JP5356164B2 - 亀裂発生寿命予測装置および亀裂発生寿命予測方法 - Google Patents

亀裂発生寿命予測装置および亀裂発生寿命予測方法 Download PDF

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Description

本発明は、温度変化による熱負荷および荷重負荷が作用するはんだ接合部の亀裂発生寿命を予測する亀裂発生寿命予測装置および亀裂発生寿命予測方法に関する。
従来より、例えば電子部品をはんだ付けした表面実装型の基板では、電子部品のはんだ接合部に温度変化による熱負荷が繰り返し作用することによって亀裂が発生し、この亀裂が進展すると導通不良に至ることがある。このため、はんだ接合部における亀裂発生寿命を、寿命予測式を用いて予測することが行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の寿命予測では、はんだ接合部の解析モデルに熱負荷となる冷熱サイクルを繰り返し付与することによって生じるひずみ振幅を有限要素法(FEM)を用いた解析により求め、このひずみ振幅から寿命予測式に基づいてはんだ接合部の亀裂発生寿命を算出している。
しかしながら、上記寿命予測式は、はんだ接合部に熱負荷が作用する場合のみを考慮したものであるため、この熱負荷に加えて荷重負荷が作用する場合には、亀裂発生寿命を正確に予測することができないという問題がある。
そこで、はんだ接合部の解析モデルに、荷重負荷を作用させた状態で冷熱サイクルを付与することによって、はんだ接合部に生じる平均ひずみを有限要素法を用いた解析により求め、この平均ひずみから所定の低下定数に基づいて算出した寿命の低下率によって、上記寿命予測式を修正することが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。低下定数は、亀裂発生寿命を試験により実測して求めた実測寿命と、亀裂発生寿命を解析により求めた解析寿命とに基づいて求められる。
特開2006−71406号公報
戸坂彰彦,他3名、「複合負荷を受けるはんだ接合部の疲労寿命の定量評価に関する研究」、「機械学会年次大会論文集」、2008年
ところで、上記平均ひずみを有限要素法を用いた解析によって求める際に、解析領域を複数の要素にメッシュ分割することが行われるが、その要素サイズは、一般的にはんだ接合部の解析領域の大きさに応じて異なるサイズに設定される。
例えば、電子部品が小型の場合は、はんだ接合部における解析領域が小さいため、解析時の要素サイズは、平均ひずみを高い解析精度で求めることができるように十数μmと小さく設定される。一方、大型の電子部品、例えば車載コネクタの場合は、そのはんだ接合部における解析領域が大きいため、高い解析精度を求めて要素サイズを小さく設定すると、膨大な解析時間を必要とする。このため、大型の電子部品では、解析時間の短縮化を図るため、要素サイズを約50μmと大きく設定している。
このように、要素サイズは解析領域の大きさによって異なるサイズに設定されるため、設定された要素サイズ毎にこの要素サイズに応じた適切な低下定数を求める必要がある。しかも、低下定数は、上述のように、実測と解析とにより求められるものであるため、低下定数を求めるために膨大な時間を必要とする。
したがって、この低下定数に基づく低下率の算出、ひいてはこの低下率に基づいて算出される亀裂発生寿命の予測に膨大な時間を必要とするという問題があった。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、荷重負荷に起因するひずみを有限要素法を用いて解析する際の要素サイズに応じて、亀裂発生寿命を短時間で予測することができる亀裂発生寿命予測装置および亀裂発生寿命予測方法を提供することを目的としている。
本発明の亀裂発生寿命予測装置は、温度変化による熱負荷が作用するとともに荷重負荷が作用するはんだ接合部の亀裂発生寿命を予測する亀裂発生寿命予測装置であって、所定の第一要素サイズでメッシュ分割した前記はんだ接合部の解析モデルに、前記荷重負荷を作用させた状態で冷熱サイクルを付与することによって、前記熱負荷に起因するひずみ振幅、および当該荷重負荷に起因する平均ひずみを有限要素法を用いた解析により求める解析部と、前記第一要素サイズと異なるサイズの第二要素サイズにおいて平均ひずみから低下率を算出するための関係式を用いて、前記解析部で求めた平均ひずみから、前記荷重負荷に起因する前記亀裂発生寿命の低下率を算出する第一算出部と、前記解析部で求めた平均ひずみに対して、前記第一要素サイズと異なるサイズの第二要素サイズに基づく低下定数、および前記第一要素サイズに応じた所定の補正パラメータを作用させて、前記荷重負荷に起因する前記亀裂発生寿命の低下率を算出する第一算出部と、前記解析部で求めたひずみ振幅、および前記第一算出部で算出した低下率に基づいて、はんだ接合部の亀裂発生寿命を算出する第二算出部と、を備え、前記第一算出部は、前記関係式を用いて算出された値を、前記第一要素サイズに応じて所定の補正パラメータにより補正して低下率を求めることを特徴とする。
また、本発明の亀裂発生寿命予測方法は、温度変化による熱負荷が作用するとともに荷重負荷が作用するはんだ接合部の亀裂発生寿命を予測する亀裂発生寿命予測方法であって、所定の第一要素サイズでメッシュ分割した前記はんだ接合部の解析モデルに、前記荷重負荷を作用させた状態で冷熱サイクルを付与することによって、前記熱負荷に起因するひずみ振幅、および当該荷重負荷に起因する平均ひずみを有限要素法を用いた解析により求める解析工程と、前記第一要素サイズと異なるサイズの第二要素サイズにおいて平均ひずみから低下率を算出するための関係式を用いて、前記解析工程で求めた平均ひずみから、前記荷重負荷に起因する前記亀裂発生寿命の低下率を算出する第一算出工程と、前記解析工程で求めたひずみ振幅、および前記第一算出工程で算出した低下率に基づいて、はんだ接合部の亀裂発生寿命を算出する第二算出工程と、を備え、前記第一算出工程では、前記関係式を用いて算出された値を、前記第一要素サイズに応じて所定の補正パラメータにより補正して低下率を求めることを特徴とする。
本発明によれば、荷重負荷に起因する平均ひずみから低下率を算出する際に、第一要素サイズと異なるサイズの第二要素サイズにおいて平均ひずみから低下率を算出するための関係式により算出された値を、第一要素サイズに応じた補正パラメータにより補正することにより、低下率を算出することができる。このため、第二要素サイズに応じた低下定数を予め実測および解析により求めておけば、この低下定数に補正パラメータにより補正するだけで、第一要素サイズに応じた低下定数を実測および解析により求めることなく低下率を算出することができる。したがって、解析時の要素サイズに応じて、はんだ接合部における亀裂発生寿命を短時間で予測することができる。
また、前記第二要素サイズが、前記第一要素サイズよりも小さいことが好ましい。この場合、第一要素サイズを大きく設定することができるので、この第一要素サイズにより平均ひずみを解析する際の解析時間を短縮することができる。したがって、亀裂発生寿命をより短時間で予測することができる。
また、前記第二算出部が、Manson−Coffin則に基づく下記式により前記亀裂発生寿命を算出することが好ましい。
N=1000×(Δεi/0.01)-1.24×(1−k×αεa
ここで、Nは亀裂発生寿命、Δεiはひずみ振幅、kは補正パラメータ、αは低下定数、εaは平均ひずみ、k×αεaは低下率(ただし、0≦k×αεa≦1)である。
この場合は、Manson−Coffin則に基づく上記式により亀裂発生寿命を算出するようにしたので、はんだ接合部における亀裂発生寿命を的確に予測することができる。
また、前記はんだ接合部が、基板上に実装された車載コネクタのはんだ接合部であることが好ましい。
この場合、車載コネクタのはんだ接合部において、解析時の要素サイズに応じて、熱負荷および荷重負荷が作用する場合のはんだ接合部における亀裂発生寿命を短時間で予測することができる。
本発明によれば、第一要素サイズに応じた低下定数を実測および解析により求めることなく低下率を算出することができるので、解析時の要素サイズに応じて、はんだ接合部における亀裂発生寿命を短時間で予測することができる。
本発明の一実施形態に係る亀裂発生寿命予測装置により寿命予測されるはんだ接合部を有する車載コネクタの概略平面図である。 図1におけるA矢視図である。 亀裂発生寿命予測装置の全体構成を示すブロック図である。 亀裂発生寿命予測装置により亀裂発生寿命を予測する方法を示すフローチャートである。 冷熱サイクル中におけるはんだ接合部の応力−ひずみ曲線を示す概略説明図である。 低下率と平均ひずみとの関係を示すグラフである。 亀裂進展解析により亀裂進展寿命を予測する方法を示すフローチャートである。 負荷条件かつ補正パラメータkにより補正した場合における亀裂進展長さと冷熱サイクル数との関係を示すグラフである。 無負荷条件かつ補正パラメータkにより補正した場合における亀裂進展長さと冷熱サイクル数との関係を示すグラフである。 負荷条件かつ補正パラメータkにより補正しなかった場合における亀裂進展長さと冷熱サイクル数との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る亀裂発生寿命予測装置により寿命予測されるはんだ接合部を有する車載コネクタの概略平面図であり、図2は、図1におけるA矢視図である。
図1および図2において、車載コネクタ1は、ハウジング2と、その後面(図1の下側)に接続された複数のリード端子3と、左右両側面に固定された略L字型の固定ペグ4とを備えている。車載コネクタ1は、このリード端子3の先端部および固定ペグ4の水平部4aを電子制御ユニット(ECU)の基板5にそれぞれはんだ付けされることにより、この基板5上に実装されている。
ハウジング2の前面(図1の上側)には複数の雄側端子(図示せず)が配設されており、この雄側端子に相手側のハウジング6の雌側端子(図示せず)が嵌合されている。この相手側のハウジング6にはワイヤハーネス7の一端が接続されている。
車載コネクタ1および基板5は、車内の雰囲気温度の変化が激しいため、この雰囲気温度の変化によって熱膨張したり熱収縮したりする。その際、車載コネクタ1と基板5とでは材料が異なるため、両者の熱膨張率の差によってはんだ接合部8(図2参照)には熱負荷によるせん断力が作用する。
また、ワイヤハーネス7は、車内での配線スペースが限られているため、無理に引っ張られた状態で車載コネクタ1に接続されていることが多い。この場合、はんだ接合部8には、ワイヤハーネス7の引張荷重による荷重負荷が一方向(図1の矢符B方向)に作用することになる。
したがって、車載コネクタ1のはんだ接合部8には、上記熱負荷が繰り返し作用するとともに上記荷重負荷が常に作用することにより亀裂が発生し、この亀裂が進展する。最悪の場合は、はんだ接合部8が剥離して基板5から車載コネクタ1が外れることになる。
本実施形態では、亀裂発生寿命予測装置10により、複合負荷(熱負荷および荷重負荷)が作用する車載コネクタ1のはんだ接合部8における亀裂発生寿命を予測するものである。
図3は、亀裂発生寿命予測装置10の全体構成を示すブロック図であり、図4は、亀裂発生寿命予測装置10により亀裂発生寿命Nを予測する方法を示すフローチャートである。
図3および図4において、亀裂発生寿命予測装置10は、上記熱負荷に起因するひずみ振幅Δεiおよび上記荷重負荷に起因する平均ひずみεa50をそれぞれ有限要素法を用いた解析により求める解析部11(解析工程)と、低下率β50を算出する第一算出部12(第一算出工程)と、はんだ接合部8の亀裂発生寿命Nを算出する第二算出部13(第二算出工程)とによって構成されている。
解析部11(解析工程)では、亀裂のないはんだ接合部8をモデル化した解析モデルを用いて、はんだ接合部8におけるひずみ振幅Δεiおよび平均ひずみεa50を求める(ステップS1)。解析モデルは、例えば1/2モデルにするとともに、一次の四面体要素でメッシュ分割する。メッシュ分割時の要素サイズ(第一要素サイズ)は、50μmとし、解析精度よりも解析時間を優先した値に設定している。
また、ワイヤハーネス7は梁要素でモデル化し、その先端に車載コネクタ1の垂直上方への荷重負荷を加えるように点荷重を付与する。さらに、はんだ材料の特性としては、塑性特性およびクリープ特性を与える。温度条件としては、例えば−40〜120℃(各30分)/サイクルとする冷熱サイクルを付与する。
上記条件により解析を行うと、冷熱サイクル中のはんだ接合部8に生じる応力およびひずみは、図5に示すように、最初の1サイクルでO1点(原点)からA点を経由してB点に至り、次の1サイクルでB点からA点を経由してB点に戻る。そして、その後の冷熱サイクル中における応力およびひずみは、A点とB点との間を一定振幅で変動する。したがって、この冷熱サイクル中におけるひずみ振幅Δεiは、冷熱サイクルを最初に2回繰り返した時点で求めることができる。
一方、冷熱サイクル中には上記荷重負荷も作用するため、はんだ接合部8にはこの荷重負荷に起因してクリープ変形が生じる。このため、冷熱サイクル中のはんだ接合部8に生じるひずみは、クリープ変形により時間経過とともに徐々に増大する。このひずみの増大により、図5に示すように、初期のひずみ振幅Δεiの中心となるO1点は、所定時間経過後にはO3点まで移動し、このO3点を中心としたひずみ振幅Δεiとなる。
このように、荷重負荷に起因するひずみは、時間経過とともに変化するものであるため、冷熱サイクルが所定回数(例えば30回)経過したときの累積ひずみから、1サイクル当たりのひずみ(図5のO2点におけるひずみ)を算出し、このひずみを荷重負荷に起因する平均ひずみεa50として用いる。
第一算出部12(第一算出工程)では、解析部11で求めた平均ひずみεa50から低下率β50を算出する(ステップS2)。低下率βは、荷重負荷に起因する亀裂発生寿命Nの低下率を示すものである。すなわち、低下率βは、熱負荷および荷重負荷に起因する亀裂発生寿命Nを試験により実測して求めた実測寿命と、熱負荷のみに起因する亀裂発生寿命を解析により求めた解析寿命との間に生じる誤差の程度を示すものであり、上記実測に基づく低下率βの算出式は、下記式(1)となる。
β=1−実測寿命/解析寿命 ・・・(1)
図6は、三点曲げ試験等により求めた実測寿命、および要素サイズ(第二要素サイズ)を12.5μmとして解析により求めた解析寿命から上記式(1)に基づいて低下率β12.5を算出し、この低下率β12.5と第二要素サイズで解析された平均ひずみεa12.5との関係を示すグラフである。低下率β12.5と平均ひずみεa12.5とは、図6のグラフから、平均ひずみεa12.5の増大にともなって低下率β12.5が直線的に増大する比例関係にあることがわかる。したがって、その比例定数を低下定数α12.5とすると、第二要素サイズにおいて平均ひずみεa12.5から低下率β12.5を算出するための関係式は、β12.5=αεa12.5となる。この関係式を使用すると、第一要素サイズに応じた低下率β50を、下記式(2)により、第二要素サイズに基づく平均ひずみεa12.5を用いて算出することができる。
β50=k×αεa12.5 ・・・(2)
ここで、kは補正パラメータであり、β50は0≦β50≦1である。
補正パラメータkは、第二要素サイズに基づく低下定数α12.5を、第一要素サイズに適応した低下定数に補正するためのパラメータであり、本実施形態ではk=2として設定されている。
このように、平均ひずみεa50の解析時における第一要素サイズに応じて、予め実測および解析により求められた第二要素サイズに基づく低下定数α12.5に補正パラメータkを乗算することにより、第一要素サイズに応じた低下率β50を算出することができる。
第二算出部13(第二算出工程)では、解析部11で求めたひずみ振幅Δεi、および第一算出部12で算出した低下率β50に基づいて、はんだ接合部8の亀裂発生寿命Nを算出する(ステップS3)。亀裂発生寿命Nは、はんだ接合部8に亀裂が発生するまでに繰り返される冷熱サイクル数で表され、下記式(3)に基づいて算出される。
N=1000×(Δεi/0.01)-1.24×(1−β50) ・・・(3)
ここで、式(3)中の1000×(Δεi/0.01)-1.24は、熱負荷が作用している場合におけるManson−Coffin則に基づく亀裂発生寿命の予測式である。
このように、熱負荷(ひずみ振幅Δεi)に起因する予測式と、荷重負荷(平均ひずみεa50)に起因する低下率β50とによって、亀裂発生寿命Nを算出するようにしたので、複合負荷が作用する場合の亀裂発生寿命Nを、試験を行うことなく、有限要素法による解析に基づいて算出することができる。
以上、本発明の実施形態に係る亀裂発生寿命予測装置10によれば、車載コネクタ1におけるはんだ接合部8の解析モデルを第一要素サイズ(50μm)でメッシュ分割して解析することにより、荷重負荷に起因する平均ひずみεa50を求め、この平均ひずみεa50に対して、第一要素サイズと異なるサイズであってかつ予め実測および解析により求められた第二要素サイズ(12.5μm)に基づく低下定数εa12.5、および第一要素サイズに応じた所定の補正パラメータkを作用させて、亀裂発生寿命Nの低下率β50を算出することができる。このため、第二要素サイズに応じた低下定数α12.5を予め実測および解析により求めておけば、この低下定数α12.5に補正パラメータkを作用させるだけで、第一要素サイズに応じた低下定数α50を実測および解析により求めることなく低下率β50を算出することができる。したがって、解析時の要素サイズに応じて、はんだ接合部8における亀裂発生寿命Nを短時間で予測することができる。
また、第一要素サイズを第二要素サイズよりも大きく設定することができるので、この第一要素サイズにより平均ひずみεa50を解析する際の解析時間を短縮することができる。したがって、亀裂発生寿命をより短時間で予測することができる。
また、亀裂発生寿命Nを、熱負荷に起因するひずみ振幅Δεiを用いたManson−Coffin則に基づく上記式(3)により算出するようにしたので、はんだ接合部8における亀裂発生寿命Nを的確に予測することができる。
次に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
この実施例では、亀裂発生寿命予測装置10により算出した亀裂発生寿命Nの予測精度を、亀裂発生後の亀裂進展について試験および有限要素法を用いた解析(以下、FEM解析という。)を行うことにより比較検証した。
試験は、サーマルショック試験(冷熱衝撃試験)により行った。試験に使用した車載コネクタ1のハウジング2の材質は、はんだ接合部8における亀裂の発生および進展を把握し易いように、線膨張係数の大きい材質とした。また、はんだ材料は、Sn3.0Ag0.5Cuを使用した。
試験では、車載コネクタ1が下側となるように基板5を治具に固定し、サーマルショック試験槽内に配置した。温度条件としては、実使用環境よりも厳しい−40〜120℃(各30分)/サイクルとする冷熱サイクルを付与する。また、試験条件は、ワイヤハーネス7に錘を吊り下げてはんだ接合部8に剥離方向へ荷重負荷を作用させる負荷条件と、ワイヤハーネス7に錘を吊り下げない無負荷条件との2パターンとし、各条件でそれぞれ試験を行った。なお、サイクル数は各試験条件ともに、3000サイクルまで試験を行い、はんだ接合部8に生じる亀裂の進展長さを調査した。
FEM解析は、図7に示すように、亀裂進展解析により亀裂進展寿命を予測するフローチャートに沿って行った。解析工程(ステップS101)、第一算出工程(ステップS102)および第二算出工程(ステップS103)は、上記実施形態における解析工程、第一算出工程および第二算出工程と同一の工程である。すなわち、解析工程で求めたひずみ振幅Δεiと平均ひずみεa50、および第一算出工程で第二要素サイズに基づく低下定数α12.5および第一要素サイズに応じた補正パラメータkを乗算して算出した低下率β50に基づいて、第二算出工程で亀裂発生寿命Nを算出する。なお、補正パラメータkは、上記実施形態と同様に、k=2として設定した。
亀裂発生寿命Nの算出後は、累積線形被害則による削除要素決定を行う(ステップS104)。すなわち、累積線形被害則に基づいてはんだ接合部8の亀裂による剥離部分の要素を決定し、この要素を削除することによって剥離部分を解析対象から除外する。
続いて、計算終了するか否かを判断する(ステップS105)。冷熱サイクル数が3000サイクルに到達していない場合は、ステップ101に戻り、当該ステップS101〜104の工程を繰り返す。冷熱サイクル数が3000サイクルに到達すると、亀裂進展寿命を算出し(ステップ106)、亀裂進展解析を終了する。
なお、FEM解析は、市販の構造解析ソフト(ABAQUS/STANDARD ver6.7)を使用し、累積線形被害則による削除要素決定は、pythonプログラムにより行った。また、FEM解析は、上記実施形態と同一の解析条件とし、サーマルショック試験の負荷条件に対応する解析と、同試験の無負荷条件に対応する解析とを行った。さらに、負荷条件に対応する解析では、第一算出工程で補正パラメータkにより補正する場合と、補正パラメータkを補正しない場合との2種類の解析を行った。
図8〜図10は、上記試験による実測結果、および上記FEM解析による解析結果を示すグラフである。各グラフ中の「MAX」は実測結果の最大値、「MIN」は実測結果の最小値、「AVE」は実測結果の平均値をそれぞれ意味する。
図8は、負荷条件かつ第一算出工程で補正パラメータkにより補正した場合における亀裂進展長さ(μm)と冷熱サイクル数との関係を示すグラフである。図8に示された結果から、FEM解析による解析結果は、サイクル数の増加にともなって亀裂進展長さが増大しており、その変化量も試験による実測結果と近似していることから、高い解析精度を有していることがわかった。
図9は、無負荷条件かつ第一算出工程で補正パラメータkにより補正した場合における亀裂進展長さ(μm)と冷熱サイクル数との関係を示すグラフである。図8および図9のグラフを比較すると、図8の負荷条件による解析結果の亀裂進展長さは、図9の無負荷条件による解析結果の亀裂進展長さよりも大きくなるという結果となった。したがって、FEM解析により、実測結果と同様に複合負荷に起因して亀裂進展寿命が短くなることを再現できることがわかった。
図10は、負荷条件かつ第一算出工程で補正パラメータkにより補正しなかった場合における亀裂進展長さ(μm)と冷熱サイクル数との関係を示すグラフである。図8および図10のグラフを比較すると、両者は同じ負荷条件により解析したにも関わらず、図10の解析結果による亀裂進展長さのほうが短くなるという結果となった。また、図9および図10のグラフを比較すると、図10の解析結果による亀裂進展長さは、負荷条件により解析しているにも関わらず、図9の無負荷条件により解析した亀裂進展長さとほぼ近似する結果となった。これらの結果から、負荷条件において補正パラメータkにより補正しなかった場合の解析結果は、無負荷条件の解析結果と近似する結果となり、負荷条件の実測結果を再現できないことがわかった。換言すると、負荷条件において補正パラメータkにより補正すれば、その解析結果が実測結果を再現できることがわかった。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記実施形態では、上記式(2)において低下率βを算出する際に、補正パラメータkを乗算しているが、これに限定されず、補正パラメータkを加算、減算もしくは除算するものであってもよい。
また、平均ひずみから低下率を算出するための関係式において、比例定数である低下定数kを用いているが、平均ひずみεaと低下率βとが曲線的に変化する関係の場合には、この関係に基づく値を用いればよい。その際、補正パラメータkは、一定値ではなく、関数により設定されるものであってもよい。
さらに、第一要素サイズを50μm、第二要素サイズを12.5μmとしているが、第一要素サイズを12.5μm、第二要素サイズを50μmとしてもよい。
また、第一要素サイズおよび第二要素サイズは、上記12.5μmおよび50μmに限定されるものではなく、第一要素サイズと第二要素サイズとが異なるサイズに設定されていればよい。
また、上記式(3)においてManson−Coffin則に基づく予測式を用いているが、その他の予測式を用いることも可能である。
また、亀裂発生寿命予測装置10は、車載コネクタ1のはんだ接合部8における亀裂発生寿命Nを予測するものであるが、その他の車載電子部品、または車載以外の電子部品のはんだ接合部における亀裂発生寿命を予測するものであってもよい。
1 車載コネクタ
5 基板
8 はんだ接合部
10 亀裂発生寿命予測装置
11 解析部
12 第一算出部
13 第二算出部
k 補正パラメータ
N 亀裂発生寿命
α12.5 第二の要素サイズに基づく低下定数
β50 低下率
Δεi ひずみ振幅
εa50 平均ひずみ
S1 解析工程
S2 第一算出工程
S3 第二算出工程

Claims (5)

  1. 温度変化による熱負荷が作用するとともに荷重負荷が作用するはんだ接合部の亀裂発生寿命を予測する亀裂発生寿命予測装置であって、
    所定の第一要素サイズでメッシュ分割した前記はんだ接合部の解析モデルに、前記荷重負荷を作用させた状態で冷熱サイクルを付与することによって、前記熱負荷に起因するひずみ振幅、および当該荷重負荷に起因する平均ひずみを有限要素法を用いた解析により求める解析部と、
    前記第一要素サイズと異なるサイズの第二要素サイズにおいて平均ひずみから低下率を算出するための関係式を用いて、前記解析部で求めた平均ひずみから、前記荷重負荷に起因する前記亀裂発生寿命の低下率を算出する第一算出部と、
    前記解析部で求めたひずみ振幅、および前記第一算出部で算出した低下率に基づいて、はんだ接合部の亀裂発生寿命を算出する第二算出部と、を備え、
    前記第一算出部は、前記関係式を用いて算出された値を、前記第一要素サイズに応じて所定の補正パラメータにより補正して低下率を求める
    ことを特徴とする亀裂発生寿命予測装置。
  2. 前記第二要素サイズが、前記第一要素サイズよりも小さい請求項1に記載の亀裂発生寿命予測装置。
  3. 前記第二算出部が、Manson−Coffin則に基づく下記式により前記亀裂発生寿命を算出する請求項1または2に記載の亀裂発生寿命予測装置。
    N=1000×(Δεi/0.01)-1.24×(1−k×αεa)
    ここで、Nは亀裂発生寿命、Δεiはひずみ振幅、kは補正パラメータ、αは低下定数、εaは平均ひずみ、k×αεaは低下率(ただし、0≦k×αεa≦1)である。
  4. 前記はんだ接合部が、基板上に実装された車載コネクタのはんだ接合部である請求項1〜3に記載の亀裂発生寿命予測装置。
  5. 温度変化による熱負荷が作用するとともに荷重負荷が作用するはんだ接合部の亀裂発生寿命を予測する亀裂発生寿命予測方法であって、
    所定の第一要素サイズでメッシュ分割した前記はんだ接合部の解析モデルに、前記荷重負荷を作用させた状態で冷熱サイクルを付与することによって、前記熱負荷に起因するひずみ振幅、および当該荷重負荷に起因する平均ひずみを有限要素法を用いた解析により求める解析工程と、
    前記第一要素サイズと異なるサイズの第二要素サイズにおいて平均ひずみから低下率を算出するための関係式を用いて、前記解析工程で求めた平均ひずみから、前記荷重負荷に起因する前記亀裂発生寿命の低下率を算出する第一算出工程と、
    前記解析工程で求めたひずみ振幅、および前記第一算出工程で算出した低下率に基づいて、はんだ接合部の亀裂発生寿命を算出する第二算出工程と、を備え、
    前記第一算出工程では、前記関係式を用いて算出された値を、前記第一要素サイズに応じて所定の補正パラメータにより補正して低下率を求める
    ことを特徴とする亀裂発生寿命予測方法。
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