JPWO2016039091A1 - X線発生装置及びx線分析装置 - Google Patents

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Abstract

電子を発生する陰極(16)に対向する対陰極(17)と、複数のX線発生帯(27A〜27E)と、陰極(16)及び対陰極(17)を収容したケーシング(25)と、対陰極(17)を支持する対陰極支持体(32)と、対陰極支持体(32)をケーシング(25)に対して進退移動させるエアシリンダ(41a)と、対陰極支持体(32)がケーシング(25)に近付く方向(J)へ移動するときに対陰極支持体(32)の動きを停止させるストッパ装置(44a)とを有するX線発生装置である。ストッパ装置(44a)は、回転(L)によって対陰極支持体(32)とケーシング(25)との間(領域R)に出入りする部分を備えた回転板(68)と、これを駆動するモータ(69)と、回転板(68)の周辺部分に設けられていて互いに高さが異なる複数のストップ部材(73a〜73e)とを有する。

Description

本発明は、複数のX線発生帯を備えた対陰極を有するX線発生装置に関する。また、本発明は、そのX線発生装置を用いたX線分析装置に関する。
X線回折装置、蛍光X線装置、X線小角散乱装置等といったX線分析装置においては、X線発生装置から発生するX線が分析対象である試料に照射される。一般のX線発生装置では、陰極から発生した電子を対陰極の表面に衝突させることにより、その対陰極の表面からX線を発生させている。電子が衝突する領域、すなわちX線が発生する領域は、通常、X線焦点と呼ばれている。
対陰極から発生するX線の波長は、当該対陰極におけるX線焦点に対応する領域の材質によって決められる。この対陰極の材質としては、Cu(銅)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、Co(コバルト)等が知られている。対陰極の材質は行おうとしている分析の種類に応じて適宜に選択される。例えば、X線回折装置によってタンパク質の構造解析を行う場合には、それら複数の材料から選択される複数の材料が用いられる。
従来、特許文献1によれば、その図1において、対陰極を支持する対陰極ハウジングを空気の吸引による負圧によって移動させ、この移動により、対陰極上の2色のうちの1色のX線発生帯を陰極に対向する位置に選択的に配置させるという構成が開示されている。
この従来装置においては、対陰極を収容したケーシングの壁面とケーシングから延びた突出部材の壁面との2つの壁面によって空間を形成し、その空間内に対陰極ハウジングから延びるフランジを配置している。そして、対陰極ハウジングのフランジがケーシングの壁面に突き当たったときに1つのX線発生帯と陰極とが対向するようにし、対陰極ハウジングのフランジが突出部材の壁面に突き当たったときに他の1つのX線発生帯と陰極とが対向するようにしている。
つまり、特許文献1のX線発生装置においては、ケーシングの壁面及び突出部材の壁面を対陰極のためのストッパとして用いて、2つのX線発生帯のそれぞれを陰極に対向する位置に配置することにしている。しかしながら、この方法では、3つ以上のX線発生帯を備えた対陰極に関してそれらのX線発生帯のいずれか1つを陰極に対向する位置に静止させることができないという問題がある。
なお、特許文献1の図8によれば、3つ以上のX線発生帯を備えた対陰極のためのストッパ装置として、止めボルトの先端を対陰極ハウジングのフランジに当接させることによって対陰極の位置を静止させるという方法が開示されている。この方法によれば、止めボルトのねじ込み量を調節して止めボルトの先端の位置を変化させることにより、対陰極を止める位置を変化させることができるようになっている。
特開2008−269933
しかしながら、特許文献1に開示された対陰極のX線発生帯の位置調整方法においては、止めネジを手動によってねじ込むので、複数のX線発生帯のうちの1つを選択して陰極に対向する位置に配置させるという作業を自動で、かつ高精度に行うことができないという問題があった。
本発明は、従来装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、対陰極上に備えられた3つ以上のX線発生帯のうちの1つを陰極に対向する所定の位置に静止させることを、自動的に且つ細かく高精度に行うことができるX線発生装置及びX線分析装置を提供することを目的とする。
本発明に係るX線発生装置は、電子を発生する陰極と、該陰極に対向して設けられると共に互いに隣接して並んだ複数のX線発生帯を備えた対陰極と、前記陰極及び前記対陰極を内部に収容すると共に前記陰極と一体であるケーシングと、前記対陰極を支持する対陰極支持体と、前記対陰極支持体と前記ケーシングとが相対的に進退移動するように前記対陰極支持体を駆動する駆動手段と、前記対陰極支持体と前記ケーシングとが互いに近付く方向へ移動するとき、前記対陰極支持体の動きを停止させるストッパ手段とを有しており、前記ストッパ手段は、前記対陰極支持体と前記ケーシングとの間に出入りする部分を備えた移動台と、当該移動台を駆動する移動台駆動手段と、前記移動台の出入りする部分に設けられており互いに高さが異なっている複数のストップ部材とを有することを特徴とする。
このX線発生装置によれば、高さが異なっている複数のストップ部材をモータ等といった移動台駆動手段によって移動させることにより、対陰極の複数のX線発生帯の位置を変化させることにしたので、X線発生帯の位置設定を手動でなく自動的に行うことができるようになった。
さらに、従来は、3つ以上のX線発生帯の位置を調整するためのストッパとして止めボルトの先端面を用い、その止めボルトのねじ込み量を変えることによって止めボルトの先端面の位置を変化させることにした。この方法では、X線発生帯の位置を自動で細かく高精度に調整することができなかった。
これに対し本実施形態では、複数の高さの異なったストップ部材のいずれか1つを選択的に対陰極支持体とケーシングとの間に介在させることで、対陰極支持体によって支持された対陰極とケーシングによって支持された陰極との相対的な位置を調整するようにしたので、対陰極上のX線発生帯と陰極との相対的な位置を細かく且つ高精度に位置決めできるようになった。
本発明に係るX線発生装置において、前記複数のストップ部材の少なくとも1つは、前記対陰極支持体と前記ケーシングとの間に入った状態で、前記ケーシングに近付き又は遠ざかる方向へ移動できるように前記移動台に設けることができる。この構成により、ストップ部材を支持している移動台に不要な荷重が掛かることを防止できる。
上記構成において、前記ストップ部材は弾性部材(例えば圧縮バネ)によって付勢されることがある。この構成により、移動台に移動可能に設けられたストップ部材を弾性部材の弾性力によって自然状態において常に一定の位置に配置することができる。
上記構成において、前記ストップ部材は前記移動台の厚さよりも長い長さを有することができ、当該ストップ部材は前記移動台を貫通して設けることができ、前記ストップ部材の一端は前記ケーシング及び前記対陰極支持体の一方に当接可能であり、前記ストップ部材の他端は前記ケーシング及び前記対陰極支持体の他方に当接可能である。
本発明に係るX線発生装置において、前記移動台は回転板とすることができ、前記出入りする部分は前記回転板の周辺部分とすることができ、前記複数のストップ部材は前記回転板の周辺部分の異なる位置に設けられることがある。この構成によれば、本発明のストッパ手段を簡単に実現できる。
移動台を回転板とした上記のX線発生装置においては、前記移動台駆動手段はモータとすることができ、当該モータは、本体部分と、当該本体部分の内部から外部へ延出している出力軸とを有することができ、前記回転板は前記出力軸に取り付けることができ、前記モータの本体部分は前記対陰極支持体又は前記ケーシングに固定されることがある。
本発明に係るX線発生装置において、前記ストッパ手段は前記対陰極支持体上又は前記ケーシング上に複数設けることができる。こうすれば、対陰極の位置決めを高精度で行うことができる。
複数のストッパ手段を用いることにした本発明に係るX線発生装置は、前記対陰極支持体と前記ケーシングとの間を気密に仕切るシール部材を有することができる。そして、このX線発生装置において、前記複数のストッパ手段は、前記シール部材の中心軸線に直交する面内において当該中心軸線に対して点対称又は当該中心軸線を通る線に対して線対称に配置することができる。こうすれば、対陰極の位置決めの精度をさらに一層高めることができる。
複数のストッパ手段を用いることにした本発明に係るX線発生装置において、前記複数のストッパ手段は、シール部材の中心軸線に対して互いに等間隔であって且つ当該中心軸線の周りに互いに等角度間隔で配置することができる。こうすれば、対陰極の位置決めの精度をさらに一層高めることができる。
本発明に係るX線発生装置においては、前記対陰極支持体と前記ケーシングとの間をベローズによって気密に仕切ることができる。すなわち、前記シール部材はベローズによって形成できる。そして、前記ストッパ手段は前記ベローズの外側に設けることができる。この構成によれば、X線発生装置を容易に製造することができる。
本発明に係るX線発生装置において、前記対陰極支持体は、前記対陰極を支持すると共に当該対陰極の外部へ延在している対陰極ハウジングと、当該対陰極ハウジングに固定されると共に当該対陰極ハウジングの延在方向を横切る方向へ延在している支持用プレートとを有することができる。そして、前記駆動手段及び前記ストッパ手段は前記支持用プレート上に設置することができる。この構成により、対陰極を支持するための構造を簡単に形成でき、しかも駆動手段及びストッパ手段を含めたX線発生装置を小型にまとめることができる。
次に、本発明に係るX線分析装置は、以上に記載した構成のX線発生装置と、当該X線発生装置から発生したX線を用いるX線光学系とを有することを特徴とする。X線光学系は、例えば、発散スリット、散乱スリット、受光スリット、X線検出器13等を組み合わせて成る光学系である。また、これらのX線光学要素以外の要素をX線光学系の中に含ませることもできる。
本発明に係るX線発生装置によれば、高さが異なっている複数のストップ部材をモータ等といった移動台駆動手段によって移動させることにより、複数のストップ部材のうちの1つを選択して使用することにした。この結果、X線発生帯の位置決めを手動でなく自動的に行うことができるようになった。
また、従来は、3つ以上のX線発生帯の位置を調整するためのストッパとして止めボルトの先端面を用い、その止めボルトのねじ込み量を変えることによって止めボルトの先端面の位置を変化させることにした。この方法では、X線発生帯の位置を自動的に細かく高精度に調整することができなかった。
これに対し本発明のX線発生装置によれば、高さの異なった複数のストップ部材のいずれか1つを選択的に対陰極支持体とケーシングとの間に介在させることにしたので、対陰極上の多数の異なった位置にある複数のX線発生帯を陰極に対して細かく且つ高精度に位置決めできるようになった。
本発明に係るX線分析装置の一実施形態を示す正面図である。 図1の矢印Aに従って本発明に係るX線発生装置の一実施形態を示す正面図である。 図2のB−B線に従ってX線発生装置の縦断面構造を示す断面図である。 図2のC−C線に従ってX線発生装置の平面断面構造を示す断面図である。 図2のG−G線に従ってX線発生装置の主要部分であるアシストユニットの縦断面構造を示す断面図である。 図2のK−K線に従ってX線発生装置の他の主要部分であるストッパ装置の縦断面構造を示す断面図である。 図6のM−M線に従ってストッパ装置の平面構造を示す平面図である。 図7のN−N線に従ったストッパ装置の側面図である。 図8に示すストッパ装置がストッパ機能を果たしている状態を示す側面図である。 本発明に係るX線分析装置の他の実施形態を示す断面図である。
以下、本発明に係るX線発生装置及びX線分析装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
(X線回折装置)
図1は、本発明に係るX線分析装置の一実施形態であるX線回折装置1の正面図を示している。図の紙面面内方向が鉛直方向であり、紙面を貫通する方向が水平方向である。このX線回折装置1は、X線発生装置2と、ゴニオメータ3とを有している。ゴニオメータ3はθ回転台4と、2θ回転台5と、2θ回転台5から延びる検出器アーム6とを有している。
θ回転台4は自身の中心軸線ωを中心として回転可能である。中心軸線ωは図1の紙面を貫通する方向へ延びている。また、2θ回転台5も同じ軸線ωを中心として回転可能である。X線発生装置2とゴニオメータ3との間には発散スリット7が設けられている。この発散スリット7は、X線発生装置2から出たX線の発散を規制して、そのX線を試料Sへ照射させるスリットである。
θ回転台4の上に試料ホルダ10が取り外し可能に装着されており、その試料ホルダ10に測定対象である試料Sが収容されている。例えば、試料ホルダ10に設けられた凹部内又は貫通開口内に試料Sが詰め込まれている。検出器アーム6の上には、散乱スリット11と、受光スリット12と、X線検出手段としての2次元X線検出器13が設けられている。散乱スリット11は、分析のために不要である散乱線がX線検出器13へ入るのを防止するスリットである。受光スリット12は、試料Sから出た2次X線、例えば回折X線を通過させて他の不要なX線は阻止するスリットである。
2次元X線検出器13は2次元センサ14を有している。2次元センサ14は2次元領域内(すなわち平面内)で位置分解能を持っているX線センサである。位置分解能とは、X線強度を位置別に検出する機能である。この2次元センサ14は、例えば複数のフォトンカウンティング型ピクセルを2次元的(すなわち平面的)に配置したX線検出器である。個々のフォトンカウンティング型ピクセルは受光したX線の強度に対応した大きさの電気信号を出力する機能を持っている。このため、2次元センサ14は、X線を複数のピクセルによって平面的に同時に受光して、個々のピクセルから独立して電気信号を出力する。
2次元センサ14は、また、2次元CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)センサによって構成することもできる。2次元CCDセンサは、X線を受光するための個々のピクセルをCCDによって形成して成る2次元センサである。
測定の種類によっては、2次元X線検出器13に代えて、1次元X線検出器を用いることができる。1次元X線検出器は、1次元領域内(すなわち直線領域内)で位置分解能を持っているX線検出器である。この1次元X線検出器は、例えば、PSPC(Position Sensitive Proportional Counter)や、1次元CCDセンサを用いたX線検出器や、複数のフォトンカウンティング型ピクセルを1次元的に配置したX線検出器、等である。
測定の種類によっては、2次元X線検出器13に代えて、0(ゼロ)次元X線検出器を用いることができる。0(ゼロ)次元X線検出器は、X線強度に関する位置分解能を持たないX線検出器である。この0(ゼロ)次元X線検出器は、例えば、比例計数管(PC:Proportional Counter)を用いたX線検出器や、シンチレーション計数管(SC:Scintillation Counter)を用いたX線検出器、等である。
X線発生装置2は一定の位置に固定配置されている。このX線発生装置2は、通電によって熱電子を放出する陰極16と、陰極16に対向して配置された回転対陰極17とを有している。陰極16から放出された電子は回転対陰極17の外周面に高速で衝突する。電子が衝突した領域がX線焦点Fであり、このX線焦点FからX線が発生する。X線焦点Fの平面形状は、例えば0.2mm×2mmである。回転対陰極17から発生したX線R1は発散スリット7によって発散角度を規制されて試料Sへ入射する。
θ回転台4はθ回転駆動装置20によって駆動されてω軸線を中心として回転する。この回転は、所定のステップ角度ごとの間欠回転のこともあるし、所定の角速度の連続回転のこともある。θ回転台4のこの回転は、試料SへのX線R1の入射角度θを変化させるための回転であり、一般にはθ回転と呼ばれている。
2θ回転台5は2θ回転駆動装置21によって駆動されてω軸線を中心として回転する。この回転は、一般に2θ回転と呼ばれている。この2θ回転は、入射角度θで試料SへX線が入射したときにその試料Sから2次X線(例えば回折X線)R2が発生するときには、その2次X線R2をX線検出器13によって受光できるようにするための回転である。
θ回転駆動装置20及び2θ回転駆動装置21は任意の回転駆動装置によって構成される。このような回転駆動装置は、例えば、回転動力源及び動力伝達装置によって構成される。回転動力源は、例えば、回転角度を制御可能なモータ、例えばサーボモータ、ステッピングモータによって構成される。動力伝達装置は、例えば、回転動力源の出力軸に固定されたウオームと、このウオームに噛み合うと共にθ回転台4の中心軸や2θ回転台5の中心軸に固定されたウオームホイールとによって構成される。
θ回転台4及びそれに装着された試料Sがθ回転し、2θ回転台5及びそれに支持されたX線検出器13が2θ回転するとき、X線焦点Fは軸線ωを中心とするゴニオメータ円Cg上に固定配置され、受光スリット12のX線集光点はゴニオメータ円Cg上を移動する。また、試料Sのθ回転及びX線検出器13の2θ回転の際、X線焦点F、ω軸線、及び受光スリット12のX線集光点は集中円Cf上に存在する。ゴニオメータ円Cgは半径一定の仮想円であり、集中円Cfはθ角度及び2θ角度の変化に従って半径が変化する仮想円である。
本実施形態では、発散スリット7、試料S、散乱スリット11、受光スリット12、及びX線検出器13によってX線光学系が構成されている。なお、X線光学系には必要に応じて他のX線光学要素を含めることができる。そのようなX線光学要素は、例えば、コリメータ、ソーラスリット、モノクロメータ、等である。
以下、上記構成より成るX線回折装置1の動作を説明する。
まず、必要に応じて、X線焦点FからX線検出器13に至るX線光路上に存在する各種のX線光学要素をX線光軸上に正確に位置合わせする。すなわち、光軸調整を行う。次に、試料Sに対するX線の入射角度θ及びX線検出器13の回折角度2θを所望の初期位置(ゼロ位置)にセットする。
次に、陰極16を通電によって加熱して、該陰極16から熱電子を発生される。この電子は通常はウエネルト(図示せず)によって加えられる電界によって進行方向を規制された上で回転対陰極17の表面に高速で衝突してX線焦点Fを形成する。そして、X線焦点Fから回転対陰極17の材質に応じた波長のX線が放出される。陰極16への通電によって該陰極16から回転対陰極17へ流れる電流は一般に管電流と呼ばれている。また、陰極16から放出されて回転対陰極17に衝突する電子を加速するために、陰極16と回転対陰極17との間に所定の大きさの電圧が印加される。この電圧は一般に管電圧と呼ばれている。本実施形態では、管電圧及び管電流をそれぞれ30〜60kV及び10〜120mAに設定する。回転対陰極材質については後述する。
X線発生装置2から放射されて発散するX線R1には、種々の波長のX線を含む連続X線及び特定波長の特性X線が含まれている。これらのX線から所望の特性X線を選択したい場合には、X線発生装置2から試料Sへ至るX線光路上に入射側モノクロメータ(いわゆるインシデントモノクロメータ)が設けられる。X線R1は発散スリット7によって発散を規制されて試料Sへ照射される。試料Sがθ回転しX線検出器13が2θ回転する間、試料Sへ入射するX線R1が試料S内の結晶格子面に対して所定の回折条件、すなわちブラッグの回折角度を満足する角度状態になると、試料Sから2次X線、例えば回折線R2が回折角度2θで発生する。この回折線R2は散乱スリット11及び受光スリット12を通過してX線検出器13に受光される。X線検出器13は個々のピクセルにおいて受光したX線のカウント数に応じた電気信号を出力し、この出力信号に基づいてX線強度が演算される。
上記のX線強度の演算処理は入射X線角度θ及び回折角度2θの各角度に対して行われ、その結果、回折角度2θの各角度位置におけるX線強度I(2θ)が求められる。横軸に回折角度2θをとり、縦軸にX線強度Iをとった平面座標上に上記のX線強度I(2θ)をプロットすれば周知の回折線図形が求められる。そして、回折線図形上に現れたX線強度ピーク波形の発生角度(2θ)及び発生強度(I)を観察することにより、試料Sの内部構造を分析できる。
(X線発生装置)
以下、X線発生装置2について詳細に説明する。
図2は図1の矢印Aに従ってX線発生装置2を示している。図3は図2のB−B線に従ってX線発生装置2の縦断面構造を示している。図4は図2のC−C線に従ってX線発生装置2の平面断面構造を示している。図2及び図4において、X線発生装置2は、既述の陰極16と、既述の回転対陰極17と、その回転対陰極17を含んだ対陰極ユニット24と、シール部材としてのベローズ36とを有している。
本実施形態ではベローズ36として溶接ベローズを用いている。溶接ベローズは、薄い板厚の複数の輪状の金属板の外周及び内周を溶接によって順々につなぎ合わせて蛇腹形状にしたものである。ベローズ36は、矢印A方向から見て円形状であり、全体的には円筒形状である。対陰極17の外周表面には複数、本実施形態では5つのX線発生帯27A,27B,27c,27D,27Eが互いに隣接して並べて設けられている。ベローズ36の円筒形状の中心軸線X1はX線発生帯27A〜27Eが並べられた方向(図4の上下方向)に延びている。
ベローズ36の一方の端部(図4の上側の端部)は例えば溶接によって第1のフランジ36aに固着されている。ベローズ36の他方の端部(図4の下側の端部)は例えば溶接によって第2のフランジ36bに固着されている。図2に示すように、第1のフランジ36aの平面形状は円形である。
なお、第1のフランジ36a及び第2のフランジ36bの平面形状及び厚さは、必要に応じて、図示した形状以外の任意の形状とすることができる。また、ベローズ36は、場合によっては、溶接ベローズに代えて成形ベローズ、あるいはその他の構成のベローズによって形成することもできる。成形ベローズは溶接ではなく成形加工によって形成されたベローズである。
図3及び図4において、ベローズ36の第1のフランジ36aは、金属部材である基体29にボルトその他の締結手段によって固着されている。基体29と第1のフランジ36aとの間には気密保持用のO(オー)リング(すなわち弾性リング)23が介在している。基体29と第1のフランジ36aとによってケーシング25が形成されている。ケーシング25は対陰極17及び陰極16を収容するための内部空間Hを有している。基体29(従ってケーシング25)と陰極16は一体になっている。
ケーシング25の基体29の一部分に回転対陰極17で発生したX線R1を取り出すためのX線窓28が設けられている。X線窓28はX線を通過させることができる材料、例えばBe(ベリリウム)によって形成されている。
回転対陰極ユニット24は、回転対陰極17を支持すると共に回転対陰極17の外部へ延在する対陰極ハウジング26を有している。対陰極ハウジング26は回転対陰極17を軸線X0を中心として矢印Dのように回転可能に支持している。基体29及び対陰極ハウジング26は、例えば銅あるいは銅合金によって形成されている。対陰極ハウジング26は矢印A方向から見て円筒形状に形成されている。基体29は矢印A方向から見て円筒形状に形成されている。基体29は角筒形状であっても良い。
回転対陰極17は、熱伝導率の高い材料(例えばCu(銅)又は銅合金)によって形成された基部材の外周面に複数種類(本実施形態では5種類)のX線発生帯27A,27B,27C,27D,27Eを並置して設けることによって形成されている。回転対陰極17は図4において上側が閉じた平面であるカップ状に形成されている。X線発生帯27A,27B,27C,27D,27Eは回転対陰極17の中心軸線X0の延びる方向(すなわち回転対陰極ユニット24の軸方向)に並べてリング状(すなわち環状)且つ帯状に設けられている。X線発生帯27A,27B,27C,27D,27Eは互いに異なる材料によって形成されており、それぞれが、例えばCu、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、Co(コバルト)、その他の金属の中から選択される1つの材料によって形成されている。
Mo、Cr、Coの各材料は、例えばイオンプレーティング、メッキ、焼き嵌め、その他適宜の成膜手法によってCuの基部材上に形成されている。各X線発生帯27A,27B,27C,27D,27Eの軸方向の幅は互いに等しい長さに設定されている。具体的には、X線焦点Fの大きさが0.2mm×2mmであれば、各X線発生帯27A,27B,27C,27D,27Eの軸方向の幅は約3mmに設定される。
対陰極ハウジング26は概ね軸線X0を中心とする円筒形状に形成されている。対陰極ハウジング26の内部には、図3に示すように、回転対陰極17と一体である回転軸30と、回転軸30を回転駆動する回転駆動装置であるモータ40と、回転軸30の周囲に設けられた磁気シール装置38と、回転対陰極17を冷却するための水を流す通水路31と、が設けられている。回転対陰極17はモータ40によって駆動されて回転する。回転対陰極17の回転数は、例えば6,000rpmである。
磁気シール装置38は、高真空状態であるケーシング25の内部空間Hと、大気圧に通じている対陰極ハウジング26の内部空間との圧力差を維持するための軸封装置である。磁気シール装置38は、回転軸30の外周面上に磁力によって付着している磁性流体を有している。この磁性流体により、磁気シール装置38の一方の側の高真空と他方の側の大気圧とが維持されている。また、磁性流体は回転軸30に大きな負荷トルクを与えないので、磁気シール装置38は回転軸30の回転を妨げない。
通水路31は、対陰極ハウジング26の後端(図3における左端)に設けられた給水口46と排水口47とにつながっている。給水口46から対陰極ハウジング26内へ導入された冷却水は通水路31の往路部を通って回転対陰極17の内部へ送り込まれ、回転対陰極17を内側から冷却し、その後、通水路31の復路部を通って排水口47から外部へ排出される。
回転対陰極ユニット24の内部構造の概略は上記の通りであるが、より具体的には、例えば特開2008−269933号公報に開示されているような回転対陰極ユニットの内部構造を採用することができる。
図3及び図4において、ベローズ36の第2のフランジ36bは、対陰極ハウジング26に設けられたフランジ35に固定されている。ベローズ36はケーシング25の内部空間Hを大気圧に対して気密に保持している。この内部空間Hは図4に示すように排気装置34につながっている。排気装置34はこの内部空間H内の空気を排気してこの内部空間H内を高真空(以下、単に真空状態ということがある)に維持する。
排気装置34は、例えば、ロータリーポンプとターボ分子ポンプとの組み合わせによって構成できる。ロータリーポンプは内部空間Hを低真空まで粗く減圧するポンプである。ターボ分子ポンプは、ロータリーポンプによってある程度まで減圧された雰囲気をさらに高真空状態まで排気するポンプである。このターボ分子ポンプの働きにより、回転対陰極17及び陰極16の周囲を10−3Pa以下まで高真空にできる。なお、ケーシング25の内部を高真空にできるのであれば、ターボ分子ポンプ以外の高真空用ポンプとロータリーポンプ以外の補助ポンプとの組合せを採用することもできる。
本実施形態において、ケーシング25は図1のX線回折装置1の適所に固定されている。図4においてベローズ36は自身の中心軸線X1に沿って伸縮自在な部材である。本実施形態では、回転対陰極17の回転中心軸線X0は、ベローズ36の中心軸線X1からずれている。なお、当然ながら、対陰極ハウジング26の中心軸線X0をベローズ36の中心軸線X1に一致させても良い。
図4においてケーシング25と対陰極ハウジング26との間にベローズ36を設けたことにより、第2のフランジ36bがケーシング25に対して進退移動する場合でも、ベローズ36の伸縮移動の働きにより、対陰極17の周りの内部空間Hは気密状態を維持できる。本実施形態では、対陰極ハウジング26と第2のフランジ36bとによって、対陰極17を支持するための対陰極支持体32が構成されている。
図2において、対陰極17から遠い側(図2の手前側)の第2のフランジ36bの表面36cに、複数(本実施形態では2個)の駆動手段としてのエアシリンダ41a,41bと、複数(本実施形態では2個)の案内手段としてのリニアガイド42a,42bと、複数(本実施形態では4個)の弾性力付与手段としてのアシストユニット43a,43b,43c,43dと、複数(本実施形態では4個)のストッパ手段としてのストッパ装置44a,44b,44c,44dとが設けられている。このように、ベローズ36の第2のフランジ36bはエアシリンダ41a,41b、リニアガイド42a,42b、アシストユニット43a,43b,43c,43d及びストッパ装置44a,44b,44c,44dの各機器を支持するための支持用プレートとして機能している。これ以降、第2のフランジ36bを支持用プレート36bと言うことがある。
図4において、リニアガイド42a,42bは、アリ形ユニット55とアリ溝ユニット56とを有している。アリ形ユニット55は、支持用プレート36bの表面36cに固定された支柱57aと、支柱57aの側面に設けられた被ガイド部材であるアリ形58とを有している。支柱57a及びアリ形58はベローズ36の中心軸線X1に沿った方向へ延びている。アリ溝ユニット56は、ケーシング25を構成している第1のフランジ36aに固定された支柱57bと、支柱57bの側面に設けられたガイド部材であるアリ溝部材59とを有している。支柱57b及びアリ溝部材59もベローズ36の中心軸線X1に沿った方向へ延びている。
アリ形58はアリ溝部材59のアリ溝に嵌合している。アリ形とアリ溝との嵌合は、長手方向には摺動自在(すなわち滑り移動自在)であり、長手方向と直角の方向には嵌合が外れないような嵌合である。対陰極17を支持している対陰極支持体32は、リニアガイド42a,42bによって案内されて矢印E及び矢印Jで示すようにケーシング25に対して平行移動する。このようなリニアガイド42a,42bの働きにより、対陰極支持体32は横揺れしないように且つ傾かないように案内される。これにより、対陰極17は、ケーシング25の内部空間H内で横揺れすることなく且つ傾くことなく平行移動できる。
図2に示したエアシリンダ41a,41bは図3に示すように、シリンダ本体48と、出力ロッド49とを有している。シリンダ本体48は対陰極17と反対側の支持用プレート36bの表面36c上に固定されている。出力ロッド49の先端はボルト50によって第1のフランジ36a、すなわちケーシング25に固定されている。
シリンダ本体48には第1のエア接続口51と第2のエア接続口52とが設けられている。これらのエア接続口は図示しない空気供給源につながっている。第1のエア接続口51に空気が供給されると出力ロッド49が伸長移動する。この伸長移動により支持用プレート36bが矢印Eに示すようにケーシング25から離れる方向へ平行移動する。第2のエア接続口52に空気が供給されると出力ロッド49が収縮移動する。この収縮移動により支持用プレート36bが矢印Jに示すようにケーシング25へ向かう方向へ平行移動する。支持用プレート36bが矢印E方向又は矢印J方向へ平行移動するとき、それと一体である対陰極17が同じ方向へ平行移動する。この対陰極17の平行移動により、対陰極17上に設けられているX線発生帯27A,27B,27C,27D,27Eのいずれか1つを選択的に陰極16に対向する位置へ持ち運ぶことができる。
図5は、図2のG−G線に従ってアシストユニット43aの縦方向の断面構造を示している。他のアシストユニット43b,43c,43dも同じ構造である。アシストユニット43aは、ベローズ36の第2のフランジである支持用プレート36bに開けられた貫通孔62と、一端がベローズ36の第1のフランジ36a(ケーシング25を構成している)に当接している圧縮バネ63と、一端部が支持用プレート36bの貫通孔62に嵌め込まれたバネカバー64とを有している。圧縮バネ63は支持用プレート36bの貫通孔62を貫通している。
支持用プレート36bの貫通孔62に嵌め込まれているバネカバー64の端部は開口となっており、その反対側の端部は閉じられている。バネカバー64は閉じられた端部によって圧縮バネ63を押込んでいる。圧縮バネ63は押込まれた長さに応じたバネ力(すなわち弾性力)を対陰極支持体32に付与している。こうして対陰極支持体32は圧縮バネ63によって矢印E方向(すなわち内部空間Hから離れる方向)へ付勢されている。
図4において、ケーシング25の内部空間Hは排気装置34によって排気されて真空状態に設定されている。このため、対陰極ハウジング26と支持用プレート36bとから成る対陰極支持体32は大気圧によって押されて矢印J方向(すなわち内部空間Hへ向かう方向)へ押される傾向にある。図5の圧縮バネ63による対陰極支持体32への矢印E方向への付勢力は、真空吸引される対陰極支持体32を反対方向へ押し返してバランスをとるための力として作用している。
図6は、図2のK−K線に従ってストッパ装置44bの縦方向の断面構造を示している。他のストッパ装置44a,44c,44dも同じ構造である。図6において、ストッパ装置44bは、移動台としての回転板68と、移動台駆動手段としての電動モータ69とを有している。電動モータ(以下単にモータと呼ぶことがある)69は、モータ本体70と出力軸71とを有している。モータ本体70は支持用プレート36bの内部空間Hと反対側の表面36cに固定されている。出力軸71は支持用プレート36bに設けた貫通孔72を通って支持用プレート36bの反対側へ張り出している。回転板68は、支持用プレート36bの反対側へ張り出した出力軸71に固定されている。モータ69は、出力軸71の回転角度を制御可能なモータ、例えばサーボモータ、パルスモータである。回転板68はモータ69によって駆動されて出力軸71を中心として矢印Lで示すように回転する。
図7は、図6のM−M線に従って、ストッパ装置44bの先端部分の平面的な構成を示している。図7に示すように、モータ69の出力軸71に取り付けられた回転板68は円形状に形成されている。モータ69が作動して出力軸71が回転すると、回転板68は矢印Lで示すように回転する。矢印Lと反対方向の回転の場合もある。回転板68がこのように回転すると、回転板68の環状の周辺部分はケーシング25と、モータ69を支持している支持用プレート36bとによって挟まれる領域Rに出たり入ったりする。
回転板68の環状の周辺部分(すなわち、ケーシング25と支持用プレート36bとの間に出入りする部分)には、複数のストップ部材73a,73b,73c,73d,73eが設けられている。本実施形態ではストップ部材の数は5個である。図8は、図7のN−N線に従ってストッパ装置44bの側面の構造を示している。図8に示すように、5個のストップ部材73a,73b,73c,73d,73eのそれぞれは、それらの軸部において回転板68に設けた貫通孔を貫通している。個々のストップ部材は回転板68に対して軸方向に摺動自在である。
個々のストップ部材73a,73b,73c,73d,73eの軸部の先端(図8の上端)に止め輪74が取り付けられている。また、個々のストップ部材73a,73b,73c,73d,73eの頭部と回転板68との間に圧縮バネ75が設けられている。この構成により、各ストップ部材73a,73b,73c,73d,73eは自然状態において圧縮バ75のバネ力(すなわち弾性力)によって、矢印Jで示す方向(すなわち、対陰極17(図6参照)へ向かう方向へ付勢されている。
回転板68のケーシング25側の表面からの各ストップ部材73a,73b,73c,73d,73eの高さP1,P2,P3,P4,P5は互いに異なっている。具体的には、
P1<P2<P3<P4<P5
となっている。これらの高さの違いは、図6の個々のX線発生帯27A,27B,27C,27D,27Eの軸X0の延在方向の位置に対応している。
図6に示す状態は、図3のエアシリンダ41a及び41bの出力ロッド49が最も長く伸び出たときの状態である。このときには支持用プレート36bとケーシング25との間の間隔Qが最も開いた状態となる。このときの間隔Qは、図8に示すように、ケーシング25と支持用プレート36bとの間に最も高さの高いストップ部材73eが入った場合でも、ストップ部材73eの先端とケーシング25の表面との間に隙間ができ、同時に、ストップ部材73eの他の先端と支持用プレート36bの表面との間にも隙間ができる状態である。このように支持用プレート36bとケーシング25との間の間隔Qが最も開いた状態にある場合は、図6において回転板68が矢印Lのように回転したときに、いずれのストップ部材73a,73b,73c,73d,73eもケーシング25に接触しないで、すなわち当たらないで、ケーシング25と支持用プレート36bとによって挟まれる領域Rに入ることができる。
本実施形態のX線発生装置2は以上のように構成されているので、図6において、例えば、X線発生帯27Eを選択する場合は、まず初めに、間隔Qが最も開いた状態でモータ69を作動して出力軸71を回転させ、ストップ部材73eを領域Rの中央に配置する。その時、その他のストップ部材は、領域Rの外側に配置されている。そして、図3においてエアシリンダ41a及び41bの出力ロッド49が収縮移動する。これにより、支持用プレート36bが矢印Jで示すようにケーシング25へ向かって平行移動する。このときには、図8においてストップ部材73eの頭部の先端(図8の下側の先端)が、まず初めにケーシング25に当接しさらに押される。
次に、圧縮バネ75が圧縮され、最終的に図9に示すようにストップ部材73eの反対側の先端(図9の上側の先端)が支持用プレート36bの表面に突き当たって、支持用プレート36bの矢印J方向への平行移動が止まる。このようにして、ストップ部材73eが支持用プレート36bの移動を止めるための正確な位置決めストッパとして機能する。
X線発生帯27Eに対応してストップ部材73eを選択することに限らず、所望のX線発生帯27A〜27Eに対応してストップ部材73a〜73eを適宜に選択することにより、所望のX線発生帯を所定の位置に正確に精度良く配置することができる。また、ストップ部材73a〜73eが回転板68に対して摺動自在であることにより、回転板68と出力軸71にアキシアル荷重、ラジアル荷重、モーメント荷重が掛からず、ストップ部材73a〜73eの圧縮荷重のみで対陰極17を多数の位置間で位置決めすることができる。
以上のようにして図4において1つのX線発生帯27Eが陰極16に対向している場合、陰極16から電子が放出されると、その電子がX線発生帯27Eに衝突して、X線発生帯27Eを形成している金属に対応した波長のX線がX線発生帯27Eから全方位へ放出される。そして、そのX線の一部がX線窓28から外部へ取り出される。このX線R1が図1においてX線分析測定に利用されることは既述の通りである。
X線分析測定の条件を変更するために、X線発生帯27E以外のX線発生帯からのX線が必要になった場合には、まず、図3においてエアシリンダ41a及びエアシリンダ41bを同時に伸長移動させて、対陰極支持体32(すなわち支持用プレート36b)をケーシング25から最も離れる位置へ退避させる。これにより、図6及び図8に示すように支持用プレート36bとケーシング25との間隔Qが最も開いた状態にセットされる。これにより、ストップ部材73a,73b,73c,73d,73eを支持している回転板68を支持用プレート36bとケーシング25との間で自由に回転させることができる状態になる。
次に、図8のストップ部材73a〜73dのうち、図3のX線発生帯27E以外のX線発生帯であって希望するX線発生帯に対応した高さのストップ部材(73a,73b,73c,73dのいずれか)が、ケーシング25と支持用プレート36bとの間の領域Rの中央に来るように、モータ69によって回転板68を回転させる。その後、図3のエアシリンダ41a,41bを作動してストップ部材によって止められるまで出力軸49を収縮移動させる。この収縮移動により、図6の領域R内に在るストップ部材(73a,73b,73c,73dのいずれか)の高さに対応したX線発生帯(27A,27B,27C,27Dのいずれか)を陰極26に対向する位置に固定状態で配置することができる。
この状態で陰極16から熱電子が放出されると、対向しているX線発生帯(27A,27B,27C,27Dのいずれか)を形成している金属に対応した波長のX線がそのX線発生帯から放出され、その一部が図4のX線窓28から外部へ取り出される。
本実施形態では、図2に示すように、駆動手段としてのエアシリンダ41a,41b、案内手段としてのリニアガイド42a,42b、弾性力付与手段としてのアシストユニット43a〜43d、及びストッパ手段としてのストッパ装置44a〜44dの全ての要素が、1つの部材である支持用プレート36b、すなわちベローズ36の第2のフランジ36bの上にまとめて設けられているので、X線発生装置2の全体の構成が非常に小型にまとまっている。
また、図2において、ベローズ36の第2のフランジである支持用プレート36bの表面36cはベローズ36の中心軸線X1に直交している。そして、2つのエアシリンダ41a及び41bはこの表面36c内の異なった位置に設けられている。さらに、エアシリンダ41a及び41bはベローズ36の中心軸線X1に関して均等に設けられている。さらに、2つのリニアガイド42a及び42bも表面36c内の異なった位置に設けられている。そして、リニアガイド42a及び42bもベローズ36の中心軸線X1に関して均等に設けられている。
さらに、4つのアシストユニット43a〜43dも表面36c内の異なった位置に設けられている。そして、アシストユニット43a〜43dもベローズ36の中心軸線X1に関して均等に設けられている。さらに、4つのストッパ装置44a〜44dも表面36c内の異なった位置に設けられている。そして、ストッパ装置44a〜44dもベローズ36の中心軸線X1に関して均等に設けられている。
本明細書において複数の部材が均等であるとは、それらの部材に等しい力を同じ方向へ付加したときにそれらの力を合成した力である合成力の作用点がシール部材としてのベローズ36の中心軸線X1と略一致することになるような、複数の部材の配置態様のことである。ここで、「略一致」の「略」とは、図3及び図4に示すように対陰極支持体32によって支持された対陰極ユニット24が、大きく傾くことなく実用上支障なく平行移動できる程度に合成力の作用点が中心軸線X1からズレる場合も含む意味である。
具体的には、図2において、2つのエアシリンダ41a及び41bに等しい大きさの力を同じ方向へ付加したとき、その合成力の作用点はベローズ36の中心軸線X1と略一致する。より具体的には、エアシリンダ41aとエアシリンダ41bは、ベローズ36の中心軸線X1に関して点対称の位置関係にある。また、エアシリンダ41aとエアシリンダ41bは、第2のフランジ36bの表面36c内において、ベローズ36の中心軸線X1を通る線C−Cに関して線対称の位置関係にある。また、エアシリンダ41aとエアシリンダ41bは、ベローズ36の中心軸線X1から等距離で且つ角度180°の等間隔に配置されている。
また、2つのリニアガイド42a及び42bに等しい大きさの力を同じ方向へ付加したとき、その合成力の作用点はベローズ36の中心軸線X1と略一致する。具体的には、リニアガイド42aとリニアガイド42bは、ベローズ36の中心軸線X1に関して点対称の位置関係にある。また、リニアガイド42aとリニアガイド42bは、第2のフランジ36bの表面36c内において、ベローズ36の中心軸線X1を通る線B−Bに関して線対称の位置関係にある。また、リニアガイド42aとリニアガイド42bは、ベローズ36の中心軸線X1から等距離で且つ角度180°の等間隔に配置されている。
また、4つのアシストユニット43a〜43dは中心軸線X1を中心とする仮想の長方形Lの4つの角部に配置されている。このため、アシストユニット43a〜43dに等しい大きさの力を同じ方向へ付加したとき、その合成力の作用点はベローズ36の中心軸線X1と略一致する。具体的には、アシストユニット43a〜43dは、ベローズ36の中心軸線X1に関して点対称の位置関係にある。また、アシストユニット43a〜43dは、第2のフランジ36bの表面36c内において、ベローズ36の中心軸線X1を通る線B−B及び線C−Cのそれぞれの線に関して線対称の位置関係にある。
さらに、4つのストッパ装置44a〜44dに等しい大きさの力を同じ方向へ付加したとき、その合成力の作用点はベローズ36の中心軸線X1と略一致する。具体的には、ストッパ装置44a〜44dは、ベローズ36の中心軸線X1に関して点対称の位置関係にある。また、ストッパ装置44a〜44dは、第2のフランジ36bの表面36c内において、ベローズ36の中心軸線X1を通る線B−B及び線C−Cのそれぞれに関して線対称の位置関係にある。また、ストッパ装置44a〜44dは、ベローズ36の中心軸線X1から等距離で且つ角度90°の等間隔に配置されている。
以上のように、本実施形態においては、複数のエアシリンダ41a,41b、複数のリニアガイド42a,42b、複数のアシストユニット43a〜43d、及び複数のストッパ装置44a〜44dが、それぞれ、ベローズ36の中心軸線X1に関して均等に配置されているので、エアシリンダ41a,41bによって駆動されて対陰極ユニット24がケーシング25に対して進退移動するときには、対陰極17は横揺れすることなく且つ傾くことなく極めて正確に平行移動する。従って、図4において5つのX線発生帯27A〜27Eは陰極16に対して同じ距離及び同じ角度で陰極16に対向することができる。つまり、5つのX線発生帯27A〜27Eに関して陰極16に対する正確な再現性のある位置精度を得ることができる。
また、本実施形態では、図6のストップ部材73a〜73eをモータ69によって移動させて対陰極17のX線発生帯27A〜27Eの位置を変化させることにしたので、X線発生帯27A〜27Eの位置調整を手動ではなく自動的に行うことができるようになった。
さらに、従来は、3つ以上のX線発生帯の位置を調整するためのストッパとして止めボルトの先端面を用い、その止めボルトのねじ込み量を変えることによって止めボルトの先端面の位置を変化させることにした。この方法では、X線発生帯の位置を自動的に細かく高精度に調整することができなかった。
これに対し本実施形態では、複数の高さの異なったストップ部材73a〜73eのいずれか1つを選択的に対陰極支持体32とケーシング25との間に介在させることで、対陰極支持体32によって支持された対陰極17とケーシング25によって支持された陰極16との相対的な位置を調整するようにしたので、対陰極17上のX線発生帯27A〜27Eと陰極16との相対的な位置を高精度に調整できるようになった。
(他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、上記の実施形態では、図6に示したように移動台として回転板68を用いた。しかしながら、移動台は直進移動する台を用いて構成することもできる。また、移動台を駆動するための手段は、対象物を回転駆動するモータに限られず、対象物を直進駆動する駆動装置とすることもできる。
また、本発明の実施に際しては、図4に示すリニアガイド42a,42bのような案内手段及び図5に示すアシストユニット43a,43b,43c,43dのような弾性力付与手段は必ずしも用いなくても良い。
図10は、さらに他の実施形態を示している。この実施形態においては、1つのX線発生帯27Eが第1の金属33aと第2の金属33bの2種類の金属によって形成されている。これらの金属33a及び33bは回転体陰極17の周方向に沿って交互に配置されている。第1の金属33aは例えばCu(銅)であり、第2の金属33bは例えばMo(モリブデン)である。
このように1つのX線発生帯を異なった種類の複数の金属によって形成するのは、1つのX線発生帯から異なった波長(すなわち異なったエネルギ)のX線を発生させるためである。このようなX線発生構造は、例えば特許第5437180号にストライプ状ターゲットとして開示されている。
なお、本実施形態において1つのX線発生帯を形成する金属の種類は3種類以上としても良い。
1.X線回折装置(X線分析装置)、2.X線発生装置、3.ゴニオメータ、4.θ回転台、5.2θ回転台、6.検出器アーム、7.発散スリット、10.試料ホルダ、11.散乱スリット、12.受光スリット、13.2次元X線検出器(X線検出手段)、14.2次元センサ、16.陰極、17.回転対陰極、20.θ回転駆動装置、21.2θ回転駆動装置、23.Oリング、24.対陰極ユニット、25.ケーシング、26.対陰極ハウジング(対陰極支持体)、27A,27B,27C,27D,27E.X線発生帯、28.X線窓、29.基体、30.回転軸、31.通水路、32.対陰極支持体、34.排気装置、35.フランジ、36.ベローズ、36a.ベローズの第1のフランジ、36b.ベローズの第2のフランジ(支持用プレート)、36c.第2のフランジの表面、38.磁気シール装置、40.モータ(回転駆動装置)、41a,41b.エアシリンダ(駆動手段)、42a,42b.リニアガイド(案内手段)、43a,43b,43c,43d.アシストユニット(弾性力付与手段)、44a,44b,44c,44d.ストッパ装置(ストッパ手段)、46.給水口、47.排水口、48.シリンダ本体、49.出力ロッド、50.ボルト、51.第1のエア接続口、52.第2のエア接続口、55.アリ形ユニット、56.アリ溝ユニット、57a,57b.支柱、58.アリ形、59.アリ溝部材、62.貫通孔、63.圧縮バネ、64.バネカバー、68.回転板(移動台)、69.電動モータ(移動台駆動手段)、70.モータ本体、71.出力軸、72.貫通孔、73a,73b,73c,73d,73e.ストップ部材、74.止め輪、75.圧縮バネ(弾性部材)、F.X線焦点、H.内部空間、P1〜P5.ストップ部材の高さ、Q.間隔、R.ケーシングと支持用プレートとによって挟まれる領域、Cf.集中円、Cg.ゴニオメータ円、R1.X線、R2.回折X線、S.試料、X0.対陰極ハウジングの中心軸線、X1.支持用プレート及びベローズの中心軸線

Claims (12)

  1. 電子を発生する陰極と、
    該陰極に対向して設けられると共に互いに隣接して並んだ複数のX線発生帯を備えた対陰極と、
    前記陰極及び前記対陰極を内部に収容すると共に前記陰極と一体であるケーシングと、
    前記対陰極を支持する対陰極支持体と、
    前記対陰極支持体と前記ケーシングとが相対的に進退移動するように前記対陰極支持体を駆動する駆動手段と、
    前記対陰極支持体と前記ケーシングとが互いに近付く方向へ移動するとき、前記対陰極支持体の動きを停止させるストッパ手段と、を有しており、
    前記ストッパ手段は、
    前記対陰極支持体と前記ケーシングとの間に出入りする部分を備えた移動台と、
    当該移動台を駆動する移動台駆動手段と、
    前記移動台の出入りする部分に設けられており互いに高さが異なっている複数のストップ部材と、を有する
    ことを特徴とするX線発生装置。
  2. 前記複数のストップ部材の少なくとも1つは、前記対陰極支持体と前記ケーシングとの間に入った状態で、前記ケーシングに近付き又は遠ざかる方向へ移動できるように前記移動台に設けられている、ことを特徴とする請求項1記載のX線発生装置。
  3. 前記ストップ部材は弾性部材によって付勢されていることを特徴とする請求項2記載のX線発生装置。
  4. 前記ストップ部材は前記移動台の厚さよりも長い長さを有しており、
    当該ストップ部材は前記移動台を貫通して設けられており、
    前記ストップ部材の一端は前記ケーシング及び前記対陰極支持体の一方に当接可能であり、前記ストップ部材の他端は前記ケーシング及び前記対陰極支持体の他方に当接可能である、ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のX線発生装置。
  5. 前記移動台は回転板であり、
    前記出入りする部分は前記回転板の周辺部分であり、
    前記複数のストップ部材は前記回転板の周辺部分の異なる位置に設けられている
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のX線発生装置。
  6. 前記移動台駆動手段はモータであり、
    当該モータは、本体部分と、当該本体部分の内部から外部へ延出している出力軸とを有しており、
    前記回転板は前記出力軸に取り付けられており、
    前記モータの本体部分は前記対陰極支持体又は前記ケーシングに固定されている
    ことを特徴とする請求項5記載のX線発生装置。
  7. 前記ストッパ手段は前記対陰極支持体上又は前記ケーシング上に複数設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のX線発生装置。
  8. 前記対陰極支持体と前記ケーシングとの間を気密に仕切るシール部材を有しており、
    前記複数のストッパ手段は、前記シール部材の中心軸線に直交する面内において当該中心軸線に対して点対称又は当該中心軸線を通る線に対して線対称に配置されていることを特徴とする請求項7記載のX線発生装置。
  9. 前記複数のストッパ手段は、前記シール部材の中心軸線に対して互いに等間隔であって且つ当該中心軸線の周りに互いに等角度間隔で配置されていることを特徴とする請求項8記載のX線発生装置。
  10. 前記シール部材はベローズであり、
    前記ストッパ手段は前記ベローズの外側に設けられていることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1つに記載のX線発生装置。
  11. 前記対陰極支持体は、
    前記対陰極を支持すると共に当該対陰極の外部へ延在している対陰極ハウジングと、
    当該対陰極ハウジングに固定されると共に当該対陰極ハウジングの延在方向を横切る方向へ延在している支持用プレートと、を有しており、
    前記駆動手段及び前記ストッパ手段は前記支持用プレート上に設置されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1つに記載のX線発生装置。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか1つに記載のX線発生装置と、当該X線発生装置から発生したX線を用いるX線光学系とを有することを特徴とするX線分析装置。
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