JP7056624B2 - 焼結用セラミックス成形体の作製方法及びセラミックス焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
1.
セラミックス粉末とガラス転移温度が室温より高い熱可塑性樹脂とを含む原料粉末を用いて静水圧加圧して所定形状に成形する焼結用セラミックス成形体の作製方法であって、前記原料粉末を所定形状に一軸プレスした一軸プレス成形体を、又はゴム型に充填した前記原料粉末を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で第1段の静水圧加圧成形して第1段加圧成形体を作製し、次いでこの第1段加圧成形体を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して第2段の静水圧加圧成形として温間静水圧加圧(WIP)成形を行ってセラミックス成形体を作製する焼結用セラミックス成形体の作製方法。
2.
前記第1段の静水圧加圧成形が冷間静水圧加圧(CIP)成形である1記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
3.
前記第1段加圧成形体を作製した後、第1段の静水圧加圧状態を維持したまま、該第1段加圧成形体の加熱を開始し、引き続き前記第2段の静水圧加圧成形としてWIP成形を行う1記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
4.
前記WIP成形の加圧媒体が水又はオイルである1~3のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
5.
前記熱可塑性樹脂は、室温より高く且つWIP成形の加圧媒体の沸点よりも低い温度のガラス転移温度を有する1~4のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
6.
前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリプロピオン酸ビニル、及びポリビニルアルコールとポリプロピオン酸ビニルの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである1~5のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
7.
前記原料粉末をスプレードライして形成した顆粒を用いて前記一軸プレス成形体を成形し、又はこの顆粒をゴム型に充填して前記第1段の静水圧加圧成形を行う1~6のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
8.
1~7のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法で作製したセラミックス成形体を用いて焼結処理を行い、更に熱間等方加圧(HIP)処理してセラミックス焼結体を得るセラミックス焼結体の製造方法。
9.
前記焼結処理の前にセラミックス成形体の脱脂処理を行う8記載のセラミックス焼結体の製造方法。
10.
前記HIP処理の後に、更にアニール処理を行う8又は9記載のセラミックス焼結体の製造方法。
以下に、本発明に係る焼結用セラミックス成形体の作製方法について説明する。なお、ここでいう室温は焼結用セラミックス成形体の成形プレス工程における環境温度であり、通常25±5℃である。
本発明に係る焼結用セラミックス成形体の作製方法は、セラミックス粉末とガラス転移温度が室温より高い熱可塑性樹脂とを含む原料粉末を用いて静水圧加圧して所定形状に成形する焼結用セラミックス成形体の作製方法であって、前記原料粉末を所定形状に一軸プレスした一軸プレス成形体を、又はゴム型に充填した前記原料粉末を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で第1段の静水圧加圧成形して第1段加圧成形体を作製し、次いでこの第1段加圧成形体を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して第2段の静水圧加圧成形として温間静水圧加圧(WIP)成形を行ってセラミックス成形体を作製することを特徴とするものである。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明で用いる原料粉末は、少なくともセラミックス粉末と熱可塑性樹脂(バインダー)とを含むものである。
即ち、
(i)TbとAlを主成分として含みその他の成分としてScを含む酸化物ガーネット(TAG系複合酸化物)の焼結体からなるテルビウム含有ガーネット型酸化物透明セラミックス、
(ii)Tb3Ga5O12の組成式のTGG複合酸化物の焼結体からなるテルビウム含有ガーネット型酸化物透明セラミックス、
(iii)下記式(A)で表されるテルビウム含有ビックスバイト型酸化物透明セラミックスである。
(TbxR1-x)2O3 (A)
(式(A)中、xは、0.4≦x≦0.7であり、Rは、スカンジウム、イットリウム、テルビウム以外のランタノイド元素群よりなる集合から選択された少なくとも1つの元素を含む。)
(i)の透明セラミックスは、TbとAlを主成分とし、その他の成分としてScを含むテルビウム含有酸化物であって、構造としてはガーネット構造をもつ。
ガーネット構造においては、テルビウムの構成比率が高いと単位長さ当りのファラデー回転角(ベルデ定数)が大きくなるため好ましい。またアルミニウムの構成比率が高いとテルビウムの結晶場のゆとりが生まれ、テルビニウムイオンの歪みが小さくなるため好ましい。さらにアルミニウムはガーネット構造を有する酸化物中で安定に存在できる3価のイオンのなかで最小のイオン半径を有するため、テルビニウムイオンの構成比率をそのまま維持しつつ、ガーネット構造の格子定数を小さくできるため、単位長さ当りのファラデー回転角(ベルデ定数)が大きくなるため好ましい。さらにガーネット型酸化物中のアルミニウム構成比率が高いと系全体の熱伝導率も向上するため好ましい。
本材料はテルビウム(Tb)とガリウム(Ga)の酸化物で構成されたガーネット構造材料である。この構造でもテルビウムの構成比率が高く、単位長さ当りのファラデー回転角(ベルデ定数)は大きいため好ましい。またガリウムの構成比率が高いと融点が大きく下がり、製造温度を下げられ、低コスト化が可能となるため好ましい。さらにTb3Ga5O12は従来からファイバーレーザーシステム用ファラデー回転子として広く採用実績があり、長期信頼性データが蓄積されているため好ましい。
本材料はセスキオキサイド型の酸化テルビウム構造を骨格とし、テルビウムイオンサイトを大量の、すなわち式(A)中の1-x(0.4≦x≦0.7)の範囲で、スカンジウム、イットリウム、テルビウム以外のランタノイド元素群よりなる集合から選択された少なくとも1つの元素でテルビウムイオンを置換する構造の酸化物材料である。
また、前記粉末の純度は99.9質量%以上が好ましい。
また、後述する、バインダーとして添加される熱可塑性樹脂が溶解する溶媒、溶解しない溶媒のいずれも用いることができるが、熱可塑性樹脂が溶解する溶媒を選択する方が好ましい。
なお、ガラス転移温度Tgは、通常、示差走査熱量測定(DSC)により熱可塑性樹脂を測定したときの中間点ガラス転移温度値である。例えば、ガラス転移温度Tgは、昇温速度10℃/分、測定温度-50~250℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K7121:1987に準拠した方法で算出した中間点ガラス転移温度である。なお、試料中の水分がガラス転移温度Tgに影響する場合には該試料を一旦150℃まで加熱して乾燥させた後に測定を行うとよい。
続いて、本発明における焼結用セラミックス成形体のプレス成形手順について説明する。
(一軸プレス成形等)
まず前記のようにして得られた原料粉末を用い、該原料粉末を一軸プレス成形して所定形状の一軸プレス成形体とする。このとき、原料粉末をスプレードライして形成した顆粒を用いるとよい。一軸プレス成形体の形状は、目的の焼結体形状に対応するものであり、例えば直径7~100mm、長さ2~40mmの円柱形状である。あるいは、幅5~80mm、厚み2~30mm、長さ5~150mmの立方体形状である。
また、一軸プレス条件は、例えば成形体の加熱なし、プレス環境温度:前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度より低い温度(通常、室温)、印加圧力:5~50MPaである。
次に、前記のようにして得られた一軸プレス成形体又はゴム型に充填した前記原料粉末を該原料粉末に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で第1段の静水圧加圧成形して第1段加圧成形体を作製する。
また、加圧保持時間は、例えば1~10分間であることが好ましく、1~3分間であることがより好ましい。
次いで、得られた第1段加圧成形体について前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して第2段の静水圧加圧成形として温間静水圧加圧(WIP)成形を行ってセラミックス成形体を作製する。
(S1)まずWIP成形に用いるWIP装置において、WIP成形用加圧容器部及び加圧媒体の温度を原料粉末に添加された熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上となるように予め加温し、安定させておく。
(S2)そのように加温した状態のWIP装置において前記第1段加圧成形体をゴム型に充填し、あるいは第1段加圧成形体を防水フィルムで真空パックで封止した状態で装填する。
(S3)第1段加圧成形体を充填した状態のまま、第1段加圧成形体を保持して該第1段加圧成形体を加温してあるWIP装置と同程度の温度になるまで加熱し、その後に第2段の静水圧加圧成形としてWIP成形する。
(第1段静水圧加圧成形)
前記一軸プレス成形体又はゴム型に充填した前記原料粉末を充填したゴム型をWIP装置に装着し、前記第1段静水圧加圧成形の条件で成形を行う(第1段加圧成形体の作製)。
(第2段静水圧加圧成形)
前記第1段加圧成形体を作製した後、第1段の静水圧加圧状態を維持したまま(即ち、第1段加圧成形体をWIP装置に装着し加圧したまま)、該第1段加圧成形体の加熱を開始し、引き続き前記第2段静水圧加圧成形の条件でWIP成形を行う。
例えば、一軸プレス成形後の一軸プレス成形体におけるセラミックス粉体とバインダー(熱可塑性樹脂)の分布状態を見た場合、セラミックス粉体とバインダー(熱可塑性樹脂)は比較的均一に分散した状態、又はセラミックス粉体間の隙間を埋めるようにバインダー(熱可塑性樹脂)が存在する状態であるが、その成形体密度は比較的低い状態である。
次に前半の第1段加圧成形(前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度より低い温度での静水圧加圧成形、好ましくはCIP成形)工程では、この一軸プレス成形体に対して印加圧力を肉厚な成形体の内部にまで伝達させる働きを担っている。このとき、第1段加圧成形体において一軸プレス成形体におけるセラミックス粉体とバインダー(熱可塑性樹脂)が比較的均一に分散した状態、又はセラミックス粉体間の隙間を埋めるようにバインダー(熱可塑性樹脂)が存在する状態が維持されたまま、第1段加圧成形体密度が一軸成形体密度よりもある程度大きくなる。
次に更に後半の第2段静水圧加圧成形(WIP成形)工程では、前記第1段加圧成形工程で生じたマイナス作用、即ち第1段加圧成形体に対して成形体の内部応力歪みや部分的な粗大空隙の発生を塑性流動、再配列により取り除く働きを担っている。このとき、セラミックス成形体において、第1段加圧成形体におけるセラミックス粉体とバインダー(熱可塑性樹脂)が比較的均一に分散した状態、又はセラミックス粉体間の隙間を埋めるようにバインダー(熱可塑性樹脂)が存在する状態が維持されたまま、セラミックス成形体密度が第1段加圧成形体密度よりも更に大きくなっている。
この第1段及び第2段の静水圧加圧成形の一連の作用が正しく働いている限り、この2つの静水圧加圧成形工程で種々設定される条件の範囲は任意である。
即ち、第1の確認方法としては、前記第1段加圧成形工程及び第2段加圧成形工程後のこの第1段及び第2段の静水圧加圧成形の一連の作用が正しく働いた成形体(セラミックス成形体)の密度dCIP+WIPは、必ず前記第1段加圧成形工程直後の成形体密度dCIPよりも大きくなっていることから、成形体密度dCIP+WIP>成形体密度dCIPであることを確認することである。
また、第2の確認方法としては、比較のために一軸プレス成形体について前記第1段加圧成形を行わずに第2段加圧成形(WIP成形)のみを行ったサンプルを作製してみるとこのWIP成形のみを行った成形体の密度dWIPが、成形体密度dCIP+WIPよりも低くなることから、成形体密度dCIP+WIP>成形体密度dWIPであることを確認することである。なお、このように前記第1段加圧成形を行わずに第2段加圧成形(WIP成形)のみを行った成形体では、その内部に粗大なボイドが形成されている。
本発明に係るセラミックス焼結体の製造方法は、本発明の焼結用セラミックス成形体の作製方法により作製されたセラミックス成形体を用いて焼結処理を行い、更に熱間等方加圧(HIP)処理して更に緻密化を行いセラミックス焼結体を得るものである。
このとき、前記焼結処理の前にセラミックス成形体の脱脂処理を行うことが好ましい。また、前記HIP処理の後に、更にアニール処理を行うことが好ましい。
具体的には以下のような処理を行う。
本発明の製造方法においては、通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、一般的な加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素、酸素含有混合ガス、水素、フッ素、フッ酸ガス、窒素、アンモニアガス等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、添加される熱可塑性樹脂、並びに分散剤その他の有機物が添加されている場合には、それらすべての有機成分が完全に分解消去できる温度まで昇温、並びに保持することが好ましい。
本発明の製造方法においては、一般的な焼結工程を好適に利用できる。即ち、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等の加熱焼結工程を好適に利用できる。この時の雰囲気は特に制限されず、不活性ガス、酸素ガス、水素ガス、フッ素ガス、フッ酸ガス、アルゴンガス、窒素ガス、アンモニアガス等の各種雰囲気、あるいはまた、減圧下(真空中)での焼結も可能である。ただし、取り扱うセラミックス材料の品種ごとに相性の良いガスは異なるため、正しく対応することが好ましい。例えば酸化物セラミックスであれば酸素系のガス群ないしは減圧雰囲気から選択することが好ましく、フッ化物セラミックスであればフッ素、フッ酸系のガス群、あるいはアルゴン、窒素などの不活性ガス、ないしは減圧雰囲気から選択することが好ましく、窒化物セラミックスであれば窒素、アンモニア系のガス群ないしは減圧雰囲気から選択することが好ましい。また、使用するガス種に合わせて、炉の材質選定や気密性管理を徹底することは言うまでもない。
本発明の製造方法においては、焼結工程を経た後に更に追加で熱間等方圧プレス(HIP(Hot Isostatic Pressing))処理を行う。
本発明の製造方法において、透明セラミックス焼結体を製造するとき、HIP処理を終えた後に、得られた透明セラミックス焼結体中に点欠損が生じてしまい、薄灰色や黒灰色の外観を呈する場合がある。そのような場合には、前記HIP処理温度以下、典型的には1000~1500℃にて、酸化物であれば酸素雰囲気下で、フッ化物であればフッ素あるいはフッ酸雰囲気下で、窒化物であれば窒素あるいはアンモニア雰囲気下で、アニール処理(欠損回復処理)を施すことが好ましい。この場合の保持時間は、点欠損が回復するのに十分な時間を確保する必要があるため、3時間以上かけることが好ましい。なお、該アニール処理工程の設定温度を1500℃を超えて上げ過ぎたり、保持時間を数十時間という長さまで延ばし過ぎてしまうと、リバウンド現象と言う、透明セラミックス材料中のそこここに気泡が再発生してくるため好ましくない。
本発明の製造方法において、透明セラミックス焼結体を製造する場合、前記一連の製造工程を経た焼結体について、その光学的な品質を評価する目的で、最低でもある一面を光学研磨することが好ましい。このときの光学面精度は特に制限されない。ただし、光学面のワープがあまり激しいと正しい光学評価が困難となるため、たとえば測定波長λ=633nmの場合、λ以下が好ましく、λ/2以下がさらに好ましく、λ/4以下が特に好ましい。なお、光学研磨された面に適宜反射防止膜を成膜することで光学損失を更に低減させることも可能である。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化スカンジウム粉末、及び大明化学(株)製の酸化アルミニウム粉末を入手した。さらにキシダ化学(株)製のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の液体を入手した。純度は粉末原料がいずれも99.9質量%以上、液体原料が99.999質量%以上であった。
前記原料を用いて、混合比率を調整して表1に示す最終組成となるガーネット型酸化物原料(焼成原料No.1)を作製した。
即ち、テルビウムとアルミニウム、及びスカンジウムのモル数がそれぞれ表1の組成のモル比率となるよう秤量した混合粉末を用意した。続いてTEOSを、その添加量がSiO2換算で表1の質量%(0.01質量%)になるように秤量して原料に加えた。その後、エタノール中でアルミナ製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は15時間であった。その後さらにスプレードライ処理を行って、平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
続いて、この顆粒状原料をイットリアるつぼに入れ高温マッフル炉にて1200℃にて保持時間3時間で焼成処理して焼成原料(焼成原料No.1)を得た。得られた焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した(XRD分析)。X線回折パターンのリファレンスデータと測定パターンとの比較から試料の結晶系を特定した。結果はガーネット単相(立方晶)のみと確認された。
これら2つのグループに分けた原料粉末スラリーを、互いの混入を防止しながらそれぞれスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料(原料粉末)を作製した。得られた2種類の原料粉末につき、それぞれ直径8mmφの金型で一軸プレス成形して一軸プレス成形体を複数個用意した(一軸プレス条件:加圧力30MPa、加圧保持時間0.1分間)。
なお、この成形プレス工程における室温は20℃であった。CIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:20℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。また、WIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:60℃、CIP成形体加熱温度:60℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。
成形体密度(g/cm3)=(4000w)/(πr2L)
こうして得られた各セラミックス焼結体を、直径5mm、長さ15mmとなるように研削及び研磨処理し、更にそれぞれのセラミックス焼結体の光学両端面を光学面精度λ/2(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨して評価用サンプルを得た。
(全光線透過率、前方散乱率の測定方法)
日本分光(株)製の分光光度計V-670を用いて、波長1064nmにおける全光線透過率を測定した。測定方法としては、まず該分光光度計V-670に評価用サンプルをセットせずに分光器で分光させた光(波長1064nmの光(以下同じ))を照射し、該光を予め装置にセットされている積分球で受けて、集光された光を検知器で受光する。得られた照度をI0とし、続いて評価用サンプルを装置にセットして、今度は分光させた光を評価用サンプルに入射し、透過してきた光を再度積分球で集めて検知器で受光する。得られた照度をIとして式(1)により全光線透過率を求めた。
更に前方散乱率を続けて測定した。即ち積分球のセットアップを、直線透過光を除去するモードに切り替えて、評価用サンプルをセットしたままの状態で再び分光させた光を評価用サンプルに入射し、透過してきた光のうちの直線透過光以外の光を積分球で集めて検知器で受光した。得られた照度をIsとして式(2)により前方散乱率を求めた。
全光線透過率(%/15mm)=I/I0×100 ・・・・式(1)
前方散乱率 (%/15mm)=Is/I0×100 ・・・式(2)
以上の結果を表2にまとめて示す。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化イットリウム粉末、及びアルファエイサー製の酸化ハフニウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
前記原料を用いて、混合比率を調整して表3に示す最終組成となるビックスバイト型酸化物原料(焼成原料No.2)を作製した。
即ち、テルビウムとイットリウムのモル数がそれぞれ表3の組成のモル比率(即ち、1:1)となるよう秤量した混合粉末を用意した。続いてハフニウムを、その添加量がHfO2換算で表3の質量%(0.3質量%)になるように秤量して原料に加えた。その後、エタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は10時間であった。その後さらにスプレードライ処理を行って、平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
続いて、この顆粒状原料をイットリアるつぼに入れ高温マッフル炉にて1100℃にて保持時間3時間で焼成処理して焼成原料(焼成原料No.2)を得た。得られた焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した(XRD分析)。X線回折パターンのリファレンスデータと測定パターンとの比較から試料の結晶系を特定した。結果はビックスバイト単相(立方晶)のみと確認された。
これら2つのグループに分けた原料粉末スラリーを、互いの混入を防止しながらそれぞれスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料(原料粉末)を作製した。得られた2種類の原料粉末につき、それぞれ直径8mmφの金型で一軸プレス成形して一軸プレス成形体を複数個用意した(一軸プレス条件:加圧力30MPa、加圧保持時間0.1分間)。
なお、この成形プレス工程における室温は20℃であった。CIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:20℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。また、WIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:60℃、CIP成形体加熱温度:60℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。
成形体密度(g/cm3)=(4000w)/(πr2L)
こうして得られた各セラミックス焼結体を、直径5mm、長さ15mmとなるように研削及び研磨処理し、更にそれぞれのセラミックス焼結体の光学両端面を光学面精度λ/2(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨して評価用サンプルを得た。
こうして得られた各評価用サンプルについて、実施例1と同様の測定条件にて全光線透過率及び前方散乱率を測定した。得られた結果を表4にまとめて示す。
アルファエイサー製のフッ化カルシウム粉末、フッ化リチウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
前記原料を用いて、カルシウムに対してリチウムがLiF換算で0.1質量%になるように秤量して混合し、出発原料(混合原料No.1)を準備した後、エタノール中でアルミナ製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は15時間であった。得られたスラリー原料を2つのグループに分け、一方には、バインダーとして日本酢ビポバール(株)製のポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体(ガラス転移温度48℃)をエタノール中に20質量%となるように溶解させた熱可塑性樹脂溶液を原料粉末全体(混合原料No.1+バインダー)の質量に対してポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体が1質量%となるように添加し、その後3時間バインダー添加スラリー(原料粉末スラリー)を撹拌混合した。このとき、バインダーはスラリー中で溶解していた。他方にはバインダーを加えずそのままの原料粉末スラリーとした。
得られた一軸プレス成形体を、更に表5に示すように5つのグループ(実施例3-1、比較例3-1~3-4)に分けた。そして表5に示す条件の成形プレス工程(一軸プレス-CIP処理-WIP処理、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の3水準)でセラミックス成形体サンプルを作製した。
なお、この成形プレス工程における室温は20℃であった。CIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:20℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。また、WIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:60℃、CIP成形体加熱温度:60℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。
成形体密度(g/cm3)=(4000w)/(πr2L)
こうして得られた各セラミックス焼結体を、直径5mm、長さ15mmとなるように研削及び研磨処理し、更にそれぞれのセラミックス焼結体の光学両端面を光学面精度λ/2(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨して評価用サンプルを得た。
こうして得られた各評価用サンプルについて、実施例1と同様の測定条件にて全光線透過率及び前方散乱率を測定した。得られた結果を表5にまとめて示す。
アルファエイサー製の窒化ケイ素粉末、大明化学製の酸化マグネシウム粉末、信越化学製の酸化イットリウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
前記原料を用いて、ケイ素に対してマグネシウムがMgO換算で0.1質量%になるように秤量し、さらにイットリウムがY2O3換算で0.7質量%になるように秤量してから混合し、出発原料(混合原料No.2)を準備した。当該混合原料をエタノール中でアルミナ製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は10時間であった。得られたスラリー原料を2つのグループに分け、一方には、バインダーとして積水化学(株)製のポリビニルブチラール(ガラス転移温度78℃)をエタノール中に20質量%となるように溶解させた熱可塑性樹脂溶液を原料粉末全体(混合原料No.2+バインダー)の質量に対してポリビニルブチラールが1質量%となるように添加し、その後3時間バインダー添加スラリー(原料粉末スラリー)を撹拌混合した。このとき、バインダーはスラリー中で溶解していた。他方にはバインダーを加えずそのままの原料粉末スラリーとした。
これら2つのグループに分けた原料粉末スラリーを、互いの混入を防止しながらそれぞれスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料(原料粉末)を作製した。得られた2種類の原料粉末につき、それぞれ50mm×15mmの長方形型の金型で一軸プレス成形してブロック状一軸プレス成形体を複数個用意した(一軸プレス条件:加圧力50MPa、加圧保持時間1分間)。
得られた一軸プレス成形体を、更に表6に示すように5つのグループ(実施例4-1、比較例4-1~4-4)に分けた。そして表6に示す条件の成形プレス工程(一軸プレス-CIP処理-WIP処理、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の3水準)でセラミックス成形体サンプルを作製した。
なお、この成形プレス工程における室温は20℃であった。CIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:20℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。また、WIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:85℃、CIP成形体加熱温度:85℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。
成形体密度(g/cm3)=1000w/SL
こうして得られた各セラミックス焼結体を、長さ40mm、幅4mm、厚み3mmの棒状、並びに直径10mm、厚み1mmの円盤状となるようにそれぞれ切断、研削及び研磨処理し、再度それぞれの密度を測定し焼結体密度ρを求めた。その後、得られた評価用サンプルについて以下の要領で熱伝導率と3点曲げ強度を計測評価した。
ネッチ(NETZSCH社)製のフラッシュランプアナライザーLFA467HTを用いて、直径10mm、厚み1mmの円盤試料(評価用サンプル)を該装置にセットし、レーザーフラッシュ法によりに熱拡散率αと比熱容量Cを計測した。これらの値と事前に求めた焼結体密度ρを用いて式(3)により熱伝導率κを算出した。
熱伝導率κ(W/m・K)=α×C×ρ ・・・(3)
(株)島津製作所製のセラミックス曲げ試験装置を用いて、JIS R1601に基づき、長さ40mm、幅4mm、厚み3mmの曲げ試験片(評価用サンプル)を装置にセットし、支点間距離30mmに設定して、それぞれの条件につき各々5点ずつ曲げ強度を測定し、その平均値を各条件の室温3点曲げ強度として求めた。
以上の結果を表6にまとめて示す。
Claims (10)
- セラミックス粉末とガラス転移温度が室温より高い熱可塑性樹脂とを含む原料粉末を用いて静水圧加圧して所定形状に成形する焼結用セラミックス成形体の作製方法であって、前記原料粉末を所定形状に一軸プレスした一軸プレス成形体を、又はゴム型に充填した前記原料粉末を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で第1段の静水圧加圧成形して第1段加圧成形体を作製し、次いでこの第1段加圧成形体を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して第2段の静水圧加圧成形として温間静水圧加圧(WIP)成形を行ってセラミックス成形体を作製する焼結用セラミックス成形体の作製方法。
- 前記第1段の静水圧加圧成形が冷間静水圧加圧(CIP)成形である請求項1記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
- 前記第1段加圧成形体を作製した後、第1段の静水圧加圧状態を維持したまま、該第1段加圧成形体の加熱を開始し、引き続き前記第2段の静水圧加圧成形としてWIP成形を行う請求項1記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
- 前記WIP成形の加圧媒体が水又はオイルである請求項1~3のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
- 前記熱可塑性樹脂は、室温より高く且つWIP成形の加圧媒体の沸点よりも低い温度のガラス転移温度を有する請求項1~4のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリプロピオン酸ビニル、及びポリビニルアルコールとポリプロピオン酸ビニルの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1~5のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
- 前記原料粉末をスプレードライして形成した顆粒を用いて前記一軸プレス成形体を成形し、又はこの顆粒をゴム型に充填して前記第1段の静水圧加圧成形を行う請求項1~6のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
- 請求項1~7のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法で作製したセラミックス成形体を用いて焼結処理を行い、更に熱間等方加圧(HIP)処理してセラミックス焼結体を得るセラミックス焼結体の製造方法。
- 前記焼結処理の前にセラミックス成形体の脱脂処理を行う請求項8記載のセラミックス焼結体の製造方法。
- 前記HIP処理の後に、更にアニール処理を行う請求項8又は9記載のセラミックス焼結体の製造方法。
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