JPWO2016021346A1 - 透明セラミックスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(TbxR1-x)2O3・・・(I)
(式(I)中、xは、0.4≦x≦0.8であり、Rは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ユウロピウム、ガドリニウム、イッテルビウム、ホルミウム、及び、ルテチウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素を含む。)が開示されており、これにより波長1.06μm域でベルデ定数が大きく、かつ高い透明性を有した酸化物を提供でき、小型化したファラデーローテータを提供できるとしている。
〔1〕 1種又は複数種類の金属酸化物粉末から形成される多数の顆粒体からなる焼結用原料の製造ロット品ごとに数個の顆粒体をサンプリングして該サンプリングした顆粒体それぞれの圧壊強度を測定し、該測定した顆粒体の圧壊強度の最小値が0.3MPa以上、かつ最大値が6MPa以下である製造ロット品を選定し、この選定した製造ロット品の焼結用原料を型に充填して加圧成形し、焼結して透明セラミックスを製造することを特徴とする透明セラミックスの製造方法。
〔2〕 上記1種又は複数種類の金属酸化物粉末は、焼結により立方晶の金属酸化物となることを特徴とする〔1〕記載の透明セラミックスの製造方法。
〔3〕 上記焼結用原料は、更に焼結助剤を含むことを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の透明セラミックスの製造方法。
〔4〕 上記顆粒体は、1種又は複数種類の金属酸化物粉末を混合処理及び/又は粉砕処理を1回以上施し、焼結温度より低い温度で1回以上仮焼して得たものであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の透明セラミックスの製造方法。
〔5〕 上記選定した製造ロット品の焼結用原料を等方圧加圧して成形し、焼結して透明セラミックスを製造する〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の透明セラミックスの製造方法。
〔6〕 上記選定した製造ロット品の焼結用原料をブロック状、バルク状、ロッド状又はペレット状の形状に成形することを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の透明セラミックスの製造方法。
〔7〕 上記透明セラミックスは、光路長10mm当たりの波長1064nmの光の直線透過率が60%以上である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の透明セラミックスの製造方法。
本発明に係る透明セラミックスの製造方法は、1種又は複数種類の金属酸化物粉末から形成される多数の顆粒体からなる焼結用原料の製造ロット品ごとに数個の顆粒体をサンプリングして該サンプリングした顆粒体それぞれの圧壊強度を測定し、該測定した顆粒体の圧壊強度の最小値が0.3MPa以上、かつ最大値が6MPa以下である製造ロット品を選定し、この選定した製造ロット品の焼結用原料を型に充填して加圧成形し、焼結して透明セラミックスを製造することを特徴とするものである。
ガーネット型酸化物は、A3B5O12(Aは、Y、Tb、Lu、Gd、La、Ce、Yb、Tm、Eu、Pr、Dy、Ho及びNdからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、Bは、Al、Ga及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である)で表わされる複合酸化物であって、例えばY3Al5O12(YAG)が挙げられる。
ビックスバイト型酸化物は、Y、Tb、Lu、Yb、Tm、Ho、Dy、Ce、Gd、Eu、Pr及びNdからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素からなる酸化物であって、例えばY2O3が挙げられる。
パイロクロア型酸化物は、A'2B'2O7-z(A'は、Y、Tb、Lu、Gd、La、Ce、Yb、Tm、Eu、Pr、Dy、Ho及びNdからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、B'は、Zr、Hf、Ti、Sn、Ge及びSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、Zは0以上1以下の数である)で表わされる複合酸化物であって、例えばLa2Zr2O7が挙げられる。
即ち、サンプリングした顆粒体の圧壊強度が0.3MPa未満の場合、顆粒体を構成する一次粒子同士が非常にふんわりと緩くつながっただけの状態であるため、顆粒体の内部に無数の空隙が残存しており、これをそのまま焼結用原料として金型によって一軸方向に加圧するプレス成形やCIP(Cold Isostatic Pressing:冷間等方圧加圧)成形、HP(Hot Pressing)等によるダイレクト焼結の際の加圧成形を試みた場合、顆粒体の潰れ性が極めて不完全となり、焼結によっては除去不能の多数の気泡が焼結体内部に取り込まれ透明性を阻害してしまった。そのため、焼結前の好ましい顆粒体としては、ある程度しっかりと固まった状態である必要がある。ところで、ある程度しっかりと固まった状態の顆粒体を作製してみると(つまり混合処理及び/又は粉砕処理の処理時間(混合粉砕処理時間)を長くしたり、仮焼温度を高くしたりすると)、その固まり状態に略比例するように圧壊強度も上昇していく。焼結工程を経た場合に十分透明性が得られる顆粒体の圧壊強度の下限を調べた結果、それは0.3MPaであった。
まず、測定対象の顆粒体Pを実体顕微鏡で撮像し、撮像した顆粒体Pの外接円が最大となる円の直径(即ち、顆粒体Pの長径)を画素数から換算して粒子径Dとして求めた後、この顆粒体Pをばね11で支持されたサンプル台12上に載置し、次いで、微小力検出ロードセル13が接続した圧子14を顆粒体Pに接触させた後に一定速度(2μm/秒)で該顆粒体Pを押圧する方向に移動させて顆粒体Pを圧壊させる。このとき、顆粒体Pが潰れた瞬間の最大荷重(圧壊力F)を読み取り、下記式(1)で圧壊強度Sを算出する。このとき、焼結用原料の製造ロット品ごとに数個、好ましくは5個以上の顆粒体をサンプリングして該サンプリングした顆粒体それぞれの圧壊強度Sを測定することが好ましい。
S=2.8F/(π・D2) (1)
(圧壊強度S[Pa]、圧壊力F[N]、粒子径D[m])
これらの処理は、従来より行われている処理でよく、例えば混合処理は、湿式ボールミルや湿式ビーズミルのような湿式と、乾式ボールミルのような乾式があるが、特に制限はなく、いずれの方式の混合処理でもよい。混合処理及び/又は粉砕処理、仮焼をそれぞれ複数回実施する場合は、混合処理及び/又は粉砕処理と、仮焼とを交互に行うとよい。また、粉砕処理は、混合処理と同時に行うのが経済的で効率的なので好ましいが、混合処理終了後に別途乾式ジェットミルやハンマーミルのような粉砕処理を施してもよい。また、仮焼処理は、処理対象が酸化物であるため、大気中又は酸素雰囲気等の酸素を含んだ雰囲気中で行うとよい。
上記出発原料について混合処理及び/又は粉砕処理、仮焼処理を施し、最後に粉砕処理した後にスプレードライ処理を行って所定の大きさの顆粒体を作製する。スプレードライ処理は従来公知の方法でよく、例えば上記混合処理及び/又は粉砕処理、仮焼処理、粉砕処理後の原料粉末に水及びバインダー、乃至は有機溶剤(典型的にはエタノール)及びバインダーを添加してスラリーにしたものをスプレードライヤにより溶媒(水乃至は有機溶剤)の沸点以上に加熱させながら一定の処理速度(造粒できる程度に速く(遅すぎず)、顆粒が団子化しない程度に遅い(速すぎない)処理速度)で噴霧乾燥して顆粒体を得るものである。
なお、その後行われるスプレードライ処理により製造される焼結用原料は、顆粒状となる。ここで製造される顆粒体は、造粒体や凝集体ともいわれるものすべてを含む。
なお、素姓が異なる出発原料とは、例えば共沈法、粉砕法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法、アルコキシド加水分解法、その他の合成方法などの出発原料の調製方法が異なるものであったり、あるいは出発原料の調製方法が同じであったとしてもその調製条件が異なるものであったり、更には出発原料の供給元(製造メーカー)が異なるものである。
[原料]
本発明で用いる1種又は複数種類の金属酸化物粉末(出発原料)の純度は99.9質量%以上が好ましい。また、出発原料の形状については特に限定されず、例えば角状、球状、板状の粉末が好適に利用できる。また、二次凝集している粉末であっても好適に利用できるし、スプレードライ処理等の造粒処理によって造粒された顆粒状粉末であっても好適に利用できる。更に、これらの出発原料の調製工程については特に限定されない。共沈法、粉砕法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法、アルコキシド加水分解法、その他あらゆる合成方法で作製された出発原料が好適に利用できる。また、得られた出発原料を適宜湿式ボールミル、ビーズミル、ジェットミルや乾式ジェットミル、ハンマーミル等によって処理してもよい。なお、本発明においてサンプリングした数個の顆粒体の圧壊強度の最小値、最大値が上記範囲を外れた製造ロット品を出発原料として再利用してもよい。
本発明では、上記焼結用原料のうち、サンプリングした数個の顆粒体の圧壊強度の最小値が0.3MPa以上、かつ最大値が6MPa以下、好ましくは最小値が0.7MPa以上、かつ最大値が5MPa以下、より好ましくは最小値が1MPa以上、かつ最大値が5MPa以下である製造ロット品を選定し、この選定した製造ロット品の焼結用原料を用いて、型に充填して所定形状にプレス成形した後に脱脂を行い、次いで焼結して、相対密度が最低でも91%以上に緻密化した焼結体を作製する。その後工程として熱間等方圧プレス(HIP)処理を行うことが好ましい。
本発明の製造方法においては、通常のプレス成形工程を好適に利用できる。即ち、ごく一般的な、焼結用原料を型に充填して一定方向から加圧するプレス工程や変形可能な防水容器に密閉収納して静水圧で加圧するCIP(Cold Isostatic Pressing)工程が利用できる。なお、印加圧力は得られる成形体の相対密度を確認しながら適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば市販のCIP装置で対応可能な300MPa以下の圧力範囲で管理すると製造コストが抑えられてよい。あるいはまた、成形時に成形工程のみでなく一気に焼結まで実施してしまうホットプレス工程や放電プラズマ焼結工程、マイクロ波加熱工程なども好適に利用できる。なお、通常のCIP装置では190〜200MPa程度の圧力範囲で加圧成形するが、仮にその圧力範囲がそれよりも小さくなる場合には、焼結用原料の製造ロット品を選定する上での圧壊強度の最大値の規定値を適宜小さく補正することが好ましい。
本発明の製造方法においては、通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素、水素等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、もしも有機添加剤が混合されている原料を用いる場合には、その有機成分が分解消去できる温度まで昇温することが好ましい。
本発明の製造方法においては、一般的な焼結工程を好適に利用できる。即ち、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等の加熱焼結工程を好適に利用できる。この時の雰囲気は特に制限されないが、不活性ガス、酸素、水素、真空等が好適に利用できる。
本発明の焼結工程における焼結温度は、選択される出発原料により適宜調整される。一般的には選択された出発原料を用いて、製造しようとする立方晶組成酸化物焼結体の融点よりも数10℃から100℃乃至は200℃程度低温側の温度が好適に選定される。また、選定される温度の近傍に立方晶以外の相に相変化する温度帯が存在する酸化物焼結体を製造しようとする際には、厳密にその温度以下となるように管理して焼結すると、立方晶から非立方晶への相転移が事実上発生しないため材料中に光学歪やクラックなどが発生し難いメリットがある。
本発明の焼結工程における焼結保持時間は、選択される出発原料により適宜調整される。一般的には数時間程度で十分な場合が多い。但し、焼結工程後の立方晶組成酸化物焼結体の相対密度は最低でも91%以上に緻密化されていなければならない。
本発明の製造方法においては、焼結工程を経た後に更に追加で熱間等方圧プレス(HIP(Hot Isostatic Pressing))処理を行う工程を設けることができる。
なお、このときの加圧ガス媒体種類は、アルゴン、窒素等の不活性ガス、又はAr−O2、Ar−SO2が好適に利用できる。加圧ガス媒体により加圧する圧力は、50〜300MPaが好ましく、100〜300MPaがより好ましい。圧力50MPa未満では透明性改善効果が得られない場合があり、300MPa超では圧力を増加させてもそれ以上の透明性改善が得られず、装置への負荷が過多となり装置を損傷するおそれがある。印加圧力は市販のHIP装置で処理できる196MPa以下であると簡便で好ましい。
なお、HIP処理するヒーター材、断熱材、処理容器は特に制限されないが、グラファイト、乃至はモリブデン(Mo)、タングステン(W)が好適に利用できる。
本発明の製造方法においては、上記一連の製造工程を経た透明立方晶組成酸化物焼結体(透明セラミックス)について、その光学的に利用する軸上にある両端面を光学研磨することが好ましい。このときの光学面精度はλ/8以下が好ましく、λ/10以下が特に好ましい(λ=633nmである)。なお、光学研磨された面に適宜反射防止膜を成膜することで光学損失を更に低減させることも可能である。
ガーネット型酸化物の透明セラミックスの試験例として、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット:Y3Al5O12)、TGG(テルビウム・ガリウム・ガーネット:Tb3Ga5O12)を取り上げる。
信越化学工業(株)製の酸化イットリウム粉末、酸化テルビウム粉末、並びに(株)高純度化学製のα−アルミナ粉末、酸化ガリウム粉末を用意した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。更に焼結助剤として、日本アエロジル(株)製ヒュームドシリカ粉末を入手した。こちらも純度は99.9質量%以上であった。
上記出発原料等を用いて、希土類イオンと3価イオンとが化学量論組成となるように秤量し、酸化イットリウムとα−アルミナの混合原料、並びに酸化テルビウムと酸化ガリウムの混合原料を用意した。これらに更に0.1質量%のヒュームドシリカを混ぜ、エタノールとアルミナボールで満たしたポリ容器中に溶かしてボールミル処理を実施し、その後仮焼を行った。この際、混合時間(ボールミル処理時間)と仮焼温度を種々変えて、様々な混合状態の原料を準備した。
次に、得られた焼結用原料を上記顆粒体調製条件ごとに直径10mmの金型に充填し、一軸プレス成形機で厚さ15mmのロッド状に仮成形した後、198MPaの圧力で、静水圧プレスしてCIP成形体を得た。続いて得られたCIP成形体をマッフル炉に入れ、大気中800℃で3時間熱処理して脱脂した。
次いで、得られた脱脂済み成形体を真空加熱炉に仕込み、100℃/hの昇温レートで1300〜1500℃まで昇温し、3時間保持してから600℃/hの降温レートで冷却して焼結体を得た。この際、サンプルの焼結相対密度が92%以上となるよう焼結温度や保持時間を調整した。
更に、上記焼結体について、加圧媒体としてArガスを用いて、HIP熱処理温度1500℃、圧力190MPaで保持時間2時間のHIP処理を行った。
(直線透過率の測定方法)
直線透過率は、分光分析装置「スペクトロフォトメータ、商品名V670」(日本分光(株)製)を用い、波長1064nmの光をビーム径を1〜3mmφでの大きさで透過させたときの光の強度により測定され、以下の式に基づき、JIS K7361及びJIS K7136に準拠して求めた。
直線透過率(%/cm)=I/Io×100
(式中、Iは透過光強度(長さ10mmの試料を直線透過した光の強度)、Ioは入射光強度を示す。)
以上の結果を表1にまとめて示す。
ビックスバイト型酸化物の透明セラミックスの試験例としてY2O3、TYO(テルビウム・イットリウム複合酸化物:(Tb0.6Y0.4)2O3)を取り上げる。
信越化学工業(株)製の酸化イットリウム粉末、酸化テルビウム粉末、並びに第一稀元素化学工業(株)製酸化ジルコニウム粉末を用意した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
上記出発原料等を用いて、酸化イットリウム単体に焼結助剤として酸化ジルコニウムを1.5質量%添加した系、並びに酸化イットリウムと酸化テルビウムとの希土類イオンのモル比が4:6の割合となるように秤量した原料に焼結助剤として酸化ジルコニウムを1.5質量%添加した系を用意した。これらの混合原料をエタノールとアルミナボールで満たしたポリ容器中に溶かしてボールミル処理を実施し、その後仮焼を行った。この際、混合時間(ボールミル処理時間)と仮焼温度を種々変えて、様々な混合状態の原料を準備した。
次に、得られた焼結用原料を顆粒体調製条件ごとに直径10mmの金型に充填し、一軸プレス成形機で厚さ15mmのロッド状に仮成形した後、198MPaの圧力で、静水圧プレスしてCIP成形体を得た。続いて得られたCIP成形体をマッフル炉に入れ、大気中800℃で3時間熱処理して脱脂した。
次いで、得られた脱脂済み成形体を真空加熱炉に仕込み、100℃/hの昇温レートで1400〜1600℃まで昇温し、3時間保持してから600℃/hの降温レートで冷却して焼結体を得た。この際、サンプルの焼結相対密度が92%以上となるよう焼結温度や保持時間を調整した。
更に、上記焼結体について、加圧媒体としてArガスを用いて、HIP熱処理温度1700℃、圧力190MPaで保持時間2時間のHIP処理を行った。
こうして得られた各セラミックス焼結体を、長さ10mmになるように研削及び研磨処理し、次いでそれぞれのサンプルの光学両端面を光学面精度λ/8(λ=633nmである)で最終光学研磨し、更に中心波長が1064nmとなるように設計された反射防止膜をコートした。ここで得られたサンプルの光学外観もチェックした。
また、試験例1と同様にして直線透過率を測定した。
以上の結果を表2にまとめて示す。
パイロクロア型酸化物の透明セラミックスの試験例としてLa2Zr2O7、La2Hf2O7を取り上げる。
信越化学工業(株)製の酸化ランタン粉末、並びに第一稀元素化学工業(株)製酸化ジルコニウム粉末、及びアメリカンエレメンツ社製酸化ハフニウム粉末を用意した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
上記出発原料等を用いて、酸化ランタンと酸化ジルコニウムのモル比が等量になるように秤量した系、及び酸化ランタンと酸化ハフニウムのモル比が等量になるように秤量した系を用意した。これらの混合原料をエタノールとアルミナボールで満たしたポリ容器中に溶かしてボールミル処理を実施し、その後仮焼を行った。この際、混合時間(ボールミル処理時間)と仮焼温度を種々変えて、様々な混合状態の原料を準備した。
次に、得られた焼結用原料を顆粒体調製条件ごとに直径10mmの金型に充填し、一軸プレス成形機で厚さ15mmのロッド状に仮成形した後、198MPaの圧力で、静水圧プレスしてCIP成形体を得た。続いて得られたCIP成形体をマッフル炉に入れ、大気中800℃で3時間熱処理して脱脂した。
次いで、得られた脱脂済み成形体を真空加熱炉に仕込み、100℃/hの昇温レートで1600〜1650℃まで昇温し、3時間保持してから600℃/hの降温レートで冷却して焼結体を得た。この際、サンプルの焼結相対密度が92%以上となるよう焼結温度や保持時間を調整した。
更に、上記焼結体について、加圧媒体としてArガスを用いて、HIP熱処理温度1750℃、圧力190MPaで保持時間2時間のHIP処理を行った。
こうして得られた各セラミックス焼結体を、長さ10mmになるように研削及び研磨処理し、次いでそれぞれのサンプルの光学両端面を光学面精度λ/8(λ=633nmである)で最終光学研磨し、更に中心波長が1064nmとなるように設計された反射防止膜をコートした。ここで得られたサンプルの光学外観もチェックした。
また、試験例1と同様にして直線透過率を測定した。
以上の結果を表3にまとめて示す。
図2から顆粒体の圧壊強度の幾何平均値が0.45MPa以上2.8MPa以下の場合に、焼結体の直線透過率が60%以上のものが得られることが分かる。
TYO(テルビウム・イットリウム複合酸化物:(Tb0.6Y0.4)2O3)及びLa2Hf2O7について、上記試験例とは素姓の異なる他の原料を用いて作製した例を取り上げる。
TYO(テルビウム・イットリウム複合酸化物)用として、信越化学工業(株)製の酸化イットリウムと酸化テルビウムとの共沈希土類粉末(この共沈粉末における酸化イットリウムと酸化テルビウムとの希土類イオンのモル比は4:6である)、並びに第一稀元素化学工業(株)製酸化ジルコニウム粉末を用意した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
上記出発原料を用いて、共沈希土類粉末と酸化ジルコニウム粉末の重量比が100:0.5の割合となるように秤量した原料を用意した。この混合原料をエタノールとジルコニアボールで満たしたポリ容器中に溶かしてボールミル処理を実施し、その後仮焼を行った。この際、混合時間(ボールミル処理時間)と仮焼温度を種々変えて、様々な混合状態の原料を準備した。
また、La2Hf2O7用として、信越化学工業(株)製の酸化ランタン粉末、並びに商社を介して入手した中国製の酸化ハフニウム粉末を用意した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
上記についてもこれらを出発原料として、酸化ランタンと酸化ハフニウムのモル比が等量となるように秤量した原料を用意した。この混合原料をエタノールとジルコニアボールで満たしたポリ容器中に溶かしてボールミル処理を実施し、その後仮焼を行った。この際、混合時間(ボールミル処理時間)と仮焼温度を種々変えて、様々な混合状態の原料を準備した。
その後、試験例1〜3と同様にしてスプレードライ処理を行って平均粒径が20μmの顆粒体を多数作製した。得られたそれぞれの顆粒体調製条件の焼結用原料につき、試験例1〜3と同様にして微小粒子圧壊力測定装置((株)ナノシーズ製、製品名NS−A100)を用いて顆粒体の圧壊強度の最大値、最小値、並びに幾何平均値を求めた。
次に、得られた焼結用原料を顆粒体調製条件ごとに直径10mmの金型に充填し、一軸プレス成形機で厚さ15mmのロッド状に仮成形した後、198MPaの圧力で、静水圧プレスしてCIP成形体を得た。続いて得られたCIP成形体をマッフル炉に入れ、大気中800℃で3時間熱処理して脱脂した。
次いで、得られた脱脂済み成形体を真空加熱炉に仕込み、100℃/hの昇温レートで1450℃〜1650℃まで昇温し、3時間保持してから300℃/hの降温レートで冷却して焼結体を得た。この際、サンプルの焼結相対密度が97%以上となるよう焼結温度や保持時間を調整した。
更に、上記焼結体について、加圧媒体としてArガスを用いて、HIP熱処理温度1600℃、圧力190MPaで保持時間2時間のHIP処理を行った。
こうして得られた各セラミック焼結体を、長さ10mmになるように研削及び研磨処理し、次いでそれぞれのサンプルの光学両端面を光学面精度λ/8(λ=633nmである)で最終光学研磨し、更に中心波長が1064nmとなるように設計された反射防止膜をコートした。ここで得られたサンプルの光学外観もチェックした。
また、試験例1〜3と同様にして直線透過率を測定した。
以上の結果を表4にまとめて示す。
一方、試験例2における実施例25〜32及び比較例6と、実施例49〜56及び比較例10、11とは最終組成が同一であるが、顆粒体の圧壊強度の最小値、最大値がそれぞれ0.3MPa以上、6MPa以下となる顆粒体調製条件の範囲がずれている。即ち、例えば顆粒体の圧壊強度の最小値が0.4MPaとなる顆粒体調製条件は、試験例2では実施例25の条件(混合時間10時間、仮焼温度1100℃)であるのに対して、本試験例では実施例50の条件(混合時間12時間、仮焼温度900℃)となる。また、顆粒体の圧壊強度の最大値が4.6MPaとなる顆粒体調製条件は、試験例2では実施例32の条件(混合時間48時間、仮焼温度1200℃)であるのに対して、本試験例では実施例56の条件(混合時間48時間、仮焼温度1000℃)となる。上記顆粒体の最小値、最大値が上記所定の範囲となる顆粒体調製条件として、本試験例の方が試験例2よりも仮焼温度が低くなる傾向がある。
同様に、試験例3における実施例41〜48及び比較例9と、実施例57〜64及び比較例12とは最終組成が同一であるが、顆粒体の圧壊強度の最小値、最大値がそれぞれ0.3MPa以上、6MPa以下となる顆粒体調製条件の範囲がずれている。即ち、例えば顆粒体の圧壊強度の最小値が0.5MPaとなる顆粒体調製条件は、試験例3では実施例42の条件(混合時間12時間、仮焼温度1200℃)であるのに対して、本試験例では実施例57の条件(混合時間6時間、仮焼温度1350℃)となる。また、顆粒体の圧壊強度の最大値が4.9MPaとなる顆粒体調製条件は、試験例3では実施例48の条件(混合時間48時間、仮焼温度1300℃)であるのに対して、本試験例では実施例64の条件(混合時間48時間、仮焼温度1450℃)となる。上記顆粒体の最小値、最大値が上記所定の範囲となる顆粒体調製条件として、本試験例の方が試験例2よりも仮焼温度が高くなる傾向がある。
これは出発原料の素姓が異なっていることによるものと推察される。
以上のことから、それまでとは素姓の異なる出発原料を用いる場合、それまでの顆粒体調製条件では光学特性の良好な焼結体が得られないことがあるところ、その素姓の異なる出発原料から調製した焼結用原料の顆粒体の圧壊強度の最小値、最大値が所定の範囲に入る製造ロット品を用いるようにすると確実に光学特性の良好な焼結体が得られることが分かった。
12 サンプル台
13 微小力検出ロードセル
14 圧子
P 顆粒体
Claims (7)
- 1種又は複数種類の金属酸化物粉末から形成される多数の顆粒体からなる焼結用原料の製造ロット品ごとに数個の顆粒体をサンプリングして該サンプリングした顆粒体それぞれの圧壊強度を測定し、該測定した顆粒体の圧壊強度の最小値が0.3MPa以上、かつ最大値が6MPa以下である製造ロット品を選定し、この選定した製造ロット品の焼結用原料を型に充填して加圧成形し、焼結して透明セラミックスを製造することを特徴とする透明セラミックスの製造方法。
- 上記1種又は複数種類の金属酸化物粉末は、焼結により立方晶の金属酸化物となることを特徴とする請求項1記載の透明セラミックスの製造方法。
- 上記焼結用原料は、更に焼結助剤を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の透明セラミックスの製造方法。
- 上記顆粒体は、1種又は複数種類の金属酸化物粉末を混合処理及び/又は粉砕処理を1回以上施し、焼結温度より低い温度で1回以上仮焼して得たものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の透明セラミックスの製造方法。
- 上記選定した製造ロット品の焼結用原料を等方圧加圧して成形し、焼結して透明セラミックスを製造する請求項1〜4のいずれか1項記載の透明セラミックスの製造方法。
- 上記選定した製造ロット品の焼結用原料をブロック状、バルク状、ロッド状又はペレット状の形状に成形することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の透明セラミックスの製造方法。
- 上記透明セラミックスは、光路長10mm当たりの波長1064nmの光の直線透過率が60%以上である請求項1〜6のいずれか1項記載の透明セラミックスの製造方法。
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