JPWO2015129839A1 - 粉末状大豆蛋白素材及びこれを用いた食肉加工品 - Google Patents

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Abstract

本発明は、食肉加工品の製造に使用されるピックル液に適した粉末状大豆蛋白素材を提供することを目的とする。下記A,B,C及びDの要件を満たすことを特徴とする、粉末状大豆蛋白素材。A)粉末状大豆蛋白素材の蛋白質含量が固形分中60〜85重量%、B)粉末状大豆蛋白素材の20重量%水溶液に対して1.6重量%の塩化ナトリウムを添加し、調製したペーストをケーシングチューブに密封後、80℃で30分間湯浴中において加熱し、一晩冷蔵静置して得られるゲルのゼリー強度が50gf・cm以上、C)粉末状大豆蛋白素材の9重量%水溶液に対して塩化ナトリウムが5重量%添加された水溶液を、5℃で5時間冷蔵静置した後の10℃における粘度が300mPa・s以下、D)粉末状大豆蛋白素材の5重量%水溶液を30,000×gで1時間遠心分離したときの蛋白質の沈殿率が、遠心分離前の蛋白質濃度に対して12重量%以下。

Description

本発明は、粉末状大豆蛋白素材及びこれを用いた食肉加工品に関する。
大豆蛋白素材は、その加熱ゲル化性や栄養機能が注目され、各種の食品に利用されている。例えば食肉加工品の場合、一般にハムなどの製造工程においては、原料肉にピックル液を混合または注入することにより、食肉加工品の保水性,抱脂性,結着性などの物性の改良や、あるいは硬さや弾力性などの食感の改良が、行われている。
このピックル液に大豆蛋白素材を使用すると、大豆蛋白質のゲル化力により肉の硬さや弾力性などの食感改良効果が得られることが、知られている。
一方、食肉加工品の製造時に使用されるピックル液は、インジェクターを用いて肉へ注入される。そのため、作業時のハンドリング性を高める点から、なるべくピックル液の粘度は低い方が好まれている。
しかし、大豆蛋白質のゲル化力を発揮させるためにその配合量を増やせば、ピックル液の粘度が上昇し、効率的なインジェクションが困難となってしまう。一方、ピックル液の粘度を低下させるために大豆蛋白素材の配合量を減らせば、大豆蛋白質によるゲル化力が十分に発揮されず、肉の硬さや弾力性などの食感改良効果が低減してしまう。このように、従来の大豆蛋白素材をピックル液に配合する場合、大豆蛋白素材自体の粘度が高いため、その配合量の増量が困難である。
従来の技術においては、大豆蛋白素材を配合したピックル液の粘度上昇を抑制するために、プロテアーゼにより大豆蛋白質を酵素分解処理する方法が、用いられている(特許文献1,2など)。
また、食肉加工品の食感及び製造時の作業性の向上を目的として、例えば特許文献3においては、グリシニンとβ−コングリシニンの比率を1.5以上の特定の範囲に設定した大豆蛋白質を、原料肉に混合または注入する食肉加工品の製造方法が、提案されている。
また、特許文献4においては、脱脂大豆より抽出した中和蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態において加熱して、得られた被加熱蛋白溶液を噴霧乾燥する製造方法が、提案されている。この方法によれば、低い粘度を有する大豆蛋白水溶液を調製できるとともに、ゼリー強度を高めた蛋白ゲルを調製できることが、記載されている。
特開平5−328939号公報 特開平6−46799号公報 特開平10−155455号公報 WO2010/67533号公報 特開平9−275911号公報 特開2001−346522号公報
特許文献1〜3のようにプロテアーゼにより酵素分解処理した大豆蛋白素材においては、ピックル液の粘度を低下させることができ、肉へ注入する際の作業性は向上する。しかしハムの硬さが著しく低下する問題がある。また酵素分解度を極端に上げた場合には、白濁した見た目の悪いハムになるといった問題がある。食肉加工品の消費者の購買意欲および食欲を向上させるためには、該製品の色調は赤く鮮やかに発色していることが、所望されている。しかし、ピックル液に配合される大豆蛋白素材の水溶液は一般に透明性が低く濁ったものであるため、肉および発色剤由来の鮮やかな赤い色調が低下し、彩度が低く、くすんだ見た目の悪いハムとなってしまう。このため、配合される粉末状大豆蛋白素材は、その水溶液の透明性がより高いものが望まれている。
また、特許文献4のような方法においては、大豆蛋白質の溶液濃度を極端に薄くして加熱処理と乾燥処理が行われる。そのため必要な量の粉末状大豆蛋白素材を得るためにより長い時間が必要である。現実的な工業レベルの製造を考えた場合に、このことは製造効率の低下による大豆蛋白素材のコストアップに繋がる。そしてかかる大豆蛋白素材を使用したピックル液は、粘度が低いが、さらに十分な硬さがあり、さらに好ましい弾力感を有するハムの食感が切望されている。
以上の実情に鑑み、本発明は、食肉加工品の製造に使用されるピックル液に適した粉末状大豆蛋白素材を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、ピックル液に使用した際に、低粘度で食肉への注入作業を容易に行うことができること、該ピックル液を食肉加工品に注入すると赤く鮮やかに発色した外観を維持できること、さらに蛋白質含量が比較的低い領域であっても硬さと弾力性に富んだ食感に改良できること、などを達成できる粉末状大豆蛋白素材を提供することを目的とする。そして該大豆蛋白素材を使用したピックル液並びに該ピックル液を使用した品質に優れた食肉加工品を提供することも目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究する中、通常の分離大豆蛋白の蛋白質含量が固形分中90重量%以上であるのに対し、それよりも低い蛋白質含量を有し、かつ水溶液にしたときの遠心分離後の上清蛋白質濃度が非常に高い大豆蛋白素材を見出した。かかる大豆蛋白素材は、水溶液にしたときには低粘度であり蛋白質含量が比較的低い領域でありながらも、加熱ゲルのゼリー強度も高い性質を有するものであった。
そこで、当該大豆蛋白素材を含有するピックル液を原料肉に混合または注入したところ、前記課題を何れも解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、下記の発明の概念を包含するものである。
(1)下記A,B,C及びDの要件を満たすことを特徴とする、粉末状大豆蛋白素材、
A)粉末状大豆蛋白素材の蛋白質含量が固形分中60〜85重量%、
B)粉末状大豆蛋白素材の20重量%水溶液に対して1.6重量%の塩化ナトリウムを添加し、調製したペーストをケーシングチューブに密封後、80℃で30分間湯浴中において加熱し、一晩冷蔵静置して得られるゲルのゼリー強度が50gf・cm以上、
C)粉末状大豆蛋白素材の9重量%水溶液に対して塩化ナトリウムが5重量%添加された水溶液を、5℃で5時間冷蔵静置した後の10℃における粘度が300mPa・s以下、
D)粉末状大豆蛋白素材の5重量%水溶液を30,000×gで1時間遠心分離したときの蛋白質の沈殿率が、遠心分離前の蛋白質濃度に対して12重量%以下、
(2)要件A)の該蛋白質含量が、固形分中60重量%以上70重量%未満である、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(3)要件A)の該蛋白質含量が、固形分中70重量%以上80重量%未満である、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(4)要件A)の該蛋白質含量が、固形分中80重量%以上85重量%未満である、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(5)要件A)の該蛋白質含量が、固形分中62重量%以上83重量%以下である、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(6)要件A)の該蛋白質含量が、固形分中64重量%以上80重量%以下である、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(7)粉末状大豆蛋白素材の炭水化物含量が、固形分中1〜40重量%である、前記(1)〜(6)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材、
(8)粉末状大豆蛋白素材の炭水化物含量が、固形分中5〜30重量%である、前記(1)〜(6)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材、
(9)粉末状大豆蛋白素材中の炭水化物は、副原料として加えられた糖質又は食物繊維を含む、前記(7)又は(8)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(10)粉末状大豆蛋白素材の不溶性食物繊維含量が、固形分中1重量%以下である、前記(1)〜(9)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材、
(11)粉末状大豆蛋白素材の不溶性食物繊維含量が、固形分中0.2重量%以下である、前記(1)〜(9)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材、
(12)要件B)の該ゼリー強度が、150gf・cm以上である、前記(1)〜(11)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材、
(13)要件C)の該粘度が、100mPa・s以下である、前記(1)〜(12)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材、
(14)粉末状大豆蛋白素材の0.22M TCA可溶率が、2〜20%である、前記(1)〜(13)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材、
(15)要件A)の該蛋白質含量が、固形分中64重量%以上80重量%以下であり、
粉末状大豆蛋白素材中の炭水化物は、副原料として加えられた糖質又は食物繊維を含み、
該粉末状大豆蛋白素材の炭水化物含量が、固形分中5〜30重量%であり、
該粉末状大豆蛋白素材の不溶性食物繊維含量が、固形分中0.2重量%以下であり、
要件B)の該ゼリー強度が、150gf・cm以上であり、
要件C)の該粘度が、100mPa・s以下である、
前記(1)又は(14)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(16)前記(1)〜(15)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されていることを特徴とする、ピックル液、
(17)前記(16)記載のピックル液が添加されたことを特徴とする、食肉加工品、
(18)前記(1)〜(14)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されたピックル液を、原料肉に添加することを特徴とする、食肉加工品の製造法、
(19)前記(15)記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されたピックル液を、原料肉に添加することを特徴とする、食肉加工品の製造法、
(20)前記(1)〜(14)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されたピックル液を、インジェクターを用いて原料肉に注入することを特徴とする、ハムの製造法、
(21)前記(15)記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されたピックル液を、インジェクターを用いて原料肉に注入することを特徴とする、ハムの製造法、
(22)前記(1)〜(14)の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材の、ピックル液への使用、
(23)前記(15)記載の粉末状大豆蛋白素材の、ピックル液への使用、
(24)下記工程を備えることを特徴とする、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材の製造法、
不溶性食物繊維が、最終製品の粉末状大豆蛋白素材中1重量%以下となるように除去され、大豆蛋白質が固形分中90重量%以上に濃縮された液を得る工程、
該大豆蛋白質濃縮液に炭水化物を混合し、蛋白質含量が固形分中60〜85重量%の混合液を得る工程、
該大豆蛋白質濃縮液又は該混合液に、直接蒸気吹き込み式高温瞬間加熱処理を2回以上の行う工程であって、該混合液に該加熱処理を少なくとも1回行う工程。
ところで、デキストリンを粉末状大豆蛋白に応用した例が幾つか知られている。特許文献5には、大豆蛋白成分を含有する水溶液を乾燥して、粉末状大豆蛋白を製造するに際し、DE値が5〜30である澱粉の部分加水分解物を乾燥前の当該水溶液の固形分100重量部に対し、2〜40重量部添加することを特徴とする粉末状大豆蛋白の製造法が示されている。
また、特許文献6においては分離大豆蛋白粉末に対し、難消化性デキストリンを、また特許文献7においては、分離大豆蛋白粉末に対してDE値が10〜25のデキストリンを噴霧することを特徴とする粉末状分離粉末状大豆蛋白素材の製造法が提案されている。これらは、粉末状大豆蛋白と炭水化物を組み合わせることにより、水への分散性の改良、つまり溶解時のママコの改善を図ったものであり、製品の外観,食感及び製造時の作業面において満足いくものではない。
ハム等の食肉加工品の製造の際、広く採用されているピックル液を原料肉に注入する方法に於いて、本発明の特定の組成及び物性を有する粉末状大豆蛋白をピックル液に利用することにより、低粘度で肉への注入作業を容易に行うことができ、優れた作業性の向上効果を得ることができる。しかも、該ピックル液は透明性に優れているため、食肉加工品に注入することにより、赤く鮮やかに発色した外観を維持できる。さらに該食肉加工品は硬さと均質感にも優れた食感に改良できる。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
(粉末状大豆蛋白素材)
一般に「粉末状大豆蛋白素材」の用語は、粉末状の製品形態を有する、大豆を原料とした蛋白質を主体とする食品素材をいう。
例えば典型的には大豆原料として脱脂大豆フレークを用い、これを適量の水中に分散させて水抽出を行い、繊維質を主体とする不溶性画分を除去して得られる抽出大豆蛋白(脱脂豆乳)が、粉末状大豆蛋白素材に包含される。また、該抽出大豆蛋白を塩酸等の酸によりpH4.5前後に調整し、蛋白質を等電点沈澱させて酸可溶性画分(ホエー)を除去し、酸不溶性画分(カード)を再度適量の水に分散させてカードスラリーを得、水酸化ナトリウム等のアルカリにより中和して中和スラリーを得、該中和スラリーから得られる分離大豆蛋白も、粉末状大豆蛋白素材に包含される。
これらの抽出大豆蛋白や分離大豆蛋白は、溶液の状態において高温加熱処理装置によって加熱殺菌を行い、スプレードライヤー等により噴霧乾燥され、粉末状大豆蛋白素材として最終的に製品化される。
ただし、上記の製造法に限定されるものではなく、大豆蛋白質の純度が大豆原料から高められる方法であればよい。また脱脂大豆からエタノールや酸によりホエーを除去して得られる濃縮大豆蛋白もこれに含まれる。これらのうち、分離大豆蛋白は、蛋白質含量が通常固形分中90重量%程度と高く、ゲル化力が強い点において、抽出大豆蛋白よりもよく利用されている。
(本発明の粉末状大豆蛋白素材)
本発明の粉末状大豆蛋白素材は、上記粉末状大豆蛋白素材のうち、特に下記A,B,C及びDの要件を満たすことが特徴である。以下、要件A〜Dについて具体的に説明する。
<A>蛋白質含量
本発明の粉末状大豆蛋白素材の蛋白質含量は、固形分中60〜85重量%である。すなわち、蛋白質含量が固形分中90重量%以上の通常市販されている一般的な分離大豆蛋白よりも蛋白質含量が低い領域のものであり、蛋白質含量が固形分中50〜60重量%程度の脱脂豆乳粉末よりも蛋白質含量が高い領域のものである。なお、本発明における蛋白質含量はケルダール法により総窒素量を測定し、これに窒素換算係数(6.25)を乗じて算出するものとする。
蛋白質含量は固形分中60〜85重量%の範囲のうち、上限を固形分中83重量%以下とすることができ、さらに固形分中80重量%以下とすることもできる。一方、下限は固形分中62重量%以上とすることができ、さらに固形分中64重量%以上とすることもできる。また別の選択範囲として、低蛋白質含量域(固形分中60重量%以上70重量%未満)、中蛋白質含量域(固形分中70重量%以上80重量%未満)又は高蛋白質含量域(固形分中80重量%以上85重量%未満)の範囲を適宜選択できる。
いずれの蛋白質含量とすることは当業者が該粉末状大豆蛋白素材のゲル化力、粘度、色調や製造コストのバランスを考慮して適宜決定できる。
蛋白質含量を上記範囲に調整するには、粉末状大豆蛋白素材の製品と副原料を水系下において混合するか、粉末状大豆蛋白素材の製造工程中に副原料を加えることが好ましい。副原料の混合時期は特に限定されず、副原料が混合された後に少なくとも1回の加熱処理工程があればよい。例えば大豆原料の抽出時、抽出後の脱脂豆乳の段階、酸沈殿後のカードスラリーの段階、アルカリによりpH調整後の中和スラリーの段階など、少なくとも1回の加熱処理工程の前であればいずれの製造工程中であってもよい。
副原料としては、炭水化物がより好ましく、例えばグルコース等の単糖類,マルトースやシュクロースやトレハロースやラフィノース等の少糖類,デキストリン,デンプン等の多糖類などの糖質、ポリデキストロース,難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維が好ましい。炭水化物は粉末状大豆蛋白素材中の蛋白質含量を下げるために多量に用いることができ、加熱処理工程と相俟ってピックル液に調製したときの透明性を高め、さらに食肉加工品の肉中への蛋白分散性を向上できる。またその他の副原料として、パーム油,大豆油,菜種油等の油脂、レシチン,シュガーエステル等の乳化剤などを適宜添加することもできる。
<B>加熱ゲルのゼリー強度特性
本発明の粉末状大豆蛋白素材は、20重量%水溶液を加熱して得られるゲルのゼリー強度が50gf・cm以上、好ましくは100gf・cm以上、より好ましくは150gf・cm以上という高ゼリー強度であることが特徴であり、特に食肉加工品に使用することにより硬さや弾力を付与できる。従来の分離大豆蛋白の中にも、食肉加工品の用途において高ゼリー強度のものは存在していたが、蛋白質含量が固形分中60〜85重量%という比較的低い蛋白質含量の領域において、これ程高いゼリー強度を発揮する大豆蛋白素材はほとんど存在しない。
なお、ゼリー強度の測定における加熱ゲルは、粉末状大豆蛋白素材の20重量%水溶液をロボクープにより3分間撹拌する。さらに全重量に対して1.6重量%の塩化ナトリウムを添加して2分間撹拌してペーストを調製し、折り幅35mmのケーシングチューブに充填して密閉し、80℃で30分間湯浴中において加熱して得られるゲルを用いるものとする。また、得られた加熱ゲルは該チューブから出して23mmにカットし、これをサンプルとしてゼリー強度を測定する。ゼリー強度の測定は、粘弾性測定装置「レオナ―」((株)山電製)により行い、破断強度(gf)と歪(cm)の積をゼリー強度とする。下記の測定条件により行うものとする。なお、上記装置が入手できない場合は、同等の測定ができる装置により代替してもよい。
○ゼリー強度の測定条件
・プランジャー:球形プランジャー(直径5mm)
・進入速度 :1mm/秒
<C>水溶液の粘度特性
本発明の粉末状大豆蛋白素材は、5℃における水溶液の粘度が300mPa・s以下、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下という低粘度であることが特徴であり、特に食肉加工品を製造する際に注入するピックル液を調製した際に冷蔵温度で注入する際にも粘度が上昇しないため、インジェクターによりピックル液を肉に注入する際の作業性に優れている。従来の分離大豆蛋白の中にも、食肉加工品の用途において、低粘度のピックル液に調製できるものは存在しているものの、上記要件Bのような高ゼリー強度の加熱ゲル化性を有しつつ、さらに本要件のような低温水溶液の低粘性も併せ持つ大豆蛋白素材はほとんど存在しない。
なお、粘度の測定における水溶液は、粉末状大豆蛋白素材の9重量%水溶液に対して5重量%の塩化ナトリウムが添加された水溶液を5℃で5時間冷蔵静置したものを10℃に戻して用いるものとする。水溶液に塩が含まれることにより、塩化ナトリウムを含むピックル液と同様の条件となる。そのため本条件によれば、粉末状大豆蛋白素材の品質評価としては食塩による耐性も評価でき、より厳格に評価できる。粘度の測定は、B型粘度計(東京計器(株)製)により行うものとする。なお、上記装置が入手できない場合においては同等のB型粘度計により代替してもよい。
<D>水溶液を遠心分離したときの上清の蛋白質濃度
本発明の粉末状大豆蛋白素材は、30,000×gという極めて高い遠心力で1時間という長時間の遠心分離を行ったときに、蛋白質が沈殿せず上清の蛋白質濃度が高く維持されており、蛋白質の沈殿率が非常に低いことが特徴である。
ここで、蛋白質の沈殿率は以下に示す方法により算出する。ホモゲナイザー「EXCEL-AUTO HOMOGENIZER ED-7」((株)日本精機製作所製)を用いて、蒸留水190gに粉末状大豆蛋白10gを10分間撹拌し、5重量%水溶液を得る。次に30,000rpmで1時間遠心分離する。母液と遠心分離後の上清の波長540nmにおける吸光度をビウレット反応後に測定し、以下の式に従って算出する。
式1) 沈殿率(%)={1−(上清吸光度/母液吸光度)}×100
本発明の粉末状大豆蛋白素材は、上記式1)の方法により算出した沈殿率が遠心分離前の蛋白質濃度に対して12重量%以下となり、蛋白質の溶解性が極めて高いことが特徴である。かかる特性を有することにより、蛋白質含量が低くても、要件Bの通り加熱して得られるゲルは高いゼリー強度を有するという、食肉加工品の製造に非常に好適な粉末状大豆蛋白素材となる。
<E>炭水化物含量
本発明の粉末状大豆蛋白素材において、要件Aの蛋白質含量を満たすために上述した糖質や食物繊維等を増量する場合には、炭水化物含量としては粉末状大豆蛋白素材の固形分中1〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。本発明の粉末状大豆蛋白素材中に炭水化物が上記の適量の範囲に含まれることにより、製造工程中の加熱処理工程とも相俟って、粉末状大豆蛋白素材の溶解性を高めることができ、この効果は例えば食肉加工品において肉中に大豆蛋白溶解液が分散しやすくなる点において有利である。また、ピックル液の透明性を高めることができ、この効果はハムの外観が赤く鮮やかに発色する点において有利である。
なお、炭水化物の含量は差し引き法により求めるものとし、<A>の蛋白質含量と、水分、脂質及び灰分の合計を100gから差し引いた値とする。水分、脂質、灰分は「五訂日本食品標準成分表分析マニュアル」(科学技術庁資源調査会食品成分部会資料(平成9年))に従い測定するものとする。
<F>不溶性食物繊維含量
本発明の粉末状大豆蛋白素材においては、不溶性食物繊維は大豆蛋白質のゲル形成性を阻害したり、ハムなどの食肉加工品に使用した場合に十分な硬さが得られなかったり、食感が悪くなる傾向にあるため、なるべくその含量は低い方が好ましく、1重量%以下であるのがより好ましい。すなわち、オカラを除去した抽出大豆蛋白から製造されることが好ましい。
なお、不溶性食物繊維の含量は、「五訂日本食品標準成分表分析マニュアル」(科学技術庁資源調査会食品成分部会資料(平成9年))に従い、プロスキー変法により測定するものとする。
<G>酵素分解
本発明においては、噴霧乾燥前の何れかの工程において、大豆蛋白質を蛋白質加水分解酵素により適宜酵素分解しておくことができる。これにより、本発明の粉末状大豆蛋白素材をピックル液に用いる際に、粘度を下げる効果がある。該粉末状大豆蛋白素材の蛋白加水分解の程度は0.22Mトリクロロ酢酸(TCA)可溶率として、2〜20%、好ましくは3〜10%とすることができる。TCA可溶化率は、大豆蛋白素材の2 重量%水溶液に0.44M TCA水溶液を等量加えて十分撹拌し、得られた該0.22M TCA水溶液における全蛋白質量に対する可溶性蛋白質の割合をケルダール法により測定して求めることができる。
(粉末状大豆蛋白素材の製造)
本発明の要件A〜Dをすべて満たす粉末状大豆蛋白素材の製造態様を以下に示す。ただし、本発明の技術的思想はA〜Dの要件を本質とするものであり、一製造態様に拘束されるものではない。
本発明の粉末状大豆蛋白素材を製造するには、下記のように従来の分離大豆蛋白を製造する工程をベースとすればよい。ただし、蛋白質を濃縮する方法としては、一般的な酸沈殿による方法のみ寄らず、膜ろ過による濃縮法や濃縮大豆蛋白から水抽出する方法なども用いることができる。
蛋白質を抽出するための大豆原料としては、脱脂大豆を使用するのが一般的だが、全脂大豆や部分脱脂大豆も使用できる。全脂大豆や部分脱脂大豆を使用した場合には、抽出工程後に高速遠心分離を行って上層に分離した油分を除去し、低油分化できる。
次に大豆原料と水とを混合し、スラリー状態に分散させ、必要により撹拌しつつ蛋白質を抽出する。
次に、該スラリーから不溶性食物繊維(オカラ)を遠心分離機やろ過等の分離手段により除去し、抽出大豆蛋白溶液(豆乳)を得る。
次に、該抽出大豆蛋白溶液からオリゴ糖や酸可溶性蛋白質などの酸可溶性画分(ホエー)を除去し、大豆蛋白質の濃縮液を得る。典型的な手段としては酸沈殿法を用いることができ、該抽出大豆蛋白溶液のpHを塩酸やクエン酸等の酸により4〜5の等電点付近に調整し、蛋白質を不溶化させ、沈殿させる。次に遠心分離やろ過等の分離手段により酸可溶性画分である「ホエー」を除去し、酸不溶性画分である「カード」を回収して再度適量の水に分散させてカードスラリーを得る。なお、酸沈殿法以外の大豆蛋白質の濃縮手段としては、限外濾過等が挙げられる。
そして、得られたカードスラリーを最終的にpH7付近に調整した中和スラリーを得、高温加熱処理によって加熱殺菌を行った後、スプレードライヤー等で乾燥し、粉末状大豆蛋白素材を得る。スプレードライヤーによる乾燥の方法としては、ディスク型のアトマイザー方式や1流体、2流体ノズルによるスプレー乾燥のいずれも利用できる。
ここで、本発明のA〜Dの要件を全て満たす粉末状大豆蛋白素材を得るには、下記の付加工程が必要である。すなわち第一に、粉末状大豆蛋白素材の蛋白質含量を固形分中60〜85重量%に調整する。そのためには、粉末状大豆蛋白素材の製造工程中の、カードスラリー等の蛋白質濃縮液を得た以降の工程において、該濃縮液に上述の副原料を加えることが好ましく、あるいは粉末状大豆蛋白素材の製品を再度水に分散させた蛋白質濃縮液に加えてもよい。これらの蛋白質濃縮液の蛋白質含量は固形分中90重量%以上であることが好ましい。第二に、副原料が加えられ60〜85重量%の蛋白質含量に調整された混合液の状態において、少なくとも1回の加熱処理(複合加熱処理)を行い、最終的に2回以上の加熱処理を行って製品化される。他の1回以上の加熱処理は副原料が加えられる前の段階で行われて良く、また2回目以降の複合加熱処理でもよい。この2回以上の加熱処理は、何れも直接蒸気吹込み式高温瞬間加熱処理が好ましい。該加熱処理は、高温高圧の水蒸気を直接大豆蛋白溶液に吹き込み、加熱保持した後、真空フラッシュパン内において急激に圧力開放させるUHT殺菌の方式である。この加熱処理条件は、100〜170℃、好ましくは110〜165℃の範囲で、加熱時間は0.5秒〜5分間、好ましくは1秒〜60秒間が適当である。この際、加熱処理の対象となる大豆蛋白質を含む溶液又はスラリーは製造工程の各段階で調整されるpHに応じて3〜12の範囲において加熱処理される。該方式が採用される市販の加熱殺菌装置を用いることができ、VTIS殺菌装置(アルファラバル社製)やジェットクッカー装置等を用いることができる。2回以上の該加熱処理を行わない場合や、大豆蛋白溶液の蛋白質含量が60〜85重量%に調整された状態で1回も加熱処理を行わない場合、A〜Dの要件を全て満たす粉末状大豆蛋白素材を得難くなる。
上記の付加工程に加えてさらに一つの好ましい態様としては、抽出工程後のスラリーから不溶性食物繊維除去して抽出大豆蛋白溶液を得る工程において、不溶性食物繊維の混入がなるべく少なくなるように、長時間の遠心分離を行ったり、複数回の遠心分離を行ったりして不溶性食物繊維の含量が最終製品の粉末状大豆蛋白素材中に1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下となるように除去するのが好ましい。
(ピックル液)
本発明により得られる粉末状大豆蛋白素材は、水に溶解して食肉加工品の製造に使用するピックル液に調製できる。ピックル液中には該粉末状大豆蛋白素材を1〜15重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは4〜10重量%含有させることができ、必要に応じて他の卵白や乳蛋白等の蛋白素材を併用でき、また本発明の粉末状大豆蛋白素材以外の粉末状大豆蛋白素材を併用することもできる。この場合、全蛋白素材中における本発明の粉末状大豆蛋白素材の配合割合は、20〜100重量%とすることができ、30〜90重量%がより好ましい。本発明の粉末状大豆蛋白素材においては、その優れた物性によって、従来のピックル液において必須の蛋白素材として配合されていた、卵白や乳蛋白の一部又は全部を置換できる。また必要に応じて、通常のピックル液に含まれる食塩、糖類、重合リン酸塩、亜硝酸塩、調味料等を含むことができる。
(食肉加工品)
本発明によれば、上記のピックル液を添加して各種食肉加工品を製造できる。食肉加工品としては、ハム、ベーコン、トンカツ、焼豚などが挙げられる。その製法は特に限定されず、公知の製法に従えばよい。食肉加工品に添加する原料としては、粉末状大豆蛋白素材の他に、異種の蛋白素材、増粘多糖類、リン酸塩、食塩、糖類、発色剤、調味料、油脂、保存料、酸化防止剤、香辛料等に水を加えピックル液を調製し、このピックル液を豚肉、牛肉、鶏肉等の原料肉にインジェクターによりインジェクション、もしくは混練混合、その後必要に応じて、タンブリングや静置、ファイブラスや不織布等のケーシング、ミートネット、糸巻等の充填や、加熱設備(スモークハウス、ボイル、スチーマー、オーブン等)による加熱や、乾燥、冷却、凍結する。
以下、実施例により本発明の実施様態を具体的に説明する。
(製造例1)
低変性脱脂大豆10kgに10倍量の水を加え、水酸化ナトリウムによりpH7.0に調整し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)により撹拌しながら50℃,30分間抽出を行い、3,000×gで遠心分離してオカラを除き、脱脂豆乳を得た。
得られた脱脂豆乳をさらに5,000×gで遠心分離して、脱脂豆乳中に残存し浮遊している不溶性の蛋白質や食物繊維などの成分を除去した脱脂豆乳を得た。
次に、これに塩酸を加え、pHを4.5に調整し、蛋白質成分を等電点沈澱させ、遠心分離して酸可溶性成分である「ホエー」を除去し、酸不溶性画分である「カード」を得た。該カードに固形分が10%となるように加水し、水酸化ナトリウムを用いて中和することにより、中和スラリーを得た。
次に、該中和スラリーに対して、該スラリーの固形分中の蛋白質含量が表1に示す割合となるようにデキストリン「パインデックス#3」(DE=25:松谷化学工業(株)製)を添加し、混合後、次に、直接蒸気吹込み式の高温瞬間加熱処理装置であるVTIS殺菌機(アルファラバル社製)を用いて第一次加熱処理(140℃,15秒間)を行った。
一次殺菌処理を行った大豆蛋白水溶液に対して、対乾物量あたり0.005重量%の蛋白質加水分解酵素「アルカラーゼ」(Novozymes社製)を添加し、攪拌しながら50℃で10分間反応させた。この溶液を、VTIS殺菌機を用いて第二次加熱処理(140℃,15秒間)を行い、酵素を失活させた後、噴霧乾燥し、粉末状大豆蛋白素材サンプルAを得た。このときのサンプルAの酵素分解度は、0.22M TCA可溶率として4%であった。
(製造例2)
製造例1において、脱脂豆乳からさらに遠心分離して不溶性成分を除去する工程を行うことなく、同様の工程により調製した粉末状大豆蛋白素材サンプルBを得た。
(製造例3)
製造例1と同様にして、酸不溶性画分である「カード」を調製した。
次に、該カードに固形分が5%となるように加水し、水酸化ナトリウムを用いて中和することにより、中和スラリーを得た。
次に、該中和スラリーをVTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)を1回のみ行い、噴霧乾燥し、粉末状大豆蛋白素材サンプルCを得た。
(試験例)
製造例1〜3において得られたサンプルA〜Cについて、(1)固形分中の蛋白質含量(%)、(2)20%水溶液を80℃で30分間湯浴中において加熱して得られるゲルのゼリー強度(gf・cm)、(3)9%水溶液に対して塩化ナトリウムを5%添加した水溶液の10℃における粘度(mPa・s)、(4)5%水溶液を30,000×gで1時間遠心分離したときの、遠心分離前の蛋白質濃度に対する蛋白質の沈殿率(%)を上述した測定方法により測定し、表1に(1)〜(4)の測定結果をまとめた。
また、コントロールとして市販の各種粉末状大豆蛋白素材である不二製油(株)製の「ニューフジプロHP」、「ニューフジプロ1900」及び「ニューフジプロ3500」、並びに、他社製品の「B200」についても上記5つの測定項目を測定し、表1に記載した。
(表1)
Figure 2015129839
表1より、サンプルAは蛋白質含量がサンプルCや一部の市販品よりも低いにもかかわらず、ゼリー強度が50 gf・cm以上のゼリー強度を有しており、かつ粘度は300mPa・s以下と十分に低粘度であった。そしてサンプルAの蛋白質沈殿率はサンプル中最も低い値であった。
これに対してサンプルBは粘度が低かったものの、ゼリー強度が弱い物性であり、蛋白質沈殿率はサンプルAよりもかなり高い値であった。
またサンプルCは粘度とゼリー強度は良好であったが、この物性は蛋白質含量が90%以上の高い蛋白質濃度においてのみ両立できるものであり、蛋白質含量をサンプルA並みにすると、「ニューフジプロHP」のようにゼリー強度は大幅に低下すると考えられる。サンプルCの蛋白質沈殿率はサンプルBよりも低い数値であったがサンプルAと比べると高い値であり、単に蛋白質濃度を薄くして加熱処理するだけではサンプルAほどの数値は得られなかった。
他の市販品においても、低い蛋白質含量を持ちながら、高ゼリー強度かつ低粘度の物性を両立できるものは見当たらなかった。
以上の結果より、蛋白質含量が90%よりも低い蛋白質含量の粉末状大豆蛋白素材においてかかる物性を両立するためには、サンプルAのように、蛋白質の沈殿率が遠心分離前の蛋白質濃度に対して12%以下の非常に低い沈殿率であることが関係していると考えられた。
(応用例1)
製造例1〜3において得られたサンプルA〜Cの粉末状大豆蛋白素材および、市販の「ニューフジプロHP」、「ニューフジプロ1900」及び「B200」の6サンプルを選択し、表2の配合に従い、常法により、撹拌混合してピックル液50kgを調製した。
インジェクターを用いて、豚ロース肉4000gに対して4000gのピックル液を注入し、全量を8000gとした。インジェクション済みの肉を5℃の冷蔵庫内において12時間タンブリングした後、折り径13.5cmのファイズラスケーシングに充填した。スモークハウス(ATMOS社製HRL1081EL)を用いて、78℃の設定にて中心温度が72℃になるまで加熱を行った。加熱終了後、冷蔵庫5℃で一晩保存し、得られたロースハムについて下記の通り評価を行った。
各ピックル液を用いて製造したロースハムに対し、6名のパネラーを用い、下記の評価基準を用いた10点満点の評点法により、ハム断面色の色調および食感に関してそれぞれ品質評価を行った。
6名の評点の平均を取り、4点未満を「×」、4点以上6点未満を「△」、6点以上8点未満を「○」、8点以上10点以下を「◎」の評価とした。結果を表3に示した。
(評価基準)
○色調
10点:最も透明感を有し鮮やかな赤色に発色するもの
1点:最も透明感が低く黄濁してくすんだ赤色に発色するもの
○食感
10点:最も硬さと弾力性を有するもの
1点:最も柔らかく弾力性に欠けるもの
(表2)ピックル液配合
Figure 2015129839
(表3)
Figure 2015129839
表3の結果の通り、いずれのサンプル、市販品を用いたハムも×の評価はなく、一定の品質は有していたが、その中でもサンプルAのハムの品質が色調と食感の両面において他の評価に比べて特に優れた結果となった。
(応用例2)
製造例1において得られたサンプルAの粉末状大豆蛋白素材を用い、表4の配合に従ってピックル液を調製し、これを用いて応用例2と同様にしてロースハムを調製した。得られたロースハムは、卵白や乳蛋白を使用しない系であるが、応用例1においてサンプルAを用いて調製したロースハムと遜色のない品質であった。
(表4)ピックル液配合
Figure 2015129839

Claims (24)

  1. 下記A,B,C及びDの要件を満たすことを特徴とする、粉末状大豆蛋白素材。
    A)粉末状大豆蛋白素材の蛋白質含量が固形分中60〜85重量%、
    B)粉末状大豆蛋白素材の20重量%水溶液に対して1.6重量%の塩化ナトリウムを添加し、調製したペーストをケーシングチューブに密封後、80℃で30分間湯浴中において加熱し、一晩冷蔵静置して得られるゲルのゼリー強度が50gf・cm以上、
    C)粉末状大豆蛋白素材の9重量%水溶液に対して塩化ナトリウムが5重量%添加された水溶液を、5℃で5時間冷蔵静置した後の10℃における粘度が300mPa・s以下、
    D)粉末状大豆蛋白素材の5重量%水溶液を30,000×gで1時間遠心分離したときの蛋白質の沈殿率が、遠心分離前の蛋白質濃度に対して12重量%以下。
  2. 要件A)の該蛋白質含量が、固形分中60重量%以上70重量%未満である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  3. 要件A)の該蛋白質含量が、固形分中70重量%以上80重量%未満である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  4. 要件A)の該蛋白質含量が、固形分中80重量%以上85重量%未満である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  5. 要件A)の該蛋白質含量が、固形分中62重量%以上83重量%以下である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  6. 要件A)の該蛋白質含量が、固形分中64重量%以上80重量%以下である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  7. 粉末状大豆蛋白素材の炭水化物含量が、固形分中1〜40重量%である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  8. 粉末状大豆蛋白素材の炭水化物含量が、固形分中5〜30重量%である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  9. 粉末状大豆蛋白素材中の炭水化物は、副原料として加えられた糖質又は食物繊維を含む、請求項7記載の粉末状大豆蛋白素材。
  10. 粉末状大豆蛋白素材の不溶性食物繊維含量が、固形分中1重量%以下である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  11. 粉末状大豆蛋白素材の不溶性食物繊維含量が、固形分中0.2重量%以下である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  12. 要件B)の該ゼリー強度が、150gf・cm以上である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  13. 要件C)の該粘度が、100mPa・s以下である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  14. 粉末状大豆蛋白素材の0.22M TCA可溶率が、2〜20%である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  15. 要件A)の該蛋白質含量が、固形分中64重量%以上80重量%以下であり、
    粉末状大豆蛋白素材中の炭水化物は、副原料として加えられた糖質又は食物繊維を含み、
    該粉末状大豆蛋白素材の炭水化物含量が、固形分中5〜30重量%であり、
    該粉末状大豆蛋白素材の不溶性食物繊維含量が、固形分中0.2重量%以下であり、
    要件B)の該ゼリー強度が、150gf・cm以上であり、
    要件C)の該粘度が、100mPa・s以下である、
    請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
  16. 請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されていることを特徴とする、ピックル液。
  17. 請求項16記載のピックル液が添加されたことを特徴とする、食肉加工品。
  18. 請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されたピックル液を、原料肉に添加することを特徴とする、食肉加工品の製造法。
  19. 請求項15記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されたピックル液を、原料肉に添加することを特徴とする、食肉加工品の製造法。
  20. 請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されたピックル液を、インジェクターを用いて原料肉に注入することを特徴とする、ハムの製造法。
  21. 請求項15記載の粉末状大豆蛋白素材が溶解されたピックル液を、インジェクターを用いて原料肉に注入することを特徴とする、ハムの製造法。
  22. 請求項1項記載の粉末状大豆蛋白素材の、ピックル液への使用。
  23. 請求項15記載の粉末状大豆蛋白素材の、ピックル液への使用。
  24. 下記工程を備えることを特徴とする、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材の製造法。
    不溶性食物繊維が、最終製品の粉末状大豆蛋白素材中1重量%以下となるように除去され、大豆蛋白質が固形分中90重量%以上に濃縮された液を得る工程、
    該大豆蛋白質濃縮液に炭水化物を混合し、蛋白質含量が固形分中60〜85重量%の混合液を得る工程、
    該大豆蛋白質濃縮液又は該混合液に、直接蒸気吹き込み式高温瞬間加熱処理を2回以上の行う工程であって、該混合液に該加熱処理を少なくとも1回行う工程。
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