JPWO2016052123A1 - ガスバリア性フィルム、それを用いた電子デバイス、およびガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]と層[B]とが接するように高分子基材側からこの順に配置されたガスバリア性フィルムであって、前記層[B]がSi−Hで表される結合を有する成分を含み、かつ前記層[B]における水素原子濃度が35〜55atom%であるガスバリア性フィルム。
(2)前記層[B]における前記無機層[A]側の膜密度が1.3〜1.9g/cm3であり、最表面側の膜密度が1.9〜2.3g/cm3である上記(1)に記載のガスバリア性フィルム。
(3)前記無機層[A]の膜密度が2.2〜6.5g/cm3であり、かつ前記層[B]における最表面側の膜密度よりも高い上記(1)または(2)に記載のガスバリア性フィルム。
(4)前記層[B]が少なくとも窒素原子、酸素原子およびケイ素原子を含み、かつ前記窒素原子濃度が10〜40atom%、前記酸素原子濃度が1〜10atom%、前記ケイ素原子濃度が10〜45atom%である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(5)前記無機層[A]が、亜鉛化合物とケイ素酸化物とを含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(6)前記無機層[A]が、以下の無機層[A1]〜[A3]のいずれかである上記(1)〜(5)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
無機層[A1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[A2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる無機層
無機層[A3]:ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層
(7)前記無機層[A]が前記無機層[A1]であり、該無機層[A1]が、ICP発光分光分析法により測定される亜鉛原子濃度が20〜40atom%、ケイ素原子濃度が5〜20atom%、アルミニウム原子濃度が0.5〜5atom%、酸素原子濃度が35〜70atom%である組成により構成されたものである上記(6)に記載のガスバリア性フィルム。
(8)前記無機層[A]が前記無機層[A2]であり、該無機層[A2]が、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9である組成により構成されたものである上記(6)に記載のガスバリア性フィルム。
(9)前記高分子基材と前記無機層[A]との間に、芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を含み、かつ有機ケイ素化合物および/または無機ケイ素化合物を含むアンダーコート層[C]を有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイス。
(11)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを製造する方法であって、層[B]を設ける工程を有し、
前記層[B]を設ける工程が、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法。
(12)前記工程[c]における温度が20〜40℃かつ相対湿度40〜90%である上記(11)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
本発明に用いられる高分子基材は、柔軟性を確保する観点からフィルム形態を有することが好ましい。フィルムの構成としては、単層フィルム、または2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムであってもよい。フィルムの種類としては、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用してもよい。
本発明における無機層[A]は、亜鉛化合物および/またはケイ素酸化物を含むことが好ましい。亜鉛化合物は、ガスバリア性及び光学特性に優れることから好ましく用いられ、ケイ素酸化物は、非晶質膜を形成することやガスバリア性に優れるため好ましく用いられる。亜鉛化合物および/またはケイ素酸化物を含んでいれば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の元素の酸化物、窒化物、硫化物、または、それらの混合物を含んでいてもよい。また、高いガスバリア性が得られやすい無機層[A]として、以下の無機層[A1]〜[A3]のいずれかが好適に用いられる。
無機層[A1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[A2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる無機層
無機層[A3]:ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層
無機層[A1]から[A3]のそれぞれの詳細は後述する。
本発明において無機層[A]として好適に用いられる、(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素、および(iii)酸化アルミニウムの共存相(以下、(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素、および(iii)酸化アルミニウムの共存相を「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相」と表記することもある)からなる層である無機層[A1]について詳細を説明する。なお、「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相」を「ZnO−SiO2−Al2O3」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO2)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、酸化亜鉛、酸化アルミニウムについても同様の扱いとし、それぞれ、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、それぞれ酸化亜鉛またはZnO、酸化アルミニウムまたはAl2O3と表記することとする。
次に、本発明において無機層[A]として好適に用いられる、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相(以下、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相を「硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相」と表記することもある)からなる層である無機層[A2]について詳細を説明する。なお、「硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相」を、「ZnS−SiO2」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO2)は、その生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、硫化亜鉛についても同様の扱いとし、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、硫化亜鉛またはZnSと表記することとする。
次に、本発明において無機層[A]として好適に用いられる、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層[A3]について詳細を説明する。ここで、主成分とはケイ素酸化物が無機層[A3]全体の60質量%以上であることを意味し、80質量%以上であれば好ましい。なお、二酸化ケイ素(SiO2)は、その生成時の条件によって、前記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。
本発明において、層[B]はSi−Hで表される結合を有する成分を含み、かつ水素原子濃度が35〜55atom%である。水素原子濃度は38〜52atom%であることが好ましく、40〜50atom%であることがより好ましい。層[B]における水素原子濃度が35〜55atom%であることにより、安定した高度なガスバリア性を有し、かつ、耐屈曲性に優れるガスバリア性フィルムを得ることができる。
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性向上、耐屈曲性向上のため、前記高分子基材と前記無機層[A]との間に、芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を含み、かつ有機ケイ素化合物および/または無機ケイ素化合物を含むアンダーコート層[C]を有することが好ましい。高分子基材上に突起や小擦り傷などの欠点が存在する場合、前記欠点を起点に高分子基材上に積層する無機層[A]にもピンホールやクラックが発生してガスバリア性や耐屈曲性が低下する場合があるため、アンダーコート層[C]を設けることが好ましい。また、高分子基材と無機層[A]との熱寸法安定性差が大きい場合もガスバリア性や耐屈曲性が低下する場合があるため、アンダーコート層[C]を設けることが好ましい。また、本発明において、アンダーコート層[C]は、熱寸法安定性、耐屈曲性の観点から芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を含むことが好ましく、さらに、エチレン性不飽和化合物[C2]、光重合開始剤[C3]、有機ケイ素化合物[C4]および/または無機ケイ素化合物[C5]を含有することがより好ましい。
本発明において、アンダーコート層に用いられる芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]は、主鎖あるいは側鎖に芳香族環およびウレタン結合を有するものであり、例えば、分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレート(c1)、ジオール化合物(c2)、ジイソシアネート化合物(c3)とを重合させて得ることができる。
エチレン性不飽和化合物[C2]としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールS型エポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート等を挙げられる。これらの中でも、熱寸法安定性、表面保護性能に優れた多官能(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
光重合開始剤[C3]としては、本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア性および耐屈曲性を保持することができれば素材は特に限定されない。本発明に好適に用いることができる光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]等オキシムエステル構造を持つ光重合開始剤等が挙げられる。
有機ケイ素化合物[C4]としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
無機ケイ素化合物[C5]としては、ケイ素の酸化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。特に表面保護性能、透明性の観点からシリカ粒子が好ましく、さらにシリカ粒子の一次粒子径が1〜300nmの範囲であることが好ましく、5〜80nmの範囲であることがより好ましい。なお、ここでいう一次粒子径とは、ガス吸着法により求めた比表面積sを下記の式(1)に適用することで求められる粒子直径dを指す。
アンダーコート層[C]の厚みは、200nm以上、4,000nm以下が好ましく、300nm以上3,000nm以下がより好ましく、500nm以上、2,000nm以下がさらに好ましい。アンダーコート層[C]の厚みが200nmより薄くなると、高分子基材上に存在する突起や小擦り傷などの欠点の悪影響を抑制できない場合がある。アンダーコート層[C]の厚みが4,000nmより厚くなると、アンダーコート層[C]の平滑性が低下して前記アンダーコート層[C]上に積層する無機層[A]表面の凹凸形状も大きくなり、積層されるスパッタ粒子間に隙間ができるため、膜質が緻密になりにくく、ガスバリア性の向上効果が得られにくくなる場合がある。
本発明のガスバリア性フィルムの最表面の上には、ガスバリア性が低下しない範囲で耐擦傷性の向上を目的としたハードコート層を形成してもよいし、有機高分子化合物からなるフィルムをラミネートした積層構成としてもよい。なお、ここでいう最表面とは、高分子基材上に無機層[A]および層[B]が接するようにこの順に積層された後の、無機層[A]と接していない側の層[B]の表面をいう。
本発明のガスバリア性フィルムを製造する方法は、層[B]を設ける工程を有し、前記層[B]を設ける工程が、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法であることが好ましい。以下各工程の詳細を説明する。
本発明における層[B]を設ける工程は、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有することが好ましい。
前記工程[a]は、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程である。
前記工程[b]は、塗膜を乾燥させる工程である。具体的には、工程[b]では、塗布後の塗膜を乾燥させて希釈溶剤を除去することが好ましい。ここで、乾燥に用いられる熱源としては特に制限は無く、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなど任意の熱源を用いることができる。なお、ガスバリア性向上のため、加熱温度は50〜150℃で行うことが好ましい。また、加熱処理時間は数秒〜1時間行うことが好ましい。さらに、加熱処理中は温度が一定であってもよく、徐々に温度を変化させてもよい。
前記工程[c]は塗膜を加湿する工程である。具体的には、工程[c]では、乾燥後の塗膜に特定の湿度条件で加湿処理を施すことで、本発明の塗膜組成に変性させるのに必要な水分を安定供給することができる。ここで、本発明における加湿処理とは、一定の温度、相対湿度に保たれた環境に晒すことをいう。
工程[d]は前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程である。具体的には、工程[d]では、加湿後の塗膜にプラズマ処理、紫外線照射処理、フラッシュパルス処理などの活性エネルギー線照射処理を施すことで前記塗膜の組成を変性させ、本発明の層[B]を得ることができる。活性エネルギー線照射処理としては、簡便で生産性に優れ、かつ均一な層[B]組成を得ることが容易であることから紫外線処理を使用することが好ましい。紫外線処理としては、大気圧下または減圧下のどちらでも構わないが、汎用性、生産効率の観点から本発明では大気圧下にて紫外線処理を行うことが好ましい。前記紫外線処理を行う際の酸素濃度は1.0体積%以下が好ましく、0.5体積%以下がより好ましい。相対湿度は任意でよい。また、前記紫外線処理では窒素ガスを用いて酸素濃度を低下させることがより好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有するため、様々な電子デバイスに用いることができる。例えば、太陽電池のバックシートやフレキシブル回路基板のような電子デバイスに好適に用いることができる。本発明のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスは、優れたガスバリア性を有するため、水蒸気等によるデバイスの性能低下を抑制することができる。
本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有するため、電子デバイス以外にも、食品や電子部品の包装用フィルム等として好適に用いることができる。
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。特に記載のない限り評価n数は水準当たり5検体とし、得られた5検体の測定値の平均値を測定結果とした。
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製 FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、無機層[A]、層[B]、アンダーコート層[C]の厚みを測定した。観察倍率は、観察画像における層の厚みが占める割合が30〜70%となるように調整した。
三次元表面粗さ測定機(小坂研究所社製)を用いて、以下の条件で各層表面について測定した。
システム:三次元表面粗さ解析システム「i−Face model TDA31」
X軸測定長さ/ピッチ:500μm/1.0μm
Y軸測定長さ/ピッチ:400μm/5.0μm
測定速度:0.1mm/s
測定環境:温度23℃、相対湿度65%RH、大気中。
特許第4407466号に記載のカルシウム腐食法により、温度40℃、相対湿度90%RHの雰囲気下での水蒸気透過度を測定した。具体的には、真空蒸着により、ガスバリア性フィルムの層[B]の無機層[A]側の面とは反対面に、厚さ100nmのカルシウム層を形成した。次いで、同じく真空蒸着により前記カルシウム層上に、カルシウム層全域を覆うように厚さ3,000nmのアルミニウム層を形成した。さらに、前記アルミニウム層の表面に熱硬化性エポキシ樹脂を介して厚さ1mmのガラスを貼り合わせ、100℃で1時間処理し、評価サンプルを得た。得られたサンプルを、温度40℃、相対湿度90%RH、800時間処理した。前記処理後、水蒸気により腐食したカルシウムの量を算出することにより水蒸気の透過量を測定した。水蒸気透過度サンプル数は水準当たり2検体とし、測定回数は各検体について5回とし、得られた10点の平均値を水蒸気透過度(g/(m2・d))とした。
[A1]の組成分析はICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS4000)により行った。高分子基材またはアンダーコート層上に無機層[A1]を形成した段階(層[B]を積層する前)でサンプリングした試料を硝酸および硫酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解してろ別した。不溶解分は加熱灰化したのち、炭酸ナトリウムで融解し、希硝酸で溶解して、先のろ液とあわせて定容とした。この溶液について、亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子の含有量を測定し、原子数比に換算した。なお、酸素原子は亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子が、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)として存在すると仮定して求めた計算値とした。なお、分析する試料が、無機層[A1]上に層[B]等を積層したものである場合は、層[B]等をイオンスパッタリングにより除去した後、無機層[A1]の組成分析を行う。
無機層[A2]の組成分析はICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS4000)により行った。高分子基材またはアンダーコート層上に無機層[A2]を形成した段階(層[B]を積層する前)でサンプリングした試料を、硝酸および硫酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解してろ別した。不溶解分は加熱灰化したのち、炭酸ナトリウムで融解し、希硝酸で溶解して、先のろ液とあわせて定容とした。この溶液について、亜鉛原子、ケイ素原子の含有量を測定した。次に、この値をもとにさらにラザフォード後方散乱法(日新ハイボルテージ(株)製 AN−2500)を使用して、亜鉛原子、ケイ素原子、硫黄原子、酸素原子を定量分析し、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の組成比を求めた。なお、分析する試料が、無機層[A2]上に層[B]等を積層したものである場合は、層[B]等をイオンスパッタリングにより除去した後、無機層[A2]の組成分析を行う。
無機層[A3]の組成分析はX線光電子分光法(XPS法)を用いることにより、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比を算出した。測定条件は下記の通りとした。
装置:Quantera SXM(PHI社製)
励起X線:monochromatic AlKα1,2
X線径:100μm
光電子脱出角度:45°。
層[B]のSi−H結合を有する成分の有無の確認はフーリエ変換赤外分光法により行った。すなわち、ガスバリア性フィルムを10mm×10mmにサンプリングし、層[B]の表面をATR結晶に圧着して以下の測定条件で測定し、2,140〜2,260cm−1におけるSi−Hに由来するピークの有無の確認を行った。ピークがある場合はSi−H結合を有する成分を含むと判断し、ピークがない場合はSi−H結合を有する成分を含まないと判断した。
装置:FT/IR−6100
光源:標準光源
検出器:GTS
分解能:4cm−1
積算回数:256回
測定方法:減衰全反射(ATR)法
測定波数範囲:4,000〜600cm−1
ATR結晶:Geプリズム、入射角:45°。
層[B]における水素、窒素、酸素、ケイ素の原子濃度は、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)および水素前方散乱分析法(HFS)により深さ方向に測定し、その平均値を算出して、層[B]の組成とした。測定条件は下記の通りとした。
装置:Pelletron 3SDH(National Electrostatics Corporation製)
入射イオン:4He++
入射エネルギー:2,300keV
入射角:75deg(RBS/HFS同時)、0deg(RBS単独)
散乱角:160deg
反跳角:30deg(RBS/HFS同時)、無(RBS単独)
試料電流:4nA
ビーム径:2mmφ
面内回転:無
照射量:10.2μC(RBS/HFS同時)、13μC(RBS単独)。
各層の膜密度はX線反射率法(XRR)により行った。すなわち、ガスバリア性フィルムを50mm×50mmにサンプリングし、試料ホルダーに固定して以下の測定条件でX線反射率測定を行った。測定データにおいて、臨界角から膜密度値を、振動周期から膜厚値をそれぞれ見積もり、それらを初期値としてカーブフィッティングを行い、膜厚・密度の各パラメータを最適化することにより解析結果を算出した。
X線反射率測定装置:リガク社製 SmartLab
解析ソフトウェア:bruker社製 LEPTOS ver.5.02
入射X線波長:0.1541nm(CuKα1線)
出力:45kV、200mA
入射スリット:0.05mm×10mm
測定範囲(試料表面とのなす角):0.0〜1.0°、0.001°ステップ
本発明における無機層[A]および層[B]の膜密度並びに膜厚はX線反射率法(XRR)により算出された値である。
(10)密着性
JISK5600−5−6:1999に準拠し、ケイ素化合物層[B]に1mm×1mmの直角の格子パターン25マスの切り込みを入れ、密着性を評価した。評価結果を密着性良好なものから順に分類0から分類5までの6段階に分類し、分類1までを密着性良好と判断した。
ガスバリア性フィルムを100mm×140mmに1水準当たり2検体サンプリングした。このサンプルにおいて、図4に示すとおり、ガスバリア性フィルム19の無機層[A]および層[B]が形成された面と反対面21側の中央部に直径5mmの金属円柱20を固定し、この円柱に沿って、円柱の抱き角0°(サンプルが平面の状態)から、円柱への抱き角が180°(円柱で折り返した状態)となる範囲で、100回折り曲げ動作を行った後、(3)に示す方法で水蒸気透過度評価を行った。測定回数は各検体について5回とし、得られた10点の平均値を耐屈曲性試験後の水蒸気透過度とした。
(無機層[A1]の形成)
図2に示す構造の巻き取り式スパッタリング装置6aを使用し、高分子基材5の片面に酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムで形成された混合焼結材であるスパッタターゲットを用いてスパッタリングを実施し無機層[A1]を設けた。
図2に示す構造の巻き取り式スパッタリング装置6aを使用し、高分子基材5の片面に、硫化亜鉛および二酸化ケイ素で形成された混合焼結材であるスパッタターゲットを用いてスパッタリングを実施し無機層[A2]を設けた。
図3に示す構造の巻き取り式CVD装置6bを使用し、高分子基材5の片面に、ヘキサメチルジシロキサンを原料とした化学気相蒸着を実施し無機層[A3]を設けた。
5リットルの4つ口フラスコに、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(共栄社化学社製、商品名:エポキシエステル3000A)300質量部と、酢酸エチル710質量部とを入れ、内温60℃になるよう加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.2質量部を添加し、攪拌しながらジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート(東京化成工業社製)200質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後2時間反応を続行し、続いてジエチレングリコール(和光純薬工業社製)25質量部を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、重量平均分子量20,000の芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を得た。
高分子基材として厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”(登録商標)U48)を使用し、この高分子基材の片面に無機層[A1]を厚み150nmとなるよう設けた。無機層[A1]の組成は、Zn原子濃度が27.6atom%、Si原子濃度が13.1atom%、Al原子濃度が2.3atom%、O原子濃度が57.0atom%であった。
温度:23℃
相対湿度:44%
時間:15分間
次いで、加湿後、下記条件にて紫外線処理を施して厚み140nmの層[B]を設けてガスバリア性フィルムを得た。
導入ガス:N2
酸素濃度:1,000ppm
積算光量:4.0J/cm2
試料温調:100℃
得られたガスバリア性フィルムの評価結果を表1に示す。
高分子基材として厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”(登録商標)U48)を使用した。
紫外線発生源:マイクロ波方式無電極ランプ
積算光量:400mJ/cm2
試料温調:室温
次いで、アンダーコート層[C]上に無機層[A1]と層[B]を、実施例1と同様に設け、ガスバリア性フィルムを得た。
層[B]形成時、紫外線照射積算光量を3.0J/cm2に変更した以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
層[B]形成時、紫外線照射積算光量を1.5J/cm2に変更した以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
無機層[A1]に代えて無機層[A2]を厚み150nmとなるよう設けた以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
無機層[A1]に代えて無機層[A3]を厚み150nmとなるよう設けた以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。無機層[A3]の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.95であった。
加湿処理条件を温度35℃、相対湿度90%、時間:15分間と変更した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
層[B]形成用の塗液として、パーヒドロポリシラザンを主成分としPd系触媒を含有するコート剤(AZエレクトロニックマテリアルズ社製「NL120−20」、固形分濃度20質量%)100質量部をジブチルエーテル300質量部で希釈した塗液1を用いて層[B]を形成し、120℃で5分間乾燥した。次いで、温度85℃、相対湿度85%で72時間加湿した以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
CVD法により無機層[A]上に無機層[A3]を厚み220nmとなるよう設けた以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
無機層[A]上に層[B]を設けない以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
2 無機層[A]
3 層[B]
4 アンダーコート層[C]
5 高分子基材
6a 巻き取り式スパッタリング装置
6b 巻き取り式CVD装置
7 巻き取り室
8 巻き出しロール
9、10、11 巻き出し側ガイドロール
12 クーリングドラム
13 スパッタ電極
14 CVD電極
15、16、17 巻き取り側ガイドロール
18 巻き取りロール
19 ガスバリア性フィルム
20 金属円柱
21 無機層[A]および層[B]が形成された面と反対面
Claims (12)
- 高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]と層[B]とが接するように高分子基材側からこの順に配置されたガスバリア性フィルムであって、前記層[B]がSi−Hで表される結合を有する成分を含み、かつ前記層[B]における水素原子濃度が35〜55atom%であるガスバリア性フィルム。
- 前記層[B]における前記無機層[A]側の膜密度が1.3〜1.9g/cm3であり、最表面側の膜密度が1.9〜2.3g/cm3である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記無機層[A]の膜密度が2.2〜6.5g/cm3であり、かつ前記層[B]における最表面側の膜密度よりも高い請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記層[B]が少なくとも窒素原子、酸素原子およびケイ素原子を含み、かつ前記窒素原子濃度が10〜40atom%、前記酸素原子濃度が1〜10atom%、前記ケイ素原子濃度が10〜45atom%である請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 前記無機層[A]が、亜鉛化合物とケイ素酸化物とを含む請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 前記無機層[A]が、以下の無機層[A1]〜[A3]のいずれかである請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
無機層[A1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[A2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる無機層
無機層[A3]:ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層 - 前記無機層[A]が前記無機層[A1]であり、該無機層[A1]が、ICP発光分光分析法により測定される亜鉛原子濃度が20〜40atom%、ケイ素原子濃度が5〜20atom%、アルミニウム原子濃度が0.5〜5atom%、酸素原子濃度が35〜70atom%である組成により構成されたものである請求項6に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記無機層[A]が前記無機層[A2]であり、該無機層[A2]が、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9である組成により構成されたものである請求項6に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記高分子基材と前記無機層[A]との間に、芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を含み、かつ有機ケイ素化合物および/または無機ケイ素化合物を含むアンダーコート層[C]を有する請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイス。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを製造する方法であって、層[B]を設ける工程を有し、
前記層[B]を設ける工程が、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法。 - 前記工程[c]における温度が20〜40℃かつ相対湿度40〜90%である請求項11に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
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