以下により、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が開示される。より詳しくは、光の取り出しが考慮された有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。以下、図面を参照して有機EL素子を説明するが、図面は層や構造を模式的に示しており、実際の寸法比等は図面と異なっていてもよい。
以下に開示される有機EL素子1は、少なくとも一つの発光層41と、発光層41の光出射側に配置される第一層と、第一層の光出射側に、第一層に接して配置される第二層と、を備えている。第一層と第二層との界面には、2段以上で突出する複数の凸部23によって形成された凹凸構造20が設けられている。有機EL素子1は、保護層10を備えている。保護層10は、第二層の光出射側に配置される層、又は、第二層である。大気の屈折率をn0とし、前記保護層の屈折率をn1とし、第二層の屈折率をn2としたときに、
n0 < n1、及び、
n2 ≦ n1、
の関係を満たす。
まず、保護層10が、第二層の光出射側に配置される層である態様、すなわち、保護層10と第二層とが別の層である態様を説明する。
図1は、有機EL素子1の模式的な断面図である。有機EL素子1は、少なくとも一つの発光層41と、第一層と、第二層と、保護層10とを備えている。第一層は、高屈折率層22と定義される。高屈折率層22は、発光層41の光出射側に配置される。第二層は、低屈折率層21と定義される。低屈折率層21は、高屈折率層22の光出射側に配置される。低屈折率層21は、高屈折率層22に接している。保護層10は、低屈折率層21の光出射側に配置される。高屈折率層22と低屈折率層21との界面には、2段以上で突出する複数の凸部23によって形成された凹凸構造20が設けられている。以下においては、高屈折率層22は第一層を意味しており、第一層22と言い換えてもよい。また、低屈折率層21は第二層を意味しており、第二層21と言い換えてもよい。
有機EL素子1では、大気の屈折率をn0とし、保護層10の屈折率をn1とし、低屈折率層(第二層)21の屈折率をn2とする。このとき、
n0 < n1、及び、
n2 < n1、
の関係を満たしている。
有機EL素子1では、複数の凸部23が2段以上で突出するとともに、屈折率が上記の関係になることにより、光の進行方向が変化しやすくなる。光の進行方向が変化すると、広角光の取り出し性が高まり、また、光の進行方向が正面方向に向かいやすくなる。その結果、外部に出射する光の量を増やすことができるため、光取り出し性が向上する。
図1では、光の出射を白矢印で示している。光出射方向は白矢印が指す方向と同じである。光出射側とは、白矢印が指す方向の側となる。発光層41から保護層10に向かう方向が光出射側となる。
図1の例では、有機EL素子1は、光透過性電極30と、光反射性電極50とを備えている。光透過性電極30と光反射性電極50とは、電気的に対となる電極である。光透過性電極30と光反射性電極50とは、一方が陽極を構成し、他方が陰極を構成する。例えば、光透過性電極30が陽極であり、光反射性電極50が陰極であり得る。光透過性電極30は、光透過性を有する電極材料で形成され得る。光透過性電極30は、例えば、金属酸化物により形成されてよい。金属酸化物としては、ITOが例示される。光反射性電極50は、例えば、光反射性を有する電極材料で形成され得る。光反射性電極50は、例えば、金属により形成されてよい。金属としては、Ag、Alが例示される。光反射性電極50は、光を反射する反射層R1として機能する。なお、光反射性電極50が、光透過性を有する電極に置換されて、この電極の上に別途、反射層R1が設けられる構造であってもよい。
図1の例では、有機EL素子1は、電荷移動層42と、電荷移動層43とを備えている。電荷移動層42と発光層41と電荷移動層43とを合わせたものは有機層40と定義される。有機EL素子1では、一対の電極の間に少なくとも一つの有機層40が配置される。有機層40は、発光ユニットを構成する。発光ユニットとは、陽極と陰極との間に配置して電圧をかけることにより発光を生じる積層構造を意味する。発光層41は、単層であってもよいし、2以上の層の積層体であってもよい。電荷移動層42及び電荷移動層43は、正孔及び電子の少なくともいずれか一方を移動させる機能を有する。発光層41よりも陽極側の電荷移動層は、正孔輸送層で構成され得る。正孔輸送層と陽極との間にさらに正孔注入層が設けられてもよい。発光層41よりも陰極側の電荷移動層は、電子輸送層で構成され得る。電子輸送層と陰極との間にさらに電子注入層が設けられてもよい。なお、図1では、発光ユニットが一つの例を示しているが、発光ユニットは2以上であってもよい。隣り合う発光ユニットの間には、中間層が配置され得る。有機層40と光透過性電極30と光反射性電極50とを合わせたものは有機発光体と定義される。
光透過性電極30の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、10〜500nmの範囲内とすることができる。光反射性電極50の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、10〜500nmの範囲内とすることができる。電荷移動層43の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0〜500nmの範囲内とすることができる。有機EL素子1は電荷移動層43がなくてもよい。電荷移動層42の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0〜500nmの範囲内とすることができる。有機EL素子1は電荷移動層42がなくてもよい。有機層40の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、20〜2000nmの範囲内とすることができる。
図1の例では、保護層10は基板S1として機能している。保護層10は、有機発光体を保護している。基板S1を支持基板として、有機EL素子1に含まれる複数の層が形成され得る。保護層10は、ガラス、樹脂などで構成され得る。ガラスは、水分の侵入の抑制に優れる。樹脂は、フレキシブル性を有機EL素子1に付与し得る。保護層10は、光透過性を有することが好ましい。保護層10は、大気よりも屈折率が大きい。なお、保護層10と低屈折率層21との間には、この界面の密着性を高める密着層が設けられていてもよい。密着層は、光取り出し性に影響を及ぼさないことが確認されている。
基板S1の上に、低屈折率層21及び高屈折率層22がこの順で配置されている。低屈折率層21は、基板S1よりも屈折率が小さい。高屈折率層22は、基板S1よりも屈折率が大きい。低屈折率層21と高屈折率層22との間には、凹凸構造20が設けられている。凹凸構造20は、低屈折率層21と高屈折率層22との間の界面で形成され得る。凹凸構造20は、光の進行方向を変化させる作用を有し得る。凹凸構造20は、光散乱機能を有していてよい。凹凸構造20により、基板S1に入る光の量が多くなり得るため、光取り出し性が高まる。
光透過性電極30と光反射性電極50との間に電圧を印加することにより、発光層41において光が生じる。発光層41で生じた光は、保護層10の側から外部に取り出される。保護層10は基板S1として機能する。図1の例は、ボトムエミッション構造を有する。発光層41において、光は放射状に発生し得る。発光層41で生じた光のうち保護層10に直接向かう光は、電荷移動層42と、光透過性電極30と、高屈折率層22と、低屈折率層21と、保護層10とを順に通り、外部に出射する。発光層41で生じた光のうち光反射性電極50に向かう光は、電荷移動層43を通って光反射性電極50に到達し、光反射性電極50で反射されて、保護層10に向かう光となる。反射された光は、発光層41を通過し、直接保護層10に向かう光と同様の経路をたどって、外部に出射する。
有機EL素子1において、高屈折率層(第一層)22の屈折率をn3とし、発光層41の屈折率をn4とする。このとき、
n1 < n3、及び、
n1 < n4
の関係を満たすことが好ましい。有機EL素子1では、屈折率が上記の関係になることにより、光の進行方向がさらに変化しやすくなり、広角光の取り出し性が高まり、また、光の進行方向が正面方向に向かいやすくなる。その結果、外部に出射する光の量を増やすことができるため、光取り出し性がさらに向上する。
図1の例では、基板S1の屈折率は、保護層10の屈折率と等しく、n1である。そのため、大気の屈折率n0と、基板S1の屈折率n1とでは、n0<n1の関係が成り立つ。同様に、n2<n1、n1<n3、及び、n1<n4の関係が成り立つ。低屈折率層21と高屈折率層22との間には、n2<n3の関係が成り立つ。
大気の屈折率n0は、通常、1である。ここで、一般的に、有機EL素子1内の層の屈折率は、大気の屈折率よりも大きい。そのため、通常、n0<n2、n0<n3、及び、n0<n4が成り立つ。ただし、後述のように、低屈折率層21は、中空で形成され得る場合があり、その場合には、n0=n2になり得る。
屈折率が上述の関係になることで、基板S1に入る光の量が多くなるため、光取り出し性が高まる。特に低屈折率層21の屈折率が低くなることによる効果は大きい。例えば、低屈折率層21の屈折率を1.45から1.34に低下させたときに、外部量子効率が22%向上し得ることが実験的に確認されている。
なお、電荷移動層42及び光透過性電極30は、発光層41と高屈折率層22との間に配置されているが、これらの層の屈折率は、光取り出し性に影響をほとんど及ぼさないことが確認されている。高屈折率層22の屈折率n3と、発光層41の屈折率n4との関係は、n3<n4であってもよいし、n4<n3であってもよい。
低屈折率層21の屈折率n2は、例えば、1.0〜1.5の範囲になり得る。低屈折率層21の屈折率n2は、1.4以下になってもよい。低屈折率層21の屈折率n2は、1.3以下になってもよい。高屈折率層22の屈折率n3は、例えば、1.5〜2.5の範囲になり得る。保護層10の屈折率n1は、例えば、1.3〜2.0の範囲になり得る。発光層41の屈折率n4は、例えば、1.5〜2.5の範囲になり得る。上記の屈折率は単なる例示にすぎない。
層の屈折率差は、特に限定されるものではないが、例えば、次のように設定できる。保護層10の屈折率n1と低屈折率層21の屈折率n2との屈折率差は、0.05以上が好ましく、0.1以上が好ましく、0.15以上がさらに好ましい。保護層10の屈折率n1と高屈折率層22の屈折率n3との屈折率差は、0.05以上が好ましく、0.1以上が好ましく、0.15以上がさらに好ましい。なお、屈折率差の上限は、特に限定されないが、屈折率差が大きくなりすぎると素子設計が複雑になり得るため、いずれもの場合も、屈折率差は、1.5以下が好ましく、1.0以下がさらに好ましい。
有機EL素子1において、低屈折率層21の屈折率n2が保護層10の屈折率n1よりも小さいことは、例えば、半球プリズムを利用した光学測定により確認することができる。例えば、保護層10の外側に半球プリズムを光学接着剤で接着し、これにレーザを入射させる。その際、n2<n1の関係であれば、レーザ入射角度を変化させていったときに、全反射が発生し得る。反射光強度をモニターすれば、全反射が起こった段階で、反射率はほとんど100%となる。このようにして、作製後の有機EL素子1から、n2<n1の関係が確認され得る。上記の屈折率の確認方法は一例であり、これに限定されるものではない。
図1の例では、凹凸構造20は、複数の凸部23で形成されている。凸部23は、低屈折率層21が高屈折率層22側に突出した部分と定義される。凸部23は段状に突出している。凸部23は少なくとも2段で突出する。低屈折率層21は、凹部24を有していてよい。凹部24は、低屈折率層21が保護層10側に凹んだ部分である。凹部24は、複数であってもよいし、繋がっていて一つであってもよい。見方を変えれば、凹部24が2段以上で凹んでいると考えてもよい。さらに見方を変えれば、凹部24は、高屈折率層22の凸部23aとなり得る。この場合の凸部23aは、高屈折率層22が低屈折率層21側に突出した部分である。凸部23aは2段以上で突出している。また、同様に、凸部23は、高屈折率層22の凹部24aとなり得る。この場合の凹部24aは、高屈折率層22が光透過性電極30側に凹んだ部分である。そして、凹部24aが2段以上で凹むと考えてもよい。凹部24aは繋がって一つになっている場合があってもよい。その場合、凹凸構造20は、複数の凸部23aによって形成されていると考えることができる。このように、凹凸構造20を構成する複数の凸部は、低屈折率層21の凸部23であってもよいし、高屈折率層22の凸部23aであってもよい。説明の簡略化のため、以降は、特に断りのない限り、凹凸構造20を形成する複数の凸部は、複数の凸部23である場合を主に説明するが、凸部23の構造は凸部23aに適用することができる。
凸部23は、階段状になっている。図1の例では、凸部23は2段階に突出する。凹部24が階段状に凹んでいるといってもよい。凸部23は肩部を有するといってもよい。凸部23はくびれを有しているといってもよい。凸部23の途中に設けられる段は、段差部25と定義される。段差部25は凸部23の側部に設けられている。凸部23の第1段の突出は段差部25の部分であり、凸部23の第2段の突出は凸部23の先端の部分である。凹部24は基底部といってもよい。図1の例では、第2段の突出が最上段となる。このように段差部25があることで、光の進行方向が効果的に変化し得る。そのため、光取り出し性が高まる。
凹凸構造20は、厚み方向において、凸部23の先端に位置する高部20Hと、凹部24の底に位置する低部20Lと、段差部25に位置する中部20Cとの3つの領域を有している。凹凸構造20は、厚み方向の位置を3つ有する。低屈折率層21と高屈折率層22との界面において、厚み方向の位置の数は、レベル数と定義される。厚み方向とは、有機発光体が積層される方向を意味する。図1の例は、レベル数が3である。低部20Lは保護層10に近い部分となる。低部20Lは平坦な面になってもよい。高部20Hは光透過性電極30に近い部分となる。高部20Hは平坦な面になってもよい。中部20Cは、高部20Hと低部20Lとの間に配置される部分である。中部20Cは平坦な面になっていてもよい。凸部23が2段以上で突出すると、レベル数は3以上になる。
図2は、凹凸構造20が設けられる界面の説明図である。図2は、図2A〜図2Eから構成される。図2では、低屈折率層21と高屈折率層22との積層体を有機EL素子1から抽出して描画している。図2C〜図2Eのように、有機EL素子1において、凸部23は少なくとも2段で突出する。凸部23は、3段以上で突出してもよいし、4段以上で突出してもよい。図2により、レベル数について説明する。
図2Aのように、凹凸構造20がない場合、レベル数は1である。界面の厚み方向の位置は1つしかない。図2Bのように、凸部23が1段で突出する凹凸構造20の場合、レベル数は2である。界面の厚み方向の位置は2つである。一方、図2Cのように、凸部23が2段で突出する凹凸構造20の場合、レベル数は3である。界面の厚み方向の位置は3つである。図2Dのように、凸部23が3段で突出する凹凸構造20の場合、レベル数は4である。界面の厚み方向の位置は4つである。図2Eのように、凸部23が4段で突出する凹凸構造20の場合、レベル数は5である。界面の厚み方向の位置は5つである。このように、凹凸構造20を有する場合、レベル数は、突出する段の数に1を足した数になる。段差部25の数に2を足した数がレベル数になるといってもよい。レベル数6以上も同様に理解されるであろう。図2Cに示される2段突出の凸部23は、図1の形態に適用されている。図2D及び図2Eに示される凸部23が、図1の形態に適用されてもよい。なお、高部20H、低部20L、中部20Cは、上記で説明した通りであり、図2C〜図2Eに記載されている。段差部25が2以上の場合には、中部20Cは、低屈折率層21側から、第1中部20C1、第2中部20C2、第3中部20C3と符号付けされ得る。このように、複数の中部20Cが設けられてもよい。
凸部23は、段状に突出していればよく、各段の高さは、特に限定されない。段の高さとは、厚み方向の長さを意味する。凸部23は各段が略同じ高さで突出していてよい。それにより、光取り出し性が効率よく向上し得る。2段の凸部23の場合、段差部25は、厚み方向において、凸部23の中間部分に配置され得る。3段の凸部23の場合、段差部25は、凸部23の高さの1/3と2/3の部分に配置され得る。凸部23は、等間隔で段が形成されていてよい。段差部25によって形成される中部20Cも、同様のことが言える。
複数の凸部23は同形状であってよい。同形状の凸部23により、容易に光取り出し性を高めることができる。凹凸構造20は、凹部24の底に、低屈折率層21が存在していない構造であってもよい。凹部24の底において、高屈折率層22と保護層10とが接していてもよい。また、凹凸構造20は、凸部23の先端に、高屈折率層22が存在していない構造であってもよい。凸部23の先端において、低屈折率層21と光透過性電極30とが接していてもよい。
有機EL素子1では、発光層41の光出射側とは反対側に、光を反射する反射層R1を備えることが好ましい。図1の例では、反射層R1は光反射性電極50で構成されている。反射層R1があることにより、光を反射させることができ、反射方向への光量を高めることができる。そして、反射層R1に最も近い発光層41と反射層R1との間の媒質の屈折率をn5とする。また、発光層41において生じる光の波長をλとする。また、発光層41と反射層R1との距離をL1とする。このときに、
L1 ≧ λ/(3n5)
の関係を満たすことが好ましい。
発光層41と反射層R1との距離が上記の関係を満たすと、プラズモンを抑制することができるため、光をより多く外部に取り出すことができる。プラズモンにより、発光層41で生じた光が、反射層R1の表面で反射する際に、エネルギー吸収により反射層R1の表面において消失する。プラズモンは金属層の表面で特に起こり得る。プラズモン抑制のためには、発光層41と反射層R1との距離を大きくすることが有効である。そして、発光層41の光の波長λと、発光層41が反射層R1に到達するまで媒質の屈折率n5とが、プラズモン抑制に関係し得る。媒質とは、空間を満たす物質を意味する。そして、距離L1をλ/(3×n5)以上にすると、プラズモンを効果的に抑制できる。距離L1の単位はnmであってよい。なお、図1では、発光層41が反射層R1に最も近い発光層となっているが、発光層が2以上の場合には、反射層R1に最も近い発光層がこの場合の発光層となる。以下では、説明を簡単にするため、発光層41を反射層R1に最も近い発光層として説明する。
距離L1の上限は特にないが、L1が大きくなりすぎると、素子の設計が難しくなるおそれがある。その観点から、L1<λであることが好ましく、L1<λ/2であることがより好ましい。また、L1<λ/n5となることも好ましい。また、L1<λ/3となってもよい。距離L1は、具体的には、例えば、50〜500nmの範囲内にすることができる。
ここで、波長λは発光層41で生じる光の波長である。波長λは、横軸を波長の長さとし、縦軸を相対強度として表される光のスペクトルを重みづけて平均化することで求められる。波長λは、通常、可視光領域に入る。波長λは、400〜700nmの範囲内であってよい。波長λとして、具体的には、500〜600nmが例示される。また、屈折率n5は、発光層41と反射層R1との間の媒質の平均化された屈折率である。電荷移動層43が単層の場合、電荷移動層43の屈折率がn5となる。電荷移動層43が2以上の層で構成される場合、各層の屈折率を厚みで重みづけして平均化することで、屈折率n5が求められる。屈折率n5は、例えば、1.5〜2.5の範囲内であってよい。
発光層41と反射層R1との距離L1が大きくなることは、プラズモン抑制には有利であるが、その反面、広角光も多くなり得る。広角光とは、斜め方向の光のうち、基板S1への入射角度が比較的大きい光を意味する。基板S1の表面と垂直な方向の線(法線)と光の進行方向とのなす角度が入射角度である。広角光は、入射角度が40度以上であってよい。広角光は、基板S1(保護層10)において全反射しやすい。広角光を取り出すことは、全体の光取り出し性の向上につながる。有機EL素子1では、凸部23が2段以上で突出させることで、広角光をより多く取り出すことができる。そのため、プラズモン抑制により発生した広角光を効率よく取り出すことができる。
図3は、有機EL素子の光の進行を説明する模式図である。図3は、図1とは層の順番が上下逆転して記載され、上側に光が出射するように描画されている。図3は、モデル化されており、厚みの関係も実際のものとは異なる。矢印は、光の進行を表す。
発光層41で生じた光は、基板S1の表面に垂直な方向だけではなく、基板S1の表面に垂直な方向から傾いた方向に進行する成分を多く含む。図3では、基板S1の表面に対して斜め方向に進む光の進行を説明する。斜め方向に進む光は、発光源から直接進行する光と、反射層R1で反射された光とを含む。発光源は発光層41に存在する。
図3に示すように、斜め方向に進む光は、有機層40から出て光透過性電極30を通った後、高屈折率層22に入る。ここで、高屈折率層22は、発光層41と光透過性電極30と高屈折率層22とで屈折率がマッチングされていることにより、フレネル反射が低減され得る。例えば、高屈折率層22と発光層41との屈折率差は、絶対値で、0.5以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。また、例えば、光透過性電極30と発光層41との屈折率差は、絶対値で、0.5以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。また、例えば、高屈折率層22と光透過性電極30との屈折率差は、絶対値で、0.5以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。このように屈折率がマッチングされると、フレネル反射が低減される。
高屈折率層22に入った光は、凹凸構造20に到達する。図3では、凹凸構造20は層状に描画されているが、図1から分かるように凹凸構造20は、高屈折率層22と低屈折率層21との界面で形成されていてよい。凹凸構造20では、複数の凸部23が存在することによって、光の進行方向が変化し得る。ここで、凸部23が2段以上で突出していると、光の進行方向を低角度側に、いわば基板S1の法線方向に近づくように変更させる作用が強くなる。この作用は、−1次透過回折光の効率が向上するためである。この作用により、光線を立てることができる。また、凸部23が2段以上で突出していると、広角光をより多く取り出すことができる。凸部23と凹部24との間に段差があることにより、斜め方向に進む光は、進行方向が効率よく変化され得る。凸部23が2段以上で突出すると、斜め方向に進む光は、凸部23の側部に当たりやすくなる。このように、2段以上の凸部23が設けられた凹凸構造20があることにより、光をより多く取り出すことができる。凹凸構造20は、回折格子面となり得る。
−1次透過回折光は、光の進行方向が回折によって外部側に曲がる1番目の光である。0次透過回折光は、真直に進む成分である。透過光は、0次回折と−1次、−2次、−3次・・・・の回折が発生する。図3では、凹凸構造20を通過した光のうち、−1次透過回折光が実線で示され、0次透過回折光が破線で示されている。
図4は、凹凸構造20のレベル数と−1次透過回折光の効率η−1 Tとの関係の一例を示すグラフである。レベル数は、前述のように、凸部23が突出する段の数に1を足した値となり得る。レベル数が大きくなるほど、−1次透過回折光の効率η−1 Tの値が高くなり、光は基板S1の法線方向に進行方向が変化し得る。−1次透過回折光の効率は、スカラー理論(複素透過率分布近似)においては、偏光状態にかかわらず、次の式で与えられる。
上記の式において、Mはレベル数、nlowは低屈折率層の屈折率、nhighは高屈折率層の屈折率を表す。この式を利用することで、図4のグラフが得られる。
図4のグラフに示されるように、レベル数が2の場合、すなわち、凹凸構造20が1段の凸部23で形成されている場合は、−1次透過回折光の効率η−1 Tは50%を下回っており、−1次透過回折光の効率η−1 Tはそれほど高くない。しかしながら、凸部23が2段以上となるレベル数3以上の場合、−1次透過回折光の効率η−1 Tは60%を超えている。このように、2段以上の凸部23を設けることで、光の進行方向を正面方向に近づけることができるため、光取り出し性を向上することができる。レベル数が増加するにつれて、−1次透過回折光の効率η−1 Tは大きくなる。ただし、レベル数が大きくなるほど、増加の度合は少なくなっていく。凸部23への段の作りやすさを考慮すると、レベル数6以下となること(5段以下)が好ましく、レベル数5以下となること(4段以下)がより好ましい。凸部23は、3段以下であってもよいし、2段であってもよい。ところで、図4では、低屈折率層21の屈折率n2を変化させている。図4に示されるように低屈折率層21の屈折率n2の変化は、レベル数の増減による−1次透過回折光の効率η−1 Tの変化に影響をほとんど及ぼさない。
図3に示すように、凹凸構造20を通過した光は、低屈折率層21に入り、低屈折率層21と保護層10との界面に到達する。このとき、保護層10の屈折率は、低屈折率層21の屈折率よりも高いため、保護層10に入った光の進行方向は低角度側に、いわば基板S1の法線方向に近づくように変化し得る。また、界面への入射角が小さくなるため、フレネル損失も低減され得る。その後、光は保護層10を通って、大気が存在する外部に出る。大気は保護層10よりも屈折率が低いため、光の進行方向は角度が大きくなる方向に変化し得る。光は寝る方向に変化し得る。光が進行する斜め方向の角度が大きい場合、臨界角を超えると、全反射が発生するため、光が保護層10に閉じ込められ得る。ここで、上記のように、有機EL素子1では、光の進行方向は、保護層10と大気との界面に到達する前に、立つ方向に変化しやすくなっている。また、フレネル損失が低減され得る構造となっている。そのため、保護層10と大気との界面での全反射が抑制され、光の取り出し性が向上する。
以上の結果を踏まえると、低屈折率層21を保護層10よりも低屈折率化することにより、光線方向の制御と、それに伴うフレネル反射低減と、界面での光取出しとが容易になる効果があるといえる。一方で、1段以下の光取出し構造では低屈折率層21と高屈折率層22の間の屈折率コントラストが増大することで、全反射が起こりやすくなり、広角成分の取出し効率が低下するというトレードオフ関係が発生し得る。
そこで、前述の通り、マルチレベル構造(2段以上の凹凸構造)を用いると、広角での光取出し効率向上と、−1次回折成分増大による光線方向の制御効果とにより、低屈折率化に伴うトレードオフ関係を低減することができる。
図5は、発光層41と反射層R1との間の距離L1を変化させたときの変化を示すグラフである。図5は、図5A及び図5Bから構成される。図5Aは、距離L1と光のモードとの関係を示すグラフである。図5Bは、距離L1と取り出される光の角度(基板S1の法線とのなす角)との関係を示すグラフである。図5Bでは、光の強度を相対化して、等高線状に表している。
図5Aに示すように、光は、エバネッセントモード(Evanescent mode)、吸収(Absorption)、基板モード(Substrate mode)、抽出モード(Extraction mode)に区分される。このうち、エバネッセントモードが、プラズモンが生じる領域である。基板モードは、基板表面における全反射などによって光が内部に閉じ込められる領域である。吸収は、材料による吸収により光が損失する領域である。抽出モードが、外部に取り出される光となる。抽出モードにおける光の量は、距離L1が変化したときに、光の干渉作用が変化するため、増減し得る。そのため、抽出モードの縁部は波状となっている。
図5Aのグラフから、距離L1が小さいとエバネッセントモードの配分が大きくなることが理解される。距離L1がλ/(4n5)を超えると、エバネッセントモードの割合が減り、距離L1がλ/(3n5)を超えると、エバネッセントモードの割合がさらに減ることが分かる。このため、プラズモン抑制のためには、距離L1はλ/(3n5)以上とすることが好ましいのである。プラズモン抑制の観点からは、距離L1は、L1≧λ/(2n5)以上となることがより好ましいことは、グラフから理解されるであろう。
図5Bのグラフから、距離L1が小さいときには、角度の小さい光の量が多いことが分かる。角度が小さい光は、外部に出射しやすい。しかしながら、距離L1が大きくなるにつれて、角度の大きい光の量が多くなっている。特に、プラズモン抑制のために、L1をλ/(3n5)以上にすると、角度の大きい成分が増加している。このように、プラズモン抑制のためには距離L1を大きくすることが好ましいが、距離L1を大きくすると、広角度の成分の光が増えることになる。そのため、広角度の成分の光をより効果的に取り出すことができる2段以上の凸部23を有する凹凸構造20が有利なのである。もちろん、L1がλ/(3n5)より小さい範囲でも、段状の凹凸構造20は光取り出し性に優れている。なお、図5A及び図5Bでは、屈折率を表すn5を単にnと簡略化して記載している。
図6は、凸部23の段数と、光取り出し性との関係のシミュレーション結果を示す一例である。図6は、図6A、図6B及び図6Cから構成される。図6Aは、凹凸構造20のモデルである。図6Bは、1段で突出する凸部23を有する凹凸構造20における光の透過率を示すグラフである。図6Cは、2段で突出する凸部23を有する凹凸構造20における光の透過率を示すグラフである。図6B及び図6Cでは、光の角度と、低屈折率層21の屈折率n2とをパラメータとして変化させたときの光の透過率を等高線状に描画している。図6B及び図6Cのグラフの透過率は、発光層41で生じた光が、基板S1(保護層10)を通って外部に出射する割合を示している。凸部23が2段以上の場合は、マルチレベルの凹凸構造20といってもよい。凸部23が1段の場合は、シングルレベルの凹凸構造20といってもよい。
図6Aに示す構造により、シミュレーションが行われる。図6Aでは、高屈折率層22の凸部23aにより凹凸構造20が形成されている。凸部23aは、一定の周期で配置されている。図6Aに示すように、凸部23aの周期をP1とする。凸部23aの全体の高さをH1とし、段差部25の高さをH2とする。高さは、高屈折率層22の凹部24aの底部からの垂直方向の長さである。凸部23aの幅をW1とする。段差部25の幅をW2とする。D1が凸部率として定義される。D1は、W1/P1で表される。凸部23aは規則的に配置されている。
図6Bは、H1を0.8μmとし、P1を5.4μmとし、D1を0.25として設定したときの光透過率の結果である。なお、段がないため、H2及びW2の設定はない。図6Cは、H1を1.2μmとし、H2を0.6μmとし、P1を2.4μmとし、W2を0.6μmとし、D1を0.8として設定したときの光透過率の結果である。図6B及び図6Cの比較から分かるように、段差部25を有する凹凸構造20は、広角度の成分の光を多く透過させていることが分かる。そして、広角度の成分の透過光の量が多くなるのは、低屈折率層21の屈折率n2が低くなったときにより起こり得る。つまり、低屈折率層21の低屈折率化と、段差部25とが、相乗効果的に働いて、広角度の光を取り出すことができる。図6B及び図6Cでは、広角度の成分の光の領域を領域A1で示している。図6Cでは、領域A1内の透過率の数値が、図6Bよりも高い。このように、低屈折率層21と2段以上の凸部23とによって広角度成分をより多く外部側に取り出すことができるため、光取り出し性が向上する。なお、光の透過率の最大値は、1段の凸部23の方が高くなることがあり得るが、広角成分の光を多く集めることができると光の量は飛躍的に増加するため、2段以上の凸部23の方が、全体の光量の向上には有利になり得る。
図6Aを用いて凹凸構造20の好ましい寸法を例示する。凸部23aの幅W1は、0.1〜100μmの範囲内であってよい。凹部24aの幅W3は、0.1〜100μmの範囲内であってよい。周期P1は、0.1〜100μmの範囲内であってよい。段差部25の幅W2は、0.1〜30μmの範囲内であってよい。段差部25の幅W2は、凸部23aの幅W1の10〜40%の範囲内であってよい。低屈折率層21の凸部23の好ましい寸法も同様である。
低屈折率層21は、樹脂により構成され得る。低屈折率層21は、低屈折率粒子を含んでもよい。低屈折粒子としては中空粒子が例示される。中空粒子としては、中空シリカ微粒子が例示される。
高屈折率層22は、樹脂により構成され得る。高屈折率層22は、高屈折率粒子を含んでもよい。高屈折粒子は、有機粒子及び無機粒子のいずれでもよい。例えば、酸化チタンにより高屈折率粒子が形成され得る。また、高屈折率層22は、無機層で構成されてもよい。高屈折率層22に用いる好ましい材料として、Ti、Zr、Zn、In、Ga、Sn、Si、及びその酸化物が例示される。また、高屈折率層22に用いる好ましい材料として、Siの酸化物又は窒化物が例示される。また、高屈折率層22に用いる好ましい材料として、上記に示す金属、金属酸化物、無機物、無機酸化物、無機窒化物のいずれか一つ以上が分散した有機−無機ハイブリッド材料が例示される。また、高屈折率層22は、フィルム材料で形成されてもよい。フィルム材料は樹脂の成形物であってよい。フィルム材料としては、PET、PBN、PTT、PEN、COなどが例示される。もちろん、これらの材料は例示であり、高屈折率層22の材料はこれらに限定されるものではない。
凹凸構造20は、凹凸を形成する適宜の方法により形成され得る。例えば、インプリントにより凹凸構造20が形成されてもよい。ナノインプリントが例示される。ナノインプリントはナノサイズの凹凸を効率よく形成することができる。ナノインプリントは、段差部25を有する凸部23を容易に形成することができる。ナノインプリントは、ナノサイズの凹凸をモールドに設け、モールドの凹凸を転写させることでプリントを行うことができる。モールドを使用した方法は、樹脂層の凹凸の形成に好適である。もちろん、ナノインプリント以外の方法で凹凸構造20が形成されてもよい。例えば、凹凸構造20は、機械加工、レーザ加工、多段マスク露光とドライエッチングとの組み合わせ加工などにより形成され得る。
図7は有機EL素子1の一例である。図7の形態は、図1の形態の変形例であり、以下で説明する事項以外は、図1の形態と同様であってよい。同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図7の例では、凹凸構造20は、高屈折率層(第一層)22と低屈折率層(第二層)21との間の屈折率を有する構造を備えている。高屈折率層22と低屈折率層21との間の屈折率を有する構造は、中屈折率構造26と定義される。中屈折率構造26により、低屈折率層21と高屈折率層22との間の界面での反射が低減される。そのため、外部に出射する光を増加させることができる。
中屈折率構造26は、低屈折率層21と高屈折率層22との間の屈折率を有する。中屈折率構造26の屈折率をn6としたときに、n2<n6<n3の関係が成り立つ。中屈折率構造26の屈折率n6は保護層10の屈折率n1より高くてもよい。この場合、n1<n6の関係が成り立つ。中屈折率構造26の屈折率n6は保護層10の屈折率n1より低くてもよい。この場合、n6<n1の関係が成り立つ。
中屈折率構造26は、低屈折率層21と高屈折率層22との間の屈折率を発現する適宜の構造で形成され得る。中屈折率構造26は、低屈折率層21と高屈折率層22との界面に設けられる。中屈折率構造26は、凹凸構造20の形状に沿って設けられる。中屈折率構造26は、凸部23、段差部25及び凹部24の表面に設けられ得る。中屈折率構造26は、層の導入で形成されてもよいし、低屈折率層21又は高屈折率層22の構造変化によって形成されてもよい。
中屈折率構造26の一例として、薄膜が挙げられる。薄膜は、凹凸構造20の作用が損なわれない程度の厚みで設けられ得る。薄膜の厚みは、段差部25の高さよりも小さいことが好ましい。薄膜は、屈折率n6を有し得る。中屈折率構造26の一例として、モスアイ構造が挙げられる。モスアイ構造は、凸部23よりも小さい複数の突起によって構成され得る。モスアイ構造の突起のサイズは、段差部25の高さよりも小さいことが好ましい。モスアイ構造は、低屈折率層21に設けられてもよいし、高屈折率層22に設けられてもよい。モスアイ構造は、屈折率n6を有し得る。中屈折率構造26の一例として、低屈折率層21又は高屈折率層22内に含有される微粒子によって形成された複数の突起が挙げられる。この場合、微粒子を含む層の表面粗さは、例えば、100nm以上であってよい。表面粗さは、1000nm以下であってよい。微細な突起が設けられた構造は、屈折率n6を有し得る。この場合の表面粗さはRzであってよい。
ここで、高屈折率層22と低屈折率層21との間の屈折率差が大きくなるにつれて、これらの層の界面で、光を全反射させる臨界角が低角度に変化していく傾向がある。光が全反射すると、光を外部に取り出しにくくなる。特に広角光を取り出す構造にしたときには、臨界角が低角度になると、全反射を生じる角度の光の量が多くなり得る。そこで、図7の形態では、高屈折率層22と低屈折率層21との界面に、中屈折率構造26が設けられている。中屈折率構造26は、高屈折率層22と低屈折率層21との間の屈折率差を低減することができるため、界面での全反射を抑制することができる。そのため、光取り出し性を向上することができる。
図8は有機EL素子1の一例である。図8の形態は、図1の形態の変形例であり、以下で説明する事項以外は、図1の形態と同様であってよい。同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図8の例では、保護層10と低屈折率層(第二層)21との間に、保護層10よりも低い屈折率を有する構造を備えている。保護層10と低屈折率層21との間の、保護層10よりも低い屈折率を有する構造は、屈折率調整構造60と定義される。屈折率調整構造60により、フレネル反射が低減され得る。そのため、外部に出射する光が増加する。
屈折率調整構造60は、保護層10(基板S1)よりも屈折率が低い。屈折率調整構造60の屈折率をn7としたときに、n7<n1の関係が成り立つ。屈折率調整構造60の屈折率n7は低屈折率層21の屈折率n2より高くてもよい。この場合、n2<n7の関係が成り立つ。屈折率調整構造60の屈折率n7は低屈折率層21の屈折率n2より低くてもよい。この場合、n7<n2の関係が成り立つ。
屈折率調整構造60は、保護層10よりも低い屈折率を発現する適宜の構造で形成され得る。屈折率調整構造60は、低屈折率層21と保護層10との間に設けられる。屈折率調整構造60は、層の導入で形成されてもよいし、保護層10又は低屈折率層21の構造変化によって形成されてもよい。
屈折率調整構造60の一例として、無機層又は樹脂層が挙げられる。無機層の材料としては、例えば、SiO2、MgFが挙げられる。樹脂層としては、フッ素基(F基)を含む樹脂で形成された層が挙げられる。これらの層により、屈折率が調整され得る。これらの層は屈折率n7を有し得る。屈折率調整構造60の一例として、モスアイ構造が挙げられる。モスアイ構造は、微小な複数の突起によって構成され得る。モスアイ構造の突起のサイズは、凸部23の高さよりも小さいことが好ましい。モスアイ構造は、保護層10に設けられてもよいし、低屈折率層21に設けられてもよい。モスアイ構造は、屈折率n7を有し得る。屈折率調整構造60の一例として、保護層10の構造変化が挙げられる。例えば、保護層10がソーダライムガラスで形成されたガラス基板である場合に、ガラス基板の表面でナトリウムが欠乏することにより、屈折率調整構造60が構成され得る。屈折率がn1であるソーダライムガラスにおいてナトリウムが欠乏した領域は、屈折率n7を有し得る。
ここで、高屈折率層22と低屈折率層21との間の屈折率差が大きくなるにつれて、フレネル反射が増大していく傾向がある。フレネル反射が増大すると、光を外部に取り出しにくくなる。特に広角光を取り出す構造にしたときには、フレネル反射が大きくなりやすい。そこで、図8の形態では、保護層10と低屈折率層21との界面に、屈折率調整構造60が設けられている。屈折率調整構造60は、高屈折率層22と低屈折率層21との間の屈折率差により発生するフレネル反射を低減することができる。そのため、光取り出し性を向上することができる。なお、有機EL素子1は、図7の形態の中屈折率構造26と、図8の形態の屈折率調整構造60との両方を有していてもよい。それにより、光の取り出し性がさらに向上し得る。
図9は有機EL素子1の一例である。図9の形態は、図1の形態の変形例であり、以下で説明する事項以外は、図1の形態と同様であってよい。また、図9の形態は、図7で説明した中屈折率構造26、及び、図8で説明した屈折率調整構造60の一方又は両方がさらに導入されてもよい。同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図9の形態は、保護層10の光出射側に光取り出し構造70を備えている。光取り出し構造70を備えることにより、保護層10を通って外部に向かう光をより多く取り出すことができる。
光取り出し構造70は、基板S1の表面に設けられる適宜の構造で形成され得る。光取り出し構造70は層であってよい。光取り出し構造70の一例として、フィルムが挙げられる。フィルムは樹脂の成形体であってよい。フィルムを貼り付けることにより、容易に光取り出し構造70を形成することができる。フィルムはマイクロレンズアレイを含むものであってよい。フィルムは回折格子を含むものであってもよい。また、光取り出し構造70は、凹凸構造を有する樹脂層の積層体で設けられてもよい。例えば、凹凸構造は、複数の凸部又は凹部を有することで、光の取り出し性が高まる。凹凸構造は、前述した低屈折率層21と高屈折率層22との積層構造によって形成される凹凸構造20と同様の構造を採用することができる。例えば、光取り出し構造70における高屈折率層及び低屈折率層は、光が出射する方向に沿って、この順で配置され得る。光取り出し構造70に含まれる凸部は、凸部23又は凸部23aと同じであってよい。凹凸構造は、例えば、インプリントで形成され得る。光取り出し構造70の凹凸構造として、特に、2段以上で突出する複数の凸部で構成される凹凸構造を採用した場合、光取り出し性を効果的に高めることができる。光取り出し構造70が、凹凸構造20と同様の凹凸構造を有すると、さらに効果的である。
ところで、上記で説明した有機EL素子1では、正面方向に向かう光を増やすことが可能である。そのため、保護層10の表面で全反射が起こらない角度の光が多くなるように光の進行方向を制御できれば、光取り出し構造70はなくてもよい。光取り出し構造70がない場合、有機EL素子1の作製が容易になる。図1の形態では、光取り出し構造70を有さないで、光取り出し効率の高い構造を形成することが可能である。一方、図9の形態は、保護層10の表面での全反射が比較的多い場合に、有利である。
図10は有機EL素子1の一例である。図10の形態は、図1の形態の変形例であり、以下で説明する事項以外は、図1の形態と同様であってよい。また、図10の形態は、図7で説明した中屈折率構造26、及び、図8で説明した屈折率調整構造60の一方又は両方がさらに導入されてもよい。また、図10の形態は、図9で説明した光取り出し構造70がさらに導入されてもよい。同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図10の形態は、発光層41と高屈折率層(第一層)22との間に、保護層10よりも高い屈折率を有する層を備えている。発光層41と高屈折率層22との間の、保護層10よりも高い屈折率を有する層は、追加の高屈折率層80と定義される。追加の高屈折率層80は、高屈折率層(第一層)22に接している。追加の高屈折率層80は、基板S2として機能する。図1に代表される上記の形態では、基板S1の上に低屈折率層21及び高屈折率層22を形成し、さらにその上に、有機発光体を形成することが求められる。この場合、積層プロセスの手法や使用する材料に制限を受ける可能性がある。一方、図10の形態では、基板S2の一方の面に有機発光体を形成し、基板S2の他方の面に高屈折率層22及び低屈折率層21を形成することができる。この場合、それぞれの面において好適な積層プロセスや材料を採用しやすくなる。そのため、図10の形態は、製造が容易になる可能性があるという利点がある。
図10の形態では、積層体を支持する基板S2は、追加の高屈折率層80により構成される。保護層10は、低屈折率層21及び高屈折率層22を保護するための層であり、基板であってもよいし、基板でなくてもよい。保護層10は、例えば、保護フィルムにより構成され得る。保護層10は樹脂層で形成されてよい。保護層10は、無機層で形成されてもよい。保護層10はガラスにより構成されてもよい。保護層10があることにより、凹凸構造20が外部に露出することを抑制して、凹凸構造20を保護することができる。
追加の高屈折率層80は、保護層10よりも屈折率が高い。追加の高屈折率層80の屈折率をn8としたときに、n1<n8の関係が成り立つ。追加の高屈折率層80の屈折率n8は高屈折率層22の屈折率n3より高くてもよい。この場合、n3<n8の関係が成り立つ。追加の高屈折率層80の屈折率n8は高屈折率層22の屈折率n3より低くてもよい。この場合、n8<n3の関係が成り立つ。追加の高屈折率層80の屈折率n8は発光層41の屈折率n4より高くてもよい。この場合、n4<n8の関係が成り立つ。追加の高屈折率層80の屈折率n8は発光層41の屈折率n4より低くてもよい。この場合、n8<n4の関係が成り立つ。
追加の高屈折率層80は、保護層10よりも高い屈折率を発現する適宜の材料で形成され得る。追加の高屈折率層80の一例として、高屈折率ガラスが挙げられる。高屈折率ガラスは、例えば、屈折率が1.6〜2.1の範囲であり得る。高屈折率ガラスは、金属がドープされたガラスにより形成され得る。追加の高屈折率層80の一例として、サファイアが挙げられる。サファイアの屈折率は1.77程度である。また、追加の高屈折率層80は、樹脂フィルムで構成されてもよい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンナフタレート(PEN)や、ポリエチレンテレフタラート(PET)などが例示される。ポリエチレンナフタレート(PEN)の屈折率は約1.77であり得る。ポリエチレンテレフタラート(PET)の屈折率は約1.65であり得る。
なお、図10では、追加の高屈折率層80が基板S2の場合を示したが、保護層10が基板を構成し、追加の高屈折率層80が基板でない層であってもよい。
図11は有機EL素子1の一例である。図11の形態は、図10の形態の変形例であり、以下で説明する事項以外は、図10の形態と同様であってよい。また、図11の形態は、図7で説明した中屈折率構造26、及び、図8で説明した屈折率調整構造60の一方又は両方がさらに導入されてもよい。また、図11の形態は、図9で説明した光取り出し構造70がさらに導入されてもよい。同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図11の形態は、低屈折率層21が空隙で形成されている。空隙は空気層で構成されている。保護層10と高屈折率層22との間には、隙間が設けられている。この隙間が低屈折率層21として機能する。保護層10は凹部を有するガラスなどで構成され得る。保護層10は、高屈折率層22と保護層10との間に隙間を設けるためのスペーサ11を側部に有する。低屈折率層21が空気層で形成されると、低屈折率層21の屈折率n2は大気の屈折率n0に近づく。n2とn0とがほとんど同じになってもよい。n2=n0となり得る。このため、低屈折率化を容易に行うことができる。
なお、有機EL素子1においては、有機発光体は通常、封止により外部から遮断され得る。図11では、封止材90によって有機発光体が封止された構造が示されている。図1に代表される上記の形態においても、封止材90によって有機発光体が封止されてよいことは言うまでもない。封止材90は、例えば、ガラスで構成され得る。
図12により、保護層10が、第二層である態様、すなわち、保護層10と第二層とが同じ層である態様を説明する。
図12は、有機EL素子1の模式的な断面図である。有機EL素子1は、少なくとも一つの発光層41と、第一層と、第二層とを備えている。第二層は、保護層10となる。第一層は、高屈折率層22と定義される。高屈折率層22は、発光層41の光出射側に配置される。第二層(保護層10)は、低屈折率層21になる。低屈折率層21は、高屈折率層22の光出射側に配置される。低屈折率層21は、高屈折率層22に接している。高屈折率層22と低屈折率層21との界面には、2段以上で突出する複数の凸部23によって形成された凹凸構造20が設けられている。以下においては、高屈折率層22は第一層を意味しており、第一層22と言い換えてもよい。また、低屈折率層21は第二層を意味しており、第二層21と言い換えてもよい。
有機EL素子1では、大気の屈折率をn0とし、保護層10(第二層)の屈折率をn1とする。また、低屈折率層(第二層)21の屈折率はn2と表される。このとき、
n0 < n1、及び、
n2 = n1、
の関係を満たしている。
有機EL素子1では、複数の凸部23が2段以上で突出するとともに、屈折率が上記の関係になることにより、光の進行方向が変化しやすくなる。光の進行方向が変化すると、広角光の取り出し性が高まり、また、光の進行方向が正面方向に向かいやすくなる。その結果、外部に出射する光の量を増やすことができるため、光取り出し性が向上する。光取り出し性の詳細な機構は、上記で説明したのと同じである。
図12の形態のように第二層が保護層10である場合、これらの層は一体化しているため、第二層と保護層10とが別の場合のときに生じる層の界面を減らすことができる。そのため、光取り出し性をさらに向上することができる。また、低屈折率層(第二層)21が、保護層10以外の材料で形成されたときのような光吸収を抑制することができるため、光取り出し性を向上することができる。また、材料的に強固であり得る保護層10で第二層を構成するため、高屈折率層(第一層)22の材料の選択性を拡大することができ、高屈折率層(第一層)22を作製するプロセスの選択性も拡大することができる。たとえば、高温プロセスで高屈折率層22を形成することが可能になる。そのため、質の高い高屈折率層22を容易に形成することができる。
保護層10は、基板S1を構成する。保護層10、すなわち低屈折率層(第二層)21は、たとえば、低屈折率基板で形成することができる。低屈折率基板とは、低屈折率性を有する基板材料である。低屈折率基板としては、石英ガラス、空孔入りガラスなどの低屈折率ガラス基板や、フッ素樹脂を含む樹脂基板などの低屈折率樹脂基板が挙げられる。低屈折率層21(保護層10)の屈折率n2は、上記したのと同様の範囲であってよい。すなわち、低屈折率層21の屈折率n2は、例えば、1.0〜1.5の範囲であってよく、また、1.4以下になってもよく、また、1.3以下になってもよい。
第二層が保護層10である場合の好ましい態様は、上記で説明した第二層が保護層10と別である態様の好ましい態様が適用され得る。
すなわち、有機EL素子1において、高屈折率層(第一層)22の屈折率をn3とし、発光層41の屈折率をn4としたときに、
n1 < n3、及び、
n1 < n4
の関係を満たすことが好ましい。その理由は、上記で説明したのと同様である。それによって得られる効果も上記で説明したのと同様である。
また、有機EL素子1では、発光層41の光出射側とは反対側に、光を反射する反射層R1を備えることが好ましい。そして、反射層R1に最も近い発光層41と反射層R1との間の媒質の屈折率をn5とし、発光層41において生じる光の波長をλとし、発光層41と反射層R1との距離をL1としたときに、
L1 ≧ λ/(3n5)
の関係を満たすことが好ましい。その理由は、上記で説明したのと同様である。それによって得られる効果も上記で説明したのと同様である。
また、凹凸構造20は、第一層(高屈折率層22)と第二層(低屈折率層21、すなわち保護層10)との間の屈折率を有する構造(すなわち中屈折率構造26)を備えていることが好ましい(図7参照)。その理由は、上記で説明したのと同様である。それによって得られる効果も上記で説明したのと同様である。
第二層が保護層10である場合について、その他の好ましい態様や、凹凸構造20の好ましい態様、凹凸構造20の説明、部材の材料などについても、上記で説明したのと同様である。たとえば、保護層10の光出射側に、光取り出し構造70が設けられてもよい(図9参照)。また、発光層41と高屈折率層(第一層)22との間に、追加の高屈折率層80(基板S2)が設けられてもよい(図10参照)。
図13以降の図で、凹凸構造20における凸部23及び凹部24の好ましい配置についてさらに説明する。図13〜図16では、凹凸構造20を基板S1の法線方向に沿って見た様子を示している。凹凸構造20を平面視したといってもよい。凸部23及び凹部24は、パターン化されて模式的に描画されている。凸部23が配置された部分は斜線で示し、凹部24が配置された部分は空欄で示している。なお、前述したように、凸部23を凸部23aに変換し、凹部24を凹部24aに変換してもよい。
図13〜図16に示すように、凸部23及び凹部24は、均等に分割された区画に割り当てられて配置されることが好ましい。それにより、光取り出し性の高い凹凸構造20が形成され得る。凸部23及び凹部24は、幅wの区画に割り当てられて、配置されている。wは境界幅とも呼ばれる。
図13及び図14は、好ましい凹凸の配置の一例であり、複数の凸部23が規則的に配置されている例である。このように規則的に凸部23が配置されると、所定の波長や所定の方向に合わせて、光の取り出し性を高めることができるため、全体の光取り出し効率を向上させることができる。複数の凸部23は周期性を有して配置されることが好ましい。複数の凸部23は一定の間隔で配置されていてよい。
図13の例は、四角格子に複数の凸部23が配置された様子を示している。四角格子は碁盤目状であってよい。凸部23と凹部24とは交代で割り当てられて配置されている。複数の凸部23の配置は、チェック状になっている。面全体において、複数の凸部23の占める割合は50%となり得る。複数の凸部23は、縦横に等間隔に配置され得る。
図14の例は、六角格子に複数の凸部23が配置された様子を示している。六角格子はハニカム構造であってよい。凸部23の周囲に、凹部24が配置されている。凸部23は、3方向に等間隔に配置され得る。面全体において、複数の凸部23の占める割合は1/3となり得る。ここで、凸部23と凹部24とが置き換わってもよい。凸部23が一つに繋がる場合は、前述のように複数の凹部24を、凹凸構造20を構成する複数の凸部23aと考えてよい。また、六角格子の配置を応用し、凸部23の六角形の大きさを大きくして、面全体において複数の凸部23の占める割合を50%程度にすることもできる。六角格子の配置は、細密充填配置となり得る。
図15及び図16は、好ましい凹凸の配置の一例であり、複数の凸部がランダムに配置されている例である。このようにランダムに凸部23が配置されると、波長や方向の依存性なく、光の取り出し性を高めることができるため、全体の光取り出し効率を向上させることができる。また、視野角依存性を低減させることができる。
図15は、四角格子に複数の凸部23がランダムに配置された様子を示している。図16は、六角格子に複数の凸部23がランダムに配置された様子を示している。ただし、図15及び図16では、ランダム性が制御されている。具体的には、凸部23が同じ方向で一定の個数以上並ばないように制御されている。また、凹部24が同じ方向で一定の個数以上並ばないように制御されている。図15では、凸部23は3個以上並んでおらず、凹部24は3個以上並んでいない。凸部23及び凹部24の並ぶ個数は2個以下である。図16では、凸部23は4個以上並んでおらず、凹部24は4個以上並んでいない。凸部23及び凹部24の並ぶ個数は3個以下である。このように完全なランダムではなく、ランダム性が制御されることにより、光取り出し性がさらに向上する。ランダム性が制御されると、凸部23と凹部24の境界が増加し得る。
ところで、凸部23と凸部23とが繋がった場合、凸部23の先端部分と凸部23の先端部分とが繋がっていてもよいし、繋がっていなくてもよい。好ましくは、凸部23の先端部分と凸部23の先端部分とが繋がる部分と繋がらない部分とがランダムに設けられる。それにより、ランダム性が向上するため、光取り出し効率が向上し得る。凸部23の先端部分は、凸部23の最上段を意味する。また、凸部23と凸部23とが繋がったときに、2以上の段差部25が繋がっていてもよいし、繋がっていなくてもよい。好ましくは、2以上の段差部25が繋がる部分と繋がらない部分とがランダムに設けられる。それにより、ランダム性が向上するため、光取り出し効率が向上し得る。凹部24についても、同様にランダム性が制御されてよい。
図13〜図16では、格子への凸部23の割り当てが示されている。前述したように、凸部23は、2段以上で突出しており、段差部25を有する。凸部23が段差部25を有するのであれば、凸部23の平面視における形状は、適宜の形状であってよい。凸部23の平面視の形状は、四角形であってもよいし、六角形であってもよいし、多角形であってもよいし、円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。また、凹部24の平面視の形状が、四角形であってもよいし、多角形であってもよいし、円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。凸部23の最上段と、段差部25との平面視形状は相似形であってよい。
また、凸部23は幅がランダムに変化してもよい。凹部24は幅がランダムに変化してもよい。凹凸構造において、凸部23及び凹部24の占める割合は、適宜に変更可能である。凸部23の占める割合は、30〜70%の範囲内であってよい。凹部24の占める割合は、30〜70%の範囲内であってよい。
有機EL素子1には基材S10が組み込まれている。基材S10は、第一層と、第一層に接して配置される第二層と、を備えている。第一層と第二層との界面には、2段以上で突出する複数の凸部23によって形成された凹凸構造10が設けられている。基材S10は、保護層10を備えている。保護層10は、第二層に接して配置される層、又は、第二層である。大気の屈折率をn0とし、保護層10の屈折率をn1とし、第二層の屈折率をn2としたときに、
n0 < n1、及び
n2 ≦ n1
の関係を満たす。
図17は、基材S10の一例を示す断面図である。この態様は、保護層10が第二層に接して配置される層である場合、すなわち、保護層10と第二層とが別である場合の基材S10を示している。基材S10は、高屈折率層(第一層)22と、高屈折率層22に接して配置される低屈折率層(第二層)21と、低屈折率層21に接して配置される保護層10とを備えている。高屈折率層22と低屈折率層21との界面には、2段以上で突出する複数の凸部23によって形成された凹凸構造20が設けられている。大気の屈折率をn0とし、保護層10の屈折率をn1とし、低屈折率層21の屈折率をn2としたときに、
n0 < n1、及び
n2 < n1
の関係を満たす。基材S10は、光取り出し性に優れる有機EL素子1を提供することができる。
基材S10は、上記の有機EL素子1に使用され得る。図17は、図1の有機EL素子1に適用される基材S10を示しているが、他の図(ただし、保護層10と第二層が別のもの)で説明された有機EL素子1に適用されてもよい。基材S10は、有機EL素子1以外に使用されてもよい。基材S10は、光学装置に使用され得る。基材S10の好ましい構成は、上記の有機EL素子1で説明した構成を適用することができる。上記と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。基材S10の詳細な構成は、上記の説明から理解されるであろう。基材S10に複数の層を積層させることで、有機EL素子1が製造され得る。
図18は、基材S10の製造の一例を示している。図18は図18A〜図18Cから構成される。図18A〜図18Cの製造を経ることにより、図17に示す基材S10が得られる。図18Aで示すように、基材S10の製造にあたっては、まず、保護層10を準備する。保護層10は、例えばガラス基板である。ガラス基板は洗浄されてもよい。次に、図18Bに示すように、保護層10の上に、低屈折率層(第二層)21を形成する。ただし、この段階では、低屈折率層21は、凹凸が付与されていなくてよい。そして、図18Cに示すように、インプリント法により低屈折率層21の表面に凹凸を付与する。これにより、低屈折率層21には凹凸構造20が設けられる。最後に、低屈折率層21の上に高屈折率層(第一層)22を形成する(図17参照)。これにより、基材S10が製造される。
図19は、基材S10の他の一例を示す断面図である。この態様は、保護層10が第二層である場合、すなわち、保護層10と第二層とが同じである場合の基材S10を示している。基材S10は、高屈折率層(第一層)22と、高屈折率層22に接して配置される低屈折率層(第二層)21とを備えている。低屈折率層21は、保護層10となる。高屈折率層22と低屈折率層21との界面には、2段以上で突出する複数の凸部23によって形成された凹凸構造20が設けられている。大気の屈折率をn0とし、保護層10の屈折率をn1とする。また、低屈折率層21の屈折率はn2と表される。このとき、
n0 < n1、及び
n2 = n1
の関係を満たす。基材S10は、光取り出し性に優れる有機EL素子1を提供することができる。
基材S10は、上記の有機EL素子1に使用され得る。図19は、図12の有機EL素子1に適用される基材S10を示しているが、図12から変形された有機EL素子1に適用されてもよい。基材S10は、有機EL素子1以外に使用されてもよい。基材S10は、光学装置に使用され得る。基材S10の好ましい構成は、上記の有機EL素子1で説明した構成を適用することができる。上記と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。基材S10の詳細な構成は、上記の説明から理解されるであろう。基材S10に複数の層を積層させることで、有機EL素子1が製造され得る。
図20は、基材S10の製造の一例を示している。図20は図20A〜図20Dから構成される。図20A〜図20Dの製造を経ることにより、図19に示す基材S10が得られる。図20Aで示すように、基材S10の製造にあたっては、まず、保護層10(低屈折率層21、すなわち第二層)を準備する。保護層10は、例えば、ガラス基板である。具体的には、低屈折率ガラス基板が例示される。ガラス基板は洗浄されてもよい。次に、図20Bに示すように、保護層10の上に、レジスト層27を形成する。この段階では、レジスト層27は、凹凸が付与されていなくてよい。レジスト層27は、例えば、樹脂で形成される。そして、図20Cに示すように、インプリント法によりレジスト層27の表面に凹凸を付与する。その際、事前に検討されたレジスト層27のエッチング性と保護層10のエッチング性の選択比に基づいて、凹凸の形状を付与する。例えば、両者の選択比が1対1の場合は、最終目標の凹凸形状をレジスト層27に付与する。これにより、レジスト層27には、凹凸構造27aが設けられる。次いで、レジスト層27の表面をエッチングする。エッチングは、表面の凹凸形状に沿って、表面から徐々に層を削る方法を採用することができる。エッチングは、ウェット法、ドライ法のいずれでもよい。レジスト層27のエッチングによってレジスト層27がなくなった部分では、保護層10がエッチングされていく。これにより、レジスト層27と保護層10とがエッチングされる。そしてこのとき、レジスト層27の凹凸によって、保護層10のエッチング量が場所によって変化する。そのため、図20Dで示すように、凹凸形状が保護層10に付与される。このようにして、レジスト層27の凹凸の形状が、保護層10に転写される。レジスト層27は、残存する場合には、洗浄などで除去されてよい。最後に、保護層10(低屈折率層21)の上に高屈折率層(第一層)22を形成する(図19参照)。高屈折率層22は、塗布などで形成され得る。これにより、基材S10が製造される。上述したように、高屈折率層22は、保護層10の上に形成するため、材料及びプロセスの選択性が拡大し、形成が容易になる。
図21は、発光装置の一例を示す斜視図である。発光装置100が開示される。発光装置100は、有機EL素子1と、配線101を備えている。発光装置100は、筐体102と、プラグ103とを備えている。発光装置100としては、パネル、照明、車載用点灯具、ディスプレイ、サイネージ、建材組み込み照明が例示される。図21は、照明装置の例である。上記の有機EL素子1は、照明装置に適用することができる。この図では、複数(4つ)の有機EL素子1が面状に配設されている。発光装置100は、1つの有機EL素子1を有するものであってもよい。有機EL素子1は、筐体102に収容されている。プラグ103及び配線101を通して電気が供給されて有機EL素子1が発光し、発光装置100から光が出射する。有機EL素子1の光は白色であり得る。その場合、白色発光の発光装置100が得られる。