JPWO2016147824A1 - 炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶の製造方法 Download PDF

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Abstract

頂面と、頂面と反対側の底面と、頂面と底面との間に位置する筒状の側面とを有する坩堝と、側面の温度を測定可能な第1放射温度計と、底面の温度を測定可能な第2放射温度計とが準備される。坩堝内に原料と種結晶とが配置される。原料を昇華させることにより、種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる。炭化珪素単結晶を成長させる工程は、第1放射温度計により側面の温度を測定する工程と、第2放射温度計により底面の温度を測定する工程とを含む。側面の温度測定領域における算術平均粗さをRa1とし、底面の温度測定領域における算術平均粗さをRa2とした場合、Ra1およびRa2は10μm以下であり、Ra1とRa2との差の絶対値は1μm未満である。坩堝内の温度分布を精度良く制御可能な炭化珪素単結晶の製造方法を提供する。

Description

本開示は、炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
特表2012−510951号公報(特許文献1)には、昇華法により炭化珪素単結晶を製造する方法が記載されている。
特表2012−510951号公報
本開示の一態様の目的は、坩堝内の温度分布を精度良く制御可能な炭化珪素単結晶の製造方法を提供することである。
本開示の一態様に係る炭化珪素単結晶の製造方法は以下の工程を備えている。頂面と、頂面と反対側の底面と、頂面と底面との間に位置する筒状の側面とを有する坩堝と、側面の温度を測定可能な第1放射温度計と、底面の温度を測定可能な第2放射温度計とが準備される。坩堝内に原料と種結晶とが配置される。原料を昇華させることにより、種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる。炭化珪素単結晶を成長させる工程は、第1放射温度計により側面の温度を測定する工程と、第2放射温度計により底面の温度を測定する工程とを含む。側面の温度測定領域における算術平均粗さをRa1とし、底面の温度測定領域における算術平均粗さをRa2とした場合、Ra1およびRa2は10μm以下であり、Ra1とRa2との差の絶対値は1μm未満である。
本開示の一態様によれば、坩堝内の温度分布を精度良く制御可能な炭化珪素単結晶の製造方法を提供することができる。
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第1工程を示す縦断面模式図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第1工程を示す斜視模式図である。 放射温度計の構成を示す模式図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法を示すフロー図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第1工程を示す縦断面模式図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第2工程を示す縦断面模式図である。 坩堝の温度と時間との関係を示す図である。 チャンバ内の圧力と時間との関係を示す図である。 抵抗ヒータに供給する電力をフィードバック制御する方法を示す機能ブロック図である。 本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第1工程の変形例を示す斜視模式図である。 図10のXI−XI線に沿った矢視断面模式図である。 温度指示値のずれと、放射率比との関係を示す図である。 放射率比と、温度測定領域の算術平均粗さとの関係を示す図である。 平面度の定義を示す図である。
[本開示の実施形態の説明]
昇華法により炭化珪素単結晶を製造する際、たとえば放射温度計を用いて坩堝の外表面の温度が測定される。測定された外表面の温度に基づいて、ヒータに供給される電力が決定されることにより、ヒータから坩堝に供給される熱量が制御される。しかしながら、外表面の粗さが大きいと、放射温度計によって測定された温度の指示値が基準値からずれてしまう。たとえば放射温度計の温度測定領域の粗さが大きいと、実効的な温度測定領域の面積が大きくなる。そのため、放射温度計は、温度測定領域の粗さが小さい場合と比較して、多くの輻射エネルギーを受ける。そのため、一般的に、温度測定領域の粗さが大きい場合の温度の指示値は、温度測定領域の粗さが小さい場合の温度の指示値よりも大きくなる。温度の指示値が基準値からずれると、坩堝を所望の温度に制御することが困難となる。特に、坩堝の側面の粗さと、底面との粗さとの差が大きくなると、側面および底面の各々の温度を精度良く制御することが困難となる。結果として、坩堝内の温度分布を精度良く制御することが困難となり、炭化珪素単結晶の結晶品質が劣化する。
そこで発明者らは、坩堝の外表面の粗さが2色放射温度計の指示温度値に与える影響を定量的に見積もった。図12は、温度指示値のずれ(縦軸)と、放射率比(横軸)との関係を示す理論値である。温度指示値のずれは、基準値(2200℃)からの温度のずれである。放射率比は、波長が0.9μmにおける放射率を、波長が1.55μmにおける放射率で除した値である。図12に示す理論値によれば、放射率比が0.01ずれると、放射温度計の温度指示値が基準値から8℃ずれることが分かる。
図13は、放射率比(縦軸)と、温度測定領域の算術平均粗さ(横軸)との関係を示す実験値である。まず、外表面の算術平均粗さの異なる複数の坩堝を準備した。それぞれの坩堝の外表面の放射率を赤外分光法で測定し、波長が0.9μmにおける放射率と、波長が1.55μmにおける放射率とを実験的に求めた。放射率比は、波長が0.9μmにおける放射率を、波長が1.55μmにおける放射率で除して計算した。図13に示される実験結果によれば、坩堝の外表面の算術平均粗さ(Ra)が1μm大きくなると、放射率比が0.03小さくなることが確かめられた。図13の実験結果と図12の理論値とを組み合わせると、坩堝の外表面の算術平均粗さ(Ra)が1μm異なると、放射温度計の温度指示値が基準値から24℃ずれることが分かる。
昇華法によって炭化珪素単結晶を成長させる際には、坩堝の底面と頂面との温度差は、たとえば100℃以上200℃以下程度に維持される。24℃の温度のずれは、底面と頂面との温度差の約1/4〜1/8に相当する。特に、底面の算術平均粗さと側面の算術平均粗さとの差が大きいと、底面の温度指示値の基準値からのずれと側面の温度指示値の基準値からのずれとの差が大きくなるため、底面および側面の各々を所望の温度に制御することが困難となる。発明者らは、底面の算術平均粗さと側面の算術平均粗さとの差を1μm未満とすることにより、坩堝内の温度分布を精度良く制御可能であることを見出した。
(1)本開示の一態様に係る炭化珪素単結晶20の製造方法は以下の工程を備えている。頂面7cと、頂面7cと反対側の底面7aと、頂面7cと底面7aとの間に位置する筒状の側面7bとを有する坩堝7と、側面7bの温度を測定可能な第1放射温度計9bと、底面7aの温度を測定可能な第2放射温度計9aとが準備される。坩堝7内に固体の原料12と、種結晶11とが配置される。原料12を昇華させることにより、種結晶11上に炭化珪素単結晶20を成長させる。炭化珪素単結晶20を成長させる工程は、第1放射温度計9bにより側面7bの温度を測定する工程と、第2放射温度計9aにより底面7aの温度を測定する工程とを含む。側面7bの温度測定領域7b1における算術平均粗さをRa1とし、底面7aの温度測定領域7a1における算術平均粗さをRa2とした場合、Ra1およびRa2は10μm以下であり、Ra1とRa2との差の絶対値は1μm未満である。
上記(1)に係る炭化珪素単結晶20の製造方法によれば、側面7bの温度測定領域7b1における算術平均粗さをRa1とし、底面7aの温度測定領域7a1における算術平均粗さをRa2とした場合、Ra1およびRa2は10μm以下であり、Ra1とRa2との差の絶対値は1μm未満である。これにより、第1放射温度計9bによって測定される側面7bの温度指示値の基準値からのずれと、第2放射温度計9aによって測定される底面7aの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。結果として、坩堝7内の温度分布を精度良く制御することができる。
(2)上記(1)に係る炭化珪素単結晶20の製造方法において、頂面7cの温度を測定可能な第3放射温度計9cを準備する工程をさらに備えていてもよい。炭化珪素単結晶20を成長させる工程は、第3放射温度計9cにより頂面7cの温度を測定する工程を含む。頂面7cの温度測定領域7c1における算術平均粗さをRa3とした場合、Ra3は10μm以下であり、Ra3とRa1との差の絶対値は1μm未満である。これにより、第1放射温度計9bによって測定される側面7bの温度指示値の基準値からのずれと、第3放射温度計9cによって測定される頂面7cの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。結果として、坩堝7内の温度分布を精度良く制御することができる。
(3)上記(1)に係る炭化珪素単結晶20の製造方法において、頂面7cの温度を測定可能な第3放射温度計9cを準備する工程をさらに備えていてもよい。炭化珪素単結晶20を成長させる工程は、第3放射温度計9cにより頂面7cの温度を測定する工程を含む。頂面7cの温度測定領域7c1における算術平均粗さをRa3とした場合、Ra3は10μm以下であり、Ra3とRa2との差の絶対値は1μm未満である。これにより、第3放射温度計9cによって測定される頂面7cの温度指示値の基準値からのずれと、第2放射温度計9aによって測定される底面7aの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。結果として、坩堝7内の温度分布を精度良く制御することができる。
(4)上記(1)に係る炭化珪素単結晶20の製造方法において、頂面7cの温度を測定可能な第3放射温度計9cを準備する工程をさらに備えていてもよい。炭化珪素単結晶20を成長させる工程は、第3放射温度計9cにより頂面7cの温度を測定する工程を含む。頂面7cの温度測定領域7c1における算術平均粗さをRa3とした場合、Ra3は10μm以下であり、Ra3とRa1との差の絶対値は1μm未満であり、かつRa3とRa2との差の絶対値は1μm未満である。これにより、第1放射温度計9bによって測定される側面7bの温度指示値の基準値からのずれと、第3放射温度計9cによって測定される頂面7cの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。同様に、第3放射温度計9cによって測定される頂面7cの温度指示値の基準値からのずれと、第2放射温度計9aによって測定される底面7aの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。結果として、坩堝7内の温度分布を精度良く制御することができる。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに係る炭化珪素単結晶20の製造方法において、第1放射温度計9bおよび第2放射温度計9aは、2色放射温度計であってもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに係る炭化珪素単結晶20の製造方法において、側面7bの温度測定領域7b1は、平面度が0.2mm以下の平らな面であってもよい。これにより、温度測定領域7b1の温度測定の精度が向上する。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本開示の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
本開示の一実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法について説明する。
まず、炭化珪素単結晶の製造装置を準備する工程(S10:図4)が実施される。図1および図9に示されるように、坩堝7と、第1抵抗ヒータ1と、第2抵抗ヒータ2と、第3抵抗ヒータ3と、チャンバ6と、放射温度計9と、電源13と、制御部30とを主に有する炭化珪素単結晶の製造装置100が準備される。坩堝7は、頂面7cと、頂面7cと反対側の底面7aと、頂面7cと底面7aとの間に位置する側面7bとを有する。側面7bは筒状であり、好ましくは円筒状である。坩堝7は、種結晶11(図5参照)を保持可能に構成された台座10bと、原料12(図5参照)を収容可能に構成された収容部10aとを有する。台座10bは、種結晶11の裏面11aと接する種結晶保持面7dと、種結晶保持面7dと反対側の頂面7cとを有する。台座10bが頂面7cを構成する。収容部10aは、底面7aを構成する。側面7bは、台座10bと収容部10aとにより構成されている。
第1抵抗ヒータ1、第2抵抗ヒータ2および第3抵抗ヒータ3の各々は、坩堝7の外部であって、チャンバ6の内部に設けられている。第1抵抗ヒータ1、第2抵抗ヒータ2および第3抵抗ヒータ3の各々と、チャンバ6との間に断熱材(図示せず)が設けられていてもよい。第1抵抗ヒータ1は、坩堝7の底面7aに対面して設けられている。第1抵抗ヒータ1は、底面7aから離間している。第2抵抗ヒータ2は、側面7bを取り囲むように構成されている。第2抵抗ヒータ2は、側面7bから離間している。第3抵抗ヒータ3は、頂面7cに対面して設けられている。第3抵抗ヒータ3は、頂面7cから離間している。なお、坩堝7、断熱材、第1抵抗ヒータ1、第2抵抗ヒータ2および第3抵抗ヒータ3の各々は、たとえば炭素により構成されており、好ましくは黒鉛により構成されている。炭素(黒鉛)には、製造上混入する不純物が含まれていてもよい。
図2に示されるように、側面7bは、温度測定領域7b1と、温度測定領域7b1以外の周辺領域7b2とを含む。同様に、底面7aは、温度測定領域7a1と、温度測定領域7a1以外の周辺領域7a2とを含む。同様に、頂面7cは、温度測定領域7c1と、温度測定領域7c1以外の周辺領域7c2とを含む。温度測定領域7a1、7b1、7c1の各々は、たとえば円形である。温度測定領域7a1、7b1、7c1の各々の直径は、たとえば5mmである。
側面7bの一部である温度測定領域7b1における算術平均粗さをRa1とし、底面7aの一部である温度測定領域7a1における算術平均粗さをRa2とし、頂面7cの一部である温度測定領域7c1における算術平均粗さをRa3とする。Ra1は、たとえば10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。Ra2は、たとえば10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。Ra3は、たとえば10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。温度測定領域7a1、7b1、7c1の算術平均粗さは、たとえば触針式の表面粗さ測定器により測定可能である。
Ra1とRa2との差の絶対値は、たとえば1μm未満であり、好ましくは0.5μm以下である。Ra3とRa1との差の絶対値は、たとえば1μm未満であり、好ましくは0.5μm以下である。Ra3とRa2との差の絶対値は、たとえば1μm未満であり、好ましくは0.5μm以下である。
放射温度計9は、第1放射温度計9bと、第2放射温度計9aと、第3放射温度計9cとを含んでいる。第1放射温度計9bは、チャンバ6の外部において側面7bに対面する位置に設けられており、窓6bを通して側面7bの温度を測定可能に構成されている。より詳細には、第1放射温度計9bは、温度測定領域7b1の温度を測定可能に構成されているが、温度測定領域7b1以外の周辺領域7b2の温度を測定可能には構成されていない。つまり、温度測定領域7b1から放射される電磁波8bは、第1放射温度計9bにより受光されることにより、温度測定領域7b1の温度が測定される。
同様に、第2放射温度計9aは、チャンバ6の外部において坩堝7の底面7aに対面する位置に設けられており、窓6aを通して底面7aの温度を測定可能に構成されている。より詳細には、第2放射温度計9aは、温度測定領域7a1の温度を測定可能に構成されているが、温度測定領域7a1以外の周辺領域7a2の温度を測定可能には構成されていない。つまり、温度測定領域7a1から放射される電磁波8aは、第2放射温度計9aにより受光されることにより、温度測定領域7a1の温度が測定される。
同様に、第3放射温度計9cは、チャンバ6の外部において頂面7cに対面する位置に設けられており、窓6cを通して頂面7cの温度を測定可能に構成されている。より詳細には、第3放射温度計9cは、温度測定領域7c1の温度を測定可能に構成されているが、温度測定領域7c1以外の周辺領域7c2の温度を測定可能には構成されていない。つまり、温度測定領域7c1から放射される電磁波8cは、第3放射温度計9cにより受光されることにより、温度測定領域7c1の温度が測定される。
放射温度計9は、単色放射温度計であってもよいし、2色放射温度計であってもよい。好ましくは、第1放射温度計9b、第2放射温度計9aおよび第3放射温度計9cは、2色放射温度計である。2色放射温度計として、たとえば株式会社チノー製のパイロメータ(型番:IR−CAHシリーズ)が使用可能である。より具体的には、型番:IR−CAH8TN6が使用可能である。パイロメータの測定波長は、たとえば1.55μmおよび0.9μmである。パイロメータの放射率設定値は、たとえば0.9である。パイロメータの距離係数は、たとえば300である。パイロメータの測定径は、測定距離を距離係数で除することにより求められる。たとえば測定距離が900mmの場合、測定径は3mmである。
図3は、2色放射温度計の構造の一例を示している。図3に示されるように、放射温度計9は、たとえば、対物レンズ21と、ビームスプリッタ22と、バンドパスフィルタ23、25と、センサ24、25とを有している。側面7bから放射される電磁波8は、対物レンズ21を通過した後、ビームスプリッタ22により、電磁波8dと、電磁波8eとに分光される。電磁波8dは、バンドパスフィルタ23を通過し、センサ24に到達する。バンドパスフィルタ23は、たとえば波長が1.55μmである赤外線を透過可能に構成されている。電磁波8eは、バンドパスフィルタ25を通過し、センサ26に到達する。バンドパスフィルタ25は、たとえば波長が0.9μmである赤外線を透過可能に構成されている。
次に、原料と種結晶とを配置する工程(S20:図4)が実施される。具体的には、図5に示されるように、坩堝7内に、固体の原料12と、種結晶11とが配置される。原料12は、坩堝7の収容部10a内に設けられる。原料12は、たとえば多結晶炭化珪素の粉末である。種結晶11は、たとえば接着剤を用いて台座10bの種結晶保持面7dに固定される。種結晶11は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素の基板である。種結晶11は、台座10bの種結晶保持面7dに固定される裏面11aと、裏面11aと反対側の表面11bとを有する。表面11bの直径は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。表面11bは、たとえば{0001}面から8°以下程度オフした面である。表面11bは、(0001)面から8°以下程度オフした面であってもよいし、(000−1)面から8°以下程度オフした面であってもよい。種結晶11の表面11bが、原料12の表面12aに対面するように、種結晶11および原料12は坩堝7内に配置される。
次に、炭化珪素単結晶を成長させる工程(S30:図4)が実施される。具体的には、第1抵抗ヒータ1、第2抵抗ヒータ2および第3抵抗ヒータ3を用いて坩堝7が加熱される。図7に示されるように、時間T0において温度A2であった坩堝7が、時間T0から時間T1にかけて温度A1にまで加熱される。温度A2はたとえば室温である。温度A1はたとえば2000℃以上2400℃以下の温度である。底面7aから頂面7cに向かって坩堝7内の温度が低くなるように、原料12および種結晶11の双方が加熱される。時間T1から時間T6まで、坩堝7が温度A1に維持される。図8に示されるように、時間T0から時間T2までチャンバ6内は、圧力P1に維持される。圧力P1は、たとえば大気圧である。チャンバ6内の雰囲気ガスは、たとえばアルゴンガス、ヘリウムガスまたは窒素ガスなどの不活性ガスである。
時間T2から時間T3にかけて、チャンバ6内の圧力が圧力P1から圧力P2にまで低減される。圧力P2は、たとえば0.5kPa以上2kPa以下である。時間T2から時間T3の間において、原料12が昇華し始める。昇華した炭化珪素は、種結晶11の表面11b上に再結晶化する。時間T3から時間T4までチャンバ6内が圧力P2に維持される。時間T3から時間T4の間、原料12が昇華し続け、種結晶11の表面11b上に炭化珪素単結晶20(図6参照)が成長する。つまり、第1抵抗ヒータ1、第2抵抗ヒータ2および第3抵抗ヒータ3によって原料12を昇華させることにより、種結晶11の表面11b上に炭化珪素単結晶20が成長する。
炭化珪素単結晶を成長させる工程は、第1放射温度計9bにより側面7bの温度を測定する工程と、第2放射温度計9aにより底面7aの温度を測定する工程と、第3放射温度計9cにより頂面7cの温度を測定する工程を含む。具体的には、第1放射温度計9bにより、坩堝7の側面7bの温度測定領域7b1の温度が測定される。図9に示すように、第1放射温度計9bによって測定された坩堝7の温度測定領域7b1の温度が、制御部30に送られる。制御部30において、温度測定領域7b1の温度が、所望の温度と比較される。温度測定領域7b1の温度が所望の温度よりも高い場合、たとえば電源13に対して、第2抵抗ヒータ2に供給する電力を減らすように指令を出す。反対に、温度測定領域7b1の温度が所望の温度よりも低い場合、たとえば電源13に対して、第2抵抗ヒータ2に供給する電力を増やすように指令を出す。つまり、電源13は、制御部30からの指令に基づいて、第2抵抗ヒータ2に対して電力を供給する。以上のように、第1放射温度計9bにより測定された側面7bの温度測定領域7b1の温度に基づいて、第1抵抗ヒータ1に供給する電力が決定されることにより、坩堝7の側面7bの温度が所望の温度に制御される。
同様に、第2放射温度計9aにより、坩堝7の底面7aの温度測定領域7a1の温度が測定される。第2放射温度計9aにより測定された温度測定領域7a1の温度に基づいて、第1抵抗ヒータ1に供給する電力が決定されることにより、底面7aの温度が所望の温度に制御される。同様に、第3放射温度計9cにより、坩堝7の頂面7cの温度測定領域7c1の温度が測定される。第3放射温度計9cにより測定された温度測定領域7c1の温度に基づいて、第3抵抗ヒータ3に供給する電力が決定されることにより、頂面7cの温度が所望の温度に制御される。底面7a、側面7bおよび頂面7cの温度が所望の温度に制御されることにより、原料12は炭化珪素が昇華する温度に維持され、かつ種結晶11は炭化珪素が再結晶化する温度に維持される。結果として、結晶品質が良好な炭化珪素単結晶20を種結晶11上に成長させることができる。
次に、時間T4から時間T5にかけて、チャンバ6内の圧力が圧力P2から圧力P1に上昇する(図8参照)。チャンバ6内の圧力が上昇することにより、原料12の昇華が抑制される。これにより、炭化珪素単結晶を成長させる工程が実質的に終了する。時間T5以降、チャンバ6内の圧力は、圧力P1に維持される。時間T6において坩堝7の加熱を停止し、坩堝7を冷却する。坩堝7の温度が室温付近になった後、坩堝7から炭化珪素単結晶20が取り出される。以上により、炭化珪素単結晶の製造が完了する。
次に、炭化珪素単結晶の製造装置を準備する工程の変形例について説明する。
図10に示されるように、側面7bの温度測定領域7b1は、平面度が0.2mm以下の平らな面7b3であってもよい。平面度を測定する場合における温度測定領域7b1の直径は、20mmである。側面7bの一部に平らな面7b3が露出するように、収容部10aの一部が切り取られていてもよい。図10および図11に示されるように、側面7bは、曲面7b4と、平らな面7b3とを有している。平らな面7b3は、曲面7b4と連続的に形成されている。底面7aに対して垂直な方向から見た場合(図11の視野)において、平らな面7b3は、2つの曲面7b4に挟まれた位置に設けられている。図11に示されるように、平らな面7b3と反対側の内側面7eは、曲面であってもよい。平らな面7b3は、温度測定領域7b1を含んでいてもよい。言い換えれば、平らな面7b3は、温度測定領域7b1と、温度測定領域7b1以外の領域とを有していてもよい。頂面7cの温度測定領域7c1および底面7aの温度測定領域7a1の平面度は、たとえば0.2mm以下である。平面度を測定する場合における温度測定領域7c1および温度測定領域7a1の直径は、20mmである。
平面度は、平面形体の幾何学的に正しい平面からの狂いの大きさである(日本工業規格B0621−1984参照)。具体的には、直径が20mmである温度測定領域7b1を平行な2つの平面41、42で挟んだとき、平行な2つの平面41、42の間隔40が最小となる場合の間隔40が、温度測定領域7b1の平面度である(図14参照)。たとえば温度測定領域7b1の平面度が0.2mmである場合、温度測定領域7b1は0.2mm離れた2つの平行な平面41、42の間にある。平面度は、たとえば坩堝を測定面が水平になるように定盤上において、ハイトゲージにより測定することができる。
次に、実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の作用効果について説明する。
実施の形態に係る炭化珪素単結晶20の製造方法によれば、側面7bの温度測定領域7b1における算術平均粗さをRa1とし、底面7aの温度測定領域7a1における算術平均粗さをRa2とした場合、Ra1およびRa2は10μm以下であり、Ra1とRa2との差の絶対値は1μm未満である。これにより、第1放射温度計9bによって測定される側面7bの温度指示値の基準値からのずれと、第2放射温度計9aによって測定される底面7aの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。結果として、坩堝7内の温度分布を精度良く制御することができる。
また実施の形態に係る炭化珪素単結晶20の製造方法によれば、頂面7cの温度を測定可能な第3放射温度計9cを準備する工程をさらに備えている。炭化珪素単結晶20を成長させる工程は、第3放射温度計9cにより頂面7cの温度を測定する工程を含む。頂面7cの温度測定領域7c1における算術平均粗さをRa3とした場合、Ra3は10μm以下であり、Ra3とRa1との差の絶対値は1μm未満である。これにより、第1放射温度計9bによって測定される側面7bの温度指示値の基準値からのずれと、第3放射温度計9cによって測定される頂面7cの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。結果として、坩堝7内の温度分布を精度良く制御することができる。
さらに実施の形態に係る炭化珪素単結晶20の製造方法によれば、頂面7cの温度を測定可能な第3放射温度計9cを準備する工程をさらに備えている。炭化珪素単結晶20を成長させる工程は、第3放射温度計9cにより頂面7cの温度を測定する工程を含む。頂面7cの温度測定領域7c1における算術平均粗さをRa3とした場合、Ra3は10μm以下であり、Ra3とRa2との差の絶対値は1μm未満である。これにより、第3放射温度計9cによって測定される頂面7cの温度指示値の基準値からのずれと、第2放射温度計9aによって測定される底面7aの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。結果として、坩堝7内の温度分布を精度良く制御することができる。
さらに実施の形態に係る炭化珪素単結晶20の製造方法によれば、頂面7cの温度を測定可能な第3放射温度計9cを準備する工程をさらに備えている。炭化珪素単結晶20を成長させる工程は、第3放射温度計9cにより頂面7cの温度を測定する工程を含む。頂面7cの温度測定領域7c1における算術平均粗さをRa3とした場合、Ra3は10μm以下であり、Ra3とRa1との差の絶対値は1μm未満であり、かつRa3とRa2との差の絶対値は1μm未満である。これにより、第1放射温度計9bによって測定される側面7bの温度指示値の基準値からのずれと、第3放射温度計9cによって測定される頂面7cの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。同様に、第3放射温度計9cによって測定される頂面7cの温度指示値の基準値からのずれと、第2放射温度計9aによって測定される底面7aの温度指示値の基準値からのずれとの差を低減することができる。結果として、坩堝7内の温度分布を精度良く制御することができる。
さらに実施の形態に係る炭化珪素単結晶20の製造方法によれば、第1放射温度計9bおよび第2放射温度計9aは、2色放射温度計である。
さらに実施の形態に係る炭化珪素単結晶20の製造方法によれば、側面7bの温度測定領域7b1は、平面度が0.2mm以下の平らな面である。これにより、温度測定領域7b1の温度測定の精度が向上する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 第1抵抗ヒータ、2 第2抵抗ヒータ、3 第3抵抗ヒータ、6 チャンバ、6a,6b,6c 窓、7 坩堝、7a 底面、7a2,7b2,7c2 周辺領域、7a1,7b1,7c1 温度測定領域、7b 側面、7b3 平らな面、7b4 曲面、7c
頂面、7d 種結晶保持面、7e 内側面、8,8a,8b,8c,8d,8e 電磁波、9 放射温度計、9a 第2放射温度計、9b 第1放射温度計、9c 第3放射温度計、10a 収容部、10b 台座、11 種結晶、11a 裏面、11b,12a 表面、12 原料、13 電源、20 炭化珪素単結晶、21 対物レンズ、22 ビームスプリッタ、23,25 バンドパスフィルタ、24,26 センサ、30 制御部、40 間隔、41,42 平面、100 製造装置、A1,A2 温度、P1,P2 圧力、T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6 時間。

Claims (6)

  1. 頂面と、前記頂面と反対側の底面と、前記頂面と前記底面との間に位置する筒状の側面とを有する坩堝と、前記側面の温度を測定可能な第1放射温度計と、前記底面の温度を測定可能な第2放射温度計とを準備する工程と、
    前記坩堝内に固体の原料と、種結晶とを配置する工程と、
    前記原料を昇華させることにより、前記種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる工程とを備え、
    前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、前記第1放射温度計により前記側面の温度を測定する工程と、前記第2放射温度計により前記底面の温度を測定する工程とを含み、
    前記側面の温度測定領域における算術平均粗さをRa1とし、前記底面の温度測定領域における算術平均粗さをRa2とした場合、
    Ra1およびRa2は10μm以下であり、
    Ra1とRa2との差の絶対値は1μm未満である、炭化珪素単結晶の製造方法。
  2. 前記頂面の温度を測定可能な第3放射温度計を準備する工程をさらに備え、
    前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、前記第3放射温度計により前記頂面の温度を測定する工程を含み、
    前記頂面の温度測定領域における算術平均粗さをRa3とした場合、
    Ra3は10μm以下であり、
    Ra3とRa1との差の絶対値は1μm未満である、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  3. 前記頂面の温度を測定可能な第3放射温度計を準備する工程をさらに備え、
    前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、前記第3放射温度計により前記頂面の温度を測定する工程を含み、
    前記頂面の温度測定領域における算術平均粗さをRa3とした場合、
    Ra3は10μm以下であり、
    Ra3とRa2との差の絶対値は1μm未満である、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  4. 前記頂面の温度を測定可能な第3放射温度計を準備する工程をさらに備え、
    前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、前記第3放射温度計により前記頂面の温度を測定する工程を含み、
    前記頂面の温度測定領域における算術平均粗さをRa3とした場合、
    Ra3は10μm以下であり、
    Ra3とRa1との差の絶対値は1μm未満であり、かつRa3とRa2との差の絶対値は1μm未満である、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  5. 前記第1放射温度計および前記第2放射温度計は、2色放射温度計である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  6. 前記側面の温度測定領域は、平面度が0.2mm以下の平らな面である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
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