JPWO2015104940A1 - セルロースエステルフィルム及びセルロースエステルフィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、環境の湿度変動に対し位相差変動が起こりにくい耐湿性の優れたセルロースエステルフィルムを提供することである。また、その製造方法を提供することである。本発明のセルロースエステルフィルムは、延伸されたセルロースエステルフィルムであって、延伸後のヘイズ値が、延伸前から0.1〜0.9倍の範囲内に調整されたことを特徴とする。

Description

本発明は、セルロースエステルフィルム及びセルロースエステルフィルムの製造方法に関する。より詳しくは、耐湿性の優れたセルロースエステルフィルム及びその製造方法に関する。
液晶表示装置は、液晶テレビやパソコンの液晶ディスプレイ等の用途で、需要が拡大している。液晶表示装置は、透明電極、液晶層、カラーフィルター等をガラス板で挟み込んだ液晶セルと、その両側に設けられた2枚の偏光板で一般的に構成されている。それぞれの偏光板は、通常偏光子が2枚の透明樹脂フィルム(保護フィルム)で挟持されて構成されている。
従来、液晶表示装置は表示画像の視野角依存性が大きいことが大きな欠点であったが、VAモード等の広視野角液晶モードが実用化されており、これによってテレビ等の高品位の画像が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。
VA(垂直配向:Vertical Alignment)モードでは、液晶セルは、非駆動状態においては、液晶セルの液晶分子が基板に対して垂直に配向しているため、光は偏光の変化を伴わずに液晶層を通過する。このため、液晶パネルの上下に互いに吸収軸が直交するように直線偏光板を配置することで、正面から見た場合にほぼ完全な黒表示を得ることができ、高いコントラスト比を得ることができる。
VAモードの液晶表示装置では、液晶セルの両側に2枚の偏光板を設け、それぞれ内側(液晶セル側)の樹脂フィルムを光学補償機能のあるフィルムとし、液晶セルから遠い側の外側の樹脂フィルムを保護フィルムとして用いることが一般的である。このような樹脂フィルムとしてセルロースエステルフィルムが従来知られている。
近年、液晶表示装置の用途拡大につれ、テレビ等の大サイズかつ高品位用途が拡大してきており、偏光板に対しても一段と高い品質が要求されるようになっている。なかでも、液晶表示装置の薄型化に伴い、偏光板の薄層化が求められるようになっている。
しかし、このためにセルロースエステルフィルムを薄くすると、保護フィルムとして機械的強度の低下や透湿性が高くなるという問題が発生する。保護フィルムの透湿が高くなると光学補償フィルムとしては環境の湿度変動に対し位相差値が大きく変動するという問題が発生する。
このような問題に対して、保護フィルムとして透湿性の低い樹脂を用いることが知られている。例えば特許文献1では、偏光板の保護フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる技術が提案されている。また、特許文献2では、位相差フィルムとして、ノルボルネン系樹脂を用いる技術が提案されている。
また、特許文献3では、偏光板の外側の樹脂フィルムをアクリル樹脂とし、偏光板の内側(液晶セル側)の樹脂フィルムをセルロース系樹脂フィルムにして、外部環境の水分を適度に吸収あるいは排出させ、水分に起因する不具合を抑制させる技術が開示されている。
しかし、このような技術を用いても、環境の湿度変動に対し位相差変動が起こり、その結果、厚さ方向のリターデーション値Rtの変動に起因する表示装置の光ムラ(輝度ムラ)のような不具合が発生し、環境の湿度変動や、水に接触した際の位相差値の変動の抑制としては十分なものではなかった。
特許第4962661号公報 特開平8−43812号公報 特開2012−181277号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、環境の湿度変動に対し位相差変動が起こりにくい耐湿性の優れたセルロースエステルフィルムを提供することである。また、その製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、セルロースエステルと添加剤の相溶性を検討する中で、通常の挙動とは異なり、延伸することによりヘイズ値が低下する場合のあることを見いだし、そのような挙動を示すセルロースエステルフィルムが、耐湿性の良いことを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.延伸されたセルロースエステルフィルムであって、延伸後のヘイズ値が、延伸前から0.1〜0.9倍の範囲内に調整されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
2.前記延伸後のヘイズ値が、延伸前から0.1〜0.5倍の範囲内に調整されたことを特徴とする第1項に記載のセルロースエステルフィルム。
3.前記延伸の延伸倍率が、1〜35%の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のセルロースエステルフィルム。
4.温度120〜220℃の範囲内で延伸されたことを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
5.ステロール系リターデーション上昇剤を含有していることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
6.フィルムを構成するセルロースエステルのアセチル基置換度が、2.70〜3.00の範囲内であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
7.前記ステロール系リターデーション上昇剤のフィルム中の含有量が、前記セルロースエステルに対して0.5〜3質量%の範囲内であることを特徴とする第5項又は第6項に記載のセルロースエステルフィルム。
8.前記ステロール系リターデーション上昇剤が、ヒドロキシ基を含む構造を有していることを特徴とする第5項から第7項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
9.前記ステロール系リターデーション上昇剤が、1又は2個の芳香族環を含む構造を有していることを特徴とする第5項から第7項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
10.前記ステロール系リターデーション上昇剤が、ヒドロキシ基と1又は2個の芳香族環とを含む構造を有していることを特徴とする第5項から第7項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
11.温度23℃・相対湿度55%の環境下、測定波長λ(nm)における、面内のリターデーション値と厚さ方向のリターデーション値を、それぞれ、Ro(λ)とRt(λ)と表したとき、Ro(450)/Ro(550)が1以上で、かつRt(450)/Rt(550)が1未満であることを特徴とする第1項から第10項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
12.温度23℃・相対湿度55%の環境下、測定波長λ(nm)における、面内のリターデーション値と厚さ方向のリターデーション値を、それぞれ、Ro(λ)とRt(λ)と表したとき、面内のリターデーション値Ro(550)が45〜60の範囲内で、かつ厚さ方向のリターデーションRt(550)が110〜135の範囲内であることを特徴とする第1項から第11項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
13.厚さが、20〜37μmの範囲内であることを特徴とする第1項から第12項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
14.ジオールとジカルボン酸の重縮合反応により合成された重縮合エステルを含有していることを特徴とする第1項から第13項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
15.第1項から第14項までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、セルロースエステルと添加剤を含有した溶液を溶液流延により成膜する工程を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
16.前記延伸を開始するときの残留溶媒量が2〜30質量%の範囲内で、かつ温度120〜220℃の範囲内の条件で延伸することを特徴とする第15項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
17.前記延伸が、幅方向に延伸倍率が3〜15%の範囲内で施されることを特徴とする第15項又は第16項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、環境の湿度変動に対し位相差変動が起こりにくい耐湿性の優れたセルロースエステルフィルムを提供することができる。また、その製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
特定条件で成膜すると延伸により、セルロースエステルと添加剤との相溶性が改善するためヘイズ値が低下すると推定される。このようなセルロースエステルフィルムでは、添加剤の配向の規則性が高く、セルロースエステルと添加剤との分子間の相互作用が強くなり、水の浸入を阻害するため、環境の湿度変動に対し位相差変動も抑制できるものと推定される。
延伸後ヘイズ値が低下するセルロースエステルフィルムの例 延伸前の添加剤を含有したセルロースエステルフィルムの断面模式図 延伸後の添加剤を含有したセルロースエステルフィルムの断面模式図 溶液流延成膜法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程(溶媒蒸発工程)の一例を模式的に示した図 偏光板の構成の一例を示す概略断面図
本発明のセルロースエステルフィルムは、延伸されたセルロースエステルフィルムであって、延伸後のヘイズ値が、延伸前から0.1〜0.9倍の範囲内に低下されたことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項17までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記延伸後のヘイズ値が、延伸前から0.1〜0.5倍の範囲内に低下されたことが好ましい。また、延伸倍率が、1〜35%の範囲内であることが、破断することなく添加剤とセルロースエステルの相溶性を上げる観点から好ましい。さらに、延伸は120〜220℃の温度範囲内で行われることが好ましい。この範囲内であれば、破断の懸念がなく所望の光学値を得ることができる。
また、前記セルロースエステルフィルムが、ステロール系リターデーション上昇剤を含有していることが、少量の添加量で効率の良い位相差上昇機能が付与でき、さらに耐湿性向上の効果が得られることから好ましい。
さらに、本発明においては、前記セルロースエステルのアセチル基置換度が、2.70〜3.00の範囲内であることが、フィルムの強度の観点から、好ましい。さらに、本発明においては、前記ステロール系リターデーション上昇剤のフィルム中の含有量が、前記セルロースエステルに対して0.5〜3質量%の範囲内であることが、ヘイズ値の絶対値を低減できることから、好ましい。
また、本発明においては、前記ステロール系リターデーション上昇剤が、ヒドロキシ基を含む構造を有していることが、フィルムとの相溶性が向上しヘイズを低減する効果を有することから好ましい。前記ステロール系リターデーション上昇剤が、1又は2個の芳香族環を含む構造を有していることが、添加量に対する位相差上昇の効率が優れていることから好ましい。さらに、前記ステロール系リターデーション上昇剤が、ヒドロキシ基と1又は2個の芳香族環とを含む構造を有していることが、フィルムとの相溶性によるヘイズ低減及び、位相差上昇の効率の両立の観点から好ましい。
また、温度23℃・相対湿度55%の環境下、測定波長λ(nm)における、面内のリターデーション値と厚さ方向のリターデーション値を、それぞれ、Ro(λ)とRt(λ)と表したとき、Ro(450)/Ro(550)が1以上で、かつRt(450)/Rt(550)が1未満であることが、フィルムを表示装置に組み込んだ時の表示装置の色味変動を改善できることから好ましい。さらに、温度23℃・相対湿度55%の環境下、測定波長λ(nm)における、面内のリターデーション値と厚さ方向のリターデーション値を、それぞれ、Ro(λ)とRt(λ)と表したとき、面内のリターデーション値Ro(550)が45〜60の範囲内で、かつ厚さ方向のリターデーションRt(550)が110〜135の範囲内であることが、表示装置のコントラスト向上の観点から好ましい。
さらに、厚さが、20〜37μmの範囲内であることが、フィルム及び装置の薄膜適性及び、耐湿性向上の観点から好ましい。また、ジオールとジカルボン酸の重縮合反応により合成された重縮合エステルを含有していることが好ましい。これによりヘイズが低く、フィルムの引き裂き強度が強くする効果が得られる。
本発明のセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造方法としては、セルロースエステルと添加剤を含有した溶液を溶液流延により成膜する工程を含む態様の製造方法であることが、フィルム平面性の観点から、好ましい。また、前記延伸を開始するときの残留溶媒量が2〜30質量%の範囲内で、かつ温度120〜220℃の範囲内の条件で延伸することが好ましい。さらに、前記延伸が、幅方向に延伸倍率が3〜15%の範囲内で施されることが、ヘイズを抑えつつ、好適な位相差を得られることから好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《セルロースエステルフィルムの概要》
本発明のセルロースエステルフィルムは、延伸されたセルロースエステルフィルムであって、延伸後のヘイズ値が、延伸前から0.1〜0.9倍の範囲内に調整されたことを特徴とする。
本発明は、セルロースエステルと添加剤を使って光学補償用フィルムを作製しようと考え延伸処理をしたところ、添加剤によっては延伸前に比べてヘイズ値が下がる現象が認められた。熱をかけて延伸するとヘイズが低いまま延伸することは可能だが、延伸前に比べてヘイズ値が低下するという挙動は、今までのセルロースエステルフィルムではみられなかった現象である。
具体的にはステロール系リターデーション上昇剤を添加剤として用い延伸を工夫してセルロースエステルフィルムを作製すると、セルロースエステルフィルムのヘイズ値が低下することが観察された。
セルロースエステルフィルムは水分を含有しやすく、耐湿性がよくない。すなわち環境の湿度変動に対し位相差変動が起こりやすい。一方ステロール系リターデーション上昇剤は、液晶化合物で耐湿性が非常に良い。この2つは相溶性(混ざり具合)が悪いが、延伸により相溶性が改善され、ヘイズ値を低下することができたものと考えられる。延伸により相溶性が大幅に改善されるということは、今までに知られていない知見である。このような方法で作製したセルロースエステルフィルムを詳細に調べたところ、ヘイズが低く、所望のリターデーション特性のセルロースエステルフィルムを得られるだけでなく、耐湿性もよいことを見いだした。
いいかえると、耐湿性がよいものの、相溶性があえて少し劣るもの(液晶性化合物であるステロールリターデーション上昇剤など)をセルロースエステルに混ぜて、延伸することで、相溶性を良くすることができ、作製したセルロースエステルフィルムの光学性能が、環境の湿度変化で変動しにくいフィルムとなることを見いだしたものである。
本発明に関し特に目視でも顕著に効果の発現が見られた実施例及び比較例があったため、実際のセルロースエステルフィルムの写真を用いて説明を行う。図1は延伸後ヘイズ値が低下するセルロースエステルフィルムの例の写真である。図1の左側に示される(A1)、(B1)、(C1)の写真は、未延伸のセルロースエステルフィルムであり、図1の右側に示される(A2)、(B2)、(C2)の写真は、温度190℃、幅方向に延伸倍率10%で延伸した後のセルロースエステルフィルムの写真である。(A2)、(B2)、(C2)のセルロースエステルフィルムは、後述する実施例に記載した、セルロースエステルフィルム番号16、7及び8にそれぞれ対応する。従来のセルロースエステルフィルムは特定のリターデーション上昇剤を加えると、比較例のセルロースエステルフィルム番号8の延伸前後の写真(図1(C1)及び(C2)参照。)から分かるように、延伸後ヘイズ値が上昇する。これに対し、本発明のセルロースエステルフィルム16及び7は、写真(図1(A1)、(A2)及び(B1)、(B2)参照。)で示されるように、延伸後、ヘイズ値が低下し、フィルムの透明度が増加していることが分かる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構について、図を用いて説明する。
図2A及び図2Bは、延伸前後の添加剤を含有したセルロースエステルフィルムの断面模式図である。セルロースエステルフィルム1aは、セルロースエステル2aと添加剤3aとしてステロール系リターデーション上昇剤を含有している。ステロール系上昇剤は構造上、分子レベルで棒状の形状をしている。図2Aで示されるように、延伸前のステロール系リターデーション上昇剤は、フィルム中に比較的ランダムに配向されている。相溶性は低いため比較的ヘイズ値は高い状態である。しかし、本発明の条件で延伸することにより、図2Bで示されるように、ステロール系リターデーション上昇剤は、とてもよくフィルムに配向する条件があり、その条件で延伸を行うと、ステロール分子とセルロースのポリマー鎖の相溶性が増加するためヘイズ値が低下すると推定される。
このような特性を持つセルロースエステルフィルムでは、添加剤の配向の規則性が高く、セルロースエステルとステロール系リターデーション上昇剤との分子間の相互作用が強くなり、水の浸入を阻害するため、環境の湿度変動に対し位相差変動も抑制できるものと推定される。
本発明においては、延伸して相溶性が改善されたセルロースエステルフィルムの、環境の湿度変動によるリターデーション変動を抑制できるパラメータとして、延伸前後のヘイズ値を規定しており、ヘイズ値を調整するための手段としては、特に制限されない。
本発明のセルロースエステルフィルムは、液晶表示装置に用いられる偏光板の保護フィルムとして好ましく用いられうる。保護フィルムA、偏光子及び保護フィルムBをこの順で有する偏光板において、保護フィルムAを、アクリル樹脂又はポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を主成分とするフィルムとし、保護フィルムBを位相差フィルムとし、本発明のセルロースエステルフィルムを使用することが好ましい。
ここで、本発明において2枚の保護フィルムA,Bのうち、保護フィルムAは、液晶セルから遠い側の外側の保護フィルムをさし、内側(液晶セル側)の保護フィルムを保護フィルムBという。
セルロースエステルフィルムの厚さは20〜37μmの範囲内であることが好ましい。
以下、本発明のセルロースエステルフィルムについて詳細に述べる。
《セルロースエステル》
本発明のセルロースエステルフィルムに用いられるセルロースエステルは、セルロースのヒドロキシ基を、脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸でエステル化して得られる化合物である。セルロースエステルは、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、セルロースエステルプロピオネート、セルロースエステルブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。
これらの中では、セルロースアセテートが、フィルム強度の観点から好ましい。さらに、アセチル基置換度が、2.70〜3.00の範囲内のセルロースアセテートであることが好ましく、さらに好ましくは、アセチル基置換度が2.89〜2.99の範囲内である。アセチル基置換度がこの範囲内にあると延伸後のフィルム強度の観点から好ましい。
アセチル基置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
本発明に用いられるセルロースエステルの重量平均分子量の制限はないが、薄膜化可能である観点等から、重量平均分子量Mwが100000〜500000の範囲内であることが好ましい。
セルロースエステルの分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1.5〜5.5であることが好ましく、2.0〜4.0であることがより好ましく、2.2〜3.5の範囲内であることがさらに好ましい。
セルロースエステルの重量平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
測定条件は以下のとおりである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜1000000の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
セルロースエステルは、公知の方法で合成することができる。具体的には、セルロースと、少なくとも酢酸又はその無水物を含む炭素数3以上の有機酸又はその無水物とを触媒(硫酸など)の存在下で、エステル化反応させてセルロースのトリエステル体を合成する。次いで、セルロースのトリエステル体を加水分解して、所望のアシル基置換度を有するセルロースエステルを合成する。得られたセルロースエステルをろ過、沈殿、水洗、脱水及び乾燥させて、セルロースエステルを得ることができる。
原料となるセルロースの例には、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)及びケナフなどが含まれる。木材パルプは、針葉樹由来のものが好ましい。成膜したフィルムの剥離性を高めるためには、綿花リンター由来のセルロースが好ましい。
《延伸》
本発明のセルロースエステルフィルムは、延伸されたセルロースエステルフィルムであって、延伸後のヘイズ値が、延伸前から0.1〜0.9倍の範囲内に低下されたことを特徴とする。
延伸することで、セルロースエステルフィルム内の添加剤分子の配向を制御することができる。本発明では特定条件での延伸により添加剤とセルロースエステルの配向の規則性が高くなり、リターデーション値を制御できるだけでなく、相溶性が向上し、耐湿性が向上するものと考えられる。
延伸は120〜220℃の温度範囲内で行われることが好ましい。より好ましくは180〜200℃の温度範囲内である。120℃以上の温度の場合、延伸時に応力がかかり、破断の頻度が増加してしまうことがなく好ましい。また、220℃以下で延伸するとフィルムに応力が十分にかかり、所望の光学値を得られやすいため、好ましい。
延伸倍率は、1〜35%の範囲内であることが好ましい。延伸倍率は、3〜15%の範囲内であることがより好ましい。延伸倍率が1%以上の場合、延伸による添加剤とセルロースエステルの配向が十分となり、相耐湿性の向上が大きい。また、延伸倍率が35%以下であれば破断の頻度が減るため好ましい。
ヘイズを抑えつつ好適な位相差を得る観点からは、幅方向に延伸倍率が3〜15%の範囲内で延伸することが好ましい。
なお、本発明において延伸倍率Rとは、延伸開始位置における相対する一対の把持子の間隔Wに対する、当該一対の把持子が延伸終了位置へ移動した時点でのこれらの間隔Wの比の値から1を引いて%表示したものである(次式参照。)。
R(%)=((W/W)−1)×100
延伸倍率0%が、延伸も収縮もさせないことを意味する。
また、延伸を開始するときの残留溶媒量が、セルロースエステルフィルムの固形分量に対して2〜30質量%の範囲内で延伸することが好ましい。好ましくは、残留溶媒量が5〜10質量%の範囲内である。残留溶媒量が2質量%以上であれば、フィルムの平面性が向上するため、好ましい。また、残留溶媒量が30質量%以下であれば、成膜時の搬送適性が向上するため好ましい。
《リターデーション上昇剤》
リターデーション上昇剤は、セルロースエステルフィルムに含有させたときフィルムの位相差値を上昇させる機能を有する。本発明においては、リターデーション上昇剤としてステロール系リターデーション上昇剤がセルロースエステルフィルム中に含有されていることが好ましい。
《ステロール系リターデーション上昇剤》
本発明のセルロースエステルフィルムは、ステロール系リターデーション上昇剤を含有していることが、リターデーションを上昇させるだけでなく、延伸後、ヘイズ値を低下させることから好ましい。
ステロール系リターデーション上昇剤は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が好ましい。
Figure 2015104940
式中、Rは、L−Rを表し、Lは、単結合、−O−、−CO−、−OCO−、−COO−及び−OCOO−から選択される2価の連結基を表す。Lは、単結合又は−OCO−を表すことが好ましく、より好ましくは−OCO−である。
は、水素原子、ヒドロキシ基、(C1−C10)アルキル基、(C6−C20)アリール基、(C2−C10)アルケニル基、N、O、Sから選択されるヘテロ原子が含まれている(C1−C10)ヘテロアルキル基、(C6−C20)ヘテロアリール基、(C1−C10)アルコキシ基、(C1−C10)ヘテロアルコキシ基、から選択される置換基を表し、これらの基はさらに当該置換基で置換されていてもよい。この中では、末端のRは、ヒドロキシ基、(C6−C12)アリール基、(C2−C5)アルケニル基、から選択されることが好ましい。より好ましくはヒドロキシ基、(C6−C12)アリール基、(C1−C10)アルキル基である。
上記Rで表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基は、ヒドロキシ基、(C1−C10)アルキル基、(C6−C20)アリール基、(C1−C10)アルコキシ基から選択される一つ以上の基が置換することができる。この中では、ヒドロキシ基、(C6−C12)アリール基、(C1−C5)アルコキシ基が置換されることが好ましい。
とRは、それぞれ独立して水素原子、ヒドロキシ基、(C1−C10)アルキル基、(C2−C10)アルケニル基、から選択される置換基が好ましい。これらの基は置換基でさらに置換されていてもよい。置換基としては、アルキルオキシカルボニル基、アルコキシ基等を挙げることができる。これらの中で、RとRは、水素原子又は(C1−C5)アルキル基が好ましい。
Zはカルボニル基又はCR′R″から選択される。R′は水素又は(C1−C10)アルキルを表す。R″は、水素原子、ヒドロキシ基、(C1−C10)アルキル基、(C2−C10)アルケニル基、(C1−C10)アルキルカルボニル基から選択される。R′は水素原子を表し、R″は、(C1−C10)アルキルを表すことが好ましい。
前記R″のアルキル基、アルケニル基、アルキルカルボニル基は、(C1−C10)アルキル基、(C2−C10)アルケニル基、カルボキシ基(COOH)から選択されるいずれか一つ以上が置換されてもよい。上記R′とR″が同時に水素原子である場合は除外される。点線は、選択的な二重結合である。
また、前記ステロール系リターデーション上昇剤が、ヒドロキシ基を含む構造を有していることが、フィルムとの相溶性によるヘイズ低減の観点から好ましい。
また、ステロール系リターデーション上昇剤が、1又は2個の芳香族環を含む構造を有していることが添加量に対する位相差上昇の効率の観点から好ましい。
さらに、ステロール系リターデーション上昇剤が、ヒドロキシ基と1又は2個の芳香族環とを含む構造を有していることが、フィルムとの相溶性によるヘイズ低減及び、添加量に対する位相差上昇の効率の両立の観点から好ましい。
ここで、芳香族環とは、少なくとも一つの環状骨格を備える化学構造(環状構造)であって、その環状骨格の少なくとも一つが、ヒュッケル則を満たし、かつ環状に非局在化する電子を有するものをいう。
一般式(1)で表される構造を有する化合物の具体例を以下に示す。なお、S−1〜S−14は基本骨格と部分構造にわけて記載した。
Figure 2015104940
Figure 2015104940
Figure 2015104940
セルロースエステルフィルム中のステロール系リターデーション上昇剤の含有量は、セルロースエステルに対して0.5〜3質量%の範囲内であることが好ましい。セルロースエステル添加方法は特に制限されない。セルロースエステルに粉体で添加してもよく、溶媒に溶解した後、セルロースエステルに添加してセルロースエステルフィルムを形成しても良い。
ステロール系リターデーション上昇剤だけでなく、リターデーション上昇剤として他の公知のリターデーション上昇剤を併用して用いることもできる。
《可塑剤》
セルロースエステルフィルムは、フィルム製造時の組成物の流動性や、フィルムの柔軟性や加工性を向上するために可塑剤を含有していていもよい。可塑剤の例には、糖エステル系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、アクリル系化合物、多価カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤を含む)、グリコレート系可塑剤、エステル系可塑剤(クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤等を含む)、スチレン系化合物等が含まれる。
可塑剤の中でも、糖エステル系可塑剤(糖エステル化合物)、重縮合エステル系可塑剤、及びアクリル系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤を含むことが、透湿性の効果的な制御及びセルロースエステルとの相溶性を高度に両立できることから好ましい。これらは、単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
当該可塑剤は、分子量が5000以下、さらには3000以下であることが、耐湿熱性の改善とセルロースエステルとの相溶性を両立する観点から好ましい。当該分子量が3000以下である化合物が重合体である場合は、重量平均分子量(Mw)が3000以下であることが好ましい。好ましい分子量(Mw)の範囲は100〜2500の範囲内であり、さらに好ましくは300〜2000の範囲内である。
(糖エステル系可塑剤)
糖エステル系可塑剤(糖エステル化合物)は、フラノース構造又はピラノース構造を1〜12個有する化合物であって、該化合物中のヒドロキシ基の全部又は一部がエステル化された化合物をいう。糖エステル系可塑剤は加水分解防止を目的として添加されうる。
本発明に係る糖エステル化合物の合成原料の糖の例としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロースなどが挙げられる。
ピラノース構造又はフラノース構造中のOH基の全て又は一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環に1〜5個のアルキル基若しくはアルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
そのような糖エステルの好ましい例には、下記一般式(FA)で表されるスクロースエステルが含まれる。
Figure 2015104940
一般式(FA)のR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は置換若しくは無置換のアリールカルボニル基を表す。R〜Rは、互いに同じであっても、異なってもよい。
置換又は無置換のアルキルカルボニル基は、炭素原子数2以上の置換又は無置換のアルキルカルボニル基であることが好ましい。置換又は無置換のアルキルカルボニル基の例には、メチルカルボニル基(アセチル基)が含まれる。アルキル基が有する置換基の例には、フェニル基等の芳香族炭化水素環基が含まれる。
置換又は無置換のアリールカルボニル基は、炭素原子数7以上の置換又は無置換のアリールカルボニル基であることが好ましい。アリールカルボニル基の例には、フェニルカルボニル基が含まれる。芳香族炭化水素環基が有する置換基の例には、メチル基等のアルキル基や、メトキシ基等のアルコキシル基等が含まれる。
上記一般式(FA)で表される化合物は、平均置換度が好ましくは3.0〜8.0、より好ましくは4.0〜7.5であり、さらに好ましくは4.5〜7.0の範囲内の値を取ることによって、透湿性の制御とセルロースエステルとの相溶性を高度に両立することができる。
本発明において、一般式(FA)で表される化合物の置換度とは、一般式(FA)に含まれる8つのヒドロキシ基のうち、水素以外の置換基で置換されている数を表し、すなわち、一般式(FA)のR〜Rのうち、水素以外の基を含む数を表す。したがって、R〜Rが全て水素以外の置換基により置換された場合に、置換度は最大値の8.0となり、R〜Rが全て水素原子である場合には、0.0となる。
一般式(FA)で表される構造を有する化合物は、ヒドロキシ基の数、OR基の数が固定された単一種の化合物を合成することは困難であり、式中のヒドロキシ基の数、OR基の異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られているため、本発明における一般式(FA)の置換度としては、平均置換度を用いることが適当であり、常法により高速液体クロマトグラフィーによって置換度分布を示すチャートの面積比から平均置換度を測定することができる。
一般式(FA)において、R〜Rは、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、あるいは、置換又は無置換のアリールカルボニル基を表し、R〜Rは、同じであっても、異なっていてもよい(以下、R〜Rをアシル基ともいう)。R〜Rとしては、具体的には、上記で例示した糖エステル化合物の合成時に用いられるモノカルボン酸由来のアシル基が挙げられる。
以下に、本発明に係る糖エステル化合物の具体例を挙げるが、R〜Rのうちいずれかを同じ置換基Rとした場合であって、本発明はこれに限定されるものではない。また、下記実施例において、ポリエステル化合物を下記記号にて規定する。なお、本発明において、R〜Rはそれぞれ異なる基である糖エステル化合物を使用することができる。
Figure 2015104940
Figure 2015104940
Figure 2015104940
本発明に係る糖エステル化合物は、前記糖に、アシル化剤(エステル化剤ともいう、例えば、アセチルクロライド等の酸ハロゲン化物、無水酢酸等の酸無水物)を反応させることによって製造することが可能であり、置換度の分布は、アシル化剤の量、添加タイミング、エステル化反応時間の調節によってなされるが、置換度違いの糖エステル化合物の混合、あるいは純粋に単離した置換度違いの化合物を混合することにより、目的の平均置換度、置換度4以下の成分を調整することができる。
その他の糖エステルの例には、特開昭62−42996号公報及び特開平10−237084号公報に記載の化合物が含まれる。
(重縮合エステル系可塑剤)
本発明に係るフィルムAにおいては、可塑剤の一つとして、糖エステル以外のエステルを用いることが好ましい。
本発明に適用可能な糖エステル以外のエステルとしては、特に制限はないが、下記一般式(2)で表される構造を有する重縮合エステルを用いることが好ましい。
当該重縮合エステルはその可塑的な効果から、本発明に係るセルロースエステルフィルムにおいては、セルロースエステルに対して1〜20質量%の範囲で含有することが好ましく、2〜15質量%の範囲で含有することがより好ましい。
一般式(2)
−(G−A)−G−B
上記一般式(2)において、B及びBは、それぞれ独立に脂肪族又は芳香族モノカルボン酸残基、又はヒドロキシ基を表す。Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基を表す。Aは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。
本発明において、重縮合エステルは、ジオールとジカルボン酸との重縮合反応により合成された重縮合エステルであることが好ましい。Aは重縮合エステル中のカルボン酸残基を表し、Gはアルコール残基を表す。
重縮合エステルを構成するジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸であり、好ましくは芳香族ジカルボン酸である。ジカルボン酸は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。特に芳香族、脂肪族を混合させることが好ましい。
重縮合エステルを構成するジオールは、芳香族ジオール、脂肪族ジオール又は脂環式ジオールであり、好ましくは脂肪族ジオールであり、より好ましくは炭素数1〜4のジオールである。ジオールは、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
なかでも、少なくとも芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、炭素数1〜8のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことが好ましく、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とを含むジカルボン酸と、炭素数1〜8のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことがより好ましい。
重縮合エステルの分子の両末端は、封止されていても、封止されていなくてもよい。
一般式(2)のAを構成するアルキレンジカルボン酸の具体例としては、1,2−エタンジカルボン酸(コハク酸)、1,3−プロパンジカルボン酸(グルタル酸)、1,4−ブタンジカルボン酸(アジピン酸)、1,5−ペンタンジカルボン酸(ピメリン酸)、1,8−オクタンジカルボン酸(セバシン酸)などから誘導される2価の基が含まれる。Aを構成するアルケニレンジカルボン酸の具体例としては、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。Aを構成するアリールジカルボン酸の具体例としては、1,2−ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
Aは、1種類であっても、2種類以上が組み合わされてもよい。中でも、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸と炭素原子数8〜12のアリールジカルボン酸との組み合わせが好ましい。
一般式(2)中のGは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基、又は炭素原子数4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。
における炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。
における炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
は、1種類であっても、2種類以上が組み合わされてもよい。中でも、Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基が好ましく、2〜5がさらに好ましく、2〜4が最も好ましい。
一般式(2)におけるB及びBは、各々芳香環含有モノカルボン酸又は脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基、若しくはヒドロキシ基である。
芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基における芳香環含有モノカルボン酸は、分子内に芳香環を含有するカルボン酸であり、芳香環がカルボキシ基と直接結合したものだけでなく、芳香環がアルキレン基などを介してカルボキシ基と結合したものも含む。芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも安息香酸、パラトルイル酸が好ましい。
脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも、アルキル部分の炭素原子数が1〜3であるアルキルモノカルボン酸から誘導される1価の基が好ましく、アセチル基(酢酸から誘導される1価の基)がより好ましい。
本発明に係る重縮合エステルの重量平均分子量は、280〜2500の範囲であることが好ましく、300〜2000の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量は前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。分子量が小さすぎるとフィルムからブリードアウトが生じやすく、また、分子量が大きいと、フィルムとの相溶性が悪化し、ヘイズ値の高いフィルムとなる。
以下、一般式(2)で表される構造を有する重縮合エステルの具体例を示すが、これに限定されるものではない。
Figure 2015104940
Figure 2015104940
Figure 2015104940
以下、上記説明した重縮合エステルの具体的な合成例について記載する。
〈重縮合エステルP1〉
エチレングリコール180g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP1を得た。酸価0.20、数平均分子量450であった。
〈重縮合エステルP2〉
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP2を得た。酸価0.10、数平均分子量450であった。
〈重縮合エステルP3〉
1,4−ブタンジオール330g、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,4−ブタンジオールを減圧留去することにより、重縮合エステルP3を得た。酸価0.50、数平均分子量2000であった。
〈重縮合エステルP4〉
1,2−プロピレングリコール251g、テレフタル酸354g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP4を得た。酸価0.10、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP5〉
1,2−プロピレングリコール251g、テレフタル酸354g、p−トロイル酸680g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP5を得た。酸価0.30、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP6〉
180gの1,2−プロピレングリコール、292gのアジピン酸、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP6を得た。酸価0.10、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP7〉
180gの1,2−プロピレングリコール、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP7を得た。酸価0.10、数平均分子量320であった。
〈重縮合エステルP8〉
エチレングリコール251g、無水フタル酸244g、コハク酸120g、酢酸150g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP8を得た。酸価0.50、数平均分子量1200であった。
重縮合エステルの粘度は、分子構造や分子量にもよるが、アジピン酸系可塑剤の場合、セルロースエステルとの相溶性が高く、かつ可塑性を付与する効果が高いこと等から、200〜5000mPa・s(25℃)の範囲であることが好ましい。重縮合エステル系可塑剤は、一種類であっても、二種類以上を併用してもよい。
(多価アルコールエステル系可塑剤)
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールと、モノカルボン酸とのエステル化合物(アルコールエステル)であり、好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。多価アルコールエステル系化合物は、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤の具体例には、トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパン安息香酸エステル、ペンタエリスリトールテトラアセテート、特開2008−88292号公報に記載の一般式(I)で表されるエステル化合物(A)等が含まれる。
(多価カルボン酸エステル系可塑剤)
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、2価以上、好ましくは2〜20価の多価カルボン酸と、アルコール化合物とのエステル化合物である。多価カルボン酸は、2〜20価の脂肪族多価カルボン酸、3〜20価の芳香族多価カルボン酸又は3〜20価の脂環式多価カルボン酸であることが好ましい。
多価カルボン酸の例には、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸;酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸等が含まれ、フィルムからの揮発を抑制するためには、オキシ多価カルボン酸が好ましい。
アルコール化合物の例には、直鎖若しくは側鎖を有する脂肪族飽和アルコール化合物、直鎖若しくは側鎖を有する脂肪族不飽和アルコール化合物、脂環式アルコール化合物又は芳香族アルコール化合物等が含まれる。脂肪族飽和アルコール化合物又は脂肪族不飽和アルコール化合物の炭素数は、好ましくは1〜32であり、より好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜10である。脂環式アルコール化合物の例には、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等が含まれる。芳香族アルコール化合物の例には、フェノール、パラクレゾール、ジメチルフェノール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等が含まれる。アルコール化合物は、一種類でもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、特に制限はないが、300〜1000の範囲内であることが好ましく、350〜750の範囲内であることがより好ましい。多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、ブリードアウトを抑制する観点では、大きい方が好ましい。透湿性やセルロースエステルとの相溶性の観点では、小さい方が好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の例には、特開2008−88292号公報に記載の一般式(II)で表されるエステル化合物(B)等が含まれる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤であってもよい。フタル酸エステル系可塑剤の例には、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が含まれる。
(グリコレート系可塑剤)
グリコレート系可塑剤の例には、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が含まれる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類の例には、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート等が含まれる。
(エステル系可塑剤)
エステル系可塑剤には、脂肪酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤等が含まれる。
脂肪酸エステル系可塑剤の例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が含まれる。クエン酸エステル系可塑剤の例には、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が含まれる。リン酸エステル系可塑剤の例には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が含まれる。トリメリット酸系可塑剤の例には、トリメリット酸オクチル、トリメリット酸n−オクチル、トリメリット酸イソデシル、トリメリット酸イソノニル等が含まれる。
上記可塑剤の含有量は、特に制限されないが、保護フィルムB(セルロースエステルフィルム)に含まれるセルロースエステル100質量%に対して、0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、5〜20質量%の範囲内であることがより好ましい。このような量であれば、セルロースエステルフィルムがブリードアウトを生じにくい。
《その他の添加剤》
また、本発明のセルロースエステルフィルムは、必要であれば、他の添加剤をさらに含みうる。このような他の添加剤としては、特に制限されないが、例えば、水素結合性化合物、活性剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、マット剤、アクリル粒子、水素結合性溶媒、イオン性界面活性剤などが挙げられる。
上記水素結合性化合物は、湿度の変化に対するリターデーション値Rtの変動を低減できる。ここで、水素結合性化合物としては、一分子中に少なくとも複数のヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシ基、から選ばれる官能基を有することが好ましく、一分子内に複数の異なる官能基を有することがより好ましく、一分子内にヒドロキシ基とカルボキシ基とを有することが特に好ましい。
当該水素結合性化合物は、母核として、1〜2個の芳香族環を含有することが好ましく、一分子中に含有する前記官能基の数を、化合物の分子量で割った値が、0.01以上であることが好ましい。
上記効果は、前記セルロースエステルと水分子とが相互作用(水素結合)する部位に上記水素結合性化合物が結合(水素結合)し、水分子の脱着による電荷分布の変化を抑制するように作用するためと推定している。
具体的な化合物例としては、特開2012−82235号公報に記載の例示化合物E−104が挙げられる。
水素結合性化合物は、セルロースエステル100質量部に対して1〜30質量部の範囲で添加することができる。
本発明に係るセルロースエステルフィルムもまた、紫外線吸収機能を付与することを目的として、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、特に限定されず、セルロースエステルフィルムに含まれうるものとして上述したものが同様に用いられうる。
セルロースエステルフィルムにおける紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、一般には、セルロースエステル100質量%に対して、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲で添加される。
マット剤は、フィルムの滑り性を付与する微粒子であり、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物又は有機化合物どちらでもよい。これらのマット剤は、単独でも2種以上併用しても使用できる。粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。これらの中でも、前記アクリル共重合体や相溶させる樹脂として用いるセルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。
二酸化ケイ素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。
粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。粒子の大きさが小さすぎると滑り性が改善されない場合があるので、80nmから180nmの範囲であることが特に好ましい。なお、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
マット剤は、樹脂(セルロースエステル)に対して、0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲で添加されることが好ましい。
本発明に係る保護フィルムBは、例えば、国際公開第2010/001668号パンフレットに記載のアクリル粒子を、透明性を維持できる範囲内の量で含有してもよい。該アクリル粒子は、フィルムの脆性を改善する作用がある。
《フィルムの物性》
以下、本発明における位相差フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの物性等についての特徴について説明する。
(透明性)
セルロースエステルフィルムの透明性を判断する指標としては、ヘイズ値(濁度)を用いる。特に屋外で用いられる液晶表示装置においては、明るい場所でも十分な輝度や高いコントラストが得られることが求められるため、ヘイズ値は0.6%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがさらに好ましく、さらに好ましくは0.3以下、最も好ましくは0.25以下である。
また、本発明に係る位相差フィルムとしてのセルロースエステルフィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。
ヘイズ値及び透過率はヘイズメーターを用いて測定することができる。
上記のような物性を満たすフィルムは、大型の液晶表示装置や屋外用途の液晶表示装置用の偏光板保護フィルムとしても好ましく用いることができる。
(リターデーション)
位相差フィルムとしてのセルロースエステルフィルムにおけるリターデーション値について特に制限はないが、温度23℃・相対湿度55%の環境下、測定波長λ(nm)における、面内のリターデーション値と厚さ方向のリターデーション値を、それぞれ、Ro(λ)とRt(λ)と表したとき、面内のリターデーション値Ro(550)が45〜60の範囲内で、かつ厚さ方向のリターデーションRt(550)が110〜135の範囲内であることが好ましい。
面内のリターデーション値Roと厚さ方向のリターデーションRtは下記式(i)及び(ii)で定義される。
面内のリターデーション値Ro(550)が45〜60の範囲内で、かつ厚さ方向のリターデーションRt(550)が110〜135の範囲内であることがVA型表示装置に搭載時のコントラスト・視野角向上の観点から好ましい。
式(i):Ro=(n−n)×d(nm)
式(ii):Rt={(n+n)/2−n}×d(nm)
式(i)及び(ii)において、nは、フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nは、フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nは、フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは、フィルムの厚さ(nm)を表す。測定は、23℃・55%RHの環境下で行うものとする。
また、温度23℃・相対湿度55%の環境下、測定波長λ(nm)における、面内のリターデーション値と厚さ方向のリターデーション値を、それぞれ、Ro(λ)とRt(λ)と表したとき、Ro(450)/Ro(550)が1以上で、かつRt(450)/Rt(550)が1未満であることが表示装置に組み込んだ時の表示装置の色味変動改善の観点から好ましい。
《セルロースエステルフィルムの製造方法》
次に、セルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。本発明はこれに限定されるものではない。
セルロースエステルフィルムの製造方法としては、通常のインフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から成膜方法は、溶液流延成膜法と溶融流延成膜法が好ましく、特にセルロースエステルと添加剤を含有した溶液を溶液流延により成膜する工程を含む溶液流延成膜法であることが、均一な表面を得るためにより好ましい。
《溶液流延成膜法》
溶液流延法により成膜する場合、セルロースエステルフィルムの製造方法は、セルロースエステル、及び所望の添加剤を溶媒に溶解させてドープを調製する工程(溶解工程;ドープ調製工程)、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程(流延工程)、流延したドープをウェブとして乾燥する工程(溶媒蒸発工程)、金属支持体から剥離する工程(剥離工程)、乾燥、延伸、幅保持する工程(延伸・幅保持・乾燥工程)、仕上がったフィルムを巻き取る工程(巻き取り工程)を含むことが好ましい。
図3は、本発明に好ましい溶液流延成膜法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程(溶媒蒸発工程)の一例を模式的に示した図である。
仕込釜41より濾過器44で大きな凝集物を除去し、ストック釜42へ送液する。その後、ストック釜42より主ドープ溶解釜1へ各種添加液を添加する。
その後主ドープは主濾過器3にて濾過され、これに添加剤添加液が16よりインライン添加される。多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材とは、フィルムを細かく粉砕した物で、フィルムを成膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトしたフィルム原反が使用される。
また、ドープ調製に用いられる樹脂の原料としては、あらかじめセルロースエステル、及び所望の添加剤などをペレット化したものも、好ましく用いることができる。
以下、各工程について説明する。
1)溶解工程(ドープ調製工程)
本工程は、セルロースエステルに対する良溶媒を主とする溶媒に、溶解釜中で該セルロースエステル、及び所望の添加剤を撹拌しながら溶解しドープを形成する工程である。
ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは15〜22質量%である。
ドープで用いられる溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶媒と貧溶媒を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶媒が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。
良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶媒、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶媒と定義している。そのため、セルロースエステルの平均置換度によって良溶媒、貧溶媒が変わる。
本発明に用いられる良溶媒は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
また、セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、フィルム成膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
回収溶媒中に、セルロースエステルに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する際の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。具体的には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載のような冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載されている高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができる。中でも、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましく、加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
また、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶媒を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶媒が沸騰しないように調整される。
又は冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
次に、このセルロースエステル溶液(溶解中又は溶解後のドープ)を濾紙等の適当な濾材を用いて濾過することが好ましい。
濾材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.007mmの濾材がさらに好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にフィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、さらに好ましくは50個/m以下であり、さらに好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶媒の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
2)流延工程
続いて、ドープを金属支持体上に流延(キャスト)する。すなわち、本工程は、ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト31、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、厚さを均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっていることが好ましい。成膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
キャストの幅は生産性の観点から1.4m以上が好ましい。より好ましくは1.4〜4mである。4mを超える場合には、製造工程で縞が入ったり、その後の搬送工程での安定性が低くなったりするおそれがある。さらに好ましくは、搬送性、生産性の点で1.6〜2.5mである。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶媒の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度は0〜55℃であり、25〜50℃がさらに好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
3)溶媒蒸発工程
本工程は、ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が、乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、ステンレススティールベルト成膜の時には30〜120秒以内、ドラム成膜の時には5〜40秒で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
4)剥離工程
次いで、ウェブを金属支持体から剥離する。すなわち、本工程は金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置における温度は−50〜40℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、ステンレススティールベルト成膜の時には15〜30℃の範囲内とするのが最も好ましく、ドラム成膜の時には−30〜10℃が好ましい。
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等によって適宜調節される。特に、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量を15〜40質量%に制御することが好ましく、より好ましくは20〜35質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)=((M−N)/N)×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の重量で、NはMを115℃で1時間加熱した後の重量である。
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、300N/m以下とすることが好ましい。より好ましくは、196〜245N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下、好ましくは100〜190N/mの張力で剥離することが好ましい。
5)乾燥・延伸・幅保持工程
(乾燥)
セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶媒量を2〜30質量%以下にすることが好ましい。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。例えば、剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したローラーに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ねやすい。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥はおおむね40〜250℃の範囲内で行われる。特に40〜200℃の範囲内で乾燥させることが好ましい。乾燥温度は、段階的に高くしてゆき、100〜150℃程度まで加熱することが好ましく、5分〜30分間、さらに好ましくは6分〜12分間加熱することが好ましい。
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
(延伸・幅保持)
続いて、金属支持体よりウェブを少なくとも一方向に延伸処理する。延伸処理することでフィルム内の分子の配向を制御することができる。本発明において目標とするリターデーション値Ro、Rtを得るには、セルロースエステルフィルムが本発明の保護フィルムBの構成をとり、リターデーション上昇剤を含む場合であっても、さらに搬送張力の制御、延伸操作により屈折率制御を行うことにより屈折率制御と耐湿性改善を行うことができる。例えば、長手方向の張力を低く又は高くすることでリターデーション値を変動させることが可能となる。
具体的な延伸方法としては、フィルムの長手方向(成膜方向;流延方向;MD方向)及びフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向(TD方向)に対して、逐次又は同時に2軸延伸若しくは一軸延伸することができる。好ましくは、流延方向(MD方向)、幅手方向(TD方向)に二軸延伸を実施した、二軸延伸フィルムであるが、本発明に係るセルロースエステルフィルムは一軸延伸フィルムであってもよいし、未延伸フィルムであってもよい。なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である:
・流延方向に延伸→幅手方向に延伸→流延方向に延伸→流延方向に延伸
・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→流延方向に延伸→流延方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、合わせて1〜35%の延伸倍率であることが好ましいが、それぞれ最終的には流延方向(MD方向)に0.01〜2.0%、幅手方向(TD方向)に1〜35%の範囲とすることが好ましい。
流延方向に0.1〜1.0%、幅手方向に3〜15%の範囲が好ましい。特に幅方向に延伸倍率が3〜15%の範囲内で施されることが好ましい。
このとき、延伸を開始するときの残留溶媒量は、セルロースエステルフィルムの固形分に対して2〜30質量%の範囲で、かつ温度120〜220℃の範囲内の条件で延伸することが、ヘイズ値の低下及び所望の光学値達成のためには好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれらの方法は、組み合わせて用いてもよい。中でも、ウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸を行うことが特に好ましい。
また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
成膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明に係るセルロースエステルフィルムの遅相軸又は進相軸がフィルム面内に存在し、フィルム全幅、全長において、成膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下、さらに好ましくは−0.2°以上+0.2°以下であることがより好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制又は防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
6)巻き取り工程
最後に、得られたウェブ(仕上がったフィルム)を巻取ることにより、セルロースエステルフィルムが得られる。より具体的には、ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%の範囲で巻き取ることが好ましい。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きや擦り傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は、通常はフィルムが変形しており、製品として使用できないので切除される。熱による材料の劣化が起こっていない場合は、回収後に再利用される。
セルロースエステルフィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜10000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は、液晶表示装置の大型化や生産の効率化の要求に応えるべく、1.4〜4mであることが好ましく、1.4〜4mであることがより好ましく、1.6〜3mであることがさらに好ましい。
上記方法により作製したセルロースエステルフィルム積層体は、外周部に包装加工を施した後、50℃以上の条件下で、3日以上のエージング処理を施すことが好ましい。かような処理を施すことによって、セルロースエステルフィルムの平面性等の特性を向上させることが可能となり、寸法安定性向上の観点からもこの範囲内の値に制御することが好ましい。
《偏光板》
以下、本発明に係る偏光板の各構成要素の詳細について説明する。
[偏光板の構成]
本発明の偏光板は、保護フィルムA、偏光子及び保護フィルムBをこの順に有し、保護フィルムAはアクリル樹脂又はポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を主成分とするフィルムであることが好ましい。保護フィルムBは、本発明のセルルロースエステルフィルムであることが好ましい。より好ましくはセルロースアセテートフィルムである。本発明のセルロースエステルフィルムは、位相差フィルムとして機能する。
図4は、本発明の偏光板の構成の一例を示す概略断面図である。図4において、本発明に係る偏光板101は、表面側より、保護フィルムA(アクリル樹脂フィルム又は、PETフィルム等のポリエステルフィルム)102と、偏光子104とを有し、この保護フィルムA102と偏光子104とは、紫外線硬化型接着剤層103Aにより接着されていることが好ましい。この紫外線硬化型接着剤層103Aは、紫外線等を照射することにより硬化する材料により構成されている。なお、紫外線硬化型接着剤の詳細については、後述する。
図4に示す偏光板101では、さらに、保護フィルムA102が配置されている面とは反対側の偏光子104の面に、さらに紫外線硬化型接着剤層103Bを介して、保護フィルムB(セルロースエステルフィルム)105が積層されている。
また、図4において記載はしていないが、保護フィルムA102のさらに外側(最表面部)には、必要に応じて、例えば、防眩層、反射防止層、防汚層、ハードコート層等を設けてもよい。
[偏光子]
偏光板の主たる構成要素である偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子としては、ポリビニルアルコール水溶液を成膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行った偏光子が用いられうる。偏光子の厚さは2〜30μmが好ましく、また薄膜適性の観点から2〜15μmが好ましい、さらには3〜10μmであることがさらなる薄膜適性及び取り扱い性の観点から好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。なかでも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れている上に、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
また、特開2011−100161号公報、特許第4691205号公報、特許4751481号公報、特許第4804589号公報に記載の方法で、塗布型偏光子を作製し本発明に係る保護フィルムと貼り合わせて偏光板を作製することも好ましい。
《アクリルフィルム及びポリエステルフィルム》
液晶セルから遠い側の外側の保護フィルムである保護フィルムAは、アクリル樹脂又はポリエステルを主成分とするフィルムであることが好ましい。
本発明において、フィルムが所定の成分を「主成分とする」とは、フィルムを構成する樹脂成分全質量に対する前記所定の成分の比率が50質量%超であることをいい、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
〔アクリル樹脂〕
本発明に係るアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれ、アクリレート/メタクリレートの誘導体、特にアクリレートエステル/メタクリレートエステルの(共)重合体が好ましい。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位が51〜99質量%、及びこれと共重合可能な他のアクリル樹脂の単量体単位が1〜50質量%からなるものが、高品位の光学フィルムを得るために好ましい。
本発明に係るアクリル樹脂において、メチルメタクリレート単位と共重合可能な他のアクリル樹脂の単量体としては、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して共重合成分として用いることができる。
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
高温、高湿の環境にも性能変化の少ない透明性の高い光学フィルムを形成できるアクリル樹脂としては、共重合成分として脂環式アルキル基を含有するか、あるいは分子内環化により分子主鎖に環状構造を形成させたアクリル樹脂が好ましい。分子主鎖に環状構造を形成させたアクリル樹脂の例としては、例えば、特開2012−133078号公報に記載の段落番号〔0195〕〜同〔0202〕に記載のラクトン環含有重合体を含むアクリル系の熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましい樹脂組成や合成方法は、例えば、特開2012−066538号公報及び特開2006−171464号公報に記載されている。また、他の好ましい態様として、グルタル酸無水物を共重合成分として含有する樹脂が挙げられ、共重合成分や具体的合成方法については、例えば、特開2004−070296号公報に記載されている。
本発明においては、形成するフィルムの面状に優れるという観点から、本発明に適用するアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、80000以上であることが好ましい。また、積層したときのフィルム面状を更に改良することができる観点から、アクリル樹脂の重量平均分子量としては、100000〜4000000の範囲であることが好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量の上限は、粘度が過度に高くなることなく溶液流延適性を維持でき、また、ドープ調製時に有機溶媒や添加剤との相溶性を確保することができるという理由から、上限としては4000000とすることが好ましい。
本発明に係るアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜2800000迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法を用いることができる。
また、本発明においては、本発明に係るアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(以上、三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。このような市販品のアクリル樹脂は、2種以上を併用することもできる。
(アクリル樹脂と併用可能な他の熱可塑性樹脂)
本発明において、保護フィルムAがアクリル樹脂を主成分とする場合には、本発明に係るアクリル樹脂の含有量を上回らない範囲で、すなわち、「アクリル樹脂を主成分とするアクリル層」を維持することができ、本発明の目的効果を損なわない範囲で、更に他の熱可塑性樹脂を含むことができる。
熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が100℃以上、全光線透過率が85%以上の性能を有するものが、本発明に係るアクリル樹脂と混合してフィルム状にした際に、耐熱性や機械強度を向上させる点において好ましい。
上記のその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)やASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート樹脂)等のゴム質重合体;などが挙げられる。ゴム質重合体は、表面に環重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有するのが好ましく、また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルム状とした際の透明性向上の観点から、100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることが更に好ましい。
他の熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂と熱力学的に相溶する樹脂が好ましく用いられる。このような他の熱可塑性樹脂としては、例えば、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを有するアクリロニトリル−スチレン系共重合体やポリ塩化ビニル樹脂等が好ましく挙げられる。それらの中でもアクリロニトリル−スチレン系共重合体が、ガラス転移温度が120℃以上、面方向の100μm当たりの位相差が10nm満で、全光線透過率が85%以上である光学フィルムが容易に得られるので好ましい。
アクリロニトリル−スチレン系共重合体としては、具体的には、その共重合比がモル単位で、1:10〜10:1の範囲のものが有用に使用される。
この目的で使用できるアクリル樹脂の組成は、脂肪族の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことが好ましい。
好ましくは、これら成分の構成質量比率が、アクリル樹脂中、40〜100質量%、更に好ましくは60〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
脂肪族の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。中でも、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル(i−、n−)、メタアクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチル等が用いられうる。
シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシル等が用いられうる。
上記モノマーに加えて、更に共重合可能な成分としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して共重合成分として用いることができる。
アクリル樹脂を合成するためには、通常の重合では、分子量のコントロールが難しい。このような低分子量のポリマーの重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に、特開2000−128911号又は同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級のヒドロキシ基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、いずれも本発明において好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
〔ゴム粒子〕
本発明に係る保護フィルムAがアクリル樹脂を主成分とする場合、当該保護フィルムAはゴム粒子を含有することが好ましい。本発明に適用可能なゴム粒子としては、特に制限はないが、アクリル系ゴム粒子が好ましい。アクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系モノマーを、多官能モノマーの存在下に重合させて得られるゴム弾性を有する粒子である。
アクリル系ゴム粒子は、このようなゴム弾性を有する粒子が単層で形成されたものでもよいし、ゴム弾性層を少なくとも1層有する多層構造体であってもよい。多層構造のアクリル系ゴム粒子としては、上記のようなゴム弾性を有する粒子を核とし、その周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったもの、硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体を核とし、その周りを上記のようなゴム弾性を有するアクリル系重合体で覆ったもの、また硬質の核の周りをゴム弾性のアクリル系重合体で覆い、さらにその周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったものなどが挙げられる。かかるゴム粒子は、弾性層で形成される粒子の平均直径が通常50〜400nm程度の範囲にある。
本発明に係る保護フィルムAにおけるゴム粒子の含有量としては、アクリル樹脂100質量部あたり、通常5〜50質量部の範囲内である。アクリル系樹脂及びアクリル系ゴム粒子は、それらを混合した状態で市販されているので、その市販品を用いることができる。アクリル系ゴム粒子が配合された(メタ)アクリル系樹脂の市販品の例として、住化ハース(有)から過去に販売されていたオログラス DR、住友化学(株)から現在販売されているHT55Xやテクノロイ S001などが挙げられる。
〔ポリエステル〕
保護フィルムAの構成成分の他の候補であるポリエステルの具体的な構成については特に制限はない。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを用いることができるが、他の共重合成分を含んでも構わない。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れており、延伸加工によって容易にリターデーションを制御することができる。特に、ポリエチレンテレフタレートは固有複屈折が大きく、フィルムの厚さが薄くても比較的容易に大きなリターデーションが得られることから、最も好適な素材である。
なお、本発明において、保護フィルムAのリターデーション値は、2軸方向の屈折率と厚さを測定して求めることもできるし、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社)といった市販の自動複屈折測定装置を用いて求めることもできる。
ポリエステルを主成分とする保護フィルムAは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもかまわないが、二軸延伸フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合、フィルム面の真上から観察しても虹状の色斑が見られないが、斜め方向から観察したときに虹状の色斑が観察される場合があるので注意が必要である。この現象は、二軸延伸フィルムが、走行方向、幅方向、厚さ方向で異なる屈折率を有する屈折率楕円体からなり、フィルム内部での光の透過方向によりリターデーションがゼロになる(屈折率楕円体が真円に見える)方向が存在するためである。従って、液晶表示画面を斜め方向の特定の方向から観察すると、リターデーションがゼロになる点を生じる場合があり、その点を中心として虹状の色斑が同心円状に生じることとなる。そして、フィルム面の真上(法線方向)から虹状の色斑が見える位置までの角度をθとすると、この角度θは、フィルム面内の複屈折が大きいほど大きくなり、虹状の色斑は見え難くなる。二軸延伸フィルムでは角度θが小さくなる傾向があるため、一軸延伸フィルムのほうが虹状の色斑は見え難くなり好ましい。
[紫外線硬化型接着剤]
本発明の偏光板においては、図4に示すように、上記説明した保護フィルムA及び保護フィルムBのそれぞれと、偏光子とが、紫外線硬化型接着剤により貼合されていることが好ましい。
本発明においては、保護フィルムAと偏光子との貼合、あるいは保護フィルムBと偏光子との貼合に紫外線硬化型接着剤を適用することにより、高生産性で、偏光子の耐久性に優れた特性を得ることができる。
〔紫外線硬化型接着剤の組成〕
紫外線硬化型接着剤としては、その硬化の様式により分類すると、ラジカル重合型接着剤、カチオン重合型接着剤などが挙げられ、接着剤成分の化学種により分類すると、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などが挙げられる。本発明においては、これらのいずれを用いてもよく、また、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。エポキシ樹脂とは、分子内に平均2個以上のエポキシ基を有し、当該エポキシ基を伴う重合反応により硬化する化合物又はポリマーをいい、この分野での慣例に従い、モノマーであってもエポキシ樹脂と称する。
紫外線硬化型接着剤に含有されるエポキシ樹脂としては、耐候性、屈折率及びカチオン重合性などの観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂が好適に用いられる。分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂としては、水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
水素化エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂を触媒の存在下、加圧下で選択的に核水素化反応を行うことにより得ることができる。芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル及びビスフェノールSのジグリシジルエーテルなどのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル及びエポキシ化ポリビニルフェノールなどの多官能型のエポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、水素化エポキシ樹脂として、水素化されたビスフェノールAのグリシジルエーテルを用いることが好ましい。
脂環式エポキシ樹脂とは、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ樹脂を意味する。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下記式に示される構造における(CHから1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基である。下記式中、mは2〜5の整数である。
Figure 2015104940
したがって、上記式における(CH中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が脂環式エポキシ樹脂となり得る。(CH中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基などの直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。脂環式エポキシ樹脂のなかでも、オキサビシクロヘキサン環(上記式においてm=3のもの)や、オキサビシクロヘプタン環(上記式においてm=4のもの)を有するエポキシ樹脂は、偏光フィルムと保護フィルムとの接着強度に優れる接着剤が得られることから好ましく用いられる。以下に、本発明において好ましく用いられる脂環式エポキシ樹脂を具体的に例示するが、これらの化合物に限定されるものではない。(a)下記式(I)で示されるエポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
Figure 2015104940
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(b)下記式(II)で示されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
Figure 2015104940
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、nは2〜20の整数を表す。)
(c)下記式(III)で示されるジカルボン酸のエポキシシクロヘキシルメチルエステル類:
Figure 2015104940
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、pは2〜20の整数を表す。)
(d)下記式(IV)で示されるポリエチレングリコールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
Figure 2015104940
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、qは2〜10の整数を表す。)
(e)下記式(V)で示されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
Figure 2015104940
(式中、R及びR10は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、rは2〜20の整数を表す。)
(f)下記式(VI)で示されるジエポキシトリスピロ化合物:
Figure 2015104940
(式中、R11及びR12は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(g)下記式(VII)で示されるジエポキシモノスピロ化合物:
Figure 2015104940
(式中、R13及びR14は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(h)下記式(VIII)で示されるビニルシクロヘキセンジエポキシド類:
Figure 2015104940
(式中、R15は、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(i)下記式(IX)で示されるエポキシシクロペンチルエーテル類:
Figure 2015104940
(式中、R16及びR17は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(j)下記式(X)で示されるジエポキシトリシクロデカン類:
Figure 2015104940
(式中、R18は、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
上記例示した脂環式エポキシ樹脂のなかでも、次の脂環式エポキシ樹脂は、市販されているか、又はその類似物であって、入手が比較的容易であるなどの理由から、より好ましく用いられる。
(A)7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸と(7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールとのエステル化物〔式(I)において、R=R=Hの化合物〕、
(B)4−メチル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸と(4−メチル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールとのエステル化物〔式(I)において、R=4−CH、R=4−CHの化合物〕、
(C)7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸と1,2−エタンジオールとのエステル化物〔式(II)において、R=R=H、n=2の化合物〕、
(D)(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールとアジピン酸とのエステル化物〔式(III)において、R=R=H、p=4の化合物〕、
(E)(4−メチル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールとアジピン酸とのエステル化物〔式(III)において、R=4−CH、R=4−CH、p=4の化合物〕、
(F)(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールと1,2−エタンジオールとのエーテル化物〔式(V)において、R=R10=H、r=2の化合物〕。
また、上記脂環式エポキシ樹脂としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルを挙げることができる。より具体的には、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;及び、エチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド等)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
本発明において、エポキシ樹脂は、1種のみを単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。中でも、上記脂肪族エポキシ樹脂と脂環式エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。かような構成とすることで、特に高温高湿耐久性試験後における光漏れやパネルの反り(カール)の発生を効果的に抑制することができる。
本発明で使用するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、通常、30〜3000g/当量、好ましくは50〜1500g/当量の範囲内である。エポキシ当量が30g/当量を下回ると、硬化後の接着剤層の可撓性が低下したり、接着強度が低下したりする可能性がある。一方、3000g/当量を超えると、接着剤に含有される他の成分との相溶性が低下する可能性がある。
本発明においては、エポキシ樹脂の硬化反応としてカチオン重合が好ましく用いられる。そのためには、紫外線硬化型接着剤は、光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。光カチオン重合開始剤は、紫外線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させる。いずれのタイプのカチオン重合開始剤が用いられてもよいが、潜在性が付与されていることが、作業性の観点から好ましい。
光カチオン重合開始剤を用い、紫外線の照射により接着剤の硬化を行う方法は、常温での硬化が可能となり、偏光子の耐熱性あるいは膨張による歪を考慮する必要が減少し、また、保護フィルムと偏光子とを良好に接着できる点において有利である。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、これをエポキシ樹脂に混合しても、該接着剤は保存安定性及び作業性に優れる。
光カチオン重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩、及び鉄−アレン錯体などを挙げることができる。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、及びベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレートなどが挙げられる。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビス(ヘキサフルオロアンチモネート)、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、及び4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
鉄−アレン錯体としては、例えば、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、及びキシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)−トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなどが挙げられる。
これらの光カチオン重合開始剤の市販品は、容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、「カヤラッドPCI−220」、「カヤラッド PCI−620」(以上、日本化薬(株)製)、「UVI−6990」(ユニオンカーバイド社製)、「アデカオプトマーSP−150」、「アデカオプトマー SP−170」(以上、(株)ADEKA製)、「CI−5102」、「CIT−1370」、「CIT−1682」、「CIP−1866S」、「CIP−2048S」、「CIP−2064S」(以上、日本曹達(株)製)、「DPI−101」、「DPI−102」、「DPI−103」、「DPI−105」、「MPI−103」、「MPI−105」、「BBI−101」、「BBI−102」、「BBI−103」、「BBI−105」、「TPS−101」、「TPS−102」、「TPS−103」、「TPS−105」、「MDS−103」、「MDS−105」、「DTS−102」、「DTS−103」(以上、みどり化学(株)製)、「PI−2074」(ローディア社製)などを挙げることができる。なかでも、日本曹達(株)製の「CI−5102」は、好ましい光カチオン重合開始剤の一つである。
上記光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも、特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度及び接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、通常0.5〜20質量部であり、好ましくは1質量部以上、また好ましくは15質量部以下である。光カチオン重合開始剤の配合量が、エポキシ樹脂100質量部に対して0.5質量部を下回ると、硬化が不十分になり、機械的強度又は接着強度が低下する傾向にある。また、光カチオン重合開始剤の配合量が、エポキシ樹脂100質量部に対して、20質量部を超えると、硬化物中のイオン性物質が増加することによって硬化物の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性能が低下する可能性がある。
光カチオン重合開始剤を用いる場合、紫外線硬化型接着剤は、必要に応じて、さらに光増感剤を含有することができる。光増感剤を使用することで、カチオン重合の反応性が向上し、硬化物の機械的強度及び接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物並びに光還元性色素などが挙げられる。光増感剤のより具体的な例は、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンなどのベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンなどのアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンなどのアクリドン誘導体;及び、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物を含む。ただし、これらに限定されるものではない。これらの光増感剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。光増感剤は、紫外線硬化型接着剤100質量部中、0.1〜20質量部の範囲内で含有されることが好ましい。
紫外線硬化型接着剤は、オキセタン類やポリオール類など、カチオン重合を促進させる化合物をさらに含有してもよい。
オキセタン類は、分子内に4員環エーテルを有する化合物である。オキセタン類の例は、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンを含む。これらのオキセタン類の市販品は、容易に入手することが可能であり、例えば、いずれも商品名で、「アロンオキセタン OXT−101」、「アロンオキセタン OXT−121」、「アロンオキセタンOXT−211」、「アロンオキセタン OXT−221」、「アロンオキセタン OXT−212」(以上、東亞合成(株)製)などを挙げることができる。オキセタン類は、紫外線硬化型接着剤中、通常、5〜95質量%、好ましくは30〜70質量%の割合で含有される。
ポリオール類は、フェノール性ヒドロキシ基以外の酸性基が存在しないものが好ましい。このようなポリオール類としては、例えば、ヒドロキシ基以外の官能基を有しないポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物、フェノール性ヒドロキシ基を有するポリオール化合物、ポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。これらのポリオール類の分子量は、通常48以上、好ましくは62以上、さらに好ましくは100以上、また好ましくは1000以下である。ポリオール類は、紫外線硬化型接着剤中、通常、50質量%以下、好ましくは30質量%以下の割合で含有される。
さらに、紫外線硬化型接着剤は、本発明の効果を損なわない限り、その他の添加剤、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などを含有することができる。イオントラップ剤としては、例えば、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系などの無機化合物及びこれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
なお、上述したエポキシ樹脂を用いた紫外線硬化型接着剤に代えて、特開2012−144690号公報に開示されているような、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド;トリプロピレングリコールジアクリレート;アクリロイルモルホリン、N−メトキシメチルアクリルアミドなどのラジカル重合性化合物を用いた紫外線硬化型接着剤が用いられてもよい。
紫外線硬化型接着剤は、保護フィルムと偏光フィルムとの接着に用いられる接着剤である。紫外線硬化型接着剤を塗布し、接着剤層を形成する面は、保護フィルムにおける偏光フィルムとの貼合面であってもよく、偏光フィルムにおける保護フィルムとの貼合面であってもよく、その双方であってもよい。好ましくは、保護フィルムの偏光フィルムとの貼合面に接着剤層が形成される。接着剤の塗工方法に特別な限定はなく、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて接着剤の粘土調整を行うことも有用な技術である。溶剤には、偏光フィルムの光学性能を低下させることなく、接着剤を良好に溶解するものが好ましく用いられる。溶剤の具体例としては、特に制限されないが、例えば、トルエン等の炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類などの有機溶剤が挙げられる。
(前処理工程)
前処理工程は、保護フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う工程である。偏光子の両面のそれぞれに保護フィルムA及び保護フィルムBを接着させる場合は、それぞれの保護フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
(紫外線硬化型接着剤の塗布工程)
紫外線硬化型接着剤の塗布工程としては、偏光子と保護フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記紫外線硬化型接着剤を塗布する。偏光子又は保護フィルムの表面に直接、紫外線硬化型接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特段の限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の湿式塗布方式が利用できる。また、偏光子と保護フィルムの間に、紫外線硬化型接着剤を流延させたのち、ロール等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(貼合工程)
上記の方法により紫外線硬化型接着剤を塗布した後は、貼合工程で処理される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に紫外線硬化型接着剤を塗布した場合、そこに保護フィルムが重ね合わされる。先の塗布工程で、はじめに保護フィルムの表面に紫外線硬化型接着剤を塗布する方式の場合には、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と保護フィルムの間に紫外線硬化型接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と保護フィルムAとが重ね合わされる。偏光子の両面に保護フィルムA及び保護フィルムBをそれぞれ接着する場合であって、両面とも紫外線硬化型接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、紫外線硬化型接着剤を介して保護フィルムA及び保護フィルムBが重ね合わされる。そして、通常は、この状態で両面(偏光子の片面に保護フィルムAを重ね合わせた場合は、偏光子側と保護フィルムA側、また偏光子の両面に保護フィルムA及び保護フィルムBを重ね合わせた場合は、その両面の保護フィルムA及び保護フィルムB側)から加圧ローラー等で挟んで加圧することになる。加圧ローラーの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置される加圧ローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射して、カチオン重合性化合物(例えば、エポキシ化合物やオキセタン化合物)やラジカル重合性化合物(例えば、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物等)を含む紫外線硬化型接着剤層を硬化させ、紫外線硬化型接着剤を介して重ね合わせた偏光子と保護フィルムA、あるいは偏光子と保護フィルムBとを接着させる。偏光子の片面に保護フィルムAを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は保護フィルムA側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面に保護フィルムA及び保護フィルムBを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ紫外線硬化型接着剤を介して保護フィルムA及び保護フィルムBを重ね合わせた状態で、紫外線を照射し、両面の紫外線硬化型接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
紫外線の照射条件は、本発明に適用する紫外線硬化型接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線の照射量は積算光量で50〜1500mJ/cmであることが好ましく、100〜500mJ/cmであるのがさらに好ましい。
偏光板の製造工程を連続ラインで行う場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/min、より好ましくは5〜300m/min、さらに好ましくは10〜100m/minである。ライン速度が1m/min以上であれば、生産性を確保することができ、又は保護フィルムAへのダメージを抑制することができ、耐久性に優れた偏光板を作製することができる。また、ライン速度が500m/min以下であれば、紫外線硬化型接着剤の硬化が十分となり、目的とする硬度を備え、接着性に優れた紫外線硬化型接着剤層を形成することができる。
《表示装置》
本発明に係る偏光板は、種々の表示装置に用いることができるが、特に、液晶表示装置に適用することが好ましい。
本発明の偏光板を具備する液晶表示装置としては、TN(TwistedNematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically CompensatedBirefringence)方式、VA(Vertical Alignment)方式(MVA;Multi−domain Vertical AlignmentやPVA;Patterned Vertical Alignmentも含む)、HAN(HybridAligned Nematic)等に好ましく用いることができる。コントラストを高めるためには、VA(MVA、PVA)方式が好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
[実施例1]
(セルロースエステルフィルム1の作製)
〈セルロースエステル〉
以下の実施例で用いたセルロースエステルの特性値を表1に示す。
Figure 2015104940
〈微粒子分散液1〉
以下のように微粒子分散液1から微粒子添加液1を調製した。
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製)
11.0質量部
エタノール 89.0質量部
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分撹拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99.0質量部
微粒子分散液1 5.0質量部
〈ドープの調製〉
下記組成の主ドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル(TAC3)を撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、残りの成分を添加し、撹拌して溶解させて、主ドープを調製した。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 340.0質量部
エタノール 64.0質量部
セルロースエステル(TAC1) 100.0質量部
リターデーション上昇剤(ステロール系、例示化合物S−11)
2.0質量部
可塑剤(重縮合エステル、例示化合物P2) 7.0質量部
微粒子添加液1 1.0質量部
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力180N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースエステルフィルムを、190℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に10%延伸した。延伸開始時の残留溶媒量は5質量%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。これにより、厚さ35μmのセルロースエステルフィルム1を得た。
(セルロースエステルフィルム2〜69の作製)
セルロースエステルの種類、リターデーション上昇剤の種類と添加量、可塑剤の種類と添加量、セルロースエステルフィルムの厚さ、製造条件として延伸時の残留溶媒量、延伸温度及び延伸倍率を表2〜表4に示すように変更したこと以外は、上述したセルロースエステルフィルム1の作製と同様の手法により、セルロースエステルフィルム2〜69を作製した。
また表2〜表4で用いた略称は、以下のとおりである。
フィルム番号:セルロースエステルフィルム番号
TPP:トリフェニルホスフェート
TMPTB:トリメチロールプロパントリベンゾエート
BDP:ビフェニルジフェニルホスフェート
また、以下の構造を有する化合物を用いた。
Figure 2015104940
≪セルロースエステルフィルムの物性評価方法≫
(セルロースエステルのアシル基置換度)
セルロースエステルのアシル基置換度は、ASTM−D817−96に準拠して測定した。
(Ro(550)及びRt(550)の測定)
得られたフィルムから試料40mm×40mmを切り出し、温度23℃・相対湿度55%の環境下で2時間調湿し、自動複屈折計(Axometrics社製Axoscan)で、測定光波長550nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したリターデーション値の外挿値から以下の式(i)、式(ii)より、測定光波長550nmにおける面内リターデーション値(Ro(550))と、厚さ方向のリターデーション値(Rt(550))を算出した。
具体的には、上記作製したセルロースエステルフィルムを23℃、55%RHの環境下で、590nmの波長において10か所で3次元の屈折率測定を行い、屈折率n、n、nの平均値を求めた後、下記式に従って面内方向のリターデーション値Ro及び厚さ方向のリターデーション値Rtを算出した。
式(i) Ro=(n−n)×d
式(ii) Rt={(n+n)/2−n}×d
(式中、nはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nはフィルムの厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
表2〜表4では、セルロースエステルフィルムの厚さ方向のリターデーション値を示した。
(波長分散の評価)
同様に測定光波長450nmの面内リターデーション値(Ro(450))と測定光波長550nmの面内リターデーション値(Ro(550))を測定し、測定光波長550nmに対する測定光波長450nmの比の値を、波長分散として、表に記載した。この値が1.0以上であると位相差フィルムが順波長分散性を示し、波長分散特性として良好である。
面内リターデーション値Roと同様に測定光波長450nmの厚さ方向のリターデーション値(Rt(450))と測定光波長550nmの厚さ方向のリターデーション値(Rt(550))を測定し、測定光波長550nmに対する測定光波長450nmの比の値を、波長分散として、表に記載した。この値が1.0未満であると位相差フィルムが逆波長分散性を示し、波長分散特性として良好である。
表2〜表4においては、これらの比の値が1.0未満の場合は「逆」、1以上の場合は「順」と記載した。
(ヘイズ値の測定)
セルロースエステルフィルムのヘイズ値は、JIS K−7136:2000に準拠した方法;具体的には、以下の手順で測定した。
1)セルロースエステルフィルムを、温度23℃・相対湿度55%の環境下で5時間以上調湿する。その後、フィルム表面に付着したホコリなどをブロワー等で除去する。
2)次いで、位相差フィルムのヘイズ値を、ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色社製)にて測定する。ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とした。ヘイズ値の測定は、いずれも温度23℃・相対湿度55%の環境下にて行った。
(耐湿性評価)
セルロースエステルフィルムについて、下記方法に従って湿度変動に対する位相差の変動を評価し、耐湿性の評価とした。
(位相差変動測定方法)
測定環境:23℃・55%RHにて、Axometrics社製Axoscanを使用して、各セルロースエステルフィルムの面内リターデーションRo、厚さ方向のリターデーションRtを測定した(測定値I)。
次に試料フィルムを40mm×40mmのガラス板を2枚用意し、ガラス板、水、フィルム、水、ガラス板の順になるように積層する。これをさらに水のバット中に24時間水に浸漬させ、取り出したもののガラス表面の水気を拭き取ってリターデーションRtを測定した(測定値II)。
測定値(I−II)/(I)の絶対値を△Rt(nm)とした。値が小さいほど湿度変動に対する位相差の安定性が高いことを示す。
以上の結果を表2〜表4に示す。
Figure 2015104940
Figure 2015104940
Figure 2015104940
表2〜表4から明らかなように、本発明のセルロースエステルフィルムは、延伸後ヘイズ値が低下し、そのような挙動を示すセルロースエステルフィルムは耐湿性が優れていることがわかる。
[実施例2]
《保護フィルムAの作製》
《保護フィルムAとしてのアクリル樹脂フィルムの作製》
〔保護フィルムA−1の作製〕
(フィルム成膜)
まず、アクリル樹脂として、テクノロイS001(Tg=105℃、住友化学社製)を準備し、これを200℃に加熱することで溶融させた。そして、溶融状態で濾過処理を行った。なお、濾過処理には、12インチサイズで濾過精度25μmのサイズのステンレス繊維焼結フィルターを5枚使用した。
続いて、下記成分を、真空ナウターミキサーにて80℃、133Paの条件下で3時間混合しながら乾燥させて、樹脂組成物を得た。
〈樹脂組成物〉
アクリル樹脂(上記で濾過処理を施したもの) 80質量部
アクリル系ゴム粒子(平均粒径:200μm) 20質量部
上記樹脂組成物を、二軸式押出機にて200℃で溶融混練して、ストランド状に押し出した。ストランド状に押し出された樹脂組成物を水冷した後、カッティングしてペレットを得た。
得られたペレットに、温度70℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥させた後、温度100℃の温度を保ったまま、一軸押出機に投入した。一軸押出機に投入されるペレットの水分量は120ppmであった。
得られたペレットを用いて、溶融流延方式のフィルム製造装置を用いて、フィルムを製造した。具体的には、上記得られたペレットを、一軸押出機にて200℃で溶融混練した後、流延ダイから、表面温度が90℃である冷却ローラー上に押し出した。そして、冷却ローラーに押し出された樹脂を、表面の金属層の厚さが2mmである弾性タッチローラーで押圧した後、冷却ローラーと冷却ローラーでさらに冷却して、厚さ60μmのウェブを得た。
そして、フィルムの幅方向の両端部を切り落として、厚さ60μmのアクリル樹脂フィルムを得て、保護フィルムA−1とした。
《保護フィルムAとしてのポリエステル樹脂フィルムの作製》
〔保護フィルムP−1の作製〕
(PET(A)の製造)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後に、12インチサイズで濾過精度25μmのサイズのステンレス繊維焼結フィルターを5枚使用して重縮合物に対して濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、あらかじめ濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした(得られたものを「PET(A)」とも称する)。
(PET(B)の製造)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)10質量部、粒子を含有しないPET(A)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤を含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た(得られたものを「PET(B)」とも称する。)。
(接着性改質塗布液の調製)
常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%及び5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた。その後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア化学(株)製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液を得た。
(フィルム成膜)
以下の手法により、3層構成を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを作製した。
粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機(中間層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機(両外層用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で2回ずつ濾過し、2種3層合流ブロックにて積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを得た。この際、各層の厚さの比は10(外層):80(中間層):10(外層)となるように各押出機の吐出量を調整した。
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/mになるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
この塗布層を形成した未延伸フィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて145℃に予備加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向(MD方向)に3倍延伸した。その後、テンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度135℃の熱風ゾーンに導き、幅方向(TD方向)に2.5倍延伸した。このようにして、厚さ70μmの二軸配向のPETフィルムを得て、保護フィルムP−1とした。
《偏光板の作製》
〔偏光子の作製〕
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚さ50μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、得られたフィルムを、ヨウ素/ヨウ化カリウム(質量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.0倍まで延伸させながら染色した。その後、得られたフィルムを、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が5.5となるように延伸した。その後、得られたフィルムを、40℃のオーブンにて3分間乾燥して、厚さ10μmの偏光子を得た。
〔接着剤液の調製〕
(紫外線硬化型接着剤液1の調製:脂肪族エポキシ化合物)
脂肪族エポキシ化合物であるトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル10.0g、日本曹達(株)製の光カチオン重合開始剤である商品名「CI5102」4.0g、及び、日本曹達(株)製の光増感剤である商品名「CS7001」1.0gを量り取り、混合・脱泡して、エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物からなる紫外線硬化型接着剤液1を調製した。
(紫外線硬化型接着剤液2の調製:ラジカル重合性化合物)
ラジカル重合性化合物である、ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製)38.3g、アロニックスM−220(トリプロピレングリコールジアクリレート、東亞合成社製)19.1g、及びアクリロイルモルホリン(興人社製)38.3g、並びに、光重合開始剤であるKAYACUREDETX−S(ジエチルチオキサントン、日本化薬社製)1.4g及びIRGACURE907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製)1.4gを量り取り、混合・脱泡して、ラジカル重合性化合物を含有する硬化性樹脂組成物からなる紫外線硬化型接着剤液2を調製した。
〔偏光板の作製〕
(偏光板1の作製)
下記の方法に従って、図4に記載の構成からなる偏光板1(101)を作製した。カッコ内の数値は、図4に記載した各構成要素の番号を示す。
まず、保護フィルムB(105)として、実施例1で作製したセルロースエステルフィルム1を使用し、その表面にコロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、保護フィルムB(105)のコロナ放電処理面に、上記で調製した紫外線硬化型接着剤液1を、硬化後の厚さが約3μmとなるようにバーコーターで塗工して紫外線硬化型接着剤層(103B)を形成した。得られた紫外線硬化型接着剤層(103B)に、上記で作製したポリビニルアルコール−ヨウ素系の偏光子(104、厚さ10μm)を貼合した。
次いで、保護フィルムA(102)として上記で作製した保護フィルムA−1(アクリル樹脂フィルム)を用い、その表面にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、速度18m/分とした。
次いで、保護フィルムA(102)のコロナ放電処理面に、上記で調製した紫外線硬化型接着剤液1を、硬化後の厚さが約3μmとなるようにバーコーターで塗工して紫外線硬化型接着剤層(103A)を形成した。
この紫外線硬化型接着剤層(103A)に、保護フィルムB(105)の片面に貼合された偏光子(104)を貼合して、保護フィルムA(アクリル樹脂フィルム、102)/紫外線硬化型接着剤層(103A)/偏光子(104)/紫外線硬化型接着剤層(103B)/保護フィルムB(セルロースエステルフィルム、105)が積層された積層体を得た。その際に、保護フィルムB(105)の遅相軸と偏光子(104)の吸収軸とが互いに直交するように貼合した。
この積層体の両面側から、ベルトコンベヤー付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、積算光量が750mJ/cmとなるように紫外線を照射し、それぞれの紫外線硬化型接着剤層(103A,103B)を硬化させ、偏光板1(101)を作製した。
〔偏光板2〜72の作製〕
上記偏光板1の作製において、保護フィルムAの種類、実施例1で作製したセルロースエステルフィルム(保護フィルムB)の種類及び接着剤液の種類を、下記の表5に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、偏光板2〜72を作製した。
《液晶表示装置の作製》
VA型液晶表示装置の視認側の偏光板をはがし、液晶セルに上記で作製した偏光板を、保護フィルムAが視認側に位置し、保護フィルムBが液晶セルの側に位置するようにブチルアクリレートを主成分とした粘着剤を介して貼り合わせて、偏光板1〜72のそれぞれに対応するVA型液晶表示装置1〜72を作製した。
〔偏光板の評価〕
上記で作製したVA型液晶表示装置1〜72について、下記に示す方法に従って、パネルの視認性を評価した。
(パネルの視認性)
続いて、上記で作製したVA型液晶表示装置を、40℃80%RHの環境下で1週間保持した後に、25℃60%RHの環境に移し、黒表示状態で点灯させ続け、24時間後に目視観察して、光ムラ(輝度ムラ)を評価し、これを視認性の尺度とした。
装置正面から観察した場合の黒表示時の光ムラを観察し、以下の基準で評価した。
◎:照度100lxの環境下でムラがほとんど視認されない
○:照度100lxの環境下で淡いムラが視認される
△:照度100lxの環境下で明確なムラが視認される
×:照度300lxの環境下で明確なムラが視認される
以上の結果を表5及び表6に示した。
なお表5及び表6で用いた略称は、以下のとおりである。
表示装置:VA型液晶表示装置
フィルム番号:セルロースエステルフィルム番号
接着液:紫外線硬化型接着剤液
Figure 2015104940
Figure 2015104940
表5及び表6に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板を具備した表示装置は、比較例に対しパネルの視認性が優れていることが分かる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、環境の湿度変動に対し位相差変動が起こりにくい耐湿性の優れたセルロースエステルフィルムを提供することであり、偏光板や表示装置に好適に具備される。
1a セルロースエステルフィルム
2a セルロースエステル
3a 添加剤
1 溶解釜
3、6、12、15 濾過器
4、13 ストック釜
5、14 送液ポンプ
8、16 導管
10 紫外線吸収剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 加圧ダイ
31 金属ベルト
32 ウェブ
33 剥離位置
34 テンター延伸装置
35 乾燥装置
36 搬送ローラー
37 巻き取り部
41 仕込釜
42 ストック釜
43 ポンプ
44 濾過器
101 偏光板
102 保護フィルムA
103A 紫外線硬化型接着剤層
104 偏光子
103B 紫外線硬化型接着剤層
105 保護フィルムB

Claims (17)

  1. 延伸されたセルロースエステルフィルムであって、延伸後のヘイズ値が、延伸前から0.1〜0.9倍の範囲内に調整されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
  2. 前記延伸後のヘイズ値が、延伸前から0.1〜0.5倍の範囲内に調整されたことを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
  3. 前記延伸の延伸倍率が、1〜35%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセルロースエステルフィルム。
  4. 温度120〜220℃の範囲内で延伸されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  5. ステロール系リターデーション上昇剤を含有していることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  6. フィルムを構成するセルロースエステルのアセチル基置換度が、2.70〜3.00の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  7. 前記ステロール系リターデーション上昇剤のフィルム中の含有量が、前記セルロースエステルに対して0.5〜3質量%の範囲内であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のセルロースエステルフィルム。
  8. 前記ステロール系リターデーション上昇剤が、ヒドロキシ基を含む構造を有していることを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  9. 前記ステロール系リターデーション上昇剤が、1又は2個の芳香族環を含む構造を有していることを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  10. 前記ステロール系リターデーション上昇剤が、ヒドロキシ基と1又は2個の芳香族環とを含む構造を有していることを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  11. 温度23℃・相対湿度55%の環境下、測定波長λ(nm)における、面内のリターデーション値と厚さ方向のリターデーション値を、それぞれ、Ro(λ)とRt(λ)と表したとき、Ro(450)/Ro(550)が1以上で、かつRt(450)/Rt(550)が1未満であることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  12. 温度23℃・相対湿度55%の環境下、測定波長λ(nm)における、面内のリターデーション値と厚さ方向のリターデーション値を、それぞれ、Ro(λ)とRt(λ)と表したとき、面内のリターデーション値Ro(550)が45〜60の範囲内で、かつ厚さ方向のリターデーションRt(550)が110〜135の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  13. 厚さが、20〜37μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  14. ジオールとジカルボン酸の重縮合反応により合成された重縮合エステルを含有していることを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  15. 請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、セルロースエステルと添加剤を含有した溶液を溶液流延により成膜する工程を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
  16. 前記延伸を開始するときの残留溶媒量が2〜30質量%の範囲内で、かつ温度120〜220℃の範囲内の条件で延伸することを特徴とする請求項15に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  17. 前記延伸が、幅方向に延伸倍率が3〜15%の範囲内で施されることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
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