JPWO2015133523A1 - 蛍光体集積ナノ粒子標識剤、およびこれを用いた蛍光免疫染色法 - Google Patents

蛍光体集積ナノ粒子標識剤、およびこれを用いた蛍光免疫染色法 Download PDF

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Abstract

蛍光免疫染色の反応系における終濃度が低い場合(例えば0.02nM)であっても十分なシグナル強度が得られ、プローブ生体物質や標識体を検出対象以外の物質に対する非特異的な吸着を抑制し、ノイズを抑えた蛍光免疫染色画像が得られる蛍光体集積ナノ粒子標識剤、およびこれを用いた免疫染色法を提供する。長さが30オングストローム以上1000オングストローム以下の第1親水性高分子由来のスペーサー1を介して第1結合基物質Aに連結されるとともに、生体分子2と特異的に結合するプローブ生体物質3と、第1結合基物質Aと特異的に結合可能な第2結合基物質Bを有する蛍光体集積ナノ粒子5とからなるセット蛍光体集積ナノ粒子標識剤とする。

Description

本発明は、蛍光体集積ナノ粒子標識剤および該蛍光体集積ナノ粒子標識剤を用いた蛍光免疫染色法に関する。
従来、蛍光体集積ナノ粒子標識剤が知られている(例えば、特許文献1)。この蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、検出目的の生体分子と結合可能なプローブ生体物質と、蛍光体集積ナノ粒子とを含む。
特許文献1には、第1結合基(例えば実施例では(以下同様)ビオチン)を検出目的の生体分子(HER2)と結合可能なプローブ生体物質(一次抗体=抗HER2抗体)に連結するとともに、第1結合基と結合可能な第2結合基(ストレプトアビジン)を蛍光体集積ナノ粒子に連結するときに、第1結合基とプローブ生体物質との間、および、第2結合基と蛍光体集積ナノ粒子との間に、それぞれ適当な鎖長のスペーサーを介在させてもよいことが開示されている。第2結合基と蛍光体集積ナノ粒子とを連結するスペーサーを生成するためのリンカーの具体例として、特許文献1の実施例では、SM(PEG)12が用いられている。また、特許文献1には、実施例に示されているように一次抗体に蛍光体集積ナノ粒子をビオチン−ストレプトアビジンを介して結合させるような実施形態のみならず、一次抗体に二次抗体を結合させた後、その二次抗体に蛍光体集積ナノ粒子をビオチン−ストレプトアビジンを介して結合させるような実施形態であってもよいことも開示されている。
国際公開WO2013/035688号公報
特許文献1に記載されているような従来の蛍光体集積ナノ粒子標識剤を用いた蛍光免疫染色において、蛍光シグナルの強度を高める、すなわち検出対象とする物質の存在が輝点によって示されることの確実性を向上させるために、プローブ生体物質および/または蛍光体集積ナノ粒子の濃度を高めると、上記の目的は一定程度達成できるが、それと同時に、プローブ生体物質や蛍光体集積ナノ粒子が検出対象以外の物質に非特異的に吸着しやすくなり、検出対象とする物質が存在しない箇所にも基点が表れるというノイズも高くなってしまうという問題があった。
本願発明は上記問題に着目してなされたものであり、蛍光体集積ナノ粒子の終濃度が低い場合(例えば0.02nM)であっても十分なシグナル強度が得られ、プローブ生体物質や標識体の検出対象以外の物質に対する非特異的な吸着を抑制し、ノイズを抑えた蛍光免疫染色画像が得られる蛍光体集積ナノ粒子標識剤、およびこれを用いた免疫染色法を提供することを目的とする。
本発明により、以下の蛍光体集積ナノ粒子標識剤、およびこれを用いた蛍光免疫染色法が提供される。
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した画像形成装置は、長さが30オングストローム以上1000オングストローム以下の高分子由来のスペーサーを介して第1結合基物質に連結され生体分子と特異的に結合するプローブ生体物質と、該第1結合基物質と特異的に結合可能な第2結合基物質を有する蛍光体集積ナノ粒子とからなるセットを含む、蛍光体集積ナノ粒子標識剤である。
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した蛍光免疫染色法は、上記の蛍光体集積ナノ粒子標識剤を用いて行うことを特徴とする蛍光免疫染色法である。
本発明によれば、蛍光体集積ナノ粒子の終濃度が低い場合(例えば0.02nM)であっても十分なシグナル強度が得られ、プローブ生体物質や標識体の検出対象以外の物質に対する非特異的な吸着を抑制し、ノイズを抑えた蛍光免疫染色画像が得ることができる。
図1は、本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子標識剤を用いて、蛍光免疫染色をしている状態を説明した図である。 図2(A)は一端にビオチン(第1結合基物質)が結合したリンカーを示す。(B)は、(A)のリンカーの他端が抗体(プローブ生体物質)に結合した状態を示し、高分子に由来する部分の長さ(スペーサーの長さ)を説明した図である。 図3は、従来技術に係る蛍光体集積ナノ粒子標識剤を用いて、蛍光免疫染色をしている状態を説明した図である。
本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、図1に例示したように、高分子由来のスペーサー1を介して第1結合基物質Aに連結され生体分子2と特異的に結合するプローブ生体物質3と、該第1結合基物質Aと特異的に結合可能な第2結合基物質Bが結合した蛍光体集積ナノ粒子5からなるセットを含むことを特徴とする。
《生体分子》
本発明において、「生体分子」とは、特に限定されるものではないが、抗原、または、該抗原と特異的に結合した1次〜n次の抗体(試薬I)が挙げられる。ここで、本発明において、「抗体」という用語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、Fab、Fab'2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などの各種抗体を含む。
(抗原)
「抗原」として、例えば、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)であるが、該タンパク質またはアミノ酸と、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子との複合体なども含まれる。具体的には、腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなどであってもよく、特に限定されない。
例えば、がんの増殖制御因子,転移制御因子,増殖制御因子受容体および転移制御因子受容体等のがんに関連する抗原の他に、TNF−α(Tumor Necrosis Factor α),IL−6(Interleukin−6)受容体などの炎症性サイトカイン、RSV F蛋白質等のウィルス関連分子なども「抗原」に含まれる。
蛍光免疫染色法で、プローブ生体物質が直接抗原に対して結合せずに1次抗体〜n次抗体を介して前記抗原に固定される場合、プローブ生体物質が特異的に結合する対象の「生体分子」は、前記抗原と特異的に結合した1次〜n次の抗体(試薬I)であり、プローブ生体物質は2次〜n+1次の抗体となる。
また、前記抗体として、例えば、関節リウマチなどの自己免疫疾患、がんなどの悪性腫瘍、ウィルス感染症等の治療に一般的に用いられている抗体医薬を用いることができる。
臨床に用いられている代表的な抗体医薬を、下記表1に示す。ここで、表1には、参考のために、自己免疫疾患や感染症の治療に用いられる抗体医薬も併せて記載している。
《プローブ生体物質》
プローブ生体物質は、「生体分子」と特異的に結合する分子であり、上述したように、「生体分子」が抗原または1次〜n次抗体(試薬I)である場合、それぞれ1次抗体または2次〜(n+1)次抗体が「プローブ生体物質」に該当する。
図1に示した例では、高分子由来のスペーサー1の一端にプローブ生体物質3が化学結合されている。
スペーサー1とプローブ生体物質3との化学結合は、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着、化学吸着等の適当な結合様式による結合や、結合力の強さの観点から、アミド結合、エステル結合、イミド結合、マレイミド基へのチオール付加を利用した結合等の共有結合が好ましい。
高分子の一端にプローブ生体物質3を化学結合させる具体的な方法としては、チオール基−マレイミド基のカップリング反応法、架橋剤(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)等)を用いた架橋反応法、イオン結合法等を挙げることができる。
《高分子》
スペーサー1を形成するための高分子としては、所定の長さを有する疎水性高分子や親水性高分子、およびこれらの組合せが好適に用いられる。
疎水性高分子の例としては、後述する所定の長さを有する、ポリアミド、飽和炭化水素、環状炭化水素、疎水性ポリアミノ酸、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられる。
この親水性高分子の例としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸、およびこれらに類する物により形成される群から選択された1種類または2種以上の親水性高分子を用いることができる。前述の例示された親水性高分子の中では、ポリエチレングリコール(PEG)が、オキシエチレン単位の数により鎖長を設定しやすい観点から好ましい。
上記高分子については、以下の反応により、マレイミド化、アミノ化、ビオチン化、チオール化等した高分子として得た後に、リンカー試薬としてプローブ生体物質3や第1結合基物質Aと結合させることが好ましい。
アミド化反応によりアルカンジカルボン酸とジアミノアルカンから、両末端にアミノ基を有する高分子を得る方法、アミノ基を有する高分子にビオチン4-ニトロフェニルエステルと反応させてアミノ基をビオチン化する方法、さらに、アミノ基を有する高分子に3-マレイミドプロピオン酸 N‐スクシンイミジルと反応させ、該アミノ基をマレイミド化する方法等によって、リンカーの形態として上記高分子を得ることができる。
この場合、合成後の高分子の主鎖(炭素原子以外にもヘテロ原子を含んでもよいもの)のリンカーの長さ(後述)が、30オングストローム以上1000オングストローム以下となるように、合成に用いるアルカンジカルボン酸とジアミノアルカンとを選択することが好ましく、ゲル濾過して目的のリンカーの長さに相当する分子量の画分を回収し、後述のリンカーの長さの高分子を回収することが好ましい。
この他にも、マレイミド化した高分子を得る方法として、例えば、無水マレイン酸と第1級アミン(R1−NH2)とを一段階で脱水反応させることにより得る方法等の従来から知られている多くの方法で行うことができる。この場合、第1級アミンは、第1級アミンのR1の末端の炭素原子から窒素原子までの長さが30オングストローム以上1000オングストローム以下のものとすべきである。
アミノ化した上記高分子を得る方法としては、例えば、アルデヒドまたはケトンと、第1級アミン(R1−NH2)とを還元的アミノ化反応させることで得ることができる。この場合、(1)アルデヒドまたはケトンの分子中のR1の主鎖の一端の炭素原子からカルボニル基の炭素原子までの長さ、および(2)第1級アミンのR1の主鎖の末端の炭素原子から窒素原子までの距離、(3)(1)のカルボニル基と(2)の窒素原子との結合の長さの合計が30オングストローム以上1000オングストローム以下であるものとすべきである。
ビオチン化した上記高分子を得る方法は、福山カップリング法を利用したビオチン化により得ることができる(Shimizu, T.; Seki, M. (2000). "Facile synthesis of (+)-biotin via Fukuyama coupling reaction". Tetrahedron Lett. 41 (26): 5099-5101.参照)。この場合、ビオチンと反応させる分子の主鎖の長さを30オングストローム以上1000オングストローム以下とすべきである。
また、ハロゲン化アルキル(Rの主鎖の酸素からハロゲン原子までの距離が30オングストローム以上1000オングストローム以下のもの)をアルカリの存在下に硫化水素と反応させる(R-Br + NaSH → R-SH + NaBr)方法で行うことができる。
(スペーサーの長さ)
スペーサーの長さとは、図1に示したように、第1親水性高分子をビオチン等の第1結合基物質Aと抗体等のプローブ生体物質3とに結合させたときに、第1結合基物質Aとプローブ生体物質3との間の第1親水性高分子に由来する化学構造の部分(スペーサー1)の長さを意味する。
図2(A)に示した具体例のPEGリンカーについて説明すると、該PEGリンカーの一端(図2(A)に示す分子の右端)にはビオチンが結合されており、該PEGリンカーの他端(図2(A)に示す分子の左端)にはマレイミド基が結合されている。このPEGリンカーの他端のマレイミド基に抗体等のプローブ生体物質3を反応させて結合させた場合、第1親水性高分子に由来するスペーサーの長さ(スペーサー1の長さ)は、図2(B)で示したように、両方向の矢印で示した部分に相当するアミド結合の窒素原子から次のアミド結合の酸素原子までの部分の長さとなる。
ここで、化学結合の距離はセルフコンシステントアプローチに基づく理論値である。それによると、N−C結合距離は1.46オングストロームであり、C−C結合距離は1.50オングストロームであり、C−O結合距離は1.38オングストロームである。図2(B)の両方向の矢印で示した部分のアミド結合の窒素原子から次のアミド結合の酸素原子までのスペーサー1の部分には、N−C結合が5個、C−C結合が15個、およびC−O結合が22個存在するため、図2に示したように、スペーサーの長さは、合計理論値の60.16オングストロームとなる。
このスペーサー1の長さは、好ましくは33.6オングストローム以上980.7オングストローム以下、より好ましくは33.6オングストローム以上104.7オングストローム以下、特に好ましくは55.5オングストローム以上104.7オングストローム以下である。
スペーサー1の長さを30オングストローム以上とすることで、蛍光免疫染色を行った際に、生体分子2に結合したプローブ生体物質3に連結された第1結合基物質Aと、蛍光体集積ナノ粒子5に連結された第2結合基物質Bとの反応効率を改善することができ、それによってシグナルの強度を向上させることができる。つまり、検出すべき生体分子が存在するときにその存在が蛍光体集積ナノ粒子の輝点として示されることの確実性を向上させることができる。逆に、スペーサー1の長さが1000オングストロームを上回ると(例えば約1500オングストロームとなると)、スペーサー1が、結合組織や脂肪組織などで、疎水性アミノ酸の割合が高い組織切片中の間質やその他の生体分子2が存在しない部位に非特異的に吸着しやすくなる。そうすると、プローブ生体物質3が生体分子2に結合していなくても、つまり生体分子2が存在していない箇所でも、輝点として示される場合が出てきてしまい、かえってノイズを高めることとなりかねない。このような非特異的な吸着の程度は、例えば、目的の生体分子2を発現していない細胞に対して免疫蛍光染色を行うことによって調べることができる。したがって、スペーサー1の長さが上記の所定の範囲内であれば、得られる蛍光シグナルの向上とノイズの抑制のバランスを好適に取ることができ、疾病に関連する抗原等の生体分子2の定量性を優れたものとすることができる。
上述したPEGリンカー等は、例えばサーモサイエンティフィック社等の市販のものを購入したり、第1親水性高分子を上述のように化学結合させて形成されるスペーサー1の長さが30オングストローム以上1000オングストローム以下となるように、第1親水性高分子に含まれる化学構造の繰り返しの単位の数を設定して、試薬メーカー等に製造を依頼したりすることで入手することができる。
それ以外にも、第1親水性高分子を上述のように化学結合させて形成されるスペーサー1の長さが30オングストローム以上1000オングストローム以下となるように、市販されている第1親水性高分子を選択するとともに、この溶液を分子量分画(ゲル濾過等)に供して所定の分子量を有する第1親水性高分子のみを回収し、回収した第1親水性高分子に対して第1結合基物質Aとプローブ生体物質3を付加してスペーサー1を形成することにより入手してもよい。なお、第1親水性高分子に由来するスペーサー1の長さは、例えば、得られたプローブ生体物質3、スペーサー1、および第1結合基物質Aの複合体(試薬II)を、MALDI−TOFMSによる質量分析にかけることで確認することができる。
上述したリンカーは、例えば、図2(A)に示したように、第1親水性高分子1の両端にそれぞれ第1結合基物質A(図2(A)の例ではビオチン)と、プローブ生体物質(図2(A)の例では2次抗体)に結合反応する官能基(図2(A)の例ではマレイミド基)とをそれぞれ結合させたものが好ましい。例えば、リンカーの一端と中央にそれぞれ第1結合基物質Aと前記官能基とがある場合、スペーサー1の長さが、およそ当該リンカーの一端から中央までの長さとなってしまい、リンカーの中央から他端までの部分がスペーサーとして機能しなくなってしまうからである。このような両端に官能基を有する第1親水性高分子は、例えば、一般に知られている試薬メーカ(サーモサイエンティフィック社)から購入することで入手することができる。
《第1結合基物質》
第1結合基物質Aは、例えば、アビジン、ビオチン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ハプテン、抗ハプテン抗体等であり、図1に示したように、後述する蛍光体集積ナノ粒子5に結合した第2結合基物質Bと特異的に結合する分子である。上記ハプテンとしては、例えば、DIG(ジゴキシゲニン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、DNP(ジニトロフェノール)を挙げることができる。
スペーサー1と第1結合基物質Aとの結合は、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着、化学吸着等の適当な結合様式による結合や、結合力の強さの観点から、アミド結合、エステル結合、イミド結合、マレイミド基へのチオール付加を利用した結合等の共有結合が好ましい。
第1親水性高分子と第1結合基物質Aとを化学結合する具体的な方法としては、チオール基−マレイミド基のカップリング反応法、架橋剤(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)等)を用いた架橋反応法、イオン結合法等を挙げることができる。
架橋反応法を用いて第1親水性高分子と第1結合基物質Aとを結合させる場合、上述した第1親水性高分子由来のリンカー1とプローブ結合物質3との結合と同様に、第1親水性高分子は、分子末端にカルボキシ基を有する第1親水性高分子を用いることが好ましい。第1親水性高分子の分子鎖の中央部にカルボキシ基がある場合、中央部のカルボキシ基に第1結合基物質Aが結合してしまい、第1親水性高分子に由来する部分の長さが十分に確保できなくなる場合(スペーサー1の長さ30以上1000オングストローム以下に入らない場合)があるからである。
《第2結合基物質》
第2結合基物質Bは、第1結合基物質Aと特異的に結合する分子であればよく、例えば、ビオチン、ニュートラアビジン、アビジン、ストレプトアビジン、抗ハプテン抗体、ハプテン等である。上記ハプテンとしては、例えば、DIG(ジゴキシゲニン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、DNP(ジニトロフェノール)を挙げることができる。
(第2結合基物質と蛍光体集積ナノ粒子との結合)
蛍光体集積ナノ粒子5と第2結合基物質Bとの結合は、直接的な結合であってもよいし、図1に示したように他の分子を介在させる間接的な結合であってもよい。
蛍光体集積ナノ粒子5に対して第2結合基物質Bを直接的に結合させる態様としては、特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着及び化学吸着等が挙げられ、公知の方法で行うことができる。結合の安定性から共有結合等の結合力の強い結合が好ましい。
蛍光体集積ナノ粒子5に対して第2結合基物質Bを間接的に結合する場合の態様としては、蛍光体集積ナノ粒子5と第2結合基物質Bとに第2親水性高分子由来を結合させて、蛍光体集積ナノ粒子5と第2結合基物質Bとの間に別のスペーサー4を介在させる態様が挙げられる。
第2親水性高分子は、上述した第1親水性高分子と同じく、ポリエチレングリコール、フィコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸およびこれらに類する物により形成される群から選択された1種類または2種以上の親水性高分子を用いることができる。ここで、第2親水性高分子は、非特異的吸着を抑制する観点から、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
第2親水性高分子由来のスペーサー4と第2結合基物質Bとの結合は、例えば、上述した第1親水性高分子由来のスペーサー1と第1結合基物質Aとの結合と同様に、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着、化学吸着等の適当な結合様式による結合や、結合力の強さの観点から、アミド結合、エステル結合、イミド結合、好ましくはマレイミド基へのチオール付加を利用した結合等の共有結合である。
第2親水性高分子由来のスペーサー4と蛍光体集積ナノ粒子5との結合は、特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着、化学吸着等の適当な結合様式による結合や、結合力の強さの観点から、アミド結合、エステル結合、イミド結合、マレイミド基へのチオール付加を利用した結合等の共有結合等が好ましい。この結合の方法例として、チオール基−マレイミド基のカップリング反応法、架橋剤(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)等)を用いた架橋反応法、イオン結合法等を挙げることができる。
《蛍光体集積ナノ粒子》
蛍光体集積ナノ粒子5は、蛍光体を集積したものである。このような蛍光体集積ナノ粒子を用いることで、1分子の蛍光体と比較して、1分子当たりの発する蛍光の量、すなわち所定の生体分子を標識する輝点の輝度を高めることができる。
(蛍光体)
本明細書において「蛍光体」とは、外部からのX線、紫外線、可視光線または近赤外光線等の照射を受けて励起し、励起状態から基底状態に到る過程において光を発光する物質一般を指す。したがって、本発明にいう「蛍光体」は、励起状態から基底状態に戻るときの遷移態様の如何を問うものでなく、励起一重項からの失活に伴う発光である狭義の蛍光を発する物質であってもよいし、三重項からの失活に伴う発光である燐光を発する物質であってもよい。
また、本発明にいう「蛍光体」は、励起光を遮断してからの発光寿命によって限定されるものでもない。したがって、硫化亜鉛やアルミン酸ストロンチウム等の蓄光物質として知られている物質であってもよい。このような蛍光体は、有機蛍光体および無機蛍光体に大別することができる。
(有機蛍光体)
蛍光体としての使用可能な有機蛍光体の例としては、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素分子、クマリン系色素分子、NBD(登録商標)系色素分子、ピレン系色素分子、Texas Red(登録商標)系色素分子、シアニン系色素分子、ペリレン系色素分子、オキサジン系色素分子等、有機蛍光色素として知られている物質を挙げることができる。
具体的には、5−カルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−フルオレセイン、5,6−ジカルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−2',4,4',5',7,7'−ヘキサクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−2',4,7,7'−テトラクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−4',5'−ジクロロ−2',7'−ジメトキシフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X−ローダミン、及びAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPY FL、BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、メトキシクマリン、エオジン、NBD、ピレン、Cy5、Cy5.5、Cy7等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
(無機蛍光体)
蛍光体として使用可能な無機蛍光体の例としては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられるが、これらに限定されない。
上記量子ドットをコアとし、その上にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する量子ドットの表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。例えば、CdSe/ZnS、CdS/ZnS、InP/ZnS、InGaP/ZnS、Si/SiO2、Si/ZnS、Ge/GeO2、Ge/ZnS等を用いることができるが、これらに限定されない。
量子ドットは必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等が挙げられる。
《蛍光体集積ナノ粒子の製造方法》
蛍光体集積ナノ粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。一般的には、樹脂またはシリカを母体として蛍光体をまとめ上げる(当該母体の内部または表面に蛍光体を固定化する)製造方法を用いることができる。
<有機蛍光体の場合>
有機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である蛍光色素を樹脂からなる母体の内部または表面に固定した、直径がナノメートルオーダーの樹脂粒子を形成させる方法を挙げることができる。この蛍光体集積ナノ粒子の調製方法は特に限定されるものではないが、例えば、蛍光体集積ナノ粒子の母体をなす樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を合成するための(コ)モノマーを(共)重合させながら、蛍光体を添加し、当該(共)重合体の内部または表面に当該蛍光体を取り込ませる方法を用いることができる。
上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフラン、または、これに類する樹脂を好適に用いることができる。上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリキシレン、ポリ乳酸、グリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリアミド、フェノール樹脂、多糖類またはこれに類する樹脂を好適に用いることができる。熱硬化性樹脂、特にメラミン樹脂は、キシレン等の有機溶媒を用いる脱水、透徹、封入などの処理によっても、色素樹脂に内包させた色素の溶出を抑制することができる点で好ましい。
例えば、有機の蛍光色素(蛍光体)を内包したポリスチレンナノ粒子は、米国特許4326008(1982)に記載されている重合性官能基をもつ有機色素を用いた共重合法や、米国特許5326692(1992)に記載されているポリスチレンナノ粒子への蛍光有機色素の含浸法を用いて作製することができる。
一方で、有機蛍光体をシリカからなる母体の内部または表面に固定化したシリカナノ粒子を製造することもできる。そのような製造方法としては、ラングミュア 8巻 2921ページ(1992)に記載されているFITC内包シリカ粒子の合成方法を参考にすることができる。FITCの代わりに所望の蛍光色素を用いることで種々の蛍光色素内包シリカナノ粒子を合成することができる。
<無機蛍光体の場合>
無機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である量子ドットをシリカからなる母体の内部または表面に固定した、シリカナノ粒子を形成させる方法が挙げられる。この製造方法は、ニュー・ジャーナル・オブ・ケミストリー 33巻 561ページ(2009)に記載されているCdTe内包シリカナノ粒子の合成を参考にすることができる。
また、上記とは異なる蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、シリカビーズをシランカップリング剤で処理して末端をアミノ化し、カルボキシ基末端を有する蛍光体としての半導体微粒子をシリカビーズの表面にアミド結合により結合することで集積し、蛍光体集積ナノ粒子とする方法も挙げられる。
さらに別の蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、逆ミセル法と、ガラスの前駆体として分子の末端に半導体ナノ粒子への吸着性が良い有機官能基を有する有機アルコキシシランとアルコキシドの混合物を用いたゾル−ゲル法とを組み合わせることにより、半導体ナノ粒子を内部に分散固定したガラス状の粒子を形成し、蛍光体集積ナノ粒子とする例が挙げられる。
さらに別の蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、1-エチル‐3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)の存在化で、アミノ基末端の半導体ナノ粒子と、カルボキシ基末端の半導体ナノ粒子を混合し、半導体ナノ粒子間をアミド結合で介して結合することで半導体ナノ粒子を集積し、蛍光体集積ナノ粒子を製造する例が挙げられる。
さらに、無機蛍光体を樹脂からなる母体の内部または表面に固定化した集積体を製造することもできる。たとえば、量子ドットを内包したポリマーナノ粒子は、ネイチャー・バイオテクノロジー19巻631ページ(2001)に記載されているポリスチレンナノ粒子への量子ドットの含浸法を用いて作製することができる。
《蛍光免疫染色法》
以下、本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子標識剤を用いた組織免疫染色法(蛍光免疫染色法)について説明する。
(1)脱パラフィン処理工程
キシレンを入れた容器に、パラフィンコートされた被験者(特定の疾患が疑われるヒト、イヌ、ネコ等)の組織切片を浸漬させ、パラフィンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により、浸漬途中でキシレンを交換してもよい。
ついで、エタノールを入れた容器に組織切片を浸漬させて、キシレンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でエタノールを交換してもよい。
水を入れた容器に病理切片を浸漬させて、エタノールを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中で水を交換してもよい。
(2)賦活化処理工程
公知の方法にならい、組織切片に含まれる染色対象の抗原の賦活化処理をすることが好ましい。賦活化処理の条件に特に定めはないが、賦活液としては、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mトリス塩酸緩衝液等を用いることができる。加熱機器としては、オートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターバス等を用いることができる。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。賦活化処理の加熱処理の温度は50〜130℃、加熱処理の時間は5〜30分で行うことができる。
ついでPBS緩衝液(以下、PBS)を入れた容器に、賦活化処理後の切片を浸漬させ、洗浄を行う。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。
(3)免疫染色処理工程
免疫染色処理工程では、本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子標識剤のプローブ生体物質と組織切片にある抗原や1次〜n次抗体(生体分子)と結合させる。
具体的には、蛍光体集積ナノ粒子標識剤のバッファー(PBS等)分散液を調製し、組織切片に載せて、蛍光体集積ナノ粒子標識剤のプローブ生体物質と前記生体分子とを結合させる。次に、バッファー(PBS等)を入れた容器に染色後の組織切片を浸漬させて、未反応の蛍光ナノ粒子標識剤や抗体等を除去する。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。必要により浸漬途中でバッファー(PBS等)を交換してもよい。上記免疫染色処理工程の後に、ヘマトキシリン−エオジン染色などの、形態観察染色工程をさらに行うことが望ましい。
(その他の染色)
ある組織アレイスライドと同一の被験者に由来する別の組織アレイスライドについて、蛍光免疫染色と同一または異なる抗原の有無を確認するための化学免疫染色(DAB染色等)を行っても良い。また、ある組織アレイスライドについて、蛍光免疫染色と、それとは異なる抗原を対象とした化学免疫染色とによる二重染色を行ってもよい。これらの場合、病理切片中の特定の抗原に対して、発色用酵素が連結された抗体等を抗原抗体反応等により結合させ、該結合後に発色基質を反応系に添加して前記発色用酵素により発色させる。
抗原抗体反応の段階において、抗原に対する上記結合は公知の方法により行うことができる。なお、抗原抗体反応の結合の前に、BSA含有PBSなど公知のブロッキング剤を滴下して室温で所定時間(例えば1時間)インキュベートしておくことが好ましい。
発色工程において、前記発色用酵素の基質、発色剤を反応系に添加して化学発色させるが、発色剤は以下のものを例示することができる。
発色用酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いる場合、TMB(3,3,5,5−テトラメチル ベンジジン)、3,3'−ジアミノベンジジン(DAB)、4-クロロ-1-ナフトール等が挙げられる。また、発色用酵素として酵素アルカリホスファターゼを用いる場合、ニューフクシン等が挙げられる。
(4)固定処理工程
固定処理工程は、(3)染色処理工程により導入された蛍光体集積ナノ粒子標識剤等を組織切片に固定する工程である。固定処理溶液として、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、アセトン、エタノール、メタノール等の架橋剤、細胞膜透過物質等が挙げられる。固定処理は、従来公知の手法により行うことができる。固定処理は、具体的には、上述したような固定処理溶液に、(3)染色処理工程により得られた染色組織切片を浸漬することにより行うことができる。例えば、稀パラホルムアルデヒド水溶液中に、(3)染色処理工程により得られた染色組織切片を数分から数時間程度浸漬することにより行うことができる。
(5)観察工程
(5−1)明視野観察工程
明視野観察工程は、前記工程(1)〜(4)において可視光として観察可能な発色剤(色素)を用いた染色(形態観察染色、酵素免疫染色等)を行った場合に、染色された組織切片に照明光を当て、組織切片に沈着した発色剤の色素を観察し、細胞または組織内の染色対象とする抗原の分布情報(発色点数等)を取得する工程である。
なお、形態観察染色に用いられるエオジンは、明視野において観察できるだけでなく、所定の波長の励起光を照射した時に自家蛍光も発するので、蛍光顕微鏡によっても観察できる。励起光は、組織および必要に応じて用いられるエオシンが所望の波長の自家蛍光を発するものであればよく、励起光の照射手段も特に限定されるものではない。たとえば、蛍光顕微鏡が備えるレーザ光源から、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させるフィルターを用いて、適切な波長および出力の励起光を染色された組織切片に照射すればよい。
細胞形態情報は、蛍光の視野に含まれる細胞形態情報を取得することが好適である。もちろん、必要であれば、たとえば組織の自家蛍光または蛍光標識材料が発する蛍光の一方を十分に低減しうる適切なフィルターを用いることにより、ある視野で細胞形態情報のみを取得するようにすることが好ましい。
一方、前記その他の染色として、例えば、乳がんにおけるHER2タンパク質を検出対象とする生体分子として組織化学染色(DAB染色等)をおこなった場合の明視野観察においては、適切な照明光の照射下で、光学顕微鏡の4倍対物レンズを使用して、検体組織内の癌細胞のHER2タンパク陽性染色像、陽性染色の強度、陽性細胞率を観察する。次に対物レンズを10倍に切り替え、陽性所見が細胞膜か細胞質に局在するかを確認し、必要に応じてさらに対物レンズ20倍で検索する。
上述したいずれの明視野観察も、迅速な観察が行えるように、顕微鏡の鏡筒から明視野の画像を取得するようにしてもよいし、顕微鏡に設置されたカメラが撮影した画像を別途表示手段(モニタ等)に表示し、それを観察することにより取得するようにしてもよい。
(5−2)蛍光観察工程
蛍光観察工程は、上記工程により染色された組織切片中の蛍光体集積ナノ粒子の蛍光体に励起光を照射することにより、該蛍光体の発する蛍光に基づく生体分子の分布情報(輝点数等)を取得する工程である。
前記励起光は、前記蛍光体に対して適した励起光を照射して蛍光体を励起し、染色対象の生体分子を蛍光で染色する。また、励起光の照射手段も特に限定されるものではない。例えば、蛍光顕微鏡が備えるレーザー光源から、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させるフィルターを用いて、適切な波長および出力の励起光を染色された組織切片に照射すればよい。
前記励起光は、組織切片の自家蛍光との関係で蛍光体が発する蛍光が識別可能である限り特に限定されないものの、組織切片からの自家蛍光強度が高くなりすぎないようにする観点から、450nm〜700nmの波長を有する励起光が好ましい。また、前記蛍光体を構成する蛍光物質としては当該励起光により480nm以上の範囲、好ましくは580〜690nmの範囲にピークを有する蛍光を発するものを用いる(したがってこの領域の発光波長を有する蛍光を測定するようにする)。
また、本工程において生体分子の分布情報は、迅速な観察が行えるよう(蛍光)顕微鏡の鏡筒から取得するようにしてもよいし、(蛍光)顕微鏡に設置されたカメラが撮影した画像を別途表示手段(モニタ等)に表示し、それを観察することにより取得するようにしてもよい。標識体として用いる蛍光体を構成する蛍光物質によるが、顕微鏡の鏡筒からの目視により十分に生体分子分布情報を取得することができなくても、カメラが撮影した画像から生体分子分布情報を取得することが可能な場合もある。
前記生体分子の分布情報を取得することとしては、例えば、蛍光の輝点数または発光輝度を基に、一細胞あたりの染色対象の生体分子の数もしくは密度を計測することが挙げられる。前記蛍光体の励起には、吸収極大波長および蛍光波長に対応した励起光源および蛍光検出用光学フィルターを選択すればよい。輝点数または発光輝度の計測には、市販の画像解析ソフト(例えば、全輝点自動計測ソフト「G−Count」(ジーオングストローム社製))を用いることが好適であるが、計測手段は特に限定されるものではない。
本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子標識剤、およびこれを用いた蛍光免疫染色法の作用、効果について説明する。
(1)本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、所定の長さの親水性高分子1由来のスペーサーを介して第1結合基物質Aに連結され抗原または1次〜n次抗体等の生体分子2と特異的に結合するプローブ生体物質3と、該第1結合基物質Aと特異的に結合可能な第2結合基物質Bが結合された蛍光体集積ナノ粒子5とからなるセットを含む(図1参照)。
第1親水性高分子由来のスペーサー1の長さを所定の値(30オングストローム)以上とすることで、蛍光免疫染色を行った際に、生体分子2に結合したプローブ生体物質3に連結された第1結合基物質Aと、蛍光体集積ナノ粒子5に連結された第2結合基物質との反応効率を改善してシグナルを向上させ、かつ所定の値(1000オングストローム)以下とすることで、反応効率の低下や非特異的な吸着を抑制し、ノイズを低下させることができる。その結果、疾病に関連する抗原などの生体分子2の検出感度および定量精度を高め、病理判定の信頼性を高めることができる。
(2)スペーサー1が高い親水性を有するポリエチレングリコール(PEG)等の親水性の高分子(第1親水性高分子)由来のものであれば、プローブ生体物質3、スペーサー1、および第1結合基物質Aの複合体(試薬II)の、疎水性組織で構成される間質細胞への非特異的な吸着を防止することができる。また、オキシエチレン単位の数を変更して、スペーサー1の長さを調節しやすい点でも有利となる。
(3)スペーサー1がポリエチレングリコール(PEG)由来であり、このスペーサー1のオキシエチレン単位(n)の数が6〜230であれば、上述した前記(1),(2)の非特異的な吸着を防止する効果を特に高めることができる。
(4)第1結合基物質A,Bがビオチンまたはストレプトアビジンであれば、これらの分子間の結合は、非常に特異的な結合であるので、上述した(1)の効果が高まる。
さらに、第1結合基物質A,Bがビオチン,ストレプトアビジンであれば、第1結合基物質A,Bがストレプトアビジン、ビオチンである場合より、プローブ生体物質3、スペーサー1、および第1結合基物質Aの複合体(試薬II)全体の分子サイズを小さくすることができるため、蛍光免疫染色における生体分子2とプローブ生体物質3との抗原抗体反応に悪影響を及ぼしにくい点で有利となる。
(5)蛍光体集積ナノ粒子5の平均粒子径が、50nm以上200nm以下であることで、汎用顕微鏡での蛍光観察が可能となる。ここで、蛍光体集積ナノ粒子5の平均粒子径が50nm未満であると、汎用顕微鏡での蛍光観察での輝点を観察するのが困難となる。ここで、蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径が200nmを超えると、第1,2結合基物質の結合を介した蛍光体集積ナノ粒子とプローブ生体物質との結合効率が低下する。
(6)スペーサー1の長さが、50オングストローム以上100オングストローム以下であれば、特に上述した(1)の効果を高めることができる。
(7)前記生体分子は抗原または1次〜n次抗体、前記プローブ生体物質は1次または2次〜n+1次抗体とすることができるので、本発明の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、様々な実施形態の蛍光免疫染色に用いることができる。
[実施例1]
《ストレプトアビジン結合テキサスレッド色素内包メラミン樹脂ナノ粒子の製造》
スルホローダミン101(「Sulforhodamine 101」、シグマアルドリッチ社製、TexasRed色素)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持ながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業社製)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。
撹拌後の溶液にギ酸100μLを加え、溶液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、該溶液を放置して室温まで冷却した。冷却した後の溶液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、溶液に混合物として含まれるテキサスレッド色素内包メラミン樹脂ナノ粒子(以下、粒子Xと略称する。)を沈殿させて上澄みを除去した。その後、沈殿した粒子Xの洗浄をエタノールと水で行った。
洗浄後の粒子X0.1mgをエタノール1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシランLS−3150(信越化学工業社製)2μLを加えて8時間、撹拌しながら室温で反応させて表面アミノ化処理を行った。
表面がアミノ化された粒子Xの濃度を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBSを用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようリンカー試薬「SM(PEG)12」(サーモサイエンティフィック社製、cat.No. 22112)を混合して、撹拌しながら室温で1時間反応した。
反応液を10,000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、同一条件で再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された粒子Xを得た。
一方、スルフヒドリル基を有するストレプトアビジンの作製は以下のように行った。まず、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業社製)40μLに対して、64mg/mLに調整したN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(N−succinimidyl S−acetylthioacetate,SATA、pirce社製)70μLを室温で1時間より反応させた。すなわち、ストレプトアビジンのアミノ基に対して保護されたチオール基(−NH−CO−CH2−S−CO−CH3)を導入した。
その後、公知のヒドロキシルアミン処理により、保護されたチオール基から遊離のチオール基(−SH)を生成して、ストレプトアビジンにチオール基(−SH)を付加する処理を行った。
このストレプトアビジン溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)により脱塩し、末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された粒子Xに結合可能なストレプトアビジンを得た。
マレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された粒子Xと、SH基を有する上記ストレプトアビジンとを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応ストレプトアビジン等を除去し、ストレプアビジン(第2結合基物質)で末端修飾されたPEG(33.6オングストローム)を有する粒子X(試薬III)を得た。
(蛍光ナノ粒子の平均粒子径の計測方法)
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて前記蛍光体集積ナノ粒子を撮像し、十分な数の粒子について断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径を粒径として求めた。具体的には、1000個の前記蛍光体集積ナノ粒子の粒径の算術平均を平均粒子径とした。実施例1の蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径は、150nmであった。
《ビオチン修飾された2次抗体の調製》
50mMTris溶液に抗ウサギIgG抗体50μgを溶解した。該溶液に、最終濃度3mMとなるようにDTT(dithiothretol)溶液を混合した。その後、該溶液を37℃で30分間反応させた。その後、脱塩カラムを用いてDTTで還元化した2次抗体を精製した。精製した抗体全量のうち200μLを50mMTris溶液に溶解して抗体溶液を得た。その一方で、スペーサーの長さが30オングストロームであるリンカー試薬「Biotin−PEG6‐NH‐Mal」(PurePEG社製,製品番号2461006-250)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように調整した。この溶液8.5μLを前記抗体溶液に添加し、混和して37℃で30分間反応させた。
この反応溶液を脱塩カラム「Zeba Desalt Spin Columns」(サーモサイエンティフィック社製,Cat.#89882)に供して精製した。脱塩した反応溶液の波長300nmの吸収を分光高度計(日立製「F−7000」)により計測して反応溶液に含まれるタンパク質の量を算出した。50mMTris溶液により反応溶液を250μg/mLに調整し、該溶液をビオチン化2次抗体(試薬II)の溶液とした。
《蛍光免疫染色法》
(1)脱パラフィン処理工程
上記ビオチン化2次抗体等を用いて、ヒト乳房組織の組織免疫染色と形態観察染色とを以下のように行った。染色用の組織切片として、HER2(3+)とHER2(−)の組織アレイスライド(コスモバイオ社製「CB−A712のシリーズ」)を用いた。この組織アレイスライドを脱パラフィン処理した。
なお、HER2のスコア「3+」は、トラスツヅマブ病理部会作成のHER2ガイドライン(第3版)に準じており、DAB法によって「強い完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞>30%」であることが確認された組織切片であることを示す。
一方、HER2のスコア「−」は、トラスツヅマブ病理部会作成のHER2ガイドライン(第3版)においてスコア「0」と規定される組織切片、すなわち「細胞膜に陽性染色なし、あるいは細胞膜の陽性染色がある癌細胞<10%(細胞膜に限局する陽性染色は判定対象外)」に該当する組織切片のうち、DAB法によって「細胞膜に陽性染色なし」であることが確認された組織切片であることを示す。
このようなDAB染色による確認は、実施例で用いた切片(組織アレイスライド)と同じ組織に由来する別の切片(組織アレイスライド)を用いて行った。
(2)賦活化処理工程
組織アレイスライドを脱パラフィン処理した後、水に置換する洗浄を行った。洗浄した組織アレイスライドを10mMクエン酸緩衝液中(pH6.0)中で121℃、15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。賦活化処理後の組織アレイスライドをPBSにより洗浄し、洗浄した組織アレイスライドに対してBSAを1%含有するPBSを用いて1時間ブロッキング処理を行った。
(3)免疫染色処理工程
(3−1)1次反応
BSAを1%含有するPBSを用いて、ベンタナ社製「抗HER2ウサギモノクロナール抗体(4B5)」(試薬I)を0.05nMに調整し、該1次抗体の溶液を上述のブロッキング処理した組織アレイスライドに対して4℃で1晩反応させた。
(3−2)2次反応
1次反応を行った組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、1%BSA含有のPBSで6μg/mLに希釈した上記ビオチン化2次抗体(試薬II)と室温30分間反応させた。
(3−3)
2次反応を行った組織アレイスライドに対して、1%BSA含有のPBSで0.02nMに希釈した前述の蛍光体集積ナノ粒子(試薬III)を、中性のpH環境(pH6.9〜7.4)室温の条件下で3時間反応させた。該反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した。
(4)形態観察染色工程
免疫染色後、ヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)を行った。免疫染色した切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った。その後、該組織切片を45℃の流水で3分間洗浄した。次に、1%エオシン液で5分間染色してエオシン染色を行った。
(5)固定処理工程
免疫染色工程および形態観察染色工程を終えた組織切片に対して、純エタノールに5分間浸漬する操作を4回行い、洗浄・脱水を行った。続いて、キシレンに5分間浸漬する操作を4回行い、透徹を行った。最後に、封入剤(メルク社製「エンテランニュー」)を用いて、組織切片を封入して観察用のサンプルの組織アレイスライドとした。
(6)観察・計測工程
固定化処理工程を終えた組織切片に対して所定の励起光を照射して、蛍光を発光させた。その状態の組織切片を蛍光顕微鏡(オリンパス社製「BX−53」)、顕微鏡用デジタルカメラ(オリンパス社製「DP73」)により観察および撮像を行った。上記励起光は、光学フィルターに通すことで575〜600nmに設定した。また、観察する蛍光の波長(nm)の範囲についても、光学フィルターを通すことで612〜692nmに設定した。顕微鏡観察、画像取得時の励起波長の条件は、580nmの励起では視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像取得時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないように任意に設定(例えば4000μ秒に設定)して撮像した。HER2(3+)、HER(−)の組織の輝点数は、400倍で撮像した画像をもとにImageJ FindMaxims法により計測した1000細胞の平均値とした。また、撮像した画像から、1輝点の平均輝度を算出した。
(考察)
実施例1の結果を表2に示す。
(HER2(3+)細胞切片細胞当たりの平均輝点数)
HER2(3+)細胞切片細胞当たりの平均輝点数の評価基準は、該輝点数が2未満のものは「×」(検出すべきHER2抗原への結合性が比較的低い、つまり低シグナルである)、該輝点数が2以上5未満のものは「○」(検出すべきHER2抗原への結合性が比較的高い、つまり高シグナルである)、該輝点数が5以上のものは「◎」(検出すべきHER2抗原への結合性が極めて高い、つまり極めて高シグナルである)とした。
実施例1で、スペーサー1の構造単位がPEG、スペーサー1の長さ(第1親水性高分子に由来する部分の長さ)を30オングストロームとして、組織免疫染色を行ったところ、HER2(3+)の組織切片では、1細胞当たりの平均輝点数が「2.4」であり、評価が「○」であった。
(HER2(−)細胞切片細胞当たりの平均輝点数)
一方、HER2(−)細胞切片細胞当たりの平均輝点数の評価基準は、該輝点数が1以下のものは「○」(非特異的な吸着を起こしにくい、つまり低ノイズである)、該輝点数が0.5以下のものは「◎」(非特異的な吸着を極めて起こしにくい、つまり極めて低ノイズである)とした。
実施例1では、HER2(−)の正常組織の組織切片では、1細胞当たりの平均輝点数が「0.3」であり、評価が「◎」であった。
(1輝点の平均輝度)
実施例1の1輝点の平均輝度は「41200」あり、低い粒子濃度であっても十分なシグナルが得られていることがわかる。
(間質1画面当たりの輝点数)
また、間質は、細胞と細胞との間を埋めている疎水性の組織であるが、この間質には細胞核が存在しないため、HER2遺伝子は発現することはない。したがって、本来であれば輝点数は0となるはずであり、輝点が観察されるとすればそれは非特異的な吸着を表すノイズであるため、そのようなノイズの輝点数は極力少ない範囲に抑える必要がある。ここで、上述の観察および撮像において、オリンパス社製カメラ「DP73」を用い、対物レンズ×40で撮影した画像そのもの(1600ピクセル×1200ピクセル)を「間質1画面当たりの輝点数」とした場合に、該輝点数が200個以下の場合は「○」(疎水性部位への非特異的な吸着を起こしにくい、つまり低ノイズである)、100個以下の場合は「◎」(疎水性部位への非特異的な吸着を極めて起こしにくい、つまり極めて低ノイズである)とした(表4参照)。実施例1では、間質1画面当たりの輝点数が「68個」であった(表4参照)。
また、上記のHER2(3+)の評価およびHER2(−)の評価から、染色性を総合的に評価した。染色性の総合評価の基準は、HER2(3+)の評価およびHER2(−)の評価のいずれもが「◎」の場合は「◎」(HER2の過剰発現の陽性および陰性の判定精度について総合的に極めて優れた染色性を有する)であり、HER2(3+)の評価およびHER2(−)の評価のいずれにも「×」がない場合「○」(HER2の過剰発現の陽性および陰性の判定精度について総合的に優れた染色性を有する)、HER2(3+)の評価およびHER2(−)の評価のいずれかに「×」がある場合「×」(HER2の過剰発現の陽性および陰性の判定精度について総合的に劣った染色性を有する)とした。実施例1の染色性の総合評価は「○」であった(表2参照)。
[実施例2]
実施例2では、実施例1でリンカーとして用いた「Biotin−PEG6−NH−Mal」の代わりに、スペーサーの長さが46.2オングストロームのプロピレン製のリンカーを以下のように合成して、これを用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(リンカーの作製)
1,18‐オクタデカンジカルボン酸(1,18−Octadecanedicarboxylic acid,プロピレン単位=6)と、5等量の1,6-ジアミノヘキサン(1,6−Hexanediamine,プロピレン単位=2)で、ヘキサン中でアミド化反応を行なった。アミド化反応は触媒としてジイソプロピルカルボジイミドを2等量混合することで行った。
得られた反応物(プロピレン単位=8)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びGPCにより精製し、両末端がアミンの炭化水素化合物(プロピレン単位=8相当)を得た。アミノ化した合成物を0.5等量のビオチン4-ニトロフェニルエステル(Biotin 4−Nitrophenyl Ester,TCI社製,製品番号B4009)と、テトラヒドロフラン(THF)中で反応した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びGPCにより精製し、片末端がビオチン化され、もう片末端がアミンとなった反応生成物を得た。得られた生成物と、1.2等量の3-マレイミドプロピオン酸 N‐スクシンイミジル(N-Succinimidyl 3-Maleimidopropionate,TCI社製、製品番号S0427)とをTHF中で反応させた。得られた化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びGPCにより精製することで、片末端がビオチン化され、もう片末端がマレイミドとなったリンカー(プロピレン単位=8相当)を得た。
(結果考察) 実施例2では、スペーサーの長さを46.2オングストロームにし、スペーサーをプロピレン製としたところ、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「2.6」であり、評価「○」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は、「0.4」で評価「◎」であった。染色性の総合評価は「○」であった。これらの結果から、蛍光体集積ナノ粒子標識剤に含まれるスペーサーがプロピレン由来のものである場合、スペーサーがPEG由来のものに比べて、親水性が低下する分、非特異的吸着(ノイズ)がやや増すが、ほぼ同等の優れた染色性を有することが分かる。
[実施例3]
実施例3では、実施例1でリンカーとして用いた「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが55.5オングストロームである「Maleimide-PEG11-Biotin(サーモサイエンティフィック社、製品番号21911)」を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(結果考察)
実施例3では、スペーサーの長さを55.5オングストロームのPEGリンカーとしたところ、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「6.1」であり、評価「◎」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は、「0.3」で評価は「◎」であった。染色性の総合評価は「◎」であった。これらの結果から、実施例3の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、実施例1のスペーサーを含むものよりもシグナルが強く、総合的に極めて優れた染色性を有することが分かる。
[実施例4]
実施例4では、実施例1で用いたリンカーとして「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが94オングストロームである「Biotin PEG Maleimide, Biotin-PEG-Mal, MW 1000(Nanocs, Cat.No. PG2-BNML-1k)」を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(結果考察)
実施例4では、スペーサーの長さが104.7オングストロームのPEGリンカーとしたところ、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「8.2」であり、評価「◎」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は、「0.4」で評価は「◎」であった。また、染色性の総合評価は「◎」であった。これらの結果から、実施例4の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、実施例1のスペーサーを含むものよりもシグナルが強く、総合的に極めて優れた染色性を有することが分かる。
[実施例5]
実施例5では、実施例1でリンカーとして用いた「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが55.2オングストロームのプロピレン製のリンカーを以下のように合成して、これを用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(リンカーの作製)
実施例2のリンカーの作製において、1,6-ジアミノヘキサン(1,6−Hexanediamine,プロピレン単位=2)の代わりに、1,12-ジアミノドデカン(1,12−Dodecanediamine,プロピレン単位=4)を使用することで、片末端がビオチン化され、もう片末端がマレイミドとなったリンカー(プロピレン単位=10相当)を得た。
(結果考察)
実施例5では、スペーサーの長さが55.2オングストロームのプロピレンリンカーとしたところ、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「6.4」であり、評価「◎」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は、「0.9」で評価は「○」であった。染色性の総合評価は「○」であった。これらの結果から、実施例5の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、実施例1のスペーサーを含むものよりもシグナルが強く、総合的に極めて優れた染色性を有することが分かる。
[実施例6]
実施例6では、実施例1で用いたリンカーとして「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが202.0オングストロームである「Biotin PEG Maleimide, Biotin-PEG-Mal, MW 2000(Nanocs, Cat.No.PG2-BNML-2k)」を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(結果考察)
実施例6では、スペーサーの長さが202.0オングストロームのPEGリンカーとしたところ、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「8.0」であり、評価「◎」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は、「0.8」で評価は「○」であった。染色性の総合評価は「○」であった。これらの結果から、実施例6の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、実施例1のスペーサーを含むものよりもシグナルが強く、総合的に極めて優れた染色性を有することが分かる。
[実施例7]
実施例7では、実施例1で用いたリンカーとして「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが494.0オングストロームである「Biotin PEG Maleimide, Biotin-PEG-Mal, MW 5000(Nanocs,Cat.No.PG2-BNML-5k)」を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(結果考察)
実施例7では、スペーサーの長さが494.0オングストロームのPEGリンカーとしたところ、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「8.2」であり、評価「◎」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は、「0.8」で評価は「○」であった。染色性の総合評価は「○」であった。これらの結果から、実施例7の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、実施例1のスペーサーを含むものよりもシグナルが強く、総合的に極めて優れた染色性を有することが分かる。
[実施例8]
実施例8では、実施例1で用いたリンカーとして「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが980.7オングストロームである「Biotin PEG Maleimide, Biotin-PEG-Mal, MW 10000(Nanocs,Cat.No.PG2-BNML-10k)」を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(結果考察)
実施例8では、スペーサーの長さが980.7オングストロームのPEGリンカーとしたところ、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「6.2」であり、評価「◎」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は、「0.6」で評価は「○」であった。染色性の総合評価は「○」であった。これらの結果から、実施例8の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、実施例1のスペーサーを含むものよりもシグナルが強く、総合的に極めて優れた染色性を有することが分かる。
[比較例1]
比較例1では、実施例1でリンカーとして用いた「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが16.1オングストロームである「Maleimide-PEG2-Biotin(サーモサイエンティフィック社,製品番号21901)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(結果考察)
比較例1では、スペーサーの長さを16.1オングストロームのPEGリンカーとしたが、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「1.6」で、評価「×」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「0.2」で、評価は「◎」であった。染色性の総合評価は「×」であった。これらの結果から、比較例1の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、スペーサーの長さが本発明の規定より短いため、本発明(実施例)の蛍光体集積ナノ粒子標識剤と比較するとシグナルが弱く、染色性が相対的に劣っていることが分かる。
[比較例2]
比較例2では、実施例1でリンカーとして用いた「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが13.3オングストロームのプロピレン製のリンカーを以下のように合成して、これを用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(リンカーの作製)
実施例2のリンカーの作製において、両末端がアミンの炭化水素化合物として1,6-ジアミノヘキサン(1,6-Hexanediamine)を使用することで片末端がビオチン化され、もう片末端がマレイミドとなったリンカー(プロピレン単位=2相当)を得た。
(結果考察)
比較例2では、スペーサーの長さを13.3オングストロームのプロピレンリンカーとしたところ、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「1.4」で、評価は「×」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「0.8」で、評価は「○」であった。また、染色性の総合評価は「×」であった。これらの結果から、比較例2の蛍光体集積ナノ粒子標識剤も、本発明(実施例)の蛍光体集積ナノ粒子標識剤と比較するとシグナルが弱く、またスペーサーがプロピレン由来である分、スペーサーがPEG由来の比較例1よりも多少ノイズが多くなり、総合的には比較例1と同様、染色性が相対的に劣っていることが分かる。
[比較例3]
比較例3では、実施例1でリンカーとして用いた「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが22オングストロームである「Biotin-PEG3-maleimide(ChemPep社、cat No.271608)」を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
比較例3では、スペーサーの長さを20.5オングストロームのPEGリンカーとしたが、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「1.8」で、評価は「×」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「0.4」で、評価は「◎」であった。また、染色性の総合評価は「×」であった。これらの結果から、比較例3の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、比較例1の蛍光体集積ナノ粒子標識剤と同様、本発明(実施例)の蛍光体集積ナノ粒子標識剤よりも染色性が相対的に劣っていることが分かる。
[比較例4]
比較例4では、実施例1でリンカーとして用いた「Biotin-PEG6-NH-Mal」の代わりに、スペーサーの長さが1496.5オングストロームのPEG製のリンカーを以下のように合成して、これを用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
(リンカーの作製)
実施例2のリンカーの作製において、等量の「Poly(ethylene glycol) 2-aminoethyl ether biotin 5300 (シク゛マアルト゛リッチ), 製品番号757772」と、「Maleimide PEG NHS, MW 10000(Nanocs,Cat.No.PG2-MLNS-10k)」をテトラヒドロフラン(THF)中で30分間混合後、GPC(JAIGEL-2.5H、日本分析工業)により精製することで片末端がビオチン化され、もう片末端がマレイミドとなったリンカー(ポリオキシエチレン単位=340相当)を得た。
(結果考察)
比較例4では、スペーサーの長さを420オングストロームのPEGリンカーとしたが、HER2(3+)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「6.8」で、評価は「◎」であった。また、HER2(−)の組織切片の1細胞当たりの平均輝点数は「1.6」で、評価は「×」であった。また、染色性の総合評価は「×」であった。これらの結果から、比較例4の蛍光体集積ナノ粒子標識剤は、スペーサーの長さが本発明の規定より長いため、本発明(実施例)の蛍光体集積ナノ粒子標識剤と比較すると非特異的な吸着が多く、染色性が相対的に劣っていることが分かる。
ユニット数は、単位がPEGの場合は、オキシエチレン単位を示し、単位がプロピレンの場合は、一般的な分岐構造のプロピレン単位ではなく、連続する3つの炭素の単位を意味する。
[実施例9]
実施例1〜8の各蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径を50μm未満、または200μmを超えるものとした結果、平均粒子径を50μm未満の粒子を使用した場合、汎用蛍光顕微鏡での輝点視認性が低下し、230μmを超えるものとした場合、第1,2結合基物質の結合を介した蛍光体集積ナノ粒子とプローブ生体物質との結合効率が低下した(不図示)。
以上、本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子標識剤、およびこれを用いた蛍光免疫染色法について実施形態および実施例に基づいて詳細に説明してきたが、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない限り、設計変更は許容される。
1 スペーサー
2 生体分子
3 プローブ生体物質
4 スペーサー
5 蛍光体集積ナノ粒子
A 第1結合基物質
B 第2結合基物質
[実施例9]
実施例1〜8の各蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径を50m未満、または200mを超えるものとした結果、平均粒子径を50m未満の粒子を使用した場合、汎用蛍光顕微鏡での輝点視認性が低下し、230mを超えるものとした場合、第1,2結合基物質の結合を介した蛍光体集積ナノ粒子とプローブ生体物質との結合効率が低下した(不図示)。

Claims (9)

  1. 長さが30オングストローム以上1000オングストローム以下の高分子由来のスペーサーを介して第1結合基物質に連結され生体分子と特異的に結合するプローブ生体物質と、
    該第1結合基物質と特異的に結合可能な第2結合基物質を有する蛍光体集積ナノ粒子とからなるセットを含む、蛍光体集積ナノ粒子標識剤。
  2. 前記高分子が親水性の高分子(第1親水性高分子)である、請求項1に記載の蛍光体集積ナノ粒子標識剤。
  3. 前記第1親水性高分子が、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項2に記載の蛍光体集積ナノ粒子標識剤。
  4. 前記ポリエチレングリコール(PEG)のオキシエチレン単位(n)の数が、6〜230である、請求項2または3に記載の蛍光体集積ナノ粒子標識剤。
  5. 前記第1結合基物質がストレプトアビジンおよびビオチンのいずれか一方であり、
    前記第2結合基物質がビオチンまたはストレプトアビジンのいずれか他方である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光体集積ナノ粒子標識剤。
  6. 前記蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径が、50nm以上230nm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光体集積ナノ粒子標識剤。
  7. 前記第1親水性高分子のスペーサーの長さが、50オングストローム以上120オングストローム以下である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の蛍光体集積ナノ粒子標識剤。
  8. 前記生体分子が抗原または1次抗体であり、前記プローブ生体物質が1次抗体または2次抗体であり、蛍光免疫染色に用いられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の蛍光体集積ナノ粒子標識剤。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の蛍光体集積ナノ粒子標識剤を用いて行う、蛍光免疫染色法。
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