JPWO2015186325A1 - リチウム複合金属酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウム複合金属酸化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

活物質となり得る新たな材料を提供する。
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750〜1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法。

Description

本発明は、リチウム複合金属酸化物の製造方法に関するものである。
リチウムイオン二次電池の活物質には種々の材料が用いられることが知られており、そのうち、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物は、リチウムイオン二次電池用活物質として汎用されている。
そして、近年、より優れた活物質を提供すべく、上記リチウム複合金属酸化物をベースとした研究が盛んに行われている。
例えば、特許文献1及び特許文献2には、種々の製造パラメータを特定した上記リチウム複合金属酸化物の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、上記一般式においてDがZrであるリチウム複合金属酸化物の製造方法も記載されている。
特開2012−018827号公報 特開2012−256435号公報
しかしながら、リチウムイオン二次電池の活物質に対する要求は増加しており、より優れた活物質となり得る新たなリチウム複合金属酸化物の提供が熱望されている。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、活物質となり得る新たなリチウム複合金属酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、少なくとも3種類の特定の製造方法で得られたリチウム複合金属酸化物を活物質としたリチウムイオン二次電池が、優れた電池特性を示し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1発明である、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法は、
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750〜1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含むことを特徴とする。
本発明の第2発明である、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法は、
ニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む水溶液と塩基性水溶液を混合して、pH10〜11及び40〜70℃の条件でニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む複合金属水酸化物を製造する複合金属水酸化物製造工程、
前記複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して焼成体とする焼成工程、
を含むことを特徴とする。
本発明の第3発明である、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法は、
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を水に分散させる分散液調製工程、
ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
前記ジルコニウム析出工程を経た第1焼成体を加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法により、活物質となり得る新たなリチウム複合金属酸化物を提供できる。
実施例1のリチウム複合金属酸化物の二次粒子のSEM写真である。 実施例1のリチウム複合金属酸化物の一次粒子のSEM写真である。 比較例1のリチウム複合金属酸化物の一次粒子のSEM写真である。 実施例2のリチウム複合金属酸化物のEDXチャートである。 実施例4のリチウム複合金属酸化物のEDXチャートである。 実施例5のリチウム複合金属酸化物のSEM写真である。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
<第1発明>
本発明の第1発明について説明する。
本発明の第1発明である、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法は、
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750〜1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含むことを特徴とする。
一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、b、c、dの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100の範囲であることが好ましく、12/100<b<80/100、12/100<c<80/100、10/100<d<60/100の範囲であることがより好ましく、15/100<b<70/100、15/100<c<70/100、12/100<d<50/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1を例示することができる。
前駆体製造工程は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする工程である。
ここで、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む水溶液と塩基性水溶液を混合することで、製造できる。上記複合金属水酸化物の製造工程について詳細に説明する。
複合金属水酸化物の製造工程は、
ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩を水に溶解し、ニッケル、コバルト及びマンガンを所定の比で含む複合金属含有水溶液を調製する工程、
塩基性水溶液を調製する工程、
前記塩基性水溶液に前記複合金属含有水溶液を供給し、ニッケル、コバルト及びマンガンを複合金属水酸化物として析出させる複合金属水酸化物析出工程、
を含む。
ニッケル塩としては、例えば、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケルを挙げることができる。コバルト塩としては、例えば、硫酸コバルト、炭酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルトを挙げることができる。マンガン塩としては、例えば、硫酸マンガン、炭酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、塩化マンガンを挙げることができる。
複合金属含有水溶液におけるニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩の配合比は、これらの配合比が、所望の第一発明のリチウム複合金属酸化物の金属組成比となるように調製すればよい。
複合金属含有水溶液を調製する工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
複合金属含有水溶液は、好ましくは40〜70℃、より好ましくは40〜60℃の範囲内に加温しておくのがよい。
塩基性水溶液のpHは9〜14の範囲が好ましく、10〜13の範囲がより好ましく、10.5〜12の範囲がさらに好ましい。なお、特段の言及がない限り、本明細書で規定するpHは25℃で測定した場合の値をいう。使用し得る塩基性化合物としては水に溶解して塩基性を示すものであれば良く、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三リチウムなどのアルカリ金属リン酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウムなどのアルカリ金属酢酸塩を挙げることができる。塩基性化合物は単独で用いても良いし、複数を併用しても良い。以下の工程において、水溶液のpHは、それぞれ好適な範囲に保たれることが好ましいため、塩基性水溶液には、少なくとも緩衝能を有する塩基性化合物が含まれるのが好ましい。緩衝能を有する塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属酢酸塩を挙げることができる。
塩基性水溶液を調製する工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
塩基性水溶液は、好ましくは40〜70℃、より好ましくは40〜60℃の範囲内に加温しておくのがよい。
複合金属水酸化物析出工程においては、前記塩基性水溶液に前記複合金属含有水溶液を供給することにより、金属イオンと水酸化物イオンが反応して、水に対して溶解度の低いニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物が生成し、これが析出する。析出した複合金属水酸化物の粒子がリチウム複合金属酸化物の一次粒子の基礎となる。そのため、複合金属水酸化物析出工程を複合金属水酸化物の析出速度が著しく速い条件下、すなわち複合金属水酸化物の核がいたるところで発生する条件下とすると、無秩序な複合金属水酸化物の粒子が形成されることになり、その結果、リチウム複合金属酸化物の一次粒子の好ましくない晶癖を生じる恐れがある。従って、複合金属水酸化物析出工程においては、できるだけ緩和な条件下で、複合金属水酸化物の粒子を析出させることが好ましい。
上記の観点から、複合金属含有水溶液を供給する速度は、10〜1000mL/hが好ましく、20〜500mL/hがより好ましく、50〜300mL/hが特に好ましい。また、複合金属水酸化物析出工程の反応温度は、40〜70℃、好ましくは40〜60℃の範囲内とするのがよい。
複合金属水酸化物析出工程においては、反応溶液を一定のpHに保つことが好ましい。なお、ここでのpH値は、反応液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。当該pHとしては、9〜14の範囲が好ましく、10〜12の範囲がより好ましく、10.5〜11の範囲が特に好ましい。反応溶液を一定のpHに保つために、他の塩基性水溶液を準備して、複合金属水酸化物析出工程の反応溶液に適宜添加することが好ましい。
複合金属水酸化物析出工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
複合金属水酸化物析出工程後に、複合金属水酸化物を濾過などで分離する。
以上の方法で、複合金属水酸化物を得ることができる。
前駆体製造工程における加熱は、複合金属水酸化物に付着した水などを除去することが目的である。加熱温度としては、100℃以上が好ましく、150〜500℃の範囲内がより好ましく、200〜400℃の範囲内が特に好ましい。前駆体製造工程は常圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。
第1焼成工程は、前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱して第1焼成体とする工程である。
リチウム塩としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、ハロゲン化リチウムを例示することができる。リチウム塩の配合量は、所望のリチウム組成のリチウム複合金属酸化物となるように適宜決定すればよい。
混合装置としては、乳鉢及び乳棒、攪拌混合機、V型混合機、W型混合機、リボン型混合機、ドラムミキサー、ボールミルを例示できる。
第1焼成工程は、大気条件下で行うのが望ましいが、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス存在下で行ってもよい。
第1焼成工程の温度は、500〜700℃であり、550〜650℃が好ましい。第1焼成工程の加熱時間は、10〜30時間であり、11〜25時間が好ましく、14〜25時間がより好ましい。一般に、複合金属水酸化物及びリチウム塩の混合物を高温で加熱すると、混合物の粒子内で各金属が移動することが知られている。本発明では、第1焼成工程で、混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱することにより、得られる第1焼成体の粒子内における金属組成に特定の偏りが生じると推定される。このように、粒子内の金属組成に特定の偏りが生じた第1焼成体を、第1焼成工程とは異なる条件の第2焼成工程で焼成することで、好適な活物質となり得るリチウム複合金属酸化物を製造することができる。
第2焼成工程は、前記第1焼成体を750〜1000℃で加熱する工程である。
第2焼成工程は、大気条件下で行うのが望ましい。
第2焼成工程の温度は750〜1000℃である。ここで、リチウム複合金属酸化物の結晶生成の点から言及すると、なるべく低温で加熱した方が、均一な組成であって均一な形状の結晶が生成しやすい。そのため、第2焼成工程の温度は750〜900℃が好ましく、800〜875℃がより好ましい。例えば、800〜875℃の範囲内で加熱することにより、この温度範囲内で生成可能な特定の組成の結晶核が、粒子内における結晶可能組成条件を満足する特定の箇所(例えば中心部)で生成し、さらに、該結晶核近傍において、金属の移動に因り、結晶可能組成条件を満足するに従い、順次、結晶が成長することになる。その結果として、均一な組成であって均一な形状の結晶が生成すると推定される。他方、例えば、1100℃で焼成すると、結晶核の生成速度が増加すること及び結晶核を生成し得る組成が増加することにより、粒子内のいたるところで多様な組成の結晶核が生成し、その結果として、不均一な組成であって不均一な形状の結晶が生成すると推定される。
第2焼成工程の加熱時間は、1〜30時間が好ましく、3〜25時間が好ましく、5〜15時間がより好ましい。
第2焼成工程で得られたリチウム複合金属酸化物は、粉砕工程、分級工程を経て、一定の粒度分布のものとするのが好ましい。粒度分布の範囲としては、一般的なレーザー散乱回折式粒度分布計での測定において、平均粒子径(D50)が100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、1μm以上30μm以下がさらに好ましく、2μm以上20μm以下が特に好ましい。また、本発明の第1発明であるリチウム複合金属酸化物の一次粒子の大きさは、顕微鏡観察にて50nm〜1500nmの範囲内のものが好ましい。
以上のとおり、本発明の第1発明である、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物を製造できる。
なお、上記一般式において0<e<1のもの、すなわちドープ元素Dを含むリチウム複合金属酸化物を製造する場合には、複合金属水酸化物の製造工程のいずれかの時点、及び/又は、第1焼成工程における前駆体及びリチウム塩の混合時点に、ドープ元素D含有化合物を添加すればよい。また、ドープ元素Dがジルコニウムの場合には、以下の本発明の第2発明や第3発明で述べる方法で、ジルコニウムをドープしてもよい。ドープ元素D含有化合物の配合量は、所望のドープ量(D)となるように適宜決定すればよい。ドープ元素D含有化合物としては、ドープ元素D酸化物、ドープ元素D水酸化物、ドープ元素D硫酸塩、ドープ元素D硝酸塩、ドープ元素Dリン酸塩、ドープ元素Dハロゲン化物を挙げることができる。例えば、ドープ元素Dがジルコニウムの場合には、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ハロゲン化ジルコニウムを具体的に挙げることができる。
本発明の第1発明であるリチウム複合金属酸化物は層状岩塩構造である。上述のように、本発明の第1発明であるリチウム複合金属酸化物は、製造工程におけるパラメータが詳細に限定されて製造される。そのため、本発明の第1発明であるリチウム複合金属酸化物においては、層状岩塩構造のリチウム層にニッケルが入りにくい、又は、遷移金属層のニッケル位置にリチウムが入りにくい、すなわち所謂Li−Niインターカレーションが生じにくいと考えられる。
一般的なリチウム複合金属酸化物においては、走査型電子顕微鏡(SEM)観察の際の各一次粒子の(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が概ね1であるのに対し、本発明の第1発明であるリチウム複合金属酸化物の一次粒子においては、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2〜9、好ましくは3〜9、より好ましくは5〜9の範囲内のものが観察される。そして、本発明の第1発明であるリチウム複合金属酸化物においては、上記範囲内の一次粒子を好ましくは50%(個数)以上、より好ましくは70%(個数)以上含有する。
なお、一次粒子における最大長は層状岩塩構造のab軸方向の長さであり、最大長方向に垂直な第2最大長は層状岩塩構造のc軸方向の長さであるとも解される。
本発明の第1発明であるリチウム複合金属酸化物において、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が上述の範囲内の一次粒子が観察されるのは、上述したとおり、第2焼成工程の温度条件を低温としたことで、結晶核の無秩序な生成が抑制されつつ、均一な組成で結晶成長が為された結果、Li−Niインターカレーションが生じず又はリートベルト解析にて算出したLi−Niインターカレーションの程度が概ね0.4%以下であり、理想的なリチウム層と均一な金属組成の遷移金属層の層状岩塩構造を形成しているためと考えられる。
なお、一次粒子とは、SEM観察の際に1粒と認識される粒子のことを意味し、二次粒子とは、SEM観察の際に一次粒子が結合した塊のことを意味する。
<第2発明>
本発明の第2発明について説明する。
本発明の第2発明である、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法は、
ニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む水溶液と塩基性水溶液を混合して、pH10〜11及び40〜70℃の条件でニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む複合金属水酸化物を製造する複合金属水酸化物製造工程、
前記複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して焼成体とする焼成工程、
を含むことを特徴とする。
一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3)において、b、c、d、eの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、b、c、d、eの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100、0<e<10/100の範囲であることが好ましく、12/100<b<80/100、12/100<c<80/100、10/100<d<60/100、1/10000<e<5/100の範囲であることがより好ましく、15/100<b<70/100、15/100<c<70/100、12/100<d<50/100、1/1000<e<1/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、f、gについては一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦f<0.1、1.8≦g≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦f<0.01、1.9≦g≦2.1を例示することができる。
複合金属水酸化物製造工程は、ニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む水溶液と塩基性水溶液を混合して、pH10〜11及び40〜70℃の条件でニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む複合金属水酸化物を製造する工程である。
ニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む水溶液(以下、NiCoMnZr水溶液ということがある。)は、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩及びジルコニウム塩を所定の比で水に溶解して製造すればよい。NiCoMnZr水溶液は、各金属塩が溶解しやすいように、pHを適宜調製してもよいし、NiCoMnZr水溶液に、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などを有する配位可能化合物やキレート化合物などの溶解助剤を添加しても良い。NiCoMnZr水溶液のpHとしては1〜2の範囲内が好ましい。NiCoMnZr水溶液は、好ましくは40〜70℃、より好ましくは45〜65℃、さらに好ましくは55〜65℃の範囲内に加温しておくのがよい。
ニッケル塩としては、例えば、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケルを挙げることができる。コバルト塩としては、例えば、硫酸コバルト、炭酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルトを挙げることができる。マンガン塩としては、例えば、硫酸マンガン、炭酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、塩化マンガンを挙げることができる。ジルコニウム塩としては、例えば、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ハロゲン化ジルコニウムを挙げることができる。
NiCoMnZr水溶液を調製する工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
塩基性水溶液のpHは10〜14の範囲が好ましく、10〜13の範囲がより好ましく、10.5〜12の範囲がさらに好ましい。使用し得る塩基性化合物としては水に溶解して塩基性を示すものであれば良く、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三リチウムなどのアルカリ金属リン酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウムなどのアルカリ金属酢酸塩を挙げることができる。塩基性化合物は単独で用いても良いし、複数を併用しても良い。以下の工程において、水溶液のpHは、それぞれ好適な範囲に保たれることが好ましいため、塩基性水溶液には、少なくとも緩衝能を有する塩基性化合物が含まれるのが好ましい。緩衝能を有する塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属酢酸塩を挙げることができる。
塩基性水溶液を調製する工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
塩基性水溶液は、好ましくは40〜70℃、より好ましくは45〜65℃の範囲内に加温しておくのがよい。
複合金属水酸化物製造工程においては、NiCoMnZr水溶液と塩基性水溶液を混合して、pH10〜11及び40〜70℃の条件でニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む複合金属水酸化物を製造する。なお、ここでのpH値は、反応液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。
複合金属水酸化物製造工程においては、NiCoMnZr水溶液と塩基性水溶液を混合することにより、金属イオンと水酸化物イオンが反応して、水に対して溶解度の低いニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む複合金属水酸化物が生成し、これが析出する。析出した複合金属水酸化物の粒子がリチウム複合金属酸化物の一次粒子の基礎となる。そのため、複合金属水酸化物製造工程を複合金属水酸化物の析出速度が著しく速い条件下、すなわち複合金属水酸化物の核がいたるところで発生する条件下とすると、無秩序な複合金属水酸化物の粒子が形成されることになり、その結果、リチウム複合金属酸化物の一次粒子の好ましくない晶癖を生じる恐れがある。従って、複合金属水酸化物製造工程においては、できるだけ緩和な条件下で、複合金属水酸化物の粒子を析出させることが好ましい。複合金属水酸化物の析出を好適に制御するためには、前記塩基性水溶液に前記NiCoMnZr水溶液を供給する方法が好ましい。複合金属含有水溶液を供給する速度は、10〜1000mL/hが好ましく、20〜500mL/hがより好ましく、50〜300mL/hが特に好ましい。
複合金属水酸化物製造工程においては、pH及び温度が上記の範囲外であれば、特定の金属塩のみが析出したり、特定の金属水酸化物のみが先もしくは後に析出したり、特定の金属塩が十分に析出しなかったりする恐れがあり、その結果、所望の組成の複合金属水酸化物が得られない恐れがある。複合金属水酸化物製造工程のpHは10.2〜10.7の範囲内が好ましい。複合金属水酸化物製造工程においては、反応溶液を一定のpHに保つことが好ましい。反応溶液を一定のpHに保つために、他の塩基性水溶液を準備して、複合金属水酸化物製造工程の反応溶液に適宜添加することが好ましい。複合金属水酸化物製造工程の反応温度は45〜65℃の範囲内とするのが好ましく、55〜65℃の範囲内とするのがより好ましい。
複合金属水酸化物製造工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
複合金属水酸化物製造工程後に、複合金属水酸化物を濾過などで分離する。得られた複合金属水酸化物においては、各金属が均一に分布していると推定される。
前駆体製造工程は、前記複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする工程である。
前駆体製造工程における加熱は、複合金属水酸化物に付着した水などを除去することが目的である。加熱温度としては、100℃以上が好ましく、150〜500℃の範囲内がより好ましく、200〜400℃の範囲内が特に好ましい。前駆体製造工程は常圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。
焼成工程は、前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して焼成体とする工程である。
リチウム塩としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、ハロゲン化リチウムを例示することができる。リチウム塩の配合量は、所望のリチウム組成のリチウム複合金属酸化物となるように適宜決定すればよい。
混合装置としては、乳鉢及び乳棒、攪拌混合機、V型混合機、W型混合機、リボン型混合機、ドラムミキサー、ボールミルを例示できる。
焼成工程は、大気条件下で行ってもよいし、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス存在下で行ってもよい。焼成工程の加熱温度は500〜1200℃の範囲を例示できる。焼成工程の加熱時間は1〜50時間を例示できる。
焼成工程は、単一の温度条件で実施してもよいし、温度条件が異なる複数の焼成工程を組み合わせて実施してもよく、また、特定の昇温プログラムを設定して実施してもよい。
温度条件が異なる複数の焼成工程を組み合わせる方法としては、前記前駆体及びリチウム塩の混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、及び、前記第1焼成体を750〜1000℃で加熱する第2焼成工程を挙げることができる。
第1焼成工程の温度は、500〜700℃であり、550〜650℃が好ましい。第1焼成工程の加熱時間は、10〜30時間であり、11〜25時間が好ましく、14〜25時間がより好ましい。一般に、複合金属水酸化物及びリチウム塩の混合物を高温で加熱すると、混合物の粒子内で各金属が移動することが知られている。本発明では、第1焼成工程で、混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱することにより、得られる第1焼成体の粒子内における金属組成に特定の偏りが生じると推定される。このように、粒子内の金属組成に特定の偏りが生じた第1焼成体を、第1焼成工程とは異なる条件の第2焼成工程で焼成することで、好適な活物質となり得るリチウム複合金属酸化物を製造することができる。
第2焼成工程は、前記第1焼成体を750〜1000℃で加熱する工程である。
第2焼成工程の温度は750〜1000℃である。ここで、リチウム複合金属酸化物の結晶生成の点から言及すると、なるべく低温で加熱した方が、均一な組成であって均一な形状の結晶が生成しやすい。そのため、第2焼成工程の温度は750〜900℃が好ましく、800〜870℃がより好ましい。例えば、800〜870℃の範囲内で加熱することにより、この温度範囲内で生成可能な特定の組成の結晶核が、粒子内における結晶可能組成条件を満足する特定の箇所(例えば中心部)で生成し、さらに、該結晶核近傍において、金属の移動に因り、結晶可能組成条件を満足するに従い、順次、結晶が成長することになる。その結果として、均一な組成であって均一な形状の結晶が生成すると推定される。他方、例えば、1100℃で焼成すると、結晶核の生成速度が増加すること及び結晶核を生成し得る組成が増加することにより、粒子内のいたるところで多様な組成の結晶核が生成し、その結果として、不均一な組成であって不均一な形状の結晶が生成すると推定される。
第2焼成工程の加熱時間は、1〜30時間が好ましく、3〜25時間が好ましく、5〜15時間がより好ましい。
また、第1焼成工程で得られた第1焼成体に対し、さらにジルコニウムを添加するジルコニウム追加工程を実施してもよい。ジルコニウム追加工程においては、所望のリチウム複合金属酸化物のジルコニウム組成となるように、適切な量のジルコニウムを追加すればよい。
ジルコニウム追加工程としては、第1焼成体にジルコニウム塩の粉末を混合するドライ方法を採用してもよく、以下で詳細に説明するウェット方法を採用してもよい。
ドライ方法について説明する。ジルコニウム塩としては、例えば、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ハロゲン化ジルコニウムを挙げることができる。混合装置としては、乳鉢及び乳棒、攪拌混合機、V型混合機、W型混合機、リボン型混合機、ドラムミキサー、ボールミル、株式会社奈良機械製作所のハイブリダイゼーションシステム(NHS)及びミラーロ(MIRALO)、ホソカワミクロン株式会社のメカノフュージョン及びノビルタ、株式会社徳寿工作所のシータ・コンポーザを例示することができる。高い撹拌せん断力を有する点から、混合装置としてはハイブリダイゼーションシステム、ミラーロ、メカノフュージョン、ノビルタ、シータ・コンポーザが好ましい。
ウェット方法について説明する。ウェット方法は、前記第1焼成体を水に分散させる分散液調製工程、及び、ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と前記分散液を混合し第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、を含む。
分散液調製工程の前に、第1焼成体を粉砕しておくのが好ましい。また、分散液調製工程においては、第1焼成体に含まれるリチウムが水に溶解する可能性が有るため、分散液に上述したリチウム塩を適宜適切な量で添加しておくのが好ましい。さらに、分散液のpHが9〜12程度の範囲内となるようにpH調製を行うことが好ましい。
ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液は、ジルコニウム塩とヒドロキシカルボン酸を水に溶解して製造される。ジルコニウム塩とヒドロキシカルボン酸の配合比は、モル比でジルコニウム:ヒドロキシカルボン酸=1:1〜1:3の範囲内が好ましい。
ジルコニウム塩としては、例えば、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ハロゲン化ジルコニウムを挙げることができる。
分子内に水酸基とカルボン酸基を有するヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、キナ酸、シキミ酸を例示できる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、サリチル酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸などのo−ヒドロキシ安息香酸誘導体、マンデル酸、ベンジル酸、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸を例示できる。
上記具体的なヒドロキシカルボン酸は、いずれも、同一のジルコニウムイオンにOH基とCOH基が配位可能なコンホメーションを形成できる。
ジルコニウム析出工程は、ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と前記分散液を混合し第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させる工程である。効率的にジルコニウムを析出させるために、ジルコニウム析出工程の溶液のpHをコントロールするのが好ましい。例えば、ジルコニウム析出工程の溶液のpHが9〜13の範囲内となるように、塩基性水溶液を添加するのが好ましい。塩基性水溶液としては、上述したものを採用すればよい。
ジルコニウム析出工程を経た第1焼成体は、濾過などの方法で分離され、さらに100〜500℃、好ましくは200〜400℃の範囲内で乾燥されるのが好ましい。
ジルコニウム追加工程を経た第1焼成体は、第2焼成工程に供される。
第2焼成工程で得られたリチウム複合金属酸化物は、粉砕工程、分級工程を経て、一定の粒度分布のものとするのが好ましい。粒度分布の範囲としては、一般的なレーザー散乱回折式粒度分布計での測定において、平均粒子径(D50)が100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、1μm以上30μm以下がさらに好ましく、2μm以上20μm以下が特に好ましい。また、本発明の第2発明であるリチウム複合金属酸化物の一次粒子の大きさは、顕微鏡観察にて50nm〜1500nmの範囲内のものが好ましい。なお、一次粒子とは、SEM観察の際に1粒と認識される粒子のことを意味する。
以上のとおり、本発明の第2発明である、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物を製造できる。
<第3発明>
本発明の第3発明について説明する。
本発明の第3発明である、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法は、
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を水に分散させる分散液調製工程、
ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
前記ジルコニウム析出工程を経た第1焼成体を加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含むことを特徴とする。
一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3)において、b、c、d、eの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、b、c、d、eの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100、0<e<10/100の範囲であることが好ましく、12/100<b<80/100、12/100<c<80/100、10/100<d<60/100、1/10000<e<5/100の範囲であることがより好ましく、15/100<b<70/100、15/100<c<70/100、12/100<d<50/100、1/1000<e<1/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、f、gについては一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦f<0.1、1.8≦g≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦f<0.01、1.9≦g≦2.1を例示することができる。
前駆体製造工程は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を加熱して前駆体を製造する工程である。
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む水溶液と塩基性水溶液を混合することで、製造できる。上記複合金属水酸化物の製造工程について詳細に説明する。
複合金属水酸化物の製造工程は、
ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩を水に溶解し、ニッケル、コバルト及びマンガンを所定の比で含む複合金属含有水溶液を調製する工程、
塩基性水溶液を調製する工程、
前記塩基性水溶液に前記複合金属含有水溶液を供給し、ニッケル、コバルト及びマンガンを複合金属水酸化物として析出させる複合金属水酸化物析出工程、
を含む。
ニッケル塩としては、例えば、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケルを挙げることができる。コバルト塩としては、例えば、硫酸コバルト、炭酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルトを挙げることができる。マンガン塩としては、例えば、硫酸マンガン、炭酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、塩化マンガンを挙げることができる。
複合金属含有水溶液におけるニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩の配合比は、これらの配合比が、所望のリチウム複合金属酸化物の金属組成比となるように調製すればよい。
複合金属含有水溶液を調製する工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
複合金属含有水溶液は、好ましくは40〜70℃、より好ましくは45〜65℃の範囲内に加温しておくのがよい。
塩基性水溶液のpHは9〜14の範囲が好ましく、10〜13の範囲がより好ましく、10.5〜12の範囲がさらに好ましい。なお、特段の言及がない限り、本明細書で規定するpHは25℃で測定した場合の値をいう。使用し得る塩基性化合物としては水に溶解して塩基性を示すものであれば良く、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三リチウムなどのアルカリ金属リン酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウムなどのアルカリ金属酢酸塩を挙げることができる。塩基性化合物は単独で用いても良いし、複数を併用しても良い。以下の工程において、水溶液のpHは、それぞれ好適な範囲に保たれることが好ましいため、塩基性水溶液には、少なくとも緩衝能を有する塩基性化合物が含まれるのが好ましい。緩衝能を有する塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属酢酸塩を挙げることができる。
塩基性水溶液を調製する工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
塩基性水溶液は、好ましくは40〜70℃、より好ましくは45〜65℃の範囲内に加温しておくのがよい。
複合金属水酸化物析出工程においては、前記塩基性水溶液に前記複合金属含有水溶液を供給することにより、金属イオンと水酸化物イオンが反応して、水に対して溶解度の低いニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物が生成し、これが析出する。析出した複合金属水酸化物の粒子がリチウム複合金属酸化物の一次粒子の基礎となる。そのため、複合金属水酸化物析出工程を複合金属水酸化物の析出速度が著しく速い条件下、すなわち複合金属水酸化物の核がいたるところで発生する条件下とすると、無秩序な複合金属水酸化物の粒子が形成されることになり、その結果、リチウム複合金属酸化物の一次粒子の好ましくない晶癖を生じる恐れがある。従って、複合金属水酸化物析出工程においては、できるだけ緩和な条件下で、複合金属水酸化物の粒子を析出させることが好ましい。
上記の観点から、複合金属含有水溶液を供給する速度は、10〜1000mL/hが好ましく、20〜500mL/hがより好ましく、50〜300mL/hが特に好ましい。また、複合金属水酸化物析出工程の反応温度は、40〜70℃、好ましくは45〜65℃の範囲内とするのがよい。
複合金属水酸化物析出工程においては、反応溶液を一定のpHに保つことが好ましい。なお、ここでのpH値は、反応液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。当該pHとしては、9〜14の範囲が好ましく、10〜12の範囲がより好ましく、10.5〜11の範囲が特に好ましい。反応溶液を一定のpHに保つために、他の塩基性水溶液を準備して、複合金属水酸化物析出工程の反応溶液に適宜添加することが好ましい。
複合金属水酸化物析出工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
複合金属水酸化物析出工程後に、複合金属水酸化物を濾過などで分離する。
以上の方法で、複合金属水酸化物を得ることができる。
前駆体製造工程における加熱は、複合金属水酸化物に付着した水などを除去することが目的である。加熱温度としては、100℃以上が好ましく、150〜500℃の範囲内がより好ましく、200〜400℃の範囲内が特に好ましい。前駆体製造工程は常圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。
次に、第1焼成工程について説明する。第1焼成工程は、前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して第1焼成体とする工程である。
リチウム塩としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、ハロゲン化リチウムを例示することができる。リチウム塩の配合量は、所望のリチウム組成のリチウム複合金属酸化物となるように適宜決定すればよい。
混合装置としては、乳鉢及び乳棒、攪拌混合機、V型混合機、W型混合機、リボン型混合機、ドラムミキサー、ボールミルを例示できる。
第1焼成工程は、大気条件下で行ってもよいし、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス存在下で行ってもよい。第1焼成工程の加熱温度は500〜1200℃の範囲を例示できる。第1焼成工程の加熱時間は1〜50時間を例示できる。
第1焼成工程の温度は、500〜700℃が好ましく、550〜650℃がより好ましい。第1焼成工程の加熱時間は、10〜30時間が好ましく、11〜25時間がより好ましく、14〜25時間が特に好ましい。一般に、複合金属水酸化物及びリチウム塩の混合物を高温で加熱すると、混合物の粒子内で各金属が移動することが知られている。本発明の好ましい一態様では、第1焼成工程で、混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱することにより、得られる第1焼成体の粒子内における金属組成に特定の偏りが生じると推定される。このように、粒子内の金属組成に特定の偏りが生じた第1焼成体を、後の工程で、第1焼成工程とは異なる条件の第2焼成工程で焼成することで、好適な活物質となり得るリチウム複合金属酸化物を製造することができると考えられる。
次に、分散液調製工程について説明する。分散液調製工程は、前記第1焼成体を水に分散させ分散液を調製する工程である。
分散液調製工程の前に、第1焼成体を粉砕しておくのが好ましい。また、分散液調製工程においては、第1焼成体に含まれるリチウムが水に溶解する可能性があるため、分散液に上述したリチウム塩を適宜適切な量で添加しておくのが好ましい。さらに、分散液のpHが9〜12程度の範囲内となるようにpH調製を行うことが好ましい。
次に、ジルコニウム析出工程について説明する。ジルコニウム析出工程は、ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させる工程である。
ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液は、ジルコニウム塩とヒドロキシカルボン酸を水に溶解して製造される。ジルコニウム塩とヒドロキシカルボン酸の配合比は、モル比でジルコニウム:ヒドロキシカルボン酸=1:1〜1:3の範囲内が好ましい。
ジルコニウム塩としては、例えば、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ハロゲン化ジルコニウムを挙げることができる。
分子内に水酸基とカルボン酸基を有するヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、キナ酸、シキミ酸を例示できる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、サリチル酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸などのo−ヒドロキシ安息香酸誘導体、マンデル酸、ベンジル酸、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸を例示できる。
上記具体的なヒドロキシカルボン酸は、いずれも、同一のジルコニウムイオンにOH基とCOH基が配位可能なコンホメーションを形成できる。
ジルコニウム析出工程においては、効率的にジルコニウムを析出させるために、ジルコニウム析出工程の溶液のpHをコントロールするのが好ましい。例えば、ジルコニウム析出工程の溶液のpHが9〜13の範囲内となるように、塩基性水溶液を添加するのが好ましい。塩基性水溶液としては、上述したものを採用すればよい。
ジルコニウム析出工程を経た第1焼成体は、濾過などの方法で分離され、さらに100〜500℃、好ましくは200〜400℃の範囲内で乾燥されるのが好ましい。
第2焼成工程は、前記ジルコニウム析出工程を経た第1焼成体を加熱して第2焼成体とする工程である。第2焼成工程の温度は750〜1000℃が好ましい。ここで、リチウム複合金属酸化物の結晶生成の点から言及すると、なるべく低温で加熱した方が、均一な組成であって均一な形状の結晶が生成しやすい。そのため、第2焼成工程の温度は750〜900℃がより好ましく、800〜870℃がさらに好ましい。例えば、800〜870℃の範囲内で加熱することにより、この温度範囲内で生成可能な特定の組成の結晶核が、粒子内における結晶可能組成条件を満足する特定の箇所(例えば中心部)で生成し、さらに、該結晶核近傍において、金属の移動に因り、結晶可能組成条件を満足するに従い、順次、結晶が成長することになる。その結果として、均一な組成であって均一な形状の結晶が生成すると推定される。他方、例えば、1100℃で焼成すると、結晶核の生成速度が増加すること及び結晶核を生成し得る組成が増加することにより、粒子内のいたるところで多様な組成の結晶核が生成し、その結果として、不均一な組成であって不均一な形状の結晶が生成する場合があると推定される。
第2焼成工程の加熱時間は、1〜30時間が好ましく、3〜25時間が好ましく、5〜15時間がより好ましい。
第2焼成工程で得られたリチウム複合金属酸化物は、粉砕工程、分級工程を経て、一定の粒度分布のものとするのが好ましい。粒度分布の範囲としては、一般的なレーザー散乱回折式粒度分布計での測定において、平均粒子径(D50)が100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、1μm以上30μm以下がさらに好ましく、2μm以上20μm以下が特に好ましい。また、本発明の第3発明であるリチウム複合金属酸化物の一次粒子の大きさは、顕微鏡観察にて50nm〜1500nmの範囲内のものが好ましい。なお、一次粒子とは、SEM観察の際に1粒と認識される粒子のことを意味する。
以上のとおり、本発明の第3発明である、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦1.5、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦2.1) で表されるリチウム複合金属酸化物を製造できる。
また、本発明の第3発明から派生した本発明の第3−1発明として、以下の発明を把握できる。
本発明の第3−1発明である、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法は、
一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表される層状岩塩構造の材料を水に分散させる分散液調製工程、
ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、前記材料の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
前記ジルコニウム析出工程を経た材料を加熱して焼成体とする焼成工程、
を含むことを特徴とする。
上記材料は、本発明の第1発明で説明された方法で製造したものを用いてもよいし、公知の方法で製造したものを用いてもよく、また、市販のものを用いてもよい。
分散液調製工程及びジルコニウム析出工程については、本発明の第3発明の同じ工程に準じて行えばよい。ジルコニウム析出工程を経た材料は、濾過などの方法で分離され、さらに100〜500℃、好ましくは200〜400℃の範囲内で乾燥されるのが好ましい。
焼成工程は、大気条件下で行ってもよいし、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス存在下で行ってもよい。焼成工程の加熱温度は500〜1200℃の範囲を例示でき、600〜800℃の範囲内が好ましい。焼成工程の加熱時間は1〜50時間を例示でき、2〜5時間が好ましい。
なお、上記の各一般式におけるa、b、c、d、e、f、gの好適な範囲は、本発明の第3発明の説明を援用する。ただし、eの特に好ましい範囲として、1/500<e<1/300の範囲を追加する。eの範囲が1/500<e<1/300であれば、層状岩塩構造の材料を効率よく均一にジルコニウムで被覆できる。
本発明の第3−1発明に関するその他の事項は、本発明の第3発明の説明を援用する。
<用途>
本発明の第1発明、第2発明、第3発明及び第3−1発明のリチウム複合金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の活物質として使用し得る。本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウム複合金属酸化物を活物質として具備する。具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウム複合金属酸化物を活物質として具備する正極、負極、電解液及びセパレータを具備する。
正極は、集電体と、集電体の表面に結着させた正極活物質層を有する。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
正極活物質層は正極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。
正極活物質としては、本発明のリチウム複合金属酸化物を含むものであればよく、本発明のリチウム複合金属酸化物のみを採用してもよいし、本発明のリチウム複合金属酸化物と公知の正極活物質を併用してもよい。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、および各種金属粒子などが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、活物質:導電助剤=1:0.005〜1:0.5であるのが好ましく、1:0.01〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.03〜1:0.1であるのがさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
結着剤は、活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースを例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、活物質:結着剤=1:0.001〜1:0.3であるのが好ましく、1:0.005〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.01〜1:0.15であるのがさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。集電体については、正極で説明したものを適宜適切に採用すれば良い。負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。
負極活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、リチウムと合金化可能な元素を有する化合物、あるいは高分子材料などを例示することができる。
炭素系材料としては、難黒鉛化性炭素、黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類が例示できる。ここで、有機高分子化合物焼成体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
リチウムと合金化可能な元素としては、具体的にNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biが例示でき、特に、Si又はSnが好ましい。
リチウムと合金化可能な元素を有する化合物としては、具体的にZnLiAl、AlSb、SiB、SiB、MgSi、MgSn、NiSi、TiSi、MoSi、 CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSi、SiC、Si、SiO、SiO(0<v≦2)、SnO(0<w≦2)、SnSiO、LiSiO あるいはLiSnOを例示でき、特に、SiO(0.3≦x≦1.6、又は0.5≦x≦1.5)が好ましい。
中でも、負極活物質は、Siを有するSi系材料を含むものがよい。Si系材料は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な珪素又は/及び珪素化合物からなるとよく、例えば、SiOx(0.5≦x≦1.5)がよい。珪素は理論充放電容量が大きいものの、珪素は充放電時の体積変化が大きい。そこで、負極活物質を珪素を含むSiOxとすることで珪素の体積変化を緩和することができる。
また、Si系材料は、Si相と、SiO相とをもつことが好ましい。Si相は、珪素単体からなり、Liイオンを吸蔵・放出し得る相であり、Liイオンの吸蔵及び放出に伴って膨張及び収縮する。SiO相は、SiOからなり、Si相の膨張及び収縮を吸収する緩衝相となる。Si相がSiO相により被覆されるSi系材料が好ましい。さらには、微細化された複数のSi相がSiO相により被覆されて一体となって粒子を形成しているものがよい。この場合には、Si系材料全体の体積変化を効果的に抑えることができる。
Si系材料でのSi相に対するSiO相の質量比は、1〜3であることが好ましい。前記質量比が小さすぎると、Si系材料の膨張及び収縮が比較的大きくなり、Si系材料を含む負極活物質層にクラックが生じるおそれがある。一方、前記質量比が大きすぎると、負極活物質のLiイオンの吸蔵及び放出量が少なくなり、電池の負極単位質量あたりの電気容量が低くなる。
また、リチウムと合金化反応可能な元素を有する化合物として、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金等)などの錫化合物を例示できる。
高分子材料としては、具体的にポリアセチレン、ポリピロールを例示できる。
負極活物質として、CaSiを塩酸やフッ化水素酸などの酸で処理して得られる層状ポリシランを、300〜1000℃で加熱して得られるSi材料を採用しても良い。さらに、上記Si材料を炭素源とともに加熱して、カーボンコートしたものを負極活物質として採用してもよい。
負極活物質としては、以上のものの一種以上を使用することができる。
負極に用いる導電助剤及び結着剤については、正極で説明したものを同様の配合割合で適宜適切に採用すれば良い。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を混合し、スラリーを調製する。上記溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。
非水溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類等が使用できる。環状エステル類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解質としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒に、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
正極および負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から、外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、電極に含まれる活物質の種類に適した電圧範囲で充放電を実行されればよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。本発明の第1発明、第2発明、第3発明及び第3−1発明において、各リチウム複合金属酸化物の製造工程には他の発明の製造工程を取り入れても良い。そのような製造工程で製造されたリチウム複合金属酸化物には、取り入れられた製造工程の効果が奏される。
以下に、実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
(実施例1)
以下のとおり、実施例1のリチウム複合金属酸化物を製造した。
硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを、Ni:Co:Mnの組成比が5:3:2となるように、1200mLの純水に溶解させ、複合金属含有水溶液を調製した。複合金属含有水溶液を50℃に加温し、維持した。
28%アンモニア水14mLと純水400mLを混合し、第1塩基性水溶液を調製した。第1塩基性水溶液を50℃に加温し、維持した。
水酸化ナトリウム96g、28%アンモニア水84mL、純水500mLを混合し、第2塩基性水溶液を調製した。
50℃に維持した恒温槽中で、撹拌条件下の第1塩基性水溶液に複合金属含有水溶液を200mL/hの速度で供給し、ニッケル、コバルト及びマンガンを複合金属水酸化物として析出させた。この際に、反応溶液のpHを10.75〜10.80の範囲内に維持させるために、第2塩基性水溶液を適宜滴下した。なお、ここでのpH値は、反応液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。
複合金属水酸化物を濾過により分離した。超音波洗浄機を用いて、複合金属水酸化物を純水で洗浄し、その後、濾過により複合金属水酸化物を単離した。
複合金属水酸化物を300℃で5時間乾燥し、前駆体とした。前駆体19gと炭酸リチウム9.35gを乳鉢で混合し、混合物とした。そして、前記混合物を、大気雰囲気下、600℃で16時間加熱し、第1焼成体とした。
第1焼成体を乳鉢で解砕し、粉末状とした。粉末状の第1焼成体を、大気雰囲気下、850℃で7時間加熱し、リチウム複合金属酸化物を得た。該リチウム複合金属酸化物を乳鉢で解砕し、実施例1のリチウム複合金属酸化物とした。
以下のとおり、実施例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
正極用集電体として厚み20μmのアルミニウム箔を準備した。活物質として実施例1のリチウム複合金属酸化物を94質量部、導電助剤として3質量部のアセチレンブラック、および結着剤として3質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、スラリーを作製した。上記アルミニウム箔の表面に上記スラリーをのせ、ドクターブレードを用いてスラリーが膜状になるように塗布した。スラリーを塗布したアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することで、NMPを揮発により除去し、アルミニウム箔表面に活物質層を形成させた。表面に活物質層を形成させたアルミニウム箔を、ロ−ルプレス機を用いて圧縮し、アルミニウム箔と活物質層とを強固に密着接合させた。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状(25mm×30mmの矩形状)に切り取り、正極とした。
負極は以下のように作製した。
グラファイト98.3質量部と、結着剤としてスチレン−ブタジエンゴム1質量部及びカルボキシメチルセルロース0.7質量部とを混合し、この混合物を適量のイオン交換水に分散させてスラリーを作製した。このスラリーを負極用集電体である厚み20μmの銅箔にドクターブレードを用いて膜状になるように塗布し、スラリーを塗布した集電体を乾燥後プレスし、接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状(25mm×30mmの矩形状)に切り取り、負極とした。
上記の正極および負極を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を製作した。詳しくは、正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造の樹脂膜からなる矩形状シート(27×32mm、厚さ25μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。電解液としては、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートを体積比3:3:4で混合した溶媒にLiPF6を1モル/Lとなるよう溶解した溶液を用いた。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉された実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出している。
以上の工程で、実施例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例2)
以下のとおり、実施例2のリチウム複合金属酸化物を製造した。
硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを、Ni:Co:Mnの組成比が5:3:2となるように、1200mLの純水に溶解させ、複合金属含有水溶液を調製した。複合金属含有水溶液を50℃に加温し、維持した。
28%アンモニア水14mLと純水400mLを混合し、第1塩基性水溶液を調製した。第1塩基性水溶液を50℃に加温し、維持した。
水酸化ナトリウム96g、28%アンモニア水84mL、純水500mLを混合し、第2塩基性水溶液を調製した。
50℃に維持した恒温槽中で、撹拌条件下の第1塩基性水溶液に複合金属含有水溶液を200mL/hの速度で供給し、ニッケル、コバルト及びマンガンを複合金属水酸化物として析出させた。この際に、反応溶液のpHを10.75〜10.80の範囲内に維持させるために、第2塩基性水溶液を適宜滴下した。なお、ここでのpH値は、反応液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。
複合金属水酸化物を濾過により分離した。超音波洗浄機を用いて、複合金属水酸化物を純水で洗浄し、その後、濾過により複合金属水酸化物を単離した。
複合金属水酸化物を300℃で5時間乾燥し、前駆体とした。前駆体19gと炭酸リチウム9.35gを乳鉢で混合し、混合物とした。そして、前記混合物を、大気雰囲気下、600℃で16時間加熱し、第1焼成体とした。
第1焼成体を乳鉢で解砕し、粉末状とした。純水200mLに、炭酸リチウム2.33gと、粉末状の第1焼成体87gを加え、第1焼成体の分散液を調製した。硫酸を加えて分散液のpHを10に調整した。
硫酸ジルコニウム、及び、ヒドロキシカルボン酸としてのグリコール酸を水に溶解して、ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液を調製した。なお、当該ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液において、ジルコニウムとグリコール酸のモル比は1:2であり、また、当該ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液に含まれるジルコニウムのモル数は第1焼成体87gに含まれるニッケル、コバルト及びマンガンの合計モル数に対して0.005倍である。
上記第1焼成体の分散液と、上記ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液を混合し混合液とした。次いで、該混合液のpHが12.5になるまで、水酸化ナトリウム溶液を1時間かけて添加し、第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させた。表面にジルコニウムが析出した第1焼成体につき、濾過で分離し、該第1焼成体を300℃で乾燥した。
乾燥後の表面にジルコニウムが析出した第1焼成体を、大気雰囲気下、850℃で10時間加熱し、リチウム複合金属酸化物を得た。該リチウム複合金属酸化物を乳鉢で解砕し、実施例2のリチウム複合金属酸化物とした。
以下、活物質として実施例2のリチウム複合金属酸化物を採用した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例3)
実施例1の第1焼成体と、酸化ジルコニウムを、乳鉢で30分間混合し、混合物とした。なお、当該混合物に含まれるジルコニウムのモル数は混合物に含まれるニッケル、コバルト及びマンガンの合計モル数に対して0.005倍である。当該混合物を、大気雰囲気下、850℃で7時間加熱し、リチウム複合金属酸化物を得た。該リチウム複合金属酸化物を乳鉢で解砕し、実施例3のリチウム複合金属酸化物とした。
以下、活物質として実施例3のリチウム複合金属酸化物を採用した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例4)
以下のとおり、実施例4のリチウム複合金属酸化物を製造した。
硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン及び硫酸ジルコニウムを、Ni:Co:Mn:Zrの組成比が5:3:2:0.05となるように、1200mLの純水に溶解させ、複合金属含有水溶液を調製した。複合金属含有水溶液を60℃に加温し、維持した。
28%アンモニア水14mLと純水400mLを混合し、第1塩基性水溶液を調製した。第1塩基性水溶液を60℃に加温し、維持した。
水酸化ナトリウム96g、28%アンモニア水84mL、純水500mLを混合し、第2塩基性水溶液を調製した。
60℃に維持した恒温槽中で、撹拌条件下の第1塩基性水溶液に複合金属含有水溶液を200mL/hの速度で供給し、ニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを複合金属水酸化物として析出させた。この際に、反応溶液のpHを10.5に維持させるために、第2塩基性水溶液を適宜滴下した。なお、ここでのpH値は、反応液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。
複合金属水酸化物を濾過により分離した。超音波洗浄機を用いて、複合金属水酸化物を純水で洗浄し、その後、濾過により複合金属水酸化物を単離した。
複合金属水酸化物を300℃で5時間乾燥し、前駆体とした。前駆体19gと炭酸リチウム9.35gを乳鉢で混合し、混合物とした。そして、前記混合物を、大気雰囲気下、600℃で16時間加熱し、第1焼成体とした。
第1焼成体を乳鉢で解砕し、粉末状とした。粉末状の第1焼成体を、大気雰囲気下、850℃で7時間加熱し、リチウム複合金属酸化物を得た。該リチウム複合金属酸化物を乳鉢で解砕し、実施例4のリチウム複合金属酸化物とした。
以下、活物質として実施例4のリチウム複合金属酸化物を採用した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
以下のとおり、比較例1のリチウム複合金属酸化物を製造した。
硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを、Ni:Co:Mnの組成比が5:3:2となるように、1200mLの純水に溶解させ、複合金属含有水溶液を調製した。複合金属含有水溶液を50℃に加温し、維持した。
28%アンモニア水14mLと純水400mLを混合し、第1塩基性水溶液を調製した。第1塩基性水溶液を40℃に加温し、維持した。
水酸化ナトリウム96g、28%アンモニア水84mL、純水500mLを混合し、第2塩基性水溶液を調製した。
50℃に維持した恒温槽中で、撹拌条件下の第1塩基性水溶液に複合金属含有水溶液を200mL/hの速度で供給し、ニッケル、コバルト及びマンガンを複合金属水酸化物として析出させた。この際に、反応溶液のpHを11.2に維持させるために、第2塩基性水溶液を適宜滴下した。なお、ここでのpH値は、反応液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。
複合金属水酸化物を濾過により分離した。超音波洗浄機を用いて、複合金属水酸化物を純水で洗浄し、その後、濾過により複合金属水酸化物を単離した。
複合金属水酸化物を300℃で5時間乾燥し、前駆体とした。前駆体19gと炭酸リチウム9.35gを乳鉢で混合し、混合物とした。そして、前記混合物を、大気雰囲気下、760℃で5時間加熱し、第1焼成体とした。
第1焼成体を乳鉢で解砕し、粉末状とした。粉末状の第1焼成体を、大気雰囲気下、900℃で5時間加熱し、リチウム複合金属酸化物を得た。該リチウム複合金属酸化物を乳鉢で解砕し、比較例1のリチウム複合金属酸化物とした。
以下、活物質として比較例1のリチウム複合金属酸化物を採用した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例2)
グリコール酸の代わりにエタノールアミンを用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。しかし、溶液のpHを調整しても、第1焼成体の表面にジルコニウムが析出しなかった。
(比較例3)
グリコール酸の代わりにアンモニアを用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。しかし、溶液のpHを調整しても、第1焼成体の表面にジルコニウムが析出しなかった。
(比較例4)
グリコール酸の代わりに硫酸アンモニウムを用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。しかし、溶液のpHを調整しても、第1焼成体の表面にジルコニウムが析出しなかった。
(比較例5)
グリコール酸の代わりにグリシンを用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。しかし、溶液のpHを調整しても、第1焼成体の表面にジルコニウムが析出しなかった。
(比較例6)
グリコール酸の代わりにアラニンを用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。しかし、溶液のpHを調整しても、第1焼成体の表面にジルコニウムが析出しなかった。
(比較例7)
グリコール酸の代わりに酢酸を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。しかし、溶液のpHを調整しても、第1焼成体の表面にジルコニウムが析出しなかった。
(比較例8)
グリコール酸の代わりにマレイン酸を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。しかし、溶液のpHを調整しても、第1焼成体の表面にジルコニウムが析出しなかった。
(比較例9)
グリコール酸の代わりにエチレンジアミン四酢酸を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。しかし、溶液のpHを調整しても、第1焼成体の表面にジルコニウムが析出しなかった。
実施例2及び比較例2〜9の結果から、ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液を用いた方法が、第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させるための特別な方法であることがわかる。
(評価例1)
実施例1、比較例1のリチウム複合金属酸化物につき、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、表面観察を行った。図1に実施例1のリチウム複合金属酸化物の二次粒子の写真、図2に実施例1のリチウム複合金属酸化物の一次粒子の写真を示す。図3に比較例1のリチウム複合金属酸化物の一次粒子の写真を示す。
比較例1のリチウム複合金属酸化物の一次粒子は、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が概ね1であった。それに対し、実施例1のリチウム複合金属酸化物の一次粒子では、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が6.30、6.80、7.11のものが観察された。これら値の差異は、主にリチウム複合金属酸化物の焼成温度及び焼成時間の差異が反映されたと推定される。
(評価例2)
実施例2、実施例4のリチウム複合金属酸化物につき、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(SEM−EDX)にて表面のジルコニウム分布を測定した。実施例2、4のリチウム複合金属酸化物の表面に、均一にジルコニウムが分布しているのが確認できた。図4及び図5に、実施例2及び実施例4のリチウム複合金属酸化物のEDXチャートを載せる。図4及び図5において、強度が大きいのがNi、Co及びMnのピークであり、強度が小さいのがZrのピークである。
(評価例3)
実施例2及び実施例4のリチウム複合金属酸化物における一次粒子につき、イオンスライサー(EM−09100IS、日本電子株式会社製)を用いたArイオンミリング法にて断面を形成させ、該断面を、電子エネルギー損失分光法(EELS)にて、Mnを対象として分析を行った。
実施例2の一次粒子のエッジ部分から内部へわたり、Mnのピークに特段の変化は観察されなかった。他方、実施例4の一次粒子のエッジ部分から内部へ14nm程度の範囲で観察されるMnのピークには、それよりも内部で観察されるMnのピークとは異なるものが観察された。一次粒子のエッジ部分から内部へ14nm程度の範囲で観察されるMnピークは、それよりも内部のMnピークよりも低価数のMnに由来するものと考えられる。
(評価例4)
以下のとおり、実施例1〜4、比較例1のリチウムイオン二次電池の初期容量を測定した。測定する電池に対し、25℃、0.33Cレート、電圧4.5VでCCCV充電(定電流定電圧充電)し、そして、電圧3.0Vまで0.33CレートでCC放電(定電流放電)を行ったときの放電容量を測定し、これを初期容量とした。
さらに、測定する電池に対し、60℃、1Cレートで電圧4.5Vから3.0Vの範囲の充放電サイクルを200サイクル行い、その後、室温に5時間以上放置後、初期容量測定と同じ条件で放電容量を測定した。これをサイクル後容量とした。なお、例えば1時間で電池を完全放電させる電流レートを1Cという。容量維持率(%)は以下の式で求めた。
容量維持率(%)=100×サイクル後容量/初期容量
結果を表1に示す。
Figure 2015186325
表1から、本発明のリチウム複合金属酸化物を活物質として具備する二次電池は、初期容量、サイクル後容量、容量維持率ともに優れていることが裏付けられた。
(評価例5)
以下のとおり、実施例1〜4、比較例1のリチウムイオン二次電池の初期容量を測定した。測定する電池に対し、25℃、0.33Cレート、電圧4.5VでCCCV充電(定電流定電圧充電)し、そして、電圧3.0Vまで0.33CレートでCC放電(定電流放電)を行ったときの放電容量を測定し、これを初期容量とした。
さらに、各電池に対し、電圧4.32Vまで充電を行い、充電後の各電池を温度60℃の恒温庫に30日間保存した。保存後の電池の放電容量を初期容量の測定と同様の方法で測定して、容量維持率を算出した。容量維持率(%)は以下の式で求めた。
容量維持率(%)=保存後の放電容量/初期容量×100
結果を表2に示す。
Figure 2015186325
表2から、本発明のリチウム複合金属酸化物を活物質として具備する二次電池は、保存後の放電容量、容量維持率ともに優れていることが裏付けられた。
また、保存後の実施例1〜4のリチウムイオン二次電池及び保存後の比較例1のリチウムイオン二次電池を分解し、正極から溶出したMnが負極にどの程度付着しているかを、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて分析した。その結果を表3に示す。
Figure 2015186325
本発明のリチウム複合金属酸化物を活物質として具備する正極は、Mn溶出の程度を抑制できることが裏付けられた。
(実施例5)
純水400mLに粉末状の実施例1のリチウム複合金属酸化物25gを加え、分散液を調製した。硫酸を加えて分散液のpHを10に調整した。
硫酸ジルコニウム、及び、ヒドロキシカルボン酸としてのグリコール酸を水に溶解して、ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液を調製した。なお、当該ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液において、ジルコニウムとグリコール酸のモル比は1:2であり、また、当該ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液に含まれるジルコニウムのモル数は上記材料に含まれるニッケル、コバルト及びマンガンの合計モル数に対して0.0025倍である。
上記分散液と、上記ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液を混合し混合液とした。次いで、該混合液のpHが12になるまで、水酸化ナトリウム溶液を1時間かけて添加し、リチウム複合金属酸化物の表面にジルコニウムを析出させた。表面にジルコニウムが析出したリチウム複合金属酸化物を、濾過で分離し、120℃で5時間乾燥した。
乾燥後の表面にジルコニウムが析出したリチウム複合金属酸化物を、大気雰囲気下、700℃で3時間加熱し、焼成体としてのリチウム複合金属酸化物を得た。該リチウム複合金属酸化物を乳鉢で解砕し、実施例5のリチウム複合金属酸化物とした。
(評価例6)
実施例5のリチウム複合金属酸化物につき、SEMにて表面観察を行った。図6に実施例5のリチウム複合金属酸化物のSEM写真を示す。図6のSEM写真から、実施例5のリチウム複合金属酸化物の表面は均一にジルコニウム含有膜で被覆されているといえる。
(評価例7)
実施例5のリチウム複合金属酸化物につき、粉体抵抗率測定システム(株式会社三菱アナリテック)に供して、粉体の体積抵抗率を測定した。同様に、未被覆材料である実施例1のリチウム複合金属酸化物の体積抵抗率を測定した。結果を表4に示す。
Figure 2015186325
実施例5のリチウム複合金属酸化物は、ジルコニウム被覆により、体積抵抗率が著しく低減したといえる。この現象は、実施例5のリチウム複合金属酸化物において、層状岩塩構造のLiNi5/10Co3/10Mn2/10の遷移金属とジルコニウムとの一部置換が生じており、それに伴うバンドギャップの縮小が反映された結果であると推察される。

Claims (11)

  1. ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
    前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
    前記第1焼成体を750〜1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
    を含む、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  2. 前記第1焼成工程の温度が550〜650℃であり、加熱時間が11〜25時間である請求項1に記載のリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  3. 前記第2焼成工程の温度が800〜870℃であり、加熱時間が5〜15時間である請求項1又は2に記載のリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  4. 前記前駆体製造工程の前に、
    ニッケル、コバルト及びマンガンを含む水溶液と塩基性水溶液を40〜70℃で混合してニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を製造する複合金属水酸化物製造工程、を含む請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  5. 前記リチウム複合金属酸化物が、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2〜9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  6. 前記リチウム複合金属酸化物が、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が5〜9の範囲内である一次粒子を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  7. ニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む水溶液と塩基性水溶液を混合して、pH10〜11及び40〜70℃の条件でニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む複合金属水酸化物を製造する複合金属水酸化物製造工程、
    前記複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
    前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して焼成体とする焼成工程、
    を含む、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  8. 前記複合金属水酸化物製造工程において、pHが10.2〜10.7の範囲内であり、温度が55〜65℃の範囲内である請求項7に記載のリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  9. 前記焼成工程が、
    前記混合物を500〜700℃で10〜30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
    前記第1焼成体を水に分散させる分散液調製工程、
    ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
    前記ジルコニウム析出工程を経た第1焼成体を750〜1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、を含む請求項7又は8に記載のリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  10. ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
    前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
    前記第1焼成体を水に分散させる分散液調製工程、
    ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
    前記ジルコニウム析出工程を経た第1焼成体を加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
    を含む、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法。
  11. 一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表される層状岩塩構造の材料を水に分散させる分散液調製工程、
    ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、前記材料の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
    前記ジルコニウム析出工程を経た材料を加熱して焼成体とする焼成工程、
    を含む、一般式:LiNiCoMnZr(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法。
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