JP4407912B2 - 試料分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は,加速されたHe,H等の軽イオンを試料に照射し,試料中の成分元素によって弾性散乱されたイオンのエネルギースペクトルを測定することによって試料の組成分析を行う試料分析装置に関するものである。
半導体デバイスの微細化,多層化が進展するなか,半導体技術や結晶性薄膜技術の分野では,エピタキシャル成膜やMBE成膜(分子線エピタキシー法による成膜)等による半導体デバイス材料の研究開発が盛んに行われている。特に,半導体がより一層集積化,多層化するに従い,ゲート絶縁膜の等価厚み等の極薄膜化が避けられない状況にあり,また,次世代半導体として開発が進んでいるMRAM等も実膜厚がオングストロームレベルの膜構造を構成していることもあって,半導体デバイス材料の極薄膜の高精度な膜厚計測の要求が高まってきた。かかる要求に応えるためには,半導体デバイス材料の組成分析を行う試料分析装置の性能の向上が必須である。
従来,上記極薄膜の研究開発や製造開発においては,表面スパッタを基本とする2次イオン質量分析法(SIMS法)やオージェ電子分光法(AES法)を用いた分析装置により半導体デバイス材料の組成分析が行われている。しかし,上記分析装置では試料の表面に損傷層が生成されることから深さ分解能に限界があった。そのため,非破壊手法である100KeV程度の水素イオンを用いたイオン散乱分析方法や,300KeV以上の高エネルギーイオンを用いたラザフォード後方散乱分析方法(RBS分析方法)等により試料の組成を分析する試料分析装置が注目されるようになってきた。
一般に,RBS分析方法による組成分析は,高エネルギー軽イオンをプローブとした弾性散乱によって,試料表面下の元素組成分布が数10nm(数100Å)程度の深さ分解能で非破壊的に試料の組成を分析できる特徴を持ち,しかも,分析時間も短く,更に定量性に優れた方法であると認知されている。その一方で,試料に対する深さ分解能に関しては専ら半導体検出器のエネルギー分解能に依存しているため,従来のRBS分析装置では深さ分解能に限界がある。しかしながら,図3に示す,非特許文献1に記載の高分解能RBS分析装置Y(以下,「RBS分析装置Y」と略す)によれば,HeやH等の単一エネルギーのイオンを試料に照射し,試料中の成分元素によって弾性散乱されたエネルギースペクトルを電磁石スペクトロメータ等により磁場偏向させ,この磁場偏向されたエネルギースペクトルを半導体イオン検出器によって測定することにより,高い深さ分解能で試料の組成分析を行うことが可能となる。
ここで,図3を用いて,上記RBS分析装置Yの概要及びその基本動作について簡単に説明する。加速器119内の図示しないイオン源から水平に出射されたイオンビームは,電場と磁場とが直行するE×Bフィルタ117及びビームスリット107によって,イオンビーム中から,例えばヘリウム一価イオンのみが選別される。即ち,ヘリウム二価,水素原子イオン及び水素分子イオンは上記E×Bフィルタ117により軌道が曲げられた後に上記ビームスリット107で除去される。選別されたヘリウム一価イオンは図示しない四重極磁気レンズにより収束され,測定チャンバ(測定用の真空容器)103の内部に入射され,ゴニオメータ109により上記測定チャンバ103の内部で保持された試料の表面に対して水平方向から照射される。この試料の表面に照射されたイオンビームはその表面及び表面下の元素により弾性散乱され,その一部が測定チャンバ103の周囲に配置された電磁石スぺクトロメータ104に入射され,その軌道が磁場偏向されて,イオン検出器108により検出される。
森 芳一 外3名,「R&D 神戸製鋼技報」第52巻 第52号(通巻第201号),特集:薄膜技術,P53〜P56 高分解能RBS分析装置,[online],2002年9月1日,株式会社神戸製鋼所 コミュニケーションセンター,[平成16年3月18日検索],インターネット<http://www.kobelco.co.jp/technology-review/vol52#2.>又は<http://www.kobelco.co.jp/technology-review/pdf/52#2/053-056.pdf>
ところで,上記非特許文献1に記載のRBS分析装置Yは,図3に示すように,イオン源や加速管等からなる加速器119と測定チャンバ103との間にはフィルタ,スリット等の複数のビームライン機器が配設されており,これらのビームライン機器の設定を容易に調整することができるように,上記加速器119,複数のビームライン機器,上記測定チャンバ103それぞれが調整者の手が届く高さ範囲内で水平軸線上に配設されている。
しかしながら,上記RBS分析装置Yは図3に示す如く水平方向に長い形状(横幅:約3880mm)をしているため,非常に大きな設置面積を要するという問題がある。また,水平方向に長い形状をしているため,組み立てられた状態の装置をユーザ側に運搬納入することができず,従来は,メーカ側で動作検査のために組み立てられた装置を一旦2以上のユニット(例えば,加速器119とそれ以外の装置)に分割し,分割されたユニットを納入後に再度組み立てるという作業を行っていた。このような作業は極めて煩雑であり,また,運搬納入に費やされる費用も軽視できない。また,メーカ側でイオンビームのライン調整をしたにもかかわらず,装置が分解されたため納入後に再度イオンビームのライン調整を行う必要があり,調整作業が二度手間となっていた。
また,装置が設置された後に設置レイアウトを変更する場合は,組み立てられた状態で装置を移動することができないため,この場合も装置の分解,組み立て,イオンビームのライン調整といった手間のかかる作業を行う必要があり甚だ面倒であった。
更に,上記RBS分析装置Yでは,鉛直方向に比較的長い縦設置タイプの加速器119が用いられており,この加速器119は該加速器119の上方部の出射孔125からイオンビームが水平に向けて出射されるものであるため,測定チャンバ103の設置位置をイオンビームの出射孔125に合わせて高くせざるを得ない。そのため,たとえ調整者の手の届く高さに上記ビームライン機器等が配設されていたとしても,上記ビームライン機器の調整,或いは上記測定チャンバ103への試料の出し入れを容易に行うことができなかった。
また,上記ゴニオメータ109は上記測定チャンバ103より更に上方に配置されているため,上記測定チャンバ103内の試料の位置調整作業は作業台等を使用しなければならず,作業効率があまり高くなかった。
さらにまた,上記イオンビームの出射軸上に電磁石スペクトロメータ104等の重量の大きい複数のビームライン機器が配置されているため,装置全体の重心が高くなり,装置の安定性が悪いという問題がある。これに対し,安定性を確保するために架台やフレームを補強して重心を下げることも可能であるが,装置全体の総重量が増加し,装置規模が拡大するという新たな問題を招くことになる。
上述した問題は,上記RBS分析装置Yだけに限られず,従来の試料分析装置全般にも当てはまると考えられる。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,上述の問題を解決することのできる試料分析装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は,イオンビームを被分析試料に照射させることによって上記被分析試料から所定の方向に散乱した散乱イオンのスペクトルを測定することにより上記被分析試料の組成分析を行う試料分析装置であって,上記イオンビームを生成して出射するイオンビーム発生器と,上記被分析試料を内部に保持する真空容器と,を備えてなる試料分析装置において,上記イオンビーム発生器が上記真空容器より斜め上方に配設され,上記イオンビーム発生器により鉛直下方に出射されたイオンビームの出射軸上に該イオンビームの進行方向を鉛直下方向から水平方向に曲げる偏向手段が配設され,上記偏向手段により水平方向に偏向されたイオンビームを上記被分析試料に入射するべく上記真空容器のイオンビーム入射孔を上記水平方向に指向させた上記真空容器が配設されてなり,上記イオンビーム発生器,上記偏向手段及び上記真空容器が共通の架台に組み付けられてなることを特徴とする試料分析装置として構成されている。
この場合,上記イオンビーム発生器が記架台に設けられた支持部材の上部に載置されてなり,上記偏向手段が上記イオンビーム発生器の鉛直下方にある上記支持部材の内部空間に内設されてなることが望ましい。
また,上記偏向手段と上記真空容器とを近接させて配設するものであれば,更に装置の水平方向の全長が短縮化され得る。
また,図3に示す如く従来の試料分析装置のように,共通架台からトランスファーロッドやスペクトル測定器等が大きく突出している場合は装置の運搬に支障を来たす恐れが極めて高いため,上記真空容器に上記被分析試料を搬出入する試料搬出入手段と,上記真空容器内の上記被分析試料の位置調整を行う位置調整手段と,上記散乱イオンをスペクトル化するスペクトル分離手段と,上記スペクトル分離手段により分離されたスペクトルのエネルギーを測定するイオン検出手段とを更に備えた試料分析装置においては,上記試料搬出入手段,上記位置調整手段,上記スペクトル分離手段,上記イオン検出手段及び上記真空容器が少なくとも運搬時に上面視で上記架台に内包又は略内包されてなるものであることが望ましい。
なお,上記試料分析装置の具体例として,ラザフォード後方散乱分析装置や,イオン散乱分析装置,粒子励起X線分析装置(PIXE),反跳原子分析装置(ERD)等が考えられる。
以上説明したように,本発明は,イオンビームを被分析試料に照射させることによって上記被分析試料から所定の方向に散乱した散乱イオンのスペクトルを測定することにより上記被分析試料の組成分析を行う試料分析装置であって,上記イオンビームを生成して出射するイオンビーム発生器と,上記被分析試料を内部に保持する真空容器と,を備えてなる試料分析装置において,上記イオンビーム発生器が上記真空容器より上方に配設され,上記イオンビーム発生器により鉛直下方に出射されたイオンビームの出射軸上に該イオンビームを水平方向に偏向する偏向手段が配設され,上記偏向手段により水平方向に偏向されたイオンビームを上記被分析試料に入射するべく上記真空容器のイオンビーム入射孔を上記水平方向に指向させた上記真空容器が配設されてなり,上記イオンビーム発生器,上記偏向手段及び上記真空容器が共通の架台に組み付けられてなることを特徴とする試料分析装置として構成されているため,装置の水平方向の全長が格段に短縮され,装置の設置面積を小さくすることができる。また,装置を分割することなく運搬,納入することが可能となるため,従来のように,装置の分割,再度の組み立て,ビームラインの再調整という極めて煩雑な作業を行う必要がなくなる。さらに,装置を移動するためにわざわざ装置を分解する必要がないため,装置設置後のレイアウトの変更等を容易に行うことができる。
また,偏向マグネット等の上記偏向手段を比較的低い位置に設けることによって,水平方向に偏向されるイオンビームのビームラインを低く設定することができ,更に上記真空容器を低い位置に配置することが可能となる。これにより,上記ビームライン上に配設されたビームライン機器の調整作業や上記真空容器への試料の出し入れ作業が簡便となり,これらの作業効率が向上され得る。また,上記真空容器の上方に設けられたゴニオメータの配設位置も上記真空容器の位置に応じて低くなるため,作業台を用いることなく試料の位置調整作業を行うことが可能となり,作業効率が向上される。また,イオンビームのビームラインを低く設定することで,上記ビームライン上に配置された重量の大きい複数のビームライン機器の影響により,装置全体の重心が低くなるため,装置の安定性が向上することになる。また,装置の安定性が高くなることで,装置の架台を縮小して,装置全体の総重量を軽減することも可能である。
以下添付図面を参照しながら,本発明の一実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係るラザフォード後方散乱分析装置Xの構成を示す全体図,図2は加速器の概略構成を示す模式図,図3は従来の高分解能型のラザフォード後方散乱分析装置Yの構成を示す全体図である。
まず,図1の全体図及び図2の模式図を用いて,本発明の実施の形態に係るラザフォード後方散乱分析装置X(以下,「RBS分析装置」と略す。)の構成について説明する。ここに,図1の(a)はRBS分析装置Xの正面図,(b)は(a)の平面図である。なお,本RBS分析装置Xの構成要素のうち,前述した文献公知のRBS分析装置Y(図3)と同一の構成要素には同一の符号を付して表す。また,言うまでもないが,本RBS分析装置Xは,軽イオンや水素イオン等のイオンビームが試料(被分析試料)に照射され,その後,所定方向に弾性散乱した散乱イオン或いは所定方向に反跳した試料元素イオン等のエネルギースペクトルを測定することにより試料の組成分析を行う試料分析装置の単なる一例に過ぎない。
図1に示すように,本RBS分析装置Xは,試料を内部に保持する測定チャンバ103(真空容器に相当)の上方に,イオンビームを生成して出射する加速器119(イオンビーム発生器に相当)が配設されており,上記加速器119の下方に後述する偏向マグネット122が配設されている。
上記加速器119においては,図2に示されるヘリウムガスボンベ115から送り出されたヘリウムはイオン源112でイオン化され,その後,イオン化された一価のヘリウムイオンが上記E×Bフィルタ117により選別されて,この一価のヘリウムイオンだけが加速管113に送り出される。上記加速管113内では,上記一価のヘリウムイオンは,高圧電源回路114から高電圧が供給されることにより,この高電圧に対応したエネルギーが蓄えられて加速される。その後,加速されたイオンはイオンビーム101となり,ビームダクト116内を鉛直下方へ出射される。そして,上記加速器119から鉛直下方に出射されたイオンビームは,該イオンビームの出射軸上に設けられた偏向マグネット122(偏向手段の一例)に入射する。上記偏向マグネット122は,水平方向に出射されるイオンビームのビームラインを比較的低く設定するために,本RBS分析装置Xの設置面Pに近い位置に設けられている。また,上記加速器119と上記偏向マグネット122との間には上記ビームダクト116内の空気を排出して真空化するターボ分子ポンプ120が設けられている。
上記偏向マグネット122に入射したイオンビームは,該偏向マグネット122内で鉛直下方向から水平方向に偏向された後,偏向されたイオンビームのライン軸上に設けられた前記測定チャンバ103に向けて出射される。上記偏向マグネット122から出射されたイオンビームは,途中,図示しないQマグネットにより収束され,ビームスリット107で更に不要な粒子やイオンが除去された後,上記測定チャンバ103のイオンビーム入射孔126を通って内部の試料に照射される。従って,上記測定チャンバ103は,上記偏向マグネット122により水平方向に偏向されたイオンビームを上記測定チャンバ103内の試料に入射させるべく上記測定チャンバ103のイオンビーム入射孔126を上記水平方向に指向させた状態となるよう配置されている。
上記測定チャンバ103と上記偏向マグネット122との間には,上記ビームスリット107や不図示のQマグネット等の複数のビームライン機器が配設されており,これらは相互に近接した状態で連結されている。例えば,図3に示されるRBS分析装置Yのようにビームダクト116により上記ビームライン機器を連結するのではなく,上記ビームライン機器同士を直接連結する等して,上記ビームライン機器間を近接させている。そのため,上記測定チャンバ103と上記偏向マグネット122との離間距離は,従来の試料分析装置に比べ短縮され,その結果,装置の横方向の全長が短縮される。
上記測定チャンバ103は,円筒形の測定チャンバであり,内部を真空状態にするため,測定チャンバ103の下部近傍には上記測定チャンバ103内部の空気を排出して真空化するターボ分子ポンプ121が設けられている。また,この測定チャンバ103には,試料に照射されたイオンビームによって上記試料から所定の散乱角をなす複数の方向に散乱した散乱イオンを上記測定チャンバ103の外部に導く図示しない検出ポートが設けられている。この検出ポートは,散乱イオンのエネルギースペクトルを測定するスペクトル測定器123に連結されている。また,上記円筒形の測定チャンバ103の中心軸(円筒軸)にあたる位置には試料を保持する図示しない試料台が配置されている。
上記試料台に保持された試料にイオンビームが照射され,試料の表面又は表面下の元素により弾性散乱されたイオンのうち,上記スペクトル測定器123が連結された上記検出ポート(不図示)に飛び込んだ散乱イオンだけが上記スペクトル測定器123を構成する電磁石スペクトロメータ(スペクトル分離手段の一例)104によって分光分析されてスペクトル化され,そのうちの特定のエネルギースペクトルだけが上記スペクトル測定器123を構成するイオン検出器108(イオン検出手段の一例)により検出されて,そのエネルギーが測定される。
上記試料台は上記測定チャンバ103の中心軸を中心にして上記測定チャンバ103の円周方向に回転自在に支持される。上記測定チャンバ103の外部上方には,上記試料台と連接され,上記試料台を上記測定チャンバ103内で保持するとともに上記測定チャンバ103の円周方向に回転させて上記試料の位置を調整するゴニオメータ109(位置調整手段の一例)が配設されている。また,上記測定チャンバ103近傍には,上記試料台に試料を搬出入するトランスファーロッド118(試料搬出入手段の一例)が設けられている。
次に,本RBS分析装置Xにおける上述の各構成要素の組み付け構造について説明する。
図1に示すように,本RBS分析装置Xは,上記加速器119,上記偏向マグネット122及び上記測定チャンバ103が,上記本RBS分析装置Xの設置面Pに据え付けられた全体ベース130(共通の架台に相当)に組み付けられた構造をしている。より具体的には,上記全体ベース130に,L字鋼等で加工形成された全体フレーム132がボルトにより或いは溶接により取り付けられており,更に,上記全体フレーム132上には,前記した測定チャンバ103,スペクトル測定器123(イオン検出器108,電磁石スペクトロメータ104を含む),トランスファーロッド118,ゴニオメータ109等の機器(以下,分析系機器と総称する)を載置するステーションフレームと,前記加速器119を支持する加速器用支持フレーム131(支持部材に相当)とが固着されている。
上記加速器用支持フレーム131は,その上部に上記加速器119を載置するため,L字鋼等をトラス構造或いはラーメン構造等に結合して形成されており,比較的強固に形成されている。この加速器用支持フレーム131の内部空間には,上記偏向マグネット122が内設されている。なお,この実施の形態においては,支持部材として,4本のL字鋼等を支柱に用いたフレーム構造の加速器用支持フレーム131を例示したが,支柱を2本とした片持ち式のフレーム構造をした支持部材であってもよく,また,フレーム構造ではなく,壁面支持構造の支持部材であってもよい。
測定チャンバ103,スペクトル測定器123,トランスファーロッド118,ゴニオメータ109等の上記分析系機器は,図1(a)の上記RBS分析装置Xの平面図に示す如く,上記全体ベース130に略内包されており,上記RBS分析装置Xの運搬時,移動時に他の周辺機器や歩行者等に接触,干渉しないように配慮されている。なお,図1(a)では,上記トランスファーロッド118の先端部分が,全体ベース130から若干突出しているが,この突出部分は,トランスファーロッド118を操作して縮小,収縮すれば全体ベース130内に収めることができる。また,上記イオン検出器108及び上記電磁石スペクトロメータ104は,上記測定チャンバー103の中心軸を中心として配設されたレール124上を旋回可能とされており,その旋回軌道の一部において,上記イオン検出器108及び上記電磁石スペクトロメータ104が全体ベース130から若干突出する場合もあるが,図1(a)に示された位置では全体ベース130内に収められている。このように,操作状態においては,上面視で全体ベース130から若干突出することがあるが,少なくとも運搬時には全体ベース130内に収納可能とされている。また,運搬,移動に問題がない範囲で,これらの分析系機器が若干突出していてもかまわない。
このように,本RBS分析装置Xは,上記加速器119が上記測定チャンバ103の上方,より具体的には上記測定チャンバ103の斜め上方に設けられており,上記加速器119から鉛直下方に出射されたイオンビームが上記偏向マグネット122により水平方向に偏向され,その後,偏向された水平方向のイオンビームが上記測定チェンバ103内の試料に照射するよう構成されており,これらの機器が上記全体ベース130内に納まるよう組み付けられているため,装置の水平方向の全長が短縮され(本RBS分析装置Xでは横幅が約1950mm),装置の設置面積を小さくすることが可能となる。また,上記偏向マグネット122に配設位置を低くすることにより,水平方向に偏向されるイオンビームのビームラインを比較的低く設定することができる。
上述の実施の形態の説明では,測定チェンバ103の斜め上方に加速器119が配設されたRBS分析装置Xについて説明した。しかし,このような構成に限られず,上記RBS分析装置Xは,例えば,上記測定チャンバ103の略鉛直上方に加速器を配設する構成であってもかまわない。ただし,この場合は,上記加速器119に代えて,イオンビームを水平方向に出射する加速器を用い,また,上記加速器から水平方向に出射されたイオンビームを鉛直下方に偏向する偏向マグネットを新たに設ける必要がある。この偏向マグネットにより鉛直下方に偏向されたイオンビームは,その後,前記偏向マグネット122(図1)により,上記加速器から出射された水平方向とは逆側の水平方向へ偏向されて,その後,上記測定チャンバ103内の試料に照射される。
このように構成されたRBS分析装置であっても,装置の水平方向の全長が従来と比べて短縮されるため,装置の設置面積を小さくすることが可能となる。
また,上述の実施の形態と,加速器119(イオンビーム発生器)と測定チャンバ103(真空容器)との位置関係を左右反対にしたり,ゴニオメータ109とトランスファーロッド118の設置位置を反対にしてもよい。さらに,上述の実施の形態では,イオン検出器108および電磁石スペクトロメータ104を水平方向に旋回するように配置しているが,これを鉛直方向に旋回するように配置してもよい。この場合,上面視における占有面積を更に小さくすることができる。
なお,上述の実施の形態の項では,RBS分析装置Xを例として説明したが,本発明は,イオンビームを用いる他の試料分析装置にも好適に利用することが可能である。具体的には,水素イオンを用いたイオン散乱分析装置,粒子励起X線分析装置(PIXE),反跳原子分析装置(ERD)等にも用いることができる。
本発明の実施の形態に係るラザフォード後方散乱分析装置Xの構成を示す全体図。 加速器の概略構成を示す模式図。 従来の高分解能型のラザフォード後方散乱分析装置Yの構成を示す全体図。
符号の説明
101…イオンビーム
103…測定チャンバ(真空容器)
104…電磁石スペクトロメータ(スペクトル分離手段の一例)
107…ビームスリット
108…イオン検出器(イオン検出手段の一例)
109…ゴニオメータ(位置調整手段の一例)
112…イオン源
113…加速管
114…高圧電源回路
115…ヘリウムガスボンベ
116…ビームダクト
117…E×Bフィルタ
118…トランスファーロッド(試料搬出入手段の一例)
119…加速器(イオンビーム発生器)
120,121…ターボ分子ポンプ
122…偏向マグネット(偏向手段の一例)
123…スペクトル測定器
124…レール
126…イオンビーム入射孔
130…全体ベース(架台の一例)
131…加速器用支持フレーム(支持部材の一例)

Claims (5)

  1. イオンビームを被分析試料に照射させることによって上記被分析試料から所定の方向に散乱した散乱イオンのスペクトルを測定することにより上記被分析試料の組成分析を行う試料分析装置であって,上記イオンビームを生成して出射するイオンビーム発生器と,上記被分析試料を内部に保持する真空容器と,を備えてなる試料分析装置において,
    上記イオンビーム発生器が上記真空容器より斜め上方に配設され,
    上記イオンビーム発生器により鉛直下方に出射されたイオンビームの出射軸上に該イオンビームの進行方向を鉛直下方向から水平方向に曲げる偏向手段が配設され,
    上記偏向手段により水平方向に偏向されたイオンビームを上記被分析試料に入射するべく上記真空容器のイオンビーム入射孔を上記水平方向に指向させた上記真空容器が配設されてなり,
    上記イオンビーム発生器,上記偏向手段及び上記真空容器が共通の架台に組み付けられてなることを特徴とする試料分析装置。
  2. 上記イオンビーム発生器が記架台に設けられた支持部材の上部に載置されてなり,上記偏向手段が上記イオンビーム発生器の鉛直下方にある上記支持部材の内部空間に内設されてなる請求項1に記載の試料分析装置。
  3. 上記偏向手段と上記真空容器とを近接させてなる請求項1又は2に記載の試料分析装置。
  4. 上記真空容器に上記被分析試料を搬出入する試料搬出入手段と,上記真空容器内の上記被分析試料の位置調整を行う位置調整手段と,上記散乱イオンをスペクトル化するスペクトル分離手段と,上記スペクトル分離手段により分離されたスペクトルのエネルギーを測定するイオン検出手段とを更に備え,上記試料搬出入手段,上記位置調整手段,上記スペクトル分離手段,上記イオン検出手段及び上記真空容器が少なくとも運搬時に上面視で上記架台に内包又は略内包されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の試料分析装置。
  5. 上記試料分析装置がラザフォード後方散乱分析装置である請求項1〜4のいずれかに記載の試料分析装置。
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