JP4407912B2 - 試料分析装置 - Google Patents
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Description
従来,上記極薄膜の研究開発や製造開発においては,表面スパッタを基本とする2次イオン質量分析法(SIMS法)やオージェ電子分光法(AES法)を用いた分析装置により半導体デバイス材料の組成分析が行われている。しかし,上記分析装置では試料の表面に損傷層が生成されることから深さ分解能に限界があった。そのため,非破壊手法である100KeV程度の水素イオンを用いたイオン散乱分析方法や,300KeV以上の高エネルギーイオンを用いたラザフォード後方散乱分析方法(RBS分析方法)等により試料の組成を分析する試料分析装置が注目されるようになってきた。
森 芳一 外3名,「R&D 神戸製鋼技報」第52巻 第52号(通巻第201号),特集:薄膜技術,P53〜P56 高分解能RBS分析装置,[online],2002年9月1日,株式会社神戸製鋼所 コミュニケーションセンター,[平成16年3月18日検索],インターネット<http://www.kobelco.co.jp/technology-review/vol52#2.>又は<http://www.kobelco.co.jp/technology-review/pdf/52#2/053-056.pdf>
しかしながら,上記RBS分析装置Yは図3に示す如く水平方向に長い形状(横幅:約3880mm)をしているため,非常に大きな設置面積を要するという問題がある。また,水平方向に長い形状をしているため,組み立てられた状態の装置をユーザ側に運搬納入することができず,従来は,メーカ側で動作検査のために組み立てられた装置を一旦2以上のユニット(例えば,加速器119とそれ以外の装置)に分割し,分割されたユニットを納入後に再度組み立てるという作業を行っていた。このような作業は極めて煩雑であり,また,運搬納入に費やされる費用も軽視できない。また,メーカ側でイオンビームのライン調整をしたにもかかわらず,装置が分解されたため納入後に再度イオンビームのライン調整を行う必要があり,調整作業が二度手間となっていた。
また,装置が設置された後に設置レイアウトを変更する場合は,組み立てられた状態で装置を移動することができないため,この場合も装置の分解,組み立て,イオンビームのライン調整といった手間のかかる作業を行う必要があり甚だ面倒であった。
更に,上記RBS分析装置Yでは,鉛直方向に比較的長い縦設置タイプの加速器119が用いられており,この加速器119は該加速器119の上方部の出射孔125からイオンビームが水平に向けて出射されるものであるため,測定チャンバ103の設置位置をイオンビームの出射孔125に合わせて高くせざるを得ない。そのため,たとえ調整者の手の届く高さに上記ビームライン機器等が配設されていたとしても,上記ビームライン機器の調整,或いは上記測定チャンバ103への試料の出し入れを容易に行うことができなかった。
また,上記ゴニオメータ109は上記測定チャンバ103より更に上方に配置されているため,上記測定チャンバ103内の試料の位置調整作業は作業台等を使用しなければならず,作業効率があまり高くなかった。
さらにまた,上記イオンビームの出射軸上に電磁石スペクトロメータ104等の重量の大きい複数のビームライン機器が配置されているため,装置全体の重心が高くなり,装置の安定性が悪いという問題がある。これに対し,安定性を確保するために架台やフレームを補強して重心を下げることも可能であるが,装置全体の総重量が増加し,装置規模が拡大するという新たな問題を招くことになる。
上述した問題は,上記RBS分析装置Yだけに限られず,従来の試料分析装置全般にも当てはまると考えられる。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,上述の問題を解決することのできる試料分析装置を提供することにある。
この場合,上記イオンビーム発生器が上記架台に設けられた支持部材の上部に載置されてなり,上記偏向手段が上記イオンビーム発生器の鉛直下方にある上記支持部材の内部空間に内設されてなることが望ましい。
また,上記偏向手段と上記真空容器とを近接させて配設するものであれば,更に装置の水平方向の全長が短縮化され得る。
また,図3に示す如く従来の試料分析装置のように,共通架台からトランスファーロッドやスペクトル測定器等が大きく突出している場合は装置の運搬に支障を来たす恐れが極めて高いため,上記真空容器に上記被分析試料を搬出入する試料搬出入手段と,上記真空容器内の上記被分析試料の位置調整を行う位置調整手段と,上記散乱イオンをスペクトル化するスペクトル分離手段と,上記スペクトル分離手段により分離されたスペクトルのエネルギーを測定するイオン検出手段とを更に備えた試料分析装置においては,上記試料搬出入手段,上記位置調整手段,上記スペクトル分離手段,上記イオン検出手段及び上記真空容器が少なくとも運搬時に上面視で上記架台に内包又は略内包されてなるものであることが望ましい。
なお,上記試料分析装置の具体例として,ラザフォード後方散乱分析装置や,イオン散乱分析装置,粒子励起X線分析装置(PIXE),反跳原子分析装置(ERD)等が考えられる。
また,偏向マグネット等の上記偏向手段を比較的低い位置に設けることによって,水平方向に偏向されるイオンビームのビームラインを低く設定することができ,更に上記真空容器を低い位置に配置することが可能となる。これにより,上記ビームライン上に配設されたビームライン機器の調整作業や上記真空容器への試料の出し入れ作業が簡便となり,これらの作業効率が向上され得る。また,上記真空容器の上方に設けられたゴニオメータの配設位置も上記真空容器の位置に応じて低くなるため,作業台を用いることなく試料の位置調整作業を行うことが可能となり,作業効率が向上される。また,イオンビームのビームラインを低く設定することで,上記ビームライン上に配置された重量の大きい複数のビームライン機器の影響により,装置全体の重心が低くなるため,装置の安定性が向上することになる。また,装置の安定性が高くなることで,装置の架台を縮小して,装置全体の総重量を軽減することも可能である。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係るラザフォード後方散乱分析装置Xの構成を示す全体図,図2は加速器の概略構成を示す模式図,図3は従来の高分解能型のラザフォード後方散乱分析装置Yの構成を示す全体図である。
図1に示すように,本RBS分析装置Xは,試料を内部に保持する測定チャンバ103(真空容器に相当)の上方に,イオンビームを生成して出射する加速器119(イオンビーム発生器に相当)が配設されており,上記加速器119の下方に後述する偏向マグネット122が配設されている。
上記加速器119においては,図2に示されるヘリウムガスボンベ115から送り出されたヘリウムはイオン源112でイオン化され,その後,イオン化された一価のヘリウムイオンが上記E×Bフィルタ117により選別されて,この一価のヘリウムイオンだけが加速管113に送り出される。上記加速管113内では,上記一価のヘリウムイオンは,高圧電源回路114から高電圧が供給されることにより,この高電圧に対応したエネルギーが蓄えられて加速される。その後,加速されたイオンはイオンビーム101となり,ビームダクト116内を鉛直下方へ出射される。そして,上記加速器119から鉛直下方に出射されたイオンビームは,該イオンビームの出射軸上に設けられた偏向マグネット122(偏向手段の一例)に入射する。上記偏向マグネット122は,水平方向に出射されるイオンビームのビームラインを比較的低く設定するために,本RBS分析装置Xの設置面Pに近い位置に設けられている。また,上記加速器119と上記偏向マグネット122との間には上記ビームダクト116内の空気を排出して真空化するターボ分子ポンプ120が設けられている。
上記測定チャンバ103と上記偏向マグネット122との間には,上記ビームスリット107や不図示のQマグネット等の複数のビームライン機器が配設されており,これらは相互に近接した状態で連結されている。例えば,図3に示されるRBS分析装置Yのようにビームダクト116により上記ビームライン機器を連結するのではなく,上記ビームライン機器同士を直接連結する等して,上記ビームライン機器間を近接させている。そのため,上記測定チャンバ103と上記偏向マグネット122との離間距離は,従来の試料分析装置に比べ短縮され,その結果,装置の横方向の全長が短縮される。
図1に示すように,本RBS分析装置Xは,上記加速器119,上記偏向マグネット122及び上記測定チャンバ103が,上記本RBS分析装置Xの設置面Pに据え付けられた全体ベース130(共通の架台に相当)に組み付けられた構造をしている。より具体的には,上記全体ベース130に,L字鋼等で加工形成された全体フレーム132がボルトにより或いは溶接により取り付けられており,更に,上記全体フレーム132上には,前記した測定チャンバ103,スペクトル測定器123(イオン検出器108,電磁石スペクトロメータ104を含む),トランスファーロッド118,ゴニオメータ109等の機器(以下,分析系機器と総称する)を載置するステーションフレームと,前記加速器119を支持する加速器用支持フレーム131(支持部材に相当)とが固着されている。
上記加速器用支持フレーム131は,その上部に上記加速器119を載置するため,L字鋼等をトラス構造或いはラーメン構造等に結合して形成されており,比較的強固に形成されている。この加速器用支持フレーム131の内部空間には,上記偏向マグネット122が内設されている。なお,この実施の形態においては,支持部材として,4本のL字鋼等を支柱に用いたフレーム構造の加速器用支持フレーム131を例示したが,支柱を2本とした片持ち式のフレーム構造をした支持部材であってもよく,また,フレーム構造ではなく,壁面支持構造の支持部材であってもよい。
測定チャンバ103,スペクトル測定器123,トランスファーロッド118,ゴニオメータ109等の上記分析系機器は,図1(a)の上記RBS分析装置Xの平面図に示す如く,上記全体ベース130に略内包されており,上記RBS分析装置Xの運搬時,移動時に他の周辺機器や歩行者等に接触,干渉しないように配慮されている。なお,図1(a)では,上記トランスファーロッド118の先端部分が,全体ベース130から若干突出しているが,この突出部分は,トランスファーロッド118を操作して縮小,収縮すれば全体ベース130内に収めることができる。また,上記イオン検出器108及び上記電磁石スペクトロメータ104は,上記測定チャンバー103の中心軸を中心として配設されたレール124上を旋回可能とされており,その旋回軌道の一部において,上記イオン検出器108及び上記電磁石スペクトロメータ104が全体ベース130から若干突出する場合もあるが,図1(a)に示された位置では全体ベース130内に収められている。このように,操作状態においては,上面視で全体ベース130から若干突出することがあるが,少なくとも運搬時には全体ベース130内に収納可能とされている。また,運搬,移動に問題がない範囲で,これらの分析系機器が若干突出していてもかまわない。
このように構成されたRBS分析装置であっても,装置の水平方向の全長が従来と比べて短縮されるため,装置の設置面積を小さくすることが可能となる。
また,上述の実施の形態と,加速器119(イオンビーム発生器)と測定チャンバ103(真空容器)との位置関係を左右反対にしたり,ゴニオメータ109とトランスファーロッド118の設置位置を反対にしてもよい。さらに,上述の実施の形態では,イオン検出器108および電磁石スペクトロメータ104を水平方向に旋回するように配置しているが,これを鉛直方向に旋回するように配置してもよい。この場合,上面視における占有面積を更に小さくすることができる。
なお,上述の実施の形態の項では,RBS分析装置Xを例として説明したが,本発明は,イオンビームを用いる他の試料分析装置にも好適に利用することが可能である。具体的には,水素イオンを用いたイオン散乱分析装置,粒子励起X線分析装置(PIXE),反跳原子分析装置(ERD)等にも用いることができる。
103…測定チャンバ(真空容器)
104…電磁石スペクトロメータ(スペクトル分離手段の一例)
107…ビームスリット
108…イオン検出器(イオン検出手段の一例)
109…ゴニオメータ(位置調整手段の一例)
112…イオン源
113…加速管
114…高圧電源回路
115…ヘリウムガスボンベ
116…ビームダクト
117…E×Bフィルタ
118…トランスファーロッド(試料搬出入手段の一例)
119…加速器(イオンビーム発生器)
120,121…ターボ分子ポンプ
122…偏向マグネット(偏向手段の一例)
123…スペクトル測定器
124…レール
126…イオンビーム入射孔
130…全体ベース(架台の一例)
131…加速器用支持フレーム(支持部材の一例)
Claims (5)
- イオンビームを被分析試料に照射させることによって上記被分析試料から所定の方向に散乱した散乱イオンのスペクトルを測定することにより上記被分析試料の組成分析を行う試料分析装置であって,上記イオンビームを生成して出射するイオンビーム発生器と,上記被分析試料を内部に保持する真空容器と,を備えてなる試料分析装置において,
上記イオンビーム発生器が上記真空容器より斜め上方に配設され,
上記イオンビーム発生器により鉛直下方に出射されたイオンビームの出射軸上に,該イオンビームの進行方向を鉛直下方向から水平方向に曲げる偏向手段が配設され,
上記偏向手段により水平方向に偏向されたイオンビームを上記被分析試料に入射するべく上記真空容器のイオンビーム入射孔を上記水平方向に指向させた上記真空容器が配設されてなり,
上記イオンビーム発生器,上記偏向手段及び上記真空容器が共通の架台に組み付けられてなることを特徴とする試料分析装置。 - 上記イオンビーム発生器が上記架台に設けられた支持部材の上部に載置されてなり,上記偏向手段が上記イオンビーム発生器の鉛直下方にある上記支持部材の内部空間に内設されてなる請求項1に記載の試料分析装置。
- 上記偏向手段と上記真空容器とを近接させてなる請求項1又は2に記載の試料分析装置。
- 上記真空容器に上記被分析試料を搬出入する試料搬出入手段と,上記真空容器内の上記被分析試料の位置調整を行う位置調整手段と,上記散乱イオンをスペクトル化するスペクトル分離手段と,上記スペクトル分離手段により分離されたスペクトルのエネルギーを測定するイオン検出手段とを更に備え,上記試料搬出入手段,上記位置調整手段,上記スペクトル分離手段,上記イオン検出手段及び上記真空容器が少なくとも運搬時に上面視で上記架台に内包又は略内包されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の試料分析装置。
- 上記試料分析装置がラザフォード後方散乱分析装置である請求項1〜4のいずれかに記載の試料分析装置。
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