JP7067786B2 - 連続乳化装置 - Google Patents
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Description
これに対し、バターやマーガリンは、水滴が油の中に分散したエマルション(W/O)の例であり、モノグリセリドや大豆レシチンといった乳化剤(界面活性物質)の作用により、油中での水滴の分散が維持されている。
このように、エマルションは、乳化剤(界面活性物質)の助けを借りて、油滴が水中で分散したり、水滴が油中で分散したりしたものである。
本発明は、水と油を連続的に供給しながら超音波を利用してエマルションを作製することを可能にする連続乳化装置を提供することを目的とする。
また、前記流通セルは、該流通セルの底面の全面が、前記超音波発生部に対向するように設けられていることにより、流通セル内を通過する被処理液に効果的に超音波が作用し、エマルション化を促進させることができる。
また、前記流通セルの側面の底部側に被処理液の流入側の配管が接続され、上部側に送出側の配管が接続されていることにより、流通セル内における被処理液の滞留時間を確保し、被処理液に対して効果的に超音波を作用させることができる。
また、前記連続乳化装置が、直列に複数個、相互に連通して接続され、水と油の被処理液が各々の連続乳化装置を順次、段階的に経由してエマルション化されることにより、さらに効率的に水と油をエマルション化することができる。
本発明に係る連続乳化装置について説明する前に、超音波を利用するバッチ式処理による乳化装置を使用して水と油からエマルションを作製した例について説明する。以下では、4種類の乳化装置を利用してエマルションを作製し、乳化装置の乳化性能(乳化に要する時間、最小平均油滴径)、エマルションの分散安定性を評価した実験について説明する。
乳化装置I:バス型超音波ホモジナイザー 周波数28kHz 出力300W
乳化装置II:ホーン型超音波ホモジナイザー 周波数19.5kHz 出力600W
乳化装置III:ローター式ホモジナイザー 15000rpm
乳化装置IV:超音波洗浄機 周波数42kHz 出力26W
エマルションを調製する被処理液は、分散質としてドデカンを用い、分散媒を純水とし、処理量250mL(ドデカンの濃度0.4vol%)を処理対象とした。この被処理液を三角フラスコに入れ、それぞれの乳化装置を用いて乳化した。
バス型超音波ホモジナイザーを用いる超音波処理は、バス内に所定量の水を入れ、バスの底部の超音波発生部の上に、被処理液(水と油)を入れた三角フラスコをのせ、超音波を照射することによって行う。
乳化装置I、II、IIIについては、0.5分経過時に、すでに混合液が白濁しはじめ、エマルション化が進んでいるのに対して、乳化装置IVについては、0.5分経過後、1分経過後でも透明であり、15分経過時でも白濁の程度は他の乳化装置と比べて劣っている。
エマルションの濁度が90%まで上昇するまでに要した時間は次の通りである。
乳化装置I:5分
乳化装置II:3分
乳化装置III:1分
乳化装置IV:未到達
この実験結果は、エマルションの濁度から判断すると、乳化装置II、乳化装置IIIが有効であるといえる。
乳化装置I:最小粒子径 0.3μm 到達時間10分
乳化装置II:最小粒子径 1.1μm 到達時間1分
乳化装置III:最小粒子径 6.2μm 到達時間10分
乳化装置IV:最小粒子径 4.3μm 到達時間5分
油滴の粒子径についての測定結果は、乳化装置Iでは、時間経過とともに徐々に粒子径が小さくなり、4種の乳化装置のうち油滴の粒子径が最も小さくなった。一方、エマルションの濁度が90%に到達するまでの時間が乳化装置Iよりも短時間であった乳化装置III(ローター式ホモジナイザー)では、乳化装置Iと比べて粒子径が小さくない。
乳化装置I:濁度が50%になるまで 4日
乳化装置II:濁度が50%になるまで 4日
乳化装置III:濁度が50%になるまで 1日
乳化装置IV:濁度が50%になるまで 1日
図4、5に示す測定結果は、乳化装置I、乳化装置IIを用いて乳化処理したエマルションは、他の乳化装置を使用した場合と比較して分散安定性に優れることを示す。これらの乳化装置を用いると、界面活性剤をまったく使用することなく安定的なエマルションが得られる。とくに乳化装置Iを用いて得られるエマルションは、粒子径が0.3μmの油滴が水中に分散したものとなり、微細な油滴がエマルション中に分散することで、エマルションが安定化したものと考えられる。
図6は上記油についてエマルションを作製した後、40日経過後までのエマルションの経過状態を示している。図6に示す実験結果は、上述したいずれの油についても、エマルションを調製して40日経過後でもエマルションの分散性が保持されており、これらの油については、超音波処理により界面活性剤を使わずにきわめて分散性の高いエマルションが得られることを示す。
次に、本発明に係る連続乳化装置を用いてエマルションを調製した例について説明する。
図7に本発明に係る連続乳化装置の構成例を示す。図7に示す連続乳化装置はバス型の超音波照射機10と、超音波照射機10のバス12内にセットする、被処理液(水と油)の流通セル20とを備える。流通セル20は配管21を介して被処理液を供給する供給側の貯留部30に連通し、配管22を介して、流通セル20から送出される被処理液を収容する貯留部40と連通する。貯留部30と流通セル20とを連通する配管21の中途には、貯留部30から流通セル20に被処理液を供給し、流通セル20から貯留部40に被処理液を送出する送液手段としてポンプ50が設けられる。ポンプ50は供給用の貯留部30から収容側の貯留部40に被処理液を送液する作用を備えるもので、その配置位置及び配置数が図示例の構成に限定されるものではない。
流通セル20を設計する場合は、流通セル20の底面の全面が超音波照射機10の超音波発生部の平面領域内に含まれるように設定するのがよい。流通セル20の底部の全面が超音波発生部に対向するように配置することにより、流通セル20内を流通する被処理液に効果的に超音波を作用させることができる。
図8は、流通セルを超音波照射装置のバスにセットした状態を示す写真である。
なお、流通セル20を用いた連続乳化処理では、ローター式ホモジナイザーを使用してあらかじめ予備乳化処理を行い、予備乳化処理したエマルションを図7の連続乳化装置で使用する被処理液とした。
ローター式ホモジナイザーを用いる予備乳化は、15000rpmで7分間処理したものである。処理液は、ドデカン:1.0mL、水:250mLからなる。図9に、ローター式ホモジナイザーによる予備処理によって得られたエマルションの油滴の粒子径分布を示す。ドデカンの粒子のメジアン径は約10μmである。
図11は各回の処理後に測定した油滴のメジアン径を示す。
本実験結果は、流通セル20に連続的に被処理液を供給しながら超音波を照射する処理方法(連続乳化処理)によって、バッチ式処理と同等の性状(油滴径)を有するエマルションが得られることを示している。
図12は異なる流速を設定して繰り返し(5回)乳化処理を行い、各回ごとに、油滴径がどのように変化するか測定した結果を示す。図13は、連続乳化処理を5回行った後の油滴径を、流速ごとに示したものである。
図12、13に示す測定結果は、流速が速い場合には、流速が遅い場合と比較して送液後の油滴の粒子径が大きくなることを示す。これは流速が速いと流通セル20に被処理液が滞留している時間が短くなり、超音波の作用を受ける時間が短くなることで超音波による乳化作用が減退するためと考えられる。したがって、連続乳化処理の場合には、被処理液の流速を的確に設定して、効果的かつ効率的な連続乳化を可能にする必要がある。
図14は、連続乳化処理とバッチ式処理によって作成したエマルションを静置して、エマルションの状態を経過観察したもの、図15はエマルションの濁度を経過測定した結果を示す。
図15のグラフで濁度が初期状態から50%まで減少した日数を比較すると、連続乳化処理では5日、バッチ式処理では4日となり、連続乳化処理の場合もバッチ式処理による場合と同等のエマルション分散安定性が得られたことを示す。
また、上記実験例では、供給側の貯留部30から流通セル20を介して収容側の貯留部40へ被処理液を全量送液する操作を1回のパスとして、複数回パス操作を行ったが、この方法とは別に、流通セルを備える連続乳化装置を、複数台、直列に連通させた多段構成の連続乳化装置とし、各連続乳化装置を連続して被処理液を通過させる設定とすることで、多段の連続乳化処理を一連の操作として行うことができる。
12 バス
20 流通セル
20a 陥没部
21、22 配管
30 貯留部
40 貯留部
50 ポンプ
Claims (4)
- バスと当該バスの底部に超音波発振素子が内蔵された超音波発生部とを備え、前記バスに入れた水を介して超音波を照射する超音波照射機と、
前記超音波発生部の直上位置にセットされる流通セルと、
水と油の被処理液を連続的に前記流通セルに送入するとともに処理後の被処理液を前記流通セルから送出させる送液手段とを備え、
前記流通セルは上面の中央部に円形に陥没した陥没部を備え、当該陥没部の底部は前記流通セルの底面から離間していることを特徴とする水と油の連続乳化装置。 - 前記流通セルは、該流通セルの底面の全面が、前記超音波発生部に対向するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の連続乳化装置。
- 前記流通セルの側面の底部側に被処理液の流入側の配管が接続され、上部側に送出側の配管が接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の連続乳化装置。
- 請求項1~3のいずれか一項記載の連続乳化装置が、直列に複数個、相互に連通して接続され、水と油の被処理液が各々の連続乳化装置を順次、段階的に経由してエマルション化されることを特徴とする連続乳化装置。
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