JP6743703B2 - 免疫染色法、およびこれに用いられる免疫染色試薬キット - Google Patents
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Description
前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体、または該抗体を介して間接的に固定される別の抗体と蛍光体集積ナノ粒子との、いずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、
前記抗原に前記抗体を固定させ、
前記アジ基と前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応でもって、前記抗体と蛍光体集積ナノ粒子との両分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により前記抗原を前記蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色法である。
蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬と、前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体、または、該抗体を介して間接的に固定される別の抗体を含む抗体試薬とを備えており、
前記蛍光体集積ナノ粒子および前記抗体のいずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、
前記アジ基と前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応により、前記抗体と前記蛍光体集積ナノ粒子との分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により当該両分子が結合することで前記抗原を蛍光標識するようにして用いられる、免疫染色試薬キットである。
蛍光体集積ナノ粒子は、蛍光体を集積したものである。このような蛍光体集積ナノ粒子を用いることで、蛍光体自体と比較して、1粒子当たりの発する蛍光の量、すなわち所定の生体分子を標記する輝点の輝度を高めることができる。
本明細書において「蛍光体」とは、外部からのX線、紫外線または可視光線の照射を受けて励起し、励起状態から基底状態に到る過程において光を発光する物質一般を指す。したがって、本発明にいう「蛍光体」は、励起状態から基底状態に戻るときの遷移態様の如何を問うものでなく、励起一重項からの失活に伴う発光である狭義の蛍光を発する物質であってもよいし、三重項からの失活に伴う発光である燐光を発する物質であってもよい。
蛍光体としての使用可能な有機蛍光体の例としては、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素分子、クマリン系色素分子、NBD(登録商標)系色素分子、ピレン系色素分子、Texas Red(登録商標)系色素分子、シアニン系色素分子、ペリレン系色素分子、オキサジン系色素分子等、有機蛍光色素として知られている物質を挙げることができる。
蛍光体として使用可能な無機蛍光体の例としては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。量子ドットは、市販されているものでもよい。具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられるが、これらに限定されない。
蛍光体集積ナノ粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。一般的には、樹脂またはシリカを母体として蛍光体をまとめ上げる(当該母体の内部または表面に蛍光体を固定化する)製造方法を用いることができる。
有機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である蛍光色素を樹脂からなる母体の内部または表面に固定した、直径がナノメートルオーダーの樹脂粒子を形成させる方法を挙げることができる。この蛍光体集積ナノ粒子の調製方法は特に限定されるものではないが、例えば、蛍光体集積ナノ粒子の母体をなす樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を合成するための(コ)モノマーを(共)重合させながら、蛍光体を添加し、当該(共)重合体の内部または表面に当該蛍光体を取り込ませる方法を用いることができる。
無機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である量子ドットをシリカからなる母体の内部または表面に固定した、シリカナノ粒子を形成させる方法が挙げられる。この製造方法は、ニュー・ジャーナル・オブ・ケミストリー 33巻 561ページ(2009)に記載されているCdTe内包シリカナノ粒子の合成を参考にすることができる。
蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径は、蛍光シグナルの強度の観点から、150nm以上〜800nm以下が好ましく、150nm以上〜500nm以下がより好ましい。
上記蛍光体集積ナノ粒子の表面は任意に親水性高分子で修飾されていてもよい。該親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸などが挙げられる。
本発明で用いられる抗体は、用途に応じて選択される、例えば疾病(悪性腫瘍等)に関連する抗原(例;HER2等)に対する抗体(1次抗体)、または該1次抗体と抗原抗体反応により結合する2次抗体〜n次抗体を意味する(以下「所定の抗体」と称することもある。)。これら抗体のいずれかに対して、後述するようにアジドまたはアルキン化合物が結合されており、アジ基または炭素間三重結合の部分を有している。ここで、「抗体」という用語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、例えば、Fab、Fab'2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などを含む。
上記抗原としては、例えば、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)であるが、該タンパク質またはアミノ酸と、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子との複合体なども含まれる。具体的には、例えば上記病理診断の対象となる疾病に関連する抗原(腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなど)であり、特に限定されない。抗原として、例えば、がんの増殖制御因子,転移制御因子,増殖制御因子受容体および転移制御因子受容体等のがんに関連する抗原の他に、TNF−α(Tumor Necrosis Factor α),IL−6(Interleukin−6)受容体などの炎症性サイトカイン、RSV F蛋白質等のウィルス関連分子なども「抗原」に含まれる。
本発明で使用されるリンカーは、蛍光体集積ナノ粒子と所定の抗体とを連結するための分子である。所定の抗体(1次抗体〜n次抗体のいずれか)と蛍光体集積ナノ粒子とはリンカーにより結合されていることが望ましい。リンカー部分により抗体と蛍光体集積ナノ粒子との間にクリアランスが形成され、不溶性の化合物(DAB等)等による蛍光体集積ナノ粒子の蛍光シグナルの低下を抑制することができるからである。また、抗体と蛍光体集積ナノ粒子との間のクリアランスが少ないと、抗原または該抗原に結合した1次抗体に固定される2〜n次抗体の反応基と、蛍光体集積ナノ粒子の粒子表面の反応基とが十分に接近できず、反応効率が低下するからである。
本発明で用いる所定の抗体および蛍光体集積ナノ粒子のいずれか一方(炭素間三重結合を有さない方)は、炭素間三重結合部分と付加環化反応を起こすアジ基(-N3)を有する。
抗体(1次〜n次抗体のいずれか)または蛍光体集積ナノ粒子にアジ基を導入するための手法は特に限定されるものではないが、たとえば、アジ基とともに、抗体または蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する官能基と結合可能な他の官能基を有する化合物(アジド)を用いて、そのようなアジドの官能基と抗体または蛍光体集積ナノ粒子の官能基とを反応させる手法が好ましい。
好ましいアジドとしては、分子の一端にアジ基を有し、他端に抗体または蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する官能基(例;−NH3、−SH基)と反応して共有結合を形成可能な他の官能基(例;NHS基、マレイミド基等)を有するアジドが挙げられる。このような「アジド」のアジ基と官能基との間には、前述した親水性高分子に由来する部分が含まれていてもよい。
上記以外の本発明に使用可能な他のアジドとして、上記アジドと同様にチオール基(SH基)やマレイミド基等の官能基を有し、さらに親水性高分子のリンカー(例;PEG等)由来部分を有するアジドを挙げることができる(下記式(3)および(4)参照)。ここで、DAB染色等により副生される不溶性物質の蛍光シグナルへの悪影響を避けるために、アジド分子中の親水性高分子のリンカーに由来する部分の長さは、前述したとおり、ユニット数(オキシエチレン単位で)8以上の長さであることが好ましく、8以上70以下であることがより好ましい。
リンカー由来部分を有するアジドの好適な具体例(NHSエステル)としては、「Azide polyethylene glycol NHS」(製品番号:PG2-AZNS-400, PG2-AZNS-600, PG2-AZNS-1k, PG2-AZNS-2k, PG2-AZNS-3k, PG2-AZNS-5k、NANOCS社製)、「Azido-PEG8-NHS ester」(製品番号:CLK-L032-5、jenabioscience社製)(下記式(3)でn=7の場合)、「NHS−PEG12−Azide」(サーモサイエンティフィック社製、製品コード:11338251)(下記式(3)でn=11の場合)が挙げられる。
上記以外のリンカー由来部分を有するアジドの好適な具体例(マレイミドエステル)としては、「Azide-PEG-Maleimide」(製品番号:PG2-AZML-400, 600, 1k, 2k, 3k, 5k、NANOCS社製)が挙げられる。ここで、これら「PG2-AZML-400」〜「PG2-AZML-5K」は、それぞれ、上記「PG2-AZNS-400」〜「PG2-AZNS-5K」のNHS基をマレイミド基に置換したものであるので、オキシエチレン単位や分子長は対応する製品(表1参照)とほぼ同じである。また、下記式においてm=8以上〜70以下であることが好ましい。
抗体とアジドとの結合は、アジド由来のアジ基(−N3)および抗体の抗原との免疫反応性が損なわれないように抗体とアジドとを共有結合することができれば特に限定されないが、例えば、抗体のアミノ基と、NHS基を有するアジド化合物を反応させる事で行なうことができる。例えば、0.05M ホウ酸ナトリウム緩衝液(sodium borate buffer)中において、抗体1モルに対してNHS基を有するアジド化合物を5〜100モル加えることにより行なうことができる。
蛍光体集積ナノ粒子に対してアジドを結合する方法は、蛍光体集積ナノ粒子に上記アジドを結合させることができれば特に限定されないが、好適な方法として、(I)アジド(主として市販されているアジド)が有する官能基(例;NHS基、マレイミド基)と反応して共有結合を形成することができる官能基(例;アミノ基、SH基)を蛍光体集積ナノ粒子の表面に導入する工程、(II)上記アジドの官能基と蛍光体集積ナノ粒子の官能基とを反応させて、蛍光体集積ナノ粒子にアジドを結合させる(つまりアジ基を導入する)工程、を有する方法が例示される。
本発明で用いる所定の抗体および蛍光体集積ナノ粒子のいずれか一方(アジ基を有さない方)は、アジ基と付加環化反応を起こす炭素間三重結合(C≡C)を有する。
抗体(1次〜n次抗体のいずれか)または蛍光体集積ナノ粒子に炭素間三重結合部分を導入するための手法は特に限定されるものではないが、たとえば、炭素間三重結合部分とともに、抗体または蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する官能基と反応して共有結合を形成可能な反応性官能基(当該共有結合の形成に炭素間三重結合自体が用いられない限り、炭素間三重結合を有する基自体が当該反応性基であってもよい。)を有する化合物を用いて、そのような化合物の官能基と抗体または蛍光体集積ナノ粒子の官能基とを反応させる手法が好適である。
好ましいアルキン化合物としては、分子の一端に炭素間三重結合部分を有し、他端に抗体または蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する官能基(例;−NH3、−SH基)と反応して共有結合を形成可能な反応性官能基(例;NHS基、マレイミド基等)を有する、二官能性のアルキン化合物が挙げられる。
本発明に使用可能な他のアルキン化合物として、上述した官能基(例;NHS基、マレイミド基等)を有し、親水性高分子のリンカー(例;PEG等)由来部分を有するアルキン化合物を挙げることができる(下記各式(6)参照)。
本発明に使用可能なアルキン化合物として、炭素間三重結合を有する環状構造(シクロアルキル構造)、たとえば8員環構造を分子内にもつアルキン化合物が好ましい。そのような8員環部分を分子内にもつアルキン化合物であれば、金属触媒(例;銅触媒)を用いずにアジ基と炭素環三重結合部分との結合反応(ヒュスゲン環化付加反応)を引き起こすことができるからである。
抗体とアルキンとの結合は、アルキン由来の炭素間三重結合部分が損なわれず、また、抗体の免疫反応性が損なわれないように抗体とアルキンとを共有結合することができれば特に限定されないが、例えば、抗体のアミノ基と、NHS基を有するアルキン化合物を反応せせることで行なうことができる。例えば、0.05M ホウ酸ナトリウム緩衝液(Sodium Borate buffer)中において、抗体1モルに対してNHS基を有するアルキン化合物を5〜100モル加えることにより行なうことができる。
蛍光体集積ナノ粒子に対してアルキン化合物を結合させる方法は、蛍光体集積ナノ粒子にアルキン化合物を結合させることができれば特に限定されない。アルキン化合物と蛍光体集積ナノ粒子との結合の好適な方法としては、前述した「蛍光体集積ナノ粒子とアジドとの結合方法」において、アジドの代わりにアルキン化合物を用いることで行うことで達成できるため、その説明を省略する。
本発明に係る免疫染色試薬キットは、組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識するため免疫染色試薬キットであって、蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬と、前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体、または該抗体を介して間接的に固定される別の抗体を含む抗体試薬とを備えており、前記蛍光体集積ナノ粒子および前記抗体のいずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、前記アジ基と前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応により、前記抗体と前記蛍光体集積ナノ粒子との分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により当該両分子が直接的または間接的に結合することで前記抗原を蛍光標識するようにして用いられる。また、免疫染色試薬キットは、金属触媒の溶液をさらに有してもよい。
抗体試薬は、前述したアルキン(若しくはアルキン化合物)またはアジドが結合された所定の抗体(例;HER2抗体等)を所定の緩衝液に溶解したものであり、該抗体は組織切片上の特定の抗原に特異的に結合しうるものである。抗原に結合する1次抗体のみならず、1次抗体に加えて2次抗体〜n次抗体を別の抗体試薬として本発明に係る免疫染色試薬キット中に含める場合もある。
標識試薬は、アルキン(若しくはアルキン化合物)またはアジドが結合された蛍光体集積ナノ粒子を所定の溶媒中に分散させたものであり、組織切片上の抗原と結合した抗体との間でヒュスゲン環化付加反応により前記抗原の蛍光標識に用いられるものである。標識試薬中の蛍光体集積ナノ粒子の濃度は、組織切片上で上記ヒュスゲン環化付加反応を引き起こす濃度以上に調節されていればよい。標識試薬に含有させる蛍光体集積ナノ粒子の濃度としては、0.005〜0.500nMに設定する例が挙げられる。標識試薬に使用可能な緩衝液としては、リン酸緩衝液(PBSを含む)、水、MES等が挙げられる。また、標識試薬には、各種のブロッキング剤を含めてもよく、このブロッキング剤の濃度は終濃度で1%以下に設定することが好ましい。このようなブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン(αカゼイン、βカゼイン、γカゼイン)、ゼラチン等の生物由来物質が挙げられる。
本発明に係る免疫染色試薬キットに任意で含まれる金属触媒の溶液は、所定の抗体と上記蛍光体集積ナノ粒子とのヒュスゲン環化付加反応の触媒能を有する金属イオンを含有する溶液である。触媒として、アジドとアルキンのヒュスゲン環化付加反応を触媒可能なCu、Zr、W、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Au、Zn、Cd、Hgおよび他の金属のイオンからなる群から選択されるいずれか1種または2種以上を使用することができるが、このうち反応効率に優れるCuが特に好ましい。この他にも、例えば、溶液中で金属イオンを生じうる粒子状の金属触媒を使用することができる。
本発明に係る免疫染色法は、換言すれば、アルキン(もしくはアルキン化合物)またはアジドが結合された前述の抗体を抗原抗体反応により組織切片上の抗原に結合・固定させる免疫反応工程と、アジドまたはアルキン(もしくはアルキン化合物)が結合された前述の蛍光体集積ナノ粒子を、抗原に固定された上記抗体にヒュスゲン環化付加反応により結合させる染色反応工程を含む。免疫染色法は、上記2工程(免疫反応工程、染色反応工程)を含む下記一連の工程を経て実施されることが好ましい。
組織切片は、一般に市販されているものを購入してもよいが、例えば抗原について前述したところの各種のガンが疑われる被験者(ヒト、イヌ、ネコ等)の組織について一般的な病理組織診断に用いる公知の方法で調製することができる。この場合、まず被験者の組織切片をホルマリン等により固定し、アルコールで脱水処理した後、キシレン処理を行い、高温のパラフィン中に浸してパラフィン包埋を行うことで組織切片を作製することができる。
キシレンに組織切片を浸漬させてパラフィンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。次に、エタノールに組織切片を浸漬させてキシレンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でエタノールを交換してもよい。次に、水(例;蒸留水)に組織切片を浸漬させてエタノールを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中で水を交換してもよい。
組織化学染色として免疫組織化学染色を行う場合、公知の方法にならい、目的とする生体分子の賦活化処理を行うことが好ましい。賦活化条件に特に定めはないが、賦活液としては、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mトリス塩酸緩衝液等を用いることができる。加熱機器としては、オートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターバス等を用いることができる。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。賦活化処理の加熱処理の温度は50〜130℃、加熱処理の時間は5〜30分で行うことができる。次に、容器に入れたPBSに賦活処理後の切片を浸漬させて洗浄を行う。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。
免疫反応工程は、組織切片上の抗原に対して前述の抗体を固定させる工程である。具体的には、抗原抗体反応により、組織切片上の抗原に対して直接的に1次抗体を固定する工程、または、該固定に加えて、前記抗原に対して該1次抗体を介して別の抗体(2次〜n次抗体)を間接的に固定する工程である。
染色反応工程は、上記免疫反応工程で抗原に固定された1次抗体〜n次抗体のいずれかに対し、アジド−アルキン間のヒュスゲン環化付加反応でもって、前述の蛍光体集積ナノ粒子を共有結合させる工程である。
染色反応工程の後に、PBSにより組織切片を洗浄する洗浄工程を行って未反応の蛍光体集積ナノ粒子を除くことが好ましい。この洗浄工程としては、例えば、室温(1〜30℃)に調節されたPBSに組織切片を浸漬させて0.5〜1時間放置する洗浄工程を行うことができる。ここで、上記浸漬中にPBS等を交換してもよい。
上記免疫染色の後に、組織切片に対してヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)等の染色を行って、組織切片の細胞の形状や細胞の各部の位置情報を得るための形態観察用処理工程を任意に行うことができる。この染色にともなって組織切片を観察用に透徹、封入すること等の処理を行ってもよい。HE染色は、例えば、免疫染色した切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行い、その後、該組織試料を45℃の流水で3分間洗浄し、次に、1%エオシン液で5分間染色してエオシン染色を行う。
(明視野観察)
明視野観察は、組織切片の細胞または組織内の染色対象とする細胞器官の分布情報を取得するために行われる。明視野観察の一般的な方法として、例えば、上記したように免疫染色の後にヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)を行った組織切片を光学顕微鏡で観察を行う。なお、形態観察染色に用いられるエオジンは、明視野において観察できるだけでなく、所定の波長の励起光を照射した時に自家蛍光も発するので、適切な波長および出力の励起光を染色された組織試料に照射することで、蛍光顕微鏡によっても観察できる。
染色した上記切片に対し蛍光顕微鏡を用いて、広視野の顕微鏡画像から蛍光の輝点の数又は発光輝度を計測する。用いた蛍光物質の吸収極大波長及び蛍光波長に対応した励起光源及び蛍光検出用光学フィルターを選択する。輝点数又は発光輝度の計測は、市販の画像解析ソフト、例えば、株式会社ジーオングストローム社製の全輝点自動計測ソフトG−Countを用いて行うことができる。なお、顕微鏡を使用した画像解析自体は周知であり、例えば、特開平9−197290に開示される手法を用いることができる。顕微鏡画像の視野は、3mm2以上であることが好ましく、30mm2以上であることがさらに好ましく、300mm2以上であることがさらに好ましい。顕微鏡画像から計測された輝点数、及び/又は発光輝度に基づいて、目的とする特定の遺伝子由来のタンパク質(前述)の発現量等を評価する。
{精度評価}
本発明に係る上記免疫染色法、該免疫染色法に用いられる免疫染色試薬キットの検出精度の評価方法については、以下のように行うことができる。
免疫染色の検出対象をHER2タンパク質として評価する場合、HER2の発現が全くない組織切片(IHC法スコア=0のもの(下記表3参照))を用意し、これに対して上述した免疫染色および蛍光観察を行い、この結果から蛍光体集積ナノ粒子の組織切片への非特異的な吸着に起因する輝点数がどの程度出現するかを調べ、該出現数により上記検出精度を評価することができる(評価1)。この輝点数が0〜5のものを精度が良好であるものと評価することができる。なお、IHC法とは、「HER2検査ガイド第三版」(2009年9月 トラスツズマブ病理部会作成)に記載の方法であり、IHC法スコアとは「HER2検査ガイド第三版」に記載の評価基準である(下記表3参照)。
上記とは別に、HER2の発現が顕著な組織切片(IHC法スコア=2や3のもの)を用意し、これに対して上述した免疫染色および蛍光観察を行い、この結果から蛍光体集積ナノ粒子の組織切片への特異的な吸着に起因する輝点の蛍光強度がどの程度得られるかを計測し、該蛍光強度により上記検出精度を評価することができる(評価2)。この際に、ポジティブコントロールの輝点から得られる蛍光強度との相対値として蛍光シグナルの強度を評価することができ、例えば相対値70以上を検出精度が問題ないものと判断することができる。
本発明に係る免疫染色試薬キットに含まれる標識試薬の長期保存性の評価については、例えば、以下のように行うことができる。製造直後の標識試薬と、所定の促進条件(例;30℃、1カ月)に暴露した標識試薬とを使用してそれぞれ同様に前述の免疫染色等を行い、得られる蛍光強度(特異的シグナルの強度)を定量および相対評価することで行うことができる。例えば、促進条件下に暴露した標識試薬を使用して得られる蛍光シグナルの強度が、製造直後の標識試薬を使用して得られる蛍光シグナルの強度と比較して、70%以上のものを長期保存性に優れる標識試薬として評価することができる。
蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の製造を以下の方法で行った。
製造例1において、スルホローダミン101(Sulforhodamine101、シグマアルドリッチ社製)20.9mg、メラミン樹脂原料ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)0.95gを用いたこと以外は製造例1と同様にして蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径550nm)を製造した。
製造例1において、スルホローダミン101(Sulforhodamine101、シグマアルドリッチ社製)23.1mg、メラミン樹脂原料ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)1.05gを用いたこと以外は製造例1と同様にして蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径800nm)を製造した。
製造例1において、Sulforhodamine101(シグマアルドリッチ社製)9.9mg、メラミン樹脂原料ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)0.45gを用いたこと以外は製造例1と同様にして蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径40nm)を製造した。
実施例1−1では、以下に説明するように、アルキン化合物を抗体に結合させるとともに、アジドを蛍光体集積ナノ粒子に結合し、さらに50mMの臭化銅(CuBr)からなる銅イオンの触媒溶液を用意することで免疫染色試薬キットを製造した。このときに臭化銅(CuBr)を固体状態でキット内に入れておき、所定量の水を加える事で所定濃度の溶液となるようにした。さらに、これを用いてHER2抗原の発現量の異なる組織切片を載せた検体スライド(組織アレイスライド)について免疫染色を行った。
下記工程(1)〜(7)の方法により、{製造例I}で製造した蛍光体集積ナノ粒子に対してアルキン化合物を結合させた。
2次抗体としてAbD serotec社製の抗ウサギ抗体(5196-4504)をPBSに1.0mg/mLとなるように溶解した。この抗ウサギ抗体1モルに対して「NHS-PEG12-Azide」(カタログNo. 26131,サーモサイエンティフィック社製(またはサーモフィッシャーサイエンティフィック社製,以下同様))を100モルとなるように加えて混合した。混合した溶液をさらに37℃で2時間放置して「NHS-PEG12-Azide」のNHS基と上記抗体のアミノ基とを結合する反応を行った。該反応の後に反応液についてゲル濾過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)に供して、分画することで、PBSに上記抗体が溶解した抗体試薬を製造した。
銅触媒として、臭化銅(CuBr)(製品番号212865、シグマアルドリッチ社製)購入し、銅イオン濃度が50mMとなるようにPBSにより希釈して金属触媒の溶液を調製した。
上記アルキン化合物で修飾した蛍光体集積ナノ粒子の分散液(標識試薬)、抗HER2抗体(ウサギ由来、4B5、ベンタナ社製)上記アジドで修飾した抗ウサギ抗体の溶液(2次抗体試薬)、および上記金属触媒の溶液で構成される免疫染色試薬のキットを用いて、以下に説明するように、免疫染色を行った。
工程(1A):組織アレイスライドをキシレンに30分浸漬させて組織切片中のパラフィンを除去してキシレンで置換した。途中3回キシレンを交換した。
工程(2A):工程(1C)を経た組織アレイスライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に30分浸漬させて、組織切片中の水をクエン酸緩衝液で置換した。
工程(3A):抗HER2抗体液(ウサギ由来、4B5、ベンタナ社製)を、工程(2D)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温で30分放置した。
工程(4A):BSAを1重量%含有するPBSでもって、上記アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子を0.05nMに希釈した。次に、該希釈により得られる蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬0.1mLを組織切片全体に滴下して室温で1時間放置した。
工程(5A):工程(4A)を経た組織アレイスライドの組織切片をそれぞれ30分PBSに浸漬させた。
工程(6A):工程(5A)を経た組織アレイスライドの組織切片を4%中性パラホルムアルデヒド溶液で10分間固定処理した後、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行った。HE染色は、免疫染色した組織切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った。その後、該切片を45℃の流水で3分間洗浄した。次に、1%エオジン液で5分間染色してエオジン染色を行った。その後、純エタノールに5分間漬ける操作4回行い、洗浄・脱水を行った。続いてキシレンに5分間漬ける操作を4回行い、透徹を行った。
上記一連の工程を経た組織切片に対して所定の励起光を照射して蛍光を発光させた。その状態の組織切片を蛍光顕微鏡(BX−53,オリンパス社製)により観察および撮像を行った。また、輝点計測は、ImageJ FindMaxima法により計測した。
(評価1){非特異的な吸着の少なさの評価}
表4において、「評価1」は、HER2抗原が存在しない組織切片(IHC法スコアでHER2(0)のもの)について上記免疫染色を含む一連の工程を行った結果とそれに基づく評価結果を示しており(表4において、上が評価1の結果、下の数字が輝点数)、より輝点数が少ない方が非特異的な吸着が少なく抗原の検出精度が高いことを示す。具体的には、上記HER2抗原が存在しない組織切片の観察視野中の平均1細胞当たりについての非特異的吸着に起因する輝点数と、該輝点数に基づく精度評価の結果を示す。この精度評価については、評価「○」は、上記観察で1細胞当たりの輝点数が5以下となる場合であり、蛍光体集積ナノ粒子や所定の抗体の非特異的な吸着が少なく検出精度が高いことを示す。また、評価「×」は、上記観察で計測された1細胞当たりの輝点数が6以上となる場合であり、蛍光体集積ナノ粒子の非特異的な吸着が多く検出精度が低いことを示す。評価「計測不可」は、輝点自体が確認できない場合を示す。
「評価2」は、HER2抗原を高発現している組織切片(IHC法スコアでHER2(3+)のもの)について上記免疫染色を含む一連の工程を行った結果とそれに基づく評価結果(蛍光シグナルの強さの評価結果)を示しており、輝点からの蛍光シグナルがより強いほど抗原が検出されやすい(抗原の検出精度が高い)ことを示す。
実施例1−1で製造した標識試薬の一部を取り分けて製造直後の時点から30℃で1カ月間保存し、保存した標識試薬を用いて、HER2抗原を高発現している組織切片(IHC法スコアでHER2(3+)のもの)について、上記免疫染色を含む一連の工程を同様に行った。そして、この操作で得られた蛍光シグナルの強度および輝点数を、上記製造の直後の標識試薬を用いて同様に免疫染色等した場合に得られる蛍光シグナルの強度および輝点数とそれぞれ比較し、標識試薬を30℃で1カ月間保存することにより蛍光シグナルの強度および輝点数がどの程度低下・減少するかを調べた。
輝点保持率(%)=輝点数(30℃1カ月保存)/輝点数(製造直後)×100{%}
評価3の項目において、評価「○」は、上記輝点保持率(%)が70%以上のものを示し標識試薬の保存性が高いこと(ひいては免疫染色試薬キットの保存性が高いこと)を示す。評価「×」は、輝点保持率(%)が70%未満のものを示し、上記保存性が低いことを示す。
実施例1−1で使用した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IIで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径550nm)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、アルキン化合物で修飾した(炭素間三重結合部分を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、免疫染色を含む一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
実施例1−1で使用した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IIIで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径800nm)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、アルキン化合物で修飾した(炭素間三重結合部分を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、免疫染色を含む一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
実施例1−1で使用した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IVで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径40nm)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、アルキン化合物で修飾した(炭素間三重結合部分を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、免疫染色を含む一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
{アジドで修飾した蛍光体集積ナノ粒子(150nm)の製造}
実施例1−1の「アルキン化合物で修飾した蛍光体集積ナノ粒子(150nm)の製造」において、使用したアルキン化合物「ALK-PEG-NHS」(PG2-AKNS-2k、NANOCOS社)の代わりに、「NHS-PEG12-Azide」(カタログNo. 26131,サーモサイエンティフィック社製)を最終濃度が10mMとなるようにして使用することにより、アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子(150nm)を製造した。
実施例1−1の「アジドで修飾した抗ウサギ抗体の製造」において、使用した「NHS-PEG12-Azide」(カタログNo. 26131,サーモサイエンティフィック社製)の代わりに、「ALK-PEG-NHS」(PG2-AKNS-2k、NANOCOS社)を使用することにより、アルキンで修飾した(炭素間三重結合部分を有する)抗ウサギ抗体の製造を製造した。
実施例2−1において、蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IIで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径550nm)を使用すること以外は実施例2−1と同様に、アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、アルキンで修飾した(炭素間三重結合部分を有する)抗ウサギ抗体を用い、一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
実施例2−1において、蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IIIで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径800nm)を使用すること以外は実施例2−1と同様に、アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、アルキンで修飾した(炭素間三重結合部分を有する)抗ウサギ抗体を用い、一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
実施例2−1において、蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに、製造例IVで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径40nm)を使用すること以外は実施例2−1と同様に、アジドで修飾した(アジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子の製造を行ない、アルキンで修飾した(炭素間三重結合部分を有する)抗ウサギ抗体を用い、一連の工程と評価等を行った。この結果を表4に示す。
{ビオチン化抗ウサギ抗体の製造}
AbD serotec社製 抗ウサギ抗体(5196-4504)を使用し、これに対して、Biotin Labeling kit-SH(同仁化学)を用いてビオチン化を行うことにより、ビオチン化した抗ウサギ抗体を得た。
(ストレプトアビジンへのSH基導入)
SH基を有するストレプトアビジンの調製は以下のように行った。
製造例Iで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)に対して、下記工程(1)〜(3)を行うことにより該蛍光体集積ナノ粒子にアミノ基を導入した。
アミノ基を導入した上記蛍光体集積ナノ粒子を、EDTAを2mM含有したPBS{リン酸緩衝液生理的食塩水}に3nMとなるように分散させた。この分散液に対して、終濃度10mMとなるように、リンカーとしてのSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、Succinimidyl−{(N−maleimidopropionamido)−dodecaethyleneglycol}ester)を混合し、混合液を室温で1時間反応させた。反応後の該混合液を10000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTA2mM含有したPBSを加えて沈殿物を分散させた。再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、蛍光体集積ナノ粒子にPEG鎖を介してマレイミド基が付加した蛍光体集積ナノ粒子が得られた。
マレイミド基を付加した上記蛍光体集積ナノ粒子を、EDTAを2mM含有したPBSに0.67nMとなるように分散させた。この蛍光体集積ナノ粒子の分散液740μLと、SH基を導入した上記ストレプトアビジン0.04mgとを混合し、室温で1時間反応させた。この反応液に10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲル濾過カラムを用いて未反応のストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジンで修飾された蛍光体集積ナノ粒子を得た。
実施例1−1の{免疫反応工程}と{染色反応工程}に代えて、上記ビオチン化した抗HER2抗体、およびストレプトアビジンで修飾した蛍光体集積ナノ粒子を用いて、以下の工程(A)を行った。それ以外は、実施例1−1と同様に免疫染色や評価等を行った。この結果を表4に示す。
実施例1−1の{賦活化処理工程}後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、BSAを1重量%含有するPBSを滴下して室温で1時間放置した。この組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、抗HER2抗体液(ウサギ由来、4B5、ベンタナ社製)を、工程(2D)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温で30分放置した。その後、上記ビオチン化した抗ウサギ抗体の溶液(濃度0.05nM)を組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温下30分間放置した。組織アレイスライドをPBSで洗浄後、ストレプトアビジンで修飾した蛍光体集積ナノ粒子の分散液(粒子濃度0.05nM)を上記組織切片全体に滴下し、室温下1時間反応させた。
{フルオレセイン修飾抗ウサギ抗体の製造}
「抗ウサギ抗体」(5196-4504、AbD serotec社製)を使用し、これに対して、「Fluorescein Labeling Kit-NH2」(LK01、同仁化学研究所社製)を用いてフルオレセイン修飾を行うことにより、フルオレセイン修飾した抗ウサギ抗体を得た。
(抗フルオレセイン抗体へのSH基導入)
SH基を有するストレプトアビジンの調製は以下のように行った。
製造例Iで製造した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)に対して、下記工程(1)〜(3)を行うことにより該蛍光体集積ナノ粒子にアミノ基を導入した。
アミノ基を導入した上記蛍光体集積ナノ粒子を、EDTAを2mM含有したPBS{リン酸緩衝液生理的食塩水}に3nMとなるように分散させた。この分散液に対して、終濃度10mMとなるように、リンカーとしてのSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、Succinimidyl−{(N−maleimidopropionamido)−dodecaethyleneglycol}ester)を混合し、混合液を室温で1時間反応させた。反応後の該混合液を10000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTA2mM含有したPBSを加えて沈殿物を分散させた。再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、蛍光体集積ナノ粒子にPEG鎖を介してマレイミド基が付加した蛍光体集積ナノ粒子が得られた。
マレイミド基を付加した上記蛍光体集積ナノ粒子を、EDTAを2mM含有したPBSに0.67nMとなるように分散させた。この蛍光体集積ナノ粒子の分散液740μLと、SH基を導入した上記抗フルオレセイン抗体0.04mgとを混合し、室温で1時間反応させた。この反応液に10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲル濾過カラムを用いて未反応の抗フルオレセイン抗体等を除去し、抗フルオレセイン抗体で修飾された蛍光体集積ナノ粒子を得た。
実施例1−1の{免疫反応工程}と{染色反応工程}に代えて、上記フルオレセイン修飾した抗ウサギ抗体、および抗フルオレセイン抗体で修飾した蛍光体集積ナノ粒子を用いて、以下の工程(B)を行った。それ以外は、実施例1−1と同様に免疫染色や評価等を行った。この結果を表4に示す。
実施例1−1の{賦活化処理工程}後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、BSAを1重量%含有するPBSを滴下して室温で1時間放置した。この組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、抗HER2抗体液(ウサギ由来、4B5、ベンタナ社製)を、工程(2D)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温で30分放置した。その後、上記フルオレセイン修飾した抗ウサギ抗体の溶液(濃度0.05nM)を組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温下30分間放置した。抗フルオレセイン抗体で修飾した蛍光体集積ナノ粒子の分散液(粒子濃度0.05nM)を上記組織切片全体に滴下し、室温下1時間反応させた。
実施例1−1で使用した蛍光体集積ナノ粒子(平均粒子径150nm)の代わりに蛍光色素のスルホローダミン101(Sulforhodamine101、製品番号S3388、シグマアルドリッチ社製)を用いて、以下の工程(C)を行うことで、アルキン化合物で修飾した蛍光色素の製造を行った。それ以外の操作については、実施例1−1と同様にして、アジドで修飾した抗HER2抗体の製造、および、免疫染色を含む一連の工程と評価等を行った。なお、免疫染色等では、アルキン化合物で修飾した蛍光体集積ナノ粒子に代えてアルキン化合物で修飾したスルホローダミン101を用いた。この結果を表4に示す。
Journal of Physical Chemistry C, 114(14), 6255-6264; 2010に記載の方法を参考に、10mgの酸クロライド体のスルホローダミン101(シグマアルドリッチ社)とエチレンジアミン(E0077、東京化成社)とを、Et3N存在下、ジクロロメタン(CH2Cl2)1mLに分散させて一晩反応を行ない、スルホローダミン101にアミノ基を導入した。得られたアミノ基が導入されたスルホローダミン101はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。
(1)実施例1−1〜2−4では、アジ基(または炭素間三重結合部分を有する)抗体を組織切片上の抗原に結合・固定させた状態で、該抗体に対して、炭素間三重結合部分(またはアジ基を有する)蛍光体集積ナノ粒子をヒュスゲン環化付加反応により結合させた。実施例の免疫染色法(およびこれに用いられる免疫染色試薬キット)によれば、上記結合をビオチン−ストレプトアビジン間の結合で行う免疫染色法(比較例1)と比べて、非特異的な結合が減少させることができた(上記表4の評価1参照)。
アジド(またはアルキン化合物)を結合した蛍光体集積ナノ粒子(標識試薬の染色成分)を1カ月30℃の厳しい促進条件下に放置後に前述した免疫染色に使用したところ、実施例1−1〜2−4の「評価3」の結果として示したように(表4参照)、上記ヒュスゲン環化付加反応による結合が問題なくなされ、染色性能が安定に維持された。これは、アルキンやアジドは低分子の水中で安定な化合物であり、上記標識試薬の劣化が起きなかったためと考えられる。一方、アジドの代わりにストレプトアビジンや抗ハプテン抗体を利用した比較例1,2では染色性能が維持できなかった。これは、ストレプトアビジンや抗ハプテン抗体等のタンパク質分子に劣化が起きたためと考えられる。
Claims (14)
- 組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色法であって、
前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体または該抗体を介して間接的に固定される別の抗体と、蛍光体集積ナノ粒子との、いずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、
前記抗原に前記抗体を固定させた後、
前記アジ基と、前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応でもって、前記抗体と蛍光体集積ナノ粒子との両分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により前記抗原を前記蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識する免疫染色法。 - 前記蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径が40nm以上500nm以下である、請求項1に記載の免疫染色法。
- 前記蛍光体集積ナノ粒子に、親水性高分子のリンカーを介して、前記アジ基または炭素間三重結合部分が導入されている、請求項1または2に記載の免疫染色法。
- 前記親水性高分子のオキシエチレン単位が8ユニット以上である、請求項3に記載の免疫染色法。
- 前記ヒュスゲン環化付加反応を金属触媒存在下で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の免疫染色法。
- 前記金属触媒が銅イオンである、請求項5に記載の免疫染色法。
- 前記炭素間三重結合部分(C≡C)は、炭素間三重結合部分(C≡C)を有する8員環化合物を結合させることにより導入される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の免疫染色法。
- 組織切片上で該組織切片の抗原を蛍光体集積ナノ粒子により蛍光標識するための免疫染色試薬キットであって、
蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬と、前記抗原に対して抗原抗体反応により直接的に固定される抗体、または、該抗体を介して間接的に固定される別の抗体を含む抗体試薬とを備えており、
前記蛍光体集積ナノ粒子および前記抗体のいずれか一方にアジ基(−N3)が導入され、他方に炭素間三重結合部分(C≡C)が導入されており、
前記抗原に前記抗体を固定させた後、前記アジ基と前記炭素間三重結合部分とのヒュスゲン環化付加反応により、前記抗体と前記蛍光体集積ナノ粒子との分子間にトリアゾール環を介した結合を形成し、該形成により前記抗体と前記蛍光体集積ナノ粒子とが結合することで前記抗原を蛍光標識するようにして用いられる、免疫染色試薬キット。 - 前記蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径が40nm以上500nm以下である、請求項8に記載の免疫染色試薬キット。
- 前記蛍光体集積ナノ粒子に、親水性高分子のリンカーを介して、前記アジ基または炭素間三重結合が導入されており、
該親水性高分子のリンカーの先端にアジドまたはアルキンが結合されている、請求項8または9に記載の免疫染色試薬キット。 - 前記親水性高分子のオキシエチレン単位が8ユニット以上である、請求項10に記載の免疫染色試薬キット。
- 前記ヒュスゲン環化付加反応を触媒する金属触媒試薬をさらに備えた、請求項8〜11のいずれか一項に記載の免疫染色試薬キット。
- 前記金属触媒が銅イオンである、請求項12に記載の免疫染色試薬キット。
- 前記炭素間三重結合部分(C≡C)は、炭素間三重結合部分(C≡C)を有する8員環化合物を結合させることにより導入される、請求項8〜11のいずれか一項に記載の免疫染色試薬キット。
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