以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の各実施形態にかかる構成要素は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わせることができる。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置で、製造されたり、使用されたりするわけではない。
本実施形態の発光装置は、基板と、この基板上において凹部を画成する1層の隔壁とを含む隔壁付基板とを含み、前記隔壁によって画成される凹部にそれぞれ設けられる複数の有機EL素子とを含む発光装置に関する。前記1層の隔壁は、撥液性を示す撥液部位を有し、前記撥液部位は、前記凹部外である隔壁の上面部に延在しており、かつ前記隔壁の前記凹部を画成する側面であって、前記上面部の端部から、前記基板側の端部までの間の中途位置まで延在している。
本実施形態の有機EL素子は、第1電極、有機薄膜層、第2電極が、基板側からこの順で積層されて構成される。
本実施形態の発光装置は、たとえば表示装置、照明装置として利用することができる。ここで表示装置の例としては、アクティブマトリクス駆動型の表示装置と、パッシブマトリクス駆動型の表示装置とが挙げられる。本実施形態の発光装置は両方の型の表示装置に適用可能である。以下の説明においては一例としてアクティブマトリクス駆動型の表示装置およびかかる表示装置に適用される発光装置について説明する。
<表示装置の構成>
図1および図2を参照して、本実施形態の表示装置の構成について説明する。図1は本実施形態の表示装置の一部を拡大して模式的に示す断面図である。図2は本実施形態の表示装置の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
図1および図2に示されるように、表示装置1は、基板2と、この基板2に予め設定された区画である凹部を画成する隔壁3と、隔壁3によって画成される複数の凹部に設けられる複数の有機EL素子4とを含む。
隔壁3は、基板2の一方の主表面に基板2の厚さ方向(図1におけるZ方向)の一方からみたときに(以下、「平面視で」という。)、たとえばマトリクス状の複数の凹部5を画成する格子状または略平行に延在する複数の線状の凹部を画成するストライプ状に設けられる。
なお図2に示される一実施形態では、格子状の隔壁3が設けられた表示装置1を示している。
基板2には、隔壁3と基板2とによって複数の凹部5が画成される。換言すると、複数の凹部5が画成されていない領域には隔壁3が設けられている。
凹部5はX方向(第1の軸方向)に所定の間隔をあけて配置されるとともに、Y方向(第2の軸方向)に所定の間隔をあけて配置されている。なおX方向およびY方向は、それぞれ基板2の厚さ方向であるZ方向に直交する方向であって、かつ互いに直交する方向に設定される。凹部5の平面視での形状はとくに限定されない。凹部5は、平面視でたとえば略矩形状、略楕円状とすることができる。本実施形態では平面視で略矩形状である複数の凹部5が設けられている。
本実施形態では、いわゆる順テーパ形状の隔壁3が設けられる。ここで順テーパ形状とは、たとえば図1に示されるように、Y方向に直交する方向に延在する平面で切断したときの凹部5を画成する隔壁3の側面と基板2の主表面とのなす角θ1が鋭角となる形状を意味する。換言すると、1層の隔壁3は、その側面と基板2とのなす角が、鋭角である。すなわち凹部5に臨む(平面視で凹部5の中央部側に突出する)隔壁3の端部3aの厚さは、凹部5の対向する側壁に向かうほど小さくなる先細状に形成されている。
なお他の実施形態の隔壁3として、隔壁3の側面と基板2の主表面とのなす角が鈍角に設定される、いわゆる逆テーパ形状の隔壁3を用いてもよい。以下では、隔壁3の側面、または後述の構造体の側面と、基板2の主表面とのなす角を隔壁3の傾斜角または構造体の傾斜角という場合がある。
本実施形態では、隔壁3は有機EL素子4が設けられる領域を除く領域に設けられる。なお隔壁3は、主に第1の電極6が設けられる領域を除く領域に設けられる。すなわち隔壁3の端部3aが、第1の電極6の周縁部の少なくとも一部に重なるように設けられる。なお隔壁3の端部3aは、第1の電極6の周縁部の全てを覆うように形成する必要はない。たとえばいわゆるストライプ状の隔壁3を形成する場合には、たとえば四角形状である第1の電極6の4辺のうちの少なくとも対向する2辺を隔壁3の端部3aが覆うように隔壁3を設けてもよい。本実施形態では隔壁3の端部3aは、第1の電極6の周縁部の全てを覆うように設けられる。
図3を参照して、隔壁3についてより具体的に説明する。図3は、凹部5に臨む隔壁3の端部を拡大して模式的に示す断面図である。なお図3では、基板2および隔壁3のみが示され、他の構成要素が省略されている。
本実施形態では、基板2上に1層のみからなる隔壁3が設けられる。すなわち、本実施形態の隔壁3は、複数の層が積層された隔壁とは異なる。
隔壁3は、その表面である表層部23に、撥液性を示す撥液部位11を有する。すなわち、撥液部位11には、撥液性を付与する撥液性材料が分布している。本明細書において、「撥液性を示す」とは、アニソールに対する接触角が20°以上となることを意味する。
本実施形態では、撥液部位11は隔壁3の表層部23の全体に設けられるわけではない。撥液部位11は、隔壁3の表層部23の一部分に延在している。また撥液部位11は、隔壁3の表層部23のうちの上面部21を除く、凹部5を画成している側面において、上面部21の端部15から、基板2側の端部16までの間の中途位置22まで延在している。換言すると、隔壁3の凹部5を画成している側面において、前記中途位置22から、基板2側の端部16までは撥液部位11が延在していない。
なお隔壁3の上面とは、隔壁3の基板2側の面(底面)に対向する面のことを意味し、表層部23のうち、凹部5を画成していない表層部23の一部の領域を上面部21という。隔壁3の表層部23において、撥液部位11が設けられていない部位は、少なくとも撥液部位11よりも撥液性が低い部位である。すなわち、隔壁3の表層部23において、撥液部位11が設けられていない部位は、親液性を示す部位である。
以下、隔壁3の表層部23において、撥液部位11が設けられていない部位を親液部位12という。図3では、撥液部位11を太線で、親液部位12を細線で示している。ここで、「親液性を示す」とは、アニソールに対する接触角が20°未満となることを意味する。
本実施形態の撥液部位11は、アニソールに対する接触角が20°以上であり、25°以上となることが好ましい。本実施形態の親液部位12は、アニソールに対する接触角が20°未満であり、10°以下となることが好ましい。
本実施形態の隔壁3は、1層の部材から構成されているのであり、たとえば撥液部位11として、隔壁の表面に撥液性を示す有機薄膜層がさらに形成された2層構造とはされていない。
このように本実施形態においては隔壁3の凹部5を画成している側面において、撥液部位11と親液部位12とを設けることで、隔壁3の側面、すなわち凹部5内では、より基板2に近い下部側が親液性を示し、上面部21に近い上部側が撥液性を示す。したがって、本実施形態の隔壁3は、ぬれ性に関して、1層として構成されながら、親液性を示す1層の隔壁と、撥液性を示す1層の隔壁とを積層した2層構造の隔壁と同様の特性を得ることができる。
なお、本明細書においては、上方とは、基板2の厚さ方向、すなわちZ方向のうちの基板2を基準として有機EL素子4が設けられる側に向かう一方の方向を意味し、下方とは、上方とは反対側の方向を意味する。
本実施形態では、撥液部位11には撥液性を付与する撥液性材料が分布している。撥液性材料については後述する。
有機EL素子4は隔壁3によって画成される区画(すなわち凹部5)に設けられる。本実施形態のように格子状の隔壁3が設けられる場合、各有機EL素子4はそれぞれ各凹部5に設けられる。そのため格子状の隔壁3が設けられる場合、有機EL素子4は各凹部5と同様にマトリクス状に配置される。すなわち有機EL素子4は、基板2上において、X方向に所定の間隔をあけて配列されるとともに、Y方向に所定の間隔をあけて配列されている。
本実施形態では凹部5には3種類の有機EL素子4が設けられる。すなわち凹部5には、(1)赤色の光を出射する赤色有機EL素子4R、(2)緑色の光を出射する緑色有機EL素子4G、(3)青色の光を出射する青色有機EL素子4Bが設けられる。これら3種類の赤色有機EL素子4R、緑色有機EL素子4G、青色有機EL素子4Bは、図2に示されるように、たとえば下記(I)、(II)、(III)の行が、Y方向にこの順で繰り返し整列するように配置される。
(I)赤色有機EL素子4RがX方向に所定の間隔をあけて配置される行
(II)緑色有機EL素子4GがX方向に所定の間隔をあけて配置される行
(III)青色有機EL素子4BがX方向に所定の間隔をあけて配置される行
なお他の実施形態として、凹部5には、上記3種類の有機EL素子に加えて、たとえば白色の光を出射する有機EL素子がさらに設けられてもよい。また1種類のみの有機EL素子を凹部5に設けることによって、モノクロ表示装置を実現してもよい。
有機EL素子4は、たとえば第1の電極6、1または複数の有機薄膜層、第2の電極10が、基板2側からこの順で積層されて構成される。本明細書では第1の電極6と第2の電極10との間に設けられる層のうち、有機物を材料として含む層を有機薄膜層という。有機EL素子4は有機薄膜層として少なくとも1層の発光層9を備える。なお有機EL素子4は、少なくとも1層の発光層9に加えて、必要に応じて発光層とは異なる有機薄膜層、無機薄膜層をさらに備えることもある。たとえば第1の電極6と第2の電極10との間には、少なくとも1層の発光層9に加えて、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層、電子注入層などが設けられる。また第1の電極6と第2の電極10との間には2層以上の発光層9が設けられることもある。
有機EL素子4は、陽極および陰極からなる一対の電極として、第1の電極6と第2の電極10とを備える。第1の電極6および第2の電極10のうちの一方の電極は陽極として設けられ、他方の電極は陰極として設けられる。
本実施形態では一例として、陽極として機能する第1の電極6、正孔注入層として機能する第1の有機薄膜層7、発光層として機能する第2の有機薄膜層9、陰極として機能する第2の電極10がこの順に基板2上に積層される有機EL素子4について説明する。
本実施形態では既に説明した3種類の有機EL素子が設けられるが、これらは第2の有機薄膜層(本実施形態では発光層)9の構成がそれぞれ異なる。赤色有機EL素子4Rは赤色の光を出射する発光層9を備え、緑色有機EL素子4Gは緑色の光を出射する発光層9を備え、青色有機EL素子4Bは青色の光を出射する発光層9を備える。
本実施形態では第1の電極6は有機EL素子4ごとに設けられる。すなわち有機EL素子4と同じ数、すなわち凹部5の数と同じ数の第1の電極6が基板2上に設けられる。第1の電極6は有機EL素子4の配置に対応して設けられ、有機EL素子4と同様にマトリクス状に配置される。なお本実施形態の隔壁3は、主に第1の電極6を除く領域に格子状に形成されるが、さらにその端部3aが第1の電極6の周縁部を覆うように形成されている(図1参照)。
正孔注入層に相当する第1の有機薄膜層7は、凹部5において第1の電極6上にそれぞれ設けられる。この第1の有機薄膜層7は、必要に応じて、有機EL素子4の種類ごとにその材料または厚さを異ならせて設けることができる。なお第1の有機薄膜層7の形成工程の簡易さの観点から、同じ材料、同じ厚さで全ての第1の有機薄膜層7を形成することが好ましい。さらには、マイクロキャビティ構造の有機EL素子4を形成する場合、光共振が生じるように、発光波長に応じて第1の有機薄膜層7の厚さを有機EL素子4の種類ごとに調整してもよい。
発光層として機能する第2の有機薄膜層9は、凹部5において第1の有機薄膜層7上に設けられる。上述したように発光層は有機EL素子の種類に応じて設けられる。そのため赤色の光を出射する発光層9は赤色有機EL素子4Rが設けられる凹部5に設けられ、緑色の光を出射する発光層9は緑色有機EL素子4Gが設けられる凹部5に設けられ、青色の光を出射する発光層9は青色有機EL素子4Bが設けられる凹部5に設けられる。
第2の電極10は有機薄膜層9上に設けられる。なお、本明細書では、層「上」に設けられるとは、下側の層(下層)に接して設けられる形態、下層とは離間して設けられる形態のいずれもとり得る。たとえば有機薄膜層9と、有機薄膜層9上に設けられる第2の電極10との間には、所定の無機層が設けられていてもよい。
本実施形態では第2の電極10は有機EL素子4が設けられる表示領域において全面に形成される。すなわち第2の電極10は、第2の有機薄膜層9上だけでなく、隔壁3上にも形成され、複数の有機EL素子4にわたって連続して形成され、全ての有機EL素子4に共通の電極として設けられる。
<表示装置の製造方法>
以下、図4〜図9を参照しつつ、表示装置(発光装置)の製造方法について説明する。図4〜図9は、本実施形態の表示装置の製造工程を説明するための図である。
発光装置の製造方法は、上記の構成を有する隔壁付基板の製造方法を含む。隔壁付基板の製造方法は、撥液性材料を含む感光性樹脂組成物からなる薄膜を基板上に形成する工程と、薄膜を露光する露光工程と、露光された前記薄膜を現像することによって、1層の隔壁となる構造体を形成する現像工程と、構造体を加熱することによって前記1層の隔壁を形成するキュアベーク工程とを含み、構造体の側面と基板とのなす角は、鈍角であり、キュアベーク工程において形成される1層の隔壁は、その側面と基板とのなす角が、鋭角とされる。
発光装置の製造方法は、上記の隔壁付基板を用意する工程と、一対の電極と、当該一対の電極間に設けられる1層または複数層の有機薄膜層とを有する複数の有機EL素子を、それぞれ凹部に設ける工程とを有し、有機EL素子を設ける工程では、有機薄膜層となる材料を含む塗布液を凹部に供給し、固化することにより有機薄膜層を形成する。
(基板を用意する工程)
本工程では、隔壁3と第1の電極6とが設けられた基板2を用意する。なお本工程では、あらかじめ第1の電極6が設けられた基板2を用意してもよく、また本工程において基板2に第1の電極6を形成してもよい。なおアクティブマトリクス型の表示装置の場合、複数の有機EL素子を個別に駆動するための回路が予め形成された基板を、本実施形態の基板2として用いることもできる。たとえばTFT(Thin Film Transistor)やキャパシタなどがあらかじめ形成された基板を本実施形態の基板2として用いてもよい。
本実施形態において第1の電極6を形成する場合には、基板2上に複数の第1の電極6をマトリクス状に形成する。第1の電極6は、たとえば基板2の一方の主表面に導電性薄膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法などのパターニング法によって導電性薄膜をマトリクス状にパターニングすることにより形成することができる。またたとえば所定の部位に開口が形成されたマスクを基板2上に配置し、このマスクを介して基板2上の所定の部位に導電性材料を選択的に堆積することにより第1の電極6をパターン形成してもよい。第1の電極6の材料については後述する。
次に隔壁3を形成する工程を実施する。本工程ではフォトリソグラフィー法によってパターニングすることにより隔壁3を形成する。
図4に示されるように、本実施形態では、まず撥液性材料を含む感光性樹脂組成物を基板2に塗布し、撥液性材料を含む感光性樹脂組成物からなる薄膜24を形成する。感光性樹脂組成物の塗布方法としては、たとえばスピンコート法、スリットコート法などをあげることができる。
感光性樹脂組成物からなる薄膜24を形成した後、通常はプリベーク工程を行う。本プリベーク工程では、たとえば70℃〜120℃の温度で、50秒間〜120秒間、薄膜24が形成された基板2を加熱して、溶媒を除去する。
基板2に形成された感光性樹脂組成物からなる薄膜24において、撥液性材料は表層部23に分布している。この状態においてプリベーク工程が行われると、撥液性材料は表層部23に固定化される。
次に露光工程を行う。ネガ型の感光性樹脂組成物を用いた場合は、隔壁3を形成すべき部分に光を照射する。ポジ型の感光性樹脂組成物を用いた場合には、隔壁3を形成すべき部分を除く部分に光を照射する。なお本実施形態ではネガ型の感光性樹脂組成物を使用する形態について説明する。
図5に示されるように、薄膜24が形成された基板2上に所定のパターンで光Lを遮光するフォトマスク25を配置し、このフォトマスク25を介して、感光性樹脂組成物からなる薄膜24に対して露光を行う。本実施形態では、感光性樹脂組成物からなる薄膜24のうちで主に隔壁3が形成されるべき部位のみに光を照射する。図5では、照射される光Lを、白抜き矢印記号を用いて模式的に示している。
一般にネガ型の感光性樹脂組成物の場合、図6に示されるように、露光量が多いほど、現像後に画成される構造体の側面(凹部の側面)と基板2の主表面との傾斜角θ2が小さくなる傾向にある。露光量は、所望の傾斜角θ2に応じて設定される。露光量は、たとえば40mJ/m2〜250mJ/m2であり、50mJ/m2〜200mJ/m2であることがより好ましく、100mJ/m2〜200mJ/m2であることが好ましい。
さらに傾斜角θ2は感光性樹脂組成物からなる薄膜24の厚さにも依存することがある。感光性樹脂組成物からなる薄膜24の厚さは、0.3μm〜2.5μmであることが好ましく、0.5μm〜2.5μmであることがより好ましく、0.5μm〜1.0μmであることがさらに好ましい。露光工程の際に光が基板2上に届き難くなることにより逆テーパ形状の1層の隔壁3となる構造物26を形成しやすくなる傾向にあるため、薄膜24の厚さが0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また、現像再現性がよく、パターンの線幅のばらつきが小さくなる傾向にあるため、薄膜24の厚さが2.5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
次に現像工程を行う。傾斜角θ2は、現像時間を調整することによっても調整することができる。一般にネガ型の感光性樹脂の場合、現像時間を長くするほど傾斜角θ2が大きくなる傾向にある。またフォトマスク25と基板2との距離を調整することによっても傾斜角θ2を調整することができる。一般にネガ型の感光性樹脂組成物の場合、フォトマスク25と基板2との距離を短くするほど、傾斜角θ2が90°に近づく傾向にある。なお、傾斜角θ2は現像液のTMAH濃度にも依存する。
本実施形態では、図6に示されるような傾斜角θ2が鈍角となる逆テーパ形状の1層の隔壁3となる構造体26を形成すべく、上述の露光量等を調整することによって、現像後に、1層の隔壁3となる構造体26を形成する。逆テーパ形状の1層の隔壁3となる構造体26の傾斜角θ2は、100°〜175°であることが好ましく、120°〜170°であることがさらに好ましい。
上述したように、感光性樹脂組成物からなる薄膜24において、撥液性材料は表層部23に固定化されているため、露光、現像後に1層の隔壁3となる構造体26においても、撥液性材料はその表層部23に分布している。図6〜図9では、撥液性材料が分布している箇所を太線で示している。他方、1層の隔壁3となる構造体26の側面には撥液性材料は分布していない。
この隔壁3となる構造体26において、凹部5の中心側に最も突出した上面部21側の先端部Aと、基板2(第1の電極6)に接する側の構造体26の下端部Bとの平面視における間隔が、0.5μm〜3.0μmであることが好ましい。このような間隔に設定することで、隔壁3の画成された端部近傍の感光性樹脂組成物の残渣を低減でき、第1の電極6のぬれ性を向上させるという効果を得ることができる。
現像工程後、キュアベーク工程を行う。キュアベーク工程は、たとえば200℃〜230℃の温度で、15分間〜60分間、加熱することによって行われる。このキュアベーク工程により、隔壁3が形成される。
図7に示されるように、キュアベーク工程を上記の条件でおこなうと、図6に示されるような逆テーパ形状の構造物26の側面の上端部27は、熱によって軟化し、基板2側に下降するように変形する。これによって、順テーパ形状の隔壁3が形成される。
逆テーパ形状の構造物26の側面近傍の上端部27が、下降するように変形すると、表層部23に分布していた撥液性材料も構造体の変形とともに下降し、隔壁3の側面のうちの一部分に分布することになる。これによって、隔壁3の側面において、隔壁3の上面部の端部15から、基板側の端部16の間の中途位置22まで延在する撥液部位11が形成される。
隔壁3の形成に使用される感光性樹脂組成物は、下記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び成分(E)を含むことが好ましい。
成分(A)不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位と、炭素原子数2〜4の環状エーテル構造を有する不飽和化合物に由来する構造単位とを含む共重合体(ただし、炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキル基を有する不飽和化合物に由来する構造単位は有さない。)(以下、「樹脂(A)」という場合がある。)
成分(B)炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキル基を有する不飽和化合物に由来する構造単位を含む重合体(以下、「樹脂(B)」という場合がある。)
成分(C)重合性化合物
成分(D)重合開始剤
成分(E)溶剤
さらに、感光性樹脂組成物は、樹脂(A)及び樹脂(B)とは異なる樹脂(以下、「樹脂(A1)」という場合がある。)、重合開始助剤(D1)、多官能チオール化合物(T)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。なお感光性樹脂組成物は、界面活性材は含まない。
なお、本明細書においては、各成分として例示する化合物は、特に断りのない限り、単独で又は組合せて使用することができる。
樹脂(A)としては、たとえば下記の樹脂(A−1)、樹脂(A−2)を挙げることができる。
樹脂(A−1):不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(a)と炭素原子数2〜4の環状エーテル構造を有する不飽和化合物(b)とを重合してなる共重合体。
樹脂(A−2):化合物(a)及び不飽和化合物(b)と共重合可能な単量体(c)(ただし、炭素原子数2〜4の環状エーテル構造は有さない。)と、化合物(a)と、不飽和化合物(b)とを重合してなる共重合体。
ただし、化合物(a)、不飽和化合物(b)及び単量体(c)は、炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキル基を有さない。
樹脂(A)としては、樹脂(A−1)が好ましい。
化合物(a)としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、o−ビニル安息香酸、m−ビニル安息香酸、p−ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;
マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、3‐ビニルフタル酸、4−ビニルフタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、ジメチルテトラヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキセンジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸類;
メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のカルボキシ基を含有するビシクロ不飽和化合物類;
無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、3−ビニルフタル酸無水物、4−ビニルフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、ジメチルテトラヒドロフタル酸無水物、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン無水物(ハイミック酸無水物)等の不飽和ジカルボン酸類無水物;
こはく酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等の2価以上の多価カルボン酸の不飽和モノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル類;
α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸のような、同一分子中にヒドロキシ基及びカルボキシ基を含有する不飽和アクリレート類等が挙げられる。
これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等が共重合反応性、アルカリ溶解性の観点から好ましく用いられる。すなわち、本実施形態の隔壁3は、アクリル樹脂を含む感光性樹脂組成物を硬化させた構造体であることが好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。「(メタ)アクリロイル」及び「(メタ)アクリレート」等の表記も同様の意味を有する。
不飽和化合物(b)は、炭素原子数2〜4の環状エーテル構造(例えば、オキシラン環、オキセタン環およびテトラヒドロフラン環からなる群から選ばれる少なくとも1種)を有する不飽和化合物であり、炭素原子数2〜4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体が好ましく、炭素原子数2〜4の環状エーテル構造と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体がより好ましい。
不飽和化合物(b)としては、例えば、オキシラニル基を有する不飽和化合物(b1)、オキセタニル基を有する不飽和化合物(b2)、テトラヒドロフリル基を有する不飽和化合物(b3)などが挙げられる。
不飽和化合物(b1)としては、直鎖状又は分枝鎖状の不飽和脂肪族炭化水基がエポキシ化された構造を有する不飽和化合物(b1−1)、不飽和脂環式炭化水素がエポキシ化された構造を有する不飽和化合物(b1−2)が挙げられる。
不飽和化合物(b1)としては、オキシラニル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体が好ましく、不飽和脂環式炭化水素がエポキシ化された構造と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体がより好ましい。これらの単量体を用いれば、感光性樹脂組成物の保存安定性をより高めることができる。
不飽和化合物(b1−1)としては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、β−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,4−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,5−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,6−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,4−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,5−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,6−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、3,4,5−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,4,6−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、特開平7−248625号公報に記載される化合物等が挙げられる。
不飽和化合物(b1−2)としては、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(例えば、セロキサイド2000;ダイセル化学工業(株)製)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、サイクロマーA400;ダイセル化学工業(株)製)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(例えば、サイクロマーM100;ダイセル化学工業(株)製)、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物等が挙げられる。
式(I)及び式(II)において、R1及びR2は、水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子はヒドロキシ基で置換されていてもよい。
X1及びX2は、単結合、−R3−、*−R3−O−、*−R3−S−、*−R3−NH−を表す。ここで記号「*」が付された結合手は、酸素原子と結合する結合手を表す。
R3は、炭素原子数1〜6のアルカンジイル基を表す。
炭素原子数1〜4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
ヒドロキシ基で置換されているアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
R1及びR2としては、好ましくは水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基が挙げられ、より好ましくは水素原子、メチル基が挙げられる。
アルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
X1及びX2としては、好ましくは単結合、メチレン基、エチレン基、*−CH2−O−基、*−CH2CH2−O−基が挙げられ、より好ましくは単結合、*−CH2CH2−O−基が挙げられる。ここで記号「*」は酸素原子と結合することを表す。
不飽和化合物(b2)としては、オキセタニル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体が好ましい。不飽和化合物(b2)としては、例えば、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキセタン等が挙げられる。
不飽和化合物(b3)としては、テトラヒドロフリル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体が好ましい。
不飽和化合物(b3)としては、具体的には、テトラヒドロフルフリルアクリレート(例えば、ビスコートV#150、大阪有機化学工業(株)製)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等が挙げられる。
単量体(c)としては、(メタ)アクリル酸エステル類、N−置換マレイミド類、不飽和ジカルボン酸ジエステル類、脂環式不飽和化合物類、スチレン類、その他のビニル化合物等が挙げられる。なお(メタ)アクリル酸エステル類からは、エチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリル酸エステル類は除かれる。
樹脂(A−1)において、各単量体に由来する構造単位の比率が、樹脂(A−1)を構成する構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
化合物(a)に由来する構造単位;5モル%〜60モル%(より好ましくは10モル%〜50モル%)
不飽和化合物(b)に由来する構造単位;40モル%〜95モル%(より好ましくは50モル%〜90モル%)
樹脂(A−1)の構造単位の比率が、上記の範囲にあると、感光性樹脂組成物の保存安定性、感光性樹脂組成物からパターンを形成する際の現像性、並びに、得られる塗膜及びパターンの耐溶剤性、耐熱性および機械強度が良好になる傾向がある。
樹脂(A−1)としては、不飽和化合物(b)が不飽和化合物(b1)である樹脂(A−1)が好ましく、不飽和化合物(b)が不飽和化合物(b1−2)である樹脂(A−1)がより好ましい。
樹脂(A−1)は、例えば、文献「高分子合成の実験法」(大津隆行著 発行所(株)化学同人 第1版第1刷 1972年3月1日発行)に記載された方法及び当該文献に記載された引用文献を参考にして製造することができる。
樹脂(A−2)において、各単量体に由来する構造単位の比率が、樹脂(A−2)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
化合物(a)に由来する構造単位;2モル%〜40モル%(より好ましくは5モル%〜35モル%)
単量体(c)に由来する構造単位;1モル%〜65モル%(より好ましくは1モル%〜60モル%)
不飽和化合物(b)に由来する構造単位;2モル%〜95モル%(より好ましくは5モル%〜80モル%)
樹脂(A−2)の構造単位の比率が、上記の範囲にあると、感光性樹脂組成物の保存安定性、感光性樹脂組成物からパターンを形成する際の現像性、並びに、得られる塗膜及びパターンの耐溶剤性、耐熱性及び機械強度が良好になる傾向がある。
樹脂(A−2)としては、不飽和化合物(b)が不飽和化合物(b1)である樹脂(A−2)が好ましく、不飽和化合物(b)が不飽和化合物(b1−2)である樹脂(A−2)がより好ましい。
樹脂(A−2)は、樹脂(A−1)と同様の方法により製造することができる。
樹脂(A)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは3000〜100000であり、より好ましくは5000〜50000である。樹脂(A)の重量平均分子量が、前記の範囲にあると、塗布性に優れる傾向があり、また現像時に露光部の膜減りが生じにくく、さらに非露光部が現像で除去しやすい。
樹脂(A)の分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、好ましくは1.1〜6.0であり、より好ましくは1.2〜4.0である。分子量分布が、前記の範囲にあると、現像性に優れる傾向がある。
樹脂(A)の酸価は、20mgKOH/g〜150mgKOH/gであり、好ましくは40mgKOH/g〜135mgKOH/g、より好ましくは50mgKOH/g〜135mgKOH/gである。ここで酸価は樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であり、水酸化カリウム水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
樹脂(A)の含有量は、樹脂(A)、樹脂(A1)及び成分(C)重合性化合物の合計量に対して、好ましくは5質量%〜95質量%、より好ましくは20質量%〜80質量%であり、特に好ましくは40質量%〜60質量%である。樹脂(A)の含有量が、前記の範囲にあると、感光性樹脂組成物の現像性、得られるパターンの密着性、耐溶剤性及び機械特性が良好になる傾向がある。
樹脂(B)としては、たとえば炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキル基を有する不飽和化合物(d)に由来する構造単位を含む重合体が挙げられる。
不飽和化合物(d)としては、たとえば下記式(d−0)で表される化合物が挙げられる。
式(d−0)中、Rfは、炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
Rdは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ベンジル基又は炭素原子数1〜21のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよい。
Xdは、単結合、炭素原子数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の2価の脂環式炭化水素基又は炭素原子数6〜12の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基に含まれる−CH2−で表される基は、−O−で表される基、−CO−で表される基、−NRe−で表される基、−S−で表される基又は−SO2−で表される基で置き換えられていてもよい。ここでReは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert−ブチル基が挙げられる。
Rfは、炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキル基であり、ペルフルオロブチル基及びペルフルオロヘキシル基が好ましい。
Rdにおける炭素原子数1〜21のアルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、イソペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、6−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、1−ブチルブチル基、1−ブチル−2−メチルブチル基、1−ブチル−3−メチルブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、1−エチル−1−メチルブチル基、2−エチル−3−メチルブチル基等の分枝鎖状アルキル基等が挙げられる。
Rdとしては、水素原子、ハロゲン原子及びメチル基が好ましい。
Xdにおける炭素原子数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基としては、たとえばメチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基等のアルカンジイル基が挙げられる。
Xdにおける炭素原子数3〜10の2価の脂環式炭化水素基としては、たとえばシクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロデカンジイル基等が挙げられる。
Xdにおける炭素原子数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、たとえばフェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。
−CH2−で表される基が、−O−で表される基、−CO−で表される基、−NRe−で表される基、−S−で表される基又は−SO2−で表される基で置き換えられたXdとしては、例えば、下記式(xd−1)〜式(xd−10)で表される基等が挙げられる。
Xdとしては、炭素原子数1〜6のアルカンジイル基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
樹脂(B)としては、不飽和化合物(d)に由来する構造単位と化合物(a)に由来する構造単位とを含む樹脂であることが好ましく、不飽和化合物(d)に由来する構造単位と化合物(a)に由来する構造単位と不飽和化合物(b)に由来する構造単位とを含む樹脂であることがより好ましい。樹脂(B)が化合物(a)に由来する構造単位を含むことにより、現像性に優れるため、残渣、現像に由来するムラが抑制される傾向がある。樹脂(B)が不飽和化合物(b)に由来する構造単位を含むことにより、耐溶剤性に優れる傾向がある。また、樹脂(B)は単量体(c)に由来する構造単位を含んでいてもよく単量体(c)に由来するエチレン性不飽和結合を有さない。ここで化合物(a)、不飽和化合物(b)及び単量体(c)は、既に説明したとおりである。
樹脂(B)が、化合物(a)と不飽和化合物(d)との共重合体である場合、各単量体に由来する構造単位の比率が、樹脂(B)を構成する構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
化合物(a)に由来する構造単位;5質量%〜40質量%(より好ましくは10質量%〜30質量%)
不飽和化合物(d)に由来する構造単位;60質量%〜95質量%(より好ましくは70質量%〜90質量%)
樹脂(B)が、化合物(a)、不飽和化合物(b)及び不飽和化合物(d)の共重合体である場合、各単量体に由来する構造単位の比率が、樹脂(B)を構成する構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
化合物(a)に由来する構造単位;5質量%〜40質量%(より好ましくは10質量%〜30質量%)
不飽和化合物(b)に由来する構造単位;5質量%〜80質量%(より好ましくは10質量%〜70質量%)
不飽和化合物(d)に由来する構造単位;10質量%〜80質量%(より好ましくは20質量%〜70質量%)
樹脂(B)が、化合物(a)、不飽和化合物(b)、単量体(c)及び不飽和化合物(d)の共重合体である場合、各単量体に由来する構造単位の比率が、樹脂(B)を構成する構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
化合物(a)に由来する構造単位;5質量%〜40質量%(より好ましくは10質量%〜30質量%)
不飽和化合物(b)に由来する構造単位;5質量%〜70質量%(より好ましくは10質量%〜60質量%)
単量体(c)に由来する構造単位;10質量%〜50質量%(より好ましくは20質量%〜40質量%)
不飽和化合物(d)に由来する構造単位;10質量%〜80質量%(より好ましくは20質量%〜70質量%)
各構造単位の割合が、上記の範囲にあると、撥液性、現像性に優れる傾向がある。
樹脂(B)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは3000〜20000であり、より好ましくは5000〜15000である。樹脂(A)の重量平均分子量が、前記の範囲にあると、塗布性に優れる傾向があり、また現像時に露光部の膜減りが生じにくく、さらに非露光部が現像で除去しやすい。
樹脂(B)の酸価は、20mgKOH/g〜200mgKOH/gであり、好ましくは40mgKOH/g〜150mgKOH/gである。
樹脂(B)の含有量は、樹脂(A)、樹脂(A1)及び成分(C)重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。樹脂(B)の含有量が前記の範囲にあると、パターン形成の際に現像性に優れ、かつ得られるパターンは撥液性に優れる傾向がある。
感光性樹脂組成物は、樹脂(A1)を含んでいてもよい。樹脂(A1)としては、
樹脂(A1−1):化合物(a)と単量体(c)とを重合してなる共重合体、
樹脂(A1−2):化合物(a)と単量体(c)とを重合してなる共重合体に不飽和化合物(b)を反応させて得られる樹脂、
樹脂(A1−3):不飽和化合物(b)と単量体(c)とを重合してなる共重合体に化合物(a)を反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
樹脂(A1)の含有量は、樹脂(A)及び樹脂(A1)の合計量に対して、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0〜50質量%である。樹脂(A1)の含有量が、前記の範囲にあると、パターンを高感度で形成することができ、かつ現像性に優れる。
感光性樹脂組成物は、成分(C)重合性化合物を含む。
成分(C)重合性化合物は、成分(D)重合開始剤から発生した活性ラジカルによって重合しうる化合物であって、例えば、エチレン性不飽和結合を有する化合物などであり、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。
エチレン性不飽和結合を1つ有する成分(C)重合性化合物は、既に説明した化合物(a)、不飽和化合物(b)及び単量体(c)と同じであり、中でも、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。
エチレン性不飽和結合を2つ有する成分(C)重合性化合物としては、たとえば1,3―ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を3つ以上有する成分(C)重合性化合物としては、たとえばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和結合を3つ以上有する成分(C)重合性化合物としては、3官能以上の光重合性化合物が好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがより好ましい。
成分(C)重合性化合物の含有量は、樹脂(A)、樹脂(A1)及び成分(C)重合性化合物の合計量に対して、好ましくは5質量%〜95質量%であり、より好ましくは20質量%〜80質量%である。
成分(C)重合性化合物の含有量が、前記の範囲にあると、感度、得られるパターンの強度、平滑性、信頼性が良好になる傾向がある。
感光性樹脂組成物は、成分(D)重合開始剤を含む。成分(D)重合開始剤としては、光又は熱の作用により重合を開始しうる化合物であれば特に限定されることなく、公知の重合開始剤を用いることができる。
成分(D)重合開始剤として、例えば、アルキルフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、トリアジン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物及びオキシム化合物が挙げられる。また、特開2008−181087号公報に記載された光及び/又は熱カチオン重合開始剤(例えば、オニウムカチオンとルイス酸由来のアニオンとから構成されている重合開始剤)を用いてもよい。中でも、ビイミダゾール化合物、アルキルフェノン化合物及びオキシムエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特にオキシムエステル化合物であることが好ましい。これらの化合物を含む重合開始剤であると、特に、高感度になる傾向があり好ましい。
感光性樹脂組成物において、上述した成分(D)重合開始剤とともに、重合開始助剤(D1)を用いることができる。重合開始助剤(D1)は、成分(D)重合開始剤と組み合わせて用いられ、重合開始剤によって重合が開始された重合性化合物の重合を促進するために用いられる化合物、もしくは増感剤である。重合開始助剤(D1)としては、チオキサントン化合物、アミン化合物及びカルボン酸化合物等が挙げられる。
成分(D)重合開始剤と重合開始助剤(D1)との組合せとしては、たとえばアセトフェノン化合物とチオキサントン化合物との組合せ、アセトフェノン化合物と芳香族アミン化合物との組合せが挙げられ、具体的には、2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オンと2,4−ジエチルチオキサントンとの組合せ、2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オンと2,4−ジエチルチオキサントンとの組合せ、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オンと2,4−ジエチルチオキサントンとの組合せ、2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オンと2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンとの組合せ、2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オンと4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンとの組合せ、2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オンと4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンとの組合せ、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オンと4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンとの組合せ等が挙げられる。
成分(D)重合開始剤の含有量は、樹脂(A)、樹脂(A1)及び成分(C)重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部〜30質量部、より好ましくは1質量部〜20質量部であり、さらに好ましくは1質量部〜10質量部である。成分(D)重合開始剤の含有量が前記の範囲にあると、高感度でパターンを得ることができる。
重合開始助剤(D1)の使用量は、樹脂(A)、樹脂(A1)及び成分(C)重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜10質量部、より好ましくは0.3質量部〜7質量部である。重合開始助剤(D1)の量が前記の範囲にあると、高感度でパターンを得ることができ、得られるパターンは形状が良好である。
感光性樹脂組成物は、成分(E)溶剤を含む。
溶剤としては、例えば、エステル溶剤(分子内に−COO−で表される基を含み、−O−で表される基を含まない溶剤)、エーテル溶剤(分子内に−O−で表される基を含み、−COO−で表される基を含まない溶剤)、エーテルエステル溶剤(分子内に−COO−で表される基と−O−で表される基とを含む溶剤)、ケトン溶剤(分子内に−CO−で表される基を含み、−COO−で表される基を含まない溶剤)、アルコール溶剤、芳香族炭化水素溶剤、アミド溶剤、ジメチルスルホキシド等の中から選択して用いることができる。
感光性樹脂組成物における成分(E)溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物の総量に対して、好ましくは60質量%〜95質量%であり、より好ましくは70質量%〜90質量%である。言い換えると、感光性樹脂組成物の固形分は、好ましくは5質量%〜40質量%であり、より好ましくは10質量%〜30質量%である。成分(E)溶剤の含有量が前記の範囲にあると、感光性樹脂組成物を塗布した膜の平坦性が高い傾向がある。ここで、固形分とは、感光性樹脂組成物の量から成分(E)溶剤の量を除いた量のことをいう。
また、感光性樹脂組成物に含まれうる多官能チオール化合物(T)とは、分子内に2個以上のスルファニル基(−SH)を有する化合物をいう。特に、脂肪族炭化水素基に由来する炭素原子と結合する2個以上のスルファニル基を有する化合物を用いると、感光性樹脂組成物の感度が高くなる傾向にある。
多官能チオール化合物(T)としては、具体的には、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ビス(メチルスルファニル)ベンゼン、ブタンジオールビス(3−スルファニルプロピオネート)、ブタンジオールビス(3−スルファニルアセテート)、エチレングリコールビス(3−スルファニルアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−スルファニルアセテート)、ブタンジオールビス(3−スルファニルプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−スルファニルプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−スルファニルアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−スルファニルプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−スルファニルアセテート)、トリスヒドロキシエチルトリス(3−スルファニルプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−スルファニルブチレート)、1,4−ビス(3−スルファニルブチルオキシ)ブタン等が挙げられる。
多官能チオール化合物(T)の含有量は、成分(D)重合開始剤100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.5質量部〜7質量部である。多官能チオール化合物(T)の含有量が前記の範囲にあると、感光性樹脂組成物の感度が高くなり、また現像性が良好になる傾向があり好ましい。
感光性樹脂組成物の層に照射される光(照射光)は、紫外線吸収剤などに吸収されるため、層の表面側から離間するほど弱くなる。そのため、本実施形態の感光性樹脂組成物は光照射側(表面側)の方が硬化しやすく、表面側から離間するほど硬化しにくいという特徴がある。そのため、露光量が小さい場合は照射光の届きにくい層の底部付近で硬化しにくくなるため、現像液に曝されることによって、隔壁3の凹部5に臨む側面を含む端部の形状は逆テーパ形状となる。他方、感光性樹脂組成物の層を厚さ方向に亘って硬化させるのに十分な量の露光量で光を照射した場合は、順テーパ形状とすることができる。感光性樹脂組成物の種類にもよるが、隔壁3と基板との密着性が向上する傾向にあるため、露光量が100mJ/cm2以上であることが好ましい。また、逆テーパ形状の1層の隔壁3となる構造物26を形成しやすくなる傾向にあるため、露光量が250mJ/cm2以下であることが好ましい。
現像に使用される現像液としては、たとえば塩化カリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液などを挙げることができる。現像されやすくなり、逆テーパ形状の1層の隔壁3となる構造物26を再現性よく形成しやすくなるため、現像液のTMAH換算の濃度は0.5重量%以上であることが好ましい。現像液のTMAH換算の濃度とは、該現像液と同じpH値を示すTMAH水溶液中のTMAH濃度(重量%)を意味する。但し、現像液がTMAH水溶液である場合には、該TMAH水溶液中のTMAHの濃度(重量%)を意味する。
隔壁3の形状およびその配置は、画素数および解像度などの表示装置の仕様、製造の容易さなどに応じて適宜設定される。たとえば表示領域における隔壁3のX方向またはY方向の幅は、5μm〜50μm程度であり、隔壁3の高さは0.3μm〜5μm程度であり、X方向またはY方向に隣り合う隔壁3同士間の間隔、すなわち凹部5のX方向またはY方向の幅は、10μm〜200μm程度である。また第1の電極6のX方向またはY方向の幅はそれぞれ10μm〜200μm程度である。
(表面処理工程)
有機EL素子を設ける工程は、有機薄膜層を形成するための塗布液を供給する前に、隔壁付基板を表面処理する工程をさらに含む。すなわち、隔壁3の形成後であって、有機薄膜層を形成する工程の前、すなわち有機薄膜層を形成するための塗布液を供給する前に、第1の電極6のぬれ性を向上させるために、隔壁3が設けられた基板2(隔壁付基板)に対して表面処理工程を行うことが好ましい。表面処理としては、酸素プラズマ処理、UVオゾン処理、アルカリ溶剤処理、オゾン水処理(オゾン水を用いて洗浄する処理)等が挙げられ、これらの中でもオゾン水処理による表面処理が好ましい。
オゾン水処理の方法としては、ぬれ性が向上しさえすれば、特に限定されるものではない。オゾン水処理としては、たとえばオゾンを溶解させたオゾン水を、上面からシャワーにより隔壁3が設けられた基板2に供給しつつ、所定の時間揺動し、洗浄を行う処理が挙げられる。オゾン水のオゾン濃度は、通常1ppm〜20ppmであり、1ppm〜10ppmであることが好ましい。また揺動時間は、通常、1分間〜30分間であり、1分間〜10分間であることが好ましい。オゾン水のオゾン濃度が高すぎるか、もしくは揺動時間が長すぎる場合、隔壁の撥液性を下げてしまうおそれがあり、オゾン水濃度が低すぎるか、もしくは揺動時間が短すぎる場合、第1の電極6の十分なぬれ性を確保することができないおそれがある。
(第1の有機薄膜層を形成する工程)
次に第1の有機薄膜層7を形成する。有機薄膜層が複数層ある場合、少なくとも1層の有機薄膜層を塗布法によって形成すればよい。本実施形態では、第1の有機薄膜層7および第2の有機薄膜層9を塗布法によって形成する形態について説明する。
図8に示されるように、本工程ではまず第1の有機薄膜層7となる材料を含むインキ13を隔壁3に囲まれる領域(隔壁3に画成される凹部5)に供給する。インキ13を供給する方法は特に限定されない。インキを供給する方法としては、たとえばインクジェットプリント法、ノズルコート法、凸版印刷法、および凹版印刷法などによって供給される。
隔壁3に囲まれる凹部5に供給されたインキ13は、隔壁3の表層部23および側面の一部に延在する撥液部位11によって弾かれるため、隔壁3を越えて隣の凹部5に溢れ出ることなく、隔壁3に囲まれた領域(凹部5)に保持される。
次に、凹部5に供給されたインキ13を固化することによって第1の有機薄膜層7を形成する。インキ13の固化は、たとえば自然乾燥、加熱乾燥、真空乾燥によっておこなうことができる。またインキ13がエネルギーを加えることによって重合する材料を含む場合、インキ13を供給した後に、加熱したり、光を照射したりすることによって、有機薄膜層を構成する材料を重合して有機薄膜層を形成してもよい。このように有機薄膜層を構成する材料を重合して有機薄膜層を形成することによって、たとえば第1の有機薄膜層7上にさらに有機薄膜層を形成する際に使用されるインキに対して、第1の有機薄膜層7を難溶化させることができる。
上述したように、隔壁3の側面のうちの上面部側は、撥液性を示すが、隔壁3の側面のうちの下部側、すなわち基板2の主表面側は親液性を示すため、インキ13は隔壁3の側面の上面部側では弾かれつつ、隔壁3の側面の下部側では接液しつつインキ13が保持された状態で、溶媒が気化され、薄膜が形成される。そのため、溶媒が気化する過程において、インキ13の液面と隔壁3とが接する部位は、徐々に下降していくが、撥液部位と親液部位との境界付近でその下降が停止し、そのまま乾燥する。そのため、図9に示されるように、第1の有機薄膜層7の上面の隔壁3に接する位置P2は、撥液部位と親液部位との境界付近に存在する。以下、有機薄膜層の上面部側の隔壁3に接する位置P2をピニングポイントP2ということがある。
1層または複数層の有機薄膜層のうちで、塗布法によって形成される有機薄膜層は、その中央部の基板側とは反対側の表面の位置(平面視で有機薄膜層の厚さが最も小さくなる凹部5の中央部(中心)近傍、以下、最小厚さ部という場合がある。)P1の基板2の主表面からの高さ、すなわち有機薄膜層の厚さ(nm)と、当該有機薄膜層と隔壁の側面との界面の上端部の位置(ピニングポイント)P2の基板2の主表面からの高さ(nm)とが、前記基板の厚さ方向において、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
P1+500≧P2 ・・・(1)
さらには、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。
P2≧P1 ・・・(2)
すなわち、最小厚さ部P1(nm)と有機薄膜層と隔壁の側面との界面の上端部の位置P2の基板2の主表面からの高さ(nm)との差が500nm以下であることが好ましい。このように本実施形態の有機薄膜層では、その厚さが最も薄くなる中央部と隔壁近傍の端部とで、高低差が小さく、より平坦となる。
有機薄膜層と隔壁3の側面との界面の上端部の位置P2は、隔壁の側面における撥液部位と親液部位との境界位置(中途位置)近傍に存在するので、隔壁の側面における撥液部位と親液部位との境界位置(中途位置)を適宜調整することで、厚さがより均一で平坦な有機薄膜層を形成することができる。
なお、仮に、隔壁3の上面部のみに撥液部位を設けた場合、すなわち隔壁3の側面の全てを親液部位とした場合、ピニングポイントが本実施形態のピニングポイントP2よりも高くなるため、全体として、有機薄膜層よりも平坦性が低下してしまうおそれがある。
つぎに、発光層として機能する第2の有機薄膜層9を形成する。第2の有機薄膜層9は第1の有機薄膜層7と同様に形成することができる。すなわち赤色の光を出射する発光層9、緑色の光を出射する発光層9、青色の光を出射する発光層9となる材料を含む3種類のインキを、隔壁3に囲まれた領域である凹部5にそれぞれ供給し、さらにこれを固化することによって発光層9を形成することができる。
この第2の有機薄膜層9についても、前記式(1)の関係を満たすことが好ましく、式(2)の関係を満たすことがさらに好ましい。
(第2電極を形成する工程)
本工程では有機薄膜層上に第2の電極10を形成する。本実施形態では第2の電極10は、有機EL素子4が設けられる表示領域において全面に形成する。すなわち第2の電極10は、第2の有機薄膜層9上だけでなく、隔壁3上にも形成し、複数の有機EL素子4にわたって連続して形成する。このように第2の電極10を形成することにより、第2の電極10は全ての有機EL素子4に共通の電極として機能する。
<有機EL素子の構成>
以下、有機EL素子4の構成例についてさらに詳しく説明する。有機EL素子4は、有機薄膜層として少なくとも1層の発光層を有する。上述したように一対の電極間には有機薄膜層として、たとえば正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、および電子注入層などを有する。
本実施形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
f)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
g)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
h)陽極/発光層/電子注入層/陰極
i)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が互いに接合されていることを示す。以下同じ。)
上記構成の有機EL素子4は、基板2の主表面上に陽極から順に各層を積層して最後に陰極を形成する形態と、逆に、基板2の主表面上に陰極から順に各層を積層して最後に陽極を形成する形態とをとりうる。
基板2としては、可撓性の基板またはリジッドな基板が用いられ、たとえばガラス基板やプラスチック基板などが挙げられる。
陽極6には、金属酸化物、金属硫化物および金属などからなる薄膜を用いることができ、具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が挙げられる。発光層から出射される光が陽極を透過して有機EL素子外に出射される構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。
正孔注入層には公知の正孔注入材料を用いることができる。正孔注入材料としては、たとえば酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物、フェニルアミン類、スターバースト型アミン類、フタロシアニン類、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
正孔輸送層には公知の正孔輸送材料を用いることができる。正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、例えば発光効率の向上、発光波長を変化させるために加えられる。なお発光層に含まれる有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。発光層を構成する発光材料としては、例えば公知の色素材料、金属錯体材料、高分子材料、ドーパント材料を挙げることができる。
色素材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
金属錯体材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができる。
高分子材料としては、たとえばポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、および上記色素材料、金属錯体材料を重合させて高分子化した材料などを挙げることができる。
上記発光材料のうち、青色に発光する材料としては、たとえばジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。
また、緑色に発光する材料としては、たとえばキナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。
また、赤色に発光する材料としては、たとえばクマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。
また、白色に発光する材料は、上記した青色に発光する材料、緑色に発光する材料、赤色に発光する材料を混合することにより実現できる。
ドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。
電子輸送層には公知の電子輸送材料を用いることができる。電子輸送材料としては、たとえばオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
電子注入層には公知の電子注入材料を用いることができる。電子注入材料としては、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から出射される光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。また、陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。
上記の各層および電極は、蒸着法、塗布法によって形成することができる。塗布法によって各層を形成する場合は、上述した本実施形態の有機薄膜層を形成する方法によって形成することが好ましい。
以上の工程により、本発明の表示装置(発光装置)が製造される。
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1)
まずITO薄膜からなる第1の電極(陽極)および電極に接続される配線等が予めパターン形成されたTFT基板を用意した。
次に、感光性樹脂Aを含む溶液と撥液性材料(ダイキン製 撥液剤オプトエース(登録商標)HPシリーズ)とを混合し、撥液性材料入りの感光性樹脂組成物を調製した。感光性樹脂に対する撥液性材料の固形分濃度比は0.3%(重量)とした。感光性樹脂Aは、ネガ型のアクリル系材料を含んだ感光性樹脂であり、特開2012−73603号公報の実施例2に記載の方法により作製できる。
次に、TFT基板の表面上に、用意した撥液性材料を含む感光性樹脂組成物をスピンコータにより塗布成膜し、さらに、ホットプレート上において110℃で90秒間加熱することによってプリベーク工程を行い、溶媒を蒸発させた。
次に、プロキシミティ露光機(日立製作所製 LE4000A)を用いて感光性樹脂組成物からなる薄膜の所定の露光領域を露光した(露光量:100mJ/cm2)。続いて現像液(株式会社トクヤマ製 SD−1(TMAH2.0重量%))をシャワーして45秒間現像し、未露光部分の感光性樹脂組成物を除去して所定のパターンを有する構造体を得た。
この現像工程後の構造体のパターニングにより画成された側面(凹部側面に相当する。)をFIB装置(セイコーインスツルメンツ製 XVision 200DB)にて薄膜加工し、SEM観察したところ、側面と基板の主表面とがなす角度が鈍角である逆テーパ形状の構造体であることが確認された。構造体の側面と基板の主表面とのなす角度θ2は148°であった。また、凹部5側に最も突出した先端部Aと、第1の電極1に接する構造体26の下端部Bとの平面視での間隔(図6参照)は、1.5μmであった。
次にキュアベーク工程として230℃で20分間加熱し、感光性樹脂組成物を硬化させた。これにより、隔壁の側面の逆テーパ形状部分は基板の表面方向に下降し、下降した先端部が基板の表面に接触して硬化した。このようにして凹部を画成する側面が順テーパ形状である隔壁が形成される。
このキュアベーク工程後の隔壁の側面をFIB装置(セイコーインスツルメンツ製 XVision 200DB)にて薄膜加工し、STEM観察したところ、順テーパ形状の隔壁であることが確認された。隔壁の側面と基板の表面とのなす角度θ1は38°であった。なお隔壁の厚さは1.0μmとした。
キュアベーク工程後の隔壁の上面部とアニソールとの接触角は約37°であった。また第1の電極(ITO薄膜)表面と、純水との接触角は約26°であった。
次に、表面処理工程としてオゾン水製造装置(ロキテクノ社製 FA−1000ZW12−5C)を用いて、基板表面をオゾン水(濃度:2ppm、処理時間:10分間)で洗浄した。この洗浄によって、第1の電極(ITO薄膜)表面と純水との接触角が5°以下にまで低下し、第1の電極(ITO薄膜)表面に十分な濡れ性が付与された。
次に、有機薄膜層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層をこの順で積層した。
まず、固形分濃度が1.0重量%、粘度が8cp、表面張力が34.7mN/mとなるように有機溶媒と正孔注入材料とを混合してインキを調製した。このインキを、インクジェット装置(ULVAC社製 Litlex142P)を用いて所定の凹部内に塗布した。
各凹部に塗布されたインキは、接触角の高い、すなわち撥液性の高い隔壁の上面部によって弾かれるため、この隔壁の上面部を伝って隣り合う凹部に溢れ出ることが防がれ、凹部内に収容された。
次に、ドライポンプが接続された真空乾燥室内において基板を温調ステージに載置し、当該温調ステージの温度を10℃に設定して、約2.0E−1Paまで減圧し、真空乾燥した。次に、温調ステージの温度を230℃に設定し、大気圧環境にて15分間焼成を行い、均一な厚さの正孔注入層(厚さ45nm)を形成した。ここでの厚さとは平面視での凹部の中心の厚さであり最も小さい厚さを意味する。
次に正孔注入層と同様にして正孔輸送層を形成した。まず、固形分濃度が0.45重量%となり、粘度が3.4cpとなり、表面張力が34.2mN/mとなるように有機溶媒と正孔輸送材料とを混合して、インキを調製した。このインキを、インクジェット装置(ULVAC社製 Litrex142P)を用いて所定の凹部内に塗布した。各凹部に塗布されたインキは、撥液性の高い隔壁の上面部によって弾かれるため、この隔壁の上面部を伝って隣り合う凹部に溢れ出ることが防がれ、凹部内に収容された。
次に、ドライポンプが接続された真空乾燥室内において基板を温調ステージに載置し、当該温調ステージの温度を25℃に設定して、約2.0E−1Paまで減圧し、真空乾燥した。次に、温調ステージの温度を190℃に設定し、大気圧環境で60分間焼成を行い、均一な厚さの中間層(厚さ15nm)を形成した。ここでの厚さとは平面視での凹部の中心の厚さであり最も小さい厚さを意味する。
次に既に説明した正孔注入層、正孔輸送層と同様にして3種類の発光層を形成した。まず赤色の光を出射する高分子発光材料1を、その固形分濃度が2.0重量%となり、粘度が8.5cpとなり、表面張力が34.3mN/mとなるように有機溶媒に混合して、赤インキを調製した。同様に、緑色の光を出射する高分子発光材料2を、その固形分濃度が1.8重量%となり、粘度が6.2cpとなり、表面張力が34.6mN/mとなるように有機溶媒に混合して、緑インキを調製した。同様に、青色の光を出射する高分子発光材料3を、その固形分濃度が0.8重量%となり、粘度が8.2cpとなり、表面張力が34.1mN/mとなるように有機溶媒に混合して、青インキを調製した。これらのインキをそれぞれインクジェット装置(ULVAC社製 Litrex142P)を用いて所定の凹部内に塗布した。各凹部に塗布されたインキは、撥液性の高い隔壁の上面部によって弾かれるため、この隔壁の上面部を伝って隣り合う凹部に溢れ出ることが防がれ、凹部内に収容された。
次に、ドライポンプが接続された真空乾燥室内において基板を温調ステージに載置し、当該温調ステージの温度を10℃に設定して、約2.0E−1Paまで減圧し、真空乾燥した。次に、温調ステージの温度を230℃に設定し、大気圧環境にて10分間焼成を行い均一な厚さの発光層(厚さ74nm)を形成した。ここでの厚さとは平面視での凹部の中心の厚さであり最も小さい厚さを意味する。
次にNaFからなる層(厚さ2nm)、Mgからなる層(厚さ2nm)、Alからなる層(厚さ200nm)を真空蒸着法によって順次に形成し、第2の電極(陰極)を形成した。その後、封止基板を貼り合わせて、有機EL素子を封止し、表示装置を作製した。
(実施例2)
まず実施例1と同じTFT基板を用意した。
次に、感光性樹脂Aaを作製した。還流冷却器、滴下ロートおよび攪拌機を備えたフラスコ内に窒素ガスを適量流して窒素ガス雰囲気とし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート166部、メトキシプロパノール52部を入れ撹拌しながら85℃まで加熱した。次いで3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8および9−イルアクリレートの混合物233部、p−ビニル安息香酸77部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125部、メトキシプロパノール115部の混合溶液を4時間かけて滴下し、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)32部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート210部に溶解した混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間85℃で保持した後、室温まで冷却して、B型粘度(23℃)46mPas、固形分33.7%、溶液酸価83mgKOH/gの重合体(感光性樹脂Aa)溶液を得た。得られた感光性樹脂Aaの重量平均分子量Mwは7.7×103であり、分子量分布は1.90であった。感光性樹脂Aaは、以下の構造単位を有する。
樹脂である成分(A)55質量部、重合性化合物である成分(C)45質量部、重合開始剤である成分(D)6質量部および重合開始助剤(D1)12質量部を混合し、固形分濃度21%となるように成分(E)溶剤を加え、さらに撥液性材料(ダイキン製 撥液剤オプトエース(登録商標)HPシリーズ)を混合し、撥液性材料を含む感光性樹脂組成物を調製した。感光性樹脂Aaに対する撥液性材料の固形分濃度比は0.3%(重量)とした。
成分(A):樹脂Aa
成分(C)重合性化合物:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)製 A−TMPT)
成分(D)重合開始剤:2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン(BASF社製 イルガキュア(登録商標)907)
重合開始助剤(D1):4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(保土ヶ谷化学工業(株)製 EAB−F)
成分(E)溶剤:下記(Ea)〜(Ed)の混合溶媒
(Ea):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;25質量%
(Eb):3−エトキシプロピオン酸エチル;25質量%
(Ec):3−メトキシ1−ブタノール;25質量%
(Ed):3−メトキシブチルアセテート;25質量%
次に、得られた撥液性材料を含む感光性樹脂組成物を、用意したTFT基板の表面上にスピンコータにより塗布成膜し、さらに、ホットプレート上において105℃で110秒間加熱することによってプリベーク処理を行い、溶媒を蒸発させた。
次に、プロキシミティ露光機(日立製作所製 LE4000A)を用いて感光性樹脂組成物からなる薄膜の所定の露光領域を露光した(露光量:200mJ/cm2)。続いて現像液(株式会社トクヤマ製 SD−1(TMAH2.38重量%))をシャワーして60秒間現像し、未露光部分の感光性樹脂を除去した。
この現像工程後の構造物の側面をFIB装置(セイコーインスツルメンツ製 XVision 200DB)にて薄膜加工し、SEM観察したところ、実施例1と同様に逆テーパ形状の構造物が確認された。構造物の側面と基板表面とのなす角度θ2は148°であった。また、凹部5側に最も突出した先端部Aと、第1の電極1に接する側の構造体26の下端部Bとの平面視での間隔(図6参照)は、2.5μmであった。
次にキュアベーク工程として230℃で20分間加熱し、感光性樹脂組成物を硬化させた。これにより、隔壁の側面の逆テーパ形状の先端部分は熱により基板の主表面まで下降し、先端部分が基板の主表面に接触した状態で硬化した。このようにして順テーパ形状の隔壁が形成される。
このキュアベーク工程後の隔壁の側面をFIB装置(セイコーインスツルメンツ製 XVision 200DB)にて薄膜加工し、STEM観察したところ、順テーパ形状の隔壁であることが確認された。隔壁の側面と基板の主表面とのなす角度θ1は39°であった。なお隔壁の厚さは実施例1と同様に1.0μmとした。
キュアベーク工程後の隔壁の上面部とアニソールとの接触角は36°〜37°であった。また第1の電極(ITO薄膜)の表面と、純水との接触角は約27°であった。
隔壁の形成工程後は、実施例1と同様にして表示装置を作製した。
(比較例)
まず実施例1と同様にしてTFT基板を用意した。
次に、感光性樹脂Bの溶液(日本ゼオン株式会社製 ZPN2464)と撥液性材料(ダイキン製 撥液剤オプトエース(登録商標)HPシリーズ)とを混合し、撥液性材料入りの感光性樹脂組成物を調製した。感光性樹脂に対する撥液性材料の固形分濃度比は、隔壁の形成後の隔壁の上面部の撥液性を実施例1と同程度(37°)にするため、0.2重量%とした。
つぎに、用意したTFT基板の表面上に撥液性材料を含む感光性樹脂組成物をスピンコータにより塗布成膜し、さらに、ホットプレート上において110℃で60秒間加熱することによってプリベーク工程を行い、溶媒を蒸発させた。
次に、プロキシミティ露光機(日立製作所製 LE4000A)を用いて感光性樹脂組成物からなる薄膜の所定の露光領域を露光した(露光量:100mJ/cm2)。続いて現像液(株式会社トクヤマ製 SD−1(TMAH0.8重量%))をシャワーして60秒間現像し、未露光部分の感光性樹脂組成物を除去した。
この現像工程後の構造体の側面をFIB装置(セイコーインスツルメンツ製 XVision 200DB)にて薄膜加工し、SEM観察したところ、順テーパ形状の構造体であることが確認された。構造体の側面と基板の主表面とのなす角度θ2は38°であった。
次に、キュアベーク工程として230℃で30分間加熱し、感光性樹脂組成物を硬化させた。
このキュアベーク工程後の隔壁の側面をFIB装置(セイコーインスツルメンツ製 XVision 200DB)にて薄膜加工し、STEM観察したところ、順テーパ形状の隔壁であることが確認された。隔壁の側面と基板の主表面とのなす角度θ1は38°であった。隔壁の厚さは1.0μmとした。
キュアベーク工程後の隔壁の上面部とアニソールとの接触角は36〜37°であった。また第1の電極(ITO薄膜)の表面と、純水との接触角は約27°であった。
隔壁の形成工程後は、実施例1と同様にして表示装置を作製した。
(効果の比較)
実施例1、2と比較例とのピニングポイントP2、有機薄膜層の最小厚さ部P1、図9に2点鎖線で示した隔壁の側面の基板側の端部における基板の主表面からのZ方向の有機薄膜層の厚さ(端部厚さ)を表1に示す。
表1から明らかなとおり、本実施例の隔壁付基板を用いた場合、ピニングポイントP2をより低く設定することが可能であり、さらにピニングポイントP2の位置が凹部の最上部に近い実施例において隔壁の側面近傍の有機薄膜層の厚さを小さくすることが可能となる。