[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、図1〜25を参照しつつ説明する。本例のステアリング装置は、ステアリングホイール1と、ステアリングシャフト2aと、ステアリングコラム4aと、締め付け機構80と、操舵力補助装置(アシスト装置、電動式パワーステアリング装置)5aと、ステアリングギヤユニット7とを備える。
ステアリングシャフト2aは、比較的前方に配されるインナシャフト8aと、比較的後方に配されるアウタシャフト9aとを有する。ここで「前後方向」は、ステアリング装置が設置される車体の前後方向に相当するものとする。
ステアリングコラム4aは、車体15aに支持されている。例えば、ステアリングコラム4aは、円筒形状を有する。代替的に、ステアリングコラム4aは、円筒形状以外の形状を有することができる。ステアリングコラム4aは、ステアリングシャフト2aの少なくとも一部を内包する。ステアリングコラム4aの内側に、ステアリングシャフト2aが挿通されている。ステアリングコラム4aの内径側にステアリングシャフト2aが、図示しない複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト2aの一部は、ステアリングコラム4aの後端開口よりも後方に突出して配されている。ステアリングシャフト2aの後端部分に、ステアリングホイール1が固定されている。
ステアリングコラム4aの前端部近傍に、補助力付与の為の動力源となる電動モータ32a(アシスト装置5a)が配置されている。電動モータ32aは、ステアリングコラム4aの前端部に固定されたギヤハウジング12aに支持されている。インナシャフト8aの一部は、ギヤハウジング12a内に挿入されている。インナシャフト8aの前端部が、操舵力補助装置5aにおける所定軸に結合されている。例えば、操舵力補助装置5aにおいて、所定軸にトーションバー等を介して連結された軸がギヤハウジング12の前端面から突出している。電動モータ32aの出力トルク(補助力)が、ギヤハウジング12a内に設けられた減速機を介して、ステアリングシャフト2aに付与される。ギヤハウジング12aは、ロアブラケット14aを介して、車体15aに支持固定されている。
本例において、ステアリング装置は、運転者の体格や運転姿勢に応じて、ステアリングホイール1の上下位置を調節する為のチルト機構(位置調節機構の一例)、及び、ステアリングホイール1の前後位置を調節する為のテレスコピック機構(位置調節機構の一例)、の両方を備えている。代替的に、ステアリング装置は、チルト機構及びテレスコピック機構の1つを備え、他の1つを備えないようにできる。
テレスコピック機構に関して、インナシャフト8aとアウタシャフト9aとは、回転力を伝達可能に、且つ、軸方向に関する相対変位可能に組み合わされている。例えば、ステアリングシャフト2aは、スプライン係合構造を有する。インナシャフト8aとアウタシャフト9aとが軸方向に相対変位する(ステアリングシャフト2aが伸縮する)ことでステアリングホイール1の前後位置の調節が可能である。また、強い衝撃を受けた場合にも、上記相対変位により、ステアリングシャフト2aの全長が縮まることができる。ステアリングコラム4aは、比較的前方に配置されるインナコラム10aと、比較的後方に配置されるアウタコラム11aとを有する。インナコラム10aは、その一部がアウタコラム11aに挿入され、インナコラム10aがアウタコラム11aに対して軸方向に相対移動可能となるように配されている。インナコラム10aの一部がアウタコラム9aに囲まれている。インナコラム10aとアウタコラム11aとの軸方向の相対位置(アウタコラム11aに対するインナコラム10aの挿入長さ)が変化することにより、ステアリングコラム4aの全長が変化する。換言すると、ステアリングコラム4aを、前方に配置したインナコラム10aの後端部に、後方に配置したアウタコラム11aの前端部を、軸方向に関する相対変位を可能に緩く嵌合して、全長を伸縮可能にしている。ステアリングコラム4aは、アッパブラケット(支持ブラケット)17aにより、車体15aに支持されている。アウタコラム11aは、アッパブラケット17aに対し、前後方向に移動可能に支持されている。支持ブラケット17aは、強い衝撃を受けた場合に、離脱(脱落)できる様に、係止カプセル18aを介して、車体15aに支持されている。ここで、特記が無い場合、「軸方向」は、ステアリングシャフト2aの軸方向又はアウタコラム11aの軸方向に相当するものとする。
チルト機構に関し、インナコラム10aの一端は、ロアブラケット14aにより、ギヤハウジング12aを介して、車体15aに支持されている。ロアブラケット14aは、幅方向に沿って(幅方向に実質的平行に)配置されたチルト軸16aを中心として、ギヤハウジング12aを揺動自在に支持している。ステアリングコラム4aが車体15aに対して、幅方向に設置したチルト軸16aを中心とする揺動変位を可能に支持されている。アウタコラム11aは、アッパブラケット17aに対し、上下方向に移動可能に支持されている。ここで、特記が無い場合、「幅方向」はステアリング装置が設置される車体の幅方向に相当するものとする。また、「上下方向」はステアリング装置が設置される車体の上下方向に相当するものとする。
本例のステアリング装置の基本的な構成は、以上の通りである。次に、アウタコラム11a及びその周辺部分の構成に就いて詳しく説明する。
本例において、アウタコラム11aは、アルミニウム系合金、マグネシウム系合金等の軽合金製の枠体(本体部分、被挟持部本体)34と、炭素鋼板等の鉄系合金製の筒体(円筒状部材)35とを軸方向に結合する事により構成されている。代替的に、アウタコラム11aは、アルミニウム系合金、マグネシウム系合金等の軽合金製とされ、前半部に配置された枠体(本体部分、被挟持部本体)34と後半部に配置された筒体(円筒状部材)35とが軸方向に並べられかつ一体的に結合された構成を有することができる。代替的及び/又は追加的に、アウタコラム11aは、別の材料及び/又は別の構成を有することができる。枠体34は、アッパブラケット17aに対して、前後方向及び上下方向に移動可能に支持されている。枠体34の下面に、軸方向に伸長した軸方向スリット36(第1スリット部)が形成されている。軸方向スリット36の前端部は、枠体34の前端面で開口している。さらに、枠体34の下半部において、前端寄り部分及び後端寄り部分に、それぞれ周方向に伸長した周方向スリット37a、37bが形成されている。前方側の周方向スリット37aは、軸方向スリット36の前端寄り部分を周方向に交差する状態で形成されている。後方側の周方向スリット37bは、軸方向スリット36の後端部を周方向に交差する状態で形成されている。枠体34の幅方向両側において、軸方向スリット36と周方向スリット37aと、周方向スリット37bとにより三方を囲まれた、クランプ部38が形成されている。
各クランプ部38、38において、軸方向スリット36及び周方向スリット37a、37bにより3つの側が連続的に開放されており、残りの1つの側が枠体34とつながっている。すなわち、クランプ部38において、少なくとも、軸方向に沿って離間して並ぶ2つの側と、軸方向と交差する第1方向(第1交差方向。本例では概ね上下方向)における1つの側とに、連続する非固定端が形成されている。また、クランプ部38において、第1方向における他の1つの側が固定端である。換言すると、クランプ部38は、軸方向に延在する固定端を有する片持ち梁構造を有する。クランプ部38は、枠体34の他の部分に比べて、少なくとも幅方向に関する剛性が低く、幅方向に弾性変形可能(内径を弾性的に拡縮可能)である。例えば、各クランプ部38、38は、部分円筒面状の内周面を有する。クランプ部38、38は、軸方向スリット36の周方向両側に隣接して設けられている。クランプ部38、38は、軸方向及び周方向(又は第1方向)に伸長した形状を有している。各クランプ部38、38の幅方向外側面のうち、第1方向(本例では概ね上下方向)の中間部には、幅方向に突出する状態で、平板状の張出板部(張出部)39、39が設けられている。各クランプ部38、38の幅方向外側面の下端部(張出板部39、39よりも下方部分)には、締め付け機構80の締め付け力を受ける作用面(第3面、第3作用面、押圧面)40、40が形成されている。例えば、作用面40は、平坦面状を有する。追加的に及び/又は代替的に、作用面40は、平坦状以外の形状を有することができる。なお、本例において、第1方向は、車体の幅方向と交差するとともに、軸方向に対して直交する。あるいは、第1方向は、アウタコラム11aの周方向に相当できる。代替的に、第1方向は、軸方向に対して直交とは異なる状態で交差する方向にできる。第2方向は、軸方向及び第1方向に交差する方向とする。締め付け機構80の実質的な締め付け方向が第2方向と一致してもよい。本例では、第2方向は、概ね車体の幅方向に一致する。代替的及び/又は追加的に、第2方向は、車体の幅方向以外の方向を含むことができる。
アウタコラム11aは、第2方向(本例では概ね車体の幅方向)におけるアウタコラム11aの両側の間でブリッジされる補強ブリッジ部(補強部、補強構造、補強部材)41を有する。補強ブリッジ部41は、第2方向におけるアウタコラム11aの両側の間で実質的に連続的に延在し、第2方向におけるアウタコラム11aの両側の間を物理的につなぐように設けられている。本例において、枠体34の下方部分に、クランプ部38、38を下方から覆うように、補強ブリッジ部41が設けられている。補強ブリッジ部41は、アウタコラム11aと一体的に設けられている。補強ブリッジ部41は、補強板部42と、1対の連結部43a、43bとを有する。補強ブリッジ部41は、幅方向から見た形状が略U字形(コ字形)を有する。補強板部42は、クランプ部38、38の下方に配置されており、幅方向及び前後方向に伸長する状態で設けられている。補強板部42は、幅方向中央に配置された平板部(中央平板部)44と、幅方向両側で且つ平板部44よりも下方に配置された外側平板部(下方延出部)45、45部分とを有する。平板部44と外側平板部45とは、段差部46を介して連続的に設けられている。補強ブリッジ部41は、クランク形状の断面を有する。
本例において、比較的前方に配置された連結部43aは、補強板部42の前端部の幅方向両側部分(外側平板部45、45)から上方に伸長するように設けられている。連結部43aは、枠体34の前端部下面のうち、周方向スリット37aの前側に隣接した部分で、且つ、軸方向スリット36を挟んだ周方向両側部分に連結している。後方側に配置された連結部43bは、補強板部42の後端部から上方に伸長する状態で設けられている。連結部43bは、枠体34の後端部下面のうち、軸方向スリット36の後端部の後側に隣接した部分に連結している。代替的及び/又は追加的に、補強ブリッジ部41は、上記とは異なる構成を有することができる。
本例において、アウタコラム11aは、上述の様な補強ブリッジ部41を備える事で、高い捩り剛性を有する。補強ブリッジ部41と各クランプ部38、38との間には、幅方向(第2方向)から見た形状が略U字形(略コ字形)の隙間(スリット)47、47が形成されている。各隙間47、47は、少なくとも軸方向(アウタコラム11aの軸方向、ステアリングシャフト2aの軸方向)に延びるテレスコ調節用長孔(第一通孔、軸方向スリット、第1スリット部)21a、21aと、長孔21a、21aに連続して設けられ、長孔21a、21aと交差する方向に延びる周方向スリット(第2スリット部)37a、37bとを有する。クランプ部38、38は、長孔21a、21aに隣接して設けられる。長孔21a、21aは、各クランプ部38、38の先端部(下端部)と、補強板部42における平板部44の幅方向両側部分の上面との間に存在する空間を形成する。長孔21a、21aには、調節ロッド24aが幅方向(第2方向)に挿通される。
アウタコラム11aの幅方向両側部分には、長孔21a、21aの軸方向に沿って、ローラ走行用凹溝48、48が設けられている。凹溝48、48は、長孔21a、21aの幅方向外側部分に設けられる。凹溝48、48は、各クランプ部38、38に設けられた張出板部39、39の下面と、補強板部42の外側平板部45、45の上面と、各クランプ部38、38の先端部の幅方向外側面(作用面40、40)及び補強板部42の段差部46、46の幅方向外側面とにより三方を囲まれている。換言すると、凹溝48、48は、第1側壁面としての張出板部39、39の下面と、第2側壁面としての外側平板部45、45の上面と、第1底面としてのクランプ部38、38の作用面40、40と、第2底面としての段差部46、46の外側面とを有する。
アウタコラム11aは、幅方向の2つの側の各々に設けられた、作用面(第1面、第1作用面、第1当接面、トルク伝達面)49aと、作用面(第2面、第2作用面、第2当接面、トルク伝達面)49bとを有する。作用面49aと作用面49bとは、軸方向(アウタコラム11aの軸方向、ステアリングシャフト2aの軸方向)と交差する方向である第1方向(第1交差方向)に互いに離間して配される。また、第1方向において、作用面49aと作用面49bとの間にクランプ部38(及び作用面40)が配される。本例において、調節ロッド24aは、第1方向における作用面49aと作用面49bとの間に配され、クランプ部38の作用面40は、第1方向における作用面49aと調節ロッド24aとの間に配される。また、軸方向スリット36(長孔21a)は、第1方向における作用面49aと作用面49bとの間に配される。本例において、アウタコラム11aに作用するトルク(捩り方向の力)は、作用面49a及び作用面49bを介して、アッパブラケット17aにおける支持板部22a、22aの内側面に伝達され得る。
本例において、作用面49aは、第1方向におけるインナコラム10aの外形の範囲内に配される。作用面49bは、第1方向におけるインナコラム10aの外形の範囲外に配される。さらには、作用面49bは、アウタコラム11aの筒体35の外形の範囲外に配される。また、第1方向において、作用面49aはインナコラム10aの中心軸の比較的近傍に配され、作用面49bはインナコラム10aの中心軸から比較的離れて配される。アウタコラム11a(枠体34)の幅方向両側には、第1方向(又は上下方向)に関してアウタコラム11aの中心軸の近傍に位置する部分に、幅方向(第2方向)外方に突出するように突条部50、50が設けられている。突条部50は、アウタコラム11aの軸方向に延在して設けられている。突条部50、50の先端(幅方向外側面)に、作用面49a、49aが設けられている。本例において、突条部50、50の前後方向両側部分(前部と後部と)に、それぞれが幅方向に凹んだ凹部51a、51bが設けられている。作用面49a、49aは、軸方向に伸長した2つの直線部を、前後両端部及び中間部でそれぞれ連結した如き形状を有している。一方、下方側の作用面49bは、補強板部42(外側平板部45、45)の先端(幅方向側面)に設けられている。作用面49a、49bは何れも、アウタコラム11aの軸方向に伸長した形状を有しており、クランプ部38に比べて軸方向において大きい長さを有する。例えば、作用面49a及び作用面49bはそれぞれ、平坦面状を有する。追加的に及び/又は代替的に、作用面49a及び作用面49bは、平坦状以外の形状を有することができる。作用面49a、49bは、クランプ部38、38に比べて、幅方向(第2方向)に関する高い剛性を有する。
補強ブリッジ部41における連結部43a、43bの上端部は、突条部50、50の前後方向両端部にそれぞれ連続的につながっている。作用面49a、49bの前後方向両端部同士は、連結部43a、43bの幅方向側面に形成された、上下方向に伸長する連続面(例えば連続平坦面)52a、52bにより互いに連続的につながっている。作用面49a、49b及び連続面52a、52bが、略矩形枠状に形成されている。本例において、作用面49a、49b及び連続面52a、52bは、同一仮想平面上に位置しており、また、張出板部39、39の幅方向端面よりも僅かに幅方向外側に位置している。
アウタコラム11a(枠体34)の前端部内周面には、周方向に伸長した係止凹溝53が形成されている。例えば、係止凹溝53及び軸方向スリット36内に、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ四フッ化エチレン樹脂等の摺動性に優れた合成樹脂製で、全体を略C字形に構成された、摺動部材54が取り付けられている。代替的及び/又は追加的に、摺動部材54は、別の材料及び/又は別の構成を有することができる。摺動部材54は、摺動部本体55と、摺動部本体55の幅方向両側からそれぞれ延出した、部分円弧形状の1対の支持腕部56、56とを有する。摺動部本体55が軸方向スリット36内に配置されている。支持腕部56、56が係止凹溝53内に配置されている。摺動部材54が装着された状態において、摺動部本体55の上面は、枠体34の内周面と同一仮想円筒面上に位置するか、又は径方向内方に僅かに突出した状態になる。摺動部本体55には、軸方向に凹んだ1対の凹部57、57が形成されている。2つの凹部57、57は、幅方向(円周方向)に互いに隣接して配されている。摺動部本体55は、上下方向に関する剛性が比較的低く設定されている。
尚、本例において、アウタコラム11aの特に基本構成に就いて、別の観点から見た場合の簡単な説明を加えておく。本例のアウタコラム11aには、軸方向スリット36を幅方向両側から挟む状態で、1対の被挟持板部がアウタコラム11aと一体的に設けられており、両被挟持板部の先端部(下端部)同士を(補強板部42相当部分により)幅方向に連結している。又、両被挟持板部の幅方向外側面を、それぞれ略平坦面状の締付面としている。各締付面のほぼ中央位置に、アウタコラム11aの内周面にまで連通する、略U字形の隙間(スリット)47、47を形成し、この隙間47、47により囲まれた部分を、各クランプ部38、38としている。又、各締結面の上辺及び下辺を、それぞれ作用面49a、49bとしている。
図1及び図2に示すように、アッパブラケット(支持ブラケット)17aは、例えば、鋼やアルミニウム系合金等の十分な剛性を有する金属板製からなる。アッパブラケット17aは、取付板部58と、1対の支持板部22a、22aとを有する。例えば、取付板部58は、断面略L字形を有する。代替的及び/又は追加的に、取付板部58は別の材料及び/又は別の形状を有することができる。取付板部58は、通常時には車体15aに対し支持されている。二次衝突等の衝撃に基づいて取付板部58が前方に離脱し、アウタコラム11aの前方への変位を許容する様に、取付板部58が構成されている。取付板部58の後端縁には、開口する状態で、1対の係止切り欠き59、59が形成されている。係止切り欠き59、59に、ボルト又はスタッド等の固定部材により車体15aに固定された係止カプセル18a、18aが係止されている。係止カプセル18a、18aは、それぞれの左右両側面に係止切り欠き59、59の左右両側縁部を係合させる為の係止溝60、60が形成され、中央部に両固定部材を挿通させる為の通孔61、61が形成されている。
支持板部22a、22aは、取付板部55から垂下するように設けられている。また、支持板部22a、22aは、アウタコラム11aの前端部(枠体34及び補強ブリッジ部41)を幅方向両側から挟む状態で互いに平行になるように、設けられている。一対の支持板部22a、22aは、幅方向(第2方向)におけるアウタコラム11aの両側に配される。支持板部22a、22aには、少なくとも上下方向(第1方向)に延在するチルト調節用長孔(第二通孔)23a、23aが形成されている。、長孔23a、23aは、幅方向に関して対向する位置(互いに整合する位置)に設けられている。また、長孔23a、23aは、テレスコ調節用長孔21a、21aの前後方向の一部と整合するように設けられている。長孔23a、23aは、上下方向(第1方向)沿った長軸を有する。に支持板部22a、22aは、締め付け機構80を用いてアウタコラム11a(ステアリングコラム4a)を締め付け可能に配される。締め付け機構80は、調節ロッド24a、調節ナット25、及び調節レバー26a等を有する。テレスコ調節用長孔21a、21aとチルト調節用長孔23a、23aとに、調節ロッド24aが幅方向に挿通されている。
調節ロッド24aは、幅方向(調節ロッド24aの軸方向、第2方向)において、一端部に配置されたアンカ部27aと、他端部に形成された雄ねじ部と、中間部に形成された軸部62とを備えている。本例において、軸部62に、幅方向に離隔した状態で、1対のローラ63、63が回転可能に支持されている。ローラ63、63はそれぞれ、例えば、金属製のローラ本体64、64と、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(PTFE)等の合成樹脂製又はゴム製等の弾性材製のカラー65、65とから構成されている。代替的及び/又は追加的に、ローラ63、63は、別の材料及び/又は別の構成を有することができる。各ローラ本体64、64は、図18〜20に示す様に、略円筒状を有する。ローラ本体64、64の中央部に軸部62を挿通可能な貫通孔66、66が形成されている。ローラ本体64、64の外周面の幅方向端部に外向フランジ状の鍔部67、67が形成されている。ローラ本体64、64の径方向中間部には、円周方向等間隔複数個所(図示の例では4個所)に、それぞれが幅方向に凹んだ、断面略円弧状の除肉部68、68が形成されている。カラー65、65は、図21〜23に示す様に、円筒状を有する。カラー65、65の厚さ寸法は、鍔部67、67の径方向に関する高さ寸法よりも大きい。本例のローラ63、63において、ローラ本体64、64の外周面のうち、鍔部67、67から幅方向に外れた部分にカラー65、65が圧入(外嵌)されている。代替的に、1対のローラを幅方向に連続した如き幅方向に長い1本のローラを使用する事もできる、又は、ローラ全体を合成樹脂製又はゴム製とする事もできる。
各テレスコ調節用長孔21a、21a及び各チルト調節用長孔23a、23aに調節ロッド24aが挿通されかつ、ローラ63、63がローラ走行用凹溝48、48内に配置された状態において、ローラ63、63の幅方向外端面は、張出板部39、39の幅方向端面よりも僅かに幅方向外側に位置する。
調節ロッド24aの幅方向一端側には、アンカ部27aが設けられている。一方の支持板部22aに形成されたチルト調節用長孔23aに、アンカ部27aが相対回転不能に係合されている。調節ロッド24a(軸部62)において、幅方向他方側の支持板部22aの外側面から幅方向に突出した部分の周囲に、駆動側カムと被駆動側カムとから成るカム装置69及び調節レバー26aが設けられている。雄ねじ部にナット70が螺着されている。締め付け機構80において、調節レバー26aの揺動操作に基づいて、カム装置69の駆動側カムを被駆動側カムに対して相対回転させる事で、カム装置69の幅寸法(調節ロッド24aの軸方向における寸法)が拡縮する。
本例において、アッパブラケット17aにおける取付板部58に、コイルばねである、チルトばね(チルト跳ね上げばね又はバランスばね)72Aが設けられている。取付板部58における前端部に設けられた折れ曲がり部71Aと、カム装置69(被駆動側カム)との間にチルトばね72Aが架け渡される。チルトばね72Aにより、カム装置69を介して、調節ロッド24aに上方に向いた付勢力が付与されている。調節ロッド24aに付与された付勢力が、各ローラ63、63を介して、各ローラ走行用凹溝48、48の上辺を構成する各張出板部39、39の下面に伝わり、アウタコラム11aが上方に押圧される。
本例において、ステアリング装置は、車両用盗難防止装置の一種である、ステアリングロック装置を備える。アウタコラム11aにおいて、筒体35の前端寄り部分に、径方向に貫通するロック用透孔33aが形成されている。図10に示す様に、ロック用透孔33aの周囲には、ロックユニット73が支持固定されると共に、キーロックカラー74がステアリングシャフト2aに外嵌固定(圧入)されている。キーロックカラー74は、ステアリングシャフト2aの一部で、ロックユニット73と軸方向に関する位相が一致する部分に配される。ロックユニット73において、イグニッションキーがOFFにされると、ロックピン75の先端部がアウタコラム11aの内径側に向けて変位し、キーロックカラー74の外周面に形成されたキーロック凹部76に係合される。これにより、ステアリングシャフト2aの回転が実質的に不能となる。すなわち、キーロック時におけるステアリングシャフト2aの実質的な回転不能状態において、キーロック凹部76とロックピン75の先端部とが係合される。ロックユニット73には、回転不能状態を解除するための所定値(例えば、キーロックレギュレーションにより規定された値。限界値)が設定されている。ステアリングホイール1(図45参照)を通常の運転姿勢のまま操作する程度の力に対して、ステアリングシャフト2aの回転が防止される。ステアリングホイール1(図45参照)を所定値以上の力で回転させた場合には、キーロックカラー74、並びにステアリングコラム4aに対してステアリングシャフト2aの回転が許容される。
以上の様な構成を有する本例において、締め付け機構80は、アッパブラケット(支持ブラケット)17aを介してアウタコラム11a(ステアリングコラム4a)が締め付けられた第1状態(第1態様、第1モード)と、その締め付けが開放された第2状態(第2態様、第2モード)とを有する。
ステアリングホイール1を所望位置に保持する際には、ステアリングホイール1が所望位置に移動された後、調節ロッド24aを中心として所定方向(一般的には上方)に締め付け機構80の調節レバー26aが揺動(回動)される。その結果、カム装置69の幅寸法が拡がり、支持板部22a、22aの内側面同士の間隔が縮まる。支持板部22a、22aの各内側面により、各ローラ63、63が幅方向内方に向けて押圧される。各ローラ63、63の幅方向内側面により、各クランプ部38、38の下端部(先端部)に形成された作用面40、40(ローラ走行用凹溝48、48の各底面)が押圧される。各クランプ部38、38が幅方向内方に(軸心に向かって)撓み(弾性変形)、インナコラム10aの外周面がクランプ38、38によって弾性的に挟持(保持)される(締め付け方向(第2方向)に締め付けられる)。これにより、ステアリングホイール1が、調節後の位置に保持される。また、両クランプ部38、38が或る程度撓むと、支持板部22a、22aの内側面により作用面49a、49b(及び各連続平坦面52a、52b)が幅方向内方に向けて押圧される。すなわち、第1状態において、支持板部22a、22aの各内側面により、作用面49a、49bを介して、アウタコラム11aが幅方向の両側から挟持される(締め付け方向(第2方向)に締め付けられる)。
一方、ステアリングホイール1の位置調節を行う際には、調節レバー26aが、所定方向とは逆方向(一般的には下方)に揺動(回動)される。その結果、カム装置69の幅寸法が縮み、両支持板部22a、22aの内側面同士の間隔が拡がる。各支持板部22a、22aによる各ローラ63、63への押圧力が低下する為、クランプ部38、38の間の幅寸法が弾性的に広がり、インナコラム10aの外周面を保持する力が低下する(締め付けが開放される)。この第2状態において、調節ロッド24aが、テレスコ調節長孔21a、21a及びチルト調節用長孔23a、23a内で動ける範囲で、ステアリングホイール1の前後位置及び上下位置が調節可能である。
本例のステアリング装置において、幅方向(第2方向、締め付け方向)におけるアウタコラム11aの両側の各々に、作用面49a、49a、作用面49b、49b、及びクランプ部38、38の作用面40、40が設けられている。作用面49a、49a及び作用面49b、49bは、締め付け状態(第1状態)において、アッパブラケット17aの支持板部22a、22aに直接的に押される。クランプ部38、38の作用面40、40は、締め付け状態(第1状態)において、ローラ63、63を介して、支持板部22a、22aに間接的に押される。作用面(第1面)49a、作用面(第2面)49b、及び作用面(第3面)40は、実質的に互いに独立した関係にある。作用面49a、49a及び作用面49b、49bは、アウタコラム11aの枠体34に設けられ、開放状態(第2状態)から締め付け状態(第1状態)への遷移においてインナコラム10aに対する位置が実質的に変化しない又はその変位量がわずかである。クランプ部38の作用面40は、開放状態(第2状態)から締め付け状態(第1状態)への遷移においてインナコラム10aに対する位置が比較的大きい変位量で変化する(インナコラム10aに向けて変位する)(変位面)。第1状態において、作用面49a、49aに作用する力により、主に、アウタコラム11aの中心軸の近傍位置で、アウタコラム11aと支持板部22a、22aとが結合される。第1状態において、作用面49b、49bに作用する力により、主に、アウタコラム11aの中心軸から離れた位置で、アウタコラム11aと支持板部22a、22bとが結合される。第1状態において、作用面40、40に作用する力により、主に、インナコラム10aがクランプ部38を介してアウタコラム11aに保持される。したがって、本例のステアリング装置において、アウタコラム11aの強度確保と、インナコラム10aの保持力確保とが同時かつ独立的に実現され、高い安定性を有する位置調節機構が提供される。
図46及び図47は、特許文献1に記載された、従来のステアリング装置を示している。従来のステアリング装置において、ステアリングホイール1の前後位置及び上下位置を調節可能とすべく、アッパブラケット17に対して、前後方向及び上下方向に移動可能にアウタコラム11が支持されている。アウタコラム11の前端部下面に、このアウタコラム11の軸方向に伸長するスリット19が形成されている。スリット19を幅方向両側から挟む状態で、1対のクランプ部20、20が、アウタコラム11と一体に形成されている。又、クランプ部20、20の互いに整合する位置に、それぞれ前後方向に長いテレスコ調節用長孔21、21が形成されている。更に、アッパブラケット17には、クランプ部20、20を幅方向両側から挟む状態で、1対の支持板部22、22が設けられている。支持板部22、22の一部で互いに整合し、且つ、テレスコ調節用長孔21、21の前後方向の一部と整合する部分に、上下方向に長いチルト調節用長孔23、23が形成されている。アッパブラケット17の支持板部22、22によりクランプ部20、20が挟持された状態で、テレスコ調節用長孔21、21及びチルト調節用長孔23、23に調節ロッド24が幅方向(図47の右から左)に挿通されている。調節ロッド24の他端には、調節ナット25を螺合されている。調節ナット25は、調節レバー26により回転可能である。
従来のステアリング装置において、調節レバー26の操作に基づいて調節ナット25が回転される。調節ナット25と調節ロッド24のアンカ部27との間隔の変化に伴い、アウタコラム11がアッパブラケット17に対し固定されたり、或いは固定が解除される。さらに、クランプ部20、20同士の間隔に伴い、アウタコラム11がインナコラム10に対し固定されたり、或いは固定が解除される。調節ナット25とアンカ部27との間隔が拡げられた状態では、調節ロッド24がテレスコ調節用長孔21、21の内側で前後方向に変位できる。この変位可能な範囲(テレスコピック調節範囲)内で、アウタコラム11が前後移動(インナコラム10に対し相対変位)することにより、ステアリングホイール1の前後位置を調節できる。更に、調節ロッド24がチルト調節用長孔23、23の内側で略上下方向に変位できる。この変位可能な範囲(チルト調節範囲)内で、ステアリングホイール1の上下位置を調節できる。この際、ステアリングコラム4は、チルト軸16を中心として、上下方向に揺動変位する。
操舵力補助装置5の出力軸13の前端部は、自在継手28を介して、中間シャフト29の後端部に連結されている。中間シャフト29の前端部に、別の自在継手30を介して、ステアリングギヤユニット7の入力軸31が連結されている。ステアリングギヤユニット7は、図示しないラック及びピニオンを備え、ピニオンに入力軸31が結合される。ピニオンと噛合するラックは、両端部にタイロッド6、6が連結される。ラックの軸方向変位に基づいてこれらタイロッド6、6が押し引きされる事で、操舵輪3(図45参照)に所望の舵角が付与される。操舵力補助装置5は、電動モータ32によりウォーム減速機を介して、出力軸13に、所定の方向に所定の大きさで補助トルクを付与することができる。
従来のステアリング装置において、ステアリングホイール1の位置を調節すべく、調節レバー26を介した操作により、支持板部22、22の内側面とクランプ部20、20の外側面との間の摩擦力が低下すると、アウタコラム11の後端部が下方に傾く場合がある。この理由は、アウタコラム11の後端部に、アウタシャフト9を介して、ステアリングホイール1の重量に基づき下方に向いた力が作用するからである。アウタコラム11の内周面とインナコラム10の外周面との間には、インナコラム10とアウタコラム11との間の軸方向に関する相対変位のために、或る程度の大きさの隙間が設けられている。
この場合、図48中に丸印で示したX部である、インナコラム10の後端縁部のうちの上端部とアウタコラム11の内周面との接触部の接触状態が線接触になる。さらに、図48に丸印で示したY部である、アウタコラム11の前端縁部の下端部とインナコラム10の外周面との接触部の接触状態が線接触になる。その結果、ステアリングホイール1の前後位置を調節すべく、アウタコラム11をインナコラム10に対し相対変位させる際に、引っ掛かり(こじれ)が生じ易い。この現象は、ステアリングホイール1の前後位置調節の操作感を低下させると共に、前後方向の操作荷重が大きくなる原因になる。特に、図示の構造の様に、ステアリングコラム2に操舵力補助装置5を組み合わせた、コラムタイプ型の電動パワーステアリング装置(コラムタイプEPS)の場合、ステアリングコラム4の設置スペースの制約上、インナコラム10とアウタコラム11との嵌合長が比較的短く設定される。その結果、アウタコラム11の傾斜角度が大きくなり易く、上述の様な問題を生じ易い。アウタコラムとインナコラムとの隙間を小さくする等の精密加工を施したり、インナコラムの端部外周縁部に面取り加工を施す事は、加工コストが嵩むといった新たな問題を招く。
図10に示すように、本例のステアリング装置においては、チルトばね72Aにより調節ロッド24aが上方に向けて付勢される。この付勢力F1は、各ローラ63、63を介して、アウタコラム11aの前端部(枠体34)に伝達される。アウタコラム11aに後端部に、ステアリングホイール1の重量に基づき、アウタコラム11aの後端部を下方に押し下げる方向の力F2が加わる場合にも、付勢力F1により、アウタコラム11aが上方に押し上げられる。その結果、アウタコラム11aの傾きをゼロ又は小さくできる(後端部が下方に傾く事を防止できる)。また、アウタコラム11aの内周面のうちの上端部とインナコラム10aの外周面のうちの上端部との間に隙間が確保される。従って、インナコラム10aの後端縁部における上端部とアウタコラム11aの内周面とが線接触により強く接触する。そのため、ステアリングホイール1の前後位置を調節する際の引っ掛かり(こじれ)の発生を有効に防止できる。
さらに、本例のステアリング装置において、調節ロッド24aに付与された付勢力は、各ローラ63、63を介して、アウラコラム11a(張出板部39、39の下面)に伝達される。ステアリングホイール1の前後位置を調節すべく、アウタコラム11aをインナコラム10aに対して前後方向に相対変位させる際に、ローラ63、63が、張出板部39、39の下面に沿って走行(転走)する。調節ロッドによりアウタコラムを直接付勢する場合に比べて、アウタコラム11aをインナコラム10aに対し前後方向に相対変位させる際に生じる摩擦抵抗が抑えられる。尚、ローラを用いない構成において、摺動性を確保する為に、調節ロッドとアウタコラムとの間の摺接部に樹脂製スリーブ等を介在させることにより、摺動抵抗を低下させることができる。しかしながら、調節ロッドの外周面とスリーブとが線接触で接触する為、面圧が高くなり、耐久性の問題を生じやすい。これに対し、本例のステアリング装置においては、転がり接触が用いられ、この様な問題が回避される。又、本例のステアリング装置においては、ローラ63、63の外周面に合成樹脂製のカラー65、65が用いられており、金属同士の接触に基づく摺動が回避され、ローラ63、63が効果的に回転できる。又、本例のステアリング装置において、チルトばね72Aにより、調節ロッド24aに付勢力が付与されるので、ステアリングホイール1の前後調節範囲の全域にて付勢力が付与される。しかも、ローラ63、63が介在することにより、上方への付勢力の付与が行われた状態で、前後位置の調節が滑らかに行われる。
さらに、本例のステアリング装置において、アウタコラム11a(枠体34)の前端縁部の下端部に、摺動部本体55が設けられている為、摺動部本体55の上面がインナコラム11aの外周面に接触される。その結果、アウタコラム11aの前端縁部の下端部とインナコラム10aの外周面との接触態様が線接触になるのが防止される。従って、当該部分での引っ掛かりが抑えられ、前後位置調節の際の摺動抵抗が過大になる事を防止できる。
本例のステアリング装置はステアリングコラム4aの全長が比較的短い場合にも好ましく適用される。すなわち、コラムEPSの構成を採用した場合にも、ステアリングホイール1の前後位置の調節時の引っ掛かり(こじれ)が防止され、前後位置調節に際して高い操作感が得られると共に、操作荷重が低く抑えられる。
従来のステアリング装置において、例えば特許文献2に記載される様な、盗難防止用のステアリングロック装置が組み込まれる場合がある。この場合、アウタコラム11の耐久性確保の面から問題を生じる可能性がある。ステアリングロック装置は、アウタコラム11の一部に形成したロック用透孔33の周囲に、ロックユニット(キーロックシリンダ)を、ステアリングシャフト2の一部にキーロックカラーを、それぞれ装着する事により構成される。イグニッションキーを抜き取った状態では、ロックユニットに設けたキーロックピンと、キーロックカラーに設けたキーロック孔(凹部)とが係合し、アウタコラム10に対するステアリングシャフト2の回転が阻止される。
この様なステアリングロック装置が作動した状態で、ステアリングホイール1を無理に回転させようとすると、トルク(捩り力)が、ステアリングシャフト2、キーロックカラー、ロックユニット、アウタコラム11、及び、アッパブラケット17に順次伝わり、最終的に車体15に支承される。特に、アウタコラム11とアッパブラケット17との間では、アウタコラム11のうち、アッパブラケット17を構成する1対の支持板部22、22から押圧力が作用している各クランプ部20、20を介して、ロックユニットから伝達されたトルクが各支持板部22、22に伝達される。この為、クランプ部20、20の根元部の強度が不足する可能性がある。この様な問題を解決する為に、クランプ部20、20の根元部の肉厚を大きくする(補強する)と、クランプ部20、20を撓ませにくくなり、インナコラム10の保持力が十分に確保されない可能性がある。
図2及び図3等に示すように、本例のステアリング装置において、アウタコラム11aの幅方向両側に、クランプ部38の作用面40と、作用面49a、49bとが、別々に独立して設けられている。クランプ部38、38は、インナコラム10aの外周面を弾性的に挟持するために用いられる。一方、例えばステアリングロック装置を作動させた状態のままステアリングホイール1を大きな力で操作した場合など、アウタコラム11aに作用するトルクは、作用面49a、49bを介して、アッパブラケット17aの支持板部22a、22aの内側面に伝達される。クランプ部38、38は、インナコラム10aを挟持する機能のみを発揮できれば足りる。そのため、クランプ部38、38に過度に高い強度を設定する必要がない。したがって、本例のステアリング装置では、幅方向に大きくクランプ部38、38を撓ませるなど、クランプ部38、38に対して所望のたわみ特性を設定可能である。一方、作用面49a、49bは、トルクを伝達する機能のみを発揮できれば足りる。そのため、アウタコラム11aにおける作用面49a、49bが設けられた部分を幅方向に大きく撓ませる必要がない。したがって、本例のステアリング装置によれば、アウタコラム11aの強度確保と、インナコラム10aの保持力確保とが独立的に両立できる。
又、本例のステアリング装置において、ステアリングホイール1を所望位置に保持する為に、支持板部22a、22aの内側面が作用面49a、49bに当接(押圧)される。この際、支持板部22a、22aの内側面を介してクランプ部38、38が撓んだ状態となる。アウタコラム11aにおいて、作用面49a、49bは、クランプ部38の作用面40から実質的に独立しており、作用面49a、49bが設けられた部分は、クランプ部38に比べて十分に高い剛性(曲げ剛性、たわみ特性)を有する。また、作用面49aと作用面49bとは第2方向(締め付け方向)と交差する第1方向に互いに離間して配されている。特に、作用面49bの位置は、第1方向におけるインナコラム10aの外形の範囲外であり、さらには、アウタコラム11aの筒体35の外形の範囲外である。そのため、アウタコラム11aに作用するトルクは、作用面49a、49bを介して吸収され、そのトルクがクランプ部38に伝わることが防止される。
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例に就いて、図26〜27を参照しつつ説明する。本例のステアリング装置において、上述した実施の形態の第1例に対して、特に、インナコラム10aの外周面を弾性的に挟持する為のクランプ部38a、38aの形状が第1例と異なる。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本例のステアリング装置において、アウタコラム11bの中心軸O11に直交する仮想平面に関する各クランプ部38a、38aの断面形状が、クランプ部38a、38a同士の間で、アウタコラム11bの中心軸O11を通ると共に、長孔(スリット)21b、21bの中心軸O21に直交する仮想線Vに関して、対称形状を有する。且つ、各クランプ部38a、38aの断面形状が、軸方向全長に亙り一定(前後方向に関して対称な形状)である。クランプ部38aは、軸方向と交差する第1方向に沿った対称軸に対して実質的な対称形状及び対称構造を有する。本例において、クランプ部38aの作用面40は、対称軸に対して実質的に対称な形状を有する。すなわち、軸方向における作用面40の中心が対称軸上に位置する。さらに、本例において、軸方向における、アウタコラム11aの作用面49c及び作用面49dの各中心が、クランプ部38aの中心と一致する。例えば、軸方向における作用面49c及び作用面49dの各中心が、クランプ部38aの作用面40の中心と一致する。また、軸方向において、テレスコ調節用の長孔21aの中心が、作用面49c、作用面49d、及び作用面40の各中心と一致する。
本例のステアリング装置において、アウタコラム11bの枠体34aに、周方向に線状に伸長する周方向スリット37c、37dが形成されている。周方向スリット37c、37dは、枠体34aの下面に形成された軸方向スリット36の前後両端寄り部分を周方向に交差するように設けられている。枠体34aの幅方向両側部分に、軸方向スリット36と周方向スリット37cと周方向スリット37dとにより三方を囲まれた、クランプ部38aが形成されている。本例のステアリング装置において、クランプ部38aと補強ブリッジ部41との間には、隙間47a(スリット)が形成されている。隙間47aは、幅方向から見た形状が前後両端部が直角に折れ曲がった略U字形(略コ字形状)を有する。アウタコラム11bに作用するトルクは、作用面49c、49dを介して、アッパブラケット17a(図2等参照)の支持板部22a、22aの内側面に伝達される。作用面49c、49dはそれぞれ前後方向に関して対称な形状を有する。作用面49c、49dと連続平坦面52a、52bとは、矩形(四角)枠状に連続している。
以上の様な構成を有する本例のステアリング装置において、ステアリングホイール1(図46参照)を所望位置に保持すべく、支持板部22a、22aの内側面により、クランプ部38a、38aが撓む。この際、テレスコ調節用長孔21b、21b内での調節ロッド24a(図2参照)の前後位置に拘らず、クランプ部38a、38aの一部に応力が集中する事が防止される。この為、テレスコ調節用長孔内21b、21b内に配置されたローラ63、63から、クランプ部38a、38a(張出板部39の下面及び押圧面40)に作用する様々な方向{上下方向、幅方向(図27の左右方向)、回転方向(中心軸O11回り)}の荷重に拘らず、クランプ部38a、38aに損傷等が生じる事を防止できる。クランプ部38a、38aの撓み量が互いに同じになるように設定することで、インナコラム10aの保持力が安定する。本例のステアリング装置において、上記の第1例の場合に比べて、テレスコ調節用長孔21b、21bの前後方向寸法を大きく設計することができる。この場合、ステアリングホイール1の前後方向に関する調節長さが大きくなる。その他の構成及び作用効果に就いては、第1例の場合と同様である。
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図28〜図38を参照しつつ説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本例のステアリング装置において、上述した実施の形態の第1例の構造に対して、特に、クランプ部38、38の構造が異なる。本例において、各クランプ部38、38の幅方向外側面のうちの下端部には、幅方向(第2方向)外側に突出する状態で、張出板部(張出部)39、39が設けられている。各張出板部39、39の幅方向(第2方向)外側に、作用面(第3面、第3作用面、押圧面)40、40が形成されている。例えば、作用面40は、平坦面状を有する。追加的及び/又は代替的に、作用面40は、平坦状以外の形状を有することができる。各張出板部39、39の上面(壁の側面)と、各クランプ部38、38の幅方向外側面のうち、円筒面状の上端部乃至中間部との間に、補強リブ51、51が設けられている。各側において、複数の補強リブ51(図では5つの例)は、幅方向に伸長して設けられ、前後方向(軸方向)に互いに離隔して配されている。
アウタコラム11aは、幅方向(第2方向)におけるアウタコラム11aの両側の間でブリッジされる補強ブリッジ部(補強部、補強構造、補強部材)41を有する。補強ブリッジ部41は、幅方向(第2方向)におけるアウタコラム11aの両側の間で実質的に連続的に延在し、幅方向(第2方向)におけるアウタコラム11aの両側の間を物理的につなぐように設けられている。本例において、枠体34の下方部分に、両クランプ部38、38を下方から覆う状態で、補強ブリッジ部41が設けられている。補強ブリッジ部41は、アウタコラム11aと一体的に設けられている。補強ブリッジ部41は、補強板部42と、1対の連結部43a、43bとを有する。補強ブリッジ部41は、幅方向から見た形状が略U字形(コ字形)を有する。補強板部42は、クランプ部38、38の下方に配置されており、幅方向及び前後方向に伸長する状態で設けられている。本例において、補強板部42は、アウタコラム11aの中心軸に平行に配置された平板部44と、平板部44の幅方向両端部下面から下方に伸長して設けられた1対の下方延出部45、45とを有する。例えば、補強板部42は、断面略コ字形を有する。又、補強板部42(平板部44)の前端部の幅方向中間部には、上下方向に貫通する切り欠き46が形成されている。又、平板部44の幅方向中間部下面と下方延出部45、45の幅方向内側面との間に、幅方向に伸長した平板状の補強用連結板52、52が、前後方向に離隔した状態で複数(図示の例では3つ)設けられている。
本例において、比較的前方に配置された連結部43aは、補強板部42の前端部の幅方向両側部分(切り欠き46の両側部分)から上方に伸長するように設けられている。連結部43aは、枠体34の前端部下面のうち、周方向スリット37aの前側に隣接した部分で、且つ、軸方向スリット(第1スリット部)36を挟んだ周方向両側部分に連結されている。比較的後方に配置された連結部43bは、補強板部42の後端部から上方に伸長するように設けられている。連結部43bは、枠体34の後端部下面のうち、軸方向スリット36の後端部の後側に隣接した部分に連結されている。代替的及び/又は追加的に、補強ブリッジ部41は、上記とは異なる構成を有することができる。
本例において、アウタコラム11aは、上述の様な補強ブリッジ部41を備える事で、高い捩り剛性を有する。補強ブリッジ部41と各クランプ部38、38との間に、幅方向(第2方向)から見た形状が略U字形(コ字形)の隙間(スリット)47、47が形成されている。各隙間47、47は、少なくとも軸方向(アウタコラム11aの軸方向、ステアリングシャフト2aの軸方向)に延びるテレスコ調節用長孔(軸方向スリット、第1スリット部、第一通孔)21a、21aと、長孔21a、21aに連続して設けられ、長孔21a、21aと交差する方向に延びる周方向スリット(第2スリット部)37a、37bとを有する。クランプ部38、38は、長孔21a、21aに隣接して設けられる。長孔21a、21aは、各クランプ部38、38の先端部(下端部)と、補強板部42(平板部44)の上面との間に存在する空間を形成する。長孔21a、21aには、調節ロッド24aが幅方向(第2方向)に挿通される。
アウタコラム11aは、幅方向の2つの側面の各々に設けられた、作用面(第1面、第1作用面、第1当接面、トルク伝達面)49aと、作用面(第2面、第2作用面、第2当接面、トルク伝達面)49bとを有する。作用面49aと作用面49bとは、軸方向(アウタコラム11aの軸方向、ステアリングシャフト2aの軸方向)と交差する方向である第1方向(第1交差方向)に互いに離間して配される。また、第1方向において、作用面49aと作用面49bとの間にクランプ部38(及び作用面40)が配される。本例において、調節ロッド24aは、第1方向における作用面49aと作用面49bとの間に配され、クランプ部38の作用面40は、第1方向における作用面49aと調節ロッド24aとの間に配される。また、軸方向スリット36(長孔21a)は、第1方向における作用面49aと作用面49bとの間に配される。本例において、アウタコラム11aに作用するトルク(捩り方向の力)は、作用面49a及び作用面49bを介して、アッパブラケット17aにおける支持板部22a、22aの内側面に伝達され得る。
本例において、作用面49aは、第1方向におけるインナコラム10aの外形の範囲内に配される。作用面49bは、第1方向におけるインナコラム10aの外形の範囲外に配される。さらには、作用面49bは、アウタコラム11aの筒体35の外形の範囲外に配される。また、第1方向において、作用面49aはインナコラム10aの中心軸の比較的近傍に配され、作用面49bはインナコラム10aの中心軸から比較的離れて配される。アウタコラム11a(枠体34)の幅方向両側には、第1方向(又は上下方向)に関してアウタコラム11aの中心軸と重なる部分に、幅方向(第2方向)外方に突出するように突条部50a、50aが設けられている。突条部50aは、アウタコラム11aに延在して設けられている。突条部50aの先端(幅方向外側面)に、作用面49a、49aが設けられている。下方延出部45、45の幅方向外側面のうちの下端部には、幅方向(第2方向)外方に突出するように突条部50b、50bが設けられている。突条部50bは、アウタコラム11aの軸方向に延在して設けられている。突条部50bの先端(幅方向外側面)に、作用面49b、49bが設けられている。すなわち、作用面49a、49bは何れも、アウタコラム11aの軸方向に伸長した形状を有しており、クランプ部38に比べて軸方向において大きい長さを有する。例えば、作用面49a及び作用面49bはそれぞれ、平坦面状を有する。追加的に及び/又は代替的に、作用面49a及び作用面49bは、平坦状以外の形状を有することができる。作用面49a、49bは、クランプ部38、38に比べて、幅方向(第2方向)に関する高い剛性を有する。下方延出部45、45の幅方向外側面における上下方向中間部(突条部50bの上方)には、幅方向内方に向けて凹んだ凹部53、53が、前後方向に離隔した状態で複数(図示の例では6つ)設けられている。
本例において、図36に示す様に、アウタコラム11aに外力を加えていない状態(締め付けが開放された状態(第2状態))において、上方に設けられた1対の作用面49a、49a同士の幅寸法Haと、下方に設けられた1対の作用面49b、49b同士の幅寸法Hbと、クランプ部38、38の作用面40、40同士の幅寸法Hcとが互いに実質的に同じである(Ha=Hb=Hc)。すなわち、幅方向片側において作用面49aと、作用面49bと、作用面40とが、同一仮想平面上に位置している。また、、幅方向他側において作用面49aと、作用面49bと、作用面40とが、同一仮想平面上に位置している。作用面40、40は、第1方向において、作用面49a、49aと作用面49b、49bとの間に配される。代替的に、作用面49a、49a、作用面49b、49b、及び作用面40、40は、上記以外の配置関係を有することができる。例えば、クランプ部38、38によるクランプ力を上昇させる必要がある場合など、幅寸法Hcを、幅寸法Ha及び幅寸法Hbよりも大きくする事ができる(Hc>Ha=Hb)。
又、本例において、図33に示す様に、上方及び下方に配置された作用面49a、49bの前後方向寸法(X、Z)は、作用面40の前後方向寸法(Y)よりも大きい(X>Y、Z>Y)。さらに、作用面49aの前後方向寸法(X)は、作用面49bの前後方向寸法(Z)とほぼ同じである(X≒Z)。換言すると、テレスコ調節用長孔21aの前後方向中央部から作用面49aの前端縁部までの距離が、長孔21aの前後方向中央部から作用面49aの後端縁部までの距離とがほぼ同じになる様に設定されている。作用面49b及び作用面40の各々の前端縁部及び後端縁部についてもこれと同様である。
クランプ部38の作用面40は、所定の対称軸に対して実質的に対称な形状を有してもよく、対称軸に対して非対称でもよい。また、軸方向において、クランプ部38の中心(及び/又は作用面40の中心)が、作用面49a及び作用面49bの各中心と一致してもよく、オフセットしてもよい。また、クランプ部38の形状及び/又は構造が、作用面49a及び作用面49bに対して軸方向にオフセットして設けられてもよい。例えば、クランプ部38の中心(及び/又は作用面40の中心)が、アウタコラム11aの作用面49a及び作用面49bの各中心に対して前方(又は後方)に位置するようにできる。また、軸方向において、テレスコ調節用の長孔21aの中心が、作用面49a、作用面49b、及び作用面40の少なくとも1つと一致してもよく、オフセットしてもよい。例えば、クランプ部38の作用面40の中心が長孔21aの中心に対して前方に位置するようにできる。本例において、作用面40が軸方向にオフセットする事で、ステアリングホイール1(図45、図46参照)の前後位置が変化した場合にも、調節レバー26aの操作力を変化しにくくする事ができる。具体的には、ステアリングホイール1を後方側に最大限変位させた場合、インナコラム10aの後端部とアウタコラム11aの前端部との嵌合代は比較的短く、作用面40は、インナコラム10aの後端側部分を締め付ける。この場合、インナコラム10aの後端側部分は中間部に比べて剛性が低いので、締付反力が比較的低く、調節レバー26aの操作力が比較的低い。そこで、作用面40が前方にオフセットしている事で、インナコラム10aにおける、後端側部分よりも剛性の高い中間部が押圧されるようになり、高い締付反力が得られる。又、ステアリングホイール1が比較的前方に位置し、インナコラム10aとアウタコラム11aとの嵌合代が大きい状態では、前後位置の位置調節に伴う、インナコラム10aの剛性の変化は比較的小さく、締付反力の変化も小さい。すなわち、上記オフセットにより、位置調節範囲の全体にわたり、ステアリングホイール1の前後位置の変化に伴う調節レバー26aの操作力の変化が抑制される。
本例において、補強ブリッジ部41における連結部43a、43bの上端部が、突条部50a、50bの前後方向両端部に連続している。但し、本例において、連結部43a、43bの幅方向外側面が、作用面49a、作用面49b、及び作用面40よりも幅方向内方に位置(オフセット)している。この場合、アッパブラケット17aにおける支持板部22a、22aの内側面が、連結部43a、43bの幅方向外側面に実質的に当接しない様にできる。
尚、本例において、アウタコラム11aの特に基本構成に就いて、別の観点から見た場合の簡単な説明を加えておく。本例のアウタコラム11aには、軸方向スリット36を幅方向両側から挟む状態で、1対の被挟持板部がアウタコラム11aと一体的に設けられており、両被挟持板部の先端部(下端部)同士を(補強板部42相当部分により)幅方向に連結している。又、両被挟持板部の幅方向外側面を、それぞれ略平坦面状の締付面としている。各締付面のほぼ中央位置に、アウタコラム11aの内周面にまで連通する、略U字形の隙間(スリット)47、47を形成し、この隙間47、47により囲まれた部分を、各クランプ部38、38としている。又、各締結面の上辺及び下辺を、それぞれ作用面49a、49bとしている。
図28、図29、図30、及び図31に示すように、アッパブラケット(支持ブラケット)17aは、例えば、鋼やアルミニウム系合金等の十分な剛性を有する金属板製からなる。アッパブラケット17aは、取付板部58と、1対の支持板部22a、22aとを有する。取付板部58は、通常時には車体15aに対し支持されている。二次衝突等の衝撃に基づいて取付板部58が前方に離脱し、アウタコラム11aの前方への変位を許容する様に、取付板部58が構成されている。取付板部58の後端縁には、開口する状態で、1対の係止切り欠き59、59が形成されている。係止切り欠き59、59に、ボルト又はスタッド等の固定部材により車体15aに固定された係止カプセル18aが係止されている。
支持板部22a、22aは、取付板部58から垂下するように設けられている。また、支持板部22a、22aは、アウタコラム11aの前端部(枠体34及び補強ブリッジ部41)を幅方向両側から挟む状態で互いに平行になるように、設けられている。一対の支持板部22a、22aは、幅方向(第2方向)におけるアウタコラム11aの両側に配される。支持板部22a、22aには、少なくとも上下方向(第1方向)に延在するチルト調節用長孔(第二通孔)23a、23aが形成されている。長孔23a、23aは、幅方向に関して対向する位置(互いに整合する位置)に設けられている。また、長孔23a、23aは、テレスコ調節用長孔21a、21aの前後方向の一部と整合するように設けられている。長孔23a、23aは、上下方向(第1方向)に沿った長軸を有する。支持板部22a、22aは、締め付け機構80を用いてアウタコラム11a(ステアリングコラム4a)を締め付け可能に配される。締め付け機構80は、調節ロッド24a、調節ナット25、及び調節レバー26a等(図28参照)を有する。テレスコ調節用長孔21a、21aとチルト調節用長孔23a、23aとに、調節ロッド24aが幅方向に挿通されている。
調節ロッド24aは、幅方向(調節ロッド24aの軸方向、第2方向)において、一端部に配置されたアンカ部と、他端部に形成された雄ねじ部と、中間部に形成された軸部とを備えている。調節ロッド24aは、テレスコ調節用長孔21a、21a及びチルト調節用長孔23a、23aに挿通して配置されている。調節ロッド24aの幅方向一端側には、アンカ部が設けられている。一方の支持板部22aに形成されたチルト調節用長孔23aに、アンか部が相対回転不能に係合されている。調節ロッド24a(軸部)において、幅方向他方側の支持板部22aの外側面から幅方向に突出した部分の周囲に、駆動側カムと被駆動側カムとから成るカム装置69及び調節レバー26aが設けられている。雄ねじ部にナット70が螺着されている。締め付け機構80において、調節レバー26aの揺動操作に基づいて、カム装置69お駆動側カムを被駆動側カムに対して相対回転させる事で、カム装置69の幅寸法(調節ロッド24aの軸方向における寸法)が拡縮する。
本例において、ステアリング装置は、車両用盗難防止装置の一種である、ステアリングロック装置を備える。アウタコラム11aにおいて、筒体35に、径方向に貫通するロック用透孔33aが形成されている。筒体35の外周面において、ロック用透孔33aから円周方向に外れた部分に、図示しないロックユニットを支持固定する為の固定部71が設けられている。固定部71には1対の取付フランジ72、72が設けられる。ロック用透孔33aの周囲には、取付フランジ72、72を用いてロックユニットが支持固定されるとともに、図示しないキーロックカラーがステアリングシャフト2aに外嵌固定(圧入)されている。キーロックカラーは、ステアリングシャフト2aの一部で、ロックユニットと軸方向に関する位相が一致する部分に配される。ロックユニットにおいて、イグニッションキーがOFFにされると、ロックユニットにおけるロックピンの先端部がアウタコラム11aの内径側に向けて変位し、キーロックカラーの外周面に形成されたキーロック凹部に係合される。これにより、ステアリングシャフト2aの回転が実質的に不能となる。すなわち、キーロック時におけるステアリングシャフト2aの実質的な回転不能状態において、キーロック凹部とロックピンの先端部とが係合される。ロックユニットには、回転不能状態を解除するための所定値(例えば、キーロックレギュレーションにより規定された値。限界値)が設定されている。ステアリングホイール1(図45参照)を通常の運転姿勢のまま操作する程度の力に対して、ステアリングシャフト2aの回転が防止される。ステアリングホイール1(図45、46参照)を所定値以上の力で回転させた場合には、キーロックカラー、並びにステアリングコラム4aに対してステアリングシャフト2aの回転が許容される。
以上の様な構成を有する本例において、締め付け機構80は、アッパブラケット(支持ブラケット)17aを介してアウタコラム11a(ステアリングコラム4a)が締め付けられた第1状態(第1態様、第1モード)と、その締め付けが開放された第2状態(第2態様、第2モード)とを有する。
ステアリングホイール1を所望位置に保持する際には、ステアリングホイール1が所望位置に移動された後、調節ロッド24aを中心として所定方向(一般的には上方)に締め付け機構80の調節レバー26aが揺動(回動)される。その結果、カム装置69の幅寸法が拡がり、支持板部22a、22aの内側面同士の間隔が縮まる。支持板部22a、22aの内側面により、作用面49a、49a、作用面49b、49b、及びクランプ部38、38の作用面40、40が押圧される。支持板部22a、22bの上下方向中間部、及びクランプ部38、38が幅方向内方に(軸心に向かって)撓み(弾性変形)、インナコラム10aの外周面がこれらによって弾性的に挟持(保持)される(締め付け方向(第2方向)に締め付けられる)。これにより、ステアリングホイール1が調節後の位置に保持される。
一方、ステアリングホイール1の位置調節を行う際には、調節レバー26aが、所定方向とは逆方向(一般的には下方)に揺動(回動)される。その結果、カム装置69の幅寸法が縮み、両支持板部22a、22aの内側面同士の間隔が拡がる。支持板部22a、22aによる押圧力(締め付け力)が低下する為、クランプ部38、38の間の幅寸法が弾性的に広がり、インナコラム10aの外周面を保持する力が低下する(締め付けが開放される)。この第2状態において、調節ロッド24aが、テレスコ調節長孔21a、21a及びチルト調節用長孔23a、23a内で動ける範囲で、ステアリングホイール1の前後位置及び上下位置が調節可能である。
本例のステアリング装置において、幅方向(第2方向、締め付け方向)におけるアウタコラム11aの両側の各々に、作用面49a、49a、作用面49b、49b、及びクランプ部38、38の作用面40、40が設けられている。作用面49a、49a及び作用面49b、49bは、締め付け状態(第1状態)において、アッパブラケット17aの支持板部22a、22aに直接的に押される。クランプ部38、38の作用面40、40は、締め付け状態(第1状態)において、支持板部22a、22aに直接的に押される。作用面(第1面)49a、作用面(第2面)49b、及び作用面(第3面)40は、実質的に互いに独立した関係にある。作用面49a、49a及び作用面49b、49bは、アウタコラム11aの枠体34に設けられ、開放状態(第2状態)から締め付け状態(第1状態)への遷移においてインナコラム10aに対する位置が実質的に変化しない又はその変位量がわずかである。クランプ部38の作用面40は、開放状態(第2状態)から締め付け状態(第1状態)への遷移においてインナコラム10aに対する位置が比較的大きい変位量で変化する(インナコラム10aに向けて変位する)(変位面)。第1状態において、作用面49a、49aに作用する力により、主に、アウタコラム11aの中心軸の近傍位置で、アウタコラム11aと支持板部22a、22aとが結合される。第1状態において、作用面49b、49bに作用する力により、主に、アウタコラム11aの中心軸から離れた位置で、アウタコラム11aと支持板部22a、22bとが結合される。第1状態において、作用面40、40に作用する力により、主に、インナコラム10aがクランプ部38を介してアウタコラム11aに保持される。したがって、本例のステアリング装置において、アウタコラム11aの強度確保と、インナコラム10aの保持力確保とが同時かつ独立的に実現され、高い安定性を有する位置調節機構が提供される。
図29及び図30等に示すように、本例のステアリング装置において、アウタコラム11aの幅方向両側に、クランプ部38の作用面40と、作用面49a、49bとが、別々に独立して設けられている。クランプ部38、38は、インナコラム10aの外周面を弾性的に挟持するために用いられる。一方、例えばステアリングロック装置を作動させた状態のままステアリングホイール1を大きな力で操作した場合など、アウタコラム11aに作用するトルクは、作用面49a、49bを介して、アッパブラケット17aの支持板部22a、22aの内側面に伝達される。クランプ部38、38は、インナコラム10aを挟持する機能のみを発揮できれば足りる。そのため、必要以上に高い強度を設定する必要がない。したがって、本例のステアリング装置では、幅方向に大きくクランプ部38、38を撓ませるなど、クランプ部38、38に対して所望のたわみ特性を設定可能である。一方、作用面49a、49bは、トルクを伝達する機能のみを発揮できれば足りる。そのため、アウタコラム11aにおける作用面49a、49bが設けられた部分を幅方向に大きく撓ませる必要がない。したがって、本例のステアリング装置によれば、アウタコラム11aの強度確保と、インナコラム10aの保持力確保とが独立的に両立できる。
又、本例のステアリング装置において、ステアリングホイール1を所望位置に保持する為に、支持板部22a、22aの内側面が作用面49a、49bに当接(押圧)される。この際、支持板部22a、22aの内側面を介してクランプ部38、38が撓んだ状態となる。アウタコラム11aにおいて、作用面49a、49bは、クランプ部38の作用面40から実質的に独立しており、作用面49a、49bが設けられた部分は、クランプ部38に比べて十分に高い剛性(曲げ剛性、たわみ特性)を有する。また、作用面49aと作用面49bとは第2方向(締め付け方向)と交差する第1方向に互いに離間して配されている。特に、作用面49bの位置は、第1方向におけるインナコラム10aの外形の範囲外であり、さらには、アウタコラム11aの筒体35の外形の範囲外である。そのため、アウタコラム11aに作用するトルクは、作用面49a、49bを介して吸収され、そのトルクがクランプ部38に伝わることが防止される。
本例のステアリング装置において、連結部43a、43bの幅方向外側面が、作用面49a、49b及び作用面40、40よりも幅方向内方に位置(オフセット)する。そのため、ステアリングホイール1の位置を調節可能な状態(第2状態)から、ステアリングホイール1の位置を保持できる状態(第1状態)に移行する際、支持板部22aの内側面が、連結部43a、43bの幅方向外側面に当接しない。別の言い方をすれば、第2状態から第1状態に移行する際、支持板部22a、22aの内側面が、主に、作用面49a、49a、作用面49b、49b、及び作用面40、40を押圧する。この為、ステアリングホイール1の前後方向位置に関わらず、支持板部22aの内側面が押圧する部分の面積(作用面49a、作用面49b、及び作用面40における、支持板部22aとの当接面積)が一定である(又は所定の範囲内に収まる)。この結果、ステアリングホイール1の前後方向位置の調節に際して、調節レバー26aの締付トルクの変化が小さく抑制される。したがって、調節レバー26aの操作において、安定した操作性が得られる。
[実施の形態の第4例]
本発明の実施形態の第4例について、図39及び図40を参照しつつ説明する。以下の説明において、上述の例と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本例のステアリング装置において、上述した実施の形態の第3例に対して、特に、クランプ部38、38の構造が異なる。本例において、第3例と同様に、アウタコラム11aの幅方向の両側において、軸方向のスリット36(長孔21a、21a)、及び軸方向と交差する方向のスリット37a、37b等が連続して形成されることにより、クランプ部38、38が設けられている。各クランプ部38、38は、軸方向に延在する固定端を有する片持ち梁構造を有する。
本例において、第3例と異なり、各クランプ部38、38は、軸方向における中央部と端部との間で断面構造が実質的に異なる。第1に、クランプ部38において、軸方向における中心付近の領域は、軸方向における端付近の領域に比べて薄い肉厚を有する。例えば、軸方向におけるクランプ部38の端に近い2つの領域(前部81a、後部81b)では、一様に第1の肉厚を有する。軸方向におけるクランプ部38の中心付近の領域(中間部81c)は、一様に、第1の肉厚に比べて薄い第2の肉厚を有する。第2に、クランプ部38において、軸方向の両端の各近傍(前部81a及び後部81b)には補強リブ51が設けられており、軸方向の中心付近(中間部81c)にはこうした補強リブが設けられていない。代替的に及び/又は追加的に、クランプ部38は、別の断面構造を有することができる。
このように、クランプ部38は、中心付近(中間部81c)において部分的に、低剛性に寄与する断面構造を有する。また、クランプ部38は、軸方向の両端付近(前部81a、後部81b)において部分的に、高剛性に寄与する断面構造を有する。その結果、本例のクランプ部38は、開放された端部の近傍の領域(前部81a、後部81b)における剛性(曲げ剛性、たわみ特性)が、中心付近(中間部81c)のそれと同程度となるように制御されている。すなわち、クランプ部38は、軸方向に沿って全体的に概ね均一な剛性分布を有する。
前述したように、ステアリング装置において、ステアリングホイール1(図46参照)の前後位置が変化すると、アウタコラム11aに対する調節ロッド24a(図28参照)の軸方向位置が変化する。すなわち、基準位置において、調節ロッド24aは、軸方向における長孔21aの中心に位置する。この場合、クランプ部38の主に中心位置に、締め付け機構80(図28参照)の締め付け力が作用する。ステアリングホイール1が比較的後方に位置する場合、アウタコラム11aの長孔21aに挿通された調節ロッド24aは、長孔21aの中心よりも前方に位置する。この場合、クランプ部38の主に比較的前方位置に、締め付け力が作用する。ステアリングホイール1が比較的前方に位置する場合、調節ロッド24aは、長孔21aの中心より後方に位置する。この場合、クランプ部38の主に比較的後方位置に締め付け力が作用する。
本例において、クランプ部38の概ね均一な剛性分布に基づき、ステアリングホイール1の前後位置を変化させた場合にも、締め付け機構80における調節レバー26a(図28参照)の操作力の変化が抑制される。すなわち、本例のステアリング装置は、調節レバー26aの操作について、安定した操作フィーリングを有する。
ここで、本例において、クランプ部38は、軸方向と交差する第1方向に沿った対称軸Wに対して実質的な対称形状及び対称構造を有する。クランプ部38において、第1の肉厚を有する2つの端領域(前部81a、後部81b)は、対称軸Wに関して実質的な対称構造を有する。第2の肉厚を有する中央領域(中間部81c)も、対称軸Wに関して実質的な対称構造を有する。また、一方の端付近(前部81a)に配される補強リブ51の対称軸Wからの距離は、他方の端付近(後部)に配される補強リブ51のそれと実質的に同じである。
本例において、クランプ部38の作用面40は、対称軸Wに対して実質的に対称な形状を有する。すなわち、軸方向における作用面40の中心が対称軸W上に位置する。さらに、本例において、軸方向における、アウタコラム11aの作用面49a及び作用面49bの各中心が、クランプ部38の中心と一致する。例えば、軸方向における作用面49a及び作用面49bの各中心が、クランプ部38の作用面40の中心と一致する。
代替的に、クランプ部38の形状及び/又は構造は、対称軸Wに対して非対称でもよい。あるいは、クランプ部38の形状及び/又は構造が、第3例と同様に、作用面49a及び作用面49bに対して軸方向にオフセットして設けられてもよい。この場合、例えば、クランプ部38の中心(及び/又は作用面40の中心)が、アウタコラム11aの作用面49a及び作用面49bの各中心に対して前方(又は後方)に位置するようにできる。また、軸方向において、テレスコ調節用の長孔21aの中心が、作用面49a、作用面49b、及び作用面40の少なくとも1つの中心と一致してもよく、オフセットしてもよい。
[実施の形態の第5例]
本発明の実施の形態の第5例に就いて、図41〜図44を参照しつつ説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本例のステアリング装置において、上述した実施の形態の第3例に対して、特に、締め付け力を受ける部分の構造が異なる。本例において、第3例と同様に、アウタコラム11aは、幅方向の2つの側の各々に設けられた、作用面49a及び作用面49bを有する。また、アウタコラム11aは、インナコラム10aを挟持ためのクランプ部38をさらに有する。作用面49aと作用面49bとは軸方向と交差する第1方向に互いに離間して配される。第1方向における作用面49aと作用面49bとの間に、クランプ部38の作用面40が配されている。クランプ部38の作用面40は、作用面49a及び作用面49bから独立して設けられている。また、作用面49a及び作用面49bについても互いに独立した関係にある。作用面49a及び作用面49bは、アウタコラム11aの枠体34に設けられ、開放状態(第2状態)から締め付け状態(第1状態)への遷移においてインナコラム10aに対する位置が実質的に変化しない又はその変位量がわずかである。クランプ部38の作用面40は、開放状態(第2状態)から締め付け状態(第1状態)への遷移においてインナコラム10aに対する位置が変化する(インナコラム10aに向けて変位する)変位面である。
本例において、第3例と異なり、アウタコラム11aはさらに、幅方向の2つの側の各々に設けられた、締め付け量制限のための制限面(着座面、第4面)84を有する。制限面84は、アウタコラム11aの枠体34に設けられる。アウタコラム11aにおいて、制限面84が設けられる部分は、クランプ部38に比べて高い剛性(曲げ剛性、たわみ特性)を有する。制限面84は、開放状態(第2状態)から締め付け状態(第1状態)への遷移においてインナコラム10aに対する位置が実質的に変化しない。制限面84がわずかに変位する場合にも、その変位量はクランプ部38の作用面40の変位量に比べて十分に低く設定される。また、制限面84は、軸方向に延在して設けられ、軸方向において作用面40と同程度の長さを有することができる。例えば、制限面84は、平坦面状を有する。追加的及び/又は代替的に、制限面84は、平坦状以外の形状を有することができる。例えば、制限面84は、第1方向において、作用面40と作用面49bとの間に配される。代替的及び/又は追加的に、制限面84は、第1方向において、作用面49aと作用面40との間に配置できる。また、制限面84は、第1方向において、軸方向スリット36及び/又は調節ロッド24a(図28参照)用の長孔21aに隣接して配される。代替的及び/又は追加的に、制限面84は、周方向スリット37a及び/又は周方向スリット37bに隣接して配置できる。
本例において、制限面84は、作用面49a、作用面49b、及び作用面40から独立して設けられる。また、制限面84は、作用面49a、作用面49b、及び作用面40に比べて、幅方向(締め付け方向、第2方向)において実質的に低い面高さを有する。すなわち、図42に示すように、締め付けが開放された状態(第2状態)において、クランプ部38の作用面40、40同士の幅寸法Hcに比べて、制限面84、84同士の幅寸法Hdが小さい(Hc>Hd)。換言すると、第2方向において、作用面40と制限面84との間に、締め付け量に対応したギャップGpが設けられている。なお、締め付けが開放された状態(第2状態)において、作用面49a、49a同士の幅寸法Haと、作用面49b、49b同士の幅寸法Hbと、作用面40、40同士の幅寸法Hcとは互いに実質的に同じである(Ha=Hb=Hc)。あるいは、締め付けが開放された状態(第2状態)において、作用面40、40同士の幅寸法Hcが、作用面49a、49a同士の幅寸法Ha、及び作用面49b、49b同士の幅寸法Hbに比べて大きい(Hc>Ha=Hb)。その他の構成は、上述した実施の形態の第4例と同様にできる。
本例において、制限面84は、第1方向において作用面49aと作用面49bとの間に配される。すなわち、作用面49aと作用面49bとの間に、クランプ部38の作用面40と、制限面84とが配される。例えば、第1方向において、制限面84の長孔21aの中心(調節ロッド24aの軸心)からの距離は、作用面40のそれと同程度に設定できる。
締め付け機構80において、開放状態(第2状態)から締め付け状態(第1状態)への遷移において、調節レバー26aの操作によって、アッパブラケット17aが撓み、支持板部22a、22a同士の間隔が縮まる。その結果、支持板部22aの内側面が、作用面(第1面)49a、作用面(第2面)49b、及び作用面(第3面)40に当接する。その後、調節レバー26aのさらなる操作により、アッパブラケット17aの支持板部22a、22a同士の間隔をさらに縮めることができる。
本例のステアリング装置において、アウタコラム11aの枠体34に設けられた制限面(第4面)84、84によって、アッパブラケット17a、17aの内方への変位量(撓み量)が制限される。支持板部22aがクランプ部38の作用面40に当接した後、支持板部22aに押された作用面40が幅方向内方に(アウタコラム11aの軸心に向かって)変位する。その後、支持板部22a、22a同士の間隔が所定値になると、支持板部22の内側面が制限面84に当接する。支持板部22aに押されても、制限面84は実質的に変位しない。そのため、制限面84に当接後、アウタコラム11aの軸心に向けた、支持板部22aの変位(撓み)が強制的に停止される。これに伴い、アウタコラム11aの軸心に向けた、クランプ部38の変位(撓み)も停止する。すなわち、支持板部22aが制限面84に当接した後、調節レバー26aがさらに操作されても、クランプ部38によるインナコラム10aに対する保持力の増大が防止される。
図44の(A)部に示すように、調節レバー26aの操作力(レバー操作力)の増大に伴い、インナコラム10aに対するクランプ38の保持力(テレスコ保持力)が増大する。同時に、チルト保持力(支持板部22a、22aがアウタコラム11aを保持する力に概ね相当する)も増大する。支持板部22aが制限面84に当接する(レバー操作力=LF2)と、その後にレバー操作力が増大しても、チルト保持力は増大するものの、テレスコ保持力は一定(HF2)に維持される。したがって、本例のステアリング装置では、インナコラム10aに対する過度の締め付けが回避され、これは例えば製造管理上において有利である。
例えば、本例のステアリング装置において、アッパブラケット17aの剛性に応じて、所定のレバー操作力に対するテレスコ保持力は変化する。すなわち、アッパブラケット17aの剛性が比較的高い場合、所定のレバー操作力に対するテレスコ保持力は比較的低くなる。仮に、アウタコラム11aに制限面84が設けられていない場合、図44の(B)部に示すように、テレスコ保持力の上限が制限されている規格に対して、レバー操作力の設計要求レンジは、ライン管理レンジに比べて狭くなる傾向にある。一方、本例のように、アウタコラム11aに制限面84が設けられている場合、図44の(A)部に示すように、レバー操作力の設計要求レンジを、ライン管理レンジに実質的に合わせることができる。その結果、本例のステアリング装置では、安定した製造管理が実現される。
なお、上述の実施形態における各要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。本開示は、多様に開示された実施形態それ自体及び他との様々な組み合わせ及びサブ的な組み合わせのすべての新規及び非自明な特徴及び態様に関する。開示されたもの及び方法は、特定の態様又は技術又は組み合わせに限定されず、また、開示されたもの及び方法が1つ以上の特定の利点があること又は特定の課題が解決されることを要求するものでもない。
アウタコラムは、軽合金製の枠体と鉄系合金製の筒体とを連結した構造に限らず、全体をアルミニウム系合金やマグネシウム系合金等の軽合金製のものを使用しても良い。ステアリング装置は、チルト調節機構とテレスコ調節機構との両方の機構を備えた構造でもよく、テレスコ調節機構又はチルト機構のみを備えた構造でもよい。軸方向スリットの形成位置及び補強ブリッジ部の形成位置を、上記説明の態様に対して、上下方向に関して反対にして(上方に形成して)もよい。1対の支持板部の内側面同士の間隔を縮めた際に、ローラ(回転部材)を押圧せずに、張出板部の幅方向端面を押圧する構成としてもよい。この場合には、例えば支持板部を上下の作用面同士の間で幅方向内方に撓ませて押圧する事ができる。ステアリング装置は、ステアリングロック装置を備えなくてもよい。この場合、アウタコラムに作用するトルクとしては、例えば、操舵時の反力、特にパワーアシスト機構が付属している場合には、この操舵反力は大きくなる事が考えられる。クランプ部の作用面(圧面)を他の作用面から実質的に分離しない構成でもよい。
一実施形態において、ステアリング装置は、ステアリングコラムと、支持ブラケットと、調節ロッドとを備える。ステアリングコラムは、前方に配置されたインナコラムの後端部に、後方に配置されたアウタコラムの前端部を、軸方向に関する相対変位を可能に緩く嵌合(外嵌)する事により構成されている。又、前記支持ブラケットは、車体に支持固定されており、前記アウタコラムの前端部を幅方向両側から挟む1対の支持板部を備えている。又、前記調節ロッドは、前記アウタコラムの前端部に形成された第一通孔(例えばテレスコ調節用長孔又は円孔)と、前記各支持板部にそれぞれ形成された第二通孔(例えばチルト調節用長孔又は円孔)とを、それぞれ幅方向に挿通する状態で配置されている。尚、ステアリング装置を、テレスコピック機構を備えた構造で実施する場合には、前記第一通孔は、軸方向に長いテレスコ調節用長孔とし、チルト機構を備えた構造で実施する場合には、前記第二通孔は、上下方向に長いチルト調節用長孔とする。これに対し、テレスコピック機構とチルト機構との何れか一方のみを備え、他方を備えない場合には、一方の通孔のみを長孔とし、他方は円孔とする。
一実施形態において、前記アウタコラムの前端部に、少なくともこのアウタコラムの軸方向に伸長するスリットを1乃至複数形成している。尚、スリットの形状としては、軸方向に伸長した直線形状とする事もできるし、軸方向(前後方向)両端部から円周方向(上下方向)に関して同方向にそれぞれ伸長した略U字形状(コ字形状)とする事もできる。又、前記アウタコラムのうちで、円周方向に関して前記スリットにそれぞれ隣接した、このアウタコラムの幅方向両側部分に、前記両支持板部の内側面同士の間隔を縮めた際に撓んで、前記インナコラムの外周面を弾性的に挟持する、1対のクランプ部を設けている。又、前記アウタコラムの幅方向両側面のうちで、前記各クランプ部を挟んで上下方向に離隔すると共に、これら各クランプ部が設けられた部分よりも幅方向に関する剛性が高い部分に、前記アウタコラムに作用するトルク(例えばステアリングホイールに入力され、ステアリングシャフト、キーロックカラー、ロックユニットを介して伝達されたトルク)を前記各支持板部の内側面に伝達する、1対の作用面をそれぞれ形成している。そして、前記ステアリングホイールの位置を調節可能な状態から、このステアリングホイールの位置を保持可能な状態に移行する際、前記両支持板部の内側面が、前記両クランプ部の外側面及び前記両作用面のみと当接している。
一例において、前記両作用面の前後方向両端部同士を、上下方向に伸長する1対の連結部の幅方向両側面により上下方向に連続させる。そして、前記両連結部の幅方向両側面を、前記両作用面よりも幅方向内側にオフセットさせる。