JP6743703B2 - 免疫染色法、およびこれに用いられる免疫染色試薬キット - Google Patents

免疫染色法、およびこれに用いられる免疫染色試薬キット Download PDF

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Description

本発明は、免疫染色法、およびこれに用いられる免疫染色試薬キットに関する。
従来、医学的診断の1つとして病理診断が行なわれている。病理医は人体から採取した組織片に対して行った生体検査の結果を示すデータから病気を診断し、治療や手術の要不要を臨床医に伝える。患者の状態と病理診断によって、内科系医師は薬物治療方針、外科系の医師は手術を行うか否かを決定する。
前記診断のためのデータを提供するために、臓器摘出や針生検によって得た組織検体を厚さ数ミクロン程度に薄切して組織切片(組織標本)を作成し、組織切片に対して所定の染色処理を行った後、様々な所見を得るために光学顕微鏡や蛍光顕微鏡を用いて観察することが広く行われている。多くの場合、組織切片は、採取した組織を固定するため脱水し、パラフィンブロック化した後、数μmの厚さに薄切りし、パラフィンを取り除いて作製される。ここで、組織切片は光を殆ど吸収および散乱せず無色透明に近いため、上記観察に先立って、組織切片の細胞形態を観察するための形態観察染色(ヘマトキシリンおよびエオジンの2つの色素を用いるヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色))が標準的に行われる。他の形態観察染色としては、例えば細胞診に用いられるパパニコロウ染色(Pap染色)等が挙げられる。
さらに、被験者が対象疾患に罹患しているか否かを判断するためのデータを提供するために、被験者の組織切片等について免疫染色が行われている。この免疫染色では、例えば、前記罹患の有無によって発現量が増減する生体内の分子(抗原)に蛍光標識した抗体を特異的に結合させ、蛍光標識した抗体由来の蛍光シグナルの量から疾患に関連する抗原の量を定量することが行われる。これにより、被験者が対象の疾患に罹患しているか否かを診断するためのデータが提供される。
従来から知られている免疫染色法としては蛍光標識(蛍光色素や蛍光体ナノ粒子、蛍光色素や蛍光ナノ粒子を樹脂等で集積した粒子)を用いた方法があり、蛍光体集積ナノ粒子を共有結合させた1次抗体を組織切片上の抗原に結合させることで前記抗原を蛍光染色する方法(1次抗体法)、組織切片上の抗原に1次抗体を結合させた状態で、蛍光体集積ナノ粒子と共有結合を介して連結された2次抗体を前記1次抗体に結合させて抗原を蛍光染色する方法(2次抗体法)、ビオチン(またはアビジン)を付加した蛍光集積体ナノ粒子と、アビジン(またはビオチン)を付加した2次抗体とをそれぞれ調製し、組織切片上の抗原に対して1次抗体を結合させた後、該1次抗体に対して前記2次抗体を結合させ、さらに、該2次抗体に対してストレプトアビジン−ビオチンの特異的な結合を介して蛍光体集積ナノ粒子を結合させて前記抗原を蛍光標識する方法(ビオチン−アビジン法)が知られている(例えば特許文献1参照)。
国際公開2012/029752号
しかしながら、前述したビオチン−アビジン法の場合、生体内(組織切片内)に天然のビオチン(内因性のビオチン)が存在しているため、上記蛍光体集積ナノ粒子に連結されたストレプトアビジンが内因性のビオチンと意図しない結合反応(非特異的な吸着)をしてしまい、組織切片上の抗原以外の部分も蛍光標識される結果、シグナルノイズが増加してしまう問題がある。
一方、上述した1次抗体法または2次抗体法に関連する方法として、以下の免疫染色法(ハプテン−抗ハプテン抗体法)が考えられる。このハプテン−抗ハプテン抗体法は、まず、1次抗体または2次抗体に連結させるためのハプテン(低分子化合物、たとえばFITC)に対するモノクロナール抗体(抗ハプテン抗体、たとえば抗FITC抗体)を作製する。次に、この抗ハプテン抗体に対して蛍光体集積ナノ粒子を共有結合等により連結させる。そして、組織切片上の抗原に結合した1次抗体に連結されたハプテン、または該1次抗体と結合した2次抗体に連結されたハプテンに対して、前記抗ハプテン抗体を特異的に結合させて、前記抗原を蛍光標識する方法である。
ハプテン−抗ハプテン抗体法の場合、使用するハプテンとして生体内に存在しないハプテンを使用すれば、上記ビオチン−アビジン法のように生体内の分子と反応することがなく非特異的な結合が起きることはない。したがって、上述したシグナルノイズが増えるという問題は生じない。しかし、ハプテン−抗ハプテンの結合はビオチン−アビジン間の結合と比べて結合能(結合力)が劣るため、蛍光体集積ナノ粒子をハプテン−抗ハプテンの結合を介して1次抗体や2次抗体に結合する場合に結合効率が低かったり、結合後に結合が外れて蛍光体集積ナノ粒子が脱落したりするため、蛍光シグナルの強度の低下に繋がるという問題がある。このため、上述した非特異的な吸着をすることがなく、且つ、蛍光体集積ナノ粒子を高い結合能でもって1次抗体や2次抗体等と結合させる免疫染色法が望ましい。
また、ビオチン−アビジン法やハプテン−抗ハプテン抗体法の場合、これらの方法で用いる標識試薬(ビオチンや抗ハプテン抗体を付加した蛍光集積体ナノ粒子の分散液)を長期保存すると、保存中にストレプトアビジンや抗ハプテン抗体の劣化が起こり、標識試薬の染色性能が低下してしまう問題があり、高い保存性が望ましい。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、免疫染色において蛍光シグナルのノイズ原因となる蛍光色素ナノ粒子の非特異的吸着を抑制することができるとともに、抗体と蛍光集積ナノ粒子との結合力を高めて蛍光シグナルの低下を抑制することができる免疫染色法の提供、および該免疫染色法に使用可能であり、長期保存性に優れる免疫染色試薬キットの提供をすることを目的とする。
本発明者らは、(1)アジドとアルキンの間で起こるヒュスゲン環化付加反応は、反応の選択性が非常に高く、アジドやアルキンが他の化合物と反応して結合をつくることがほぼないこと、さらに、(2)銅触媒の存在、あるいは、アルキンの構造を工夫する(例;8員環構造のアルキンを用いる)ことにより、水中、中性、室温という温和な条件であってもヒュスゲン環化反応が速やかに起こること、さらには、(3)ヒュスゲン環化付加反応を用いて、モノマー等の分子同士を共有結合させることができること、(4)アジドとアルキンのヒュスゲン環化反応は、カルボン酸活性エステルとアミンの結合反応や、マレイミドとチオールとの結合反応と同じように共有結合を形成可能であること、に着目し、抗原と蛍光体集積ナノ粒子との結合にアジド−アルキン間のヒュスゲン環化付加反応を利用することで上記問題が解決できることを見出して本発明に至った。
すなわち、上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した免疫染色法は、組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色法であって、
前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体、または該抗体を介して間接的に固定される別の抗体と蛍光体集積ナノ粒子との、いずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、
前記抗原に前記抗体を固定させ、
前記アジ基と前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応でもって、前記抗体と蛍光体集積ナノ粒子との両分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により前記抗原を前記蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色法である。
また、上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した免疫染色試薬キットは、組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識するため免疫染色試薬キットであって、
蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬と、前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体、または、該抗体を介して間接的に固定される別の抗体を含む抗体試薬とを備えており、
前記蛍光体集積ナノ粒子および前記抗体のいずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、
前記アジ基と前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応により、前記抗体と前記蛍光体集積ナノ粒子との分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により当該両分子が結合することで前記抗原を蛍光標識するようにして用いられる、免疫染色試薬キットである。
本発明によれば、免疫染色において蛍光シグナルのノイズ原因となる蛍光色素ナノ粒子の非特異的吸着を抑制することができるとともに、抗体と蛍光集積ナノ粒子との結合力を高めて蛍光シグナルの低下を抑制することができる免疫染色法が提供される。さらに、該免疫染色法に用いられるキットであって、長期保存性に優れる免疫染色試薬キットが提供される。
図1は、本発明に係る免疫染色法を説明した図である。組織切片上に呈示されている抗原に対して1次抗体が結合し、該1次抗体に2次抗体が結合し、該2次抗体と連結されたアルキン化合物に由来する炭素間三重結合部分に対して、蛍光体集積ナノ粒子に連結されたアジドに由来するアジ基が特異的にヒュスゲン環化付加反応を引き起こすことで抗原が蛍光標識される。図1に示すように、組織切片には内因性のビオチンや他の抗原が存在するが、蛍光体集積ナノ粒子のアジ基部分は、内因性のビオチンや他の抗原とは反応しないため、この反応に起因する蛍光体集積ナノ粒子の非特異的な吸着が生じることがなく、蛍光シグナルのノイズの発生が抑制される。 図2は、図1に示すアジドとアルキン化合物とを置き換えたものであり、本発明に係る免疫染色法の別の例を示した図である。蛍光体集積ナノ粒子の炭素間三重結合部分は、内因性のビオチンや他の抗原とは反応しないため、この反応に起因する蛍光体集積ナノ粒子の非特異的な吸着が生じることがなく、蛍光シグナルのノイズの発生が抑制される。 図3は、従来技術にかかる免疫染色法(ハプテン−抗ハプテン抗体法)を説明した図である。図3に示すように、組織切片上に呈示されている抗原に対して1次抗体が結合し、該1次抗体に2次抗体(ハプテンと連結したもの)が結合し、該2次抗体に対して、蛍光体集積ナノ粒子が付加された抗ハプテン抗体が特異的に結合することで抗原が蛍光標識される。しかしながら、ハプテン−抗ハプテンの結合は、ビオチン‐アビジン間の結合よりも弱く、脱結合が起こりやすい。その結果、蛍光体集積ナノ粒子が非特異的な吸着により意図しない部位に結合し、蛍光シグナルのノイズ原因となる。 図4は、従来技術の免疫染色法(ビオチン−アビジン法)を説明した図である。ビオチン‐アビジン法では、図4に示すように、組織切片上に呈示されている抗原に対して1次抗体が結合し、該1次抗体に2次抗体が結合し、2次抗体と連結されたビオチンに対して、蛍光体集積ナノ粒子に連結されたアビジンが特異的に反応することで抗原が蛍光標識される。しかしながら、組織切片に存在する内因性のビオチンと蛍光体集積ナノ粒子に付加されているストレプトアビジンの部分とが反応してしまい、蛍光体集積ナノ粒子が非特異的な吸着をして意図しない部位に結合し、蛍光シグナルのノイズ原因となる。
以下、本発明に係る免疫染色法、およびこれに用いられる免疫染色試薬キットについて、図1〜図4を参照しながら説明する。
本発明に係る免疫染色法は、組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色法であって、前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体または該抗体を介して間接的に固定される別の抗体と、蛍光体集積ナノ粒子との、いずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、前記抗原に前記抗体を固定させ、前記アジ基と、前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応でもって、前記抗体と蛍光体集積ナノ粒子との両分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により前記抗原を前記蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する。
以下、先ず、上記蛍光体集積ナノ粒子、抗体、抗原およびリンカーについて説明する。
{蛍光体集積ナノ粒子}
蛍光体集積ナノ粒子は、蛍光体を集積したものである。このような蛍光体集積ナノ粒子を用いることで、蛍光体自体と比較して、1粒子当たりの発する蛍光の量、すなわち所定の生体分子を標記する輝点の輝度を高めることができる。
{蛍光体}
本明細書において「蛍光体」とは、外部からのX線、紫外線または可視光線の照射を受けて励起し、励起状態から基底状態に到る過程において光を発光する物質一般を指す。したがって、本発明にいう「蛍光体」は、励起状態から基底状態に戻るときの遷移態様の如何を問うものでなく、励起一重項からの失活に伴う発光である狭義の蛍光を発する物質であってもよいし、三重項からの失活に伴う発光である燐光を発する物質であってもよい。
また、本発明にいう「蛍光体」は、励起光を遮断してからの発光寿命によって限定されるものでもない。したがって、硫化亜鉛やアルミン酸ストロンチウム等の蓄光物質として知られている物質であってもよい。このような蛍光体は、有機蛍光体(蛍光色素)および無機蛍光体に大別することができる。
(有機蛍光体)
蛍光体としての使用可能な有機蛍光体の例としては、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素分子、クマリン系色素分子、NBD(登録商標)系色素分子、ピレン系色素分子、Texas Red(登録商標)系色素分子、シアニン系色素分子、ペリレン系色素分子、オキサジン系色素分子等、有機蛍光色素として知られている物質を挙げることができる。
具体的には、5−カルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−フルオレセイン、5,6−ジカルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−2',4,4',5',7,7'−ヘキサクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−2',4,7,7'−テトラクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−4',5'−ジクロロ−2',7'−ジメトキシフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X−ローダミン、ローダミン110、ローダミン101、スルホローダミン101、スルホローダミンG,スルホローダミンB、Pyrromethene 546、Pyrromethene 556、Pyrromethene 567、Pyrromethene 580、Pyrromethene 597、Pyrromethene 605、Pyrromethene 650及びAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、Oregon Green 488、Oregon Green 514、BODIPY FL、BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、HiLyte Fluor 488、HiLyte Fluor 555、HiLyte Fluor 594、HiLyte Fluor 647、HiLyte Fluor 680、HiLyte Fluor 750(AnaSpec社製)、DyLight 350、DyLight 405、DyLight 488、DyLight 549、DyLight 594、DyLight 633、DyLight 649、DyLight 680、DyLight 750、DyLight 800(Thermo Fisher Scientific社製)、メトキシクマリン、エオジン、NBD、ピレン、Cy5、Cy5.5、Cy7等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
(無機蛍光体)
蛍光体として使用可能な無機蛍光体の例としては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。量子ドットは、市販されているものでもよい。具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられるが、これらに限定されない。
上記量子ドットをコアとし、その上にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する量子ドットの表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。例えば、CdSe/ZnS、CdS/ZnS、InP/ZnS、InGaP/ZnS、Si/SiO2、Si/ZnS、Ge/GeO2、Ge/ZnS等を用いることができるが、これらに限定されない。
量子ドットは必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等が挙げられる。
{蛍光体集積ナノ粒子の製造方法}
蛍光体集積ナノ粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。一般的には、樹脂またはシリカを母体として蛍光体をまとめ上げる(当該母体の内部または表面に蛍光体を固定化する)製造方法を用いることができる。
{有機蛍光体の場合}
有機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である蛍光色素を樹脂からなる母体の内部または表面に固定した、直径がナノメートルオーダーの樹脂粒子を形成させる方法を挙げることができる。この蛍光体集積ナノ粒子の調製方法は特に限定されるものではないが、例えば、蛍光体集積ナノ粒子の母体をなす樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を合成するための(コ)モノマーを(共)重合させながら、蛍光体を添加し、当該(共)重合体の内部または表面に当該蛍光体を取り込ませる方法を用いることができる。
上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフラン、または、これに類する樹脂を好適に用いることができる。上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリキシレン、ポリ乳酸、グリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリアミド、フェノール樹脂、多糖類またはこれに類する樹脂を好適に用いることができる。熱硬化性樹脂、特にメラミン樹脂は、キシレン等の有機溶媒を用いる脱水、透徹、封入などの処理によっても、色素樹脂に内包させた色素の溶出を抑制することができる点で好ましい。
例えば、有機の蛍光色素(蛍光体)を内包したポリスチレンナノ粒子は、米国特許4326008(1982)に記載されている重合性官能基をもつ有機色素を用いた共重合法や、米国特許5326692(1992)に記載されているポリスチレンナノ粒子への蛍光有機色素の含浸法を用いて作製することができ、蛍光体集積ナノ粒子として用いることができる。
一方で、有機蛍光体をシリカからなる母体の内部または表面に固定化したシリカナノ粒子を製造することもできる。そのような製造方法としては、ラングミュア 8巻 2921ページ(1992)に記載されているFITC内包シリカ粒子の合成方法を参考にすることができる。FITCの代わりに所望の蛍光色素を用いることで種々の蛍光色素を内包したシリカナノ粒子を合成することができ、蛍光体集積ナノ粒子として用いることができる。
{無機蛍光体の場合}
無機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である量子ドットをシリカからなる母体の内部または表面に固定した、シリカナノ粒子を形成させる方法が挙げられる。この製造方法は、ニュー・ジャーナル・オブ・ケミストリー 33巻 561ページ(2009)に記載されているCdTe内包シリカナノ粒子の合成を参考にすることができる。
また、上記とは異なる蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、シリカビーズをシランカップリング剤で処理して末端をアミノ化し、カルボキシ基末端を有する蛍光体としての半導体微粒子をシリカビーズの表面にアミド結合により結合することで集積し、蛍光体集積ナノ粒子とする方法も挙げられる。
さらに別の蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、逆ミセル法と、ガラスの前駆体として分子の末端に半導体ナノ粒子への吸着性が良い有機官能基を有する有機アルコキシシランとアルコキシドの混合物を用いたゾル−ゲル法とを組み合わせることにより、半導体ナノ粒子を内部に分散固定したガラス状の粒子を形成し、蛍光体集積ナノ粒子とする例が挙げられる。
さらに別の蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、1-エチル‐3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)の存在化で、アミノ基末端の半導体ナノ粒子と、カルボキシ基末端の半導体ナノ粒子を混合し、半導体ナノ粒子間をアミド結合で介して結合することで半導体ナノ粒子を集積し、蛍光体集積ナノ粒子を製造する例が挙げられる。
さらに、無機蛍光体を樹脂からなる母体の内部または表面に固定化して蛍光体集積ナノ粒子を製造することもできる。たとえば、量子ドットを内包したポリマーナノ粒子は、ネイチャー・バイオテクノロジー19巻631ページ(2001)に記載されているポリスチレンナノ粒子への量子ドットの含浸法を用いて作製することができる。
{蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径}
蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径は、蛍光シグナルの強度の観点から、150nm以上〜800nm以下が好ましく、150nm以上〜500nm以下がより好ましい。
蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径は、公知の測定方法により調べることができる。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により蛍光体集積ナノ粒子の粒子観察を行い、そこから粒子径分布の数平均粒子径として求める方法、動的光散乱法により半導体ナノ粒子の粒子径分布を測定し、その数平均粒子径として求める方法等が挙げられる。この他にも、例えば、ガス吸着法、光散乱法、X線小角散乱法(SAXS)、あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して平均粒子径を計測する方法により測定できる。TEMを用いる場合、粒子径分布が広い場合には、視野内に入った粒子が全粒子を代表しているか否かに注意を払う必要がある。吸着法は、N2吸着等によりBET表面積を評価するものである。
{表面修飾}
上記蛍光体集積ナノ粒子の表面は任意に親水性高分子で修飾されていてもよい。該親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸などが挙げられる。
{抗体}
本発明で用いられる抗体は、用途に応じて選択される、例えば疾病(悪性腫瘍等)に関連する抗原(例;HER2等)に対する抗体(1次抗体)、または該1次抗体と抗原抗体反応により結合する2次抗体〜n次抗体を意味する(以下「所定の抗体」と称することもある。)。これら抗体のいずれかに対して、後述するようにアジドまたはアルキン化合物が結合されており、アジ基または炭素間三重結合の部分を有している。ここで、「抗体」という用語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、例えば、Fab、Fab'2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などを含む。
{抗原}
上記抗原としては、例えば、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)であるが、該タンパク質またはアミノ酸と、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子との複合体なども含まれる。具体的には、例えば上記病理診断の対象となる疾病に関連する抗原(腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなど)であり、特に限定されない。抗原として、例えば、がんの増殖制御因子,転移制御因子,増殖制御因子受容体および転移制御因子受容体等のがんに関連する抗原の他に、TNF−α(Tumor Necrosis Factor α),IL−6(Interleukin−6)受容体などの炎症性サイトカイン、RSV F蛋白質等のウィルス関連分子なども「抗原」に含まれる。
この他にも、例えば、がん関連遺伝子由来のタンパク質である、HER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、METが挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであって各種癌関連遺伝子由来の蛋白質として知られているものとして、以下のものが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであってチロシンキナーゼ関連遺伝子由来の蛋白質としては、ALK、FLT3、AXL、FLT4(VEGFR3、DDR1、FMS(CSF1R)、DDR2、EGFR(ERBB1)、HER4(ERBB4)、EML4−ALK、IGF1R、EPHA1、INSR、EPHA2、IRR(INSRR)、EPHA3、KIT、EPHA4、LTK、EPHA5、MER(MERTK)、EPHA6、MET、EPHA7、MUSK、EPHA8、NPM1−ALK、EPHB1、PDGFRα(PDGFRA)、EPHB2、PDGFRβ(PDGFRB)EPHB3、RET、EPHB4、RON(MST1R)、FGFR1、ROS(ROS1)、FGFR2、TIE2(TEK)、FGFR3、TRKA(NTRK1)、FGFR4、TRKB(NTRK2)、FLT1(VEGFR1)、TRKC(NTRK3)が挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって乳がん関連の遺伝子由来の蛋白質としては、ATM、BRCA1、BRCA2、BRCA3、CCND1、E−Cadherin、ERBB2、ETV6、FGFR1、HRAS、KRAS、NRAS、NTRK3、p53、PTENが挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであってカルチノイド腫瘍に関連する遺伝子由来の蛋白質としては、BCL2、BRD4、CCND1、CDKN1A、CDKN2A、CTNNB1、HES1、MAP2、MEN1、NF1、NOTCH1、NUT、RAF、SDHD、VEGFAが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって大腸がん関連遺伝子由来の蛋白質として、APC、MSH6、AXIN2、MYH、BMPR1A、p53、DCC、PMS2、KRAS2 (or Ki−ras)、PTEN、MLH1、SMAD4、MSH2、STK11、MSH6が挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであって肺がん関連の遺伝子由来の蛋白質としては、ALK、PTEN、CCND1、RASSF1A、CDKN2A、RB1、EGFR、RET、EML4、ROS1、KRAS2、TP53、MYCが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって肝臓がん関連の遺伝子由来の蛋白質としては、Axin1、MALAT1、b−catenin、p16 INK4A、c−ERBB−2、p53、CTNNB1、RB1、Cyclin D1、SMAD2、EGFR、SMAD4、IGFR2、TCF1、KRASが挙げられる。上記抗原となりうるものであって腎臓がん関連遺伝子由来の蛋白質として、Alpha、PRCC、ASPSCR1、PSF、CLTC、TFE3、p54nrb/NONO、TFEBが挙げられる。上記抗原となりうるものであって甲状腺がん関連遺伝子由来の蛋白質としては、AKAP10、NTRK1、AKAP9、RET、BRAF、TFG、ELE1、TPM3、H4/D10S170、TPRが挙げられる。上記抗原となりうるものであって卵巣がん関連遺伝子由来の蛋白質として、AKT2、MDM2、BCL2、MYC、BRCA1、NCOA4、CDKN2A、p53、ERBB2、PIK3CA、GATA4、RB、HRAS、RET、KRAS、RNASET2が挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであって前立腺がん関連遺伝子由来の蛋白質として、AR、KLK3、BRCA2、MYC、CDKN1B、NKX3.1、EZH2、p53、GSTP1、PTENが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって骨腫瘍関連遺伝子由来の蛋白質としては、CDH11、COL12A1、CNBP、OMD、COL1A1、THRAP3、COL4A5、USP6が挙げられる。
{リンカー}
本発明で使用されるリンカーは、蛍光体集積ナノ粒子と所定の抗体とを連結するための分子である。所定の抗体(1次抗体〜n次抗体のいずれか)と蛍光体集積ナノ粒子とはリンカーにより結合されていることが望ましい。リンカー部分により抗体と蛍光体集積ナノ粒子との間にクリアランスが形成され、不溶性の化合物(DAB等)等による蛍光体集積ナノ粒子の蛍光シグナルの低下を抑制することができるからである。また、抗体と蛍光体集積ナノ粒子との間のクリアランスが少ないと、抗原または該抗原に結合した1次抗体に固定される2〜n次抗体の反応基と、蛍光体集積ナノ粒子の粒子表面の反応基とが十分に接近できず、反応効率が低下するからである。
本発明に使用できるリンカーとして、上記親水性高分子(例;PEG等)の一端部にアルキン化合物またはアジドが結合されており、他端部に官能基(NHS基、チオール基(−SH)等)を有するリンカーを例示することができる。リンカーがアミノ基やマレイミド基等の官能基を有することで、リンカーの官能基と、蛍光体集積ナノ粒子または所定の抗体の表面に導入したNHS基やSH基等の官能基との反応を介して、リンカーの一端部にあるアジ基や炭素間三重結合部分を蛍光体集積ナノ粒子や抗体へ導入することができ、ヒュスゲン環化付加反応に利用することができるからである。このようなリンカーは、サーモサイエンティフィック社やNANOCOS社等から購入することができる。
上記リンカーとしては、生体分子と非特異的な吸着を起こしにくい観点から、親水性高分子製のリンカーが好ましく、特にポリエチレングリコール(PEG)製のリンカーが好ましい。PEG製のリンカーを用いた場合、PEGリンカーの先端に前記アジドまたはアルキン化合物が結合されているものが好ましい。
リンカーの長さは、上述したように形態観察用の染色試薬(例;DAB)等に起因する不溶性の副生物によって目的の抗原を染色した際に得られる蛍光のシグナル強度の低減を抑制する観点から、以下のように設定することが好ましい。
PEG製のリンカーを用いる場合では、抗体と蛍光体集積ナノ粒子の両分子の連結に直接関与しているリンカーの部分のうち、少なくとも蛍光体集積ナノ粒子からアジド−アルキン結合までの間に存在するオキシエチレン単位の数(ユニット数)が、8以上であることが好ましく、8〜70であることがより好ましい。その他の親水性高分子製のリンカーの場合、該リンカーの長さは上記PEG製リンカー(オキシエチレン単位8〜70のもの)に相当する長さであることが好ましい。
{アジ基}
本発明で用いる所定の抗体および蛍光体集積ナノ粒子のいずれか一方(炭素間三重結合を有さない方)は、炭素間三重結合部分と付加環化反応を起こすアジ基(-N3)を有する。
{アジド}
抗体(1次〜n次抗体のいずれか)または蛍光体集積ナノ粒子にアジ基を導入するための手法は特に限定されるものではないが、たとえば、アジ基とともに、抗体または蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する官能基と結合可能な他の官能基を有する化合物(アジド)を用いて、そのようなアジドの官能基と抗体または蛍光体集積ナノ粒子の官能基とを反応させる手法が好ましい。
(アジドの種類)
好ましいアジドとしては、分子の一端にアジ基を有し、他端に抗体または蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する官能基(例;−NH3、−SH基)と反応して共有結合を形成可能な他の官能基(例;NHS基、マレイミド基等)を有するアジドが挙げられる。このような「アジド」のアジ基と官能基との間には、前述した親水性高分子に由来する部分が含まれていてもよい。
このようなアジドとしては、アジ基を有するNHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)エステル、アジ基を有する他の活性化エステル(スルホ-NHSエステル(sulfo−NHS−ester)、sulfotetrafluorophenyl(STP)エステル等)を例示することができる。これらエステルの具体例としては、「Azidobutyric acid NHS ester」(製品番号Cat.♯33720、ルミプローブ社製)(下記式(1)参照)、「Sulfo-SANPAH (sulfosuccinimidyl-6-{4´-azido-2´-nitrophenylamino}hexanoate)」(製品番号22589,サーモサイエンティフィック社製)(下記式(2)参照)等が挙げられる。
Figure 0006743703
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〈リンカー由来部分を有するアジド〉
上記以外の本発明に使用可能な他のアジドとして、上記アジドと同様にチオール基(SH基)やマレイミド基等の官能基を有し、さらに親水性高分子のリンカー(例;PEG等)由来部分を有するアジドを挙げることができる(下記式(3)および(4)参照)。ここで、DAB染色等により副生される不溶性物質の蛍光シグナルへの悪影響を避けるために、アジド分子中の親水性高分子のリンカーに由来する部分の長さは、前述したとおり、ユニット数(オキシエチレン単位で)8以上の長さであることが好ましく、8以上70以下であることがより好ましい。
〈NHSエステル〉
リンカー由来部分を有するアジドの好適な具体例(NHSエステル)としては、「Azide polyethylene glycol NHS」(製品番号:PG2-AZNS-400, PG2-AZNS-600, PG2-AZNS-1k, PG2-AZNS-2k, PG2-AZNS-3k, PG2-AZNS-5k、NANOCS社製)、「Azido-PEG8-NHS ester」(製品番号:CLK-L032-5、jenabioscience社製)(下記式(3)でn=7の場合)、「NHS−PEG12−Azide」(サーモサイエンティフィック社製、製品コード:11338251)(下記式(3)でn=11の場合)が挙げられる。
Figure 0006743703
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〈マレイミドエステル〉
上記以外のリンカー由来部分を有するアジドの好適な具体例(マレイミドエステル)としては、「Azide-PEG-Maleimide」(製品番号:PG2-AZML-400, 600, 1k, 2k, 3k, 5k、NANOCS社製)が挙げられる。ここで、これら「PG2-AZML-400」〜「PG2-AZML-5K」は、それぞれ、上記「PG2-AZNS-400」〜「PG2-AZNS-5K」のNHS基をマレイミド基に置換したものであるので、オキシエチレン単位や分子長は対応する製品(表1参照)とほぼ同じである。また、下記式においてm=8以上〜70以下であることが好ましい。
Figure 0006743703
(抗体とアジドとの結合方法)
抗体とアジドとの結合は、アジド由来のアジ基(−N3)および抗体の抗原との免疫反応性が損なわれないように抗体とアジドとを共有結合することができれば特に限定されないが、例えば、抗体のアミノ基と、NHS基を有するアジド化合物を反応させる事で行なうことができる。例えば、0.05M ホウ酸ナトリウム緩衝液(sodium borate buffer)中において、抗体1モルに対してNHS基を有するアジド化合物を5〜100モル加えることにより行なうことができる。
同様に、抗体とアジドの結合は、抗体のチオール基と、マレイミドを有するアジド化合物を反応させて行なうこともできる。例えば、あらかじめ抗体を還元処理またはチオール化試薬(2-イミノチオラン(2-iminothiolane)(2-IT)、スクシンイミジルアセチルチオプロピオン酸塩(SATP,N-succinimidyl-S-acetylthiopropionate(サーモサイエンス社製)、スクシンイミド2-ピリジルジチオプロピオン酸塩(succinimido 2-pyridyldithiopropionate)(SPDP))等を用いてチオール化した後、0.05M ホウ酸ナトリウム緩衝液(sodium borate buffer)中において、抗体1モルに対してマレイミドを有するアジド化合物を5〜100モル加えることにより行なうことができる。
なお、マレイミド基またはNHS基を有するアジド化合物としては、前述したものを使用することができる。
ここで、NHSエステルと所定の抗体のアミノ基との結合反応は反応液のpHに強く依存するため、上記結合反応のpH値は6〜8に調整することが好ましく、8.3〜8.5に調整することがより好ましい。上記ホウ酸ナトリウム緩衝液を用いる例では、pH調整はホウ酸ナトリウムまたは水酸化カリウムで行うことができる。
上記結合反応の条件としては、特に制限ないが、例えば、室温で少なくとも1時間、上記結合反応をさせるか、一晩氷上で上記結合反応をさせることで行うことができる。
結合反応により得られた抗体とアジドとが結合したものは、レジン等を含む抗体精製用のスピンカラムで未反応物を除去して精製することができる。
また、アジドと抗体が結合したことの確認は、例えば、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等で確認することができる。
(蛍光体集積ナノ粒子とアジドとの結合方法)
蛍光体集積ナノ粒子に対してアジドを結合する方法は、蛍光体集積ナノ粒子に上記アジドを結合させることができれば特に限定されないが、好適な方法として、(I)アジド(主として市販されているアジド)が有する官能基(例;NHS基、マレイミド基)と反応して共有結合を形成することができる官能基(例;アミノ基、SH基)を蛍光体集積ナノ粒子の表面に導入する工程、(II)上記アジドの官能基と蛍光体集積ナノ粒子の官能基とを反応させて、蛍光体集積ナノ粒子にアジドを結合させる(つまりアジ基を導入する)工程、を有する方法が例示される。
工程(I)で、官能基(アミノ基,SH基等)を蛍光体集積ナノ粒子の表面に導入する方法として、シランカップリング剤等のカップリング剤を使用して各官能基を蛍光体集積ナノ粒子(粒子表面にOH基を有するもの)に導入することができる。例えば、アミノプロピルエチルシリケート、またはトリス(2‐アミノエチル)アミン等により蛍光体集積ナノ粒子の表面にアミノ基を導入することができる。
カップリング剤と上記蛍光体集積ナノ粒子の表面との反応は、カップリング剤の存在下、一般的なカップリング剤の使用条件下で反応することによって行うことができる。通常、室温下で数十分〜数十時間攪拌反応する方法を用いることができる。使用するカップリング剤の割合は、蛍光体集積ナノ粒子1モルに対して、モル比で300〜6000倍、好ましくは600〜5400倍、より好ましくは2100〜3000倍である。
蛍光体集積ナノ粒子の表面の官能基(アミノ基、SH基等)は、蛍光体集積ナノ粒子の製造に用いる母材の種類によっても適宜選択して導入することができる。例えば、メラミン樹脂を用いて蛍光体集積ナノ粒子を製造すれば、アミノ基やヒドロキシル基を有する蛍光体集積ナノ粒子が得られる。メラミン樹脂を用いる場合、メラミン樹脂には2級アミンや3級アミンの部分が多く存在し、1級アミンの部分(−NH2基)が少なくNHSエステルとの反応性に乏しいことから、メラミン樹脂のヒドロキシメチル基(−CH2OH)のヒドロキシル基に対してシランカップリング剤を作用させることで、1級アミンの部分(−NH2基)を導入しNHSエステルとの反応性を高めてもよい。
一方、チオール化試薬を用いることで、蛍光体集積ナノ粒子の表面にチオール基(−SH基)を導入することができる。この場合、蛍光体集積ナノ粒子の表面に一旦アミノ基を導入し、このアミノ基をチオール基に変換する方法が挙げられる。上記チオール化試薬としては、2−イミノチオラン、N−succinimidyl-S−acetylthioacetate(SATA)等が挙げられる。
2−イミノチオランを用いてメラミン系樹脂製の蛍光体集積ナノ粒子のアミノ基をチオール化する場合、水等の溶媒中で粒子1モルに対して5000〜50000倍のモル量の2−イミノチオランを添加し、室温で1時間程度反応させることでアミノ基をチオール基に導入することができる。なお、蛍光体集積ナノ粒子の表面にアミノ基やSH基が導入されたか否かは、例えばFT−IR法およびXPS測定によりアミノ基やSH基に由来する吸収が観測できるか否かにより確認することができる。
工程(II)では、アジドの官能基(NHS基等)と蛍光体集積ナノ粒子の官能基(アミノ基等)とを反応させて、蛍光体集積ナノ粒子の表面にアジドを結合させる。この結合反応には、緩衝液(例;ホウ酸ナトリウム緩衝液(sodium borate buffer)、PBS等)を使用することが好ましい。また、反応のモル比として、蛍光体集積ナノ粒子1モルに対して200万〜400万倍のモル量のアジドを反応させることが好ましい。
例えば、PBS等の緩衝液を用いて、アミノ基等の上記官能基を有する蛍光体集積ナノ粒子を0.3〜30nMに調整し、最終濃度0.6〜120mMとなるように上記アジドを混合し、室温にて数時間(例;0.5時間〜1.5時間)反応させる例が挙げられる。
なお、工程(II)の後に洗浄工程(III)を設けてもよい。洗浄工程(III)では、上記工程(II)を経た反応混合液を遠心分離し、上澄みを除去して、EDTAを2mM含有した水やPBS等の緩衝液をさらに沈降物を分散させる操作を数回(2,3回)繰り返すことにより行うことができる。
{炭素間三重結合}
本発明で用いる所定の抗体および蛍光体集積ナノ粒子のいずれか一方(アジ基を有さない方)は、アジ基と付加環化反応を起こす炭素間三重結合(C≡C)を有する。
{アルキン化合物}
抗体(1次〜n次抗体のいずれか)または蛍光体集積ナノ粒子に炭素間三重結合部分を導入するための手法は特に限定されるものではないが、たとえば、炭素間三重結合部分とともに、抗体または蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する官能基と反応して共有結合を形成可能な反応性官能基(当該共有結合の形成に炭素間三重結合自体が用いられない限り、炭素間三重結合を有する基自体が当該反応性基であってもよい。)を有する化合物を用いて、そのような化合物の官能基と抗体または蛍光体集積ナノ粒子の官能基とを反応させる手法が好適である。
また、蛍光体集積ナノ粒子の母体を樹脂により形成する場合、前述の蛍光色素を取り込みつつ樹脂モノマーを重合する過程で、重合反応に関与しないモノマーの側鎖部分に炭素間三重結合部分を有する樹脂モノマーを用いることで、上記重合により蛍光体集積ナノ粒子に直接炭素間三重結合部分を導入することができる。また、例えばハロゲン化アリルを側鎖に有する樹脂モノマーに対して、側鎖部分にR−C≡C−Hの化合物を反応させて、シリカ樹脂粒子を形成するための原料モノマーの末端部分または中央部分に炭素間三重結合部分を導入し、このモノマーを用いて上記重合を行い、蛍光体集積ナノ粒子に直接炭素間三重結合部分を導入してもよい。
本発明では、前述した化合物を「アルキン化合物」と総称する。すなわち、本発明における「アルキン化合物」という用語は、炭素間三重結合を一つ有する直鎖状炭化水素(狭義のアルキン)および環状炭化水素(狭義のシクロアルキン)のみを指す用語ではなく、アジ基との付加環化反応を起こすことのできる炭素間三重結合部分を含んでいれば、直鎖状であっても環状であってもよく、また炭素以外の原子や炭素間三重結合部分を含む基以外の基(例えば前記反応性官能基)をさらに含んでいてもよい、化合物全般を指す広義の用語である。このようなアルキン化合物にはもちろん、前記狭義のアルキンおよびシクロアルキン自体も包含される。
(アルキンの種類)
好ましいアルキン化合物としては、分子の一端に炭素間三重結合部分を有し、他端に抗体または蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する官能基(例;−NH3、−SH基)と反応して共有結合を形成可能な反応性官能基(例;NHS基、マレイミド基等)を有する、二官能性のアルキン化合物が挙げられる。
このようなアルキン化合物は、炭素間三重結合部分を有する化合物(前述した狭義のアルキンであってもよい)に、必要に応じてリンカーとなる分子を介して、反応性基を有する化合物を共有結合によって連結することにより得られる化合物(誘導体)、例えば炭素間三重結合部分を有する化合物との、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)エステルおよび他の活性化エステル(スルホ-NHSエステル(sulfo-NHS-ester)、sulfotetrafluorophenyl(STP)エステル等)を例示することができる。
上記二官能性のアルキン化合物の具体例としては、「Pentynoic acid STP ester」(製品番号Cat.♯33720、ルミプローブ社製)(下記式(5)参照)等が挙げられる。
Figure 0006743703
〈リンカー由来部分を有するアルキン化合物〉
本発明に使用可能な他のアルキン化合物として、上述した官能基(例;NHS基、マレイミド基等)を有し、親水性高分子のリンカー(例;PEG等)由来部分を有するアルキン化合物を挙げることができる(下記各式(6)参照)。
例えば「ALK-PEG-NHS」(カタログ番号:PG2-AKNS-400、PG2-AKNS-600、PG2-AKNS-800、PG2-AKNS-1k、PG2-AKNS-2k、PG2-AKNS-3k, PG2-AKNS-5k、NANOCS社製)(下記式(6)および表参照)を挙げることができる。上述したように、オキシエチレン単位数(n)が8〜70に入るPG2-AKNS-400、PG2-AKNS-600、PG2-AKNS-800、PG2-AKNS-1k、PG2-AKNS-2kが好ましい。
Figure 0006743703
Figure 0006743703
この他にも、「NHS-PEG(NH-Boc)-alkyne」(製品番号PEG2920;Iris BIOTECH GMBH社)を挙げることができる(下記式(7)参照)。ここで、n=8〜70が好ましい。
Figure 0006743703
〈8員環のアルキン化合物〉
本発明に使用可能なアルキン化合物として、炭素間三重結合を有する環状構造(シクロアルキル構造)、たとえば8員環構造を分子内にもつアルキン化合物が好ましい。そのような8員環部分を分子内にもつアルキン化合物であれば、金属触媒(例;銅触媒)を用いずにアジ基と炭素環三重結合部分との結合反応(ヒュスゲン環化付加反応)を引き起こすことができるからである。
このようなシクロアルキル構造とともに、前述したような抗体または蛍光体集積ナノ粒子に結合させるための反応性官能基を有するアルキン化合物としては、以下のものを例示することができる。
(1)「Click-iT(登録商標) maleimide DIBO alkyne」(C27H26N2O4;分子量442.51)(製品番号C-10413、ライフサイエンステクノロジーズ社製)(下記式(8)参照)
Figure 0006743703
(2)「Click-iT(登録商標) succinimidyl ester DIBO alkyne」(下記式(9)参照)
Figure 0006743703
(抗体とアルキンとの結合方法)
抗体とアルキンとの結合は、アルキン由来の炭素間三重結合部分が損なわれず、また、抗体の免疫反応性が損なわれないように抗体とアルキンとを共有結合することができれば特に限定されないが、例えば、抗体のアミノ基と、NHS基を有するアルキン化合物を反応せせることで行なうことができる。例えば、0.05M ホウ酸ナトリウム緩衝液(Sodium Borate buffer)中において、抗体1モルに対してNHS基を有するアルキン化合物を5〜100モル加えることにより行なうことができる。
同様に、抗体とアルキンとの結合は、抗体のチオール基と、マレイミドを有するアルキン化合物を反応させて行なうこともできる。例えば、あらかじめ抗体を還元処理またはチオール化試薬(2−イミノチオラン(2-iminothiolane)(2-IT)、スクシンイミジルアセチルチオプロピオン酸塩(SATP,N-succinimidyl-S-acetylthiopropionate(サーモサイエンス社製)、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(succinimido3-(2-pyridyldithio)propionate,SPDP))等を用いてチオール化した後、0.05M ホウ酸ナトリウム緩衝液(Sodium borate buffer)中において、抗体1モルに対してマレイミドを有するアルキン化合物を5〜100モル加えることにより行なうことができる。
なお、マレイミド基またはNHS基を有するアルキン化合物としては、前述したものを使用することができる。
ここで、NHSエステル基と所定の抗体のアミノ基との間の結合反応の反応性は、反応液のpHに強く依存するため、上記結合反応のpH値は6〜8に調整することが好ましく、pH8.3〜8.5に調整することがより好ましい。上記ホウ酸ナトリウム緩衝液を用いる例では、pH調整はホウ酸ナトリウムまたは水酸化カリウムで行うことができる。
上記結合反応の条件としては、特に制限ないが、例えば、室温で少なくとも1時間、上記結合反応をさせるか、一晩氷上で上記結合反応をさせることで行うことができる。
結合反応により得られた抗体とアルキン化合物とが結合したものは、レジン等を含む抗体精製用のスピンカラムで未反応物を除去して精製することができる。
また、アルキン化合物と抗体が結合したことの確認は、例えば、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等で確認することができる。
(蛍光体集積ナノ粒子とアルキン化合物との結合方法)
蛍光体集積ナノ粒子に対してアルキン化合物を結合させる方法は、蛍光体集積ナノ粒子にアルキン化合物を結合させることができれば特に限定されない。アルキン化合物と蛍光体集積ナノ粒子との結合の好適な方法としては、前述した「蛍光体集積ナノ粒子とアジドとの結合方法」において、アジドの代わりにアルキン化合物を用いることで行うことで達成できるため、その説明を省略する。
≪免疫染色試薬キット≫
本発明に係る免疫染色試薬キットは、組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識するため免疫染色試薬キットであって、蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬と、前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体、または該抗体を介して間接的に固定される別の抗体を含む抗体試薬とを備えており、前記蛍光体集積ナノ粒子および前記抗体のいずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、前記アジ基と前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応により、前記抗体と前記蛍光体集積ナノ粒子との分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により当該両分子が直接的または間接的に結合することで前記抗原を蛍光標識するようにして用いられる。また、免疫染色試薬キットは、金属触媒の溶液をさらに有してもよい。
{抗体試薬}
抗体試薬は、前述したアルキン(若しくはアルキン化合物)またはアジドが結合された所定の抗体(例;HER2抗体等)を所定の緩衝液に溶解したものであり、該抗体は組織切片上の特定の抗原に特異的に結合しうるものである。抗原に結合する1次抗体のみならず、1次抗体に加えて2次抗体〜n次抗体を別の抗体試薬として本発明に係る免疫染色試薬キット中に含める場合もある。
抗体試薬中の抗体濃度は、蛍光体集積ナノ粒子のアルキン化合物又はアジドとの間でヒュスゲン環化反応が生じうる濃度範囲に調節されていることが好ましい。
上記蛍光体集積ナノ粒子と所定の抗体とはモル比1:1でヒュスゲン環化付加反応を行うことが理想であるため、抗体試薬中の所定の抗体のモル濃度を上記標識試薬中の蛍光体集積ナノ粒子のモル濃度とほぼ同一となるように設定することが望ましい。例えば、標識試薬中の蛍光体集積ナノ粒子のモル濃度を0.005nM〜0.5nMに設定する場合であれば、抗体試薬中の抗体のモル濃度も0.005nM〜0.5nMの範囲で設定することが望ましい。
抗体試薬に使用可能な緩衝液としては、リン酸緩衝液(PBSを含む)、水等が挙げられる。また、抗体試薬には、各種のブロッキング剤を含めてもよく、このブロッキング剤の濃度は終濃度で1%以下に設定することが好ましい。このようなブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン(αカゼイン、βカゼイン、γカゼイン)、ゼラチン等の生物由来物質が挙げられる。
{標識試薬}
標識試薬は、アルキン(若しくはアルキン化合物)またはアジドが結合された蛍光体集積ナノ粒子を所定の溶媒中に分散させたものであり、組織切片上の抗原と結合した抗体との間でヒュスゲン環化付加反応により前記抗原の蛍光標識に用いられるものである。標識試薬中の蛍光体集積ナノ粒子の濃度は、組織切片上で上記ヒュスゲン環化付加反応を引き起こす濃度以上に調節されていればよい。標識試薬に含有させる蛍光体集積ナノ粒子の濃度としては、0.005〜0.500nMに設定する例が挙げられる。標識試薬に使用可能な緩衝液としては、リン酸緩衝液(PBSを含む)、水、MES等が挙げられる。また、標識試薬には、各種のブロッキング剤を含めてもよく、このブロッキング剤の濃度は終濃度で1%以下に設定することが好ましい。このようなブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン(αカゼイン、βカゼイン、γカゼイン)、ゼラチン等の生物由来物質が挙げられる。
{金属触媒の溶液}
本発明に係る免疫染色試薬キットに任意で含まれる金属触媒の溶液は、所定の抗体と上記蛍光体集積ナノ粒子とのヒュスゲン環化付加反応の触媒能を有する金属イオンを含有する溶液である。触媒として、アジドとアルキンのヒュスゲン環化付加反応を触媒可能なCu、Zr、W、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Au、Zn、Cd、Hgおよび他の金属のイオンからなる群から選択されるいずれか1種または2種以上を使用することができるが、このうち反応効率に優れるCuが特に好ましい。この他にも、例えば、溶液中で金属イオンを生じうる粒子状の金属触媒を使用することができる。
上記粒子状の金属触媒の平均粒径は、10nm〜1000μm、好ましくは10μm〜200μmまたは10nm〜1000nmを有するものが好ましい。この他にも、上記触媒として、多孔質非粒子状触媒、例えば触媒活性粒子が中に埋め込まれた固体基材であってもよい。
また、触媒溶液中の金属イオン濃度は、該触媒溶液を反応系に添加した際に、反応系中の金属イオンの濃度を上記ヒュスゲン環化付加反応が進行しうる濃度に調整できる濃度であればよく、例えば、上記列挙した金属のイオンのいずれか1種または2種以上を合計で、5〜500mM含むものが好ましい。
なお、8員環化合物として既に例示したアルキン化合物を所定の抗体または上記蛍光体集積ナノ粒子に結合させた場合については、上記金属触媒を用いなくとも蛍光体集積ナノ粒子と抗体とのヒュスゲン環化付加反応が進行するので、その場合は上述した金属触媒の溶液を本発明に係る免疫染色試薬キットに含めなくともよい。
≪免疫染色法≫
本発明に係る免疫染色法は、換言すれば、アルキン(もしくはアルキン化合物)またはアジドが結合された前述の抗体を抗原抗体反応により組織切片上の抗原に結合・固定させる免疫反応工程と、アジドまたはアルキン(もしくはアルキン化合物)が結合された前述の蛍光体集積ナノ粒子を、抗原に固定された上記抗体にヒュスゲン環化付加反応により結合させる染色反応工程を含む。免疫染色法は、上記2工程(免疫反応工程、染色反応工程)を含む下記一連の工程を経て実施されることが好ましい。
(組織切片の調製)
組織切片は、一般に市販されているものを購入してもよいが、例えば抗原について前述したところの各種のガンが疑われる被験者(ヒト、イヌ、ネコ等)の組織について一般的な病理組織診断に用いる公知の方法で調製することができる。この場合、まず被験者の組織切片をホルマリン等により固定し、アルコールで脱水処理した後、キシレン処理を行い、高温のパラフィン中に浸してパラフィン包埋を行うことで組織切片を作製することができる。
(1)脱パラフィン処理工程
キシレンに組織切片を浸漬させてパラフィンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。次に、エタノールに組織切片を浸漬させてキシレンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でエタノールを交換してもよい。次に、水(例;蒸留水)に組織切片を浸漬させてエタノールを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中で水を交換してもよい。
(2)賦活化処理工程
組織化学染色として免疫組織化学染色を行う場合、公知の方法にならい、目的とする生体分子の賦活化処理を行うことが好ましい。賦活化条件に特に定めはないが、賦活液としては、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mトリス塩酸緩衝液等を用いることができる。加熱機器としては、オートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターバス等を用いることができる。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。賦活化処理の加熱処理の温度は50〜130℃、加熱処理の時間は5〜30分で行うことができる。次に、容器に入れたPBSに賦活処理後の切片を浸漬させて洗浄を行う。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。
(3)免疫反応工程
免疫反応工程は、組織切片上の抗原に対して前述の抗体を固定させる工程である。具体的には、抗原抗体反応により、組織切片上の抗原に対して直接的に1次抗体を固定する工程、または、該固定に加えて、前記抗原に対して該1次抗体を介して別の抗体(2次〜n次抗体)を間接的に固定する工程である。
ブロッキング剤を1重量%以下で含むPBS等の緩衝液に前述の1次抗体(または1次〜n次抗体)を反応系終濃度以上の濃度(例;0.01nM〜0.5nM)となるように(それぞれ)分散させて調製した分散液、または該分散液に変えて上記免疫染色試薬キットの(各)抗体試薬を組織切片に載せて、前記抗原と1次抗体(さらには該1次抗体に続いて2次〜n次抗体)を(順次)結合させる。このときの反応条件としては、例えば、該抗体の液を組織切片に対して4℃で1晩反応させる例が挙げられる。
さらに、該反応後に、緩衝液(PBS等)により組織切片を洗浄して未反応の抗体を除くことが好ましい。この洗浄工程としては、例えば、PBS等を入れた容器に染色後の組織切片を例えば3分以上30分以下浸漬させて未反応の抗体試薬等を除去する処理が挙げられる。ここで、上記浸漬中にPBS等を交換してもよい。
(4)染色反応工程
染色反応工程は、上記免疫反応工程で抗原に固定された1次抗体〜n次抗体のいずれかに対し、アジド−アルキン間のヒュスゲン環化付加反応でもって、前述の蛍光体集積ナノ粒子を共有結合させる工程である。
この工程により、前記抗体と蛍光体集積ナノ粒子との両分子間にトリアゾール環を介した結合(共有結合)が形成され、該形成により前記抗原が前記蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識される。ここで、染色反応の反応温度は、上記ヒュスゲン環化付加反応が進行すれば特に制限されないが、例えば1〜30℃程度であることが好ましい。また、染色反応の反応時間も上記ヒュスゲン環化付加反応が進行すれば特に制限されないが、例えば1〜10時間、より好ましい例として2〜4時間程度に設定する例が挙げられる。染色性の観点から、上記染色反応の反応系における抗体の終濃度は0.01〜0.50nMが好ましい。また、蛍光体集積ナノ粒子は反応系中の抗体部を標識するのに十分な量があればよく、終濃度としては0.01〜0.50nMが好ましい。触媒は系中に十分な量があればよく、終濃度としては5〜500mMが好ましい。
(5)洗浄工程
染色反応工程の後に、PBSにより組織切片を洗浄する洗浄工程を行って未反応の蛍光体集積ナノ粒子を除くことが好ましい。この洗浄工程としては、例えば、室温(1〜30℃)に調節されたPBSに組織切片を浸漬させて0.5〜1時間放置する洗浄工程を行うことができる。ここで、上記浸漬中にPBS等を交換してもよい。
(6)形態観察用処理工程
上記免疫染色の後に、組織切片に対してヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)等の染色を行って、組織切片の細胞の形状や細胞の各部の位置情報を得るための形態観察用処理工程を任意に行うことができる。この染色にともなって組織切片を観察用に透徹、封入すること等の処理を行ってもよい。HE染色は、例えば、免疫染色した切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行い、その後、該組織試料を45℃の流水で3分間洗浄し、次に、1%エオシン液で5分間染色してエオシン染色を行う。
(7)観察工程
(明視野観察)
明視野観察は、組織切片の細胞または組織内の染色対象とする細胞器官の分布情報を取得するために行われる。明視野観察の一般的な方法として、例えば、上記したように免疫染色の後にヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)を行った組織切片を光学顕微鏡で観察を行う。なお、形態観察染色に用いられるエオジンは、明視野において観察できるだけでなく、所定の波長の励起光を照射した時に自家蛍光も発するので、適切な波長および出力の励起光を染色された組織試料に照射することで、蛍光顕微鏡によっても観察できる。
一方、その他の染色としてHER2タンパク質を検出対象の抗原として組織化学染色(DAB染色等)を行った場合の明視野観察においては、適切な照明光の照射下で、光学顕微鏡の4倍対物レンズを使用して、検体組織内の癌細胞のHER2タンパク陽性染色像、陽性染色の強度、陽性細胞率を観察する。次に対物レンズを10倍に切り替え、陽性所見が細胞膜か細胞質に局在するかを確認し、必要に応じてさらに対物レンズ20倍で検索する。
(蛍光観察)
染色した上記切片に対し蛍光顕微鏡を用いて、広視野の顕微鏡画像から蛍光の輝点の数又は発光輝度を計測する。用いた蛍光物質の吸収極大波長及び蛍光波長に対応した励起光源及び蛍光検出用光学フィルターを選択する。輝点数又は発光輝度の計測は、市販の画像解析ソフト、例えば、株式会社ジーオングストローム社製の全輝点自動計測ソフトG−Countを用いて行うことができる。なお、顕微鏡を使用した画像解析自体は周知であり、例えば、特開平9−197290に開示される手法を用いることができる。顕微鏡画像の視野は、3mm2以上であることが好ましく、30mm2以上であることがさらに好ましく、300mm2以上であることがさらに好ましい。顕微鏡画像から計測された輝点数、及び/又は発光輝度に基づいて、目的とする特定の遺伝子由来のタンパク質(前述)の発現量等を評価する。
{評価法}
{精度評価}
本発明に係る上記免疫染色法、該免疫染色法に用いられる免疫染色試薬キットの検出精度の評価方法については、以下のように行うことができる。
(非特異的吸着に起因する輝点数による精度評価)
免疫染色の検出対象をHER2タンパク質として評価する場合、HER2の発現が全くない組織切片(IHC法スコア=0のもの(下記表3参照))を用意し、これに対して上述した免疫染色および蛍光観察を行い、この結果から蛍光体集積ナノ粒子の組織切片への非特異的な吸着に起因する輝点数がどの程度出現するかを調べ、該出現数により上記検出精度を評価することができる(評価1)。この輝点数が0〜5のものを精度が良好であるものと評価することができる。なお、IHC法とは、「HER2検査ガイド第三版」(2009年9月 トラスツズマブ病理部会作成)に記載の方法であり、IHC法スコアとは「HER2検査ガイド第三版」に記載の評価基準である(下記表3参照)。
(特異的なシグナルの蛍光強度による精度評価)
上記とは別に、HER2の発現が顕著な組織切片(IHC法スコア=2や3のもの)を用意し、これに対して上述した免疫染色および蛍光観察を行い、この結果から蛍光体集積ナノ粒子の組織切片への特異的な吸着に起因する輝点の蛍光強度がどの程度得られるかを計測し、該蛍光強度により上記検出精度を評価することができる(評価2)。この際に、ポジティブコントロールの輝点から得られる蛍光強度との相対値として蛍光シグナルの強度を評価することができ、例えば相対値70以上を検出精度が問題ないものと判断することができる。
Figure 0006743703
(保存性評価)
本発明に係る免疫染色試薬キットに含まれる標識試薬の長期保存性の評価については、例えば、以下のように行うことができる。製造直後の標識試薬と、所定の促進条件(例;30℃、1カ月)に暴露した標識試薬とを使用してそれぞれ同様に前述の免疫染色等を行い、得られる蛍光強度(特異的シグナルの強度)を定量および相対評価することで行うことができる。例えば、促進条件下に暴露した標識試薬を使用して得られる蛍光シグナルの強度が、製造直後の標識試薬を使用して得られる蛍光シグナルの強度と比較して、70%以上のものを長期保存性に優れる標識試薬として評価することができる。
以下、本発明に係る免疫染色法、および該免疫染色法に用いられる免疫染色試薬のキットによる作用・効果について説明する。
(1)本発明によれば、組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色法であって、前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体または該抗体を介して間接的に固定される別の抗体と、蛍光体集積ナノ粒子との、いずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、前記抗原に前記抗体を固定させ、前記アジ基と、前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応でもって、前記抗体と蛍光体集積ナノ粒子との両分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により前記抗原を前記蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色方法である。アジ基も炭素間三重結合も生体内にはほとんど存在しないため、本発明に係る免疫染色法によれば、ビオチン−アビジン反応を利用する方法(図4参照)で問題となる内因性の化合物(内因性のビオチン)によるノイズを抑制することができる。
また、アジ基部分と炭素間三重結合部分とが反応してヒュスゲン環化付加反応によりトリアゾール環を介した共有結合が抗体と蛍光体集積ナノ粒子との間に形成されるため、ハプテン−抗ハプテンの抗原抗体反応による抗体と蛍光体集積ナノ粒子との結合と比べて結合能が高く、蛍光体集積ナノ粒子が強く抗体と結合するために、該抗体を介した組織切片上の抗原への固定が解除されにくくなり、該解除による輝点数の減少が抑制される分、より免疫染色後の蛍光観察で検出される輝点からの蛍光シグナルが多くなる。
(2)前記蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径が40nm以上500nm以下であることにより、該蛍光体集積ナノ粒子を用いた免疫染色において、少なくとも、上記抗原に特異的に結合した抗体の位置の輝点から十分に検出可能な強度の蛍光シグナルが得られる。また、上記蛍光体集積ナノ粒子および後述の抗体等(上記免疫染色キット)を促進条件(例;室温で1カ月)下で放置した場合であっても、製造直後の時点に匹敵する程度に組織切片上の抗原を十分に検出可能な強度の蛍光シグナルが得られる。ここで、前記蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子が150nm以上〜500nm以下、さらには40nm以上〜500nm以下である場合に上記蛍光シグナルに関する効果が好適に得られる。
(3)前記蛍光体集積ナノ粒子に親水性高分子のリンカー(例;PEGリンカー)を介して前記アジ基または炭素間三重結合部分が導入されていることにより、PEG部分により蛍光体集積ナノ粒子の生体分子への非特異的な吸着を防止することができる上に、少なくともPEGリンカーの長さ分だけ、組織切片上の抗原に結合した抗体の位置から空間的に離れた位置に蛍光体集積ナノ粒子を配置させることができることから、上記免疫染色と併せて行う他の染色法により副生される不溶性沈殿物等により蛍光体集積ナノ粒子が覆い隠されにくくなり、この結果、蛍光シグナルの低減を抑制して輝点からの蛍光シグナルがより好適に得られるという利点がある。
(4)ここで、上記PEGリンカーのオキシエチレン単位(ユニット数)が8以上70以下であれば、上記(3)の効果がより好適に得られる。他の親水性高分子のリンカーも同様の長さであれば、上記(3)の効果がより好適に得られる。
(5)前記ヒュスゲン環化付加反応を所定の金属触媒(例;銅触媒)存在下で行うこととすれば、所定の金属触媒(例;銅触媒)によって前記ヒュスゲン環化付加反応が飛躍的に加速することから、所定の抗体や蛍光体集積ナノ粒子が低濃度(例;0.05nM前後)であっても両者を反応させて結合させることができる。
(6)上記アルキン化合物のアルキン由来の部分が8員環であれば、上述した所定の金属触媒が存在しなくともヒュスゲン環化付加反応が進行するため、免疫染色の手間等を省略することができ、上記免疫染色試薬キットについては部品点数を減らすことができる。
本発明に係る免疫染色試薬キットは、組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識するため免疫染色試薬キットであって、蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬と、前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体、または該抗体を介して間接的に固定される別の抗体を含む抗体試薬とを備えており、前記蛍光体集積ナノ粒子および前記抗体のいずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、前記アジ基と前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応により、前記抗体と前記蛍光体集積ナノ粒子との分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により当該両分子が直接的または間接的に結合することで前記抗原を蛍光標識するようにして用いられるものであることから、該免疫染色キットを使用することで、上記(1)で記載したように検査精度の高い免疫染色が可能となる。さらに、上記免疫染色キットが上記(2)〜(6)と同様の構成を有することにより、蛍光免疫染色で上記キットを使用した際に上記(2)〜(6)に記載の効果が得られる。
以下、本発明に係る免疫染色法および免疫染色試薬キットの実施例および比較例について以下説明する。
{製造例I}{蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の製造}
蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の製造を以下の方法で行った。
蛍光色素として赤色発光色素であるスルホローダミン101(Sulforhodamine101、シグマアルドリッチ社製)14.4mgを蒸留水22mLに加えて溶解させた。その後、この溶液に乳化重合用乳化剤のエマルジョン(登録商標)430(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、花王社製)または「ラテムル(登録商標)PD−430」(花王ケミカル社)の5重量%水溶液を2mL加えた。この溶液をホットスターラー上で撹拌しながら70℃まで昇温させた後、この溶液にメラミン樹脂原料ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)を0.65g加えた。
さらに、この溶液に界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学社製)の10重量%水溶液を1000μL加え、70℃で50分間加熱撹拌した。その後、90℃に昇温して20分間加熱撹拌した。得られた蛍光体集積ナノ粒子の分散液から、余剰の樹脂原料や蛍光色素等の不純物を除くため、純水による洗浄を行った。具体的には、遠心分離機(クボタ社製マイクロ冷却遠心機3740)にて20000Gで15分間、遠心分離し、上澄み除去後、超純水を加えて超音波照射して再分散した。遠心分離、上澄み除去および超純水への再分散による洗浄を5回繰り返した。得られたメラミン粒子はメラミン樹脂自体が骨格に多くのアミノ基を含むことから、プラス電荷となった。樹脂粒子の電荷の評価は、NMRやIR等による樹脂成分分析と、ゼータ電位測定により行なった。ナノ粒子を走査型電子顕微鏡(SEM;日立(登録商標)社製S−800型)で観察し、平均粒径及び変動係数を算出した。得られた蛍光体集積ナノ粒子の平均粒径は150nmであり、変動係数は12%であった。
{製造例II}{蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径550nm)の製造}
製造例1において、スルホローダミン101(Sulforhodamine101、シグマアルドリッチ社製)20.9mg、メラミン樹脂原料ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)0.95gを用いたこと以外は製造例1と同様にして蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径550nm)を製造した。
{製造例III}{蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径800nm)の製造}
製造例1において、スルホローダミン101(Sulforhodamine101、シグマアルドリッチ社製)23.1mg、メラミン樹脂原料ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)1.05gを用いたこと以外は製造例1と同様にして蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径800nm)を製造した。
{製造例IV}{蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径40nm)の製造}
製造例1において、Sulforhodamine101(シグマアルドリッチ社製)9.9mg、メラミン樹脂原料ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)0.45gを用いたこと以外は製造例1と同様にして蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径40nm)を製造した。
{実施例1−1}
実施例1−1では、以下に説明するように、アルキン化合物を抗体に結合させるとともに、アジドを蛍光体集積ナノ粒子に結合し、さらに50mMの臭化銅(CuBr)からなる銅イオンの触媒溶液を用意することで免疫染色試薬キットを製造した。このときに臭化銅(CuBr)を固体状態でキット内に入れておき、所定量の水を加える事で所定濃度の溶液となるようにした。さらに、これを用いてHER2抗原の発現量の異なる組織切片を載せた検体スライド(組織アレイスライド)について免疫染色を行った。
{アルキン化合物で修飾した蛍光体集積ナノ粒子(150nm)の製造}
下記工程(1)〜(7)の方法により、{製造例I}で製造した蛍光体集積ナノ粒子に対してアルキン化合物を結合させた。
工程(1):1mgの上記蛍光体集積ナノ粒子を純水5mLに分散させ、分散液を調製した。次いで、トリス(2‐アミノエチル)アミン(Tris(2-aminoethyl)amine)20μLを上記分散液に添加し、70℃で20分加熱撹拌した。
工程(2):反応混合物を10000Gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。
工程(3):エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。得られたアミノ基修飾したナノ粒子のFT−IR測定及びXPS測定を行なったところ、アミノ基に由来する吸収が観測でき、アミノ基修飾されたことが確認できた。
工程(4):工程(3)で得られたアミノ基修飾したナノ粒子を、PBSを用いて3nMに調整した。
工程(5):工程(4)で調整した溶液に、最終濃度10mMとなるようにALK-PEG-NHS(PG2-AKNS-2k、NANOCOS社)を混合し、室温にて1時間反応させた。
工程(6):反応混合液を10000Gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。
工程(7):EDTAを2mM含有したPBSを加え、蛍光体集積ナノ粒子の沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSを用いて蛍光体集積ナノ粒子の沈降物を再分散させることで、PEGを介して炭素間三重結合のアルキン由来部分を有する蛍光体集積ナノ粒子の溶液(標識試薬)を製造した。この粒子についてFT−IR測定を行ったところ、炭素間三重結合に由来する吸収が観測でき、アルキン化合物が結合されたことが確認できた(不図示)。
{アジドで修飾した抗ウサギ抗体の製造}
2次抗体としてAbD serotec社製の抗ウサギ抗体(5196-4504)をPBSに1.0mg/mLとなるように溶解した。この抗ウサギ抗体1モルに対して「NHS-PEG12-Azide」(カタログNo. 26131,サーモサイエンティフィック社製(またはサーモフィッシャーサイエンティフィック社製,以下同様))を100モルとなるように加えて混合した。混合した溶液をさらに37℃で2時間放置して「NHS-PEG12-Azide」のNHS基と上記抗体のアミノ基とを結合する反応を行った。該反応の後に反応液についてゲル濾過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)に供して、分画することで、PBSに上記抗体が溶解した抗体試薬を製造した。
{銅触媒の準備}
銅触媒として、臭化銅(CuBr)(製品番号212865、シグマアルドリッチ社製)購入し、銅イオン濃度が50mMとなるようにPBSにより希釈して金属触媒の溶液を調製した。
{免疫染色}(免疫組織化学(IHC)法)
上記アルキン化合物で修飾した蛍光体集積ナノ粒子の分散液(標識試薬)、抗HER2抗体(ウサギ由来、4B5、ベンタナ社製)上記アジドで修飾した抗ウサギ抗体の溶液(2次抗体試薬)、および上記金属触媒の溶液で構成される免疫染色試薬のキットを用いて、以下に説明するように、免疫染色を行った。
上記免疫染色試薬キット等を用いて、下記工程を順に行うことで組織アレイスライドについて免疫染色等を行った。免疫染色では、US Biomax社製の組織アレイスライド(br243)を用い、乳がん組織の組織切片(HER2(+)陽性のもの)と、正常細胞の組織切片(HER2(−)陰性のもの)とを用いた。
免疫染色に先立ってDAB染色により上述した各組織切片のHER2染色濃度を観察して、HER2高発現(HER2 3+)、HER2低発現(HER2 +)、HER2陰性(HER2 −)の3種のロットを用意し、それぞれのロットについて免疫染色を行った。なお、上記「HER2 3+」、「HER2 +」および「HER2 −」は、それぞれ上記表3のIHC法判定基準のスコア「3+」「1+」および「0」に該当する。
{脱パラフィン処理工程}
工程(1A):組織アレイスライドをキシレンに30分浸漬させて組織切片中のパラフィンを除去してキシレンで置換した。途中3回キシレンを交換した。
工程(1B):工程(1A)を経た組織アレイスライドをエタノールに30分浸漬させて組織切片中のキシレンをエタノールで置換した。途中3回エタノールを交換した。
工程(1C):工程(1B)を経た組織アレイスライドを蒸留水に30分浸漬させて、組織切片中のエタノールを蒸留水で置換した。途中3回蒸留水を交換した。
{賦活化処理工程}
工程(2A):工程(1C)を経た組織アレイスライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に30分浸漬させて、組織切片中の水をクエン酸緩衝液で置換した。
工程(2B):工程(2A)を経た組織アレイスライドをオートクレーブ処理(121℃で10分間)した。
工程(2C):工程(2B)を経た組織アレイスライドの組織切片をPBSに30分浸漬させた。
工程(2D):工程(2C)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に対して、BSAを1重量%含有するPBSを滴下して室温で1時間放置した。
{免疫反応工程}
工程(3A):抗HER2抗体液(ウサギ由来、4B5、ベンタナ社製)を、工程(2D)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温で30分放置した。
工程(3B):BSAを1重量%含有するPBSでもって、上記アルキン化合物を結合した(炭素間三重結合部分を有する)抗ウサギ抗体を0.05nMに希釈した。次に、該希釈に得られる抗ウサギ抗体の溶液を、工程(2D)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温で30分放置した。
{染色反応工程}
工程(4A):BSAを1重量%含有するPBSでもって、上記アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子を0.05nMに希釈した。次に、該希釈により得られる蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬0.1mLを組織切片全体に滴下して室温で1時間放置した。
{洗浄工程}
工程(5A):工程(4A)を経た組織アレイスライドの組織切片をそれぞれ30分PBSに浸漬させた。
{形態観察用処理工程}
工程(6A):工程(5A)を経た組織アレイスライドの組織切片を4%中性パラホルムアルデヒド溶液で10分間固定処理した後、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行った。HE染色は、免疫染色した組織切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った。その後、該切片を45℃の流水で3分間洗浄した。次に、1%エオジン液で5分間染色してエオジン染色を行った。その後、純エタノールに5分間漬ける操作4回行い、洗浄・脱水を行った。続いてキシレンに5分間漬ける操作を4回行い、透徹を行った。
工程(6B):工程(6A)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に対して「Aquatex(登録商標)」(製品番号108562、Merck Millipore社製)を滴下した後、室温で20分放置することでカバーガラスを載せて前記組織切片を封入した。
{観察工程}
上記一連の工程を経た組織切片に対して所定の励起光を照射して蛍光を発光させた。その状態の組織切片を蛍光顕微鏡(BX−53,オリンパス社製)により観察および撮像を行った。また、輝点計測は、ImageJ FindMaxima法により計測した。
上記励起光は、光学フィルターに通すことで575〜600nmに設定した。また、観察する蛍光の波長(nm)の範囲についても、光学フィルターに通すことで612〜682nmに設定した。
顕微鏡観察、画像取得時の励起波長条件は、580nmの励起では視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像取得時の露光時間は画像の輝度が飽和しないように任意に設定(例えば4000μ秒に設定)して撮像した。次に、蛍光顕微鏡等を用いて撮像した顕微鏡画像を用いて、輝度が所定の閾値を超えた部分を輝点として計測し、1細胞当たりの蛍光体集積ナノ粒子の数や蛍光シグナルの強度を算出し精度評価を行った(表4参照)。
(評価値)
(評価1){非特異的な吸着の少なさの評価}
表4において、「評価1」は、HER2抗原が存在しない組織切片(IHC法スコアでHER2(0)のもの)について上記免疫染色を含む一連の工程を行った結果とそれに基づく評価結果を示しており(表4において、上が評価1の結果、下の数字が輝点数)、より輝点数が少ない方が非特異的な吸着が少なく抗原の検出精度が高いことを示す。具体的には、上記HER2抗原が存在しない組織切片の観察視野中の平均1細胞当たりについての非特異的吸着に起因する輝点数と、該輝点数に基づく精度評価の結果を示す。この精度評価については、評価「○」は、上記観察で1細胞当たりの輝点数が5以下となる場合であり、蛍光体集積ナノ粒子や所定の抗体の非特異的な吸着が少なく検出精度が高いことを示す。また、評価「×」は、上記観察で計測された1細胞当たりの輝点数が6以上となる場合であり、蛍光体集積ナノ粒子の非特異的な吸着が多く検出精度が低いことを示す。評価「計測不可」は、輝点自体が確認できない場合を示す。
(評価2){特異的吸着のシグナルの強さの評価}
「評価2」は、HER2抗原を高発現している組織切片(IHC法スコアでHER2(3+)のもの)について上記免疫染色を含む一連の工程を行った結果とそれに基づく評価結果(蛍光シグナルの強さの評価結果)を示しており、輝点からの蛍光シグナルがより強いほど抗原が検出されやすい(抗原の検出精度が高い)ことを示す。
なお、表4中の評価2の項目の数値は蛍光シグナルの強さの相対値を示している。この相対値は、他の実施例や比較例との相対値であり、実施例1−1を基準の「100」として表されている。
表4の「評価2」の項目について、評価「○」は、上記相対値が70以上の場合を示し、蛍光シグナルの強さが輝点計測にとって十分であることを示す。評価「△」は、上記相対値が50以上〜70未満の場合を示し、蛍光シグナルの強さがやや劣るが輝点計測可能なレベルであることを示す。評価「△」は、上記相対値が0以上〜50未満の場合を示し、蛍光シグナルの強さが輝点計測にとって不十分であることを示す。評価「計測不可」は、輝点自体が確認できない場合を示す。
(評価3){保存性評価試験}
実施例1−1で製造した標識試薬の一部を取り分けて製造直後の時点から30℃で1カ月間保存し、保存した標識試薬を用いて、HER2抗原を高発現している組織切片(IHC法スコアでHER2(3+)のもの)について、上記免疫染色を含む一連の工程を同様に行った。そして、この操作で得られた蛍光シグナルの強度および輝点数を、上記製造の直後の標識試薬を用いて同様に免疫染色等した場合に得られる蛍光シグナルの強度および輝点数とそれぞれ比較し、標識試薬を30℃で1カ月間保存することにより蛍光シグナルの強度および輝点数がどの程度低下・減少するかを調べた。
「評価3」は、上記保存評価試験において30℃で1カ月保存した標識試薬を用いて上記免疫染色を含む一連の工程を行った場合に得られる蛍光シグナルの強度を相対値として示している(なお、この相対値は、実施例1−1の評価2の蛍光シグナルの強度を基準の「100」とした場合の相対値として示している)。また、括弧内の値(%)は、下記の輝点保持率(%)を示している(下記数1参照)。
輝点保持率(%)=輝点数(30℃1カ月保存)/輝点数(製造直後)×100{%}
評価3の項目において、評価「○」は、上記輝点保持率(%)が70%以上のものを示し標識試薬の保存性が高いこと(ひいては免疫染色試薬キットの保存性が高いこと)を示す。評価「×」は、輝点保持率(%)が70%未満のものを示し、上記保存性が低いことを示す。
{実施例1−2}
実施例1−1で使用した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IIで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径550nm)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、アルキン化合物で修飾した(炭素間三重結合部分を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、免疫染色を含む一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
{実施例1−3}
実施例1−1で使用した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IIIで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径800nm)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、アルキン化合物で修飾した(炭素間三重結合部分を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、免疫染色を含む一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
{実施例1−4}
実施例1−1で使用した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IVで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径40nm)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、アルキン化合物で修飾した(炭素間三重結合部分を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、免疫染色を含む一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
{実施例2−1}
{アジドで修飾した蛍光体集積ナノ粒子(150nm)の製造}
実施例1−1の「アルキン化合物で修飾した蛍光体集積ナノ粒子(150nm)の製造」において、使用したアルキン化合物「ALK-PEG-NHS」(PG2-AKNS-2k、NANOCOS社)の代わりに、「NHS-PEG12-Azide」(カタログNo. 26131,サーモサイエンティフィック社製)を最終濃度が10mMとなるようにして使用することにより、アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子(150nm)を製造した。
{アルキン化合物で修飾した抗HER2抗体の製造}
実施例1−1の「アジドで修飾した抗ウサギ抗体の製造」において、使用した「NHS-PEG12-Azide」(カタログNo. 26131,サーモサイエンティフィック社製)の代わりに、「ALK-PEG-NHS」(PG2-AKNS-2k、NANOCOS社)を使用することにより、アルキンで修飾した(炭素間三重結合部分を有する)抗ウサギ抗体の製造を製造した。
上記蛍光体集積ナノ粒子および抗体の製造以外の操作(銅触媒の準備、免疫染色、評価等)については実施例1−1に同様に行った。実施例2−1の結果を表4に示す。
{実施例2−2}
実施例2−1において、蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IIで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径550nm)を使用すること以外は実施例2−1と同様に、アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、アルキンで修飾した(炭素間三重結合部分を有する)抗ウサギ抗体を用い、一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
{実施例2−3}
実施例2−1において、蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IIIで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径800nm)を使用すること以外は実施例2−1と同様に、アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、アルキンで修飾した(炭素間三重結合部分を有する)抗ウサギ抗体を用い、一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
{実施例2−4}
実施例2−1において、蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IVで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径40nm)を使用すること以外は実施例2−1と同様に、アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、アルキンで修飾した(炭素間三重結合部分を有する)抗ウサギ抗体を用い、一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
{比較例1}(ビオチン‐アビジン結合を利用した免疫染色)
{ビオチン化抗ウサギ抗体の製造}
AbD serotec社製 抗ウサギ抗体(5196-4504)を使用し、これに対して、Biotin Labeling kit-SH(同仁化学)を用いてビオチン化を行うことにより、ビオチン化した抗ウサギ抗体を得た。
{蛍光体集積ナノ粒子のストレプトアビジン修飾}
(ストレプトアビジンへのSH基導入)
SH基を有するストレプトアビジンの調製は以下のように行った。
まず、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業社製)40μLに対して、64mg/mLに調整した2−Iminothiolane(pirce社製)70μLを室温で1時間反応させた。すなわち、ストレプトアビジンのアミノ基に対してチオール基を導入した。このストレプトアビジン溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)により脱塩し、SH基を有したストレプトアビジン0.04mgを得た。
(蛍光体集積ナノ粒子へのアミノ基導入)
製造例Iで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)に対して、下記工程(1)〜(3)を行うことにより該蛍光体集積ナノ粒子にアミノ基を導入した。
工程(1):1mgの上記蛍光体集積ナノ粒子を純水5mLに分散させ、分散液を調製した。次いで、トリス(2‐アミノエチル)アミン(Tris(2-aminoethyl)amine)20μLを上記分散液に添加し、70℃で20分加熱撹拌した。
工程(2):反応混合物を10000Gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。
工程(3):エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。
得られたアミノ基修飾したナノ粒子のFT−IR測定およびXPS測定を行ったところ、アミノ基に由来する吸収が観測でき、アミノ基修飾されたことが確認できた。
(蛍光体集積ナノ粒子へのマレイミド基の導入)
アミノ基を導入した上記蛍光体集積ナノ粒子を、EDTAを2mM含有したPBS{リン酸緩衝液生理的食塩水}に3nMとなるように分散させた。この分散液に対して、終濃度10mMとなるように、リンカーとしてのSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、Succinimidyl−{(N−maleimidopropionamido)−dodecaethyleneglycol}ester)を混合し、混合液を室温で1時間反応させた。反応後の該混合液を10000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTA2mM含有したPBSを加えて沈殿物を分散させた。再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、蛍光体集積ナノ粒子にPEG鎖を介してマレイミド基が付加した蛍光体集積ナノ粒子が得られた。
(蛍光体集積ナノ粒子とストレプトアビジンとの結合)
マレイミド基を付加した上記蛍光体集積ナノ粒子を、EDTAを2mM含有したPBSに0.67nMとなるように分散させた。この蛍光体集積ナノ粒子の分散液740μLと、SH基を導入した上記ストレプトアビジン0.04mgとを混合し、室温で1時間反応させた。この反応液に10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲル濾過カラムを用いて未反応のストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジンで修飾された蛍光体集積ナノ粒子を得た。
{免疫染色}
実施例1−1の{免疫反応工程}と{染色反応工程}に代えて、上記ビオチン化した抗HER2抗体、およびストレプトアビジンで修飾した蛍光体集積ナノ粒子を用いて、以下の工程(A)を行った。それ以外は、実施例1−1と同様に免疫染色や評価等を行った。この結果を表4に示す。
工程(A)
実施例1−1の{賦活化処理工程}後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、BSAを1重量%含有するPBSを滴下して室温で1時間放置した。この組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、抗HER2抗体液(ウサギ由来、4B5、ベンタナ社製)を、工程(2D)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温で30分放置した。その後、上記ビオチン化した抗ウサギ抗体の溶液(濃度0.05nM)を組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温下30分間放置した。組織アレイスライドをPBSで洗浄後、ストレプトアビジンで修飾した蛍光体集積ナノ粒子の分散液(粒子濃度0.05nM)を上記組織切片全体に滴下し、室温下1時間反応させた。
{比較例2}(ハプテン‐抗ハプテン結合を利用した免疫染色)
{フルオレセイン修飾抗ウサギ抗体の製造}
「抗ウサギ抗体」(5196-4504、AbD serotec社製)を使用し、これに対して、「Fluorescein Labeling Kit-NH2」(LK01、同仁化学研究所社製)を用いてフルオレセイン修飾を行うことにより、フルオレセイン修飾した抗ウサギ抗体を得た。
{蛍光体集積ナノ粒子の抗フルオレセイン抗体修飾}
(抗フルオレセイン抗体へのSH基導入)
SH基を有するストレプトアビジンの調製は以下のように行った。
まず、1mg/mLに調整した抗フルオレセイン抗体(Anti-Fluorescein, Goat-Poly、SP-0601、ベクターラボラトリーズ社)40μLに対して、64mg/mLに調整した2−Iminothiolane(pirce社製)70μLを室温で1時間反応させた。すなわち、抗フルオレセイン抗体のアミノ基に対してチオール基を導入した。 この抗フルオレセイン抗体溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)により脱塩し、SH基を有した抗フルオレセイン抗体0.04mgを得た。
(蛍光体集積ナノ粒子へのアミノ基導入)
製造例Iで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)に対して、下記工程(1)〜(3)を行うことにより該蛍光体集積ナノ粒子にアミノ基を導入した。
工程(1):1mgの上記蛍光体集積ナノ粒子を純水5mLに分散させ、分散液を調製した。次いで、Tris(2-aminoethyl)amine 20μLを上記分散液に添加し、70℃で20分加熱撹拌した。
工程(2):反応混合物を10000Gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。
工程(3):エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。
得られたアミノ基修飾したナノ粒子のFT−IR測定およびXPS分析を行ったところ、アミノ基に由来する吸収が観測でき、アミノ基修飾されたことが確認できた。
(蛍光体集積ナノ粒子へのマレイミド基の導入)
アミノ基を導入した上記蛍光体集積ナノ粒子を、EDTAを2mM含有したPBS{リン酸緩衝液生理的食塩水}に3nMとなるように分散させた。この分散液に対して、終濃度10mMとなるように、リンカーとしてのSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、Succinimidyl−{(N−maleimidopropionamido)−dodecaethyleneglycol}ester)を混合し、混合液を室温で1時間反応させた。反応後の該混合液を10000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTA2mM含有したPBSを加えて沈殿物を分散させた。再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、蛍光体集積ナノ粒子にPEG鎖を介してマレイミド基が付加した蛍光体集積ナノ粒子が得られた。
(蛍光体集積ナノ粒子とストレプトアビジンとの結合)
マレイミド基を付加した上記蛍光体集積ナノ粒子を、EDTAを2mM含有したPBSに0.67nMとなるように分散させた。この蛍光体集積ナノ粒子の分散液740μLと、SH基を導入した上記抗フルオレセイン抗体0.04mgとを混合し、室温で1時間反応させた。この反応液に10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲル濾過カラムを用いて未反応の抗フルオレセイン抗体等を除去し、抗フルオレセイン抗体で修飾された蛍光体集積ナノ粒子を得た。
{免疫染色}
実施例1−1の{免疫反応工程}と{染色反応工程}に代えて、上記フルオレセイン修飾した抗ウサギ抗体、および抗フルオレセイン抗体で修飾した蛍光体集積ナノ粒子を用いて、以下の工程(B)を行った。それ以外は、実施例1−1と同様に免疫染色や評価等を行った。この結果を表4に示す。
工程(B)
実施例1−1の{賦活化処理工程}後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、BSAを1重量%含有するPBSを滴下して室温で1時間放置した。この組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、抗HER2抗体液(ウサギ由来、4B5、ベンタナ社製)を、工程(2D)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温で30分放置した。その後、上記フルオレセイン修飾した抗ウサギ抗体の溶液(濃度0.05nM)を組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温下30分間放置した。抗フルオレセイン抗体で修飾した蛍光体集積ナノ粒子の分散液(粒子濃度0.05nM)を上記組織切片全体に滴下し、室温下1時間反応させた。
{比較例3}(蛍光色素を用いた免疫染色)
実施例1−1で使用した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに蛍光色素のスルホローダミン101(Sulforhodamine101、製品番号S3388、シグマアルドリッチ社製)を用いて、以下の工程(C)を行うことで、アルキン化合物で修飾した蛍光色素の製造を行った。それ以外の操作については、実施例1−1と同様にして、アジドで修飾した抗HER2抗体の製造、および、免疫染色を含む一連の工程と評価等を行った。なお、免疫染色等では、アルキン化合物で修飾した蛍光体集積ナノ粒子に代えてアルキン化合物で修飾したスルホローダミン101を用いた。この結果を表4に示す。
工程(C)
Journal of Physical Chemistry C, 114(14), 6255-6264; 2010に記載の方法を参考に、10mgの酸クロライド体のスルホローダミン101(シグマアルドリッチ社)とエチレンジアミン(E0077、東京化成社)とを、Et3N存在下、ジクロロメタン(CH2Cl2)1mLに分散させて一晩反応を行ない、スルホローダミン101にアミノ基を導入した。得られたアミノ基が導入されたスルホローダミン101はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。
アミノ基が導入されたスルホローダミン101をジクロロメタン(CH2Cl2)1mLに溶解し、アミノ基が導入されたスルホローダミン101の1モルに対して1.1モルに相当する量の「ALK-PEG-NHS」(PG2-AKNS-2k、NANOCOS社)を加えて混合し、室温で一晩反応させた。得られた反応液はシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。PEGを介してアルキン由来の炭素間三重結合部分を有するスルホローダミン101の溶液を製造した。このスルホローダミン101についてFT−IR測定を行ったところ、炭素間三重結合に由来する吸収が観測でき、アルキン化合物が結合されたことが確認できた(不図示)。
Figure 0006743703
(結果と考察)
(1)実施例1−1〜2−4では、アジ基(または炭素間三重結合部分を有する)抗体を組織切片上の抗原に結合・固定させた状態で、該抗体に対して、炭素間三重結合部分(またはアジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子をヒュスゲン環化付加反応により結合させた。実施例の免疫染色法(およびこれに用いられる免疫染色試薬キット)によれば、上記結合をビオチン−ストレプトアビジン間の結合で行う免疫染色法(比較例1)と比べて、非特異的な結合が減少させることができた(上記表4の評価1参照)。
(2)また、実施例1−1〜2−4では、上述したようにヒュスゲン環化付加反応による結合により蛍光体集積ナノ粒子と抗体との結合力が向上した結果、ハプテン−抗ハプテン抗体の弱い結合を利用した従来の免疫染色法(比較例2)と比べて輝点から得られる蛍光シグナルの強度が増加した(上記表4の評価2参照)。
ビオチン−ストレプトアビジン間の結合を利用する比較例1では、ビオチン−ストレプトアビジン間の結合がヒュスゲン環化付加反応による結合のように強結合であり強い蛍光シグナルが得られるが、使用するストレプトアビジンが内因性ビオチンに結合してしまうため、非特異的吸着を抑制することができない。したがって、比較例1では、免疫染色における染色の特異性と発光性能との両立ができない。
一方、ハプテン−抗ハプテン抗体間の結合を利用する比較例2では、ハプテン−抗ハプテン抗体間の結合が特異的であるため、非特異的な結合が生じにくいが、ハプテン−抗ハプテン抗体間の結合はヒュスゲン環化付加反応による結合よりも弱い結合であり、蛍光集積体ナノ粒子と抗体との結合がその分解除されやすく、結合解除による蛍光体集積ナノ粒子が脱離に起因した蛍光シグナルの低下を抑制することができない。したがって、比較例2では、免疫染色における染色の特異性と発光性能との両立ができない。
(保存性評価試験の結果と考察)
アジド(またはアルキン化合物)を結合した蛍光体集積ナノ粒子(標識試薬の染色成分)を1カ月30℃の厳しい促進条件下に放置後に前述した免疫染色に使用したところ、実施例1−1〜2−4の「評価3」の結果として示したように(表4参照)、上記ヒュスゲン環化付加反応による結合が問題なくなされ、染色性能が安定に維持された。これは、アルキンやアジドは低分子の水中で安定な化合物であり、上記標識試薬の劣化が起きなかったためと考えられる。一方、アジドの代わりにストレプトアビジンや抗ハプテン抗体を利用した比較例1,2では染色性能が維持できなかった。これは、ストレプトアビジンや抗ハプテン抗体等のタンパク質分子に劣化が起きたためと考えられる。
以上、本発明に係る免疫染色法、およびこれに用いられる免疫染色試薬キットについて、実施の形態および実施例に基づき詳細に説明してきたが、本発明はこれら実施例等に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限り、設計変更は許容される。

Claims (14)

  1. 組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色法であって、
    前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体または該抗体を介して間接的に固定される別の抗体と、蛍光体集積ナノ粒子との、いずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、
    前記抗原に前記抗体を固定させた後、
    前記アジ基と、前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応でもって、前記抗体と蛍光体集積ナノ粒子との両分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により前記抗原を前記蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色法。
  2. 前記蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径が40nm以上500nm以下である、請求項1に記載の免疫染色法。
  3. 前記蛍光体集積ナノ粒子に、親水性高分子のリンカーを介して、前記アジ基または炭素間三重結合部分が導入されている、請求項1または2に記載の免疫染色法。
  4. 前記親水性高分子のオキシエチレン単位が8ユニット以上である、請求項3に記載の免疫染色法。
  5. 前記ヒュスゲン環化付加反応を金属触媒存在下で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の免疫染色法。
  6. 前記金属触媒が銅イオンである、請求項5に記載の免疫染色法。
  7. 前記炭素間三重結合部分(C≡C)は、炭素間三重結合部分(C≡C)を有する8員環化合物を結合させることにより導入される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の免疫染色法。
  8. 組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識するため免疫染色試薬キットであって、
    蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬と、前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体、または、該抗体を介して間接的に固定される別の抗体を含む抗体試薬とを備えており、
    前記蛍光体集積ナノ粒子および前記抗体のいずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、
    前記抗原に前記抗体を固定させた後、前記アジ基と前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応により、前記抗体と前記蛍光体集積ナノ粒子との分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により前記抗体と前記蛍光体集積ナノ粒子とが結合することで前記抗原を蛍光標識するようにして用いられる、免疫染色試薬キット。
  9. 前記蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径が40nm以上500nm以下である、請求項に記載の免疫染色試薬キット。
  10. 前記蛍光体集積ナノ粒子に、親水性高分子のリンカーを介して、前記アジ基または炭素間三重結合が導入されており、
    該親水性高分子のリンカーの先端にアジドまたはアルキンが結合されている、請求項またはに記載の免疫染色試薬キット。
  11. 前記親水性高分子のオキシエチレン単位が8ユニット以上である、請求項10に記載の免疫染色試薬キット。
  12. 前記ヒュスゲン環化付加反応を触媒する金属触媒試薬をさらに備えた、請求項11のいずれか一項に記載の免疫染色試薬キット。
  13. 前記金属触媒が銅イオンである、請求項12に記載の免疫染色試薬キット。
  14. 前記炭素間三重結合部分(C≡C)は、炭素間三重結合部分(C≡C)を有する8員環化合物を結合させることにより導入される、請求項11のいずれか一項に記載の免疫染色試薬キット。
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