JP2023126996A - 免疫染色方法及び免疫染色組織標本の作製方法 - Google Patents

免疫染色方法及び免疫染色組織標本の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、標的物質の検出精度を向上させることができる免疫染色方法及び免疫染色組織標本の作製方法を提供することである。【解決手段】本発明の免疫染色方法は、組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識する免疫染色方法であって、前記標的物質を蛍光標識体で標識する処理(蛍光標識処理)と、前記蛍光標識処理後に前記組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄する処理(温水洗浄処理)と、を具備することを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、免疫染色方法及び免疫染色組織標本の作製方法に関し、特に、標的物質の検出精度を向上させることができる免疫染色方法等に関する。
従来の免疫染色では、病理組織の形態や「抗原など、病理組織に存在する特定の物質」の発現を観察するために蛍光標識体を用いた染色がなされており、特に蛍光粒子では輝度が高く粒子数計測が可能な点から、抗原に結合した蛍光粒子の顕微鏡画像より抗原の状態や量を確認することがなされている。
しかしながら、従来技術では、蛍光標識体を用いた染色の際に、組織切片から生じる自家蛍光の輝度が高く、観察対象であった蛍光標識体の輝度を相対的に低下させ、蛍光標識体の観察を妨げてしまう現象が起きることがあった。
特に、乳がん培養細胞や乳がん組織や膀胱がん組織などの自家蛍光の弱い組織切片では、従来技術を用いた標的物質の検出が可能であったが、肺がん組織などの自家蛍光の強い組織切片では、従来技術では標的物質の検出を自家蛍光の輝度が阻害するため、標的物質を正確に検出することはできなかった。
そのため、自家蛍光の輝度を低減するなど、蛍光標識体の輝度と自家蛍光の輝度の比(以下、「S/N比」ともいう。)を上昇させ、標的物質を正確に検出するための技術が求められている。
また、これまで、自家蛍光の輝度を低減する方法として、自家蛍光抑制剤を活用して染色を行う方法と、画像処理を活用して自家蛍光の輝度を抑える方法(例えば、特許文献1参照。)が存在した。
しかしながら、自家蛍光抑制剤を使用すると、下記3点の懸念点が挙げられる。
一つ目は、自家蛍光抑制剤が組織切片全体に効果を発揮し、自家蛍光の輝度のみならず蛍光標識体の輝度までも低減してしまうという点である。
二つ目は、自家蛍光抑制剤は作用後に洗浄する必要があるため、洗浄回数が増加する影響で、蛍光標識体が洗浄により色落ちし、標的物質が正確に検出されない可能性がある点である。
三つ目は、自家蛍光抑制剤を用いると組織切片が着色し、明視野画像と蛍光画像を合わせて画像解析を実施している場合は、解析精度が低下するため、本来の染色画像とは異なる画像を得ている可能性がある点である。
また、画像処理の懸念点には、画像取得などの処理を行った人物間で画像の取捨選択に恣意性が出てしまう点と、周波数などの数値に基づき自家蛍光と思われるシグナルを一律に除去する場合は蛍光標識体のシグナル自体も過剰に除去している可能性がある点と、画像処理の方法が適切であるかを判断する術がない点の3点が挙げられ、標的物質の検出結果にバラつきが生じ、検出精度が低下してしまう可能性がある。
そのため、前記したような懸念点を改善する方法が望まれている。
国際公開第2019/087853号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、標的物質の検出精度を向上させることができる免疫染色方法及び免疫染色組織標本の作製方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識した後、当該組織切片を所定の温度の温水で洗浄することによって、標的物質の検出精度が向上することを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識する免疫染色方法であって、
前記標的物質を蛍光標識体で標識する処理(蛍光標識処理)と、
前記蛍光標識処理後に前記組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄する処理(温水洗浄処理)と、を具備することを特徴とする免疫染色方法。
2.前記蛍光標識処理後に前記組織切片を形態観察用染色液で染色する処理(形態観察用染色処理)を具備することを特徴とする第1項に記載の免疫染色方法。
3.前記蛍光標識処理後に、前記蛍光標識体と前記組織切片とを固定液で固定化する処理(固定化処理)を具備することを特徴とする第1項又は第2項に記載の免疫染色方法。
4.組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識した免疫染色組織標本の作製方法であって、
前記標的物質を蛍光標識体で標識する処理(蛍光標識処理)と、
前記蛍光標識処理後に前記組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄する処理(温水洗浄処理)と、を具備することを特徴とする免疫染色組織標本の作製方法。
本発明の上記手段により、標的物質の検出精度を向上させることができる免疫染色方法及び免疫染色組織標本の作製方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識した後、当該組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄するので、温水により生体由来の標的物質のタンパク質構造は変性となり、組織切片の自家蛍光を低減することができる。その結果、蛍光標識体の輝度と自家蛍光の輝度の比(S/N比)が上昇し、標的物質の検出精度を向上させることができると推察される。
S/N比の算出方法を説明するための模式図 (a)は、実験例1において、4℃で洗浄した場合の染色スライドを400倍で撮像した画像、(b)は、65℃で洗浄した場合の染色スライドを400倍で撮像した画像 (a)は、実験例2において、4℃で洗浄した場合の染色スライドを400倍で撮像した画像、(b)は、65℃で洗浄した場合の染色スライドを400倍で撮像した画像
本発明の免疫染色方法は、組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識する免疫染色方法であって、前記標的物質を蛍光標識体で標識する処理(蛍光標識処理)と、前記蛍光標識処理後に前記組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄する処理(温水洗浄処理)と、を具備することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記蛍光標識処理後に前記組織切片を形態観察用染色液で染色する処理(形態観察用染色処理)を具備することが、蛍光標識体が染色され、標的物質の検出精度向上の点で好ましい。
前記蛍光標識処理後に、前記蛍光標識体と前記組織切片とを固定液で固定化する処理(固定化処理)を具備することが好ましい。これによって、標的物質と蛍光標識体が架橋され、蛍光標識体の脱離が防止される。
また、本発明の免疫染色組織標本の作製方法は、組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識した免疫染色組織標本の作製方法であって、前記標的物質を蛍光標識体で標識する処理(蛍光標識処理)と、前記蛍光標識処理後に前記組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄する処理(温水洗浄処理)と、を具備することを特徴とする。これにより、標的物質の検出精度の高い免疫染色組織標本を製造することができる。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[本発明の免疫染色方法の概要]
本発明の免疫染色方法は、組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識する免疫染色方法であって、前記標的物質を蛍光標識体で標識する処理(蛍光標識処理)と、前記蛍光標識処理後に前記組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄する処理(温水洗浄処理)と、を具備することを特徴とする。
また、本発明の免疫染色方法は、前記蛍光標識処理後に前記組織切片を形態観察用染色液で染色する処理(形態観察用染色処理)を具備してもよい。さらに、前記蛍光標識処理後に、前記蛍光標識体と前記組織切片とを固定液で固定化する処理(固定化処理)を具備してもよい。
本発明の免疫染色方法は、主に、「標本前処理工程」、「染色工程」及び「標本後処理工程」に分類することができるが、この分類に限定されるものではない。
前記標本前処理工程には、一般的に、脱パラフィン処理、抗原賦活化処理、洗浄処理(本発明に係る温水洗浄処理とは異なる通常の洗浄処理)などが含まれる。
前記染色工程には、免疫染色法に基づき蛍光標識を行う処理(免疫染色処理)、すなわち標的物質を直接的に標識するか、間接的に標識するかに応じた、1次抗体処理、2次抗体処理、蛍光標識処理、固定化処理及び形態観察用染色処理などが含まれる。
前記標本後処理工程には、本発明に係る温水洗浄処理、封入処理、必要に応じて溶媒置換処理及び脱水処理が含まれる。
なお、本発明に係る温水洗浄処理は、前記蛍光標識処理後に行えばよく、固定化処理後に行うことがより好ましい。固定化処理後に温水洗浄処理を行うことによって、組織切片から生じる自家蛍光とともに、固定化液に含まれるアルデヒド由来の自家蛍光も除去することができる。
さらに、温水洗浄処理は、染色プロトコルの封入処理前に行うことが特に好ましい。封入処理前に行うことにより、自家蛍光が生じる可能性のある全ての試薬や作業処理を完了させて、最終的に自家蛍光を除去することができる。
以下、本発明を実施するために必要な処理についてさらに説明する。
本明細書に特に記載されていない事項、例えば、免疫染色法に基づいて染色されたスライドを完成するために必要とされる工程及び処理の全般的な事項や、完成した染色スライドを用いた観察・撮影工程、撮影された画像を用いた画像処理・分析工程などについては、例えば、国際公開WO2013/035703号パンフレットや国際公開WO2013/147081号パンフレット等の記載事項及びその他の一般的な技術的事項に準じた適切なものとすることができる。
<蛍光標識体>
前記蛍光標識処理において、検体スライド上の組織切片に含有される標的物質を蛍光標識する蛍光標識体としては、例えば、以下の蛍光ナノ粒子及び蛍光色素等が挙げられる。
(蛍光ナノ粒子)
蛍光ナノ粒子は、標的物質を蛍光標識するための物質である。蛍光ナノ粒子は、ナノサイズの(直径が1000nm以下の)粒子状の蛍光体であり、1粒子で十分な輝度を有する蛍光を発することのできるものである。撮影される蛍光画像において所望の波長の蛍光(色)を発する蛍光ナノ粒子を選択すればよい。具体的には、蛍光ナノ粒子の極大発光波長が400~1000nmの範囲内にあり、汎用な蛍光顕微鏡カメラの感度域に有することが好ましい。
また、蛍光標識の対象とする標的物質が複数ある場合は、それぞれに対応した異なる波長の蛍光を発する、複数種類の蛍光ナノ粒子を組み合わせて用いればよい。
このような蛍光ナノ粒子は、下記のような無機蛍光体ナノ粒子及び蛍光体集積ナノ粒子に大別することができる。
(無機蛍光体ナノ粒子)
本発明では無機蛍光体ナノ粒子として、量子ドットを用いることができる。これらの無機蛍光体ナノ粒子は、次に述べるような無機蛍光体集積ナノ粒子を調製しなくても単独で、観察可能な輝度を有する輝点の輝度を構成することができる。
量子ドットとしては、II-VI族化合物、III-V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II-VI族量子ドット」、「III-V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを用いることができる。具体的には、国際公開WO2012/133047号公報に例示されたCdSe等の粒子ドットを挙げることができる。これらの無機蛍光体ナノ粒子は、いずれかの種類を単独で用いても、複数種を併用してもよい。
また、上記量子ドットをコアとし、その上にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する量子ドットの表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。具体的には、国際公開WO2012/133047号公報に例示されたCdSe/ZnS等を挙げることができるが、これらに限定されない。
量子ドットは必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、市販されている表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
(蛍光体集積ナノ粒子)
蛍光体集積ナノ粒子は、蛍光色素や無機蛍光体ナノ粒子のような蛍光体を複数個、母体となる物質に内包したり表面に付着させたりすることで集積化した、ナノサイズの(直径が1000nm以下の)粒子状の蛍光体である。免疫染色方法において、このような蛍光体集積ナノ粒子を用いることは、蛍光体を単独で(蛍光色素を一分子で、又は無機蛍光体ナノ粒子を一粒子で)用いる場合と比較して、目的とする生体分子を標識した蛍光標識体1つあたりが発する蛍光の強度を増強し、細胞の自家蛍光等のノイズや他の色素との識別性を高めることができること、また、励起光の照射による褪色を抑制することができることから好ましい。
蛍光体集積ナノ粒子において集積化させる蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素、クマリン系色素、NBD(登録商標)系色素、ピレン系色素、シアニン系色素、ペリレン系色素、オキサジン系色素など、低分子有機化合物(ポリマー等の高分子有機化合物ではないもの)からなる蛍光色素が挙げられる。中でも、スルホローダミン101及びその塩酸塩であるTexasRed(登録商標)などのローダミン系色素や、ペリレンジイミドなどのペリレン系色素は、比較的耐光性が高いため好ましい。
一方、蛍光体集積ナノ粒子において集積化させる無機蛍光体ナノ粒子としては、前述したような、単独で用いることのできる無機蛍光体ナノ粒子と同様のものが挙げられる。
蛍光体集積ナノ粒子を構成する母体としては、樹脂やシリカなど、物理的又は化学的な結合力でもって蛍光体を集積化することのできる物質を用いることができる。
樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等の熱硬化性樹脂;及びスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸メチル共重合体)など、1種類又は2種類以上のモノマーを用いて作製される各種の単独重合体及び共重合体が挙げられる。中でも、メラミン樹脂やスチレン樹脂は、蛍光色素等の蛍光体を集積させたナノ粒子を作製しやすく、また発光強度の高いナノ粒子が得られるため好ましい。
蛍光体集積ナノ粒子の実施形態の例としては、蛍光体として蛍光色素を用い、母体として樹脂を用いて作製される蛍光色素集積樹脂粒子;蛍光体として蛍光色素を用い、母体としてシリカを用いて作製される蛍光色素集積シリカ粒子;蛍光体として無機蛍光体ナノ粒子を用い、母体として樹脂を用いて作製される無機蛍光体ナノ粒子集積樹脂粒子;蛍光体として無機蛍光体ナノ粒子を用い、母体としてシリカを用いて作製される無機蛍光体ナノ粒子集積シリカ粒子などが挙げられる。
例えば、蛍光体としてペリレンジイミド、スルホローダミン101又はその塩酸塩(テキサスレッド)等の蛍光色素を用い、母体としてメラミン樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を用いて作製される蛍光色素集積樹脂粒子は、標識性能等に優れることから、本発明における蛍光体集積ナノ粒子として好ましい。
蛍光体集積ナノ粒子の平均粒径は、通常20~500nm、好ましくは50~200nmの範囲内である。粒径の変動係数は、通常は20%以下、好ましくは5~15%の範囲内である。
なお、蛍光体集積ナノ粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し、蛍光標識用樹脂粒子の断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径(面積円相当径)として測定することができる。
蛍光体集積ナノ粒子の集団についての平均粒径及び変動係数は、十分な数(例えば1000個)の蛍光体集積ナノ粒子のそれぞれについて上記のようにして粒径を測定した、平均粒径はその算術平均として算出され、変動係数は式:100×粒径の標準偏差/平均粒径により算出される。
上記のような蛍光体集積ナノ粒子は公知であり、その製造に用いられる蛍光体及び母体や製造方法などの詳細、実施形態の具体例については、例えば国際公開WO2013/035703号パンフレット、国際公開WO2013/147081号パンフレット、国際公開WO2014/136776号パンフレットなどを参照することができる。
<蛍光標識処理>
蛍光標識処理は、後述する染色工程において、免疫染色法に基づいて、検体スライド上の組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識する処理である。
蛍光標識処理を免疫染色法に基づいて行う場合、賦活化処理を経た検体スライドを免疫染色用の標識液に浸漬し、標識液中の1又は複数の標識剤を直接的又は間接的に標的とするタンパク質(抗原)等の標的物質に結合させて、標識化する。
標的物質である標的タンパク質(抗原)は特に限定されるものではないが、典型的には、免疫染色法に基づく病理診断の対象となり得る遺伝子、例えば、PD-L1、HER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、MET、その他の各種のがん・腫瘍関連遺伝子(いわゆるバイオマーカー遺伝子)由来のタンパク質、さらにはがんの増殖因子、転写制御因子、増殖制御因子受容体、転写制御因子受容体等のがんに関連するタンパク質から選択することができる。
特に、本発明では、PD-L1などの肺がんに特異的に発現するタンパク質が含有された組織切片を用いた場合に、本発明の効果が顕著に発現する。
また、次に述べる抗体も、上記のような標的タンパク質(抗原)に適した結合能を有するものとして、公知の手法に基づいて作製することが可能であり、市販品として入手することもできる。
免疫染色法には様々な手法があり、目的とするタンパク質を蛍光標識して病理診断等に用いることのできるよう組織切片を染色することができれば特に限定されるものではないが、代表的には次のようなものが挙げられる:
蛍光体と1次抗体を連結した蛍光標識1次抗体を用意し、その蛍光標識1次抗体で目的タンパク質を直接的に蛍光標識し染色する方法(1次抗体法);
1次抗体、及び蛍光標識体と2次抗体を連結した蛍光標識2次抗体を用意し、目的タンパク質に1次抗体を反応させた後、その1次抗体に蛍光標識2次抗体を反応させることで、目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する方法(2次抗体法)
1次抗体とビオチンを連結したビオチン修飾1次抗体、及び蛍光体とアビジンないしストレプトアビジンを連結したアビジン修飾蛍光体を用意し、目的タンパク質にビオチン修飾1次抗体を反応させた後、さらにアビジン修飾蛍光体を反応させて、アビジン-ビオチン反応を利用して目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する方法(アビジン-ビオチン併用1次抗体法);
1次抗体、2次抗体とビオチンを連結したビオチン修飾2次抗体、及び蛍光体とアビジンないしストレプトアビジンを連結したアビジン修飾蛍光体を用意し、目的タンパク質に1次抗体を反応させ、次いでビオチン修飾2次抗体を反応させた後、さらにアビジン修飾蛍光体を反応させて、アビジン-ビオチン反応を利用して目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する方法(アビジン-ビオチン併用2次抗体法)。
なお、上記のアビジン-ビオチン併用1次抗体法又はアビジン-ビオチン併用2次抗体法において、ビオチン及びアビジンの代わりに、ハプテン(免疫原性を有さないが抗原性を示し抗体と反応しうる比較的分子量の低い物質)及び抗ハプテン抗体、例えばジコキシゲニン及び抗ジコキシゲニン抗体、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)及び抗FITC抗原、さらには同様の特異的な反応性を有するその他の物質の組み合わせを利用することもできる。
免疫染色法は、上述したような各種の手法のそれぞれにとって標準的な手順及び処理条件に従って行えばよい。
一般的には、検体を載置した検体スライドを免疫染色法に応じた1種類又は2種類以上の試薬に、適切な温度及び時間条件の下(例えば4℃で一晩)、浸漬すればよい。免疫染色に必要な各種の試薬、すなわち蛍光標識1次/2次抗体、ビオチン修飾1次/2次抗体、アビジン修飾2次抗体/蛍光体などが溶解し、必要に応じてBSA等のブロッキング剤が添加された緩衝液等の溶液は、公知の方法にしたがって作製することが可能であり、市販品として入手することもできる。
標識液を用いた処理後、好ましくは検体スライドをリン酸緩衝液生理的食塩水(phosphate bufferd saline:PBS)等の洗浄液に浸漬して洗浄する。通常、この標識液での処理後に行われるPBSを用いた洗浄処理の温度は室温であり、時間は3~30分である。必要により、浸漬途中でPBSを交換してもよい。
<固定化処理>
固定化処理は、蛍光標識処理後に、前記蛍光標識体前記組織切片とを固定液で固定化する処理である。
固定液としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、アセトン、エタノール、メタノール等の架橋剤が挙げられる。
前記蛍光標識処理工程後に、組織切片を前記固定液に浸漬すればよく、これによって前記標的物質と蛍光ナノ粒子等の蛍光標識体が架橋され、蛍光標識体の脱離が防止される。
<形態観察用染色処理>
前記形態観察用染色処理は、蛍光標識体で検体スライドを標識した後(前記蛍光標識処理後)に、細胞又は組織の形状や細胞の各部の位置情報を得るために、検体スライドを形態観察用染色液で染色する処理である。
前記形態観察用染色液としては、例えばヘマトキシリン染色液、エオシン染色液、パパニコロウ(Pap)染色液、DAPI(4’,6-diamidino-2-phenylindole)等が挙げられる。
ヘマトキシリン染色液としては、マイヤーヘマトキシリン液(組成例:ヘマトキシリン1.0g/カリウムミョウバン50g/よう素酸ナトリウム0.2g/抱水クロラール50g/くえん酸1.0g/蒸留水1000ml)、マイヤーヘマトキシリン液(×2)(組成例:ヘマトキシリン2.0g/カリウムミョウバン50g/よう素酸ナトリウム0.4g/抱水クロラール50g/くえん酸1.0g/蒸留水1000ml)、カラッチヘマトキシリン液(組成例:ヘマトキシリン1.0g/カリウムミョウバン50g/よう素酸ナトリウム0.2g/グリセリン200ml/蒸留水800ml)、ギルヘマトキシリン液(No.1,組成例:ヘマトキシリン2.0g/硫酸アルミニウム14~18水17.6g/よう素酸ナトリウム0.2g/エチレングリコール250ml/氷酢酸20ml/蒸留水730ml)及びリリーマイヤーヘマトキシリン液(組成例:ヘマトキシリン5.0g/アンモニウムミョウバン50g/よう素酸ナトリウム0.5g/グリセリン300ml/氷酢酸20ml/蒸留水700ml)が挙げられる。
エオシン染色液としては、1%エオシンY溶液(組成例:エオシンY5.0g/蒸留水500ml/酢酸数滴)、0.1%エオシンYエタノール溶液(組成例:10%エオシンY溶液5ml/95%エタノール495ml)、0.5%エオシンYエタノール溶液(組成例:10%エオシンY溶液25ml/95%エタノール475ml)及びエオシンアルコール液、酸抽出品(酸抽出エオシン液100ml/95%エタノール800ml/酢酸8ml)が挙げられる。
形態観察用染色液を用いた染色処理は、一般的な手順に従って行えばよい。例えば、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色の場合、マイヤーヘマトキシリン液で5分間染色し、45℃の流水で3分間洗浄した後、1%エオシン液で5分間染色するといった処理が行われる。
<温水洗浄処理>
前記温水洗浄処理は、前記したとおり、蛍光標識処理後に行えばよく、固定化処理後に行うことがより好ましく、特に形態観察用染色処理後で染色プロトコルの封入処理前に行うことが好ましい。
また、必要に応じて溶媒置換処理及び脱水処理を行う場合は、溶媒置換処理の前に(溶媒置換処理の前に任意工程である脱水処理が行われる場合は脱水処理の前に)行う。
すなわち、本発明の免疫染色方法では、各種の溶液で検体スライドを処理した後にその検体スライドの洗浄が行われる場合があるが、本発明に係る温水洗浄処理は、形態観察用染色液を用いた、形態観察用染色処理の後、溶媒置換処理の前に(溶媒置換処理の前に任意工程である脱水処理が行われる場合は脱水処理の前に)行われる、最終の洗浄処理であることが好ましい。
前記温水洗浄処理は、蛍光標識処理によって染色された検体スライドを25~75℃の範囲内の温水を用いて、洗浄する処理である。特に、前記温水の温度は、30~70℃の範囲内がより好ましく、58~68℃の範囲内が特に好ましい。
前記形態観察用染色処理を行った後に、このような温水洗浄処理を行う場合、蛍光ナノ粒子に結合した染色液を除去洗浄することが可能となる。
染色液は組織のみならず蛍光ナノ粒子にも結合し、その蛍光を失活させる。所定の温水(25~75℃)による洗浄処理により蛍光ナノ粒子と染色液との結合を弱めることで蛍光の失活を抑制し、蛍光ナノ粒子の観察が可能となる。水(4℃)又は中性~アルカリ性の水溶液を用いた場合、蛍光ナノ粒子に染色液が結合したままとなり輝度が低下する。染色液と蛍光ナノ粒子の結合の程度も蛍光ナノ粒子の種類によって異なるため、輝度のばらつきが生じてしまう。
本発明における温水洗浄処理のために用いられる温水(25~75℃)は、純水や超純水をウォーターバスなどで適切な温度(25~75℃)まで加熱することによって調製することができる。
なお、前記温水(25~75℃)のpHについて、純水や超純水のpHを測定することは非常に難しいが、基本的には他のイオンに分解される物質が混入しないため、中性から外れない。
温水(25~75℃)を用いた温水洗浄処理のための手法は特に限定されるものではないが、一般的には、容器に収容された温水(25~75℃)に染色スライドを浸漬するようにして行えばよい。温水(25~75℃)への浸漬は、ウォーターバスなど適切な温度(25~75℃)を保った状態で行えばよく、浸漬時間は、通常1秒~30分間、好ましくは5~15分間である。5分以上であると、蛍光ナノ粒子に結合した染色液の色を十分に落とすことができ、15分以下であると、前記染色液の色が過剰に落ちてしまうことがなく好ましい。
なお、浸漬等の操作は、複数回繰り返してもよい。
[免疫染色組織標本の作製方法]
本発明の免疫染色組織標本の作製方法は、組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識した免疫染色組織標本の作製方法であって、前記標的物質を蛍光標識体で標識する処理(蛍光標識処理)と、前記蛍光標識処理後に前記組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄する処理(温水洗浄処理)と、を具備することを特徴とする。
すなわち、前記したように、蛍光標識処理後に、組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄することにより、標的物質の検出精度の高い染色スライドを製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
[作製例1]ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積メラミン樹脂粒子の作製
"SulfoRhodamine101"(シグマアルドリッチ社製)20.3mgを水22mLに加えて溶解した。その後、この溶液に乳化重合用乳化剤"エマルゲン"(登録商標)430(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、花王株式会社製)の5%水溶液を2mL加えた。この溶液をホットスターラー上で撹拌しながら70℃まで昇温させた後、この溶液にメラミン樹脂原料"ニカラックMX-035"(日本カーバイド工業社製)を0.81g加えた。さらに、この溶液に界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学株式会社製)の10%水溶液を1000μL加え、70℃で50分間加熱撹拌した。その後、90℃に昇温して20分間加熱撹拌した。
得られた蛍光色素集積メラミン樹脂粒子の分散液から、余剰の樹脂原料や蛍光色素等の不純物を除くため、純水による洗浄を行った。具体的には、遠心分離機"マイクロ冷却遠心機3740"(久保田商事株式会社製)にて20000Gで15分間、遠心分離し、上澄み除去後、超純水を加えて超音波照射して再分散した。遠心分離、上澄み除去及び超純水への再分散による洗浄を5回繰り返した。
上記蛍光色素集積メラミン樹脂粒子0.1mgをエタノール1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシラン(LS-3150、信越化学工業社製)2μLを加え、8時間反応させることにより、樹脂粒子の表面に存在するヒドロキシ基をアミノ基に変換する表面アミノ化処理を行った。
2mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有したリン酸緩衝液生理的食塩水(PBS)を用いて、上記蛍光色素集積メラミン樹脂粒子の濃度を3nMに調整した。濃度調整した蛍光色素集積メラミン樹脂粒子の分散液に対して、終濃度10mMとなるように、SM(PEG)12(スクシンイミジル-[(N-マレイミドプロピオンアミド)-ドデカエチレングリコール]エステル、サーモサイエンティフィック社製)を混合し、20℃で1時間反応させることにより、粒子表面がマレイミド基で修飾された蛍光色素集積メラミン樹脂粒子を含む混合液を得た。
この混合液を10000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、2mMのEDTAを含有したPBSを加えて沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による上記洗浄を3回行った後、マレイミド基修飾された蛍光色素集積メラミン樹脂粒子を回収した。
一方、ストレプトアビジン(和光純薬工業社製)とN-スクシミジル-S-アセチルチオ酢酸(SATA)を用いて、ストレプトアビジンに対してチオール基の付加処理を行った後、ゲル濾過して、蛍光色素集積ナノ粒子に結合可能なストレプトアビジンを別途調製した。
上記の蛍光色素集積メラミン樹脂粒子とストレプトアビジンを、2mMのEDTAを含有したPBS中で混合し、室温で1時間反応させて、両者(マレイミド基とチオール基)を結合させた。その後、10mMメルカプトエタノールを添加して反応を停止させた。得られた溶液をφ=0.65μmの遠心フィルターで濃縮した後、精製用ゲル濾過カラムを用いて未反応のストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジンが修飾された蛍光色素集積メラミン樹脂粒子を得た。
[作製例2]ビオチン修飾2次抗体の作製
蛍光標識処理に使用するビオチン修飾された2次抗体の調製を以下の(i)~(vii)の手順で行った。
(i)50mMTris溶液に抗ウサギIgG抗体50μgを溶解した。
(ii)該溶液に、最終濃度3mMとなるようにDTT(dithiothretol)溶液を混合した。その後、該溶液を37℃で30分間反応させた。
(iii)その後、脱塩カラムを用いてDTTで還元化した2次抗体を精製した。精製した抗体全量のうち200μLを50mMTris溶液に溶解して抗体溶液を得た。
(iv)その一方で、スペーサーの長さが30オングストロームであるリンカー試薬「Biotin-PEG6‐NH‐Mal」(PurePEG社製,製品番号2461006-250)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように調製した。この溶液8.5μLを前記抗体溶液に添加し、混和して37℃で30分間反応させた。
(v)この反応溶液を脱塩カラム「Zeba Desalt Spin Columns」(サーモサイエンティフィック社製,Cat.#89882)に供して精製した。
(vi)脱塩した反応溶液の波長300nmの吸収を分光光度計(日立製「F-7000」)により計測して反応溶液に含まれるタンパク質の量を算出した。
(vii)50mMTris溶液により反応溶液を250μg/mLに調製し、該溶液をビオチン修飾2次抗体溶液とした。
[実験例1]
<I.免疫染色法に基づく染色スライドの作製>
免疫染色法は以下に示すように、脱パラフィン処理、賦活化処理(ここまで“標本前処理工程”)、1次抗体処理、2次抗体処理、蛍光標識処理及び形態観察用染色処理(ここまで“染色工程”)、温水洗浄処理、脱水処理、溶媒置換処理及び封入処理(ここまで“標本後処理工程”)をこの順で行うことで実施した。
(1)標本前処理工程
(1-1)脱パラフィン処理
HER2陽性染色対照標本の検体スライドとして(コスモバイオ社 CB-A712のシリーズ)(乳がん培養細胞)を、以下の(i)~(iii)の手順で脱パラフィン処理を行った。
(i)キシレンを入れた容器に検体スライドを30分間、常温で浸漬する。途中3回キシレンを交換した。
(ii)エタノールを入れた容器に検体スライドを常温で、30分間浸漬する。途中3回エタノールを交換した。
(iii)水を入れた容器に検体スライドを30分浸漬させた。途中3回水を交換した。
(1-2)賦活化処理
検体スライドを脱パラフィン処理した後、以下の(i)~(v)の手順で賦活化処理を行った。
(i)検体スライドを水に置換する洗浄を行った。
(ii)10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に検体スライドを30分浸漬させた。
(iii)121℃で10分、オートクレーブ処理を行うことで、抗原の賦活化処理を行った。
(iv)PBSを入れた容器に、オートクレーブ処理後の検体スライドを30分浸漬し、洗浄した。
(v)1%BSA含有PBSを、前記洗浄した検体スライドに載せて、1時間、ブロッキング処理を行った。
(2)免疫染色工程
(2-1)1次抗体処理
検体スライドを賦活化処理した後、1次抗体処理を行った。BSAを1%含有するPBSを用いて、ベンタナ社製「抗HER2ウサギモノクロナール抗体(4B5)」を0.05nMに調製し、該1次抗体の溶液を上述のブロッキング処理した検体スライドに対して4℃で1晩反応させた。
(2-2)2次抗体処理
1次抗体処理を行った検体スライドをPBSで洗浄した後、1%BSA含有のPBSで6μg/mLに希釈した、上記ビオチン修飾2次抗体溶液と室温で30分間反応させた。
(2-3)蛍光標識処理
2次抗体処理を行った検体スライドを以下の(i)~(ii)の手順で、免疫染色法による蛍光標識処理を行った。
(i)検体スライドに対して、1%BSA含有のPBSで0.02nMに希釈した実施例1で作製したストレプトアビジン修飾蛍光色素集積ナノ粒子を、中性のpH環境(pH6.9~7.4)室温の条件下で3時間反応させた。
(ii)該反応後の検体スライドをPBSで洗浄した。
(2-4)形態観察用染色処理
蛍光標識処理を行った検体スライドを以下の(i)~(ii)の手順で、形態観察染色処理(ヘマトキシリンーエオシン染色)を行った。
(i)抗体により蛍光標識処理されたスライドをマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った。その後、該スライドを45℃の流水で3分間洗浄した。
(ii)次に、1%エオシン液で5分間染色してエオシン染色を行い、染色スライドを作製した。
(3)標本後処理工程
(3-1)温水洗浄処理
染色スライドを以下の(i)~(ii)の手順で、温水洗浄処理を行った。
(i)純水をウォーターバスなどで適切な温度(20~80℃)まで加熱することによって、温水(20~80℃)を調製し、洗浄液とした。
(ii)形態観察用染色処理が行われた染色スライドを、20℃、22℃、25℃、30℃、32℃、40℃、58℃、65℃、68℃、70℃、75℃及び80℃の各温水に10分間浸漬して、温水洗浄処理を行った。
(3-2)脱水処理
温水洗浄処理が行われた各染色スライドに対して、脱水エタノールに5分間浸漬した。この操作を4回繰り返し、脱水処理を行った。
(3-3)溶媒置換処理
脱水処理が行われた各染色スライドを、常温で2~10秒、キシレンに浸漬することで、溶媒置換処理を行った。この操作を4回繰り返し、透徹処理を行った。
(3-4)封入処理
各染色スライドを以下の(i)~(ii)の手順で、封入処理を行った。
(i)溶媒置換処理が行われた染色スライドを常温でエンテランニュー(メルク社)を滴下した後、カバーガラスを被せ、常温で10分間、風乾することで、封入処理を行った。
(ii)その後、シグナルの計測まで、封入処理が行われた染色スライドを遮光して保存した。
<II.蛍光画像の撮影及び分析>
封入処理を終えた各染色スライドに対して所定の励起光を照射して、蛍光を発光させた。その状態の染色スライドを蛍光顕微鏡(オリンパス社製「BX-53」)、顕微鏡用デジタルカメラ(オリンパス社製「DP73」)により観察及び撮像を行った。
上記励起光は、光学フィルターに通すことで575~600nmに設定した。また、観察する蛍光の波長(nm)の範囲についても、光学フィルターを通すことで612~692nmに設定した。
顕微鏡観察、画像取得時の励起波長の条件は、580nmの励起では視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cmとなるようにした。画像取得時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないように任意に設定(例えば4000μ秒に設定)して撮像した。
400倍で撮像した画像をもとに、画像の各S/N比(PID粒子の輝度/自家蛍光部位の輝度)を算出した。算出方法には、ImageJを用い、各画像上の信号値を算出した。
算出方法の一例として模式図を図1に示す。なお、図1の模式図は一例であって、PID粒子の輝度が「200」、自家蛍光部位の輝度が「10」、S/N比が「20」の場合である。符号101はPID粒子、符号102は自家蛍光由来のシグナルを示す。
図1に示すように、PID粒子の輝度については、PID粒子由来のシグナル101の1輝点を楕円Aで囲み、楕円内の信号値で最も高かった信号値をそのPID粒子が発する輝度として算出した。なお、楕円の大きさは、複数の輝点を包含せず、1の輝点のみ包含するものであれば、特に限定されるものではない。また、楕円内の信号値として、算出対象である1のPID粒子由来のシグナルのみ含み、算出対象以外のPID粒子由来のシグナルを含まないように楕円の大きさを設定することが好ましい。
また、自家蛍光部位の輝度については、自家蛍光由来のシグナル102と思われるバックグラウンドが明るい領域で、かつPID粒子が存在していない領域を、50pixel四方Bで囲み、50pixel四方内の平均輝度を自家蛍光部位の輝度として算出した。
なお、PID粒子の輝度及び自家蛍光部位の輝度については、乳がん培養細胞では10領域(測定エリア1~10)を平均した値で比較を行った。さらに、算出したPID粒子の平均輝度及び自家蛍光部位の平均輝度から、PID粒子の平均輝度と自家蛍光部位の平均輝度の比(S/N比)をそれぞれ算出し、その結果を下記表Iに示した。
また、前記温水洗浄処理において、温水の代わりに4℃の純水を用いて洗浄した染色スライドを別途作製し、この染色スライドについても上記と同様にして、PID粒子の平均輝度及び自家蛍光部位の平均輝度を算出し、さらにS/N比も算出した。
<S/N比向上率>
上記で算出した温水20~80℃までの各S/N比について、4℃で洗浄した場合のS/N比に対するS/N比の向上率を算出し、下記評価基準をもとに評価した。その結果を下記表IIに示した。
(評価基準)
◎:S/N比が60%以上向上
○:S/N比が30%以上60%未満向上
△:S/N比が20%以上30%未満向上
×:S/N比が20%未満向上
図2(a)は、実験例1において、4℃で洗浄した場合の染色スライドを400倍で撮像した画像で、図2(b)は、65℃で洗浄した場合の染色スライドを400倍で撮像した画像である。これらの図から、染色後の洗浄水の温度を65℃に加熱することで、4℃で洗浄した場合に比べて、自家蛍光由来のシグナルが低減していることが分かる。
[実験例2]
前記した実験例1において、HER2陽性染色対照標本の検体スライドとして(コスモバイオ社 CB-A712のシリーズ)(乳がん培養細胞)に代えて、PDL1(肺がん組織)の検体スライドを用いた以外は同様にして、各温度の温水で洗浄した染色スライドを作製した。
その後、実験例1と同様にして蛍光画像の撮影及び分析を行った。なお、PID粒子の輝度及び自家蛍光部位の輝度については、肺がん組織では5領域を平均した値で比較を行った。結果を下記表I及び表IIに示した。
図3(a)は、実験例2において、4℃で洗浄した場合の染色スライドを400倍で撮像した画像で、図3(b)は、65℃で洗浄した場合の染色スライドを400倍で撮像した画像である。これらの図から、染色後の洗浄水の温度を65℃に加熱することで、4℃で洗浄した場合に比べて、自家蛍光由来のシグナルが低減していることが分かる。
Figure 2023126996000002
Figure 2023126996000003
上記結果に示されるように、25℃未満及び75℃を超える温水で洗浄した場合、S/N比が低いことから、ヘマトキシリン処理後の洗浄温度の変化による自家蛍光抑制効果について、25℃未満ではあまり抑制効果がなく、75℃超えでは組織切片が剥がれる可能性が高いと考えられる。
一方、25℃以上75℃以下の範囲内の温水で洗浄した場合には、S/N比が高く、自家抑制効果があり、組織切片に自家蛍光の影響を与えにくいことが分かる。特に、58~68℃の範囲内の温水で洗浄することが、自家蛍光の抑制効果の点で最適であり、その結果、標的物質を正確に検出することができると言える。
また、乳がん培養細胞の場合、65℃の温水洗浄は4℃の洗浄に比べて、S/N比が3.06倍向上しているのに対して、肺がん組織の場合は、S/N比が4倍向上している。よって、肺がん組織の場合に、特に本発明の効果が顕著となることが分かる。
なお、実験例1及び実験例2のいずれにおいても、(2-3)蛍光標識処理後で、(2-4)形態観察用染色処理前に、検体スライドを固定液である4%中性パラホルムアルデヒド溶液で10分間固定化処理を行った場合においても、実験例1及び実験例2と同様に、25~75℃の範囲内の温水で洗浄することによって、S/N比が高くなった。よって、25~75℃の範囲内の温水洗浄により、自家蛍光の抑制効果が発揮され、標的物質を正確に検出することができると言える。
101 PID粒子由来のシグナル
102 自家蛍光由来のシグナル
A 楕円
B 50pixel四方

Claims (4)

  1. 組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識する免疫染色方法であって、
    前記標的物質を蛍光標識体で標識する処理(蛍光標識処理)と、
    前記蛍光標識処理後に前記組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄する処理(温水洗浄処理)と、を具備することを特徴とする免疫染色方法。
  2. 前記蛍光標識処理後に前記組織切片を形態観察用染色液で染色する処理(形態観察用染色処理)を具備することを特徴とする請求項1に記載の免疫染色方法。
  3. 前記蛍光標識処理後に、前記蛍光標識体と前記組織切片とを固定液で固定化する処理(固定化処理)を具備することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の免疫染色方法。
  4. 組織切片に含有される標的物質を蛍光標識体で標識した免疫染色組織標本の作製方法であって、
    前記標的物質を蛍光標識体で標識する処理(蛍光標識処理)と、
    前記蛍光標識処理後に前記組織切片を25~75℃の範囲内の温水で洗浄する処理(温水洗浄処理)と、を具備することを特徴とする免疫染色組織標本の作製方法。

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