JPWO2016047780A1 - 化粧シート及び化粧板 - Google Patents

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Abstract

本発明は、住宅施工時の汚れが取れ易い易掃性に優れた化粧シートを提供する。本発明は、具体的には、基材シート上に、少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、前記表面保護層が、ワックス及び疎水化処理された無機フィラーを含有することを特徴とする化粧シートを提供する。

Description

本発明は、化粧シート及び化粧板に関する。
従来、様々な物品の表面には、意匠性を付与するために、化粧シートが積層されている。例えば、建築物の壁面に用いられる壁装材や、床面に用いられる床用化粧材には、表面に化粧シートが積層され、用いられている。
現在の床用の化粧シートには、住宅施工後の物件引き渡し前に行われる清掃の際に、大半の汚れは容易に除去できるが、住宅施工時に付着した汚れが取れ難いという問題がある。特に、取れ難い汚れの内の大半の割合を占める石膏の粉は、白いので汚れが目立ち、且つ、粒子が小さい(細かい)。そのため、上記石膏の粉は、清掃しにくい汚染物質といえる。
従来の技術として、化粧シートの表面凹凸形状を規定することで、上記汚染物質が凹部に入り込みにくくし、結果として易掃性(清掃がしやすい性質)の低下を防ぐ化粧シートが開示されている(特許文献1)。
特開2014−69507号公報
しかしながら、上記化粧シートは、表面凹凸形状を規定するだけでは細かい粒子である汚染物質は完全には除去できず、易掃性の向上には至らないという問題がある。
そこで、住宅施工時の汚れが取れ易い易掃性に優れた化粧シートを得る別の手法として、化粧シートの最表面層である表面保護層中に疎水化された無機フィラーを添加する手法や、上記表面保護層中にワックスを添加する手法が考えられる。しかしながら、本発明者らは、上記手法では易掃性の大きな向上には不十分であることを突き止めた。
従って、住宅施工時の汚れが取れ易い易掃性に優れた化粧シートの開発が望まれている。
本発明は、住宅施工時の汚れが取れ易い易掃性に優れた化粧シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、基材シート上に、少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、前記表面保護層に特定の二成分を併用して含有させた場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の化粧シートに関する。
1. 基材シート上に、少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、
前記表面保護層が、ワックス及び疎水化処理された無機フィラーを含有する、
ことを特徴とする化粧シート。
2. 前記表面保護層を構成する樹脂が電離放射線硬化型樹脂である、上記項1に記載の化粧シート。
3. 前記疎水化処理された無機フィラーの含有量が、前記表面保護層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部である、上記項1又は2に記載の化粧シート。
4. 前記ワックスの含有量が、前記表面保護層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部である、上記項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
5. 前記疎水化処理された無機フィラーが、疎水化処理されたシリカ、疎水化処理されたアルミナ及び疎水化処理されたガラス粉体からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
6. 前記ワックスがポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びカルナウバワックスからなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
7. 上記項1〜6のいずれかに記載の化粧シートを被着材上に積層した化粧板。
本発明の化粧シートは、住宅施工時の汚れ(特に汚染物質の内の大半の割合を占める石膏粉)が取れ易い。言い換えれば、本発明の化粧シートは、易掃性に優れる。そのため、本発明の化粧シートを、特に床用の化粧シートとして好適に使用することができる。
本発明の化粧シートの一例を示す断面図である。
≪1.本発明の化粧シート≫
本発明の化粧シートは、基材シート上に、少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、
前記表面保護層が、ワックス及び疎水化処理された無機フィラーを含有する、
ことを特徴とする。上記特徴を有する化粧シートは、住宅施工時の汚れ(特に汚染物質の内の大半の割合を占める、取り難い石膏粉)が化粧シート表面に存在していても、当該汚れが取り易い。言い換えれば、本発明の化粧シートは、易掃性に優れる。そのため、本発明の化粧シートを、特に床用として好適に使用することができる。
以下、本発明の化粧シートについて詳細に説明する。なお、本発明の化粧シートにおいて、表面とは、いわゆる「おもて面」であり、本発明の化粧シートが被着材等に積層して用いられる際に、被着材と接触する面とは反対側の面であり、積層後に視認される面である。また、本明細書では、本発明の化粧シートについて、上記表面の方向を「おもて」又は「上」と称し、その反対側を「裏」又は「下」と称する場合がある。
本発明の化粧シートは、基材シート上に、少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、前記表面保護層が、ワックス及び疎水化処理された無機フィラーを含有するという要件を満たせば、具体的な構成(層構成)については限定されない。例えば、基材シート上に、絵柄模様層、接着剤層、透明性樹脂層、プライマー層及び表面保護層を順に積層してなる化粧シートが挙げられる。以下、かかる層構成の化粧シートを代表例として、各層について具体的に説明する。
基材シート
本発明の化粧シートは、基材シートを有する。
基材シートは、その表面(おもて面)に絵柄模様層等が順次積層される層である。基材シートとしては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたシート(フィルム)が好適である。具体的には、ポリエチレン,エチレン−αオレフィン共重合体,ポリプロピレン,ポリメチルペンテン,ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体,プロピレン−ブテン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物,エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体,エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、アイオノマー、アクリル酸エステル系重合体、メタアクリル酸エステル系重合体等が挙げられる。前記基材シートは、これら樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせ用いることにより形成される。なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、他の(メタ)と記載された部分についても同様である。
基材シートは、着色されていてもよい。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には20〜300μmが好ましい。
基材シートは、必要に応じて、絵柄模様層等を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すれば良い。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、絵柄模様層(いわゆるバックプリント)を形成したり、後述する裏面プライマー層、バッカー層等を形成したりしてもよい。
絵柄模様層
本発明の化粧シートは、絵柄模様層を有していてもよい。
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与する層であり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、レザー模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。インキとしては、シートのVOCを低減する観点からは水性組成物を用いることもできる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤は、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等とともに用いてもよい。
結着材樹脂としては、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。より具体的には、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等も使用することができる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂等が変性したものないし前記天然ゴム等の混合物、その他の樹脂を使用することもできる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。
接着剤層
透明性樹脂層と絵柄模様層との密着性を高めるため、絵柄模様層上に接着剤層を形成してもよい。接着剤層は、透明性接着剤層であることが好ましく、当該透明性接着剤層としては、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら接着剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
接着剤層の厚みは特に限定されないが、乾燥後の厚みが0.1〜30μm程度、好ましくは1〜20μm程度である。
透明性樹脂層
本発明の化粧シートは、透明性樹脂層を有していてもよい。
透明性樹脂層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。前記透明性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン,エチレン−αオレフィン共重合体,ポリプロピレン,ポリメチルペンテン,ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体,プロピレン−ブテン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物,エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体,エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、アイオノマー、アクリル酸エステル系重合体、メタアクリル酸エステル系重合体、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等を挙げることができる。これら樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の透明性樹脂層は、ポリプロピレン樹脂を代表とするオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、透明性樹脂層を構成する樹脂が上記オレフィン系樹脂であることがより好ましい。
なお、透明性樹脂層は、透明性を有する限り着色されていても良いが、特に着色剤を配合しない方が望ましい。
透明性樹脂層の厚みは、通常は20〜200μm程度であるが、シートの用途等に応じて上記範囲を超えてもよい。
プライマー層
透明性樹脂層の上には、プライマー層を設けてもよい。プライマー層は、公知のプライマー剤を透明性樹脂層の表面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m2、好ましくは0.1〜50 g/m2程度である。
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm程度である。
表面保護層
本発明の化粧シートは、表面保護層を有する。表面保護層は、化粧シートの最表面の層として設けられる。
表面保護層を構成する樹脂は、熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂(例えば、電子線硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂)等の硬化型樹脂が好ましい。特に、高い表面硬度による耐傷性や凸形状保持性、生産性等の観点から、表面保護層は電離放射線硬化型樹脂を含むことが好ましく、更に耐候性にも優れる観点からは、表面保護層を構成する樹脂が電子線硬化型樹脂であることがより好ましい。他方、化粧シートに良好な折り曲げ適性を付与する観点からは、表面保護層を構成する樹脂が紫外線硬化型樹脂であることが好ましい。
熱硬化型樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化型樹脂を用いる場合には、乾燥炉を用いて容易に硬化させることができる点で、電子線照射装置や紫外線照射装置のような高価な装置を導入する必要がないという利点がある。熱硬化型樹脂の中では2液硬化型ポリウレタン樹脂が好ましい。
上記樹脂には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加でき、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加でき、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加できる。
熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法は、例えば、熱硬化型樹脂の溶液をロールコート法、グラビアコート法等の塗布法で塗布し、乾燥・硬化させる方法が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合又はエポキシ基を分子中に有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの1種以上が使用できる。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂;シロキサン等のケイ素樹脂;ポリエステル樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
電離放射線としては、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、この中でも、紫外線及び/又は電子線が望ましい。
紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nm程度である。
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。電子線のエネルギーとしては、100〜1000keV程度が好ましく、100〜300keV程度がより好ましい。電子線の照射量は、2〜15Mrad程度が好ましい。
電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤(増感剤)を添加することが好ましい。
ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種が使用できる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種が使用できる。
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部程度である。
本発明の化粧シートにおける表面保護層は、表面保護層を構成する樹脂とともに、ワックスを含有する。
ワックスは、常温で固体であり加熱すると液体となる有機物であり、具体的には、天然ワックス、合成ワックス等が挙げられる。本発明の化粧シートは、上述のいずれのワックスも使用することができる。なお、ワックスは、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、ワックスは、各種市販品を使用することができる。
天然ワックスとしては、動物ワックス、植物ワックス、鉱物ワックス、石油ワックス等が挙げられる。動物ワックスとしては、蜜蝋、鯨蝋、イボタ蝋、羊毛蝋等が挙げられる。植物ワックスとしては、木蝋、米糠蝋、パーム蝋、サトウキビ蝋、カルナウバワックス等が挙げられる。鉱物ワックスとしては、モンタンワックス、オゾケライト等が挙げられる。石油ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
合成ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられる。ここで、上記ポリオレフィンワックスは、(1)ポリオレフィンを酸化処理し、水酸基などの極性基を導入した酸化変性ポリオレフィンワックス、(2)ポリオレフィンに酸をランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等により重合させた酸変性ポリオレフィンワックス(又はこれらを金属イオンで中和した酸変性ポリオレフィンワックス)、(3)ポリオレフィンワックスを重合させる際に、一部のオレフィンモノマーを、カルボキシル基、水酸基などの官能基を有するモノマーに置換したモノマー変性ポリオレフィンワックス、のいずれも包含する。
具体的なポリオレフィンワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
本発明で使用されるワックスの中でも、床用途の物性を満たすという観点から、合成ワックスを使用することが好ましく、より好ましくはポリオレフィンワックスであり、さらに好ましくはポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスである。
表面保護層中のワックスの含有量は、易掃性の観点から、表面保護層を構成する樹脂(樹脂成分)100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。
本発明の化粧シートにおける表面保護層は、表面保護層を構成する樹脂とともに、疎水化処理された無機フィラーを含有する。
無機フィラーとしては、疎水化処理されていれば特に限定されない。例えば、シリカ、アルミナ、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維、ガラス粉体等が挙げられる。これらの無機フィラーの中でも、シリカ、アルミナ及びガラス粉体の少なくとも1種が好ましい。
疎水化処理の方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、シリコーンオイル系処理剤によって無機フィラーを疎水化処理する方法;アルキルシラザン系処理剤、トリメチルシリル化剤、及び/又はアルコキシシランで無機フィラーを処理した後に上述のシリコーンオイル系処理剤によって無機フィラーを疎水化処理する方法;シリコーンオイル系処理剤によって無機フィラーを疎水化処理した後に、さらにトリメチルシリル化剤又はアルキルシラザン系処理剤で処理する方法;アルコキシシランによって無機フィラーを疎水化処理する方法;アルコキシシランによって無機フィラーを処理した後に、さらにシリコーンオイル系処理剤、又はシリコーンオイル系処理剤及びアルコキシシランで処理する方法;ダイマージオールシロキサン、及び/又はトリメチルシラノール若しくは環状シロキサンを用いて無機フィラーを処理する方法などが挙げられる。また、上述の疎水化処理の方法だけでなく、シランカップリング剤, チタネート系カップリング剤, アルミネート系カップリング剤等の各種カップリング剤、リン酸系, 脂肪酸系等の界面活性剤、油脂、ステアリン酸等によって処理する方法も、疎水化処理の方法として挙げられる。以下、未処理の無機フィラーを疎水化処理するための上述の各製品(例えば、シリコーンオイル系処理剤等の処理剤や、シランカップリング剤、界面活性剤等の全て)を、纏めて疎水化処理剤ともいう。
シリコーンオイル系処理剤としては、特に限定されず、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルを用いることができる。
アルキルシラザン系処理剤としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルシラザン等が挙げられる。
トリメチルシリル化剤としては、特に限定されず、例えば、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシランが挙げられる。
アルコキシシランとしては、特に限定されず、例えば、後述のシランカップリング剤中のアルコキシシラン類が挙げられる。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、メチルトリメトキシシラン,ジメチルジメトキシシラン,トリメチルメトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,ジメチルジエトキシシラン,トリメチルエトキシシラン,n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン,ベンジルトリエトキシシラン,プロピルトリメトキシシラン,プロピルトリエトキシシラン,ジエトキシメチルフェニルシラン,アリルトリエトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン,アミノプロピルトリエトキシシラン,アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類;トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等のクロロシラン類などが挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、特に限定されず、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が挙げられる。
アルミネート系カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができる。油脂としては、特に限定されず、各種公知の油脂を使用することができる。
上述の各種疎水化処理剤で無機フィラーを疎水化処理する方法としては、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、未処理の無機フィラーに疎水化処理剤の原液、又は疎水化処理剤を水若しくは有機溶剤に希釈したものを添加(例えば噴霧)する方法(乾式処理法);未処理の無機フィラーを疎水化処理剤の原液、疎水化処理剤含有水溶液又は疎水化処理剤含有有機溶剤中で処理(例えば浸漬)し、その後、乾燥させる方法(湿式処理法);などが挙げられる。このような処理により、無機フィラー表面の一部若しくは全部が(a)疎水化処理剤で被覆されるか、(b)疎水化処理剤を吸着するか、又は(c)疎水化処理剤で被覆され、且つ吸着する((a)及び(b)の組み合わせとなる)、等が生じる。その結果、疎水化処理された無機フィラーが得られる。なお、上記各種疎水化処理剤は、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
疎水化処理された無機フィラーは、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、疎水化処理された無機フィラーは、各種市販品を使用することができる。
本発明で使用される疎水化処理された無機フィラーの中でも、床用途物性、表面保護層のコーティング適性、化粧シート表面の艶消し効果等の観点から、疎水化処理されたシリカを使用することが好ましい。
表面保護層中の疎水化処理された無機フィラーの含有量は、易掃性の観点から、表面保護層を構成する樹脂(樹脂成分)100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましく、16〜30質量部であることがさらに好ましい。
疎水化処理された無機フィラーの粒子径(及び平均粒子径)は特に限定されないが、例えば、モード径(粒子径分布の極大値を示す粒子径であり、出現比率が最も大きい粒子径)が1〜10μm程度である疎水化処理された無機フィラーが好ましく、モード径が2〜4μmである疎水化処理された無機フィラーがより好ましい。本発明の疎水化処理された無機フィラーの粒子径(モード径)は、光散乱法で測定された値である。
疎水化処理された無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、立方体状、ロッド状、板状、針状等が挙げられる。
表面保護層には、必要に応じて、溶剤、染料、顔料等の着色剤、艶消し剤、増量剤等の充填剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤等の各種添加剤を加えることができる。
電離放射線硬化型樹脂を含む表面保護層を形成する方法としては、例えば、(1)電離放射線硬化型樹脂等の樹脂、ワックス及び疎水化処理された無機フィラー、並びに(2)必要に応じて、その他の樹脂、紫外線吸収剤、抗菌剤、上記各種添加剤、などを含む溶液(表面保護層形成用樹脂組成物)をグラビアコート法、ロールコート法等の塗工法により塗工後、電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより形成できる。
表面保護層の厚さは、特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、0.1〜50μm程度が好ましく、1〜20μmがより好ましい。
裏面プライマー層
基材シートの裏面(絵柄模様層が積層される面と反対側の面)には、必要に応じて、裏面プライマー層を設けてもよい。例えば、当該化粧シートと被着材とを積層して化粧板を作製する際に効果的である。
裏面プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートに塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100 g/m2、好ましくは0.1〜50 g/m2程度である。
裏面プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm程度である。
バッカー層
基材シートの裏面(基材シートの裏面に絵柄模様層がある場合には絵柄模様層の裏面)には、バッカー層(耐傷性を高めたり、被着材の影響を緩和したりするための合成樹脂層)を設けてもよい。なお、上記耐傷性は特に部分的に荷重がかかった場合の凹み傷を言う。本発明の化粧シートは、バッカー層を設けなくても十分な耐傷性は有しているが、バッカー層を設けることにより耐傷性などの諸性能をより高めることができる。
バッカー層を形成する方法としては、溶融樹脂の押出し成形が好適であり、例えば、Tダイを用いた押出し成形が好適である。
基材シートの裏面とバッカー層とを接着させる方法としては、基材シートと溶融樹脂を押出し成形することによって得られるバッカー層とを熱融着によって接着する方法、基材シートとバッカー層との間に接着剤層(更に必要に応じてプライマー層)を設けることによって接着する方法等が挙げられる。
バッカー層を構成する樹脂としては限定的ではないが、熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート〔例えば、エチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコール等で置換したポリエチレンテレフタレートである、いわゆる商品名PET−G(イーストマンケミカルカンパニー製)〕、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等が挙げられる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
バッカー層の厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定でき、一般には100〜800μmが好ましい。この中でも、100〜600μmがより好ましい。
バッカー層には、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。また、被着材との接着性を考慮して裏面にプライマー層を更に設けてもよい。
エンボス加工
化粧シートの最表層側には、必要に応じてエンボス加工を施してもよい。
エンボス加工方法は特に限定されず、例えば、表面保護層のおもて面を加熱軟化させてエンボス版により加圧・賦形後、冷却する方法が好ましい方法として挙げられるが、最終製品である化粧シート又は表面保護層の材質によっては、例えば、透明性樹脂層のおもて面を加熱軟化させてエンボス版により加圧・賦型後、その上に表面保護層を形成してもよい。
エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
≪2.本発明の化粧板≫
上記化粧シートを被着材上に積層することにより、化粧板とすることができる。被着材は、限定的でなく、公知の化粧板に用いられるものと同様のものを用いることができる。上記被着材としては、例えば、木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられる。特に、上記化粧シートは、木質材に好適に使用することができる。木質材としては、具体的には、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、チップボード、又はチップボードが積層された複合基材等が挙げられる。上記木質材としては、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)を用いることが好ましい。
化粧シートと被着材とを積層する積層方法は限定的でなく、例えば接着剤により化粧シートを被着材に貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すればよい。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
このようにして製造された化粧板は、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装材;バルコニー、ベランダ等の外装材;窓枠、扉、手すり等の建具の表面化粧板や家具;又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板等に用いることができる。特に、上記化粧板は床用化粧材として好適に用いることができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の態様に限定されない。
(化粧シートの作製)
実施例1
60μm厚さの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材シートの裏面にプライマー層(裏面プライマー層)を設けた。次に、基材シートの表面に絵柄模様層を印刷により形成し、さらに当該絵柄印刷層上に接着剤層を形成した。次に、当該接着剤層の上に60μm厚さの透明ポリプロピレン系樹脂のシートを押出しラミネート方式で積層し、透明性樹脂層を形成した。次に、透明ポリプロピレン系樹脂シートの表面にコロナ放電処理を施した後、2液硬化型ウレタン樹脂を塗工することによりプライマー層を形成した。次に、当該プライマー層の表面に、ウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂(EB樹脂)100質量部、シリコーンオイルで疎水化処理されたシリカ(モード径2〜4μm)16質量部、及びポリエチレンワックス(PEワックス)1質量部を含む表面保護層形成用樹脂組成物をグラビアコート方式で塗工して塗膜(13μm)を形成した後、酸素濃度200ppm以下の環境下において電子線照射装置を用いて加速電圧175keV、5Mradの条件で電子線を照射することにより上記塗膜を硬化させて表面保護層を形成した。さらに、表面保護層側を赤外線非接触方式のヒーターで加熱し、基材シート及び透明性樹脂層を軟らかくした後、熱圧によるエンボス加工を行うことにより、木目導管模様の凹凸模様を賦形した。これにより、化粧シートを作製した。
実施例2
ポリエチレンワックスの使用量を、1質量部に代えて0.5質量部とする以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例3
疎水化処理されたシリカの使用量を、16質量部に代えて0.5質量部とする以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例4
ポリエチレンワックスの使用量を1質量部に代えて0.5質量部とし、且つ、疎水化処理されたシリカの使用量を16質量部に代えて0.5質量部とする以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例5
疎水化処理されたシリカの使用量を、16質量部に代えて0.1質量部とする以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例6
疎水化処理されたシリカの使用量を、16質量部に代えて30質量部とする以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例7
ポリエチレンワックスの使用量を1質量部に代えて0.1質量部とする以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例8
ポリエチレンワックスの使用量を1質量部に代えて5質量部とする以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例9
疎水化処理されたシリカを疎水化処理されたアルミナに代えた以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例10
疎水化処理されたシリカを疎水化処理されたガラス粉体に代えた以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例11
ポリエチレンワックスをポリプロピレンワックスに代えた以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例12
ポリエチレンワックスをカルナウバワックスに代えた以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例13
実施例1において、透明性樹脂層を形成した後、透明性樹脂層側を赤外線非接触方式のヒーターで加熱し、基材シート及び透明性樹脂層を軟らかくした後、熱圧によるエンボス加工を行うことにより、木目導管模様の凹凸模様を賦形した。次に、木目導管模様の凹凸模様を賦形した透明性樹脂層の表面に、2液硬化型ポリウレタン樹脂(末端に水酸基を有するウレタンアクリル樹脂100質量部にイソシアネート硬化剤20質量部を添加したもの)100質量部、シリコーンオイルで疎水化処理されたシリカ(モード径2〜4μm)16質量部、及びポリエチレンワックス(PEワックス)1質量部を含む表面保護層形成用樹脂組成物をグラビアコート方式で塗工して塗膜(13μm)を形成した後、60℃環境下で5分間放置後40℃環境下で3日間養生することにより上記塗膜を硬化させて表面保護層を形成した以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
実施例14
実施例1において、プライマー層の表面に、紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)100質量部、シリコーンオイルで疎水化処理されたシリカ(モード径2〜4μm)16質量部、及びポリエチレンワックス(PEワックス)1質量部を含む表面保護層形成用樹脂組成物をグラビアコート方式で塗工して塗膜(13μm)を形成した後、常温環境下において紫外線照射装置を用いて500mJ/cmの条件で紫外線を照射することにより上記塗膜を硬化させて表面保護層を形成した以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。なお、紫外線硬化型樹脂は、実施例1で用いたウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂100質量部に重合開始剤としてイルガキュア184を2.5質量部及びイルガキュア907を2.5質量部(いずれもBASF社製)を添加したものを用いた。
比較例1
ポリエチレンワックスの使用量を、1質量部に代えて0質量部とする(即ち、ポリエチレンワックスを使用しない)以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
比較例2
ポリエチレンワックスの使用量を1質量部に代えて0質量部とし(即ち、ポリエチレンワックスを使用しない)、且つ、疎水化処理されたシリカに代えて疎水化処理されていないシリカ(未処理シリカ)を使用する以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
比較例3
疎水化処理されたシリカに代えて、疎水化処理されていないシリカ(未処理シリカ)を使用する以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
(化粧板の作製)
各実施例及び比較例において、厚みが2.5mmの中密度木質繊維板(MDF)上に水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製リカボンドBA−10L (主剤):BA−11B (硬化剤)=100:2.5(質量比))を80g/m2で均一に塗工し、化粧シートを貼り合わせて、室温で3日間養生することにより各化粧板を作製した。
試験例1(易掃性試験)
実施例1〜14及び比較例1〜3で得た化粧板について、易掃性試験(下記の評価1〜4)を実施した。評価1〜4の各試験方法及び評価基準は次の通りとした。
評価1:易掃性(乾式散布および乾拭き)
まず、パテ粉(ヤヨイ化学工業株式会社製、ワイドスーパー60)を硬化させて、♯180のヤスリにて削ることにより、石膏粉を得た。次に、実施例及び比較例の各化粧板の化粧シートの表面全面に対して、前記石膏粉を散布した。次いで、乾いた雑巾(タオル生地)で前記石膏粉を各化粧シート表面上で薄く伸ばした。
最後に、前記石膏粉による汚れ残りがなくなるように乾いた雑巾(タオル生地)で一方向に1回拭き、その拭いた後の各化粧板の化粧シート表面を評価した。
評価基準は、以下の通りである。
5:汚れ残りなし
4:部分的に薄く汚れ残りあり
3:部分的に汚れ残りあり
2:全体に薄く汚れ残りあり
1:全体に汚れ残りあり
評価2:易掃性(乾式散布および水拭き)
乾いた雑巾(タオル生地)で一方向に1回拭く代わりに、水を含ませた雑巾(タオル生地)で一方向に1回拭く以外は、評価1と同様の操作を行った。そして、当該拭いた後の各化粧板の化粧シート表面を評価した。
評価2の評価基準は、評価1の評価基準と同様である。
評価3:易掃性(湿式散布および乾拭き)
まず、評価1と同様の方法により石膏粉を得た。次に、前記石膏粉を水に溶かして石膏粉含有水を作製した(石膏粉:水=1:3(重量比))。次いで、前記石膏粉含有水を雑巾(タオル生地)に含ませて、実施例及び比較例の各化粧板の化粧シートの表面全面に前記石膏粉含有水を薄く塗布した。
最後に、前記石膏粉含有水による汚れ残りがなくなるように乾いた雑巾(タオル生地)で一方向に1回拭き、その拭いた後の各化粧板の化粧シート表面を評価した。
評価3の評価基準は、評価1の評価基準と同様である。
評価4:易掃性(湿式散布および水拭き)
乾いた雑巾(タオル生地)で一方向に1回拭く代わりに、水を含ませた雑巾(タオル生地)で一方向に1回拭く以外は、評価3と同様の操作を行った。そして、当該拭いた後の各化粧板の化粧シート表面を評価した。
評価4の評価基準は、評価1(及び評価3)の評価基準と同様である。
結果を以下の表1に示す。
Figure 2016047780
表1の結果から明らかな通り、表面保護層がワックス及び疎水化処理された無機フィラーを含有する実施例1〜14の化粧シートは、比較例1〜3の化粧シートと比較して評価1〜4のいずれの試験においても優れていることが分かる。
試験例2(耐擦り傷性試験)
実施例1、9及び10で得た化粧板について、耐擦り傷性試験を実施した。試験方法及び評価基準は次の通りとした。
各化粧板の化粧シートの表面をスチールウール(♯0000)により荷重300g/cm2で100往復摺り、その後の表面を目視観察により評価した。
評価基準は、以下の通りである。
4:著しい変化なし
3:軽微な艶変化あり
2:艶変化あり
1:傷付きあり
結果を以下の表2に示す。
Figure 2016047780
表2の結果から明らかな通り、耐擦り傷性の観点からは、無機フィラーとして疎水化処理されたシリカよりも、疎水化処理されたアルミナ及び疎水化処理されたガラス粉体の方が優れていることが分かる。
試験例3(耐環境持続性に関する易掃性試験)
実施例1及び11で化粧板を作製する際に、各化粧シートを80℃環境下に1ヶ月放置した後、化粧板を作製した。そして、当該化粧板について、耐環境持続性に関する易掃性試験を実施した。易掃性試験の試験方法及び評価基準は、試験例1の評価1と同様である。
結果を以下の表3に示す。
Figure 2016047780
表3の結果から明らかな通り、耐環境持続性に関する易掃性の観点からは、ワックスとしてポリエチレンワックスよりも、ポリプロピレンワックスの方が若干優れていることが分かる。
試験例4(繰り返し持続性に関する易掃性試験)
実施例1及び12で得た化粧板について、繰り返し持続性に関する易掃性試験を実施した。試験方法及び評価基準は次の通りとした。
各化粧板に対して試験例1の評価1〜4の各試験方法を10回繰り返して実施し、10回目の易掃性を評価した。
評価基準は、試験例1の評価1の評価基準と同様である。
結果を以下の表4に示す。
Figure 2016047780
表4の結果から明らかな通り、繰り返し持続性に関する易掃性の観点からは、ワックスとしてポリエチレンワックスよりも、カルナウバワックスの方が若干優れていることが分かる。
試験例5(耐候性試験、耐傷性試験及び折り曲げ適性試験)
実施例1、13及び14で得た化粧板について、耐候性試験及び耐傷性試験を実施した。また、実施例1、13及び14で得た化粧シートについて、折り曲げ適性試験を実施した。試験方法及び評価基準は次の通りとした。
(耐候性試験)
スガ試験機製サンシャインウェザーメーターS80を用いて耐候性試験を行った。
試験条件は、下記の通りである。
・サイクル:光照射のみ102分、光照射+降雨18分
・ブラックパネル温度:光照射のみ63℃
・槽内温度:光照射+降雨40℃
・湿度:光照射のみ50%、光照射+降雨90%
・試験時間:2000時間
評価基準は、下記の通りである(B評価以上が許容される)。
A:外観変化なし
B:僅かに外観変化が認められる
C:若干の外観変化が認められる
D:著しい外観変化が認められる
(耐傷性試験)
ガードナー社製ホフマンスクラッチテスターを用いて化粧板に傷が付く荷重を調べた。
評価基準は、下記の通りである(C評価以上が許容される)。
A:荷重500g以上で傷付く
B:荷重400gで傷付く
C:荷重300gで傷付く
D:荷重200g以下で傷付く
(折り曲げ適性試験)
化粧シートを0℃環境下に30分放置した後、表面保護層を外側にして180°折り曲げた際の折り曲げ部分の変化を目視観察することにより折り曲げ適性試験を行った。
評価基準は、下記の通りである(B評価以上が許容される)。
A:割れが認められない
B:僅かに割れが認められる
C:若干の割れが認められる
D:明らかな割れが認められる
結果を以下の表5に示す。
Figure 2016047780
表5の結果から明らかな通り、表面保護層の樹脂の種類がEB樹脂、2液硬化型樹脂及びUV樹脂のいずれの場合にも、許容値以上の優れた耐候性及び耐傷性が得られることが分かる。耐候性及び耐傷性の点ではEB樹脂が最も良いことが分かる。また、化粧シートに良好な折り曲げ適性を付与する観点では、UV樹脂が最も良いことが分かる。
1. 化粧シート
2. 裏面プライマー
3. 基材シート
4. 絵柄模様層
5. 接着剤層
6. 透明性樹脂層
7. プライマー層
8. 表面保護層
9. エンボス模様(木目板導管溝)

Claims (7)

  1. 基材シート上に、少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、
    前記表面保護層が、ワックス及び疎水化処理された無機フィラーを含有する、
    ことを特徴とする化粧シート。
  2. 前記表面保護層を構成する樹脂が電離放射線硬化型樹脂である、請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記疎水化処理された無機フィラーの含有量が、前記表面保護層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部である、請求項1又は2に記載の化粧シート。
  4. 前記ワックスの含有量が、前記表面保護層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部である、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
  5. 前記疎水化処理された無機フィラーが、疎水化処理されたシリカ、疎水化処理されたアルミナ及び疎水化処理されたガラス粉体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
  6. 前記ワックスがポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びカルナウバワックスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の化粧シートを被着材上に積層した化粧板。
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