JPWO2016031531A1 - 低温加熱型パウダースラッシュ成形機およびパウダースラッシュ成形方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、境界部が明瞭な異色表皮の製造方法を提供すべく、金型に対して、境界部として、ペースト状樹脂をノズル塗布した後、境界部の両側に、それぞれ異なる樹脂を用いて、パウダースラッシュ成形することを特徴とした異色表皮の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、塗布層については、樹脂塗布装置を用いて、金型の所定箇所に適用し、次いで、塗布層の上または隣接して、通常の塩化ビニル樹脂をパウダースラッシュ成形することによって、複数樹脂からなる層間における密着性に優れるとともに、膜厚のばらつきが少なくなり、ひいては耐久性に優れた二色成形シート状物を迅速かつ安定的に得られるパウダースラッシュ成形機等である(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、得られる二色成形シート状物において、複数のスラッシュ成形品同士の境界が、はっきりせず、また、時間の経過とともに、金型温度が大きく変化することから、二色成形シート状物を安定的に得ることは困難であった。
また、得られる二色成形シート状物において、複数のスラッシュ成形品同士の境界における強度が低いために、破断しやすく、耐久性に乏しいという問題も見られた。
また、金型温度が250℃超と高いために、シート状物の製造を繰り返し行った場合に、成形樹脂の一部が、金型内に焼き付き、いわゆるグロス現象が生じ、得られるシート状物の厚さが不均一になったり、シボ模様が消えたり、あるいは、焼き付いた成形樹脂を除去するための金型クリーニング工程を短期間、例えば、40回以下の使用において繰り返したりする必要性があった。
その上、シート状物を脱型する際には、例えば、200℃の金型を、約60℃以下の温度に、急速冷却する必要があるものの、水冷やミスト冷却を組み合わせたとしても、相当の冷却時間がかかり、あるいは、金型の温度を急速に低下させるため、金型の金属疲労を増長させやすいという問題が見られた。
すなわち、本発明は、金型の熱疲労や成形樹脂の焼き付け現象等の発生が少ない上に、所定厚さのシート状物を安定的、かつ、経済的に製造可能な低温加熱型パウダースラッシュ成形機およびパウダースラッシュ成形方法を提供することを目的としている。
そして、後加熱処理部において、成形したシート状物の裏面(金型と接する表面とは反対面)に、200℃以下の熱風を吹き付けて、後加熱処理することを特徴とするパウダースラッシュ成形機が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、このようにパウダースラッシュ成形機を構成することにより、急加熱および急冷を避けて、成形樹脂の焼き付け現象の発生や、金型の熱疲労に起因したクラック発生を抑制することができ、ひいては、所定厚さのシート状物を安定的、かつ経済的に得ることができる。
その上、後加熱処理部を設けた場合、所定の処理時間が単純に付加されると思われがちだが、逆に、金型の加熱時間や冷却時間等を短くすることもでき、さらには、金型の移動時に自然空冷されることから、全体としてみれば、シート状物の製造時間(サイクルタイム)につき、少なくとも増加させることは無いと言うことができる。
このように構成することにより、二色成形シート状物であっても、迅速かつ安定的に得ることができる。
そして、二色成形シート状物の場合、金型内面に対する焼き付き現象(グロス現象)が生じやすいという問題があるが、本発明のパウダースラッシュ成形機であれば、それについても十分抑制することができる。
このように構成することにより、パウダースラッシュ成形機全体としてのエネルギ効率が高まり、その上、所定厚さを有するともに、均一厚さのシート状物を、安定的かつ経済的に得ることができる。
このようにパウダリングの所定時間や、シート状物の所定厚さを制御することにより、さらに迅速かつ安定的に、実用的なシート状物を得ることができる。
このように構成することにより、金型加熱部を、後加熱処理部と併用できるため、パウダースラッシュ成形機の全体としての省スペース化に寄与することができ、ひいては、所定のシート状物を、迅速かつ安定的に、しかも経済的に得ることができる。
このように構成することにより、金型の移送時間を利用して、金型の少なくとも外表面(シート状物の非形成面)についても予備加熱することができるため、内表面と、外表面との間の温度差が小さくなって、金属疲労や、成形樹脂の内表面に対する焼き付け現象の発生を効果的に抑制しつつ、金型全体を、均一かつ短時間に加熱することができる。
そして、後加熱処理部において、成形したシート状物の裏面に、200℃以下の熱風を吹き付けて、後加熱処理することを特徴とするパウダースラッシュ成形方法である。
すなわち、このようにパウダースラッシュ成形方法を実施することにより、成形樹脂の焼き付け現象や金型の金属疲労を防止しつつ、所定厚さのシート状物を安定的に得ることができる。
また、後加熱処理の態様をこのように考慮することによって、短時間でシート状物の裏面を平坦化することができ、パウダースラッシュ部において、成形樹脂が十分に溶融しない場合であっても、裏面からの後加熱処理によって、それを十分補てんすることができる。
このように実施することにより、金型の移送時間を利用して、金型の外表面を予備加熱することができるため、温度差が小さくなって、金属疲労や成形樹脂の内表面に対する焼き付け現象の発生を効果的に抑制しつつ、金型の内表面形状によらず、金型全体を、均一かつ短時間に加熱することができる。
第1の実施形態は、図1および図2に例示されるように、金型温度を220℃以下に加熱する金型加熱部(B部)と、融点が160℃以下の成形樹脂を所定時間パウダリングして、所定厚さのシート状物を成形するパウダースラッシュ部(A部)と、金型に形成されたシート状物を、後加熱処理する後加熱処理部(B´部)と、金型温度を60℃以下に冷却する金型冷却部(C部)と、冷却したシート状物を脱型する金型加工部(E部)と、を備えた低温加熱型パウダースラッシュ成形機10である。
そして、後加熱処理部(B´部)において、成形したシート状物の裏面に、200℃以下の熱風を吹き付けて、後加熱処理することを特徴とする低温加熱型パウダースラッシュ成形機10が提供され、上述した問題点を解決することができる。
なお、図1は、低温加熱型パウダースラッシュ成形機10の側面図を、図2は、低温加熱型パウダースラッシュ成形機10を上面から見た平面図をそれぞれ示している。
以下、二色成形シートを製造する低温加熱型パウダースラッシュ成形機10を例にとって、具体的に説明する。
(1)基本構成
金型加工部(E部)は、パウダースラッシュ成形したシート状物94を、金型60から取り出す脱型作業と、任意工程ではあるが、二色成形シート状物94を対象とする場合には、樹脂塗布装置22による金型60に対する塗布作業と、を行うための部位である。
そして、図1および図2に例示されるように、金型60は、移動及び迅速処理を容易にするため、フレーム部材60aに取りつけられており、当該フレーム部材60aとともに、例えば、二機の搬送装置62としてのクレーンによって、金型加工部(E部)、金型交換部(D部)、冷却部(C部)、加熱部(B部)、パウダースラッシュ部(A部)、および後加熱部(B´部)の間を、任意に移動できるように構成されている。
そして、この一連の所定処理を実施するにあたり、複数の金型が準備されており、同時並行して行われるため、二色成形シート状物94等の一つ当たりの、製造上のサイクルタイムを、見かけ上、極めて短くすることができる。
なお、低温加熱型パウダースラッシュ成形機10としては、図1および図2に示すように、左側から、金型加工部(E部)、金型交換部(D部)、冷却部(C部)、加熱部(B部)、パウダースラッシュ部(A部)、および後加熱部(B´部)の順に、配置されており、後加熱部(B´部)が、最後尾に配置されている。
この理由は、かかる配置順であれば、後加熱部(B´部)を有していないパウダースラッシュ成形機に対して、容易に後付けできるためである。
また、このような配置であれば、複数の金型の同時処理がさらに容易に実施できたり、金型の移動時に、自然空冷することも容易となるためである。
その上、仮に、金型60に対して、冷却部(C部)においてクラックが生じたり、あるいは、加熱部(B部)において、グロス現象が生じたりした場合には、金型交換部(D部)において、新たな金型60と交換することも容易になるためである。
一方、図2に示すように、金型加工部(E部)において、二色成形シート状物を金型から脱型している際には、樹脂塗布装置22は、金型加工部(E部)の側方箇所(P2)に移動するので、所定の作業空間を形成することになる。
すなわち、金型加工部(E部)において、成形した二色成形シート状物94の脱型と、樹脂塗布装置22による塗布作業を、相互に行うことができるように構成されている。
なお、金型温度を約210℃とするためには、金型加熱部(B部)の温度、すなわち、加熱炉の温度としては、380〜450℃の範囲内の値であって、一例として、約430℃に調整することが好適である。
次いで、パウダースラッシュ部(A部)では、成形樹脂の所定時間のパウダリング、すなわち、パウダースラッシュ成形が行われる。
そこで、形成された二色成形シート状物の内面に対して、200℃以下の熱風を吹き付け、表面を平坦化させる処理が行われる。
より具体的には、熱風温度が過度に低くなると、二色成形シート状物の厚さがばらついたり、厚さが所定以下の値となったりする場合がある。
したがって、形成された二色成形シート状物の内面に対して、165〜195℃の熱風を吹き付けることがより好ましく、170〜190℃の熱風を吹き付けることがさらに好ましい。
なお、後加熱部(B´部)における200℃以下の熱風の吹付時間としては、8〜30秒の範囲内の値とすることが好ましく、10〜25秒の範囲内の値とすることがより好ましい。
最後に、搬送装置62によって、金型60は、吊り下げられた状態で、図1に示す金型加工部(E部)に再び移送され、そこで、得られた二色成形シート状物94を金型60から脱型し、一連の動作が終了することになる。
また、金型加工部(E部)に設ける樹脂塗布装置22の形態は、所定厚さの塗布層を形成できるものであれば、特に制限されるものでないが、図2に示すように、第2の樹脂を吐出するためのノズル部(スプレーノズルと称する場合がある。)22aと、かかるノズル部22aの位置や回転方向を定める駆動装置24や、第2の樹脂を貯蔵するための塗料貯蔵部(図示せず)を、含んでいることが好ましい。
すなわち、樹脂塗布装置22のノズル部22aおよびその駆動装置24によって、塗料貯蔵部に貯蔵してある第2の樹脂を、金型60における所定個所に対して、均一かつ迅速に塗布することができる。
また、塗布層を構成する第2の樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
そして、耐熱プラスチックとしての、塩化ビニル樹脂と、硬化剤と、可塑剤等からなる耐熱塩化ビニルゾルや、アクリル樹脂と、硬化剤と、可塑剤等からなる耐熱アクリルゾルや、であることがより好ましい。
さらに、塩化ビニル樹脂等の耐熱性を向上させるためには、N−置換マレイミドをグラフト共重合した塩化ビニル樹脂であることがより好ましい。
すなわち、このような耐熱プラスチックゾルであれば、塗料としての良好な塗布性が得られるとともに、所定温度条件(例えば、300〜500℃で、1〜30分)で、熱分解の問題が生じないとともに、パウダースラッシュ成形用の樹脂と、強固に固着することができるためである。
例えば、エポキシ樹脂であれば、アミン化合物等の架橋剤や、フェノール樹脂であれば、酸化合物やアルカリ化合物等の架橋剤促進や、シリコーン樹脂であれば、酸化合物等の架橋剤促進剤や、ポリアクリル樹脂であれば、ラジカル発生剤やイソシアネート化合物等の架橋剤や、ポリエステル樹脂であれば、イソシアネート化合物等の架橋剤や、ポリイミド樹脂であれば、酸化合物等の架橋剤促進や、ポリ塩化ビニル樹脂であれば、フェノール樹脂等の架橋剤が挙げられる。
このような架橋剤や架橋促進剤は、塩化ビニル樹脂等100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部の範囲で添加することが好ましく、0.5〜5重量部の範囲で添加することがより好ましい。
かかる無機酸化物は、塩化ビニル樹脂等100重量部に対して、通常、0.1〜30重量部の範囲で添加することが好ましく、1〜20重量部の範囲で添加することがより好ましい。
さらに、熱安定剤としては、鉛塩系安定剤、液状安定剤、有機錫系安定剤、エポキシ系安定剤、有機亜リン酸化合物、多価アルコール、アミン系化合物などが挙げられる。
かかる熱安定剤は、塩化ビニル樹脂等100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の範囲で添加することが好ましく、1〜10重量部の範囲で添加することがより好ましい。
この理由は、かかる塗布層の厚さが1μm未満では、塗布層の機械的強度が低下したり、発色性が乏しくなったりする場合があるためである。
一方、塗布層の厚さが200μmを超えると、金型における非加熱部との間の温度差(熱伝導率差)が大きくなって、均一な厚さであって、かつ複数樹脂からなる層間において密着性に優れた二色成形シート状物を得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、第2の樹脂からなる塗布層の厚さを、5〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜50μmの範囲内の値とすることがさらに好ましく、15〜30μmの範囲内の値とすることが最も好ましい。
(1)熱風発生装置
金型加熱部(B部)における金型60を直接的に加熱するための熱風発生装置40の構造は、特に制限されるものではないが、例えば、図3(a)〜(b)にそれぞれ示すように、プロパンガス由来の火炎装置等により得られた熱風を、熱風吹出口16の下方あるいは下側に設けた空気供給ファン46により、主配管43を通じて、熱風吹出口16から供給する構成であることが好ましい。
すなわち、熱風発生装置40により得られた熱風と、後述するエネルギ回収部54を通じて炉内から回収され、空気循環ファン42により混合室44に送り込まれた熱風とを、混合室44において適宜混合した後、空気供給ファン46により、所定風速を有する大量の熱風として、主配管43を通じて、熱風吹出口16に供給する構成であることが好ましい。
この理由は、このように熱風を循環させる構成とすることにより、加熱炉58における金型60の加熱モードに関して、熱風14が金型60の内面に沿って流れる際に、かかる熱風14が有する熱が、金型60へ効率よく伝熱されるためである。
すなわち、主として伝熱モードで、熱が伝わるため、加熱炉58の内部に供給された熱が、加熱炉58の外へ放散することが少なくなるためである。
したがって、加熱炉58及び熱風吹出口16が比較的小型であっても、従来の大型加熱炉と比較して、同等以上の生産性を有することになる。また、熱風吹出口16を介して供給される熱風発生装置40からの熱風に、エネルギ回収部54を通じて炉内から回収された熱風を混合することにより、風量が増加して、加熱炉58内等が加圧されるため、金型60に対する加熱効果が増大することになる。
さらに、エネルギ回収部54は、加熱炉58の周囲または下方に設けてあり、風量の関係で、加熱炉58と比較して、減圧状態になっているため、金型60を加熱した後の熱風をさらに効果的に回収することができる。
この理由は、このように構成することにより、空気供給ファン46により送り込まれてくる熱風を、邪魔板49により分散させることができ、複数の熱風吹出口16を設けた場合であっても、それぞれの熱風吹出口から、均一かつ高速で、熱風を吹き出させることができるためである。
なお、所定の風速を有する熱風を制御された状態で吹き出せるように、かかる熱風吹出口における開口部の形状を、円形、楕円形、四角形(正方形や長方形、帯状等を含む)、多角形、異形とした構造とすることが好ましい。
また、図3(a)〜(b)にそれぞれ示すように、金型60を加熱した後の、少なからず温度が高くて、多くのエネルギを有する熱風(熱エネルギ)を回収するためのエネルギ回収部54を設けることが好ましい。
すなわち、加熱炉58の炉内底面19あるいは、加熱炉58の周囲を利用して、かかるエネルギ回収部54を配設することが好ましい。
ここで、エネルギ回収部54の構造自体は特に制限されるものではないが、例えば、図3(a)に示すように、加熱炉58の炉内底面19に通じる開口部を有するとともに、熱風発生装置40に連なる分岐配管47を備えたダクト構造を有することが好ましい。そして、既に上述したように、エネルギ回収部54に連なる分岐配管47の途中に、ダンパ−47aを配設することが好ましい。
金型加熱部(B部)における加熱炉58は、図3(a)〜(b)にそれぞれ示すように、熱風発生装置40の上方に配置されており、全体として一つのコンパクトな加熱装置として構成されていることが好ましい。
このように構成することにより、加熱炉58への熱エネルギの供給が容易になるばかりか、上述したエネルギ回収部54を利用して、加熱炉58からの熱エネルギの効率的回収についても容易に実施することができる。
なお、図3(a)は、一つの二色成形シートを成形するための金型60のための加熱炉58の例であって、図3(b)は、同時に二つの二色成形シートを成形するための金型60のための加熱炉58の例である。
なお、加熱炉58に含まれる炉本体の形態としては、適宜変更することが可能である。例えば、炉本体を、金型の形状に対応させて、円筒状や立方体、あるいは異形とすることも好ましい。
また、かかる側方熱風吹出口50は、加熱炉58の内側に沿って配置してあることが好ましく、さらには、熱風発生装置40に連なる分岐配管41や、主配管43に連結してあり、その風量をダンパ48等によって調節することが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、金型60を、下方向のみならず、横方向からも熱風を吹き付けて加熱することができ、金型60をさらに効果的に加熱することができるためである。
そして、側方熱風吹出口(ダクト)50の形状は、金型の形状に応じて適宜変更することも好ましいが、例えば、シュノーケル型とすることにより、側方熱風吹出口50と金型60との距離を一定範囲に容易に制御することができるとともに、熱風吹出方向が一定化するため、金型60に対する加熱効率をさらに増加させることができることから好ましい構造である。
また、金型加熱部(B部)において、図3(a)〜(b)にそれぞれ示す加熱炉58を用いて、第2の樹脂からなる塗布層を形成した金型(例えば、厚さ3.5mmのニッケル鋳造合金製)60を加熱する際に、当該金型60の内面温度、すなわち、金型温度を220℃以下の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる金型温度が220℃を超えると、成形樹脂の焼き付け現象に起因したグロス現象が頻繁に生じたり、金型の金属疲労により、冷却時に金型にクラックが生じたりする場合があるためである。
すなわち、図4の横軸に、金型温度(℃)が採って示してあり、縦軸に、金型にクラックが生じるまでの製造回数(回数)および金型にグロス現象が生じるまでの製造回数(回数)が、それぞれ採って示してある。
そして、ラインAおよびラインBから、金型温度を220℃以下とすることにより、クラックが生じるまでの製造回数や金型にグロス現象が生じるまでの製造回数を著しく増加させることが理解される。
同様に、グロス現象が生じるまでの製造回数について言えば、金型温度(℃)が320℃では、約12回、金型温度(℃)が280℃では、約15回、金型温度(℃)が250℃では、約28回、金型温度(℃)が230℃では、約43回、金型温度(℃)が210℃では、約120回である。
そして、シート状物の製造を実施し、シート状物の厚さの平均値(10か所)のみならず、最大値と、最小値の値も同様に示してある。
すなわち、図5の横軸に、金型温度(℃)が採って示してあり、縦軸に、シート状物の厚さ(mm)が採って示してある。
より具体的には、金型温度(℃)が比較的低い場合、例えば、210℃では、ラインAが示すように、パウダリング時間が30秒と短く、かつ、後加熱処理が無いため、約1mmの厚さであって、かつ、厚さのばらつきが大きいシート状物が得られている。
また、ラインBが示すように、パウダリング時間が36秒と若干長く、かつ、後加熱処理が無い場合、約1.18mmの厚さであって、かつ、厚さのばらつきがそれなりに大きいシート状物が得られている。
さらに、ラインCが示すように、パウダリング時間が36秒と若干長く、かつ、所定の後加熱処理がある場合、約1.23mmの厚さであって、かつ、厚さのばらつきが小さいシート状物が得られている。
一方、金型温度を所定温度(220℃以下)とすることにより、パウダリング時間が比較的短い場合には(例えば、30秒)、得られるシート状物の厚さが比較的薄いものの、パウダリング時間を若干長くするだけで(例えば、36秒)、得られるシート状物の厚さが相当厚くなり、ばらつきも小さくなる傾向が見られた。
さらに言えば、金型温度を220℃以下とした場合、パウダリング時間を若干長くする(例えば、36秒)とともに、所定の後加熱処理(200℃熱風、15秒)を施すだけで、得られるシート状物の厚さが相当厚くなり、かつ、ばらつきも小さくなる傾向が見られた。
よって、金型温度を220℃以下と低くした場合、後述する後加熱処理部において、成形したシート状物の表面に、200℃以下の熱風を吹き付けることにより、成形樹脂を十分に溶解させて、均一かつ所定厚さの表面平滑性を得るのに有効であると理解できる。
但し、かかる金型の内面温度が過度に低くなると、後加熱処理部を設けても、最終的に均一で所定厚さのシート状物を安定的に形成することが困難になる場合がある。
したがって、シート状物の厚さをより実用的かつ安定的な値とするために、金型温度を200〜215℃の範囲内の値とすることがより好ましく、205〜210℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、金型加熱部(B部)において、金型の加熱速度、すなわち、加熱時の温度勾配を80〜130℃/分の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金型の加熱速度が80℃/分未満の値になると、金型を所定温度まで加熱する時間、ひいては、サイクルタイムが過度に長くなって、経済的に不利となるためである。
一方、かかる金型の加熱速度が130℃/分を超えた値になると、金型を急加熱することになって、熱疲労が著しく大きくなる場合があるためである。
したがって、金型加熱部(B部)において、金型の加熱速度を90〜120℃/分の範囲内の値とすることがより好ましく、100〜115℃/分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる金型の加熱速度を得るため、上述した金型加熱部の構成することが好ましく、さらには、加熱炉における単位時間あたりの供給熱量を25〜60万kcal/hrの範囲内の値とすることが好ましく、30〜55万kcal/hrの範囲内の値とすることがより好ましく、35〜50万kcal/hrの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(1)基本的構成
パウダースラッシュ部(A部)は、図7(a)〜(c)および図8(a)に示すように、加熱されたフレーム部材60aを含む金型60と、第1の樹脂として、流動状態の成形樹脂92を収容したリザーバタンク88とを、金型(成形型)60の内表面60bを下向きにするとともに、リザーバタンク88の開口面を上向きにした状態で、上下に一体的に連結する工程を実施するための部位である。
より具体的には、図7(a)〜(c)および図8(a)に、パウダースラッシュ部におけるパウダースラッシュ成形方法を示す。
すなわち、図7(a)に示すように、加熱炉における熱風14によって、外表面60cの反対面である内表面60bに、塗布層(図示せず)が形成された金型60を所定温度に加熱、特に、金型内面に対して熱風14を吹き付けて、所定温度に加熱する。
次いで、図7(b)に示すように、金型60を、リザーバタンク88の上方に位置合わせした上で、載置する。
そして、これらを回転させる際に、リザーバタンク88の内部に収容された成形樹脂92の分散性を向上させ、均一な厚さのシート状物(樹脂膜)94を形成するために、リザーバタンク88の下方に設けた攪拌室88aに空気を導入して、パウダー状の成形樹脂92を流動状態とすることが好ましい。
すなわち、攪拌室88aの上方は、穴開き部材(メッシュ部材)から構成してあり、導入された空気によって、成形樹脂92を巻き上げる構造であることが好ましい。
さらに、回転させる際に、成形樹脂92の流動状態を活性化させ、均一な製膜ができるように、図7(c)に示すように、フレーム部材60aに設けてある振動部材を、ハンマー100の先端部108で繰り返し叩くことが好ましい。
次いで、図8(a)に示すように、所定時間静置して、成形樹脂92を所定個所に沈降させる。その際、成形樹脂92が早期に非流動状態となるように、空気を脱気して、減圧操作を行うことが好ましい。
そして最後に、図8(b)に示すように、後加熱炉で後加熱処理した後、図8(c)に示すように、冷却装置55を用いて、二色成形シート状物94とともに、金型60を冷却することになる。
また、パウダースラッシュ部(A部)において、フレーム部材60aを含む金型60を反転させる際、かかる金型60における所望の内表面60bのみに、シート状物94を形成できるように、金型60と、リザーバタンク88との間に、所定の厚さ(高さ)を有する型枠84a、84bを設けることが好ましい。
ここで、かかる型枠84bの下部を、例えば、アルミニウムから構成し、一方の型枠84aの上部をシリコーンゴム/フッ素樹脂フィルムの組合せから構成することにより、金型60と、リザーバタンク88との間の隙間を充填する役目を果たすこともできる。
また、パウダースラッシュ部(A部)で使用する成形樹脂、すなわち、第1の樹脂としては、特に制限されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂(熱可塑性ウレタン樹脂も含む。)、ポリエステル樹脂(熱可塑性ポリエステル樹脂も含む。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(熱可塑性オレフィン樹脂も含む。)、シリコーン樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、塩化ビニル樹脂や熱可塑性ウレタン樹脂であれば、第2の樹脂との親和性が良好であって、強固な接着性が得られるとともに、低温脆性に優れていることから、好適な樹脂である。
そして、第1の樹脂として、熱硬化性樹脂を用いる場合、より短時間で硬化して、所定の被膜を形成できるように、半硬化の熱硬化性樹脂パウダー、すなわち、Bステージ状態の熱硬化性樹脂パウダーを使用することが好ましい。
なお、二色成形の最初に用いる第2の樹脂として、塩化ビニル樹脂を用いた場合、より良好な密着性が得られることから、パウダースラッシュ部(A部)で使用する第1の樹脂として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、あるいは塩化ビニル樹脂の少なくとも一つを用いることがより好ましい。
また、パウダースラッシュ部(A部)において、パウダリング時間を32〜42秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるパウダリング時間が32秒未満の値になると、第1の樹脂としての成形樹脂が容易に熱溶解して、所定厚さを有するシート状物を形成することが困難となる場合があるためである。
一方、かかるパウダリング時間が42秒を超えた値になると、金型を所定温度まで加熱する時間、ひいては、サイクルタイムが過度に長くなって、経済的に不利となる場合があるためである。
したがって、パウダースラッシュ部(A部)において、パウダリング時間を33〜40秒の範囲内の値とすることがより好ましく、34〜38秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(1)構成
後加熱処理部(B´部)は、パウダースラッシュ部(A部)で成形したシート状物の裏面に、200℃以下の熱風を吹き付けることにより、成形樹脂を十分に溶解させて、均一な表面平滑性を得るための部位である。
したがって、金型加熱部(B部)と同様に、図9に示されるように、後加熱処理部(B´部)における加熱装置は、熱風発生装置40と、エネルギ回収部54と、後加熱炉58´と、から基本的に構成されているものの、側方熱風吹出口が設けられていないという点で、金型加熱部(B部)におけるそれと異なっている。
なお、後加熱炉58´に含まれる炉本体の形態としては、適宜変更することが可能である。例えば、炉本体を、金型の形状に対応させて、円筒状や立方体、あるいは異形とすることも好ましい。
また、後加熱処理部(B´部)に付与する単位時間当たりの熱量(万kcal/hr)を、金型加熱部(B部)に付与する単位時間当たりの熱量の1/4〜2/3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、エネルギ効率が高まり、シート状物を、迅速かつ安定的に、しかも経済的に得ることができるためである。
したがって、後加熱処理部(B´部)における、かかる金型の加熱速度を得るため、上述した金型加熱部の構成することが好ましく、さらには、加熱炉における単位時間あたりの供給熱量を1〜20万kcal/hrの範囲内の値とすることが好ましく、5〜15万kcal/hrの範囲内の値とすることがより好ましく、8〜12万kcal/hrの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、かかる熱風温度が200℃を超えると、冷却時の金型の金属疲労により、金型にクラックが生じたりする場合があるためである。
但し、熱風の吹き付け温度を過度に低く設定すると、成形樹脂が十分に溶融しない場合や、表面凹凸が逆に大きくなったりする場合がある。
したがって、後加熱処理部において、成形したシート状物の裏面に、温度150〜190℃の熱風を吹き付けることがより好ましく、温度160〜180℃の熱風を吹き付けることがさらに好ましい。
(1)構成
金型冷却部(C部)は、図8(c)に示すように、フレーム部材60aを含む金型60を、水冷あるいは空冷等の冷却装置55により冷却して、塗布層およびシート状物94を所定程度に固化させるための部位である。
より具体的には、第1のエアブロー、ミスト/シャワー、および第2のエアブローの組み合わせによる、少なくとも三段階ステップによる金型冷却が好ましい。
すなわち、最初に、後加熱処理を経てなる、シート状物94が形成された150℃程度の金型の内部および外部に対し、第1のエアーとして、空気を吹き付けて、金型温度を約100℃程度まで低下させることが好ましい。
次いで、ミストノズルおよびシャワーノズル、あるいはいずれか一方のノズル98から水ミストおよび水シャワーを、金型外部から吹き付けて、金型温度を約50℃程度まで低下させることが好ましい。
最後に、シート状物が形成され、50℃程度まで冷却された金型の外部および内部に対し、第2のエアーとして、空気を吹き付け、さらに金型温度の蓄熱をとるとともに、金型表面に残留している水滴等を吹き飛ばし、金型における錆の発生を有効に防止することが好ましい。
したがって、金型冷却部(C部)に、冷却装置55として、シャワーノズル/ミストノズル98と、エアノズル(図示せず)を、併用して備えることが好ましい。
なお、シャワー装置/ミスト装置は、一つの給水タンクに連結されてあって、吹き出し口に設けた制御弁等の切り替え装置によって、噴霧量やシャワー量を決定することも好ましい。
金型冷却部(C部)において、シート状物を含む金型を、少なくとも三段階ステップによる金型冷却を実施し、金型温度を60℃以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金型温度が60℃を超えると、次工程である脱型や、次サイクルの第2の樹脂の塗布が困難となる場合があるためである。
但し、金型温度を過度に低くすると、冷却時間が過度に長くなるおそれがあることから、冷却後の金型温度を30℃以上の値とすることが好ましい。
したがって、金型冷却部において、シート状物を含む金型温度を30〜50℃の範囲内の値とすることがより好ましく、40〜45℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、金型冷却部(C部)において、金型の冷却速度、すなわち、冷却時の温度勾配を100〜220℃/分の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金型の冷却速度が100℃/分未満の値になると、金型を所定温度まで冷却する時間、ひいては、シート状物の製品一つを得るまでのサイクルタイムが過度に長くなって、経済的に不利となる場合があるためである。
一方、かかる金型の冷却速度が220℃/分を超えた値になると、金型を急冷することになって、熱疲労が著しく大きくなって、クラックが生じやすくなる場合があるためである。
したがって、金型冷却部(C部)において、金型の冷却速度を120〜210℃/分の範囲内の値とすることがより好ましく、140〜200℃/分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明のパウダースラッシュ成形機は、金型交換部(D部)をさらに備えることが好ましい。
すなわち、かかる金型交換部(D部)を利用して、パウダースラッシュ成形の途中で、種類の異なる二色成形されたシート状物を成形するための金型に変更したり、パウダースラッシュ成形中に、金型損傷が生じたりする場合があるが、そのような場合であっても、パウダースラッシュ成形機を動作させたまま、金型を交換することができるためである。
したがって、図1および2に示すように、金型60を載置するための支持台66を備えるとともに、支持台66が外部制御により、移動可能であることが好ましい。
なお、図2に示す金型交換部(D部)の例では、交換用の金型60´と、交換用の金型のフレーム部材60a´が、支持台66の上に待機しているばかりか、さらに、上方に伸びた支持台66の上には、さらに別の交換用の金型60´´と、フレーム部材60a´´とが、待機している状態である。
また、図6(a)〜(b)に示すパウダースラッシュ成形機10aの場合には、少なくとも3つの金型60(60A、60B、60C)が用いられることを前提として、それぞれ所定時期に、金型加工部(E部)、予備加熱部(A´部)、金型加熱部(A部)、パウダースラッシュ部/冷却部を含む一体箇所(B部/C部)、金型交換部(D部)、再び金型加工部(E部)の順に、予備加熱装置62aを備えた搬送装置62によって、各部を、矢印A〜Gに沿って移動する構成を備えていることが好ましい。
そして、かかるパウダースラッシュ成形機10aにおいて、予備加熱部(A´部)が設けてあることにより、一連のパウダースラッシュ成形を完結するための処理が並行的に行われ、最終的に、樹脂成形品であるシート状物94を迅速かつ安定的に得ることができる。
より具体的には、複数の金型、少なくとも3個の金型(金型A、金型B、金型C)を同時使用し、それぞれにつき、同時並行して所定処理が行うことによって、シート状物94の一つ当たりのタクトタイムを、150秒以下、より好ましくは、120秒以下と、従来装置の場合のタクトタイム(例えば、240秒)と比較して、極めて短くすることができる。
この点、図6(a)〜(b)に示すパウダースラッシュ成形機10aを参照しながら、3個の金型(金型A、金型B、金型C)を同時使用して、タクトタイムが短くなる動作例を説明する。
次いで、金型Aの予備加熱をしながら搬送装置62が、下降し、金型加工部(E部)から、パウダースラッシュ部(B部)に移動する。
次いで、搬送装置62が、パウダースラッシュ成形/冷却処理が終了した金型Bを、パウダースラッシュ/冷却部(B/C部)から、金型加工部(E部)に搬送し、脱型処理を行う。
この脱型処理の間に、搬送装置62が、金型加工部(E部)から、金型加熱部(A部)に、金型Aを搬送して、所定時間の加熱処理を行う。
また、この金型Aに対する加熱処理の間に、搬送装置62が、金型Cをクランプして、予備加熱を開始する。
その際、金型を冷却する際には、パウダースラッシュ終了後の粉体ボックスが、パウダースラッシュ部からボックス交換位置に移動するとともに、金型冷却部に設けてある冷却ブースが、パウダースラッシュ部の回転装置の直下に移動する。そして、金型を把持するフレーム部材と係合し、金型の内表面を外部に解放した状態で、金型の外表面に対して、冷却水をシャワーまたは冷却ミストを吹き付けることになる。
そして、このパウダースラッシュ成形/冷却処理の間に、搬送装置62が、金型Cをクランプして予備加熱を行うとともに、金型加熱部(A部)に移動させ、加熱処理を開始する。
すなわち、搬送装置62が、パウダースラッシュ部および冷却部を含む一体箇所(B/C部)から、金型加熱部(A部)に移動し、金型Cを搬送して、所定時間の加熱処理を行うことが好ましい。
よって、以上の説明の通り、図6(a)〜(b)に示すパウダースラッシュ成形機10において、金型A、金型B、及び金型Cを用いた場合、所定動作例によれば、予備加熱処理を含めて、それぞれ独立した処理を同時並行で行うことができる。
そのため、金型60の内表面と外表面との温度差が小さくなって、金型60の金属疲労や、成形樹脂の内表面に対する焼き付け現象の発生を効果的に抑制しつつ、金型の形状にかかわらず、金型全体を、均一かつ高速に加熱することができる。
そして、予備加熱装置62aが備えられている搬送装置62の下方には、通常の、フック62cが設けてあり、当該フック62cを利用して、予備加熱される金型(第1の金型)60Aとは異なる、別の金型(第2の金型)60B、60Cのいずれかについても把持して、同時搬送できるように構成してある。
したがって、複数の金型(第1の金型および第2の金型)を同時搬送することによって、金型に対して、所定処理を施すまでの待ち時間が少なくなって、シート状物の一つ当たりの成形時間(タクトタイム)をさらに短くすることができる。
この理由は、このような遠赤外線加熱方式のヒーターとすることによって、金型の少なくとも外表面の任意場所から、熱線が金型内部まで浸透するので、金型の内表面形状によらず、金型全体を、より均一かつ高速に加熱できるためである。
また、このような遠赤外線加熱方式のヒーターであれば、比較的軽量化,省スペース化が図られるためである。
したがって、遠赤外線加熱方式のヒーターを搬送装置の一部に取り付けたとしても、金型を予備加熱しながら、当該搬送装置を、円滑かつ高速に移送できるという利点が得られる。
この理由は、このように下方に開口した、概ね御椀型の被覆部材を備えることにより、金型の周囲を、上方から覆いつつ、物理的に確実に把持できるためである。
また、かかる被覆部材であれば、断熱把持部材として、所定の断熱性を発揮し、予備加熱した金型からの上方等への熱の放散があるとしても、かかる熱放散を有効に抑制することができる。
シート状物の形態に関し、その構成材料は特に制限されるものでなく、例えば、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、またはポリエステル樹脂の少なくとも一つの樹脂から構成してあることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、汎用性が高く、安価であり、しかも装飾性に優れたシート状物を使用することができるためである。
この理由は、かかるシート状物の厚さが1.1mm未満の値になると、機械的強度や耐久性が著しく低下したりする場合があって、用途が過度に制限されたり、実用性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかるシート状物の厚さが1.4mmを超えると、金型温度を過度に高く設定しなければならなかったり、形成時のパウダリング時間が過度に長くなったり、さらには、シート状物の取扱いが困難になったりする場合があるためである。
したがって、シート状物の厚さを1.15〜1.35mの範囲内の値とすることがより好ましく、1.2〜1.3mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
さらに、シート状物の表面や内部に、所定の印刷や着色が施してあることも好ましい。
その上で、シート状物が、自動車の内装部品やバンパーに適した外形を有することが好ましい。
第2の実施形態は、図7(a)〜(c)および図8(a)〜(c)に示すように、金型温度を220℃以下に加熱する金型加熱部と、融点が160℃以下の成形樹脂を所定時間パウダリングして、所定厚さのシート状物を成形するパウダースラッシュ部と、金型に形成されたシート状物を、後加熱処理する後加熱処理部と、金型温度を60℃以下に冷却する金型冷却部と、冷却したシート状物を脱型する金型加工部と、を備えた低温加熱型パウダースラッシュ成形機を用いてなるパウダースラッシュ成形方法である。
そして、後加熱処理部において、成形したシート状物の裏面に、200℃以下の熱風を吹き付けて、後加熱処理することを特徴とするパウダースラッシュ成形方法である。
以下、二色成形シートを製造することを例にとって、第2の実施形態のパウダースラッシュ成形方法について具体的に説明する。
塗布工程は、金型加工部(E部)において、所定の第2の樹脂を、金型60の一部に塗布し、厚さ1〜200μmの塗布層を形成する樹脂塗布工程(以下、塗装工程と称する場合がある。)である。
すなわち、塗装工程は、金型60を所定箇所に配置するとともに、塗装装置、例えば、先端部がL字状であるスプレーノズルを装着したスプレー樹脂塗布装置を用いて、金型60の所定場所に対して、所定厚さの塗布層を形成する工程である。
その場合、所望の箇所以外の箇所に、塗料が付着しないように、マスキング部材を所定場所に予め装着しておくことが好ましい。
そして、塗布条件については特に制限されるものではないが、例えば、厚さ1〜200μmの塗布層を形成するのに、1〜60秒/m2の塗布速度とすることが好ましく、10〜30秒/m2の塗布速度とすることがより好ましい。
加熱工程は、金型加熱部(B部)において塗布層を形成した金型60を、その状態のままで、比較的低い温度、すなわち、220℃以下の金型温度となるように、加熱する工程(以下、加熱工程と称する場合がある。)である。
したがって、所定の塗布層を形成した金型60を、金型加工部(E部)から金型加熱部(B部)に移動させて、加熱炉58内に搬入し、そこで、所定の塗布層を乾燥するとともに、金型60の内面温度が220℃以下となるように、加熱する工程である。
なお、上述したように、パウダースラッシュ工程において、均一な厚さの二色成形シート状物を成形できるように、金型(塗布層表面を含む)の内面温度が220℃以下になるように、熱風による対流加熱を行うことが好ましい。
パウダースラッシュ工程は、パウダースラッシュ部(A部)において、塗布層を形成した金型60に対して、その状態で、所定のシート状物を成形する工程(以下、スラッシュ工程と称する場合がある。)である。
すなわち、塗布層(図示せず)が形成され、加熱状態の金型60を、金型加熱部(B部)からパウダースラッシュ部(A部)に移動させ、そこで、図7(c)に示すように、塗布層の上、あるいは塗布層に隣接して、第1樹脂の成形樹脂92からなる二色成形シート状物94を形成する工程である。
すなわち、フレーム部材60aを含む金型60と、リザーバタンク88とを組み合わせた状態で、上下方向に反転させることが好ましい。
この理由は、このように実施すると、リザーバタンク88内の成形樹脂(パウダー)92は自重で、金型60の内表面60bに落下するので、かかる金型60の内表面60bに接する成形樹脂92およびその近傍の成形樹脂92のみが、金型60の熱によって溶融状態となって付着し、二色成形シート状物94を短時間にして形成することができるためである。
より具体的には、図4に示すように、金型温度が過度に低いと、クラックが生じる製造回数や、グロス現象が生じる製造回数が著しく増加するものの、図5に示すように、得られるシート状物の厚さが薄くなったり、厚さのばらつきが大きくなったりする傾向がある。
したがって、金型温度を220℃以下の値に加熱するとともに、パウダリング時間を調整し、かつ、200℃以下の熱風を、シート状物の裏面に対して、吹き付ける後加熱処理を実施することが有効であると理解される。
すなわち、金型60を回転させてパウダースラッシュ成形している最中には、金型60の内圧を低下させるために吸引し、パウダースラッシュ成形前には、リザーバタンク88に収容された成形樹脂92の内部に、所定量の空気を吹き込むための圧力調整装置(図示せず)が設けてあることが好ましい。
後加熱処理工程は、パウダースラッシュ成形した二色成形シート状物の裏面に、所定の加熱炉を用いて、200℃以下の熱風を吹き付けて、成形樹脂が十分に溶融していない場合に、それを平坦化させる工程である。
すなわち、後加熱処理工程を設けることによって、比較的緩やかに降温できるとともに、低温加熱によるパウダースラッシュ成形の問題点(不十分加熱)を解決でき、かつ、成形樹脂の焼き付け現象や金型の金属疲労を防止しつつ、所定厚さの二色成形シート状物を安定的かつ経済的に得ることができる。
但し、吹き付け温度が過度に低くなると、成形樹脂が十分に溶融できずに、厚さのばらつき大きくなる場合がある。
したがって、形成された二色成形シート状物の内面に対して、165〜195℃の熱風を吹き付けることがより好ましく、170〜190℃の熱風を吹き付けることがさらに好ましい。
この理由は、このように実施することにより、パウダースラッシュ成形機全体としての省スペース化に寄与することができ、ひいては、二色成形シート状物を、迅速かつ安定的に、しかも経済的に得ることができるためである。
金型冷却工程は、金型冷却部(C部)において二色成形シート状物94を形成した金型60を冷却する工程(以下、金型冷却工程と称する場合がある。)である。
すなわち、二色成形シート状物94を成形した状態の金型60を、パウダースラッシュ部(A部)から金型冷却部(C部)に移動させ、そこで、少なくとも第1のエアブロー、ミスト/シャワー、および第2のエアブローの組み合わせによる三段階ステップで冷却する工程である。
次いで、ミストノズルおよびシャワーノズル、あるいはいずれか一方のノズルから水ミストおよび水シャワーを、金型外部から吹き付けて、蒸発エンタルピーを利用して、金型温度を約100℃から、約60℃程度まで低下させる。すなわち、ミスト/シャワー冷却中の金型の冷却速度を165〜190℃/分の範囲内の値とすることが好ましい。
最後に、二色成形シート状物が形成された60℃程度の金型外部および内部に対し、第2のエアーとして、空気を吹き付け、さらに金型温度や樹脂シートに含まれる内部熱を低下させるとともに、金型表面に残留している水滴等を吹き飛ばし、金型における錆の発生を有効に防止する。すなわち、第2エアーの吹き付け中の金型の冷却速度を、40〜100℃/分の範囲内の値とすることが好ましい。
脱型工程は、金型加工部において、二色成形シート状物を、金型から脱型する工程(以下、脱型工程と称する場合がある。)である。
すなわち、金型冷却部(C部)から金型加工部(E部)に移動させ、冷却工程を経て、約60℃程度に低下した二色成形シート状物94を、金型60から脱型する工程である。
なお、かかる脱型工程は、ロボットを用いて自動的に行うこともできるし、あるいは人的作業として、二色成形シート状物を脱型することもできる。
図6(b)に示すように、予備加熱工程として、金型加工部(E部)において塗布層を形成した金型60を、搬送装置(クレーン等)の一部に備えてなる予備加熱装置を用いて、例えば、100〜200℃の金型温度(外表面温度)となるように、金型60の外表面を加熱する工程(以下、予備加熱工程と称する場合がある。)を設けることが好ましい。
すなわち、かかる予備加熱工程は、所定の塗布層を形成した金型60を、金型加工部(E部)から金型加熱部(A部)に移動させる途中に、所定の塗布層を乾燥するとともに、金型60の外表面温度が所定温度となるように、加熱する工程である。
この理由は、このような温度となるように金型60の外表面を予備加熱することにより、加熱炉58において、金型の内表面温度との温度差を少なくし、所定温度(例えば、250〜300℃)となるように本加熱する際に、高速かつ均一加熱がさらに容易になるためである。
この理由は、このように金型の把持動作と同期して、金型を予備加熱することにより、金型の移送時間を十分に利用できるためである。
但し、金型を把持すると同時に、予備加熱装置にスイッチが入ると言っても、必ずしも0秒後である必要はなく、パウダースラッシュ成形の状況等に応じて、0.1秒後や1秒後であっても良い。
この理由は、所定の予備加熱処理によって、パウダースラッシュ部を含む一体箇所(B部/C部)での、加熱処理された金型に対するシート状物の形成を、より迅速かつ安定的に行うことができ、ひいては、シート状物一つ当たりの成形時間(タクトタイム)をより短期化できるためである。
その際、かかる金型をパウダースラッシュ部(B部)に移送するまでの間も、予備加熱装置によって、温度維持のための加熱として、金型の外表面の温度を、所望温度範囲の値に維持することができる。
すなわち、予備加熱装置によって、金型の外表面を所定温度についても、それが維持されるような温度で加熱(予備加熱と区別して、維持加熱と称する場合がある。)することもできるので、パウダースラッシュ部において、シート状物をさらに安定的に成形することができる。
1.シート状物の作成
(1)金型の準備工程
図1に示す金型加工部(E部)において、所定の金型(ニッケル電鋳型、厚さ3.5mm)を準備した。
なお、図10に、パウダースラッシュ成形を実施する際の、全体の金型温度に関する温度変化プロフィールを示すが、図10中、A点で示される位置が、金型の準備工程の際の金型温度を示しており、約48℃である。
次いで、金型加工部(E部)において、金型にマスキング部材を装着した後、樹脂塗布装置を用いて、所定箇所に対して、第2の樹脂として、耐熱性塩化ビニル樹脂(N−マレイミドグラフト重合塩化ビニル樹脂100重量部、硬化剤10重量部、可塑剤5重量部、三塩基性硫酸鉛2重量部、ステアリン酸鉛2重量部)を用いて、厚さ20μmの塗布層を成形した。
なお、図10中、A´点で示される位置が、一般的温度計、例えば、非接触赤外線温度計、サーモグラフィ温度計、あるいは、接触式熱電対(以下、同様である。)によって測定した、塗布工程の際の金型の内面温度を示しており、金型の準備工程と同様に、約48℃であった。
次いで、図1に示す金型加工部(E部)から、金型加熱部(B部)に、クレーンを用いて、所定の塗布層が形成された金型を移動させ、マスキング部材を脱着した後、温度が約430℃に維持された加熱炉(単位時間あたりの供給熱量:40万kcal/hr)の内部に収容して、金型の内面温度が210℃になるように、約88秒間加熱した。
そして、図10中、B点が、加熱開始時の金型温度を示しており、加熱炉に投入した瞬間の金型温度は約48℃である。
さらに、図10中、C点が、加熱終了時の金型の内面温度を示しており、約210℃である。したがって、加熱工程において、約110℃/分の加熱速度で、金型の内面温度が所定値となるように、効率的に加熱したことが理解される。
なお、金型温度としての金型の内面温度は、上述した非接触赤外線温度計、サーモグラフィ温度計、あるいは、接触式熱電対によって、直接的に測定することもできるし、あるいは、これら非接触赤外線温度計等によって、金型の外面温度を測定し、それから、金型の素材や厚さ等を考慮して、内面温度を推定する、すなわち、間接的に測定することができる。
次いで、図1に示すように、金型加熱部(B部)からパウダースラッシュ部(A部)に、クレーンを用いて金型を移動させ、パウダースラッシュ成形機を用いて、所定の塗布層が形成された金型に対して、耐熱塩化ビニル樹脂からなる成形樹脂(平均粒径:30μmパウダー)を、36秒間パウダースラッシュ成形し、厚さ約1.2mmの二色成形シート物を得た。
なお、図10中、C点からD点の温度変化が、金型加熱部(B部)からパウダースラッシュ部(A部)に、金型を移動させた時間に対応して、生じており、約20秒間の間に、金型温度が約10℃低下していることが理解される。
次いで、図10中、D点が、スラッシュ成形開始時の金型温度を示しており、約195℃である。
また、図10中、E点が、スラッシュ成形終了時の金型温度を示しており、約160℃まで、下降していることが理解される。
次いで、図1に示すように、パウダースラッシュ部(A部)から後加熱処理部(B´部)に、クレーンを用いて金型を移動させ、後加熱炉(20万kcal/hr)を用いて、パウダースラッシュ成形した二色成形シート物の裏面に、200℃の熱風を、15秒間吹き付けて、成形樹脂を十分に溶融させるとともに、平坦化させた。
なお、図10中、E点からE´点の温度変化が、パウダースラッシュ部(A部)から、後加熱部(B´部)に、金型を移動させた時間に対応して、生じており、約10秒間で、約10℃低下していることが理解される。
次いで、図10中、E´点が、後加熱処理開始時の金型温度を示しており、約170℃である。
また、図10中、F点が、後加熱処理終了時の金型温度を示しており、約15秒間、後加熱したものの、金型温度は約170℃に維持され、後加熱処理中の加熱速度は、約0℃/分であった。
これは、後加熱処理によって、成形された二色成形シート状物の、実質的に裏面のみが溶解し、平坦化すれば良いことから、金型温度自体は、ほぼ一定温度なるように調整したものである。
次いで、図1に示すように、後加熱処理部(B´部)から金型冷却部(C部)に、クレーンを用いて二色成形シート状物を含む金型を移動させ、約150℃の金型に対して、第1のエアー(乾燥空気)を約20秒間吹き付けることにより、二色成形シート状物の表面温度が約100℃に低下することを確認した。すなわち、第1エアーの吹き付け中の冷却速度は、約150℃/分であったことが理解される。
次いで、ミスト/シャワー冷却を約15秒間実施し、二色成形シート状物の表面温度が、約100℃から、約55℃に低下することを確認した。すなわち、ミスト/シャワー冷却中の冷却速度は、約180℃/分であったことが理解される。
さらに、第2のエアー(乾燥空気)を約5秒間吹き付け、二色成形シート状物の表面に付着した水滴を飛散させるとともに、金型温度が、約55℃から、約50℃まで低下することを確認した。すなわち、第2エアーの吹き付け中の冷却速度は、約60℃/分であったことが理解される。
なお、図10中、F点からF´点の温度変化が、後加熱処理部(B´部)から、金型冷却部(C部)に、金型を移動させる時間に対応して、生じている。
また、F´点が、冷却開始時の金型温度を示しており、約150℃である。
また、G1点が、第1エアー吹き付け後の金型温度を示しており、約100℃である
また、G2点が、ミスト/シャワー吹き付け後の金型温度を示しており、約55℃である。
さらに、G3点が、第2エアーを吹き付けた後の金型温度を示しており、約50℃である。
次いで、図1に示すように、金型冷却部(C部)から金型加工部(E部)に、クレーンを用いて二色成形シート状物を含む金型を移動させ、冷却工程を経て、約50℃の温度に低下した二色成形シート状物を、人的作業により脱型し、実施例1の二色成形シート状物とした。
なお、図10中、G3点からH点の温度変化が、金型冷却部(C部)から、金型加工部(E部)に、金型を移動させた時間に対応して、生じており、約5秒かかっているものの、約50℃の金型温度のまま、二色成形シート状物を脱型することが理解される。
(1)二色成形シート状物の形成性(評価1)
得られた二色成形シート状物の任意の10か所の厚さをノギスで測定し、その平均厚さから、以下の基準に準じて、膜厚形成性を評価した。
◎:平均厚さが1.3mm以上である。
○:平均厚さが1.2mm以上である。
△:平均厚さが1.0mm以上である。
×:平均厚さが1.0mm未満である。
得られた二色成形シート状物の任意の10か所の厚さをノギスで測定し、最大値と、最小値の差から、以下の基準に準じて、膜厚のばらつきとして評価した。
◎:最大値と、最小値の差が50μm未満である。
○:最大値と、最小値の差が50μm〜200μm未満である。
△:最大値と、最小値の差が200μm〜500μm未満である。
×:最大値と、最小値の差が500μm以上である。
図1に示すパウダースラッシュ成形機を用いて、同一条件で二色成形シート状物の製造を繰り返し、グロス現象(焼き付け現象)が生じるまでの製造回数を測定し、それを以下の基準に照らして、金型の耐グロス性として評価した。
◎:100回以上である。
○:80回以上である。
△:50回以上である。
×:50回未満である。
図1に示すパウダースラッシュ成形機を用いて、同一条件で二色成形シート状物の製造を繰り返し、金型にクラックが生じるまでの製造回数を測定し、それを以下の基準に照らして、金型の耐クラック性として評価した。
◎:100回以上である。
○:80回以上である。
△:50回以上である。
×:50回未満である。
実施例2〜3においては、加熱工程における金型の表面温度を、220℃および200℃にそれぞれ変えたほかは、実施例1と同様に、二色成形シート状物を作成して、評価した。
実施例4〜5においては、後加熱工程における吹き付け温度を、180℃および190℃にそれぞれ変えたほかは、実施例1と同様に、二色成形シート状物を作成して、評価した。
比較例1においては、加熱工程における金型の表面温度を、260℃に変えるとともに、後加熱処理を実施しなかったほかは、実施例1と同様に、二色成形シート状物を作成して、評価した。
なお、図11に、比較例1に準拠した金型の温度変化プロフィールを示す。
すなわち、図11中、B点が、加熱開始時の金型温度を示しており、加熱炉に投入した瞬間の金型温度は約48℃である。さらに、図11中、C点が、加熱終了時の金型温度を示しており、約260℃である。したがって、約2分の加熱工程において、約110℃/分の加熱速度で、金型の内面温度が上昇することが理解される。
一方、図11中、F点が、冷却開始時の金型温度を示しており、その温度は約205℃である。さらに、図11中、G点が、冷却終了時の金型温度を示しており、約50℃である。したがって、約36秒間の冷却工程において、約260℃/分の冷却速度で、金型温度が低下することが理解される。
比較例2においては、加熱工程における金型の表面温度を、280℃に変えるとともに、後加熱処理を実施しなかったほかは、実施例1と同様に、二色成形シート状物を作成して、評価した。
なお、金型の冷却工程において、約280℃/分の冷却速度で、金型温度が約50℃まで低下しており、クラック等が生じやすい傾向が見られた。
比較例3においては、加熱工程における金型の表面温度を、320℃に変えるとともに、後加熱処理を実施しなかったほかは、実施例1と同様に、二色成形シート状物を作成して、評価した。
なお、金型の冷却工程において、約320℃/分の冷却速度で、金型温度が約50℃まで低下しており、クラック等が生じやすい傾向が見られた。
比較例4においては、加熱工程における金型の表面温度を、200℃に変えるとともに、後加熱処理を実施しなかったほかは、実施例1と同様に、二色成形シート状物を作成しようとした。
しかしながら、実用的な厚さや強度を有する二色成形シート状物が得られなかったため、その後の評価を中止した。
すなわち、金型の搬送中や、他の処理時間の間に、非形成面である金型の外表面についても、所定温度に調整できることから、金型の内表面形状(湾曲、窪み、オフセット等)によらず、金型の内表面と外表面との温度差が小さくなって、金型の金属疲労や、成形樹脂の内表面に対する焼き付け現象の発生を効果的に抑制しつつ、金型全体を、均一かつ高速に加熱することができる。
Claims (8)
- 金型温度を220℃以下に加熱する金型加熱部と、
融点が160℃以下の成形樹脂を所定時間パウダリングして、所定厚さのシート状物を成形するパウダースラッシュ部と、
前記金型に形成されたシート状物を、後加熱処理する後加熱処理部と、
前記金型温度を60℃以下に冷却する金型冷却部と、
冷却したシート状物を脱型する金型加工部と、
を備えた低温加熱型パウダースラッシュ成形機であって、
前記後加熱処理部において、成形したシート状物の表面に、200℃以下の熱風を吹き付けて、後加熱処理することを特徴とする低温加熱型パウダースラッシュ成形機。 - 前記融点が160℃以下の成形樹脂を第1の樹脂とし、融点が180℃以上の成形樹脂を第2の樹脂とした時に、
前記金型加工部において、前記第2の樹脂を、前記金型の一部に塗布し、厚さ1〜200μmの第2の樹脂層を形成するための樹脂塗布装置が設けてあることを特徴とする請求項1に記載の低温加熱型パウダースラッシュ成形機。 - 前記後加熱処理部に付与する単位時間当たりの熱量(万kcal/hr)を、前記金型加熱部に付与する単位時間当たりの熱量の1/4〜2/3の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の低温加熱型パウダースラッシュ成形機。
- 前記パウダリングの所定時間を32〜40秒の範囲内の値とし、前記シート状物の所定厚さを1.1〜1.4mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の低温加熱型パウダースラッシュ成形機。
- 前記後加熱処理部が、前記金型加熱部の上方に設けてあり、当該金型加熱部の蓄熱を導入して、前記シート状物の表面に、200℃以下の熱風を吹き付けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の低温加熱型パウダースラッシュ成形機。
- 前記金型を、前記金型加熱部と、前記パウダースラッシュ部と、前記後加熱処理部と、前記金型冷却部と、前記金型加工部と、の間で移動させる搬送装置が備えてあり、当該搬送装置の一部に、前記金型の少なくとも外表面を加熱するための予備加熱装置が設けてあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の低温加熱型パウダースラッシュ成形機。
- 金型温度を220℃以下に加熱する金型加熱部と、
融点が160℃以下の成形樹脂を所定時間パウダリングして、所定厚さのシート状物を成形するパウダースラッシュ部と、
前記金型に形成されたシート状物を、後加熱処理する後加熱処理部と、
前記金型温度を60℃以下に冷却する金型冷却部と、
冷却したシート状物を脱型する金型加工部と、
を備えた低温加熱型パウダースラッシュ成形機を用いてなるパウダースラッシュ成形方法であって、
前記後加熱処理部において、成形したシート状物の表面に、200℃以下の熱風を吹き付けて、後加熱処理することを特徴とするパウダースラッシュ成形方法。 - 前記低温加熱型パウダースラッシュ成形機が、前記金型を、前記金型加熱部と、前記パウダースラッシュ部と、前記後加熱処理部と、前記金型冷却部と、前記金型加工部と、の間で移動させる搬送装置が備えており、当該搬送装置が、前記金型を移送する際に、前記金型とは異なる金型を、前記搬送装置の下方に把持して、同時に搬送することを特徴とする請求項7に記載のパウダースラッシュ成形方法。
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