JP7056624B2 - 焼結用セラミックス成形体の作製方法及びセラミックス焼結体の製造方法 - Google Patents

焼結用セラミックス成形体の作製方法及びセラミックス焼結体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、成形時の圧力伝達と塑性流動とを両立させることにより残存空隙が小さく、かつ量も低減した焼結用セラミックス成形体の作製方法、及びこの作製方法で作製された成形体を用いたセラミックス焼結体の製造方法に関する。
一般に、どのようなセラミックスでも、その焼結体内部の残留気泡を減らすことができると、機械的強度、熱伝導率、光透過性、電気的特性、長期信頼性等が向上するため好ましい。また、肉厚なセラミックスを歩留り良く作製するための方法としては、従来から粉末を加圧成形する方法が広く用いられている。最も古典的な方法としては、一軸プレスしてから冷間静水圧加圧(冷間等方圧プレスともいう。Cold Isostatic Press(CIP))成形する方法、乃至はゴム型等に原料粉末を充填して直接CIP成形する方法があり、今日でも広く工業的に利用されている。なお、成形時の保形性を向上させたり、成形や焼結時のクラックを防止する目的で、セラミックス粉末出発原料(原料粉末)中には多くの場合、熱可塑性樹脂(いわゆるバインダー)が混合されている。
この熱可塑性樹脂を原料粉末に混合添加する工程を用いると、2次凝集原料粉末や、造粒した場合の顆粒原料の圧壊強度を高め、肉厚なセラミックスを加圧成形する際に成形体内部まで十分に圧力伝達させることを可能とし、それにより成形密度を向上させることができる。更にまた、成形体の保形性を向上して後工程でのクラックや変形を防止することもできる。こうして比較的成形密度の高い成形体を歩留り良く、狙い通りの形状に成形させることが可能となる。ただしその一方で、一軸プレスやCIP成形時の原料粉末や原料顆粒の塑性流動を阻害し、成形時に大きな内部残留応力を生じたり、原料粉末のブリッジングや顆粒間空隙を誘発させてしまう問題もはらんでいる。そのため、該成形体を焼結等により緻密化させた場合に、残留応力や残留気泡が内部に存在し、さまざまな特性が低下することが知られている。
そこで、セラミックス粉末原料に混合添加された熱可塑性樹脂の塑性流動性を向上させてセラミックス成形時の緻密化を促進する方法として、温間静水圧加圧(温水等方圧プレスともいう。Warm Isostatic Press(WIP))成形が提案されている。例えば、特許文献1(特許第2858972号公報)には、セラミックス粉末に熱可塑性樹脂を混合し、この混合物を一次成形後ゴム被膜をつけ二次的に静水圧加圧する成形を行ったり、または直接ゴム型等にこの混合物を入れることによって静水圧加圧成形する場合において、静水圧加圧時に熱可塑性樹脂が熱的に軟化する温度域まで昇温することを特徴とするセラミックス成形体の製造方法が開示されている。そして、熱可塑性樹脂が熱的に軟化する温度域まで昇温調節可能な静水圧加圧装置を「Warm Isostatic Press(W.I.P)」と呼んでいる。
なお、粉末全体を均一に低温加熱する温間静水圧加圧装置、いわゆるWIP装置自体は、非常に古くから知られており、例えば特許文献2(特公昭54-14352号公報)のような公知文献で確認することができる。また、より実用的な構造に改良された外部循環加熱式WIP装置も、特許文献3(特開昭61-124503号公報)で提示されている。
このようなWIP装置を用いた、熱可塑性樹脂を混合したセラミックスの成形技術は、その後、積層セラミックスの圧着工程用技術として応用されるようになっている。例えば特許文献4(国際公開第2012/060402号)には、全固体電池の積層グリーンシートの成形方法として、静水圧プレス(WIP)を利用できる例が開示されており、80℃の温度で1トンの圧力で熱圧着する公知例が示されている。あるいはまた、特許文献5(特開2014-57021号公報)には、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品のプレス成形方法として温間静水圧プレス(WIP)を行う実施形態が開示されており、積層シートを真空パックされた状態で所定の温度に予熱した後、温度70℃で温間静水圧プレスする形態が例示されている。
ところが、一般的に熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上に加熱した状態で加圧すると、塑性変形や塑性流動が支配的に起こり、加えられた圧力を成形体内部まで伝達させる力が非常に弱まるという問題がある。そのため、せっかく熱可塑性樹脂を混合添加することにより保形性や圧壊強度を高め、圧力伝達性を向上させた原料粉末であっても、WIP処理することにより成形体内部への圧力伝達が急速に減衰してしまい、特に肉厚成形体の内部にかえって多量のボイドを残存させてしまうとう致命的な欠陥があった。
そのため、WIP装置自体は非常に古くから知られていたにもかかわらず、前述のように厚さの薄い(肉薄)シート成形体を作製する際に利用されるにとどまり、前述の特許文献1以降では、なかなか肉厚セラミックスの成形技術としてWIPが活用される例が出てこなかった。
ところで、乾式原料の他に、セラミックス原料を熱可塑性樹脂と湿式で混練スラリー化して、それを湿式のまま成形する押出し成形法や鋳込み成形法も知られている。これらの成形法で成形された湿式成形体は、該工程を経た時点で、既に粗大空隙の少ない、かなり良好な成形体となる傾向が見られる。そのため、これで十分との判断がなされてきており、当該成形体をさらにアフタープレス成形するような公知例も見当たらない。例えば、特許文献6(特許第5523431号公報)には実施形態の例示がなされているが、原料粉の成形方法として、一軸加圧成形のプレス成形、等方加圧成形の冷間等方加圧成形型(CIP)、温間等方加圧成形型(WIP)、熱間等方加圧成形型(HIP)、一軸加圧成形後に等方加圧成形、のいずれかを任意に選択することが例示されると共に、それ以外の例として、押し出し成形や鋳込み成形などの型成形であってもよい、と例示されている。ただし、前者の成形工程と後者の成形工程とを組み合わせるような特段の記載は見当たらない。
そのため、押出し成形体や鋳込み成形体を、更にその後CIP成形したり、WIP成形したりすると、該プロセスは成形体の特性にどう作用するのか、についての知見は先行文献には見当たらない。
特許第2858972号公報 特公昭54-14352号公報 特開昭61-124503号公報 国際公開第2012/060402号 特開2014-57021号公報 特許第5523431号公報
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、残存空隙が極めて小さく、残留応力もない、緻密で良好な各種特性を有するセラミック焼結体を作製することのできる焼結用セラミックス成形体の作製方法、及び該焼結用セラミックス成形体の作製方法で作製したセラミックス成形体を用いたセラミックス焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するため、下記の焼結用セラミックス成形体の作製方法及びセラミックス焼結体の製造方法を提供する。
1.
セラミックス粉末とガラス転移温度が室温より高い熱可塑性樹脂とを含む原料粉末を用いて静水圧加圧して所定形状に成形する焼結用セラミックス成形体の作製方法であって、前記原料粉末を所定形状に一軸プレスした一軸プレス成形体を、又はゴム型に充填した前記原料粉末を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で第1段の静水圧加圧成形して第1段加圧成形体を作製し、次いでこの第1段加圧成形体を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して第2段の静水圧加圧成形として温間静水圧加圧(WIP)成形を行ってセラミックス成形体を作製する焼結用セラミックス成形体の作製方法。
2.
前記第1段の静水圧加圧成形が冷間静水圧加圧(CIP)成形である1記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
3.
前記第1段加圧成形体を作製した後、第1段の静水圧加圧状態を維持したまま、該第1段加圧成形体の加熱を開始し、引き続き前記第2段の静水圧加圧成形としてWIP成形を行う1記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
4.
前記WIP成形の加圧媒体が水又はオイルである1~3のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
5.
前記熱可塑性樹脂は、室温より高く且つWIP成形の加圧媒体の沸点よりも低い温度のガラス転移温度を有する1~4のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
6.
前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリプロピオン酸ビニル、及びポリビニルアルコールとポリプロピオン酸ビニルの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである1~5のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
7.
前記原料粉末をスプレードライして形成した顆粒を用いて前記一軸プレス成形体を成形し、又はこの顆粒をゴム型に充填して前記第1段の静水圧加圧成形を行う1~6のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
8.
1~7のいずれかに記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法で作製したセラミックス成形体を用いて焼結処理を行い、更に熱間等方加圧(HIP)処理してセラミックス焼結体を得るセラミックス焼結体の製造方法。
9.
前記焼結処理の前にセラミックス成形体の脱脂処理を行う8記載のセラミックス焼結体の製造方法。
10.
前記HIP処理の後に、更にアニール処理を行う8又は9記載のセラミックス焼結体の製造方法。
本発明によれば、セラミックス成形体、特に肉厚なセラミックス成形体をプレス成形する際に、成形体内部への圧力伝達と熱可塑性樹脂の塑性流動とを効果的に両立させることができ、残存空隙が極めて小さく且つ残留応力が解消された、緻密なセラミックス成形体を作製できる。また、このセラミックス成形体を焼結処理することにより、残存気泡の極めて少ない、真に高密度なセラミックス焼結体を作製できる。その結果、機械的強度、熱伝導率、光透過性等が向上した従来よりも特性の良好な高品質のセラミックス焼結体を提供できる。
[焼結用セラミックス成形体の作製方法]
以下に、本発明に係る焼結用セラミックス成形体の作製方法について説明する。なお、ここでいう室温は焼結用セラミックス成形体の成形プレス工程における環境温度であり、通常25±5℃である。
本発明に係る焼結用セラミックス成形体の作製方法は、セラミックス粉末とガラス転移温度が室温より高い熱可塑性樹脂とを含む原料粉末を用いて静水圧加圧して所定形状に成形する焼結用セラミックス成形体の作製方法であって、前記原料粉末を所定形状に一軸プレスした一軸プレス成形体を、又はゴム型に充填した前記原料粉末を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で第1段の静水圧加圧成形して第1段加圧成形体を作製し、次いでこの第1段加圧成形体を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して第2段の静水圧加圧成形として温間静水圧加圧(WIP)成形を行ってセラミックス成形体を作製することを特徴とするものである。
以下、本発明の詳細について説明する。
(原料粉末)
本発明で用いる原料粉末は、少なくともセラミックス粉末と熱可塑性樹脂(バインダー)とを含むものである。
これらのうち、セラミックス粉末は、目的のセラミックス焼結体を構成するものである。その組成はその目標特性に合わせて選定され、本発明では特に限定されない。即ち、セラミックス粉末は酸化物でも構わないし、窒化物やフッ化物でも構わない。更に金属間化合物のような金属系材料であっても、本発明は好適に利用できる。
例えば、ファラデー回転子用透明セラミックス焼結体を製造する場合、好ましいテルビウム含有酸化物材料を選定すると、以下の3種が挙げられる。
即ち、
(i)TbとAlを主成分として含みその他の成分としてScを含む酸化物ガーネット(TAG系複合酸化物)の焼結体からなるテルビウム含有ガーネット型酸化物透明セラミックス、
(ii)Tb3Ga512の組成式のTGG複合酸化物の焼結体からなるテルビウム含有ガーネット型酸化物透明セラミックス、
(iii)下記式(A)で表されるテルビウム含有ビックスバイト型酸化物透明セラミックスである。
(Tbx1-x23 (A)
(式(A)中、xは、0.4≦x≦0.7であり、Rは、スカンジウム、イットリウム、テルビウム以外のランタノイド元素群よりなる集合から選択された少なくとも1つの元素を含む。)
前記(i)の材料について、さらに敷衍する。
(i)の透明セラミックスは、TbとAlを主成分とし、その他の成分としてScを含むテルビウム含有酸化物であって、構造としてはガーネット構造をもつ。
ガーネット構造においては、テルビウムの構成比率が高いと単位長さ当りのファラデー回転角(ベルデ定数)が大きくなるため好ましい。またアルミニウムの構成比率が高いとテルビウムの結晶場のゆとりが生まれ、テルビニウムイオンの歪みが小さくなるため好ましい。さらにアルミニウムはガーネット構造を有する酸化物中で安定に存在できる3価のイオンのなかで最小のイオン半径を有するため、テルビニウムイオンの構成比率をそのまま維持しつつ、ガーネット構造の格子定数を小さくできるため、単位長さ当りのファラデー回転角(ベルデ定数)が大きくなるため好ましい。さらにガーネット型酸化物中のアルミニウム構成比率が高いと系全体の熱伝導率も向上するため好ましい。
なお、系全体のカチオンサイトをテルビウムとアルミニウムだけで占有させてしまうと、ペロブスカイト型構造がより安定化してしまい、ペロブスカイト型異相発生の原因となってしまう。ここで、スカンジウム(Sc)は、ガーネット構造を構成するテルビウムのサイトにもアルミニウムの一部のサイトにも固溶することのできる中間的なイオン半径を有する材料であり、テルビウムとアルミニウムとの配合比が秤量時のばらつきによって化学量論比からずれた場合に、ちょうど化学量論比に合うように、そしてこれにより結晶子の生成エネルギーを最小にするように、自らテルビウムサイトとアルミニウムサイトへの分配比を調整して固溶することのできるバッファ材料でもある。そのためガーネット組成単相の焼結体を安定して得られるため、スカンジウムは添加することが好ましい元素である。
そこで、例えばTAG基本組成式(Tb3Al512)においてテルビウムのサイト全体量3のうちの0以上0.08未満の部分と、アルミニウムのサイト全体量5のうちの0以上0.16未満の部分について、スカンジウム(Sc)で置換するとガーネット型構造がより安定化するため好ましい。
更にまた、テルビウムのサイトの一部をイットリウムやルテチウムで置換してもかまわない。イットリウムもルテチウムも、共にテルビウムよりイオン半径が小さく、ガーネット構造がより安定化するため邪魔にならない。さらにイットリウム、ルテチウムは一般的なファイバーレーザーシステムの発振波長帯0.9μm以上1.1μm以下で吸収ピークをもたないため、置換しても邪魔にならない。
前記(ii)のTb3Ga512からなるガーネット型酸化物材料について説明する。
本材料はテルビウム(Tb)とガリウム(Ga)の酸化物で構成されたガーネット構造材料である。この構造でもテルビウムの構成比率が高く、単位長さ当りのファラデー回転角(ベルデ定数)は大きいため好ましい。またガリウムの構成比率が高いと融点が大きく下がり、製造温度を下げられ、低コスト化が可能となるため好ましい。さらにTb3Ga512は従来からファイバーレーザーシステム用ファラデー回転子として広く採用実績があり、長期信頼性データが蓄積されているため好ましい。
前記(iii)の式(A)で表されるビックスバイト構造の酸化物材料について説明する。
本材料はセスキオキサイド型の酸化テルビウム構造を骨格とし、テルビウムイオンサイトを大量の、すなわち式(A)中の1-x(0.4≦x≦0.7)の範囲で、スカンジウム、イットリウム、テルビウム以外のランタノイド元素群よりなる集合から選択された少なくとも1つの元素でテルビウムイオンを置換する構造の酸化物材料である。
セスキオキサイド構造に占めるテルビウムイオン濃度は、幾つかあるテルビウム酸化物構造のなかで最も高められる構造である。そのためテルビウムの構成比率が高く、単位長さ当りのファラデー回転角(ベルデ定数)が大きくなるため好ましい。
またテルビウムイオンの一部を式(A)中の1-x(0.4≦x≦0.7)の範囲で他のイオンに置換したとしても、依然として単位長さ当りのファラデー回転角(ベルデ定数)を高く維持できるため、吸収の存在するテルビウムイオンの替わりに吸収の存在しない他のイオンで一部を置換することで単位格子あたりのテルビウムイオン由来の吸収密度を低減できるため好ましい。
式(A)中、xの範囲は0.4≦x≦0.7が好ましく、0.4≦x≦0.6がさらに好ましい。xが0.4未満になると、単位長さ当りのファラデー回転角(ベルデ定数)が小さくなってくるため好ましくない。またxが0.7を超えると、テルビウム由来の吸収量が無視できないレベルに増大するため好ましくない。
本発明で対象となる各種透明セラミックス焼結体(テルビウム含有複合酸化物焼結体)は、前記で表される複合酸化物を主成分として含有する。ここで「主成分として含有する」とは、前記いずれかの複合酸化物を90質量%以上含有することを意味する。前記いずれかの複合酸化物の含有量は99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることが更に好ましく、99.999質量%以上であることが特に好ましい。
また更に副成分として、焼結助剤としての役割をはたす金属酸化物を適宜添加することが好ましい。材料種にも依存するが、代表的な焼結助剤にSiO2、ZrO2、HfO2、CaO、BaO、LiF、MgO等、また金属酸化物以外にはカーボン(C)等がある。これらを0質量%から0.5質量%の範囲で添加することが好ましい。これらの焼結助剤を主成分であるテルビウム含有酸化物焼結体に添加すると、緻密化の促進、残留気泡の低減、異相析出の抑制ができるため好ましい。
本発明の対象となる透明セラミックス焼結体(テルビウム含有複合酸化物焼結体)は、前記の主成分と副成分とで構成されるが、更に他の元素を含有していてもよい。その他の元素としては、ナトリウム(Na)、燐(P)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等が典型的に例示できる。
その他の元素の含有量は、Tbの全量を100質量部としたとき、10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることが更に好ましく、0.001質量部以下(実質的にゼロ)であることが特に好ましい。
ここで、前記テルビウム含有複合酸化物焼結体の製造で用いるセラミックス粉末としては、テルビウムを含み、種々の複合酸化物組成を構成するための元素をすべて合わせた、これら元素群の金属粉末、ないしは硝酸、硫酸、尿酸等の水溶液、あるいは前記一連の元素の酸化物粉末等が好適に利用できる。
また、前記粉末の純度は99.9質量%以上が好ましい。
それらの元素を所定量秤量し、混合してから焼成して所望の構成のテルビウム含有酸化物、具体的にはアルミニウム系のガーネット型(前記(i))、ガリウム系のガーネット型(前記(ii))、テルビウム以外の元素と固溶させたビックスバイト型(前記(iii))の酸化物を主成分とする焼成原料を得る。
このときの焼成温度は、組成によっても微調整する必要があり、一概には言及できないが、少なくとも900℃以上、かつこの後に行われる焼結温度よりも低い温度が好ましく、1000℃以上、かつこの後に行われる焼結温度よりも低い温度がより好ましい。なお、原料によってはある温度以上に加熱すると急激に癒着凝集が悪化する場合がある。そのような原料を利用する場合は、注意深く上限温度を調整し、癒着凝集が悪化しない温度範囲で焼成することが好ましい。また、焼成時の昇温レート、降温レートはあまり気にする必要はないが、保持時間については注意が必要である。不必要に焼成保持時間を延ばすと、ゆるやかに癒着凝集が進行する。そのため、保持時間の上限範囲についてもある程度注意して選定する必要がある。
なお、ここでいう「主成分とする」とは、焼成原料の粉末X線回折結果から得られる主ピークが所望の材料の結晶系由来の回折ピークからなることを指す。なお、異相の存在濃度が1%未満である場合、実質的に粉末X線回折パターンは主相由来のパターンのみが明瞭に検知され、異相由来のパターンは、ほぼバックグラウンドレベルに埋もれることが多い。
次いで、得られた焼成原料を粉砕、ないしは分級して、粒度分布を所定範囲内に管理したセラミックス粉末を得る。セラミックス粉末の粒度は特に限定されないが、1次粒子の表面が、なるべくファセット面の出ていない粉末を選定すると、焼結性が向上するため好ましい。また、購入した原料そのままを用いるのではなく、湿式ボールミル粉砕、湿式ビーズミル粉砕、湿式ジェットミル粉砕、乾式ジェットミル粉砕等の粉砕処理を施すと、粗大粒や粗大気孔の発生を抑制し、緻密な成形体を作製できるため好ましい。更に純度としては3N以上の高純度出発原料粉末を選定すると、焼結工程での緻密化が促進され、かつ不純物によるさまざまな特性劣化が防止できるため好ましい。
なお、その際の粉末形状については特に限定されず、例えば角状、球状、板状の粉末が好適に利用できる。また、二次凝集している粉末であっても好適に利用できるし、スプレードライ処理等の造粒処理によって造粒された顆粒状粉末であっても好適に利用できる。
更に、これらのセラミックス粉末の調製工程については特に限定されない。共沈法、粉砕法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法、アルコキシド加水分解法、その他あらゆる合成方法で作製されたセラミックス粉末が好適に利用できる。また、得られたセラミックス粉末を適宜湿式ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミルや乾式ジェットミル、ハンマーミル等によって処理してもよい。
更に、1次粒子の過度な凝集を防止する目的で湿式粉砕処理中に各種の分散剤を添加しても良い。また1次粒子が非晶質で過度にふわふわしている場合や、板状や針状のようなアスペクト比が大きく嵩ばっている出発原料を用いる場合には、粉砕処理後に更に仮焼工程を加えることで、その1次粒子の形状を整えてもよい。
複合組成のセラミックス焼結体を作製する目的で、複数種類のセラミックス粉末を混合して成形する場合がある。本発明においては、このような混合セラミックス粉末を用いることも構わない。ただし、焼成前によく混合する目的で、溶媒中に分散させた湿式スラリーとし、これについて湿式ボールミル混合、湿式ビーズミル混合、湿式ジェットミル乳化等のブレンド処理をおこなうことが好ましい。更に、複数種類の出発原料を混合した後に、仮焼して目的とする化合物に相変化させてもよい。
また、その他の透明セラミックス焼結体として、例えばフッ化カルシウム・フッ化リチウム焼結体が挙げられる。詳しくは、光学レンズ等で使用可能な高度に透明なフッ化カルシウム焼結体であって、透明性を向上する目的でカルシウムに対して好ましくは0.08質量%以上3質量%未満、より好ましくは0.08質量%以上1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%程度のフッ化リチウムが添加される。ただし、フッ化リチウムは母材であるフッ化カルシウムのなかに均質に細かく分散している必要がある。また、3質量%以上のフッ化リチウムを添加してしまうと、たとえブレンド処理を施しても、もはや均質分散混合は困難となるため注意が必要である。
また、例えばスピネル(MgAl24)焼結体が挙げられる。詳しくは、紫外用窓材、可視域用高強度窓材、赤外用窓材等で使用可能な高度に透明なスピネル焼結体であって、透明性を向上する目的で幾つかの焼結助剤が添加されることが多い。ただし、最も焼結性向上が容易なフッ化リチウムは紫外域での吸収があるため使用できず、代わりに酸化マグネシウムをMgAl24に対して好ましくは0.08質量%以上1質量%以下の範囲で、より好ましくは0.1質量%程度で添加することが好ましい。また当該添加剤は母材中に均質に細かく分散していると緻密化が促進されるため好ましい。
また、窒化ケイ素系セラミックス焼結体として、例えば窒化ケイ素粉末に酸化物系助剤(酸化マグネシウム粉末及び酸化イットリウム粉末)を配合したものが挙げられる。詳しくは、放熱基板用として利用可能な高度に熱伝導率の高い窒化ケイ素セラミックス焼結体であって、熱伝導率を向上する目的でケイ素に対して好ましくは0.01質量%以上1質量%未満、より好ましくは0.05質量%以上0.8質量%以下の酸化マグネシウム粉末を添加する。且つ、絶縁体圧や曲げ強度を向上する目的でケイ素に対して好ましくは0.01質量%以上1質量%未満、より好ましくは0.05質量%以上0.8質量%以下の酸化イットリウム粉末を添加する。これらの酸化物添加剤は母材中に均質に細かく分散していると緻密化が促進されるため好ましい。
これらの複数種類のセラミックス粉末を混合して原料粉末とすることが好ましい。本発明においては、このような混合セラミックス粉末を用いることも構わない。ただし、よく混合する目的で、溶媒中に分散させた湿式スラリーとし、これについて湿式ボールミル混合、湿式ビーズミル混合、湿式ジェットミル乳化等のブレンド処理をおこなうことが好ましい。
セラミックス粉末をスラリー化するための溶媒の選定も、本発明においては特に限定されない。ただし、一般的には水、エタノール及び有機溶媒(エタノール以外のアルコール、アセトンなど)から選ばれる1種又は2種以上の混合物が好適に選定され、これらのうちエタノールが好ましい。なお、溶媒として水を選択する場合には、分散剤、消泡剤等を併せて混合添加することが好ましい。この時のそれぞれの添加量は、予備実験で最適範囲を探す必要がある。
また、後述する、バインダーとして添加される熱可塑性樹脂が溶解する溶媒、溶解しない溶媒のいずれも用いることができるが、熱可塑性樹脂が溶解する溶媒を選択する方が好ましい。
原料粉末に添加されるバインダーは、ガラス転移温度が室温より高い、好ましくは室温よりも3℃以上高い熱可塑性樹脂であり、その種類は特に限定されないが、一般的に利用されるポリビニルアルコール(ガラス転移温度Tg=55~85℃;鹸化度、重合度による。)、ポリ酢酸ビニル(ガラス転移温度Tg=25~40℃;鹸化度、重合度による。)、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体(ガラス転移温度Tg=30~80℃;鹸化度、重合度による。)、メチルセルロース(ガラス転移温度Tg=-90~120℃;水和度合、置換度合による。本発明では室温より高いガラス転移温度となるように調整する。)、エチルセルロース(ガラス転移温度Tg=70~160℃;置換度合による。)、ポリビニルブチラール(ガラス転移温度Tg=60~110℃;鹸化度、重合度による。)、ポリプロピオン酸ビニル(ガラス転移温度Tg=10~45℃;鹸化度、重合度による。本発明では室温より高いガラス転移温度となるように調整する。)、ポリビニルアルコールとポリプロピオン酸ビニルの共重合体(ガラス転移温度Tg=15~75℃;鹸化度、重合度による。本発明では室温より高いガラス転移温度となるように調整する。)から選択することが好ましい。これらはいずれも適度に粘着性が備わり、且つそのガラス転移温度が室温よりも高く(又は室温より高くなるように調整され、好ましくは室温よりも3℃以上高くなるように調整され)、後述するWIP成形における加圧媒体(水あるいはオイル)の沸点よりも低い範囲にある(又はその沸点より低くなるように調整され、好ましくはその沸点よりも5℃以上低くなるように調整される)ため、取扱いが容易であり好ましい。上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、具体的には35~100℃が好ましく、40~90℃がより好ましく、45~85℃が更に好ましい。
なお、ガラス転移温度Tgは、通常、示差走査熱量測定(DSC)により熱可塑性樹脂を測定したときの中間点ガラス転移温度値である。例えば、ガラス転移温度Tgは、昇温速度10℃/分、測定温度-50~250℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K7121:1987に準拠した方法で算出した中間点ガラス転移温度である。なお、試料中の水分がガラス転移温度Tgに影響する場合には該試料を一旦150℃まで加熱して乾燥させた後に測定を行うとよい。
上記熱可塑性樹脂の添加には予め溶媒、例えばエタノール溶媒に適当な濃度(質量%)となるように溶かしたもの(熱可塑性樹脂溶液)か、溶けずに分離するとしても濃度(質量%)を適当な数値となるように調合した熱可塑性樹脂粉末をエタノールなどの溶媒中に分散させたもの(熱可塑性樹脂分散液)を用いるとよく、その濃度は例えば5質量%~40質量%であることが好ましい。
このとき、熱可塑性樹脂溶液又は熱可塑性樹脂分散液を、セラミックス粉末を溶媒中に分散させた湿式スラリーに添加することが好ましい。一般的には熱可塑性樹脂を湿式スラリーに添加後、さらにボールミル混合、ビーズミル混合、湿式ジェットミル混合等をおこなってセラミックス粉末とよく撹拌することが好ましい。ただし、セラミックス粉末の形状や結晶性、平均1次粒子径を変化させる目的で仮焼処理をおこなう場合には、熱分解や熱変性、熱揮散を防止するために、該仮焼処理後に熱可塑性樹脂を添加する必要がある。
熱可塑性樹脂の添加量は、目的とするセラミックス焼結体の組成や、その最終用途によっても変化するため、予備実験で最適割合を決定する必要がある。ただし多くの場合、セラミックス粉末及び熱可塑性樹脂の合計質量に対して好ましくは0.2質量%以上40質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上10質量%以下となる量を添加してやると、高品質な成形体、並びに焼結体が得られる。
なお、本発明で用いる原料粉末中には、その後のセラミック製造工程での品質安定性や歩留り向上の目的で、各種の有機添加剤(前記バインダーとしての熱可塑性樹脂を除く)を添加してもよい。本発明においては、これらについても特に限定されない。即ち、各種の分散剤、潤滑剤、可塑剤等が好適に利用できる。ただし、これらの有機添加剤としては、不要な金属イオンが含有されない、高純度のタイプを選定することが好ましい。更に、ある種の分散剤は熱可塑性樹脂のガラス転移温度を低下させる効果を有するため、その添加量には注意が必要である。
前記セラミックス粉末に上記熱可塑性樹脂溶液又は熱可塑性樹脂分散液を添加した原料粉末スラリーを乾燥して原料粉末を得る。このとき、原料粉末スラリーをそのまま乾固してもよいし、スプレードライや凍結乾燥によって造粒乾燥してもよい。特にスラリーをスプレードライにより造粒乾燥して得られる顆粒は以後のハンドリングが容易になるため好ましい。
(成形工程)
続いて、本発明における焼結用セラミックス成形体のプレス成形手順について説明する。
(一軸プレス成形等)
まず前記のようにして得られた原料粉末を用い、該原料粉末を一軸プレス成形して所定形状の一軸プレス成形体とする。このとき、原料粉末をスプレードライして形成した顆粒を用いるとよい。一軸プレス成形体の形状は、目的の焼結体形状に対応するものであり、例えば直径7~100mm、長さ2~40mmの円柱形状である。あるいは、幅5~80mm、厚み2~30mm、長さ5~150mmの立方体形状である。
また、一軸プレス条件は、例えば成形体の加熱なし、プレス環境温度:前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度より低い温度(通常、室温)、印加圧力:5~50MPaである。
あるいは、一軸プレス成形することなく、前記原料粉末を直接静水圧加圧成形用のゴム型に充填する。このとき、原料粉末をスプレードライして形成した顆粒を用いるとよい。ゴム型の型形状は目的の焼結体形状に対応するものであり、例えば加圧前の内寸で、直径8~150mm、長さ10~300mmの円柱形状である。
(第1段静水圧加圧成形)
次に、前記のようにして得られた一軸プレス成形体又はゴム型に充填した前記原料粉末を該原料粉末に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で第1段の静水圧加圧成形して第1段加圧成形体を作製する。
ここで、この第1段の静水圧加圧成形が冷間静水圧加圧(CIP)成形であることが好ましい。即ち、前記一軸プレス成形体又はゴム型に充填した前記原料粉末を充填したゴム型をCIP装置に装着し、第1段の静水圧加圧成形を行うことが好ましい。この場合の加圧媒体は水又はオイルである。
このときの印加圧力、加圧保持時間は選定されるセラミックス組成や、目的とする最終製品の用途によって変化するため、適宜調整する必要がある。ただし、印加圧力として一般的に40MPa以上に加圧しないと成形体密度が上がらず、高品質な焼結体を得ることは難しい。印加圧力の上限については特に制限はないが、あまり加圧しすぎるとラミネーションクラックが発生するため好ましくない。ほとんどのセラミックス材料の場合、400MPa以下の印加圧力で十分な場合が多い。
また、加圧保持時間は、例えば1~10分間であることが好ましく、1~3分間であることがより好ましい。
また、プレス時の成形体の温度は原料粉末に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度に維持されており、例えば原料粉末に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上低い温度で維持されていることが好ましく、特に、成形体を加熱することなく室温に維持されていることが好ましい。
なお、このCIP処理では、プレス時に原料粉末に添加された熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満に維持されているため、原料粉末中で予め熱可塑性樹脂がセラミックス粉末(1次粒子)間の隙間をよく(密に)埋めた状態で硬く固化しており、原料粉末を加圧成形する際に成形体表面にかかる圧力が隣接する硬い熱可塑性樹脂と硬いセラミックス粉末(1次粒子)間で順次伝達され、結果として成形体内部にまでしっかりと圧力がかかるため好ましい。
(第2段静水圧加圧成形)
次いで、得られた第1段加圧成形体について前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して第2段の静水圧加圧成形として温間静水圧加圧(WIP)成形を行ってセラミックス成形体を作製する。
この第2段静水圧加圧成形を次の手順で行うことが好ましい。
(S1)まずWIP成形に用いるWIP装置において、WIP成形用加圧容器部及び加圧媒体の温度を原料粉末に添加された熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上となるように予め加温し、安定させておく。
(S2)そのように加温した状態のWIP装置において前記第1段加圧成形体をゴム型に充填し、あるいは第1段加圧成形体を防水フィルムで真空パックで封止した状態で装填する。
(S3)第1段加圧成形体を充填した状態のまま、第1段加圧成形体を保持して該第1段加圧成形体を加温してあるWIP装置と同程度の温度になるまで加熱し、その後に第2段の静水圧加圧成形としてWIP成形する。
なお、前記S3において、第1段加圧成形体を充填した後に、該第1段加圧成形体をWIP装置と同程度の温度まで加熱しながら第2段の静水圧加圧成形としてWIP成形するようにしてもよい。
ここで、WIP成形用加圧容器部及び加圧媒体の温度、即ち第1段加圧成形体を加熱する温度は、原料粉末に添加された熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上であり、該熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも5℃以上高いことが好ましい。なお、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が50℃以下の場合、第1段加圧成形体を加熱する温度をそのガラス転移温度よりも10℃以上高くすることが好ましい。また、第1段加圧成形体を加熱する温度の上限は130℃以下であることが好ましい。
また、使用する加圧媒体は水又はオイルが好ましく、水又は沸点が100℃超のオイルであることがより好ましい。このとき、選択される熱可塑性樹脂の種類により異なるが、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が91℃以上である場合には、加圧媒体として水を利用すると突沸の可能性があり危険である。そこで沸点が100℃超のオイルを加圧媒体として選択することが好ましい。なお、オイルにもさまざまな種類があるので、目的とする温度まで加温しても突沸する危険のないオイルを適宜選定することが好ましい。
WIP成形における印加圧力、加圧保持時間は選定されるセラミックス組成、熱可塑性樹脂の種類、添加割合、目的とする最終製品の用途によって変化するため、適宜調整する必要がある。ただし、印加圧力として一般的に40MPa以上に加圧しないと、ガラス転移温度を超えて温められた熱可塑性樹脂が、パッキングされたセラミックス成形体の隙間をぬって塑性流動を起こすことが困難なため、前記CIP工程で加圧されて内部応力を蓄えた状態である成形体内部の原料再配列が起こらず、残留応力の低減や粗大空洞を塞いでさらに緻密化させることが難しい。上限については特に制限はないが、一般にWIP装置の最大到達圧力はCIP装置のそれよりも低いことが知られている。これは加温による装置全体の熱膨張を含めて装置を安全に動作させるための装置作製上の制約である。具体的には、一般的なWIP装置の最大印加圧力は200MPa程度であるが、本発明においては、この程度の印加圧力が加えられれば十分に効果を発現することが可能である。
また、加圧保持時間は、例えば1~10分間であることが好ましく、1~3分間であることがより好ましい。
なお、上述した第1段静水圧加圧成形及び第2段静水圧加圧成形の実施形態に代えて、次のように行ってもよい。
(第1段静水圧加圧成形)
前記一軸プレス成形体又はゴム型に充填した前記原料粉末を充填したゴム型をWIP装置に装着し、前記第1段静水圧加圧成形の条件で成形を行う(第1段加圧成形体の作製)。
(第2段静水圧加圧成形)
前記第1段加圧成形体を作製した後、第1段の静水圧加圧状態を維持したまま(即ち、第1段加圧成形体をWIP装置に装着し加圧したまま)、該第1段加圧成形体の加熱を開始し、引き続き前記第2段静水圧加圧成形の条件でWIP成形を行う。
本発明においては前記第1段加圧成形(前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度より低い温度での静水圧加圧成形、好ましくはCIP成形)工程と前記第2段静水圧加圧成形(WIP成形)工程とをこの順序で両方行うことが必須である。
例えば、一軸プレス成形後の一軸プレス成形体におけるセラミックス粉体とバインダー(熱可塑性樹脂)の分布状態を見た場合、セラミックス粉体とバインダー(熱可塑性樹脂)は比較的均一に分散した状態、又はセラミックス粉体間の隙間を埋めるようにバインダー(熱可塑性樹脂)が存在する状態であるが、その成形体密度は比較的低い状態である。
次に前半の第1段加圧成形(前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度より低い温度での静水圧加圧成形、好ましくはCIP成形)工程では、この一軸プレス成形体に対して印加圧力を肉厚な成形体の内部にまで伝達させる働きを担っている。このとき、第1段加圧成形体において一軸プレス成形体におけるセラミックス粉体とバインダー(熱可塑性樹脂)が比較的均一に分散した状態、又はセラミックス粉体間の隙間を埋めるようにバインダー(熱可塑性樹脂)が存在する状態が維持されたまま、第1段加圧成形体密度が一軸成形体密度よりもある程度大きくなる。
次に更に後半の第2段静水圧加圧成形(WIP成形)工程では、前記第1段加圧成形工程で生じたマイナス作用、即ち第1段加圧成形体に対して成形体の内部応力歪みや部分的な粗大空隙の発生を塑性流動、再配列により取り除く働きを担っている。このとき、セラミックス成形体において、第1段加圧成形体におけるセラミックス粉体とバインダー(熱可塑性樹脂)が比較的均一に分散した状態、又はセラミックス粉体間の隙間を埋めるようにバインダー(熱可塑性樹脂)が存在する状態が維持されたまま、セラミックス成形体密度が第1段加圧成形体密度よりも更に大きくなっている。
この第1段及び第2段の静水圧加圧成形の一連の作用が正しく働いている限り、この2つの静水圧加圧成形工程で種々設定される条件の範囲は任意である。
ただし、正しくこの一連の作用が働いていることを確認、検証することが必要である。この確認、検証は以下の方法により行うことが好ましい。
即ち、第1の確認方法としては、前記第1段加圧成形工程及び第2段加圧成形工程後のこの第1段及び第2段の静水圧加圧成形の一連の作用が正しく働いた成形体(セラミックス成形体)の密度dCIP+WIPは、必ず前記第1段加圧成形工程直後の成形体密度dCIPよりも大きくなっていることから、成形体密度dCIP+WIP>成形体密度dCIPであることを確認することである。
また、第2の確認方法としては、比較のために一軸プレス成形体について前記第1段加圧成形を行わずに第2段加圧成形(WIP成形)のみを行ったサンプルを作製してみるとこのWIP成形のみを行った成形体の密度dWIPが、成形体密度dCIP+WIPよりも低くなることから、成形体密度dCIP+WIP>成形体密度dWIPであることを確認することである。なお、このように前記第1段加圧成形を行わずに第2段加圧成形(WIP成形)のみを行った成形体では、その内部に粗大なボイドが形成されている。
以上のように、本発明の焼結用セラミックス成形体の作製方法により、特に肉厚なセラミックス成形体をプレス成形する際に、成形体内部への圧力伝達と熱可塑性樹脂の塑性流動とを効果的に両立させることができ、残存空隙が極めて小さく且つ残留応力が解消された、緻密なセラミックス成形体が得られる。
[セラミックス焼結体の製造方法(セラミックスの緻密化処理)]
本発明に係るセラミックス焼結体の製造方法は、本発明の焼結用セラミックス成形体の作製方法により作製されたセラミックス成形体を用いて焼結処理を行い、更に熱間等方加圧(HIP)処理して更に緻密化を行いセラミックス焼結体を得るものである。
このとき、前記焼結処理の前にセラミックス成形体の脱脂処理を行うことが好ましい。また、前記HIP処理の後に、更にアニール処理を行うことが好ましい。
具体的には以下のような処理を行う。
(脱脂)
本発明の製造方法においては、通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、一般的な加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素、酸素含有混合ガス、水素、フッ素、フッ酸ガス、窒素、アンモニアガス等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、添加される熱可塑性樹脂、並びに分散剤その他の有機物が添加されている場合には、それらすべての有機成分が完全に分解消去できる温度まで昇温、並びに保持することが好ましい。
(焼結)
本発明の製造方法においては、一般的な焼結工程を好適に利用できる。即ち、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等の加熱焼結工程を好適に利用できる。この時の雰囲気は特に制限されず、不活性ガス、酸素ガス、水素ガス、フッ素ガス、フッ酸ガス、アルゴンガス、窒素ガス、アンモニアガス等の各種雰囲気、あるいはまた、減圧下(真空中)での焼結も可能である。ただし、取り扱うセラミックス材料の品種ごとに相性の良いガスは異なるため、正しく対応することが好ましい。例えば酸化物セラミックスであれば酸素系のガス群ないしは減圧雰囲気から選択することが好ましく、フッ化物セラミックスであればフッ素、フッ酸系のガス群、あるいはアルゴン、窒素などの不活性ガス、ないしは減圧雰囲気から選択することが好ましく、窒化物セラミックスであれば窒素、アンモニア系のガス群ないしは減圧雰囲気から選択することが好ましい。また、使用するガス種に合わせて、炉の材質選定や気密性管理を徹底することは言うまでもない。
本発明の焼結工程における焼結温度は、選択される組成、結晶系により、適宜調整する必要がある。一般的には、目的とする最終組成のセラミックス材料の融点から数十度ないしは数百度低い温度帯で焼結処理をすることが好ましい。また該焼結工程における焼結保持時間は数時間程度で十分な場合が多い。ただしもしもポーラスな焼結体を意図的に作製するのではない場合には、焼結体の相対密度は最低でも95%以上に緻密化させる必要がある。また、焼結処理を10時間以上長く保持して焼結体の相対密度を99%以上に緻密化させると、透明セラミックス焼結体において最終的な透明性が向上するため、更に好ましい。
なお焼結工程における昇温レートの選定はかなり重要となる。可能な限り小さな昇温レートを選定することが好ましいが生産性やコストの制約で限界もある。そこで、最低でも100℃/hrを確保できると好ましい。昇温レートを小さくできると、緻密化の促進、透明性の向上、偏析やクラックの抑制ができるため好ましい。
(熱間等方圧プレス(HIP))
本発明の製造方法においては、焼結工程を経た後に更に追加で熱間等方圧プレス(HIP(Hot Isostatic Pressing))処理を行う。
なお、このときの加圧ガス媒体種類は、アルゴン、窒素等の不活性ガス、又はAr-O2が好適に利用できる。加圧ガス媒体により加圧する圧力は、50~300MPaが好ましく、100~300MPaがより好ましい。圧力50MPa未満では緻密化向上効果が得られない場合があり、300MPa超では圧力を増加させてもそれ以上の緻密化向上が得られず、装置への負荷が過多となり装置を損傷するおそれがある。印加圧力は市販のHIP装置で処理できる196MPa以下であると簡便で好ましい。
なお、選択される焼結体がフッ化物である場合には、軟鋼のカプセルなどで封止したうえでHIP処理する、いわゆるカプセルHIP処理を施すことが好ましい。
また、HIP処理の際の温度(所定保持温度)は1000~1800℃、好ましくは1100~1700℃の範囲で設定される。熱処理温度が1800℃超では媒体ガスが焼結体に侵入したり、焼結体とHIP炉とが溶融固着するなどのリスクが増大するため好ましくない。また、熱処理温度が1000℃未満では焼結体の緻密化向上効果がほとんど得られない。なお、熱処理温度の保持時間については特に制限されないが、あまり長時間保持すると焼結体内部の欠陥が徐々に蓄積されるため好ましくない。典型的には1~3時間の範囲で好適に設定される。
なお、HIP処理するヒーター材、断熱材、処理容器は特に制限されないが、グラファイト、ないしはモリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)が好適に利用でき、処理容器としてさらに酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、炭化ケイ素、炭化タンタルも好適に利用できる。なお、HIP処理温度が1500℃以下の比較的低温条件である焼結体群である場合、ヒーター材、断熱材、処理容器として、白金(Pt)が使用できるため、選択される雰囲気の選定自由度が上がり、得られる焼結体中の点欠陥濃度が低減できるため好ましい。また、処理温度が1500℃以上である場合には、ヒーター材、断熱材としてグラファイトが好ましい。
(アニール)
本発明の製造方法において、透明セラミックス焼結体を製造するとき、HIP処理を終えた後に、得られた透明セラミックス焼結体中に点欠損が生じてしまい、薄灰色や黒灰色の外観を呈する場合がある。そのような場合には、前記HIP処理温度以下、典型的には1000~1500℃にて、酸化物であれば酸素雰囲気下で、フッ化物であればフッ素あるいはフッ酸雰囲気下で、窒化物であれば窒素あるいはアンモニア雰囲気下で、アニール処理(欠損回復処理)を施すことが好ましい。この場合の保持時間は、点欠損が回復するのに十分な時間を確保する必要があるため、3時間以上かけることが好ましい。なお、該アニール処理工程の設定温度を1500℃を超えて上げ過ぎたり、保持時間を数十時間という長さまで延ばし過ぎてしまうと、リバウンド現象と言う、透明セラミックス材料中のそこここに気泡が再発生してくるため好ましくない。
(光学評価)
本発明の製造方法において、透明セラミックス焼結体を製造する場合、前記一連の製造工程を経た焼結体について、その光学的な品質を評価する目的で、最低でもある一面を光学研磨することが好ましい。このときの光学面精度は特に制限されない。ただし、光学面のワープがあまり激しいと正しい光学評価が困難となるため、たとえば測定波長λ=633nmの場合、λ以下が好ましく、λ/2以下がさらに好ましく、λ/4以下が特に好ましい。なお、光学研磨された面に適宜反射防止膜を成膜することで光学損失を更に低減させることも可能である。
以上のようにして、光学研磨された面を通して内部を顕微鏡観察することで、残留気泡や粗大空洞、クロスニコル像を介して残留歪みの有無などを観察評価することが可能となる。
以上のように、本発明のセラミックス焼結体の製造方法によれば、残存気泡の極めて少ない、真に高密度なセラミックス焼結体を作製でき、その結果、機械的強度、熱伝導率、光透過性、電気的特性、長期信頼性等が向上した従来よりも特性の良好な高品質のセラミックス焼結体が得られる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化スカンジウム粉末、及び大明化学(株)製の酸化アルミニウム粉末を入手した。さらにキシダ化学(株)製のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の液体を入手した。純度は粉末原料がいずれも99.9質量%以上、液体原料が99.999質量%以上であった。
前記原料を用いて、混合比率を調整して表1に示す最終組成となるガーネット型酸化物原料(焼成原料No.1)を作製した。
即ち、テルビウムとアルミニウム、及びスカンジウムのモル数がそれぞれ表1の組成のモル比率となるよう秤量した混合粉末を用意した。続いてTEOSを、その添加量がSiO2換算で表1の質量%(0.01質量%)になるように秤量して原料に加えた。その後、エタノール中でアルミナ製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は15時間であった。その後さらにスプレードライ処理を行って、平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
続いて、この顆粒状原料をイットリアるつぼに入れ高温マッフル炉にて1200℃にて保持時間3時間で焼成処理して焼成原料(焼成原料No.1)を得た。得られた焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した(XRD分析)。X線回折パターンのリファレンスデータと測定パターンとの比較から試料の結晶系を特定した。結果はガーネット単相(立方晶)のみと確認された。
Figure 0007056624000001
得られた酸化物原料(焼成原料No.1)につき、再度エタノール中でナイロン製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は20時間であった。こうして得られたスラリー原料を2つのグループに分け、一方には、バインダーとして日本酢ビポバール(株)製のポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体(ガラス転移温度48℃)をエタノール中に20質量%となるように溶解させた熱可塑性樹脂溶液を原料粉末全体(焼成原料No.1+バインダー)の質量に対してポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体が1質量%となるように添加し、その後3時間バインダー添加スラリー(原料粉末スラリー)を撹拌混合した。このとき、バインダーはスラリー中で溶解していた。他方にはバインダーを加えずそのままの原料粉末スラリーとした。
これら2つのグループに分けた原料粉末スラリーを、互いの混入を防止しながらそれぞれスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料(原料粉末)を作製した。得られた2種類の原料粉末につき、それぞれ直径8mmφの金型で一軸プレス成形して一軸プレス成形体を複数個用意した(一軸プレス条件:加圧力30MPa、加圧保持時間0.1分間)。
得られた一軸プレス成形体を、更に表2に示すように5つのグループ(実施例1-1、比較例1-1~1-4)に分けた。そして表2に示す条件の成形プレス工程(一軸プレス-CIP処理-WIP処理、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の3水準)でセラミックス成形体サンプルを作製した(表中、〇印はそのプレス処理を行っており、-印はそのプレス処理を行っていないことを示す(以下、同じ))。
なお、この成形プレス工程における室温は20℃であった。CIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:20℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。また、WIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:60℃、CIP成形体加熱温度:60℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。
得られたセラミックス成形体サンプルについて、各々のサンプルの重さw(g)を測定し、さらに直径r(mm)と長さL(mm)も測定して、それぞれの成形体密度を以下の式で計算により求めた。
成形体密度(g/cm3)=(4000w)/(πr2L)
次に、おのおののセラミックス成形体をいずれもマッフル炉中で1000℃、2時間の条件にて脱脂処理した。続いて、当該脱脂済セラミックス成形体を酸素雰囲気炉に仕込み、1730℃で3時間の焼結処理を行って焼結体を得た。更にこれら各焼結体をカーボンヒーター製HIP炉に仕込み、Ar雰囲気中、加圧力200MPa、加熱温度1600℃、保持時間2時間の条件でHIP処理を行った。続いて、得られた各HIP処理済焼結体を酸素雰囲気炉に仕込み、加熱温度1350℃にて保持時間4時間のアニール処理を行って酸素欠損を回復させたセラミックス焼結体を得た。
こうして得られた各セラミックス焼結体を、直径5mm、長さ15mmとなるように研削及び研磨処理し、更にそれぞれのセラミックス焼結体の光学両端面を光学面精度λ/2(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨して評価用サンプルを得た。
次に各サンプルについて全光線透過率及び前方散乱率を次のように測定した。ここでサンプルのn数は各々3個ずつとし、測定結果の平均値を各サンプルの測定値とした(以下同じ)。
(全光線透過率、前方散乱率の測定方法)
日本分光(株)製の分光光度計V-670を用いて、波長1064nmにおける全光線透過率を測定した。測定方法としては、まず該分光光度計V-670に評価用サンプルをセットせずに分光器で分光させた光(波長1064nmの光(以下同じ))を照射し、該光を予め装置にセットされている積分球で受けて、集光された光を検知器で受光する。得られた照度をI0とし、続いて評価用サンプルを装置にセットして、今度は分光させた光を評価用サンプルに入射し、透過してきた光を再度積分球で集めて検知器で受光する。得られた照度をIとして式(1)により全光線透過率を求めた。
更に前方散乱率を続けて測定した。即ち積分球のセットアップを、直線透過光を除去するモードに切り替えて、評価用サンプルをセットしたままの状態で再び分光させた光を評価用サンプルに入射し、透過してきた光のうちの直線透過光以外の光を積分球で集めて検知器で受光した。得られた照度をIsとして式(2)により前方散乱率を求めた。
全光線透過率(%/15mm)=I/I0×100 ・・・・式(1)
前方散乱率 (%/15mm)=Is/I0×100 ・・・式(2)
以上の結果を表2にまとめて示す。
Figure 0007056624000002
前記結果から、バインダー(熱可塑性樹脂)を添加した原料粉末を用いて、一軸プレス-CIP処理-WIP処理の成形プレスを行った実施例1-1が最も成形体密度が向上し、焼結後の全光線透過率が最大となり、前方散乱率が最少となっていた。同じくバインダーを添加した原料粉末であっても、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の成形プレスを行った比較例1-1、1-2では、成形体密度が上がりにくく、全光線透過率も実施例1-1よりも若干低下し、前方散乱率も悪化していた。なお、比較例1-1と比較例1-2との比較から、一軸プレス-WIP処理の成形プレス条件の方が一軸プレス-CIP処理の成形プレス条件よりも成形体密度が高めとなるが、焼結してみると全光線透過率と前方散乱は劣っていることが確認された。また、バインダーを添加しない原料粉末(比較例1-3、1-4)では、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-CIP処理-WIP処理のいずれの成形プレス条件においても、成形体密度は向上せず、全光線透過率、前方散乱率がともに悪化してしまうことが確認された。
[実施例2]
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化イットリウム粉末、及びアルファエイサー製の酸化ハフニウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
前記原料を用いて、混合比率を調整して表3に示す最終組成となるビックスバイト型酸化物原料(焼成原料No.2)を作製した。
即ち、テルビウムとイットリウムのモル数がそれぞれ表3の組成のモル比率(即ち、1:1)となるよう秤量した混合粉末を用意した。続いてハフニウムを、その添加量がHfO2換算で表3の質量%(0.3質量%)になるように秤量して原料に加えた。その後、エタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は10時間であった。その後さらにスプレードライ処理を行って、平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
続いて、この顆粒状原料をイットリアるつぼに入れ高温マッフル炉にて1100℃にて保持時間3時間で焼成処理して焼成原料(焼成原料No.2)を得た。得られた焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した(XRD分析)。X線回折パターンのリファレンスデータと測定パターンとの比較から試料の結晶系を特定した。結果はビックスバイト単相(立方晶)のみと確認された。
Figure 0007056624000003
当該酸化物原料(焼成原料No.2)につき、再度エタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は20時間であった。こうして得られたスラリー原料を2つのグループに分け、一方には、バインダーとして日本酢ビポバール(株)製のポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体(ガラス転移温度48℃)をエタノール中に20質量%となるように溶解させた熱可塑性樹脂溶液を原料粉末全体(焼成原料No.2+バインダー)の質量に対してポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体が1質量%となるように添加し、その後3時間バインダー添加スラリー(原料粉末スラリー)を撹拌混合した。このとき、バインダーはスラリー中で溶解していた。他方にはバインダーを加えずそのままの原料粉末スラリーとした。
これら2つのグループに分けた原料粉末スラリーを、互いの混入を防止しながらそれぞれスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料(原料粉末)を作製した。得られた2種類の原料粉末につき、それぞれ直径8mmφの金型で一軸プレス成形して一軸プレス成形体を複数個用意した(一軸プレス条件:加圧力30MPa、加圧保持時間0.1分間)。
得られた一軸プレス成形体を、更に表4に示すように5つのグループ(実施例2-1、比較例2-1~2-4)に分けた。そして表4に示す条件の成形プレス工程(一軸プレス-CIP処理-WIP処理、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の3水準)でセラミックス成形体サンプルを作製した。
なお、この成形プレス工程における室温は20℃であった。CIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:20℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。また、WIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:60℃、CIP成形体加熱温度:60℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。
得られたセラミックス成形体サンプルについて、各々のサンプルの重さw(g)を測定し、さらに直径r(mm)と長さL(mm)も測定して、それぞれの成形体密度を以下の式で計算により求めた。
成形体密度(g/cm3)=(4000w)/(πr2L)
次に、おのおののセラミックス成形体をいずれもマッフル炉中で300℃、2時間の条件にて脱脂処理した。続いて、当該脱脂済セラミックス成形体を真空加熱炉に仕込み、1550℃で3時間の焼結処理を行って焼結体を得た。更にこれら各焼結体をカーボンヒーター製HIP炉に仕込み、Ar雰囲気中、加圧力200MPa、加熱温度1600℃、保持時間2時間の条件でHIP処理を行った。続いて、得られた各HIP処理済焼結体を真空加熱炉に仕込み、加熱温度600℃にて保持時間4時間のアニール処理を行って酸素欠損を回復させたセラミックス焼結体を得た。
こうして得られた各セラミックス焼結体を、直径5mm、長さ15mmとなるように研削及び研磨処理し、更にそれぞれのセラミックス焼結体の光学両端面を光学面精度λ/2(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨して評価用サンプルを得た。
こうして得られた各評価用サンプルについて、実施例1と同様の測定条件にて全光線透過率及び前方散乱率を測定した。得られた結果を表4にまとめて示す。
Figure 0007056624000004
前記結果から、バインダー(熱可塑性樹脂)を添加した原料粉末を用いて、一軸プレス-CIP処理-WIP処理の成形プレスを行った実施例2-1が最も成形体密度が向上し、焼結後の全光線透過率が最大となり、前方散乱率が最少となっていた。同じくバインダーを添加した原料粉末であっても、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の成形プレスを行った比較例2-1、2-2では、成形体密度が上がりにくく、全光線透過率も実施例2-1よりも若干低下し、前方散乱率も悪化していた。なお、比較例2-1と比較例2-2との比較から、一軸プレス-WIP処理の成形プレス条件の方が一軸プレス-CIP処理の成形プレス条件よりも成形体密度が高めとなるが、焼結してみると全光線透過率と前方散乱は劣っていることが確認された。また、バインダーを添加しない原料粉末(比較例2-3、2-4)では、本実施例の組成ではかなり安定した特性を示したが、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-CIP処理-WIP処理のいずれの成形プレス条件においても、実施例2-1に比べると成形体密度はやや下回り、全光線透過率、前方散乱率がともにやや悪化していた。
[実施例3]
アルファエイサー製のフッ化カルシウム粉末、フッ化リチウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
前記原料を用いて、カルシウムに対してリチウムがLiF換算で0.1質量%になるように秤量して混合し、出発原料(混合原料No.1)を準備した後、エタノール中でアルミナ製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は15時間であった。得られたスラリー原料を2つのグループに分け、一方には、バインダーとして日本酢ビポバール(株)製のポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体(ガラス転移温度48℃)をエタノール中に20質量%となるように溶解させた熱可塑性樹脂溶液を原料粉末全体(混合原料No.1+バインダー)の質量に対してポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体が1質量%となるように添加し、その後3時間バインダー添加スラリー(原料粉末スラリー)を撹拌混合した。このとき、バインダーはスラリー中で溶解していた。他方にはバインダーを加えずそのままの原料粉末スラリーとした。
これら2つのグループに分けた原料粉末スラリーを、互いの混入を防止しながらそれぞれスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料(原料粉末)を作製した。得られた2種類の原料粉末につき、それぞれ直径8mmφの金型で一軸プレス成形して一軸プレス成形体を複数個用意した(一軸プレス条件:加圧力30MPa、加圧保持時間0.1分間)。
得られた一軸プレス成形体を、更に表5に示すように5つのグループ(実施例3-1、比較例3-1~3-4)に分けた。そして表5に示す条件の成形プレス工程(一軸プレス-CIP処理-WIP処理、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の3水準)でセラミックス成形体サンプルを作製した。
なお、この成形プレス工程における室温は20℃であった。CIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:20℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。また、WIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:60℃、CIP成形体加熱温度:60℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。
得られたセラミックス成形体サンプルについて、各々のサンプルの重さw(g)を測定し、更に直径r(mm)と長さL(mm)も測定して、それぞれの成形体密度を以下の式で計算により求めた。
成形体密度(g/cm3)=(4000w)/(πr2L)
次に、おのおののセラミックス成形体をいずれもマッフル炉中で600℃、2時間の条件にて脱脂処理した。続いて、当該脱脂済セラミックス成形体を真空加熱炉に仕込み、850℃で3時間の焼結処理を行って焼結体を得た。更にこれら各焼結体を白金ヒーター製HIP炉に仕込み、Ar雰囲気中、加圧力200MPa、加熱温度700℃、保持時間2時間の条件でHIP処理を行った(フッ化カルシウム・フッ化リチウム焼結体)。
こうして得られた各セラミックス焼結体を、直径5mm、長さ15mmとなるように研削及び研磨処理し、更にそれぞれのセラミックス焼結体の光学両端面を光学面精度λ/2(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨して評価用サンプルを得た。
こうして得られた各評価用サンプルについて、実施例1と同様の測定条件にて全光線透過率及び前方散乱率を測定した。得られた結果を表5にまとめて示す。
Figure 0007056624000005
前記結果から、バインダー(熱可塑性樹脂)を添加した原料粉末を用いて、一軸プレス-CIP処理-WIP処理の成形プレスを行った実施例3-1が最も成形体密度が向上し、焼結後の全光線透過率が最大となり、前方散乱率が最少となっていた。同じくバインダーを添加した原料粉末であっても、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の成形プレスを行った比較例3-1、3-2では、成形体密度が上がりにくく、全光線透過率も実施例3-1よりも若干低下し、前方散乱率も悪化していた。なお、比較例3-1と比較例3-2との比較から、一軸プレス-WIP処理の成形プレス条件の方が一軸プレス-CIP処理の成形プレス条件よりも成形体密度が高めとなるが、焼結してみると全光線透過率と前方散乱は劣っていることが確認された。また、バインダーを添加しない原料粉末(比較例3-3、3-4)では、本実施例の組成ではかなり安定した特性を示したが、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-CIP処理-WIP処理のいずれの成形プレス条件においても、実施例3-1に比べると成形体密度はやや下回り、全光線透過率、前方散乱率がともにやや悪化していた。
[実施例4]
アルファエイサー製の窒化ケイ素粉末、大明化学製の酸化マグネシウム粉末、信越化学製の酸化イットリウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
前記原料を用いて、ケイ素に対してマグネシウムがMgO換算で0.1質量%になるように秤量し、さらにイットリウムがY23換算で0.7質量%になるように秤量してから混合し、出発原料(混合原料No.2)を準備した。当該混合原料をエタノール中でアルミナ製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は10時間であった。得られたスラリー原料を2つのグループに分け、一方には、バインダーとして積水化学(株)製のポリビニルブチラール(ガラス転移温度78℃)をエタノール中に20質量%となるように溶解させた熱可塑性樹脂溶液を原料粉末全体(混合原料No.2+バインダー)の質量に対してポリビニルブチラールが1質量%となるように添加し、その後3時間バインダー添加スラリー(原料粉末スラリー)を撹拌混合した。このとき、バインダーはスラリー中で溶解していた。他方にはバインダーを加えずそのままの原料粉末スラリーとした。
これら2つのグループに分けた原料粉末スラリーを、互いの混入を防止しながらそれぞれスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料(原料粉末)を作製した。得られた2種類の原料粉末につき、それぞれ50mm×15mmの長方形型の金型で一軸プレス成形してブロック状一軸プレス成形体を複数個用意した(一軸プレス条件:加圧力50MPa、加圧保持時間1分間)。
得られた一軸プレス成形体を、更に表6に示すように5つのグループ(実施例4-1、比較例4-1~4-4)に分けた。そして表6に示す条件の成形プレス工程(一軸プレス-CIP処理-WIP処理、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の3水準)でセラミックス成形体サンプルを作製した。
なお、この成形プレス工程における室温は20℃であった。CIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:20℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。また、WIP条件は、加圧媒体:水、加圧媒体温度:85℃、CIP成形体加熱温度:85℃、印加圧力196MPa、加圧時間:2分間とした。
得られたセラミックス成形体サンプルについて、各々のサンプルの重さw(g)を測定し、さらに端面のサイズS(mm2)と長さL(mm)も測定して、それぞれの成形体密度を以下の式で計算により求めた。
成形体密度(g/cm3)=1000w/SL
次に、おのおののセラミックス成形体をいずれもマッフル炉中で700℃、2時間の条件にて脱脂処理した。続いて、当該脱脂済セラミックス成形体を窒素雰囲気炉に仕込み、加熱温度1750℃で2時間の焼結処理を行って焼結体を得た。更にこれら各焼結体をカーボンヒーター製HIP炉に仕込み、窒素雰囲気中、加圧力200MPa、加熱温度1600℃、保持時間2時間の条件でHIP処理を行い、セラミックス焼結体(窒化ケイ素系セラミックス焼結体)を得た。
こうして得られた各セラミックス焼結体を、長さ40mm、幅4mm、厚み3mmの棒状、並びに直径10mm、厚み1mmの円盤状となるようにそれぞれ切断、研削及び研磨処理し、再度それぞれの密度を測定し焼結体密度ρを求めた。その後、得られた評価用サンプルについて以下の要領で熱伝導率と3点曲げ強度を計測評価した。
(熱伝導率の測定方法)
ネッチ(NETZSCH社)製のフラッシュランプアナライザーLFA467HTを用いて、直径10mm、厚み1mmの円盤試料(評価用サンプル)を該装置にセットし、レーザーフラッシュ法によりに熱拡散率αと比熱容量Cを計測した。これらの値と事前に求めた焼結体密度ρを用いて式(3)により熱伝導率κを算出した。
熱伝導率κ(W/m・K)=α×C×ρ ・・・(3)
(3点曲げ強度の測定方法)
(株)島津製作所製のセラミックス曲げ試験装置を用いて、JIS R1601に基づき、長さ40mm、幅4mm、厚み3mmの曲げ試験片(評価用サンプル)を装置にセットし、支点間距離30mmに設定して、それぞれの条件につき各々5点ずつ曲げ強度を測定し、その平均値を各条件の室温3点曲げ強度として求めた。
以上の結果を表6にまとめて示す。
Figure 0007056624000006
前記結果から、バインダー(熱可塑性樹脂)を添加した原料粉末を用いて、一軸プレス-CIP処理-WIP処理の成形プレスを行った実施例4-1が最も成形体密度が向上し、焼結後の熱伝導率及び3点曲げ強度が最大となっていた。同じくバインダーを添加した原料粉末であっても、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-WIP処理の成形プレスを行った比較例4-1、4-2では、成形体密度が上がりにくく、熱伝導率及び3点曲げ強度が実施例4-1よりもやや低下していた。なお、比較例4-1と比較例4-2との比較から、一軸プレス-WIP処理の成形プレス条件の方が一軸プレス-CIP処理の成形プレス条件よりも成形体密度が高めとなるが、焼結してみると熱伝導率及び3点曲げ強度は劣っていることが確認された。また、バインダーを添加しない原料粉末(比較例4-3、4-4)では、本実施例の組成ではかなり安定した特性を示したが、一軸プレス-CIP処理、一軸プレス-CIP処理-WIP処理のいずれの成形プレス条件においても、実施例4-1に比べると成形体密度はやや下回り、熱伝導率、3点曲げ強度がともにやや悪化していた。
以上、本実施例で示した通り、セラミックス粉末を成形するに当たり、予め熱可塑性樹脂を添加して原料粉末を調製し、当該熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下で該原料粉末を一軸プレスするか、あるいは直接ゴム型に充填した後に、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満の室温下にて冷間静水圧加圧(CIP)成形し、しかる後に該CIP成形体を、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加温しながら温間静水圧加圧(WIP)成形することにより、残存空隙が極めて小さく、且つ残留応力の解消された、緻密で良好なセラミックス成形体を作製することができる。また、このセラミックス成形体を用いて焼結処理することにより、残存気泡の極めて少ない、真に高密度なセラミックス焼結体を作製できる。その結果、光透過性、機械的強度、熱伝導率が向上した、従来よりも特性の良好な高品質セラミックス焼結体を提供することができる。
なお、これまで本発明を前記実施形態をもって説明してきたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。

Claims (10)

  1. セラミックス粉末とガラス転移温度が室温より高い熱可塑性樹脂とを含む原料粉末を用いて静水圧加圧して所定形状に成形する焼結用セラミックス成形体の作製方法であって、前記原料粉末を所定形状に一軸プレスした一軸プレス成形体を、又はゴム型に充填した前記原料粉末を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で第1段の静水圧加圧成形して第1段加圧成形体を作製し、次いでこの第1段加圧成形体を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して第2段の静水圧加圧成形として温間静水圧加圧(WIP)成形を行ってセラミックス成形体を作製する焼結用セラミックス成形体の作製方法。
  2. 前記第1段の静水圧加圧成形が冷間静水圧加圧(CIP)成形である請求項1記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
  3. 前記第1段加圧成形体を作製した後、第1段の静水圧加圧状態を維持したまま、該第1段加圧成形体の加熱を開始し、引き続き前記第2段の静水圧加圧成形としてWIP成形を行う請求項1記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
  4. 前記WIP成形の加圧媒体が水又はオイルである請求項1~3のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
  5. 前記熱可塑性樹脂は、室温より高く且つWIP成形の加圧媒体の沸点よりも低い温度のガラス転移温度を有する請求項1~4のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリプロピオン酸ビニル、及びポリビニルアルコールとポリプロピオン酸ビニルの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1~5のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
  7. 前記原料粉末をスプレードライして形成した顆粒を用いて前記一軸プレス成形体を成形し、又はこの顆粒をゴム型に充填して前記第1段の静水圧加圧成形を行う請求項1~6のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法。
  8. 請求項1~7のいずれか1項記載の焼結用セラミックス成形体の作製方法で作製したセラミックス成形体を用いて焼結処理を行い、更に熱間等方加圧(HIP)処理してセラミックス焼結体を得るセラミックス焼結体の製造方法。
  9. 前記焼結処理の前にセラミックス成形体の脱脂処理を行う請求項8記載のセラミックス焼結体の製造方法。
  10. 前記HIP処理の後に、更にアニール処理を行う請求項8又は9記載のセラミックス焼結体の製造方法。
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