JPWO2016136553A1 - 破断予測方法、破断予測装置、プログラム及び記録媒体、並びに破断判別基準算出方法 - Google Patents

破断予測方法、破断予測装置、プログラム及び記録媒体、並びに破断判別基準算出方法 Download PDF

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Abstract

本発明の破断予測方法は、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する方法であって、前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得する第1工程と;前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを破断判別基準として算出する第2工程と;前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わるモーメントが前記破断限界モーメントを超えたか否かを判別し、その判別結果を前記接合部の破断予測結果として出力する第3工程と;を有する。

Description

本発明は、破断予測方法、破断予測装置、プログラム及び記録媒体、並びに破断判別基準算出方法に関する。
本願は、2015年2月26日に日本に出願された特願2015−037121号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、自動車業界では、衝突時の衝撃を低減し得る車体構造の開発が急務の課題となっている。この場合、自動車の構造部材により衝撃エネルギーを吸収させることが重要である。自動車の衝突時の衝撃エネルギーを吸収させる主要構成は、プレス形成等で部材を成形した後、スポット溶接により部材を閉断面化した構造とされる。スポット溶接部は、衝突時の複雑な変形状態、負荷条件においても容易に破断することなく部材の閉断面を維持できるような強度を確保する必要がある。
日本国特許第4150383号公報 日本国特許第4133956号公報 日本国特許第4700559号公報 日本国特許第4418384号公報 日本国特許第5742685号公報 日本国特許第4748131号公報

スポット溶接部の破断強度を測定する方法として、せん断継ぎ手型、十字継ぎ手型の引張試験が適用されており、せん断継ぎ手型試験は、せん断力が主に加わり破断に至る場合の強度を、十字継ぎ手型試験は、軸力が主に加わり破断に至る場合の強度を測定する試験であり、特許文献1〜3では、それぞれの入力形態におけるスポット溶接部の破断を予測する方法が検討されている。しかしながら、これらの入力形態のみならず、L字継ぎ手型の引張試験により評価可能なモーメントが負荷されることで破断に至る破断形態における破断予測も重要である。実際の自動車部材の衝突時の変形を考えた場合、複雑な変形をしており、スポット溶接部には、せん断力、軸力だけではなく、モーメントも負荷されており、単にせん断継ぎ手型や十字継ぎ手型の引張試験を基に得られたスポット溶接部の破断予測方法では、十分な予測精度が得られないという問題がある。
特許文献4には、L字継ぎ手の破断予測について記載されている。しかしながら、この場合、比較的低強度のハイテン材を対象としており、近年の超ハイテン材(引張強度980MPa以上)については予測精度が劣ることが判明している。また、有限要素法(FEM:Finite Element Method)によるL字継ぎ手のシミュレーションにおいて、同一形状の試験片のモデルであっても、用いる母材部の要素(メッシュ)サイズ次第でスポット溶接部に発生する曲げモーメントの値が変化することが判明している。そのため、衝突変形解析を行うモデルの母材部の要素サイズ次第で破断と判定するタイミングが異なり、予測精度が劣るという問題がある。また、この問題は、スポット溶接部にせん断力や軸力が主に加わり破断に至るモデルに比べ、モーメントが主に負荷されて破断に至るモデルにおいてより顕著になることも判明している。
特許文献5には、スポット溶接継ぎ手の破断を予測する方法が記載されている。鋼種の機械的特性や化学成分から特定される材質パラメーター毎に破断判定値を決定し、その分布から破断判定値の近似マスターカーブを作成し、母材部分、HAZ部分、ナゲット部分の破断を予測するものであるが、前述したように、同一材質、同一形状のモデルであっても、用いる母材部の要素サイズによって、各要素に発生するひずみや応力が変化するため、衝突変形解析を行うモデルの母材部の要素サイズ次第で破断と判定するタイミングが異なり、予測精度が劣るという問題がある。
特許文献6には、母材部の要素サイズを定めた、要素サイズパラメーターの値から、スポット溶接部周りの母材または熱影響部の破断ひずみを求める方法が開示されている。この場合、特定の材質、板厚のモデルを用いて要素サイズパラメーターと破断ひずみの関係を定める必要があり、この関係を定めたモデルと同一の材質、同一の板厚のモデルでの破断予測にしか適用できないため、任意の材質、板厚に対して破断予測を行うことができないという問題がある。また、かかる技術は、スポット溶接部周りの熱影響部を含む母材部分の破断ひずみを定めているだけであって、接合部であるスポット溶接部の破断を直接的に予測するものではない。
本発明は、上記の諸問題に鑑みてなされたものであり、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断(特に接合部にモーメントが加わることで生じる破断)、例えば自動車の衝突変形解析におけるスポット溶接部からの破断を有限要素法を用いて予測する際に、母材部の要素サイズに依存せずに安定的に高い破断予測精度を得ることができる破断予測方法、破断予測装置、プログラム及び記録媒体、並びに破断判別基準算出方法を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決して係る目的を達成するために以下の手段を採用する。
(1)本発明の一態様に係る破断予測方法は、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する方法であって、前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得する第1工程と;前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを破断判別基準として算出する第2工程と;前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わるモーメントが前記破断限界モーメントを超えたか否かを判別し、その判別結果を前記接合部の破断予測結果として出力する第3工程と;を有する。
(2)本発明の一態様に係る破断予測装置は、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する装置であって、前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得するパラメータ取得手段と;前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを記憶する記憶手段と;前記記憶手段から前記関数を読み出し、前記パラメータ取得手段によって取得された前記母材部の要素サイズを前記関数に入力することにより、前記破断限界モーメントを破断判別基準として算出する破断判別基準算出手段と;前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わるモーメントが前記破断限界モーメントを超えたか否かを判別し、その判別結果を前記接合部の破断予測結果として出力する破断判別手段と;を備える。
(3)本発明の一態様に係るプログラムは、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得する第1処理と;前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを破断判別基準として算出する第2処理と;前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わるモーメントが前記破断限界モーメントを超えたか否かを判別し、その判別結果を前記接合部の破断予測結果として出力する第3処理と;をコンピュータに実行させる。
(4)本発明の一態様に係る記録媒体は、上記(3)に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
(5)本発明の一態様に係る破断判別基準算出方法は、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する際に使用される破断判別基準を算出する方法であって、前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得する第1工程と;前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを破断判別基準として算出する第2工程と;を有する。
上記態様によれば、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断(特に接合部にモーメントが加わることで生じる破断)を有限要素法を用いて予測する際に、母材部の要素サイズに依存せずに安定的に高い精度を得ることができる。これによって、例えば自動車の衝突変形解析をコンピュータ上で行う場合において、スポット溶接の破断予測を正確に行うことができるため、衝突時の破断を防止する部材設計をコンピュータ上で正確に行うことができるようになる。その結果として、実際の自動車での衝突試験を省略又は衝突試験の回数を大幅に削減することができ、大幅なコスト削減、開発期間の短縮に寄与することができる。
本発明の一実施形態に係る破断予測装置の概略構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る破断予測方法をステップ順に示すフロー図である。 本発明の一実施形態に係る破断予測方法により取得された予測破断荷重と、実験により取得された実験破断荷重との関係を、解析対象物であるL字型継ぎ手の引張強度が980MPa以上の場合に調査した結果を示す図である。 本発明の一実施形態に係る破断予測方法により取得された予測破断荷重と、実験により取得された実験破断荷重との関係を、解析対象物であるL字型継ぎ手の引張強度が980MPa未満の場合に調査した結果を示す図である。 パーソナルユーザ端末装置の内部構成を示す模式図である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断(特に接合部にモーメントが加わることで生じる破断)を有限要素法を用いて予測する。要素モデルにおいて、母材部はシェル要素もしくは、ソリッド要素、接合部はビーム要素、ソリッド要素、もしくはシェル要素が用いられる。本実施形態では、解析対象物として、スポット溶接によって接合された一対のL字形の鋼板からなるL字継ぎ手型の試験片を例示し、当該試験片のスポット溶接部の破断を予測する場合について説明する。
FEMで用いる要素(メッシュ)サイズに依存せずに安定的に高い破断予測精度を得るために、本実施形態の破断予測方法は、L字継ぎ手型試験片の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得する第1工程と;前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを破断判別基準として算出する第2工程と;前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記スポット溶接部に加わるモーメントが前記破断限界モーメントを超えたか否かを判別し、その判別結果を前記スポット溶接部の破断予測結果として出力する第3工程と;を有する。
破断予測精度をより高めるために、前記第1工程では、L字継ぎ手型試験片の要素モデルに設定されたパラメータのうち、L字継ぎ手型試験片の母材の引張強度を前記母材部の要素サイズとともに取得し、前記第2工程では、前記破断限界モーメントの算出に使用される前記関数を前記引張強度に応じて変化させることが好ましい。
例えば、L字継ぎ手型試験片の引張強度が980MPa以上の場合(L字継ぎ手型試験片の母材が超ハイテン材の場合)、前記第2工程では、前記関数として下記(1)式を用いて前記破断限界モーメントを算出する。
Mf=Me・F(Me、t、D、W、L、e) …(1)
ここで、Mf:破断限界モーメント(単位はN・mm)
Me:修正弾性曲げモーメント(単位はN・mm)
F(Me、t、D、W、L、e):補正項
t :L字継ぎ手型試験片の母材の板厚(単位はmm)
D :スポット溶接部のナゲット径(単位はmm)
W :スポット溶接部が荷重を受け持つ有効幅(単位はmm)
L :アーム長(単位はmm)
e :母材部の要素サイズ(単位はmm)
上記(1)式において、修正弾性曲げモーメントMeが下記(2)式で定義され、補正項F(Me、t、D、W、L、e)が下記(3)式で定義されていてもよい。
Me=(el/L)・(E・D・t)/12 …(2)
ここで、el:L字継ぎ手型試験片の母材の全伸び(単位はε)
E :L字継ぎ手型試験片の母材のヤング率(単位はMPa)
F(Me、t、D、W、L、e)
=f(Me)・f(t)・f(D)・f(W)・f(L)・f(e) …(3)
ここで、f(Me):修正弾性曲げモーメントMeの補正項
f(t): 板厚tの補正項
f(D):ナゲット径Dの補正項
f(W):有効幅Wの補正項
f(L):アーム長Lの補正項
f(e):母材部の要素サイズeの補正項
L字継ぎ手型試験片の引張強度が980MPa以上の場合、修正弾性曲げモーメントをベースとして破断限界モーメントに補正を加えているが、以下、修正弾性曲げモーメントについて説明する。
L字継ぎ手型試験片の引張強度が980MPa以上の場合、スポット溶接部近傍の局所に塑性変形が見られるが、継ぎ手全体としてはほぼ弾性変形状態のままスポット溶接部破断に至ることを知見した。このことから、引張強度が980MPa以上の材料において、破断限界モーメントと弾性曲げモーメントの関係を調査した結果、一定の相関関係があることが明らかになった。弾性曲げモーメントの一般式は(1/ρ)・(E・W・t)/12であるが破断発生時のスポット溶接部の母材の曲率(1/ρ)を解析対象物の要素モデルからパラメーターとして取得することは困難である。そのため、この曲率を取得可能なパラメーターの値で置き換えるために、各パラメータの関係を調査した結果、曲率とアーム長の積が母材の全伸びと比例関係にあることを知見した。そのため、曲率(1/ρ)を母材の全伸び(el)をアーム長(L)で割った値(el/L)に置き換えた。また、引張強度が980MPa以上の場合、試験片幅が破断限界モーメントに与える影響は小さく、L字継ぎ手型の試験片のFEMモデルにおけるひずみの分布はスポット溶接部に集中していることから、荷重を受け持つ幅Wはナゲット径Dと一致するとして、弾性曲げモーメントの一般式におけるWをナゲット径Dにおきかえた。このようにして作成した修正弾性曲げモーメントに要素サイズの補正項を含む補正を行うことで、破断限界モーメントを算出している。
一方、例えば、L字継ぎ手型試験片の引張強度が980MPa未満の場合(強度区分としては、L字継ぎ手型試験片の母材(鋼板)が引張強度780MPa材以下の場合)、前記第2工程では、前記関数として下記(4)式を用いて前記破断限界モーメントを算出する。
Mf=Mp・F(Mp、t、D、W、el、e) …(4)
ここで、Mf:破断限界モーメント(単位はN・mm)
Mp:全塑性曲げモーメント(単位はN・mm)
F(Mp、t、D、W、el、e):補正項
t :L字継ぎ手型試験片の母材の板厚(単位はmm)
D :スポット溶接部のナゲット径(単位はmm)
W :スポット溶接部が荷重を受け持つ有効幅(単位はmm)
el:L字継ぎ手型試験片の母材の全伸び(単位はε)
e :母材部の要素サイズ(単位はmm)
上記(4)式において、全塑性曲げモーメントMpが下記(5)式で定義され、補正項F(Mp、t、D、W、el、e)が下記(6)式で定義されていてもよい。
Mp=(TS・W・t)/4 …(5)
ここで、TS:L字継ぎ手型試験片の母材の引張強度(単位はMPa)
F(Mp、t、D、W、el、e)
=f(Mp)・f(t)・f(D)・f(W)・f(el)・f(e) …(6)
ここで、f(Mp):全塑性曲げモーメントMpの補正項
f(t): 板厚tの補正項
f(D):ナゲット径Dの補正項
f(W):有効幅Wの補正項
f(el):全伸びelの補正項
f(e):母材部の要素サイズeの補正項
引張強度が980MPa未満の試験片を解析対象物とする場合には、破断限界モーメントと全塑性曲げモーメントとの間に一定の相関関係があることが知見されており、全塑性曲げモーメントをベースとして要素サイズの補正項を含む補正を行うことで、破断限界モーメントを算出している。
以下、(3)式及び(6)式の各補正項を決定する方法について説明する。
先ず、L字継ぎ手型の試験片を用いて作成されたFEMモデルにおいて、実験で確認された破断荷重(最大荷重)を試験片端部(チャック部)に負荷し、スポット溶接部に加わるモーメントを取得し、これを破断限界モーメントとする。この破断限界モーメントの取得は、様々な鋼種、板厚、L字継ぎ手形状、ナゲット径、母材部の要素サイズ等で行われる。
続いて、上記のようにして得られた破断限界モーメントと、(3)式又は(6)式により算出される破断限界モーメントとの誤差が最小となるように求めた重回帰から各補正項を決定する。具体的には、各補正項は以下のような式とする。なお、補正項の式形式は特に問わず、一次式の代わりに例えば二次式を用いても良い。
1.引張強度が980MPa以上の試験片を解析対象物とする場合
f(Me)=(A1/Me)+A2
f(t)=B1・t+B2
f(D)=C1・D+C2
f(W)=D1・W+D2
f(L)=E1・L+E2
f(e)=F1・e+F2 …(7)
2.引張強度が980MPa未満の試験片を解析対象物とする場合
f(Mp)=(a1/Mp)+a2
f(t)=b1・t+b2
f(D)=c1・D+c2
f(W)=d1・W+d2
f(el)=e1・(el)+e2
f(e)=f1・e+f2 …(8)
上記のようにFEMモデルで得られた破断限界モーメントと、(3)式又は(6)式により算出される破断限界モーメントとの誤差が最小となるように、(7)式の各係数A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2、F1及びF2、又は(8)式の各係数a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1、d2、e1、e2、f1及びf2がそれぞれ決定され、(3)式又は(6)式の破断限界モーメントMfが求められる。
本実施形態に関連して、L字継ぎ手型の試験片を用いて作成されたFEMモデルにおいて、実験で確認された破断荷重(最大荷重)を試験片端部(チャック部)に負荷し、スポット溶接部に加わるモーメントを取得し、その値をそのまま破断限界モーメントとして用いることも考えられる。しかしながら、ユーザが実際にシミュレーションにより破断を予測しようとしているL字継ぎ手の諸条件(鋼種、板厚、形状、ナゲット径、母材部の要素サイズ等)の組み合わせは無数にある。これら全ての組み合わせについて実験を行い、破断荷重(最大荷重)を取得することは不可能である。そこで本実施形態では、上記の(3)式又は(6)式を用いて破断を予測するようにしている。
図1は、本実施形態に係る破断予測装置の概略構成を示す模式図である。図2は、本実施形態に係る破断予測方法をステップ順に示すフロー図である。
図1に示すように、本実施形態に係る破断予測装置は、パラメータ取得手段1と、破断判別基準算出手段2と、破断判別手段3と、記憶手段4とを備えている。
本実施形態に係る破断予測装置は、例えばパーソナルコンピュータなどのコンピュータによって実現できる。記憶手段4は、そのようなコンピュータに設けられた、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、或いはROM(Read Only Memory)などの不揮発性記憶装置である。
パラメータ取得手段1、破断判別基準算出手段2及び破断判別手段3は、コンピュータに設けられたCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置(図1では図示省略)が記憶手段4に記憶された本プログラムに従って動作することで実現される機能である。
ここで、本プログラムとは、上述した本実施形態に係る破断予測方法をコンピュータによって実現させるためにコンピュータ読み取り可能な機械言語で構築されたアプリケーションソフトウェアである。USB(Universal Serial Bus)メモリ又はCD−ROM等の持ち運び自在な記録媒体から本プログラムをコンピュータにダウンロードすることで、記憶手段4に本プログラムを記憶させることができる。
例えば、スポット溶接で接合された、ハット型部材(L字継ぎ手型部材)の衝突FEM解析におけるスポット溶接部の破断を予測する場合、汎用の衝突解析ソフトであるLS−DYNAをメインルーチンプログラムとし、本プログラムをLS−DYNAのサブルーチンプログラムとしてLS−DYNAに連動させることが可能である。すなわち、コンピュータ(破断予測装置)の演算処理装置は、メインルーチンプログラムであるLS−DYNAに従って動作することにより、解析対象物であるハット型部材の衝突変形解析処理を行うと共に、サブルーチンプログラムである本プログラムに従って動作することにより、衝突変形解析処理と連動しながらスポット溶接部に破断が発生したか否かを判定する破断予測処理を実行する。
そのため、記憶手段4には、本プログラムだけでなく、メインルーチンプログラムであるLS−DYNAも記憶されている。なお、LS−DYNAは、記憶手段4と異なる記憶手段に記憶されていてもよい。また、OS(Operating System)プログラムなどのコンピュータの動作に必要な他のプログラムも、記憶手段4に記憶されていてもよいし、記憶手段4と異なる記憶手段に記憶されていてもよい。
さらに、記憶手段4には、各係数A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2、F1及びF2が決定された(7)式の各補正項、及び各係数a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1、d2、e1、e2、f1及びf2が決定された(8)式の各補正項、及び(1)式〜(6)式等が記憶されている。これらのデータも、USBメモリ又はCD−ROM等の持ち運び自在な記録媒体から本プログラムとともにコンピュータにダウンロードすることで、記憶手段4に記憶させることができる。
以下、図2を参照しながら、破断予測装置(コンピュータ)の演算処理装置が本プログラムに従って動作することで実現される破断予測方法(パラメータ取得手段1、破断判別基準算出手段2及び破断判別手段3の機能)について説明する。
図2に示すように、パラメータ取得手段1は、ハット型部材の要素モデルに設定されたパラメータのうち、引張強度TS、ヤング率E、有効幅W、板厚t、ナゲット径D、アーム長L、全伸びel、及び母材部の要素サイズeを取得する(ステップS1:第1処理)。
上記のように、破断予測装置の演算処理装置は、LS−DYNAに基づくハット型部材の衝突変形解析処理と、本プログラムに基づく破断予測処理とを連動させながら並列的に実行している。LS−DYNAに基づくハット型部材の衝突変形解析処理を実行するためには、事前にハット型部材の要素モデルを作成する必要があり、そのために各種パラメータを設定する必要がある。そのため、パラメータ取得手段1は、事前にハット型部材の要素モデルを作成するために設定された各種パラメータの中から、上記の引張強度TS、ヤング率E、有効幅W、板厚t、ナゲット径D、アーム長L、全伸びel、及び母材部の要素サイズeを容易に取得することができる。
なお、これらのパラメータは、本プログラムに基づく破断予測処理の実行開始時に、破断予測装置に設けられた入力装置(図1では図示省略)によって入力されたデータであってもよい。
また、ステップS1において、入力補助ソフトを用いて、衝突解析用のインプットファイルから、解析対象物であるハット型部材の要素モデルの各種パラメータを自動で読み取ると共に、スポット溶接部に接続する母材の要素をサーチして、そのスポット溶接部の周囲の平均要素サイズを母材部の要素サイズeとして取得してもよい。
次に、破断判別基準算出手段2は、破断判別基準として破断限界モーメントMfを算出する(ステップS2:第2処理)。
具体的には、破断判別基準算出手段2は、上記ステップS1で取得した引張強度TSが980MPa以上の場合、記憶手段4から上記(1)〜(3)式と、各係数A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2、F1及びF2が決定された(7)式の各補正項とを読み出し、上記ステップS1で取得したパラメータのうち、ヤング率E、有効幅W、板厚t、ナゲット径D、アーム長L、全伸びel及び母材部の要素サイズeを各式に代入することにより、破断限界モーメントMfを算出する。
一方、破断判別基準算出手段2は、上記ステップS1で取得した引張強度TSが980MPa未満の場合、記憶手段4から上記(4)〜(6)式と、各係数a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1、d2、e1、e2、f1及びf2が決定された(8)式の各補正項とを読み出し、上記ステップS1で取得したパラメータのうち、引張強度TS、有効幅W、板厚t、ナゲット径D、全伸びel、及び母材部の要素サイズeを各式に代入することにより、破断限界モーメントMfを算出する。
次に、破断判別手段3は、ハット型部材の要素モデルの衝突変形解析においてスポット溶接部に加わる曲げモーメントが、ステップS2で得られた破断限界モーメントMfを超えたか否かを判別し、その判別結果をスポット溶接部の破断予測結果として出力する(ステップS3:第3処理)。
具体的には、破断判別手段3は、ハット型部材の要素モデルの衝突変形解析においてスポット溶接部に加わる曲げモーメントM1と、破断限界モーメントMfとの関係が下記(9)式を満足した場合に、破断予測結果として破断有りを示す結果を出力する。
M1/Mf ≧ 1 …(9)
なお、ハット型部材の要素モデルの衝突変形解析においてスポット溶接部に加わる曲げモーメントM1は、LS−DYNAに基づくハット型部材の衝突変形解析処理の結果から得ることができる。
破断予測装置の演算処理装置は、破断判別手段3から出力された破断予測結果が破断有りを示している場合、LS−DYNAに基づくハット型部材の衝突変形解析処理において、ハット型部材の要素モデルに含まれるスポット溶接部を消去することにより、スポット溶接部に破断が生じたことをユーザに知らせる。
一方、破断予測装置の演算処理装置は、破断判別手段3から出力された破断予測結果が破断無しを示している場合、LS−DYNAに基づくハット型部材の衝突変形解析処理において、ハット型部材の要素モデルに含まれるスポット溶接部を残しておくことにより、スポット溶接部に破断が生じなかったことをユーザに知らせる。
L字型継ぎ手の引張り試験を例に、母材部をシェル要素、スポット溶接部をソリッド要素で作成した、L字型継ぎ手の引張試験モデルを用いて、本実施形態により破断と判定され、荷重低下が始まる直前の荷重(最大荷重)と、実験により取得された実験破断荷重(最大荷重)との関係について調べた結果を図3A及び図3Bに示す。図3Aが、解析対象物であるL字型継ぎ手の引張強度が980MPa以上の場合の結果を示し、図3Bが、解析対象物であるL字型継ぎ手の引張強度が980MPa未満の場合の結果を示している。
図3Aにおける本発明例及び比較例は、引張強度TSが1057MPa、ヤング率Eが205800MPa、有効幅Wが40mm、板厚tが1.6mm、ナゲット径Dが6.3mm、アーム長Lが10mm、全伸びelが0.15という条件下で解析を行った点で共通している。
また、図3Aにおける本発明例及び比較例は、いずれも、母材部の要素サイズe(平均値)が3.0mmとなるように作製した解析モデル(model A)と、母材部の要素サイズe(平均値)が4.7mmとなるように作製した解析モデル(model B)と、母材部の要素サイズe(平均値)が5.8mmとなるように作製した解析モデル(model C)を用いて引張り試験解析を実施している。
図3Aにおける本発明例では、母材部の要素サイズeを変数の一つとして含む関数((1)式〜(3)式参照)を用いて算出された破断限界モーメントに基づいて予測破断荷重を算出したのに対して、比較例では、母材部の要素サイズeを変数として含まない関数を用いて算出された破断限界モーメントに基づいて予測破断荷重を算出した。具体的には、比較例では、“model A”、“model B”、及び“model C”のいずれにおいても、補正項f(e)に固定値5mmを入力することにより、母材部の要素サイズeによって破断限界モーメントが補正されないようにした。
図3Bにおける本発明例及び比較例は、引張強度TSが467MPa、有効幅Wが50mm、板厚tが1.6mm、ナゲット径Dが5.0mm、全伸びelが0.36という条件下で解析を行った点で共通している。
また、図3Bにおける本発明例及び比較例は、いずれも、母材部の要素サイズe(平均値)が3.0mmとなるように作製した解析モデル(model A)と、母材部の要素サイズe(平均値)が4.7mmとなるように作製した解析モデル(model B)と、母材部の要素サイズe(平均値)が5.8mmとなるように作製した解析モデル(model C)を用いて引張り試験解析を実施している。
図3Bにおける本発明例では、母材部の要素サイズeを変数の一つとして含む関数((4)式〜(6)式参照)を用いて算出された破断限界モーメントに基づいて予測破断荷重を算出したのに対して、比較例では、母材部の要素サイズeを変数として含まない関数を用いて算出された破断限界モーメントに基づいて予測破断荷重を算出した。具体的には、比較例では、“model A”、“model B”、及び“model C”のいずれにおいても、補正項f(e)に固定値5mmを入力することにより、母材部の要素サイズeによって破断限界モーメントが補正されないようにした。
図3A及び図3Bに示すように、本発明例では、L字型継ぎ手の引張試験モデルの母材部の要素サイズeが異なるいずれの条件においても、予測破断荷重と実験破断荷重(5.6kN又は3.9kN)との乖離が小さいのに対して、比較例では、L字型継ぎ手の引張試験モデルの母材部の要素サイズeによって予測破断荷重と実験破断荷重との乖離が大きくなる場合があった。
すなわち、図3A及び図3Bの解析結果は、本発明例によれば、解析対象物であるL字型継ぎ手におけるスポット溶接部の破断(特にスポット溶接部にモーメントが加わることで生じる破断)を有限要素法を用いて予測する際に、母材部の要素サイズeに依存せずに安定的に高い破断予測精度を得られることを示している。
以上説明したように、本実施形態によれば、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物(例えばハット型部材)における接合部(例えばスポット溶接部)の破断(特に接合部にモーメントが加わることで生じる破断)を有限要素法を用いて予測する際に、母材部の要素サイズに依存せずに安定的に高い破断予測精度を得ることができる。
上記のように、本実施形態に係る破断予測装置の各構成要素(図1のパラメータ取得手段1、破断判別基準算出手段2及び破断判別手段3)の機能、及び本実施形態に係る破断予測方法(第1〜第3工程)は、コンピュータの不揮発性記憶装置に記憶された本プログラムに従って演算処理装置が動作することによって実現できる。この本プログラム及び本プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本実施形態に含まれる。
具体的に、本プログラムは、例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。本プログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、本プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワークシステムにおける通信媒体を用いることができる。ここで、コンピュータネットワークとは、LAN(Local Area Network)、インターネット等のWAN(Wide Area Network)、無線通信ネットワーク等であり、通信媒体とは、光ファイバ等の有線回線又は無線回線等である。
また、本実施形態に含まれる本プログラムとしては、供給されたプログラムをコンピュータが実行することにより本実施形態の機能が実現されるようなもののみではない。例えば、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して本実施形態の機能が実現される場合にも、かかるプログラムは本実施形態に含まれる。また、供給されたプログラムの処理の全て或いは一部がコンピュータの機能拡張ボード又は機能拡張ユニットにより行われて本実施形態の機能が実現される場合にも、かかるプログラムは本実施形態に含まれる。
例えば、図4は、パーソナルユーザ端末装置の内部構成を示す模式図である。この図4において、1200はCPU1201を備えたパーソナルコンピュータ(PCと略す)である。PC1200は、ROM1202またはハードディスク(HDと略す)1211に記憶された、又はフレキシブルディスクドライブ(FDと略す)1212より供給されるデバイス制御ソフトウェアを実行する。このPC1200は、システムバス1204に接続される各デバイスを総括的に制御する。
PC1200のCPU1201、ROM1202またはHD1211に記憶された本プログラムにより、本実施形態の図2におけるステップS1〜S3の手順等が実現される。
1203はRAM(Random Access Memory)であり、CPU1201の主メモリ、及びワークエリア等として機能する。1205はキーボードコントローラ(KBCと略す)であり、キーボード(KBと略す)1209や不図示のデバイス等からの指示入力を制御する。
1206はCRTコントローラ(CRTCと略す)であり、CRTディスプレイ(CRTと略す)1210の表示を制御する。1207はディスクコントローラ(DKCと略す)である。DKC1207は、ブートプログラム、複数のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイル、及びネットワーク管理プログラム等を記憶するHD1211、及びFD1212とのアクセスを制御する。ここで、ブートプログラムとは、PC1200のハードウェア及びソフトウェアの実行(動作)を開始するための起動プログラムである。
1208はネットワーク・インターフェースカード(NICと略す)であり、LAN1220を介して、ネットワークプリンタ、他のネットワーク機器、或いは他のPCと双方向のデータ通信を行う。
なお、パーソナルユーザ端末装置であるPC1200を用いる代わりに、破断予測装置に特化された所定の計算機等を用いても良い。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断、特に接合部にモーメントが加わることで生じる破断を有限要素法を用いて予測する方法を説明した。
しかしながら、解析対象物の衝突変形解析において、接合部にモーメントだけでなく、せん断力及び軸力が加わることが一般的に知られている。そのため、従来の破断予測方法では、モーメントに起因する破断と、せん断力に起因する破断と、軸力に起因する破断とをそれぞれ別個の破断予測式を用いて予測している。
上記実施形態に係る破断予測方法(プログラム)は、上記3つの破断モードのうち、モーメントに起因する破断を予測するための方法(サブルーチンプログラム)として利用可能であるが、接合部に加わる軸力が圧縮軸力である場合は、実際の衝突時には破断は発生しないが、圧縮軸力下であってもモーメントが発生する場合もあり、モーメント破断が生じたと誤って予測してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態に係る破断予測方法の第3工程では、解析対象物の衝突変形解析において、接合部に加わる軸力が圧縮軸力である場合に、破断予測結果として破断無しを示す結果を強制的に出力することが好ましい。
言い換えれば、本実施形態に係る破断予測装置の破断判別手段3が、ステップS3において、解析対象物の衝突変形解析において接合部に加わる軸力が圧縮軸力である場合に、破断予測結果として破断無しを示す結果を強制的に出力することが好ましい。
これにより、接合部に加わる軸力が圧縮軸力である場合に、実際の衝突時には発生しないはずのモーメントが数値解析上発生してモーメント破断が生じたと誤って予測してしまうことを防止できる。
(2)上記実施形態では、一対の部材がスポット溶接された解析対象物を例示し、そのスポット溶接部のモーメント破断を予測する場合を例示した。本発明における接合部はスポット溶接部に限定されず、例えば、点溶接または線溶接などの他の溶接方法によって接合された一対の部材からなる解析対象物の接合部に生じるモーメント破断を予測する場合にも本発明を適用することができる。
(3)上記実施形態では、解析対象物が鋼板である場合を例示したが、本発明における解析対象物の材質は鋼板に限定されず、鉄、アルミニウム、チタン、ステンレス、複合材料(金属−樹脂材料、異種金属材料)、または炭素繊維などを材質とする解析対象物のモーメント破断を予測する場合にも本発明を適用することができる。
(4)上記実施形態では、引張強度が980MPa以上の場合に使用される関数と、引張強度が980MPa未満の場合に使用される関数との2種類の関数を使い分けて破断限界モーメントを算出する場合を例示したが、引張強度に応じて3種類以上の関数を使い分けてもよい。
(5)本発明は、ハット型部材などの自動車の構造部材だけでなく、鉄道車両を含む各種車両、一般機械、または船舶などの構造部材のモーメント破断を予測する方法として適用することができる。
(6)上記実施形態では、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断、特に接合部にモーメントが加わることで生じる破断を有限要素法を用いて予測する方法を説明した。しかしながら、破断判別基準を算出する方法(プログラム)のみを要求するユーザが存在する場合もあり得る。
そのようなユーザの要求に応じて、上記実施形態に係る破断予測方法から第3工程を削除したものを、破断判別基準算出方法として提供してもよい。
すなわち、この破断判別基準算出方法は、互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する際に使用される破断判別基準を算出する方法であって、前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得する第1工程と;前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを破断判別基準として算出する第2工程と;を有する。
1 パラメータ取得手段
2 破断判別基準算出手段
3 破断判別手段
4 記憶手段

Claims (32)

  1. 互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する破断予測方法であって、
    前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得する第1工程と;
    前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを破断判別基準として算出する第2工程と;
    前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わるモーメントが前記破断限界モーメントを超えたか否かを判別し、その判別結果を前記接合部の破断予測結果として出力する第3工程と;
    を有することを特徴とする破断予測方法。
  2. 前記第1工程では、前記要素モデルに設定された前記パラメータのうち、前記解析対象物の引張強度を前記母材部の要素サイズとともに取得し;
    前記第2工程では、前記破断限界モーメントの算出に使用される前記関数を前記引張強度に応じて変化させる;
    ことを特徴とする請求項1に記載の破断予測方法。
  3. 前記引張強度が980MPa以上の場合、
    前記第2工程では、前記関数として(1)式を用いて前記破断限界モーメントを算出することを特徴とする請求項2に記載の破断予測方法。
    Mf=Me・F(Me、t、D、W、L、e) …(1)
    ここで、Mf:破断限界モーメント(単位はN・mm)
    Me:修正弾性曲げモーメント(単位はN・mm)
    F(Me、t、D、W、L、e):補正項
    t :解析対象物の板厚(単位はmm)
    D :接合部がスポット溶接部の場合のナゲット径(単位はmm)
    W :スポット溶接部が荷重を受け持つ有効幅(単位はmm)
    L :アーム長(単位はmm)
    e :母材部の要素サイズ(単位はmm)
  4. 前記(1)式において、前記修正弾性曲げモーメントMeは(2)式で定義され、前記補正項F(Me、t、D、W、L、e)は(3)式で定義されていることを特徴とする請求項3に記載の破断予測方法。
    Me=(el/L)・(E・D・t)/12 …(2)
    ここで、el:解析対象物の全伸び(単位はε)
    E :解析対象物のヤング率(単位はMPa)
    F(Me、t、D、W、L、e)
    =f(Me)・f(t)・f(D)・f(W)・f(L)・f(e) …(3)
    ここで、f(Me):修正弾性曲げモーメントMeの補正項
    f(t): 板厚tの補正項
    f(D):ナゲット径Dの補正項
    f(W):有効幅Wの補正項
    f(L):アーム長Lの補正項
    f(e):母材部の要素サイズeの補正項
  5. f(Me)、f(t)、f(D)、f(W)、f(L)、及びf(e)は、L字継ぎ手型の試験片を用いて作成された有限要素法モデルにおいて、実験で確認された破断荷重を試験片端部に負荷することで得られる、スポット溶接部に加わるモーメントと、前記(1)式を用いて算出された前記破断限界モーメントMfとの誤差が最小となるように重回帰から決定された式であることを特徴とする請求項4に記載の破断予測方法。
  6. 前記引張強度が980MPa未満の場合、
    前記第2工程では、前記関数として(4)式を用いて前記破断限界モーメントを算出することを特徴とする請求項2に記載の破断予測方法。
    Mf=Mp・F(Mp、t、D、W、el、e) …(4)
    ここで、Mf:破断限界モーメント(単位はN・mm)
    Mp:全塑性曲げモーメント(単位はN・mm)
    F(Mp、t、D、W、el、e):補正項
    t :解析対象物の板厚(単位はmm)
    D :接合部がスポット溶接部の場合のナゲット径(単位はmm)
    W :スポット溶接部が荷重を受け持つ有効幅(単位はmm)
    el:解析対象物の全伸び(単位はε)
    e :母材部の要素サイズ(単位はmm)
  7. 前記(4)式において、前記全塑性曲げモーメントMpは(5)式で定義され、前記補正項F(Mp、t、D、W、el、e)は(6)式で定義されていることを特徴とする請求項6に記載の破断予測方法。
    Mp=(TS・W・t)/4 …(5)
    ここで、TS:解析対象物の引張強度(単位はMPa)
    F(Mp、t、D、W、el、e)
    =f(Mp)・f(t)・f(D)・f(W)・f(el)・f(e) …(6)
    ここで、f(Mp):全塑性曲げモーメントMpの補正項
    f(t): 板厚tの補正項
    f(D):ナゲット径Dの補正項
    f(W):有効幅Wの補正項
    f(el):全伸びelの補正項
    f(e):母材部の要素サイズeの補正項
  8. f(Mp)、f(t)、f(D)、f(W)、f(el)、及びf(e)は、L字継ぎ手型の試験片を用いて作成された有限要素法モデルにおいて、実験で確認された破断荷重を試験片端部に負荷することで得られる、スポット溶接部に加わるモーメントと、前記(4)式を用いて算出された前記破断限界モーメントMfとの誤差が最小となるように重回帰から決定された式であることを特徴とする請求項7に記載の破断予測方法。
  9. 前記第3工程では、前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わる前記モーメントM1と、前記破断限界モーメントMfとの関係が(9)式を満足した場合に、前記破断予測結果として破断有りを示す結果を出力することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の破断予測方法。
    M1/Mf ≧ 1 …(9)
  10. 前記第3工程では、前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わる軸力が圧縮軸力である場合に、前記破断予測結果として破断無しを示す結果を強制的に出力することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の破断予測方法。
  11. 互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する破断予測装置であって、
    前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得するパラメータ取得手段と;
    前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを記憶する記憶手段と;
    前記記憶手段から前記関数を読み出し、前記パラメータ取得手段によって取得された前記母材部の要素サイズを前記関数に入力することにより、前記破断限界モーメントを破断判別基準として算出する破断判別基準算出手段と;
    前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わるモーメントが前記破断限界モーメントを超えたか否かを判別し、その判別結果を前記接合部の破断予測結果として出力する破断判別手段と;
    を備えることを特徴とする破断予測装置。
  12. 前記パラメータ取得手段は、前記要素モデルに設定された前記パラメータのうち、前記解析対象物の引張強度を前記母材部の要素サイズとともに取得し;
    前記記憶手段は、前記引張強度に対応する前記関数を複数記憶しており;
    前記破断判別基準算出手段は、前記パラメータ取得手段によって取得された前記引張強度に対応する前記関数を前記記憶手段から読み出して前記破断限界モーメントを算出する;
    ことを特徴とする請求項11に記載の破断予測装置。
  13. 前記引張強度が980MPa以上の場合、
    前記破断判別基準算出手段は、(1)式で表される前記関数を前記記憶手段から読み出して前記破断限界モーメントを算出することを特徴とする請求項12に記載の破断予測装置。
    Mf=Me・F(Me、t、D、W、L、e) …(1)
    ここで、Mf:破断限界モーメント(単位はN・mm)
    Me:修正弾性曲げモーメント(単位はN・mm)
    F(Me、t、D、W、L、e):補正項
    t :解析対象物の板厚(単位はmm)
    D :接合部がスポット溶接部の場合のナゲット径(単位はmm)
    W :スポット溶接部が荷重を受け持つ有効幅(単位はmm)
    L :アーム長(単位はmm)
    e :母材部の要素サイズ(単位はmm)
  14. 前記(1)式において、前記修正弾性曲げモーメントMeは(2)式で定義され、前記補正項F(Me、t、D、W、L、e)は(3)式で定義されていることを特徴とする請求項13に記載の破断予測装置。
    Me=(el/L)・(E・D・t)/12 …(2)
    ここで、el:解析対象物の全伸び(単位はε)
    E :解析対象物のヤング率(単位はMPa)
    F(Me、t、D、W、L、e)
    =f(Me)・f(t)・f(D)・f(W)・f(L)・f(e) …(3)
    ここで、f(Me):修正弾性曲げモーメントMeの補正項
    f(t): 板厚tの補正項
    f(D):ナゲット径Dの補正項
    f(W):有効幅Wの補正項
    f(L):アーム長Lの補正項
    f(e):母材部の要素サイズeの補正項
  15. f(Me)、f(t)、f(D)、f(W)、f(L)、及びf(e)は、L字継ぎ手型の試験片を用いて作成された有限要素法モデルにおいて、実験で確認された破断荷重を試験片端部に負荷することで得られる、スポット溶接部に加わるモーメントと、前記(1)式を用いて算出された前記破断限界モーメントMfとの誤差が最小となるように重回帰から決定された式であることを特徴とする請求項14に記載の破断予測装置。
  16. 前記引張強度が980MPa未満の場合、
    前記破断判別基準算出手段は、(4)式で表される前記関数を前記記憶手段から読み出して前記破断限界モーメントを算出することを特徴とする請求項12に記載の破断予測装置。
    Mf=Mp・F(Mp、t、D、W、el、e) …(4)
    ここで、Mf:破断限界モーメント(単位はN・mm)
    Mp:全塑性曲げモーメント(単位はN・mm)
    F(Mp、t、D、W、el、e):補正項
    t :解析対象物の板厚(単位はmm)
    D :接合部がスポット溶接部の場合のナゲット径(単位はmm)
    W :スポット溶接部が荷重を受け持つ有効幅(単位はmm)
    el:解析対象物の全伸び(単位はε)
    e :母材部の要素サイズ(単位はmm)
  17. 前記(4)式において、前記全塑性曲げモーメントMpは(5)式で定義され、前記補正項F(Mp、t、D、W、el、e)は(6)式で定義されていることを特徴とする請求項16に記載の破断予測装置。
    Mp=(TS・W・t)/4 …(5)
    ここで、TS:解析対象物の引張強度(単位はMPa)
    F(Mp、t、D、W、el、e)
    =f(Mp)・f(t)・f(D)・f(W)・f(el)・f(e) …(6)
    ここで、f(Mp):全塑性曲げモーメントMpの補正項
    f(t): 板厚tの補正項
    f(D):ナゲット径Dの補正項
    f(W):有効幅Wの補正項
    f(el):全伸びelの補正項
    f(e):母材部の要素サイズeの補正項
  18. f(Mp)、f(t)、f(D)、f(W)、f(el)、及びf(e)は、L字継ぎ手型の試験片を用いて作成された有限要素法モデルにおいて、実験で確認された破断荷重を試験片端部に負荷することで得られる、スポット溶接部に加わるモーメントと、前記(4)式を用いて算出された前記破断限界モーメントMfとの誤差が最小となるように重回帰から決定された式であることを特徴とする請求項17に記載の破断予測装置。
  19. 前記破断判別手段は、前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わる前記モーメントM1と、前記破断限界モーメントMfとの関係が(9)式を満足した場合に、前記破断予測結果として破断有りを示す結果を出力することを特徴とする請求項11〜18のいずれか一項に記載の破断予測装置。
    M1/Mf ≧ 1 …(9)
  20. 前記破断判別手段は、前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わる軸力が圧縮軸力である場合に、前記破断予測結果として破断無しを示す結果を強制的に出力することを特徴とする請求項11〜19のいずれか一項に記載の破断予測装置。
  21. 互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
    前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得する第1処理と;
    前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを破断判別基準として算出する第2処理と;
    前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わるモーメントが前記破断限界モーメントを超えたか否かを判別し、その判別結果を前記接合部の破断予測結果として出力する第3処理と;
    をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  22. 前記第1処理では、前記要素モデルに設定された前記パラメータのうち、前記解析対象物の引張強度を前記母材部の要素サイズとともに取得する処理をコンピュータに実行させ;
    前記第2処理では、前記破断限界モーメントの算出に使用される前記関数を前記引張強度に応じて変化させる処理をコンピュータに実行させる;
    ことを特徴とする請求項21に記載のプログラム。
  23. 前記引張強度が980MPa以上の場合、
    前記第2処理では、前記関数として(1)式を用いて前記破断限界モーメントを算出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項22に記載のプログラム。
    Mf=Me・F(Me、t、D、W、L、e) …(1)
    ここで、Mf:破断限界モーメント(単位はN・mm)
    Me:修正弾性曲げモーメント(単位はN・mm)
    F(Me、t、D、W、L、e):補正項
    t :解析対象物の板厚(単位はmm)
    D :接合部がスポット溶接部の場合のナゲット径(単位はmm)
    W :スポット溶接部が荷重を受け持つ有効幅(単位はmm)
    L :アーム長(単位はmm)
    e :母材部の要素サイズ(単位はmm)
  24. 前記(1)式において、前記修正弾性曲げモーメントMeは(2)式で定義され、前記補正項F(Me、t、D、W、L、e)は(3)式で定義されていることを特徴とする請求項23に記載のプログラム。
    Me=(el/L)・(E・D・t)/12 …(2)
    ここで、el:解析対象物の全伸び(単位はε)
    E :解析対象物のヤング率(単位はMPa)
    F(Me、t、D、W、L、e)
    =f(Me)・f(t)・f(D)・f(W)・f(L)・f(e) …(3)
    ここで、f(Me):修正弾性曲げモーメントMeの補正項
    f(t): 板厚tの補正項
    f(D):ナゲット径Dの補正項
    f(W):有効幅Wの補正項
    f(L):アーム長Lの補正項
    f(e):母材部の要素サイズeの補正項
  25. f(Me)、f(t)、f(D)、f(W)、f(L)、及びf(e)は、L字継ぎ手型の試験片を用いて作成された有限要素法モデルにおいて、実験で確認された破断荷重を試験片端部に負荷することで得られる、スポット溶接部に加わるモーメントと、前記(1)式を用いて算出された前記破断限界モーメントMfとの誤差が最小となるように重回帰から決定された式であることを特徴とする請求項24に記載のプログラム。
  26. 前記引張強度が980MPa未満の場合、
    前記第2処理では、前記関数として(4)式を用いて前記破断限界モーメントを算出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項22に記載のプログラム。
    Mf=Mp・F(Mp、t、D、W、el、e) …(4)
    ここで、Mf:破断限界モーメント(単位はN・mm)
    Mp:全塑性曲げモーメント(単位はN・mm)
    F(Mp、t、D、W、el、e):補正項
    t :解析対象物の板厚(単位はmm)
    D :接合部がスポット溶接部の場合のナゲット径(単位はmm)
    W :スポット溶接部が荷重を受け持つ有効幅(単位はmm)
    el:解析対象物の全伸び(単位はε)
    e :母材部の要素サイズ(単位はmm)
  27. 前記(4)式において、前記全塑性曲げモーメントMpは(5)式で定義され、前記補正項F(Mp、t、D、W、el、e)は(6)式で定義されていることを特徴とする請求項26に記載のプログラム。
    Mp=(TS・W・t)/4 …(5)
    ここで、TS:解析対象物の引張強度(単位はMPa)
    F(Mp、t、D、W、el、e)
    =f(Mp)・f(t)・f(D)・f(W)・f(el)・f(e) …(6)
    ここで、f(Mp):全塑性曲げモーメントMpの補正項
    f(t): 板厚tの補正項
    f(D):ナゲット径Dの補正項
    f(W):有効幅Wの補正項
    f(el):全伸びelの補正項
    f(e):母材部の要素サイズeの補正項
  28. f(Mp)、f(t)、f(D)、f(W)、f(el)、及びf(e)は、L字継ぎ手型の試験片を用いて作成された有限要素法モデルにおいて、実験で確認された破断荷重を試験片端部に負荷することで得られる、スポット溶接部に加わるモーメントと、前記(4)式を用いて算出された前記破断限界モーメントMfとの誤差が最小となるように重回帰から決定された式であることを特徴とする請求項27に記載のプログラム。
  29. 前記第3処理では、前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わる前記モーメントM1と、前記破断限界モーメントMfとの関係が(9)式を満足した場合に、前記破断予測結果として破断有りを示す結果を出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項21〜28のいずれか一項に記載のプログラム。
    M1/Mf ≧ 1 …(9)
  30. 前記第3処理では、前記解析対象物の要素モデルの変形解析において前記接合部に加わる軸力が圧縮軸力である場合に、前記破断予測結果として破断無しを示す結果を強制的に出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項21〜29のいずれか一項に記載のプログラム。
  31. 請求項21〜30のいずれか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  32. 互いに接合された一対の部材からなる解析対象物における接合部の破断を有限要素法を用いて予測する際に使用される破断判別基準を算出する破断判別基準算出方法であって、
    前記解析対象物の要素モデルに設定されたパラメータのうち、少なくとも母材部の要素サイズを取得する第1工程と;
    前記母材部の要素サイズを変数の一つとして含む関数によって定義された破断限界モーメントを破断判別基準として算出する第2工程と;
    を有することを特徴とする破断判別基準算出方法。
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