JP2020029018A - パウダースラッシュ成形機及びパウダースラッシュ成形法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ダウンサイジング可能なパウダースラッシュ成形機、及びそのようなパウダースラッシュ成形機を用いてなるパウダースラッシュ成形法を提供する。【解決手段】金型を加熱する金型加熱部と、パウダースラッシュ部と、金型冷却部と、金型加工部と、金型を各部の間で移動させる搬送装置と、当該搬送装置の一部に、金型の少なくとも外表面を加熱するための予備加熱装置と、を備えてなるパウダースラッシュ成形機及びそのようなパウダースラッシュ成形機を用いてなるパウダースラッシュ成形法であって、金型加熱部の天井部に、金型の所定搬送方向に沿って、前後方向に両開きするシャッターが設けてあり、当該シャッターを開いて、金型の内面に形成したシート状物を後加熱する。【選択図】図1

Description

本発明は、パウダースラッシュ成形機及びパウダースラッシュ成形法に関する。特に、後処理炉を事実上不要とし、ダウンサイジングされたパウダースラッシュ成形機、及びそのようなパウダースラッシュ成形機を用いてなるパウダースラッシュ成形法に関する。
従来、自動車の内装材等の大型で、複雑形状を有するシート状物を製造するにあたり、パウダースラッシュ部と、金型冷却部と、を備えたパウダースラッシュ成形機を用いて、パウダー(粉末樹脂)をスラッシュ成形するパウダースラッシュ成形法が広く実施されている。
ここで、パウダーからなる内装材の厚さを均一化するために、各種金型を均一に加熱することが望まれている。
そこで、例えば、所定温度に制御された仮加熱工程及び予備加熱工程をそれぞれ備えて、金型を均一に加熱するとともに、金型を使用した後、所定温度の水中に浸漬して徐冷することを特徴とした皮革の形成方法としての、パウダースラッシュ成形法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、スラッシュ成形金型を多孔性金型として、該金型の材料投入口に熱風供給用ダクトの開口部を当接させ、該ダクトから熱風を金型内に圧送することを特徴とするスラッシュ成形金型の加熱方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平3−202329号公報 特開平4−191018号公報
しかしながら、上述した、いずれのスラッシュ成形装置においても、加熱炉や後加熱炉による、シート状物の形成面である金型の内表面に対する一方向からの熱風吹きつけによる加熱のみを考慮しており、金型全体としての高速加熱や均一加熱が、いまだ不十分であるという問題が見られた。特に、金型の大型化や異形化に伴い、湾曲したり、窪んだりした内表面部分の加熱が不十分になりやすいという問題が見られた。
そこで、かかる金型の大型化や異形化に対して、高速加熱や均一加熱を意図して、加熱炉のみならず、後加熱炉を設けることも提案されていた。
但し、このように後加熱炉を設けると、パウダースラッシュ成形機が大型化するか、あるいは、シート状物の製造工程に要する時間の過度な長時間化するという新たな問題が見られた。
そこで、本発明の発明者は鋭意検討した結果、所定構成のシャッターが設けてある金型加熱部を設けることにより、パウダースラッシュ部で成形したシート材を、迅速に後加熱することができようになった。
すなわち、後加熱炉を事実上廃止し、さらには、加熱炉自体を小型化することができるため、その分、ダウンサイジングされた、全体として、相当小型化や省スペース化されたパウダースラッシュ成形機を提供することを目的としている。
本発明によれば、金型温度が所定温度以上の値になるように金型を加熱する金型加熱部と、成形樹脂をパウダリングしながら吹きつけて、加熱した金型の内表面に、シート状物を成形するパウダースラッシュ部と、金型温度が所定温度以下となるように、金型を冷却する金型冷却部と、冷却したシート状物を、金型から脱型する金型加工部と、金型を、各部の間で、所定搬送方向に沿って移動させる搬送装置と、を備えてなるパウダースラッシュ成形機であって、金型加熱部の天井部に、金型の所定搬送方向に沿って、前後に両開きするシャッターが設けてあることを特徴とするパウダースラッシュ成形機が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明によれば、所定構成のシャッターが設けてある金型加熱部によって、小スペースにおいて、かつ迅速に、パウダースラッシュ部で成形したシート状物、特に、その裏面を後加熱することができる。
また、後加熱炉を事実上廃止して、加熱炉自体を小型化することができるため、その分、ダウンサイジングされ、全体として、省スペース化された、経済的なパウダースラッシュ成形機を提供することができる。
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、搬送装置の一部に、金型の少なくとも外表面を加熱するための予備加熱装置を備えてあることが好ましい。
このように遠赤外線加熱方式のヒーター等を有する予備加熱装置を備えることによって、金型の外表面はもちろんのこと、熱線である遠赤外線が内部まで浸透し、金型の内表面形状によらず、金型内面も含めて、金型全体を、均一かつ高速に加熱することができる。
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、金型加熱部の両側面に、天井部に向かって開放された切込みがあって、当該切込みに対して、金型を支持するシャフトが挿入されることが好ましい。
このように構成することによって、切込み位置等の調整で、より深く金型加熱部の内部の所定位置に、金型を配置することができ、所定温度に効率的かつ迅速に加熱することができる。
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、パウダースラッシュ部において、成形樹脂をパウダリングしながら吹きつけるためのパウダーボックスが設置してあり、かつ、当該パウダーボックスの底部に、当該パウダーボックスを上下動させるためのリフトが設けてあることが好ましい。
このように構成することによって、搬送機による金型の上下移動距離を短くして、その分、シート状物の製品一つを得るまでのタクト時間を短くすることができる。
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、金型を搬送する搬送装置が、所定搬送方向に沿って走行するための2本のレ−ルを備えているとともに、当該2本のレ−ルの上面又は側面と摺接するベアリング機構を有することが好ましい。
このように構成することによって、予備加熱装置等とともに、複数の金型を搬送する場合であっても、搬送装置のぶれを少なくして、安定的かつ正確に搬送することができる。
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、搬送装置が所定搬送方向に沿って走行する際の最下面を基準面としたときに、当該基準面の高さと、金型加熱部の側方突出部の高さと、パウダースラッシュ部に設けてある回転軸受けの高さと、冷却部に設けてある回転軸受けの高さとが、相互に等しいことが好ましい。
このように構成することによって、搬送機による金型の上下移動距離を短くして、その分、シート状物の製品一つを得るまでの時間(タクトタイム)を短くすることができる。
また、本発明の別の態様は、金型温度が所定温度以上の値になるように金型を加熱する金型加熱部と、成形樹脂をパウダリングしながら吹きつけて、加熱した金型の内表面に、シート状物を成形するパウダースラッシュ部と、金型温度が所定温度以下となるように、金型を冷却する金型冷却部と、冷却したシート状物を、金型から脱型する金型加工部と、金型を、各部の間で移動させる搬送装置と、を備えたパウダースラッシュ成形機を用いてなるパウダースラッシュ成形法である。
そして、搬送装置が、金型を把持して、金型加工部から、金型加熱部に移送する工程と、天井部に、金型の所定搬送方向に沿って、前後に両開きするシャッターが設けてある金型加熱部において、金型温度が所定温度以上の値になるように少なくとも金型の内表面を加熱する工程と、搬送装置が、加熱された金型を把持して、金型加熱部から、パウダースラッシュ部に移送した後、成形樹脂をパウダリングしながら吹きつけて、加熱した金型の内表面に、シート状物を成形するする工程と、金型を冷却する冷却工程と、冷却したシート状物を、金型から脱型する工程と、を含み、かつ、搬送装置が、金型を把持して、パウダースラッシュ部から、金型冷却部に移送する工程の間に、シャッターが、金型の所定搬送方向に沿って、前後方向に両開きし、その隙間から熱風を吹き出して、成形したシート状物を後加熱することを特徴とするパウダースラッシュ成形法である。
すなわち、本発明のパウダースラッシュ成形法によれば、所定構成のシャッターが設けてある金型加熱部によって、小スペースにおいて、かつ迅速に、パウダースラッシュ部で成形したシート状物、特に、その裏面を後加熱することができる。
したがって、後加熱炉を事実上廃止し、さらには、加熱炉自体を小型化することができるため、その分、ダウンサイジングされた小型のパウダースラッシュ成形機を用いたパウダースラッシュ成形法を提供することができる。
また、本発明のパウダースラッシュ成形法を実施するにあたり、金型加工部において、金型を、シャフトを中心に水平方向から、鉛直方向に回転させた後、シャフトの位置を、段階的又は無段階で下降させることが好ましい。
このように金型加工部において、金型を回転移動させた後、段階的又は無段階で低くなるように移動させることができ、成形したシート材の脱型が極めて容易になる。
図1は、本発明のパウダースラッシュ成形機を説明するために供する側面図である。 図2は、本発明のパウダースラッシュ成形機を説明するために供する斜視図である。 図3(a)〜(d)は、金型加工部における、シート状物の脱型方法を説明するために供する図である。 図4は、搬送装置のレール部材を説明するために供する図である。 図5(a)〜(b)は、金型加熱部を説明するために供する図である。 図6(a)〜(c)は、パウダースラッシュ部を説明するために供する図である。 図7(a)〜(b)は、金型冷却部を説明するために供する図である。 図8(a)〜(d)は、シャッターの構造を説明するために供する図である。 図9(a)〜(b)は、金型加熱部における金型の後加熱処理を説明するために供する図である。 図10は、パウダースラッシュ成形法のサイクルを説明するために供する図である。
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1に例示するように、金型温度が所定温度以上の値になるように金型60を加熱する金型加熱部(A部)と、成形樹脂92をパウダリングしながら吹きつけて、加熱した金型60の内表面に、シート状物94を成形するパウダースラッシュ部(B部)と、金型温度が所定温度以下となるように、金型60を冷却する金型冷却部(C部)と、金型60を交換する金型交換部(D部)と、冷却したシート状物94を、金型60から脱型する金型加工部(E部)と、金型60を、各部の間で、所定搬送方向に沿って移動させる搬送装置62と、を備えてなるパウダースラッシュ成形機10である。
そして、金型加熱部の天井部に、金型60の所定搬送方向に沿って、前後に両開きするシャッター59が設けてあることを特徴とするパウダースラッシュ成形機10である。
以下、図1等を適宜参照して、第1の実施形態のパウダースラッシュ成形機10を具体的に説明する。
なお、図1及び2は、パウダースラッシュ部(B部)と、金型冷却部(C部)がそれぞれ独立してなるパウダースラッシュ成形機10の側面図、及び斜視図(搬送装置62は略図。)を示している。
1.基本的構成
図1及び2に示すパウダースラッシュ成形機10の場合には、少なくとも4つの金型60(60A、60B、60C、60D)が用いられることを前提として、それぞれ所定時期に、金型加工部(E部)、予備加熱部、金型加熱部(A部)、パウダースラッシュ部(B部)、金型冷却部(C部)、金型交換部(D部)、再び金型加工部(E部)の順に、予備加熱装置62aと上下移動部材62bと水平移動部材62cを備えた搬送装置62によって、4つの金型60が各部を移動する構成であることが好ましい。
そして、それぞれのパウダースラッシュ成形機10において、同時に複数の金型を用いて、一連のパウダースラッシュ成形を完結するための処理(加熱処理、パウダースラッシュ処理、後加熱処理、冷却処理、脱型処理)が並行的に行われ、最終的に、樹脂成形品であるシート状物94を迅速かつ安定的に得ることができる。
2.金型加工部
(1)基本構成
図1等に示される金型加工部(E部)は、パウダースラッシュ成形したシート状物94を、金型60から取り出す脱型作業と、任意工程ではあるが、シート状物94を対象とする場合には、樹脂塗布装置による金型60に対する塗布作業等と、を行うための部位である。
金型加工部(E部)に備えられた脱型装置11は、図3(a)〜(d)に示されるように、金型60を、シャフト13を中心に水平方向から、鉛直方向に回転させることができ、シャフト13の高低位置も変更可能となっている。
このような構造とすることで、人的作業を行う場合において、好適な位置にシート状物94を伴う金型60を配置でき、脱型作業や塗布作業等を効率よく行えるため、シート状物94の製品一つを得るまでの時間(タクトタイム)を短縮することができる。
(2)樹脂塗布装置
また、二色成形シート(図示せず)を作成する場合、金型加工部(E部)に、所定厚さの塗布層を形成するための樹脂塗布装置(図示せず)が設けてあることが好ましい。
ここで、樹脂塗布装置の形態は、特に制限されるものでないが、樹脂を吐出するためのノズル部(スプレーノズルと称する場合がある。)と、かかるノズル部の位置や回転方向を定める駆動装置や、樹脂を貯蔵するための塗料貯蔵部を、含んでいることが好ましい。
すなわち、樹脂塗布装置のノズル部及びその駆動装置によって、塗料貯蔵部に貯蔵してある第樹脂を、金型60における所定個所に対して、均一かつ迅速に塗布することができる。
3.搬送装置
図1等に示されるように、金型60は、移動及び迅速処理を容易にするため、フレーム部材61に取りつけられており、当該フレーム部材61とともに、搬送装置62によって、金型加工部(E部)をスタート地点として、所定部の間を、任意に移動できるように構成されている。
より具体的には、図2に示されるように、搬送装置62は、例えば、水平方向である矢印Fに沿って、それぞれ金型60を把持した状態で移動し、鉛直方向である矢印Gに沿って、保持した金型60を移動させることができる。
搬送装置62の、水平方向である矢印Fに沿った移動に関しては、図4に示すように、水平移動部材62cの可動部間に設けられた、ボールベアリング62dが利用される。
可動部上方に設けられた光センサー62nと、センサー反射板62pによって、搬送装置62の水平位置を計測でき、円形ギア62e及びラックギア62jとサーボモーター62lにより、搬送装置62の水平方向における停止位置を調節できる。
また、基本構成の一つとして、図2等に示されるように、搬送装置62の上方には、予備加熱部として予備加熱装置62aおよび小型電源が備えられており、金型60の搬送中に、金型60の外表面(シート状物94の非形成面)についても、所定温度に調整できるように構成されている。
そして、予備加熱装置62aが備えられている搬送装置62の下方には、金型60を保持するための金型保持部材62qを備えた上下移動部材62bが設けてあり、当該上下移動部材62bを利用して、予備加熱される金型(第1の金型)60とは異なる、別の金型(第2の金型)についても把持して、同時搬送できるように構成してある。
したがって、一部上述したように、このように複数の金型(第1の金型および第2の金型)を同時搬送することによって、金型に所定処理を施すまでの待ち時間が少なくなって、シート状物94の製品一つを得るまでの時間(タクトタイム)をさらに短くすることができる。
4.予備加熱装置
図1や図2等に示すように、搬送装置62によって、金型60は、金型加工部(E部)から金型加熱部(A部)に移送されるが、その際、搬送装置62には、金型60の少なくとも外表面を加熱するための予備加熱装置62aが設けてあることを特徴とする。
すなわち、予備加熱装置62aによって、金型60の搬送中の時間を利用して、金型60におけるシート状物94の被形成面である外表面(金型内表面をA面と称するとともに、区別のため外表面をB面と称する場合がある。)を少なくとも所定温度に予備加熱することができる。
そのため、金型60の内表面と外表面との温度差が小さくなって、金型60の金属疲労や、成形樹脂の内表面に対する焼き付け現象の発生を効果的に抑制しつつ、金型全体を、均一かつ高速に加熱することができる。
ここで、かかる予備加熱装置62aとしては、遠赤外線加熱方式のヒーター(図示せず)を備えることが好ましい。
この理由は、このような遠赤外線加熱方式のヒーターとすることによって、金型60の少なくとも外表面の任意場所から、熱線としての遠赤外線が金型内部まで浸透するので、金型60の内表面形状によらず、金型全体を、より均一かつ高速に加熱できるためである。
また、このような遠赤外線加熱方式のヒーターであれば、比較的軽量化、省スペース化が図られるためである。
したがって、遠赤外線加熱方式のヒーターを搬送装置62の一部に取り付けたとしても、金型60を予備加熱しながら、当該搬送装置62を、円滑かつ高速に移送できるという利点が得られる。
また、予備加熱装置62aは、下方に開口した開口部(図示せず)を有しており、当該開口部を介して、金型60を収容する被覆部材を備えていることが好ましい。
この理由は、このように下方に開口した、概ね御椀型の被覆部材を備えることにより、金型60の周囲を、上方から覆いつつ、物理的に確実に把持できるためである。
また、かかる被覆部材であれば、断熱把持部材として、所定の断熱性を発揮し、予備加熱した金型60からの上方等への熱の放散があるとしても、かかる熱放散を有効に抑制することができる。
また、予備加熱による金型60の加熱に際して、金型60を100〜200℃の温度とすることが好ましく、165〜195℃の温度とすることがより好ましく、170〜190℃の温度とすることがさらに好ましい。
この理由は、このような温度となるように金型60の内表面、及び外表面を予備加熱することにより、加熱炉58において、金型の表面温度との温度差を少なくし、所定温度(例えば、250〜300℃)となるように本加熱する際に、高速かつ均一加熱がさらに容易になるためである。
さらに、予備加熱装置62aによる加熱時間は、通常、70〜100秒の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、加熱時間が70秒以下であると、金型60の温度が十分な温度に達せず、予備加熱としての効果を発揮せず、本加熱の時間の短縮化に寄与しない場合があるためである。
一方、加熱時間が100秒を超えると、金型60の所定搬送時間を越えてしまったり、あるいは、シート状物94の一枚当たりの成形時間(タクト時間)が過度に長くなる場合があるためである。
したがって、予備加熱時間を75〜95秒の範囲内の値とすることがより好ましく、80〜90秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
5.金型加熱部
(1)熱風発生装置
金型加熱部(A部)における、金型60を加熱するための熱風発生装置40の構造は、金型60を効率的に加熱できるものであれば、特に制限されるものではない。
したがって、例えば、図5(a)〜(b)にそれぞれ示すように、プロパンガス由来の火炎装置等により得られた熱風14を、熱風吹出口16の下方あるいは下側に設けた空気供給ファン46により、配管45や主配管43を通じて、熱風吹出口16から供給する構成であることが好ましい。
すなわち、かかる熱風発生装置40により得られた熱風14と、後述するエネルギ回収部54を通じて炉内から回収され、空気循環ファン42により混合室44に送り込まれた熱風14とを、混合室44において適宜混合した後、空気供給ファン46により、所定風速を有する大量の熱風14として、主配管43を通じて、熱風吹出口16に供給する構成であることが好ましい。
なお、図5(a)は、一つのシート状物を成形するための金型60のための加熱炉58の例であって、図5(b)は、同時に二つのシート状物を成形するための金型60のための加熱炉58の例である。
そして、図5(a)〜(b)に示すように、例えば、主配管43の途中に、熱風貯留室39を設けるとともに、その熱風貯留室39の中であって、主配管43の出口部分に邪魔板49を設けることが好ましい。
また、同様に、金型60を加熱した後の、少なからず温度が高くて、多くのエネルギを有する熱風(熱エネルギ)14を回収するためのエネルギ回収部54を設けることが好ましい。
すなわち、加熱炉58の傾斜した炉内底面19に通じる開口部を有するとともに、熱風発生装置40に連なる分岐配管47を備えたダクト構造を有することが好ましい。そして、既に上述したように、エネルギ回収部54に連なる分岐配管47の途中に、ダンパ−47aを配設することが好ましい。
(2)加熱炉
図5(a)〜(b)、及び図8(a)〜(d)に示すように、加熱炉58の炉本体は、熱風発生装置40の上方に配置されていて、かつ、搬送装置62の所定搬送方向に沿って、前後に開閉可能なシャッター59を、天井部から側面に渡って備える平面長方形の箱状体として形成されている。
したがって、図8(a)〜(c)に示すように、シャッター59を所定搬送方向に沿って、前後に開くことで、金型60及びそのフレーム部材61を、上方から炉内に搬入できる。
さらに、図8(d)に示すように、シャッター59を閉じ、次いで、熱風発生装置40によって熱風14を吹き込むことにより、金型60に対して加熱できるように構成されている。
すなわち、このように構成することにより、狭いスペースにおいて、迅速かつ広く開くことができ、金型60等の搬入が容易になるばかりか、加熱炉58への熱エネルギの供給が容易になる。
その上、このように加熱処理を行うことによって、上述したエネルギ回収部54を利用して、加熱炉58からの熱エネルギの効率的回収についても容易になる。
そして、図5(a)〜(b)に示すように、加熱炉58においては、主配管43の出口部分に枝分かれさせて構成してあることが好ましい。
したがって、所定高さを有しており、かつ、加熱炉58内の金型60を側方からも加熱できるように、垂直方向に延出させたダクト構造、すなわち、側方熱風吹出口50を設けることが好ましい。
その上、かかる側方熱風吹出口50は、加熱炉58の内側に沿って配置してあることが好ましく、さらには、熱風発生装置40に連なる分岐配管41や、主配管43に連結してあり、その風量をダンパ48等によって調節することが好ましい。
(3)温度
また、金型加熱部(A部)において、加熱炉58を用いて、塗布層を形成した金型(例えば、厚さ3.5mmのニッケル鋳造合金製)60を加熱する際に、当該金型60の内表面温度、すなわち、金型温度を、例えば、220〜300℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金型温度が300℃を超えると、成形樹脂の焼き付け現象に起因したグロス現象が頻繁に生じたり、金型60の金属疲労により、冷却時に金型60にクラックが生じたりする場合があるためである。
したがって、金型温度を、例えば、230〜280℃の範囲内の値とすることがより好ましく、240〜260℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
さらに、加熱工程を実施するに際して、熱風14による加熱時間を、通常、75〜105秒の間とすることが好ましい。
この理由は、かかる加熱時間が75秒以下となると、加熱の均一性が不十分となる可能性があるためである。
一方、かかる加熱時間が105秒を超えると、金型60の所定搬送時間を越えてしまったり、あるいは、シート状物94の一枚当たりの成形時間(タクト時間)が過度に長くなる場合があるためである。
したがって、加熱時間を80〜100秒の範囲内の値とすることがより好ましく、85〜95秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
このような好適時間等で、所定温度により加熱工程を行うことにより、金型温度が所定の均一温度になり、後工程であるパウダースラッシュ工程で均一な厚さのシート状物94を成形できるためである。
(4)突出部
また、金属加熱部(A部)において、搬送装置62の水平移動方向の矢印Fに沿った側面に、図2に示すように突出部68が設けてあり、当該突出部68の高さと、搬送装置62が水平方向に移動する際の最下面の高さ(t)と、パウダースラッシュ部に設けてある回転軸受けの高さと、冷却部に設けてある回転軸受けの高さとが、相互に等しいことが好ましい。
これは、各部における金型が設置される高さを、可能な限り等しくすることで、搬送装置62による金型の上下移動距離を短くして、その分、シート状物94の製品一つを得るまでの時間(タクトタイム)を短くすることができるためである。
6.パウダースラッシュ部
(1)基本的構成
また、パウダースラッシュ部(B部)は、図6(a)〜(c)及び図6(a)に示されるように、加熱されたフレーム部材61を含む金型60と、流動状体の成形樹脂92を収容したリザーバタンク88とを、記号Aで示される金型60の内表面を下向きにするとともに、リザーバタンク88の開口面を上向きにした状態で、上下に一体的に連結する工程を実施するための部位である。
より具体的には、図1、図6(a)〜(c)及び図7(a)を参照して、パウダースラッシュ成形法を実施するパウダースラッシュ部(B部)を説明する。
すなわち、図6(a)に示すように、加熱炉58における熱風14によって、塗布層(図示せず)が形成された金型60を所定温度に加熱、特に、金型内表面に対して熱風14を吹き付けて、所定温度に加熱する。
次いで、図6(b)に示すように、金型60を、リザーバタンク88の上方に位置合わせした上で、載置する。
なお、パウダースラッシュ部における、金型60の設置位置である回転軸の受けの高さは、リフト31によって変更することができる。
本実施形態においては、かかるリフト31の最大高さと、搬送装置62が水平方向に移動する際の最下面の高さ(t)と、加熱部の突出部68の高さと、冷却部に設けてある回転軸受けの高さとが、相互に等しいことが好ましい。
次いで、図6(c)に示すように、金型60を、リザーバタンク88と一緒に、回転させる。
そして、これらを回転させる際に、リザーバタンク88の内部に収容された成形樹脂92の分散性を向上させ、均一な厚さのシート状物94を形成するために、リザーバタンク88の下方に設けた攪拌室88aに空気を導入して、パウダー状の成形樹脂92を流動状態とすることが好ましい。
すなわち、攪拌室88aの上方は、穴開き部材、例えば、メッシュ部材から構成してあり、導入された空気によって、成形樹脂92を巻き上げる構造であることが好ましい。
さらに、回転させる際に、成形樹脂92の流動状態を活性化させ、均一な製膜ができるように、図6(c)に示すように、フレーム部材61に設けてある振動部材を、ハンマー100の先端部108で繰り返し叩くことが好ましい。
次いで、図7(a)に示すように、所定時間静置して、成形樹脂92を所定個所に沈降させる。その際、成形樹脂92が早期に非流動状態となるように、空気を脱気して、減圧操作を行うことが好ましい。
この操作の後、パウダースラッシュ成形が終了した金型60が、金型冷却部(C部)に移送されて、そこで、金型60の内表面に形成されたシート状物94とともに、金型60の背面側の外表面に対して、所定の冷却が行われる構成である。
(2)型枠
また、パウダースラッシュ部(B部)において、フレーム部材61を含む金型60を反転させる際、かかる金型60における所望の内表面(A)のみに、シート状物94を形成できるように、金型60と、リザーバタンク88との間に、所定の厚さ(高さ)を有する型枠84a、84bを設けることが好ましい。
ここで、かかる型枠84bの下部を、例えば、アルミニウムから構成し、一方の型枠84aの上部をシリコーンゴム/フッ素樹脂フィルムの組合せから構成することにより、金型60と、リザーバタンク88との間の隙間を充填する役目を果たすこともできる。
(3)成形樹脂
また、パウダースラッシュ部(B部)で使用する成形樹脂としては特に制限されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂(熱可塑性ウレタン樹脂も含む。)、ポリエステル樹脂(熱可塑性ポリエステル樹脂も含む。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(熱可塑性オレフィン樹脂も含む。)、シリコーン樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、塩化ビニル樹脂や熱可塑性ウレタン樹脂であれば、下地層を形成する樹脂との親和性が良好であって、強固な接着性が得られ、さらには、低温脆性に優れていることから、好適な樹脂である。
(4)パウダリング時間
また、パウダースラッシュ部(B部)において、上述したように、均一な厚さのシート状物94を形成すべく、パウダリング時間を18〜45秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるパウダリング時間が18秒未満の値になると、成形樹脂92が容易に熱溶解して、所定厚さを有するシート状物94を形成することが困難となる場合があるためである。
一方、かかるパウダリング時間が45秒を超えた値になると、金型60を所定温度まで加熱する時間、ひいては、シート状物94の製品一つを得るまでのタクトタイムが過度に長くなって、経済的に不利となる場合があるためである。
したがって、パウダースラッシュ部(B部)において、パウダリング時間を20〜40秒の範囲内の値とすることがより好ましく、25〜38秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
7.金型冷却部
(1)構成1
金型冷却部(C部)は、図7(b)に示すように、フレーム部材61を含む金型60を、水冷あるいは空冷等の冷却装置55により冷却して、塗布層及びシート状物94を所定程度に固化させるための冷却ブースからなる構成部位である。
かかる金型冷却部に関しては、第1のエアブロー、ミスト/シャワー、及び第2のエアブローの組み合わせによる、少なくとも三段階ステップによる金型冷却構成とすることが好ましい。
すなわち、最初に、シート状物94が形成された150℃程度の金型60の内部及び外部に対し、第1のエアーとして、空気を吹き付けて、金型温度を約100℃程度まで低下させることが好ましい。
次いで、ミストノズル及びシャワーノズル、あるいはいずれか一方のノズル98から水ミスト及び水シャワーを、金型外部から吹き付けて、金型温度を約50℃程度まで低下させることが好ましい。
最後に、シート状物94が形成され、50℃程度まで冷却された金型60の外表面及び内表面に対し、第2のエアーとして、空気を吹き付け、さらに金型温度の蓄熱をとるとともに、金型表面に残留している水滴等を吹き飛ばし、金型における錆の発生を有効に防止することが好ましい。
したがって、金型冷却部(C部)に、冷却装置55として、シャワーノズル/ミストノズル98と、エアノズル(図示せず)を、併用して備えることが好ましい。
なお、シャワー装置/ミスト装置は、一つの給水タンクに連結されてあって、吹き出し口に設けた制御弁等の切り替え装置によって、噴霧量やシャワー量を決定することも好ましい。
(2)温度/時間
また、かかる金型冷却部(C部)に関して、シート状物94を含む金型60を、少なくとも三段階ステップによる冷却を実施し、金型温度を30〜60℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金型温度が60℃を超えると、次工程である脱型や、次サイクルの樹脂の塗布が困難となる場合があるためである。
但し、金型温度を30℃未満にすると、冷却時間が過度に長くなってしまう場合がある。
したがって、金型冷却部において、シート状物94を含む金型温度を35〜50℃の範囲内の値とすることがより好ましく、40〜45℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
そして、金型冷却部(C部)において、冷却時間を25〜50秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる冷却時間が25秒未満の値になると、シート状物94を含む金型温度を、所定値以下とすることが困難となる場合があるためである。
一方、かかる冷却時間が50秒を超えた値になると、金型60を所定温度まで冷却する時間、ひいては、シート状物94の製品一つを得るまでのタクトタイムが過度に長くなって、経済的に不利となる場合があるためである。
したがって、金型冷却部において、冷却時間を30〜45秒の範囲内の値とすることがより好ましく、35〜40秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(3)冷却速度(温度勾配)
また、金型冷却部(C部)において、金型60の冷却速度、すなわち、冷却時の温度勾配を100〜220℃/分の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金型60の冷却速度が100℃/分未満の値になると、金型を所定温度まで冷却する時間、ひいては、シート状物94の製品一つを得るまでのタクトタイムが過度に長くなって、経済的に不利となる場合があるためである。
一方、かかる金型の冷却速度が220℃/分を超えた値になると、金型を急冷することになって、熱疲労が著しく大きくなって、クラックが生じやすくなる場合があるためである。
したがって、金型冷却部(C部)において、金型60の冷却速度を120〜210℃/分の範囲内の値とすることがより好ましく、140〜200℃/分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
8.金型交換部
また、第1の実施形態のパウダースラッシュ成形機10は、金型交換部(D部)をさらに備えることが好ましい。
すなわち、かかる金型交換部(D部)を利用して、パウダースラッシュ成形の途中で、別種のシート状物94を成形するための金型に変更したり、パウダースラッシュ成形中に、金型損傷が生じたりする場合に対応するためである。
すなわち、そのような場合であっても、パウダースラッシュ成形機10を動作させたまま、金型を交換できるためである。
一方、かかる金型交換部(D部)は、交換用の金型を一時的に載置する箇所(仮台)ともなる。
したがって、かかる金型交換部(D部)には、金型を載置するための支持台を備えるとともに、支持台の位置が、外部制御によって、移動可能であることが好ましい。
9.シート状物
シート状物94の形態に関し、厚さを、通常、1〜3mmの範囲内の値とするとともに、例えば、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、またはポリエステル樹脂の少なくとも一つの樹脂から構成してあることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、汎用性が高く、安価であり、しかも装飾性に優れたシート状物94を提供できるためである。
したがって、例えば、シート状物94の厚さを1.1〜2mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1.1〜1.6mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図1等に例示されるように、金型温度が所定温度以上の値になるように金型60を加熱する金型加熱部(A部)と、成形樹脂92をパウダリングしながら吹きつけて、加熱した金型60の内表面に、シート状物94を成形するパウダースラッシュ部(B部)と、金型温度が所定温度以下となるように、金型60を冷却する金型冷却部(C)部と、冷却したシート状物94を、金型60から脱型する金型加工部(E部)と、金型60を、各部の間で移動させる搬送装置62と、を備えたパウダースラッシュ成形機10を用いてなるパウダースラッシュ成形法である。
そして、搬送装置62が金型60を把持して、金型加工部(E部)から、金型加熱部(A部)に移送する工程と、天井部に、金型60の所定搬送方向に沿って、前後に両開きするシャッター59が設けてある金型加熱部(A部)において、金型温度が所定温度以上の値になるように少なくとも金型60の内表面を加熱する工程と、搬送装置62が、加熱された金型60を把持して、金型加熱部(A部)から、パウダースラッシュ部(B部)に移送した後、成形樹脂92をパウダリングしながら吹きつけて、加熱した金型60の内表面に、シート状物04を成形するする工程と、金型60を冷却する冷却工程と、冷却したシート状物94を、金型60から脱型する工程と、を含み、かつ、搬送装置62が、金型60を把持して、パウダースラッシュ部(B部)から、金型冷却部(C部)に移送する工程の間に、シャッター59が、金型60の所定搬送方向に沿って、前後方向に両開きし、その隙間から熱風14を吹き出して、成形したシート状物94を後加熱することを特徴とするパウダースラッシュ成形法である。
以下、第2の実施形態のパウダースラッシュ成形法について、適宜図面を参照しながら具体的に説明する。
1.金型準備工程
金型準備工程は、図1等の金型加工部(E部)において、パウダースラッシュ成形したシート状物94を、金型60から取り出す脱型作業を行って、次工程のために、所定金型を準備する工程である。
また、任意工程ではあるが、二色成形のシート状物94を対象とする場合には、樹脂塗布装置による金型60に対する塗布工程を含むことも好ましい。
ここで、かかる塗布工程は、金型加工部(E部)において、所定の樹脂を、金型60の一部に塗布し、厚さ1〜200μmの塗布層を形成する樹脂塗布工程(以下、塗装工程と称する場合がある。)である。
すなわち、塗装工程は、金型60を所定箇所に配置するとともに、塗装装置、例えば、先端部がL字状であるスプレーノズルを装着したスプレー樹脂塗布装置を用いて、金型60の所定場所に対して、所定厚さの塗布層を形成する工程である。
その場合、所望の箇所以外の箇所に、塗料が付着しないように、マスキング部材を所定場所に予め装着しておくことが好ましい。
そして、塗布条件については特に制限されるものではないが、例えば、厚さ1〜200μmの塗布層を形成するのに、1〜60秒/m2の塗布速度とすることが好ましく、10〜30秒/m2の塗布速度とすることがより好ましい。
2.予備加熱工程
次いで、予備加熱工程は、金型加工部(E部)において塗布層を形成した金型60を、搬送装置62の一部に備えてなる予備加熱装置62aを用いて、例えば、100〜200℃の金型温度となるように、70〜100秒の間、金型60の内表面、及び外表面を加熱する工程(以下、予備加熱工程と称する場合がある。)である。
すなわち、かかる予備加熱工程は、所定の塗布層を形成した金型60を、金型加工部(E部)から金型加熱部(A部)に移動させる途中に、所定の塗布層を乾燥するとともに、金型60の内表面、及び外表面温度が所定温度となるように、予備加熱する工程である。
また、予備加熱工程において、把持した金型60に対して、かかる予備加熱装置62aを動作させ、金型60の表面温度を100〜200℃の範囲内の値とすることが好ましく、165〜195℃の範囲内の値とすることがより好ましく、170〜190℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、このような温度となるように金型60の表面を予備加熱することにより、加熱炉58において、金型の内表面、及び外表面温度の温度差を少なくし、所定温度(例えば、250〜300℃)となるように本加熱する際に、高速かつ均一加熱がさらに容易になるためである。
さらに、予備加熱装置62aによる加熱時間は、第1の実施形態において詳述したように、通常、70〜100秒の範囲内の値であることが好ましい。
また、予備加熱工程において、搬送装置62が、金型60を把持すると同時に、予備加熱装置62aにスイッチが入って、金型60を予備加熱することが好ましい。
この理由は、このように金型の把持動作と同期して、金型60を予備加熱することにより、金型60の移送時間を十分に利用でき、所定時間、例えば、70〜100秒を要する予備加熱工程を、金型60の移送時間内に完了させることができるためである。
但し、金型60を把持すると同時に、予備加熱装置62aにスイッチが入ると言っても、必ずしも0秒後である必要はなく、パウダースラッシュ成形の状況等に応じて、0.1秒後や1秒後であっても良い。
その他、予備加熱工程において、金型60の搬送時の温度低下を防止すべく、別の金型に対する加熱処理の間に、さらに別の金型を搬送装置62にクランプしながら、予備加熱処理を施すことも好ましい。
この理由は、所定の予備加熱処理によって、パウダースラッシュ部を含む一体箇所(B部/C部)での、加熱処理された金型に対するシート状物94の形成を、より迅速かつ安定的に行うことができ、ひいては、シート状物94の製品一つを得るまでの時間(タクトタイム)をより短期化できるためである。
なお、後述するように、金型60の温度が、例えば、260℃になるまで、加熱炉58の熱風14を循環利用して、金型60が加熱処理された後、パウダースラッシュ部(B部)に移動されることになる。
その際、かかる金型60をパウダースラッシュ部(B部)に移送するまでの間も、予備加熱装置62aによって、温度維持のための加熱として、金型の外表面の温度を、所望温度範囲の値に維持することができる。
すなわち、予備加熱装置62aによって、金型60の外表面を所定温度についても、それが維持されるような温度で加熱(予備加熱と区別して、維持加熱と称する場合がある。)することもできるので、パウダースラッシュ部において、シート状物94をさらに安定的に成形することができる。
3.加熱工程
次いで、加熱工程は、金型加熱部(A部)において、塗布層を形成した金型60につき、例えば、220〜300℃の金型温度となるように、加熱する工程(以下、加熱工程と称する場合がある。)である。
したがって、所定の塗布層を形成した金型60を金型加熱部(A部)に移動させて、加熱炉58内に搬入し、そこで、所定の塗布層を乾燥するとともに、金型60の内表面温度が所定温度となるように、加熱することが好ましい。
なお、第1の実施形態において、詳述したように、加熱工程を実施するに際して、通常、75〜105秒の範囲内の値となるように、熱風14による対流加熱を行うことが好ましい。
この理由は、金型温度が所定の均一温度になるように加熱でき、後工程であるパウダースラッシュ工程で均一な厚さのシート状物94を成形できるためである。
4.パウダースラッシュ工程
次いで、パウダースラッシュ工程は、パウダースラッシュ部(B部)において、塗布層を形成した金型60に対して、所定のシート状物94を成形する工程(以下、単に、スラッシュ工程と称する場合がある。)である。
すなわち、塗布層(図示せず)が形成され、加熱状態の金型60を、金型加熱部(A部)からパウダースラッシュ部(B部)に移動させ、そこで、塗布層の上、あるいは塗布層に隣接して、成形樹脂92からなるシート状物94を形成する工程である。
ここで、スラッシュ工程を実施するにあたり、フレーム部材61を含む金型60と、リザーバタンクとを連結した状態で回転させて、記号Aで示される金型60のシート内表面に所定の厚さのシート状物94を形成することが好ましい。
すなわち、フレーム部材61を含む金型60と、リザーバタンク88とを組み合わせた状態で、上下方向に反転させることが好ましい。
この理由は、このように実施すると、リザーバタンク88内の成形樹脂(パウダー)92は自重で、金型60の内表面(A面)に落下するので、かかる金型60の内表面に接する成形樹脂92及びその近傍の成形樹脂92のみが、金型60の熱によって溶融状態となって付着し、シート状物94を短時間(35〜45秒)に形成できるためである。
したがって、金型温度を220℃以下の値に加熱するとともに、パウダリング時間を調整し、かつ、200℃以下の熱風14を、シート状物94の裏面に対して、吹き付ける後加熱処理を実施することが有効であると理解される。
また、第1の実施形態において、詳述したように、均一な厚さのシート状物94を形成する観点から、パウダリング時間を、通常、18〜45秒の範囲内の値とすることが好ましい。
また、フレーム部材61を含む金型60を反転させる際、成形樹脂92が所定箇所以外に飛散せず、かかる金型60における所望の内表面(A面)のみに、シート状物94を形成できるように、攪拌室88aを介して吸引し、金型60内の圧力を低下させることが好ましい。
すなわち、金型60を回転させてパウダースラッシュ成形している最中には、金型60の内圧を低下させるために吸引し、パウダースラッシュ成形前には、リザーバタンク88に収容された成形樹脂92の内部に、所定量の空気を吹き込むための圧力調整装置(図示せず)が設けてあることが好ましい。
5.後加熱工程
次いで、図9(a)に示すように、シート状物94を含む金型60Aを、搬送装置62を用いて金型加熱部(A部)の上方に移動させる。
この時、金型加熱部(A部)内では別の金型60Bの加熱工程が行われており、図9(b)に示すように、金型加熱部(A部)の天井のシャッター59を、搬送装置62の所定搬送方向に沿って前後に約50cm両開きすることで、金型加熱部(A部)より排出される熱風14により、当該シート状物94を加熱する工程が後加熱工程である。
すなわち、金型60Aに形成されたシート状物94の裏面に、金型加熱部(A部)からの熱風14を吹きかけることで、当該シート状物94の裏面の成形樹脂92を溶融させ、平坦化させる工程である。
このように、金型加熱部(A部)の熱を利用し、シート状物94の後加熱工程を行うことで、後加熱炉を事実上廃止し、さらには、加熱炉自体を小型化することが可能となる。
また、後加熱処理を行うにあたっては、シート状物94の裏面に対して、通常、200℃以下の熱風14を、15〜28秒の範囲内の値で吹き当てることが好ましい。
このような時間で、後加熱処理を実施することで、シート状物94の裏面の成形樹脂92を、より好適に溶融させ、短時間で平坦化させることができる。
したがって、後加熱処理を実施する時間は、17〜26秒の間であることがより好ましく、19〜24秒の間であることがさらに好ましい。
6.金型冷却工程
次いで、金型冷却工程は、金型冷却部(C部)においてシート状物94を形成した金型60を冷却する工程(以下、金型冷却工程と称する場合がある。)である。
すなわち、シート状物94を成形した状態の金型60を、パウダースラッシュ部(B部)から金型冷却部(C部)に移動させ、そこで、少なくとも第1のエアブロー、ミスト/シャワー、及び第2のエアブローの組み合わせによる三段階ステップで、約53〜59秒間、冷却する工程である。
7.脱型工程
最後に、脱型工程は、金型加工部において、形成したシート状物94を、金型から脱型する工程(以下、脱型工程と称する場合がある。)である。
すなわち、冷却工程を経て、約60℃程度に低下したシート状物94を、金型60から脱型する工程である。
なお、かかる脱型工程は、ロボットを用いて自動的に行うこともできるし、あるいは図3に示すように人的作業として、シート状物94を脱型することもできる。
また、図3に示すように、金型加工部において、金型60を、シャフト13を中心に水平方向から、鉛直方向に回転させた後、シャフト13の位置を、段階的に下降させることが好ましい。
この理由は、このように金型加工部において、金型60を回転移動及び、段階的に低くなるように移動させることで、成形したシート状物94の脱型が極めて容易になるためである。
8.動作例
動作例では、図1及び図2に示すように、図面上、左側から、金型加工部(E部)、金型交換部(D部)、金型冷却部(C部)、金型加熱部(A部)、パウダースラッシュ部(B部)の順に配置されたパウダースラッシュ成形機10を想定して、予備加熱装置62a等を備えた搬送装置62によって、複数の金型が各部を移動し、シート状物94を成形する各処理のサイクルを、図10の工程図に示す記号S1〜S7として説明することができる。
すなわち、動作例では、例えば、初期状態で金型Aが脱型を完了した状態で、金型加工部(E部)に設置されており、金型冷却部(C部)には金型Bが、金型加熱部(A部)には金型Cが、パウダースラッシュ部には金型Dがそれぞれ設置されており、各々で冷却、加熱、成形のそれぞれの工程が進行しているとする。
ここで、搬送装置62が金型加工部(E部)上方にすることで、記号S1で示す工程となる。
そして、例えば、図10の記号S2に示すように、搬送装置62が金型加工部(E部)から動作を開始する場合、まず金型Aを予備加熱装置62aに把持し予備加熱を開始し、そのまま金型冷却部(C部)の、冷却工程を完了した金型Bを金型加工部(E部)に搬送し、金型Bの脱型工程を開始する。
続けて、記号S3に示すように、搬送装置62はパウダースラッシュ部(B部)へ移動し、成形工程を完了した金型Dを把持し、そのまま金型加熱部(A部)上方へ移動する。
金型加熱部(A部)上方では、図10の記号S4に示すように、金型加熱部(A部)のシャッター59が開き、熱風による金型Dの後加熱が行われる。
後加熱工程終了後は、金型Dが金型冷却部に搬送され、冷却工程が開始される。
さらに、図10の記号S5に示すように、搬送装置62はそのまま、金型加熱部(A部)へ移動し、加熱工程を完了した金型Cを把持した後、パウダースラッシュ部へ搬送して成形工程を開始する。
ここで、図10の記号S6に示すように、予備加熱工程を行っていた金型Aを金型加熱部(A部)の加熱炉内へ搬送し、金型Aの加熱工程を開始する。
金型Aの加熱工程開始後は、予備加熱装置62aに金型が把持されていない状態となり、図10の記号S7に示すように、脱型の終了した金型Bの搬送のために、搬送装置62が金型加工部(E部)へ移動し、1つのサイクルが終了する。
ここで、金型60が1つであると想定した場合、金型60の予備加熱を開始し、金型60に成形されるシート状物94が、脱型にて外され製品として得られるまでの時間は、搬送装置62の移動時間も含めると380〜430秒となる。
しかしながら、かかる動作例1では、上述したように、例えば金型Bに対して、脱型を行っている際の、次工程への待ち時間に、別の金型である金型A、C、Dに対して、加熱工程や冷却工程を行うなど、並行して工程を進めることで、シート状物94の製品一つを得るまでのタクトタイムを、110〜120秒に短縮することができる。
また、かかる動作例では、搬送装置62が移動する際の最下面を基準面としたときに、当該基準面の高さと、金型加熱部(A部)の側方の突出部68の高さと、パウダースラッシュ部(B部)に設けてある回転軸受けの高さと、冷却部(C部)に設けてある回転軸受けの高さとが、相互に等しく構成されることから、金型の搬送時に必要とされる金型の持ち上げ高さが大きく限定される。
そのため、1回の金型の上昇、および下降動作にかかる時間を、約3〜5秒に短縮できる。
よって、トータルとして110秒以下、より好ましくは、100秒以下のタクトタイムで、1つのシート状物94を製品として得ることができる。
[実施例1]
1.シート状物の作成
(1)金型の準備工程
図1に示す金型加工部(E部)において、所定の金型(ニッケル電鋳型、厚さ3.5mm)を4つ準備し、金型A〜Dとした。
(2)予備加熱工程
次いで、マスキング部材を脱着した後、図1に示す金型加工部(E部)から、予備加熱装置に金型Aを移動させた。
その際、搬送装置が、金型を把持するのと同期させて、遠赤外線方式のヒーターをスタートさせ、金型の外表面温度が、例えば180℃となるように、約90秒間、予備加熱を行った。
(3)脱型工程1
次いで、搬送装置に取り付けた予備加熱装置を用いて、金型Aを搬送中に、予備加熱しながら、金型冷却部にて50℃以下に冷却されたシート状物を含む金型Bを、搬送装置を用いて移動させた後、シート状物を人的作業により脱型工程を開始した。
(4)後加熱工程
次いで、図1に示すように、予備加熱装置による金型Aの加熱を継続しつつ、パウダースラッシュ部(B部)へ搬送装置を移動させ、成形工程の完了したシート状物を含む金型Cを、金型加熱部(A部)の上方へ搬送した。
ここで、金型加熱部(A部)のシャッターを50cm開き、排出される熱により、シート状物の裏面を約20秒間加熱した。
(5)冷却工程
次いで、図1に示すように、予備加熱装置による金型Aの加熱を継続しつつ、搬送装置を用いて、シート状物を含む金型Cを、金型冷却部(C部)へ搬送した。
次いで、冷却ブースが、金型を把持するフレーム部材と係合するとともに、シート状物が形成された金型を事実上、上向きとし、金型の内表面を外部に解放した状態で、金型の下方から、外表面に対して、冷却水をシャワーまたは冷却ミストを吹き付けた。
すなわち、金型の外表面に対して、第1のエアー(乾燥空気)を約20秒間吹き付けることにより、シート状物の表面温度が約100℃に低下することを確認した。
次いで、金型の外表面に対して、ミスト/シャワー冷却を約20秒間実施し、シート状物の表面温度が、約100℃から、約55℃に低下することを確認した。
さらに、第2のエアー(乾燥空気)を約15秒間吹き付け、シート状物の表面に付着した水滴を飛散させるとともに、金型温度が、約55℃から、約50℃まで低下することを確認した。
(6)パウダースラッシュ工程
次いで、図1に示すように、予備加熱装置による金型Aの加熱を継続しつつ、金型加熱部(A部)からパウダースラッシュ部(B部)に、搬送装置を用いて金型Dを移動させ、パウダースラッシュ成形機を用いて、所定の塗布層が形成された金型に対して、耐熱塩化ビニル樹脂からなる成形樹脂(平均粒径:30μmパウダー)を、約40秒間パウダースラッシュ成形し、厚さ約1.3mmのシート状物を得た。
また、金型加熱部(A部)からパウダースラッシュ/冷却部(B/C部)に移動させる約15秒の間に、搬送装置に取り付けた予備加熱装置を用いて、金型温度を所定温度(約130℃)に維持する予備加熱を行ったところ、金型の内表面温度がほとんど低下しないことを確認した。
それに対して、従来の予備加熱無しの搬送装置を用いた場合には、金型加熱部(A部)からパウダースラッシュ部(B部)に移動させる間に、金型の内表面温度が約10〜30℃低下し、パウダースラッシュ成形に影響することが別途判明している。
(7)加熱工程
次いで、図1に示すように、予備加熱装置により加熱された金型Aを、温度が約430℃に維持された加熱炉(単位時間あたりの供給熱量:30万kcal/hr)の内部に収容して、目安として、金型の内表面温度が約260℃になるように、約90秒間加熱した。
なお、金型温度としての金型の内表面温度は、上述した非接触赤外線温度計、サーモグラフィ温度計、あるいは、接触式熱電対によって、直接的に測定することができる。
あるいは、非接触赤外線温度計等によって、金型の外表面温度を測定し、それから、金型の素材や厚さ等を考慮して、内表面温度を推定する、すなわち、間接的に測定することも可能である。
(8)脱型工程2
次いで、図1に示すように、搬送装置を金型加工部(E部)へ移動させ、脱型工程が完了した金型Bを把持可能な位置に停止させた。
ここで金型Bより脱型されたシート状物を、実施例1のシート状物とした。
2.シート状物の評価
得られたシート状物の裏面の算術平均粗さRaをレーザー顕微鏡で測定し、その算術平均粗さRaから、以下の基準に準じて、裏面の滑らかさを評価した。その結果、実施例1のシート状物の評価は◎であった。
◎:算術平均粗さRaが50μm未満
○:算術平均粗さRaが50μm以上、100μm未満
△:算術平均粗さRaが100μm以上、300μm未満
×:算術平均粗さRaが300μm以上
また、図1に示すパウダースラッシュ成形機を用いて、同一条件でシート状物の製造を繰り返したところ、10000回以上の使用によっても、グロス現象(焼き付け現象)が生じないとともに、金型におけるクラックの発生も見られないことを確認した。
さらに、同一条件でシート状物の製造を繰り返した際、シート状物の製品が得られた後、次にシート状物の製品が得られるまでの時間を計測した。
その結果、かかる時間の平均値は102秒であった。
[実施例2]
実施例2においては、二色シート状物を形成したほかは、実施例1と同様に、シート状物を作成して、評価した。
すなわち、金型加工部(E部)において、金型にマスキング部材を装着した後、樹脂塗布装置を用いて、所定箇所に対して、第2の樹脂として、耐熱性塩化ビニル樹脂(N−マレイミドグラフト重合塩化ビニル樹脂100重量部、硬化剤10重量部、可塑剤5重量部、三塩基性硫酸鉛2重量部、ステアリン酸鉛2重量部)を用いて、厚さ20μmの塗布層を成形した。その結果、実施例2のシート状物の評価は◎であった。
また、図1に示すパウダースラッシュ成形機を用いて、同一条件でシート状物の製造を繰り返したところ、10000回以上の使用によっても、グロス現象(焼き付け現象)が生じないとともに、金型におけるクラックの発生も見られないことを確認した。
さらに、同一条件でシート状物の製造を繰り返した際、シート状物の製品が得られた後、次にシート状物の製品が得られるまでの時間の平均は118秒であった。
[比較例1]
比較例1においては、加熱工程における金型の表面温度を、搬送装置に取り付けた予備加熱装置による予備加熱と、成形工程後、金型加熱部上方のシャッターが両開きすることによる、隙間からの熱風での、シート状物の後加熱工程と、を全く行わなわなかったほかは、実施例1と同様に、シート状物を作成して、評価した。
その結果、比較例1のシート状物の評価は×であった。
また、図1に示すパウダースラッシュ成形機を用いて、同一条件でシート状物の製造を繰り返したところ、100回未満の使用によって、グロス現象(焼き付け現象)が生じたり、あるいは、金型におけるクラックが発生したりすることを確認した。
さらに、同一条件でシート状物の製造を繰り返した際、シート状物の製品が得られた後、次にシート状物の製品が得られるまでの時間は平均180秒であった。
本発明のパウダースラッシュ成形機及びパウダースラッシュ成形法によれば、本来、金型の内表面を主として加熱する加熱炉を、所定構造の後加熱炉として利用することを可能としたことにより、後処理炉を事実上不要とし、ダウンサイジングされたパウダースラッシュ成形機、及びそのようなパウダースラッシュ成形機を用いてなるパウダースラッシュ成形法が提供できるようになった。
また、搬送装置の一部に、金型の少なくとも外表面を加熱するための予備加熱装置を備えてあることによって、金型の外表面はもちろんのこと、金型内面も含めて、金型全体を、均一かつ高速に加熱することができるようになった。
また、金型加熱部の両側面に、天井部に向かって開放された切込みがあって、当該切込みに対して、金型を支持するシャフトが挿入される構成とすることによって、切込み位置等を調整することによって、搬送機によって、金型加熱部の内部の所定位置に、金型を配置して、所定温度に効率的かつ迅速に加熱することができるようになった。
また、パウダースラッシュ部において、成形樹脂をパウダリングしながら吹きつけるためのパウダーボックスが配置してあり、かつ、当該パウダーボックスの底部に、当該パウダーボックスを上下動させるためのリフトが設けてあることから、搬送機による金型の上下移動距離を短くして、その分、シート状物の製品一つを得るまでのタクトタイムを短くすることができる。
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、金型を搬送する搬送装置が、所定搬送方向に沿って走行するための2本のレ−ルを備えているとともに、該2本のレ−ルの上面又は側面と摺接するベアリング機構を有することによって、予備加熱装置等とともに、複数の金型を搬送する場合であっても、搬送装置のぶれを少なくして、安定的かつ正確に搬送することができるようになった。
さらにまた、搬送装置が所定搬送方向に沿って走行する際の最下面を基準面としたときに、当該基準面の高さと、金型加熱部の側方突出部の高さと、パウダースラッシュ部に設けてある回転軸受けの高さと、冷却部に設けてある回転軸受けの高さとを、相互に等しくすることによって、実質的に水平移動させることができ、ひいては、搬送機による下降時間や昇降時間を相当省略することができるようになった。
よって、以上の構成によって、後加熱炉を事実上廃止でき、さらには、加熱炉自体を小型化することができるため、その分、ダウンサイジングされた、全体として、相当小型化や省スペース化されたパウダースラッシュ成形機を提供することが期待される。
その上、シート状物の製品一つを得るまでのタクトタイムを、いわゆる4型においては100〜110秒以下の値まで、短縮できるようになり、自動車の内装材やバンパー等の製造装置として、安価かつ好適に使用されることも期待される。
10:パウダースラッシュ成形機、11:脱型装置、13:シャフト、14:熱風、15:フレーム高さ調節部材、16:熱風吹出口、17:フレーム向き調節部材、18:支持柱、19:炉内底面、20:架台、31:リフト、40:熱風発生装置、41:分岐配管、43:主配管、48:ダンパ、49:邪魔板、54:エネルギ回収部、55:冷却装置、58:加熱炉、59:シャッター、60、60A、60B、60C、60D:金型、61:フレーム部材、62:搬送装置、62a:予備加熱装置、62b:上下移動部材、62c:水平移動部材、62d:ボールベアリング、62e:円形ギア、62f:工型鋼材、62g:レール部固定部材、62h:可動部材、62i:レール部材、62j:ラックギア、62k:上下位置調整部材、62l:サーボモーター、62m:センサー固定台、62n:光センサー、62o:水平可動部固定台、62p:センサー反射板、62q:金型保持部材、64:粉体ボックス、65:パウダースラッシュ装置、66:交換装置、67、加工装置、68:突出部、70:作業員84a、84b:型枠、88:リザーバタンク、88a:攪拌室、92:成形樹脂、94:シート状物

Claims (8)

  1. 金型温度が所定温度以上の値になるように金型を加熱する金型加熱部と、
    成形樹脂をパウダリングしながら吹きつけて、加熱した前記金型の内表面に、シート状物を成形するパウダースラッシュ部と、
    前記金型温度が所定温度以下となるように、前記金型を冷却する金型冷却部と、
    冷却したシート状物を、前記金型から脱型する金型加工部と、
    前記金型を、各部の間で、所定搬送方向に沿って移動させる搬送装置と、
    を備えてなるパウダースラッシュ成形機であって、
    前記金型加熱部の天井部に、前記金型の所定搬送方向に沿って、前後に両開きするシャッターが設けてあることを特徴とするパウダースラッシュ成形機。
  2. 前記搬送装置の一部に、前記金型の少なくとも外表面を加熱するための予備加熱装置を備えてなる請求項1に記載のパウダースラッシュ成形機。
  3. 前記金型加熱部の両側面に、天井部に向かって開放された切込みがあって、当該切込みに対して、前記金型を支持するシャフトが挿入されることを特徴とする請求項1又は2に記載のパウダースラッシュ成形機。
  4. 前記パウダースラッシュ部において、前記成形樹脂をパウダリングしながら吹きつけるためのパウダーボックスが配置してあり、かつ、当該パウダーボックスの底部に、当該パウダーボックスを上下動させるためのリフトが設けてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のパウダースラッシュ成形機。
  5. 前記搬送装置が、所定搬送方向に沿って走行するための2本のレ−ルを備えているとともに、該2本のレ−ルの上面又は側面と摺接するベアリング機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のパウダースラッシュ成形機。
  6. 前記搬送装置が所定搬送方向に沿って走行する際の最下面を基準面としたときに、当該基準面の高さと、前記金型加熱部の側方突出部の高さと、前記パウダースラッシュ部に設けてある回転軸受けの高さと、前記冷却部に設けてある回転軸受けの高さとが、相互に等しいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のパウダースラッシュ成形機。
  7. 金型温度が所定温度以上の値になるように金型を加熱する金型加熱部と、
    成形樹脂をパウダリングしながら吹きつけて、加熱した前記金型の内表面に、シート状物を成形するパウダースラッシュ部と、
    前記金型温度が所定温度以下となるように、前記金型を冷却する金型冷却部と、
    冷却したシート状物を、前記金型から脱型する金型加工部と、
    前記金型を、各部の間で移動させる搬送装置と、を備えたパウダースラッシュ成形機を用いてなるパウダースラッシュ成形法であって、
    前記搬送装置が、前記金型を把持して、前記金型加工部から、前記金型加熱部に移送する工程と、
    前記金型加熱部において、当該金型加熱部の天井部に、前記金型の所定搬送方向に沿って、前後に両開きするシャッターが設けてあり、前記金型温度が所定温度以上の値になるように少なくとも金型の内表面を加熱する工程と、
    前記搬送装置が、前記加熱された金型を把持して、前記金型加熱部から、前記パウダースラッシュ部に移送した後、前記成形樹脂をパウダリングしながら吹きつけて、加熱した前記金型の内表面に、シート状物を成形する工程と、
    前記金型を冷却する冷却工程と、
    冷却したシート状物を、前記金型から脱型する工程と、を含み、
    かつ、前記搬送装置が、前記金型を把持して、前記パウダースラッシュ部から、前記金型冷却部に移送する工程の間に、前記シャッターが、前記金型の所定搬送方向に沿って、前後に両開きし、その隙間から熱風を吹き出して、前記成形したシート状物を後加熱することを特徴とするパウダースラッシュ成形法。
  8. 前記金型加工部において、前記金型を、シャフトを中心に、鉛直方向に回転させた後、当該金型を、段階的又は無段階に下降させることを特徴とする請求項7に記載のパウダースラッシュ成形法。
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