JP6596625B2 - 食用油の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

この発明は食用油の製造方法及び製造装置に関するものである。
食用油は酸素や湿気と接触すると酸化する問題がある。例えば食用油を空気中に放置しておくと、油脂中の不飽和脂肪酸が酸素を吸収して、不安定な過酸化物(パーオキサイド)を生じ、これが転位して不飽和のハイドロパーオキサイドを生ずる。その結果、食用油は風味や味が劣化して商品価値を減ずる。食用油のこうした酸化による劣化は、製品パッケージを開封して使用開始した後はもちろん、パッケージ未開封の状態にあっても、充填時に食用油中に溶存していた酸素、あるいは容器中の空間に残存していた酸素によっても引き起こされる。そこで、品質向上のため、油中の酸素を充てん前に取り除くことが種々の方法により試みられてきた。具体的にはL−アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加する方法や、充填前に食用油を真空脱気する手法を例示できるが、前者は過度の添加は食用油の風味を損ねる惧れがあり、制限された添加量での効果が万能でない問題がある。また、後者の方法は真空脱気装置が大掛かりでコストアップが避けられないことが欠点となる。
そこで、より軽量な設備で実現可能なストリッピング処理による食用油の脱酸素方法が種々提案されている(特許文献2、3)。これは、食用油に窒素などの不活性ガスを吹き込んで気液混合することにより、溶存酸素を不活性ガスと置換する形で除去しようとするものである。特許文献2に開示されている方法は、ベンチュリ管により吸気した窒素ガスを食用油の旋回流に巻き込んで窒素溶解を図る方法であり、粉砕された窒素気泡がマイクロバブル(ファインバブル)化して酸素低減効果が高められることを標榜している。他方、特許文献3に開示されている方法は、周方向にスリットを刻設した多段のロータを円筒形のステータ内で高速回転させる高剪断撹拌装置を用い、ここに窒素ガスないし水素ガスと食用油とを導入して剪断撹拌するものである。酸素の低減除去効果のほか、水素ガスを用いた場合の、溶存水素による酸化遅延効果についても言及されている。
特開平 5−179282号公報 特開2009−268369号公報 特表2015−517011号公報
発明が解決しようとする課題
食用油中の酸素は不飽和脂肪酸との相互作用が強く、窒素導入によるストリッピング除去の場合、例えば水中の溶存酸素と比較して、相当高い撹拌エネルギーが必要と考えられる。特許文献2の方法では、ベンチュリ管や超音波を用いた窒素溶解にとどまり、窒素溶解効率が低い問題がある。例えば、特許文献2の表1によると、比較例3の食用油(ピペットにより窒素注入した実質的な未処理品)の溶存酸素濃度が1.2体積%(重量換算すると約17.2ppm)であったのに対し、当該文献開示の方法で処理した食用油(実施例4)中の溶存酸素濃度は0.6体積%(重量換算すると約8.6ppm)と高く、未処理品の半分程度に低減されているに過ぎない。
一方、特許文献3の方法では、窒素ガスや水素ガスを食用油に対し常圧では不可能と考えられてきた10%以上もの過飽和に含有させることができ、粉砕効率が高いが、高剪断撹拌装置のロータを7900rpmもの高速で回転駆動しなければならない。当該文献の開示によると、例えば700L/時(12L/分)程度のオイル流量に対して、オイル自体の送液に必要と考えられるポンプ駆動力よりも高い、2馬力(約1.5kW)もの回転駆動力をロータに与える必要がある。これは、いわば完全な「力技」による気液混合であって、装置駆動系の肥大化は避けられず、簡易に効果享受できるものではない。
本発明の課題は、気液混合機能を動力不要の受動型ノズルにて簡易にかつ軽量に構成でき、かつ、水素や窒素などの酸化抑制ガスを極めて高効率に添加可能であり、酸素との相互作用が強い食用油を対象としつつも脱酸素効果ないし酸化防止効果を高レベルにて達成できる食用油の製造方法ないし装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明の食用油の製造方法は、処理ノズルとして、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されるとともに、液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、隔壁部に貫通形成され流入室と流出室とを互いに別経路にて連通させる液体流路の一部をなす複数の絞り孔とを備えたノズル本体と、絞り孔の内面から突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えたものを使用し、
酸素が溶存した食用油と、水素ガス、又は水素ガス及び不活性ガスからなり、水素ガスの含有率が20体積%以上100体積%以下である酸化抑制ガスとの混相流を処理ノズルの衝突部に供給し、酸化抑制ガスを微細気泡に粉砕しつつ液体出口から流出させることにより、水素ガスを食用油に、室温状態の処理後の食用油150ccと精製水100ccとを内容積300ccの水素非透過性容器に密閉して混合・撹拌した後、水相と油相と容器内残部空間とが溶解平衡に到達するまで静置し、その後油相の下側に分離した水相の溶存水素濃度をポーラログラフ式溶存水素計で測定したときの値をCw(質量ppm)として、CH=24.3×Cw(質量ppm)として推定される処理後の食用油中のガス状水素の含有量が1質量ppm以上20質量ppm以下となるように溶存させることを特徴とする。
また、本発明の食用油の製造装置は、上記本発明の食用油の製造方法に使用されるものであって、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されるとともに、前記液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、前記隔壁部に貫通形成され前記流入室と前記流出室とを互いに別経路にて連通させる前記液体流路の一部をなす複数の絞り孔とを備えたノズル本体と、前記絞り孔の内面から突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えた処理ノズルと、前記処理ノズルの前記衝突部に、酸素が溶存した食用油と、水素ガス、又 は水素ガス及び不活性ガスからなり、水素ガスの含有率が20体積%以上100体積%以下である酸化抑制ガスとの混相流を供給する混相流供給手段と、を備え、前記酸化抑制ガスを前記食用油に、室温状態の処理後の前記食用油150ccと精製水100ccとを内容積300ccの水素非透過性容器に密閉して混合・撹拌した後、水相と油相と容器内残部空間とが溶解平衡に到達するまで静置し、その後油相の下側に分離した水相の溶存水素濃度をポーラログラフ式溶存水素計で測定したときの値をCw(質量ppm)として、CH=24.3×Cw(質量ppm)として推定される処理後の前記食用油中のガス状水素の含有量が1質量ppm以上20質量ppm以下となるように溶存させ、処理後の食用油の溶存酸素濃度が2質量ppm以下とされた状態で前記液体出口から流出させるようにしたことを特徴とする。
本発明において不活性ガスとは、窒素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスより選ばれる1種又は2種以上からなるものをいう。また、微細気泡とは、気泡径が1μm未満のものをいう。水素微細気泡の平均気泡径はたとえばレーザー回折式粒度計にて測定することができる。本発明の製造方法にて得られる食用油は、酸化抑制ガスの一部を微細気泡として含有させることができる。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部に対して食用油を、水素ガス、又は水素ガス及び不活性ガスからなり、水素ガスの含有率が20体積%以上100体積%以下である酸化抑制ガスとの混相流の形で供給すると、酸化抑制ガスが効率的に微粉砕されつつ溶解し、食用油と溶存酸素との相互作用が強いにもかかわらず、そのストリッピング効果により食用油中の溶存酸素濃度を効率的に低減できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の食用油の製造方法において、ノズル本体に供給される食用油の流れは、衝突部に衝突してその下流に迂回する際に谷部内にて絞られることにより増速し、処理前の食用油に含有される溶存ガス(空気など)の析出によりキャビテーションを起こし、その減圧沸騰作用により気泡を生じつつ液体を激しく撹拌する。これに、衝突部を高速流が迂回する際に生ずる渦流も加わり、衝突部の周辺及び直下流域には非常に顕著な強撹拌領域が形成されることとなる。キャビテーションにより発生した気泡はそれほど成長せずに上記の強撹拌領域に巻き込まれ、微細気泡が効率的に発生する。そして、ここに積極的に外部から酸化抑制ガスを導入して、食用油と酸化抑制ガスとの混相流の形で処理コア部に供給すると、混相流を形成する酸化抑制ガスは衝突部下流の強撹拌領域に巻き込まれ食用油との混合が顕著に進む。酸化抑制ガスを構成する不活性ガスないし水素ガスは食用油に対する飽和溶解度が小さいにもかかわらず、上記本発明の方法によれば、その溶解ないし微細気泡化をきわめて効率的に進行させることができる。
また、食用油は不飽和脂肪酸を含有するため、水等と比較して酸素との反応性あるいは化学的な相互作用が強く、一旦溶存した酸素分子は食用油を構成する油脂分子に捕捉されやすく、酸化抑制ガス混合による溶存酸素のストリッピングは、水等と比較して進みにくいと考えられてきた。しかし、上記本発明の方法によると、酸化抑制ガスの溶解が急速に進むため、食用油中の溶存酸素濃度を速やかに低減することができる。また、酸化抑制ガスの一部は微細気泡の形で含有させることができ、食用油の溶存酸素濃度が低く維持される状態あるいは酸化を受けにくい状態を安定に維持することができる。
そして、本発明においては、食用油と酸化抑制ガスとの混相流を処理ノズルの処理コア部に対し受動的に供給するだけであり、特許文献3のごとき気液混合のための大きな駆動力を全く必要としない。その結果、溶存酸素濃度が低く維持された、あるいは酸化を受けにくい状態とされた食用油を簡単かつ安価に製造することができるようになる。
衝突部の下流域に強撹拌領域が形成される要因の一つは、処理される食用油に最初から溶存しているガス(特に空気:以下、プレ溶存ガスという)のキャビテーションによる減圧沸騰析出が考えられる。しかし、液体が圧送されて衝突部に衝突する際に、その背圧により液体は導入された水素ガスとともに加圧され、一部は食用油に溶解する。そして、これが、衝突部の谷部を通過する際に高流速化することで減圧され、気泡を析出する流れも当然にある。そして、こうしたプレ溶存ガスや衝突部の上流で溶解した酸化抑制ガスの減圧沸騰をきっかけとして、衝突部の下流域に生ずる強撹拌領域では導入される酸化抑制ガスの撹拌・溶解が、減圧沸騰で損なわれるガス量を桁違いに上回る規模により進行する。また、液体に溶解しきれなかった酸化抑制ガスも、浮上速度の非常に小さい微細気泡として液中に留まることになる。本発明で採用する酸化抑制ガス(不活性ガスないし水素ガス)は食用油に対する溶解度が低いために、処理コア部及び強撹拌領域では瞬時に溶存飽和状態となり、流速増加に伴うわずかな減圧でも気泡が極めて析出しやすい状況が形成され、高密度に微細気泡が生成すると考えられる。また、搾油直後のプレ溶存ガスが少ない食用油を用いる場合でも、衝突部の上流で溶解した酸化抑制ガスのキャビテーション析出により、同様の効果が問題なく達成される。
また、酸化抑制ガスが溶存ガスと微細気泡の両方の形態で食用油中に共存することで、大気中に暴露したとき、溶存ガスしか存在しない(すなわち、微細気泡を含まない)食用油と比較して、溶存ガス濃度の見かけの減少速度が低下し、溶存ガスが高濃度の状態をより長時間維持するようになる。これは、酸化抑制ガスの蒸発速度そのものが低下するのではなく、微細気泡中の酸化抑制ガスが周囲の液体に溶出して、溶存ガスが補われることに起因するものである。
本発明の対象となる食用油は特に限定されないが、例えば下記のようなものを例示できる。オリーブ油、アルガン油、ブドウ種子油、ツバキ油、エゴマ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、菜種油(キャノーラ油を含む)、ベニバナ油、コーン油、綿実油、米糠油、ココナツ油、パーム油、ヤシ油(コプラ油)、ヒマシ油、亜麻仁油、ピーナッツ油(落花生油)、ヘーゼルナッツ油、アーモンド油、カシュー油、マカダミア油、クルミ油、モンゴンゴナッツ油(マンケッティ油)、ペカン油、ピスタチオ油、サチャインチ(プルケネティア・ボルビリス)油、スイカ実油、ヒョウタン実油、バッファローカボチャ油、バターカボチャ種子油、カボチャ実油、アサイー油、カシス種子油、ルリジサ種子油、月見草油、イナゴマメ種子鞘、アマランサス油、杏仁油、リンゴ種子油、アーティチョーク油、アボカド油、ババス油、ベン油(モリンガ油)、ボルネオ脂、ケープ栗油(ヤング油)、イナゴマメ鞘油(アルガロバ油)、カッシア油、オナモミ油、コフネヤシ油、コリアンダー種油、ディカ油、アマナズナ油、亜麻仁油、大麻油、カポック実油、ケナフ種子油、ラッレマンチア油、マルーラ油、メドウフォーム油、カラシ油、オクラ種子油、パパイヤ種子油、シソ種子油、ペクイ油、松の実油、プルーン核油、キヌア油、ニガー種子油、米糠油、ロイル油、茶実油(ツバキ油)、アザミ油、タイガーナッツ油(ハマスゲ油)、トマト種子油、小麦胚芽油、アマナズナ油、大麻油、カラシ油、パーム油、ダイコン油、ニガー種子油、アッケシソウ油、タイガーナッツ油、桐油、藻油、コパイバ油、クロヨナ油、ナンヨウアブラギリ油、ホホバ油、ミルクブッシュ油、ダンマル油、ケシ油、烏臼油(ナンキンハゼ油)、ベルノニア油、レモン油、オレンジ油、グレープフルーツ種子油、キハダ油、バラノス油、ブラダーポッド油、ニガキモドキ油、バードック油(イガ油)、キャンドルナット油、ニンジン種子油、大風子油、ハマナ油、クフェア油、イリッペ脂、ホホバ油、マンゴー油、ニーム油、オジョン油、ローズヒップ種子油、ゴム種子油、シーバックソーン油、スノーボール種子油(ガマズミ油)、トール油、タマヌ油、トンカビーン油(クマル油)、バター、シアバター、ココアバター、モーラバター。なお、バターなど、常温で固形ないし半固形をなす食用油は、昇温して流動性を高めることにより本発明の適用が可能である。また、これら食用油群から選ばれる2種以上を混合したブレンド油も本発明の対象となりえる。
特に高級品種であり、酸化劣化による風味低下が著しいオリーブ油、アルガン油、ブドウ種子油、ツバキ油、エゴマ油等については、本発明の適用により風味維持のための期間を延長できることの利点は特に大きい。わけても、希少なフレッシュ・バージン油の収穫期にのみ享受できる風味維持に対し、種々の生産者が躍起となっているオリーブ油については、消費量も多く本発明の波及効果が著しい。また、希少化粧用油としても高価に取引されているアルガン油についても同様である。
酸化抑制ガスとして、水素ガスないし水素ガスと不活性ガスの混合物(以下、これらを総称して「水素含有ガス」という)を使用することにより、食用油中の酸素をストリッピング除去する効果に加え、溶存した水素分子の還元作用により食用油の抗酸化効果を高めることができる。例えば、水素分子が溶存していれば、水素分子の還元作用により酸素分子の油脂分子に対する酸化活性が抑制され、食用油中に溶存酸素分子が共存している状態でも、食用油自体の酸化劣化が防止される。また、酸化抑制ガスとして水素含有ガスを用いると、不活性ガス(例えば窒素ガス)のみを用いた場合と比較して、同じ条件でガス添加を行った場合に食用油からの溶存酸素のストリッピング除去効率が大幅に高められる点も、重要な効果の一つである。水素分子は還元作用が強いため、酸素分子と食用油との強固な相互作用に打ち勝ち、脂肪酸の二重結合などに半化学的に結合しつつある酸素なども離脱させる能力を有しているためではないかと考えられる。
上記の効果を顕著なものとする上で、酸化抑制ガス中に水素ガスが20体積%以上100体積%の範囲で含有されている必要がある。水素ガスが20体積%未満では溶存水素分子による食用油への抗酸化効果の付与が顕著でなくなり、また、水素ガス添加に伴う溶存酸素のストリッピング除去効率の改善が不明瞭となる。
食用油への抗酸化効果の付与は、食用油中の溶存水素濃度が高いほど顕著となり安定性も増す。この溶存水素濃度は、本発明では次のようにして見積もることができる。すなわち、室温状態の処理後の食用油150ccと精製水100ccとを内容積300ccの水素非透過性容器に密閉して混合・撹拌した後、水相と油相と容器内残部空間とが溶解平衡に到達するまで静置し、その後油相の下側に分離した水相の溶存水素濃度をポーラログラフ式溶存水素計で測定したときの値をCw(質量ppm)として、処理後の食用油中のガス状水素の含有量CHを、
CH=24.3×Cw(質量ppm)
として推定する。その根拠は以下の通りである。
図17に示す通り、容器(図では分液ロート)に処理済みの食用油と精製水を規定量注入し、蓋をして密閉した後、十分に振り混ぜて撹拌する。その後、静置して油水分離させ、容器内の油相・水相・空間の水素濃度ないし分圧が平衡に達したと考える。
水相中の溶存水素濃度Cwを、水素の絶対量Mwに換算すると、
Mw=Cw×100/1000=0.10×Cw (mg)
常圧での水への水素の溶解度Swは約1.6ppmである一方、食用油への水素の溶解度Soは、組成的に類似した絶縁油についての文献値(出典:日本電機工業会、JEM−TR164:1988)を利用して4.34(ppm)程度と見積もられ、容器内の水相と油相とはこの溶解度比に従って溶存水素が分配されていると考えられる。したがって、油相中の水素濃度Coは、
Co=Cw×(So/Sw)=Cw×4.34/1.6
=2.71×Cw (質量ppm)
食用油の比重を0.9として、水素の絶対量Moに換算すると、
Mo=2.71×Cw×0.9×150/1000
=0.37×Cw (mg)
一方、油相は容器内の空間とも接しており、上記水素濃度の油相と空間中の水素分圧Pとが平衡していると考えると、該水素分圧は、
P=2.71×Cw/4.34×0.10=0.062×Cw(MPa)
従って、空間体積を50ccとして、その水素の全体積Vは
V=50×0.062×Cw/0.1=31×Cw (cc)
これを重量Msに換算すると、
Ms=31×Cw/22.4×2=2.8×Cw (mg)
よって、油相(食用油)中に最初に溶けていた全水素量MTは、
MT=Mw+Mo+Ms
=0.10×Cw+0.38×Cw+2.8×Cw=3.28×Cw (mg)
これを濃度CHに換算すると、
CH=3.28×Cw×1000/(150×0.9)
=24.3×Cw(質量ppm)
となる。
上記のように測定した食用油中の水素含有量は、本発明において1質量ppm以上とされる。水素含有量が1質量ppm未満では水素分子による食用油への還元性付与効果が顕著でなくなる。一方、本発明の方法によると、食用油と水素ガスの混相流を常圧付近にて処理ノズルに通ずるだけで、常温・常圧での飽和値(絶縁油のデータから推定して約4.34質量ppm)を超える水素ガスを食用油に含有させることができる。この場合、飽和値を超える水素ガス量(本発明では、上記方法で推定した水素含有量CHから4.34を減じた値(質量PPM)として算出する)は、微細気泡の形で含有されているものと考えられる。食用油中の水素含有量CHの上限値に制限はないが、例えば20質量ppm程度まで水素含有量CHを高めることは可能である。
食用油中に溶存した酸素は、酸素を遮断した環境下でも時間が経過すれば油脂分子と反応して取り込まれ、見かけの溶存酸素濃度は減じるが油脂の酸価は上昇する。つまり、食用油の場合、溶存酸素濃度だけでは劣化の度合いは判定できない。したがって、本発明の製造方法により高品質の食用油を得るためには、処理対象の食用油として酸価1.0以下(望ましくは0.5以下、より望ましくは0.2以下)のものを使用することが望ましい。そして、その上で溶存酸素の除去能力が高い水素含有ガスを使用することで、処理後の食用油の溶存酸素濃度は3質量ppm以下に低減することができる。これにより、風味がよく酸化耐久性も良好な食用油が実現する。
本発明においては、特に溶存酸素濃度の低い食用油を得るために、酸化抑制ガスの水素ガスの含有率を20体積%以上100体積%以下に設定するこれにより、本発明においては処理後の食用油の溶存酸素濃度を2質量ppm以下とするまた、このように水素含有率の高い酸化抑制ガスを使用すると、前述の方法により推定される処理後の食用油中のガス状水素の含有量CHは、例えば3質量ppm以上20質量ppm以下に高めることができる。
処理ノズルに対し食用油は、該処理ノズルの上流側に配置されたポンプにより圧送することができる。この時、酸化抑制ガスをポンプの吸入口側で添加して食用油と酸化抑制ガスとをポンプ内にて予備撹拌混合することにより混相流となし、処理ノズルに流入させることができる。このようにすると、食用油と、導入した酸化抑制ガスとがポンプの内部流に巻き込まれて予備粉砕された状態で処理ノズルに供給されるから、ガス溶解ないし微差気気泡化をより効率的に行うことができる。ポンプは、ベーンポンプか渦流ポンプを用いることが、予備粉砕効率を高める観点において望ましい。
食用油と酸化抑制ガスとの混相流は処理ノズルに対し、ポンプを用いて循環供給することができる。この場合、食用油に対する酸化抑制ガスの添加を継続しつつ混相流の処理ノズルに対する循環供給を継続すれば、ガス溶解の振興を図りつつ気泡の形成密度を高め、その微細化も合わせて進行させることができる。また、酸化抑制ガスの添加を中断した状態で混相流の処理ノズルに対する循環供給を継続すれば、1回の通過では溶解ないし微細気泡まで粉砕しきれなかった径の大きい気泡も、処理ノズル内に発生する強撹拌領域を再度通過することで微細気泡に粉砕していくことが可能となり、溶解効率ならびに微細気泡の形成密度向上に貢献する。
一方、食用油と酸化抑制ガスとの混相流は、要求される溶存酸素濃度レベル等に応じて、処理ノズルに対し1パス供給するようにしてもよい。この構成であると循環系が不要であるため、装置をより安価に構築できる。この場合、処理ノズルは送液経路上に複数個直列に配置すれば、1パスによるガス溶解効率を向上させることができる。
また、酸化抑制ガスは処理ノズルの上流に設けられた気液混合ノズルにて供給するようにしてもよい。該気液混合ノズルとしてはベンチュリ式エジェクタなど、旋回流にガスを巻き込んで粉砕するタイプのものを使用することができる。また、酸化抑制ガスは処理ノズルのノズル本体の壁部を貫通するガス導入孔を介して処理コア部に供給するようにすれば、気液混合ノズルを省略でき、より経済的である。
次に、本発明に採用可能な処理ノズルの、より具体的構成について説明する。
まず、処理ノズルは、液体流路の中心軸線と直交する平面への投影において、処理コア部における液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積をS1、衝突部の投影領域面積をS2として、処理コア部の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm
として定義したとき、液体入口及び液体出口の断面積が全流通断面積Stよりも大きく設定されるとともに、
谷部の最底位置を表す谷点のうち、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた基準円の内側に位置するものの数をN70(個)、基準円の外側に位置するものの数をNc70(個)とし、谷深さ補正係数αを
h≧0.35mmのときα=1、
h<0.35mmのとき、α=−60h+41h−6
として定め、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhを0.2mm以上確保するとともに、
投影にて全流通断面積の領域のうち基準円の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm)として、70%断面比率σ70を、
σ70=S70/St×100(%)
として定め、有効谷点数Neを
Ne=α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70
として定義したとき、Ne/Stで表される有効谷点密度が1.5個/mm以上確保されてなり、液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積が2.5mm以上20mm以下に設定されたものを使用することができる。
キャビテーションが発生するのは上記のごとく主として衝突部の谷部であり、この谷部を食用油の流れに対して一つでも数多く接触させることが、微細気泡の発生効率を高める上で重要である。したがって、処理コア部の断面内に配置するねじ谷の数を増大させることが、キャビテーションひいては微細気泡の発生効率向上に有効と思われる。しかし、本発明者らが詳細に検討したところ、問題はそれほど簡単ではなく、谷部の数を機械的に増やすだけでは微細気泡の発生効率は改善できないことが判明した。本発明者らは、その要因を次のような項目に分けて検討した。
(1)衝突部の谷部の形成間隔を一定にすれば、処理コア部における液体流路の断面を増加させ、衝突部の突出高さを増加させることで、断面内に存在する谷点数は増える。しかし、この場合は流路の断面積も増え、同じ液体供給圧力であれば流量も増えてしまうから、単位流量あたりに割り振られる谷点数は必ずしも増加するとは限らないし、場合によっては単位流量あたりの谷点数が減じてしまい、キャビテーション効率が却って低下することも実際にあり得る。従って、キャビテーション効率ひいては微細気泡発生効率の大小を支配するのは、処理コア部に形成する谷点の絶対数ではなく、これを流路断面積で規格化した谷点密度のほうである。これは、単位体積の液体が何個の谷点と接するか、ということとも密接に関係している。
(2)管路内の流速は、管軸断面中心付近で最大となり管内壁面位置で最小となる形で、半径方向に放物線状の分布を示す。したがって、流路断面内の谷部はどの位置にあるものも等価に微細気泡発生に寄与するのではなく、断面中心に近い谷部ほどキャビテーションに必要な流速を確保しやすく、微細気泡発生にもより大きく貢献する。したがって、谷点数を評価する場合は、断面中心からの距離により異なる重みを考慮する必要がある。
(3)断面中心付近に位置する谷点が実際にキャビテーション効果に有効に寄与するためには、当該断面中心付近で期待通りの流速が得られている場合に限る。一見、これは自明な事項のようにも思えるが、断面中心付近に谷部を配置するということは、その谷部を形成する衝突部の少なからぬ部分が断面中心領域を占有するということであり、断面中心付近の谷点数を増やせば増やすほど流れが妨げられて流速が確保できなくなるジレンマが生ずる。断面中心領域で障害物に妨げられた流れは、断面外縁領域に回り込み、もともと流量が不足しがちな該領域での流速向上に貢献する可能性はもちろんあるが、断面中心領域を妨げられることなく通過できた場合と比較して、大幅な流れ損失は避けがたくなる。したがって、断面中心付近に配置された谷点数は、断面中心付近の流通面積により重み付けを付与して評価する必要がある。
(4)衝突部に形成する谷部の形成間隔を狭くすれば、同じ流路断面積であっても谷点数を増やすことができる。しかし、谷部の形成間隔とともに谷部の深さが減少すると、谷底での流れ絞り効果が減じ、キャビテーション効率の低下につながる懸念がある。したがって、谷点数をより多く確保するために谷部深さの小さい衝突部を採用する場合は、谷深さに応じた重みづけにより谷点数を評価する必要がある。
本発明者らは、衝突部の寸法と谷部の形成深さ、衝突部の個数と配置形態、さらに衝突部を配置する処理コア部での流路断面寸法を種々に設定した多数の処理ノズルを製作し、微細気泡の発生状況やガス溶解効率などを詳細に検討した。その結果、上記(1)で述べた処理コア部における衝突部の谷点密度を、(2)〜(4)の3つの要因を反映した形で的確に重みづけする手法に到達し、そのように重みづけした谷点密度において、前記特許文献に開示された処理ノズルよりも明らかにキャビテーション効率ひいては微細気泡の発生効率に優れた、有利な数値範囲が存在することを見出した。
以下、順に説明する。まず前提として、液体入口及び液体出口の断面積を処理コア部の全流通断面積Stよりも大きく設定する。これは、液体入口及び液体出口の断面積がStよりも小さくなると、液体入口及び液体出口での流量損失が大きくなりすぎて、処理コア部にて十分なキャビテーションを発生させるための流速が確保できなくなるからである。液体入口及び液体出口の断面積は、処理コア部における液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積S1よりも大きく設定しておくことが、より望ましい。また、処理ノズルに液体を流通させる場合の液体圧としては、標準圧である0.1MPaを中心に、0.03MPaから0.7MPa程度までを想定している。
要因(2)については、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて基準円を設定する。障害物のない管路にて上記の液体圧範囲では、基準円外側の平均流速と基準円内側の流速比はおおむね0.38:1となることから、本発明者が検討した結果、基準円外側の谷点数Nc70の寄与を、基準円の内側の谷点数N70の寄与の0.38倍程度に小さくなるよう重みづけするのが適当であることがわかった。
要因(3)については、70%断面比率σ70=S70/St×100(%)の値は、もし衝突部が存在しなければ50%となるから、衝突部を配置した場合も、この70%断面比率の値が50%に近づくほど基準円内側の谷点はより高流速の流れを受けることとなる。そこで、基準円内側の谷点数N70に対しては、σ70/50の値により重みづけするのが適当であると考えた。
要因(4)については、谷部の深さの影響を種々に検討した結果、まず、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhが0.2mm未満となる場合には、微細気泡の発生があまり見込めないことがわかった。そして谷部の深さhの値が0.2mm以上に増大したとき、hの増大とともに微細気泡発生への貢献は次第に顕著となり、谷深さhの微細気泡発生への影響を、h=0.25mm、0.3mm、0.35mmの各場合について0.5:0.9:1.0の比率にて谷点数に対し重み付けしたときに、微細気泡の発生効率やガス溶解効率の実験検証結果が良く説明できることが、本発明者らの検討により判明した。また、谷深さhが0.35mm以上では、該hの影響は頭打ちとなることもわかった。そこで、上記のごとく、重み付けされた基準円内側の谷点数N70と基準円外側の谷点数Nc70の合計に対する重み付けとして、谷深さ補正係数αを前記(1)式により定める。(1)の2番目の式にかかるhの二次式は、hを0.25mm、0.3mmないし0.35mmとした場合のαの値として、上記のごとく、それぞれ0.5、0.9ないし1.0が適当であることの経験則を二次式により近似したものであり、0.2〜0.35mmという比較的狭い数値範囲内にて、hが上記以外の値をとった場合のαの適切な値を合理的に算出することができる。
こうして、上記3つの要因ごとにそれぞれ適正化された係数により重み付けされた谷点数Neは、前述の(2)式のごとくとなる。そして、この有効谷点数Neを前述の処理コア部の全流通断面積Stで規格化した有効谷点密度Ne/Stは、処理ノズルの微細気泡発生能力を客観的に数値化する指標となる。そして、該値が1.5個/mm以上確保されているとき、キャビテーション効率ひいては水素微細気泡の発生効率は前記特許文献に開示された処理ノズルよりも明らかに向上し、水素微細気泡を含んだ液体特有の種々の効果を従来ないレベルに顕在化させることができる。有効谷点密度は、より望ましくは1.8個/mm以上確保されているのがよい。液体流路の軸断面形状はたとえば円形にすることが望ましいが、過度の損失を生じない限り、楕円や正多角形状(正方形、正六角形、正八角形等)の軸断面を有するものとして形成することも可能である。
次に、衝突部に形成する複数巻の山部は、らせん状に一体形成することができる。このようにすると、山部の形成が容易になるほか、流れに対し山部が傾斜することで、山部の稜線部を横切る流れ成分が増加し、流れ剥離に伴う乱流発生効果が著しくなるので、気泡のさらなる微細化を図ることができる。この場合、衝突部は、脚部末端側が流路内に突出するねじ部材にて形成しておくと、該ねじ部材の脚部の外周面に形成されるねじ山を山部として利用でき、製造が容易である。衝突部をたとえばJIS並目ピッチのねじ部材で構成する場合、衝突部は外径Mを1.0mm(谷部の深さは0.25mm)以上2.0mm(谷部の深さは0.40mm)以下とするのがよく、より望ましくは1.4mm(谷部の深さは0.30mm)以上1.6mm(谷部の深さは0.35mm)とするのがよい。
液体流路内への衝突部の配置形態としては、たとえばもっとも単純なものの一つとして、流路断面を二分する形で直径方向に配置する形態を例示できる。この構成は、比較的小流量の処理ノズルに有効である。具体的には、液体流路の内径Dを2mm以上4.5mm以下(望ましくは2mm以上3.5mm以下)に設定し、全流通断面積Stを1.2mm以上10mm以下(望ましくは1.2mm以上5mm以下)に設定するのがよく、良好な微細気泡形成効率を達成できる。
一方、衝突部は投影において中心軸線を取り囲む形態で3以上配置すること、たとえば十字形態に4つ配置することも可能である。この構成は、大流量が求められる構成において、良好な微細気泡形成効率を達成する上で有効である。絞り孔にそれぞれ形成される十字形態の衝突部の組は、たとえばノズル本体の壁部外周面側から先端が絞り孔内へ突出するようにねじ込まれる複数本のねじ部材により容易に形成できる。4本以外では、3本、5本、6本、7本、8本の中から選択することができる。
突出部を4つ十字状に配置する構成では、具体的には、液体流路の内径Dを2.5mm以上7mm以下(望ましくは2.9mm以上5.5mm以下)に設定し、全流通断面積Stを2.5mm2以上35mm2以下(望ましくは4mm以上13mm以下)に設定するのがよく、良好な微細気泡発生効率を達成できる。この場合、複数の衝突部の先端が集合する断面中心位置に液体流通ギャップを形成することができる。たとえば十字の中心位置に液体流通ギャップを形成すると、最も高流速となる断面中央の流れ(中心流)が液体流通ギャップの形成により妨げられにくくなり、微細気泡の発生効率がより向上する。
本発明の処理ノズルにおいては、ノズル本体に形成する液体流路を単一とすることができる。この場合、被処理液体の全流量を増やしたい場合は、分岐継手等によりノズルを複数並列に接続することができる。このようにすると、ノズル1本あたりの流量は小さくても、全体ではキャビテーション効果を犠牲にすることなく十分な流量が確保できるようになる。
本発明においては、液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、隔壁部に貫通形成され流入室と流出室とを互いに別経路にて連通させる複数の絞り孔とを備え、処理コア部は、絞り孔の内面から各々突出する形で衝突部を形成す。すなわち、複数のノズルを並列接続する場合は、衝突部が配置される処理コア部の前後の流路が各ノズルに独立して配置される構造になるが、上記の構成では、隔壁部に複数の絞り部を形成し、その前後の流路区間を、該隔壁部が区画する流入室ないし流出室に集約して、それら複数の絞り部により共有化させる形となるのである。これにより、流路が複数系統に分岐する区間は隔壁部に形成された絞り孔のみに短縮することができ、分岐流路が長くなることに由来した偏流発生の防止に貢献する。この場合も、処理コア部において複数の絞り孔のそれぞれに、ノズル本体の軸線と直交する平面への投影において衝突部が孔中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置し、それら4つの衝突部が形成する十字の中心位置に液体流通ギャップが形成された構成とすることができる。
たとえば衝突部は、投影において中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置されたM1.2以上M2.0以下(望ましくはM1.4以上M1.8以下)のねじ部材とすることがででき、前述のごとく、液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積(液体流路1個あたり)が2.5mm以上20mm以下に設定されたものを使用することができる。
食用油と酸化抑制ガスとを処理ノズルに供給する条件としては、混相流を形成するための酸化抑制ガス流量をQ1(常圧換算)、食用油の流量をQ2としたとき、液体入口側の動圧を0.1MPa以上0.5MPa以下(望ましくは0.2MPa以上0.4MPa以下)に設定し、酸化抑制ガスの食用油に対する流量比Q1/Q2が0.01以上0.2以下(望ましくは0.02以上0.1以下)となるように設定するのがよい。液体入口側の動圧が下限値未満では衝突部での流速低下により微細気泡の形成効率が十分でなくなる場合がある。上限については、本来制限はないが、ポンプの能力等を考慮して適宜上記のような値に定めるのがよい。また、流量比Q1/Q2が上記の下限値未満になると水素微細気泡の形成体積率を十分に確保できなくなるか、確保するのに長時間の循環が必要となる(ただし、時間についての制限が問題にならない場合は、循環を前提に流量比をさらに小さく設定することを妨げない)。他方、流量比Q1/Q2が上記の上限値を超えると、衝突部が、導入される酸化抑制ガスによりホールドアップし、ガス溶解効率が極度に損なわれる恐れがある。
発明の効果
本発明の作用及び効果の詳細については、「課題を解決するための手段」の欄にすでに記載したので、ここでは繰り返さない。
本発明の一実施形態のかかる食用油の製造装置の全体構成を示すブロック図。 図1の装置に使用する処理ノズルの一例を示す横断図。 図2の側面拡大図。 図3の一つの絞り孔における、衝突部を構成するねじ部材の配置形態を実体的に描いた拡大図。 図2の谷点配置を示す説明図。 図2の処理ノズルの処理コア部の詳細を示す断面図。 図2の処理コア部におけるねじ部材の流れ軸線方向の配置を拡大示す図。 図5の変形配置例を示す図。 処理ノズルの作用を示す第一の説明図。 衝突部における山部と谷部の作用説明図。 衝突部の作用を示す平面図。 処理ノズルの作用を示す第二の説明図。 衝突部材の別の配置例を示す側面図。 図13の谷点配置を示す説明図。 図1の製造装置の1パス処理タイプへの変形例を示す図。 絞り孔を1つのみ形成した処理ノズルの例を示す図。 水素添加後の食用油中の、溶存水素濃度を推定する方法を説明する図。 実施例1の食用油の、水素ガス添加時の溶存水素濃度上昇挙動を示すグラフ。 同じく溶存酸素濃度低減挙動を示すグラフ。 実施例1の食用油の、水素ガス添加後に大気中放置したときの溶存水素濃度減少挙動を示すグラフ。 同じく溶存酸素濃度上昇挙動を示すグラフ。 実施例2における新品食用油及び大気放置して劣化させた食用油の、水素ガス添加時の溶存水素濃度上昇挙動を示すグラフ。 同じく溶存酸素濃度低減挙動を示すグラフ。 実施例3において、種々の酸化抑制ガスを使用したときの、溶存酸素濃度低減挙動を示すグラフ。 ガス導入孔を有する処理ノズルの一例を示す断面図。
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の食用油の製造装置の一例を概念的に示すものである。該装置500において、原料となる食用油502は、たとえば搾油直後のバージンオリーブオイルやアルガン油であり、酸価が0.5以下、望ましくは0.2以下(オリーブ油にあっては酸度が0.15%以下、望ましくは0.08%以下)、溶存酸素濃度は8質量ppm以下、望ましくは0.6ppm以下である。該食用油502が、タンク501に貯留されるとともに、該タンク501から延出する循環配管51の途上に、ベンチュリエジェクタ等で構成されるガス導入部219、送液ポンプ505及び処理ノズル1がこの順序で設けられている。ガス導入部219には減圧弁411及びガス供給チューブ412を介してガス供給源としての水素ボンベ420から、酸化抑制ガスとして水素ガスが供給されるようになっている。なお、水素ガス供給源としては水素ボンベ以外に、電解式水素発生装置や、可逆的に水素を吸着・脱着する水素吸蔵合金を水素ガス貯留部として使用し、加熱による水素吸蔵合金からの水素脱着により水素ガスを放出する水素合金キャニスターを使用してもよい。また、酸化抑制ガスとして、水素を20体積%以上含有する窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを使用することもできる。さらに、窒素ガスに変えてアルゴン等の他の不活性ガスを用いてもよい。送液ポンプ505は、気液混相流の送液に適したベーンポンプあるいは渦流ポンプにて構成され、特にベーンポンプを用いることが望ましい。なお、タンク及び配管は全て金属製である。
図2は処理ノズルの横断面を、図3はその液体入口側の軸線方向からの拡大側面を示すものである。この処理ノズル1は、液体流路3が形成されたノズル本体2を備える。ノズル本体2は円筒状に形成され、その中心軸線Oの向きに円形断面の液体流路が貫通形成されている。ノズル本体2には、液体流路3を液体入口4側の流入室6と液体出口5側の流出室7とに区画する隔壁部8と、隔壁部8に貫通形成され流入室6と流出室7とを互いに別経路にて連通させる複数の絞り孔9と、絞り孔9の内面から各々突出する衝突部10とからなる処理コア部COREが形成されている。図3において、隔壁部8に絞り孔2は中心軸線Oに関して軸対象となるように、同一内径にて2個形成されている。流入室6及び流出室7の各内周面は、処理コア部COREに向けて縮径するテーパ面14とされている。
図4は、そのうちの一方を拡大して示すものであり、衝突部10は外周面に周方向の山部11と高流速部となる谷部12とが複数交互に連なるように形成されている。衝突部10は、この実施形態では、脚部末端側が流路内に突出するねじ部材(以下、「ねじ部材10」ともいう)であり、結果、衝突部に形成される複数巻の山部11は、らせん状に一体形形成されている。なお、山部及び谷部は、らせん状に一体化せず、周方向に閉じたものを衝突部の軸線方向に複数密接配列してもよい。ノズル本体2の材質は、たとえばABS、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、PTFEなどの樹脂であるが、ステンレス鋼や真鍮などの金属やアルミナ等のセラミックスとしてもよく、用途に応じて適宜選択される。また、ねじ部材10の材質はたとえばステンレス鋼であるが、用途に応じて、より耐食性の高いチタンやハステロイ、インコネル(いずれも商標名)などの耐熱合金を用いてもよいし、耐摩耗性が問題となる場合は石英やアルミナなどのセラミック材料を用いることも可能である。
衝突部10は、図2の処理コア部COREにおいて複数の絞り孔9のそれぞれに、図3に示すごとくノズル本体2の軸線Oと直交する平面への投影において、各絞り孔9の中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置されている。各絞り孔9において、ねじ部材10と絞り孔9内周面との間には主流通領域21が形成される。また、4つの衝突部10が形成する十字の中心位置には、液体流通ギャップ15が形成されている。液体流通ギャップ15を形成する4つの衝突部10の先端面は平坦に形成され、前述の投影において液体流通ギャップ15は正方形状に形成されている。絞り孔9(液体流路)の内径Dは2.5mm以上7mm以下(望ましくは2.9mm以上5.5mm以下)に設定され、主流通領域21と液体流通ギャップ15とからなる液流通領域の全流通断面積Stは2.5mm以上35mm以下(望ましくは4mm以上13mm以下)に設定される。
処理コア部における液体流路(絞り孔9)の投影領域の外周縁内側の全面積、すなわち絞り孔9の円形軸断面の面積(内径をdとしたとき、πd2/4)をS1、衝突部10(4本のねじ部材)の投影領域面積をS2として、処理コア部の絞り孔9の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm
として定義する。この実施形態では、主流通領域21と液体流通ギャップ15との合計面積が全流通断面積Stに相当する。図1に示すごとく、液体入口4及び液体出口5の開口径は、絞り孔9の内径よりも大きい。すなわち、液体入口4及び液体出口5の断面積は全流通断面積Stよりも大きく設定されている。また、流入室6及び流出室7の絞り孔9に連なる内周面はそれぞれテーパ部13,14とされている。
図4は処理コア部COREを拡大して示すものである。絞り孔9にそれぞれ形成される衝突部の組は、ノズル本体2の壁部外周面側から先端が絞り孔9内へ突出するようにねじ込まれる4本のねじ部材により形成されている。図3に破線で示すように、ねじ部材10は、ノズル本体2の壁部に貫通形成されたねじ孔19にねじ込まれ、各ねじ孔19のねじスラスト方向途中位置にはねじ頭下面を支持するための段付き面19rが形成されている。該段付き面19rの形成位置は、ねじ部材10をねじ込んだ時に、絞り孔9内に突出するねじ脚部(すなわち、衝突部となる部分)の長さが、液体流通ギャップ15を形成するのに適正となるように調整されている。
図5は図4と全く同一の投影図であり、符号を省略したものである(従って、各部の符号は図4のものを援用する)。ねじ部材(衝突部)10の投影外形線に現れる谷部21の深さhは0.2mm以上確保されている。また、中心軸線Oの投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた円を基準円C70として定めるとともに、谷部21の最底位置を表す谷点のうち、基準円C70の内側に位置するもの(以下、70%谷点数という:○で表示)の数をN70(個)、基準円C70の外側に位置するもの(以下、70%補谷点数という:●で表示)の数をNc70(個)とする。
谷部の最底位置を表す谷点のうち、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた基準円の内側に位置するものの数をN70(個)、基準円の外側に位置するものの数をNc70(個)とし、谷深さ補正係数αを
h≧0.35mmのときα=1、
h<0.35mmのとき、α=−60h+41h−6
として定め、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhを0.2mm以上確保している。また、該投影にて全流通断面積の領域のうち基準円の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm)として、70%断面比率σ70を、
σ70=S70/St×100(%)
として定め、有効谷点数Neを
Ne=α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70
として定義する。該有効谷点数Neは、全流通断面積Stで規格化した有効谷点密度(Ne/St)が1.5個/mm以上(望ましくは1.8個/mm以上)確保されている。
次に、図2に示すように、複数の絞り孔9の間でねじ部材10の干渉を回避するために、各絞り孔9に組み込む4つのねじ部材10の組は、それら絞り孔9の間で軸線方向にて互いにずれた位置に配置されている。図6に拡大して示すように、同一の絞り孔9内の複数のねじ部材10A,10Bと10C,10Dとは、該絞り孔9の軸線方向(流れ方向)にて互いにずれた位置に配置されている。具体的には、各絞り孔9において、同一平面上で互いに直交する位置に配置されたねじ部材の対10A,10B及び10C,10Dが、それぞれ流れ方向において互いに異なる位置(図中、上側の絞り孔9については下流側のA及びBの位置に、下側の絞り孔については上流側のC及びD位置)に配置されている。それぞれ図1の中心軸線Oと直交する平面への投影では、A及びBの位置の4つのねじ部材10A,10B、及びC及びD位置の4つのねじ部材10C,10Dが、それぞれ十字形態をなすように配置されることとなる。
図7に示すように、絞り孔9は、それら絞り孔9の軸断面積の合計と等価な円の直径をd(d1、d2)、絞り孔9の長さをLとして、L/deにて定義される絞り孔アスペクト比が3.5以下に設定されている。図6において、2つの絞り孔9の内径が互いに異なる一般の場合(d1,d2)は、絞り孔アスペクト比は、L/(d12+d22)1/2となる。図6では、2個の絞り孔9は内径と長さが互いに等しい円筒面をなすように形成されており、2つの絞り孔9の内径をdとして、絞り孔アスペクト比は0.71L/dである。絞り孔アスペクト比L/deの値は、望ましくは3以下であること、より望ましくは2.5以下であるのがよい。
図3に戻り、ノズル本体2の軸線Oと直交する平面への投影において、隔壁部8の投影領域の中心位置に定められた基準点Oから複数の絞り孔9の内周縁までの距離(絞り孔変位)Tは、該絞り孔9の内径dよりも小さくなるように、複数の絞り孔9は基準点Oの周りに近接配置されている。絞り孔変位Tは絞り孔9の内径dの望ましくは1/2以下であるのがよい。さらに、本実施形態では、同じ投影において、複数の絞り孔9の内周縁に対する外接円20の面積をSt、絞り孔9の投影領域の合計面積をSrとしたとき、K≡Sr/Stにて定義される絞り孔9集約率Kが0.2以上とされている。
また、図7に示す如く、絞り孔9の衝突部10よりも下流に位置する区間の長さ(以下、残区間という)をLp(Lp2〜Lp4の平均値)とし、絞り孔9の軸断面積の合計と等価な前述の円の直径をdeとして、Lp/deにて定義される残区間アスペクト比は1.0以下に設定されている。図7では、最も下流側に位置するねじ部材10Aに関しては、残区間の長さがゼロであるが、図8に示す如く、ねじ部材10Aに関し残区間がゼロでない長さLp1を有する場合は、上記残区間長さLpはLp1〜Lp4の平均値となる。
以下、図1の装置550を用いた食用油の製造工程について説明する。すなわち、タンク501に食用油502を投入して送液ポンプ505を動作させると、タンク501からの食用油はガス導入部219にて酸化抑制ガス(水素ガス、あるいは水素を20体積%以上含有する水素ガスと窒素ガスの混合ガス)が供給されて混相流となり、送液ポンプ505内に吸い込まれる。混相流を形成するための水素ガス流量をQ1、食用油の流量をQ2としたとき、処理ノズル1の液体入口側の動圧は0.1MPa以上0.5MPa以下(望ましくは0.2MPa以上0.4MPa以下)に設定され、酸化抑制ガスの食用油に対する流量比Q1/Q2が0.01以上0.2以下(望ましくは0.02以上0.1以下)となるように設定される。
送液ポンプ505の内部では酸化抑制ガスがポンプ内撹拌流に巻き込まれることにより、ガス相がたとえば50〜1000μm程度の気泡に予備粉砕されて、ポンプ下流側の処理ノズル1に供給されるので、酸化抑制ガスの溶解効率及び1μm以下の微細気泡への粉砕効率が一層高められる。そして、混相流はこの状態で処理ノズル1にて酸化抑制ガスの溶解及び微細気泡への粉砕処理がなされ、タンク502に戻る。以降、タンク内の油502は循環しながら酸化抑制ガスの溶解及び微細気泡への粉砕が継続され、酸化抑制ガスの微細気泡の形成濃度が高められる。また、これに伴い、食用油中の溶存酸素がストリッピングされ濃度が低減される。
図2の処理ノズル1内での作用は次のようなものである。図9に示すごとく、混相流ははまず一括してテーパ部13で絞られ、さらに個々の絞り孔9へ分配されて、主流通領域21と液体流通ギャップ15とからなる液流通領域により個別に絞られて、ねじ部材10に衝突しながらこれを通過する。ねじ部材10の外周面を通過するときに、図10に示すように流れは谷部に高速領域を、山部に低速領域をそれぞれ形成する。すると、谷部の高速領域はベルヌーイの定理により負圧領域となり、キャビテーションすなわち空気等のプレ溶存ガスの減圧析出により、気泡FBが発生する。この時、液体が圧送されてねじ部材10に衝突する際に、その背圧により液体は導入された酸化抑制ガスとともに加圧され、一部は液体に溶解する。そして、これが、ねじ部材10の谷部を通過する際に高流速化することで減圧され、気泡を析出することも当然にある。
谷部はねじ部材10の外周に複数巻形成され、かつねじ部材10が絞り孔9内に複数配置されていることから、この減圧析出は絞り孔9内の谷部にて同時多発的に起こることとなる。すると、図11に示すように、液流がねじ部材10に衝突する際に谷部での減圧析出が沸騰的に激しく起こり、さらにねじ部材10の下流に迂回する際に生ずる渦流にこれを巻き込んで激しく撹拌する。衝突部10の周辺及び直下流域には、微小渦流FEを無数に含んだ顕著な強撹拌領域SMが形成されることとなる。気泡を析出する減圧域は衝突部10周囲の谷底付近に限られており、高速の液体流はほとんど瞬時的に該領域を通過してしまうから、発生した気泡FBはそれほど成長せずに上記の撹拌領域に巻き込まれ、過度に成長する心配がない。そして、処理ノズル1に供給される食用油には、ポンプ505で予備粉砕された酸化抑制ガスの気泡が混入して混相流を形成しているので、微細気泡となるべきガス相は衝突部10の下流の強撹拌領域SMに巻き込まれることで食用油との混合が顕著に進み、ガス溶解及び微細気泡化をきわめて効率的に行うことができる。
また、処理ノズル1においては、隔壁部8に複数の絞り部を形成し、その前後の流路区間を、該隔壁部8が区画する流入室6ないし流出室7に集約して、それら複数の絞り部により共有化させる構造を採用しているので、流路が複数系統に分岐する区間は隔壁部8に形成された絞り孔9のみとなる。その結果、絞り孔9内での流速の低下ないし不均一化が抑制され、酸化抑制ガスが絞り孔9の一部のものに偏ってしまう、いわゆる偏流を確実に防止することができる。すなわち、衝突部10を有する絞り孔9を複数形成することで十分なキャビテーション効果と十分な流量とを両立することができ、かつ、複数の絞り孔9間での偏流が効果的に抑制され、キャビテーション効果に基づいた微細気泡発生を安定に継続することができる。
図9は、処理ノズル1を流れ方向が水平になるように配置してガス溶解を行う様子を示すものである。液体入口4から混相流を導入したとき、そのガス相をなす気泡Gは重力によって上に偏って流れやすくなり、上方に位置する絞り孔9にガス相が偏りやすくなる。この場合は、ガス相流量の小さい下側の絞り孔9側での液体流F1により主に作られる強撹拌領域SMを、流出室7にてガス相流量の大きい上側の絞り孔9からの流れF2が共有できるので、同様に良好なガスの溶解・粉砕が可能である。一方、図12は、処理ノズル1を流れ方向が垂直になるように配置してガス溶解を行う様子を示すものである。酸化抑制ガスを導入する液体入口4は当然下側に位置するようにして混相流を導入することとなる。複数の絞り孔9は絞り孔アスペクト比が小さく、かつ、隔壁部8の中央付近に近接配置されているので、液相・ガス相ともに偏流は生じにくく、ガス相GBは各絞り孔9に均一に分配され、一様なガス溶解が可能となる。
酸化抑制ガスの気泡は衝突部10の谷部を通過する際に摩擦により激しく剪断され、粉砕されるとともに強撹拌領域SMに巻き込まれることで一挙に微細気泡(1μm未満)のレベルにまで粉砕される。このとき、撹拌により一旦溶存した酸化抑制ガスの一部は、谷部ないし強撹拌領域で水素微細気泡として再析出する。混相流を形成する水素ガスは強撹拌領域SMに巻き込まれることで液体との混合が顕著に進み、酸化抑制ガス(水素ないし水素と窒素の混合ガス)の食用油に対する飽和溶解度が非常に小さいにもかかわらず、その溶解をきわめて効率的に行うことができる。
強撹拌領域SMが形成される大きな要因の一つは、供給する食用油中に最初から溶存しているプレ溶存ガス(特に空気)のキャビテーションによる減圧沸騰析出である。しかし、溶存空気の減圧沸騰をきっかけとして生ずる強撹拌領域SMでは、外部から導入される水素ガスの撹拌・溶解が、減圧沸騰で損なわれるガス量を桁違いに上回る規模により進行する。また、液体に溶解しきれなかった酸化抑制ガスも、浮上速度の非常に小さい微細気泡として液中に留まることになる。水素や窒素の場合、食用油に対する溶解度が低いために、処理コア部及び強撹拌領域では溶存水素が瞬時に飽和状態となり、流速増加に伴うわずかな減圧でも気泡が極めて析出しやすい状況が形成され、高密度に微細気泡が生成すると考えられる。そして、処理コア部でのキャビテーションの進行により溶存空気が微細気泡となって消費されること、及び酸化抑制ガスの溶解が急速に進み溶存濃度が飽和に到達した状況で、さらに微細気泡が続々形成されること、などの要因により、食用油中の溶存酸素濃度は大きく低減されることとなる。
このようにして酸化抑制ガスが添加され、溶存酸素が低減された食用油は、図1の装置500において、バルブ504を開いて取り出し口503から回収され、直ちに金属製、ガラス製、あるいは樹脂製の包装容器に充てんされる。なお、図1に一点鎖線で示すように、ガス導入部219はポンプ505の出口と処理ノズル1との間に設けてもよい。このとき、水素ガスのガス導入部219への導入圧力は、処理ノズル1から受ける背圧に打ち勝って供給可能となる程度に高く設定しておくようにする。
なお、図13に示すように、処理ノズルの衝突部は、直径方向にねじ込まれる2本のねじ部材10で形成してもよい。この構成では、2本のねじ部材10,10の先端面の間に液体流通ギャップ15を形成している。この構成では、ねじ部材10の先端が絞り孔9の断面中心に近づく分だけ、図14に示すように、基準円C70の内側にて、より中心に近い位置に谷点を配置できていることがわかる。ただし、絞り部9の断面径が増大した場合は、有効谷点密度Neが低くなりやすいので、全流通断面積Stが比較的小さい、小流量の処理ノズルに適した構成であるといえる。また、食用油の処理流量が小さい場合には、図16の処理ノズル171のごとく、絞り孔9を1個のみとして形成することもできる。
なお、処理ノズル1に対し食用油を1パスだけ流通させる方式を採用することもできる。図15に、該方式を具現化できる本発明のガス溶解装置の一例を示す。該装置550は、図1の装置500と多くの部分において共通しているが、タンク501から延出する配管507が、1パスの食用油供給配管として形成されている点が相違する(その余の構成要素については図1の装置500と同一であるので、同じ符号を付与し、説明は繰り返さない)。そして、図1と同様に、ガス導入部219には減圧弁411及びガス供給チューブ412を介して図1と全く同様に酸化抑制ガスが供給される。処理済みの食用油514は流出口511から回収容器512に回収される。なお、流出口511に図示しないボトリング用ノズルを取り付け、回収容器512に注入せず、液状組成物の個別容器にボトリングし、密封するようにしてもよい。なお、この構成でも、一点鎖線で示すように、ガス導入部219はポンプ505の出口と処理ノズル1との間に設けてもよい。また、1パスでのガス溶解及び粉砕効率をより高めるために、2段目以降の処理ノズルをさらに下流側に1ないし複数設けることも可能である。
以下、本発明の効果を確認するために行った実験とその結果について記載する。
食用油として市販のエキストラバージンオリーブオイル(伊プロフェッショナーレ製)を用意した。開封直後に測定したこのオイルの酸価は約0.2であり、市販の蛍光式溶存酸素計(株式会社オートマチックシステムリサーチ製:FOM−2000)で測定した溶存酸素濃度は約3ppmであった。このオイルを図1の装置500のタンク501に3L投入し、オイル流量:8L/分、水素流量:0.4NL/minにて6分間循環した。オイル/水素導入比は、常圧換算した水素流量をオイル流量で割った値であり、上記の条件では0.02となる。使用したポンプは東振テクニカル社製のベーンポンプTVP−MS0603−Aである。また、処理ノズル1は、図2〜図5に示す形態のものを使用した。ノズル本体2の材質はABS樹脂であり、液体入口4と液体出口5の内径はφ14mm、流入室6及び流出室7の流れ方向の長さはそれぞれ30mmである。コア部COREについては、絞り孔9の形成個数を図3に示す配置にて2個とし、絞り孔9の内径dはφ3.9mm、隔壁部8についてはその厚みを7.0mmとした。流入室6及び流出室7の内周面は、各々液体入口4と液体出口5との内周縁から、隔壁部8の対応する側の外周縁に至る連続テーパ面として形成した。衝突部10は脚部先端面が平坦に形成されたねじ部材により、具体的にはM1.4のJIS並目ピッチの0番1種なべ小ねじ(SUS304ステンレス鋼製)を使用して形成し、流通断面積は各絞り孔9について約10.3mmとした。
循環中は、前述の蛍光式溶存酸素計にてオイル中の溶存酸素濃度を連続測定した。また、循環途中、循環終了後、さらには循環終了後種々の時間放置したオイル中の溶存水素濃度を見積もるために、図17の方法にて以下のごとく測定を行った。
(1)50ccシリンジによりオイルを150cc抜き取り、精製水100ccとともに内容積300ccのポリプロピレン製分液ロートに封入した。
(2)次いで、分液ロート内の食用油と精製水とを、振幅10cmにて1秒間に2回の速度で50回撹拌した。
(3)撹拌後の分液ロートを、油相と水相とが分離するまでロート台の上で5分静置した。
(4)分液ロートのコックを開き、下部に分離した水相をビーカーに集め、隔膜ポーラロ電極式の溶存水素計(共栄電子研究所製:KM2100DH)にて溶存水素濃度CWを測定し、もとのオイル中の含有水素濃度を前述のごとくCH=24.3×Cwにて算出した。
図18は、水素添加循環時間に対するオイル中の含有水素濃度CHの変化を示すものである。循環2分後にはオイル中の含有水素濃度は飽和値(4.32質量ppm)を超え、6分後にはその2倍を超える9.14質量ppmに到達していることがわかる。この含有水素濃度のうち、9.14−4.32=4.82(質量ppm)は水素微細気泡として含有されているものと推定される。また、図19は水素添加循環時間に対するオイル中の溶存酸素濃度の変化を示すものである。循環時間とともに溶存酸素濃度は直線的に減少し、6分後には1ppmを下回る0.86質量ppmに到達した。本発明の方法により、オリーブオイルに多量の水素ガスを簡単に添加でき、かつ、溶存酸素濃度を速やかに低減できていることがわかる。
次に、図20は、水素添加後のオイルを大気中にて放置したときの含有水素濃度CHの変化を示すものである。放置15時間(900分)後においてもオイル中の含有水素濃度は依然2ppm近い高濃度を維持しており、抗酸化状態を長時間持続できることがわかる。この間、図21に示すごとく、溶存酸素濃度は6質量ppmまで増加しているが、オイルの酸価はほとんど変化しておらず、残留している水素により酸化反応活性が抑制されていると考えられる。
食用油として実施例1と同じエキストラバージンオリーブオイルの開封直後のもの(新品油)と、このオリーブオイルを開封し、開口径20cmのオイルポットに3L注ぎ1カ月大気開放放置したもの(劣化油)とを用意した。劣化処理後のオイルの酸価は約1.5であり、溶存酸素濃度は約7ppmであった。このオイルを図1の装置500のタンク501に3L投入し、実施例1と全く同様の条件で水素ガスを添加しつつ9分まで循環し、循環時の含有水素濃度変化と溶存酸素濃度変化とをそれぞれ測定した。
図22は水素添加循環時間に対するオイル中の含有水素濃度の変化を示すものである。新品油の場合、循環開始後6分程度で含有水素濃度は9質量ppmにほぼ飽和しているが、劣化油の場合は含有水素濃度の上昇が非常に遅く、循環開始後9分後でも含有水素濃度は3質量ppmに届かず、新品油の1/3程度にとどまっていることがわかる。図23は同じく溶存酸素濃度の変化を示すものである。新品油は6分後に1ppmを下回っており、劣化油も9分後には同程度のレベルに近づいているが、劣化油の酸価は水素添加処理後もほとんど変化していないことがわかった。
食用油として実施例1と同じエキストラバージンオリーブオイルを用意し、酸化抑制ガスとして水素ガス(100%H)、窒素−20体積%水素混合ガス(N−20%H)、窒素−4体積%水素混合ガス(N−4%H :比較例)、窒素ガス(100%N :比較例)の4種類を用いて、実施例1と同様の条件により最大21分まで循環し、循環時の溶存酸素濃度変化をそれぞれ測定した。図24は同じく溶存酸素濃度の変化を示すものである。水素ガスを用いた場合は循環6分後に溶存酸素濃度を1質量ppm未満にできている。窒素ガスを用いた場合、水素ガスを用いた場合よりも溶存酸素濃度の減少速度は低くなっている。そして、この窒素ガスに対して水素ガスを添加した混合ガスの場合は、20体積%の水素混合量の場合に、比較例である4体積%の水素混合量の場合と比較して、溶存酸素濃度の減少速度は明らかに大きくなっていることがわかる。
図16に示すノズル171において、ノズル本体2の材質をABS樹脂とし、液体入口4と液体出口5の内径はφ14mm、流入室6及び流出室7の流れ方向の長さはそれぞれ30mmとした。コア部COREについては、絞り孔9の長さは5.3mm、絞り孔9の内径Dはφ2.1〜φ8.0mm種々の値に設定した。ねじ部材の配置は図4に示す形態(表8〜表11)及び図13に示す形態(表6、7:ただし、液体流通ギャップは形成せず)とした。ねじ部材はいずれも、ねじ外径M1.0〜M2.0、ねじ谷深さを0.25〜0.4mmの種々の寸法のものを使用した。そして、絞り孔内径Dとの組み合わせにより、全流通断面積Stを1,23〜40.27mmの種々の値とした。全流通断面積Stは、図5及び図14のような絞り孔内のねじレイアウトを示す投影画像上でのピクセル数に基づいて算定し、同画像上で谷点を基準円の内外に分けて計数した。この全谷点数をNt、基準円内側の70%谷点数をN70とする。
以上の各ノズルの全流通断面積St、液体流通ギャップ断面積Sc、70%断面積S70(全流通断面積Stのうち、基準円C70の内側に位置する部分)、70%断面比率σ70(≡S70/St)、前述の(1)式に基づくねじ谷深さ補正係数α、補正済全谷点数(α・Nt)、補正済70%谷点数(α・N70及びα・(σ70/50)・N70)、補正済70%補谷点数(≡α・(Nt−N70)・0.38=α・0.38Nc70))及び有効谷点数Ne(≡α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70))の値を表1〜表6にまとめて示している。
Figure 0006596625
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上記ノズルを用いて、以下の各試験を行った。
(1)一定送液圧での流量の測定
市販キャノーラ油(酸価:0.4、溶存酸素濃度6ppm)を収容した元タンクから引き出される配管上に送液用ベーンポンプを取り付け、出口側の配管を、三方弁を介して2つに分岐させた。そのうちの一方を元タンク側に戻す一方、他方を流量測定側配管としてノズルの流入口側に接続し、かつ、そのノズルの入口側に圧力計を取り付けた。そして、その状態で送液用ポンプを駆動するとともに、圧力計の指示圧(ノズルへの送液圧)が0.1MPaとなるように三方弁の開きを調整し、ノズルの流出口から流出するオイルの流量(Q0.1:L/min)を測定した。その結果を、前述の有効谷点数Neを該流量Qで除した値Ne/Qの値とともに表1〜表6に合わせて記載している。
(2)平均気泡径の測定
採取後10分を経過したガス添加済みオイルの平均気泡径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD7100H)にて測定した。
(4)水素ガス添加テスト
図1に示す装置500に上記種々のノズルを組み込み、タンク501に市販キャノーラオイル(酸価:1.0、溶存酸素濃度6ppm)を3L入れ、ノズル1とポンプ505との間で測定した供給圧が0.1MPaとなるようにポンプ循環流量を調整した。この状態で水素ガスを、供給圧力0.3MPa、水素ガス流量が常圧換算にてオイル循環流量の5%となるように調整しつつ供給し、オイルの循環パス数(タンク内の全てのオイルがポンプを通る回数)が15となるように循環継続して水素ガス添加を行なった。こうして得られたオイルの含有水素量(推定全水素量)を実施例1と同様に算出した。
以上の結果を表1〜表6にまとめて示す。
上記の結果から、有効谷点密度Neが大きいノズルほど、水素添加の場合の含有水素量(推定全水素量)が高ことがわかる。
1,171 処理ノズル
2 ノズル本体
O 中心軸線
3 液体流路
4 液体入口
5 液体出口
6 流入室
7 流出室
8 隔壁部
9 絞り孔
10 衝突部(ねじ部材)
CORE 処理コア部
11 山部
12 谷部
15 液体流通ギャップ
500,550 食用油の製造装置
502 食用油

Claims (12)

  1. 処理ノズルとして、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されるとともに、前記液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、前記隔壁部に貫通形成され前記流入室と前記流出室とを互いに別経路にて連通させる前記液体流路の一部をなす複数の絞り孔とを備えたノズル本体と、前記絞り孔の内面から突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えたものを使用し、
    酸素が溶存した食用油と、水素ガス、又は水素ガス及び不活性ガスからなり、水素ガスの含有率が20体積%以上100体積%以下である酸化抑制ガスとの混相流を前記処理ノズルの前記衝突部に供給し、前記酸化抑制ガスを微細気泡に粉砕しつつ前記液体出口から流出させることにより、前記水素ガスを前記食用油に、室温状態の処理後の前記食用油150ccと精製水100ccとを内容積300ccの水素非透過性容器に密閉して混合・撹拌した後、水相と油相と容器内残部空間とが溶解平衡に到達するまで静置し、その後油相の下側に分離した水相の溶存水素濃度をポーラログラフ式溶存水素計で測定したときの値をCw(質量ppm)として、CH=24.3×Cw(質量ppm)として推定される処理後の前記食用油中のガス状水素の含有量が1質量ppm以上20質量ppm以下となるように溶存させ、処理後の食用油の溶存酸素濃度が2質量ppm以下とされることを特徴とする食用油の製造方法。
  2. 処理対象の食用油として酸価1.0以下のものが使用される請求項記載の食用油の製造方法。
  3. 室温状態の処理後の前記食用油150ccと精製水100ccとを内容積300ccの水素非透過性容器に密閉して混合・撹拌した後、水相と油相と容器内残部空間とが溶解平衡に到達するまで静置し、その後油相の下側に分離した水相の溶存水素濃度をポーラログラフ式溶存水素計で測定したときの値をCw(質量ppm)として、CH=24.3×Cw(質量ppm)として推定される処理後の前記食用油中のガス状水素の含有量が3質量ppm以上20質量ppm以下である請求項1又は請求項2に記載の食用油の製造方法。
  4. 前記食用油と前記酸化抑制ガスとの混相流を前記処理ノズルに対し、ポンプを用いて循環供給する請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の食用油の製造方法。
  5. 前記食用油に対する前記酸化抑制ガスの添加を継続しつつ前記混相流の前記処理ノズルに対する循環供給を継続する請求項記載の食用油の製造方法。
  6. 前記酸化抑制ガスの添加を中断した状態で前記混相流の前記処理ノズルに対する循環供給を継続する請求項に記載の食用油の製造方法。
  7. 前記食用油と前記酸化抑制ガスとの混相流を前記処理ノズルに対し1パス供給する請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の食用油の製造方法。
  8. 前記処理ノズルに対し前記食用油を該処理ノズルの上流側に配置されたポンプにより送液するとともに、前記酸化抑制ガスを前記ポンプの吸入口側で添加して前記食用油と前記酸化抑制ガスとを前記ポンプ内にて予備撹拌混合することにより前記混相流となし、前記処理ノズルに流入させる請求項ないし請求項のいずれか1項に記載の食用油の製造方法。
  9. 前記酸化抑制ガスは前記処理ノズルの上流に設けられた気液混合ノズルにて供給される請求項ないし請求項のいずれか1項に記載の食用油の製造方法。
  10. 前記酸化抑制ガスは前記処理ノズルのノズル本体の壁部を貫通するガス導入孔を介して前記処理コア部に供給される請求項ないし請求項のいずれか1項に記載の食用油の製造方法。
  11. 前記処理ノズルとして、前記液体流路の中心軸線と直交する平面への投影において、前記処理コア部における前記液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積をS1、前記衝突部の投影領域面積をS2として、前記処理コア部の全流通断面積Stを、
    St=S1−S2 (単位:mm
    として定義したとき、前記液体入口及び前記液体出口の断面積が前記全流通断面積Stよりも大きく設定されるとともに、
    前記谷部の最底位置を表す谷点のうち、前記中心軸線の投影点を中心として前記液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた基準円の内側に位置するものの数をN70(個)、前記基準円の外側に位置するものの数をNc70(個)とし、谷深さ補正係数αを
    h≧0.35mmのときα=1、
    h<0.35mmのとき、α=−60h+41h−6
    として定め、前記衝突部の投影外形線に現れる前記谷部の深さhを0.2mm以上確保するとともに、
    前記投影にて前記全流通断面積の領域のうち前記基準円の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm)として、70%断面比率σ70を、
    σ70=S70/St×100(%)
    として定め、有効谷点数Neを
    Ne=α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70
    として定義したとき、Ne/Stで表される有効谷点密度が1.5個/mm以上確保されてなり、前記液体流路の内径Dが2.5mm以上6mm以下、全流通断面積が2.5mm以上20mm以下に設定されたものが使用される請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の食用油の製造方法。
  12. 請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の食用油の製造方法に使用され、
    一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されるとともに、前記液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、前記隔壁部に貫通形成され前記流入室と前記流出室とを互いに別経路にて連通させる前記液体流路の一部をなす複数の絞り孔とを備えたノズル本体と、前記絞り孔の内面から突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えた処理ノズルと、前記処理ノズルの前記衝突部に、酸素が溶存した食用油と、水素ガス、又は水素ガス及び不活性ガスからなり、水素ガスの含有率が20体積%以上100体積%以下である酸化抑制ガスとの混相流を供給する混相流供給手段と、を備え、前記酸化抑制ガスを前記食用油に、室温状態の処理後の前記食用油150ccと精製水100ccとを内容積300ccの水素非透過性容器に密閉して混合・撹拌した後、水相と油相と容器内残部空間とが溶解平衡に到達するまで静置し、その後油相の下側に分離した水相の溶存水素濃度をポーラログラフ式溶存水素計で測定したときの値をCw(質量ppm)として、CH=24.3×Cw(質量ppm)として推定される処理後の前記食用油中のガス状水素の含有量が1質量ppm以上20質量ppm以下となるように溶存させ、処理後の食用油の溶存酸素濃度が2質量ppm以下とされた状態で前記液体出口から流出させるようにしたことを特徴とする食用油の製造装置。
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