JP6711352B2 - インサイチュハイブリダイゼイション用のプローブ試薬 - Google Patents

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Description

本発明は、インサイチュハイブリダイゼイション用、特に蛍光体ナノ粒子を用いる蛍光インサイチュハイブリダイゼイション(fluorescence in situ hybridization: FISH)用のプローブ試薬および該プローブ試薬を用いた染色方法に関する。
従来、蛍光色素を有するプローブを複数種類のカクテルとして用いることも知られており、蛍光色素を数多く結合させるための工夫として広く実施されている。
たとえば特許文献1は、2段階の核酸増幅を経て、ターゲットの核酸分子を増感しつつ間接的に蛍光検出する方法の発明であり、プローブを複数種類のカクテルとして用いることが開示されている。具体的に説明すれば、図5(A)に示すように、ターゲットの核酸分子N1を含んでいると思われるサンプル(DNA溶液等)を用意し、第1の固体支持体S1に固定した別の核酸群N2sに対してヒンジの核酸N3を介して前記ターゲットの核酸N1を捕捉させる。
次に、複数の分岐部を有するさらに別の核酸である第1の増殖用マルチマーN4を第2ヒンジの核酸N5を介して前記ターゲットの核酸N1に結合させる。この第1の増殖用マルチマーN4の複数の分岐部に複数のオリゴマーN6を結合して捕捉する。この状態で洗浄がなされ、固定されている核酸のみが残り、遊離している他の核酸分子等は除去される。この段階でヒンジの核酸N5を複数種類のカクテルとして用意して、N1上の異なる配列領域に結合していることが見て取れる。さらに、前記捕捉された複数のオリゴマーN6を遊離させて、図5(B)に示すように、別の第2の個体支持体S2に固定された核酸群N7sに対して第3のヒンジN8を介して捕捉させる。この捕捉されたオリゴマーN6に対して第4のヒンジN9を介して、分岐部を有する第2の増殖用マルチマーN10を結合させる。この段階でヒンジの核酸N9を複数種類のカクテルとして用意して、N6上の異なる配列領域に結合していることが見て取れる。
最後に、この結合された増殖用マルチマーN10の分岐部に対して複数のアルカリフォスファターゼP1を結合させ、さらに蛍光基質を供給して蛍光検出がなされる。このように、ターゲットの核酸分子を増感しつつ間接的に蛍光検出している。なお、図5(A)の核酸N1が結合しない限り、図5(B)の核酸N6は検出されないことから、間接的に増感がなされていることになる。
特許文献1の先行技術は、細胞を溶解して所定の遺伝子が転写、翻訳されているかどうかを調べるために(PCRを行って)プローブで検出することが主に想定されている。
また、プローブを複数種類のカクテルとして用いる技術としてAffitrix社製のキット「QuantiGene」が知られており、該キットは40種類程度のZ型プローブを含み、図4に示した機構によりmRNAの蛍光標識の増感を実現する。特許文献1の技術を応用して、キット化されたものと推測される。
Z型プローブは、図4に示したように、mRNAにハイブリダイズする核酸部分D1と、検出用プローブにハイブリダイズするための核酸部分D2と、これらを連結するリンカー部分Lとを含んでいる。Z型プローブごとに核酸部分D1が異なっており、上記キットを使用してmRNAを蛍光染色した場合、例えば、図4(A)に示したようにmRNAに対して2つのZ型プローブがmRNAに特異的に結合する。このZ型プローブが2つ連続したところの核酸部分D2,D2に対して、主幹となる核酸分子D3が結合する(図4(B)参照)。この核酸分子D3に対して、枝部として蛍光色素Fでラベルされた核酸分子D4が多数結合することで増感が実現する(図4(C)参照)。
米国特許出願公開第2010/0099175号明細書
しかしながら、前述した特許文献1等の従来の増幅検出方法を含む公知検出法により、本発明者らが組織切片に対してFISHを行ったところ、輝点シグナル数が十分得られない課題があることが判明した。また、例えば引用文献1の図5の方法では、ヒンジの核酸N5以外にもさらにオリゴマーN6や増幅用マルチマーN4を使用して何重にも核酸同士の結合を介しており、このように多くの核酸同士の結合を介した方法では非特異的な結合の要因が増えるという、増幅メカニズムから想定される一般的課題は残っており。また、図4の方法でも、多くの核酸同士の結合を介しており、非特異的な核酸分子同士のハイブリ結合をゼロにコントロールするプローブ設計は、かならず達成できるとは言い難い。そのため、上述の先行技術では、輝点シグナル数が十分得られないか、または得られたとしても精度が低いという課題がある。
すなわち、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、従来よりも輝点シグナル数を増やし、より正確な計測を実現することができるインサイチュハイブリダイゼイション用のプローブ試薬の提供をすることを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究した結果、配列の異なる複数の核酸分子をプローブとして使用するとともに、該プローブと蛍光体ナノ粒子とを所定の態様で結合させて用いることで輝点シグナル数が十分得られることを見出して本発明に至った。
すなわち、上述した目的を実現するために、本発明の一側面を反映したインサイチュハイブリダイゼイション用のプローブ試薬は、配列が異なる複数の核酸分子と、前記核酸分子に結合可能な、または、結合した1つまたは2つ以上の蛍光体ナノ粒子を含むプローブ試薬である。
本発明によれば、従来よりも輝点シグナル数を増やして真値に近づけることができ、より正確な計測を実現することができるインサイチュハイブリダイゼイション用のプローブ試薬を提供することができる。たとえば、健常人ではHER2遺伝子は一つの核内に2個(多くても4個)であるが、乳がん患者ではHER2遺伝子は一つの核内に100個以上も増幅している現象が知られている。従来法で輝点シグナル数を低く見積もってしまう場合には、乳がん患者でもHER2遺伝子が数個しか観察されずに、正確な診断ができないこととなってしまうが、本発明ではそのようなことがない。
図1(A)は、本発明に係るプローブ試薬に含まれる2種類(以上)のDNAプローブ(核酸分子)をヒトゲノムからPCRにより作製している様子を示した図である。このPCRの際に核酸基質としてハプテン(抗原性低分子)で標識された核酸基質(dUTP−ハプテン)を用いることで、PCRで得られるDNAプローブがハプテンで標識される。図1(B)は、(A)のPCRで得られる、該ハプテンで標識された2種類(以上)のDNAプローブを示す。図1(C)は、ビオチン(「◇」で示したもの、第1生体分子)で標識された抗ハプテン抗体((E))を(B)のDNAプローブのハプテン部分に結合させたものを示す。図1(D)は、ストレプトアビジン(第2生体分子)で標識された蛍光体ナノ粒子(F)を、(C)の抗ハプテン抗体のビオチン部分に対して結合させたものである。なお、本発明に係るプローブ試薬には、例えば(B)DNAプローブ、(E)抗ハプテン抗体、および(F)蛍光体ナノ粒子がそれぞれ結合したのもの((D))や、キットのバイアルのように、上記(B),(E)および(F)を分けて有するプローブ試薬も含まれる。また、予め(B),(E)および(F)の分子間で相互に結合しているもの(例;(C)と(F)を分けて含むもの等)も本発明に係るプローブ試薬に含まれる。 図2は、本発明に係るFISHの別の一態様を示した図である。組織切片の染色対象の遺伝子を含む特定の領域(例;HER2遺伝子の領域)に対して、2種以上のDNAプローブを蛍光体ナノ粒子に結合した状態で含むプローブ試薬をハイブリダイゼーションの反応系に添加して結合させた後、励起光を照射して蛍光を検出するものである。この方法により、複数種類のDNAプローブが遺伝子に結合するため、1種類のDNAプローブを使用する場合よりも蛍光シグナルの強度が強まる。 図3は、本発明に係るFISHの一態様を示した図である。組織切片の染色対象の遺伝子を含む特定の領域(例;HER2遺伝子の領域)に対して、2種以上のDNAプローブA及びB、第1生体分子で標識された抗ハプテン抗体、蛍光体ナノ粒子をこの順でハイブリダイゼーションの反応系に添加していき、順番に結合させた後、最後に励起光を照射して蛍光を検出するものである。この方法によっても、複数種類のDNAプローブが遺伝子に結合するため、1種類のDNAプローブを使用する場合よりも蛍光シグナルの強度が強まる。 図4は、従来のインサイチュハイブリダイゼイション(Affitrix社製のキット「QuantiGene」)を説明した図である。 図5は、従来の別のハイブリダイゼーション法(特許文献1:米国特許第7615351号明細書)を説明した図である。
以下、本発明に係るインサイチュハイブリダイゼイション用のプローブ試薬について、図1〜図3を参照しながら説明する。
本発明に係るインサイチュハイブリダイゼイション用のプローブ試薬は、配列が異なる複数の核酸分子と、前記核酸分子に結合可能な、または、結合した1つまたは2つ以上の蛍光体ナノ粒子を含む。
上記プローブ試薬は、(1)蛍光体ナノ粒子と核酸分子とが1:1で結合した複合体が複数形成され、複合体間で核酸分子の配列が異なるプローブ試薬であってもよいし、(2)蛍光体ナノ粒子と核酸分子とが1:多で結合した複合体であって、該複合体の核酸分子間で配列が異なるプローブ試薬であってもよいし、(3)蛍光体ナノ粒子と核酸分子とが多:1で結合した複合体が複数形成され、複合体間で核酸分子の配列が異なるプローブ試薬であってもよいし、(4)(1)〜(3)のいずれか2種以上を混合したプローブ試薬であってもよい。
上記(1)の実施形態(1:1)の場合、配列が異なる核酸分子には、それぞれ区別して観察することのできる、異なる蛍光を発する蛍光体ナノ粒子を結合させる(例えば、核酸分子(i)に対して蛍光体ナノ粒子(I)を結合させ、核酸分子(ii)に対して蛍光体ナノ粒子(II)を結合させ、核酸分子(iii)に対して蛍光体ナノ粒子(III)を結合させる)ようにすると、蛍光体ナノ粒子(I)〜(III)それぞれについて観測された輝点数が一致していれば、遺伝子の数は高い確度でもってその観測された輝点数に一致するものと推定することができる。なお、同じ蛍光を発する蛍光体ナノ粒子の場合、実施形態(多:1)と同様となる。
上記(2)の実施形態(1:多)の場合、1つの遺伝子に対して複数の箇所(配列)で核酸分子が結合することが可能であり、結合の安定性が向上するため、遺伝子の数は高い確度でもって観測された輝点数に一致するものと推定することができる。
上記(3)の実施形態(多:1)の場合(例えば蛍光体ナノ粒子:核酸分子が2:1〜5:1のモル比で結合しているような場合)、1つの目的遺伝子に結合した複数(例;2〜5個)の蛍光体ナノ粒子からの輝点が寄り集まって1つの輝点(クラスタ輝点)として観測されることにより、輝点からの蛍光シグナルの強度が増すと考えられる。
なお、目的遺伝子が多コピーである場合(ゲノム上に同じ配列の目的遺伝子が複数存在する)場合、目的遺伝子と目的遺伝子の間隔は十分長いことから、各遺伝子に結合したプローブ試薬の輝点は別々の輝点として観察される。クラスタ輝点の場合も同様に別々の輝点として観測される。
また、本発明に係るプローブ試薬は、(1)各核酸分子に対して第1結合部が直接的に又は前記リンカーを介して間接的に結合した複数の核酸分子と、(2)各蛍光体ナノ粒子に対して第2結合部が直接的に又はリンカーを介して間接的に結合した前記1つまたは2つ以上の蛍光体ナノ粒子と、をそれぞれ分けて有する、つまり(1)のように修飾された複数の核酸分子を含む第1試薬と、(2)のように修飾された蛍光体ナノ粒子を含む第2試薬が分包されており、それらを順次検体スライドの組織切片と反応させ、核酸分子および蛍光体ナノ粒子を含む複合体を形成させるようにする試薬であることが好ましい。ここで、第1結合部および第2結合部とは、(a)それらが直接的に特異的に結合しうる組み合わせであってもよいし、(b)図1,3に例示されているように、第1試薬および第2試薬と組み合わせて用いられる、第3試薬に含まれる介在分子が有する、第3結合部および第4結合部とそれぞれ特異的に結合しうる(第1結合部−第3結合部、第4結合部−第2結合部)組み合わせであってもよい。第3試薬も、第1試薬および第2試薬とは分包されていることが好ましい。
[核酸分子]
核酸分子は、染色体上の特定領域(例;HER2遺伝子の領域)の配列(プローブ配列)の一部を有する核酸分子である。ここで、「配列が異なる複数の核酸分子」とは、各核酸分子が染色体上の特定領域(例;HER2遺伝子の領域)から重複しないように選択した塩基配列を有する複数の核酸分子であることを意味する。
上記核酸分子には、DNA、RNA(mRNA,tRNA,miRNA,siRNA,ノンコーディングRNAなど)等の天然に存在する核酸やPNA、LNA(又はBNA:Bridged Nucleic Acid(架橋構造型の核酸分子))等の人工核酸が含まれる。核酸分子は、天然の核酸、人工核酸、または天然の核酸と人工の核酸とが連結した核酸の分子であってもよい。
核酸分子(DNAプローブ)の塩基配列としては、HER2等のバイオマーカー遺伝子の検出に関連する染色体上の核酸の塩基配列の一部が好適に用いられる。バイオマーカーとしては、診断用バイオマーカー、疾患段階を判断するバイオマーカー、疾患予後バイオマーカー、および治療処置に対する反応を見る目的のモニター用バイオマーカー等がある。例えば、癌の増殖や分子標的薬の奏効率に関係する遺伝子として、HER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、METなどが挙げられる。さらに、癌関連遺伝子として知られている遺伝子として、以下のものが挙げられる。チロシンキナーゼ関連遺伝子として、ALK、FLT3、AXL、FLT4(VEGFR3、DDR1、FMS(CSF1R)、DDR2、EGFR(ERBB1)、HER4(ERBB4)、EML4−ALK、IGF1R、EPHA1、INSR、EPHA2、IRR(INSRR)、EPHA3、KIT、EPHA4、LTK、EPHA5、MER(MERTK)、EPHA6、MET、EPHA7、MUSK、EPHA8、NPM1−ALK、EPHB1、PDGFRα(PDGFRA)、EPHB2、PDGFRβ(PDGFRB)EPHB3、RET、EPHB4、RON(MST1R)、FGFR1、ROS(ROS1)、FGFR2、TIE2(TEK)、FGFR3、TRKA(NTRK1)、FGFR4、TRKB(NTRK2)、FLT1(VEGFR1)、TRKC(NTRK3) が挙げられる。また、乳がん関連の遺伝子としてATM、BRCA1、BRCA2、BRCA3、CCND1、E−Cadherin、ERBB2、ETV6、FGFR1、HRAS、KRAS、NRAS、NTRK3、p53、PTENが挙げられる。カルチノイド腫瘍に関連する遺伝子として、BCL2、BRD4、CCND1、CDKN1A、CDKN2A、CTNNB1、HES1、MAP2、MEN1、NF1、NOTCH1、NUT、RAF、SDHD、VEGFAが挙げられる。大腸がん関連遺伝子として、APC、MSH6、AXIN2、MYH、BMPR1A、p53、DCC、PMS2、KRAS2 (or Ki−ras)、PTEN、MLH1、SMAD4、MSH2、STK11、MSH6が挙げられる。肺がん関連の遺伝子としては、ALK、PTEN、CCND1、RASSF1A、CDKN2A、RB1、EGFR、RET、EML4、ROS1、KRAS2、TP53、MYCが挙げられる。肝臓がん関連の遺伝子としては、Axin1、MALAT1、b−catenin、p16 INK4A、c−ERBB−2、p53、CTNNB1、RB1、Cyclin D1、SMAD2、EGFR、SMAD4、IGFR2、TCF1、KRASが挙げられる。腎臓がん関連遺伝子として、Alpha、PRCC、ASPSCR1、PSF、CLTC、TFE3、p54nrb/NONO、TFEBが挙げられる。甲状腺がん関連遺伝子として、AKAP10、NTRK1、AKAP9、RET、BRAF、TFG、ELE1、TPM3、H4/D10S170、TPRが挙げられる。卵巣がん関連遺伝子として、AKT2、MDM2、BCL2、MYC、BRCA1、NCOA4、CDKN2A、p53、ERBB2、PIK3CA、GATA4、RB、HRAS、RET、KRAS、RNASET2が挙げられる。前立腺がん関連遺伝子として、AR、KLK3、BRCA2、MYC、CDKN1B、NKX3.1、EZH2、p53、GSTP1、PTENが挙げられる。骨腫瘍関連遺伝子として、CDH11、COL12A1、CNBP、OMD、COL1A1、THRAP3、COL4A5、USP6が挙げられる。
核酸分子(DNAプローブ)に用いる塩基配列は、検出する染色体上の特定領域にあるユニークな配列の領域を設計することが好ましい。また、染色体上の特定の遺伝子のコピー数をFISHで検出する場合、スプライシング前のイントロンを含むゲノム配列を考慮してプローブ配列を設計する必要がある。検出対象の遺伝子を含むゲノム配列の入手方法としては、公開されている遺伝子のデータベースDDBJ (DNA Data Bank of Japan)に対して、生物名、遺伝子名、染色体の番号等を検索単語として用いて検索したり、例えば「Cancer cell lines BACS」等を検索単語として検索することにより入手することができる。また、ユニークな配列部分については、公開されているデータベース「HD FISH」(http:///www.hdfish.eu./Find#probes.php)でターゲットとする染色体の番号(例えばHER2なら第17番目)を入力し、該染色体の特定領域(例えばHER2に関連する染色体上の領域)の塩基配列の位置を番号していしてユニークな配列部分を抽出することで入手することができる。ここで、がん(原)遺伝子のコピー数をFISHで検出する場合、がん(原)遺伝子の配列を含む「Cancer cell lines BACS」のBACクローンライブラリーの配列が好適である。
核酸分子(DNAプローブ)の塩基配列については、通常の構造遺伝子を検出する場合、indel, VNTR(Variable Number of Tandem Repeat:反復配列多型)、上記塩基配列として、マイクロサテライト等の、コピー数が多型となっている目的遺伝子と関係のない塩基配列部分を含めないことが好ましい。ヒト(2n=46)の細胞において、一つの細胞(核)あたりの通常の遺伝子のコピー数は1〜2であるため、蛍光体の輝点の数から推定されるコピー数が3以上の場合は当該遺伝子が増幅する染色体の異常が起きており、逆にそのコピー数が0の場合は当該遺伝子が欠損する染色体の異常が起きていると判断することができる。上述したような多型の遺伝子の塩基配列を核酸分子(DNAプローブ)の塩基配列に含めると、蛍光体の輝点の数が目的とする特定の遺伝子のコピー数と一致しなくなり、上述したようなコピー数の検出に支障をきたす。
核酸分子の入手方法については、染色体上の核酸分子の塩基数が数十塩基〜1000塩基以下であれば、核酸分子(DNAプローブ)に用いる配列のデータを提出してフナコシ等の核酸合成受託サービスに依頼して核酸分子を入手することが好ましい。一方、核酸分子の塩基数が多い場合(例えば1000塩基を超える場合)は上記のように合成することも可能であるが時間がかかるため、DNAの塩基配列のシークエンスを行って正しく核酸分子が形成されているか確認することを前提に例えば以下のようにして行ってもよい。
1つ目の方法としては、図1に示したように、検出対象の生物のゲノムDNAに含まれるプローブ配列の2以上の領域をそれぞれ挟みこむように複数のプライマーセット(フォワードプライマー、リバースプライマーのセット)を設計および合成し、この2以上のプライマーのセットを用いてゲノムDNA(または、上記のBACクローンライブラリー等のゲノムライブラリー)に対して複製精度の高いpfuDNAポリメラーゼ等を用いたPCR法を行う。このPCRを行う際には、PCRの効率の観点から、プライマーのセットごとにPCRを行うことが好ましい。ここで、後述するように、蛍光体ナノ粒子と核酸分子との結合を、ハプテン(例;DNP,DIG,FITC)を介して行う場合には、ハプテンを有する核酸基質を使用して上記PCRを行うことで、ハプテンで核酸分子を標識することが好ましい。
次に、PCRの反応溶液を電気泳動により分離し、目的の核酸分子の長さに相当するバンドを切り出して核酸精製キット(MonoFas(登録商標)DNA精製キットI等のキット)を用いて溶出することにより、目的とする「配列の異なる複数の核酸分子(DNAプローブ)」を入手することができる。
別の方法としては、例えば、先ず、プローブ配列を含むプラスミド(BACプラスミド等)を大腸菌(E. coli HST08 Premium Electro−Cells(タカラバイオ社)等)に形質転換して培養(増幅)し、集菌して核酸抽出を行う。次に、プローブ配列から重複しないように2以上の領域を選択し、所定の制限酵素で該領域にあたる核酸分子をそれぞれ切り出した後、電気泳動および核酸精製をすることで「配列の異なる複数の核酸分子」を入手することができる。
[蛍光体ナノ粒子]
蛍光体ナノ粒子には、半導体成分を含む主として無機質の半導体ナノ粒子と、蛍光体集積ナノ粒子とが含まれる。ここで、蛍光体集積ナノ粒子を用いることで、蛍光体自体と比較して、1粒子当たりの発する蛍光の量、すなわち所定の生体分子を標記する輝点の輝度を高めることができる。
[半導体ナノ粒子]
本発明に使用可能な半導体ナノ粒子の例としては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。量子ドットは、市販されているものでもよい。具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられるが、これらに限定されない。上記量子ドットをコアとし、その上にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する量子ドットの表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。例えば、CdSe/ZnS、CdS/ZnS、InP/ZnS、InGaP/ZnS、Si/SiO2、Si/ZnS、Ge/GeO2、Ge/ZnS等を用いることができるが、これらに限定されない。量子ドットは必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等が挙げられる。
[半導体ナノ粒子の製造方法]
半導体ナノ粒子の製造方法としては、液相法による方法を採用できる。液相法の製造方法としては、沈殿法、共沈法、ゾル−ゲル法、均一沈殿法、還元法などがある。そのほかに、逆ミセル法、超臨界水熱合成法なども半導体ナノ粒子を作製する上で優れた方法である(例えば、特開2002−322468号、特開2005−239775号、特開平10−310770号、特開2000−104058号公報等を参照。)。
また、当該半導体前駆体の反応を界面活性剤の存在下で行う工程を有する態様が好ましい。なお、本発明に係る半導体前駆体は、上記の半導体材料として用いられる元素を含む化合物であり、たとえば半導体がSiの場合、半導体前駆体としてはSiCl4などが挙げられる。その他半導体前駆体としては、InCl3、P(SiMe33、ZnMe2、CdMe2、GeCl4、トリブチルホスフィンセレンなどが挙げられる。反応前駆体の反応温度としては、半導体前駆体の沸点以上かつ溶媒の沸点以下であれば、特に制限はないが、70〜110℃の範囲が好ましい。
[還元剤]
半導体前駆体を還元する還元剤としては、従来周知の種々の還元剤を反応条件に応じて選択し用いることができる。本発明においては、還元力の強さの観点から、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素リチウム(LiBH(sec−C493)及び水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウムなどの還元剤が好ましい。特に、還元力の強さから水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)が好ましい。
[溶媒]
半導体前駆体の分散用溶媒としては、従来周知の種々の溶媒を使用できるが、エチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、トルエン、デカン、ヘキサンなどの炭化水素類溶媒を使用することが好ましい。本発明においては、特に、トルエン等の疎水性の溶媒が分散用溶媒として好ましい。
[界面活性剤]
界面活性剤としては、従来周知の種々の界面活性剤を使用でき、陰イオン、非イオン、陽イオン、両性界面活性剤が含まれる。なかでも第四級アンモニウム塩系である、テトラブチルアンモニウムクロリド、ブロミド又はヘキサフルオロホスフェート、テトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)、またはトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドが好ましい。特に、テトラオクチルアンモニウムブロミドが好ましい。
なお、液相法による反応は、液中の溶媒を含む化合物の状態により大きく変化する。単分散性の優れたナノサイズの粒子を製造する際には、特に注意を要する必要がある。例えば、逆ミセル反応法では、界面活性剤の濃度や種類により、反応場となる逆ミセルの大きさや状態が変わってくるため、ナノ粒子が形成される条件が限られてしまう。したがって、適切な界面活性剤と溶媒との組み合わせが必要となる。
[蛍光体集積ナノ粒子]
蛍光体集積ナノ粒子は、下記蛍光体を集積したものである。このような蛍光体集積ナノ粒子を用いることで、蛍光体自体と比較して、1粒子当たりの発する蛍光の量、すなわち所定の生体分子を標記する輝点の輝度を高めることができる。
[蛍光体]
本明細書において「蛍光体」とは、外部からのX線、紫外線または可視光線の照射を受けて励起し、励起状態から基底状態に到る過程において光を発光する物質一般を指す。したがって、本発明にいう「蛍光体」は、励起状態から基底状態に戻るときの遷移態様の如何を問うものでなく、励起一重項からの失活に伴う発光である狭義の蛍光を発する物質であってもよいし、三重項からの失活に伴う発光である燐光を発する物質であってもよい。
また、本発明にいう「蛍光体」は、励起光を遮断してからの発光寿命によって限定されるものでもない。したがって、硫化亜鉛やアルミン酸ストロンチウム等の蓄光物質として知られている物質であってもよい。このような蛍光体は、有機蛍光体(蛍光色素)および無機蛍光体に大別することができる。
[有機蛍光体]
蛍光体としての使用可能な有機蛍光体の例としては、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素分子、クマリン系色素分子、NBD(登録商標)系色素分子、ピレン系色素分子、Texas Red(登録商標)系色素分子、シアニン系色素分子、ペリレン系色素分子、オキサジン系色素分子等、有機蛍光色素として知られている物質を挙げることができる。
具体的には、5−カルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−フルオレセイン、5,6−ジカルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−2’,4,7,7’−テトラクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X−ローダミン、及びAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPY FL、BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、メトキシクマリン、エオジン、NBD、ピレン、Cy5、Cy5.5、Cy7等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
[無機蛍光体]
無機蛍光体を集積して蛍光体集積ナノ粒子を作製する場合に、使用可能な無機蛍光体としては、上述した半導体ナノ粒子が挙げられる。
[蛍光体集積ナノ粒子の製造方法]
蛍光体を集積した蛍光体集積ナノ粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。一般的には、樹脂またはシリカを母体として蛍光体をまとめ上げる(当該母体の内部または表面に蛍光体を固定化する)製造方法を用いることができる。蛍光体集積ナノ粒子の粒子径は、蛍光観察できる範囲の平均粒子径であれば制限がないが、好適に蛍光観察する観点から、前記蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径が40nm以上300nm以下であることが好ましい。
[有機蛍光体の場合]
有機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である蛍光色素を樹脂からなる母体の内部または表面に固定した、直径がナノメートルオーダーの樹脂粒子を形成させる方法を挙げることができる。この蛍光体集積ナノ粒子の調製方法は特に限定されるものではないが、例えば、蛍光体集積ナノ粒子の母体をなす樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を合成するための(コ)モノマーを(共)重合させながら、蛍光体を添加し、当該(共)重合体の内部または表面に当該蛍光体を取り込ませる方法を用いることができる。
上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフラン、または、これに類する樹脂を好適に用いることができる。上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリキシレン、ポリ乳酸、グリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリアミド、フェノール樹脂、多糖類またはこれに類する樹脂を好適に用いることができる。熱硬化性樹脂、特にメラミン樹脂は、キシレン等の有機溶媒を用いる脱水、透徹、封入などの処理によっても、色素樹脂に内包させた色素の溶出を抑制することができる点で好ましい。
例えば、有機の蛍光色素(蛍光体)を内包したポリスチレンナノ粒子は、米国特許4326008(1982)に記載されている重合性官能基をもつ有機色素を用いた共重合法や、米国特許5326692(1992)に記載されているポリスチレンナノ粒子への蛍光有機色素の含浸法を用いて作製することができる。
一方で、有機蛍光体をシリカからなる母体の内部または表面に固定化したシリカナノ粒子を製造することもできる。そのような製造方法としては、ラングミュア 8巻 2921ページ(1992)に記載されているFITC内包シリカナノ粒子の合成方法を参考にすることができる。FITCの代わりに所望の蛍光色素を用いることで種々の蛍光色素内包シリカナノ粒子を合成することができる。
[無機蛍光体の場合]
無機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である前述の半導体ナノ粒子をシリカからなる母体の内部または表面に固定した、シリカナノ粒子を形成させる方法が挙げられる。この製造方法は、ニュー・ジャーナル・オブ・ケミストリー 33巻 561ページ(2009)に記載されているCdTe内包シリカナノ粒子の合成を参考にすることができる。
また、上記とは異なる蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、シリカナノ粒子(半導体ナノ粒子)をシランカップリング剤で処理して末端をアミノ化し、カルボキシル基末端を有する蛍光体としての半導体ナノ粒子をシリカビーズの表面にアミド結合により結合することで集積し、蛍光体集積ナノ粒子とする方法も挙げられる。
さらに別の蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、逆ミセル法と、ガラスの前駆体として分子の末端に半導体ナノ粒子への吸着性が良い有機官能基を有する有機アルコキシシランとアルコキシドの混合物を用いたゾル−ゲル法とを組み合わせることにより、半導体ナノ粒子を内部に分散固定したガラス状の粒子を形成し、蛍光体集積ナノ粒子とする例が挙げられる。
さらに別の蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)の存在化で、アミノ基末端の半導体ナノ粒子と、カルボキシル基末端の半導体ナノ粒子を混合し、半導体ナノ粒子間をアミド結合で介して結合することで半導体ナノ粒子を集積し、蛍光体集積ナノ粒子を製造する例が挙げられる。
この例として次の操作が挙げられる。先ずEDCを用いて当該メルカプト酸のカルボキシル基を活性化させた後、ジアミンを反応させてアミド結合を生成させることにより、半導体ナノ粒子同士を直接架橋した構造を有する態様が好適な例として挙げられる。このような態様は、メルカプト酸が有するメルカプト基(チオール基)との親和性の高いシェル、たとえば硫黄原子を含むZnS等のシェルを有するコア/シェル半導体ナノ粒子に対して適用することができる。このとき、メルカプト酸としてメルカプトウンデカン酸を、ジアミンとしてエチレンジアミンまたはヘキサエチレンジアミンを用いることが特に好ましい。
さらに、無機蛍光体を樹脂からなる母体の内部または表面に固定化した集積体を製造することもできる。たとえば、量子ドットを内包したポリマーナノ粒子は、ネイチャー・バイオテクノロジー19巻631ページ(2001)に記載されているポリスチレンナノ粒子への量子ドットの含浸法を用いて作製することができる。
さらに別の方法として、両端にメルカプト基を有するポリエチレングリコール(PEG)を用いて半導体ナノ粒子同士を直接架橋した構造をとる態様も好適な例として挙げられる。このとき、チオールを両端に有する重量平均分子量(Mw)10,000〜20,000のポリエチレングリコールを用いることが特に好ましい。
[蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径]
蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径は、40nm以上300nm以下であることが好ましい。母体となる粒子の平均粒子径が40nmを下回ると、蛍光集積体ナノ粒子に起因して蛍光観察で観察されるべき輝点が全く観察されない、または観察されにくくなる。逆に、母体となる粒子の平均粒子径が300nmを上回ると、蛍光観察において観察される輝点が大きくなりすぎ、非特異的な輝点と特異的な輝点との判別が困難で正確に輝点をカウントすることが困難となる。
[蛍光体集積ナノ粒子の粒径測定]
製造した色素粒子の平均粒子径の測定は、当該分野で知られた方法により行うことができ,例えば、ガス吸着法、光散乱法、X線小角散乱法(SAXS)、透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して平均粒子径を計測する方法等により測定できる。TEMを用いる場合、粒子径分布が広い場合には、視野内に入った粒子が全粒子を代表しているか否かに注意を払う必要がある。吸着法は、N2吸着等によりBET表面積を評価するものである。
[核酸分子と蛍光体ナノ粒子との結合]
DNAプローブである核酸分子と蛍光体ナノ粒子との間の結合は、下記表1に例示されるような、公知のいかなる結合を介して結合してもよいが、DNAプローブである核酸分子と蛍光体ナノ粒子とを核酸分子同士の結合以外の結合で結合することが好ましい。核酸分子同士の結合では、非特異的な結合が生じやすいからである。核酸分子同士の結合以外の結合の例としては後述するように、ハプテン−抗ハプテン抗体間の結合、第1生体分子−第2生体分子間の結合、第1結合基−第2結合基間の結合などが挙げられる。
ここで、表1の第1結合部として挙げた物質と第2結合部として挙げた物質は入れ替わっていてもよい。つまり、核酸分子が有する第1結合部として、表1中に蛍光体ナノ粒子が有する第2結合部として挙げた物質を用いてもよいし、逆に蛍光体ナノ粒子が有する第2結合部として、表1中に核酸分子が有する第1結合部として挙げた物質を用いてもよい。
核酸分子が有する第1結合部と、蛍光体ナノ粒子が有する第2結合部とは、それらが直接的に特異的に結合しうる組み合わせであってもよい(直接法)。この実施形態において、第1結合部および第2結合部は、表1中のA、B、Cいずれかの同一のグループに含まれるもの同士となる。例えば、第1結合部としてグループAのハプテンが、第2結合部として同じくグループAの抗ハプテン抗体を選択することができる。なお、「有する」という用語は、核酸分子および蛍光体ナノ粒子に対して、それぞれ第1結合部および第2結合部が、後述するようなリンカーを用いることで共有結合している実施形態と、そのようなリンカーを用いずに結合している実施形態の両方を包含している。
一方で、核酸分子が有する第1結合部と、蛍光体ナノ粒子が有する第2結合部とは、核酸分子および蛍光体ナノ粒子と併用される「介在分子」が有する、第3結合部および第4結合部とそれぞれ特異的に結合しうる(第1結合部−第3結合部、第4結合部−第2結合部)組み合わせであってもよい(間接法)。「介在分子」は、一端(第1端部)に第3結合部を有し、もう一端(第2端部)に第4結合物を有する化合物(コンジュゲート)である。
この実施形態においては、第1結合部および第2結合部は、表1中のA、B、Cいずれかの異なるグループに含まれるもの同士となり、第3結合部は第1結合部と同一のグループに属する第2結合部として挙げられている結合部となり、第4結合物は第2結合部と同一のグループに属する第1結合部として挙げられている結合部となる。例えば、図1,3に例示されているように、核酸分子が有する第1結合部としてグループAのハプテンを選択し、介在分子が有する第3結合部としてグループAの抗ハプテン抗体を、第4結合部としてグループBのビオチンを選択し、蛍光体ナノ粒子が有する第4物質としてグループBのストレプトアビジンを選択することができる。核酸分子と蛍光体ナノ粒子とが、表1に例示されるような結合を「介して」結合するとは、上述したような直接法および間接法の両方の結合様式を包含している。
以下の記載において、核酸分子が第1結合部を有し、蛍光体ナノ粒子が第2結合部を有する場合について記載した事項は、核酸分子が第1結合部を有し、介在分子が第3結合部を有する場合について、また介在分子が第4結合部を有し、蛍光体ナノ粒子が第2結合部を有する場合についても、同様に、または必要に応じて適宜改変した上で、適用することが可能である。
Figure 0006711352
以下、上記表1の各結合を行う場合について説明する。
[ハプテンと抗ハプテン抗体による結合]
(ハプテン(抗原性低分子))
ハプテンは、抗原性低分子とも呼ばれ、動物等に注射しても抗体が生成されず(免疫原性を欠き)、抗体との抗原抗体反応のみ起こす(反応原性のみを有する)物質を意味する。つまり、ハプテンは、特異抗体と反応はするが、抗体やリンパ球の増殖や分化を誘導しない性質をもつ物質であり、上記反応原性のみを有する重量平均分子量(Mw)1000未満の低分子が含まれる。
本発明に使用可能なハプテンとして、ジゴキシゲニン(DIG)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)および2,4−ジニトロフェノール(DNP)、これに類するものを好適に使用することができる。これらのハプテンは、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、第1核酸分子には第1ハプテン(例;FITC)を結合させ、第1核酸分子とは配列の異なる第2核酸分子には、第1ハプテンと異なる第2ハプテン(例;DIG)を結合させるようにしてもよい。
[ハプテンで標識された核酸分子の調製]
核酸分子にハプテンを結合させる場合、以下の方法を用いることができる。なお、核酸分子自体も抗原性低分子であるため、核酸分子と抗ハプテン抗体による結合を利用する場合には、核酸以外の上記ハプテンで核酸分子を標識する必要はない。
[PCR等を利用した方法]
核酸をハプテンで標識する方法としては、例えば、PCRラベリング法、或いは、ニックトランスレーション法、ランダムプライム法を使用することができる。PCRラベリング法では、核酸分子を鋳型としてハプテン(例;DIG等)で標識された核酸基質(例;dUTP−DIG,dUTP−FITC等)を使用したPCRを行うことで核酸分子をハプテンで標識することができる。ニックトランスレーション法では、ハプテンで標識された核酸基質(例;dUTP−DIG等)を使用してニックトランスレーションを行うことにより核酸分子をハプテンで標識することができる。ランダムプライム法では、長さの異なるプライマーと鋳型となる核酸分子との間で2本鎖を形成させて、この2本鎖のDNAに対して、ハプテンで標識された核酸基質(例;dUTP−DIG)等の存在下でklenowEnzymeを作用させることにより、核酸分子をハプテンで標識することができる。標識した核酸分子は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)等により夾雑物と分離して該当する部分をゲル切り出し及び溶出等を行うこと等で精製することができる。
[PCRを利用しない方法]
PCRを用いた上記方法以外の方法で核酸分子にハプテンを結合させる場合、以下の方法を用いることができる。
核酸をハプテン(例;FITC)で標識する方法としては、例えば、核酸分子の末端等に第1官能基(例;アミノ基)を導入し、この第1官能基(例;アミノ基)とハプテン(例;FITC)の分子内ある第2官能基(例;イソチオシアネート基)とを結合反応させることで核酸分子をハプテン(例;FITC)で標識することができる。
ハプテンがFITCであり、上記第1,2官能基がアミノ基とイソチオシアネート基である具体例の場合、導入したい核酸分子の部位を酵素的にリン酸化し、該核酸分子とアミノ基導入試薬とを混合して室温で12〜18時間程度反応させることで核酸分子にアミノ基を導入することができる。アミノ基を導入試薬としては、例えば、MES緩衝液に溶解した0.2M程度のカルボジイミドの溶液等を好適に用いることができる。次いで、リン酸化した上記核酸分子に対して1〜10倍程度のモル数のFITCを含むDMF溶液を混合し、低温(例;4℃)で10〜20時間程度反応させることでFITCのイソチオシアネート基と核酸分子のアミノ基とが結合反応することができる。
標識した核酸分子は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)等により夾雑物と分離して該当する部分をゲル切り出し及び溶出等を行うことで精製することができる。また、核酸分子がFITCで標識されているか否かは、精製された核酸分子についてFITCの励起波長500nm、発光波長520nmの蛍光の有無を調べることにより確認することができる。
上記ハプテンがDNPである場合、例えば、DNP標識用のキット「Label IT(登録商標) DNP Labeling Kit」(タカラバイオ社製)等により核酸分子をDNPで標識することもできる。この場合、標識した核酸分子は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)等により夾雑物と分離して該当する部分をゲル切り出し及び溶出等を行うこと等で精製することができる。また、核酸分子がDNPで標識されているか否かは、精製された核酸分子についてDNPの可視光波長570〜590nmの有無を調べることにより確認することができる。
[抗ハプテン抗体]
ハプテンに対する抗体としては、上記ハプテンと特異的に結合可能な抗体が含まれる。上記ハプテンの例に対応する抗体の例としては、抗DIG抗体、抗FITC抗体、抗DNP抗体を好適に用いることができる。
抗DIG抗体としては、「抗ジゴキシゲニンモノクローナル抗体」(ロシュアプライド サイエンス社製)等、市販されている抗体を使用することができる。抗FITC抗体としては、「Anti-FITC 抗体 (ab19224)」(アブカム社製)を好適に使用することができる。抗DNP抗体としては、「抗DNP, モノクローナル抗体 (Clone : SPE7)」(日本バイオテスト研究所社製)を好適に使用することができる。これらの抗ハプテン抗体は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、前述したように第1核酸分子および第2核酸分子にそれぞれ第1ハプテンおよび第2ハプテンを結合させる場合、蛍光体ナノ粒子に、抗第1ハプテン抗体および抗第2ハプテン抗体を結合させるようにすることができる。
上記「抗体」の語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、Fab、Fab’2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などの各種抗体を含む意味で用いられる。
[抗ハプテン抗体が結合した蛍光体ナノ粒子の調製]
[抗ハプテン抗体と蛍光体ナノ粒子との結合]
抗ハプテン抗体が結合した蛍光体ナノ粒子の調製する方法は、ハプテンに対する抗ハプテン抗体の結合性が損なわれない限り特に限定されない。
例えば、抗ハプテン抗体をビオチンで修飾するとともに、蛍光体ナノ粒子にストレプトアビジンで修飾し、ビオチンとストレプトアビジンとの結合を介して抗ハプテン抗体と蛍光体ナノ粒子とを結合させる方法であってもよい。
別の方法として、抗ハプテン抗体を所定の還元試薬で還元してチオール基(SH基)を導入するとともに、蛍光体ナノ粒子の表面へ上記チオール基と結合反応可能な、マレイミド基、アルデヒド基、ブロモアセトアミド基(ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基)等の官能基を導入し、チオール基と上記官能基とを結合反応させることにより抗ハプテン抗体と蛍光体ナノ粒子を結合させることとしてもよい。
一般的に、抗体にチオール基を導入する場合、抗体を還元剤により処理することでジスルフィド結合(−S−S−)からチオール基(SH基)を形成することで導入することができる。基礎還元剤としては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩およびシステイン、2−メルカプトエチルアミン等を挙げることができる。
還元時のpH(還元pH)がアルカリ側になるにつれて抗体分子に含まれるジスルフィド結合(S―S結合)の還元量が増加していくことから、還元剤の還元能が発揮できるpH範囲内で、抗体1分子中にSH基が極力少なく導入されるように還元pHを調節することが抗体の反応性を損ねない観点から好ましい。還元pHとしては、例えば、2−メルカプトエタノールを使用する場合はpH7.0〜8.5である。還元反応の条件としては、4℃〜8℃で8時間〜36時間である。また、抗体1モルに対し、還元剤のモル濃度を100,000,000,000〜10,000,000,000,000モルとするのが好ましい。抗体分子中のSH基の定量は、例えば、公知のSH基定量試薬(例: 5,5'−Dithiobis(2−nitrobenzoic acid)同仁品コード:D029 製品名:DTNB)等のSH基定量キットを使用する方法等の公知の方法により行うことができる。
蛍光体ナノ粒子の表面に上記官能基を導入する方法としては、特に限定されず、例えば、蛍光体ナノ粒子が樹脂粒子を母体とする蛍光体集積ナノ粒子である場合には、蛍光体集積ナノ粒子を製造する際に、上記官能基を側鎖に有するモノマーを主鎖部分で重合することで蛍光体集積ナノ粒子に結合基を導入する方法、または、結合基を有するリンカーを蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合させて導入する方法を例示することができる。
また、蛍光体ナノ粒子が半導体ナノ粒子である場合には、半導体ナノ粒子を構成する無機粒子の表面のOH基と反応するカップリング剤(シランカップリング剤等)を介して上記官能基(アミノ基等)を導入することができる。
[官能基導入の確認]
抗ハプテン抗体へチオール基が導入されたか否か、蛍光体ナノ粒子の表面へ上記官能基が導入されたか否かの確認は、例えば、チオール基または上記官能基の導入処理の前後で、FT−IRにより結合に該当する波長ピークと面積を計測する方法で行うことができる。
FT−IR以外の方法としては、以下の方法によっても官能基が導入されたか否かを確認することができる。上記官能基がマレイミド基の場合には、「AmpliteTM 蛍光マレイミド定量キット」(コスモバイオ社製)等を使用し、マレイミド基礎の導入処理前後で蛍光体ナノ粒子の表面のマレイミド基を定量することで確認することができる。
上記官能基がアルデヒド基の場合には、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-dinitrophenylhydrazine;DNPH)法を使用して、アルデヒド基の導入処理前後で蛍光体ナノ粒子の表面のアルデヒド基を定量することで確認することができる。上記官能基がハロアセトアミド基(ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基)の場合には、実際にSH基と反応させて副生されるハロゲンを公知の方法で定量する方法により蛍光体ナノ粒子の表面へ上記ハロアセトアミド基が導入されたか否かを確認することができる。
[結合モル比]
SH基を導入した抗体と官能基を導入した蛍光体ナノ粒子との結合は、反応効率を高める観点から、蛍光体ナノ粒子1モルに対して、還元後のSH基を有する抗体を100,000モル〜100,000,000モル用いることが好ましい。結合反応の温度と時間は、結合反応を十分に行う観点から、室温(1〜40℃)で1時間〜12時間放置することが好ましい。なお、結合反応の停止は、反応液にメルカプトエタノール等の還元剤を30〜50nmol程度添加することで行うことができる。
[リンカーを使用する場合]
[抗ハプテン抗体と蛍光体ナノ粒子との間にリンカーを介在させる場合]
抗ハプテン抗体と蛍光体ナノ粒子との間に親水性高分子のリンカーを介在させてもよい。該リンカーの一端部と抗ハプテン抗体とを結合する場合、該リンカーの一端部にマレイミド等の官能基を導入するとともに、抗ハプテン抗体にSH基等の官能基を設けて、これら官能基同士の結合反応によりリンカーの一端部と蛍光体ナノ粒子との結合を行うことができる。
また、該リンカーの他端部と蛍光体ナノ粒子とを結合する場合、該リンカーの他端部にリンカーの一端部の結合に使用した上記官能基とは異なるNHSエステル等の官能基を導入するとともに、蛍光体ナノ粒子の表面にアミノ基等の該官能基と結合可能な官能基を導入し、これら官能基同士の結合反応によりリンカーの他端部と蛍光体ナノ粒子とを結合させることができる。
このようなリンカーは、市販されているものを購入することにより入手することができる。例えば、PEGの一端部にマレイミド基を有し、他端部にNHSエステルを有するリンカーを使用したい場合には、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のPEGリンカー「SM(PEG)12」を購入して好適に使用することができる。
なお、上述のアミノ基を導入する場合については、蛍光体ナノ粒子がメラミン樹脂等の樹脂粒子を母体とする蛍光体集積ナノ粒子の場合には、そもそも粒子表面にアミノ基が存在するが、さらに例えば2−イミノチオラン等のアミノ基導入試薬によりアミノ基を導入して官能基を加えるようにしてアミノ基を導入してもよい。また、蛍光体ナノ粒子が半導体ナノ粒子である場合には、金属表面のOH基と反応するアミノ基導入用のカップリング剤(国際公開2012−165081等に記載されているもの)により粒子表面にアミノ基を導入することができる。
[核酸分子とハプテンとの間にリンカーを介在させる場合]
PCR法を利用する方法の場合、上述したハプテン標識用の核酸基質(例;dUTP−ハプテン)の代わりに、リンカーを介してハプテン部分と核酸部分とが結合した核酸基質(例;dUTP−リンカー−ハプテン)を使用してPCRを行うことで、核酸分子に対してリンカーを介してハプテンを結合させることができる。上記核酸基質としては、「Fluorescein-12-dUTP」(ロッシュ・ライフサイエンス社製)等が例示される。
[リンカーに使用可能な親水性高分子]
リンカーを製造する場合に、リンカーとして使用可能な親水性高分子の例としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸により形成される群から選択された1種類または2種以上の親水性高分子を用いることができる。前述の例示された親水性高分子の中では、ポリエチレングリコール(PEG)が、オキシエチレン単位の数により鎖長を設定しやすい観点から好ましい。
[リンカーの長さについて]
リンカーの長さについては、下記化学式で示すように、リンカーが抗体や蛍光体ナノ粒子に結合した状態で、親水性高分子に由来する部分の長さを意味する。リンカーの長さは、30オングストローム以上、1000オングストローム以下であることが望ましく、15オングストローム以上65オングストローム以下が特に好ましい。リンカーは1つの蛍光体ナノ粒子に1個または2個以上結合していてもよく、リンカーが蛍光体ナノ粒子に2個以上結合している場合には、1個の蛍光体ナノ粒子に対して長さの異なる複数のリンカーが結合されていてもよい。例えば、1個の蛍光体ナノ粒子に対して2種以上の第2結合部(例えばDIGおよびFITC)を結合させる場合、それぞれを長さの異なるリンカーで結合させるようにすることが好ましい。
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[第1生体分子と第2生体分子による結合]
核酸分子と蛍光体ナノ粒子との結合は、第1生体分子と第1生体分子に特異的に結合可能な第2生体分子との結合を介した結合によることとしてもよい。
第1生体分子、第2生体分子は相互に特異的な結合をする生体分子をいい、ここでいう「特異的な結合」には、共有結合、抗原と抗体の間で起きる抗原抗体反応、および相補的な塩基配列を有する核酸分子の間でおきるハイブリダイゼーションは含まない。第1生体分子,第2生体分子には、共有結合を生じさせる反応試薬に含まれる分子や、抗体自体および核酸分子自体は含まれない。
核酸分子に結合させる第1生体分子は、第2生体分子より低い重量平均分子量(Mw)の生体分子であることが好ましい。この理由は、第1生体分子を結合させた核酸分子のみを用いて組織切片上のターゲットの遺伝子に対してハイブリダイゼーションを行った後に、第2生体分子を有する蛍光体ナノ粒子を加えて第1生体分子と第2生体分子との結合を介して前記核酸分子に蛍光体ナノ粒子を結合して蛍光標識するような場合、第1生体分子の重量平均分子量(Mw)が極力小さい方が上記核酸分子とターゲットの遺伝子とのハイブリダーゼーションに与える悪影響が小さくなるためである。
第1生体分子としては、低分子であるビオチン等を挙げることができる。第2生体分子としては、例えば、高分子であるストレプトアビジン、アビジン、ニュートラアビジン等が挙げられる。このうち、ストレプアビジンを好適に用いることができる。
[第1生体分子が結合した核酸分子の調製]
第1生体分子を核酸分子に結合させる方法としては、第1生体分子を有する核酸基質を使用した、PCRラベリング法、ニックトランスレーション法、ランダムプライム法を使用することができる。PCRラベリング法では、核酸分子を鋳型として第1生体分子(例;ビオチン等)で標識された核酸基質(例;dUTP−ビオチン等)を使用したPCRを行うことで核酸分子を第1生体分子で標識することができる。ニックトランスレーション法では、第1生体分子で標識された核酸基質(例;dUTP−ビオチン等)を使用してニックトランスレーションを行うことにより核酸分子を第1生体分子で標識することができる。または、ランダムプライム法では、長さの異なるプライマーを鋳型となる核酸分子に2本鎖を形成させて、これにクレノー酵素を第1生体分子で標識された核酸基質(例;dUTP−ビオチン)等の存在下で作用させることにより、核酸分子を第1生体分子で標識することができる。
[第2生体分子が結合した蛍光体ナノ粒子の調製]
第2生体分子と蛍光体ナノ粒子との結合は特に限定されず、第2生体分子がアビジン等のタンパク質である場合には、前述した抗体と蛍光体ナノ粒子との結合と同様に第2生体分子を蛍光体ナノ粒子に結合させることができる。また、上述したように抗体と蛍光体ナノ粒子との間にリンカーを介在させる方法により第2生体分子を蛍光体ナノ粒子に結合させてもよい。
[第1,第2結合基による結合]
核酸分子と蛍光体ナノ粒子との結合に、ハプテン−抗ハプテン抗体間の結合や、第1生体分子−第2生体分子間の結合を使用しない場合、例えば第1結合基と第2結合基とを核酸分子と蛍光体ナノ粒子とにそれぞれ導入して、第1,2結合基間の結合を介して核酸分子と蛍光体ナノ粒子とを結合させることも可能である。第1結合基と第2結合基には、結合可能な公知の官能基同士の組合せを利用することができる。例えば、第1試薬と第2試薬が分包されているプローブ試薬を用いる場合、第1試薬に含まれる核酸分子に導入する第1結合基と、第2試薬に含まれる蛍光体ナノ粒子に導入する第2結合基の組合せとして好ましいものとしては、混合するだけで常温で速やかに反応が進行する“クリックケミストリー”で使用されているような、アジドーアルキンのヒュスゲン付加環化反応による結合を利用することが望ましい。一方、第1試薬と第2試薬が分包されているものではなく、あらかじめ核酸分子と蛍光体ナノ粒子とが直接的または間接的に結合しているプローブ試薬を用いる場合は、前記アジドーアルキンのヒュスゲン付加環化反応による結合の他、所定の反応条件の下で共有結合が形成される各種の反応、例えばマレイミド基−チオール基の反応を利用することも可能である。なお、蛍光体ナノ粒子と核酸分子とを直接結合させる上記態様に限らず、介在分子を用いる等して、ハプテン−抗ハプテン抗体間の結合、第1生体分子−第2生体分子間の結合を介在させて上記核酸分子と蛍光体ナノ粒子とを結合させてもよい。
[アジド−アルキン結合の場合]
蛍光体ナノ粒子が蛍光体集積ナノ粒子である場合、蛍光体集積ナノ粒子へのアジ基導入(アジ化)は、公知のアジド化試薬(ジアゾ基転移試薬)を用いて行うことができる。また、核酸分子への炭素間三重結合の導入(アルキン修飾)は、「EdU(5-エチニル-2′デオキシウリジン)」(ライフテクノロジー社製)等を用いたニックトランスレーション法等により行うことができる。
[マレイミド基−チオール基の結合の場合]
マレイミド基を有する核酸分子は、マレイミド等を有する核酸の基質を用いて核酸分子に対してニックトランスレーションを行うか、核酸の5’末端または3’末端をマレイミド化する試薬により核酸分子にマレイミド基等を導入することができる。
蛍光体ナノ粒子へのチオール基の導入については、蛍光体ナノ粒子が樹脂粒子を母体とする蛍光体集積ナノ粒子である場合には、チオール基を有するモノマーを前述したように重合して導入することで導入することができる。なお、結合モル比と官能基導入の確認については前述した通りに行うことができる。
[染色]
以下、上記核酸プローブ試薬を用いた免疫染色(病理診断のためのデータ提供用の免疫染色)について述べる。FISH、免疫染色の方法それ自体は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
[検体スライドの調製]
検体スライドは、例えばがんが疑われる被験者(ヒト、イヌ、ネコ等)の組織について一般的な病理組織診断に用いる方法で調製することができる。まず、被験者の組織を、ホルマリン等を用いて固定し、アルコールで脱水処理した後、キシレン処理を行い、高温のパラフィン中に浸しパラフィン包埋を行い、組織試料を作製する。続いて、上記組織試料を3〜4μmの切片にし、スライドガラス上に載置したものを検体スライドとする。
特に近年、上記がんが疑われる被験者としてCDXマウス、PDXマウスといったモデル動物が病理組織の検査に供されるケースもあり、創薬研究で利用されるモデル動物として、注目されている。これらのモデル動物の組織についても、一般的な病理組織診断に用いる方法で、検体スライドは調製することができ、購入することもできる。ここで、CDXマウスとは患者から取り出した腫瘍細胞に由来する培養細胞をマウスに植え付け、マウス内で成長させることによって作製されたモデル動物であり、PDXマウスとは患者から取り出した腫瘍組織または腫瘍細胞をマウスに植え付け、マウス内で成長させることによって作製されたモデル動物、である。
[脱パラフィン処理工程]
キシレンまたはその他の脱パラフィン剤を入れた容器に検体スライド上の組織切片を浸漬させ、パラフィンを除去する(図2,図3参照)。このときの温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。次いで、エタノールを入れた容器に該切片を浸漬させ、キシレンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でエタノールを交換してもよい。次いで、水を入れた容器に該切片を浸漬させ、エタノールを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中で水を交換してもよい。
[検体スライドの前処理]
プローブをハイブリダイゼーション反応に供する前に、前処理(加熱処理、酸処理)、酵素処理による処理など、プローブ試薬が効率的に組織切片上の核酸に到達できるようにするための前処理を施すことが知られている。これらの処理条件や組合せは、切片の種類・厚さ・スライド調整条件などにより、最適条件が異なるので、適宜手順を決定する必要がある。すべての処理を必ず実施する必要があるわけではなく、例えば酵素処理を実施しないという選択肢もありうる。
まず、公知の方法にならい、FISHを行う検体スライドの前処理を行う。前処理条件に特に定めはないが、例えば次のような手順で行うことができる。まず、検体スライドを塩酸(0.2mоl/L程度)に一定時間浸漬する。その後、水に浸漬し、さらに洗浄緩衝液(2×SSC:standard sailine citrate)に浸漬して洗浄する。次に、加熱したNaSCN溶液(例えば1N程度)に一定時間浸漬する。その後、水に浸漬し、さらに洗浄緩衝液に浸漬して洗浄し、これと同じ操作を2回繰り返す。また、前処理液として、上記のような2種類の溶液に変えて、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMEDTA溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mトリス塩酸緩衝液等を用い、加熱下に行うこともできる。加熱機器は、オートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターバス等を用いることができる。温度は特に限定されるものではないが、温度は50−130℃、時間は5分以上30分以下で行うことができる。
続いて、加水分解酵素(プロテアーゼ)を用いて、例えば以下のような手順で、細胞膜および核膜のタンパク質、特にコラーゲンを除去する酵素処理を行う。
まず、検体スライドをプロテアーゼ溶液に一定時間浸漬する。次いで、洗浄緩衝液に浸漬して洗浄し、この操作を2回繰り返す。
その後、検体スライドを風乾等により乾燥させる。なお、風乾に代えて70〜100%のエタノールを使用した公知の脱水処理を行ってもよい。
プロテアーゼとしては、タンパク質の加水分解に適したプロテイナーゼ、例えばペプシン、プロテイナーゼK等がしばしば使用される。なお、脱タンパク質の効率をどうするかは、ハイブリダイゼーション、すなわち、目的とする染色体との反応を最高にするプロテアーゼ濃度と分解時間との組合せを検討した上で、形態学的詳細(morphological detail)が損なわれないような条件設定で行われる。なお、最適の条件は組織型及び固定方法により異なる。また、プロテアーゼ処理後の付加的固定は有用である。
上記の酵素処理の後など必要であれば前処理の各ステップで、検体スライドを固定するため、例えば以下のような手順の処理を行う。まず、検体スライドをホルマリン溶液に一定時間浸漬する。次いで、洗浄緩衝液に浸漬して洗浄し、この操作を2回繰り返す。その後、検体スライドを風乾等により乾燥させる。
なお、固定処理は、通常、固定処理を全く実施せずに染色してみて、切片が剥がれたと思われる工程の後ろで固定処理を実施するプロセスとして追加し改善するため、全く実施しなくともよい場合もあれば、数か所で実施する場合もありうる。したがって、前処理以外の各ステップ以外のステップでも、必要に応じて核染色の前後で固定処理を実施しても構わない。例えば、ハイブリダイゼーションの前および/または後に検体の固定処理を行ってもよい。
[染色工程]
[DNA変性処理]
上記の固定処理の後、切片上に存在するDNAを変性する(二本鎖DNAから一本鎖DNAにする)ため、例えば以下のような手順の処理を行う。まず、検体スライドを変性溶液(ホルムアミド/SSC溶液等)に72℃程度で所定の時間、浸漬する。その後、検体スライドを取り出し、ホルムアミドを除去するため、濃度を徐々に高めた数段階のエタノール(例えば70%エタノール水溶液、80%エタノール水溶液および100%エタノール)に浸漬する。その後、検体スライドを風乾等により乾燥させる。
[ハイブリダイゼーション処理]
配列の異なる複数の核酸分子(DNAプローブ)を含むプローブ試薬を用いて、公知のFISH(例えば「アジレントFISH General PurposeReagentsプロトコル」や、「臨床FISHプロトコール―目で見る染色体・遺伝子診断法 (細胞工学別冊―実験プロトコールシリーズ」等)と同様に、ハイブリダイゼーション処理を行うことができる。ここで、用語「ハイブリダイゼーション」は、二本鎖分子の形成のための二本のDNA又はDNAとRNA相補鎖の結合過程、または形成された2本鎖の分子を意味する。
上記ハイブリダイゼーションの1つの態様としては、図2に例示したように、先ず、配列の異なる複数の核酸分子(DNAプローブA,B)と蛍光体ナノ粒子とが結合した2種類の複合体M,Nを含むプローブ試薬を用意し、該複合体M,Nをそれぞれ染色体上の目的の遺伝子に対して結合させるハイブリダイゼーションである。
上記ハイブリダイゼーションの別の1つの態様としては、DNAプローブA,Bの溶液と蛍光体ナノ粒子の分散液とを分けて有するプローブ試薬を用意して、図3に示すように、DNAプローブA,Bのみを最初に染色体上の目的の遺伝子に対してハイブリダイゼーションさせた後に、ハイブリダイズしたDNAプローブに結合しているハプテンに対して抗ハプテン抗体を結合させ、さらに該抗体の結合している第1生体分子に対して、蛍光体ナノ粒子に結合している第2生体分子を結合させる動的なハイブリダイゼーションである。
なお、ハイブリダイゼーションに使用する核酸分子の種類は2種に限定されず、2種以上であればよく、好ましくは4〜6種である。
また、染色体上の目的遺伝子と相補鎖を形成した配列の異なる複数の核酸分子(例;DNAプローブA,B)に対して蛍光体ナノ粒子をそれぞれ結合させることができれば、上記とは別のハイブリダイゼーションの態様であっても構わない。例えば、表1に例示された各結合(ハプテンー抗ハプテン抗体間の結合、第1生体分子−第2生体分子間の結合、第1結合基―第2結合基間の結合)、またはこれらの結合の組合せを利用して、核酸分子と蛍光体ナノ粒子とを動的に結合してもよい。
[核染色処理]
ハイブリダイゼーション処理の後、通常はさらに、細胞数をカウントするための核染色処理を行う。核染色試薬としてはDAPIが一般的であるが、これ以外にもHoechst 33258、Hoechst 33342などのビスベンズイミド誘導体やその他の核染色試薬を用いてもよい。例えば、核染色試薬としてDAPIを用いる場合は、次のような手順で核染色を行うことができる。まず、ハイブリダイゼーション処理を行った検体スライドを脱イオン水、リン酸液緩衝生理食塩水(PBS)で順次洗浄する。次いで、DAPI染色試薬(2μg/PBS)に一定時間浸漬する。
[封入処理]
FISHによる染色処理および核染色処理を終えた検体スライドは、PBSで数回洗浄し、風乾または脱水処理を行った後、組織切片上に封入剤を滴下し、カバーガラスを被せ、乾燥させる封入処理を行う。封入剤としては公知の油系封入剤(Entellan(登録商標)new等)または水系封入剤(Aquatex(登録商標)等)を使用することができる。以上の処理により作製された封入済みの検体スライドが、病理診断等を行うためのプレパラートとなる。
[観察工程]
[明視野観察]
明視野観察は、細胞または組織内の染色対象とする細胞器官の分布情報を取得するために必要に応じて行われる。明視野観察は、一般的な方法として、例えば、上記染色後、ヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)や前述したようなDAPI染色を行った後に顕微鏡で観察を行うことが好ましい。
HE染色を行う場合、例えば、免疫染色した切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行い、その後、該組織試料を45℃の流水で3分間洗浄し、次に、1%エオシン液で5分間染色してエオシン染色を行う。
なお、形態観察染色に用いられるエオジンは、明視野において観察できるだけでなく、所定の波長の励起光を照射した時に自家蛍光も発するので、適切な波長および出力の励起光を染色された組織試料に照射することで、蛍光顕微鏡によっても観察できる。
一方、前記その他の染色として、例えば、乳がんにおけるHER2タンパク質を検出対象の抗原として組織化学染色(DAB染色等)をおこなった場合の明視野観察においては、適切な照明光の照射下で、光学顕微鏡の4倍対物レンズを使用して、検体組織内の癌細胞のHER2タンパク陽性染色像、陽性染色の強度、陽性細胞率を観察する。次に対物レンズを10倍に切り替え、陽性所見が細胞膜か細胞質に局在するかを確認し、必要に応じてさらに対物レンズ20倍で検索する。
[蛍光観察]
染色した上記切片に対し蛍光顕微鏡を用いて、広視野の顕微鏡画像から蛍光の輝点の数又は発光輝度を計測する。用いた蛍光物質の吸収極大波長及び蛍光波長に対応した励起光源及び蛍光検出用光学フィルターを選択する。輝点数又は発光輝度の計測は、市販の画像解析ソフト、例えば、株式会社ジーオングストローム社製の全輝点自動計測ソフトG−Countを用いて行うことができる。なお、顕微鏡を使用した画像解析自体は周知であり、例えば、特開平9−197290に開示される手法を用いることができる。顕微鏡画像の視野は、3mm2以上であることが好ましく、30mm2以上であることがさらに好ましく、300mm2以上であることがさらに好ましい。顕微鏡画像から計測された輝点数、及び/又は発光輝度に基づいて、目的とする特定の遺伝子のコピー数や発現したタンパク質を評価する。具体的には、例えば、遺伝子についてはコピー数が1〜2つであれば正常であり、3つ以上であれば異常(増殖)が生じていると評価することができる。
以下、本発明に係るプローブ試薬による作用および効果について説明する。
(1)本発明に係るインサイチュハイブリダイゼイション用のプローブ試薬は、配列が異なる複数の核酸分子と、前記核酸分子に結合可能な、または、結合した1つまたは2つ以上の蛍光体ナノ粒子を含むものである。
上記プローブ試薬を用いてFISHを行った場合、2種以上の核酸分子(DNAプローブ)が染色体上の目的の遺伝子の別々の箇所に結合し、さらに結合したこれらのDNAプローブに対して蛍光体ナノ粒子がそれぞれ結合する(している)こととなるため、1種類の核酸分子(DNAプローブ)とこれに結合した蛍光体ナノ粒子とを含むプローブ試薬によってFISHを行った場合と比べると、反応確率が高まり、輝点からの蛍光シグナルが強まる。また、従来と比べて、蛍光色素の代わりに蛍光体ナノ粒子を用いるために上記蛍光シグナルがさらに強まる。
この結果、本来カウントされるべき輝点であって、組織切片上に存在して微弱な蛍光シグナルであるために今まではカウントされなかった輝点もカウントされるようになり、目的の遺伝子についての検査精度(例えば、癌発見等の検査精度)が高まる。
特に、配列の異なる複数の核酸分子を含む、本発明に係るプローブ試薬(核酸分子:蛍光体ナノ粒子(結合比)=1:1,1:多)によりFISHを行った場合、ゲノム上の目的遺伝子に対して、核酸分子が複数個所で結合し、蛍光体ナノ粒子も該核酸分子を介して複数個結合していることになる。結合したこれらの蛍光体ナノ粒子は物理的に非常に近い位置に存在するため、蛍光観察した際に輝点が寄り集まって1つの輝点(クラスタ輝点)として観察およびカウントされることとなる。そのため、1種類の核酸分子のみを用いる従来のプローブ試薬によりFISHを行った場合よりも強い輝点シグナルが観測される、という利点がある。
また、本発明に係るプローブ試薬(核酸分子:蛍光体ナノ粒子=多:1)により、ゲノム上の目的遺伝子に対してFISHを行った場合、1つの蛍光体ナノ粒子に結合した配列の異なる複数の核酸分子が上記目的遺伝子に複数個所で結合して足場が強固となるため、従来のように1種類の核酸分子のみを含むプローブ試薬の場合と比べて、目的遺伝子に対する結合力が高まり、蛍光観察したときに輝点からのシグナルが強まるという利点がある。
(2)前記核酸分子および/または前記蛍光体ナノ粒子に対してリンカーを結合させ、前記蛍光体ナノ粒子と前記核酸分子とがリンカーを介して連結されているプローブ試薬であれば、目的遺伝子の周囲に不純物質等が存在する場合に、目的遺伝子にハイブリダイズしたDNAプローブからリンカーを介して物理的に離れた位置に蛍光体ナノ粒子を配置させることができる。この結果、上記不純物質等に起因した輝点シグナルの強度の低下を抑制することができる。
(3)各核酸分子に対して第1結合部が直接的に又は前記リンカーを介して間接的に結合した前記複数の核酸分子と、各蛍光体ナノ粒子に対して第2結合部が直接的に又は前記リンカーを介して間接的に結合した前記1つまたは2つ以上の前記蛍光体ナノ粒子と、をそれぞれ分包して有し、前記第1結合部と第2結合部とが特異的な結合しうるものであれば、上記(2)の効果に加えて、さらに、前記核酸分子と前記蛍光体ナノ粒子とを前記インサイチュハイブリダイゼイションの過程で動的に結合させることができる。すなわち、上記核酸分子によるハイブリダイゼーションの後に反応系に上記蛍光体ナノ粒子を添加して、目的遺伝子にハイブリダイズした上記核酸分子を蛍光染色することができるので、蛍光染色するまで蛍光体ナノ粒子を褪色しにくい状態で保存しておくことができ、この場合、蛍光体ナノ粒子の褪色に起因した問題が生じにくく、目的遺伝子に関する検査精度が高まる。
(4)上記プローブ試薬が、各核酸分子に対して第1結合部が直接的に又は前記リンカーを介して間接的に結合した前記複数の核酸分子と、各蛍光体ナノ粒子に対して第2結合部が直接的に又は前記リンカーを介して間接的に結合した前記1つまたは2つ以上の前記蛍光体ナノ粒子と、第3結合部および第4結合部を有する介在分子と、を分包して有し、前記第1結合部と前記第3結合部とが特異的に結合し得、前記第2結合部と前記第4結合部とが特異的に結合しうるものであれば、FISHを行った場合に、前記複数の核酸分子、介在分子、および蛍光体ナノ粒子を、この順で、染色体上の目的遺伝子に対して試薬や工程を分けて結合させることができる。つまり、前記核酸分子を、介在分子や蛍光体ナノ粒子といった巨大分子が結合していない状態で、目的遺伝子に結合させることができるので、ハイブリダイゼーションの効率が低下しにくい。さらに、介在分子や蛍光体ナノ粒子は上記結合に使用する寸前まで、それぞれに適した保存条件下で保存をしておくことができるので、介在分子の劣化や蛍光体ナノ粒子の褪色を極力抑えることができる。
(2―1)前記リンカーは、1個の蛍光体ナノ粒子および/または1つの核酸分子に対して結合した長さの異なる複数のリンカーであってもよい。
1個の核酸分子に対して長さの異なる複数のリンカーが結合したものを含むプローブ試薬であれば、該プローブ試薬を用いてFISHを行うと、染色体上の目的の遺伝子にハイブリダイズしたDNAプローブから、異なる距離において、複数の蛍光体ナノ粒子を結合させることができる。これにより、蛍光体ナノ粒子同士で立体的な障害を起こして結合しにくくなるという状況を避けることができ、1個の核酸分子に対してより多くの蛍光体ナノ粒子を結合させて、シグナルの強度をより高めることが可能となる。なお、この場合も、1つの遺伝子に固定(結合)された複数の蛍光体ナノ粒子からの得られる輝点は寄り集まって1つの輝点(クラスタ輝点)として観察される。
1個の蛍光体ナノ粒子に対して長さが異なる複数のリンカーを結合したものを含むプローブ試薬の場合、1つの蛍光体ナノ粒子が複数種の核酸分子に結合することができるので、1つの蛍光体ナノ粒子が1つの核酸分子に結合する場合よりも結合が強固になり、目的の遺伝子をより安定的に標識することが可能となる。
(2−2)1個の前記蛍光体ナノ粒子が2種以上の第2結合部を有しており、各種類の第2結合部はそれぞれ異なる長さのリンカーを介して当該蛍光体ナノ粒子に結合しているものであれば、1つの蛍光体ナノ粒子が複数のリンカーを介して複数種の核酸分子に結合し、該複数種の核酸分子が1つの目的遺伝子に対して結合するので、結合が強固になり目的の遺伝子をより安定的に標識することが可能となる。さらに、各リンカーの長さが異なるので、目的遺伝子から特定の位置範囲内に蛍光体ナノ粒子が配置される。この結果、輝点観察しやすくなる。なお、この場合も、1つの遺伝子に固定(結合)された複数の蛍光体ナノ粒子からの得られる輝点は寄り集まって1つの輝点(クラスタ輝点)として観察される。
(5)前記核酸分子に結合した第1結合部がハプテンであり、前記蛍光体ナノ粒子に結合した第2結合部が抗ハプテン抗体である場合、抗体やストレプトアビジンのような巨大分子が第1結合部として用いられる場合と比べて、前記核酸分子によるハイブリダイゼーションを起こしやすくすることができる。また、上記(4)と同様に、抗ハプテン抗体を使用するまで極力失活しにくい状態で保存しておき、ハイブリダイゼーション後に上記抗ハプテン抗体(が結合した蛍光体ナノ粒子)を添加することで反応効率を高めた状態で蛍光染色ができる。
(6)前記第1結合部と前記第3結合部が、ハプテンと抗ハプテン抗体の組み合わせであり、前記第2結合部と前記第4結合部が、ビオチンとストレプトアビジンの組み合わせであれば、上記(4)の効果を好適に得ることができる。
(7)前記ハプテンが、ジゴキシゲニン(DIG)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)および2,4−ジニトロフェノール(DNP)からなる群から選択された1種または2種以上であり、前記抗ハプテン抗体が、抗DIG抗体、抗FITC抗体および抗DNP抗体から選択された1種または2種以上であれば、核酸分子がどの程度のハプテンにより標識されたのかをDIG、FITCまたはDNPに対してそれぞれ励起光を照射すること等により、発する蛍光を定量することにより確認することができる。そのため、標識に用いるハプテンの量、ハイブリダイゼーション後に添加する蛍光体ナノ粒子の量を調節しやすくなり、その結果、輝点から得られるシグナルの強度の調整もしやすくなる。また、上記のように励起させて上記核酸分子が目的遺伝子にハイブリダイズしたか否か確認することができる。なお、励起光を受けて蛍光を発するハプテンとして、上記FITC以外のハプテンを用いてもよい。たとえば、Cy3をハプテンとして用いて抗Cy3抗体を用いて検出する系なども例示できる。
以下、本発明に係るプローブ試薬の実施例および比較例について説明する。
[比較例1]
以下の通りにプローブ試薬の調製を行った。
[DNAプローブの調製]
(PCR法によるゲノムからのHER2遺伝子由来の核酸分子の増幅およびFITC標識)
HER2遺伝子の一部のDNA配列をコードする下記フォワードプライマー(FP1:5’-cgatgtgactgtctcctccc−3')とリバースプライマー(RP1:5'−atcctactccatcccaagcc−3')のセット(1)を使用してHER2遺伝子由来の塩基数210bpの核酸分子(DNAプローブi)を調製した。このPCRを行う際に、PCR用の核酸基質として「Fluorescein−12−dUTP」(1mM,ロシュ・アプライド・サイエンス社)(下記式参照)を使用することにより、上記DNAプローブを、リンカーを介してFITCで標識した。
Figure 0006711352
まず、下記の試薬を遠心チューブ内で混合した。
・5×GoTaq(登録商標) DNA polymerase buffer(promega社製)・・・5μL
・GoTaq(登録商標) DNA polymerase (5U/μL)(promega社製)・・・0.25μL
・ヒトゲノムDNA(100ng/μL)(Takaraバイオ社製)・・・0.25μL
・dATP(10mM)・・・0.50μL
・dGTP(10mM)・・・0.50μL
・dCTP(10mM)・・・0.50μL
・dTTP(1mM)・・・3.25μL
・FITC−dUTP(1nM, ロシュ・アプライド・サイエンス社製)・・・1.75μL
・Forward primer(5'-cgatgtgactgtctcctccc-3')・10μM・・0.50μL
・Reverse primer(5'-atcctactccatcccaagcc-3')・10μM・・0.50μL
・純水(Nuclease free water)・・・12.00μL
次に、(1)ヒートリッドのPCRサーマルサイクラ―(バイオラッド社製)の加熱部を95℃に調節後、上記遠心チューブを加熱部にセットして10分予熱を行い、反応液を予め95℃に調節した。その後、(2)DNAの変性(98℃,10秒)、(3)DNAの伸長(56℃,30秒)および(4)DNAの伸長(68℃,360秒)のセットを40サイクル行った。最後に、(5)DNAの最終伸長(72℃,300秒)を1サイクル行った。
次に、上記PCRの反応物の一部を1.5%のアガロース電気泳動に供し、210bp部分に相当する位置にのみPCR増幅産物による単一のバンドを確認した。
次に、上記PCRの反応物の残り全部を「QIAquick PCR Purification Kit」(QIAGEN社製)を使用して精製し、塩基数210bpのFITCで標識されたHER2遺伝子由来のDNAプローブiを得た。
なお、電気泳動にて210bpの位置にのみ単一バンドが確認されない場合(ウェルの場合)には、電気泳動したゲルから上記210bpのバンドを切り出して、切り出したゲルを「Wizard(登録商標) PCR Preps DNA Purification System」(Promega社製)による精製に供して、FITCで標識された塩基数210bpのHER2遺伝子由来のDNAプローブiを含む溶液を得た。
[ビオチン標識された抗FITC抗体]
ビオチン標識の抗FITC抗体として「biotin付抗FITC抗体」(Vector社 :cord BA-0601)を購入した。
[ストレプトアビジン(SA)標識された量子ドット]
「Qdot(登録商標) 655 Streptavidin Conjugate」(ライフテクノロジー社)を購入した。
上述したFITC標識されたDNAプローブの溶液、ビオチン標識された抗FITC抗体の溶液、およびSA標識されたQdotの分散液を分けて有する(分包して有する)プローブ試薬Aを作製した。
[FISH]
次に、前述のように用意したプローブ試薬Aを使用して以下の通りにFISHを行い、HER2遺伝子のコピー数の測定等を行った。
FISHは以下に示す通り、脱パラフィン処理、検体スライドの前処理、酵素処理、検体の固定処理、変性およびハイブリダイゼーション、検体スライドの洗浄、ブロッキング、ビオチン標識された抗FITC抗体のDNAプローブへの結合、SA標識されたQdotの抗FITC抗体への結合、およびDAPI染色処理をこの順で行うことで実施した。
[脱パラフィン処理]
HER2陽性染色対照標本の検体スライド(パソロジー研究所社製「HER2−FISHコントロールスライド Code PS−09006」)を、以下の(1)〜(4)の順で処理することで脱パラフィン処理を行った。(1)ヘモディー(Hemo−De)に常温で10分間浸漬する。(2)検体スライドを新しいHemo−Deに常温10分間浸漬する。同じ操作を3回繰り返す。(3)検体スライドを100%エタノールで常温で5分間浸漬し、2回洗浄し、脱水処理を行う。(4)検体スライドを風乾または45〜50℃のスライドウォーマー上で乾燥させる。
[検体スライドの前処理]
DNAプローブの到達性を向上させるために、上記検体スライドに対し以下の(1)〜(6)の順で前処理を行い、細胞膜及び核膜の蛋白質の除去を行った。(1)検体スライドを0.2mоl/L HClで室温、20分間処理する。(2)検体スライドを精製水に3分間浸漬する。(3)検体スライドを洗浄緩衝液(2xSSC:standard sailine citrate)に3分間浸漬する。(4)検体スライドを80℃の前処理溶液(1N NaSCN)に30分間浸漬する。(5)検体スライドを精製水に1分間浸漬する。(6)検体スライドを洗浄緩衝液(2xSSC)に5分間浸漬し、この浸漬操作を2回繰り返す。
[酵素処理]
前処理を行った検体スライドに対して、以下の(1)〜(4)の処理をこの順で行うことで酵素処理を行った。(1)前処理した検体スライドを取り出し、ペーパータオルにスライドグラスの下端をつけて余分な洗浄緩衝液を取り除く。(2)検体スライドを37℃に加温したプロテアーゼ溶液に10〜60分間浸漬する。この浸漬処理は、細胞膜及び核膜のタンパク質、特にコラーゲンの分解をするために、25mg プロテアーゼ(2500−3000Units/mg)[ペプシン]/1M NaCl[pH2.0]50mLで37℃、60分間)で処理ことが望ましい。(3)検体スライドを洗浄緩衝液に5分間浸漬する。この操作を2回繰り返す。(4)検体スライドを風乾または45〜50℃のスライドウォーマー上で2〜5分間乾燥させる。
[検体の固定]
検体の固定処理として、前処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(3)の処理を行った。(1)検体スライドを10%中性緩衝ホルマリン(和光純薬工業社製「4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液」、製品番号163−20145)に常温で10分間浸漬する。(2)検体スライドを洗浄緩衝液に5分間浸漬する。これと同じ操作を2回繰り返す。(3)検体スライドを風乾または45〜50℃のスライドウォーマー上で2〜5分間乾燥させる。
[変性およびハイブリダイゼーション]
上記乾燥を行った検体スライドに対して以下の処理(1)〜(3)を、この順で行うことで、検体スライドに対して上記調製したDNAプローブi 1μL(10〜50ng)を用いてハイブリダイゼーション処理を行った。
(1)検体スライドのハイブリダイゼーション領域に調製した上記DNAプローブiを1μLと、IQFISH FFPE Hybridization Buffer(アジレント・テクノロジー社)とを9μL添加しスライド上でピペッティングによる混合後、すぐに、22mm×22mmのカバーグラスをDNAプローブの上に被せ均一にDNAプローブを広げる。ハイブリダイゼーション領域に気泡が入らないようにする。
(2)ペーパーボンド(コクヨ社)でカバーグラスをシールする。
(3)ハイブリダイザー(ダコ社)に検体スライドを配置して、80℃を10分、45℃を1時間の変性およびハイブリダイゼーションを行う。
[検体スライドの洗浄]
上記ハイブリダイゼーション処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(6)の処理をこの順で行うことで、検体スライドの洗浄処理を行った。(1)ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液(1×SSC/0.1%NP−40)をコプリンジャーに入れる。ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液が63℃になるまで温浴槽で予備加熱をする(63℃の温浴槽に少なくとも30分間置く)。(2)ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液を入れたコプリンジャーをもうひとつ用意し、室温に維持する。(3)ピンセットでペーパーボンドのシールを取り除く。室温に維持されたポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液が入ったコプリンジャーの中に検体スライドを入れて、カバーグラスを剥がす。(4)検体スライドを63℃に保たれたポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液の中に入れて10分間浸漬し、洗浄する。(5)Tris wash buffer(HER2 FISH PharmDx「ダコ」)を用いて室温で3分間浸漬し、2回洗浄する。(6)コプリンジャーから検体スライドを取り出し、遮光下(締め切った引出や締め切ったキャビネットの棚等で風乾する。
[検体の固定]
検体の固定処理として、ハイブリダイゼーションを行った検体スライドに対して以下の(1)〜(3)の処理を行った。(1)検体スライドを10%中性緩衝ホルマリン(和光純薬工業社製「4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液」、製品番号163−20145)に常温で10分間浸漬する。(2)検体スライドを洗浄緩衝液に5分間浸漬する。これと同じ操作を2回繰り返す。(3)検体スライドを風乾または45〜50℃のスライドウォーマー上で2〜5分間乾燥させる。
[ブロッキング]
ブロッキングはIn Situ Hybridization Blocking Solution(Vector、MB1220)に室温で30分間浸漬することで行った。
[ビオチン標識された抗FITC抗体のDNAプローブへの結合]
その後、「biotin付抗FITC抗体」(Vector社 :cord BA-0601、1mg/mL)を上記In Situ Hybridization Blocking Solution(Vector, MB1220)で200倍希釈し、室温で30分間浸漬することで、ビオチン標識された抗FITC抗体のDNAプローブへの結合を行った。
浸潤したスライドの洗浄は、In Situ Hybridization Blocking Solution(Vector, MB1220)で2回実施した。
[SA標識されたQdotの抗FITC抗体への結合]
「Qdot(登録商標) 655 Streptavidin Conjugate」(ライフテクノロジー社、1uM)は上記In Situ Hybridization Blocking Solution(Vector, MB1220)で50倍希釈して20nMとし、100μL検体スライド上に滴下し、室温で60分間結合反応を行った。PBSで5分間浸漬し、3回洗浄を行った。
DAPI染色は以下のように行った。まず、10μLのDAPI対比染色液を検体スライドのハイブリダイゼーション領域に添加した。次に、ハイブリダイゼーション処理した後、細胞数をカウントするためにDAPI染色(2μg/mLPBS)を25℃、10分間行うことで細胞核を染色し、カバーガラスを被せて、シグナルの計測まで検体スライドを遮光して保存した。DAPI (2-(4-アミジノフェニル)-1H-インドール-6-カルボアミジン・2塩酸塩) はMolecular Probes社(D1306)を使用した。
[DAPI染色]
(観察)
上述のようにFISHを行った検体スライドを以下のように観察した。
[蛍光顕微鏡観察]
蛍光顕微鏡観察は、上述のようにFISHを行った切片を、蛍光顕微鏡Zeiss imager(カメラ:MRmモノクロ・冷却機能付、対物レンズ×60油浸)を用いて、蛍光顕微鏡観察(600倍)を行い、蛍光の測定、蛍光画像(蛍光静止画像)および輝点数の計測を行った。
なお、Q−dоtには、Q−dоt特有の現象であるブリンキング(明滅)が起こるために、蛍光顕微鏡観察で撮像したある瞬間(例えば1/60秒)にすべてのQ−dоtが蛍光を発しているとは限らない。蛍光測定の仕方により蛍光強度が変わってしまうと、本来であれば共焦点顕微鏡を用いない蛍光顕微鏡のみで測定される蛍光が測定されない場合も起こりうる。1粒子のQ−dоtであれば、20秒間の照射時間においてoff−state(滅状態)は約4秒になる。そこで、上述のように励起光を照射した後に200〜400ミリ秒の分解能で100枚の連続した蛍光静止画像を690nm〜730nmのバンドパスフィルタを用いて取得し、蛍光動画像(200〜400ms/frame×100枚)を得たのち、蛍光動画像の全タイムラインを通して輝点数を計測した。
[結果考察]
HER2発現細胞の染色像について調べたところ、各細胞の1核あたりの輝点数は0であった(表3参照)
[比較例2]
[DNAプローブの調製]
(PCR法によるゲノムからのHER2遺伝子由来の核酸分子の増幅およびFITC標識)
比較例1と同様にプライマーセット(1)を使用してPCRを行い、FITC標識されたHER2遺伝子由来の塩基数210bpの核酸分子(DNAプローブi)を調製した。
[ビオチン標識の抗FITC抗体]
ビオチン標識の抗FITC抗体として比較例1の「biotin付抗FITC抗体」(Vector社 :cord BA-0601)を使用した。
[蛍光体集積ナノ粒子(PID)の調製]
[スルホローダミン101内包ポリメラミン粒子(平均粒子径:280nm)の製造]
蛍光色素として、スルホローダミン101(シグマアルドリッチ社製)20.3mgを水22mLに加えて溶解した。その後、この溶液に乳化重合用乳化剤のエマルゲン(登録商標)430(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、花王社製)の5%水溶液を2mL加えた。この溶液をホットスターラー上で撹拌しながら70℃まで昇温させた後、この溶液にメラミン樹脂原料ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)を0.81g加えた。
さらに、この溶液に界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学社製)の10%水溶液を1000μL加え、70℃で50分間加熱撹拌した。その後、90℃に昇温して20分間加熱撹拌した。得られた蛍光体集積ナノ粒子(PID)の分散液から、余剰の樹脂原料や蛍光色素等の不純物を除くため、純水による洗浄を行った。
具体的には、遠心分離機(クボタ社製マイクロ冷却遠心機3740)にて20000Gで15分間、遠心分離し、上澄み除去後、超純水を加えて超音波照射して再分散した。遠心分離、上澄み除去および超純水への再分散による洗浄を5回繰り返した。得られたメラミン粒子はメラミン樹脂自体が骨格に多くのアミノ基を含むことから、プラス電荷となった。
得られた蛍光体集積ナノ粒子(PID)0.1mgをエタノール1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシラン(LS−3150、信越化学工業社製)2μLを加え、8時間反応させることにより、蛍光体集積ナノ粒子(PID)の樹脂表面に存在するヒドロキシル基をアミノ基に変換する表面アミノ化処理を行った。
2mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有したリン酸緩衝液生理的食塩水(PBS)を用いて、得られた蛍光体集積ナノ粒子(PID)の濃度を3nMに調整した。濃度調整した蛍光体集積ナノ粒子(PID)の分散液に対して、終濃度10mMとなるように、「NHS−PEG12−マレイミド(スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオアミド)−ドデカエチレングリコール]エステル)」(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を混合し、20℃で1時間反応させて、末端にマレイミドがついた蛍光色素を有する蛍光体集積ナノ粒子(PID)を含む混合液を得た。
この混合液を10000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、2mMのEDTAを含有したPBSを加えて沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による上記洗浄を3回行った。
[ストレプトアビジンの調製]
一方、ストレプトアビジン(和光純薬工業社製)とN−スクシミジル Sアセチルチオ酢酸(N-Succinimidyl S-acetylthioacetate、略称:SATA)を用いて、ストレプトアビジンに対してチオール基の付加処理を行い、ゲル濾過を行って蛍光体集積ナノ粒子(PID)に結合可能なストレプトアビジンを別途用意した。
[蛍光体集積ナノ粒子(PID)とストレプトアビジンの結合]
ストレプトアビジン溶液(0.04mg含有)と、EDTAを2mM含有したPBSを用いて上記0.67nMに調整した上記蛍光体集積ナノ粒子(PID)740μLとを混合し、室温で1時間反応させた。
反応後、10mMメルカプトエタノールを添加して反応を停止させた。得られた溶液をφ=0.65μmの遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲル濾過カラムを用いて未反応のストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジンが結合した蛍光体集積ナノ粒子(PID)を得た。
上述したFITC標識されたDNAプローブの溶液、ビオチン標識された抗FITC抗体の溶液、およびSA標識された蛍光体集積ナノ粒子の分散液を分けて有するプローブ試薬Bを作製した。
[FISH・観察]
比較例1のFISHのハイブリダイゼーションにおいて、プローブ試薬Bを使用したこと、すなわち、SA標識されたQdotの代わりにSA標識された蛍光体集積ナノ粒子(PID)を使用したこと以外は比較例1と同様にFISHおよび観察等を行った。
上記FISHにおいてSA標識された蛍光体集積ナノ粒子の反応系への添加および反応は、SA標識された蛍光体集積ナノ粒子(粒径:280nm、濃度:0.05nM)の分散液100μLを検体スライド上に滴下し、室温で60分間結合反応をさせることにより行った。その後の洗浄は、検体スライドをPBSで5分間浸漬する操作を3回実施することにより行った。
[結果考察]
HER2発現細胞の染色像について調べたところ、各細胞の1核あたりの輝点数は0であった(表3参照)。
[実施例1]
[DNAプローブの調整]
[PCR法によるゲノムからの複数種類のHER2遺伝子由来の核酸分子の増幅およびFITC標識]
HER2遺伝子の一部のDNA配列をコードする下記表2のプライマーのセット1〜5を使用して、HER2遺伝子由来の塩基数の核酸分子(DNAプローブi〜v)を調製した。また、DNAプローブi〜vを調製するための各PCRでは、PCR用の核酸基質として「dUTP−12−FITC」(ロシュ・アプライド・サイエンス社製)を使用して上記DNAプローブi〜vをそれぞれFITCで標識した。
Figure 0006711352
[ビオチン標識の抗FITC抗体]
ビオチン標識の抗FITC抗体として比較例1の「biotin付抗FITC抗体」(Vector社 :cord BA-0601)を使用した。
[ストレプトアビジン(SA)標識された量子ドット]
「Qdot(登録商標) 655 Streptavidin Conjugate」(ライフテクノロジー社)を購入した。
上述したFITC標識されたDNAプローブi〜vの混合溶液、ビオチン標識された抗FITC抗体の溶液、およびSA標識されたQdotの分散液を分けて有するプローブ試薬Cを作製した。
[FISH・観察]
比較例1において、使用したプローブ試薬Aの代わりに上記プローブ試薬Cを使用してFISHおよび観察等を行った。なお、使用した5種類のDNAプローブの総量(μg)は、約5倍量(約250ng)であった。
[結果考察]
HER2発現細胞の染色像について調べたところ、各細胞の1核あたりの輝点数は25であった(表3参照)。なお、使用した5種類のDNAプローブの総量(μg)を50ngとした染色試験も行ったところ、同様の結果が得られた。
[実施例2]
[PCR法によるゲノムからの複数種類のHER2遺伝子由来の核酸分子の増幅およびFITC標識]
HER2遺伝子の一部のDNA配列をコードする上記プライマーのセット1〜5を使用してHER2遺伝子由来の核酸分子(DNAプローブi〜v)を調製した。また、各PCRでは、PCR用の核酸基質として「dUTP−12−FITC」(ロシュ・アプライド・サイエンス社製)を使用して上記DNAプローブをFITC標識した。
[ビオチン標識された抗FITC抗体]
ビオチン標識の抗FITC抗体として比較例1の「biotin付抗FITC抗体」(Vector社 :cord BA-0601)を使用した。
[ストレプトアビジン(SA)標識されたPID]
実施例2では、比較例2で製造したストレプトアビジン(SA)で標識された蛍光体集積ナノ粒子(PID)を使用した。
上述したFITC標識されたDNAプローブi〜vの混合溶液、ビオチン標識された抗FITC抗体の溶液、およびSA標識されたPIDの分散液を分けて有するプローブ試薬Dを作製した。
[FISH・観察]
比較例2において使用したプローブ試薬Bの代わりに上記プローブ試薬Dを使用してFISHおよび観察等を行った。なお、使用したDNAプローブi〜vの総量(μg)は、比較例1の約5倍量(約250ng)であった。
[結果考察]
HER2発現細胞の染色像について調べたところ、各細胞の1核あたりの輝点数は33であった(表3参照)。
Figure 0006711352
[比較例3]
比較例3は、比較例1とは異なり、比較例1においてDNAプローブとQdotとの間に比較例1より長いリンカーを介在させるとともに、DNAプローブ、PEGリンカーおよびQdotとを結合させて一体となったものをプローブ試薬として使用した例である。以下のように、プローブ試薬の調製、FISHおよび観察等を行った。
[プローブ試薬の調製]
[PCR法によるゲノムからのHER2遺伝子由来の核酸分子の増幅およびチオール標識]
比較例1で行ったPCR法において、dUTP−FITCの代わりに、以下のように調製した「Thiol−11−dUTP」を使用した(比較例1のdUTP−FITCと同じ濃度で使用した)こと以外は同様にPCRを行うことで、チオール標識されたHER2遺伝子由来のDNAプローブi’を調製した。
[Thiol−11−dUTP溶液の調製]
ルミプローブ社製「Amino−11−dUTP」1μLと、N−スクシミジル Sアセチルチオ酢酸(SATA)とを混合してチオール基付加処理として5℃で1時間インキュベートして反応を行った後、ゲルろ過カラムによるろ過を行い、Thiol−11−dUTP溶液を得た。
[DNAプローブとPEGリンカーとの結合]
一端にマレイミド基、他端にビオチンを有するPEGリンカー「EZ-Link maleimide-PEG11 Biotin」(code21911,サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を上記DNAプローブi’(5μg)と混合して室温で30分間反応させることによりDNAプローブi’のチオール基とPEGリンカーのマレイミド基との結合反応を介して、DNAプローブi’にPEGリンカーを結合させた。なお、前記PEGリンカーの長さ(リンカーに由来する部分の長さ)は55.5オングストロームであった。
[PEGリンカーとQdotとの結合]
比較例1のストレプトアビジン(SA)を有するQdotを、上記のDNAプローブi’およびPEGリンカーの複合体の溶液に添加し、室温で30分間反応させて、上記PEGリンカーのビオチン部分に対してQdotのSA部分を結合させてプローブ試薬Eを作製した。
[FISH・観察]
比較例1のFISHにおいてプローブ試薬Eを使用したこと、すなわち、比較例1で行った、FITC標識されたプローブ試薬i、ビオチン標識された抗FITC抗体、SA標識されたQdotをこの順で分けて添加する操作(プローブ試薬Aの使用)の代わりとして、DNAプローブi’にPEGリンカーおよびQdotが結合したもの(プローブ試薬E)を使用してFISHおよび観察等を行ったこと以外は、比較例1と同様にFISH,観察等を行った。なお、比較例3で使用したDNAプローブの総量(μg)は、比較例1と同程度であった。
[結果考察]
HER2発現細胞の染色像について調べたところ、各細胞の1核あたりの輝点数は3であった(表4参照)
[比較例4]
比較例4は、比較例2とは異なり、比較例2においてDNAプローブとPIDとの間に比較例2より長いリンカーを介在させるとともに、DNAプローブ、PEGリンカーおよびPIDとを結合させて一体となったものをプローブ試薬として使用した例である。以下のように、プローブ試薬の調製、FISHおよび観察等を行った。
[プローブ試薬の調製]
[PCR法によるゲノムからのHER2遺伝子由来の核酸分子の増幅およびチオール標識]
比較例2で行ったPCR法において、dUTP−FITCの代わりに、比較例3で調製した「Thiol−11−dUTP」を使用した(比較例2のdUTP−FITCと同じ濃度で使用した)こと以外は同様にPCRを行うことで、チオール標識されたHER2遺伝子由来のDNAプローブi’を調製した。
[DNAプローブに対するリンカーの結合]
一端にマレイミド基、他端にビオチンを有するPEGリンカー「EZ-Link maleimide-PEG11 Biotin」(code21911,サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を上記DNAプローブi’(5μg)と混合して室温で30分間反応させることにより、DNAプローブi’のチオール基とPEGリンカーのマレイミド基との結合反応を介して、上記DNAプローブi’にPEGリンカーを結合させた。なお、前記PEGリンカーの長さ(リンカーに由来する部分の長さ)は55.5オングストロームであった。
[PEGリンカーとPIDとの結合]
比較例2で調製したストレプトアビジン(SA)を有するPIDを、DNAプローブi’とPEGリンカーとの複合体の溶液に添加し、室温で30分間反応させて、上記PEGリンカーのビオチン部分に対して、PIDのSA部分を結合させてプローブ試薬Fを作製した。
[FISH・観察]
比較例2のFISHにおいてプローブ試薬Fを使用したこと、すなわち、比較例2で行った、FITC標識されたプローブ試薬i、ビオチン標識された抗FITC抗体、SA標識されたPIDをこの順で添加する操作(プローブ試薬Bの使用)の代わりとして、DNAプローブi’にPEGリンカーおよびPIDが結合したもの(プローブ試薬F)を使用してFISHおよび観察等を行ったこと以外は、比較例2と同様にFISH・観察等を行った。なお、比較例4で使用したDNAプローブi’の総量(μg)は、比較例2と同程度であった。
[結果考察]
HER2発現細胞の染色像について調べたところ、各細胞の1核あたりの輝点数は4であった(表4参照)。
[実施例3]
実施例3は、実施例1とは異なり、実施例1においてDNAプローブとQdotとの間に実施例1より長いリンカーを介在させるとともに、DNAプローブ、PEGリンカーおよびQdotとを結合させて一体となったものをプローブ試薬として使用した例である。以下のように、プローブ試薬の調製、FISHおよび観察等を行った。
[プローブ試薬の調製]
(PCR法によるゲノムからの複数種のHER2遺伝子由来の核酸分子の増幅およびチオール標識)
実施例1で行ったPCR法において、dUTP−FITCの代わりに、比較例3で調製したThiol−11−dUTPを使用した(比較例2のdUTP−FITCと同じ濃度で使用した)こと以外は同様にPCRを行うことで、チオール標識されたHER2遺伝子由来のDNAプローブi’〜v’を調製した。
[DNAプローブi’〜v’に対するリンカーの結合]
一端にマレイミド基、他端にビオチンを有するPEGリンカー「EZ-Link maleimide-PEG11 Biotin」(code21911,サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を、上記DNAプローブi’〜v’(5μg)とそれぞれ混合して室温で30分間反応させることにより、上記DNAプローブi’〜v’のそれぞれにPEGリンカーを結合させた。なお、各PEGリンカーの長さ(リンカーに由来する部分の長さ)は55.5オングストロームであった。
[PEGリンカーとQdotとの結合]
実施例1のストレプトアビジン(SA)を有するQdotを、各DNAプローブi’〜v’とPEGリンカーとが結合した複合体の溶液にそれぞれ添加し、室温で30分間反応させて、DNAプローブi’〜v’のPEGリンカーのビオチン部分に対して、SAを介してQdotをそれぞれ結合させたもの(プローブ試薬G)を作製した。
[FISH・観察]
実施例1のFISHにおいてプローブ試薬Gを使用したこと、すなわち、実施例1で行った、FITC標識されたプローブ試薬i、ビオチン標識された抗FITC抗体、SA標識されたQdotをこの順で添加する操作(プローブ試薬Cの使用)の代わりとして、DNAプローブi’〜v’にPEGリンカーおよびPIDがそれぞれ結合したもの(その混合物)(プローブ試薬G)を使用してFISHおよび観察等を行ったこと以外は、実施例1と同様にFISH,観察等を行った。なお、実施例3で使用したDNAプローブi’〜v’の総量(μg)は、実施例1の約5倍(約250ng)程度であった。
[結果考察]
HER2発現細胞の染色像について調べたところ、各細胞の1核あたりの輝点数は40であった(表4参照)。なお、使用した5種類のDNAプローブの総量(μg)を50ngとした染色試験も行ったところ、同様の結果が得られた。
[実施例4]
実施例4は、実施例2とは異なり、実施例2においてDNAプローブとPIDとの間に実施例2より長いリンカーを介在させるとともに、DNAプローブ、PEGリンカーおよびPIDとを結合させて一体となったものをプローブ試薬として使用した例である。以下のように、プローブ試薬の調製、FISHおよび観察等を行った。
[プローブ試薬の調製]
[PCR法によるゲノムからの複数種のHER2遺伝子由来の核酸分子の増幅およびチオール標識]
実施例3と同様にして、チオール標識されたHER2遺伝子由来のDNAプローブi’〜v’を調製した。
[DNAプローブi’〜v’に対するリンカーの結合]
実施例3と同様にして、上記DNAプローブi’〜v’のそれぞれにPEGリンカーを結合させた。
[PEGリンカーとPIDとの結合]
実施例2のストレプトアビジン(SA)を有するPIDを、各DNAプローブi’〜v’とPEGリンカーとが結合した複合体の溶液にそれぞれ添加し、室温で30分間反応させて、DNAプローブi’〜v’のPEGリンカーのビオチン部分に対して、SAを介してPIDをそれぞれ結合させたもの(プローブ試薬H)を作製した。
[FISH・観察]
実施例2のFISHにおいてプローブ試薬Hを使用したこと、すなわち、実施例2で行った、FITC標識されたプローブ試薬i、ビオチン標識された抗FITC抗体、SA標識されたPIDをこの順で添加する操作(プローブ試薬Dの使用)の代わりとして、DNAプローブi’〜v’にPEGリンカーおよびPIDがそれぞれ結合したもの(その混合物)(プローブ試薬H)を使用してFISHおよび観察等を行ったこと以外は、実施例2と同様にFISH,観察等を行った。なお、実施例4で使用したDNAプローブi’〜v’の総量(μg)は、実施例2の約5倍(約250ng)程度であった。
[結果考察]
HER2発現細胞の染色像について調べたところ、各細胞の1核あたりの輝点数は47であった(表4参照)。
Figure 0006711352
[比較例5]
検体スライドを以下の通り変更した以外は、比較例2と同様に実施し、HER2発現細胞の染色像での核当たりの輝点数は0であった。なお、検体スライドは、HER2陽性染色対照標本の検体スライド(パソロジー研究所社製「HER2−FISHコントロールスライド Code PS−09006」)の代わりに、Oncotest GmbH社から購入した検体スライド(PDX-mouse, FFPE block, tumor entity, Breast)を使用した。
[実施例5]
検体スライドを比較例5と同様に変更した以外は、実施例2と同様に実施し、HER2発現細胞の染色像での核当たりの輝点数は21であった。
以上、本発明に係るプローブ試薬について実施の形態および実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施の形態および実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限り設計変更は許容される。
1・・・dUTP−ハプテン
2・・・抗ハプテン抗体
3・・・第1生体分子(ビオチン等)
4・・・第2生体分子(ストレプトアビジン等)
5・・・蛍光体ナノ粒子(量子ドット、又は蛍光体集積ナノ粒子)
6・・・パラフィン
7・・・細胞切片
8・・・スライドグラス
9・・・プローブ試薬
10・・・リンカー
11・・・励起光
12・・・蛍光
F1,F2・・・フォワードプライマー
R1,R2・・・リバースプライマー
PR1,PR2・・・ハプテン標識されたプローブ
HG・・・ヒトゲノム
R1・・・染色対象の遺伝子を含む特定の領域

Claims (2)

  1. 配列が異なる複数の核酸分子と、前記核酸分子に結合可能な1つまたは2つ以上の蛍光体ナノ粒子を含み、
    各核酸分子に対して第1結合部が直接的に又はリンカーを介して間接的に結合した前記複数の核酸分子と、
    各蛍光体ナノ粒子に対して第2結合部が直接的に又はリンカーを介して間接的に結合した前記1つまたは2つ以上の蛍光体ナノ粒子と、
    第3結合部および第4結合部を有する介在分子と、を分包して有し、
    前記第1結合部と前記第3結合部とが特異的に結合しえ、前記第2結合部と前記第4結合部とが特異的に結合しえ、
    前記第1結合部と前記第3結合部が、ハプテンと抗ハプテン抗体の組み合わせであり、前記第2結合部と前記第4結合部が、ビオチンとストレプトアビジンの組み合わせである、
    インサイチュハイブリダイゼイション用のプローブ試薬。
  2. 前記ハプテンが、ジゴキシゲニン(DIG)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)および2,4−ジニトロフェノール(DNP)からなる群から選択された1種または2種以上であり、前記抗ハプテン抗体が、抗DIG抗体、抗FITC抗体および抗DNP抗体から選択された1種または2種以上である、請求項1に記載のプローブ試薬。
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