JP6127972B2 - 組織染色方法 - Google Patents

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Description

本発明は、組織染色方法に関する。
HE(ヘマトキシリン−エオジン)染色は、ヘマトキシリンとエオジンとを色素として用い、組織学の分野において組織薄片をみるのに多用されている。このうち、ヘマトキシリンは青紫色の色素であり、細胞核、骨組織、軟骨組織の一部、漿液成分など好塩基性の組織を染色する性質がある。一方、エオジンは赤〜ピンクの色素であり、細胞質、 軟部組織の結合組織、赤血球、線維素、内分泌顆粒など好酸性の組織を染色する性質がある。ヘマトキシリンおよびエオジンが有するこのような性質により、HE染色は組織サンプルにおける形態情報を得るために広く用いられている。
一方、免疫組織化学(Immunohistochemistry; IHC)は、抗体を用いて組織サンプル中の抗原を検出する組織学(組織化学)的手法として広く知られている。この免疫組織化学は、本来不可視である抗原抗体反応を可視化するために発色操作を行う観点から、「免疫染色」などと呼ばれることがある(以下、本明細書においては、この免疫組織化学に対して「免疫組織化学染色」という語を用いることもある。)。抗原抗体反応の所在を可視化するという特徴により、免疫組織化学は、組織サンプル中の生体物質の所在を検出する目的で、医学及び生命化学の分野において広く用いられている。
また、免疫組織化学に関連する組織学(組織化学)的手法として、レクチン染色も知られている。このレクチン染色は、レクチンが特定の糖鎖と非免疫的且つ特異的に結合する性質を有することを利用して、レクチンを用いて組織サンプル中の糖鎖を検出する手法であり、糖鎖関連の分野で広く用いられている。
これらHE染色、免疫組織化学およびレクチン染色は、いずれも、細胞サンプルにおけるがん細胞の所在を検出する方法として用いられている。例えば、細胞サンプルにおけるがん細胞の所在を確認する場合、従来、病理医は、細胞サンプルに含まれるがん細胞の有無を判断する上で、まず組織サンプルから複数の組織切片(以下、「切片」と呼ぶ場合がある。)を作成し、形態情報を得るために第一切片でHE染色を行ってがん細胞の有無を判断し、第二切片で酵素反応による色素沈着切片を作成して標的分子の有無を判断していた。ここで、免疫組織化学の代わりにレクチン染色がHE染色とともに用いられる場合もあるが、この場合でも同様の手順が用いられてきた。また、がん以外の病気について、細胞サンプル中における病巣の存在をHE染色および免疫組織化学(またはレクチン染色)により検出する場合にも、同様の手順が一般に用いられてきた。しかしながら、二枚の切片で同一の部位を観察するには非常な手間と熟練を有し、病理診断における診断のばらつきの要因ともなっている。こうした状況から蛍光色素や半導体ナノ粒子(量子ドット)等の蛍光体を抗体に結合し標的分子の有無を判断する方法も為されてきたが、このような蛍光体からの蛍光量が少ないという問題点がある。そのため、切片自体が発する自家蛍光をきちんと分離除去しないと、標的分子の所在を蛍光体からの蛍光に基づいて判断することができず、また、形態情報は依然として別切片でのHE染色により取得する必要があった。
本発明は、同一切片において、組織の形態に関する情報と、抗原分子等の目的とする生体物質に関する情報とを、同一視野で観察することのできる組織染色方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、本発明の目的を達成すべく鋭意検討の結果、一つの組織切片に対して免疫組織化学染色など生体物質間の特異的結合反応を用いた組織化学的な染色とHE(ヘマトキシリン−エオジン)染色とをともに行うことにより、組織切片における標的分子の有無を取得でき、同時に得られる組織の形態情報を通じてその標的分子の位置情報をも得ることができることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、下記[1]〜[]に示される組織染色方法を提供する。
[1](A)HE(ヘマトキシリン−エオジン)染色と、
(B)検出対象とする生体物質と、該検出対象とする生体物質と特異的に結合するプローブ生体物質との結合反応を利用して、組織中の該検出対象とする生体物質を可視的に検出する組織化学手法として定義される組織化学染色と
を、同一の組織切片について直列的に行う組織染色方法であって、
前記組織化学染色(B)を行い、その後、前記HE染色(A)を行い、更にその後観察工程を行うことを含み、
前記組織化学染色(B)に用いる標識体が、発光波長が580nm以上である蛍光体であり、
前記蛍光体が、複数の蛍光物質を集積してなる蛍光集積体であり、
当該観察工程は、前記組織化学染色(B)および前記HE染色(A)がなされた組織切片に励起光を照射することにより、組織の蛍光画像またはエオジンの蛍光画像に基づく細胞または組織の形態情報を取得し、かつ前記標識体による蛍光画像に基づく細胞または組織内の前記検出対象とする生体物質の分布についての情報を取得する工程である
組織染色方法。
[2]前記細胞または組織の形態情報が、組織の自家蛍光またはエオジンの自家蛍光に基づき取得される前記[1]に記載の組織染色方法。
[3]前記組織化学染色(B)を行った後、前記HE染色(A)を行う前に固定処理を行う前記[1]または[2]に記載の組織染色方法。
]前記蛍光体の励起波長が350nm以上400nm以下もしくは560nm以上630nm以下である前記[1]〜[]のいずれかに記載の組織染色方法。
]前記組織化学染色(B)が免疫組織化学染色である前記[1]〜[]のいずれかに記載の組織染色方法。
]前記組織化学染色(B)がレクチン染色である前記[1]〜[]のいずれかに記載の組織染色方法。
本発明では、一つの組織切片に対して免疫組織化学染色など生体物質間の特異的結合反応を用いた組織化学的な染色とHE(ヘマトキシリン−エオジン)染色とをともに行うことにより、同一切片、同一蛍光視野で、細胞等の形態画像とともに抗原分子等検出対象とする生体物質の分布を反映した組織染色画像を観察できるため、病理医の診断精度の向上、利便性向上を図ることができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、本発明とその構成要素、及び発明を実施するための最良の形態について詳細な説明をする。
〔構成材料〕
標識体
本発明において標識体は、後述する組織化学染色(B)を組織切片に行う際に、当該組織切片上に存在する検出対象とする生体物質を可視化するために用いられる。本発明で用いられる標識体としては、抗原抗体反応等、検出対象とする生体物質と、該検出対象とする生体物質と特異的に結合するプローブ生体物質との結合反応(以下、「生体物質間の特異的結合反応」とも呼ぶ。)を妨げず、且つ測定における定量性を妨げない限り特に限定されるものではないが、生体物質間の特異的結合反応を直接可視化、特に目視可能な形で直接可視化することが可能である点から、生体物質間の特異的結合反応により生成する複合体の存在を、発色によって検出することが可能となるような標識体が好ましく用いられる。ここで、「目視可能な形で直接可視化」とは、現像等の二次的な操作なしに、生体物質間の特異的結合反応の所在を直接観察することができる状態にすることをいう。このような標識体として、それ自体が発色性の物質が挙げられる。
《それ自体が発色性の物質》
本発明で用いられる標識体として「それ自体が発色性の物質」は、生体物質間の特異的結合反応により生成する複合体の存否を容易に識別することが可能となる物質であれば特に限定はされない。ただ、発色の識別が容易であるという点から、「それ自体が発色性の物質」として、蛍光体などの発光物質が好適に用いられる。
ここで、本明細書にいう発光物質は、外部からのエネルギーを受けて励起し、励起状態から基底状態に到る過程において光を発光する物質、すなわち、ルミネッセンスにより光を発光する物質をいう。このときの「外部からのエネルギー」としては、電磁波、熱、摩擦、化学反応などによるエネルギーが挙げられる。また、発光の態様としては、励起一重項からの失活に伴う発光、および、三重項からの失活に伴う発光が挙げられる。
ただ、本発明では、このような発光物質として、蛍光体が好適に用いられる。ここで、本明細書で「蛍光体」は、外部からのX線、紫外線または可視光線の照射を受けて励起し、励起状態から基底状態に到る過程において光を発光する物質一般を指す。したがって、本発明にいう「蛍光体」は、励起状態から基底状態に戻るときの遷移態様のいかんを問うものでなく、励起一重項からの失活に伴う発光である狭義の蛍光を発する物質であってもよいし、三重項からの失活に伴う発光である燐光を発する物質であってもよい。また、本発明にいう「蛍光体」は、励起光を遮断してからの発光寿命によって限定されるものでもない。したがって、硫化亜鉛やアルミン酸ストロンチウムなど蓄光物質として知られている物質であってもよい。
本発明で用いられる蛍光体として、有機蛍光色素、半導体ナノ粒子などの蛍光物質、および、複数の蛍光物質を集積してなる蛍光集積体等の蛍光標識剤が挙げられる。
有機蛍光色素としては、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(インビトロジェン社製)系色素分子、カスケード系色素分子、クマリン系色素分子、NBD系色素分子、ピレン系色素分子、Texas Red系色素分子、シアニン系色素分子、ペリレン系色素分子、オキサジン系色素分子等を挙げることができる。
具体的には、5−カルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−フルオレセイン、5,6−ジカルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−2',4,4',5',7,7'−ヘキサクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−2',4,7,7'−テトラクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−4',5'−ジクロロ−2',7'−ジメトキシフルオレセイン、フルオレセイン−5−イソシアネート(FITC)、ナフトフルオレセイン、5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X−ローダミン、Alexa Fluor 350,Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPY FL,BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、メトキシクマリン、NBD、ピレン、Texas Red、Cy5、Cy5.5、Cy7等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
これらの有機蛍光色素は、1種単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
半導体ナノ粒子としては、II−VI族化合物、III−V族化合物、I−III−VI族化合物、又はIV族元素を成分として含有する半導体ナノ粒子(それぞれ、「II−VI族半導体ナノ粒子」、「III−V族半導体ナノ粒子」、「I−III−VI族半導体ナノ粒子」、「IV族半導体ナノ粒子」ともいう。)のいずれかを用いることができる。本発明で、蛍光物質として半導体ナノ粒子を用いると、検出対象とする生体物質の所在を輝点の形で観察することができるので好ましい。
具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、CuInS、CuInSe、AgInSe、AgInS、CuInGaS、Si、Geが挙げられるが、これらに限定されない。
これらの半導体ナノ粒子は、1種単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明では、上記半導体ナノ粒子をコアとし、その上にシェルを設けたコア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子を用いることもできる。以下本明細書中コア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子の表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。例えばCdSe/ZnS、CdS/ZnS、InP/ZnS、InGaP/ZnS、Si/SiO2、Si/ZnS、Ge/GeO2、Ge/ZnSなどを用いることができるが、これらに限定されない。
半導体ナノ粒子は必要に応じて、有機ポリマーなどにより表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)などがあげられる。
本発明で用いうるその他の蛍光物質として希土類蛍光体などが挙げられる。希土類蛍光体としては、例えば、酸化ネオジム、塩化ネオジム、硝酸ネオジム、酸化イッテルビウム、塩化イッテルビウム、硝酸イッテルビウム、酸化ランタン、塩化ランタン、硝酸ランタン、酸化イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、塩化プラジオセム、塩化エルビウム、オルトリン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等を用いることができる。
また、本発明では、上記蛍光物質のほか、複数の蛍光物質を集積してなる蛍光集積体を蛍光体として用いることもできる。複数の蛍光物質を集積してなる蛍光集積体を蛍光体として用いて組織切片の染色を行うと、汎用顕微鏡を用いたときでも検出対象とする生体物質の所在を輝点の形で観察することができるので好ましい。ここで、「複数の蛍光物質を集積してなる蛍光集積体」は、上述した有機蛍光色素、半導体ナノ粒子などの蛍光物質が表面または内部に存在する態様で集積した集積体を指す。したがって、「複数の蛍光物質を集積してなる蛍光集積体」は、多数の蛍光物質を固定化可能なコアと、このコア上に固定化された複数の蛍光物質からなるシェルとを有するコア/シェル構造の蛍光集積体であっても良いし、あるいは、複数の蛍光物質が基材に内包された構造を有する蛍光体内包ナノ粒子などの形態を有する蛍光集積体であってもよい。ここで、「ナノ粒子」という用語は、大きさがナノメートルのオーダー(1〜数百ナノメートル)である粒子の意味で用いられる。
蛍光集積体を構成する素材は特に限定されるものではなく、ポリスチレン、ポリ乳酸、シリカなどを挙げることができる。
蛍光集積体は、公知の方法により作製することができる。例えば、蛍光有機色素を集積したシリカナノ粒子は、ラングミュア8巻2921ページ(1992)に記載されているFITC内包シリカ粒子の合成を参考に合成することができる。FITCの代わりに所望の蛍光有機色素を用いることで種々の蛍光有機色素集積シリカナノ粒子が合成できる。
量子ドットを集積したシリカナノ粒子は、ニュー・ジャーナル・オブ・ケミストリー33巻561ページ(2009)に記載されているCdTe集積シリカナノ粒子の合成を参考に合成することができる。
蛍光有機色素を集積したポリスチレンナノ粒子は、米国特許第4326008号(1982)に記載されている重合性官能基をもつ有機色素を用いた共重合法や、米国特許第5326692号(1992)に記載されているポリスチレンナノ粒子への蛍光有機色素の含浸法を用いて作製することができる。
量子ドットを集積したポリマーナノ粒子は、ネイチャー・バイオテクノロジー19巻631ページ(2001)に記載されているポリスチレンナノ粒子への量子ドットの含浸法を用いて作製することができる。
蛍光集積体の平均粒径は特に限定されないが、通常は30〜800nm程度であり、好ましくは50〜200nmである。また、粒径のばらつきを示す変動係数も特に限定されないが、通常は20%以下であり、好ましくは15%以下、より好ましくは5〜15%である。ここでいう平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し十分な数(たとえば1000個)の蛍光物質ナノ粒子について断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径を粒径として求められる算術平均であり、変動係数は、上記のようにして測定した粒径分布から算出した値(100×粒径の標準偏差/平均粒径)である。すなわち、本明細書において「平均粒径」は体積平均粒径を指す。
以上に示したこれらの標識体の中でも、抗原抗体反応等の生体物質間の特異的結合反応により生成する複合体の量に応じた発色がより確実に得られる点から、蛍光体が好ましく用いられる。そして、蛍光体の中でも、高い発光強度を得やすく、且つ優れた定量性を得ることができる点から、複数の蛍光物質を集積してなる蛍光集積体が特に好ましく用いられる。
検出対象とする生体物質
本発明の組織染色方法による検出対象となる生体物質(以下、「検出対象とする生体物質」)は特に限定されないが、抗原抗体反応等の生体物質間の特異的結合反応を通じて上記標識体による可視化が行われることから、後述するプローブ生体物質が特異的に結合する標的生体物質としても機能するものである。本発明の組織染色方法において、後述する組織化学染色(B)として免疫組織化学染色が好適に用いられることから、「検出対象とする生体物質」の典型例として、抗体に対する抗原として機能する生体物質が挙げられる。
本発明において、「抗原」という用語は、生体物質、特に、分子または分子断片を指すものであり、このような「分子」または「分子断片」としては、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等、またはヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子)、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体などが挙げられ、具体的には、腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなどであってもよく、特に限定されない。例えば、抗がん剤として用いられる抗体医薬を抗体として用いる場合、がんの増殖制御因子,転移制御因子,増殖制御因子受容体および転移制御因子受容体等が好適な標的抗原として挙げられる。
このような増殖制御因子,転移制御因子,増殖制御因子受容体および転移制御因子受容体のうち、がんの増殖制御因子およびその受容体としては、例えば表皮増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)、該EGF受容体(EGFR)、血小板由来増殖因子(PDGF:Platelet-Derived Growth Factor)、該PDGF受容体(PDGFR)、インスリン様増殖因子(IGF:Insulin-like Growth Factor)、該IGF受容体(IGFR)、線維芽細胞増殖因子(FGF:Fibroblast Growth Factor)、該FGF受容体(FGFR)、血管内皮増殖因子(VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor)、該VEGF受容体(VEGFR)、肝細胞増殖因子(HGF:Hepatocyte Growth Factor)、該HGF受容体(HGFR)、神経栄養因子(NT:Neurotrophin)、形質転換増殖因子β(TGFβ:Transforming Growth Factor-β)ファミリー、HER2等の、細胞増殖因子およびその受容体、並びに、サイクリン(cyclin)、サイクリン依存性キナーゼ(CDK:Cyclin-Dependent Kinase)、サイクリンA、サイクリンB、サイクリンD、サイクリンE、CDK1、CDK2、CDK4、CDK6、p16INK、p15、p21、p27、RB(Retinoblastoma)等の細胞周期を調節する因子を挙げることができる。また、がんの転移制御因子およびその受容体としては、例えばマトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)、マトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)、PAR1(Protease Activated Receptor 1)、CXCR4(Chemokine [C−X−C motif] receptor 4)、CCR7(Chemokine [C−C motif] receptor 7)等を挙げることができ、これらの中でもHER2を標的とするトラスツズマブが広く用いられているため、HER2を好適に例示することができる。
また、がんに関連する抗原以外に、TNF−α(Tumor Necrosis Factor α),IL−6(Interleukin-6)受容体などの炎症性サイトカイン、RSV F蛋白質等のウィルス関連分子なども、本発明の染色法による検出対象となりうる。
一方、本発明の組織染色方法において、後述する組織化学染色(B)として免疫組織化学染色以外の手法を用いる場合には、「検出対象とする生体物質」は、必ずしも抗原として機能するものである必要はない。例えば、後述する組織化学染色(B)としてレクチン染色を用いる場合、「検出対象とする生体物質」として、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)またはこれらの修飾分子、複合体などが挙げられ、腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなどであってもよい。
プローブ生体物質
本発明の組織染色方法においては、組織切片に対して後述する組織化学染色(B)を行う際に、当該組織切片上に存在する「検出対象とする生体物質」に上記標識体を導入する媒体として、当該「検出対象とする生体物質」と特異的に結合するプローブ生体物質(本明細書において、「プローブ生体物質」とも呼ぶ。)を使用する。本発明の組織染色方法で用いられるこのような「プローブ生体物質」として、抗体やレクチンなどが挙げられる。
ここで、本発明において、「抗体」という用語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、Fab、Fab'2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などの各種抗体を含む。
例えば、本発明において、抗体医薬の構成成分である抗体を、組織切片の免疫組織化学染色に用いることができる。ここで、抗体医薬として、関節リウマチなどの自己免疫疾患、がんなどの悪性腫瘍、ウィルス感染症等の治療に一般的に用いられている抗体医薬を用いることができる。
臨床に用いられている代表的な抗体医薬を、下記表1に示す。ここで、表1には、参考のために、自己免疫疾患や感染症の治療に用いられる抗体医薬も併せて記載している。
Figure 0006127972
表1において、例えば、「ハーセプチン」が抗体医薬であり、「トラスツズマブ」がその構成成分として含まれる抗体(すなわち、抗体医薬構成抗体)という関係にある。
また、上記表1に示した抗体医薬のうち、ゲムツズマブは、抗腫瘍活性物質であるカリケアマイシン(Calicheamicin)と結合してなるゲムツズマブ・オゾガマイシン(Gemutuzumab-Ozogamicin)の形で用いられている。
上記表1に示した抗体医薬の中で、トラスツズマブを構成成分として含む抗体医薬(すなわち、ハーセプチン(登録商標))が好適に用いられる。
また、本発明の染色法の適用対象とするがんとして、大腸がん、直腸がん、腎がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、卵巣がん、子宮内膜がん、食道がん、血液がん、肝がん、膵がん、皮膚がん、肺がん、乳がん等を挙げることができる。
また、本発明において、「レクチン」という用語は、糖鎖と特異的に結合する蛋白の総称として用いられる。レクチンの例として、細菌を含むすべての生物界で見出されるリシンB鎖関連の「R型レクチン」、真核生物全般に存在し糖タンパク質のフォールディングに関与する「カルネキシン・カルレティキュリン」、多細胞動物に広く存在し、「セレクチン」、「コレクチン」等代表的なレクチンを多く含むカルシウム要求性の「C型レクチン」、動物界に広く分布しガラクトースに特異性を示す「ガレクチン」、植物豆科で大きな家系を形成する「豆科レクチン」、およびこれと構造類似性をもち動物細胞内輸送に関わる「L型レクチン」、リソソーム酵素の細胞内輸送に関わるマンノース6-リン酸結合性の「P型レクチン」、グリコサミノグリカンをはじめとする酸性糖鎖に結合する「アネキシン」、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し「シグレック」を含む「I型レクチン」などが挙げられる。
代表的なレクチンを、下記表2に示す。
Figure 0006127972
標識化プローブ生体物質
本発明において、標識化プローブ生体物質は、上述のプローブ生体物質(例えば、抗体や、レクチンなど)と上述の標識体とを含むものであり、上述のプローブ生体物質と上述の標識体とが、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着及び化学吸着等の適当な結合様式により結合した構造を有する。ただ、結合力の強さの観点から、アミド結合、エステル結合、イミド結合、マレイミド基へのチオール付加を利用した結合などの共有結合、あるいは、ビオチン−アビジン結合またはビオチン−ストレプトアビジン結合を介して結合した構造を有することが好ましい。
このような標識化プローブ生体物質は、上述のプローブ生体物質に対して、上述した標識体を常法に従って結合させることにより得ることができる。具体的な標識化方法としては、上述のプローブ生体物質に対して特異的な親和性を有する抗体(二次抗体)を介する方法、ビオチン−アビジン法、チオール基−マレイミド基のカップリング反応法、既存の化学リンカーを用いる方法、架橋剤(EDC等)を用いた架橋反応法、イオン結合法等を挙げることができるが、上記プローブ生体物質がヒト化抗体、又はヒト抗体である場合、これらの中でも抗体やアビジンとのチオール基−マレイミド基のカップリング反応法を好適に例示することができる。
具体的な形成手順は、例えば以下の通りである。
まず、第1の結合基をプローブ生体物質に導入し、当該第1の結合基と結合可能な第2の結合基を標識体に導入する。このとき、第1の結合基とプローブ生体物質との間、および、第2の結合基と標識体との間には、それぞれ適当な鎖長のリンカーが介在していてもよい。ここで、前記第1および第2の結合基は、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、マレイミド基などの化学官能基であってもよいし、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンのような分子であってもよい。また、前記第2の結合基として二次抗体を用いる場合には、前記第1の結合基は、プローブ生体物質を構成する、「検出対象とする生体物質」を認識する部位以外の部位であってもよい。
ここで、第1の結合基を導入したプローブ生体物質、すなわち、第1の結合基とプローブ生体物質とを含む結合基含有プローブ生体物質の好適な例として、ビオチン化抗体、ビオチン化レクチン等のビオチン化プローブ生体物質が挙げられる。一方、第2の結合基を導入した標識体、すなわち、第2の結合基と上記標識体とを含む結合基含有標識体の好適な例として、アビジン結合標識体またはストレプトアビジン結合標識体が挙げられる。ただ、第1の結合基を導入したプローブ生体物質としてアビジン化プローブ生体物質やストレプトアビジン化プローブ生体物質を用いるとともに、第2の結合基を導入した標識体としてビオチン結合標識体を用いることを妨げるものではない。また、第1の結合基を導入したプローブ生体物質における第1の結合基、および、第2の結合基を導入した標識体における第2の結合基として、ビオチンやアビジン(またはストレプトアビジン)の代わりに化学官能基を採用したものを用いることを妨げるものでもない。
その後、第1の結合基を導入したプローブ生体物質と、第2の結合基を導入した標識体とを反応させると、標識化プローブ生体物質が得られる。
この標識化プローブ生体物質は、第1の結合基を導入したプローブ生体物質と、第2の結合基を導入した標識体とを反応させることによって、染色対象とする組織が存在しない状況下で予め調製されたものであってもよいし、あるいは、染色工程の中で、第1の結合基を導入した未標識のプローブ生体物質を組織と反応させてから、当該組織に組み込まれたプローブ生体物質に、第2の結合基を導入した標識体を反応されることにより形成されるものであってもよい。
〔組織染色方法〕
本発明に係る組織染色方法は、
(A)HE(ヘマトキシリン−エオジン)染色と、
(B)検出対象とする生体物質と、該検出対象とする生体物質と特異的に結合するプローブ生体物質との結合反応を利用して、組織中の該検出対象とする生体物質を可視的に検出する組織化学手法として定義される組織化学染色(本明細書において、「組織化学染色(B)」と呼ぶ。)と
を、同一の組織切片について直列的に行うことを特徴とする。
すなわち、本発明に係る組織染色方法は、
同一の組織切片についてHE染色を行う工程と、
検出対象とする生体物質と、該検出対象とする生体物質と特異的に結合するプローブ生体物質との結合反応を利用して、組織中の該検出対象とする生体物質を可視的に検出する組織化学手法として定義される組織化学染色を行う工程と
が直列的に含まれている。
ここで、本発明において「組織化学染色(B)」は、検出対象とする生体物質と、該検出対象とする生体物質と特異的に結合するプローブ生体物質(すなわち、プローブ生体物質)との結合反応を利用して、組織中の該検出対象とする生体物質を可視的に検出する組織化学手法である限り特に限定されるものではない。本発明においては、「組織化学染色(B)」として、免疫組織化学染色や、レクチン染色が挙げられる。
本発明において、HE染色(A)と組織化学染色(B)とのうち、いずれを先に行ってもよいが、HE染色に用いるエオジンが水溶性であることから、先に組織化学染色(B)を行い、その後、HE染色を行うと、HE染色の感度も組織化学染色(B)の感度も充分に得られるので好ましい。この場合、本発明に係る組織染色方法は、(1)組織切片に組織化学染色(B)を行う工程(以下、「組織化学染色工程」)と、(3)当該組織切片にHE染色を行う工程(以下、「HE染色工程」)とを含むことになる。
本発明に係る組織染色方法の対象は病理切片組織に限定せず、細胞染色にも適用可能である。
(1)組織化学染色工程
本発明に係る組織染色方法において、組織化学染色工程は、組織切片に組織化学染色(B)を行う工程、すなわち、検出対象とする生体物質を認識する物質に標識体を導入することにより得られる標識化プローブ生体物質を組織切片と反応させ、生体物質間の特異的結合反応を通じて当該組織切片上に存在する検出対象とする生体物質を可視化する工程である。本発明において免疫組織化学染色やレクチン染色等の組織化学染色(B)は、従来公知の手法により行うことができる。
本発明の組織染色方法が適用できる切片の作製法は特に限定されず、公知の方法により作製されたものを用いることができる。
たとえば、病理切片として汎用されているパラフィン包埋切片を組織切片として用いる場合は、次のような手順で組織化学染色(B)を行えばよい。
1)脱パラフィン処理工程
キシレンを入れた容器に、病理切片を浸漬させ、パラフィンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。
ついでエタノールを入れた容器に病理切片を浸漬させ、キシレンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でエタノールを交換してもよい。
水を入れた容器に、病理切片を浸漬させ、エタノール除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中で水を交換してもよい。
2)賦活化処理工程
組織化学染色(B)として免疫組織化学染色を行う場合、公知の方法にならい、目的とする生体物質の賦活化処理を行う。賦活化条件に特に定めはないが、賦活液としては、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mM EDTA溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mトリス塩酸緩衝液などを用いることができる。加熱機器はオートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターバスなどを用いることができる。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。温度は50−130℃、時間は5−30分で行うことができる。
ついでPBSを入れた容器に、賦活処理後の切片を浸漬させ、洗浄を行う。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。
3)標識化プローブ生体物質による染色処理工程
上記標識化プローブ生体物質のPBS分散液を調製し、病理切片に載せて、検出対象とする生体物質と反応させる。例えば、組織化学染色(B)として免疫組織化学染色を行う場合には、標識化抗体のPBS分散液を調製し、病理切片に載せて、検出対象とする生体物質と反応させる。また、組織化学染色(B)としてレクチン染色を行う場合には、標識化レクチンのPBS分散液を調製し、病理切片に載せて、検出対象とする生体物質と反応させる。
ここで、複数の「検出対象とする生体物質」を目的として染色する場合は、各「検出対象とする生体物質」に対応した「プローブ生体物質」および互いに異なる蛍光物質を備えた蛍光体のPBS分散液をそれぞれ調製し、それらを病理切片に載せて、それぞれ目的とする生体物質と反応させればよい。病理切片に載せる際には、それぞれの蛍光体のPBS分散液をあらかじめ混合してもよいし、別々に順次載せてもよい。
温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。反応時間は30分以上24時間以下であることが好ましい。なお、蛍光体による染色を行う前に、BSA含有PBSなど公知のブロッキング剤を滴下することが好ましい。
ついで、PBSを入れた容器に染色後の切片を浸漬させ、未反応の蛍光体を除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。
(2)固定処理工程
本発明の組織染色方法において所要により行われる固定処理工程は、上述した免疫組織化学染色工程により導入された標識化プローブ生体物質を組織切片に固定化する工程である。
本発明の組織染色方法においては、上述した(1)組織化学染色工程の後に後述する(3)HE染色工程を行う場合、組織化学染色工程により得られた染色組織切片を直接HE染色工程に供してもよい。ただ、HE染色後において、標識体として組織切片に導入された蛍光体からの発光強度低下を抑制できる観点から、組織化学染色を行った後、HE染色を行う前に固定処理を行う工程を経ることが好ましい。
本発明で用いられる固定処理溶液として、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、アセトン、エタノール、メタノール等の架橋剤、細胞膜透過物質が挙げられる。
ここで、本発明において、固定処理は、従来公知の手法により行うことができる。固定処理は、具体的には、このような固定処理溶液に、組織化学染色工程により得られた染色組織切片を浸漬することにより行うことができ、例えば、稀パラホルムアルデヒド水溶液中に、組織化学染色工程により得られた染色組織切片を数分から数時間程度浸漬することにより行うことができる。
(3)HE染色工程
本発明の組織染色方法において、HE染色工程は、組織切片における形態情報を得るためにヘマトキシリンとエオジンを用いて組織切片を染色する工程である。本発明においてHE染色(A)は、従来公知の手法により行うことができる。
ヘマトキシリンは青紫色の色素であり、細胞核、骨組織、軟骨組織の一部、漿液成分など(好塩基性の組織等)を染色する。エオジンは赤〜ピンク色の色素であり、細胞質、軟部組織の結合組織、赤血球、線維素、内分泌顆粒など(好酸性の組織等)を染色する。このうちエオジンは自家蛍光を発するので、免疫組織化学染色とともにHE染色を行う本発明では、励起光を照射した際に、組織等が発する自家蛍光とともに細胞質等を染色したエオジンが発する自家蛍光により、細胞または組織の形態に関する情報をより取得しやすくなる。
本発明において、(3)HE染色工程は、上述した(1)組織化学染色工程の前に行ってもよく、(1)組織化学染色工程の後に行ってもよい。ここで、(3)HE染色工程を(1)組織化学染色工程の前に行う場合、「(1)組織化学染色工程」で上述した「1)脱パラフィン処理工程」および「2)賦活化処理工程」をHE染色を行う前に行うことになる。
ただ、エオジンが水溶性の物質であることを考慮すると、(3)HE染色工程は、(1)組織化学染色工程の後に行うことが好ましい。かかる場合、組織化学染色(B)による標識体の導入を充分に行うことができるとともに、HE染色(A)も充分に行うことができるからである。一方、(3)HE染色工程の後に(1)組織化学染色工程を行う場合、HE染色(A)により組織切片に導入されたエオジンが、(1)組織化学染色工程における上述の「3)標識化プローブ生体物質による染色処理工程」の過程で標識化プローブ生体物質のPBS分散液中に溶出することがあり、これによりHE染色(A)の感度が低下するとともに、組織化学染色(B)を充分に行うことができない場合がある。
(1)組織化学染色工程および(3)HE染色工程による一連の染色処理後、カバーガラスを切片に載せて封入する。必要に応じて市販の封入剤を使用してもよい。また、後述する(4)観察工程を行いやすいよう、カバーグラスへの封入に先立ち、染色処理後の組織切片の脱水を行うとともに、この組織切片の透明度を上げるために透徹をさらに行ってもよい。ここで、脱水は、染色処理後の組織切片をエタノール等に浸漬することにより行うことができ、透徹は、脱水した染色処理後の組織切片をキシレン等に浸漬して風乾させることにより行うことができる。
(4)観察工程
本発明においては、上記工程(1)〜(3)の後に、観察工程を行うことができる。
観察工程は、上記工程により染色された組織切片に励起光を照射することにより、組織の自家蛍光またはエオジンの自家蛍光に基づく細胞または組織の形態情報(細胞形態情報)を取得し、かつ前記標識体による蛍光画像に基づく細胞または組織内の前記「検出対象とする生体物質」の分布についての情報(以下、「生体分子分布情報」と呼ぶ。)を取得する工程である。この「生体分子分布情報」は、組織化学染色(B)として免疫組織化学染色を行った場合には細胞または組織内にある特定の抗原分子の分布についての情報として取得されるものであり、また、組織化学染色(B)としてレクチン染色を行った場合には細胞または組織内にある特定の糖鎖、あるいはその修飾分子もしくは複合体の分布についての情報として取得されるものである。
励起光は、組織切片および必要に応じて用いられるエオジンが所望の波長の自家蛍光を発し、かつ標識体を構成する蛍光物質が所望の波長の蛍光を発する、適切な波長を有するものであればよく、励起光の照射手段も特に限定されるものではない。たとえば、蛍光顕微鏡が備えるレーザー光源から、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させるフィルターを用いて、適切な波長および出力の励起光を染色された組織切片に照射すればよい。
細胞形態情報および生体分子分布情報は、同一視野で取得する、すなわち、一枚の染色切片から得られる、組織切片の自家蛍光および標識体が発する蛍光の両方が同一の視野に含まれるようにしつつも、それらを区別して認識し、それぞれに基づいて細胞形態情報および生体分子分布情報を取得することが好適である。もちろん、必要であれば、たとえば組織切片の自家蛍光または標識体が発する蛍光の一方を十分に低減しうる適切なフィルターを用いることにより、ある視野で細胞形態情報のみを取得するようにし、他の視野で生体分子分布情報を取得するようにしてもよい。
観察工程における励起光は、組織切片の自家蛍光、およびHE染色由来の発光との関係で標識体が発する蛍光が識別可能である限り特に限定されないものの、組織切片からの自家蛍光、およびHE染色由来の発光の強度が高くなりすぎない観点から、400nmより大きく560nm未満の範囲以外の範囲、具体的には400nm以下もしくは560〜630nmの範囲にピークを有するものが好ましい。ただ、核酸等短波長の紫外線により分解されやすい生体物質も、検出対象とする生体物質となりうることを考慮すると、350nm以上400nm以下もしくは560〜630nmの範囲にピークを有するものが好ましい。
また、前記標識体として用いる蛍光体を構成する蛍光物質としては当該励起光により580nm以上の範囲、好ましくは580〜690nmの範囲、より好ましくは600〜630nmの範囲にピークを有する蛍光を発するものを用いる(したがってこの領域の発光波長を有する蛍光を測定するようにする)ことが好ましい。
また、細胞形態情報および生体分子分布情報は、迅速な観察が行えるよう(蛍光)顕微鏡の鏡筒から取得するようにしてもよいし、(蛍光)顕微鏡に設置されたカメラが撮影した画像を別途表示手段(モニタ等)に表示し、それを観察することにより取得するようにしてもよい。標識体として用いる蛍光体を構成する蛍光物質によるが、顕微鏡の鏡筒からの目視により十分に生体分子分布情報を取得することができなくても、カメラが撮影した画像から生体分子分布情報を取得することが可能な場合もある。
前記生体分子分布情報を取得することとしては、たとえば、蛍光の輝点数または発光輝度を基に、一細胞あたりの「検出対象とする生体物質」の分子数もしくは「検出対象とする生体物質」の密度(すなわち、単位面積あたりの「検出対象とする生体物質」の分子数)を計測することが挙げられる。標識体として用いた蛍光体を構成する蛍光物質の吸収極大波長および蛍光波長に対応した励起光源および蛍光検出用光学フィルターを選択すればよい。輝点数または発光輝度の計測には、市販の画像解析ソフト(例えば、株式会社ジーオングストローム社製全輝点自動計測ソフトG-Count)を用いることが好適であるが、計測手段は特に限定されるものではない。
[実施例1:標識体の作成]
《ビオチン化トラスツズマブ》
トラスツズマブとして、医薬品の形態でロッシュ社が製造している粉末状のハーセプチン(登録商標)を使用し、これに対して、Biotin Labeling kit-SH(同仁化学)を用いてビオチン化を行うことにより、ビオチン化トラスツズマブを得た。
《ストレプトアビジン修飾HRP》
ストレプトアビジン修飾HRPとして、High Sensitivity Streptavidin-HRP(サーモサイエンティフィック社)を用いた。
《ストレプトアビジン修飾蛍光集積体》
蛍光集積体の合成
(合成例1)有機蛍光色素(テトラメチルローダミン)集積シリカナノ粒子の合成
テトラメチルローダミン(インビトロジェン社製TAMRA−SE)(励起波長550nm、発光波長570nm)6.6mgと3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3−aminopropyltrimetoxysilane、信越シリコーン社製、KBM903)3μLをDMF中で混合、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。
得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mlを48mlのエタノール、0.6mlのTEOS(テトラエトキシシラン)、2mlの水、2mlの28%アンモニア水と3時間混合した。
上記工程で作製した混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を2回ずつ行った。その結果、蛍光集積体として、テトラメチルローダミン集積シリカナノ粒子が10mg得られた。
得られたテトラメチルローダミン集積シリカナノ粒子の1000個についてSEM観察を行ったところ、平均粒径104nm、変動係数は12%であった。
(合成例2)有機蛍光色素(テキサスレッド)集積シリカナノ粒子の合成
有機蛍光色素として、テトラメチルローダミンに代えてテキサスレッド(インビトロジェン社製TXR−SE)(励起波長590nm、発光波長610nm)を用いたことを除き、上記合成例1と同様の方法によりテキサスレッド集積シリカナノ粒子を得た。得られたテキサスレッド集積シリカナノ粒子の1000個についてSEM観察を行ったところ、平均粒径109nm、変動係数は11%であった。
(合成例3)有機蛍光色素(Cy5)集積シリカナノ粒子の合成
有機蛍光色素として、テトラメチルローダミンに代えてCy5を用いたことを除き、上記合成例1と同様の方法によりCy5集積シリカナノ粒子を得た。得られたCy5集積シリカナノ粒子の1000個についてSEM観察を行ったところ、平均粒径98nm、変動係数は13%であった。
(合成例4)有機蛍光色素(FITC)集積シリカナノ粒子の合成
有機蛍光色素として、テトラメチルローダミンに代えてFITCを用いたことを除き、上記合成例1と同様の方法によりFITC集積シリカナノ粒子を得た。得られたFITC集積シリカナノ粒子の1000個についてSEM観察を行ったところ、平均粒径102nm、変動係数は14%であった。
(合成例5)半導体ナノ粒子(Qdot565)集積シリカナノ粒子の合成
CdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot565)10μLにTEOS0.1mg,エタノール0.01mL、濃アンモニア水0.03mLを加え3時間攪拌して加水分解を行った。
上記工程で得られた混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を2回ずつ行った。その結果、蛍光集積体として、Qdot565集積シリカナノ粒子が60mg得られた。
得られたQdot565集積シリカナノ粒子の1000個についてSEM観察を行ったところ、平均粒径108nm、変動係数は14%であった。
(合成例6)半導体ナノ粒子(Qdot625)集積シリカナノ粒子の合成
半導体ナノ粒子として、インビトロジェン社Qdot565に代えてインビトロジェン社Qdot625を用いたことを除き、上記合成例5と同様の方法によりQdot625集積シリカナノ粒子を得た。
得られたQdot625集積シリカナノ粒子の1000個についてSEM観察を行ったところ、平均粒径102nm、変動係数は13%であった。
蛍光集積体へのストレプトアビジンの結合
上記各蛍光集積体へのストレプトアビジンの結合を、それぞれ、以下の手順に従って行うことにより、対応するストレプトアビジン結合蛍光集積体をそれぞれ得た。
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)に蛍光集積体を溶解させて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl−[(N−maleomidopropionamid)−dodecaethyleneglycol]ester)を混合し1時間反応した。この混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗体結合用蛍光集積体を得た。
一方、ストレプトアビジンを1Mジチオスレイトール(DTT)で還元処理若しくはSATA等のチオール基付加処理を行い、ゲルろ過カラムにより過剰の反応試薬を除去することによりシリカ粒子に結合可能な還元化抗体溶液を得た。
上記で得られた抗体結合用蛍光集積体と還元化抗体とを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、ストレプトアビジン結合蛍光集積体を得た。
以上の操作により、テトラメチルローダミン集積シリカナノ粒子、テキサスレッド集積シリカナノ粒子、Cy5集積シリカナノ粒子、FITC集積シリカナノ粒子、Qdot565集積シリカナノ粒子、およびQdot625集積シリカナノ粒子から、ストレプトアビジン結合テトラメチルローダミン集積シリカナノ粒子、ストレプトアビジン結合テキサスレッド集積シリカナノ粒子、ストレプトアビジン結合Cy5集積シリカナノ粒子、ストレプトアビジン結合FITC集積シリカナノ粒子、ストレプトアビジン結合Qdot565集積シリカナノ粒子、およびストレプトアビジン結合Qdot625集積シリカナノ粒子が、それぞれストレプトアビジン結合蛍光集積体として得られた。
[実施例2:固定処理の有無による効果]
免疫組織化学染色およびHE染色を同一の組織切片に施すにあたり、免疫組織化学染色とHE染色との間に行う固定処理の有無による効果を、以下の方法により評価した。
(1)免疫組織化学染色
実施例1で作製したビオチン化トラスツズマブ、およびCy5標識ストレプトアビジン(インビトロジェン社)を用いて、以下の手順によりヒト乳房組織の免疫組織化学染色を行った。染色用の切片として、あらかじめパスビジョンHER-2 DNAプローブキット(アボット)をもちいてFISHスコアを算出したコスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。
組織アレイスライドを脱パラフィン処理後、水に置換洗浄し、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。抗原の賦活化処理後の組織アレイスライドを、PBS緩衝液を用いて洗浄後、1%BSA含有PBS緩衝液を用いて湿潤箱中で1時間ブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈したビオチン化トラスツズマブを組織切片と2時間反応させ、その後洗浄した。さらに、Cy5標識ストレプトアビジンと0.5時間反応させ、その後洗浄を行うことにより、免疫組織化学染色切片が得られた。
(2)固定処理
上記(1)で得られた免疫組織化学染色切片を4%中性パラホルムアルデヒド水系バッファ溶液中に10分間浸漬することにより、固定処理を行った。
(3)HE染色
上記(2)で固定処理した免疫組織化学染色切片に対してHE染色を行い、染色後の切片をエタノールに浸漬することにより脱水し、脱水切片をさらにキシレンに浸漬し風乾させることにより透徹を行ったところ、二重染色切片が得られた。
(4)観察
上記(3)で得られた二重染色切片をスライドガラスで封入し、オリンパス社製BX53を用いて顕微鏡観察を行った。
上記(1)〜(3)を経て得られた二重染色切片(以下、「固定処理有り二重染色サンプル」)の効果を確認するため、対照実験として、上記(2)を行わないことを除いて「固定処理有り二重染色サンプル」と同様の方法により得られた二重染色切片(以下、「固定処理なし二重染色サンプル」)、および、上記(1)のみを行って得られた染色切片(以下、「HE染色なしサンプル」)についても、上記(4)と同様の方法によりそれぞれ観察を行った。
観察比較の結果、固定処理を行うことで、免疫組織化学染色の染色性を維持したままHE染色ができることがわかった(表3)。
Figure 0006127972
[実施例3:蛍光体の発光波長による効果]
免疫組織化学染色およびHE染色を同一の組織切片に施すにあたり、免疫組織化学染色用の標識体として用いられる蛍光体から発光される蛍光の波長特性による効果を、以下の方法により評価した。
免疫組織化学染色用の標識体としてCy5標識ストレプトアビジン、テキサスレッド標識ストレプトアビジン、テトラメチルローダミン(TAMRA)標識ストレプトアビジン、FITC標識ストレプトアビジン、Qdot565標識ストレプトアビジン、Qdot625標識ストレプトアビジンをそれぞれ用いて、実施例2の上記工程(1)〜(3)と同様の手順により、免疫組織化学染色、固定処理、HE染色、脱水、及び透徹を行って二重染色切片を得た。
各二重染色切片について、オリンパス社製BX53を用いて顕微鏡観察を行った。
下記表4に示されるように、免疫組織化学染色用の標識体としてCy5,テキサスレッドおよびQdot625を用いた二重染色切片では、標識体からの蛍光発光が、組織の自家蛍光に埋没することなく観察することができた。
Figure 0006127972
[実施例4:顕微鏡観察における蛍光体の種類による効果]
免疫組織化学染色用の標識体としてCy5標識ストレプトアビジン、テキサスレッド標識ストレプトアビジン、Qdot625標識ストレプトアビジン、テキサスレッド集積・シリカナノ粒子標識ストレプトアビジン、Cy5集積・シリカナノ粒子標識ストレプトアビジンおよびQdot625集積・シリカナノ粒子標識ストレプトアビジンをそれぞれ用いて、実施例2の上記工程(1)〜(3)と同様の手順により、免疫組織化学染色、固定処理、HE染色、脱水、及び透徹を行って二重染色切片を得た。
各二重染色切片について、顕微鏡観察を行った。観察は汎用蛍光顕微鏡としてオリンパス社製BX53、共焦点レーザー顕微鏡としてFV1000-Dを用いて行った。
下記表5に示されるように、観察の結果蛍光体として蛍光体集積シリカナノ粒子を用いると汎用顕微鏡を用いて輝点が観察できることがわかった。また、Cy5集積・シリカナノ粒子は目視観察できない一方で、テキサスレッド集積・シリカナノ粒子およびQdot625集積・シリカナノ粒子は目視でもその発光が確認できることがわかった。
一方、蛍光体集積シリカナノ粒子の形態とされていないQdot625による免疫組織化学染色を行った二重染色切片の場合、共焦点レーザー顕微鏡では輝点の観察を行うことができた。しかし、輝点が細かいために、汎用蛍光顕微鏡では、輝点同士がつながって形成される面状の発光領域として観察され、個々の輝点を分離して認識することができなかった。
Figure 0006127972
[実施例5:輝点計測]
実施例4で作成したテキサスレッド集積・シリカナノ粒子染色切片を用いて画像を取得、がん細胞領域を特定し、イメージJを用いた2値処理、ノイズ除去処理後輝点計測を行い、10細胞当たりの輝点数を計測した。輝点の計測はスライド上の20のスポットについて行った。
表6にテキサスレッド集積・シリカナノ粒子を用いた染色輝点スコアとFISHスコアの比較を示す。表7にテキサスレッド集積・シリカナノ粒子を用いた染色輝点スコアとFISHスコアの相関比較を示す。今回算出したスコアはFISHスコアと高い相関を示し診断法としても有用であることが示唆された。
Figure 0006127972
Figure 0006127972
[実施例6:レクチン染色での固定処理の有無による効果]
レクチン染色およびHE染色を同一の組織切片に施すにあたり、レクチン染色とHE染色との間に行う固定処理の有無による効果を、以下の方法により評価した。
(1)レクチン染色
J-OIL MILLS社製ビオチン化ConA(カタログ番号300410)、および実施例1で合成したストレプトアビジン結合テキサスレッド集積シリカナノ粒子を用いて、以下の手順によりヒト乳房組織のレクチン染色を行った。
組織アレイスライドを脱パラフィン処理後、水に置換洗浄し、その後、0.05%Tween20、1%BSA含有PBS緩衝液を用いて湿潤箱中で1時間ブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈したビオチン化ConAを組織切片と1時間反応させ、その後洗浄した。さらに、ストレプトアビジン結合テキサスレッド集積シリカナノ粒子と0.5時間反応させ、その後洗浄を行うことにより、免疫組織化学染色切片が得られた。
(2)固定処理
上記(1)で得られた免疫組織化学染色切片を4%中性パラホルムアルデヒド水系バッファ溶液中に10分間浸漬することにより、固定処理を行った。
(3)HE染色
上記(2)で固定処理した免疫組織化学染色切片に対してHE染色を行い、染色後の切片をエタノールに浸漬することにより脱水し、脱水切片をさらにキシレンに浸漬し風乾させることにより透徹を行ったところ、二重染色切片が得られた。
(4)観察
上記(3)で得られた二重染色切片をスライドガラスで封入し、オリンパス社製BX53を用いて顕微鏡観察を行った。
上記(1)〜(3)を経て得られた二重染色切片(以下、「固定処理有り二重染色サンプル」)の効果を確認するため、対照実験として、上記(2)を行わないことを除いて「固定処理有り二重染色サンプル」と同様の方法により得られた二重染色切片(以下、「固定処理なし二重染色サンプル」)、および、上記(1)のみを行って得られた染色切片(以下、「HE染色なしサンプル」)についても、上記(4)と同様の方法によりそれぞれ観察を行った。
観察比較の結果、固定処理を行うことで、免疫組織化学染色の染色性を維持したままHE染色ができることがわかった(表8)。
Figure 0006127972

Claims (6)

  1. (A)HE(ヘマトキシリン−エオジン)染色と、
    (B)検出対象とする生体物質と、該検出対象とする生体物質と特異的に結合するプローブ生体物質との結合反応を利用して、組織中の該検出対象とする生体物質を可視的に検出する組織化学手法として定義される組織化学染色と
    を、同一の組織切片について直列的に行う組織染色方法であって、
    前記組織化学染色(B)を行い、その後、前記HE染色(A)を行い、更にその後観察工程を行うことを含み、
    前記組織化学染色(B)に用いる標識体が、発光波長が580nm以上である蛍光体であり、
    前記蛍光体が、複数の蛍光物質を集積してなる蛍光集積体であり、
    当該観察工程は、前記組織化学染色(B)および前記HE染色(A)がなされた組織切片に励起光を照射することにより、組織の蛍光画像またはエオジンの蛍光画像に基づく細胞または組織の形態情報を取得し、かつ前記標識体による蛍光画像に基づく細胞または組織内の前記検出対象とする生体物質の分布についての情報を取得する工程である
    組織染色方法。
  2. 前記細胞または組織の形態情報が、組織の自家蛍光またはエオジンの自家蛍光に基づき取得される請求項1に記載の組織染色方法。
  3. 前記組織化学染色(B)を行った後、前記HE染色(A)を行う前に固定処理を行う請求項1または2に記載の組織染色方法。
  4. 前記蛍光体の励起波長が350nm以上400nm以下もしくは560nm以上630nm以下である請求項1〜のいずれか1つに記載の組織染色方法。
  5. 前記組織化学染色(B)が免疫組織化学染色である請求項1〜のいずれか1つに記載の組織染色方法。
  6. 前記組織化学染色(B)がレクチン染色である請求項1〜のいずれか1つに記載の組織染色方法。
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