JPWO2010067533A1 - 大豆蛋白及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、低い粘度を有する大豆蛋白水溶液を調製できると共にゲル強度を高めた蛋白ゲルを調製できる大豆蛋白の製造方法を提供する。本発明は、脱脂豆乳の酸沈処理を経て得られたカードを水に分散させた水分散液を中和して中和蛋白溶液を得る第1の工程と、前記中和蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱して被加熱蛋白溶液を得る第2の工程と、前記被加熱蛋白溶液を乾燥して大豆蛋白を得る第3の工程とを有する大豆蛋白の製造方法である。

Description

本発明は、大豆蛋白及びその製造方法に関するものである。
大豆蛋白を含む水溶液を加熱して得られるゲルは、特にゲル形成能が必要とされるハム、ソーセージ等の食肉加工品や水産練り製品などの分野を中心に広く利用されている。
それらの中でもハムなどの食肉加工品の製造分野では、食肉加工品の硬さ、弾力性などの食感の改良、あるいは、保水性などの改良を目的として、大豆蛋白が利用されている。食肉加工品を製造する場合、例えばハムを製造する際、通常、大豆蛋白などの蛋白素材と共に食塩、調味料、香辛料、重合リン酸塩などの結着剤、亜硝酸塩などの発色剤、カゼインナトリウムなどの乳化安定剤、アスコルビン酸塩などの酸化防止剤等を配合した所謂ピックル液を肉に注入して混合する。これにより、ハムの硬さや弾力性などの食感の改良を試みる。
しかしながら、従来のピックル液を肉に注入してハムを製造する場合、ピックル液における大豆蛋白等の蛋白素材の配合量を増大させると液の粘度が上昇する。これでは、インジェクターを用いたピックル液の肉への注入(以下、「インジェクション」ともいう。)作業時にハンドリング性が低下し、効率的なインジェクションが困難になる。また、粘度を低下させるために大豆蛋白の配合量を少なくすると、大豆蛋白によるゲル化効果が十分に発揮されず、ピックル液を注入した肉の硬さや弾力性などの食感改良効果が低減する。このように、従来の大豆蛋白をピックル液に配合する場合、大豆蛋白自体の粘度が高いため、その配合量を増大することが困難である。
食肉製品の食感及び製造時の作業性の向上を目的として、例えば特許文献1では、グリシニン/β−コングリシニンの比率を特定の範囲に設定した大豆たん白質を原料肉に混合または注入する食肉製品の製造方法が提案されている。また、ゲル特性の観点から、大豆蛋白から分画精製して得られたグリシニンとβ−コングリシニンから新規なゲル特性を有する蛋白ゲルを得ることを目的として、特許文献2では、β−コングリシニン又はグリシニンに富む大豆蛋白の水溶液に対し、120〜200℃の直接蒸気加熱を施した後、2次加熱を行うゲルの製造法が提案されている。
特開平10−155455号公報 特開2007−116961号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の蛋白は、製造する際に、グリシニン/β−コングリシニンの比率を管理しながら調整する必要がある。また、上記特許文献2に記載の蛋白は、β−コングリシニンやグリシニンの含有量を高めるために、エタノール等の有機溶剤を用いる必要があり、製造コストの点で、必ずしも満足のいくものではない。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、特に、グリシニン/β−コングリシニンの比率調整をしない場合であっても、また、β−コングリシニンやグリシニン含量を高めない場合であっても、低い粘度を有する大豆蛋白水溶液を調製できると共にゲル強度を高めた蛋白ゲルを調製できる大豆蛋白及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、Brix10%未満の蛋白含有水溶液を、特定の条件で加熱処理することにより、その水溶液の粘度が低粘度であり、かつゲル化するとゲル強度が高い大豆蛋白を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]脱脂豆乳の酸沈処理を経て得られたカードを水に分散させた水分散液を中和して中和蛋白溶液を得る第1の工程と、中和蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱して被加熱蛋白溶液を得る第2の工程と、被加熱蛋白溶液を乾燥して大豆蛋白を得る第3の工程とを有する大豆蛋白の製造方法。
[2]上記カードが、酸沈処理により得られた酸沈カードを更に水で洗浄して得られた水洗カードを含有する[1]の大豆蛋白の製造方法。
[3]上記第2の工程において中和蛋白溶液を110〜160℃の温度で0.5〜60秒間加熱する[1]又は[2]の大豆蛋白の製造方法。
[4]上記第2の工程において中和蛋白溶液を直接蒸気で加熱する[1]〜[3]のいずれか一つの大豆蛋白の製造方法。
[5]中和蛋白溶液に生醤油を添加して醤油添加蛋白溶液を得る第4の工程を更に有し、上記第2の工程は、醤油添加蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱して被加熱蛋白溶液を得る工程である[1]〜[4]のいずれか一つの大豆蛋白の製造方法。
[6]pH7.4に調整した固形分10質量%の大豆蛋白の水溶液が、20℃で5〜100mPa・sの粘度とを有する大豆蛋白であって、固形分20質量%の3質量%食塩水溶液を80℃で30分間加熱した後に20℃まで冷却して得たゲルが、300〜1000gの破断応力と600〜2000g・cmのゼリー強度とを有する大豆蛋白。
[7]固形分10質量%の大豆蛋白の水溶液が、波長660nmで0.05〜0.7の濁度を有する[6]の大豆蛋白。
[8]前記大豆蛋白中の1−ヘキサナールの濃度が8ppm以下である[6]又は[7]の大豆蛋白。
[9][1]〜[5]のいずれか一つの大豆蛋白の製造方法により得られた大豆蛋白を原料として用いた蛋白含有食品。
[10][6]〜[8]のいずれか一つの大豆蛋白を原料として用いた蛋白含有食品。
[11]蛋白含有食品が、畜肉加工食品、水産練り製品、プリン様デザート食品、ゼリー食品、燕の巣様食品、フカヒレ様食品、高齢者向け蛋白補給食品、蛋白質・エネルギー補給食品、嚥下機能低下者用とろみ調整食品、及び寒天利用食品からなる群より選ばれる1種である[9]又は[10]の蛋白含有食品。
[12][1]〜5のいずれか一つの大豆蛋白の製造方法により製造された大豆蛋白と水とを含有する混合物をゲル化することにより得られる蛋白ゲル。
[13][6]〜[8]のいずれか一つの大豆蛋白と水とを含有する混合物をゲル化することにより得られる蛋白ゲル。
[14]上記混合物が更に動物性蛋白を含有する、[12]又は[13]の蛋白ゲル。
[15]上記混合物が更に塩化ナトリウムを含有する、[12]〜[14]のいずれか一つの蛋白ゲル。
[16][12]〜[15]のいずれか一つの蛋白ゲルを原料として用いた蛋白ゲル含有食品。
[17][1]〜5のいずれか一つの大豆蛋白の製造方法により製造された大豆蛋白を含有するピックル液。
[18][6]〜[8]のいずれか一つの大豆蛋白を含有するピックル液。
[19][17]又は[18]のピックル液を原料として用いた畜肉加工食品。
本発明によると、特に、グリシニン/β−コングリシニンの比率調整をしない場合であっても、また、β−コングリシニンやグリシニン含量を高めない場合であっても、低い粘度を有する大豆蛋白水溶液を調製できると共にゲル強度を高めた蛋白ゲルを調製できる大豆蛋白及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
最初に、本実施形態の大豆蛋白の製造方法について説明する。本実施形態の大豆蛋白の製造方法は、脱脂豆乳の酸沈処理を経て得られたカードを水に分散させた水分散液を中和して中和蛋白溶液を得る第1の工程と、上記中和蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱して被加熱蛋白溶液を得る第2の工程と、上記被加熱蛋白溶液を乾燥して大豆蛋白を得る第3の工程とを有するものである。以下、その製造方法について詳述する。
この製造方法では、まず、第1の工程において、脱脂豆乳の酸沈処理を経て得られたカードを水に分散させた水分散液を中和して中和蛋白溶液を得る。脱脂豆乳は、脱脂大豆から蛋白を抽出して蛋白抽出液を得る抽出工程と、蛋白抽出液を固液に分離しておからを除去し、上澄み液を脱脂豆乳として回収する豆乳回収工程とを経る通常の脱脂豆乳の製造方法により得られるものであれば、特に限定されない。
脱脂大豆は、大豆から大豆油を除去して残った固形分であり、大豆の品種や産地は特に限定されない。脱脂大豆は、大豆の圧搾又は大豆からの大豆油の抽出により得られ、例えば、大豆に対してn−ヘキサンを抽出溶剤として60〜80℃の低温抽出処理を施すことにより得られる。脱脂大豆の窒素可溶係数(NSI)は、60以上であると好ましく、80以上であるとより好ましい。このような所謂低変性脱脂大豆を用いることで、所望の大豆蛋白を得やすくなる。
抽出工程では、脱脂大豆と抽出溶媒とを混合した混合液を撹拌羽根などを用いて撹拌して、抽出溶媒側に蛋白を抽出して蛋白抽出液を得る。抽出溶媒としては、通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば水(常温水、温水)、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液などが挙げられる。その液温は10〜80℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは25℃〜60℃である。抽出溶媒は中性〜弱アルカリ性であると好ましく、具体的には、そのpHが6.0〜8.5であると好ましく、6.5〜8.0であるとより好ましい。ただし、抽出溶媒が弱酸性であっても用いることは可能である。これ以外の抽出工程における諸条件は、従来と同様であればよい。抽出溶媒の使用量は、通常採用される範囲であれば特に限定されず、例えば、脱脂大豆に対して質量基準で4〜15倍量であることが好ましい。
上記混合液は、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を更に含んでもよい。これにより、大豆蛋白水溶液の粘度を更に低下させることが可能となり、作業性が一層向上する。混合液中の還元剤の含有量は、例えば、混合液の全質量に対して1〜300ppmであることが好ましい。
次に、豆乳回収工程では、蛋白抽出液を固液に分離し、固形分であるおからを除去し、上澄み液である脱脂豆乳を回収する。蛋白抽出液の分離方法として、遠心分離、フィルタープレスなどのろ過法を用いることができるが、これらの中では、遠心分離が好ましい。遠心分離において用いられる分離機としては、例えば、小型の連続遠心分離機である、冷却式連続遠心分離機(ロータータイプ)、デカンター連続式横型遠心分離機(以下、単に「デカンター連続遠心分離機」という。)、ディスク型連続遠心分離機が挙げられるが、これらに限定されない。これらの分離機の回転数など、分離の際の諸条件は適宜設定される。
次いで、得られた脱脂豆乳を酸性条件に調節して酸沈処理により固液に分離し、上澄みであるホエーを除去すると共に、固形分である酸沈カード(水で洗浄をしていないカード)を回収する。ここで、酸性条件に調節する際、上記豆乳回収工程を経て得られた上澄み液の脱脂豆乳をそのまま酸性条件に調節してもよく、一旦乾燥させて得られた粉末状の脱脂豆乳を水などの溶媒に溶解すると共に酸性条件に調節してもよい。酸性条件は、pHが2.0〜6.5であると好ましく、4.0〜5.5であるとより好ましい。酸性条件に調節するには、脱脂豆乳に塩酸などの酸水溶液を所望のpHとなるように添加すればよい。また、酸沈処理の際の脱脂豆乳の液温は、例えば15〜25℃であることが好ましい。
酸沈処理は、酸水溶液の添加と共に脱脂豆乳を必要に応じて撹拌後、静置することによって行ってもよいが、脱脂豆乳を酸沈カードとホエーとに効率よく分離するために、遠心分離などの分離方法を用いてもよい。遠心分離を採用する場合に用いられる分離機としては、上記と同様のものを例示でき、それらの中ではデカンター連続遠心分離機が好ましい。遠心分離機を用いる場合、その回転数は1000〜10000rpmであると好ましく、1500〜8000rpmであるとより好ましく、3000〜8000rpmであると更に好ましい。また、その他の分離の際の諸条件は、適宜設定される。なお、酸沈処理の際に発生し得る発泡を抑制するために、シリコン等の消泡剤を脱脂豆乳に添加してもよい。
第1の工程において用いるカードは、上記酸沈カードであってもよいが、得られる蛋白ゲルの透明度をより高めるためには、酸沈処理により得られた酸沈カードを更に水で洗浄して得られた水洗カードを用いることが好ましい。
酸沈カードを洗浄する場合、高効率で洗浄するために、酸沈カードを水中に分散して洗浄するのが好ましい。分散させる水の量は、ペースト状のカードの固形分質量に対して、3〜20倍量であると好ましく、4〜15倍量であるとより好ましく、5〜12倍量であると更に好ましい。これにより、酸沈カードを更に効率よく洗浄できると共に、水洗カードを回収する際の作業効率を高めることが可能となる。また、酸沈カードを洗浄するのに用いる水の温度は15〜70℃であると好ましく、15〜25℃であるとより好ましい。この水の温度を15℃以上にすることにより、不純物をより有効に除去することができ、70℃以下にすることにより、蛋白の変性を防ぐという効果をより有効に奏することができる。
水中に酸沈カードを分散して洗浄する場合、酸沈カードが分散した水をホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて撹拌しながら洗浄するのが好ましい。ホモミキサーを用いる場合、その回転数は500〜12000rpmであると好ましく、500〜10000rpmであるとより好ましく、500〜8000rpmであると更に好ましい。また、撹拌時間は1〜30分間であると好ましく、5〜25分間であるとより好ましく、10〜15分間であると更に好ましい。回転数又は撹拌時間が上記下限値以上であると、カードを水により効率よく分散させることができ、その洗浄効果が一層高まり、蛋白ゲルの透明性がより向上する傾向にある。また、回転数又は撹拌時間が上記上限値以下であると、泡の発生を抑え、水洗カードを回収する際の作業効率を更に高めることができる傾向にある。
次に、上述のように洗浄して得られた水洗カードを回収する。回収方法は、通常の固液分離方法を用いるものであれば特に限定されず、例えば連続遠心機を用いた遠心分離によって水洗カードと水とを分離して、水を除去することによって水洗カードを回収することができる。この場合、連続遠心機としてデカンター連続遠心分離機を用いると好ましいが、連続遠心機はこれに限定されない。遠心分離機を用いる場合、その回転数は1000〜10000rpmであると好ましく、1500〜8000rpmであるとより好ましく、3000〜8000rpmであると更に好ましい。
第1の工程では、上述のカードを更に水中に分散した水分散液を中和して中和蛋白溶液を得る。カードを水中に分散する方法は、通常の中和前にカードを分散する方法であれば特に限定されず、必要に応じてホモミキサー等の分散機を用いてもよい。カードに対する水の量は、例えば、カードの固形分質量に対して3〜15倍量であることが好ましい。中和処理は、カードが分散した水中に、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加することによって行われる。この際、得られる中和蛋白溶液のpHが6.0〜8.0となるように中和処理を施すのが好ましく、そのpHはより好ましくは6.8〜7.8、更に好ましくは7.0〜7.4である。なお、第1の工程における中和時に、併せて中和蛋白溶液に水を添加してそのBrixを10%未満に調整してもよい。ここで、本明細書における溶液のBrixは、糖度計により測定された屈折率から算出することができ、上記糖度計としては、例えば、有限会社アタゴ社製のデジタル糖度計(商品名「PR−101α」)が挙げられる。
次に、第2の工程において、中和蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱して被加熱蛋白溶液を得る。この第2の工程では、加熱により中和蛋白溶液を殺菌することができる。第1の工程を経て得られた中和蛋白溶液のBrixが10%未満である場合、その中和蛋白溶液をそのまま第2の工程に用いてもよく、水の添加により希釈して更にBrixを低下させてもよい。あるいは、第1の工程を経て得られた中和蛋白溶液のBrixが10%以上である場合、その中和蛋白溶液を水の添加により希釈して、そのBrixを10%未満に調整してから加熱する。このように中和蛋白溶液のBrixを10%未満に調整することにより、透明感を有する蛋白溶液を得ることができる。特に、中和蛋白溶液のBrixを10%未満に調整し、かつ後述の直接蒸気加熱を採用することにより、大豆蛋白の大豆臭を格別に低減することができる。また、その大豆蛋白を用いることで、透明度をより高めた蛋白ゲルを得ることができる。中和蛋白溶液のBrixは1%以上10%未満であると好ましく、3〜9.5%であるとより好ましく、4〜9%であると更に好ましい。そのBrixが1%未満であっても、本実施形態に係る大豆蛋白を製造することはできるが、製造コストの点から、Brixを1%以上にすることが好ましい。
加熱方法は、中和蛋白溶液を直接水蒸気と接触させる直接蒸気加熱、あるいは、プレート式のヒーター等を用いて中和蛋白溶液を収容する容器を加熱する等の間接加熱のいずれであってもよい。ただし、蛋白ゲルの透明性を更に高めると共に、大豆蛋白の大豆臭を低減する観点から、直接蒸気加熱が好ましい。加熱温度は110〜160℃であると好ましく、130〜150℃であるとより好ましく、140〜150℃であると更に好ましい。また、加熱時間は0.5〜60秒間であると好ましく、2〜30秒間であるとより好ましく、3〜15秒間であると更に好ましい。加熱温度が110℃以上であると、また、加熱時間が0.5秒間以上であると、蛋白ゲルの透明性を更に優れたものとすることができる。加熱温度が160℃以下であると、また、加熱時間が60秒間以下であると、より風味の良い大豆蛋白を得ることができる。
なお、中和蛋白溶液にプロテアーゼなどの酵素類を更に添加してもよく、これにより、第2の工程において酵素反応を進行させることが可能となる。
そして、第3の工程において、被加熱蛋白溶液を乾燥して大豆蛋白を得る。乾燥方法としては、通常の大豆蛋白を得るための乾燥方法であれば特に限定されず、例えば、被加熱蛋白溶液をスプレードライヤーによって噴霧する等の噴霧乾燥、凍結乾燥、加熱真空乾燥などを採用することができる。これらの中では、水分散性の高い粉末状の大豆蛋白を得ることができるという点から、噴霧乾燥が好ましい。上記スプレードライヤーを用いた噴霧乾燥の場合、スプレードライヤーの噴霧ノズル入口における乾燥空気等の熱風の温度(入口温度)は110〜200℃であると好ましく、115〜190℃であるとより好ましく、120〜185℃であると更に好ましい。また、噴霧後の熱風の温度(出口温度)は50〜100℃であると好ましく、55〜90℃であるとより好ましく、60〜85℃であると更に好ましい。
また、第3の工程における被加熱蛋白溶液のBrixは10%未満であると好ましく、1%以上10%未満であるとより好ましく、2〜9.5%であると更に好ましく、3〜9%であると特に好ましく、5〜9%であると極めて好ましい。
本実施形態の大豆蛋白の製造方法は、第1の工程の後に、第1の工程で得られた中和蛋白溶液に生醤油を添加して醤油添加蛋白溶液を得る第4の工程を更に有し、かつ、第2の工程が上記醤油添加蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱して上記被加熱蛋白溶液を得る工程であると好ましい。これにより、大豆蛋白溶液の粘度を更に低減することができる。また、醤油添加蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱するので、透明感を有する蛋白溶液を得ることができる。ここで、「生醤油」とは、醤油諸味又は醤油様発酵調味料から不溶性固形分を除去して得られた液体調味料を意味する。
市販の醤油は通常、醤油諸味から不溶性固形分を除去して得られた生醤油を更に加熱(火入れ)し、生じた沈殿物(滓)を除去する工程を経て製造される。本実施形態に係る生醤油は、醤油諸味の不溶性固形分を除去してから火入れを行うまでの状態を指し、滓が生じない程度にまで加熱されたものをも含む。生醤油は、原料の大豆と小麦との比率、原料処理の方法、塩分濃度等の製法の違いによって種々のものがあるが、色沢や風味の異なるこいくち、うすくち、たまり、しろ、さいしこみ等が知られている。本実施形態に係る生醤油はこれらのいずれであってもよい。
また、醤油諸味を醤油様発酵調味料の諸味に代え、その諸味から同様に不溶性固形分を除去して得られた生発酵分解調味液も本実施形態の生醤油に含まれる。醤油様発酵調味料としては、例えば、発酵分解調味液(植物由来原料に麹菌培養物を加えて発酵させたもの)、魚醤(魚介類を発酵、又は麹菌培養物を加えて発酵させたもの)、肉醤(蓄肉類を発酵、又は麹菌培養物を加えて発酵させたもの)が挙げられる。
これらの中でも、醤油諸味から得られる生醤油が好ましい。本実施形態において、生醤油は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
生醤油を添加する中和蛋白溶液のBrixは1%以上20%未満であると好ましく、5%以上10%未満であるとより好ましい。生醤油の添加量は、得られる醤油添加蛋白溶液の全量に対して0.00001〜10質量%であると好ましく、0.001〜0.5質量%であるとより好ましい。生醤油の添加量が0.00001質量%以上であることにより、生醤油による上述の効果をより有効に発揮することができ、10質量%以下であることにより、醤油の風味や色が過剰に醤油添加蛋白溶液に付与されないという効果が得られる傾向にある。また、生醤油を中和蛋白溶液に添加した液を所定時間、所定温度で静置又は撹拌することが好ましい。その液を撹拌する場合、上記所定時間は6分間〜6時間であると好ましく、所定温度は5〜80℃であると好ましい。これにより、生醤油による上述の効果を更に有効に発揮することができる。
本実施形態の大豆蛋白の製造方法によると、得られる大豆蛋白を用いて、低い粘度を有する大豆蛋白水溶液を調製でき、しかもゲル強度を高めた蛋白ゲルを調製でき、さらには、その蛋白ゲルの透明性をも高くできる。そして、特に、上記特許文献1、2に記載された複雑な工程を経なくても、上述のような優れた特性を有する大豆蛋白を製造でき、また、特殊な溶剤を使用しなくても製造することができる。そのため、本実施形態の大豆蛋白の製造方法は、製造工程や製造施設の簡略化、製造コストの削減、安全性などの点で優れたものである。
さらに、得られた大豆蛋白は高いゲル化力を有することから、これを畜肉加工食品の原料として用いた場合に、その添加量が少なくても、硬さ及び弾力性に優れた畜肉加工食品を製造することができる。また、得られた大豆蛋白の溶液は低粘度であることから、特にハムへのインジェクション用途に用いることで、ハムの製造時のハンドリングが向上する。そして、本実施形態に係る大豆蛋白の高濃度溶液は、従来の大豆蛋白に比べて粘度を低く抑えることができるため、幅広い用途への利用が可能となる。
上述のようにして得られる本実施形態の大豆蛋白は、そのpH7.4の固形分10質量%水溶液が、波長660nmで0.05〜0.7の濁度を有すると好ましく、0.1〜0.5の濁度を有するとより好ましい。この濁度が0.7以下であることにより、蛋白ゲルの透明性をより高くすることができる。大豆蛋白水溶液の濁度は、分光光度計により測定される。その濁度を上記数値範囲内に調節するには、加熱方法として直接蒸気加熱を採用する必要があり、その他、中和蛋白溶液のBrixを調整したり、上記第4の工程を経たり、そのときの生醤油の種類や混合量を調整したり、第2の工程における加熱温度や加熱時間を調整したりすればよい。
本実施形態の大豆蛋白は、そのpH7.4に調整した固形分10質量%の水溶液が、20℃で5〜100mPa・sの粘度を有すると好ましく、10〜50mPa・sの粘度を有するとより好ましい。この粘度が100mPa・s以下であると、大豆蛋白水溶液の粘度をより低くすることができる。大豆蛋白水溶液の粘度は、B型粘度計(ローター:No.2、回転数:30rpm)により測定される。その粘度を上記数値範囲内に調節するには、第2の工程における加熱時の中和蛋白溶液又は醤油添加蛋白溶液のBrixを10%未満にする必要があり、その他、加熱温度や加熱時間を調整したり、直接蒸気加熱を選択したり、上記還元剤を添加したり、その還元剤の添加量を調整したりすればよい。
本実施形態の大豆蛋白は、その固形分20質量%の3質量%食塩水溶液を80℃で30分間加熱した後に20℃まで冷却して得たゲルが、300〜1000gの破断応力を有すると好ましく、450〜900gの破断応力を有するとより好ましい。この破断応力が300g以上であると、蛋白ゲルのゲル強度をより高くすることができる。上記ゲルの破断応力は、テクスチャーアナライザー(例えば、Stable Micro Systems社製、商品名「TA XTPlus」)により測定される。その破断応力を上記数値範囲内に調節するには、上記還元剤を添加したり、その還元剤の添加量を調整したり、中和蛋白溶液又は醤油添加蛋白溶液のBrixを調整したり、上記第4の工程を経たり、そのときの生醤油の種類や混合量を調整したり、第2の工程における加熱温度や加熱時間を調整したり、直接蒸気加熱を選択したりすればよい。
本実施形態の大豆蛋白は、その固形分20質量%の3質量%食塩水溶液を80℃で30分間加熱した後に20℃まで冷却して得たゲルが、600〜2000g・cmのゼリー強度を有するものであると好ましく、700〜1800g・cmのゼリー強度を有するとより好ましい。このゼリー強度が600g・cm以上であると、蛋白ゲルのゲル強度をより高くすることができる。上記ゲルのゼリー強度は、テクスチャーアナライザー(例えば、Stable Micro Systems社製、商品名「TA XTPlus」)により測定される。そのゼリー強度を上記数値範囲内に調節するには、上記還元剤を添加したり、その還元剤の添加量を調整したり、中和蛋白溶液又は醤油添加蛋白溶液のBrixを調整したり、上記第4の工程を経たり、そのときの生醤油の種類や混合量を調整したり、第2の工程における加熱温度や加熱時間を調整したり、直接蒸気加熱を選択したりすればよい。
本実施形態の大豆蛋白中の1−ヘキサナールの濃度は、8ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましい。これにより大豆蛋白の大豆臭を低減することができる。大豆蛋白中の1−ヘキサナールの濃度を上記数値範囲内に調整するには、第2の工程において、直接蒸気加熱による加熱を採用した上で、加熱温度や加熱時間を調整すればよい。本実施形態における大豆蛋白中の1−ヘキサナールの濃度は、大豆蛋白水溶液中の1−ヘキサナール濃度を、大豆蛋白固形分中の濃度として換算した値である。ここで、「大豆蛋白固形分」とは、大豆蛋白中に含まれる水分の質量を分析、計算によって導出し、これを大豆蛋白の質量から差し引いたものをいう。大豆蛋白中の1−ヘキサナールの濃度は、例えば、ヘッドスペースGC/MS(ヘッドスペースサンプラー:Agilent Technologies社製、オーブン温度:60℃、ガスクロマトグラフ・検出器一式:HELETT PACKARD社製)を用いて大豆蛋白水溶液中の1−ヘキサナールの濃度を測定し、その値を、大豆蛋白固形分中に含まれる1−ヘキサナール濃度に換算して求められる。
本実施形態の蛋白含有食品は、公知の大豆蛋白に代えて又は加えて、上記本実施形態に係る大豆蛋白を原料として用いる他は、公知の蛋白含有食品と同様の製造方法によって製造される。そのような蛋白含有食品としては、例えば、畜肉加工食品(食肉加工品)、水産練り製品、プリン様デザート食品、ゼリー食品、燕の巣に外観や食感を近づけた燕の巣様食品、フカヒレに外観や食感を近づけたフカヒレ様食品、高齢者向け蛋白補給食品、蛋白質・エネルギー補給食品(PEM食品)、嚥下機能低下者用とろみ調整食品、寒天利用食品が挙げられる。畜肉加工食品としては、例えば、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、ベーコンが挙げられる。水産練り製品としては、例えば、蒲鉾(カニ風味蒲鉾、笹蒲鉾など)、ちくわ、さつま揚げ、はんぺん、つみれが挙げられる。プリン様デザート食品としては例えば豆腐花が挙げられ、ゼリー食品としては例えばゼリー飲料が挙げられる。
本実施形態の蛋白含有食品は、上記本実施形態に係る大豆蛋白を原料として用いることにより、その製造の際の作業効率を高めることができ、しかも、所望の硬さや弾力性などの食感が得られる。さらには、大豆蛋白のゲルや水溶液の透明性が高いものについては、所望の色味を有する蛋白含有食品を製造することが容易に可能となる。
蛋白含有食品への大豆蛋白の配合量は、各食品において求める機能(硬さ、弾力性、透明性等)を発揮できる量であればよい。例えば、蛋白含有食品がハム又はソーセージの場合、大豆蛋白を、1〜5質量%配合することができる。
本実施形態の蛋白ゲルは、上記本実施形態に係る大豆蛋白と水とを含有する混合物をゲル化することにより得られる。ここで、蛋白ゲル中の大豆蛋白の配合量は、5〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。その蛋白ゲルは、公知の大豆蛋白を上記本実施形態に係る大豆蛋白に代えた又は加えた以外は、従来と同様の製造方法により製造することができる。得られた蛋白ゲルは、公知のものと同様に、蛋白ゲル含有食品の原料として用いることができる。
本実施形態の蛋白ゲルを作製する際に、上記混合物へ動物性蛋白を更に含有させることで、動物性蛋白を含有した蛋白ゲルを得ることができる。また、上記混合物へ塩化ナトリウムを更に含有させると、ゲル強度が高い蛋白ゲルを得ることができる。これにより、耐塩性を有するゲルが求められている用途への利用が可能となる。
上記混合物中の水の配合量は、65〜95質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがより好ましい。また、混合物に動物性蛋白や塩化ナトリウムを添加する場合、それらの添加量は特に限定されず、目的に応じた量を添加することができる。例えば、大豆蛋白を動物性蛋白の一部代替を目的として添加する場合、大豆蛋白と動物性蛋白との合計量を混合物の全量に対して5〜35質量%とすると好ましく、大豆蛋白と動物性蛋白との比率(質量比)を1:9〜9:1にすると好ましい。塩化ナトリウムの配合量は、例えば、混合物の全量に対して0.1〜5質量%とし、その分、水の配合量を減らして混合物の全量を100質量%としてもよい。
本実施形態の蛋白ゲル含有食品は、公知の蛋白ゲルに代えて又は加えて、上記本実施形態の蛋白ゲルを原料として用いる他は、公知の蛋白ゲル含有食品と同様にして得られる。本実施形態の蛋白ゲル含有食品は、所望の硬さや弾力性などの食感を有すると共に、所望の色味をも有することが容易に可能となる。本実施形態の蛋白ゲル含有食品の具体例としては、上記本実施形態の蛋白含有食品と同様のものが例示される。
本実施形態のピックル液は、公知の大豆蛋白に代えて又は加えて、上記本実施形態に係る大豆蛋白を含有する他は、公知のピックル液と同様のものである。本実施形態のピックル液は、畜肉加工食品の原料として用いることができる。本実施形態のピックル液において大豆蛋白の配合量が高くても粘度を低く抑えることができるため、そのピックル液を畜肉加工食品の原料である肉に注入する際の作業効率は良好であり、しかも肉の硬さや弾力性などの食感改良効果を高く維持することができる。
ピックル液は、例えば、上記本実施形態に係る大豆蛋白5〜10質量%、グルコース4〜6質量%、食塩3〜5質量%、ポリリン酸ナトリウム0.3〜0.6質量%、化学調味料1〜3質量%、及び水(残部)を配合する。
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
NSI85の脱脂大豆20kgを収容した容器内に水を120kg、すなわち脱脂大豆の6倍量添加し、さらに、3N水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その混合液のpHを7.2に調整した。その後、撹拌羽根で常温の混合液を40分間撹拌(回転数:200rpm)して蛋白を抽出した。得られた蛋白抽出液を、市販のディスク型連続遠心分離機で遠心分離(回転数:6500rpm)して、固形分であるおからを分離、除去し、上澄み液である脱脂豆乳100kgを回収した。次いで、回収した脱脂豆乳を、撹拌羽根で撹拌(回転数:300rpm)しながら、3N塩酸でpH4.5に調整して酸沈処理を行い、酸沈カードを沈殿させた。酸沈カードが沈殿した液について、高速冷却式連続遠心分離機(久保田商事社製、商品名「KUBOTA KR−20000S」)で固液の遠心分離(回転数:7500rpm)を行い、沈殿したペースト状の酸沈カード10kgを回収した。
回収したペースト状の酸沈カード10kgを収容する容器に、水を80kg、すなわち酸沈カードの8倍量添加して酸沈カードを水中に分散した。次に、常温の下、ホモミキサー(回転数:600rpm)を用いて、酸沈カードが分散した水を15分間撹拌して酸沈カードを洗浄した。その後、高速冷却式連続遠心分離機(久保田商事社製、商品名KUBOTA KR−20000S)で酸沈カードが分散した水に対して固液の遠心分離(回転数:7500rpm)を行い、沈殿した水洗カード8kgを回収した。
次に、回収したペースト状の水洗カード8kgを収容する容器に、水を60kg、すなわち水洗カードの7.5倍量添加して水洗カードを水中に分散した。次に、常温の下、ホモミキサー(600rpm)を用いて、水洗カードが分散した水を15分間撹拌した。その後、水洗カードが分散した水を撹拌羽根で撹拌(回転数:300rpm)しながら、そこに3N水酸化ナトリウム溶液を添加して、そのpHを7.4に調整して中和蛋白溶液を得た。また、このpH調整を行う際に、中和蛋白溶液に水を更に添加することで、中和蛋白溶液のBrixを5.0%に調整した(以上、第1の工程)。
次に、Brix5.0%の中和蛋白溶液を145℃の水蒸気に3秒間直接接触させて加熱して、被加熱蛋白溶液を得た(第2の工程)。その後、被加熱蛋白溶液を15℃に冷却した。そして、冷却後の被加熱蛋白溶液を、スプレードライヤー(大川原化工機製、商品名「L−8型」)により噴霧乾燥して、粉末状の大豆蛋白6kgを得た(第3の工程)。なお、噴霧乾燥時のスプレードライヤーの入口温度は180℃であり、出口温度は85℃であった。なお、溶液のBrixは、糖度計(有限会社アタゴ社製デジタル糖度計、商品名「PR−101α」)により測定された屈折率から算出した(以下同様。)。
〔実施例2〕
NSI86の脱脂大豆20kgを収容した容器内に水を120kg、すなわち脱脂大豆の6倍量添加し、さらに、3N水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その混合液のpHを7.2に調整した。その後、撹拌羽根で常温の混合液を40分間撹拌(回転数:200rpm)して蛋白を抽出した。得られた蛋白抽出液を、市販のディスク型遠心分離機で遠心分離(回転数:6000rpm)して、固形分であるおからを分離、除去し、上澄み液である脱脂豆乳69kgを回収した。次いで、回収した脱脂豆乳を、撹拌羽根で撹拌(回転数:300rpm)しながら、3N塩酸でpH4.5に調整して酸沈処理を行い、酸沈カードを沈殿させた。酸沈カードが沈殿した液68.3kgのうち20kgについて、高速冷却式連続遠心分離機(久保田商事社製、商品名「KUBOTA KR−20000S」)で固液の遠心分離(回転数:7500rpm)を行い、沈殿したペースト状の酸沈カード2.28kgを回収した。
回収したペースト状の酸沈カード2.28kgを収容する容器に、水を18kg、すなわち酸沈カードの8倍量添加して酸沈カードを水中に分散した。次に、常温の下、ホモミキサー(回転数:600rpm)を用いて、酸沈カードが分散した水を15分間撹拌して酸沈カードを洗浄した。その後、高速冷却式連続遠心分離機(久保田商事社製、商品名「KUBOTA KR−20000S」)で酸沈カードが分散した水に対して固液の遠心分離(回転数:7000rpm)を行い、沈殿した水洗カード1.52kgを回収した。
次に、回収したペースト状の水洗カード1.52kgを収容する容器に、水を10kg、すなわち水洗カードの6.6倍量添加して水洗カードを水中に分散した。次に、常温の下、ホモミキサー(600rpm)を用いて、水洗カードが分散した水を15分間撹拌した。その後、水洗カードが分散した水を撹拌羽根で撹拌(回転数:300rpm)しながら、そこに3N水酸化ナトリウム溶液を添加して、そのpHを7.4に調整して中和蛋白溶液を得た。また、このpH調整を行う際に、中和蛋白溶液に水を更に添加することで、中和蛋白溶液のBrixを5.0%に調整した(以上、第1の工程)。
次に、Brix6.7%の中和蛋白溶液11.52kgに、生醤油(キッコーマン社製、白醤油)を水で10倍に希釈した液を5.76mL混合し、50℃で1時間撹拌して醤油添加蛋白溶液を得た(第4の工程)。なお、生醤油として、下記のとおりにして製造したものを用いた。まず、蒸煮した大豆と炒って割り砕いた小麦とを1:99(質量比)で混合した上で種麹を加え、麹室において20〜40℃で約3日間製麹して醤油麹を得た。次いで、熟成後の食塩分が16〜18%(w/v)となるよう食塩水を上記醤油麹に仕込み、約3ヶ月間の期間熟成した。そして、熟成した醤油諸味を圧搾して、生醤油を得た。
次いで、水を添加してBrixを5.0%に調整した醤油添加蛋白溶液を145℃の水蒸気に3秒間直接接触させて加熱して、被加熱蛋白溶液を得た(第2の工程)。その後、被加熱蛋白溶液を15℃に冷却した。そして、冷却後の被加熱蛋白溶液を、スプレードライヤー(大川原化工機製、商品名「L−8型」)により噴霧乾燥して、粉末状の大豆蛋白0.8kgを得た(第3の工程)。なお、噴霧乾燥時のスプレードライヤーの入口温度は180℃であり、出口温度は85℃であった。
〔実施例3〕
第2の工程における直接蒸気加熱の条件を145℃、3秒間から130℃、3秒間に代えた以外は実施例2と同様にして、粉末状の大豆蛋白0.8kgを得た。
〔実施例4〕
第2の工程における直接蒸気加熱の条件を145℃、3秒間から150℃、3秒間に代えた以外は実施例2と同様にして、粉末状の大豆蛋白0.8kgを得た。
〔実施例5〕
第2の工程における加熱を、直接蒸気加熱からプレート式のヒーターを用いた間接加熱に代え、醤油添加蛋白溶液を収容した容器をそのヒーターに載置して加熱し、溶液の温度が120℃になってから15秒間保持した。それ以外は実施例2と同様にして、粉末状の大豆蛋白0.8kgを得た。
〔実施例6〕
第2の工程における加熱を、直接蒸気加熱からプレート式のヒーターを用いた間接加熱に代え、醤油添加蛋白溶液を収容した容器をそのヒーターに載置して加熱し、溶液の温度が140℃になってから15秒間保持した。それ以外は実施例2と同様にして、粉末状の大豆蛋白0.8kgを得た。
〔実施例7〕
NSI85の脱脂大豆20kgを収容した容器内に水を120kg、すなわち脱脂大豆の6倍量添加し、水中での濃度が60ppmとなるようにピロ亜硫酸ナトリウムを添加し、さらに、3N水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その混合液のpHを7.2に調整した。その後、撹拌羽根で常温の混合液を40分間撹拌(回転数:200rpm)して蛋白を抽出した。これ以降、実施例1と同様にして、粉末状の大豆蛋白5.7kgを得た。
〔実施例8〕
NSI85の脱脂大豆20kgを収容した容器内に水を120kg、すなわち脱脂大豆の6倍量添加し、水中での濃度が60ppmとなるようにピロ亜硫酸ナトリウムを添加し、さらに、3N水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その混合液のpHを7.2に調整した。その後、撹拌羽根で常温の混合液を40分間撹拌(回転数:200rpm)して蛋白を抽出した。これ以降、実施例2と同様にして、粉末状の大豆蛋白6kgを得た。
〔比較例1〕
NSI85の脱脂大豆20kgを収容した容器内に水を120kg、すなわち脱脂大豆の6倍量添加し、水中での濃度が60ppmとなるようにピロ亜硫酸ナトリウムを添加し、さらに、3N水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その混合液のpHを7.2に調整した。その後、撹拌羽根で常温の混合液を40分間撹拌(回転数:200rpm)して蛋白を抽出した。得られた蛋白抽出液を、市販のディスク型遠心分離機で遠心分離(回転数:6500rpm)して、固形分であるおからを分離、除去し、上澄み液である脱脂豆乳89kgを回収した。次いで、回収した脱脂豆乳を、撹拌羽根で撹拌(回転数:300rpm)しながら、3N塩酸でpH4.5に調整して酸沈処理を行い、酸沈カードを沈殿させた。酸沈カードが沈殿した液について、高速冷却式連続遠心分離機(久保田商事社製、商品名「KUBOTA KR−20000S」)で固液の遠心分離(回転数:7500rpm)を行い、沈殿したペースト状の酸沈カード3.4kgを回収した。
回収したペースト状の酸沈カード3.4kgを収容する容器に、水を27.2kg、すなわち酸沈カードの8倍量添加して酸沈カードを水中に分散した。次に、常温の下、ホモミキサー(回転数:600rpm)を用いて、酸沈カードが分散した水を15分間撹拌して酸沈カードを洗浄した。その後、高速冷却式連続遠心分離機(久保田商事社製、商品名「KUBOTA KR−20000S」)で酸沈カードが分散した水に対して固液の遠心分離(回転数:7500rpm)を行い、沈殿した水洗カード2.4kgを回収した。
次に、回収したペースト状の水洗カード2.4kgを収容する容器に、水を15kg、すなわち水洗カードの6.25倍量添加して水洗カードを水中に分散した。次に、常温の下、ホモミキサー(600rpm)を用いて、水洗カードが分散した水を15分間撹拌した。その後、水洗カードが分散した水を撹拌羽根で撹拌(回転数:300rpm)しながら、そこに3N水酸化ナトリウム溶液を添加して、そのpHを7.4に調整して中和蛋白溶液を得た。また、このpH調整を行う際に、中和蛋白溶液に水を更に添加することで、中和蛋白溶液のBrixを10.0%に調整した。
次に、Brix10.0%の中和蛋白溶液18.1kgに、実施例2で用いたのと同じ生醤油を水で10倍に希釈した液を9mL混合し、50℃で1時間撹拌して醤油添加蛋白溶液を得た。
次いで、Brixが10.0%の状態の醤油添加蛋白溶液を145℃の水蒸気に3秒間直接接触させて加熱して、被加熱蛋白溶液を得た。その後、被加熱蛋白溶液を15℃に冷却した。そして、冷却後の被加熱蛋白溶液を、スプレードライヤー(大川原化工機製、商品名「L−8型」)により噴霧乾燥して、粉末状の大豆蛋白1.3kgを得た(第3の工程)。なお、噴霧乾燥時のスプレードライヤーの入口温度は180℃であり、出口温度は80℃であった。
〔比較例2〕
回収した酸沈カードを水洗処理することなく中和し、中和蛋白溶液のBrixを12%に調整し、その中和蛋白溶液の直接蒸気加熱による加熱条件を140℃、3秒間に変更した以外は実施例1と同様にして粉末状の大豆蛋白6kgを得た。
(大豆蛋白の物性及び外観の評価)
実施例1〜8、比較例1、2で製造した粉末状の大豆蛋白、及び比較例3として市販のピックル液用大豆蛋白(不二製油製、商品名「ニューフジプロ#1200」)について、蛋白含量、水分、NSI、TCA可溶化率を測定した。また、それらの大豆蛋白の固形分10質量%溶液について、粘度及び波長660nmにおける濁度を測定した。さらに、それらの大豆蛋白の固形分20質量%の3%食塩水溶液を加熱、冷却して得られたゲルについて、破断応力、破断変形、ゼリー強度、L値、a値、b値、Z値をそれぞれ測定した。大豆蛋白の固形分10%溶液及びゲルについては、その外観(透明度)をも観察した。測定方法等は下記のとおりある。
(1)蛋白含量
大豆蛋白における蛋白含量は、大豆蛋白試料の全窒素分をケルテックを用いて定量し、大豆蛋白試料に対する百分率で表し、これに6.25を乗じて粗蛋白の含量とする方法で導出した。この方法は、JAS(社団法人日本農林規格協会)による植物性たん白の日本農林規格における植物たん白質含有率の測定法に準じたものである。
(2)水分
大豆蛋白における水分は、大豆蛋白試料を105℃の恒温槽中に4時間静置した後に、JAS(社団法人日本農林規格協会)による植物性たん白の日本農林規格における水分の測定法に準じて測定した。
(3)NSI
大豆蛋白におけるNSIは、大豆蛋白試料から40℃の水で抽出される窒素量を測定し、全窒素に対する百分率で示した。これは、日本油化学協会の基準油脂分析試験法に準じたものである。
(4)TCA可溶化率
大豆蛋白が1.0質量%になるように水に分散させ撹拌した溶液について、全蛋白に対する0.2Mのトリクロロ酢酸(TCA)に可溶の蛋白の割合をケルダール法により測定し、百分率で表した。
(5)粘度
大豆蛋白の固形分10%溶液(以下、「蛋白溶液」という。)を調製し、その溶液500mLを500mLトールビーカーに収容した。溶液の温度を20℃に調整後、B型粘度計(ローター:No.2、回転数:30rpm)で粘度を測定した。
(6)波長660nmにおける濁度
上記(5)のようにして調製した蛋白溶液に水酸化ナトリウム溶液を添加して、そのpHを7.4に調整した。得られた溶液の波長660nmにおける濁度を、分光光度計により測定した。
(7)ゲルの破断応力、破断変形、ゼリー強度
大豆蛋白の固形分20質量%の3質量%食塩水溶液を調製し、直径3cmの円筒状容器の中に長さ20cmまで充填した後、80℃で30分間加熱し、さらに20℃まで冷却して蛋白ゲルを得た。
蛋白ゲルの破断応力、破断変形及びゼリー強度を、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製、商品名「TA XTPlus」)により測定した。
(8)ゲルのL値、a値、b値、Z値
上記(7)のようにして得られた蛋白ゲルのL値、a値、b値、Z値を、色差計(日本電色工業社製、商品名「ND−300A」)を用いて測定した。
(9)外観
上記(5)のようにして調製した蛋白溶液、及び上記(7)のようにして得られた蛋白ゲルを目視にて観察し、その透明度について評価した。
大豆蛋白の物性及び外観の評価を表1、2に示す。
Figure 2010067533
Figure 2010067533
実施例1〜8の蛋白溶液の粘度は、比較例1〜3の蛋白溶液の粘度と比較して低くなった。このことから、本発明の大豆蛋白は、その溶液が低粘度であるため、ピックル液用に適したものであるといえる。
実施例1〜8の蛋白溶液の濁度は、比較例2の蛋白溶液の濁度と比較して低い値であった。また、実施例1〜8の蛋白溶液の外観は、比較例1、2の蛋白溶液の外観と比較して、より優れた透明感を有するものであった。
実施例1〜4、7、8の蛋白溶液は、実施例5、6の蛋白溶液よりも、濁度が低く、その外観の透明度も高かった。このことより、直接蒸気加熱の方が間接加熱よりも蛋白溶液の透明性を高めることがわかる。また、実施例2、3、4の蛋白溶液を互いに比較してみると、直接蒸気加熱で加熱処理を行ったものであっても、その加熱温度が高くなるにつれて、蛋白溶液の濁度が低下し、透明性が高くなることがわかる。
実施例1〜8の蛋白ゲルの破断応力、破断変形及びゼリー強度は、比較例3の蛋白ゲルと比較して、非常に高い値を示した。また、比較例3の蛋白ゲルは白濁したものであったが、直接蒸気加熱による加熱処理を行った実施例1〜4、7、8の蛋白ゲルは、透明度が高いものであった。
以上のことからも明らかなように、本発明の実施例の大豆蛋白は、その溶液が低粘度を示し、かつゲル化したものが、破断強度及びゼリー強度に優れたものである。
大豆蛋白の製造時にピロ亜硫酸ナトリウム及び生醤油を用いた実施例8及び比較例1の蛋白溶液の粘度を比較すると、醤油添加蛋白溶液のBrixが5.0%である実施例8の方が、Brixが10.0%である比較例1よりも非常に低いことが判明した。
また、実施例8と比較例2とを比較してみても、醤油添加蛋白溶液のBrixが5.0%である実施例8の方が、中和蛋白溶液のBrixが12%である比較例2よりも非常に低いことがわかった。
実施例1、2の比較より、大豆蛋白の製造時に還元剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを用いない場合、生醤油を用いた実施例2の方が、生醤油を用いなかった実施例1よりも、蛋白溶液の粘度が低くなることがわかった。また、大豆蛋白の製造時に還元剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを用いた実施例7、8を比較しても、生醤油を用いた実施例8の方が、生醤油を用いなかった実施例7よりも、蛋白溶液の粘度が低くなることがわかった。
また、実施例1、7の比較により、大豆蛋白の製造時に生醤油を用いない場合、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いなかった実施例1の方が、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いた実施例7よりも、蛋白溶液の濁度が低いことがわかった。また、実施例2、8の比較により、大豆蛋白の製造時に生醤油を用いた場合、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いなかった実施例2の方が、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いた実施例8よりも、蛋白溶液の濁度が低いことがわかった。
(1−ヘキサナール濃度の測定)
実施例2、3、4、6、8、比較例3の大豆蛋白、及び市販の大豆蛋白(不二製油製、商品名「ニューフジプロ#1200」;同、商品名「ニューフジプロ#1700」;同、商品名「ニューフジプロV」)について、大豆臭の原因である1−ヘキサナールの濃度を下記のようにして測定した。
まず、市販の大豆蛋白(不二製油製、商品名「ニューフジプロ#1200」)4gを46mLの超純水とホモジナイザーを用いて混合して蛋白液を得た(以下、蛋白液Aという)。次いで、水及びエタノールの1:1混合溶媒に1−ヘキサナール(和光純薬製、1級)を20mg/mL、4mg/mL、0.4mg/mLの濃度となるように溶解した1−ヘキサナール溶液を調製した。各1−ヘキサナール溶液10μLを、上記蛋白液A4gとそれぞれ混合し、検量線作成用の標準試料(終濃度で50ppm、10ppm、1ppm)を調製した。ヘッドスペースGC/MS(ヘッドスペースサンプラー:Agilent Technologies社製、バイアル容量:20mL、オーブン温度:60℃、ガスクロマトグラフ・検出器一式:HELETT PACKARD社製)によって、上記3種類の標準試料中の1−ヘキサナールに基づくピークを測定し、検量線を作成した。
そして、各実施例、比較例、市販の粉末状の大豆蛋白4gを46mLの超純水とホモジナイザーを用いて混合し、8%大豆蛋白水溶液を調製した。その水溶液のうち4gをヘッドスペースGC/MSに導入し、1−ヘキサナールに基づくピークを測定して、8%大豆蛋白水溶液中の1−ヘキサナール濃度を測定した。得られた1−ヘキサナール濃度、及び表1、表2に記載した大豆蛋白中の水分の値から、大豆蛋白水溶液中の1−ヘキサナール濃度を大豆蛋白固形分中の濃度として換算した値、すなわち、大豆蛋白中の1−ヘキサナール濃度を算出した。8%大豆蛋白水溶液中の1−ヘキサナール濃度、及び大豆蛋白中の1−ヘキサナール濃度の結果を表3に示す。
Figure 2010067533
この結果から、第2の工程における加熱を間接加熱よりも直接蒸気加熱にした方が、大豆蛋白の大豆臭が低減されることが判明した。また、本発明に係る大豆蛋白は、市販されている大豆蛋白や比較例3の大豆蛋白よりも大豆臭が抑えられることがわかった。
本出願は、2008年12月8日出願の日本特許出願(特願2008−312062)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の大豆蛋白をハムやソーセージの畜肉加工食品を始めとする各種加工食品の製造時に用いた場合、蛋白溶液が低粘度であることから、製造時のハンドリング性が良好である。また、ゲル強度が強いことから、本発明の大豆蛋白は各種加工食品に硬さや弾力性を付与することが期待される。特に、蛋白溶液が低粘度であることから、ハム製造のインジェクション工程において、蛋白が肉に浸透しやすく、インジェクション用途にも適しているといえる。

Claims (19)

  1. 脱脂豆乳の酸沈処理を経て得られたカードを水に分散させた水分散液を中和して中和蛋白溶液を得る第1の工程と、
    前記中和蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱して被加熱蛋白溶液を得る第2の工程と、
    前記被加熱蛋白溶液を乾燥して大豆蛋白を得る第3の工程と、
    を有する大豆蛋白の製造方法。
  2. 前記カードが、前記酸沈処理により得られた酸沈カードを更に水で洗浄して得られた水洗カードを含有する、請求項1に記載の大豆蛋白の製造方法。
  3. 前記第2の工程において前記中和蛋白溶液を110〜160℃の温度で0.5〜60秒間加熱する、請求項1又は2に記載の大豆蛋白の製造方法。
  4. 前記第2の工程において前記中和蛋白溶液を直接蒸気で加熱する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の大豆蛋白の製造方法。
  5. 前記中和蛋白溶液に生醤油を添加して醤油添加蛋白溶液を得る第4の工程を更に有し、前記第2の工程は、前記醤油添加蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱して前記被加熱蛋白溶液を得る工程である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の大豆蛋白の製造方法。
  6. pH7.4に調整した固形分10質量%の大豆蛋白の水溶液が、20℃で5〜100mPa・sの粘度とを有する大豆蛋白であって、固形分20質量%の3質量%食塩水溶液を80℃で30分間加熱した後に20℃まで冷却して得たゲルが、300〜1000gの破断応力と600〜2000g・cmのゼリー強度とを有する大豆蛋白。
  7. 前記固形分10質量%の大豆蛋白の水溶液が、波長660nmで0.05〜0.7の濁度を有する、請求項6に記載の大豆蛋白。
  8. 前記大豆蛋白中の1−ヘキサナールの濃度が8ppm以下である、請求項6又は7に記載の大豆蛋白。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の大豆蛋白の製造方法により得られた大豆蛋白を原料として用いた蛋白含有食品。
  10. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の大豆蛋白を原料として用いた蛋白含有食品。
  11. 前記蛋白含有食品が、畜肉加工食品、水産練り製品、プリン様デザート食品、ゼリー食品、燕の巣様食品、フカヒレ様食品、高齢者向け蛋白補給食品、蛋白質・エネルギー補給食品、嚥下機能低下者用とろみ調整食品、及び寒天利用食品からなる群より選ばれる1種である、請求項9又は10に記載の蛋白含有食品。
  12. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の大豆蛋白の製造方法により製造された大豆蛋白と水とを含有する混合物をゲル化することにより得られる蛋白ゲル。
  13. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の大豆蛋白と水とを含有する混合物をゲル化することにより得られる蛋白ゲル。
  14. 前記混合物が更に動物性蛋白を含有する、請求項12又は13に記載の蛋白ゲル。
  15. 前記混合物が更に塩化ナトリウムを含有する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の蛋白ゲル。
  16. 請求項12〜15のいずれか一項に記載の蛋白ゲルを原料として用いた蛋白ゲル含有食品。
  17. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の大豆蛋白の製造方法により製造された大豆蛋白を含有するピックル液。
  18. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の大豆蛋白を含有するピックル液。
  19. 請求項17又は18に記載のピックル液を原料として用いた畜肉加工食品。
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