JP2017227502A - 組織切片から蛍光ナノ粒子の解離を防止する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】一枚の検体スライド(組織切片)上で、免疫染色法またはFISH法により、目的生体物質を蛍光ナノ粒子で標識する処理(蛍光標識処理)と、その他の溶液を用いた処理、例えば、形態観察用の染色液で染色する処理(染色処理)、ブロッキング処理、洗浄処理などとを行う場合に、目的生体物質を標識した蛍光ナノ粒子が解離して顕微鏡観察される蛍光輝点数が減少してしまうことを防止することのできる方法を提供する。【解決手段】蛍光標識処理の後、蛍光標識処理された組織切片を固定化試薬で固定する処理(蛍光ナノ粒子固定処理)を行い、その後に染色処理などを行う、組織切片から蛍光ナノ粒子の解離を防止する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、病理診断等に用いられる染色スライドとして作製される組織切片の目的生体物質と結合した蛍光ナノ粒子の解離を防止する方法に関する。より詳しくは、本発明は、蛍光ナノ粒子を用いた免疫染色法または蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法により染色されたスライドを、蛍光ナノ粒子用の固定化試薬を用いて固定する処理に関する。
病理診断は、患者から採取した検体を薄切してスライドを作製し、所定の方法で染色したときの染色画像に基づいて、細胞または組織の形態を観察するとともに、特定の生体物質の発現レベルを定量、評価することにより、その患者が特定の疾患に罹患しているか否か、あるいは特定の治療薬が奏功するか否かといった様々な事象を診断する方法である。
たとえば、癌組織を採取して作製された検体を用いて、癌遺伝子の一種であるHER2遺伝子(HER2/neu、c-erbB-2)および/またはHER2遺伝子から産生される膜タンパク質であって癌細胞増殖因子の受容体として機能していると推定されるHER2タンパクを定量し、評価することによって、乳癌患者の予後を診断したり、分子標的治療薬「トラスツズマブ」(商品名「ハーセプチン」(登録商標)、抗HER2モノクローナル抗体)による治療効果を予測したりする病理診断が広く行われている。ヒト乳癌症例では、15〜25%でHER2遺伝子の増幅とHER2タンパクの過剰発現が認められるが、癌細胞におけるHER2の過剰発現は基本的にDNAレベルの遺伝子増幅に伴って起きている。癌組織を対象としたHER2の検査法は、DNAレベルの増幅をみる方法、RNAレベルでの過剰発現をみる方法、そしてタンパクレベルでの過剰発現をみる方法に分類される。タンパクレベルとDNAレベルでの検査法として代表的なものが、それぞれ免疫染色法ないし免疫組織化学(IHC)法と蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法である。このようなHER2検査は臨床的に重要視されており、免疫染色法(IHC法)およびFISH法それぞれによるHER2検査の標準的な手順および判定基準(スコア)は、2007 ASCO/CAPガイドラインによって規定されている。
FISH法は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片上で、蛍光標識されたHER2遺伝子用DNAプローブを用いて、癌細胞の間期核におけるHER2遺伝子のコピー数を検出する方法である。一般的には、薄切されたホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を載せたスライド(標本)を準備し、脱パラフィン処理等を行ってハイブリダイゼーションに適した状態にした後、蛍光標識プローブを反応させて核内(染色体上)のHER2遺伝子にハイブリダイズさせる。また、通常はさらに、二本鎖DNAにインターカレートする蛍光色素DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を用いて核(染色体)を染色する。このようにして染色された組織切片は、褪色防止剤を含有する封入剤を用いて封入処理をした後、所定の励起光を照射しながら蛍光画像が撮影され、さらに明視野においてDAPIによる核の染色画像が撮影される。そして、撮影されたHER2遺伝子が標識された蛍光画像とDAPIの染色画像とを重ねあわせ、1細胞あたりの核内(染色体上)に観察される輝点の数を計測し、その値によってHER2遺伝子が増幅されているか否かが判定される。
上記のようなFISH法において、目的とする遺伝子(核酸)の蛍光標識のために、蛍光ナノ粒子、すなわち量子ドットのような高輝度の蛍光体や、そのような量子ドットまたは蛍光色素等の蛍光体を樹脂等で集積化した蛍光色素集積ナノ粒子を用いることが好適である。そのような実施形態は、例えば、特許文献1(国際公開WO2015/141856号パンフレット)を参照することができる。
一方、免疫染色法(IHC法)は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片上で、蛍光標識された抗HER2抗体を用いて、細胞膜に発現しているHER2タンパクの量を検出する方法である。従来の免疫染色法(本来のIHC法)は、所定の基質を添加したときに色素を生成する酵素で標識した抗HER2抗体を利用する方法(酵素抗体法)が採用されていたが、より識別性に優れる蛍光体で標識した抗HER2抗体を利用する免疫染色法(蛍光抗体法)も利用されるようになってきている。FISH法のときと同様、薄切されたホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を載せたスライド(標本)を準備し、脱パラフィン処理等を行って免疫染色に適した状態にした後、免疫染色法では、蛍光標識抗体を反応させて細胞膜のHER2タンパクに結合させる。
蛍光標識のために前述したような蛍光ナノ粒子を用いる場合、従来の酵素を利用するIHC法と違って色素が混合するということがないので、一枚の組織切片上で、免疫染色法による染色処理に加えて、細胞の形態観察用の染色処理を同時に行うことができる。例えば、細胞または組織の形態観察用に標準的に用いられているヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を利用する場合、ヘマトキシリン染色により細胞核・石灰部・軟骨組織・細菌・粘液が青藍色〜淡青色に染色され、エオジン染色により細胞質・間質・各種線維・赤血球・角化細胞が赤〜濃赤色に染色される。このようにして免疫染色された組織切片は、FISH法のときと同様、褪色防止剤を含有する封入剤を用いて封入処理をした後、所定の励起光を照射しながら蛍光画像が撮影され、さらに明視野において形態観察用の染色画像が撮影される(なお、エオジンは蛍光を発するので、エオジンの染色画像は蛍光画像として撮影することも可能である)。そして、撮影されたHER2タンパクが標識された蛍光画像と、細胞膜の位置を特定できる細胞の形態観察用の(蛍光)画像とを重ねあわせ、一細胞あたりの細胞膜領域内に観察される輝点の数を計測し、その値によってHER2タンパクが異常発現しているか否かが判定される。
特許文献2(国際公開WO2013/035688号パンフレット)には、上記のように同一の組織切片上で、HE染色を行うとともに、蛍光ナノ粒子等の蛍光体を用いて目的生体物質を蛍光標識する、組織染色方法について記載されている。また、特許文献3には、同一の組織切片上で、HE染色を行うとともに、平均粒径の異なる2種以上の蛍光ナノ粒子を用いてそれぞれ異なる目的生体物質を蛍光標識する、組織染色方法について記載されている。
国際公開WO2015/141856号パンフレット 国際公開WO2013/035688号パンフレット 特開2015−117980号公報
従来の免疫染色法またはFISH法による組織評価法で使用される蛍光ナノ粒子は、染色液(例えば、形態観察用染色液であるHE溶液:ヘマトキシリンおよび/またはエオジン溶液、DAPI溶液)と併用される場合、目的生体物質と特異的に結合した蛍光ナノ粒子の一部が解離してしまい、顕微鏡画像の観察において蛍光ナノ粒子の蛍光輝点数が減少する問題があった。特に、HE(ヘマトキシリンおよびエオジンの両方での)染色を行った場合は、H(ヘマトキシリン)染色のみを行った場合と比べて粒子数が2〜5割程度減少してしまう、つまりE(エオジン)染色により顕著に蛍光ナノ粒子の一部が解離してしまうという現象が観察され、DAPI溶液等による核染色のようなE染色以外の場合にも程度の差はあれ蛍光ナノ粒子の解離が起こっていることが明らかとなった。
上に挙げた特許文献2には、蛍光ナノ粒子を用いた免疫染色工程の後にHE染色工程を行う場合、標識体として組織切片に導入された蛍光体からの蛍光強度低下を抑制できる観点から、免疫染色工程の後、HE染色工程の前に、固定処理を行うことが好ましいと記載されている(段落[0085]参照)。しかしながら、特許文献2に記載されている固定処理は、HE染色(特にエオジン)に由来する自家蛍光の影響により、蛍光体から発せられる蛍光が相対的に弱まることで蛍光体の識別が妨げられることを避けるために、観察時の波長の調整(段落[0097]参照)と共に取られる手段である。また、病理領域においては一般的に、スライドから細胞が剥がれるのを防止することを目的として固定化試薬を用いることが知られており、特許文献2においても一般的に使用されるホルマリン等を用いて行われる処理に言及している(段落[0086]参照)。特許文献2には、目的生体物質から蛍光ナノ粒子等の蛍光体が解離し、蛍光輝点数を減少することを防止することを目的とした処理は開示されていない。
また、特許文献3に記載の発明においては、第1の蛍光粒子で組織切片の免疫染色を行うと共に、BSA等を含有したPBS緩衝液を使用してブロッキング処理を行った後、第2の蛍光粒子で組織切片の免疫染色を行う。このように複数回の免疫染色が一枚の検体スライド(組織切片)において実施される場合、非特異的吸着を抑制するためブロッキング処理が染色処理と染色処理の間で実施されることが好ましい。しかしながらブロッキング処理が実施される場合にも、目的生体物質と特異的に結合した蛍光ナノ粒子の一部が解離してしまい、顕微鏡画像の観察において蛍光ナノ粒子の蛍光輝点数が減少する問題があった。
さらに、形態観察用の染色液で染色する処理やブロッキング処理を行わない場合でも、通常は蛍光標識処理を行った後にPBS溶液等を使用する洗浄処理が行われるが、洗浄処理によっても、目的生体物質と特異的に結合した蛍光ナノ粒子の一部が解離してしまい、顕微鏡画像の観察において蛍光ナノ粒子の蛍光輝点数が減少する懸念があった。このような解離の現象は、蛍光色素による免疫染色法やFISH法などの染色においても生じている現象かもしれないが、蛍光ナノ粒子による染色の場合は粒子の嵩高さや粒子の表面状態が影響して顕著な現象として現れていることが、推測される。
本発明は、一枚の検体スライド(組織切片)上で、免疫染色法またはFISH法により目的生体物質を蛍光ナノ粒子で標識する処理と、その後で各種の溶液を用いた処理、例えば、それぞれの目的生体物質の染色法に応じた細胞形態観察用の染色液で染色する処理、ブロッキング処理、洗浄処理などとを行う場合に、目的生体物質を標識した蛍光ナノ粒子が解離して顕微鏡観察される蛍光輝点数が減少してしまうことを防止することのできる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、本発明の課題を解決すべく鋭意検討した結果、蛍光標識処理された組織切片に対して、蛍光ナノ粒子用の固定化試薬を用いた固定処理(蛍光ナノ粒子固定処理)を行うことにより、その後にHE溶液やDAPI溶液等の形態観察用染色液を使用する染色処理を行っても、またブロッキング処理や洗浄処理を行っても、目的生体物質を標識した蛍光ナノ粒子が解離してしまうのを抑制することができることを見出した。これは、本発明で用いる固定化試薬により、蛍光ナノ粒子と組織切片(目的生体物質周辺のタンパク質等)とが架橋されたり、組織切片上のタンパク質同士が架橋されることにより蛍光ナノ粒子が解離したとしても目的生体物質の周辺に留まったりすることで、蛍光ナノ粒子が固定化されることによるものと推測される。
すなわち、本発明には下記のような実施形態によって表される発明が包含される。
[項1]
免疫染色法またはFISH法により、検体スライド上の組織切片に含まれる目的生体物質を蛍光ナノ粒子で標識する処理(蛍光標識処理)
および
前記蛍光標識処理がなされた組織切片を蛍光ナノ粒子用の固定化試薬で固定する処理(蛍光ナノ粒子固定処理)
を含む、組織切片から蛍光ナノ粒子の解離を防止する方法。
[項2]
さらに、前記蛍光ナノ粒子固定処理がなされた組織切片を、細胞形態観察用の染色液で染色する処理(染色処理)および/またはブロッキングする処理を含む、項1に記載の方法。
[項3]
前記固定化試薬が官能基としてNHS基(N−ヒドロキシスクシンイミド基)および/またはエポキシ基を有する化合物から選ばれる、項1または2に記載の方法。
[項4]
前記固定化試薬がNHS−PEG−NHS、ビオチン−PEG−NHSおよびエポキシ−PEG−エポキシから選ばれる、項1または2に記載の方法。
[項5]
前記固定化試薬の濃度が1μM〜500μMである、項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[項6]
前記染色液がヘマトキシリン、エオジンおよびDAPIから選ばれる、項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[項7]
前記蛍光ナノ粒子が蛍光色素集積ナノ粒子または無機蛍光ナノ粒子集積体であり、その平均粒子径が40nm〜160nmである、項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
本発明の方法により、蛍光標識処理を行った染色スライドに染色液(ヘマトキシリン−エオジン、DAPI等)を用いた形態観察用染色を行っても、またブロッキング処理や洗浄処理などを行っても、染色スライドから蛍光ナノ粒子が解離するのを抑制することができる。そのため、顕微鏡観察時の蛍光ナノ粒子の輝点数が減少せず、目的生体物質の定量の精度を向上させることができる。
図1は、本発明の組織切片から蛍光ナノ粒子の解離を防止する方法の、第1実施形態:免疫染色法に基づく染色を行う場合の実施形態の例を示すフローチャートである。 図2は、本発明の組織切片から蛍光ナノ粒子の解離を防止する方法の、第2実施形態:FISH法に基づく染色を行う場合の実施形態の例を示すフローチャートである。 図3は、[A]実施例1で撮影された蛍光画像および[B]比較例1で撮影された蛍光画像である。 図4は、[A]実施例3で撮影された蛍光画像および[B]比較例3で撮影された蛍光画像である。 図5は、[A]実施例3で撮影されたヘマトキシリン−エオジン染色画像および[B]比較例3で撮影されたヘマトキシリン−エオジン染色画像である。
本発明の染色スライドとして作製される組織切片から蛍光ナノ粒子の解離を防止する方法は、免疫染色法に基づいて行う実施形態(本明細書において「第1実施形態」と称する。)と、FISH法に基づいて行う実施形態(本明細書において「第2実施形態」と称する。)に大別することができる。
第1実施形態、第2実施形態いずれも、染色スライドを作製するための工程全体は、主に「標本前処理工程」、「染色工程」および「標本後処理工程」に分類することができる。
免疫染色法に関する本発明の第1実施形態の標本前処理工程には、一般的に、脱パラフィン処理、抗原賦活化処理、洗浄処理および必要に応じて細胞固定処理などが含まれる。
第1実施形態の染色工程には、免疫染色法に基づき蛍光標識を行う処理(免疫染色処理)、すなわち目的生体物質を直接的に標識するか、間接的に標識するかに応じた、1次抗体処理、2次抗体処理、蛍光ナノ粒子固定処理および形態観察用染色処理、さらに必要に応じて各処理の前後に行われる洗浄処理、ブロッキング処理などが含まれる。
第1実施形態の標本後処理工程には、封入処理、必要に応じて透徹処理および脱水処理が含まれる。
FISH法に関する本発明の第2実施形態の標本前処理工程には、一般的に、脱パラフィン処理、FISH用前処理、酵素処理および必要に応じて細胞固定処理などが含まれる。
第2実施形態の染色工程には、FISH法に基づき蛍光標識を行う処理(FISH処理)、すなわちDNA変性処理、ハイブリダイゼーション処理、ポストハイブリダイゼーション洗浄処理などと、蛍光ナノ粒子固定処理および形態観察用染色処理(例えばDAPIによる核染色)、さらに必要に応じて各処理の前後に行われる洗浄処理、ブロッキング処理などが含まれる。
第2実施形態の標本後処理工程には、封入処理、必要に応じて溶媒置換処理および脱水処理が含まれる。
以下、本発明を実施するために必要な処理についてさらに説明する。本明細書に特に記載されていない事項、例えば、FISH法または免疫染色法に基づいて染色されたスライドを完成するために必要とされる工程および処理の全般的な事項や、完成した染色スライドを用いた観察・撮影工程、撮影された画像を用いた画像処理・分析工程などについては、特許文献1〜3の記載事項およびその他の一般的な、ないし公知の技術的事項に準じた適切なものとすることができる。
(蛍光ナノ粒子)
本発明では、目的とする遺伝子またはタンパク質を蛍光標識するための物質として、蛍光ナノ粒子を使用する。蛍光ナノ粒子は、ナノサイズの(直径が1μm以下の)粒子状の蛍光体であり、1粒子で十分な輝度を有する蛍光を発することのできるものである。撮影される蛍光画像において所望の波長の蛍光(色)を発する蛍光ナノ粒子を選択すればよい。また、蛍光標識の対象とする生体目的物質が複数ある場合は、それぞれに対応した異なる波長の蛍光を発する、複数種類の蛍光ナノ粒子を組み合わせて用いればよい。このような蛍光ナノ粒子は、無機蛍光ナノ粒子、無機蛍光ナノ粒子集積体および蛍光色素集積ナノ粒子に大別することができる。
(無機蛍光ナノ粒子)
本発明では無機蛍光ナノ粒子として、量子ドットまたはシリカドットを用いることができる。これらの無機蛍光ナノ粒子は、次に述べるような無機蛍光ナノ粒子集積体を調製しなくても単独で、観察可能な輝度を有する輝点の輝度を構成することができる。
量子ドットとしては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを用いることができる。具体的には、国際公開WO2012/133047号公報に例示されたCdSe等の粒子ドットを挙げることができる。これらの無機蛍光ナノ粒子は、いずれかの種類を単独で用いても、複数種を併用してもよい。
また、上記量子ドットをコアとし、その上にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する量子ドットの表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。具体的には、国際公開WO2012/133047号公報に例示されたCdSe/ZnS等を挙げることができるが、これらに限定されない。
量子ドットは必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、市販されている表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等を用いることが出来る。
(無機蛍光ナノ粒子集積体)
無機蛍光ナノ粒子集積体は、量子ドットやシリカドットのような無機蛍光ナノ粒子を複数個、母体となる物質に内包したり表面に付着させたりすることで、または個々の無機蛍光ナノ粒子を連結することで集積化した、ナノサイズの(直径が1μm以下の)粒子状の蛍光体である。免疫染色においてこのような無機蛍光ナノ粒子集積体を用いることは、無機蛍光ナノ粒子を単独で(集積化せずに一粒子で)用いる場合と比較して、目的とする生体分子を標識した蛍光標識体1つあたりが発する蛍光の強度を増強し、細胞の自家蛍光等のノイズや他の色素との識別性を高めることができること、また励起光の照射による褪色を抑制することができることから好ましい。
無機蛍光ナノ粒子集積体において集積化させる無機蛍光ナノ粒子としては、前述したような、単独で用いることのできる無機蛍光ナノ粒子と同様のものが挙げられる。
無機蛍光ナノ粒子集積体の実施形態の例としては、蛍光体として無機蛍光ナノ粒子を用い、母体として樹脂を用いて作製される無機蛍光ナノ粒子集積樹脂粒子;蛍光体として無機蛍光ナノ粒子を用い、母体としてシリカを用いて作製される無機蛍光ナノ粒子集積シリカ粒子などが挙げられる。
無機蛍光ナノ粒子集積体を構成する母体としては、樹脂やシリカなど、物理的または化学的な結合力でもって蛍光体を集積化することのできる物質を用いることができる。樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等の熱硬化性樹脂;およびスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体)など、1種類または2種類以上のモノマーを用いて作製される各種の単独重合体および共重合体が挙げられる。
さらに、「無機蛍光ナノ粒子集積体および蛍光色素集積ナノ粒子の平均粒子径」の項(サイズ選択沈殿法)で後述するように、親油性基をもつ吸着物を利用して量子ドットの集積体を得たり、エンドキャップを不完全な状態で止めることを利用してシリカドットの集積体を得たりすることもできる。
(蛍光色素集積ナノ粒子)
蛍光色素集積ナノ粒子は、蛍光色素を複数個、母体となる物質に内包したり表面に付着させたりすることで集積化した、ナノサイズの(直径が1μm以下の)粒子状の蛍光体である。免疫染色においてこのような蛍光色素集積ナノ粒子を用いることは、蛍光色素を単独で(集積化せずに一分子で)用いる場合と比較して、目的とする生体分子を標識した蛍光標識体1つあたりが発する蛍光の強度を増強し、細胞の自家蛍光等のノイズや他の色素との識別性を高めることができること、また励起光の照射による褪色を抑制することができることから好ましい。
蛍光色素集積ナノ粒子において集積化させる蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素、クマリン系色素、NBD(登録商標)系色素、ピレン系色素、シアニン系色素、ペリレン系色素、オキサジン系色素など、低分子有機化合物(ポリマー等の高分子有機化合物ではないもの)からなる蛍光色素が挙げられる。中でも、スルホローダミン101およびその塩酸塩であるTexasRed(登録商標)などのローダミン系色素や、ペリレンジイミドなどのペリレン系色素は、比較的耐光性が高いため好ましい。
蛍光色素集積ナノ粒子の実施形態の例としては、蛍光体として蛍光色素を用い、母体として樹脂を用いて作製される蛍光色素集積樹脂粒子;蛍光体として蛍光色素を用い、母体としてシリカを用いて作製される蛍光色素集積シリカ粒子などが挙げられる。
たとえば、蛍光体としてペリレンジイミド、スルホローダミン101またはその塩酸塩(テキサスレッド)等の蛍光色素を用い、母体としてメラミン樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を用いて作製される蛍光色素集積樹脂粒子は、標識性能等に優れることから、本発明における蛍光色素集積ナノ粒子として好ましい。
蛍光色素集積ナノ粒子を構成する母体としては、前述したような、無機蛍光ナノ粒子集積体と同様のものが挙げられる。
特にメラミン樹脂やスチレン樹脂は、蛍光色素等の蛍光体を集積させたナノ粒子を作製しやすく、また発光強度の高いナノ粒子が得られるため好ましい。
上記のような無機蛍光ナノ粒子集積体および蛍光色素集積ナノ粒子は公知であり、その製造に用いられる蛍光体および母体や製造方法などの詳細、実施形態の具体例については、例えば国際公開WO2013/035703号パンフレット、国際公開WO2013/147081号パンフレット、国際公開WO2014/136776号パンフレットなどを参照することができる。
(無機蛍光ナノ粒子集積体および蛍光色素集積ナノ粒子の平均粒子径)
本発明において蛍光ナノ粒子として無機蛍光ナノ粒子集積体または蛍光色素集積ナノ粒子を用いる場合、それらの蛍光ナノ粒子の粒径が小さくなる程、比表面積が大きくなり、組織切片との結合力が高まることになるので、無機蛍光ナノ粒子集積体または蛍光色素集積ナノ粒子の平均粒子径は、40nm以上160nm以下であることが好ましい。
無機蛍光ナノ粒子集積体または蛍光色素集積ナノ粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて画像を撮影し、蛍光標識用樹脂粒子の断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径(面積円相当径)として測定することができる。無機蛍光ナノ粒子集積体または蛍光色素集積ナノ粒子の集団についての平均粒子径および変動係数は、十分な数(たとえば1000個)の無機蛍光ナノ粒子集積体または蛍光色素集積ナノ粒子のそれぞれについて上記のようにして粒子径を測定した後、平均粒径はその算術平均として算出され、変動係数は式:100×粒径の標準偏差/平均粒径により算出される。
無機蛍光ナノ粒子集積体または蛍光色素集積ナノ粒子の平均粒子径は、その製造方法における条件を調節することにより、所望の範囲に収まるようにすることができる。
蛍光色素集積ナノ粒子の製造方法の一例として、乳化重合法、すなわち蛍光色素集積ナノ粒子の母体をなす樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を合成するための(コ)モノマーを(共)重合させながら、蛍光体を添加し、当該(共)重合体の内部または表面に当該蛍光体を取り込ませる方法が挙げられる。乳化重合法における反応系では、界面活性剤により外側が水相で内側が油相のミセルが形成され、該ミセルの内側の油相に上記樹脂を構成するモノマーが包含された状態となり、このミセル内側で重合反応が行われることとなる。
このような乳化重合法により蛍光色素集積ナノ粒子を合成する際に、例えば樹脂原料に対して10〜60重量%の量の乳化作用を有する界面活性剤を加える事で、平均粒子径が30nm〜300nmの粒子を作製できる。界面活性剤の割合を増やすと更に小さい粒子も作製可能であり、平均粒子径を30nm以下とすることができる。逆に界面活性剤の割合を減らすと更に大きい粒子も作製可能であり、平均粒子径を300nm以上とすることができる。また、使用する界面活性剤の量が一定である場合、蛍光色素集積ナノ粒子の製造に使用する樹脂原料と蛍光体それぞれの反応系全体に対する割合を変更することによっても、蛍光色素集積ナノ粒子の平均粒子径の調節が可能である。
一方、無機蛍光ナノ粒子集積体の平均粒子径の調整については、無機蛍光ナノ粒子集積体を製造後、サイズ選択沈殿法により分級して、所定の平均粒径の無機蛍光ナノ粒子集積体を回収することで行うことができる。
サイズ選択沈殿法とは、予め親油性基をもつ吸着物を量子ドットなどの無機蛍光ナノ粒子表面に吸着させた後、親油性溶媒中に無機蛍光ナノ粒子を分散させ、溶媒中に両親和性の添加剤を少量ずつ添加して凝集・集積させるという方法である。無機蛍光ナノ粒子の分散性はナノ粒子表面の吸着基と溶媒の相互作用に強く依存しているため、添加剤を徐々に加えることで大サイズの無機蛍光ナノ粒子から順に凝集沈殿物を形成し、この沈殿を遠心分離で回収し、溶媒中で再分散することで分布の狭い単分散無機蛍光ナノ粒子集積体を形成することができることによる。
親油性基をもつ吸着物としては、へプタン、オクタン、ドデカンなどのアルキル基をもつ化合物が挙げられ、炭素数8〜12のものが好ましい。
親油性溶媒としては、ピリジン、へキサンなどが挙げられ、両親媒性の添加剤としてはクロロホルム、メタノールなどが好ましく用いられる。
量子ドットなどの無機蛍光ナノ粒子表面に吸着できる基としては、トリオクチルフォスフィン(TOP)等のフォスフィノ基、(トリオクチルフォスフィンオキサイド(TOPOT)等のフォスフィンオキシド基、リン酸基、アミノ基などが知られており、親油性基をもつ吸着物で被覆された無機蛍光ナノ粒子を形成するためサイズ選択沈殿法に付すことが出来る。
一方、シリカドットは、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いて縮合を行うストーバー法などで作製される、粒径が7〜11nmほどの無機蛍光ナノ粒子である。その粒子表面に存在するHO−Si基はアルキルトリメトキシシランでエンドキャップすることができるが、この時、エンドキャップを不完全な状態で止めるようにすれば、粒子同士がSi−O−Siポリマー鎖でつながれた集積体を得ることが出来る。回収した無機蛍光ナノ粒子集積体の表面からの溶媒や吸着物の除去は、公知の熱処理により行うことができる。
<蛍光標識処理(免疫染色処理)>
本発明の第1実施形態で行われる蛍光標識処理は、染色工程において、免疫染色法に基づいて目的とするタンパク質を蛍光ナノ粒子で標識する処理である。
標識処理を免疫染色法に基づいて行う場合、賦活化処理を経た検体スライドを免疫染色用の標識液に浸漬し、標識液中の1または複数の標識剤を直接的または間接的に標的とするタンパク質(抗原)に結合させて、標識化する。
標的タンパク質(抗原)は特に限定されるものではないが、典型的には、免疫染色法に基づく病理診断の対象となり得る遺伝子、例えばHER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、MET、ki67、その他の各種のがん・腫瘍関連遺伝子(いわゆるバイオマーカー遺伝子)由来のタンパク質、さらにはがんの増殖因子、転写制御因子、増殖制御因子受容体、転写制御因子受容体等のがんに関連するタンパク質から選択することができる。したがって、次に述べる抗体も、上記のような標的タンパク質(抗原)に適した結合能を有するものとして、公知の手法に基づいて作製することが可能であり、市販品として入手することもできる。
目的生体物質(および後述する参照生体物質)に特異的に結合する物質としての抗体はいずれも、ポリクローナル抗体であってもよいが、定量の安定性の観点から、モノクローナル抗体が好ましい。抗体を産生する動物(免疫動物)の種類は特に限定されるものではなく、従来と同様、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどから選択すればよい。
前記抗体は、特定の生体物質(抗原)を特異的に認識して結合する能力を有するものであれば、天然の全長の抗体でなく、抗体断片または誘導体であってもよい。すなわち、本明細書における「抗体」という用語には、全長の抗体だけでなく、Fab、F(ab)'2、Fv、scFvなどの抗体断片およびキメラ抗体(ヒト化抗体等)、多機能抗体などの誘導体が包含される。
免疫染色法には様々な手法があり、目的とするタンパク質を蛍光標識して病理診断等に用いることのできるよう組織切片を染色することができれば特に限定されるものではないが、代表的には次のようなものが挙げられる:
蛍光ナノ粒子と1次抗体を連結した蛍光標識1次抗体を用意し、その蛍光標識1次抗体で目的タンパク質を直接的に蛍光標識し染色する方法(1次抗体法);
1次抗体、および蛍光ナノ粒子と2次抗体を連結した蛍光標識2次抗体を用意し、目的タンパク質に1次抗体を反応させた後、その1次抗体に蛍光標識2次抗体を反応させることで、目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する方法(2次抗体法)
1次抗体とビオチンを連結したビオチン修飾1次抗体、および蛍光ナノ粒子とアビジンないしストレプトアビジンを連結したアビジン修飾蛍光ナノ粒子を用意し、目的タンパク質にビオチン修飾1次抗体を反応させた後、さらにアビジン修飾蛍光ナノ粒子を反応させて、アビジン−ビオチン反応を利用して目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する方法(アビジン−ビオチン併用1次抗体法);
1次抗体、2次抗体とビオチンを連結したビオチン修飾2次抗体、および蛍光ナノ粒子とアビジンないしストレプトアビジンを連結したアビジン修飾蛍光ナノ粒子を用意し、目的タンパク質に1次抗体を反応させ、次いでビオチン修飾2次抗体を反応させた後、さらにアビジン修飾蛍光ナノ粒子を反応させて、アビジン−ビオチン反応を利用して目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する方法(アビジン−ビオチン併用2次抗体法)。
上記のアビジン−ビオチン併用1次抗体法またはアビジン−ビオチン併用2次抗体法において、ビオチンおよびアビジンの代わりに、ハプテン(免疫原性を有さないが抗原性を示し抗体と反応しうる比較的分子量の低い物質)および抗ハプテン抗体、たとえばジコキシゲニンおよび抗ジコキシゲニン抗体、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)および抗FITC抗原、さらには同様の特異的な反応性を有するその他の物質の組み合わせを利用することもできる。
免疫染色法は、上述したような各種の手法のそれぞれにとって標準的な手順および処理条件に従って行えばよい。一般的には、検体を載置した検体スライドを免疫染色法に応じた1種類または2種類以上の試薬に、適切な温度および時間条件の下(例えば4℃で一晩)、浸漬すればよい。免疫染色に必要な各種の試薬、すなわち蛍光標識1次/2次抗体、ビオチン修飾1次/2次抗体、アビジン修飾2次抗体/蛍光ナノ粒子などが溶解し、必要に応じてBSA等のブロッキング剤が添加された緩衝液等の溶液は、公知の方法にしたがって作製することが可能であり、市販品として入手することもできる。
標識液を用いた処理後、好ましくは検体スライドをPBS等の洗浄液に浸漬して洗浄する。通常、この標識液での処理後に行われるPBSを用いた洗浄処理の温度は室温であり、時間は3〜30分である。必要により、浸漬途中でPBSを交換してもよい。
<第1実施形態における細胞形態観察用染色処理>
本発明の第1実施形態の染色工程において、標識物質として蛍光ナノ粒子で検体スライドを標識した後に、細胞ないし組織の形状や細胞の各部の位置情報を得るために検体スライドを形態観察用染色液で染色する染色処理を行うことができる。形態観察用染色液としては、例えばヘマトキシリン染色液、エオジン染色液、パパニコロウ(Pap)染色液が挙げられる。
形態観察用染色液を用いた染色処理は、一般的な手順に従って行えばよい。例えば、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色の場合、マイヤーヘマトキシリン液で5分間染色し、45℃の流水で3分間洗浄した後、1%エオシン液で5分間染色するといった処理が行われる。
HE染色以外にも、例えば国際公開WO2015/146896号パンフレットに記載されているように、組織切片の細胞膜に恒常的に発現している目的生体物質とは異なる生体物質(以下、参照生体物質と称する)、特にタンパク質(抗原)を蛍光ナノ粒子によって蛍光標識化することで、細胞膜の像(細胞膜領域)を形成することができ、細胞ないし組織の形状や細胞の各部の位置情報を得ることもできる。このような参照生体物質により蛍光標識する処理およびそのために用いられる溶液も、本発明においては染色処理および染色液の一実施形態とみなす。
参照生体物質は、目的生体物質と違い、特定の疾患においても発現量が大きく変動しない生体物質から選択することが適切である。たとえば、ATPase、カドヘリン、サイトケラチン、EpCAM(Epithelial Cell Adhesion/Activating Molecule:上皮細胞接着分子、CD326、KSAまたはTROP1とも呼ばれる。)などの膜タンパク質は、本発明における好ましい参照生体物質になり得る。
参照生体物質は、1種類であってもよいが、2種類以上であることが好ましい。参照生体物質を2種類以上とすることにより、その発現量の総和の変動をより抑えることができ、また多数の蛍光標識体でもって細胞膜の輪郭を描き出すことができるため、参照生体物質としての安定性を向上させることができる。
参照生体物質を免疫染色によって蛍光標識化するための染色剤は、少なくとも、参照生体物質に特異的に結合する物質と、蛍光ナノ粒子とを含む。
参照生体物質に特異的に結合する物質には、前述したような参照生体物質としてのタンパク質を抗原として特異的に認識して結合する抗体(IgG)を用いることができる。たとえば、カドヘリンを目的生体物質とする場合は抗カドヘリン抗体を第2プローブとして用いることができる。
<蛍光標識処理(FISH)>
本発明の第2実施形態で行われる蛍光標識処理は、染色工程において、FISH法に基づいて目的とする遺伝子を蛍光ナノ粒子で標識する処理である。
FISH法には様々な手法があり、目的とする遺伝子を蛍光標識して病理診断等に用いることのできるよう検体を染色することができれば特に限定されるものではないが、代表的には次のようなものが挙げられる:
蛍光体とプローブを連結した蛍光標識プローブを用意し、その蛍光標識プローブで目的遺伝子を直接的に蛍光標識し染色する方法(直接法);
プローブとビオチンを連結したビオチン修飾プローブ、および蛍光体とアビジンないしストレプトアビジンを連結したアビジン修飾蛍光ナノ粒子を用意し、目的遺伝子にビオチン修飾プローブを反応させた後、さらにアビジン修飾蛍光ナノ粒子を反応させて、アビジン−ビオチン反応を利用して目的遺伝子を間接的に蛍光標識し染色する方法(間接法)。
なお、上記の間接法において、ビオチンおよびアビジンの代わりに、ハプテン(免疫原性を有さないが抗原性を示し抗体と反応しうる比較的分子量の低い物質)および抗ハプテン抗体、たとえばジコキシゲニンおよび抗ジコキシゲニン抗体、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)および抗FITC抗原、さらには同様の特異的な反応性を有するその他の物質の組み合わせを利用することもできる。
FISH法は、上述したような各種の手法のそれぞれにとって標準的な手順および処理条件に従って行えばよい。一般的には、検体をスライドに載置した検体スライドをFISH法に応じた1種類または2種類以上の試薬に、適切な温度および時間条件の下、浸漬すればよい。FISHに必要な各種の試薬、すなわち蛍光標識プローブ、ビオチン修飾プローブ、アビジン修飾蛍光体などが溶解し、必要に応じてBSA等のブロッキング剤が添加された緩衝液等の溶液は、公知の方法にしたがって作製することが可能であり、市販品として入手することもできる。例えば、ニックトランスレーション法により目的遺伝子のDNAクローンのdTTPをビオチン修飾dUTPで置換することにより、DNAプローブに対して複数個のビオチンが導入されたビオチン修飾プローブを作製することができる。
FISHの対象とする目的遺伝子は特に限定されるものではないが、典型的には、FISH法に基づく病理診断の対象とされているタンパク質、例えばHER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、MET、ki67、その他の各種のがん・腫瘍関連遺伝子(いわゆるバイオマーカー遺伝子)、さらにはがんの増殖因子、転写制御因子、増殖制御因子受容体、転写制御因子受容体等のがんに関連する遺伝子から選択することができる。
目的遺伝子に対するプローブは、公知の方法にしたがって作製することが可能であり、市販品として入手することもできる。プローブの塩基長、塩基配列、GC含量は、ハイブリダイゼーションさせる際の条件を考慮し、適切なストリンジェンシーを有するものとなるよう調製することができる。
<第2実施形態における細胞形態観察用染色処理>
主に本発明の第2実施形態で行われる形態観察用染色処理は、染色工程において、水系染色試薬(水溶液の形態で用いられる核染色能を有する蛍光色素)で核染色を行う処理である。核染色処理をすることにより、細胞数をカウントし、あわせて核内(染色体上)にある目的遺伝子を蛍光標識した蛍光ナノ粒子の輝点数をカウントすることができるようになる。
核の代表的な水系染色試薬としては、2本鎖DNAにインターカレートする蛍光色素であるDAPI(4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール ジヒドロクロライド)が挙げられるが、これに限定されるものではない。水系染色試薬を用いた核染色は、常法に従って行うことができる。
<蛍光ナノ粒子固定処理>
本発明の第1実施形態および第2実施形態で行われる蛍光ナノ粒子固定処理は、第1実施形態においては免疫染色工程、第2実施形態においてはFISH染色工程で、それぞれの実施形態に応じて行われる形態観察用染色処理の前に行われる処理であって、所定の固定化試薬を用いて組織切片に導入された蛍光ナノ粒子を固定化する処理である。
第1実施形態では目的生体物質としてのタンパク質(抗原)に対する免疫染色法に基づく蛍光標識処理を行った後、第2実施形態では目的生体物質としての核酸(遺伝子)に対するFISH法に基づく蛍光標識処理を行った後に、蛍光ナノ粒子固定処理を行うことで、組織切片の目的生体物質と結合した蛍光ナノ粒子をその周辺のタンパク質と架橋させたり、蛍光ナノ粒子が結合している組織切片の周辺のタンパク質同士が架橋させたりすることができる。そのため、形態観察用染色処理および/または洗浄処理やブロッキング処理をその後に行っても、目的生体物質を標識した蛍光ナノ粒子が解離したり、目的生体物質の近傍から遊離する(たとえが第2実施形態では核外にでる)ことを防止することができ、蛍光ナノ粒子の蛍光輝点数が減少する問題を解決することができるようになるものと推測される。
(固定化試薬)
本発明で使用される蛍光ナノ粒子用の固定化試薬は、蛍光ナノ粒子表面に存在する反応部位(以下「第1反応部位」と呼ぶ。)および組織切片の周辺のタンパク質が有する反応部位(以下「第2反応部位」と呼ぶ。)のそれぞれと反応しうる反応部位(それぞれ、以下「第3反応部位」および「第4反応部位」と呼ぶ。)を有する化合物(架橋剤)である。
第1反応部位および第2反応部位としては、例えば、アミノ基(リジン側鎖のεアミノ基、N末端のαアミノ基)、スルフヒドリド基(チオール基)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、芳香環等の官能基が挙げられる。第1反応部位としてはさらに、ストレプトアビジン、アビジン等、特定の分子と特異的に結合する部位も挙げられる。第1反応部位と第2反応部位は、同一であっても、異なるものであってもよい。
一方、第3反応部位および第4反応部位としては、例えば、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)基、マレイミド基、アルデヒド基、エポキシ基およびヨード基等の官能基が挙げられる。第3反応部位としてはさらに、ストレプトアビジン、アビジン等と特異的に結合するビオチン等も挙げられる。第3反応部位と第4反応部位は、同一であっても、異なるものであってもよく、1つの官能基が第3反応部位と第4反応部位の両方の機能を兼ね備えていてもよい(例えば、固定化試薬としてホルムアルデヒドを使用する場合のアルデヒド基)。第3反応部位と第4反応部位はPEG等のリンカーで連結されていてもよい。固定化試薬1分子中に第3反応部位および/または第4反応部位が複数存在してもよい。
固定化試薬(架橋剤)の具体例としては、パラホルムアルデヒド(4%パラホルムアルデヒド水溶液)、ホルムアルデヒド(20%ホルマリン)、グルタルアルデヒド等のアルデヒド系架橋剤;Bi−Functional PEG DE34HS、Bi−Functional PEG DE100HS、Bi−Functional PEG DE200HS、4−arm−Funnctional PEG PTE−100HS、4−arm−Funnctional PEG PTE−200HS、4−arm−Funnctional PEG PTE−400HS、8−arm−Funnctional HGEO PTE−150GS、8−arm−Funnctional HGEO PTE−200GS、8−arm−Funnctional HGEO PTE−400GS等のNHSエステル系架橋剤;Bi−Functional PEG DE 100MA、Bi−Functional PEG DE 200MA、Bi−Functional PEG DE 400MA、4−arm−Funnctional PEG PTE−100MA、4−arm−Funnctional PEG PTE−200MA、4−arm−Funnctional PEG PTE−400MA等のマレイミド系架橋剤;NHS−PEG12−MAL、NHS−PEG1000−MAL、NHS−PEG5000−MAL等のN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基とマレイミド(MAL)基がリンカーを介して結合した架橋剤;エポキシ−PEG−エポキシ(Mw:500)、エポキシ−PEG−エポキシ(Mw:2000)等のエポキシ系架橋剤が挙げられる。
上記のような固定化試薬のうち、第3反応部位および/または第4反応部位の官能基としてNHS基および/またはエポキシ基を有する固定化試薬は、蛍光ナノ粒子表面の第1反応部位および/または組織切片のタンパク質の第2反応部位と結合を形成しやすいため好ましい。特にNHS基を含む固定化試薬は、濃度が低くても十分に架橋が行われるので、組織切片上の目的生体物質(および参照生体物質)や架橋に利用されるタンパク質が構造変化を起こしにくくなるため好ましい。第1実施形態においてはさらに、タンパク質の構造変化を起こさないことで、蛍光標識処理(および参照生体物質を対象とする染色処理)における抗原抗体反応の結合力を高く保つことができるという観点からも好ましい。
さらに、PEG等の比較的長いリンカーを介して官能基が結合している固定化試薬は、リンカーが柔軟に動くことによって蛍光ナノ粒子表面の第1反応部位と組織切片のタンパク質の第2反応部位との架橋反応が起こりやすいだけでなく、リンカー同士が網目状に被さることで、蛍光ナノ粒子と組織切片のタンパク質との結合をさらに強固にするものと推測されるため好ましい。
蛍光ナノ粒子固定処理は、適切な濃度の固定化試薬を適切な時間、染色スライドに接触させることで行うことができる。固定処理液中の固定化試薬の濃度は適宜調節することができるが、たとえば1〜500μMが好ましい。特にPEG等のリンカーを介して両端に官能基が結合している固定化試薬を用いる場合、濃度が高すぎると架橋反応が十分に進まなくなる、つまり固定化試薬の分子一端の官能基だけが組織切片または蛍光ナノ粒子に結合し、リンカーを介した反対側のもう一方の官能基が架橋の相手と反応せず余った状態となる(その架橋の相手には別の固定化試薬の分子がすでに結合している)おそれがある。また、過剰の固定化試薬によって蛍光ナノ粒子および組織切片が覆われてしまうと、蛍光ナノ粒子から発せられる蛍光の強度が低下して識別しにくくなったり、形態観察用染色処理で使用される染色液とその対象との反応が妨げられ、それらの処理による染色が不十分となったりするおそれがある。固定化処理液と細胞との接触時間(固定化処理時間)も適宜調節することができるが、例えば、室温で、数分間〜数時間程度である。
(細胞固定処理)
本発明の第1実施形態および第2実施形態において必要に応じて行われる細胞固定処理は、それぞれの実施形態の標本前処理工程において、例えば第1実施形態では抗原賦活化処理の後に、第2実施形態では酵素(プロテアーゼ)処理の後に行われる、細胞のプレパラートからの剥離を抑制するための処理である。本発明においては、細胞固定処理は標本前処理工程において(つまり染色工程の前に)行う工程である点で、蛍光ナノ粒子固定処理とは区別される。細胞固定処理は、例えば、検体スライドをホルマリン溶液に一定時間浸漬した後、洗浄緩衝液に浸漬して洗浄し、必要に応じてこの操作を複数回繰り返してから、検体スライドを風乾等により乾燥させるようにして行えばよい。
(ブロッキング処理)
本発明において必要に応じて行われるブロッキング処理は、染色工程で行われる免疫染色処理(第1実施形態)またはFISH処理(第2実施形態)において、抗原抗体反応またはビオチン−アビジン反応の前後に行われる、抗体の非特異的吸着またはアビジンの内因性ビオチンへの吸着を抑制するための処理である。
なお、生体内に存在する内因性ビオチンは、ヒトでは肝臓、腎臓、筋肉、乳腺、消化管に多く存在しており、組織切片の凍結保存や、標本作製工程における固定処理(用いる固定化試薬の種類等の条件)によっては失活しないことがある。したがって、乳腺等、上記の組織に由来する切片を染色の対象とする場合は、ビオチン−アビジン反応用のブロッキング処理を行うことが好ましい。
例えば、第1実施形態のうち前述した2次抗体法またはアビジン−ビオチン併用2次抗体法では、目的生体物質に対して1次抗体を結合させる処理の前や、その1次抗体に対して蛍光標識またはビオチン修飾された2次抗体を結合させる処理の前に、さらに形態観察用染色処理として参照生体物質を利用する膜染色を行う場合には、参照生体物質に対して1次抗体を結合させる処理の前や、その1次抗体に対して蛍光標識またはビオチン修飾された2次抗体を結合される処理の前に、1次抗体または2次抗体が標的とする所定の抗原以外のタンパク質に非特異的に吸着することを抑制するための、抗原抗体反応用のブロッキング処理が行われる。
また、第1実施形態のうち前述したアビジン−ビオチン併用1次抗体法またはアビジン−ビオチン併用2次抗体法では、ビオチン修飾1次抗体に対してアビジン修飾蛍光ナノ粒子を結合させる処理の前や、ビオチン修飾2次抗体に対してアビジン修飾蛍光ナノ粒子を結合させる処理の前などに、アビジン修飾蛍光ナノ粒子が標的とする所定のビオチンではなく、内因性のビオチンに吸着することを抑制するための、アビジン−ビオチン反応用のブロッキング処理が行われる。
一方で、第2実施形態のうち前述した間接法でも、目的遺伝子に結合したハプテン(例えばジゴキシゲニン)修飾プローブに対して蛍光標識抗ハプテン抗体(例えば抗ジゴキシゲニン抗体)、ビオチン修飾抗ハプテン抗体または無修飾の抗ハプテン抗体(1次抗体)を結合させる処理の前、さらに蛍光標識またはビオチン修飾された抗ハプテン抗体に対する抗体(2次抗体、例えば抗マウスIgG抗体など)を前記無修飾の抗ハプテン抗体に結合させる処理の前に、抗原抗体反応用のブロッキング処理を行ってもよい。
また、第2実施形態の間接法のうち、アビジン−ビオチン反応を併用する場合も、目的遺伝子に結合したビオチン修飾プローブや、ビオチン修飾抗ハプテン(1次または2次)抗体に対して、アビジン修飾蛍光ナノ粒子を結合させる処理の前に、アビジン−ビオチン反応用のブロッキング処理を行ってもよい。
ここで、上記のような第1実施形態(2次抗体法)において参照生体物質を利用する膜染色を行う場合、目的生体物質に対する蛍光標識2次抗体を用いた処理を終えた後に、参照生体物質に対する蛍光標識2次抗体を用いた処理のためのブロッキング処理を行う(例えば蛍光標識2次抗体の溶液中にブロッキング剤を添加する)ことがあるが、本発明では、目的生体物質に対する蛍光標識2次抗体を用いた処理と、参照生体物質に対する蛍光標識2次抗体を用いた処理との間に蛍光ナノ粒子固定処理を行うことにより、さらに参照生体物質に対する蛍光標識2次抗体を用いた処理を終えた後に蛍光ナノ粒子固定処理を行うことにより、それぞれの蛍光標識2次抗体に含まれる蛍光ナノ粒子の解離を抑制することが可能となる。
同様に、複数の目的生体物質(第1実施形態では抗原、第2実施形態では遺伝子)を対象として染色処理を行う場合も、第1の目的生体物質に対する蛍光標識2次抗体やアビジン修飾蛍光ナノ粒子などを用いた蛍光標識処理と、第2の目的生体物質に対する蛍光標識処理との間に、さらに必要に応じて第2の目的生体物質に対する蛍光標識処理を終えた後に(第3の目的生体物質に対する蛍光標識処理を開始する前に)、蛍光ナノ粒子固定処理を行うことにより、抗原抗体反応用またはアビジン−ビオチン反応用のブロッキング処理による蛍光ナノ粒子の解離を抑制することが可能となる。
ブロッキング処理は、公知のブロッキング剤を用いて行えばよい。例えば、抗原抗体反応用のブロッキング処理には、BSA含有PBS緩衝液などを用いることができ、アビジン−ビオチン反応用のブロッキング処理には、アビジン溶液(内因性ビオチンに結合させてブロッキングするための処理液)およびビオチン溶液(前記アビジンが有する4箇所の反応部位のうち未反応の部位に結合させて封止し、本発明で用いるアビジンで修飾された抗体または蛍光ナノ粒子が結合しないようにするための処理液)などを含むブロッキング試薬(例えばニチレイバイオサイエンス社「内因性アビジン・ビオチンブロッキングキット」)などを用いることができる。上述したように、一枚の検体スライド(組織切片)において複数回の染色処理(抗原抗体反応またはアビジン−ビオチン反応)が実施される場合は、必要に応じて、ブロッキング処理およびそれに先立つ蛍光ナノ粒子固定処理を複数回行ってもよい。
<標本後処理工程>
本発明の第1実施形態および第2実施形態の染色工程を終えた検体スライドは、観察に適したものとなるよう、封入処理を行うことができる。必要に応じて、第1実施形態においては透徹および脱水処理を行うことが好ましく、第2実施形態においては溶媒置換および脱水処理を行うことが好ましい。これらの処理を行う上での条件、例えば検体スライドを所定の処理液に浸漬する際の温度および浸漬時間は、従来の免疫染色法に準じて、適切なシグナルが得られるよう適宜調整することができる。
[作製例1:SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子1]ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積シリカ粒子の作製(平均粒子径:160nm)
蛍光標識で用いたテキサスレッド色素分子「Sulforhodamine 101」(シグマアルドリッチ社)3.4mgと3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM903)3μLをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。
得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mLを、99%エタノール48mL、テトラエトキシシラン(TEOS)0.6mL、超純水2mL、および28質量%のアンモニア水2.0mLと5℃で3時間混合した。
上記工程で作製した混合液を10000Gで20分間遠心分離し、上澄みを除去した。この沈殿に対して、エタノールを加えて、沈殿物を分散させ、再度遠心分離をするリンスを行った。さらに同様のリンスを2回繰り返し、TexasRed色素集積シリカナノ粒子を得た。得られたナノ粒子の1000個についてSEM観察を行い、上述のように平均粒子径を測定したところ、平均粒子径160nmであった。
得られた蛍光色素集積ナノ粒子を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有してPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようにSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカンエチレングリコール]エステル)を混合し、5℃で1時間反応させた。
この混合液を、10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後に、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで末端にマレイミド基がついた蛍光色素集積シリカ粒子を得た。
蛍光色素集積シリカ粒子に結合可能なストレプトアビジンを以下のように調製した。
まず、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業社製)40μLを210μLのボレートバッファーに加えた後、64mg/mLに調整した2−イミノチオラン塩酸塩(シグマアルドリッチ社製)70μLを加え、室温で1時間反応させた。これにより、ストレプトアビジンのアミノ基に対してチオール基(−NH−C(=NH2 +Cl-)−CH2−CH2−CH2−SH)を導入した。
このストレプトアビジン溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)により脱塩し、上記シリカ粒子に結合可能なストレプトアビジンを得た。このストレプトアビジン全量(0.04mg含有)とEDTAを2mM含有したPBSを用いて上記0.67nMに調整したシリカ粒子740μLとを混合し、室温で1時間反応させた。
10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応ストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジン修飾Texas Red集積シリカナノ粒子(SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子1)を得た。
[作製例2:SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子2]ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積シリカ粒子の作製(平均粒子径:320nm)
28質量%のアンモニア水の使用量2.0mLから2.6mLに変更したこと以外は作製例1と同様にして、ストレプトアビジン修飾Texas Red色素集積シリカ粒子(SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子2)の製造を行った。
[作製例3:SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子3]ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積シリカ粒子の作製(平均粒子径:280nm)
28質量%のアンモニア水の使用量2.0mLから2.5mLに変更したこと以外は作製例1と同様にして、平均粒子径が280nmのストレプトアビジン修飾Texas Red色素集積シリカ粒子(SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子3)の製造を行った。
[作製例4:SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子4]ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積シリカ粒子の作製(平均粒子径:80nm)
28質量%のアンモニア水の使用量2.0mLから1.7mLに変更したこと以外は作製例1と同様にして、ストレプトアビジン修飾Texas Red色素集積シリカ粒子(SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子4)の製造を行った。
[作製例5:SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子5]ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積シリカ粒子の作製(平均粒子径:40nm)
28質量%のアンモニア水の使用量2.0mLから1.2mLに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ストレプトアビジン修飾Texas Red色素集積シリカ粒子(SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子5)の製造を行った。
[作製例6:SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子6]ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積メラミン樹脂粒子の作製(平均粒子径:155nm)
テキサスレッド色素分子「Sulforhodamine 101」(シグマアルドリッチ社)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持ながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業株式会社)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。撹拌後の溶液にギ酸100μLを加え、溶液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、その溶液を放置して室温まで冷却した。冷却した後の溶液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、溶液に混合物として含まれる蛍光色素集積メラミン樹脂粒子を沈殿させた。上澄みを除去し、沈殿した樹脂粒子をエタノールおよび水で洗浄した。
洗浄後の樹脂粒子0.1mgをエタノール1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシラン「LS−3150」(信越化学工業株式会社)2μLを加えて8時間、撹拌しながら室温で反応させて表面アミノ化処理を行った。表面がアミノ化された樹脂粒子の濃度を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBSを用いて3nMに調整し、この溶液にリンカー試薬「SM(PEG)12」(サーモサイエンティフィック社製、cat.No. 22112)を最終濃度10mMとなるよう添加、混合して、撹拌しながら室温で1時間反応させた。反応液を10,000Gで20分間の遠心分離にかけ、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加えて沈降物を分散させ、同一条件で再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された樹脂粒子を得た。
一方、チオール基を導入したストレプトアビジンは以下のようにして作製した。まず、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業株式会社)の水溶液40μLに、64mg/mLに調整したN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(SATA、pirce社製)の水溶液70μLを加え、室温で1時間より反応させることにより、ストレプトアビジンのアミノ基に対して保護されたチオール基(−NH−CO−CH2−S−CO−CH3)を導入した。続いて、ヒドロキシルアミン処理により、保護されたチオール基から遊離のチオール基(−SH)を生成させて、ストレプトアビジンにチオール基(−SH)を導入する処理を完了させた。この溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)に通して脱塩し、チオール基を導入したストレプトアビジンを得た。
調製した末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された蛍光色素集積メラミン樹脂粒子と、調製したチオール基を導入したストレプトアビジンとを、EDTAを2mM含有するPBS中で混合し、1時間反応させることで、樹脂粒子にPEG鎖を介してストレプトアビジンを結合させた。この反応液に10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応物を除去し、ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積メラミン樹脂粒子(SA修飾蛍光色素集積ナノ粒子6)を得た。
[作製例7]ビオチン修飾されたHER2遺伝子用BACプローブの作製
CellBiochemBiophys.2006;45(1)59の記載の方法に従って、ニックトランスレーション法により、ビオチン修飾されたBACプローブを調製した。すなわち、GSP社から購入したHER2−DNAクローン(約150kbp)1μg(5μL)に対して、ニックトランスレーション用のキット(製品名「GSP−ニックトランスレーションキット」K−015、GSP社製)をプロトコールに従って用い、当該HER2−DNAクローン(核酸分子)のdTTPをビオチン修飾dUTPで置換した。具体的な作製手順は以下の通りである。
まず、下記の試薬を遠心チューブ内で混合した。
・10×NickBuffer(Tris−HCl[pH7.2]、MgSO4、DTT)・・・2.5μL、
・BSA(Nuclease−free BSA)・・・1.5μL
・dNTP mix(dATP、dCTP、dCTP)・・・5μL
・dTTP・・・1.5μL
・Biotin−16−dUTP(製品番号1093070、Roche社製、50nmol/50μL)・・・0.2μL
・純水(Nuclease free water)・・・3μL
・上記HER2−DNAクローン約150kbp)1μgの水溶液・・・5μL
・DNA PоlymeraseI(Tris−HCl[pH7.5]、EDTA、DTT、glycerоl)・・・1μL
・DNaseI・・・5μL
次に、上記混合試薬を15℃で4時間反応させ、70℃で10分間加熱して反応を停止させた。反応後の遠心チューブに25μLの蒸留水を添加した。ビオチン標識済みのBACプローブの反応溶液を核酸精製用マイクロスピンカラム(GEヘルスケア社製「MicroSpin S−200HR Column」、製品番号「#27−5120−01」)により精製した。
この溶液に対して、3M酢酸ナトリウム溶液(pH5.2)を約5.56μL、100%エタノールを150μL添加し、−20℃で1時間以上静置した。4℃で16000rpmで10分間遠心して沈殿を形成した。さらに、70%エタノールを500μL添加して、4℃、16000rpmで1分間遠心し上澄みを除去した。沈殿物に5〜10μLの蒸留水を添加して完全に溶解させ、最終濃度1μg/250μLのビオチン修飾BACプローブの溶液を得た。
[作製例8]蛍光標識されたHER2遺伝子用プローブの作製
作製例7で作製した、ビオチン標識されたBACプローブ25μL(濃度1μg/250μL)と、作製例6で作製した、ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積メラミン樹脂粒子(SA蛍光色素集積ナノ粒子6)の溶液とを混合して、室温で30分間反応させ、それぞれが有するビオチンとストレプトアビジンを結合させることにより、HER−2検出用のDNAプローブを得た。
上述のように得られた蛍光標識DNAプローブをハイブリダイゼーション緩衝液(25%脱イオン化したホルムアミド、2×SSC、200ng/μLサケ精子DNA、5×デンハルト溶液、50mMのリン酸ナトリウム、pH7.0、1mMEDTA)に終濃度1〜5ng/μLとなるように希釈した。S300サイズのスピンカラム(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)により遊離のリガンド(遊離しているストレプトアビジン、ビオチン、およびdATPの基質)を除去した。この蛍光標識DNAプローブを使用時まで−20℃で冷凍保存した。
[作製例9]ビオチン修飾トラスツズマブの作製
トラスツズマブとして、医薬品の形態でロッシュ社が製造している粉末状のハーセプチン(登録商標)を使用し、これに対して、Biotin Labeling kit-SH(同仁化学、cord LK10)を用いてビオチン修飾を行うことにより、ビオチン修飾トラスツズマブを得た。
[作製例10]ビオチン修飾抗ki67抗体の作製
一次抗体として抗ki67抗体(クローンSP6、アブカム社 cord: ab16667)を使用し、これに対してBiotin Labeling kit-SH(同仁化学、cord LK10)を用いてビオチン修飾を行うことにより、ビオチン修飾ki67抗体を得た。
[作製例11]ビオチン修飾抗ウサギIgG抗体の作製
50mMTris溶液に、2次抗体として用いる抗ウサギIgG抗体(LO−RG1、GeneTex、cordGTX40383)50μgを溶解した。この溶液に、最終濃度3mMとなるようにDTT(ジチオトレイトール)溶液を添加、混合し、37℃で30分間反応させた。その後、反応溶液を脱塩カラム「Zeba Desalt Spin Columns」(サーモサイエンティフィック社、Cat.#89882)に通して、DTTで還元化した2次抗体を精製した。精製した抗体全量のうち200μLを50mMTris溶液に溶解して抗体溶液を調製した。その一方で、リンカー試薬「マレイミド−PEG2−ビオチン」(サーモサイエンティフィック社、製品番号21901)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように調整した。このリンカー試薬溶液8.5μLを前記抗体溶液に添加、混合し、37℃で30分間反応させることにより、抗ウサギIgG抗体にPEG鎖を介してビオチンを結合させた。この反応溶液を脱塩カラムに通して精製した。脱塩した反応溶液について、波長300nmにおける吸光度を分光高度計(日立製「F−7000」)を用いて測定することにより、反応溶液中のタンパク質(ビオチン修飾2次抗体)の濃度を算出した。50mMTris溶液を用いて、ビオチン修飾2次抗体の濃度を250μg/mLに調整した溶液を、ビオチン修飾2次抗体の溶液とした。
―I.免疫染色法に基づく実施形態(第1実施形態)―
[蛍光ナノ粒子固定処理の有無による対比]
免疫染色および形態観察用染色を同一の組織切片に施すにあたり、それらの染色処理の間(形態観察用染色がHE染色の場合)または両方の染色処理が終わった後(形態観察用染色が参照生体物質(カドヘリン)の免疫染色の場合)に行う、蛍光ナノ粒子固定処理の有無による効果を以下の方法により評価した。
[実施例1]
下記(1)〜(3)に示すような手順で、標本前処理工程(脱パラフィン処理、賦活化処理)、染色工程(1次抗体処理、2次抗体処理、蛍光標識処理、蛍光ナノ粒子固定処理および形態観察用染色処理)、標本後処理工程(洗浄処理および封入処理)を行うことにより、免疫染色法に基づく染色スライドを作製した。そして作製した染色スライドを用いて、下記(4)に示すような手順で観察および撮像を行った。
(1)標本前処理工程
(1−1)脱パラフィン処理
HER2陽性染色対照標本の検体スライドとしてあらかじめパスビジョンHER-2 DNAプローブキット(アボット)をもちいてFISHスコアを算出したコスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。以下の(i)〜(iii)の手順で脱パラフィン処理を行った。(i)キシレンを入れた容器に検体スライドを30分間、常温で浸漬する。途中3回キシレンを交換した。(ii)エタノールを入れた容器に検体スライドを常温で、30分間浸漬する。途中3回エタノールを交換した。(iii)水を入れた容器に検体スライドを30分浸漬させた。途中3回水を交換した。
(1−2)賦活化処理
検体スライドを脱パラフィン処理した後、以下の(i)〜(v)の手順で賦活化処理を行った。(i)検体スライドを水に置換する洗浄を行った。(ii)10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で検体スライドを121℃で15分、オートクレーブ処理を行った。(iii)PBSを入れた容器に、オートクレーブ処理後の検体スライドを30分浸漬し、洗浄した。(iv)1%BSA含有PBSを検体スライドに載せて、1時間、ブロッキング処理を行った。
(2)免疫染色工程
(2−1)蛍光標識処理
検体スライドの賦活化処理(1−2)を実施した後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈した作製例9で作製したビオチン修飾トラスツズマブを検体スライドと2時間反応させ、その後PBSで洗浄した。さらに、作製例1で作製したSA修飾蛍光色素集積ナノ粒子1と0.5時間反応させ、その後PBSで洗浄した。
(2−2)蛍光ナノ粒子固定処理
蛍光標識処理(2−1)を行った検体スライドを4%中性パラホルムアルデヒド水系バッファ溶液中に10分間浸漬することにより、蛍光ナノ粒子固定処理を行った。
(2−3)形態観察用染色処理
蛍光ナノ粒子固定処理(2−2)を行った検体スライドに対して、以下の(i)〜(ii)の手順で形態観察染色処理(ヘマトキシリンーエオシン染色)を行った。(i)検体スライドをマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った。その後、該スライドを45℃の流水で3分間洗浄した。(ii)次に、1%エオシン液で5分間染色してエオシン染色を行い、染色スライドを作製した。
(3)標本後処理工程
形態観察用染色処理(2−3)を実施した後、染色スライドに対して、以下の(i)〜(ii)の手順で封入処理を行った。(i)染色スライドに常温でエンテランニュー(メルク社)を滴下した後、カバーガラスを被せ、常温で10分間、風乾することで、封入処理を行った。(ii)その後、シグナルの計測まで、封入処理が行われた染色スライドを遮光して保存した。
(4)観察
封入処理を終えた染色スライドに対して所定の励起光を照射して、蛍光を発光させた。その状態の染色スライドを蛍光顕微鏡(オリンパス社製「BX−53」)、顕微鏡用デジタルカメラ(オリンパス社製「DP73」)により観察および撮像を行った。上記励起光は、光学フィルターに通すことで575〜600nmに設定した。また、観察する蛍光の波長(nm)の範囲についても、光学フィルターを通すことで612〜692nmに設定した。顕微鏡観察、画像取得時の励起波長の条件は、580nmの励起では視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像取得時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないように任意に設定(例えば4000μ秒に設定)して撮像した。HER2(3+)の組織の輝点数は、400倍で撮像した画像をもとにImageJ FindMaxims法により計測した1000細胞の平均値とした。また、撮像した画像から、1細胞当たりの蛍光ナノ粒子を算出した。撮影された蛍光画像を図3[A]に示す。
[比較例1](実施例1で蛍光ナノ粒子固定処理を行わない場合)
蛍光ナノ粒子固定処理(2−2)を行わないことを除いて実施例1と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。撮影された蛍光画像を図3[B]に示す。
[実施例2](作製例6の蛍光ナノ粒子を用いた免疫染色)
蛍光標識処理(2−1)において、蛍光ナノ粒子として作製例6で作製したSA修飾蛍光色素集積ナノ粒子6を使用したこと以外は実施例1と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
[比較例2](実施例2で蛍光ナノ粒子固定処理を行わない場合)
蛍光ナノ粒子固定処理を行わないことを除いて実施例2と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例3](ki67を目的生体物質とする免疫染色)
検体スライドをUS-BioMax社製のパラフィン包埋乳がん組織アレイ(商品番号:BR243)に変更し、蛍光標識処理(実施例1の(2−1)の記載参照)においてビオチン修飾1次抗体として作製例10で作製したビオチン修飾抗ki67抗体を使用した以外は実施例2と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。撮影された蛍光画像およびヘマトキシリン−エオジン染色画像を図4[A]および図5[A]に示す。
[比較例3](実施例3で蛍光ナノ粒子固定処理を行わない場合)
蛍光ナノ粒子固定処理を行わないことを除いて実施例3と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。撮影された蛍光画像およびヘマトキシリン−エオジン染色画像を図4[B]および図5[B]に示す。
[実施例4](参照生体物質を利用した膜染色処理を行う場合)
HE染色による形態観察用染色処理に代えて、参照生体物質(カドヘリン)を利用した膜染色処理を行うため、免疫染色工程(実施例1の(2)の記載参照)を下記のように変更したこと以外は実施例3と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
目的生体物質ki67に係るビオチン修飾抗体による免疫染色および参照生体物質カドヘリンに係る膜染色処理を、以下の手順(i)〜(vi)により一度に実施した。(i)BSAを1%含有するPBSを用いて、抗ki67抗体(クローンSP6、アブカム社、cord:ab16667)を0.05nMの濃度で含有するとともに、抗パン(Anti-pan)カドヘリン抗体[CH−19](アブカム社、cord:ab6528)を1:200に希釈した濃度で含有する1次反応処理液を調製した。(ii)この反応処理液に細胞固定処理を行った検体スライドを浸漬し、4℃で1晩反応させた。(iii)作製例11で製造したビオチン修飾抗ウサギIgG抗体の溶液を、さらにBSAを1%含有するPBSを用いて6μg/mLに希釈した目的生体物質の2次反応処理液を調製した。1次反応処理を終えた検体スライドをPBSで洗浄した後、この2次反応処理液に浸漬し、室温で30分間反応させた。(iv)作製例6で製造したSA修飾蛍光色素集積ナノ粒子6を、BSAを1%含有するPBSを用いて0.02nMに希釈した蛍光標識反応処理液を調製した。目的生体物質の2次反応処理を終えた検体スライドをこの蛍光標識処理液に浸漬し、中性のpH環境下(pH6.9〜7.4)、室温で3時間反応させた。(v)BSAを1%含有するPBSを用いてAlexa Fluor 647標識化抗マウスIgG抗体(ライフテクノロジー社、A21236)を1:200に希釈した参照生体物質の2次反応処理液を調製した。1次反応処理を終えた検体スライドをPBSで洗浄した後、この2次反応処理液に浸漬し、室温で30分間反応させた。(vi)目的生体物質および参照生体物質の蛍光標識処理を行った検体スライドを4%中性パラホルムアルデヒド水系バッファ溶液中に10分間浸漬することにより、蛍光ナノ粒子固定処理を行った。
[比較例4](実施例4で蛍光ナノ粒子固定処理を行わない場合)
蛍光ナノ粒子固定処理(vi)を行わないことを除いて実施例4と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
<結果>
実施例1〜4および比較例1〜4の結果を表1に示す。目的生体物質の1細胞あたりの輝点数は、例えば実施例3についてであれば、図4[A]の蛍光画像と図5[A]のHE染色画像を重ね合わせ、細胞膜上に位置する輝点数を計測することにより算出した(図面の掲載を省略したその他の実施例および比較例についても同様である)。対応する実施例および比較例の結果の対比から、蛍光ナノ粒子固定処理を行うことで、形態観察用染色処理(HE染色または参照生体物質による膜染色)を行っても染色スライドから蛍光ナノ粒子が解離することを抑制でき、目的生体物質を蛍光標識した際の染色性を維持することができるため、目的生体物質を従来よりも正確に定量できることがわかった。
[固定化試薬の種類および濃度の違いによる対比]
免疫染色および形態観察用染色を同一の組織切片に施すにあたり、蛍光ナノ粒子用の固定化試薬(架橋剤)の違いによる効果を以下の方法により評価した。
[実施例5](NHSエステル系架橋剤を用いた蛍光ナノ粒子固定処理)
蛍光ナノ粒子固定処理(実施例1の(2−2)の記載参照)で、4%中性パラホルムアルデヒドに代えて、NHSエステル系架橋剤「Bi−Functional PEG DE 100HS」(分子量10000、直鎖状のPEG鎖の両末端にNHS基が存在する)を濃度700μM(室温、30分)で使用した以外は実施例2と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例6]
架橋剤濃度を500μMに変更した以外は実施例5と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例7]
架橋剤濃度を50μMに変更した以外は実施例5と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例8]
架橋剤濃度を2μMに変更した以外は実施例5と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例9](NHSエステル系架橋剤を用いた免疫染色)
NHSエステル系架橋剤を「Bi−Functional PEG DE 100HS」から「4−arm−Functional PEG DE200HS」(分子量10000、分岐したPEG鎖の合計4箇所の末端にNHS基が存在する)に代えて、濃度500μMに調製して使用した以外は実施例5と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例10]
架橋剤濃度を50μMに変更した以外は実施例9と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例11](NHSエステル系架橋剤を用いた免疫染色)
NHSエステル系架橋剤を「4−arm−Functional PEG DE100HS」から「8−arm−Functional PEG HGEO 400GS」(分子量40000、分岐したPEG鎖の合計8箇所の末端にNHS基が存在する)に代えて、濃度500μMに調製して使用した以外は実施例9と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例12]
架橋剤濃度を50μMに変更した以外は実施例11と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例13](マレイミド系架橋剤を用いた免疫染色)
蛍光ナノ粒子用の固定化試薬を、NHSエステル系架橋剤「Bi−Functional PEG DE 100HS」からマレイミド系架橋剤「Bi−Functional PEG DE100MA」(分子量10000、直鎖状のPEG鎖の両末端にマレイミド基が存在する)に変更した以外は実施例7と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
<結果>
実施例5〜13の結果を表2に示す。4%中性パラホルムアルデヒドを使用した場合と同様に、NHSエステル系架橋剤またはマレイミド系架橋剤を使用して蛍光ナノ粒子固定処理を行っても、形態観察用染色処理による染色スライドからの蛍光ナノ粒子の解離を抑制でき、目的生体物質を蛍光標識した際の染色性を維持することができるため、目的生体物質(膜タンパク質)を従来よりも正確に定量できることがわかった。
蛍光ナノ粒子用の固定化試薬の濃度に関して、実施例1〜4の蛍光ナノ粒子固定処理で使用した4%中性パラホルムアルデヒドは、濃度13.3mMに相当する。一方、実施例5〜13で使用したNHSエステル系架橋剤またはマレイミド系架橋剤の最も低い濃度は2μM(0.002mM)であり、最も高い濃度でも700μM(0.7mM)であった。NHSエステル系架橋剤またはマレイミド系架橋剤を固定化試薬として用いた場合、4%中性パラホルムアルデヒドよりも濃度が低くても十分に架橋を行うことができることが分かる。特に、NHSエステル系架橋剤を使用した場合、濃度の差によって観察される輝点数にほとんど差が無く、低濃度でも十分に架橋を行うことができる(むしろ濃度は高すぎない方がよい)ことが分かる。
[平均粒子径の違いによる対比]
免疫染色および形態観察用染色を同一の組織切片に施すにあたり、蛍光ナノ粒子の平均粒子径の違いによる効果を以下の方法により評価した。
[実施例14](作製例2の粒子を用いた免疫染色)
蛍光標識処理(2−1)において、蛍光ナノ粒子として作製例2で製造したSA修飾蛍光色素集積ナノ粒子2を使用したこと以外は実施例1と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例15](作製例3の粒子を用いた免疫染色)
蛍光標識処理(2−1)において、蛍光ナノ粒子として作製例3で製造したSA修飾蛍光色素集積ナノ粒子3を使用したこと以外は実施例1と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例16](作製例4の粒子を用いた免疫染色)
蛍光標識処理(2−1)において、蛍光ナノ粒子として作製例4で製造したSA修飾蛍光色素集積ナノ粒子4を使用したこと以外は実施例1と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例17](作製例5の粒子を用いた免疫染色)
蛍光標識処理(2−1)において、蛍光ナノ粒子として作製例5で製造したSA修飾蛍光色素集積ナノ粒子5を使用したこと以外は実施例1と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
<結果>
実施例14〜17の結果を表3に示す(対比のため、表1の実施例1の結果もあわせて示す)。平均粒子径が40nm〜160nmの蛍光色素集積ナノ粒子は、平均粒子径が280nmおよび320nmの蛍光色素集積ナノ粒子に比べ、観察される1細胞あたりの輝点数が向上する結果となった。
―II.FISH法に基づく実施形態(第2実施形態)―
[蛍光ナノ粒子固定処理の有無による対比]
FISH染色および形態観察用の核染色を同一の組織切片に施すにあたり、それらの染色処理の間に行う固定処理の有無による効果を以下の方法により評価した。
[実施例18]
FISHによりHER2遺伝子のコピー数を測定した。すなわち、下記(1)〜(3)に示すような手順で、標本前処理工程(脱パラフィン処理、FISH用前処理、酵素処理)、染色工程(プローブの準備、DNA変性処理、ハイブリダイゼーション処理、ポストハイブリダイゼーション洗浄処理、蛍光ナノ粒子固定処理および形態観察用のDAPIによる核染色処理)、標本後処理工程(洗浄処理、溶媒置換処理および封入処理)を行うことにより、FISH法に基づく染色スライドを作製した。そして作製した染色スライドを用いて、下記(4)に示すような手順で観察および撮像を行った。
(1)標本前処理工程
(1−1)脱パラフィン処理
HER2陽性染色対照標本の検体スライド(Roche社 HER2 Dual ISH 3-in-1 コントロールスライド 商品コード:109530)を、以下の(i)〜(iv)の手順で脱パラフィン処理を行った。(i)脱パラフィン剤「ヘモディー(Hemo−De)」(株式会社ファルマ、主成分:d−リモネン、酸化防止剤)に常温で10分間浸漬する。(ii)検体スライドを新しい「Hemo−De」に常温10分間浸漬する。同じ操作を3回繰り返す。(iii)検体スライドを100%エタノールで、常温で5分間浸漬し、2回洗浄し、脱水処理を行う。(iv)検体スライドを風乾または45〜50℃のスライドウォーマー上で乾燥させる。
(1−2)FISH用前処理
DNAプローブの到達性を向上させるために、脱パラフィン処理(1−1)が行われた検体スライドに対し、以下の(i)〜(vi)の手順で細胞膜および核膜のタンパク質の除去処理を行った。(i)検体スライドを0.2mоl/L HClで室温、20分間処理する。(ii)検体スライドを精製水に3分間浸漬する。(iii)検体スライドを洗浄緩衝液(2xSSC:standard sailine citrate)に3分間浸漬する。(vi)検体スライドを80℃の前処理溶液(1N NaSCN)に30分間浸漬する。(v)検体スライドを精製水に1分間浸漬する。(vi)検体スライドを洗浄緩衝液(2xSSC)に5分間浸漬し、これと同じ操作を2回繰り返す。
(1−3)酵素処理
タンパク質除去処理(1−2)が行われた検体スライドに対して、以下の(i)〜(iv)の手順で酵素処理を行った。(i)前処理した検体スライドを取り出し、ペーパータオルにスライドグラスの下端をつけて余分な洗浄緩衝液を取り除く。(ii)検体スライドを37℃に加温したプロテアーゼ溶液に10〜60分間浸漬する。この浸漬処理は、細胞膜及び核膜のタンパク質、特にコラーゲンの分解をするために、25mg プロテアーゼ(2500−3000Units/mg)[ペプシン]/1M NaCl[pH2.0]50mLで37℃、60分間)で処理した。(iii)検体スライドを洗浄緩衝液に5分間浸漬する。この操作を2回繰り返す。(iv)検体スライドを風乾した。
(1−4)細胞固定処理
4%パラホルムアルデヒドを室温で10分間反応させることにより、細胞固定処理を実施し、検体スライドを洗浄緩衝液に5分間浸漬する操作を2回繰り返して洗浄した。
(2)FISH染色工程
(2−1)プローブの準備
冷凍保存しておいた蛍光標識DNAプローブ溶液を室温に戻し、正確な容量を採液可能なピペッティング操作ができる程度まで溶液の粘度を十分にさげて、ボルテックスミキサーで溶液を混和した。
(2−2)DNA変性処理
検体スライド上のDNAを変性させるために、標本前処理工程(1)を行った検体スライドに対し、以下の(i)〜(viii)の手順でDNA変性処理を行った。(i)検体スライドの作製前に水で湿らせたペーパータオルを底に敷いた湿潤箱(気密性の容器であり、その側面をペーパータオルでテーピングしたもの)を37℃インキュベータ内に載置して予備加熱する。(ii)変性溶液(70%ホルムアミド/SSC[150mM NaCl、15mMクエン酸ナトリウム])のpHが常温でpH7.0〜8.0であることを確かめる。変性溶液をコプリンジャーに入れ、変性溶液が72℃±1℃になるまで温浴槽で加温する(72±1℃の温浴槽に少なくとも30分間置く)。(iii)ハイブリダイゼーション領域がどの部分か分かるように、検体スライドの裏側に領域を囲むようにダイアモンドペン等でマークする。(iv)検体スライドを72±1℃の変性溶液の入ったコプリンジャー中に浸漬し、検体スライドのDNAを変性する。(v)ピンセットを使って、検体スライドを変性溶液から取り出し、すぐに常温の70%エタノール中に入れる。ホルムアミドを除くためにスライドを振盪する。検体スライドを1分間浸漬する。(vi)検体スライドを70%エタノールから取り出し、85%エタノール中に入れ、ホルムアミドを除くためにスライドを振盪する。検体を1分間浸漬する。100%エタノールで同じ操作を2回繰り返す。(vii)ペーパータオルに検体スライドグラスの下端をつけてエタノールを取り除き、ペーパータオルでスライドグラスの裏側を拭く。(viii)検体スライドをドライヤーで風乾した。
(2−3)蛍光標識処理(ハイブリダイゼーション処理)
変性処理(2−2)が行われた検体スライドに対し、以下の(i)〜(iii)の手順で、蛍光標識DNAプローブのハイブリダイゼーション処理を行った。(i)検体スライド上に蛍光標識DNAプローブ溶液を10μL添加し、すぐに22mm×22mmのカバーグラスをその上に被せ、気泡が入らないようにしながら、蛍光標識DNAプローブ溶液を均一に広げる。(ii)ペーパーボンドでカバーグラスをシールする。(iii)前もって加温した湿潤箱に検体スライドを入れて蓋をし、37℃のインキュベータで14〜18時間ハイブリダイゼーションを行う。
(2−4)ポストハイブリダイゼーション洗浄処理
ハイブリダイゼーション処理(2−3)が行われた検体スライドに対し、以下の(i)〜(vi)の手順でポストハイブリダイゼーション洗浄処理を行った。(i)ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液(2×SSC/0.3%NP−40)をコプリンジャーに入れる。72℃±1℃の温浴槽に少なくとも30分間置き、ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液が72℃±1℃になるまで温浴槽で予備加熱をする(72℃±1℃の温浴槽に少なくとも30分間置く)。(ii)ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液を入れたコプリンジャーをもう一つ用意し、常温に維持する。(iii)ピンセットでペーパーボンドのシールを取り除く。(iv)検体スライドをポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液の中に入れる。カバーグラスが自然に溶液中で剥がれるのを待つ。(v)溶液から検体スライドを取り出し、余分な溶液を取り去り、72±1℃に加温したポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液に2分間浸漬した。(vi)コプリンジャーから検体スライドを取り出し、遮光下で風乾する。
(2−5)蛍光ナノ粒子固定処理
ポストハイブリダイゼーション洗浄処理(2−4)が行われた検体スライドを、濃度700μMに調製したNHSエステル系架橋剤「Bi−Functional PEG DE 100HS」(分子量10000)に(室温、30分)浸漬することにより、蛍光ナノ粒子固定処理を行った。
(2−6)核染色処理
蛍光ナノ粒子固定処理(2−5)が行われた検体スライドのハイブリダイゼーション領域に、10μLのDAPI染色液(2μg/mLPBS、Molecular Probes社、D1306)を添加し、25℃で10分間保持して、核染色処理を行い染色スライドを作製した。
(3)標本後処理工程
染色スライドを以下の(i)〜(ii)の手順で、洗浄処理を行った。(i)(2)の処理が行われた染色スライドの組織上にエンテランニュー(メルク社)を滴下した。カバーガラスを被せ、常温で10分間、風乾することで、封入処理を行った。(ii)その後、シグナルの計測まで、封入処理が行われた検体スライドを遮光して保存した。
(4)蛍光画像の撮影および分析
蛍光顕微鏡Zeiss imager(Camera:MRmモノクロ・冷却機能付、対物レンズ:×100油浸)を用いて、上述したような実施例1〜3および比較例1のそれぞれで作製された染色スライドの観察および蛍光画像の撮影(1000倍)を行った。蛍光色素(スルホローダミン101)集積メラミン樹脂粒子は、適切なフィルターを用いて、励起波長を575〜600nmとする励起光を照射し、蛍光波長を610〜670nmとする蛍光を観測し、その蛍光画像を取得した。DAPIは、適切なフィルターを用いて、励起波長を340〜380nmとする励起光を照射し、蛍光波長を435〜485nmとする蛍光を観測し、その蛍光画像を取得した。
[実施例19]
架橋剤濃度を500μMに変更した以外は実施例18と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例20]
架橋剤濃度を50μMに変更した以外は実施例18と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例21]
架橋剤濃度を2μMに変更した以外は実施例18と同様にして染色スライドの作製および観察を行った。
[実施例22](マレイミド系架橋剤を用いた免疫染色)
蛍光ナノ粒子用の固定化試薬を、NHSエステル系架橋剤「Bi−Functional PEG DE 100HS」からマレイミド系架橋剤「Bi−Functional PEG DE100MA」(分子量10000、直鎖状のPEG鎖の両末端にマレイミド基が存在する)に変更し、その濃度を50μmとした以外は実施例18と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
[比較例5](蛍光ナノ粒子固定処理を行わない場合)
蛍光ナノ粒子固定処理を行わないことを除いて実施例18と同様にして、染色スライドの作製および観察を行った。
<結果>
実施例18〜22および比較例5の結果を表4に示す。免疫染色法に基づく場合と同様に、FISH法に基づいて染色スライドを作製した場合も、NHSエステル系架橋剤またはマレイミド系架橋剤を使用して蛍光ナノ粒子固定処理を行うことで、それらの架橋剤の濃度が比較的低くても、形態観察用染色処理(DAPIによる核染色処理)による染色スライドからの蛍光ナノ粒子の解離を抑制でき、目的生体物質を蛍光標識した際の染色性を維持することができるため、目的生体物質(遺伝子)を従来よりも正確に定量できることがわかった。

Claims (7)

  1. 免疫染色法またはFISH法により、検体スライド上の組織切片に含まれる目的生体物質を蛍光ナノ粒子で標識する処理(蛍光標識処理)
    および
    前記蛍光標識処理がなされた組織切片を蛍光ナノ粒子用の固定化試薬で固定する処理(蛍光ナノ粒子固定処理)を含む、組織切片から蛍光ナノ粒子の解離を防止する方法。
  2. さらに、前記蛍光ナノ粒子固定処理がなされた組織切片を、細胞形態観察用の染色液で染色する処理(染色処理)および/またはブロッキングする処理を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記固定化試薬が官能基としてNHS基(N−ヒドロキシスクシンイミド基)および/またはエポキシ基を有する化合物から選ばれる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記固定化試薬がNHS−PEG−NHS、ビオチン−PEG−NHSおよびエポキシ−PEG−エポキシから選ばれる、請求項1または2に記載の方法。
  5. 前記固定化試薬の濃度が1μM〜500μMである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記染色液がヘマトキシリン、エオジンおよびDAPIから選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記蛍光ナノ粒子が蛍光色素集積ナノ粒子または無機蛍光ナノ粒子集積体であり、その平均粒子径が40nm〜160nmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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