JPWO2016147682A1 - エアバッグ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】オブリーク衝突時に乗員をより好適に拘束し、乗員に対する傷害値を抑えることが可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。【解決手段】エアバッグ装置100は、車両の乗員132を拘束する。エアバッグ装置100は、助手席104の車両前方で膨張展開するメインバッグ112と、メインバッグ112の車幅方向内側で膨張展開するセンタバッグ114と、センタバッグ114のさらに車幅方向内側に設けられ、センタバッグ114と車両のインストルメントパネル102との間隙S1を埋めるように膨張展開する支持膨張部150と、を備えることを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、車両の乗員を車両前方から拘束するエアバッグ装置に関するものである。
近年の車両にはエアバッグ装置がほぼ標準装備されている。エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、ガス圧で膨張展開して乗員を受け止めて保護する。エアバッグ装置には、設置箇所や用途に応じて様々な種類がある。例えば、主に前後方向の衝撃から前部座席の乗員を守るために、運転席にはステアリングの中央にフロントエアバッグが設けられていて、助手席の近傍にはインストルメントパネルやその他の部位にパッセンジャエアバッグが設けられている。その他、側面衝突やそれに続いて起こるロールオーバ(横転)から前後列の各乗員を守るために、壁部の天井付近にはサイドウィンドウに沿って膨張展開するカーテンエアバッグが設けられ、座席の側部には乗員のすぐ脇へ膨張展開するサイドエアバッグが設けられている。
特許文献1に開示されているエアバッグ配設置構造は、3人掛けの前部座席にも対応可能になっている。特許文献1では、運転席の乗員を拘束する第1のエアバッグユニット、および助手席の乗員を拘束する第2のエアバッグユニットに加え、中央席の乗員を拘束するために第3のエアバッグユニットが膨張展開する。第3のエアバッグユニットは、天井のサンバイザー付近に設置されていて、中央席の乗員とインストルメントパネルとの間に向かって下方へ膨張展開する構成となっている。
特開平6−80057号公報
現在では、エアバッグ装置に対して、例えば車両に対して斜め前後方向からの衝撃が加わるいわゆるオブリーク衝突など、変則的な衝突や衝撃への対応も求められている。オブリーク衝突での乗員は、座席の正面に存在するエアバッグクッション(以下、「クッション」と称する)に対して、斜め方向等の変則的な挙動で進入する。その場合、例えば特許文献1のエアバッグ配設構造では、助手席の乗員は、車幅方向内側(以下、「車内側」と称する)の前方に存在する第3のエアバッグユニットに接触することがある。しかしながら、単に乗員の斜め前方にもクッションを設置するだけでは、十分な乗員拘束力を発揮したり乗員の傷害値を抑えたりすることは難しい。
本発明は、このような課題に鑑み、オブリーク衝突時に乗員をより好適に拘束し、乗員に対する傷害値を抑えることが可能なエアバッグ装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるエアバッグ装置の代表的な構成は、車両の乗員を拘束するエアバッグ装置であって、当該エアバッグ装置は、前部座席の車両前方で膨張展開するメインバッグと、メインバッグの車幅方向内側で膨張展開するセンタバッグと、センタバッグのさらに車幅方向内側に設けられ、該センタバッグと車両のインストルメントパネルとの間隙を埋めるように膨張展開する支持膨張部と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、センタバッグの車内側に支持膨張部を設けたことによって、センタバッグのみの場合に比べてインストルメントパネルとの接触面積が増えるため、センタバッグの姿勢が崩れにくくなる。したがって、上記構成であれば、オブリーク衝突時等に乗員が斜め前方に進入した場合であっても、センタバッグは車内側に移動することなく、乗員を効率よく拘束することが可能である。
上記の支持膨張部は、車両前後方向から見て、センタバッグの車幅方向内側の側縁よりも車幅方向内側において、側縁から水平に延びる第1輪郭線と、第1輪郭線の車幅方向内側の端点から車幅方向外側の上方へ延びて側縁に達する第2輪郭線とを含む輪郭を有するよう膨張展開してもよい。この構成によれば、よりインストルメントパネルとの接触面積を効率よく確保できる支持膨張部が実現可能である。
上記の支持膨張部は、車両前後方向から見て、センタバッグの車幅方向内側に接する鉛直線よりもさらに車幅方向内側に突出していてもよい。この構成によっても、よりインストルメントパネルとの接触面積を効率よく確保できる支持膨張部が実現可能である。
上記のセンタバッグの車幅方向内側の側縁は湾曲して突出していて、支持膨張部は、車両前後方向から見て、センタバッグの側縁の頂点の上下にわたってセンタバッグに接続していてもよい。支持膨張部は、センタバッグの側縁の頂点を含む範囲に接続することで、センタバッグをより安定して支えることが可能になっている。
上記の支持膨張部は、車両前方へ向かって次第に幅が広がっていてもよい。この構成によっても、よりインストルメントパネルとの接触面積を効率よく確保できる支持膨張部が実現可能である。
上記のセンタバッグは、インストルメントパネルの上方からインストルメントパネルよりも後方にかけて膨張展開するとよい。また、センタバッグは、メインバッグよりも車両後方に突出して膨張展開してもよい。
オブリーク衝突では、助手席の乗員は車内側の斜め前方へ向かって移動する場合がある。その場合、乗員の頭部が助手席の正面に存在する従来のメインバッグに接触すると、頭部には上から見て首を軸にして時計回りの回転が生じることがある。そこで、例えば上記構成では、メインバッグの車内側に設けたセンタバッグを、メインバッグよりも車両後方に突出させている。この構成によれば、車内側斜め前方へ移動する乗員の頭部は、正面のメインバッグに接触するのと同時に、あるいはその直前もしくは直後に、主に側頭部からセンタバッグに接触する。これにより、乗員の頭部の時計回りの回転を減少または打ち消すことができる。特に、乗員の頭部の回転の角速度を小さくすることができるため、回転に伴う乗員の傷害値を抑えることができる。
当該エアバッグ装置は、乗員の頭部をメインバッグとセンタバッグとの谷間の車両後方側で拘束してもよい。この構成であると、乗員の頭部は、側頭部をセンタバッグに接触させながら、メインバッグとセンタバッグとの間に設けられた谷間に案内されるようにして拘束される。したがって、当該エアバッグ装置は、乗員の頭部をより効率よく拘束してその傷害値をさらに抑えることが可能になる。
メインバッグとセンタバッグは、谷間の下方において一体化していてもよい。谷間は乗員の頭部が接触し得る箇所に設ければよく、谷間よりも下方ではメインバッグとセンタバッグとを一体化しておくことで、例えば乗員の胸部等を好適に拘束可能になる。
当該エアバッグ装置はさらに、帯状であって、センタバッグの車両後方側の上部の第1接続部とメインバッグの上部の第2接続部とにつながれるテザーベルトを備え、テザーベルトは、メインバッグおよびセンタバッグが膨張展開して第1接続部と第2接続部が互いに離れる方向へ移動することで緊張する長さを有してもよい。このテザーベルトによれば、センタバッグに乗員の頭部が車外側から接触した場合にも、センタバッグのメインバッグに対する車内側への移動を防ぎ、谷間の狭隘さを保つことができる。したがって、頭部を谷間へと好適に案内して拘束することが可能になる。
上記のメインバッグは、膨張展開によって車両のウィンドシールドと車両のインストルメントパネルの上面部とに接触してもよい。すなわち、メインバッグは、ウィンドシールドとインストルメントパネルに挟まれて膨張展開するとよい。この構成によれば、メインバッグは乗員が進入した際にも姿勢を安定させることができ、このメインバッグにテザーベルトでつながれたセンタバッグの姿勢もより安定することとなる。
当該エアバッグ装置はさらに、箱型であってメインバッグおよびセンタバッグを収納して車両のインストルメントパネルの上面部の内側に設けられるハウジングを備え、メインバッグおよびセンタバッグは、インストルメントパネルの上面部を開裂して膨張展開してもよい。この構成によって、乗員拘束性能の高い前部座席用のエアバッグ装置が好適に実現可能である。
本発明によれば、オブリーク衝突時に乗員をより好適に拘束し、乗員に対する傷害値を抑えることが可能なエアバッグ装置が提供可能である。
本発明の実施形態にかかるエアバッグ装置の概要を例示する図である。 図1(b)の膨張展開時のクッションを各方向から例示した図である。 図1(b)の膨張展開時のクッションを各方向から例示した図である。 図1(b)のクッションが乗員を拘束する過程を例示した図である。 図4のクッションが乗員を拘束する過程を上方から見て例示した図である。 図5のクッションが乗員を拘束する過程を車両前方から見て例示した図である。 図6(b)のクッションの矢視Aにおける模式図である。
E1…頭部、E1a…側頭部、E2…首部、E3…肩部、E3a…左肩部、E3b…右肩部、E4…胸部、E5…腰部、L1 …センタバッグの側縁の頂点に接する鉛直線、S1 …センタバッグとインストルメントパネルとの間隙、100…エアバッグ装置、102…インストルメントパネル、104…助手席、106…インストルメントパネルの上面部、108…クッション、110…インフレータ、112…メインバッグ、114…センタバッグ、116…ウィンドシールド、118…センターコンソール、120…タイパネル、122…テザーベルト、124…テザーベルトの第1接続部、126…テザーベルトの第2接続部、128…谷間、130…ベントホール、132…乗員、134…ハウジング、136…シートベルト、140…頭部に生じる回転、142…センタバッグの上部、144…メインバッグの上部、150 …支持膨張部、152 …センタバッグの車内側の側縁、154 …支持膨張部の第1輪郭線、156…頭部の軌跡、158…接続部分、160…センタバッグの後方領域、162 …センタバッグの側面部、166 …後方領域の後端部、170 …センタバッグの上端、172 …センタバッグの側縁の頂点、174 …第1輪郭線の端点、176 …第2輪郭線
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本発明の実施形態にかかるエアバッグ装置100の概要を例示する図である。図1(a)はエアバッグ装置100の稼動前の車両を例示した図である。本実施形態では、エアバッグ装置100を、左ハンドル車における前部座席用、特に助手席用(前列右側座席)のものとして具現化している。エアバッグ装置100は、インストルメントパネル102の助手席104側における上面部106の内側に設置される。
エアバッグ装置100は、不図示のセンサから衝撃の検知信号を受けると、クッション108(図1(b)参照)が上面部106を開裂して車両後方に膨張展開する。図1(b)はエアバッグ装置100の稼動後の車両を例示した図である。エアバッグ装置100のクッション108は、助手席104の乗員132(図4(a)参照)を車両前方から拘束する。クッション108は袋状であって、インフレータ110(図4(a)参照)からガスを受給して膨張展開する。クッション108は、その表面を構成する複数の基布を重ねて縫製または接着することや、OPW(One-Piece Woven)を用いての紡織などによって形成されている。
当該エアバッグ装置100のクッション108には、メインバッグ112およびセンタバッグ114の2つの部位が含まれている。メインバッグ112は、助手席104の前側に膨張展開する、容量の大きな部位である。メインバッグ112は、助手席104の乗員132とインストルメントパネル102およびウィンドシールド116との間の空間を埋めるように膨張展開する。これにより、乗員132のインストルメントパネル102への衝突を防ぐ。また、ウィンドシールド116への乗員132の衝突を防ぐことで、併せて乗員132の車外放出をも防ぐ。
センタバッグ114は、メインバッグ112の車内側にて膨張展開する、メインバッグ112よりも容量の小さい扁平な部位である。センタバッグ114は、乗員132(図5(a)参照)から見て、センターコンソール118の手前に膨張展開し、オブリーク衝突時等において乗員132の車内側への移動やセンターコンソール118への衝突を防ぐ。メインバッグ112とセンタバッグ114との下部は、布状のタイパネル120でつながれて一体化されている。
図2および図3は、図1(b)の膨張展開時のクッション108を各方向から例示した図である。図2(a)は、図1(b)のクッション108を車外側の上方から見て例示した斜視図である。センタバッグ114と、メインバッグ112との間には、谷間128が形成されている。谷間128は、センタバッグ114とメインバッグ112とを車両後方側で分離している。谷間128は、乗員132(図5(a)参照)の特に頭部E1を拘束する部位である。センタバッグ114は、メインバッグ112から離別しないよう、上部142がテザーベルト122によってメインバッグ112につながれている。テザーベルト122およびタイパネル120は、乗員132の頭部E1が接触し得る位置を避けて配置されていて、谷間128を露出させている。
メインバッグ112の車外側の側面には、2つのベントホール130が設けられている。ベントホール130は、いわゆる排気孔であって、インフレータ110(図5(a)参照)から供給されるガスを外部へ排出する。メインバッグ112の車外側にはサイドウィンドウ等が存在するのみで乗員132(図5(a)参照)は存在しないため、その点においてメインバッグ112の車外側の側面にベントホール130を設けることは有効である。
図2(b)は、図2(a)のクッション108を、車内側上方から見て例示した斜視図である。図2(b)に例示するように、テザーベルト122は、センタバッグ114の上部142と、メインバッグ112の上部144とをつないでいる。テザーベルト122は帯状であって、センタバッグ114の姿勢を支える役割を担う。テザーベルト122は、例えばクッション108と同じ種類の基布から形成されていて、センタバッグ114上の第1接続部124と、メインバッグ112上の第2接続部126とに、それぞれ縫製によって接続されている。
図2(c)は、図2(b)のクッション108を車外側から見て例示した図である。図2(c)に例示するように、本実施形態におけるセンタバッグ114は、車両後方側の後方領域160が、メインバッグ112よりも車両後方(図2(c)中左方)に突出して膨張展開する。したがって、センタバッグ114の車外側の側面は、谷間128から露出している。センタバッグ114は、この車内側の側面部162にて主に乗員132(図5(a)参照)の側頭部E1aを拘束する。センタバッグ114はテザーベルト122によってメインバッグ112に支えられているため、センタバッグ114は側頭部E1aを拘束する反力面として機能することができる。
再び図2(b)を参照する。図2(b)に例示するように、本実施形態では、センタバッグ114の車内側に、支持膨張部150が設けられている。支持膨張部150は、センタバッグ114を車内側から支えてその姿勢を安定させる部位である。支持膨張部150は、センタバッグ114に接続されてインストルメントパネル102に接触する。センタバッグ114は、車幅方向に薄い扁平な形状であるが、支持膨張部150に支えられることで、姿勢を崩すことなく膨張展開することが可能になっている。支持膨張部150は、内部においてセンタバッグ114と連続した部位として設けているが、センタバッグ114とは独立した袋状の部位として実現することも可能である。
図3(a)は、図2(b)のクッション108を車両後方から見て例示した図である。図3(a)には、インストルメントパネル102を仮想線で例示している。図3(a)に例示するように、支持膨張部150は、車両後方から見て、センタバッグ114とインストルメントパネル102との間隙S1を埋めるように、三角形に膨張展開する。この支持膨張部150が成す三角形は、輪郭として、センタバッグ114の車内側の側縁152からインストルメントパネル102に沿って水平に延びる第1輪郭線154と、第1輪郭線154の車幅方向内側の端点174から車幅方向外側の上方へ延びて側縁152に達する第2輪郭線176と、を含むよう構成されている。三角形の支持膨張部150は、下方へ向かって次第に車幅方向の幅が広がっていて、インストルメントパネル102との接触面積を効率よく確保してセンタバッグ114を好適に支えることができる。
支持膨張部150の寸法について説明する。センタバッグ114の車内側の側縁152は、湾曲して車内側に突出している。支持膨張部150の上下の寸法は、支持膨張部150の上端170がセンタバッグ114の側縁152の頂点172よりも上方に到達するよう設定されている。センタバッグ114は、頂点172の上下にわたってセンタバッグ114に接続することで、センタバッグ114のうち頂点172よりも下方の幅が細くなっている領域とインストルメントパネル102との間を埋めて、センタバッグ114の姿勢をより安定させている。
支持膨張部150の車幅方向の寸法は、車両後方から見て、車内側の端点174がセンタバッグ114の車内側の頂点172に接する鉛直線L1よりもさらに車内側に突出するよう設定されている。この構成によって、支持膨張部150は、インストルメントパネル102との接触面積を効率よく確保可能になっている。
図3(b)は、図3(a)のクッション108を車両上方から見て例示した図である。図3(b)に例示するように、センタバッグ114およびメインバッグ112は、根本側である車両前方側のほうが車幅方向の幅が狭くなっている。支持膨張部150は、センタバッグ114およびメインバッグ112のうち特に根本側を支えていて、車両前方へ向かって車幅方向の幅が次第に広くなっている。センタバッグ114およびメインバッグ112は、その車両前方側において支持膨張部150がインストルメントパネル102との接触面積を確保しているため、車両後方側に乗員132(図4(b)参照)が接触した場合にも姿勢が崩れ難くなっている。
図3(c)は、図3(b)のクッション108を車内側から見て例示した図である。図3(c)においても、インストルメントパネル102を仮想線で例示している。例示するように、支持膨張部150は、車内側から見て、車両前方へ向かうほど上下の寸法が次第に大きくなっている。すなわち、支持膨張部150は、車両前方へ向かうほど、センタバッグ114との上下方向の接続範囲が広がっていて、これによってセンタバッグ114をより十全に支えている。センタバッグ114はインストルメントパネル102の上方からインストルメントパネル102よりも後方にかけて膨張展開するが、車両前方ほど支持膨張部150に十全に支えられているため、車内側への傾倒を防ぐことができ姿勢が安定している。
図4は、図1(b)のクッション108が乗員132を拘束する過程を例示した図である。図4の各図では、図中左側が車両前方となっている。図4(a)は、クッション108の未展開状態を例示した図である。図4(a)に例示するように、クッション108にはメインバッグ112(図4(b)等参照)およびセンタバッグ114が含まれていて、折り畳まれた状態でハウジング134に収容されている。ハウジング134は、例えば上方が開口した箱状であって、折り畳まれたクッション108を収容し、インストルメントパネル102の上面部106の内側に設置される。
ハウジング134の底面にはインフレータ110が固定されている。インフレータ110は、ガス発生装置であって、メインバッグ112に接続してガスを供給する。インフレータ110としては、一例として円盤形状のディスク型のものが使用可能であるが、円筒形状のシリンダ型のものを使用してもよい。また現在普及しているインフレータには、ガス発生剤が充填されていてこれを燃焼させてガスを発生させるタイプや、圧縮ガスが充填されていて熱を発生させることなくガスを供給するタイプ、または燃焼ガスと圧縮ガスとを両方利用するハイブリッドタイプのものなどがある。インフレータ110としては、いずれのタイプのものも利用可能である。
インフレータ110は、不図示のセンサから衝撃の検知信号を受けて稼働し、メインバッグ112にガスを供給する。メインバッグ112とセンタバッグ114とは内部がつながっていて、インフレータ110からメインバッグ112へと供給されたガスはセンタバッグ114にも供給される。
図4(b)は膨張展開したクッション108を例示した図である。クッション108は、ハウジング134の蓋の役割をしているインストルメントパネル102の上面部106を開裂して車両後方に膨張展開する。図4(b)に例示している乗員132は、図4(a)の乗員132よりもクッション108側へ進入している。車両衝突時のような緊急時には、乗員132は慣性によって車両前方へ移動する。乗員132がシートベルト136を装着していて腰部E5が拘束されている場合には、乗員132は上半身が腰部E5を中心に前屈するような軌道で移動する。
メインバッグ112は、主に乗員132の頭部E1や肩部E3、および胸部E4などを拘束する。膨張展開したメインバッグ112は、ウィンドシールド116とインストルメントパネル102の上面部106に接触している。メインバッグ112は、ウィンドシールド116とインストルメントパネル102に挟まれて膨張展開することで、乗員132が進入した際にも安定した姿勢で乗員132を拘束できる。
センタバッグ114は、メインバッグ112よりも車両後方(図4(b)中、右側)に突出している。オブリーク衝突においては、乗員132は車内側の斜め前方へ、特にシートベルト136に拘束されていない左肩部E3aを前方にして移動することがある。その場合、乗員132は側頭部E1aからセンタバッグ114に接触する。
図4(c)は、図4(b)の乗員132がさらにクッション108側へ進入した状態を例示した図である。図4(c)に例示するように、乗員132の頭部E1は、側頭部E1aをセンタバッグ114に接触させながら谷間128に案内され、谷間128によって拘束される。加えて、乗員132の車内側の左肩部E3aが、センタバッグ114の後方領域160の後端部166によって拘束される。後端部166は、上方へ向かうほど次第に車両後方へ突出するよう、直線を描いて傾斜している。後方領域160の後端部166は、左肩部E3aを車両前方から拘束し、メインバッグ112と共に乗員132の上半身を支える。これによって、乗員132の上半身のねじれは相殺される。
センタバッグ114に乗員132の側頭部E1aおよび左肩部E3aが接触した場合には、支持膨張部150が好適に機能する。支持膨張部150がセンタバッグ114の車内側に設けられてインストルメントパネル102との接触面積を確保しているため、センタバッグ114は姿勢を崩すことなく安定して側頭部E1aおよび左肩部E3aを拘束することができる。このようにして、支持膨張部150によって、オブリーク衝突時等に乗員132が斜め前方に進入した場合であっても、センタバッグ114は車内側に移動することなく乗員132を効率よく拘束することが可能になっている。
図5は、図4のクッション108が乗員132を拘束する過程を上方から見て例示した図である。図5(a)〜図5(c)の各図は、図4(a)〜図4(c)の各図に対応している。以下、図5(a)〜図5(c)を参照して、クッション108が乗員132を拘束する過程について説明する。
図5(a)に例示するように、助手席104の乗員132が、シートベルト136を着用して着座していたとする。この場合において車両に衝撃が発生すると、不図示のセンサからエアバッグ装置100に稼働信号が送信され、図5(b)のようにクッション108が膨張展開する。オブリーク衝突においては、乗員132は車内側の斜め前方に移動する。本実施形態では、センタバッグ114がメインバッグ112よりも車両後側に突出していて、乗員132の頭部E1は側頭部E1aからセンタバッグ114の車外側の側面部162に接触する。
図5(c)は、図5(b)の乗員132がさらにクッション108側へ進入した図である。斜め前方へ移動する乗員132の頭部E1が、助手席104の正面に存在するメインバッグ112に接触すると、上から見て頭部E1には首部E2を軸にして時計回りに回転力(矢印で例示する回転140)が生じることがある。そこで本実施形態では、メインバッグ112の車内側に設けたセンタバッグ114の後方領域160を、メインバッグ112よりも車両後方に延長させている。加えて、メインバッグ112とセンタバッグ114との間に谷間128を設けている。
この構成によれば、車内側斜め前方へ移動する乗員132の頭部E1は、側頭部E1aをセンタバッグ114に接触させながら谷間128の入口付近または谷間128に入り込むようにして拘束される。特に本実施形態では、センタバッグ114の車内側に支持膨張部150が設けられ、センタバッグ114は支持膨張部150によってインストルメントパネル102の上に支えられている。そのため、センタバッグ114は姿勢を崩すことなく頭部E1を拘束し、頭部E1に生じる回転140をより効率よく減少または打ち消すことが可能である。この構成によれば、乗員132の頭部E1の回転140の角速度を小さくし、回転140に伴う頭部E1の傷害値を抑えることができる。
また、センタバッグ114の後方領域160は、その後端部166にて乗員132の左肩部E3aを拘束する。乗員132は、車外側の右肩部E3bから車内側の脇腹にかけてシートベルト136によって拘束されているが、左肩部E3aはシートベルト136によっては拘束されていない。そのため、オブリーク衝突においては、乗員は左肩部E3aを車両前方にして車両前方へ向かうことがある。その場合、センタバッグ114の後端部166が左肩部E3aを前方および上方から拘束し、続いてメインバッグ112で右肩部E3bを拘束する。特に本実施形態では、支持膨張部150がセンタバッグ114を支えているため、センタバッグ114は左肩部E3aも好適に拘束することができる。
これらのように、本実施形態では、支持膨張部150に支えられることよって姿勢が安定したセンタバッグ114を利用して、側頭部E1aを拘束して頭部E1の回転140の角速度を小さくすることと共に、左肩部E3aを積極的に拘束して上半身に生じる回転も相殺することができ、乗員132の傷害値をさらに抑えることが可能である。したがって、乗員132の傷害値を効率よく抑えることが可能である。
本実施形態では、図4(b)を参照して説明したように、メインバッグ112はインストルメントパネル102とウィンドシールド116とに挟まれるようにして膨張していて、姿勢が安定している。センタバッグ114は、このメインバッグ112にテザーベルト122を介して支えられているため、センタバッグ114はメインバッグ112からの離間が抑えられている。
図5(b)に例示するように、テザーベルト122の第1接続部124は、センタバッグ114の車両後側の上部142に設けられている。テザーベルト122の第2接続部126は、メインバッグ112の上部144の車内側部分であって、第1接続部124よりも車両前方に設けられている。センタバッグ114は、テザーベルト122によって上部の後方側が車外側前方に引っ張られた状態となり、安定した姿勢で効率よく頭部E1を拘束することができる。
テザーベルト122の長さは、メインバッグ112およびセンタバッグ114が膨張展開して第1接続部124と第2接続部126が互いに離れる方向へ移動するときに緊張する長さに設定している。この緊張したテザーベルト122によって、センタバッグ114は重い乗員132の頭部E1が車外側から接触しても、センタバッグ114はメインバッグ112からあまり離れることなく谷間128の狭隘さが保たれ、頭部E1を拘束できる。
なお、第2接続部126を設ける位置は、適宜変更可能である。例えば第2接続部126は、メインバッグ112の上部144の車幅方向中央部分や車外側部分に設けることも可能である。本実施形態では、第2接続部126をメインバッグ112の車内側部分に設けているため、第2接続部126をメインバッグ112の車外側部分等に設ける場合に比べて、テザーベルト122の全体の長さが短く、テザーベルト122が緊張しやすい。このようにして、第2接続部126の位置を変えることでテザーベルト122の長さを変更でき、テザーベルト122の張力やセンタバッグ114を介して乗員132の頭部E1に加える反力等を適宜変更するも可能である。
上記では、図5(b)等を参照して、乗員132とクッション108との接触は側頭部E1aがセンタバッグ114に接触することから始まると述べた。しかし、乗員132とクッション108との接触は、例えば頭部E1がセンタバッグ114とメインバッグ112とに同時に接触したり、頭部E1が先にメインバッグ112から接触したりするなど、様々である。また、肩部E3(図4(b)等参照)や胸部E4がメインバッグ112等に接触した後に頭部E1がメインバッグ112等に接触する場合もある。しかしながら、いずれの場合においても本実施形態の構成によれば、乗員132の頭部E1を谷間128および谷間128の内部に案内して有効に拘束することが可能である。
図5(b)では、頭部E1に生じる回転の例として、時計回りの回転140を例示した。しかし、例えば右ハンドル車の助手席においては、頭部E1には上方から見て首を中心に反時計回りの回転が生じる場合もある。この反時計回りの回転に対しても、本実施形態のクッション108によれば谷間128を利用して反時計回りの回転をも減少または打ち消し、そして頭部E1の角速度を小さくすることができる。すなわち、本実施形態のエアバッグ装置100は、頭部E1に生じる時計回りおよび反時計回りのいずれの回転に対しても、同様の効果を得ることができる。
クッション108が乗員132を拘束する過程について、別方向からも説明を試みる。図6は、図4のクッション108が乗員132を拘束する過程を車両前方から見て例示した図である。図6(a)に例示するように、助手席104の乗員132が、シートベルト136を着用して着座していたとする。この場合において車両に衝撃が発生すると、図6(b)のようにメインバッグ112が乗員132の正面に膨張展開し、センタバッグ114が乗員132の車内側(図6(b)中右側)の前方に膨張展開する。
図6(b)に例示するように、着座位置から車内側の斜め前方に移動した乗員132は、センタバッグ114の側面部162に側頭部E1aを接触させる。加えて、シートベルト136に拘束されていない左肩部E3aが、センタバッグ114の後方領域160の後端部166(図4(b)参照)に拘束される。そして図6(c)に例示するように、頭部E1は、センタバッグ114に案内されながら車両前方へ向かって谷間128に入り、谷間128に拘束される。この時、支持膨張部150がセンタバッグ114を車内側から支えているため、センタバッグ114は車内側に傾くことなく乗員132の頭部E1を拘束することができる。
図7は、図6(c)のクッション108の矢視Aにおける模式図である。図7に例示するように、乗員132の上半身は、車両への衝撃発生時において、主に腰部E5を中心に車両前方へ回転するように動く。この時、乗員132の頭部E1は、着座位置から、車両前方に移動することに加えて、下方に下がるような軌跡156を描く。この頭部E1の軌跡156を鑑みて、本実施形態では、谷間128の深さを配慮している。
図7には、センタバッグ114とメインバッグ112との接続部分158を例示している。この接続部分158は、センタバッグ114とメインバッグ112とが接続している領域の縁であって、谷間128の底を構成する部分でもあり、谷間128の深さを決定している。接続部分158は、縫製されていることや、センタバッグ114とメインバッグ112とが形状的につながっていることなどによって設けられる。本実施形態では、乗員132の頭部E1がこの接続部分158に接触しないよう、谷間128を設定している。接続部分158は、例えば乗員132の肩部E3がセンタバッグ114またはメインバッグ112に拘束された場合において、そこから生じる頭部E1の軌跡156を避けるようにして設けられる。この構成によれば、頭部E1が接続部分158にあたることがなく、より安全性に配慮したクッション108を実現することができる。
谷間128を設けることで、センタバッグ114とメインバッグ112とが接続している領域は減るため、センタバッグ114はメインバッグ112から離間して車内側に傾きやすくなる。しかしながら、本実施形態では、支持膨張部150がセンタバッグ114を車内側から支え、さらにテザーベルト122がセンタバッグ114の上部142をメインバッグ112の上部144に繋いでいるため、センタバッグ114は車内側に傾くことなく乗員を拘束することができる。
谷間128は乗員132の頭部E1が接触し得る箇所に設けられているが、その一方で谷間128の下方においてはメインバッグ112とセンタバッグ114が一体化している。このメインバッグ112とセンタバッグ114とが一体化した部位は、例えば乗員132の肩部E3や胸部E4等を好適に拘束することが可能になっている。
以上説明した構成によって、センタバッグ114は乗員132の頭部E1、特に側頭部E1aを好適に拘束することが可能になっている。特に、センタバッグ114は、支持膨張部150によって姿勢を支えられていて、安定した姿勢で頭部E1の重心のやや後方側までも拘束することが可能になっている。そして、メインバッグ112とセンタバッグ114との間の谷間128で、頭部E1の拘束が完了する。加えて、センタバッグ114の後端部166が、乗員132の左肩部E3aを前方および上方から拘束する。これら構成によれば、乗員132の頭部E1に生じ得る回転140および上半身の回転を抑え、乗員132の傷害値を大幅に抑えることが可能である。さらには、支持膨張部150によってセンタバッグ114およびメインバッグ112の姿勢を安定させることで、これらセンタバッグ114およびメインバッグ112のガス容量を削減することも許容できるようになる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、車両の助手席の乗員を車両前方から拘束する助手席用のエアバッグ装置に利用することができる。

Claims (12)

  1. 車両の乗員を拘束するエアバッグ装置であって、
    当該エアバッグ装置は、
    前部座席の車両前方で膨張展開するメインバッグと、
    前記メインバッグの車幅方向内側で膨張展開するセンタバッグと、
    前記センタバッグのさらに車幅方向内側に設けられ、該センタバッグと前記車両のインストルメントパネルとの間隙を埋めるように膨張展開する支持膨張部と、
    を備えることを特徴とするエアバッグ装置。
  2. 前記支持膨張部は、車両前後方向から見て、前記センタバッグの車幅方向内側の側縁よりも車幅方向内側において、該側縁から水平に延びる第1輪郭線と、第1輪郭線の車幅方向内側の端点から車幅方向外側の上方へ延びて該側縁に達する第2輪郭線とを含む輪郭を有するよう膨張展開することを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
  3. 前記支持膨張部は、車両前後方向から見て、前記センタバッグの車幅方向内側に接する鉛直線よりもさらに車幅方向内側に突出していることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
  4. 前記センタバッグの車幅方向内側の側縁は湾曲して突出していて、
    前記支持膨張部は、車両前後方向から見て、前記センタバッグの前記側縁の頂点の上下にわたって該センタバッグに接続していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
  5. 前記支持膨張部は、車両前方へ向かって次第に幅が広がっていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
  6. 前記センタバッグは、前記インストルメントパネルの上方から該インストルメントパネルよりも後方にかけて膨張展開することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
  7. 前記センタバッグは、前記メインバッグよりも車両後方に突出して膨張展開することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
  8. 当該エアバッグ装置は、前記乗員の頭部を前記メインバッグとセンタバッグとの谷間の車両後方側で拘束することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
  9. 前記メインバッグと前記センタバッグは、前記谷間の下方において一体化していることを特徴とする請求項8に記載のエアバッグ装置。
  10. 当該エアバッグ装置はさらに、帯状であって、前記センタバッグの車両後方側の上部の第1接続部と前記メインバッグの上部の第2接続部とにつながれるテザーベルトを備え、
    前記テザーベルトは、前記メインバッグおよび前記センタバッグが膨張展開して前記第1接続部と前記第2接続部が互いに離れる方向へ移動することで緊張する長さを有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
  11. 前記メインバッグは、膨張展開によって前記車両のウィンドシールドと該車両のインストルメントパネルの上面部とに接触することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
  12. 当該エアバッグ装置はさらに、箱型であって前記メインバッグおよび前記センタバッグを収納して前記車両のインストルメントパネルの上面部の内側に設けられるハウジングを備え、
    前記メインバッグおよび前記センタバッグは、前記インストルメントパネルの上面部を開裂して膨張展開することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
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