去の判例を紐解くまでもなく、先行技術を開示した刊行物としての適格自体を欠くものといえる。
次に、水素添加した高粘度液体について、特許文献17及び18に開示のものは、加圧法により製造した溶存水素水を油相と混合乳化してクリームやジェルを得るものであり、出発原料である水素水の溶存水素濃度、すなわち常温・常圧の飽和溶存濃度である1.6ppm以上に水素含有量を高めることは原理的に不可能である。
また、水素を微細気泡の形で液体に添加する手法は、液体が低粘度の場合には、特許文献21〜23を例示するごとく、種々の方法が提案されているが、特許文献19においてすでに課題提起されているごとく、粘度の高い溶液は気液の混相状態を形成しにくく、ナノサイズの微細気泡は発生しにくいと考えられてきた。特に、水素ガスに関しては、粘性溶液へ水素ガスを吹き込むと気泡は大きな固まりとなって浮上し、気液コロイドとして存在することが少ない。当該の特許文献19は、粘性の高い溶液(たとえば水飴)を狭い空間内で超音波振動と連動して振動させながら水素を添加する方式により、水素を微細気泡(水素コロイド)として存在させた粘性液体が得られる旨開示している。しかし、超音波により粘性液体に添加できる水素微細気泡の量は非常に限られており、このことは当該文献中でも言及されている通りである。具体的には、「超音波連続式水素コロイド生産方法」、「超音波循環式水素コロイド生産方法」及び「粘性溶液のキャビテーション連続式水素ラジカルコロイド生産方法」の3つが開示されているが、それぞれ対応する段落に以下の記載がある。
(0010)
「水素ガスの添加量は極めて少量であって、容積比で溶液流量の1〜0.1%程度である。流量は目的によって変更するが、流量を過剰にすると微細気泡の発生が起こらない。」
(0011)
「水素ガスの添加量は前の超音波循環式水素コロイド生産方法と同様、極めて少量であって、容積比で溶液流量の1〜0.1%程度である。流量は目的によって変更するが、これも前法と同様に流量を過剰に多くすると微細気泡の発生が起こらない。」
(0012)
「水素ガスの添加量は極めて少量であって、容積比で溶液流量の1〜0.1%程度である。ガス流量は目的によって変更するが、流量を多くすると大きなバブルが混入する。」
これらいずれの方法にあっても、液体への水素添加処理はワンパスであって、水素添加量がその供給流量の最大でも1%であるから、液体1Lあたりの水素添加量は10ccを超えることはない。この場合、水に対する水素の飽和溶存濃度は1.6ppmであり、水素体積に換算すると20cc程度であるから、添加した水素の大半は溶存水素となり、水素微細気泡として残留する量はわずかであると考えられる。
他方、特許文献20には、低粘度の液体に超音波を用いて先に水素微細気泡を形成し、それが液体中に残存している間にゲル化剤を添加して高粘度の水素微細気泡含物を得る方式が開示されている。しかし、超音波を用いて導入できる水素微細気泡の量に制限がある点は何ら変わりなく、水素微細気泡を多量に含んだ高粘度液体とはいえない難点がある
本発明の課題は、従来技術をはるかにしのぐ溶存水素濃度の持続性を有した新規な水素含有液状水性組成物をきわめて容易に製造することができる方法、また、こうした組成物のうち高粘度のものであって上記従来技術をはるかにしのぐ量の水素微細気泡を含有した組成物の製造方法を提供することにある。
「また、このナノバブル中の気体の圧力は、外部からの衝撃がない限り長期間に亘って液体からの押圧との均衡を保つものであるから、ナノバブルが安定に存在した気液混合液を長期間に亘って利用することが可能になる。なお、気液混合液に一旦衝撃が加えられると、内部圧の力によりナノバブルが合体して発泡するため、この発泡を利用することもできる。」
すなわち、特許文献4及び特許文献5に開示の水素水は、60気圧を超える高圧で自己加圧された不安定な水素微細気泡の含有密度があまりに大きく、わずかな衝撃でも一挙に合体発泡して蒸散してしまい、大気開放の条件下では高溶存水素濃度状態を長期にわたって維持することは絶望的と考えられる。
一方、特許文献3の水素水については、開示されているのがEh計で計測した酸化還元電位の値のみであり、液中に含有される水素ガスの絶対量はおろか、溶存水素濃度さえ具体的な値は開示されていない。たとえば、特許文献4及び特許文献5においては、水素水を入れた容器をビニル袋に密封し、これをビニル袋ごと分析天秤上に載置し、その状態でホットスターラーにより撹拌して、含まれている水素ガスを蒸散させた時の浮力変化から、含有ガス量を特定している(なお、特許文献4においては、撹拌時間が昇温状態で5時間に設定され、その後室温に戻るまでさらに撹拌継続したと記載されているが、そのどの段階で水素ガスが放出さて尽くしたのかは、全く把握することができない)。しかし、特許文献3で使用されているEh(酸化還元電位)計にて、その電極表面に捉えられるのは、原子状に解離されて電極上で電子放出する溶存水素のみであり、微細気泡すなわち気相で存在する水素分子は直接検出することができない。
また、Eh計は、液中に浸漬される測定電極と標準電極との電位差を増幅検知するものであるから、液中での測定電極の表面状態や分極状態により測定値が安定しないことが多い。特に微細な水素気泡が多数存在している場合は、電極表面への気泡付着などの影響により、測定される酸化還元電位の数値から溶存水素濃度は正確に推定することはできない。例えば特許文献3の段落には、「本酸化還元処理装置を用いて処理すれば、−700mV程度から−480mVのレベルまで上昇した。この上昇速度の相違は、通常のバブリング法では溶存水素が極めて早く開放した容器上面から溶け込んでくる空気中の酸素と結合あるいは置換してEhが早く上昇するのに対し、本酸化還元処理装置では処理した水素ガスが微細なコロイド状に分散し、コロイド状の水素が新たな還元作用の給源となって容器上面から溶け込んでくる空気中酸素の影響を抑える働きがあることに起因すると考えられる。」と記載されている。開示されている24時間後の酸化還元電位は、通常のバブリング法で作った水素水よりも確かに上昇が鈍くなっており、その原因としてコロイド状水素(水素微細気泡)の形成が挙げられている。したがって、測定される酸化還元電位の値もその影響を受けている可能性は高く、溶存水素濃度を正確に推定するためのツールとしてEh計は不適格であることの裏付けを示すものであるといえる。
また、酸化還元電位からの溶存水素濃度の特定が困難であることは、特許文献1の段落0083の表3に示されている結果からも明らかである。すなわち、該表3によると、種々の溶存酸素を含有する水にスタティックミキサで水素を添加した水素水の酸化還元電位が、水素溶解量とともに開示されている。そのうち、実施例3−1においては、溶存水素濃度が0.4mg/L(0.4ppm)、溶存酸素濃度が2.2mg/L(2.2ppm)、酸化還元電位(ORP)は−485mVである。この場合、水素濃度1ppmを酸化還元電位に換算すると、
−485÷0.4=−1213(mV/ppm)
となる。比較例では、同様に、
−294÷0.2=−1470(mV/ppm)
である。ところが、実施例3−2では、溶存水素濃度が1.5mg/L(1.5ppm)、溶存酸素濃度が3.2mg/L(3.2ppm)であり、たとえば実施例3−1から期待される酸化還元電位の値は、−1819mVであるが、実際は−566mVと計測されている。そして、該実施例3−1の結果に基づいて水素濃度1ppmを酸化還元電位に換算すると、
−566÷1.5=−373(mV/ppm)
となり、実施例3−1や比較例とは全く違う値になる。これでは、酸化還元電位をどのような係数により溶存水素濃度に換算すればよいかは全く把握できない。
また、特許文献3においては、溶存水素が完全に蒸散すれば、酸化還元電位の値はゼロないし気中酸素の溶解によりプラスの値を示すようになるはずであるが、特許文献3の表2には24時間後の酸化還元電位の値が−480mVとなったことしか開示されていないから、この時点で液中の水素ガスは、未だ全てが蒸散しきっていないことが明らかである。そして、24時間以降の酸化還元電位がいかなる速度で上昇を続けるのか、特に残余の水素が蒸散して酸化還元電位がゼロに近づくのが何時間後であるのかは、該表2のデータからは全く推定できない。いずれにしろ、特許文献3の開示する水素水の微細気泡も含めた全水素量がどの程度であるかは、文献中の記載から把握することができず、たとえば特許文献4ないし5のように過剰な水素微細気泡が含有されている可能性も十分にあり、その場合は、微細気泡の不安定性からわずかな衝撃等で急速に酸化還元電位が上昇してしまう問題がある。
さらに、特許文献3においては、酸化還元電位を測定したビーカー内の液量が1Lであることが開示されてはいるものの、液面面積が全く開示されておらず、水素の蒸散速度を特定できない問題がある。後述する通り、Hertz−Knudsenの法則によると、水素が溶存した液体からの水素の蒸発速度は、液面面積をS、液体積をVとしたとき、S/Vに比例して大きくなる。たとえば、同じ体積の液でも容器の開口面積が半分になっただけで、溶存水素濃度の持続性は2倍長くなる。すなわち、容器の寸法や形状が特定できないような溶存水素持続性の測定データは、そもそも意味がない。
次に、特許文献4及び5の図7における、1L当たり0.5Lもの水素ガスを60気圧以上もの気泡内自己加圧に耐えながら保持するような水素水が、いかなる条件を採用すれば具体的に得られるのかは、これらの文献における開示内容を詳細に検討してみても、全く把握することはできない。たとえば特許文献4においては、使用したポンプが図1に開示されているが、このポンプは普通のベーンポンプであり、注入した水素ガスをポンプ内ミキシングのみで100nm前後までの微細気泡に粉砕する能力はない。たとえば、特許文献1によると、その図1Bには、特許文献4と全く同様に、ポンプの上流側で水素を注入し、ポンプ内で撹拌した後ベンチュリ管よりなるリアクターに供給して水素溶解を図る装置が開示されている。その段落0040には、リアクターへの送液圧力は3〜5気圧(0.3〜0.5MPa)と、特許文献4とほぼ同レベルの圧力条件が開示されているばかりでなく、段落0022には「気体を溶解した気体含有液体はリアクター内で徐々に減圧され、リアクターを出て細管を通って受器に入る」と記載され、除圧を漸次行う特許文献4の思想そのもの開示されている。それにも関わらず、実施例における水素溶解量は前述のごとく高々1.5mg/L(約7cc/L)に過ぎず、特許文献4の500cc/Lには遠く及ばないのである。また、漸次的な減圧といっても、文献4の段落0022によると減圧速度は最大2000MPa/secと極めて高い値が許容されており、0068によると、実際に採用されている減圧速度も最大60MPa/secで0.0025秒、ないし1MPa/secで0.5秒と相当大きく、実質的に瞬時的な除圧であって、ナノバブルの成長を停止させるほどの低速度とは到底いえない。なお、特許文献4には、加圧時の速度についても好ましい範囲が記載されているが、加圧により平衡溶解度が上昇する結果、少なからぬ気泡が溶解消滅してしまい、微細気泡の形成密度向上には何ら貢献しない。
そして、特許文献4では、その段落0067及び0068の記載によると、水に対し水素ガスを体積比で1:1にて混合しながら0.6MPaまで加圧している。常圧での溶解度が1.6ppm水素は、ヘンリーの法則によると0.6MPaへの加圧により9.6ppmまで上昇する。これを、常圧まで減圧したとき、特許文献4が最良と主張する減圧条件を採用しても、微細気泡として析出しうる水素ガスの量は高々8ppmであり、体積に換算すると140cc弱に過ぎない。しかるに、特許文献4の図7の水素水においては、水素微細気泡の体積量は500ccであったと主張されており、減圧時に析出すると期待される気泡量の3.5倍にも及ぶ。すると、減圧時の気泡析出に関与しない残余の360ccの水素ガスは、ポンプ内での撹拌時に粗大な気泡状態から粉砕されて微細気泡化したと考えるしかないのであるが、前述のごとく、同様の条件でポンプ内ガスミキシングを行い、下流のリアクターで減圧する方式では、特許文献1を参照するまでもなく、そのような大量の微細気泡が得られていないことは明白である。すなわち、特許文献4では、発生したと主張する水素微細気泡の少なくとも7割以上が、いかなる技術的手段により形成しえたのかが開示されていないことになる。
全く同じことが、特許文献3の水素水についてもいえる。すなわち、特許文献3が表2−3において達成したと称する、酸化還元電位持続性を有する水素水の製造条件についての開示状況を見ると、装置は文献内図1〜図8のものを使用したと記載されているが、気液混合の諸条件、すなわち、ポンプ流量と送液圧力(記載されているのは回転数と消費電力のみ)、水素ガスの供給圧力と流量については何ら開示がない。そして、水素溶解処理の中枢をなすと思われる減圧撹拌装置は、外形寸法とごく概略的な流路形状が矮小な図面で示されているにすぎず、要部である螺旋状邪魔板の具体的な形状や寸法は全く不明であり、水素と液体の混合比や、送液圧力、流速等についても何も開示されていない。
このように、上記特許文献3〜5に開示された微細気泡含有量ないし酸化還元電位の持続性にかかる数値的な特徴は、他の刊行物等に明らかに言及されていない新規なものであるにもかかわらず、当該文献中には、その「新規物質」の製造方法が当業者に再現できるように記載されているとは到底言えない。すなわち、特許文献3〜5に開示された水素微細気泡含有水は実質的に未完成の発明にほかならず、過去の判例を紐解くまでもなく、先行技術を開示した刊行物としての適格自体を欠くものといえる。
次に、水素添加した高粘度液体について、特許文献17及び18に開示のものは、加圧法により製造した溶存水素水を油相と混合乳化してクリームやジェルを得るものであり、出発原料である水素水の溶存水素濃度、すなわち常温・常圧の飽和溶存濃度である1.6ppm以上に水素含有量を高めることは原理的に不可能である。
また、水素を微細気泡の形で液体に添加する手法は、液体が低粘度の場合には、特許文献21〜23を例示するごとく、種々の方法が提案されているが、特許文献19においてすでに課題提起されているごとく、粘度の高い溶液は気液の混相状態を形成しにくく、ナノサイズの微細気泡は発生しにくいと考えられてきた。特に、水素ガスに関しては、粘性溶液へ水素ガスを吹き込むと気泡は大きな固まりとなって浮上し、気液コロイドとして存在することが少ない。当該の特許文献19は、粘性の高い溶液(たとえば水飴)を狭い空間内で超音波振動と連動して振動させながら水素を添加する方式により、水素を微細気泡(水素コロイド)として存在させた粘性液体が得られる旨開示している。しかし、超音波により粘性液体に添加できる水素微細気泡の量は非常に限られており、このことは当該文献中でも言及されている通りである。具体的には、「超音波連続式水素コロイド生産方法」、「超音波循環式水素コロイド生産方法」及び「粘性溶液のキャビテーション連続式水素ラジカルコロイド生産方法」の3つが開示されているが、それぞれ対応する段落に以下の記載がある。
(0010)
「水素ガスの添加量は極めて少量であって、容積比で溶液流量の1〜0.1%程度である。流量は目的によって変更するが、流量を過剰にすると微細気泡の発生が起こらない。」
(0011)
「水素ガスの添加量は前の超音波循環式水素コロイド生産方法と同様、極めて少量であって、容積比で溶液流量の1〜0.1%程度である。流量は目的によって変更するが、これも前法と同様に流量を過剰に多くすると微細気泡の発生が起こらない。」
(0012)
「水素ガスの添加量は極めて少量であって、容積比で溶液流量の1〜0.1%程度である。ガス流量は目的によって変更するが、流量を多くすると大きなバブルが混入する。」
これらいずれの方法にあっても、液体への水素添加処理はワンパスであって、水素添加量がその供給流量の最大でも1%であるから、液体1Lあたりの水素添加量は10ccを超えることはない。この場合、水に対する水素の飽和溶存濃度は1.6ppmであり、水素体積に換算すると20cc程度であるから、添加した水素の大半は溶存水素となり、水素微細気泡として残留する量はわずかであると考えられる。
他方、特許文献20には、低粘度の液体に超音波を用いて先に水素微細気泡を形成し、それが液体中に残存している間にゲル化剤を添加して高粘度の水素微細気泡含物を得る方式が開示されている。しかし、超音波を用いて導入できる水素微細気泡の量に制限がある点は何ら変わりなく、水素微細気泡を多量に含んだ高粘度液体とはいえない難点がある
本発明の課題は、従来技術をはるかにしのぐ溶存水素濃度の持続性を有した新規な水素含有液状水性組成物をきわめて容易に製造することができる方法、また、こうした組成物のうち高粘度のものであって上記従来技術をはるかにしのぐ量の水素微細気泡を含有した組成物の製造方法を提供することにある。
本発明の水素含有液状水性組成物の製造方法は、液体処理ノズルとして、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されたノズル本体と、液体流路の内面から突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えたものを使用し、
得るべき水素含有液状水性組成物の含有組成から水素を除いた組成物を本体組成物として、該本体組成物と水素ガスとの混相流を液体処理ノズルの衝突部に供給し、水素ガスを微細気泡に粉砕しつつ液体出口から流出させることにより水素含有液状水性組成物を得ることを特徴とする。
本発明において、「水素ガス」は、純水素以外に、水素を50%以上含有した混合ガス(混合ガスの水素以外の残部は、水素との反応活性の低いガス成分であり、具体的には窒素、アルゴンなどの不活性ガスである)も概念に含む。粘度は、B型粘度計(ブルックフィールド粘度計)により、LV4ロータにより回転数60rpmにて25℃で計測した値を用いるものとする。
また、液状水性組成物は、水の含有率が50質量%以上であり、かつ、水と相溶性を有する液体と水との合計質量含有率が80%以上のものをいう。水と相溶性を有する液体は、たとえば、有機溶媒の場合、エタノール、メタノール、グリセリン、エチレングリコールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類などであるが、これらに限定されるものではない。
さらに、本発明において微細気泡とは、気泡径が1μm未満のものをいう。水素微細気泡の平均気泡径はたとえばレーザー回折式粒度計にて測定することができる。本発明の製造方法にて得られる水素含有液状水性組成物は、分子状水素の一部が水素微細気泡として含有される。該平均気泡径は、たとえば100nm前後まで縮小することが可能である。
上記本発明の製造方法に使用する液体処理ノズルの原理は、たとえば特許文献6〜9などで周知となっており、キャビテーションによる微細気泡の発生効果を有するものである。しかし、いずれの文献においても、これらのノズルを水素溶解への適用可能性については全く示唆されてこなかった。その理由については、水素の水に対する体積溶解率が極めて低く、また、溶解してもキャビテーションポイントでの強撹拌により急速に蒸散するために、高い溶存水素濃度を達成することは困難ではないか、と考えられてきたからである。
ところが、本発明者らが鋭意検討を行った結果、外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部に対して、水素ガスと液体とを混相流の形でこれに供給すると、当初予想に全く反して水素が効率的に微粉砕され、組成物中の溶存水素濃度を瞬時にして高めることができるばかりでなく、その水素ガスの一部を水素微細気泡の形で含有できることがわかった。その結果、組成物の溶存水素濃度が高く保持された状態、すなわち高い還元性を保つ状態を長期にわたり継続することができる。
すなわち、本発明の水素含有液状水性組成物の製造方法において、ノズル本体での液体(本体組成物)の流れは、衝突部に衝突してその下流に迂回する際に谷部内にて絞られることにより増速し、本体組成物の液相に原料段階で含有される溶存ガス(空気など)の析出により激しいキャビテーションを起こし、その減圧沸騰作用により気泡を生じつつ液体を激しく撹拌する。これに、衝突部を高速流が迂回する際に生ずる渦流も加わり、衝突部の周辺及び直下流域には非常に顕著な強撹拌領域が形成されることとなる。キャビテーションにより発生した気泡はそれほど成長せずに上記の強撹拌領域に巻き込まれ、微細気泡が効率的に発生する。しかし、ここで、供給する液体に積極的に外部から水素ガスを導入し、液体と水素ガスとの混相流として処理コア部に供給すると、混相流を形成する水素ガスは衝突部下流の強撹拌領域に巻き込まれることで液体との混合が顕著に進み、水素の水に対する飽和溶解度が非常に小さいにもかかわらず、その溶解をきわめて効率的に行うことができる。
衝突部の下流域に強撹拌領域が形成される要因の一つは、供給する液体中に最初から溶存しているガス(特に空気:以下、プレ溶存ガスという)のキャビテーションによる減圧沸騰析出が考えられる。また、液体が圧送されて衝突部に衝突する際に、その背圧により液体は導入された水素ガスとともに加圧され、一部は液体に溶解する。そして、これが、衝突部の谷部を通過する際に高流速化することで減圧され、気泡を析出する流れも当然にある。そして、こうしたプレ溶存ガスや衝突部の上流で溶解した水素ガスの減圧沸騰をきっかけとして、衝突部の下流域に生ずる強撹拌領域では導入される水素ガスの撹拌・溶解が、減圧沸騰で損なわれるガス量を桁違いに上回る規模により進行する。また、液体に溶解しきれなかった水素ガスも、浮上速度の非常に小さい微細気泡として液中に留まることになる。特に水素の場合、水に対する溶解度が低いために、処理コア部及び強撹拌領域では溶存水素が瞬時に飽和状態となり、流速増加に伴うわずかな減圧でも気泡が極めて析出しやすい状況が形成され、高密度に微細気泡が生成すると考えられる。また、脱気水など、プレ溶存ガスがない液体を用いる場合でも、衝突部の上流で溶解した水素ガスのキャビテーション析出により、同様の効果が問題なく達成される。
水素は溶存水素と水素微細気泡の両方の形態で液体中に共存することで、大気中に暴露したとき、溶存水素しか存在しない(すなわち、水素微細気泡を含まない)液体と比較して、溶存水素濃度の見かけの減少速度が低下し、高濃度の状態をより長時間維持するようになる。これは、溶存水素の蒸発速度そのものが低下するのではなく、微細気泡中の水素が周囲の液体に溶出して、溶存水素が補われることに起因するものである。これにより、例えば大気開放された状態で一定レベル以上の溶存水素濃度が求められる場合、高濃度状態の継続時間を延長できる利点につながるのである。
液体処理ノズルに対し本体組成物は、該液体処理ノズルの上流側に配置されたポンプにより圧送することができる。この時、水素ガスをポンプの吸入口側で添加して本体組成物と水素ガスとをポンプ内にて予備撹拌混合することにより混相流となし、液体処理ノズルに流入させることができる。このようにすると、本体組成物と、導入した水素ガスとがポンプの内部流に巻き込まれて予備粉砕された状態で液体処理ノズルに供給されるから、水素気泡の微細化をより効率的に行うことができる。ポンプは、ベーンポンプか渦流ポンプを用いることが、予備粉砕効率が高いため望ましい。この場合、低粘度の液体では、一旦形成した微細気泡が強撹拌領域を通過する際に再合一して浮上し、微細気泡濃度の増加が鈍る場合があるが、溶存水素の蒸発速度が小さい高粘度の本体組成物においてはその再合一が生じにくいために、循環継続に伴う微細気泡の増加が非常に顕著である。
本体組成物と水素ガスとの混相流は液体処理ノズルに対し、ポンプを用いて循環供給することができる。この場合、本体組成物に対する水素ガスの添加を継続しつつ混相流の液体処理ノズルに対する循環供給を継続すれば、水素気泡の形成密度を上げながらその微細化も合わせて進行させることができる。また、水素ガスの添加を中断した状態で混相流の液体処理ノズルに対する循環供給を継続すれば、1回の通過では微細気泡まで粉砕しきれなかった径の大きい気泡も、液体処理ノズル内に発生する強撹拌領域を再度通過することで微細気泡に粉砕していくことが可能となり、微細気泡の形成密度向上に貢献する。
次に、本発明に採用可能な液体処理ノズルの、より具体的構成について説明する。まず、衝突部に形成する複数巻の山部は、らせん状に一体形成することができる。このようにすると、山部の形成が容易になるほか、流れに対し山部が傾斜することで、山部の稜線部を横切る流れ成分が増加し、流れ剥離に伴う乱流発生効果が著しくなるので、気泡のさらなる微細化を図ることができる。この場合、衝突部は、脚部末端側が流路内に突出するねじ部材により形成しておくと、該ねじ部材の脚部の外周面に形成されるねじ山を山部として利用でき、製造が容易である。衝突部をたとえばJIS並目ピッチのねじ部材で構成する場合、衝突部は外径Mを1.0mm(谷部の深さは0.25mm)以上2.0mm(谷部の深さは0.40mm)以下とするのがよく、より望ましくは1.4mm(谷部の深さは0.30mm)以上1.6mm(谷部の深さは0.35mm)以下とするのがよい。
液体流路内への衝突部の配置形態としては、たとえばもっとも単純なものの一つとして、流路断面を二分する形で直径方向に配置する形態を例示できる。この構成は、比較的小流量の液体処理ノズルに有効である。具体的には、液体流路の内径Dを2mm以上4.5mm以下(望ましくは2mm以上3.5mm以下)に設定し、全流通断面積Stを1.2mm2以上10mm2以下(望ましくは1.2mm2以上5mm2以下)に設定するのがよく、良好な微細気泡形成効率を達成できる。
一方、衝突部は投影において中心軸線を取り囲む形態で3以上配置すること、たとえば十字形態に4つ配置することも可能である。この構成は、大流量が求められる構成において、良好な微細気泡形成効率を達成する上で有効である。絞り孔にそれぞれ形成される十字形態の衝突部の組は、たとえばノズル本体の壁部外周面側から先端が絞り孔内へ突出するようにねじ込まれる複数本のねじ部材により容易に形成できる。4本以外では、3本、5本、6本、7本、8本の中から選択することができる。
突出部を4つ十字状に配置する構成では、具体的には、液体流路の内径Dを2.5mm以上7mm以下(望ましくは2.9mm以上5.5mm以下)に設定し、全流通断面積Stを2.5mm2以上35mm2以下(望ましくは4mm2以上13mm2以下)に設定するのがよく、良好な微細気泡発生効率を達成できる。この場合、複数の衝突部の先端が集合する断面中心位置に液体流通ギャップを形成することができる。たとえば十字の中心位置に液体流通ギャップを形成すると、最も高流速となる断面中央の流れ(中心流)が液体流通ギャップの形成により妨げられにくくなり、微細気泡の発生効率がより向上する。
本発明で使用する液体処理ノズルにおいては、ノズル本体に形成する液体流路を単一とすることができる。この場合、被処理液体の全流量を増やしたい場合は、分岐継手等によりノズルを複数並列に接続することができる。このようにすると、ノズル1本あたりの流量は小さくても、全体ではキャビテーション効果を犠牲にすることなく十分な流量が確保できるようになる。
一方、液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、隔壁部に貫通形成され流入室と流出室とを互いに別経路にて連通させる複数の絞り孔とを備え、処理コア部は、絞り孔の内面から各々突出する形で衝突部を形成するように構成することも可能である。すなわち、複数のノズルを並列接続する場合は、衝突部が配置される処理コア部の前後の流路が各ノズルに独立して配置される構造になるが、上記の構成では、隔壁部に複数の絞り部を形成し、その前後の流路区間を該隔壁部が区画する流入室ないし流出室の形に集約して、それら複数の絞り部により共有化させる形となるのである。これにより、流路が複数系統に分岐する区間は隔壁部に形成された絞り孔のみに短縮することができ、分岐流路が長くなることに由来した偏流発生の防止に貢献する。特に、高粘度の液状原料を流通させる場合、気泡の偏流は特に発生しやすいので、均質な水素微細気泡を高体積率で形成する上で有効である。この場合も、処理コア部において複数の絞り孔のそれぞれに、ノズル本体の軸線と直交する平面への投影において衝突部を、孔中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置し、それら4つの衝突部が形成する十字の中心位置に液体流通ギャップを形成した構成とすることができる。
たとえば衝突部は、上記の投影において中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置されたM1.2以上M2.0以下(望ましくはM1.4以上M1.8以下)のねじ部材とすることができ、前述のごとく、液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積(液体流路1個あたり)が2.5mm2以上20mm2以下に設定されたものを使用することができる。ねじ部材の寸法が上記の範囲外になると微細気泡の形成効率が十分でなくなる場合がある。また、全流通断面積は上記の下限値未満では本体組成物の流通抵抗が高くなりすぎて(特に、高粘性の場合)、処理効率の低下を招く。また、上限値を超えた場合は衝突部での流速低下により微細気泡の形成効率が十分でなくなる場合がある。
本体組成物と水素ガスとを液体処理ノズルに供給する条件としては、混相流を形成するための水素ガス流量をQ1、本体組成物の流量をQ2としたとき、液体入口側の動圧を0.1MPa以上0.5MPa以下(望ましくは0.2MPa以上0.4MPa以下)に設定し、水素ガスの本体組成物に対する流量比Q1/Q2を0.01以上0.2以下(望ましくは0.03以上0.1以下)とするように設定するのがよい。液体入口側の動圧が下限値未満では衝突部での流速低下により微細気泡の形成効率が十分でなくなる場合がある。上限については、本来制限はないが、ポンプの能力等を考慮して適宜上記のような値に定めるのがよい。また、流量比Q1/Q2が上記の下限値未満になると水素微細気泡の形成体積率を十分に確保できなくなるか、確保するのに長時間の循環が必要となる(ただし、時間についての制限が問題にならない場合は、流量比をさらに小さく設定することを妨げない)。他方、流量比Q1/Q2が上記の上限値を超えると衝突部の水素ガスによるホールドアップにより、気泡の粗大化を招く恐れがある。
液体処理ノズルとして本発明に採用可能なさらに有利な形態としては、下記のものを例示できる。すなわち、そのような液体処理ノズルは、液体流路の中心軸線と直交する平面への投影において、処理コア部における液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積をS1、衝突部の投影領域面積をS2として、処理コア部の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm2)
として定義したとき、液体入口及び液体出口の断面積が全流通断面積Stよりも大きく設定されるとともに、
谷部の最底位置を表す谷点のうち、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた基準円の内側に位置するものの数をN70(個)、基準円の外側に位置するものの数をNc70(個)とし、谷深さ補正係数αを
h≧0.35mmのときα=1、
h<0.35mmのとき、α=−60h2+41h−6
として定め、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhを0.2mm以上確保するとともに、
投影にて全流通断面積の領域のうち基準円の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm2)として、70%断面比率σ70を、
σ70=S70/St×100(%)
として定め、有効谷点数Neを
Ne=α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70)
として定義したとき、Ne/Stで表される有効谷点密度が1.5個/mm2以上確保されてなり、液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積が2.5mm2以上20mm2以下に設定されたものである。
キャビテーションが発生するのは上記のごとく主として衝突部の谷部であり、この谷部を流れに対して一つでも数多く接触させることが、微細気泡の発生効率を高める上では重要である。したがって、処理コア部の断面内に配置するねじ谷の数を増大させることが、キャビテーションひいては微細気泡の発生効率向上に有効と思われる。しかし、本発明者らが詳細に検討したところ、問題はそれほど簡単ではなく、谷部の数を機械的に増やしても微細気泡の発生効率改善には単純にはつながらない場合があることが判明した。本発明者らは、その要因を次のような項目に分けて検討した。
(1)衝突部の谷部の形成間隔を一定にすれば、処理コア部における液体流路の断面を増加させ、衝突部の突出高さを増加させることで、断面内に存在する谷点数は増える。しかし、この場合は流路の断面積も増え、同じ液体供給圧力であれば流量も増えてしまうから、単位流量あたりに割り振られる谷点数は必ずしも増加するとは限らないし、場合によっては単位流量あたりの谷点数が減じてしまい、キャビテーション効率が却って低下することも実際にあり得る。従って、キャビテーション効率ひいては微細気泡発生効率の大小を支配するのは、処理コア部に形成する谷点の絶対数ではなく、これを流路断面積で規格化した谷点密度のほうである。これは、液体が単位流量あたり何個の谷点と接するか、ということと密接に関係している。
(2)管路内の流速は、管軸断面中心付近で最大となり管内壁面位置で最小となる形で、半径方向に放物線状の分布を示す。したがって、流路断面内の谷部はどの位置にあるものも等価に微細気泡発生に寄与するのではなく、断面中心に近い谷部ほどキャビテーションに必要な流速を確保しやすく、微細気泡発生への貢献度も大きい。したがって、谷点数を評価する場合は、断面中心からの距離により異なる重みを考慮する必要がある。
(3)断面中心付近に位置する谷点が実際にキャビテーション効果に有効に寄与するためには、当該断面中心付近で期待通りの流速が得られている場合に限る。一見、これは自明な事項のようにも思えるが、断面中心付近に谷部を配置するということは、その谷部を形成する衝突部の少なからぬ部分が断面中心領域を占有するということであり、断面中心付近の谷点数を増やせば増やすほど流れが妨げられて流速が確保できなくなるジレンマが生ずる。断面中心領域で障害物に妨げられた流れは、断面外縁領域に回り込み、もともと流量が不足しがちな該領域での流速向上に貢献する可能性はもちろんあるが、断面中心領域を妨げられることなく通過できた場合と比較して、大幅な流れ損失は避けがたくなる。したがって、断面中心付近に配置された谷点数は、断面中心付近の流通面積により重み付けを付与して評価する必要がある。
(4)衝突部に形成する谷部の形成間隔を狭くすれば、同じ流路断面積であっても谷点数を増やすことができる。しかし、谷部の形成間隔とともに谷部の深さが減少すると、谷底での流れ絞り効果が減じ、キャビテーション効率の低下につながる懸念がある。したがって、谷点数をより多く確保するために谷部深さの小さい衝突部を採用する場合は、谷深さに応じた重みづけにより谷点数を評価する必要がある。
本発明者らは、衝突部の寸法と谷部の形成深さ、衝突部の個数と配置形態、さらに衝突部を配置する処理コア部での流路断面寸法を種々に設定した多数の液体処理ノズルを製作し、微細気泡の濃度や、微細気泡を含有した処理済み液体の特性、及びガス溶解効率などを詳細に検討した。その結果、上記(1)で述べた処理コア部における衝突部の谷点密度を、(2)〜(4)の3つの要因を反映した形で的確に重みづけする手法に到達し、そのように重みづけした谷点密度において、前記特許文献に開示された液体処理ノズルよりも明らかにキャビテーション効率ひいては微細気泡の発生効率に優れた数値範囲が存在することを見出した。
以下、順に説明する。まず前提として、液体入口及び液体出口の断面積を処理コア部の全流通断面積Stよりも大きく設定する。これは、液体入口及び液体出口の断面積がStよりも小さくなると、液体入口及び液体出口での流量損失が大きくなりすぎて、処理コア部にて十分なキャビテーションを発生させるための流速が確保できなくなるからである。液体入口及び液体出口の断面積は、処理コア部における液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積S1よりも大きく設定しておくことが、より望ましい。また、液体処理ノズルに液体を流通させる場合の液体圧としては、標準的な水道圧である0.1MPaを中心に、0.03MPaから0.4MPa程度までを想定している。
要因(2)については、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて基準円を設定する。障害物のない管路にて上記の液体圧範囲では、基準円外側の平均流速と基準円内側の流速比はおおむね0.38:1となることから、本発明者が検討した結果、基準円外側の谷点数Nc70の寄与を、基準円の内側の谷点数N70の寄与の0.38倍程度に小さくなるよう重みづけするのが適当であることがわかった。
要因(3)については、70%断面比率σ70=S70/St×100(%)の値は、もし衝突部が存在しなければ50%となるから、衝突部を配置した場合も、この70%断面比率の値が50%に近づくほど基準円内側の谷点はより高流速の流れを受けることとなる。そこで、基準円内側の谷点数N70に対しては、σ70/50の値により重みづけするのが適当であると考えた。
要因(4)については、谷部の深さの影響を種々に検討した結果、まず、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhが0.2mm未満となる場合には、微細気泡の発生があまり見込めないことがわかった。一方、谷部の深さhの値が0.2mm以上に増大すると、hの増大とともに微細気泡発生が次第に顕著となる。以上に鑑み鋭意検討した結果、谷深さhの微細気泡発生への影響を、h=0.25mm、0.3mm、0.35mmの各場合について0.5:0.9:1.0の比率にて谷点数に対し重み付けしたときに、微細気泡の発生効率やガス溶解効率の実験検証結果が良く説明できることが判明した。また、谷深さhが0.35mm以上では、該hの影響は頭打ちとなることもわかった。そこで、上記のごとく、重み付けされた基準円内側の谷点数N70と基準円外側の谷点数Nc70の合計に対する重み付けとして、谷深さ補正係数αを前記(1)式により定めることとした。(1)の2番目の式にかかるhの二次式は、hを0.25mm、0.3mmないし0.35mmとした場合のαの値として、上記のごとく、それぞれ0.5、0.9ないし1.0が適当であることの経験則を二次式により近似したものであり、0.2〜0.35mmという比較的狭い数値範囲内にて、hが上記以外の値をとった場合のαの適切な値を合理的に算出することができる。
こうして、上記要因ごとにそれぞれ適正化された係数により重み付けされた谷点数Neは、前述の(2)式のごとくとなる。そして、この有効谷点数Neを前述の処理コア部の全流通断面積Stで規格化した有効谷点密度Ne/Stは、液体処理ノズルの微細気泡発生能力を客観的に数値化する指標となる。そして、該値が1.5個/mm2以上確保されているとき、キャビテーション効率ひいては水素微細気泡の発生効率は特許文献に開示された液体処理ノズルよりも明らかに向上し、水素微細気泡を含んだ液体特有の種々の効果を従来ないレベルに顕在化させることができる。有効谷点密度は、より望ましくは1.8個/mm2以上確保されているのがよい。液体流路の軸断面形状はたとえば円形にすることが望ましいが、過度の損失を生じない限り、楕円や正多角形状(正方形、正六角形、正八角形等)の軸断面を有するものとして形成することも可能である。
特に、水素微細気泡の形成密度を適正化し、溶存水素濃度(ひいては組成物の還元性)の持続性を顕著に確保できる具体的な条件として、次のようなものと例示できる。すなわち、液体処理ノズルとして、前述のNe/Stで表される有効谷点密度が1.5個/mm2以上確保されてなり、液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積が2.5mm2以上20mm2以下に設定されたものを使用するノズルを用いる。そして、混相流を形成するための水素ガス流量をQ1、本体組成物の流量をQ2としたとき、液体入口側の動圧を0.1MPa以上0.5MPa以下、水素ガスの本体組成物に対する流量比Q1/Q2が0.01以上0.2以下となるように液体処理ノズルに本体組成物を供給する。これによって製造可能な水素含有液状水性組成物は、次のごとき新規な特徴を有するものとなる。
すなわち、本明細書における第一の参考発明たる水素含有液状水性組成物は、分子状水素を含有した液状水性組成物であって、
開口径18cmの円筒形内面形状を有する容器に水素含有液状水性組成物を5L収容し、20℃の大気中にて隔膜ポーラログラフ式溶存水素計により該水素含有液状水性組成物の溶存水素濃度の経時変化を、溶存水素濃度の値が計測開始時の値の10%に到達するまで、測定時のみ液を30秒以内の時間にて撹拌することにより60分以上の間隔で断続的に測定し、
各時刻における溶存水素濃度測定値を経過時間に対しプロットし、
得られる一連のプロット点を2つの時間区間に分割して各々指数関数により最小二乗近似したときの各区間の相関係数が最大化されるように時間区間の分割点を定め、その分割された時間区間の、短時間側の区間に属するプロット点への指数関数回帰曲線を短時間側回帰曲線CP、長時間側の区間に属するプロット点への指数関数回帰曲線を長時間側回帰曲線CSとして、それぞれ、
とする一方、水素含有液状水性組成物の含有組成から水素を除いた組成物を本体組成物として作成し、該本体組成物を20℃にて0.2MPaの純水素雰囲気にて、溶存水素濃度が平衡するまで水素溶解処理し、その後大気開放した組成物(以下、参照水素含有組成物という)に対し、上記水素含有液状水性組成物と同様に溶存水素濃度の経時変化を測定したときの長時間側回帰曲線を、
としたとき、潜在水素含有係数k0/kSの値が1.4以上であり、かつ、
にて算出される値を推定全水素量としたとき、
にて算出される推定微細気泡水素量が0.1ppm以上15ppm以下であることを特徴とする。
本発明者は、製造された水素含有液状水性組成物の特徴を、該組成物を大気中に放置したときの溶存水素濃度測定値の経時変化から特定すること、具体的には、溶存水素濃度測定値の経時変化を、参照水素含有組成物(水素微細気泡を含有せず溶存水素のみを含有する組成物)と比較することにより、水素微細気泡の含有量(微細気泡水素量)を推定することが可能であり、前述の製造方法によって得られる水素含有液状水性組成物の微細気泡水素量が、0.1ppm以上15ppm以下という特有の範囲となることを見出して上記第一の参考発明を完成するに至った。微細気泡水素量が0.1ppm未満では、組成物の高溶存水素濃度状態(還元性持続状態)の継続が不十分となる(換言すれば、溶存水素のみを含有する参照水素含有組成物に対する該持続性の優位を確保できなくなる)。また、推定微細気泡水素量が15ppmを超えると、水素微細気泡の安定性が確保できなくなり、衝撃等が加わると一挙に合体発泡して蒸散し、大気開放の条件下で高溶存水素濃度状態を長期にわたって維持することが難しくなる。
組成物からの水素の蒸散速度は、液量や容器形状の影響を受けなくするため、標準的な容器として開口径18cmの円筒形内面形状を有するものを用い、これに水素含有液状水性組成物を5L収容し20℃の大気中にて、その溶存水素濃度を測定する。溶存水素濃度は、隔膜ポーラログラフ式溶存水素計にて測定する。隔膜ポーラログラフ式溶存水素計は、4フッ化エチレンなどで形成された隔膜を介して通過してくる水素分子を電極上で酸化するのに要する電流値から水素濃度を求めるので、電位差を測定する酸化還元電位計とは異なり、電極表面の分極の影響等を受けにくく、溶存水素濃度の絶対値を比較的正確に把握できる利点がある。
測定に際しては、隔膜表面の水素濃度と組成物中の溶存水素濃度とがなるべく平衡を保つよう、測定中は組成物を撹拌する必要がある。しかし、この撹拌は振動と同様、水素微細気泡の合体発泡を促す恐れがあり、少なくとも連続的に撹拌継続すれば、合体発泡により損失する水素量が増大し、推定微細気泡水素量の算出に少なからぬ影響を及ぼす可能性がある。そこで、溶存水素濃度の経時変化は、測定時のみ液を30秒以内の時間にて撹拌することにより、60分以上の間隔で断続的に測定するようにする。また、この測定時における撹拌程度であれば、推定微細気泡水素量が15ppm以下にとどまる限り、該撹拌により水素微細気泡の合体発泡が、特許文献5に示唆されているように連鎖的に一気に進行する恐れがない。なお撹拌の速度は、たとえば外径φ8mm、長さ30mmの撹拌子を用いたマグネチックスターラーを用いる場合は、60rpm〜120rpmの範囲が妥当である。
本発明の製造方法によって得られる本発明特有の水素含有液状組成物に関しては、本発明者らが詳細に検討した結果、溶存水素濃度の計測が適正になされる限り、各時刻における溶存水素濃度測定値を経過時間に対しプロットしたとき、溶存水素濃度は時刻に対し指数関数に従って減少することが確かめられている。したがって、上記の測定プロット点に対して最小二乗法により指数関数回帰を行うと、組成物からの水素の蒸散挙動や含有水素量に関する定量的な情報を合理的に得ることができる。ただし、水素微細気泡からの水素溶出と液面からの水素蒸散とが平衡しない測定前半期間と、両者が平衡する測定後半期間とで、互いに異なる指数関数により近似されるケースもあるので、前後半に分割した形で指数関数回帰を行うことにより近似の精度を上げるようにする。もちろん、全期間にわたって単一の指数関数により十分高精度に近似できるときは、あえて回帰区間を分割する必要はない。
また、溶存水素濃度の経時変化を測定する期間を、計測開始時の値の10%に到達するまで、と定めているのは、最終的に全水素量を算出・推定する際に、経過時間を無限大まで外挿するに際しての、指数関数近似の精度を確保するためである。もちろん、さらに時間を延長し、計測開始時の値の10%未満の値に到達するまで測定を継続することは、精度向上の観点においてより有効である。
液体中に溶解した気体(溶存気体)の蒸発速度を支配する物理的関係として、Hertz−Knudsenの式がよく知られている。この式の原型は、液体単位面積から単位時間あたりに蒸発する気体の個数Z(つまり、分子数でカウントした気体の蒸発速度)を与えるものであり、
ただし、m:気体分子1個の重量、k:ボルツマン定数、
T:液体の絶対温度、P:液面における気体の分圧
で表される。気体の場合、分子をアボガドロ数個集めれば1molとなり、その体積は温度と圧力が一定ならどんな気体でも一定になる。この点に注意し、液体が接する空間にも溶存気体の分圧p0が存在する場合について、数4は次のように書き直せることが知られている。
ただし、v:単位面積当たりの気体のモル蒸発速度、M:気体の分子量、R:ガス定数
数5からわかることは、次の通りである。
・液温Tが一定なら、液面直上の気体分圧pに比例して気体の蒸発速度は増大する。
・液面直上の気体分圧pが空間中の気体分圧p0と等しいとき、気体の蒸発は止まる。
数4に従う気体の蒸発現象は単純な1階の線形微分方程式で表され、例えば含有される水素の全てが溶存水素である場合、初期溶存水素濃度をC0として、時刻tにおける水素濃度C(t)は、図16に実線で示すごとく、ボルツマン因子型の指数関数:
となる。純水(粘度:1mPa・s)の場合、開口径18cmの円筒形内面形状を有する容器に5L収容して20℃の大気圧(0.1MPa)に放置したときの、溶存水素濃度の減衰を測定したときのk0の値は、本発明者らが繰り返し測定を行った結果、溶存水素濃度の単位をppm、経過時間の単位を分として、0.0021〜0.0024程度の一定値となることが判明している。本明細書では、このk0を標準減衰係数と称し、例えば粘度が1mPa・sの場合(純水の場合である)、その値を0.002255として定義する。また、粘度がこの値よりも大きい液状組成物の場合は、本体組成物を20℃にて0.2MPaの純水素雰囲気にて、溶存水素濃度が平衡するまで水素溶解処理し、その後上記の容器に入れて大気開放して溶存水素濃度の経時変化を測定したときの減衰係数を標準減衰係数として採用する。
一方、水素微細気泡を含んだ水の場合も溶存水素濃度C’も、同様の指数関数として計測されるが、図16に破線で示すように溶存水素濃度の減少速度は小さくなる。
図16において、2つの減衰曲線において、溶存水素濃度が互いに等しくなる各時刻での水素の蒸発速度は、数5から互いに等しい。すなわち、
数6及び数7から、
ここで、数5が成立する液体は、図18に示すように、液中に溶存水素のみが存在し、水素微細気泡が含まれない液体に限られることは明らかである。なぜならば、図19に示すように、溶存水素以外に水素微細気泡(UFB)が含有されていると、液中の溶存水素濃度の変化率は、液面から蒸発する水素の蒸発速度と、水素微細気泡(あるいはハイドレート)から周囲の水への水素溶出速度(図19中、白の矢印)との合成となって表れるからである。したがって、ある水素濃度C’(t)における溶存水素の蒸発速度は、溶存水素のみが存在する液体の曲線C(t)の、濃度C’(t)に対応する時刻(図中、上線付のt)での微分係数として与えられる。すなわち、数9も用いて、
この水素微細気泡が含まれる液体について、時刻aから時刻bまでの期間に蒸散する水素の総量QXは、
となる。すると、大気に暴露し始めてから、溶存水素濃度が完全に0になるまでの間に蒸散する水素量、すなわち、溶存水素と水素微細気泡とを合わせた全水素量Qtotは、時刻aを0、時刻bを∞として、数11より、
となる。この数12を用いれば、溶存水素計では測定できない液体中の水素微細気泡も含めた全水素量を推定することが可能となる。この式は、溶存水素濃度の初期値C0に(k0/k)の値を乗ずることで溶存水素と水素微細気泡とを合わせた全水素量Qtotを推定できることを意味しており、以降、「潜在水素含有係数」と称することにする。なお、溶存水素のみが液中に含まれる場合はk=k0であり、Qtot=C0だから、水素微細気泡が含有される場合は、
にて表されるQBが、水素微細気泡の含有量を表すことになり、
が、全水素量に示す水素微細気泡の比率を示すこととなる。
水素含有液状水性組成物の粘度については特に制限はないが、例えば20℃における粘度が3000mPa・s以下のものであり、標準減衰係数k0を実測する前提で、上記の計算式により含有水素量を算出することができる。特に、粘度が100mPa・s以下の場合は溶存水素の蒸発速度が大きいため、標準減衰係数k0の実測が比較的容易であり、含有水素量についてもより精度よく見積もることができると考えられる。
また、大気中に暴露する液体の体積Vと液面面積Sの影響であるが、これはすべて数11に基づいて考察することができる。たとえば、容器に入っている液体の初期溶存水素濃度がC0であり、液面面積を1として体積だけV倍したときの減衰係数をk’、元の減衰係数をkとすれば、数12から、
一方、体積を1として液面面積をS倍したときの減衰係数をk’、元の減衰係数をkとすれば、単位時間当たりの水素の蒸発量がS倍になるので、
数13及び数14をまとめると、
すなわち、容器の体積Vと液面面積Sの、そのいずれもが異なるような2つの容器系で測定した溶存水素濃度の減衰曲線が与えられた場合、実測の濃度減衰曲線のk(減衰係数)を数15に従って変換ないし規格化すれば、容器の形状による影響を受けない比較が可能となる。本明細書においては、前述の標準容器、すなわち円筒状容器にて、液体積Vが5L、液面形状が直径18cmの円である場合を基準として採用するものとしている。
また、水素微細気泡を含有する液状組成物の溶存水素濃度の減衰曲線は、図17に示すように、大気中放置開始初期において、後続の時間区間よりも減哀係数kの値が大きくなる場合がある。こうした現象は、水素微細気泡(ないしハイドレート)からの水素の溶出速度が、液面からの水素の蒸散速度よりも小さくなる場合に起こり得る。すなわち、水素ガス導入処理直後は、水素微細気泡の周囲の溶存水素濃度は飽和しているが、その溶存水素の蒸散が進行するにつれ、微細気泡の溶解に伴う溶存水素の補充が、水素の液面からの蒸散に追いつかなくなり、液面からの水素の蒸散が勝って減衰係数kの値が大きくなる場合がある。しかし、溶存水素の蒸散が進行すれば、液面からの水素蒸散と微細気泡からの水素溶出とが平衡し、減衰係数kの値は小さくなる。そして、本発明の方法により製造した液状組成物の大気中での溶存水素減衰曲線は、前述のごとくkの値が異なる2区間に分割して指数関数フィッティングすると、より精度よく近似できることがわかっている。
この場合の全水素量の推定方法を、図17に基づいて説明する。
すなわち、開口径18cmの円筒形内面形状を有する容器に水素含有液状水性組成物を収容し20℃の大気中にて隔膜ポーラログラフ式溶存水素計にて溶存水素濃度の経時変化を、溶存水素濃度の値が計測開始時の値の10%に到達するまで測定する。そして、各時刻における溶存水素濃度測定値を経過時間に対しプロットし、得られる一連のプロット点を2つの時間区間に分割して各々指数関数により最小二乗近似したときの各区間の相関係数が最大化されるように時間区間の分割点tsを定める。その分割された時間区間の、短時間側の区間に属するプロット点への指数関数回帰曲線を短時間側回帰曲線CP、長時間側の区間に属するプロット点への指数関数回帰曲線を長時間側回帰曲線CSとして、それぞれ、
とする。
他方、水素含有液状水性組成物の含有組成から水素を除いた組成物を本体組成物として作成し、該本体組成物を20℃にて0.2MPaの純水素雰囲気にて、溶存水素濃度が平衡するまで水素溶解処理し、その後大気開放して、水素含有液状水性組成物と同様に溶存水素濃度の経時変化を測定したときの長時間側回帰曲線を、
として定める。
すると、各区間での水素蒸散量(ただし、長時間側については、時刻∞まで外挿)QP、QSは、前述の数11により、それぞれ
従って、全水素量Qtotは、
により算出することができる。この場合、前述の潜在水素含有係数の値は、液面からの水素蒸散と微細気泡からの水素溶出とが平衡する長時間側区間での値k0/kSを採用するのが妥当である。
潜在水素含有係数の値は、1.4以上に確保されていることが、大気開放時において溶存水素濃度を長時間高く保つ上で好ましく、より望ましくは、該値が3以上であるのがよい。潜在水素含有係数の上限値に制限はないが、たとえば10程度である。そして、微細気泡水素量QBの値は0.1ppm以上15ppm以下であり、望ましくは3.5ppm以上15ppm以下である。さらに、QB/Qtot、0.29以上確保されているのがよく、より望ましくは0.67以上であるのがよい。QB/Qtotの上限値に制限はないが、たとえば0.9程度である。
本発明の製造方法によれば水素ガスの溶解能力も当然に高いので、溶存水素濃度の経時変化を計測する際の計測開始時の溶存水素濃度測定値は0.3ppm以上、より望ましくは1ppm以上とすることができる。なお、水素微細気泡が多量に含まれている場合、隔膜ポーラログラフ式溶存水素計は常温大気圧下での飽和溶存濃度を超えた値を示すことがあり、上記計測開始時の溶存水素濃度測定値の上限値は、例えば3ppm程度の値までは上昇しうる。そして、後述の実施例にて詳細に示す通り、製造条件の適正化により経時変化における計測開始時の溶存水素濃度測定値は1.5ppm以上確保すること、推定微細気泡水素量を5ppm以上とすることも十分に可能である。また、水素含有液状水性組成物が水であれば、経時変化における計測開始24時間後の溶存水素濃度を0.8ppm以上すること、48時間後の溶存水素濃度を0.3ppm以上確保することもできる。
また、本発明の方法により製造される水素含有液状水性組成物は、ノズル通過時のキャビテーション効果により溶存酸素が積極的に排出される結果、該溶存酸素濃度を1.5ppm以下(望ましくは1ppm以下:下限値は0ppm)とすることができる。溶存酸素の低減は、特に、容器内に水素含有液状水性組成物を密封保管する場合に、その酸化還元電位ないし溶存水素濃度値を長期間良好に維持する観点において有利である。
次に、本発明の水素含有液状水性組成物の製造方法は、従来水素添加が特に困難であった高粘度の本体組成物を採用する場合に、特に顕著な威力を発生する。具体的には、本体組成物として、粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下に調整されたものを使用し、該本体組成物と水素ガスとの混相流を前述の液体処理ノズルの衝突部に供給し、水素ガスを水素微細気泡に粉砕しつつ液体出口から流出させることにより水素含有液状水性組成物を水素添加高粘度液体として得るようにする。
また、本明細書における第二の参考発明たる水素添加高粘度液体は、本体組成物に水素微細気泡を配合した水素添加高粘度液体であって、20℃における粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下に調整されるとともに、0.7MPaの窒素ガスによる5分間の加圧処理後に残留する水素微細気泡の含有率が1体積%以上30体積%以下であることを特徴とする。
そして、本発明の水素含有液状水性組成物の製造方法は、上記水素添加高粘度を製造する場合、液体処理ノズルとして、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されたノズル本体と、液体流路の内面から突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えたものを使用し、
粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下に調整された本体組成物と水素ガスとの混相流を液体処理ノズルの衝突部に供給し、水素ガスを水素微細気泡に粉砕しつつ液体出口から流出させることにより水素添加高粘度液体を得ることようにする。
上記のような水素添加高粘度液体において液体中の水素微細気泡の含有率は、添加したガスがすべて水素であり、かつ本体組成物の真比重が知れている場合は、得られた液体の見かけ比重を測定することで、その体積増分を水素微細気泡による増分として算出することが可能である。一方、これらが知れていない場合は、たとえば次のようにして特定した値を水素微細気泡の含有率とみなすことができる。すなわち、水素は昇温により蒸発しやすくなり、その微細気泡は超音波振動の印加により合一して粗大気泡となりやすくなる。そこで、液体サンプルをたとえば40℃以上80℃以下の一定温度に昇温して比重を測定し、比重上昇が止まってほぼ一定となったところの値を読み取り、これを本体組成物の真比重Wと推定して、昇温前のサンプルの見かけ比重とから気泡体積率を算出する。他方、比重測定時の蒸発成分をガス分析するか、あるいは液体サンプルをガスクロマトグラフィーに供すれば、それらの結果からサンプル中の総水素体積を求めることができる。総水素体積が気泡体積よりも多いか等しい場合は、気泡体積のすべてが水素微細気泡になっていると考え、総水素体積が気泡体積よりも少ない場合は、総水素体積を近似的に水素微細気泡体積とみなして水素微細気泡の含有率を算出する。
前述のごとく、本発明に使用する液体処理ノズルの原理は、たとえば特許文献6〜9などで周知となっており、キャビテーションによる微細気泡の発生効果を有するものである。しかし、特許文献3においても指摘されているごとく、キャビテーション方式を用いたとしても粘度の高い液体の場合は気泡の粗大化が進みやすく、特にガスが水素の場合は微細気泡の形成効率は低いとみられていた。そのため、特許文献6〜9においてはガス溶解への利用は示唆されているものの、使用する液体は粘度の低いもの(具体的には水)が対象にされており、高粘度液体への適用は示唆されておらず、ましてやこうした高粘性液体中での微細気泡化が困難とみられていた水素の利用可能性については一切言及されてこなかったのである。
ところが、本発明者らが鋭意検討を行った結果、水素微細気泡の添加対象とするべき本体組成物の粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下の範囲に調整されるとき、外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部に対して、水素ガスとの混相流の形でこれに供給すると、当初予想とは全く想像に反して水素が効率的に微粉砕され、粘度の高い本体組成物に対しても水素ガスを水素微細気泡の形で大量かつ極めて安定的に保持できることを見出し、第二の参考発明を完成させるに至ったものである。
第二の参考発明にかかる水素添加高粘度液体も上記本発明の製造方法により特有に得られるものであって、20℃における粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下の高い値を示すにもかかわらず、水素微細気泡は1体積%以上30体積%以下という、従来決して到達しえなかった含有率に到達する。これは、本体組成物よりも密度がはるかに低い水素微細気泡が大量に分散保持される結果、見かけ比重が水素添加前の本体組成物よりも巨視的に低下することを意味する。
その結果、液体の粘度が高い分、溶存水素の蒸発速度が遅くなるのみならず、大半の水素が微細気泡の形で含有されていることで、肌等へ塗布した後も長時間にわたって高濃度にとどまり続け、水素微細気泡から溶出する分子状水素の強大な還元力により、本体組成物の酸化防止などの種々の効果を発揮することができる。また、容器に保存した場合にあっても、高濃度水素状態を長期間持続でき、ひいては上記水素特有の効果を発揮できる品質状態を長期間安定に保持することができる。
液中の気泡の界面には、液面からの気泡の存在深さに応じて作用する液圧だけでなく、表面張力に基づいた内圧が作用する。液状組成物を保管する容器の液面深さはそれほど大きなものではなく、結果、気泡内圧への液圧の寄与はほとんど無視でき、表面張力に基づいた圧力増分だけを考慮すればよい。この圧力増分Δpは、液体の表面張力をσ、気泡径をDとしたとき、
Δp=4σ/D ・・・・(1)
という式で表される。これはYoug−Laplaceの式として古典的に知られているものである。簡単のため、水中の気泡で考えれば、気泡径Dが3μmで気泡内圧はほぼ大気圧と等しくなり、Dが1μmでまで縮小すると気泡内圧はその約3倍、0.5μmで6倍の値に達する。気体の液体に対する溶解度は、水素のようなヘンリーの法則に従うガスの場合は圧力に比例して増大するので、気泡径Dが縮小すればするほど内圧上昇により内部の水素ガスが溶解して気泡の縮小が進み、最終的には消滅すると考えられてきた。しかし、近年の研究の進歩により、気泡がサブミクロンオーダーに縮小しても、様々な要因によりその大きな内圧上昇に耐えて安定化することがわかり、ウルトラファインバブルあるいはナノバブルとも称される微細気泡として液中に残留しうる。
表面張力により内圧上昇した気泡内部のガスは反力により周囲の液相に加圧力を及ぼす。これが、気泡中のガスの溶解の駆動力となる。常圧で内圧が1気圧未満となる粗大な気泡(おおむね3μm以上)は、上記のごとく外部圧力により加圧された時、その圧力増分により液相のガスに対する溶解度が上昇するので、気泡からのガス溶出が進み、気泡は縮小する。そして、表面張力に由来した内圧上昇Δpが外部圧力とつりあう平衡気泡径に到達すれば、そこで気泡縮小は止まる。窒素ガスによる外部圧力が0.7MPaのときの平衡気泡径はおおむね430nm程度である。本体組成物の液相主成分が水である場合、窒素加圧後の液体サンプルの高分解能マイクロスコープ観察画像などから見積もられる平均気泡径はこの値とほぼ一致する。すなわち、本体組成物は液相主成分が水である場合、含有される水素微細気泡の平均気泡径は430nm以下(すなわち、微細気泡)である、ということができる。
本体組成物の水素添加前の比重をWとしたとき、水素微細気泡を形成する水素ガスの比重wはそれよりもはるかに小さいから、水素微細気泡が1体積%以上30体積%以下の範囲で含有されているということは、水素添加後の液体の見かけ比重は0.9W以上0.700W以下となって表れる。これは、ごく普通の精度の天秤を用いれば十分に測定にかかる重量変化でもある。そして、この比重変化は水素微細気泡の含有によってもたらされるものであり、単に本体組成物に水素ガスが溶存しただけでは比重はほとんど変化しない。ガス状水素の分子量が2であり、分子サイズも極めて小さいことを考えればこれは当然のことである。
他方、1体積%以上30体積%以下の水素微細気泡を水素の重量含有量に換算すると、0.9W以上26.79W以下(単位:ppm)となる。本体組成物に水素微細気泡が含有されている場合、気泡周囲の液相には当然、微細気泡から溶出した(もしくは微細気泡形成時に溶解した)水素が溶存形態で含有されるから、全水素量はこれに溶存水素量を加算した値となる。得られる液体の溶存水素量は、たとえば酸化還元電位測定や、溶存水素計による直接測定により計測・把握するができるが、いうまでもなく、この値は溶存している水素量を表すものであって、水素微細気泡が保持するガス状水素の量を反映したものではない。たとえば、前述の特許文献3に開示の水素含有組成物では、調製後10日を経過したときの酸化還元電位が不変であることが開示されているのみであり、組成物の粘度や水素気泡の体積率に関しては全く言及されていないし、文献に開示された他の情報からの推定も不能である。
本体組成物の液相主成分が水である場合、水素微細気泡の含有率が1体積%以上であるということは、水素微細気泡が安定に存在するために周囲の液相の溶存水素濃度は相応に高くなっており、酸化還元電位の値は−300mV以下に確保される。液相がこのように還元性を示すことで、本体組成物の他の含有成分の酸化劣化を効果的に防止することができる。
また、本発明の水素添加高粘度液体は、粘度が高い分、液相中の溶存水素の揮散速度が遅く、その結果、水素微細気泡は大気中に放置しても高濃度の存在状態を長期間維持する。たとえば、20℃の大気中にて1日放置して測定した水素微細気泡の含有率を0.5体積%以上25体積%以下とすることが可能である。すなわち、水素添加高粘度液体を大気と接触する状態にしても、その放置時間が一日程度では、気泡含有率はなかなか低下せず、還元性の状態を強固に保持し、酸化が進行しにくい。
水素微細気泡は本体組成物の粘度が高いほど残留しやすくなり、耐久性の高い微細気泡を、より高い体積含有率で保持することができるようになる。たとえば、粘度が300mPa・s以上2000mPa・s以下に調整される場合(後述のごとく、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加される場合は、例えば7気圧もの窒素加圧後においても)、水素微細気泡の含有率は1体積%以上25体積%以下とすることができる。当然、粘度が高いほど、一旦形成された水素微細気泡の耐圧性も高まるので、たとえば20℃の大気中にて1日放置して測定した水素微細気泡の含有率は、(後述のごとく、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加される場合は、例えば7気圧もの窒素加圧後においても)、1.5体積%以上23体積%以下とすることができる。また、同じ条件で、7日放置して測定した場合であっても、水素微細気泡の含有率を1体積%以上20体積%以下に確保することができる。これは、たとえば、密閉容器に収容された水素添加高粘度液体を開封して大気と接触する状態にしたとき、開封後1週間経過しても水素微細気泡が1体積%は残留し、酸化の進みにくい還元性の状態に維持できることを意味する。
例えば、粘度がさらに上昇して1000mPa・s以上2000mPa・s以下に調整される場合は、水素微細気泡の含有率は(後述のごとく、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加される場合は、例えば7気圧もの窒素加圧後においても)、10体積%以上25体積%以下に確保できる。この場合、さらに20℃の大気中にて7日放置して測定した水素微細気泡の含有率は8体積%以上18体積%以下と、水素微細気泡の安定性はさらに飛躍的に上昇する。この場合、同条件で1か月放置して測定した水素微細気泡の含有率でさえ、なお5体積%以上10体積%以下を維持することも可能である。
次に、上記のように特徴ある第二の参考発明たる水素添加高粘度液体の、その製造方法の作用について詳細に説明する。すなわち、ノズル本体において液体(本体組成物)の流れは、衝突部に衝突してその下流に迂回する際に谷部内にて絞られることにより増速し、本体組成物の液相に原料段階で含有される溶存ガス(空気など)の析出により激しいキャビテーションを起こし、その減圧沸騰作用により気泡を生じつつ液体を激しく撹拌する。これに、衝突部を高速流が迂回する際に生ずる渦流も加わり、衝突部の周辺及び直下流域には非常に顕著な強撹拌領域が形成されることとなる。
そして、本体組成物の流れに外部から水素ガスを導入して混相流の形で供給すると、水素ガスの気泡は衝突部の谷部を通過する際に摩擦により激しく剪断され、本体組成物の粘性に打ち勝って粉砕されるとともに、キャビテーションによる激しい減圧沸騰に由来した衝突部下流の強撹拌領域に巻き込まれることで一挙に微細気泡(1μm未満)のレベルにまで粉砕されるものと考えられる。このとき、撹拌により一旦溶存した水素ガスが、谷部ないし強撹拌領域で水素微細気泡として再析出することも考えられる。そして、本体組成物の粘度が高いために、一旦剪断と撹拌により粉砕された水素気泡の再合一が、低粘度の液体を用いる場合と比較して起こりにくくなること、溶存した水素ガスが気泡として再析出する際の成長速度が小さくなることなどが、水素微細気泡の発生率向上に大きく貢献しているものと考えられる。
本体組成物の粘度は100mPa・s以上3000mPa・s以下に調整されたものを使用するが、粘度がこの下限値未満であると水素微細気泡の安定性と体積含有率を十分に確保できなくなる。他方、3000mPa・sを超えると、流動性低下により液体処理ノズルを流通させた時の衝突部での流速が十分確保できなくなり、微細気泡の形成効率が低下して水素微細気泡の体積率を十分に確保できなくなる。本体組成物の粘度(ひいては、結果物としての水素添加高粘度液体の粘度)は、より望ましくは300mPa・s以上2000mPa・s以下に設定するのがよい。
本発明に採用可能な本体組成物の種別は特に限定されない。たとえば、飲料水、冷却水、洗浄水、その他の工業用用水である。また、比較的高い粘性を有する液状食品で、本発明に適用可能なものは、たとえば以下のようなものがある。
ヨーグルト、乳酸菌飲料(たとえば商標名:カルピス)、生クリーム、コンデンスミルク、はちみつ、シロップ類(ガムシロップ、メープルシロップ等)、チョコレートソース、水飴、麦芽糖、チョコレートソース、中濃ソース、とんかつソース、お好み焼きソース、焼きそばソース、ホワイトソース、デミグラスソース、トマトソース、トマトピューレ、トマトケチャップ、ポタージュスープ、ドレッシング類、トマトジュース、ネクターなどの果肉飲料、ゼリー飲料。また、食品以外でも、化粧料、医薬品(液状軟膏や液状歯磨きなど)や粘性油など、本発明に採用可能である。
例えば、化粧料に本発明を適用する場合、その本体組成物は特に限定されるものではなく、周知の構成を例示することができる。化粧料本体組成物に採用可能な主な構成成分を以下に列挙する。
水は液状の組成物のベースをなす成分であり、RO水やイオン交換水を使用する。また、適宜、水性溶媒を配合することができる。水性溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、メタノール等。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
また、通常、化粧品、医薬品等に用いられ下記の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる(機能により、上記の成分と重複しているものもある)。
保湿剤:グリセリン、ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合物またはそのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールまたはそのアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジカルボン酸エステル、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタングリコール、1,2−ヘキサングリコール、2−メチル−1,3−プロパノール、エチルカルビトール、1,2−ブチレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン等。
増粘剤:セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クインスシード、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、アラビアガム、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、アラビアガム、ゼラチン、ヒアルロン酸、ゼラチン、ムコ多糖、チュベロース多糖体等。
抗菌防腐剤:安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベンなど)、ヘキサクロロフェン等。
有機酸:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸とその塩。アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等。
各種薬剤:ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体などのビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテートなどのビタミンC類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネートなどのビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチンなどのビタミン類。ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サポニン類(サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニンなど)、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、セファランチン、プラセンタエキス等。
天然エキス:ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、タイム、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラなどから有機溶剤、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコールなどで抽出したもの。
界面活性剤:ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイドなどのカチオン界面活性剤。モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキセチレンソルビタン、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエナレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアマイド、脂肪酸イソプロパノールアマイド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、シュガーエステル等の非イオン性活性剤。ルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、ロート油、リニアドデシルベンゼン硫酸、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油マレイン酸、アシルメチルタウリン等のアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤。
金属封鎖剤:エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等。
中和剤:水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等。
また、その他、香料、スクラブ剤、粉末、色材、美白剤、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線防御剤なども、安定性などを損なわない範囲で適宜配合することができる。紫外線吸収剤の例としては下記のものが使用可能である。
安息香酸系紫外線吸収剤:パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAメチルエステル等。
アントラニル酸系紫外線吸収剤:ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等。
サリチル酸系紫外線吸収剤:アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等。
桂皮酸系紫外線吸収剤:オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート、トリメトキシ桂皮酸メチルビス(トリメチルシロキサン)シリルイソペンチル等。
その他:3−(4’−メチルベンジリデン)−d,1−カンファー、3−ベンジリデン−d,1−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等。
さらに増粘剤又は油相を添加することにより、25℃における粘度を500mPa・s以上に調整し、水素含有高粘度化粧料とすることができる。これにより、水素微細気泡を多量に含有した高粘度化粧品に転換することができ、溶存水素の蒸発が一層抑制されて高還元性の状態をより長期間保つことができるようになる。
特に、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加されるとき、含有される水素微細気泡の安定性は顕著に増大し、大気放置時はもちろん、5気圧以上10気圧以下の加圧処理を行っても、水素微細気泡を十分に残留できるようになる。粘度の高い液体組成物中では気泡の浮上速度が大幅に減少するため、比較的寸法の大きい気泡も常圧下ではしばらくは消泡せず、本体組成物中に残留するが、上記のように窒素ガスで0.7MPaまで加圧すればサブミクロン寸法まで縮小する。したがって、従来のプロペラによる剪断撹拌やスタティックミキサによるガスバブリング等で得られる粗大な水素気泡が主体の組成物の場合、窒素ガスによる加圧を行うと大半の気泡は縮小し、気泡減少率は大きな値となり、場合によってはほとんどの気泡が消滅してしまうこともあり得る。しかしながら、本発明の水素添加高粘度液体にあっては、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加されるとき、見かけ比重の明らかな低下を伴うほどの高体積率に水素気泡を含んでいるにも拘わらず、例えば7気圧もの窒素加圧後においても残留する水素微細気泡が1体積%以上30体積%以下という高い比率を実現できる。
本発明によると、本体組成物の粘度が3000mPa・s以下であれば、本体組成物には常温で水素微細気泡を直接添加することが可能である。一方、化粧料本体組成物に水素微細気泡を添加しておき、その後、増粘剤を添加して粘度を上昇させることもできる。また、増粘剤の添加と水素ガスの添加を、低粘度状態にて同時に行いつつ増粘剤の溶解ないしゲル化反応を進行させて高粘度化する方法を採用することも可能である。また、油相を用いる場合も、化粧料本体組成物に水素微細気泡を添加しておき、その後、昇温して低粘度化させた油相を加えて冷却しつつ混合し、高粘度化する方法と、油相の添加と水素ガスの添加とを、昇温した低粘度状態にて同時に行いつつ冷却して高粘度化させる方法の、いずれを採用してもよい。
この場合、採用可能な増粘剤の例はすでに説明した通りである。他方、油相成分としては以下の1種又は2種以上を採用することができる。
液体油脂:アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等。
固体油脂:カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等。
ロウ類:ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル。
炭化水素油:流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等。
合成エステル油:ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等。
シリコーン油:鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、アクリルシリコーン類等。
さらに油分中には、高級脂肪酸を一種または二種以上配合することが好適である。油分中にこれらを配合することで乳化粒子が更に微細化される。高級脂肪酸としては炭素数16〜24のものが好適であり、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソミリスチン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。
得るべき水素含有液状水性組成物の含有組成から水素を除いた組成物を本体組成物として、該本体組成物と水素ガスとの混相流を液体処理ノズルの衝突部に供給し、水素ガスを微細気泡に粉砕しつつ液体出口から流出させることにより水素含有液状水性組成物を得ることを特徴とする。
本発明において、「水素ガス」は、純水素以外に、水素を50%以上含有した混合ガス(混合ガスの水素以外の残部は、水素との反応活性の低いガス成分であり、具体的には窒素、アルゴンなどの不活性ガスである)も概念に含む。粘度は、B型粘度計(ブルックフィールド粘度計)により、LV4ロータにより回転数60rpmにて25℃で計測した値を用いるものとする。
また、液状水性組成物は、水の含有率が50質量%以上であり、かつ、水と相溶性を有する液体と水との合計質量含有率が80%以上のものをいう。水と相溶性を有する液体は、たとえば、有機溶媒の場合、エタノール、メタノール、グリセリン、エチレングリコールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類などであるが、これらに限定されるものではない。
さらに、本発明において微細気泡とは、気泡径が1μm未満のものをいう。水素微細気泡の平均気泡径はたとえばレーザー回折式粒度計にて測定することができる。本発明の製造方法にて得られる水素含有液状水性組成物は、分子状水素の一部が水素微細気泡として含有される。該平均気泡径は、たとえば100nm前後まで縮小することが可能である。
上記本発明の製造方法に使用する液体処理ノズルの原理は、たとえば特許文献6〜9などで周知となっており、キャビテーションによる微細気泡の発生効果を有するものである。しかし、いずれの文献においても、これらのノズルを水素溶解への適用可能性については全く示唆されてこなかった。その理由については、水素の水に対する体積溶解率が極めて低く、また、溶解してもキャビテーションポイントでの強撹拌により急速に蒸散するために、高い溶存水素濃度を達成することは困難ではないか、と考えられてきたからである。
ところが、本発明者らが鋭意検討を行った結果、外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部に対して、水素ガスと液体とを混相流の形でこれに供給すると、当初予想に全く反して水素が効率的に微粉砕され、組成物中の溶存水素濃度を瞬時にして高めることができるばかりでなく、その水素ガスの一部を水素微細気泡の形で含有できることがわかった。その結果、組成物の溶存水素濃度が高く保持された状態、すなわち高い還元性を保つ状態を長期にわたり継続することができる。
すなわち、本発明の水素含有液状水性組成物の製造方法において、ノズル本体での液体(本体組成物)の流れは、衝突部に衝突してその下流に迂回する際に谷部内にて絞られることにより増速し、本体組成物の液相に原料段階で含有される溶存ガス(空気など)の析出により激しいキャビテーションを起こし、その減圧沸騰作用により気泡を生じつつ液体を激しく撹拌する。これに、衝突部を高速流が迂回する際に生ずる渦流も加わり、衝突部の周辺及び直下流域には非常に顕著な強撹拌領域が形成されることとなる。キャビテーションにより発生した気泡はそれほど成長せずに上記の強撹拌領域に巻き込まれ、微細気泡が効率的に発生する。しかし、ここで、供給する液体に積極的に外部から水素ガスを導入し、液体と水素ガスとの混相流として処理コア部に供給すると、混相流を形成する水素ガスは衝突部下流の強撹拌領域に巻き込まれることで液体との混合が顕著に進み、水素の水に対する飽和溶解度が非常に小さいにもかかわらず、その溶解をきわめて効率的に行うことができる。
衝突部の下流域に強撹拌領域が形成される要因の一つは、供給する液体中に最初から溶存しているガス(特に空気:以下、プレ溶存ガスという)のキャビテーションによる減圧沸騰析出が考えられる。また、液体が圧送されて衝突部に衝突する際に、その背圧により液体は導入された水素ガスとともに加圧され、一部は液体に溶解する。そして、これが、衝突部の谷部を通過する際に高流速化することで減圧され、気泡を析出する流れも当然にある。そして、こうしたプレ溶存ガスや衝突部の上流で溶解した水素ガスの減圧沸騰をきっかけとして、衝突部の下流域に生ずる強撹拌領域では導入される水素ガスの撹拌・溶解が、減圧沸騰で損なわれるガス量を桁違いに上回る規模により進行する。また、液体に溶解しきれなかった水素ガスも、浮上速度の非常に小さい微細気泡として液中に留まることになる。特に水素の場合、水に対する溶解度が低いために、処理コア部及び強撹拌領域では溶存水素が瞬時に飽和状態となり、流速増加に伴うわずかな減圧でも気泡が極めて析出しやすい状況が形成され、高密度に微細気泡が生成すると考えられる。また、脱気水など、プレ溶存ガスがない液体を用いる場合でも、衝突部の上流で溶解した水素ガスのキャビテーション析出により、同様の効果が問題なく達成される。
水素は溶存水素と水素微細気泡の両方の形態で液体中に共存することで、大気中に暴露したとき、溶存水素しか存在しない(すなわち、水素微細気泡を含まない)液体と比較して、溶存水素濃度の見かけの減少速度が低下し、高濃度の状態をより長時間維持するようになる。これは、溶存水素の蒸発速度そのものが低下するのではなく、微細気泡中の水素が周囲の液体に溶出して、溶存水素が補われることに起因するものである。これにより、例えば大気開放された状態で一定レベル以上の溶存水素濃度が求められる場合、高濃度状態の継続時間を延長できる利点につながるのである。
液体処理ノズルに対し本体組成物は、該液体処理ノズルの上流側に配置されたポンプにより圧送することができる。この時、水素ガスをポンプの吸入口側で添加して本体組成物と水素ガスとをポンプ内にて予備撹拌混合することにより混相流となし、液体処理ノズルに流入させることができる。このようにすると、本体組成物と、導入した水素ガスとがポンプの内部流に巻き込まれて予備粉砕された状態で液体処理ノズルに供給されるから、水素気泡の微細化をより効率的に行うことができる。ポンプは、ベーンポンプか渦流ポンプを用いることが、予備粉砕効率が高いため望ましい。この場合、低粘度の液体では、一旦形成した微細気泡が強撹拌領域を通過する際に再合一して浮上し、微細気泡濃度の増加が鈍る場合があるが、溶存水素の蒸発速度が小さい高粘度の本体組成物においてはその再合一が生じにくいために、循環継続に伴う微細気泡の増加が非常に顕著である。
本体組成物と水素ガスとの混相流は液体処理ノズルに対し、ポンプを用いて循環供給することができる。この場合、本体組成物に対する水素ガスの添加を継続しつつ混相流の液体処理ノズルに対する循環供給を継続すれば、水素気泡の形成密度を上げながらその微細化も合わせて進行させることができる。また、水素ガスの添加を中断した状態で混相流の液体処理ノズルに対する循環供給を継続すれば、1回の通過では微細気泡まで粉砕しきれなかった径の大きい気泡も、液体処理ノズル内に発生する強撹拌領域を再度通過することで微細気泡に粉砕していくことが可能となり、微細気泡の形成密度向上に貢献する。
次に、本発明に採用可能な液体処理ノズルの、より具体的構成について説明する。まず、衝突部に形成する複数巻の山部は、らせん状に一体形成することができる。このようにすると、山部の形成が容易になるほか、流れに対し山部が傾斜することで、山部の稜線部を横切る流れ成分が増加し、流れ剥離に伴う乱流発生効果が著しくなるので、気泡のさらなる微細化を図ることができる。この場合、衝突部は、脚部末端側が流路内に突出するねじ部材により形成しておくと、該ねじ部材の脚部の外周面に形成されるねじ山を山部として利用でき、製造が容易である。衝突部をたとえばJIS並目ピッチのねじ部材で構成する場合、衝突部は外径Mを1.0mm(谷部の深さは0.25mm)以上2.0mm(谷部の深さは0.40mm)以下とするのがよく、より望ましくは1.4mm(谷部の深さは0.30mm)以上1.6mm(谷部の深さは0.35mm)以下とするのがよい。
液体流路内への衝突部の配置形態としては、たとえばもっとも単純なものの一つとして、流路断面を二分する形で直径方向に配置する形態を例示できる。この構成は、比較的小流量の液体処理ノズルに有効である。具体的には、液体流路の内径Dを2mm以上4.5mm以下(望ましくは2mm以上3.5mm以下)に設定し、全流通断面積Stを1.2mm2以上10mm2以下(望ましくは1.2mm2以上5mm2以下)に設定するのがよく、良好な微細気泡形成効率を達成できる。
一方、衝突部は投影において中心軸線を取り囲む形態で3以上配置すること、たとえば十字形態に4つ配置することも可能である。この構成は、大流量が求められる構成において、良好な微細気泡形成効率を達成する上で有効である。絞り孔にそれぞれ形成される十字形態の衝突部の組は、たとえばノズル本体の壁部外周面側から先端が絞り孔内へ突出するようにねじ込まれる複数本のねじ部材により容易に形成できる。4本以外では、3本、5本、6本、7本、8本の中から選択することができる。
突出部を4つ十字状に配置する構成では、具体的には、液体流路の内径Dを2.5mm以上7mm以下(望ましくは2.9mm以上5.5mm以下)に設定し、全流通断面積Stを2.5mm2以上35mm2以下(望ましくは4mm2以上13mm2以下)に設定するのがよく、良好な微細気泡発生効率を達成できる。この場合、複数の衝突部の先端が集合する断面中心位置に液体流通ギャップを形成することができる。たとえば十字の中心位置に液体流通ギャップを形成すると、最も高流速となる断面中央の流れ(中心流)が液体流通ギャップの形成により妨げられにくくなり、微細気泡の発生効率がより向上する。
本発明で使用する液体処理ノズルにおいては、ノズル本体に形成する液体流路を単一とすることができる。この場合、被処理液体の全流量を増やしたい場合は、分岐継手等によりノズルを複数並列に接続することができる。このようにすると、ノズル1本あたりの流量は小さくても、全体ではキャビテーション効果を犠牲にすることなく十分な流量が確保できるようになる。
一方、液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、隔壁部に貫通形成され流入室と流出室とを互いに別経路にて連通させる複数の絞り孔とを備え、処理コア部は、絞り孔の内面から各々突出する形で衝突部を形成するように構成することも可能である。すなわち、複数のノズルを並列接続する場合は、衝突部が配置される処理コア部の前後の流路が各ノズルに独立して配置される構造になるが、上記の構成では、隔壁部に複数の絞り部を形成し、その前後の流路区間を該隔壁部が区画する流入室ないし流出室の形に集約して、それら複数の絞り部により共有化させる形となるのである。これにより、流路が複数系統に分岐する区間は隔壁部に形成された絞り孔のみに短縮することができ、分岐流路が長くなることに由来した偏流発生の防止に貢献する。特に、高粘度の液状原料を流通させる場合、気泡の偏流は特に発生しやすいので、均質な水素微細気泡を高体積率で形成する上で有効である。この場合も、処理コア部において複数の絞り孔のそれぞれに、ノズル本体の軸線と直交する平面への投影において衝突部を、孔中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置し、それら4つの衝突部が形成する十字の中心位置に液体流通ギャップを形成した構成とすることができる。
たとえば衝突部は、上記の投影において中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置されたM1.2以上M2.0以下(望ましくはM1.4以上M1.8以下)のねじ部材とすることができ、前述のごとく、液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積(液体流路1個あたり)が2.5mm2以上20mm2以下に設定されたものを使用することができる。ねじ部材の寸法が上記の範囲外になると微細気泡の形成効率が十分でなくなる場合がある。また、全流通断面積は上記の下限値未満では本体組成物の流通抵抗が高くなりすぎて(特に、高粘性の場合)、処理効率の低下を招く。また、上限値を超えた場合は衝突部での流速低下により微細気泡の形成効率が十分でなくなる場合がある。
本体組成物と水素ガスとを液体処理ノズルに供給する条件としては、混相流を形成するための水素ガス流量をQ1、本体組成物の流量をQ2としたとき、液体入口側の動圧を0.1MPa以上0.5MPa以下(望ましくは0.2MPa以上0.4MPa以下)に設定し、水素ガスの本体組成物に対する流量比Q1/Q2を0.01以上0.2以下(望ましくは0.03以上0.1以下)とするように設定するのがよい。液体入口側の動圧が下限値未満では衝突部での流速低下により微細気泡の形成効率が十分でなくなる場合がある。上限については、本来制限はないが、ポンプの能力等を考慮して適宜上記のような値に定めるのがよい。また、流量比Q1/Q2が上記の下限値未満になると水素微細気泡の形成体積率を十分に確保できなくなるか、確保するのに長時間の循環が必要となる(ただし、時間についての制限が問題にならない場合は、流量比をさらに小さく設定することを妨げない)。他方、流量比Q1/Q2が上記の上限値を超えると衝突部の水素ガスによるホールドアップにより、気泡の粗大化を招く恐れがある。
液体処理ノズルとして本発明に採用可能なさらに有利な形態としては、下記のものを例示できる。すなわち、そのような液体処理ノズルは、液体流路の中心軸線と直交する平面への投影において、処理コア部における液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積をS1、衝突部の投影領域面積をS2として、処理コア部の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm2)
として定義したとき、液体入口及び液体出口の断面積が全流通断面積Stよりも大きく設定されるとともに、
谷部の最底位置を表す谷点のうち、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた基準円の内側に位置するものの数をN70(個)、基準円の外側に位置するものの数をNc70(個)とし、谷深さ補正係数αを
h≧0.35mmのときα=1、
h<0.35mmのとき、α=−60h2+41h−6
として定め、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhを0.2mm以上確保するとともに、
投影にて全流通断面積の領域のうち基準円の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm2)として、70%断面比率σ70を、
σ70=S70/St×100(%)
として定め、有効谷点数Neを
Ne=α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70)
として定義したとき、Ne/Stで表される有効谷点密度が1.5個/mm2以上確保されてなり、液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積が2.5mm2以上20mm2以下に設定されたものである。
キャビテーションが発生するのは上記のごとく主として衝突部の谷部であり、この谷部を流れに対して一つでも数多く接触させることが、微細気泡の発生効率を高める上では重要である。したがって、処理コア部の断面内に配置するねじ谷の数を増大させることが、キャビテーションひいては微細気泡の発生効率向上に有効と思われる。しかし、本発明者らが詳細に検討したところ、問題はそれほど簡単ではなく、谷部の数を機械的に増やしても微細気泡の発生効率改善には単純にはつながらない場合があることが判明した。本発明者らは、その要因を次のような項目に分けて検討した。
(1)衝突部の谷部の形成間隔を一定にすれば、処理コア部における液体流路の断面を増加させ、衝突部の突出高さを増加させることで、断面内に存在する谷点数は増える。しかし、この場合は流路の断面積も増え、同じ液体供給圧力であれば流量も増えてしまうから、単位流量あたりに割り振られる谷点数は必ずしも増加するとは限らないし、場合によっては単位流量あたりの谷点数が減じてしまい、キャビテーション効率が却って低下することも実際にあり得る。従って、キャビテーション効率ひいては微細気泡発生効率の大小を支配するのは、処理コア部に形成する谷点の絶対数ではなく、これを流路断面積で規格化した谷点密度のほうである。これは、液体が単位流量あたり何個の谷点と接するか、ということと密接に関係している。
(2)管路内の流速は、管軸断面中心付近で最大となり管内壁面位置で最小となる形で、半径方向に放物線状の分布を示す。したがって、流路断面内の谷部はどの位置にあるものも等価に微細気泡発生に寄与するのではなく、断面中心に近い谷部ほどキャビテーションに必要な流速を確保しやすく、微細気泡発生への貢献度も大きい。したがって、谷点数を評価する場合は、断面中心からの距離により異なる重みを考慮する必要がある。
(3)断面中心付近に位置する谷点が実際にキャビテーション効果に有効に寄与するためには、当該断面中心付近で期待通りの流速が得られている場合に限る。一見、これは自明な事項のようにも思えるが、断面中心付近に谷部を配置するということは、その谷部を形成する衝突部の少なからぬ部分が断面中心領域を占有するということであり、断面中心付近の谷点数を増やせば増やすほど流れが妨げられて流速が確保できなくなるジレンマが生ずる。断面中心領域で障害物に妨げられた流れは、断面外縁領域に回り込み、もともと流量が不足しがちな該領域での流速向上に貢献する可能性はもちろんあるが、断面中心領域を妨げられることなく通過できた場合と比較して、大幅な流れ損失は避けがたくなる。したがって、断面中心付近に配置された谷点数は、断面中心付近の流通面積により重み付けを付与して評価する必要がある。
(4)衝突部に形成する谷部の形成間隔を狭くすれば、同じ流路断面積であっても谷点数を増やすことができる。しかし、谷部の形成間隔とともに谷部の深さが減少すると、谷底での流れ絞り効果が減じ、キャビテーション効率の低下につながる懸念がある。したがって、谷点数をより多く確保するために谷部深さの小さい衝突部を採用する場合は、谷深さに応じた重みづけにより谷点数を評価する必要がある。
本発明者らは、衝突部の寸法と谷部の形成深さ、衝突部の個数と配置形態、さらに衝突部を配置する処理コア部での流路断面寸法を種々に設定した多数の液体処理ノズルを製作し、微細気泡の濃度や、微細気泡を含有した処理済み液体の特性、及びガス溶解効率などを詳細に検討した。その結果、上記(1)で述べた処理コア部における衝突部の谷点密度を、(2)〜(4)の3つの要因を反映した形で的確に重みづけする手法に到達し、そのように重みづけした谷点密度において、前記特許文献に開示された液体処理ノズルよりも明らかにキャビテーション効率ひいては微細気泡の発生効率に優れた数値範囲が存在することを見出した。
以下、順に説明する。まず前提として、液体入口及び液体出口の断面積を処理コア部の全流通断面積Stよりも大きく設定する。これは、液体入口及び液体出口の断面積がStよりも小さくなると、液体入口及び液体出口での流量損失が大きくなりすぎて、処理コア部にて十分なキャビテーションを発生させるための流速が確保できなくなるからである。液体入口及び液体出口の断面積は、処理コア部における液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積S1よりも大きく設定しておくことが、より望ましい。また、液体処理ノズルに液体を流通させる場合の液体圧としては、標準的な水道圧である0.1MPaを中心に、0.03MPaから0.4MPa程度までを想定している。
要因(2)については、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて基準円を設定する。障害物のない管路にて上記の液体圧範囲では、基準円外側の平均流速と基準円内側の流速比はおおむね0.38:1となることから、本発明者が検討した結果、基準円外側の谷点数Nc70の寄与を、基準円の内側の谷点数N70の寄与の0.38倍程度に小さくなるよう重みづけするのが適当であることがわかった。
要因(3)については、70%断面比率σ70=S70/St×100(%)の値は、もし衝突部が存在しなければ50%となるから、衝突部を配置した場合も、この70%断面比率の値が50%に近づくほど基準円内側の谷点はより高流速の流れを受けることとなる。そこで、基準円内側の谷点数N70に対しては、σ70/50の値により重みづけするのが適当であると考えた。
要因(4)については、谷部の深さの影響を種々に検討した結果、まず、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhが0.2mm未満となる場合には、微細気泡の発生があまり見込めないことがわかった。一方、谷部の深さhの値が0.2mm以上に増大すると、hの増大とともに微細気泡発生が次第に顕著となる。以上に鑑み鋭意検討した結果、谷深さhの微細気泡発生への影響を、h=0.25mm、0.3mm、0.35mmの各場合について0.5:0.9:1.0の比率にて谷点数に対し重み付けしたときに、微細気泡の発生効率やガス溶解効率の実験検証結果が良く説明できることが判明した。また、谷深さhが0.35mm以上では、該hの影響は頭打ちとなることもわかった。そこで、上記のごとく、重み付けされた基準円内側の谷点数N70と基準円外側の谷点数Nc70の合計に対する重み付けとして、谷深さ補正係数αを前記(1)式により定めることとした。(1)の2番目の式にかかるhの二次式は、hを0.25mm、0.3mmないし0.35mmとした場合のαの値として、上記のごとく、それぞれ0.5、0.9ないし1.0が適当であることの経験則を二次式により近似したものであり、0.2〜0.35mmという比較的狭い数値範囲内にて、hが上記以外の値をとった場合のαの適切な値を合理的に算出することができる。
こうして、上記要因ごとにそれぞれ適正化された係数により重み付けされた谷点数Neは、前述の(2)式のごとくとなる。そして、この有効谷点数Neを前述の処理コア部の全流通断面積Stで規格化した有効谷点密度Ne/Stは、液体処理ノズルの微細気泡発生能力を客観的に数値化する指標となる。そして、該値が1.5個/mm2以上確保されているとき、キャビテーション効率ひいては水素微細気泡の発生効率は特許文献に開示された液体処理ノズルよりも明らかに向上し、水素微細気泡を含んだ液体特有の種々の効果を従来ないレベルに顕在化させることができる。有効谷点密度は、より望ましくは1.8個/mm2以上確保されているのがよい。液体流路の軸断面形状はたとえば円形にすることが望ましいが、過度の損失を生じない限り、楕円や正多角形状(正方形、正六角形、正八角形等)の軸断面を有するものとして形成することも可能である。
特に、水素微細気泡の形成密度を適正化し、溶存水素濃度(ひいては組成物の還元性)の持続性を顕著に確保できる具体的な条件として、次のようなものと例示できる。すなわち、液体処理ノズルとして、前述のNe/Stで表される有効谷点密度が1.5個/mm2以上確保されてなり、液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積が2.5mm2以上20mm2以下に設定されたものを使用するノズルを用いる。そして、混相流を形成するための水素ガス流量をQ1、本体組成物の流量をQ2としたとき、液体入口側の動圧を0.1MPa以上0.5MPa以下、水素ガスの本体組成物に対する流量比Q1/Q2が0.01以上0.2以下となるように液体処理ノズルに本体組成物を供給する。これによって製造可能な水素含有液状水性組成物は、次のごとき新規な特徴を有するものとなる。
すなわち、本明細書における第一の参考発明たる水素含有液状水性組成物は、分子状水素を含有した液状水性組成物であって、
開口径18cmの円筒形内面形状を有する容器に水素含有液状水性組成物を5L収容し、20℃の大気中にて隔膜ポーラログラフ式溶存水素計により該水素含有液状水性組成物の溶存水素濃度の経時変化を、溶存水素濃度の値が計測開始時の値の10%に到達するまで、測定時のみ液を30秒以内の時間にて撹拌することにより60分以上の間隔で断続的に測定し、
各時刻における溶存水素濃度測定値を経過時間に対しプロットし、
得られる一連のプロット点を2つの時間区間に分割して各々指数関数により最小二乗近似したときの各区間の相関係数が最大化されるように時間区間の分割点を定め、その分割された時間区間の、短時間側の区間に属するプロット点への指数関数回帰曲線を短時間側回帰曲線CP、長時間側の区間に属するプロット点への指数関数回帰曲線を長時間側回帰曲線CSとして、それぞれ、
とする一方、水素含有液状水性組成物の含有組成から水素を除いた組成物を本体組成物として作成し、該本体組成物を20℃にて0.2MPaの純水素雰囲気にて、溶存水素濃度が平衡するまで水素溶解処理し、その後大気開放した組成物(以下、参照水素含有組成物という)に対し、上記水素含有液状水性組成物と同様に溶存水素濃度の経時変化を測定したときの長時間側回帰曲線を、
としたとき、潜在水素含有係数k0/kSの値が1.4以上であり、かつ、
にて算出される値を推定全水素量としたとき、
にて算出される推定微細気泡水素量が0.1ppm以上15ppm以下であることを特徴とする。
本発明者は、製造された水素含有液状水性組成物の特徴を、該組成物を大気中に放置したときの溶存水素濃度測定値の経時変化から特定すること、具体的には、溶存水素濃度測定値の経時変化を、参照水素含有組成物(水素微細気泡を含有せず溶存水素のみを含有する組成物)と比較することにより、水素微細気泡の含有量(微細気泡水素量)を推定することが可能であり、前述の製造方法によって得られる水素含有液状水性組成物の微細気泡水素量が、0.1ppm以上15ppm以下という特有の範囲となることを見出して上記第一の参考発明を完成するに至った。微細気泡水素量が0.1ppm未満では、組成物の高溶存水素濃度状態(還元性持続状態)の継続が不十分となる(換言すれば、溶存水素のみを含有する参照水素含有組成物に対する該持続性の優位を確保できなくなる)。また、推定微細気泡水素量が15ppmを超えると、水素微細気泡の安定性が確保できなくなり、衝撃等が加わると一挙に合体発泡して蒸散し、大気開放の条件下で高溶存水素濃度状態を長期にわたって維持することが難しくなる。
組成物からの水素の蒸散速度は、液量や容器形状の影響を受けなくするため、標準的な容器として開口径18cmの円筒形内面形状を有するものを用い、これに水素含有液状水性組成物を5L収容し20℃の大気中にて、その溶存水素濃度を測定する。溶存水素濃度は、隔膜ポーラログラフ式溶存水素計にて測定する。隔膜ポーラログラフ式溶存水素計は、4フッ化エチレンなどで形成された隔膜を介して通過してくる水素分子を電極上で酸化するのに要する電流値から水素濃度を求めるので、電位差を測定する酸化還元電位計とは異なり、電極表面の分極の影響等を受けにくく、溶存水素濃度の絶対値を比較的正確に把握できる利点がある。
測定に際しては、隔膜表面の水素濃度と組成物中の溶存水素濃度とがなるべく平衡を保つよう、測定中は組成物を撹拌する必要がある。しかし、この撹拌は振動と同様、水素微細気泡の合体発泡を促す恐れがあり、少なくとも連続的に撹拌継続すれば、合体発泡により損失する水素量が増大し、推定微細気泡水素量の算出に少なからぬ影響を及ぼす可能性がある。そこで、溶存水素濃度の経時変化は、測定時のみ液を30秒以内の時間にて撹拌することにより、60分以上の間隔で断続的に測定するようにする。また、この測定時における撹拌程度であれば、推定微細気泡水素量が15ppm以下にとどまる限り、該撹拌により水素微細気泡の合体発泡が、特許文献5に示唆されているように連鎖的に一気に進行する恐れがない。なお撹拌の速度は、たとえば外径φ8mm、長さ30mmの撹拌子を用いたマグネチックスターラーを用いる場合は、60rpm〜120rpmの範囲が妥当である。
本発明の製造方法によって得られる本発明特有の水素含有液状組成物に関しては、本発明者らが詳細に検討した結果、溶存水素濃度の計測が適正になされる限り、各時刻における溶存水素濃度測定値を経過時間に対しプロットしたとき、溶存水素濃度は時刻に対し指数関数に従って減少することが確かめられている。したがって、上記の測定プロット点に対して最小二乗法により指数関数回帰を行うと、組成物からの水素の蒸散挙動や含有水素量に関する定量的な情報を合理的に得ることができる。ただし、水素微細気泡からの水素溶出と液面からの水素蒸散とが平衡しない測定前半期間と、両者が平衡する測定後半期間とで、互いに異なる指数関数により近似されるケースもあるので、前後半に分割した形で指数関数回帰を行うことにより近似の精度を上げるようにする。もちろん、全期間にわたって単一の指数関数により十分高精度に近似できるときは、あえて回帰区間を分割する必要はない。
また、溶存水素濃度の経時変化を測定する期間を、計測開始時の値の10%に到達するまで、と定めているのは、最終的に全水素量を算出・推定する際に、経過時間を無限大まで外挿するに際しての、指数関数近似の精度を確保するためである。もちろん、さらに時間を延長し、計測開始時の値の10%未満の値に到達するまで測定を継続することは、精度向上の観点においてより有効である。
液体中に溶解した気体(溶存気体)の蒸発速度を支配する物理的関係として、Hertz−Knudsenの式がよく知られている。この式の原型は、液体単位面積から単位時間あたりに蒸発する気体の個数Z(つまり、分子数でカウントした気体の蒸発速度)を与えるものであり、
ただし、m:気体分子1個の重量、k:ボルツマン定数、
T:液体の絶対温度、P:液面における気体の分圧
で表される。気体の場合、分子をアボガドロ数個集めれば1molとなり、その体積は温度と圧力が一定ならどんな気体でも一定になる。この点に注意し、液体が接する空間にも溶存気体の分圧p0が存在する場合について、数4は次のように書き直せることが知られている。
ただし、v:単位面積当たりの気体のモル蒸発速度、M:気体の分子量、R:ガス定数
数5からわかることは、次の通りである。
・液温Tが一定なら、液面直上の気体分圧pに比例して気体の蒸発速度は増大する。
・液面直上の気体分圧pが空間中の気体分圧p0と等しいとき、気体の蒸発は止まる。
数4に従う気体の蒸発現象は単純な1階の線形微分方程式で表され、例えば含有される水素の全てが溶存水素である場合、初期溶存水素濃度をC0として、時刻tにおける水素濃度C(t)は、図16に実線で示すごとく、ボルツマン因子型の指数関数:
となる。純水(粘度:1mPa・s)の場合、開口径18cmの円筒形内面形状を有する容器に5L収容して20℃の大気圧(0.1MPa)に放置したときの、溶存水素濃度の減衰を測定したときのk0の値は、本発明者らが繰り返し測定を行った結果、溶存水素濃度の単位をppm、経過時間の単位を分として、0.0021〜0.0024程度の一定値となることが判明している。本明細書では、このk0を標準減衰係数と称し、例えば粘度が1mPa・sの場合(純水の場合である)、その値を0.002255として定義する。また、粘度がこの値よりも大きい液状組成物の場合は、本体組成物を20℃にて0.2MPaの純水素雰囲気にて、溶存水素濃度が平衡するまで水素溶解処理し、その後上記の容器に入れて大気開放して溶存水素濃度の経時変化を測定したときの減衰係数を標準減衰係数として採用する。
一方、水素微細気泡を含んだ水の場合も溶存水素濃度C’も、同様の指数関数として計測されるが、図16に破線で示すように溶存水素濃度の減少速度は小さくなる。
図16において、2つの減衰曲線において、溶存水素濃度が互いに等しくなる各時刻での水素の蒸発速度は、数5から互いに等しい。すなわち、
数6及び数7から、
ここで、数5が成立する液体は、図18に示すように、液中に溶存水素のみが存在し、水素微細気泡が含まれない液体に限られることは明らかである。なぜならば、図19に示すように、溶存水素以外に水素微細気泡(UFB)が含有されていると、液中の溶存水素濃度の変化率は、液面から蒸発する水素の蒸発速度と、水素微細気泡(あるいはハイドレート)から周囲の水への水素溶出速度(図19中、白の矢印)との合成となって表れるからである。したがって、ある水素濃度C’(t)における溶存水素の蒸発速度は、溶存水素のみが存在する液体の曲線C(t)の、濃度C’(t)に対応する時刻(図中、上線付のt)での微分係数として与えられる。すなわち、数9も用いて、
この水素微細気泡が含まれる液体について、時刻aから時刻bまでの期間に蒸散する水素の総量QXは、
となる。すると、大気に暴露し始めてから、溶存水素濃度が完全に0になるまでの間に蒸散する水素量、すなわち、溶存水素と水素微細気泡とを合わせた全水素量Qtotは、時刻aを0、時刻bを∞として、数11より、
となる。この数12を用いれば、溶存水素計では測定できない液体中の水素微細気泡も含めた全水素量を推定することが可能となる。この式は、溶存水素濃度の初期値C0に(k0/k)の値を乗ずることで溶存水素と水素微細気泡とを合わせた全水素量Qtotを推定できることを意味しており、以降、「潜在水素含有係数」と称することにする。なお、溶存水素のみが液中に含まれる場合はk=k0であり、Qtot=C0だから、水素微細気泡が含有される場合は、
にて表されるQBが、水素微細気泡の含有量を表すことになり、
が、全水素量に示す水素微細気泡の比率を示すこととなる。
水素含有液状水性組成物の粘度については特に制限はないが、例えば20℃における粘度が3000mPa・s以下のものであり、標準減衰係数k0を実測する前提で、上記の計算式により含有水素量を算出することができる。特に、粘度が100mPa・s以下の場合は溶存水素の蒸発速度が大きいため、標準減衰係数k0の実測が比較的容易であり、含有水素量についてもより精度よく見積もることができると考えられる。
また、大気中に暴露する液体の体積Vと液面面積Sの影響であるが、これはすべて数11に基づいて考察することができる。たとえば、容器に入っている液体の初期溶存水素濃度がC0であり、液面面積を1として体積だけV倍したときの減衰係数をk’、元の減衰係数をkとすれば、数12から、
一方、体積を1として液面面積をS倍したときの減衰係数をk’、元の減衰係数をkとすれば、単位時間当たりの水素の蒸発量がS倍になるので、
数13及び数14をまとめると、
すなわち、容器の体積Vと液面面積Sの、そのいずれもが異なるような2つの容器系で測定した溶存水素濃度の減衰曲線が与えられた場合、実測の濃度減衰曲線のk(減衰係数)を数15に従って変換ないし規格化すれば、容器の形状による影響を受けない比較が可能となる。本明細書においては、前述の標準容器、すなわち円筒状容器にて、液体積Vが5L、液面形状が直径18cmの円である場合を基準として採用するものとしている。
また、水素微細気泡を含有する液状組成物の溶存水素濃度の減衰曲線は、図17に示すように、大気中放置開始初期において、後続の時間区間よりも減哀係数kの値が大きくなる場合がある。こうした現象は、水素微細気泡(ないしハイドレート)からの水素の溶出速度が、液面からの水素の蒸散速度よりも小さくなる場合に起こり得る。すなわち、水素ガス導入処理直後は、水素微細気泡の周囲の溶存水素濃度は飽和しているが、その溶存水素の蒸散が進行するにつれ、微細気泡の溶解に伴う溶存水素の補充が、水素の液面からの蒸散に追いつかなくなり、液面からの水素の蒸散が勝って減衰係数kの値が大きくなる場合がある。しかし、溶存水素の蒸散が進行すれば、液面からの水素蒸散と微細気泡からの水素溶出とが平衡し、減衰係数kの値は小さくなる。そして、本発明の方法により製造した液状組成物の大気中での溶存水素減衰曲線は、前述のごとくkの値が異なる2区間に分割して指数関数フィッティングすると、より精度よく近似できることがわかっている。
この場合の全水素量の推定方法を、図17に基づいて説明する。
すなわち、開口径18cmの円筒形内面形状を有する容器に水素含有液状水性組成物を収容し20℃の大気中にて隔膜ポーラログラフ式溶存水素計にて溶存水素濃度の経時変化を、溶存水素濃度の値が計測開始時の値の10%に到達するまで測定する。そして、各時刻における溶存水素濃度測定値を経過時間に対しプロットし、得られる一連のプロット点を2つの時間区間に分割して各々指数関数により最小二乗近似したときの各区間の相関係数が最大化されるように時間区間の分割点tsを定める。その分割された時間区間の、短時間側の区間に属するプロット点への指数関数回帰曲線を短時間側回帰曲線CP、長時間側の区間に属するプロット点への指数関数回帰曲線を長時間側回帰曲線CSとして、それぞれ、
とする。
他方、水素含有液状水性組成物の含有組成から水素を除いた組成物を本体組成物として作成し、該本体組成物を20℃にて0.2MPaの純水素雰囲気にて、溶存水素濃度が平衡するまで水素溶解処理し、その後大気開放して、水素含有液状水性組成物と同様に溶存水素濃度の経時変化を測定したときの長時間側回帰曲線を、
として定める。
すると、各区間での水素蒸散量(ただし、長時間側については、時刻∞まで外挿)QP、QSは、前述の数11により、それぞれ
従って、全水素量Qtotは、
により算出することができる。この場合、前述の潜在水素含有係数の値は、液面からの水素蒸散と微細気泡からの水素溶出とが平衡する長時間側区間での値k0/kSを採用するのが妥当である。
潜在水素含有係数の値は、1.4以上に確保されていることが、大気開放時において溶存水素濃度を長時間高く保つ上で好ましく、より望ましくは、該値が3以上であるのがよい。潜在水素含有係数の上限値に制限はないが、たとえば10程度である。そして、微細気泡水素量QBの値は0.1ppm以上15ppm以下であり、望ましくは3.5ppm以上15ppm以下である。さらに、QB/Qtot、0.29以上確保されているのがよく、より望ましくは0.67以上であるのがよい。QB/Qtotの上限値に制限はないが、たとえば0.9程度である。
本発明の製造方法によれば水素ガスの溶解能力も当然に高いので、溶存水素濃度の経時変化を計測する際の計測開始時の溶存水素濃度測定値は0.3ppm以上、より望ましくは1ppm以上とすることができる。なお、水素微細気泡が多量に含まれている場合、隔膜ポーラログラフ式溶存水素計は常温大気圧下での飽和溶存濃度を超えた値を示すことがあり、上記計測開始時の溶存水素濃度測定値の上限値は、例えば3ppm程度の値までは上昇しうる。そして、後述の実施例にて詳細に示す通り、製造条件の適正化により経時変化における計測開始時の溶存水素濃度測定値は1.5ppm以上確保すること、推定微細気泡水素量を5ppm以上とすることも十分に可能である。また、水素含有液状水性組成物が水であれば、経時変化における計測開始24時間後の溶存水素濃度を0.8ppm以上すること、48時間後の溶存水素濃度を0.3ppm以上確保することもできる。
また、本発明の方法により製造される水素含有液状水性組成物は、ノズル通過時のキャビテーション効果により溶存酸素が積極的に排出される結果、該溶存酸素濃度を1.5ppm以下(望ましくは1ppm以下:下限値は0ppm)とすることができる。溶存酸素の低減は、特に、容器内に水素含有液状水性組成物を密封保管する場合に、その酸化還元電位ないし溶存水素濃度値を長期間良好に維持する観点において有利である。
次に、本発明の水素含有液状水性組成物の製造方法は、従来水素添加が特に困難であった高粘度の本体組成物を採用する場合に、特に顕著な威力を発生する。具体的には、本体組成物として、粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下に調整されたものを使用し、該本体組成物と水素ガスとの混相流を前述の液体処理ノズルの衝突部に供給し、水素ガスを水素微細気泡に粉砕しつつ液体出口から流出させることにより水素含有液状水性組成物を水素添加高粘度液体として得るようにする。
また、本明細書における第二の参考発明たる水素添加高粘度液体は、本体組成物に水素微細気泡を配合した水素添加高粘度液体であって、20℃における粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下に調整されるとともに、0.7MPaの窒素ガスによる5分間の加圧処理後に残留する水素微細気泡の含有率が1体積%以上30体積%以下であることを特徴とする。
そして、本発明の水素含有液状水性組成物の製造方法は、上記水素添加高粘度を製造する場合、液体処理ノズルとして、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されたノズル本体と、液体流路の内面から突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えたものを使用し、
粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下に調整された本体組成物と水素ガスとの混相流を液体処理ノズルの衝突部に供給し、水素ガスを水素微細気泡に粉砕しつつ液体出口から流出させることにより水素添加高粘度液体を得ることようにする。
上記のような水素添加高粘度液体において液体中の水素微細気泡の含有率は、添加したガスがすべて水素であり、かつ本体組成物の真比重が知れている場合は、得られた液体の見かけ比重を測定することで、その体積増分を水素微細気泡による増分として算出することが可能である。一方、これらが知れていない場合は、たとえば次のようにして特定した値を水素微細気泡の含有率とみなすことができる。すなわち、水素は昇温により蒸発しやすくなり、その微細気泡は超音波振動の印加により合一して粗大気泡となりやすくなる。そこで、液体サンプルをたとえば40℃以上80℃以下の一定温度に昇温して比重を測定し、比重上昇が止まってほぼ一定となったところの値を読み取り、これを本体組成物の真比重Wと推定して、昇温前のサンプルの見かけ比重とから気泡体積率を算出する。他方、比重測定時の蒸発成分をガス分析するか、あるいは液体サンプルをガスクロマトグラフィーに供すれば、それらの結果からサンプル中の総水素体積を求めることができる。総水素体積が気泡体積よりも多いか等しい場合は、気泡体積のすべてが水素微細気泡になっていると考え、総水素体積が気泡体積よりも少ない場合は、総水素体積を近似的に水素微細気泡体積とみなして水素微細気泡の含有率を算出する。
前述のごとく、本発明に使用する液体処理ノズルの原理は、たとえば特許文献6〜9などで周知となっており、キャビテーションによる微細気泡の発生効果を有するものである。しかし、特許文献3においても指摘されているごとく、キャビテーション方式を用いたとしても粘度の高い液体の場合は気泡の粗大化が進みやすく、特にガスが水素の場合は微細気泡の形成効率は低いとみられていた。そのため、特許文献6〜9においてはガス溶解への利用は示唆されているものの、使用する液体は粘度の低いもの(具体的には水)が対象にされており、高粘度液体への適用は示唆されておらず、ましてやこうした高粘性液体中での微細気泡化が困難とみられていた水素の利用可能性については一切言及されてこなかったのである。
ところが、本発明者らが鋭意検討を行った結果、水素微細気泡の添加対象とするべき本体組成物の粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下の範囲に調整されるとき、外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部に対して、水素ガスとの混相流の形でこれに供給すると、当初予想とは全く想像に反して水素が効率的に微粉砕され、粘度の高い本体組成物に対しても水素ガスを水素微細気泡の形で大量かつ極めて安定的に保持できることを見出し、第二の参考発明を完成させるに至ったものである。
第二の参考発明にかかる水素添加高粘度液体も上記本発明の製造方法により特有に得られるものであって、20℃における粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下の高い値を示すにもかかわらず、水素微細気泡は1体積%以上30体積%以下という、従来決して到達しえなかった含有率に到達する。これは、本体組成物よりも密度がはるかに低い水素微細気泡が大量に分散保持される結果、見かけ比重が水素添加前の本体組成物よりも巨視的に低下することを意味する。
その結果、液体の粘度が高い分、溶存水素の蒸発速度が遅くなるのみならず、大半の水素が微細気泡の形で含有されていることで、肌等へ塗布した後も長時間にわたって高濃度にとどまり続け、水素微細気泡から溶出する分子状水素の強大な還元力により、本体組成物の酸化防止などの種々の効果を発揮することができる。また、容器に保存した場合にあっても、高濃度水素状態を長期間持続でき、ひいては上記水素特有の効果を発揮できる品質状態を長期間安定に保持することができる。
液中の気泡の界面には、液面からの気泡の存在深さに応じて作用する液圧だけでなく、表面張力に基づいた内圧が作用する。液状組成物を保管する容器の液面深さはそれほど大きなものではなく、結果、気泡内圧への液圧の寄与はほとんど無視でき、表面張力に基づいた圧力増分だけを考慮すればよい。この圧力増分Δpは、液体の表面張力をσ、気泡径をDとしたとき、
Δp=4σ/D ・・・・(1)
という式で表される。これはYoug−Laplaceの式として古典的に知られているものである。簡単のため、水中の気泡で考えれば、気泡径Dが3μmで気泡内圧はほぼ大気圧と等しくなり、Dが1μmでまで縮小すると気泡内圧はその約3倍、0.5μmで6倍の値に達する。気体の液体に対する溶解度は、水素のようなヘンリーの法則に従うガスの場合は圧力に比例して増大するので、気泡径Dが縮小すればするほど内圧上昇により内部の水素ガスが溶解して気泡の縮小が進み、最終的には消滅すると考えられてきた。しかし、近年の研究の進歩により、気泡がサブミクロンオーダーに縮小しても、様々な要因によりその大きな内圧上昇に耐えて安定化することがわかり、ウルトラファインバブルあるいはナノバブルとも称される微細気泡として液中に残留しうる。
表面張力により内圧上昇した気泡内部のガスは反力により周囲の液相に加圧力を及ぼす。これが、気泡中のガスの溶解の駆動力となる。常圧で内圧が1気圧未満となる粗大な気泡(おおむね3μm以上)は、上記のごとく外部圧力により加圧された時、その圧力増分により液相のガスに対する溶解度が上昇するので、気泡からのガス溶出が進み、気泡は縮小する。そして、表面張力に由来した内圧上昇Δpが外部圧力とつりあう平衡気泡径に到達すれば、そこで気泡縮小は止まる。窒素ガスによる外部圧力が0.7MPaのときの平衡気泡径はおおむね430nm程度である。本体組成物の液相主成分が水である場合、窒素加圧後の液体サンプルの高分解能マイクロスコープ観察画像などから見積もられる平均気泡径はこの値とほぼ一致する。すなわち、本体組成物は液相主成分が水である場合、含有される水素微細気泡の平均気泡径は430nm以下(すなわち、微細気泡)である、ということができる。
本体組成物の水素添加前の比重をWとしたとき、水素微細気泡を形成する水素ガスの比重wはそれよりもはるかに小さいから、水素微細気泡が1体積%以上30体積%以下の範囲で含有されているということは、水素添加後の液体の見かけ比重は0.9W以上0.700W以下となって表れる。これは、ごく普通の精度の天秤を用いれば十分に測定にかかる重量変化でもある。そして、この比重変化は水素微細気泡の含有によってもたらされるものであり、単に本体組成物に水素ガスが溶存しただけでは比重はほとんど変化しない。ガス状水素の分子量が2であり、分子サイズも極めて小さいことを考えればこれは当然のことである。
他方、1体積%以上30体積%以下の水素微細気泡を水素の重量含有量に換算すると、0.9W以上26.79W以下(単位:ppm)となる。本体組成物に水素微細気泡が含有されている場合、気泡周囲の液相には当然、微細気泡から溶出した(もしくは微細気泡形成時に溶解した)水素が溶存形態で含有されるから、全水素量はこれに溶存水素量を加算した値となる。得られる液体の溶存水素量は、たとえば酸化還元電位測定や、溶存水素計による直接測定により計測・把握するができるが、いうまでもなく、この値は溶存している水素量を表すものであって、水素微細気泡が保持するガス状水素の量を反映したものではない。たとえば、前述の特許文献3に開示の水素含有組成物では、調製後10日を経過したときの酸化還元電位が不変であることが開示されているのみであり、組成物の粘度や水素気泡の体積率に関しては全く言及されていないし、文献に開示された他の情報からの推定も不能である。
本体組成物の液相主成分が水である場合、水素微細気泡の含有率が1体積%以上であるということは、水素微細気泡が安定に存在するために周囲の液相の溶存水素濃度は相応に高くなっており、酸化還元電位の値は−300mV以下に確保される。液相がこのように還元性を示すことで、本体組成物の他の含有成分の酸化劣化を効果的に防止することができる。
また、本発明の水素添加高粘度液体は、粘度が高い分、液相中の溶存水素の揮散速度が遅く、その結果、水素微細気泡は大気中に放置しても高濃度の存在状態を長期間維持する。たとえば、20℃の大気中にて1日放置して測定した水素微細気泡の含有率を0.5体積%以上25体積%以下とすることが可能である。すなわち、水素添加高粘度液体を大気と接触する状態にしても、その放置時間が一日程度では、気泡含有率はなかなか低下せず、還元性の状態を強固に保持し、酸化が進行しにくい。
水素微細気泡は本体組成物の粘度が高いほど残留しやすくなり、耐久性の高い微細気泡を、より高い体積含有率で保持することができるようになる。たとえば、粘度が300mPa・s以上2000mPa・s以下に調整される場合(後述のごとく、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加される場合は、例えば7気圧もの窒素加圧後においても)、水素微細気泡の含有率は1体積%以上25体積%以下とすることができる。当然、粘度が高いほど、一旦形成された水素微細気泡の耐圧性も高まるので、たとえば20℃の大気中にて1日放置して測定した水素微細気泡の含有率は、(後述のごとく、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加される場合は、例えば7気圧もの窒素加圧後においても)、1.5体積%以上23体積%以下とすることができる。また、同じ条件で、7日放置して測定した場合であっても、水素微細気泡の含有率を1体積%以上20体積%以下に確保することができる。これは、たとえば、密閉容器に収容された水素添加高粘度液体を開封して大気と接触する状態にしたとき、開封後1週間経過しても水素微細気泡が1体積%は残留し、酸化の進みにくい還元性の状態に維持できることを意味する。
例えば、粘度がさらに上昇して1000mPa・s以上2000mPa・s以下に調整される場合は、水素微細気泡の含有率は(後述のごとく、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加される場合は、例えば7気圧もの窒素加圧後においても)、10体積%以上25体積%以下に確保できる。この場合、さらに20℃の大気中にて7日放置して測定した水素微細気泡の含有率は8体積%以上18体積%以下と、水素微細気泡の安定性はさらに飛躍的に上昇する。この場合、同条件で1か月放置して測定した水素微細気泡の含有率でさえ、なお5体積%以上10体積%以下を維持することも可能である。
次に、上記のように特徴ある第二の参考発明たる水素添加高粘度液体の、その製造方法の作用について詳細に説明する。すなわち、ノズル本体において液体(本体組成物)の流れは、衝突部に衝突してその下流に迂回する際に谷部内にて絞られることにより増速し、本体組成物の液相に原料段階で含有される溶存ガス(空気など)の析出により激しいキャビテーションを起こし、その減圧沸騰作用により気泡を生じつつ液体を激しく撹拌する。これに、衝突部を高速流が迂回する際に生ずる渦流も加わり、衝突部の周辺及び直下流域には非常に顕著な強撹拌領域が形成されることとなる。
そして、本体組成物の流れに外部から水素ガスを導入して混相流の形で供給すると、水素ガスの気泡は衝突部の谷部を通過する際に摩擦により激しく剪断され、本体組成物の粘性に打ち勝って粉砕されるとともに、キャビテーションによる激しい減圧沸騰に由来した衝突部下流の強撹拌領域に巻き込まれることで一挙に微細気泡(1μm未満)のレベルにまで粉砕されるものと考えられる。このとき、撹拌により一旦溶存した水素ガスが、谷部ないし強撹拌領域で水素微細気泡として再析出することも考えられる。そして、本体組成物の粘度が高いために、一旦剪断と撹拌により粉砕された水素気泡の再合一が、低粘度の液体を用いる場合と比較して起こりにくくなること、溶存した水素ガスが気泡として再析出する際の成長速度が小さくなることなどが、水素微細気泡の発生率向上に大きく貢献しているものと考えられる。
本体組成物の粘度は100mPa・s以上3000mPa・s以下に調整されたものを使用するが、粘度がこの下限値未満であると水素微細気泡の安定性と体積含有率を十分に確保できなくなる。他方、3000mPa・sを超えると、流動性低下により液体処理ノズルを流通させた時の衝突部での流速が十分確保できなくなり、微細気泡の形成効率が低下して水素微細気泡の体積率を十分に確保できなくなる。本体組成物の粘度(ひいては、結果物としての水素添加高粘度液体の粘度)は、より望ましくは300mPa・s以上2000mPa・s以下に設定するのがよい。
本発明に採用可能な本体組成物の種別は特に限定されない。たとえば、飲料水、冷却水、洗浄水、その他の工業用用水である。また、比較的高い粘性を有する液状食品で、本発明に適用可能なものは、たとえば以下のようなものがある。
ヨーグルト、乳酸菌飲料(たとえば商標名:カルピス)、生クリーム、コンデンスミルク、はちみつ、シロップ類(ガムシロップ、メープルシロップ等)、チョコレートソース、水飴、麦芽糖、チョコレートソース、中濃ソース、とんかつソース、お好み焼きソース、焼きそばソース、ホワイトソース、デミグラスソース、トマトソース、トマトピューレ、トマトケチャップ、ポタージュスープ、ドレッシング類、トマトジュース、ネクターなどの果肉飲料、ゼリー飲料。また、食品以外でも、化粧料、医薬品(液状軟膏や液状歯磨きなど)や粘性油など、本発明に採用可能である。
例えば、化粧料に本発明を適用する場合、その本体組成物は特に限定されるものではなく、周知の構成を例示することができる。化粧料本体組成物に採用可能な主な構成成分を以下に列挙する。
水は液状の組成物のベースをなす成分であり、RO水やイオン交換水を使用する。また、適宜、水性溶媒を配合することができる。水性溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、メタノール等。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
また、通常、化粧品、医薬品等に用いられ下記の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる(機能により、上記の成分と重複しているものもある)。
保湿剤:グリセリン、ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合物またはそのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールまたはそのアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジカルボン酸エステル、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタングリコール、1,2−ヘキサングリコール、2−メチル−1,3−プロパノール、エチルカルビトール、1,2−ブチレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン等。
増粘剤:セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クインスシード、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、アラビアガム、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、アラビアガム、ゼラチン、ヒアルロン酸、ゼラチン、ムコ多糖、チュベロース多糖体等。
抗菌防腐剤:安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベンなど)、ヘキサクロロフェン等。
有機酸:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸とその塩。アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等。
各種薬剤:ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体などのビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテートなどのビタミンC類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネートなどのビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチンなどのビタミン類。ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サポニン類(サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニンなど)、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、セファランチン、プラセンタエキス等。
天然エキス:ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、タイム、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラなどから有機溶剤、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコールなどで抽出したもの。
界面活性剤:ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイドなどのカチオン界面活性剤。モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキセチレンソルビタン、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエナレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアマイド、脂肪酸イソプロパノールアマイド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、シュガーエステル等の非イオン性活性剤。ルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、ロート油、リニアドデシルベンゼン硫酸、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油マレイン酸、アシルメチルタウリン等のアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤。
金属封鎖剤:エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等。
中和剤:水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等。
また、その他、香料、スクラブ剤、粉末、色材、美白剤、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線防御剤なども、安定性などを損なわない範囲で適宜配合することができる。紫外線吸収剤の例としては下記のものが使用可能である。
安息香酸系紫外線吸収剤:パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAメチルエステル等。
アントラニル酸系紫外線吸収剤:ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等。
サリチル酸系紫外線吸収剤:アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等。
桂皮酸系紫外線吸収剤:オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート、トリメトキシ桂皮酸メチルビス(トリメチルシロキサン)シリルイソペンチル等。
その他:3−(4’−メチルベンジリデン)−d,1−カンファー、3−ベンジリデン−d,1−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等。
さらに増粘剤又は油相を添加することにより、25℃における粘度を500mPa・s以上に調整し、水素含有高粘度化粧料とすることができる。これにより、水素微細気泡を多量に含有した高粘度化粧品に転換することができ、溶存水素の蒸発が一層抑制されて高還元性の状態をより長期間保つことができるようになる。
特に、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加されるとき、含有される水素微細気泡の安定性は顕著に増大し、大気放置時はもちろん、5気圧以上10気圧以下の加圧処理を行っても、水素微細気泡を十分に残留できるようになる。粘度の高い液体組成物中では気泡の浮上速度が大幅に減少するため、比較的寸法の大きい気泡も常圧下ではしばらくは消泡せず、本体組成物中に残留するが、上記のように窒素ガスで0.7MPaまで加圧すればサブミクロン寸法まで縮小する。したがって、従来のプロペラによる剪断撹拌やスタティックミキサによるガスバブリング等で得られる粗大な水素気泡が主体の組成物の場合、窒素ガスによる加圧を行うと大半の気泡は縮小し、気泡減少率は大きな値となり、場合によってはほとんどの気泡が消滅してしまうこともあり得る。しかしながら、本発明の水素添加高粘度液体にあっては、油相成分が1質量%以上10質量%以下の範囲で添加されるとき、見かけ比重の明らかな低下を伴うほどの高体積率に水素気泡を含んでいるにも拘わらず、例えば7気圧もの窒素加圧後においても残留する水素微細気泡が1体積%以上30体積%以下という高い比率を実現できる。
本発明によると、本体組成物の粘度が3000mPa・s以下であれば、本体組成物には常温で水素微細気泡を直接添加することが可能である。一方、化粧料本体組成物に水素微細気泡を添加しておき、その後、増粘剤を添加して粘度を上昇させることもできる。また、増粘剤の添加と水素ガスの添加を、低粘度状態にて同時に行いつつ増粘剤の溶解ないしゲル化反応を進行させて高粘度化する方法を採用することも可能である。また、油相を用いる場合も、化粧料本体組成物に水素微細気泡を添加しておき、その後、昇温して低粘度化させた油相を加えて冷却しつつ混合し、高粘度化する方法と、油相の添加と水素ガスの添加とを、昇温した低粘度状態にて同時に行いつつ冷却して高粘度化させる方法の、いずれを採用してもよい。
この場合、採用可能な増粘剤の例はすでに説明した通りである。他方、油相成分としては以下の1種又は2種以上を採用することができる。
液体油脂:アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等。
固体油脂:カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等。
ロウ類:ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル。
炭化水素油:流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等。
合成エステル油:ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等。
シリコーン油:鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、アクリルシリコーン類等。
さらに油分中には、高級脂肪酸を一種または二種以上配合することが好適である。油分中にこれらを配合することで乳化粒子が更に微細化される。高級脂肪酸としては炭素数16〜24のものが好適であり、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソミリスチン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。
発明の効果は、本発明の作用及び効果の詳細については、「課題を解決するための手段」の欄にすでに記載したので、ここでは繰り返さない。
図1は、本発明の水素含有液状水性組成物の製造装置の一例の全体構成を示すブロック図。
図2は、図1の装置に使用する液体処理ノズルの一例を示す横断図。
図3は、図2の側面拡大図。
図4は、図3の一つの絞り孔における、衝突部を構成するねじ部材の配置形態を実体的に描いた拡大図。
図5は、図2の谷点配置を示す説明図。
図6は、図2の液体処理ノズルの処理コア部の詳細を示す断面図。
図7は、図2の処理コア部におけるねじ部の流れ軸線方向の配置を拡大示す図。
図8は、図5の変形配置例を示す図。
図9は、液体処理ノズルの作用を示す第一の説明図。
図10は、衝突部における山部と谷部の作用説明図。
図11は、衝突部の作用を示す平面図。
図12は、液体処理ノズルの作用を示す第二の説明図。
図13は、衝突部材の別の配置例を示す側面図。
図14は、図13の谷点配置を示す説明図。
図15は、図1の製造装置の変形例を示す図。
図16は、溶存水素減少曲線から液状組成物中の総水素量を推定する方法を説明する図。
図17は、溶存水素濃度の減衰係数が途中で変化する場合の、液状組成物中の総水素量を推定する方法を説明する図。
図18は、水素微細気泡を含有しない水素溶存液体からの水素蒸発挙動を示す模式図。
図19は、水素微細気泡を含有する水素溶存液体からの水素蒸発挙動を示す模式図。
図20は、実施例の水素含有液状水性組成物の水素添加時の溶存水素濃度上昇挙動を示すグラフ。
図21は、図20において循環時間を40分とした場合に得られる水素含有液状水性組成物を大気中放置した場合の、溶存水素濃度減衰挙動を示すグラフ。
図22は、同じく循環時間を60分とした場合に得られる水素含有液状水性組成物を、大気中放置した場合の溶存水素濃度減衰挙動を示すグラフ。
図23は、図22の水素含有液状水性組成物を大気中放置した場合の溶存水素濃度減衰挙動を、水素微細気泡を含有しない液状水性組成物(参照液)と比較して示すグラフ。
図24は、別の実施例の水素含有液状水性組成物の水素添加時の溶存水素濃度上昇挙動を示すグラフ。
図25は、図24にて得られる水素含有液状水性組成物を大気中放置した場合の、溶存水素濃度減衰挙動を示すグラフ。
図26は、さらに別の実施例の水素含有液状水性組成物の、水素添加時の溶存水素濃度上昇挙動を示すグラフ。
図27は、図26にて得られる水素含有液状水性組成物を大気中放置した場合の、溶存水素濃度減衰挙動を示すグラフ。
図28は、絞り孔を1つのみ形成した液体処理ノズルの例を示す図。
図2は、図1の装置に使用する液体処理ノズルの一例を示す横断図。
図3は、図2の側面拡大図。
図4は、図3の一つの絞り孔における、衝突部を構成するねじ部材の配置形態を実体的に描いた拡大図。
図5は、図2の谷点配置を示す説明図。
図6は、図2の液体処理ノズルの処理コア部の詳細を示す断面図。
図7は、図2の処理コア部におけるねじ部の流れ軸線方向の配置を拡大示す図。
図8は、図5の変形配置例を示す図。
図9は、液体処理ノズルの作用を示す第一の説明図。
図10は、衝突部における山部と谷部の作用説明図。
図11は、衝突部の作用を示す平面図。
図12は、液体処理ノズルの作用を示す第二の説明図。
図13は、衝突部材の別の配置例を示す側面図。
図14は、図13の谷点配置を示す説明図。
図15は、図1の製造装置の変形例を示す図。
図16は、溶存水素減少曲線から液状組成物中の総水素量を推定する方法を説明する図。
図17は、溶存水素濃度の減衰係数が途中で変化する場合の、液状組成物中の総水素量を推定する方法を説明する図。
図18は、水素微細気泡を含有しない水素溶存液体からの水素蒸発挙動を示す模式図。
図19は、水素微細気泡を含有する水素溶存液体からの水素蒸発挙動を示す模式図。
図20は、実施例の水素含有液状水性組成物の水素添加時の溶存水素濃度上昇挙動を示すグラフ。
図21は、図20において循環時間を40分とした場合に得られる水素含有液状水性組成物を大気中放置した場合の、溶存水素濃度減衰挙動を示すグラフ。
図22は、同じく循環時間を60分とした場合に得られる水素含有液状水性組成物を、大気中放置した場合の溶存水素濃度減衰挙動を示すグラフ。
図23は、図22の水素含有液状水性組成物を大気中放置した場合の溶存水素濃度減衰挙動を、水素微細気泡を含有しない液状水性組成物(参照液)と比較して示すグラフ。
図24は、別の実施例の水素含有液状水性組成物の水素添加時の溶存水素濃度上昇挙動を示すグラフ。
図25は、図24にて得られる水素含有液状水性組成物を大気中放置した場合の、溶存水素濃度減衰挙動を示すグラフ。
図26は、さらに別の実施例の水素含有液状水性組成物の、水素添加時の溶存水素濃度上昇挙動を示すグラフ。
図27は、図26にて得られる水素含有液状水性組成物を大気中放置した場合の、溶存水素濃度減衰挙動を示すグラフ。
図28は、絞り孔を1つのみ形成した液体処理ノズルの例を示す図。
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の水素含有液状水性組成物の製造装置の一例を概念的に示すものである。該装置500において、原料となる本体組成物502は、水の含有率が50質量%以上であり、たとえば飲料水、化粧用原料、洗浄水、冷却水あるいは工業用水である。さらに、必要に応じて水と相溶性を有する液体(例えば、エタノール等)が含有されていてもよい。この場合、水と相溶性を有する液体と水との合計質量含有率は80%以上のものとされる。さらに、必要に応じて、水に溶解する種々の成分(糖類、甘味料、食塩、各種食品添加物、寒天やゼラチンなどの増粘剤など)を溶解し、水溶液としてあってもよい。
該本体組成物502が、タンク501に貯留されるとともに、該タンク501から延出する循環配管507の途上に、エジェクタ等で構成されるガス導入部219、送液ポンプ505及び液体処理ノズル1がこの順序で設けられている。ガス導入部219には減圧弁411及びガス供給チューブ412を介して水素ガス供給源としての水素ボンベ420から水素ガスが供給されるようになっている。なお、水素ガス供給源としては水素ボンベ以外に、電解式水素発生装置や、可逆的に水素を吸着・脱着する水素吸蔵合金を水素ガス貯留部として使用し、加熱による水素吸蔵合金からの水素脱着により水素ガスを放出する水素合金キャニスターを使用してもよい。また、送液ポンプ505は、気液混相流の送液に適した容積型ポンプ、例えばベーンポンプや渦流ポンプにて構成され、特にベーンポンプを用いることが望ましい。
図2は液体処理ノズル1の横断面を、図3はその液体入口側の軸線方向からの拡大側面を示すものである。この液体処理ノズル1は、液体流路3が形成されたノズル本体2を備える。ノズル本体2は円筒状に形成され、その中心軸線Oの向きに円形断面の液体流路が貫通形成されている。ノズル本体2には、液体流路3を液体入口4側の流入室6と液体出口5側の流出室7とに区画する隔壁部8と、隔壁部8に貫通形成され流入室6と流出室7とを互いに別経路にて連通させる複数の絞り孔9と、絞り孔9の内面から各々突出する衝突部10とからなる処理コア部COREが形成されている。図3において、隔壁部8に絞り孔2は中心軸線Oに関して軸対象となるように、同一内径にて2個形成されている。流入室6及び流出室7の各内周面は、処理コア部COREに向けて縮径するテーパ面14とされている。
図4は、そのうちの一方を拡大して示すものであり、衝突部10は外周面に周方向の山部11と高流速部となる谷部12とが複数交互に連なるように形成されている。衝突部10は、この実施形態では、脚部末端側が流路内に突出するねじ部材(以下、「ねじ部材10」ともいう)であり、結果、衝突部に形成される複数巻の山部11は、らせん状に一体形形成されている。なお、山部及び谷部は、らせん状に一体化せず、周方向に閉じたものを衝突部の軸線方向に複数密接配列してもよい。ノズル本体2の材質は、たとえばABS、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、PTFEなどの樹脂であるが、ステンレス鋼や真鍮などの金属やアルミナ等のセラミックスとしてもよく、用途に応じて適宜選択される。また、ねじ部材10の材質はたとえばステンレス鋼であるが、用途に応じて、より耐食性の高いチタンやハステロイ、インコネル(いずれも商標名)などの耐熱合金を用いてもよいし、耐摩耗性が問題となる場合は石英やアルミナなどのセラミック材料を用いることも可能である。
衝突部10は、図2の処理コア部COREにおいて複数の絞り孔9のそれぞれに、図3に示すごとくノズル本体2の軸線Oと直交する平面への投影において、各絞り孔9の中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置されている。各絞り孔9において、ねじ部材10と絞り孔9内周面との間には主流通領域21が形成される。また、4つの衝突部10が形成する十字の中心位置には、液体流通ギャップ15が形成されている。液体流通ギャップ15を形成する4つの衝突部10の先端面は平坦に形成され、前述の投影において液体流通ギャップ15は正方形状に形成されている。絞り孔9(液体流路)の内径Dは2.5mm以上7mm以下(望ましくは2.9mm以上5.5mm以下)に設定され、主流通領域21と液体流通ギャップ15とからなる液流通領域の全流通断面積Stは2.5mm2以上35mm2以下(望ましくは4mm2以上13mm2以下)に設定される。
処理コア部における液体流路(絞り孔9)の投影領域の外周縁内側の全面積、すなわち絞り孔9の円形軸断面の面積(内径をdとしたとき、πd2/4)をS1、衝突部10(4本のねじ部材)の投影領域面積をS2として、処理コア部の絞り孔9の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm2)
として定義する。この実施形態では、主流通領域21(図4)と液体流通ギャップ15との合計面積が全流通断面積Stに相当する。図1に示すごとく、液体入口4及び液体出口5の開口径は、絞り孔9の内径よりも大きい。すなわち、液体入口4及び液体出口5の断面積は全流通断面積Stよりも大きく設定されている。また、流入室6及び流出室7の絞り孔9に連なる内周面はそれぞれテーパ部13,14とされている。
図4は処理コア部COREを拡大して示すものである。絞り孔9にそれぞれ形成される衝突部の組は、ノズル本体2の壁部外周面側から先端が絞り孔9内へ突出するようにねじ込まれる4本のねじ部材により形成されている。ねじ部材10は、ノズル本体2の壁部に貫通形成された、図3に破線で示すねじ孔19にねじ込まれ、各ねじ孔19のねじスラスト方向途中位置にはねじ頭下面を支持するための段付き面19rが形成されている。該段付き面19rの形成位置は、ねじ部材10をねじ込んだ時に、絞り孔9内に突出するねじ脚部(すなわち、衝突部となる部分)の長さが、液体流通ギャップ15を形成するのに適正となるように調整されている。
図5は図4と全く同一の投影図であり、符号を省略したものである(従って、各部の符号は図4のものを援用する)。ねじ部材(衝突部)10の投影外形線に現れる谷部21の深さhは0.2mm以上確保されている。また、中心軸線O投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた円を基準円C70として定めるとともに、谷部21の最底位置を表す谷点のうち、基準円C70の内側に位置するもの(以下、70%谷点数という:○で表示)の数をN70(個)、基準円C70の外側に位置するもの(以下、70%補谷点数という:●で表示)の数をNc70(個)とする。
谷部の最底位置を表す谷点のうち、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた基準円の内側に位置するものの数をN70(個)、基準円の外側に位置するものの数をNc70(個)とし、谷深さ補正係数αを
h≧0.35mmのときα=1、
h<0.35mmのとき、α=−60h2+41h−6
として定め、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhを0.2mm以上確保している。また、該投影にて全流通断面積の領域のうち基準円の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm2)として、70%断面比率σ70を、
σ70=S70/St×100(%)
として定め、有効谷点数Neを
Ne=α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70)
として定義する。該有効谷点数Neは、全流通断面積Stで規格化した有効谷点密度(Ne/St)が1.5個/mm2以上(望ましくは1.8個/mm2以上)確保されている。
次に、複数の絞り孔9の間でねじ部材10の干渉を回避するために、各絞り孔9に組み込む4つのねじ部材10の組は、それら絞り孔9の間で軸線方向にて互いにずれた位置に配置されている。図6に拡大して示すように、同一の絞り孔9内の複数のねじ部材10A,10Bと10C,10Dとは、該絞り孔9の軸線方向(流れ方向)にて互いにずれた位置に配置されている。具体的には、各絞り孔9において、同一平面上で互いに直交する位置に配置されたねじ部材の対10A,10B及び10C,10Dが、それぞれ流れ方向において互いに異なる位置(図中、上側の絞り孔9については下流側のA及びBの位置に、下側の絞り孔については上流側のC及びD位置)に配置されている。それぞれ図1の中心軸線Oと直交する平面への投影では、A及びBの位置の4つのねじ部材10A,10B、及びC及びD位置の4つのねじ部材10C,10Dが、それぞれ十字形態をなすように配置されることとなる。
図7に示すように、絞り孔9は、それら絞り孔9の軸断面積の合計と等価な円の直径をd(d1、d2)、絞り孔9の長さをLとして、L/deにて定義される絞り孔アスペクト比が3.5以下に設定されている。図6において、2つの絞り孔9の内径が互いに異なる一般の場合(d1,d2)は、絞り孔アスペクト比は、L/(d12+d22)1/2となる。2個の絞り孔9は内径と長さが互いに等しい円筒面をなすように形成されており、2つの絞り孔9の内径をdとして、絞り孔アスペクト比は0.71L/dである。絞り孔アスペクト比L/deの値は、望ましくは3以下であること、より望ましくは2.5以下であるのがよい。
図3に戻り、ノズル本体2の軸線Oと直交する平面への投影において、隔壁部8の投影領域の中心位置に定められた基準点(軸線の位置と一致する)Oから複数の絞り孔9の内周縁までの距離(絞り孔変位)Tは、該絞り孔9の内径dよりも小さくなるように、複数の絞り孔9は基準点Oの周りに近接配置されている。絞り孔変位Tは絞り孔9の内径dの望ましくは1/2以下であるのがよい。さらに、本実施形態では、同じ投影において、複数の絞り孔9の内周縁に対する外接円20の面積をSt、絞り孔9の投影領域の合計面積をSrとしたとき、K≡Sr/Stにて定義される絞り孔9集約率Kが0.2以上とされている。
また、図7に示す如く、絞り孔9の衝突部10よりも下流に位置する区間の長さ(以下、残区間という)をLp(Lp2〜Lp4の平均値)とし、絞り孔9の軸断面積の合計と等価な前述の円の直径をdeとして、Lp/deにて定義される残区間アスペクト比は1.0以下に設定されている。図7では、最も下流側に位置するねじ部材10Aに関しては、残区間の長さがゼロであるが、図8に示す如く、ねじ部材10Aに関し残区間がゼロでない長さLp1を有する場合は、上記残区間長さLpはLp1〜Lp4の平均値となる。
以下、図1の装置500を用いた水素含有液状水性組成物の製造工程について説明する。すなわち、タンク501に本体組成物502を投入して送液ポンプ505を動作させると、タンク501からの本体組成物はガス導入部219にて水素ボンベ420からの水素ガスが供給されて混相流となり、送液ポンプ505内に吸い込まれる。混相流を形成するための水素ガス流量をQ1、本体組成物の流量をQ2としたとき、液体処理ノズル1の液体入口側の動圧は0.1MPa以上0.5MPa以下(望ましくは0.2MPa以上0.4MPa以下)に設定され、水素ガスの本体組成物に対する流量比Q1/Q2が0.01以上0.2以下(望ましくは0.03以上0.1以下)となるように設定される。
送液ポンプ505の内部では水素ガスがポンプ内撹拌流に巻き込まれることにより、水素ガス相がたとえば50〜1000μm程度の気泡に予備粉砕されて、ポンプ下流側の液体処理ノズル1に供給される。その結果、水素ガスの溶解効率及び1μm以下の微細気泡への粉砕効率が一層高められる。そして、混相流はこの状態で液体処理ノズル1にて水素ガスの溶解及び微細気泡への粉砕処理がなされ、タンク502に戻る。以降、タンク内の水502は循環しながら水素ガスの溶解及び微細気泡への粉砕が継続され、水素微細気泡の形成濃度が高められる。
タンク502内の液面上方の空間は、例えば密閉としてもよいし、大気開放としてもよい。このとき、該上方空間は水素ガスで置換されていることが、水素微細気泡の形成濃度をさらに高める上で有効である。したがって、大気開放する場合でも、半密閉形態にタンク502を構成し、上方空間の内圧が大気圧に対し1〜10%の範囲で多少正圧に維持されつつ、チューブ等を介して液面より浮上する廃水素ガスをタンク502外に排出できるようにしておくことが望ましい。
図2の液体処理ノズル1内での作用は次のようなものである。図9に示すごとく、混相流ははまず一括してテーパ部13で絞られ、さらに個々の絞り孔9へ分配されて、主流通領域21(図4)と液体流通ギャップ15(図4)とからなる液流通領域により個別に絞られて、ねじ部材10に衝突しながらこれを通過する。ねじ部材10の外周面を通過するときに、図10に示すように流れは谷部に高速領域を、山部に低速領域をそれぞれ形成する。すると、谷部の高速領域はベルヌーイの定理により負圧領域となり、キャビテーションすなわち空気等のプレ溶存ガスの減圧析出により、気泡FBが発生する。この時、液体が圧送されてねじ部材10に衝突する際に、その背圧により液体は導入された水素ガスとともに加圧され、一部は液体に溶解する。そして、これが、ねじ部材10の谷部を通過する際に高流速化することで減圧され、気泡を析出することも当然にある。
谷部はねじ部材10の外周に複数巻形成され、かつねじ部材10が絞り孔9内に複数配置されていることから、この減圧析出は絞り孔9内の谷部にて同時多発的に起こることとなる。すると、図11に示すように、液流がねじ部材10に衝突する際に谷部での減圧析出が沸騰的に激しく起こり、さらにねじ部材10の下流に迂回する際に生ずる渦流にこれを巻き込んで激しく撹拌する。衝突部10の周辺及び直下流域には、微小渦流FEを無数に含んだ顕著な強撹拌領域SMが形成されることとなる。気泡を析出する減圧域は衝突部10の谷底付近に限られ、高速の液体流はほとんど瞬時的に該領域を通過してしまうから、発生した気泡FBはそれほど成長せずに上記の撹拌領域に巻き込まれ、過度に成長する心配がない。そして、液体処理ノズル1に供給される本体組成物には、ポンプ505で予備粉砕された水素ガスの気泡が混入して混相流を形成しているので、水素微細気泡となるべきガス相は衝突部10の下流の強撹拌領域SMに巻き込まれることにより本体組成物との混合が顕著に進み、微細気泡化をきわめて効率的に行うことができる。
水素ガスの気泡は衝突部10の谷部を通過する際に摩擦により激しく剪断され、粉砕されるとともに強撹拌領域SMに巻き込まれることで一挙に微細気泡(1μm未満)のレベルにまで粉砕される。このとき、撹拌により一旦溶存した水素ガスの一部は、谷部ないし強撹拌領域で水素微細気泡として再析出する。混相流を形成する水素ガスは強撹拌領域SMに巻き込まれることで液体との混合が顕著に進み、水素の水に対する飽和溶解度が非常に小さいにもかかわらず、その溶解をきわめて効率的に行うことができる。
強撹拌領域SMが形成される大きな要因の一つは、供給する液体中に最初から溶存しているプレ溶存ガス(特に空気)のキャビテーションによる減圧沸騰析出である。しかし、溶存空気の減圧沸騰をきっかけとして生ずる強撹拌領域SMでは、外部から導入される水素ガスの撹拌・溶解が、減圧沸騰で損なわれるガス量を桁違いに上回る規模により進行する。また、液体に溶解しきれなかった水素ガスも、浮上速度の非常に小さい微細気泡として液中に留まることになる。特に水素の場合、水に対する溶解度が低いために、処理コア部及び強撹拌領域では溶存水素が瞬時に飽和状態となり、流速増加に伴うわずかな減圧でも気泡が極めて析出しやすい状況が形成され、高密度に微細気泡が生成すると考えられる。
また、処理コア部でのキャビテーションの進行により溶存空気が微細気泡となって消費されること、及び水素溶解が急速に進み溶存水素濃度が飽和に到達した状況で、さらに水素微細気泡が続々形成されること、などの要因により、得られる液状組成物中の溶存空気濃度すなわち溶存酸素濃度は大きく低減されることとなる。
また、液体処理ノズル1においては、隔壁部8に複数の絞り部を形成し、その前後の流路区間を、該隔壁部8が区画する流入室6ないし流出室7に集約して、それら複数の絞り部により共有化させる構造を採用しているので、流路が複数系統に分岐する区間は隔壁部8に形成された絞り孔9のみとなる。その結果、絞り孔9内での流速の低下ないし不均一化が抑制され、水素ガスが絞り孔9の一部のものに偏ってしまう、いわゆる偏流を確実に防止することができる。すなわち、衝突部10を有する絞り孔9を複数形成することで十分なキャビテーション効果と十分な流量とを両立することができ、かつ、複数の絞り孔9間での偏流が効果的に抑制され、キャビテーション効果に基づいた微細気泡発生を安定に継続することができる。
図9は、液体処理ノズル1を流れ方向が水平になるように配置してガス溶解を行う様子を示している。液体入口4から混相流を導入したとき、そのガス相をなす気泡Gは重力によって上に偏って流れやすくなり、上方に位置する絞り孔9にガス相が偏りやすくなる。この場合は、ガス相流量の小さい下側の絞り孔9側での液体流F1により主に作られる強撹拌領域SMを、流出室7にてガス相流量の大きい上側の絞り孔9からの流れF2が共有できるので、同様に良好な水素の溶解・粉砕が可能である。一方、図12は、液体処理ノズル1を流れ方向が垂直になるように配置してガス溶解を行う様子を示すものである。ガスを導入する液体入口4は下側に位置するようにして混相流を導入している。複数の絞り孔9は絞り孔アスペクト比が小さく、かつ、隔壁部8の中央付近に近接配置されているので、液相・ガス相ともに偏流は生じにくく、ガス相GBは各絞り孔9に均一に分配され、一様なガス溶解が可能となる。
次に、こうして得られた液状組成物を大気中に暴露すると、図16に示すように、水素が溶存水素と水素微細気泡の両方の形態で液体中に共存する本発明の液状組成物(図中破線)は、溶存水素しか存在しない(すなわち、水素微細気泡を含まない)液体(図中実線)と比較して、溶存水素濃度の見かけの減少速度が低下して高濃度の状態をより長時間維持するようになる。これは、溶存水素の蒸発速度が低下するのではなく、微細気泡中の水素が周囲の液体に溶出することに起因するものである。これにより、雰囲気開放された状態で一定レベル以上の溶存水素濃度が求められる場合、高濃度状態の継続時間を延長できる利点につながる。得られた水素含有液状組成物を大気中に放置したときの、溶存水素濃度の経時変化測定値から、組成物中の総水素量や微細気泡水素量を算出する方法については、「課題を解決するための手段」の欄においてすでに詳細に説明したので、ここでは繰り返さない。
液中の気泡の界面には、液面からの気泡の存在深さに応じて作用する液圧だけでなく、表面張力に基づいた内圧が作用する。表面張力に基づく圧力増分Δpは、液体の表面張力をσ、気泡径をDとしたとき、
という式で表される。これはYoug−Laplaceの式として古典的に知られているものである。この式からも明確なとおり、気泡の内圧は気泡径に単純に逆比例して大きくなり、水中の気泡で考えれば、気泡径Dが3μmで気泡内圧はほぼ大気圧と等しくなる。気体の液体への溶解度は、水素のようなヘンリーの法則に従うガスの場合は圧力に比例して増大するので、気泡径Dが縮小すればするほど内圧上昇により内部の水素ガスが溶解して気泡の縮小が進み、最終的には消滅すると考えられてきた。しかし、近年の研究の進歩により、気泡はサブミクロンオーダーに縮小しても、様々な要因によりその大きな内圧上昇に耐えて安定化することがわかり、微細気泡(ウルトラファインバブルあるいはナノバブル)として液中に残留しうる。
ここで、もし、上記推定した機構により析出し、成長停止した水素気泡が数nm程度に小さかった場合、数3によれば気泡内圧は0.1GPa(1000気圧)付近まで上昇することになるが、この程度まで水中で加圧された水素分子は、水と強固に結合してクラストレートハイドレートと称されるネットワーク状の結晶構造を形成する可能性がある。このハイドレートの水素含有量は4〜5重量%と、水素の飽和溶存濃度の数万倍にも達し、表面張力により内圧保持された状態では、周囲の水の溶存水素濃度が飽和している限り、水中ではほとんど再溶解せず安定に存在し続けるものと考えられる。また、液面からの水素蒸発により周囲の液相中の溶存水素濃度が下がっても、ハイドレートが安定であれば、該ハイドレート粒子からの水素の溶出速度は小さくなり、液中の溶存水素は該粒子からゆっくりと補われることになるから、液の溶存水素濃度の見かけの減少速度も、通常の溶存水素水等と比較して大幅に小さくなると考えられる。しかし、このレベルのサイズのハイドレート粒子はレーザー散乱式粒度計や電子顕微鏡では、検出限界を下回るので検知することは困難である。
このようにして得られた組成物であるが、たとえば、本体組成物を飲用水とする場合は、高濃度の溶存水素および水素微細気泡を含有した水素水として、図1の装置500において、バルブ504を開いて取り出し口503から回収し、たとえば、アルミパウチ容器などに密封して製品化することができる。また、本体組成物は、飲料水に限らず、果汁や糖類、香料などを添加した清涼飲料水や、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品、さらには、ワイン、日本酒、ビール(濾過後、炭酸ガス注入前)などの酒類、化粧水や美容液、乳液などの化粧用原料組成物なども全く同様に採用できる。
また、工業用の精製水あるいは超純水にも、本発明の方法により水素を添加することができる。たとえば、半導体用の超純水においては溶存酸素(DO)濃度を5ppb以下、例えば1ppb以下とするように管理されることが多く、特許文献10〜特許文献14に開示されているごとく、原料超純水に水素を添加し、さらに白金触媒と接触させて溶存酸素を低減する方法が広く採用されているが、これらの技術における水素添加方法として、本発明の方法を好適に採用することができる。また、特許文献15及び特許文献16に開示されているように、工業用あるいは発電用のボイラー用水において、復水側配管の酸化保護被膜の安定化及び強化を図ること、あるいは蒸気発生器の2次側や、沸騰水型原子炉の一次冷却水配管などメンテナンスのための開放が本質的に困難な配管部分については、使用水に水素を注入して配管の酸化進行を抑制することなどが行われている。このような用途における、使用水への水素添加に関しても、本発明の方法を好適に採用することができる。
なお、図13に示すように、液体処理ノズルの衝突部は、直径方向にねじ込まれる2本のねじ部材10で形成してもよい。この構成では、2本のねじ部材10,10の先端面の間に液体流通ギャップ15を形成している。ねじ部材10の先端が絞り孔9の断面中心に近づく分だけ、図14に示すように、基準円C70の内側にて、より中心に近い位置に谷点を配置できていることがわかる。ただし、絞り部9の断面径が増大した場合は、有効谷点密度Neが低くなりやすいので、全流通断面積Stが比較的小さい、小流量の液体処理ノズルに適した構成であるといえる。また、図28の液体処理ノズル171のごとく、絞り孔9を1個のみとして形成することもできる。図2のノズルと比較して形成効率が若干劣るが、この場合も、水素微細気泡を多量に形成することが可能である。
なお、添加する水素微細気泡の量がそれほど大きく求められない場合は、液体処理ノズル1に対し液体を1パスだけ流通させる方式を採用することもできる。図15に、該方式を具現化できる本発明のガス溶解装置の一例を示す。該装置550は、図1の装置500と多くの部分において共通しているが、タンク501から延出する配管507が、1パスの本体組成物供給配管として形成されている点が相違する(その余の構成要素については図1の装置500と同一であるので、同じ符号を付与し、説明は繰り返さない)。そして、図1と同様に、ガス導入部219には減圧弁411及びガス供給チューブ412を介して水素ガス供給源としての水素ボンベ420から水素ガスが供給される。水素ガス溶解済みの水素含有液状水性組成物514は流出口511から回収容器512に回収される。なお、流出口511に図示しないボトリング用ノズルを取り付け、回収容器512に注入せず、液状組成物の個別容器にボトリングし、密封するようにしてもよい。
なお、原料となる本体組成物502は、粘度が500mPa・s以上3000mPa・s以下に調整されたものを使用することもできる。これに水素微細気泡を上記方法により導入すると、高粘度のため微細気泡の液面からの浮上・離脱が抑制される結果、水素微細気泡を1体積%以上30体積%以下という、従来決して到達しえなかった含有率に到達させることができる。
図1は、本発明の水素含有液状水性組成物の製造装置の一例を概念的に示すものである。該装置500において、原料となる本体組成物502は、水の含有率が50質量%以上であり、たとえば飲料水、化粧用原料、洗浄水、冷却水あるいは工業用水である。さらに、必要に応じて水と相溶性を有する液体(例えば、エタノール等)が含有されていてもよい。この場合、水と相溶性を有する液体と水との合計質量含有率は80%以上のものとされる。さらに、必要に応じて、水に溶解する種々の成分(糖類、甘味料、食塩、各種食品添加物、寒天やゼラチンなどの増粘剤など)を溶解し、水溶液としてあってもよい。
該本体組成物502が、タンク501に貯留されるとともに、該タンク501から延出する循環配管507の途上に、エジェクタ等で構成されるガス導入部219、送液ポンプ505及び液体処理ノズル1がこの順序で設けられている。ガス導入部219には減圧弁411及びガス供給チューブ412を介して水素ガス供給源としての水素ボンベ420から水素ガスが供給されるようになっている。なお、水素ガス供給源としては水素ボンベ以外に、電解式水素発生装置や、可逆的に水素を吸着・脱着する水素吸蔵合金を水素ガス貯留部として使用し、加熱による水素吸蔵合金からの水素脱着により水素ガスを放出する水素合金キャニスターを使用してもよい。また、送液ポンプ505は、気液混相流の送液に適した容積型ポンプ、例えばベーンポンプや渦流ポンプにて構成され、特にベーンポンプを用いることが望ましい。
図2は液体処理ノズル1の横断面を、図3はその液体入口側の軸線方向からの拡大側面を示すものである。この液体処理ノズル1は、液体流路3が形成されたノズル本体2を備える。ノズル本体2は円筒状に形成され、その中心軸線Oの向きに円形断面の液体流路が貫通形成されている。ノズル本体2には、液体流路3を液体入口4側の流入室6と液体出口5側の流出室7とに区画する隔壁部8と、隔壁部8に貫通形成され流入室6と流出室7とを互いに別経路にて連通させる複数の絞り孔9と、絞り孔9の内面から各々突出する衝突部10とからなる処理コア部COREが形成されている。図3において、隔壁部8に絞り孔2は中心軸線Oに関して軸対象となるように、同一内径にて2個形成されている。流入室6及び流出室7の各内周面は、処理コア部COREに向けて縮径するテーパ面14とされている。
図4は、そのうちの一方を拡大して示すものであり、衝突部10は外周面に周方向の山部11と高流速部となる谷部12とが複数交互に連なるように形成されている。衝突部10は、この実施形態では、脚部末端側が流路内に突出するねじ部材(以下、「ねじ部材10」ともいう)であり、結果、衝突部に形成される複数巻の山部11は、らせん状に一体形形成されている。なお、山部及び谷部は、らせん状に一体化せず、周方向に閉じたものを衝突部の軸線方向に複数密接配列してもよい。ノズル本体2の材質は、たとえばABS、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、PTFEなどの樹脂であるが、ステンレス鋼や真鍮などの金属やアルミナ等のセラミックスとしてもよく、用途に応じて適宜選択される。また、ねじ部材10の材質はたとえばステンレス鋼であるが、用途に応じて、より耐食性の高いチタンやハステロイ、インコネル(いずれも商標名)などの耐熱合金を用いてもよいし、耐摩耗性が問題となる場合は石英やアルミナなどのセラミック材料を用いることも可能である。
衝突部10は、図2の処理コア部COREにおいて複数の絞り孔9のそれぞれに、図3に示すごとくノズル本体2の軸線Oと直交する平面への投影において、各絞り孔9の中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置されている。各絞り孔9において、ねじ部材10と絞り孔9内周面との間には主流通領域21が形成される。また、4つの衝突部10が形成する十字の中心位置には、液体流通ギャップ15が形成されている。液体流通ギャップ15を形成する4つの衝突部10の先端面は平坦に形成され、前述の投影において液体流通ギャップ15は正方形状に形成されている。絞り孔9(液体流路)の内径Dは2.5mm以上7mm以下(望ましくは2.9mm以上5.5mm以下)に設定され、主流通領域21と液体流通ギャップ15とからなる液流通領域の全流通断面積Stは2.5mm2以上35mm2以下(望ましくは4mm2以上13mm2以下)に設定される。
処理コア部における液体流路(絞り孔9)の投影領域の外周縁内側の全面積、すなわち絞り孔9の円形軸断面の面積(内径をdとしたとき、πd2/4)をS1、衝突部10(4本のねじ部材)の投影領域面積をS2として、処理コア部の絞り孔9の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm2)
として定義する。この実施形態では、主流通領域21(図4)と液体流通ギャップ15との合計面積が全流通断面積Stに相当する。図1に示すごとく、液体入口4及び液体出口5の開口径は、絞り孔9の内径よりも大きい。すなわち、液体入口4及び液体出口5の断面積は全流通断面積Stよりも大きく設定されている。また、流入室6及び流出室7の絞り孔9に連なる内周面はそれぞれテーパ部13,14とされている。
図4は処理コア部COREを拡大して示すものである。絞り孔9にそれぞれ形成される衝突部の組は、ノズル本体2の壁部外周面側から先端が絞り孔9内へ突出するようにねじ込まれる4本のねじ部材により形成されている。ねじ部材10は、ノズル本体2の壁部に貫通形成された、図3に破線で示すねじ孔19にねじ込まれ、各ねじ孔19のねじスラスト方向途中位置にはねじ頭下面を支持するための段付き面19rが形成されている。該段付き面19rの形成位置は、ねじ部材10をねじ込んだ時に、絞り孔9内に突出するねじ脚部(すなわち、衝突部となる部分)の長さが、液体流通ギャップ15を形成するのに適正となるように調整されている。
図5は図4と全く同一の投影図であり、符号を省略したものである(従って、各部の符号は図4のものを援用する)。ねじ部材(衝突部)10の投影外形線に現れる谷部21の深さhは0.2mm以上確保されている。また、中心軸線O投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた円を基準円C70として定めるとともに、谷部21の最底位置を表す谷点のうち、基準円C70の内側に位置するもの(以下、70%谷点数という:○で表示)の数をN70(個)、基準円C70の外側に位置するもの(以下、70%補谷点数という:●で表示)の数をNc70(個)とする。
谷部の最底位置を表す谷点のうち、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた基準円の内側に位置するものの数をN70(個)、基準円の外側に位置するものの数をNc70(個)とし、谷深さ補正係数αを
h≧0.35mmのときα=1、
h<0.35mmのとき、α=−60h2+41h−6
として定め、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhを0.2mm以上確保している。また、該投影にて全流通断面積の領域のうち基準円の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm2)として、70%断面比率σ70を、
σ70=S70/St×100(%)
として定め、有効谷点数Neを
Ne=α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70)
として定義する。該有効谷点数Neは、全流通断面積Stで規格化した有効谷点密度(Ne/St)が1.5個/mm2以上(望ましくは1.8個/mm2以上)確保されている。
次に、複数の絞り孔9の間でねじ部材10の干渉を回避するために、各絞り孔9に組み込む4つのねじ部材10の組は、それら絞り孔9の間で軸線方向にて互いにずれた位置に配置されている。図6に拡大して示すように、同一の絞り孔9内の複数のねじ部材10A,10Bと10C,10Dとは、該絞り孔9の軸線方向(流れ方向)にて互いにずれた位置に配置されている。具体的には、各絞り孔9において、同一平面上で互いに直交する位置に配置されたねじ部材の対10A,10B及び10C,10Dが、それぞれ流れ方向において互いに異なる位置(図中、上側の絞り孔9については下流側のA及びBの位置に、下側の絞り孔については上流側のC及びD位置)に配置されている。それぞれ図1の中心軸線Oと直交する平面への投影では、A及びBの位置の4つのねじ部材10A,10B、及びC及びD位置の4つのねじ部材10C,10Dが、それぞれ十字形態をなすように配置されることとなる。
図7に示すように、絞り孔9は、それら絞り孔9の軸断面積の合計と等価な円の直径をd(d1、d2)、絞り孔9の長さをLとして、L/deにて定義される絞り孔アスペクト比が3.5以下に設定されている。図6において、2つの絞り孔9の内径が互いに異なる一般の場合(d1,d2)は、絞り孔アスペクト比は、L/(d12+d22)1/2となる。2個の絞り孔9は内径と長さが互いに等しい円筒面をなすように形成されており、2つの絞り孔9の内径をdとして、絞り孔アスペクト比は0.71L/dである。絞り孔アスペクト比L/deの値は、望ましくは3以下であること、より望ましくは2.5以下であるのがよい。
図3に戻り、ノズル本体2の軸線Oと直交する平面への投影において、隔壁部8の投影領域の中心位置に定められた基準点(軸線の位置と一致する)Oから複数の絞り孔9の内周縁までの距離(絞り孔変位)Tは、該絞り孔9の内径dよりも小さくなるように、複数の絞り孔9は基準点Oの周りに近接配置されている。絞り孔変位Tは絞り孔9の内径dの望ましくは1/2以下であるのがよい。さらに、本実施形態では、同じ投影において、複数の絞り孔9の内周縁に対する外接円20の面積をSt、絞り孔9の投影領域の合計面積をSrとしたとき、K≡Sr/Stにて定義される絞り孔9集約率Kが0.2以上とされている。
また、図7に示す如く、絞り孔9の衝突部10よりも下流に位置する区間の長さ(以下、残区間という)をLp(Lp2〜Lp4の平均値)とし、絞り孔9の軸断面積の合計と等価な前述の円の直径をdeとして、Lp/deにて定義される残区間アスペクト比は1.0以下に設定されている。図7では、最も下流側に位置するねじ部材10Aに関しては、残区間の長さがゼロであるが、図8に示す如く、ねじ部材10Aに関し残区間がゼロでない長さLp1を有する場合は、上記残区間長さLpはLp1〜Lp4の平均値となる。
以下、図1の装置500を用いた水素含有液状水性組成物の製造工程について説明する。すなわち、タンク501に本体組成物502を投入して送液ポンプ505を動作させると、タンク501からの本体組成物はガス導入部219にて水素ボンベ420からの水素ガスが供給されて混相流となり、送液ポンプ505内に吸い込まれる。混相流を形成するための水素ガス流量をQ1、本体組成物の流量をQ2としたとき、液体処理ノズル1の液体入口側の動圧は0.1MPa以上0.5MPa以下(望ましくは0.2MPa以上0.4MPa以下)に設定され、水素ガスの本体組成物に対する流量比Q1/Q2が0.01以上0.2以下(望ましくは0.03以上0.1以下)となるように設定される。
送液ポンプ505の内部では水素ガスがポンプ内撹拌流に巻き込まれることにより、水素ガス相がたとえば50〜1000μm程度の気泡に予備粉砕されて、ポンプ下流側の液体処理ノズル1に供給される。その結果、水素ガスの溶解効率及び1μm以下の微細気泡への粉砕効率が一層高められる。そして、混相流はこの状態で液体処理ノズル1にて水素ガスの溶解及び微細気泡への粉砕処理がなされ、タンク502に戻る。以降、タンク内の水502は循環しながら水素ガスの溶解及び微細気泡への粉砕が継続され、水素微細気泡の形成濃度が高められる。
タンク502内の液面上方の空間は、例えば密閉としてもよいし、大気開放としてもよい。このとき、該上方空間は水素ガスで置換されていることが、水素微細気泡の形成濃度をさらに高める上で有効である。したがって、大気開放する場合でも、半密閉形態にタンク502を構成し、上方空間の内圧が大気圧に対し1〜10%の範囲で多少正圧に維持されつつ、チューブ等を介して液面より浮上する廃水素ガスをタンク502外に排出できるようにしておくことが望ましい。
図2の液体処理ノズル1内での作用は次のようなものである。図9に示すごとく、混相流ははまず一括してテーパ部13で絞られ、さらに個々の絞り孔9へ分配されて、主流通領域21(図4)と液体流通ギャップ15(図4)とからなる液流通領域により個別に絞られて、ねじ部材10に衝突しながらこれを通過する。ねじ部材10の外周面を通過するときに、図10に示すように流れは谷部に高速領域を、山部に低速領域をそれぞれ形成する。すると、谷部の高速領域はベルヌーイの定理により負圧領域となり、キャビテーションすなわち空気等のプレ溶存ガスの減圧析出により、気泡FBが発生する。この時、液体が圧送されてねじ部材10に衝突する際に、その背圧により液体は導入された水素ガスとともに加圧され、一部は液体に溶解する。そして、これが、ねじ部材10の谷部を通過する際に高流速化することで減圧され、気泡を析出することも当然にある。
谷部はねじ部材10の外周に複数巻形成され、かつねじ部材10が絞り孔9内に複数配置されていることから、この減圧析出は絞り孔9内の谷部にて同時多発的に起こることとなる。すると、図11に示すように、液流がねじ部材10に衝突する際に谷部での減圧析出が沸騰的に激しく起こり、さらにねじ部材10の下流に迂回する際に生ずる渦流にこれを巻き込んで激しく撹拌する。衝突部10の周辺及び直下流域には、微小渦流FEを無数に含んだ顕著な強撹拌領域SMが形成されることとなる。気泡を析出する減圧域は衝突部10の谷底付近に限られ、高速の液体流はほとんど瞬時的に該領域を通過してしまうから、発生した気泡FBはそれほど成長せずに上記の撹拌領域に巻き込まれ、過度に成長する心配がない。そして、液体処理ノズル1に供給される本体組成物には、ポンプ505で予備粉砕された水素ガスの気泡が混入して混相流を形成しているので、水素微細気泡となるべきガス相は衝突部10の下流の強撹拌領域SMに巻き込まれることにより本体組成物との混合が顕著に進み、微細気泡化をきわめて効率的に行うことができる。
水素ガスの気泡は衝突部10の谷部を通過する際に摩擦により激しく剪断され、粉砕されるとともに強撹拌領域SMに巻き込まれることで一挙に微細気泡(1μm未満)のレベルにまで粉砕される。このとき、撹拌により一旦溶存した水素ガスの一部は、谷部ないし強撹拌領域で水素微細気泡として再析出する。混相流を形成する水素ガスは強撹拌領域SMに巻き込まれることで液体との混合が顕著に進み、水素の水に対する飽和溶解度が非常に小さいにもかかわらず、その溶解をきわめて効率的に行うことができる。
強撹拌領域SMが形成される大きな要因の一つは、供給する液体中に最初から溶存しているプレ溶存ガス(特に空気)のキャビテーションによる減圧沸騰析出である。しかし、溶存空気の減圧沸騰をきっかけとして生ずる強撹拌領域SMでは、外部から導入される水素ガスの撹拌・溶解が、減圧沸騰で損なわれるガス量を桁違いに上回る規模により進行する。また、液体に溶解しきれなかった水素ガスも、浮上速度の非常に小さい微細気泡として液中に留まることになる。特に水素の場合、水に対する溶解度が低いために、処理コア部及び強撹拌領域では溶存水素が瞬時に飽和状態となり、流速増加に伴うわずかな減圧でも気泡が極めて析出しやすい状況が形成され、高密度に微細気泡が生成すると考えられる。
また、処理コア部でのキャビテーションの進行により溶存空気が微細気泡となって消費されること、及び水素溶解が急速に進み溶存水素濃度が飽和に到達した状況で、さらに水素微細気泡が続々形成されること、などの要因により、得られる液状組成物中の溶存空気濃度すなわち溶存酸素濃度は大きく低減されることとなる。
また、液体処理ノズル1においては、隔壁部8に複数の絞り部を形成し、その前後の流路区間を、該隔壁部8が区画する流入室6ないし流出室7に集約して、それら複数の絞り部により共有化させる構造を採用しているので、流路が複数系統に分岐する区間は隔壁部8に形成された絞り孔9のみとなる。その結果、絞り孔9内での流速の低下ないし不均一化が抑制され、水素ガスが絞り孔9の一部のものに偏ってしまう、いわゆる偏流を確実に防止することができる。すなわち、衝突部10を有する絞り孔9を複数形成することで十分なキャビテーション効果と十分な流量とを両立することができ、かつ、複数の絞り孔9間での偏流が効果的に抑制され、キャビテーション効果に基づいた微細気泡発生を安定に継続することができる。
図9は、液体処理ノズル1を流れ方向が水平になるように配置してガス溶解を行う様子を示している。液体入口4から混相流を導入したとき、そのガス相をなす気泡Gは重力によって上に偏って流れやすくなり、上方に位置する絞り孔9にガス相が偏りやすくなる。この場合は、ガス相流量の小さい下側の絞り孔9側での液体流F1により主に作られる強撹拌領域SMを、流出室7にてガス相流量の大きい上側の絞り孔9からの流れF2が共有できるので、同様に良好な水素の溶解・粉砕が可能である。一方、図12は、液体処理ノズル1を流れ方向が垂直になるように配置してガス溶解を行う様子を示すものである。ガスを導入する液体入口4は下側に位置するようにして混相流を導入している。複数の絞り孔9は絞り孔アスペクト比が小さく、かつ、隔壁部8の中央付近に近接配置されているので、液相・ガス相ともに偏流は生じにくく、ガス相GBは各絞り孔9に均一に分配され、一様なガス溶解が可能となる。
次に、こうして得られた液状組成物を大気中に暴露すると、図16に示すように、水素が溶存水素と水素微細気泡の両方の形態で液体中に共存する本発明の液状組成物(図中破線)は、溶存水素しか存在しない(すなわち、水素微細気泡を含まない)液体(図中実線)と比較して、溶存水素濃度の見かけの減少速度が低下して高濃度の状態をより長時間維持するようになる。これは、溶存水素の蒸発速度が低下するのではなく、微細気泡中の水素が周囲の液体に溶出することに起因するものである。これにより、雰囲気開放された状態で一定レベル以上の溶存水素濃度が求められる場合、高濃度状態の継続時間を延長できる利点につながる。得られた水素含有液状組成物を大気中に放置したときの、溶存水素濃度の経時変化測定値から、組成物中の総水素量や微細気泡水素量を算出する方法については、「課題を解決するための手段」の欄においてすでに詳細に説明したので、ここでは繰り返さない。
液中の気泡の界面には、液面からの気泡の存在深さに応じて作用する液圧だけでなく、表面張力に基づいた内圧が作用する。表面張力に基づく圧力増分Δpは、液体の表面張力をσ、気泡径をDとしたとき、
という式で表される。これはYoug−Laplaceの式として古典的に知られているものである。この式からも明確なとおり、気泡の内圧は気泡径に単純に逆比例して大きくなり、水中の気泡で考えれば、気泡径Dが3μmで気泡内圧はほぼ大気圧と等しくなる。気体の液体への溶解度は、水素のようなヘンリーの法則に従うガスの場合は圧力に比例して増大するので、気泡径Dが縮小すればするほど内圧上昇により内部の水素ガスが溶解して気泡の縮小が進み、最終的には消滅すると考えられてきた。しかし、近年の研究の進歩により、気泡はサブミクロンオーダーに縮小しても、様々な要因によりその大きな内圧上昇に耐えて安定化することがわかり、微細気泡(ウルトラファインバブルあるいはナノバブル)として液中に残留しうる。
ここで、もし、上記推定した機構により析出し、成長停止した水素気泡が数nm程度に小さかった場合、数3によれば気泡内圧は0.1GPa(1000気圧)付近まで上昇することになるが、この程度まで水中で加圧された水素分子は、水と強固に結合してクラストレートハイドレートと称されるネットワーク状の結晶構造を形成する可能性がある。このハイドレートの水素含有量は4〜5重量%と、水素の飽和溶存濃度の数万倍にも達し、表面張力により内圧保持された状態では、周囲の水の溶存水素濃度が飽和している限り、水中ではほとんど再溶解せず安定に存在し続けるものと考えられる。また、液面からの水素蒸発により周囲の液相中の溶存水素濃度が下がっても、ハイドレートが安定であれば、該ハイドレート粒子からの水素の溶出速度は小さくなり、液中の溶存水素は該粒子からゆっくりと補われることになるから、液の溶存水素濃度の見かけの減少速度も、通常の溶存水素水等と比較して大幅に小さくなると考えられる。しかし、このレベルのサイズのハイドレート粒子はレーザー散乱式粒度計や電子顕微鏡では、検出限界を下回るので検知することは困難である。
このようにして得られた組成物であるが、たとえば、本体組成物を飲用水とする場合は、高濃度の溶存水素および水素微細気泡を含有した水素水として、図1の装置500において、バルブ504を開いて取り出し口503から回収し、たとえば、アルミパウチ容器などに密封して製品化することができる。また、本体組成物は、飲料水に限らず、果汁や糖類、香料などを添加した清涼飲料水や、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品、さらには、ワイン、日本酒、ビール(濾過後、炭酸ガス注入前)などの酒類、化粧水や美容液、乳液などの化粧用原料組成物なども全く同様に採用できる。
また、工業用の精製水あるいは超純水にも、本発明の方法により水素を添加することができる。たとえば、半導体用の超純水においては溶存酸素(DO)濃度を5ppb以下、例えば1ppb以下とするように管理されることが多く、特許文献10〜特許文献14に開示されているごとく、原料超純水に水素を添加し、さらに白金触媒と接触させて溶存酸素を低減する方法が広く採用されているが、これらの技術における水素添加方法として、本発明の方法を好適に採用することができる。また、特許文献15及び特許文献16に開示されているように、工業用あるいは発電用のボイラー用水において、復水側配管の酸化保護被膜の安定化及び強化を図ること、あるいは蒸気発生器の2次側や、沸騰水型原子炉の一次冷却水配管などメンテナンスのための開放が本質的に困難な配管部分については、使用水に水素を注入して配管の酸化進行を抑制することなどが行われている。このような用途における、使用水への水素添加に関しても、本発明の方法を好適に採用することができる。
なお、図13に示すように、液体処理ノズルの衝突部は、直径方向にねじ込まれる2本のねじ部材10で形成してもよい。この構成では、2本のねじ部材10,10の先端面の間に液体流通ギャップ15を形成している。ねじ部材10の先端が絞り孔9の断面中心に近づく分だけ、図14に示すように、基準円C70の内側にて、より中心に近い位置に谷点を配置できていることがわかる。ただし、絞り部9の断面径が増大した場合は、有効谷点密度Neが低くなりやすいので、全流通断面積Stが比較的小さい、小流量の液体処理ノズルに適した構成であるといえる。また、図28の液体処理ノズル171のごとく、絞り孔9を1個のみとして形成することもできる。図2のノズルと比較して形成効率が若干劣るが、この場合も、水素微細気泡を多量に形成することが可能である。
なお、添加する水素微細気泡の量がそれほど大きく求められない場合は、液体処理ノズル1に対し液体を1パスだけ流通させる方式を採用することもできる。図15に、該方式を具現化できる本発明のガス溶解装置の一例を示す。該装置550は、図1の装置500と多くの部分において共通しているが、タンク501から延出する配管507が、1パスの本体組成物供給配管として形成されている点が相違する(その余の構成要素については図1の装置500と同一であるので、同じ符号を付与し、説明は繰り返さない)。そして、図1と同様に、ガス導入部219には減圧弁411及びガス供給チューブ412を介して水素ガス供給源としての水素ボンベ420から水素ガスが供給される。水素ガス溶解済みの水素含有液状水性組成物514は流出口511から回収容器512に回収される。なお、流出口511に図示しないボトリング用ノズルを取り付け、回収容器512に注入せず、液状組成物の個別容器にボトリングし、密封するようにしてもよい。
なお、原料となる本体組成物502は、粘度が500mPa・s以上3000mPa・s以下に調整されたものを使用することもできる。これに水素微細気泡を上記方法により導入すると、高粘度のため微細気泡の液面からの浮上・離脱が抑制される結果、水素微細気泡を1体積%以上30体積%以下という、従来決して到達しえなかった含有率に到達させることができる。
以下、本発明の効果を確認するために行った実験とその結果について記載する。
(実験例1)
本体組成物として12.2℃の殺菌済み軟水(実施例1〜6)、及び同じ水を寒天の添加により粘度を上昇させたもの(実施例6、7)を用意した。図1の装置500においてタンク501に本体組成物を180L投入し、表1の条件で水素添加しながら循環を行った。なお、使用したポンプは東振テクニカル社製のベーンポンプTVP−MS1803である。
また、液体処理ノズル1は、図2〜図5に示す形態のものを使用した。ノズル本体2の材質はABS樹脂であり、液体入口4と液体出口5の内径はφ14mm、流入室6及び流出室7の流れ方向の長さはそれぞれ30mmである。コア部COREについては、絞り孔9の形成個数を図3に示す配置にて2個とし、絞り孔9の内径dはφ4.6mm、隔壁部8についてはその厚みを7.0とした。流入室6及び流出室7の内周面は、各々液体入口4と液体出口5との内周縁から、隔壁部8の対応する側の外周縁に至る連続テーパ面として形成した。衝突部10は脚部先端面が平坦に形成されたねじ部材により、具体的にはM1.4のJIS並目ピッチのなべ小ねじ(SUS304ステンレス鋼製)を使用して形成した。また、流通断面積は各絞り孔9について約10mm2である。
なお、液/水素導入比は、常圧換算した水素流量を水流量で割った値であり、軟水を用いた実施例1〜5ではこの値を0.02(水素流量:3NL/分、水流量:15L/分)に設定する一方、粘度を高めた実施例6及び7では循環時の泡立ちを抑制するため、それぞれ0.08及び0.05と水素流量をやや減じている。また、循環流量率は、容器内の水の体積を水の体積で割った値であり、液量180Lのタンクを用いた実施例1〜3及び比較例では該値は0.08に設定した。軟水を用いつつ、液量10Lないし20Lのタンクを用いた実施例4及び5では該値は1.11及び1.8に、粘度を高めた実施例6及び7では1.11にそれぞれ設定した。なお、比較例は、実施例1〜3と同じ本体組成物(軟水)を用い、図28の液体処理ノズルから衝突部を省略した単純なベンチュリノズルを用いた以外は同じ条件で水素添加を行ったものである。
循環中は、市販のORP計(堀場製作所製:D−72)にて酸化還元電位を、隔膜ポーラロ電極式の溶存水素計(共栄電子研究所製:KM2100DH)にて溶存水素濃度を液面付近で手撹拌しながら所定の時間間隔で測定した。また、循環開始後40分及び60分にて、得られた水素水を取出口503から開口径18cmの樹脂製ビーカーに5Lだけ採取するとともに、20℃の大気中に暴露しつつ酸化還元電位及び溶存水素濃度の経時変化を測定した。なお、測定は所定の時間間隔にて、測定時のみビーカー内の液体をマグネットスターラー(撹拌子の大きさ:φ8mm×30mm、60rpm)により15〜30秒程度撹拌することにより実施した。得られた各試料の溶存水素濃度のデータは、経過時間に対してプロットし、すでに説明した方法により、各区間の最小二乗法による相関係数が最適化される位置にて前半区間と後半区間とに分割し、指数関数近似して溶存水素減衰曲線を求め、減衰係数kを算出した。
また、これとは別途、5Lの密閉容器内に各本体組成物を入れて水素ガスを0.2MPaの圧力で密閉加圧し、20℃にて1週間保管した後開封して、同様に溶存水素減衰曲線を求め、標準減衰係数k0を算出した。そして、得られたこれらの値を用いて、潜在水素含有係数k0/k,推定全水素量及び微細気泡水素量を各々算出した。また、循環停止後10分を経過した試料を用い、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD7100H)にて平均気泡径を測定した。また、循環停止直後の各液状組成物の溶存酸素濃度を市販の隔膜ポーラログラフ式溶存酸素計(共栄電子研究所製:KM2100DO)により測定した。以上の結果を表2に示す。
※粘度はB型粘度計(ブルックフィールド社)にて25℃にて測定。
実施例1〜3は、軟水を本体組成物として用い、水素ガスを導入しつつ循環した時間を12分から60分の範囲内で変化させた場合の結果である。液量は180Lであり、液循環流量が15L/分であるから、循環時間12分で全液が1巡することになる。全循環時間をこの1巡の時間で除した値が循環パス数である。したがって、12分は1パス、40分は3.3パス、60分は5パスとなる。循環中の液流量に対する水素ガス流量(標準状態換算)比は20%である。表3は、水素導入時の経過時間と溶存水素濃度測定値の関係を示すものであり、図20はこれをプロットしたグラフである。また、表4及び図21は実施例2(循環パス数:3.3)の、表5及び図22は実施例3(循環パス数:5)の各水素水を、上記の条件で大気中に開放放置したときの経過時間と溶存水素濃度との関係を示すものである。
以上の結果によると、循環パス数が2前後までは溶存水素濃度が急速に増加しているが、以降は溶存水素濃度の増加が鈍り、3パス前後でほぼ頭打ちとなっていることがわかる。ところが、大気中放置したときの溶存水素濃度の持続性は実施例2及び3の比較から、溶存水素濃度が頭打ちとなった後も、循環時間の延長により確実に向上していることがわかる。これは、表2において減衰係数k、潜在水素含有係数k0/k、及びそれに基づいて算出した推定微細気泡水素量の値からも明らかである。特に、60分循環(循環パス数5)のものは推定微細気泡水素量が8.86ppmにも達し、飽和溶存水素量(約1.6ppm)のほぼ5.5倍もの高濃度の水素が微細気泡として含まれていると推定される。このような高濃度の水素微細気泡が、図2〜図5に示す単純な構造の液体処理ノズルに、液体の高々20%程度の低流量の水素を比較的低圧で供給・循環するのみで形成されている点も注目すべきである。
なお、比較のため、本発明にて採用する液体処理ノズルを採用せずに、ポンプ内撹拌のみで水素導入した水も合わせて評価した。これを、60分循環しても循環停止直後の溶存水素濃度は0.41ppm程度であり、大気放置にて0.5日(720分)後には0.1pp未満となり、1日後(1440分)には完全に溶存水素は消失した。これに対し、5パス循環した実施例3は、循環停止直後に溶存水素濃度が常圧飽和値を上回る1.72ppmを示すばかりでなく、約1日経過後(1304分)も0.95ppm、約3日経過後(4184分)も0.38ppmという高い溶存水素濃度を示していることがわかる。また、これよりも循環時間を短くした実施例1及び実施例2は、実施例3には及ばないものの、比較例よりははるかに良好な溶存水素濃度の持続性を示していることがわかる。また、いずれも、レーザー回折式粒度計で測定した平均気泡径は200nm未満と、非常に小さいことがわかる。
また、図21及び図22のグラフによると、いずれも、短時間側区間と長時間側区間とで減衰係数の異なる曲線となっており、指数関数によるフィッティングの精度も非常に高く、水素蒸発挙動は前記した数5に従うものであることが明らかである。また、図23は、実施例3の衰曲線の長時間側区間を、比較例2の曲線と比較して示すものである。溶存水素のみの比較例に対し、実施例の溶存水素濃度の持続性がいかに高いが理解できる。
次に、循環流量率を実施例3よりも大きく設定した実施例4の水素添加循環時の経過時間と溶存水素濃度との関係を図24に、循環停止後、大気中放置したときの経過時間と溶存水素濃度との関係を図25に、それぞれ示す。また、実施例5にかかる同様の結果を図26と図27に示す。この結果によると、循環流量率が大きくなったとき、循環パス数が実施例3よりも大きく設定されているにも関わらず、潜在水素含有係数k0/k及び微細気泡水素量の値は、いずれも実施例3よりもかなり小さくなっている。これは、容器内の液量が少ないために、循環中の撹拌の影響を大きく受け、循環継続中に合体発泡して損なわれる水素微細気泡の量が増えるためであると推測される。
一方、ヒドロキシエチルセルロースを用いて粘度を増大させた実施例5、6の液状組成物(循環時間は実施例3と同じ)については、溶存水素濃度の持続性が高粘度になるほど増大しており、減衰係数kの絶対値も小さくなっている。しかし、これを標準減衰係数k0で除した潜在水素含有係数k0/kの値は、実施例3とほぼ同じか少し大きい程度であることがわかる。
(実験例2)
図28に示すノズル171において、ノズル本体2の材質をABS樹脂とし、液体入口4と液体出口5の内径はφ14mm、流入室6及び流出室7の流れ方向の長さはそれぞれ30mmとした。コア部COREについては、絞り孔9の長さは5.3mm、絞り孔9の内径Dはφ2.1〜φ8.0mm種々の値に設定した。ねじ部材の配置は図4に示す形態(表8〜表11)及び図13に示す形態(表6、7:ただし、液体流通ギャップは形成せず)とした。ねじ部材はいずれも、ねじ外径M1.0〜M2.0、ねじ谷深さを0.25〜0.4mmの種々の寸法のものを使用した。そして、絞り孔内径Dとの組み合わせにより、全流通断面積Stを1.23〜40.27mm2の種々の値とした。全流通断面積Stは、図5及び図14のような絞り孔内のねじレイアウトを示す投影画像上でのピクセル数に基づいて算定し、同画像上で谷点を基準円の内外に分けて計数した。一の全谷点数をNt、基準円内側の70%谷点数をN70とする。
以上の各ノズルの全流通断面積St、液体流通ギャップ断面積Sc、70%断面積S70(全流通断面積Stのうち、基準円C70の内側に位置する部分)、70%断面比率σ70(≡S70/St)、前述の(1)式に基づくねじ谷深さ補正係数α、補正済全谷点数(α・Nt)、補正済70%谷点数(α・N70及びα・(σ70/50)・N70)、補正済70%補谷点数(≡α・(Nt−N70)・0.38=α・0.38Nc70))及び有効谷点数Ne(≡α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70)の値を表6〜表11にまとめて示している。
上記ノズルを用いて、以下の各試験を行った。
(1)一定水圧での流量の測定
元圧0.2MPaの水道蛇口から延びる配管を各ノズルの流入口側に接続し、かつ、その入口側に水圧計を取り付けた。そして、その状態で水道蛇口の開きを、水圧計の指示圧が0.1MPaとなるように調整し、ノズルの流出口から流出する水道水(溶存酸素濃度:8ppm)の流量(水流量Q:L/min)を測定した。前述の有効谷点数Neを該流量Qで除した値Ne/Qの値とともに、その結果を表7〜表12に合わせて記載している。
(2)平均気泡径の測定
実験例1と同様。
(4)水素ガス添加テスト
図1に示す装置500に上記種々のノズルを組み込み、タンク501を実験例1と同様の軟水で満たすとともに、ポンプ循環流量をノズル1とポンプ505との間で測定した供給圧が0.1MPaとなるように調整した。この状態で水素ガスを、圧力0.3MPa、ガス流量が常圧換算にて循環流量の20%となるように調整しつつ供給し、表3の実施例3と同じ循環パス数にて水素ガス添加を行なうとともに、得られた液状組成物について実験例1と全く同様にして溶存水素濃度の経時変化を測定し、その結果から計測開始時の溶存水素濃度(初期溶存水素濃度)、潜在水素含有量係数、推定全水素量及び推定微細気泡水素量を同様に算出した。
上記の結果から、有効谷点密度Neが大きいノズルほど、潜在水素含有係数k0/kの値が大きく、推定水素量(推定全水素量)及び微細気泡水素量の値も良好であることがわかる。
(実験例3)
図2に示す液体処理ノズルを、以下のように種々用意した。ノズル本体2の材質はABS樹脂であり、液体入口4と液体出口5の内径はφ14mm、流入室6及び流出室7の流れ方向の長さはそれぞれ30mmである。コア部COREについては、絞り孔9の形成個数を2個ないし4個のいずれかとし、絞り孔9の内径dはφ3.0〜φ4.6mm種々の値に、絞り孔変位Tについては0.9〜5.5mmの種々の値にそれぞれ設定した。隔壁部8については、その外周縁が、絞り孔9の内径dと絞り孔変位Tの値に応じ、図1及び図15の投影に示すごとく、液体流路3の中心軸線Oを中心とした絞り孔9内周縁への外接円20とほぼ一致するように形成し、その厚みを7.0〜20.0mmの種々の値に調整した。流入室6及び流出室7の内周面は、各々液体入口4と液体出口5との内周縁から、隔壁部8の対応する側の外周縁に至る連続テーパ面として形成した。これにより、各ノズルの絞り孔アスペクト比は1.52〜6.67、絞り孔集約率Kは0.11〜0.55の種々の値に設定されている。
次に、衝突部10は脚部先端面が平坦に形成されたねじ部材により、具体的にはM1.4ないしM1.6のJIS並目ピッチのなべ小ねじ(SUS304ステンレス鋼製)を使用して形成した。このうち、絞り孔の数が2個のノズルについては、各絞り孔に対して4本のねじ部材を図4に示す形態で配置した。各絞り孔9について互いにずれて配置される二組のねじ対10A,10Bないし10C,10Dの軸線方向の距離Jは、使用したねじ部材の外径(1.4mmないし1.6mm)と等しく設定してある。また、絞り孔9に対する軸線方向のねじ対の配置位置は、個々のねじ対についてねじ孔9の残区間長Lp1〜Lp4が、その平均値(残区間平均長)にて2.8〜13.8mmの種々の値となるように設定している。他方、流入室側については、最も上流側のねじ部材対10Dの上流側の縁の位置を隔壁部8の端面と一致するように定めている。一方、絞り孔の数が4個のノズルについては、各絞り孔に対して1本のねじ部材を絞り孔の直径に沿って、該絞り孔に対する残区間長Lpが0〜7mmとなるように配置している。
また、個々のノズルのコア部COREにおける合計流通断面積Seは、液流入口4側から内部の実態写真を撮影し、その写真から液流通領域(つまり、図3等においてねじ部材10に遮られない主流通領域21及び液体流ギャップ15の合計)の面積(以下、合計流通断面積Seという)を画像解析することにより算出した。該合計流通断面積Seの値も含め、コア部COREにおける主要寸法及びパラメータの数値を表12にまとめて示している。
以上のノズルを用いて、次の試験を行った。結果を表13にまとめて示している。
上記ノズルを用いて、以下の各試験を行った。
(1)一定水圧での水流量の測定
元圧0.2MPaの水道蛇口から延びる配管を各ノズルの流入口側に接続し、かつ、その入口側に水圧計を取り付けた。そして、その状態で水道蛇口の開きを、水圧計の指示圧が0.1MPaとなるように調整し、ノズルの流出口から流出する水道水(溶存酸素濃度:8ppm)の流量(水流量Q:L/min)を測定した。
(2)平均気泡径の測定
実験例1と同様。
(4)水素ガス添加テスト
図1に示す装置500に上記種々のノズルを組み込み、タンク501を実験例1と同様の軟水で満たすとともに、ポンプ循環流量をノズル1とポンプ505との間で測定した供給圧が0.1MPaとなるように調整した。この状態で水素ガスを、供給圧力0.3MPa、水素ガス流量が常圧換算にて循環流量の20%となるように調整しつつ供給し、表3の実施例3と同じ循環パス数にて水素ガス添加を行なうとともに、得られた液状組成物を実験例1と全く同様にして溶存水素濃度の経時変化を測定し、その結果から計測開始時の溶存水素濃度(初期溶存水素濃度)、潜在水素含有量係数、推定全水素量及び推定微細気泡水素量を同様に算出した。
以下、得られた結果について説明する。
絞り孔アスペクト比3.5以下、及び(絞り孔変位T)<(絞り孔の内径d)を充足するノズルは水流束値が高く、レーザー散乱式粒度計による気泡数平均径の値も120nm〜290nmと非常に小さい。そして、絞り孔アスペクト比の値が小さくなるほど、また、絞り孔変位Tの絞り孔の内径dからの隔たりが大きくなるほど水流束の値は大きくなり、また、気泡径の数平均値の値は小さくなる傾向にある。この場合、残区間平均長の値以外を同じに設定した番号6と番号7の結果を比較すれば明らかな通り、残区間アスペクト比が小さい番号6のノズルは、残区間アスペクト比が大きい番号7のノズルと水流束の値はほぼ同じであるが、気泡径の数平均値は番号6のノズルのほうが小さく、吸光度が大きくなる傾向にある。すなわち、絞り孔の残区間長が短いノズルのほうが、微細気泡の発生効率が高いことがわかる。
また、合計流通断面積、絞り孔変位及び絞り孔アスペクト比がほぼ同じ値に設定されノズルのうち、絞り孔9の数を2つとし、各絞り孔9に4本のねじ部材を配した番号1のノズルと、絞り孔9の数を4つとし、各絞り孔9に1本のねじ部材を配した番号11のノズルの場合を比較すると、水流束の値はそれほど大きな開きはないものの、図2型の構成を採用した番号1のノズルのほうが、微細気泡の発生効率に優れていることがわかる。
また、絞り孔アスペクト比が小さくなるほど、また、絞り孔変位Tの絞り孔の内径dからの隔たりが大きくなるほど推定微細気泡水素量が増加する傾向にあることもわかる。この場合、残区間平均長の値以外を同じに設定した番号6と番号7の結果を比較すれば明らかな通り、残区間アスペクト比が小さい番号6のノズルは、残区間アスペクト比が大きい番号7のノズルと水流束の値はほぼ同じであるが、番号7よりもはるかに高い微細気泡水素量を示している。また、合計流通断面積、絞り孔変位及び絞り孔アスペクト比がほぼ同じ値に設定されノズルのうち、前述の番号1のノズルと番号11のノズルの場合を比較すると、番号1のノズルのほうが、より良好な微細水素気泡形成能力を示していることもわかる。
(実験例4)
本体組成物として、表14の組成の乳液を用意した。
※B型粘度計(ブルックフィールド社)にて25℃にて測定。
上記の乳液を、図1の装置500においてタンク501に166.5kg投入し、表15の条件で水素添加しながら循環を行った。使用したノズルは実験例1と同じである。
各循環時間における乳液体積、水素添加体積(各時間までに流した水素ガスの総量)、酸化還元電位(ORP)の測定値、及び各時間までに流した水素ガスの総量を表16に示す。なお循環パス数は、乳液の初期体積をポンプ流量で割ったものであり、タンク501内のすべての乳液が液体処理ノズルを何パス通過したかを示す数値である。
この結果からも明らかなごとく、酸化還元電位は循環パス数0.5の段階で大きく負値になっており、水素の溶存が速やかに起きていることがわかる。また、各時間における水素の添加体積が乳液の体積増分とほぼ等しい値を示し、添加した水素ガスのほぼすべてが気泡の形で乳液に取り込まれていることもわかる。
この乳液を200ccのガラス瓶に100ccずつ5本小分けして入れ、それぞれ窒素ガスを0.7MPaにて加圧充填後密封した。そして、5分後、1日後、7日後、14日後、21日後にそれぞれ1本ずつ開封し、比重とORP値とを測定した。また、比重変化をもたらす見かけ体積の増加がすべて水素気泡によりもたらされていると考えて水素気泡の体積率を算出した。以上に結果を表17に示す。
窒素加圧5分後の水素微細気泡の体積率は19%と非常に高く、気泡減少率は15.8%と低い。これは、加圧前の気泡体積の84%もが微細気泡として存在していたことを意味し、微細気泡の形成効率が極めて良好であることがわかる。さらに、窒素ガスによる加圧充填状態が長期間継続する場合も、水素微細気泡の体積率はおおむね14日経過時点で下げ止まっており、3%程度の値を継続的に維持するようになり、ORPの値も還元性を示す負値を維持していることがわかる。
次に、窒素加圧5分後大気開放し、そのまま大気中にて放置を継続した場合の試験の結果を表18に示す。サンプルは5L採取し、直径18cmの開口を有するプラスチックビーカーに入れ、20℃にて室内放置した。比重は、それぞれ100ccサンプリングして表4と同様に0.7MPaにて5分間窒素加圧した後に測定を行っている。
大気中での比重の変化は、一週間後以降は非常に緩やかであり、窒素加圧してもほとんど比重は変化しなくなるとともに、水素微細気泡の体積率は9%近くの高い値を維持し続けていることがわかる。そして、酸化還元電位も絶対値の大きい負値を継続的に示している。また、表17及び表18のいずれの試験においても、酸化還元電位の値はサンプル製造後1週間の時点で、初期値からかなり上昇していることがわかる。これは、含まれる水素微細気泡からの水素の溶出が極めてゆっくりと進行していることを示すものである。
(実験例5)
乳液サンプルとして、表6に示す種々の粘度のものを用意した。実施例1〜比較例6は実験例1と同じ液体処理ノズルを用い、表15と同一の条件にて水素添加を行った(比較例1は、粘度が本発明の下限値を下回るものである)。また、比較例2は、実施例1と同じ乳液を用い、図28の液体処理ノズルから衝突部を省略した単純なベンチュリノズルを用いた以外は同じ条件で水素添加を行ったものである。そして、水素添加直後、0.7MPaにて5分間の窒素加圧後、その後大気中にて1日〜21日間、乳液サンプルを放置したときの比重と粘度測定を行うとともに(いずれも、測定前に表5と試験と同様、0.7MPaにて5分間窒素加圧した後に測定を行っている)、水素微細気泡の体積率を比重変化から算出した。以上の結果を表19に示す。
上記の結果によると、使用した乳液の粘度が小さくなるほど水素微細気泡の体積率は小さくなる傾向にあるが、特に粘度が1000mPa・sより大きくなると、水素微細気泡体積率が大幅に高くなり、該体積率が大気中放置にて継時的に減少する速度も小さいことがわかる。一方、使用した乳液の粘度が300mPa・s未満となる比較例1は水素微細気泡体積率自体は少なくなっていることがわかる。さらに、本発明特有の液体処理ノズルを用いない比較例2は、ポンプ内の予備撹拌により水素添加直後は高い気泡率を示しているが、0.7MPaの窒素加圧によりほぼすべて消滅し、水素微細気泡はほとんど形成されていないことがわかる。
(実験例6)
液体サンプルとして、表20に示す種々の粘度のものを用意した。実施例1〜比較例6は実験例1と同じ液体処理ノズルを用い、表15と同一の条件にて水素添加を行った。水素添加直後、大気中にて液体サンプルを20℃の無菌室にて放置したときの比重と粘度測定を行うとともに、水素微細気泡の体積率を比重変化から算出した。以上の結果を表20に示す。
粘度が500mPa・sを超える本体組成物は、実験例5と異なりいずれも油相を含有しないものである。そして、水素微細気泡の持続時間は粘性の高いものほど長くなっているが、同程度の粘度にて比較した場合、油相を含有する実験例5の組成物よりも水素微細気泡の持続時間は短い。換言すれば、実験例5の組成物は、適量の油相(例えば1質量%以上10質量%以下)含有することで、水素微細気泡の持続時間、ひいては安定性が大幅に向上していることが裏付けられているといえる。
(実験例1)
本体組成物として12.2℃の殺菌済み軟水(実施例1〜6)、及び同じ水を寒天の添加により粘度を上昇させたもの(実施例6、7)を用意した。図1の装置500においてタンク501に本体組成物を180L投入し、表1の条件で水素添加しながら循環を行った。なお、使用したポンプは東振テクニカル社製のベーンポンプTVP−MS1803である。
また、液体処理ノズル1は、図2〜図5に示す形態のものを使用した。ノズル本体2の材質はABS樹脂であり、液体入口4と液体出口5の内径はφ14mm、流入室6及び流出室7の流れ方向の長さはそれぞれ30mmである。コア部COREについては、絞り孔9の形成個数を図3に示す配置にて2個とし、絞り孔9の内径dはφ4.6mm、隔壁部8についてはその厚みを7.0とした。流入室6及び流出室7の内周面は、各々液体入口4と液体出口5との内周縁から、隔壁部8の対応する側の外周縁に至る連続テーパ面として形成した。衝突部10は脚部先端面が平坦に形成されたねじ部材により、具体的にはM1.4のJIS並目ピッチのなべ小ねじ(SUS304ステンレス鋼製)を使用して形成した。また、流通断面積は各絞り孔9について約10mm2である。
循環中は、市販のORP計(堀場製作所製:D−72)にて酸化還元電位を、隔膜ポーラロ電極式の溶存水素計(共栄電子研究所製:KM2100DH)にて溶存水素濃度を液面付近で手撹拌しながら所定の時間間隔で測定した。また、循環開始後40分及び60分にて、得られた水素水を取出口503から開口径18cmの樹脂製ビーカーに5Lだけ採取するとともに、20℃の大気中に暴露しつつ酸化還元電位及び溶存水素濃度の経時変化を測定した。なお、測定は所定の時間間隔にて、測定時のみビーカー内の液体をマグネットスターラー(撹拌子の大きさ:φ8mm×30mm、60rpm)により15〜30秒程度撹拌することにより実施した。得られた各試料の溶存水素濃度のデータは、経過時間に対してプロットし、すでに説明した方法により、各区間の最小二乗法による相関係数が最適化される位置にて前半区間と後半区間とに分割し、指数関数近似して溶存水素減衰曲線を求め、減衰係数kを算出した。
また、これとは別途、5Lの密閉容器内に各本体組成物を入れて水素ガスを0.2MPaの圧力で密閉加圧し、20℃にて1週間保管した後開封して、同様に溶存水素減衰曲線を求め、標準減衰係数k0を算出した。そして、得られたこれらの値を用いて、潜在水素含有係数k0/k,推定全水素量及び微細気泡水素量を各々算出した。また、循環停止後10分を経過した試料を用い、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD7100H)にて平均気泡径を測定した。また、循環停止直後の各液状組成物の溶存酸素濃度を市販の隔膜ポーラログラフ式溶存酸素計(共栄電子研究所製:KM2100DO)により測定した。以上の結果を表2に示す。
実施例1〜3は、軟水を本体組成物として用い、水素ガスを導入しつつ循環した時間を12分から60分の範囲内で変化させた場合の結果である。液量は180Lであり、液循環流量が15L/分であるから、循環時間12分で全液が1巡することになる。全循環時間をこの1巡の時間で除した値が循環パス数である。したがって、12分は1パス、40分は3.3パス、60分は5パスとなる。循環中の液流量に対する水素ガス流量(標準状態換算)比は20%である。表3は、水素導入時の経過時間と溶存水素濃度測定値の関係を示すものであり、図20はこれをプロットしたグラフである。また、表4及び図21は実施例2(循環パス数:3.3)の、表5及び図22は実施例3(循環パス数:5)の各水素水を、上記の条件で大気中に開放放置したときの経過時間と溶存水素濃度との関係を示すものである。
なお、比較のため、本発明にて採用する液体処理ノズルを採用せずに、ポンプ内撹拌のみで水素導入した水も合わせて評価した。これを、60分循環しても循環停止直後の溶存水素濃度は0.41ppm程度であり、大気放置にて0.5日(720分)後には0.1pp未満となり、1日後(1440分)には完全に溶存水素は消失した。これに対し、5パス循環した実施例3は、循環停止直後に溶存水素濃度が常圧飽和値を上回る1.72ppmを示すばかりでなく、約1日経過後(1304分)も0.95ppm、約3日経過後(4184分)も0.38ppmという高い溶存水素濃度を示していることがわかる。また、これよりも循環時間を短くした実施例1及び実施例2は、実施例3には及ばないものの、比較例よりははるかに良好な溶存水素濃度の持続性を示していることがわかる。また、いずれも、レーザー回折式粒度計で測定した平均気泡径は200nm未満と、非常に小さいことがわかる。
また、図21及び図22のグラフによると、いずれも、短時間側区間と長時間側区間とで減衰係数の異なる曲線となっており、指数関数によるフィッティングの精度も非常に高く、水素蒸発挙動は前記した数5に従うものであることが明らかである。また、図23は、実施例3の衰曲線の長時間側区間を、比較例2の曲線と比較して示すものである。溶存水素のみの比較例に対し、実施例の溶存水素濃度の持続性がいかに高いが理解できる。
次に、循環流量率を実施例3よりも大きく設定した実施例4の水素添加循環時の経過時間と溶存水素濃度との関係を図24に、循環停止後、大気中放置したときの経過時間と溶存水素濃度との関係を図25に、それぞれ示す。また、実施例5にかかる同様の結果を図26と図27に示す。この結果によると、循環流量率が大きくなったとき、循環パス数が実施例3よりも大きく設定されているにも関わらず、潜在水素含有係数k0/k及び微細気泡水素量の値は、いずれも実施例3よりもかなり小さくなっている。これは、容器内の液量が少ないために、循環中の撹拌の影響を大きく受け、循環継続中に合体発泡して損なわれる水素微細気泡の量が増えるためであると推測される。
一方、ヒドロキシエチルセルロースを用いて粘度を増大させた実施例5、6の液状組成物(循環時間は実施例3と同じ)については、溶存水素濃度の持続性が高粘度になるほど増大しており、減衰係数kの絶対値も小さくなっている。しかし、これを標準減衰係数k0で除した潜在水素含有係数k0/kの値は、実施例3とほぼ同じか少し大きい程度であることがわかる。
(実験例2)
図28に示すノズル171において、ノズル本体2の材質をABS樹脂とし、液体入口4と液体出口5の内径はφ14mm、流入室6及び流出室7の流れ方向の長さはそれぞれ30mmとした。コア部COREについては、絞り孔9の長さは5.3mm、絞り孔9の内径Dはφ2.1〜φ8.0mm種々の値に設定した。ねじ部材の配置は図4に示す形態(表8〜表11)及び図13に示す形態(表6、7:ただし、液体流通ギャップは形成せず)とした。ねじ部材はいずれも、ねじ外径M1.0〜M2.0、ねじ谷深さを0.25〜0.4mmの種々の寸法のものを使用した。そして、絞り孔内径Dとの組み合わせにより、全流通断面積Stを1.23〜40.27mm2の種々の値とした。全流通断面積Stは、図5及び図14のような絞り孔内のねじレイアウトを示す投影画像上でのピクセル数に基づいて算定し、同画像上で谷点を基準円の内外に分けて計数した。一の全谷点数をNt、基準円内側の70%谷点数をN70とする。
以上の各ノズルの全流通断面積St、液体流通ギャップ断面積Sc、70%断面積S70(全流通断面積Stのうち、基準円C70の内側に位置する部分)、70%断面比率σ70(≡S70/St)、前述の(1)式に基づくねじ谷深さ補正係数α、補正済全谷点数(α・Nt)、補正済70%谷点数(α・N70及びα・(σ70/50)・N70)、補正済70%補谷点数(≡α・(Nt−N70)・0.38=α・0.38Nc70))及び有効谷点数Ne(≡α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70)の値を表6〜表11にまとめて示している。
(1)一定水圧での流量の測定
元圧0.2MPaの水道蛇口から延びる配管を各ノズルの流入口側に接続し、かつ、その入口側に水圧計を取り付けた。そして、その状態で水道蛇口の開きを、水圧計の指示圧が0.1MPaとなるように調整し、ノズルの流出口から流出する水道水(溶存酸素濃度:8ppm)の流量(水流量Q:L/min)を測定した。前述の有効谷点数Neを該流量Qで除した値Ne/Qの値とともに、その結果を表7〜表12に合わせて記載している。
(2)平均気泡径の測定
実験例1と同様。
(4)水素ガス添加テスト
図1に示す装置500に上記種々のノズルを組み込み、タンク501を実験例1と同様の軟水で満たすとともに、ポンプ循環流量をノズル1とポンプ505との間で測定した供給圧が0.1MPaとなるように調整した。この状態で水素ガスを、圧力0.3MPa、ガス流量が常圧換算にて循環流量の20%となるように調整しつつ供給し、表3の実施例3と同じ循環パス数にて水素ガス添加を行なうとともに、得られた液状組成物について実験例1と全く同様にして溶存水素濃度の経時変化を測定し、その結果から計測開始時の溶存水素濃度(初期溶存水素濃度)、潜在水素含有量係数、推定全水素量及び推定微細気泡水素量を同様に算出した。
上記の結果から、有効谷点密度Neが大きいノズルほど、潜在水素含有係数k0/kの値が大きく、推定水素量(推定全水素量)及び微細気泡水素量の値も良好であることがわかる。
(実験例3)
図2に示す液体処理ノズルを、以下のように種々用意した。ノズル本体2の材質はABS樹脂であり、液体入口4と液体出口5の内径はφ14mm、流入室6及び流出室7の流れ方向の長さはそれぞれ30mmである。コア部COREについては、絞り孔9の形成個数を2個ないし4個のいずれかとし、絞り孔9の内径dはφ3.0〜φ4.6mm種々の値に、絞り孔変位Tについては0.9〜5.5mmの種々の値にそれぞれ設定した。隔壁部8については、その外周縁が、絞り孔9の内径dと絞り孔変位Tの値に応じ、図1及び図15の投影に示すごとく、液体流路3の中心軸線Oを中心とした絞り孔9内周縁への外接円20とほぼ一致するように形成し、その厚みを7.0〜20.0mmの種々の値に調整した。流入室6及び流出室7の内周面は、各々液体入口4と液体出口5との内周縁から、隔壁部8の対応する側の外周縁に至る連続テーパ面として形成した。これにより、各ノズルの絞り孔アスペクト比は1.52〜6.67、絞り孔集約率Kは0.11〜0.55の種々の値に設定されている。
次に、衝突部10は脚部先端面が平坦に形成されたねじ部材により、具体的にはM1.4ないしM1.6のJIS並目ピッチのなべ小ねじ(SUS304ステンレス鋼製)を使用して形成した。このうち、絞り孔の数が2個のノズルについては、各絞り孔に対して4本のねじ部材を図4に示す形態で配置した。各絞り孔9について互いにずれて配置される二組のねじ対10A,10Bないし10C,10Dの軸線方向の距離Jは、使用したねじ部材の外径(1.4mmないし1.6mm)と等しく設定してある。また、絞り孔9に対する軸線方向のねじ対の配置位置は、個々のねじ対についてねじ孔9の残区間長Lp1〜Lp4が、その平均値(残区間平均長)にて2.8〜13.8mmの種々の値となるように設定している。他方、流入室側については、最も上流側のねじ部材対10Dの上流側の縁の位置を隔壁部8の端面と一致するように定めている。一方、絞り孔の数が4個のノズルについては、各絞り孔に対して1本のねじ部材を絞り孔の直径に沿って、該絞り孔に対する残区間長Lpが0〜7mmとなるように配置している。
また、個々のノズルのコア部COREにおける合計流通断面積Seは、液流入口4側から内部の実態写真を撮影し、その写真から液流通領域(つまり、図3等においてねじ部材10に遮られない主流通領域21及び液体流ギャップ15の合計)の面積(以下、合計流通断面積Seという)を画像解析することにより算出した。該合計流通断面積Seの値も含め、コア部COREにおける主要寸法及びパラメータの数値を表12にまとめて示している。
(1)一定水圧での水流量の測定
元圧0.2MPaの水道蛇口から延びる配管を各ノズルの流入口側に接続し、かつ、その入口側に水圧計を取り付けた。そして、その状態で水道蛇口の開きを、水圧計の指示圧が0.1MPaとなるように調整し、ノズルの流出口から流出する水道水(溶存酸素濃度:8ppm)の流量(水流量Q:L/min)を測定した。
(2)平均気泡径の測定
実験例1と同様。
(4)水素ガス添加テスト
図1に示す装置500に上記種々のノズルを組み込み、タンク501を実験例1と同様の軟水で満たすとともに、ポンプ循環流量をノズル1とポンプ505との間で測定した供給圧が0.1MPaとなるように調整した。この状態で水素ガスを、供給圧力0.3MPa、水素ガス流量が常圧換算にて循環流量の20%となるように調整しつつ供給し、表3の実施例3と同じ循環パス数にて水素ガス添加を行なうとともに、得られた液状組成物を実験例1と全く同様にして溶存水素濃度の経時変化を測定し、その結果から計測開始時の溶存水素濃度(初期溶存水素濃度)、潜在水素含有量係数、推定全水素量及び推定微細気泡水素量を同様に算出した。
以下、得られた結果について説明する。
絞り孔アスペクト比3.5以下、及び(絞り孔変位T)<(絞り孔の内径d)を充足するノズルは水流束値が高く、レーザー散乱式粒度計による気泡数平均径の値も120nm〜290nmと非常に小さい。そして、絞り孔アスペクト比の値が小さくなるほど、また、絞り孔変位Tの絞り孔の内径dからの隔たりが大きくなるほど水流束の値は大きくなり、また、気泡径の数平均値の値は小さくなる傾向にある。この場合、残区間平均長の値以外を同じに設定した番号6と番号7の結果を比較すれば明らかな通り、残区間アスペクト比が小さい番号6のノズルは、残区間アスペクト比が大きい番号7のノズルと水流束の値はほぼ同じであるが、気泡径の数平均値は番号6のノズルのほうが小さく、吸光度が大きくなる傾向にある。すなわち、絞り孔の残区間長が短いノズルのほうが、微細気泡の発生効率が高いことがわかる。
また、合計流通断面積、絞り孔変位及び絞り孔アスペクト比がほぼ同じ値に設定されノズルのうち、絞り孔9の数を2つとし、各絞り孔9に4本のねじ部材を配した番号1のノズルと、絞り孔9の数を4つとし、各絞り孔9に1本のねじ部材を配した番号11のノズルの場合を比較すると、水流束の値はそれほど大きな開きはないものの、図2型の構成を採用した番号1のノズルのほうが、微細気泡の発生効率に優れていることがわかる。
また、絞り孔アスペクト比が小さくなるほど、また、絞り孔変位Tの絞り孔の内径dからの隔たりが大きくなるほど推定微細気泡水素量が増加する傾向にあることもわかる。この場合、残区間平均長の値以外を同じに設定した番号6と番号7の結果を比較すれば明らかな通り、残区間アスペクト比が小さい番号6のノズルは、残区間アスペクト比が大きい番号7のノズルと水流束の値はほぼ同じであるが、番号7よりもはるかに高い微細気泡水素量を示している。また、合計流通断面積、絞り孔変位及び絞り孔アスペクト比がほぼ同じ値に設定されノズルのうち、前述の番号1のノズルと番号11のノズルの場合を比較すると、番号1のノズルのほうが、より良好な微細水素気泡形成能力を示していることもわかる。
(実験例4)
本体組成物として、表14の組成の乳液を用意した。
上記の乳液を、図1の装置500においてタンク501に166.5kg投入し、表15の条件で水素添加しながら循環を行った。使用したノズルは実験例1と同じである。
この乳液を200ccのガラス瓶に100ccずつ5本小分けして入れ、それぞれ窒素ガスを0.7MPaにて加圧充填後密封した。そして、5分後、1日後、7日後、14日後、21日後にそれぞれ1本ずつ開封し、比重とORP値とを測定した。また、比重変化をもたらす見かけ体積の増加がすべて水素気泡によりもたらされていると考えて水素気泡の体積率を算出した。以上に結果を表17に示す。
次に、窒素加圧5分後大気開放し、そのまま大気中にて放置を継続した場合の試験の結果を表18に示す。サンプルは5L採取し、直径18cmの開口を有するプラスチックビーカーに入れ、20℃にて室内放置した。比重は、それぞれ100ccサンプリングして表4と同様に0.7MPaにて5分間窒素加圧した後に測定を行っている。
(実験例5)
乳液サンプルとして、表6に示す種々の粘度のものを用意した。実施例1〜比較例6は実験例1と同じ液体処理ノズルを用い、表15と同一の条件にて水素添加を行った(比較例1は、粘度が本発明の下限値を下回るものである)。また、比較例2は、実施例1と同じ乳液を用い、図28の液体処理ノズルから衝突部を省略した単純なベンチュリノズルを用いた以外は同じ条件で水素添加を行ったものである。そして、水素添加直後、0.7MPaにて5分間の窒素加圧後、その後大気中にて1日〜21日間、乳液サンプルを放置したときの比重と粘度測定を行うとともに(いずれも、測定前に表5と試験と同様、0.7MPaにて5分間窒素加圧した後に測定を行っている)、水素微細気泡の体積率を比重変化から算出した。以上の結果を表19に示す。
(実験例6)
液体サンプルとして、表20に示す種々の粘度のものを用意した。実施例1〜比較例6は実験例1と同じ液体処理ノズルを用い、表15と同一の条件にて水素添加を行った。水素添加直後、大気中にて液体サンプルを20℃の無菌室にて放置したときの比重と粘度測定を行うとともに、水素微細気泡の体積率を比重変化から算出した。以上の結果を表20に示す。
1 液体処理ノズル
2 ノズル本体
O 中心軸線
3 液体流路
4 液体入口
5 液体出口
6 流入室
7 流出室
8 隔壁部
9 絞り孔
10 衝突部(ねじ部材)
CORE 処理コア部
11 山部
12 谷部
15 液体流通ギャップ
302 水素含有液状水性組成物
500,550 水素含有液状水性組成物の製造装置
502 本体組成物
2 ノズル本体
O 中心軸線
3 液体流路
4 液体入口
5 液体出口
6 流入室
7 流出室
8 隔壁部
9 絞り孔
10 衝突部(ねじ部材)
CORE 処理コア部
11 山部
12 谷部
15 液体流通ギャップ
302 水素含有液状水性組成物
500,550 水素含有液状水性組成物の製造装置
502 本体組成物
Claims (7)
- 水素含有液状水性組成物の製造方法であって、液体処理ノズルとして、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されたノズル本体と、前記液体流路の内面から突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えたものを使用し、
得るべき水素含有液状水性組成物の含有組成から水素を除いた組成物を本体組成物として、該本体組成物と水素ガスとの混相流を前記液体処理ノズルの前記衝突部に供給し、前記水素ガスを微細気泡に粉砕しつつ前記液体出口から流出させることにより前記水素含有液状水性組成物を得ることを特徴とする水素含有液状水性組成物の製造方法。 - 前記液体処理ノズルに対し前記本体組成物を、該液体処理ノズルの上流側に配置されたポンプにより送液するとともに、前記水素ガスを前記ポンプの吸入口側で添加して前記本体組成物と前記水素ガスとを前記ポンプ内にて予備撹拌混合することにより前記混相流となし、前記液体処理ノズルに流入させる請求項1記載の水素含有液状水性組成物の製造方法。
- 前記本体組成物と水素ガスとの混相流を前記液体処理ノズルに対し、ポンプを用いて循環供給する請求項1又は請求項2に記載の水素含有液状水性組成物の製造方法。
- 前記本体組成物に対する前記水素ガスの添加を継続しつつ前記混相流の前記液体処理ノズルに対する循環供給を継続する請求項3に記載の水素含有液状水性組成物の製造方法。
- 前記水素ガスの添加を中断した状態で前記混相流の前記液体処理ノズルに対する循環供給を継続する請求項4に記載の水素含有液状水性組成物の製造方法。
- 前記液体処理ノズルとして、前記衝突部が前記投影において前記中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置されたM1.2以上M2.0以下のねじ部材であり、前記液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積が2.5mm2以上20mm2以下に設定されたものが使用され、
前記混相流を形成するための水素ガス流量をQ1、前記本体組成物の流量をQ2としたとき、液体入口側の動圧を0.1MPa以上0.5MPa以下、前記水素ガスの前記本体組成物に対する流量比Q1/Q2を0.01以上0.2以下となるように前記液体処理ノズルに供給される請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の水素含有液状水性組成物の製造方法。 - 前記本体組成物として、粘度が100mPa・s以上3000mPa・s以下に調整されたものを使用し、該本体組成物と水素ガスとの混相流を前記液体処理ノズルの前記衝突部に供給し、前記水素ガスを前記水素微細気泡に粉砕しつつ前記液体出口から流出させることにより前記水素含有液状水性組成物を水素添加高粘度液体として得る請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の水素含有液状水性組成物の製造方法。
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